(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ガラスパーティション及びその施工方法、並びに矯正具
(51)【国際特許分類】
E04B 2/72 20060101AFI20240227BHJP
E04B 2/74 20060101ALI20240227BHJP
E04B 1/68 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
E04B2/72 A
E04B2/72 B
E04B2/74 501F
E04B2/72 Z
E04B1/68 Z
(21)【出願番号】P 2020014117
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】播磨 修二
(72)【発明者】
【氏名】岸上 昌史
(72)【発明者】
【氏名】山口 純一
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-170299(JP,A)
【文献】特開2003-268907(JP,A)
【文献】特開2005-036639(JP,A)
【文献】特開平11-193591(JP,A)
【文献】特表2017-525641(JP,A)
【文献】特開2007-197946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/72
E04B 2/74
E04B 1/68
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のガラス板を幅方向に隣設してなり、隣り合うガラス板の突合せ領域における特定箇所に前記ガラス板の反りを抑制するための矯正具が部分的に設けられて
おり、
前記突合せ領域が、隣り合うガラス板の突合せ端面間に連続した隙間が形成された領域であり、
前記矯正具は、隣り合うガラス板の一面にそれぞれ添接する第1の外装体と、隣り合うガラス板の他面にそれぞれ添接する第2の外装体と、前記第1の外装体の内面に一体に突設され前記隣り合うガラス板の突き合わせ端面間の隙間に挿入される挿入板と、前記挿入板に設けられるねじ孔、リベット挿入孔若しくは係合孔と、前記第2の外装体の内面に一体に突設され前記ねじ孔に挿入されるねじ軸、前記リベット挿入孔に挿入されるリベット若しくは前記係合孔に挿入される係合突起とを備え、
前記第1の外装体及び前記第2の外装体の外面が何れも平坦であり、前記ねじ軸、リベット若しくは係合突起の先端が前記第1の外装体の外面から突出しないガラスパーティション。
【請求項2】
前記第1の外装体及び前記第2の外装体がそれぞれ正面視円形をなす請求項1記載のガラスパーティション。
【請求項3】
前記隙間の前記
挿入板が配されていない部分には、充填材が充填されている請求項1又は2記載のガラスパーティション。
【請求項4】
前記挿入板に設けられたねじ孔に、前記第2の外装体の内面に突設されたねじ軸が螺着される請求項
1、2又は3記載のガラスパーティション。
【請求項5】
前記矯正具は、人が前記ガラス板に誤って衝突するのを防止するための目印となり得る位置に配されている請求項1、2、3
又は4記載のガラスパーティション。
【請求項6】
ガラスパーティションを施工する方法であって、
幅方向に隣設する少なくとも2枚のガラス板を隙間を介して突き合せる工程と、
その隙間に充填材を充填する工程と、
矯正具の一部をなす第1の外装体の内面に一体に突設された挿入板を前記充填材を部分的に除去しながら前記隙間内に挿入して第1の外装体を両ガラス板の一面に添接させる工程と、
前記矯正具の一部をなす第2の外装体の内面に一体に突設されたねじ軸、リベット若しくは係合突起を、前記挿入板に設けられたねじ孔、リベット挿入孔若しくは係合孔に挿入して第2の外装体を前記両ガラス板の他面に添接させる工程と
を具備するガラスパーティションの施工方法。
【請求項7】
前記挿入板に設けられたねじ孔に、前記第2の外装体の内面に突設されたねじ軸が螺着される請求項6記載のガラスパーティションの施工方法。
【請求項8】
請求項1記載のガラスパーティションに使用される矯正具であって、
