(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】情報処理装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 1/26 20060101AFI20240227BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240227BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240227BHJP
B41J 29/38 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
G06F1/26 303
H04N1/00 885
H02J7/00 302A
B41J29/38 101
B41J29/38 104
(21)【出願番号】P 2020014903
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松島 弘樹
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-024302(JP,A)
【文献】特開2015-226389(JP,A)
【文献】特開2009-159443(JP,A)
【文献】特開2001-238004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/26-1/30
H04N1/00
B41J29/38
H02J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電可能な補助電源から電力の供給を受けることが可能な情報処理装置であって、
電源スイッチがON状態にあるか否かを示すスイッチ情報を、前記補助電源が備える保持手段から取得する取得手段と、
前記補助電源とは異なる第1の外部電源が前記情報処理装置に接続されているかを判定する第1の判定手段と、
前記第1の判定手段が、前記補助電源とは異なる第1の外部電源が前記情報処理装置に接続されていないと判定した場合に、前記取得手段が取得した前記スイッチ情報に基づいて、ユーザからの指示に基づく処理を制限するか否かの判定を行う
第2の判定手段と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記電源スイッチの押下を検知する検知手段と、
前記補助電源とは異なる第1の外部電源から電力の供給を受けていて、かつ、前記電源スイッチがON状態になった場合、ユーザからの指示に基づく処理を制限しない状態で前記情報処理装置を動作させる制御手段を更に備え、
前記
第2の判定手段は、前記補助電源から電力の供給を受けている場合には、前記スイッチ情報に基づいて前記判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記補助電源から電力の供給を受けている時間を計測する計測手段を更に備え、
前記検知手段が前記電源スイッチの押下を検知しない状態において、
前記計測手段が計測した値が所定値よりも大きくなった場合、ユーザからの指示に基づく処理が制限され、
前記計測した値が前記所定値以下である場合、前記
第2の判定手段は前記スイッチ情報に基づいて前記判定を行うことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第1の外部電源と前記補助電源の両方が接続されているとき、前記第1の外部電源から前記補助電源への充電を行うことを特徴とする請求項2または3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1の外部電源はAC電源であることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記
第2の判定手段が前記スイッチ情報に基づいてユーザからの指示に基づく処理を制限すると判定した場合、前記ユーザからの指示に基づく処理を制限した後、前記第1の外部電源とは異なる第2の外部電源から前記補助電源への充電を行うことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第2の外部電源は、USBで接続され、前記情報処理装置が印刷処理を実行するための画像データを生成するホストデバイスであることを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記補助電源はリチウムイオンバッテリであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記電源スイッチは、押下されることによって電気信号を発信するタクトスイッチであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記取得手段が取得した前記スイッチ情報が前記電源スイッチがOFF状態を示す場合、ユーザからの指示に基づく処理が制限されることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
ユーザからの指示に基づく処理は、画像データに基づく印刷処理であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記情報処理装置の本体保持手段に電源スイッチがON状態にあることを示すスイッチ情報が保持されている場合、前記
第2の判定手段は、前記取得手段が取得した前記スイッチ情報に基づいてユーザからの指示に基づく処理を制限するか否かを判定することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記補助電源を更に備えることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
充電可能な補助電源から電力の供給を受けることが可能な情報処理装置の制御方法であって、
電源スイッチがON状態にあるか否かを示すスイッチ情報を、前記補助電源が備える保持手段から取得する取得工程と、
前記補助電源とは異なる第1の外部電源が前記情報処理装置に接続されているかを判定する第1の判定工程と、
前記第1の判定工程において、前記補助電源とは異なる第1の外部電源が前記情報処理装置に接続されていないと判定された場合に、前記取得工程によって取得した前記スイッチ情報に基づいて、ユーザからの指示に基づく処理を制限するか否かの判定を行う
第2の判定工程と
を有することを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電可能な補助電源で動作可能な情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理装置においては、ACアダプタが接続されていないときに、バッテリーのような補助電源によって動作可能なものがある。特許文献1には、他機器からのデータが入力されている状態で電源スイッチがOFFされた場合に、電源の供給元を外部電源から補助電源に切り変える装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補助電源が使用されている状態においては、ACアダプタが電源として使用される状態に比べ、ノイズや装置の誤動作が発生するおそれがある。しかしながら、特許文献1には、電源スイッチの切り替えの誤検知についての着眼はなく、誤検知を抑制する方法についての記載もない。このような状況において、ノイズや装置の誤動作のために電源スイッチの切り替えが誤検知された場合には、当該切り替えに伴う制御を適切に行うことができなくなってしまう。
【0005】
すなわち、従来の情報処理装置では、補助電源から電力が供給される状態において、電源スイッチの切り替えに伴う動作を適切に行うことができない場合があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。よって、その目的とするところは、補助電源から電力が供給される状態において、電源スイッチの切り替えに伴う動作を適切に行うことが可能な情報処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために本発明は、充電可能な補助電源から電力の供給を受けることが可能な情報処理装置であって、電源スイッチがON状態にあるか否かを示すスイッチ情報を、前記補助電源が備える保持手段から取得する取得手段と、前記補助電源とは異なる第1の外部電源が前記情報処理装置に接続されているかを判定する第1の判定手段と、前記第1の判定手段が、前記補助電源とは異なる第1の外部電源が前記情報処理装置に接続されていないと判定した場合に、前記取得手段が取得した前記スイッチ情報に基づいて、ユーザからの指示に基づく処理を制限するか否かの判定を行う第2の判定手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、補助電源から電力が供給される情報処理装置において、電源スイッチのON/OFFに伴う動作を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】プリント動作を行う際のプリンタ本体を示すである。
【
図3】第1の実施形態におけるプリンタの制御の構成を示すブロック図である。
【
図4】第1の実施形態における制御処理を説明するためのフローチャートである。
【
図5】第2の実施形態におけるプリンタの制御の構成を示すブロック図である。
【