隣り合うガラス板の一面にそれぞれ添接する第1の外装体と、隣り合うガラス板の他面にそれぞれ添接する第2の外装体と、前記第1の外装体の内面に一体に突設され隣り合うガラス板の突き合わせ端面間の隙間に挿入される挿入板と、前記挿入板に設けられるねじ孔、リベット挿入孔若しくは係合孔と、前記第2の外装体の内面に一体に突設され前記ねじ孔に挿入されるねじ軸、前記リベット挿入孔に挿入されるリベット若しくは前記係合孔に挿入される係合突起とを備え、
前記第1の外装体及び前記第2の外装体の外面が何れも平坦であり、前記ねじ軸、リベット若しくは係合突起の先端が前記第1の外装体の外面から突出しない矯正具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス等に設置されるガラスパーティション及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数枚のガラス板を横幅方向に隣設してなるガラスパーティションが種々開発されている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、従来のものは、隣接するガラス板の突合せ端部間に、例えば、平断面H形をなす連結部材が介在させてあり、この連結部材により両ガラス板の端部同士を位置決めし保持するようにしている。
【0004】
しかしながら、かかる連結部材は比較的幅の広いガラスとは異質な素材により構成されている上に、ガラス板の上端から下端に亘って連続的に設けられているため、隣接するガラス板が連結部材により視覚的に分断されることになる。そのため、連結部材が目立ってしまうとともに、ガラスによる透明領域が不当に狭められることになり、ガラスパーティションとしての視覚的な基本性能が減殺される傾向がある(課題1)。
【0005】
また、隣接するガラス板間に平断面H形をなす連結部材を介在させるため、施工順序に制約を受けやすく、組立作業の自由度が低いという点も指摘されている(課題2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
請求項1~3に係る発明は、このような事情に着目してなされたもので、少なくとも前述した課題1を解消しようとするものである。
【0008】
請求項4に係る発明は、かかる課題1に加え、課題2をも解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明に係るガラスパーティションは、複数枚のガラス板を幅方向に隣設してなり、隣り合うガラス板の突合せ領域における特定箇所に前記ガラス板の反りを抑制するための矯正具が部分的に設けられており、前記突合せ領域が、隣り合うガラス板の突合せ端面間に連続した隙間が形成された領域であり、前記矯正具は、隣り合うガラス板の一面にそれぞれ添接する第1の外装体と、隣り合うガラス板の他面にそれぞれ添接する第2の外装体と、前記第1の外装体の内面に一体に突設され前記隣り合うガラス板の突き合わせ端面間の隙間に挿入される挿入板と、前記挿入板に設けられるねじ孔、リベット挿入孔若しくは係合孔と、前記第2の外装体の内面に一体に突設され前記ねじ孔に挿入されるねじ軸、前記リベット挿入孔に挿入されるリベット若しくは前記係合孔に挿入される係合突起とを備え、前記第1の外装体及び前記第2の外装体の外面が何れも平坦であり、前記ねじ軸、リベット若しくは係合突起の先端が前記第1の外装体の外面から突出しないものである。
【0010】
請求項2記載の発明に係るガラスパーティションは、請求項1記載のものであって、前記第1の外装体及び前記第2の外装体がそれぞれ正面視円形をなすものである。
【0011】
請求項3記載の発明に係るガラスパーティションは、請求項1又は2記載のものであって、前記隙間の前記挿入板が配されていない部分には、充填材が充填されているものである。
【0012】
請求項4記載の発明に係るガラスパーティションは、請求項1、2又は3記載のものであって、前記挿入板に設けられたねじ孔に、前記第2の外装体の内面に突設されたねじ軸が螺着されるものである。
【0014】
請求項5記載の発明に係るガラスパーティションは、請求項1、2、3又は4記載のものであって、前記矯正具が、人が前記ガラス板に誤って衝突するのを防止するための目印となり得る位置に配されているものである。
【0015】