図6】第2の実施形態における制御処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の情報処理装置として適用可能な携帯型のインクジェットプリンタ1(以下、単に、「プリンタ、画像記録装置」ともいう)の外観斜視図である。プリンタ1は、プリンタ本体10と、プリンタ本体10の補助電源となるバッテリーモジュール20とを含んでいる。
【0011】
プリンタ本体10は、上ケース11と、下ケース12と、給紙カバー13と、排紙口カバー14とによって構成される一体シェル構造を呈する。据え置き時や携帯時のようにプリンタ1として使用しない時は、プリンタ本体10は
図1のように縦置きすることが可能である。
【0012】
給紙カバー13は、プリンタ本体10より開くことにより、プリント時において紙等のシートを記録部に供給するための供給トレイとなる。排紙口カバー14は、プリンタ本体10より開くことにより、プリント時において記録後のシートを排出するための排紙トレイとなる。
【0013】
プリンタ本体10の側面には、インターフェース(I/F)コネクタ15と、直流電源入力用のDCinジャック16とが設けられている。I/Fコネクタ15は、USBケーブルを接続するためのコネクタである。DCinジャック16は、AC電源から電力供給を受ける場合に使用するACアダプタケーブルの差し込み口である。また、
図1では示していないが、プリンタ本体10の側面には、電源スイッチ80(
図3参照)などユーザが操作可能な操作部が配されている。なお、本実形態では、AC電源を外部電源と呼ぶことがある。
【0014】
バッテリーモジュール20は、メインケース21と、カバーケース22と、バッテリー蓋23とを含む。メインケース21には、充電可能な電池(例えばリチウムイオン電池)を内蔵したバッテリーパック54が収容可能になっている。バッテリーパック54は、バッテリー蓋23が外された開口を介して、メインケース21内に着脱することができる。
【0015】
バッテリーモジュール20はプリンタ本体10に対し、
図1の矢印A方向に着脱可能に接続することができる。バッテリーモジュール20において、プリンタ本体10との接続面には、プリンタ本体10に電気的に接続するための本体用コネクタ24と、機械的に接続するための固定ビス25、26とが配されている。
【0016】
バッテリーパック54の充電およびバッテリーパック54を電源としたプリンタ本体10の動作は、バッテリーモジュール20がプリンタ本体10に接続された状態で行われる。バッテリーパック54の充電は、AC電源からDCinジャック16及び本体用コネクタ24を経由して行われる。なお、バッテリーモジュール20の天面には、バッテリーの充電状態を示す充電表示部27が配されている。
【0017】
図2は、プリント動作を行う際のプリンタ本体10を示す。プリント動作を行う場合、プリンタ本体10は、給紙カバー13及び排紙口カバー14が外される。プリンタ本体10は、図のように横置きに設置されてもよいし縦置きに設置されてもよい。
【0018】
プリンタ本体10は、搬送ローラ31、ガイドレール33、キャリッジ34、カートリッジ35、キャリッジベルト43、キャリッジモータ44、搬送モータ48、フレキシブルケーブル49、およびプラテン36等を備える。
【0019】
搬送ローラ31は、搬送モータ48を駆動源とし、シートPを図の搬送方向に搬送する。キャリッジ34は、キャリッジモータ44を駆動源とし、ガイドレール33に沿って図の主走査方向に往復移動する。キャリッジ34に搭載されるカートリッジ35は、インクを収容するインクタンクと、このインクタンクから供給されたインクを吐出可能な記録ヘッドとが一定的に構成されたものである。キャリッジ34が主走査方向に移動しながら、記録ヘッドが記録データに従ってインクを吐出することにより、プラテン36に支持されたシートPに1バンド分の画像が記録される。そして、このような1バンド分の記録走査と、当該1バンド分に相当する距離の搬送動作とを交互に繰り返すことにより、シートPに段階的に画像が記録されていく。この際、記録データは、キャリッジ34の移動に追従可能なフレキシブルケーブル49を介して記録ヘッドに供給される。
【0020】
なお、ここではインクタンクと記録ヘッドとが一体的に構成されたカートリッジ35を示したが、これらインクタンクと記録ヘッドとは互いに分離可能であってもよい。
【0021】
図3は、本実施形態におけるプリンタ1の制御の構成を示すブロック図である。ASIC(Application Specific Integrated Circuit)50は、プリント動作や装置に供給するべき電源の切り替えなど、プリンタ本体10に関する全体を制御する。ヘッドユニット51は、ASIC50の指示の下、記録ヘッドの駆動を制御する。エンジンユニット40は、ASIC50の指示の下、キャリッジ34の移動やシートPの搬送を制御する。
【0022】
ホストPC52で生成された、プリンタ1で記録するための画像データや制御コマンドは、I/Fコネクタ15を介してASIC50に供給される。なお、本実施形態では、画像データと制御コマンドを含むコマンドをプリンタコマンドと呼ぶ。ASIC50のCPU58は、I/F回路55が受信した画像データや制御コマンドを解析する。画像処理部59は、CPU58の解析結果に基づいて画像データに対して所定の画像処理を施す。画像データに画像処理が施されることで生成される記録データは画像メモリ60に保存される。データ送信部61は、CPU58の指示の下、画像メモリ60に保存された記録データをヘッドユニット51に送信する。
【0023】
ヘッドユニット51において、データ受信部62が受信した記録データは、シフトレジスタ63によってシリアルデータからパラレルデータに変換され、データラッチ64にて一時記憶され、ヒート回路65に転送される。ヒート回路65は、データラッチ64より受信した記録データや、電圧印加時間などの制御データに基づき、ヒート電圧SW68から供給される駆動電圧VHを用いて、記録ヘッドを駆動する。これにより、記録ヘッドからインクが吐出させる。
【0024】
一方、エンジンユニット40のモータ制御部41は、上記記録ヘッドの吐出動作に合わせてキャリッジ34が移動するように、キャリッジモータ44を駆動する。また、このような1回分の記録走査が終了した後は、搬送モータ48を駆動し、シートPを所定量搬送する。
【0025】
バッテリーパック54は、電源となるLiB(リチウムイオンバッテリ )71、保護IC72、制御部となるBMU(バッテリー制御ユニット)73、充電IC74、放電SW75を含んでいる。プリンタ本体10にACアダプタ53が接続されている時、バッテリーパック54は、ACアダプタ53より供給される電力をLiB71に充電することができる。また、プリンタ本体10にACアダプタ53が接続されていない時、バッテリーパック54は、LiB71に蓄えられた電力を放電し、プリンタ本体10に供給することができる。
【0026】
バッテリーパック54において、保護IC72はLiB71の過放電、過充電、過電流等の異常動作を保護するための機能を備えたICである。BMU73は、ASIC50からのコマンドに従って、LiB71の放電や充電などの制御を行う。この際、ASIC50とBMU73との間の通信は、ASIC50内のバッテリーI/F78を介して行われる。本実施形態では、通信方式としてUART (Universal Asynchronous Receiver Transmitter)方式を採用するものとする。充電を行う際、充電IC74は、BMU73の指示に従って、ACアダプタ53から供給される充電電流をLiB71へ供給したり、充電電流のON/OFF制御を行ったりする。BMU73の指示により充電電流のONが充電IC74に設定された場合、ACアダプタ53から供給される充電電流がLiB71へ供給される。一方、BMU73の指示により充電電流のOFFが充電IC74に設定された場合、ACアダプタ53から供給される充電電流のLiB71へ供給が停止される。なお、充電電流のON/OFF制御のタイミングの一例を説明する。例えば、プリンタ本体が印刷動作中である場合、BMU73は充電電流のOFFを充電IC74に設定する。一方、プリンタ本体が印刷動作中でない場合、BMU73は充電電流のONを充電IC74に設定する。放電を行う際、放電SW75は、BMU73の指示に従って、LiB71からの放電電流のON/OFF制御を行う。BMU73の指示により放電SWにONが設定された場合、LiB71に保持される電力が放電される。すなわちLiB71に保持される電力が放電SW75を介してプリンタ本体10に供給される。一方、BMU73の指示により放電SWにOFFが設定された場合、LiB71に保持される電力の放電が停止される。すなわちLiB71に保持される電力のプリンタ本体10への供給が停止される。なお、放電電流のON/OFF制御のタイミングの一例を説明する。例えば、プリンタ本体が印刷動作中である場合、BMU73は放電電流のONを放電SW75に設定する。また、例えば、プリンタ本体の状態が後述するシステム起動状態に遷移した場合、BMU73は放電電流のONを放電SW75に設定する。一方、プリンタ本体の電源スイッチがオフとなった場合、BMU73は放電電流のOFFを放電SW75に設定する。また、例えば、プリンタ本体のシステムがシャットダウンされた場合、BMU73は放電電流のOFFを放電SW75に設定する。
【0027】