請求項6記載の発明に係るガラスパーティションの施工方法は、幅方向に隣設する少なくとも2枚のガラス板を隙間を介して突き合せる工程と、その隙間に充填材を充填する工程と、矯正具の一部をなす第1の外装体の内面に一体に突設された挿入板を前記充填材を部分的に除去しながら前記隙間内に挿入して第1の外装体を両ガラス板の一面に添接させる工程と、前記矯正具の一部をなす第2の外装体の内面に一体に突設されたねじ軸、リベット若しくは係合突起を、前記挿入板に設けられたねじ孔、リベット挿入孔若しくは係合孔に挿入して第2の外装体を前記両ガラス板の他面に添接させる工程とを具備してなる。
【0016】
請求項7記載の発明に係るガラスパーティションの施工方法は、請求項6記載のガラスパーティションを施工する方法であって、前記挿入板に設けられたねじ孔に、前記第2の外装体の内面に突設されたねじ軸が螺着されるものである。
【0017】
請求項8記載の発明に係る矯正具は、請求項1記載のガラスパーティションに使用される矯正具であって、隣り合うガラス板の一面にそれぞれ添接する第1の外装体と、隣り合うガラス板の他面にそれぞれ添接する第2の外装体と、前記第1の外装体の内面に一体に突設され隣り合うガラス板の突き合わせ端面間の隙間に挿入される挿入板と、前記挿入板に設けられるねじ孔、リベット挿入孔若しくは係合孔と、前記第2の外装体の内面に一体に突設され前記ねじ孔に挿入されるねじ軸、前記リベット挿入孔に挿入されるリベット若しくは前記係合孔に挿入される係合突起とを備え、前記第1の外装体及び前記第2の外装体の外面が何れも平坦であり、前記ねじ軸、リベット若しくは係合突起の先端が前記第1の外装体の外面から突出しないものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1~3に係る発明によれば、少なくとも前述した課題1を解消することができる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、前述した課題1に加え、課題2をも解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガラスパーティションを示す正面図。
【
図4】同実施形態に係るガラス板の突合せ領域を示す拡大図。
【
図5】同実施形態に係る第1の外装体及び挿入板を示す図。
【
図6】同実施形態に係る第2の外装体及びねじ軸を示す図。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る矯正具を示す断面図。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る矯正具を示す断面図。
【
図10】本発明
に関連した参考例に係る矯正具を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態を、
図1~
図7を参照しつつ以下に述べる。
【0022】
この実施形態のガラスパーティション1は、
図1~
図3に示すように、複数枚のガラス板2を幅方向(
図1における矢印W方向)に隣設してなり、隣り合うガラス板2の突合せ領域3における特定箇所にガラス板2の反りを抑制するための矯正具4が部分的に設けられている。具体的には、このガラスパーティション1は、複数枚、図示例では4枚のガラス板2を横幅方向に隣接配置したもので、
図4に示すようにそれぞれ隣接するガラス板2の突合せ端面2e間には上下に連続した隙間3sが形成されており、各隙間3sの上下方向中央付近には矯正具4がそれぞれ配置されている。すなわち、矯正具4は、人がガラス板2に誤って衝突するのを防止するための目印となり得る位置に配されている。なお、
図1における矢印Hは、上下方向を示す。
【0023】
図4は、当該ガラスパーティション1の左右方向中央において付き合う2枚のガラス板2の突合せ領域3を拡大して示している。すなわち、この図面では、説明の便宜上、左のガラス板に「2A」の符号を付し、右のガラス板に「2B」の符号を付しており、
図4(a)は
図2におけるA部に対応する拡大平断面図、
図4(b)は
図3におけるB部に対応する拡大側断面図である。
【0024】
隣り合うガラス板2A、2B間に配された矯正具4は、ガラス板2Aの突合せ端面2e付近における厚み方向(