本実施形態のプリンタ1は、ACアダプタ53からDCinジャック16を介して供給される電力(出力電圧VDC)で動作することも可能であるし、バッテリーパック54から供給される電力(出力電圧VBAT)で動作することも可能である。電源切替回路66は、これら電源の供給元を選択的に切り替えるための回路である。ACアダプタ53とバッテリーパック54の両方が接続されている場合、電源切替回路66は、ACアダプタ53から得られる電圧VDCで電流を昇圧回路67に供給する。一方、ACアダプタ53が接続されておらずバッテリーパック54が接続されている場合、電源切替回路66は、バッテリーパック54から得られる電圧VBATで電流を昇圧回路67に供給する。カウンタ90は、バッテリーパック54を電源として動作している時間をカウントする。
【0028】
昇圧回路67は、電源切替回路66から得られた電圧を、ヘッドユニット51の駆動に適した電圧VMに昇圧する。ヒート電圧SW68は、昇圧回路67より得られる電圧VMのON/OFF(印加又は非印加)を、ヒート電圧制御部69の指示に従って切り替え、駆動電圧VHの電流をヘッドユニット51に供給する。一方、降圧回路70は、昇圧回路67より得られる電圧VMをASIC50及びヘッドユニット51のロジック制御に適した制御電圧VDDに降圧し、降圧された電流をASIC50及びヘッドユニット51に供給する。
【0029】
電源スイッチ80は、プリンタ1の起動(ON)とシャットダウン(OFF)の指示をユーザより受け付けるためのタクトスイッチである。ユーザよって電源スイッチ80が押下されると、電気信号が発信し、ASIC50及びバッテリーパック54に送信される。ASIC50のCPU58及びバッテリーパック54のBMU73は、電源スイッチ80がON状態にあるかOFF状態にあるかの情報を更新可能に保持するための、RAM、ROM、レジスタなどで構成可能な保持部を備える。ASIC50は、保持部の情報を検知することにより、プリンタ1がON状態にあるかOFF状態にあるかを認識することができる。なお、区別のために、CPU58が備える保持部を本体保持部と呼ぶこともある。例えば、プリンタ本体の電源スイッチ80がオフ状態である場合、上述した保持部にはOFF状態を示す情報が保持される。この状況でユーザが電源スイッチ80を操作した場合、CPU58およびBMU73は、電圧値が所定値より低いロー状態の電気信号を受信する。この電気信号が受信された場合、CPU58およびBMU73は、保持部に保持されるOFF状態を示す情報を、ON状態を示す情報に更新する。また、保持部にON状態を示す情報が保持された状況でユーザが電源スイッチ80を操作した場合、CPU58およびBMU73は、電圧値が所定値より低いロー状態の電気信号を受信する。この電気信号が受信された場合、CPU58およびBMU73は、保持部に保持されるON状態を示す情報を、OFF状態を示す情報に更新する。
【0030】
図4は、プリンタ本体10に電力が供給された際に、ASIC50のCPU58が実行する一連の処理を説明するためのフローチャートである。本処理が開始されると、CPU58は、まずS101において、DCinジャック16にACアダプタ53が接続されているかを判定する。例えば、ACアダプタ53が接続されている場合、ACアダプタ53から供給される電流がプリンタ本体10で検知され、検知信号が生成される。CPU58は、この検知信号を受信した場合、S101においてYesと判定する。一方、CPU58は、この検知信号を受信しない場合、S101においてNoと判定する。
【0031】
ACアダプタ53が接続されていると判定した場合、CPU58は、カウンタ90をリセットする(S102)。更にCPU58は、S103において、電源スイッチ80がONされたか否かを判定する。このようなS101~S103の工程は、ACアダプタ53が接続され且つ電源スイッチ80がOFFの状態にあるときに繰り返される。
【0032】
S103において電源スイッチ80がONであると判定すると、CPU58はS104に進み、ACアダプタ53を電源として、プリンタ本体10の状態をシステム起動状態に遷移させる。ここでシステム起動状態とは、ホストPC52からのプリントコマンドを受信した際にプリンタ1としての動作が開始でき、不図示の操作部などからユーザ操作を受け付けることができる状態を意味する。つまり、システム起動状態とは、ユーザからの指示に基づく処理を実行可能な状態ともいえる。
【0033】
一方、S101において、DCinジャック16にACアダプタ53が接続されていないと判定した場合、CPU58はS105に進み、カウンタ90によるカウント処理を開始する。
【0034】
S106において、CPU58は、カウンタ90のカウント値が所定値以下であるか否かを判定する。カウント値が所定置以下である場合、CPU58はS107に進み、電源スイッチ80がONされたか否かを判定する。
【0035】