図4における矢印D方向)の反りとガラス板2Bの突合せ端面2e付近における厚み方向の反りとが異なって隙間3sが不当に拡大するのを抑制するためのものであり、剛性を有する金属材料を主体に構成されている。詳述すれば、この矯正具4は、
図4及び
図7に示すように、隣り合うガラス板2A、2Bの一面2cにそれぞれ添接する第1の外装体41と、隣り合うガラス板2A、2Bの他面2dにそれぞれ添接する第2の外装体42と、隙間3sに貫挿され両外装体41、42を連結する連結体43とを備えたものである。連結体43は、
図4~
図7に示すように、第1の外装体41の内面41aに突設され隙間3sに挿入される挿入板431と、第2の外装体42の内面42aに突設され挿入板431に設けられたねじ孔433に螺着されるねじ軸432とを備えたものである。
図4、
図5及び
図7に示すように、第1の外装体41と挿入板431はステンレス等の金属材料により一体に作られている。また、
図4、
図6及び
図7に示すように、第2の外装体42とねじ軸432もステンレス等の金属材料により一体に作られている。ここで、挿入板431の上端から下端に至る上下方向寸法は、第1の外装体41の直径よりも若干小さな値に設定されている。挿入板431は上下に分断されており、その分断部分にねじ孔433が形成されている。なお、第1の外装体41の内面41aにはガラス緩衝材411が添接されているとともに、挿入板431の両側面にもガラス緩衝材431が添接されている。また、第2の外装体42の内面42aにもガラス緩衝材421が添接されている。これらのガラス緩衝材411、421、431は矯正具4の金属部分が直接ガラス板2に接触するのを防止するためのものである。第1の外装体41及び第2の外装体42はそれぞれ正面視円形をなすものであり、その外周にはローレット加工等が施されている。ガラス緩衝材411、421、431は樹脂等のガラスを傷つけない非金属材料により作られたシート状のものである。
【0025】
図5は、一体に作られた第1の外装体41及び挿入板431を示す図で、同図(a)は平面図、同図(b)は正面図、同図(c)は右側面図である。
図6は、一体に作られた第2の外装体42及びねじ軸432を示す図で、同図(a)は左側面図、同図(b)は正面図、同図(c)は底面図である。
【0026】
隙間3sの連結体43が配されていない部分には、図示しない充填材が充填されている。充填材としては、例えば透明なコーキング材、具体的にはシリコーンゴム系のもの等が挙げられる。隙間3sの幅はガラス板2A、2Bの厚み寸法よりも小さく設定されている。
【0027】
以上の説明は、左右方向中央で突き合う2枚のガラス板2A、2Bについてのものであるが、隣り合うガラス板2の突合せ領域3全てにおいて同様な構造が採用されている。
図1~
図3に示すように、これらのガラス板2の上縁部は、上枠51と押縁52に挟持された状態で天井に配された既存の構造材50に支持されており、下縁部は、下枠61と押縁62に挟持された状態で床に配された既存の構造材60に支持されている。また、両端部のガラス板2の外縁部は縦枠71に保持された状態で起立構造材70に支持されている。
【0028】
以上説明したガラスパーティション1の施工方法は次の通りである。
【0029】
すなわちこのガラスパーティション1は、複数枚のガラス板2を隙間3sを介して突き合せる工程と、その隙間3sに充填材を充填する工程と、充填材を部分的に除去しながら矯正具4の挿入板431を隙間3s内に挿入して第1の外装体41を両ガラス板2の一面2cに添接させる工程と、隙間3sに挿入された挿入板431のねじ孔433にねじ軸432を螺合させて第2の外装体42を両ガラス板2の他面2dに添接させる工程とを経ることによって構築される。
【0030】
このような構成のものであれば、矯正具4の存在により衝き合わせたガラス板2が相対的に厚み方向に変形するのを有効に抑制することができるだけでなく、矯正具4が部分的に設けられたものであるため、ガラス板の上端から下端に亘って連続的に設けられた従来のものに比べて、隣接するガラス板2が視覚的に分断される度合いが小さくなり、ガラスによる透明領域が不当に狭められることを防止できる。そのため、透光性がよいというガラスパーティションとしての視覚的な基本性能を高いレベルで実現することができる。
【0031】
また、隙間3sの連結体43が配されていない部分には図示しない充填材が充填されているので、このガラスパーティション1により仕切られる空間内の気密性や遮音性を確保することができる。とくに本実施形態では、充填材にシリコーンゴム系の透明なコーキング材を採用可能であるので、透光性がよいというガラスパーティションとしての視覚的な基本性能を損なうことなく気密性や遮音性を確保できる。
【0032】
さらに、連結体43が、第1の外装体41の内面41aに突設され隙間3sに挿入される挿入板431と、第2の外装体42の内面42aに突設され挿入板431に設けられたねじ孔433に螺着されるねじ軸432とを備えたものであるので、隣接するガラス板間に平断面H形をなす連結部材を介在させる従来の態様と比較して、隙間3sに充填材を充填する工程の後、充填材を部分的に除去しながら矯正具4の挿入板431を隙間3s内に挿入する工程を行うことも、隙間3sに充填材を充填する工程を行う前に矯正具4の挿入板431を隙間3s内に挿入する工程を行うことも可能であるので、施工順序の制約が少なく、組立作業の自由度の向上を図ることができる。
【0033】
加えて、本実施形態に係る矯正具4の構成によれば、挿入板431の左右両面を目地幅のガイドとして利用することができるとともに、ねじ孔433を備えた挿入板431をガラス板2間の所定位置に固定し第2の外装体42及びねじ軸432により形成される雄ねじのみを回転させて増し締めすることも容易である。
【0034】
そして、矯正具4が、人がガラス板2に誤って衝突するのを防止するための目印となり得る位置、具体的には、例えば高さ3,000mmのガラスパーティション1であれば隙間3sの上下方向中央付近すなわち下端からの高さ位置1,500mm付近に配置されているので、ガラスパーティション1付近を通行する者にガラスパーティション1の存在を認識させることができ、当該通行者がガラスパーティション1に誤って衝突する不具合の発生を抑制できる。但し、矯正具4の下端からの高さ位置は、1,500mmに限らず、1,000~2,000mmの範囲に設定してあれば上述した効果を得ることはできる。
【0035】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
【0036】
すなわち、本発明は複数枚のガラス板を幅方向に隣設してなるガラスパーティション全般に適用できる。ところで、ガラスパーティション付近で火災が発生した際にガラス板が熱せられることにより生じるガラス板の反り、及びこのガラス板の反りにより生じるガラス板間の大きな隙間の発生を矯正具より抑制し、炎がガラスパーティションを越えてガラスパーティションにより区切られる区画内に侵入することを抑制することができる。この場合、幅方向両端部すなわち左右両端部に設けられたガラス板と当該ガラス板に隣接するガラス板との間の隙間に複数の矯正具を上下に離間させてそれぞれ設けるとよい。防火性能を得るための矯正具間の距離の目安として、例えば1,600mmが挙げられる。また、ガラス板が防火・耐熱性のものであれば、さらなる防火性能を得ることができる。
【0037】
また、矯正具の第1及び第2の外装体を連結する連結体は、上述した実施形態のようなものに限らず、矯正具が相互に別体をなす第1及び第2の外装体を連結する連結体を備えているものであれば、施工順序の制約を少なくし、組立作業の自由度の向上を図ることができる。
【0038】
このような連結体を有する矯正具の一例として、
図8に示すようなものが挙げられる。このものは、連結体43が、第1の外装体41の内面41aに突設され隣り合うガラス板2A、2Bの突合せ端面2e間の隙間3sに挿入される挿入板431と、第2の外装体42の内面42aに突設され前記挿入板431に設けられたリベット挿通孔436に挿入されるリベット435とを備えた矯正具B4である。この矯正具B4は、リベット435の先端部435aをかしめることにより第1及び第2の外装具41、42をガラス板2A、2Bの一面2c及び他面2dにそれぞれ添接した状態に保持させるようになっている。
【0039】
他の例として、