S107において、電源スイッチ80がONされたと判定すると、CPU58はS108に進み、バッテリーパック54のBMU73が保持する、電源スイッチ80がON状態にあるかOFF状態にあるかを示すスイッチ情報を参照し取得する。更にS109において、CPU58は、S108で取得したスイッチ情報がONであるか否かを判定する。スイッチ情報がONであると判定した場合、CPU58はS110に進み、プリンタ本体10の状態をシステム起動状態に遷移させ、本処理を終了する。一方、スイッチ情報がOFFであると判定した場合、CPU58はS111に進み、プリンタ本体10のシステムをシャットダウンする。なお、本実施形態においてシステムがシャットダウンされた場合、CPU58は、電源スイッチ80に対するユーザ操作以外のユーザ指示を受け付けない。例えば、システムがシャットダウンされた状態において、プリンタ本体10は、ホストPC52からプリントコマンドを受信しない(またはプリントコマンドに基づく処理を実行しない)。また、システムがシャットダウンされた状態において、プリンタ本体10は、操作部からのユーザ操作を受け付けない(または操作部に画面を表示しない)。つまり、システムがシャットダウンされた状態は、電源スイッチ80に対するユーザ操作以外のユーザ指示を受け付けない状態に相当するため、例えば、ユーザ指示に基づく処理が制限された状態ともいえる。
【0036】
ここで、
図4の処理がS109に進むということは、S107において電源スイッチ80のONが検出されたことになる。しかしながら、CPU58は、電力供給された直後の起動時においては電源スイッチ80から送信される電気信号を監視できない。つまり、CPU58は、電力供給された直後の起動時においては電源スイッチ80のON/OFFを誤検知することがある。一方、BMU73は、Lib71から供給される電力により基本的には常に動作している。そのため、BMU73は電源スイッチ80のON/OFFを正確に検知することができる。そのため、S109でBMU73のスイッチ情報を再確認することにより、CPU58は、電源スイッチのON/OFF状態を正確に判断でき、システムの制御をより適切に行うことが可能となる。
【0037】
一方、S106において、カウンタ90のカウント値が所定値より大きいと判定した場合、CPU58はS112に進み、プリンタ本体10のシステムをシャットダウンする。カウント値と比較するための所定値は、ACアダプタ53が接続されないまま、バッテリーパック54から電力が供給される状態で放置されていることを許容できる時間であり、例えば、3分や6分などの値を設定することができる。このような制御により、バッテリーパック54が電源とされる状態で放置され、必要以上の時間が経過して、バッテリーパック54の充電容量が低下してしまうのを防ぐことができる。
【0038】
S111又はS112でシステムをシャットダウンする際、CPU58は、システムのシャットダウン情報を、バッテリーI/F78を介してバッテリーパック54のBMU73に送信する。シャットダウン情報を受信したBMU73は、放電SW75を制御し、LiB71からの電源VBATの供給を停止する。以上で本処理は終了する。
【0039】
なお、
図4の処理では、S107の判定処理においてYesと判定された場合にS108を行っている。このS107の処理がS108の前に行われることで、CPU58は、必要なタイミングに限りBMU73のスイッチ情報を参照する処理を行う。その結果、S108を無駄に行うことによるLiB71の電力の浪費を軽減できる。しかしながら、S107の判定が省略されて、S106の次にS108が実行されても構わない。
【0040】
なお、上記では、カウンタのカウント値は、バッテリーパック54からの電力を消費している時間として説明したが、カウント値は、例えばS101、S105~S107の工程を繰り返す回数としてもよい。この場合、S106においてカウント値と比較するための所定値は、例えば、5回や10回などの回数値を設定すればよい。いずれにせよ、バッテリーパック54からの電力を消費している時間に関する情報が計測できればよい。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、バッテリーパック54のBMU73が保持するスイッチ情報を参照することにより、適切なシステムの制御を行うことが可能となる。また、上記保持部を設けることにより、プリンタ本体10にラッチ回路などを持つ必要がなくなり、プリンタ本体10のコストおよび基板面積を削減することができる。
【0042】
(第2の実施形態)
本実施形態においても、第1の実施形態と同様、
図1及び
図2で説明したプリンタ1を用いる。但し、本実施形態のバッテリーパック54の充電は、AC電源からDCinジャック16を経由した充電と、ホストPC52に接続するUSBからI/Fコネクタ15を経由したバスパワー充電とが可能になっている。なお、本実施形態では、AC電源およびホストPC52を外部電源と呼ぶことがある。
【0043】
図5は、本実施形態におけるプリンタ1の制御の構成を示すブロック図である。以下
図3を用いて説明した第1の実施形態と異なる点についてのみ説明する。ホストPC52で生成された、プリンタ1で記録するための画像データや制御コマンドは、I/Fコネクタ15及びバスSW56を介してASIC50に供給される。バスSW56は、ASIC50内のバスSW制御部57の指示に従って、USBのD+D-ピンの接続先を、ASIC50またはバッテリーパック54のどちらかに設定することができる。なお、USBがプリンタ本体に接続された場合、バスSW制御部57はUSBのD+D-ピンの接続先としてバッテリーパック54を指定する。そして、後述するBCS判定が終わった場合、バスSW制御部57はUSBのD+D-ピンの接続先としてASIC50を指定する。
【0044】
バッテリーパック54において、本実施形態の充電IC74は、ACアダプタ53による電圧VDCとUSBを介した電圧VBUSの両電源からLiB71への充電を行うことができる。USBのD+D-ピンが、バスSW56によってバッテリーパック54に接続されると、充電IC74は、供給元のホストPC52等のホストデバイスに合わせた充電電流の判定を行う。
【0045】
この際、本実施形態では、USB-BC(USB Battery Charge)規格に準じた判定(以下BCS判定と称す)を採用する。BCS判定は、電力供給装置(本実施形態ではホストPC)と記録装置本体10との間のUSB接続が、いずれのプロトコルが用いられる接続なのかを判定するための処理である。充電IC74のBCS判定結果は、SDP(Standard Downstream Port)、CDP(Charging Downstream Port)、DCP(Dedicated Charging Port)の3種類がある。判定結果がSDPである場合、充電IC74は、エニュメレーション処理完了後に、500mAの充電を許可する。一方、判定結果がCDP又はDCPの場合、充電IC74は1.5Aの充電を許可する。SDPは、ホストPC52のチャージポート以外のポートを介して、ホストPC52と記録装置本体10との間でUSB接続が行われる場合に用いられるプロトコルである。SDPが用いられる場合、ホストPC52と記録装置本体10との間でエニュメレーション処理が完了するまでは、100mAに相当する電力しか記録装置本体10に対する供給が許可されない。そして、エニュメレーション処理が完了した後に、100mAより大きい電流(例えば500mA)に相当する電力の記録装置本体10に対する供給が許可される。CDPは、ホストPC52のチャージポートを介して、ホストPC52と記録装置本体10との間でUSB接続が行われる場合に用いられるプロトコルである。CDPが用いられる場合、ホストPC52と記録装置本体10との間でエニュメレーション処理が完了する前に、十分大きな電流(例えば、1.5A)に相当する電力の供給が許可される。DCPは、モバイルバッテリー等の充電用装置と記録装置本体10との間でUSB接続が行われる場合に用いられるプロトコルである。DCPが用いられる場合、モバイルバッテリーと記録装置本体10との間でエニュメレーション処理は行われない。そして、エニュメレーション処理が行われることなく、十分大きな電流(例えば、1.5A)に相当する電力の供給が許可される。
【0046】
充電IC74がBCS判定を行うタイミングは、バスSW制御部57によりUSBのD+D-ピンの接続先としてバッテリーパック54が指定された時である。上述した通りBCS判定が終わった場合、バスSW制御部57はUSBのD+D-ピンの接続先としてASIC50を指定する。ここでUSBのD+D-ピンの接続先としてASIC50が指定された場合、CPU58は、バッテリーパック54に対してBCS判定の結果を要求する。この要求を受けることで、充電IC74により実行されたBCS判定の結果が、BMU73及びバッテリーI/F78を介してASIC50に提供される。
【0047】
VBUS検知回路76は、プリンタ1のI/Fコネクタ15にホストPCやホストデバイスが接続されたことを検知するための回路である。VBUS検知回路76は、検知した結果を、BMU73に提供する。
【0048】
ASIC50には、ホストPC52が接続された際に、ホストPC52とエニュメレーション処理を行うためのエニュメレーション処理部77が搭載されている。ASIC50は、バッテリーパック54から取得されたBCS判定の結果がSDPまたはCDPである場合、エニュメレーション処理を行う。なお、CDPであると判定された場合、ASIC50は、プリンタ本体10を認識させる処理のみを行って、電流値を決定する処理を行わなくても良い。一方、ASIC50は、バッテリーパック54から取得されたBCS判定の結果がDCPである場合、エニュメレーション処理を行わない。なお、ASIC50は、バッテリーパック54から取得されたBCS判定の結果がDCPである場合、プリンタ本体10を認識させる処理のみを行って、電流値を決定する処理を行わなくても良い。エニュメレーション処理部77による処理の結果は、バッテリーI/F78を介してバッテリーパック54の、BMU73に送信される。BMU73は、受信したエニュメレーションの処理結果及びBCS判定の結果に基づいて、充電IC74に対して充電電流の変更を指示する。なお、エニュメレーション処理は、例えば、バッテリーパック54から供給される電力を用いてASIC50により実行される。