図9に示すようなものが挙げられる。このものは、連結体43が、第1の外装体41の内面41aに突設され隣り合うガラス板2A、2Bの突合せ端面2e間の隙間s2に挿入される挿入板431と、第2の外装体42の内面42aに突設され前記挿入板431に設けられた係合孔438内の係止溝439に係合可能な係止爪437aを先端部に有する係合突起437とを備えた矯正具C4である。この矯正具C4の取り付けは、先に挿入板431を隙間3sに挿入し、しかる後に係合突起438を係合孔436内に挿入することにより行うようにしている。この係合突起438を係合孔436内に挿入する工程中に、係合突起438の先端部が弾性変形して内側に退避し、係合突起438の係止爪439が係止溝437に対応する箇所に達したときに係合突起438の先端部が弾性復帰して係止爪439が係止溝437と係合するようになっている。
【0040】
図8及び
図9は、各実施形態における2枚のガラス板2の突合せ領域3を拡大して示すもので、
図8(a)及び
図9(a)はいずれも
図4(a)に対応し、
図8(b)及び
図9(b)はいずれも
図4(b)に対応する。
図8及び
図9に示す実施形態において、その他の部位は
図1~
図7を参照しつつ前述した実施形態におけるものと同一であるので、同一の符号を伏して説明を省略する。
【0041】
これらの矯正具B4、C4を備えたガラスパーティションの構築においても、充填材を充填する工程と隙間3sに矯正具B4、C4の連結体を配置する工程のどちらを先に行ってもよいので、施工順序の制約を少なくし、組立作業の自由度の向上を図ることができる。
【0042】
連結体及び第1、第2の外装体が一体に構成された矯正具を採用してももちろんよい。一例として、
図10に示すようなものが挙げられる。このものは、矩形板状をなす第1の外装体41と、この第1の外装体41と平行な矩形板状をなす第2の外装体42と、これら第1及び第2の外装体41、42を連結する連結体43とを一体に備えた断面形状がH字形である矯正具D4である。
【0043】
このような矯正具D4を備えたガラスパーティションは、複数のガラス板2A、2Bを隙間3sを介して突き合せる工程と、ガラス板2A、2Bを突き合わせる際に、その隙間3sを利用して矯正具D4をガラス板2A、2B間に介在させる工程と、矯正具D4を所要の位置に保持しつつ隙間3sに充填材を充填する工程とを経ることによって構築される。
【0044】
図10は、この
参考例における2枚のガラス板2の突合せ領域3を拡大して示すもので、
図10(a)は
図4(a)に対応し、
図10(b)は
図4(b)に対応する。
図10に示す
参考例において、その他の部位は
図1~
図7を参照しつつ前述した実施形態におけるものと同一であるので、同一の符号を伏して説明を省略する。
【0045】
このような矯正具D4を利用すれば、矯正具D4の全体が一体に形成されているので部品点数や組み立て工数の削減を図ることができるだけでなく、当該矯正具D4の製造も容易に行うことができる。すなわち、このような矯正具D4であれば、長尺な断面H字形の押し出し材を順次所要箇所で切断することにより簡単に作ることができる。
【0046】
前述した実施形態では、透光性がよいというガラスパーティションとしての視覚的な基本性能を損なわないようにしつつガラスパーティションにより仕切られる空間内の気密性や遮音性をも確保すべく、隣り合うガラス板の突合せ端面間に連続した隙間にシリコーンゴム系のコーキング材を充填しているが、コーキング材の材質は任意のものを採用してよく、さらにコーキング材以外の充填材を充填してもよい。
【0047】
矯正具の個数や配置も任意に設定してよい。但し、前述した実施形態のように、人が前記ガラス板に誤って衝突するのを防止するための目印となり得る位置に矯正具が配されていれば、ガラスパーティション付近を通行する者にガラスパーティションの存在を認識させることができるので、当該通行者がガラスパーティションに誤って衝突する不具合の発生を抑制することができる。
【0048】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。
【符号の説明】
【0049】
1…ガラスパーティション
2(2A、2B)…ガラス板
2c…(ガラス板の)一面
2d…(ガラス板の)他面
2e…突合せ端面
3…突合せ領域
3s…隙間
4…矯正具
41…第1の外装体
41a…(第1の外装体の)内面
42…第2の外装体
42a…(第2の外装体の)内面
43…連結体
431…挿入板
432…ねじ軸
433…ねじ孔
W…幅方向
H…上下方向
D…厚み方向