【0049】
図6は、プリンタ本体10に電力が供給された際に、本実施形態のCPU58が実行する一連の処理を説明するためのフローチャートである。本フローチャートにおいて、S201~S210は、第1の実施形態で説明した
図4のS101~S110と同じ内容である。よって、ここでの説明は割愛する。なお、プリンタ本体10は、ホストPC52に接続するUSBからI/Fコネクタ15を経由したバスパワー充電が実行されている最中において、印刷処理を行わずに充電処理を優先的に行うことで、充電効率を向上する。
【0050】
S206において、カウンタ90のカウント値が所定置以下であると判定した場合、又はS209においてBMU73のスイッチ情報がOFFであると判定した場合、CPU58はS211に進み、I/Fコネクタ15に接続があるか否かを判定する。I/Fコネクタ15に接続がある場合、CPU58はS212に進み、充電モードでシステムをシャットダウンする。具体的には、エニュメレーション処理部77による処理の結果をBMU73に通知し、バッテリーパック54において電源VBUSからの充電を行わせた状態で、プリンタ本体10のシステムをシャットダウンする。このような充電モードでのシャットダウン状態とは、シャットダウンした後においても、電源スイッチ80がONされたりホストPC52からプリントコマンドが送信されたりした場合に、システムを直ちに起動可能とする状態である。なお、この状態も電源スイッチ80がONされたりホストPC52からプリントコマンドが送信されてから起動されるまでの間、ユーザの指示に基づく処理が制限される。そのため、充電モードでのシャットダウンも、ユーザ指示に基づく処理が制限された状態ともいえる。但し、このような状態は特に限定されるものではない。電源スイッチ80がONされた場合にのみに起動され、プリントコマンドは受け付けない状態としてもよい。なお、充電モードでシャットダウンされた場合、ホストPCからの充電電流がUSBを介してLiB71に供給され、充電が行われる。このように充電モードでシャットダウンすることで、ASIC50によるLiB71の電力の使用が軽減されるため、充電モードのシャットダウン中に行われるバスパワー充電が効率的に実行される。
【0051】
一方、S211において、I/Fコネクタ15に接続がないと判定すると、CPU58はS213に進み、プリンタ本体10のシステムをシャットダウンする。このような制御により、バッテリーパック54が電源とされる状態で放置され、必要以上の時間が経過して、バッテリーパック54の充電容量が低下してしまうのを防ぐことができる。
【0052】
S112でシステムをシャットダウンする際、CPU58は、システムのシャットダウン情報を、バッテリーI/F78を介してバッテリーパック54のBMU73に送信する。シャットダウン情報を受信したBMU73は、放電SW75を制御し、LiB71からの電源VBATの供給を停止する。以上で本処理は終了する。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、I/Fコネクタ15に接続がありエニュメレーション処理を行った場合でも、適切なシステムの制御を行うことが可能となる。
【0054】
(その他の実施形態)
上述した実施形態では、インクジェットプリンタを例に説明した。しかし、バッテリーパックから供給される電力を使って動作する印刷装置であれば、他の方式の印刷装置に上述した処理が適用されても良い。例えば、電子写真方式の印刷装置で上述した処理が実行されても良い。
【0055】
また、上述した実施形態では、インクジェットプリンタを例に説明した。しかし、バッテリーパックから供給される電力を使って動作する装置であれば、他の装置に上述した処理が適用されても良い。例えば、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、スキャナなどで上述した処理が実行されても良い。
【0056】
本発明は、上記実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 プリンタ(情報処理装置)
53 ACアダプタ
54 バッテリーパック
58 CPU
73 BMU(バッテリー制御ユニット)
90 電源スイッチ