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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】情報付与装置、判定システム
(51)【国際特許分類】
   B21D 26/033 20110101AFI20240227BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B21D26/033
G05B19/418 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020034940
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021140236
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正之
(72)【発明者】
【氏名】上野 紀条
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-324209(JP,A)
【文献】特開2001-205423(JP,A)
【文献】特開2019-49769(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187383(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
B21D 26/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型を有する成形装置で成形された金属パイプ成形物に対して情報を付与する情報付与装置であって、
前記成形装置で金属パイプ材料を加熱・膨張成形した後の前記金属パイプ成形物に前記情報を付与し、
前記情報は、少なくとも前記金属パイプ成形物の成形条件を取得可能な情報である、情報付与装置。
【請求項2】
前記情報は、前記成形条件を直接的に読み取り可能な態様で示される、請求項1に記載の情報付与装置。
【請求項3】
前記情報は、前記成形条件と紐付けられたデータベースと照会可能な態様で示される、請求項1に記載の情報付与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報付与装置、及び判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型で成形物を成形する成形装置が知られている。例えば、下記特許文献1には、互いに対になる下型及び上型を有する成形金型と、成形金型の間に保持された金属パイプ材料内に気体を供給する気体供給部と、通電加熱によって当該金属パイプ材料を加熱する加熱部と、を備える成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-220141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、金型成形物に対しては、トレーサビリティを確保するためにマーキングにより情報を付与される場合がある。例えば、成形物に対する情報付与の方法として、成形前に予めマーキングを行っておく方法や、成形装置での成形と同時にマーキングを行うなどの方法があった。しかし、これらのマーキングの方法では、成形にともなってマークが消えたり不鮮明になる可能性があり、トレーサビリティが確保できない場合があった。また、情報としても、成形物のロットなどの単純な情報だけが含まれていた。しかしながら、例えば、成形条件が複雑になる場合には、後の検査工程で成形物に問題があった場合などに、当該成形物に対する成形条件を把握する必要などが生じる。しかし、成形物にマークされた情報が、ロットなどの情報しか含んでいない場合、成形物がどのような条件で成形されたものであるかを特定することができず、十分なトレーサビリティを確保できないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、本発明の目的は、成形物のトレーサビリティを向上できる情報付与装置、及び判定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報付与装置は、型を有する成形装置で成形された成形物に対して情報を付与する情報付与装置であって、成形装置で成形された後の成形物に情報を付与し、情報は、少なくとも成形物の成形条件を取得可能な情報である。
【0007】
情報付与装置は、成形装置で成形された後の成形物に情報を付与するものである。従って、成形にともなって成形物に付与された情報が消えてしまうなどの事態を回避できる。また、情報は、少なくとも成形物の成形条件を取得可能な情報である。従って、後の検査工程で成形物に問題があった場合などに、当該成形物がどのような成形条件で成形がなされたかものであるかを特定することができる。以上より、成形物のトレーサビリティを向上することができる。
【0008】
情報は、成形条件を直接的に読み取り可能な態様で示されてよい。この場合、成形条件をデータベースで照会などしなくとも、成形物に反映された情報から、速やかに成形条件を読み取ることができる。
【0009】
情報は、成形条件と紐付けられたデータベースと照会可能な態様で示されてよい。この場合、成形物に反映された情報がシンプルなものであっても、データベースと照会することで、多くの成形条件を取得することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る情報付与装置は、型を有する成形装置で成形された成形物に対して情報を付与する情報付与装置であって、情報付与装置は、成形装置で一つの成形物が成形されるたびに、各々の成形物に対して情報を付与する。
【0011】
情報付与装置は、成形装置で一つの成形物が成形されるたびに、各々の成形物に対して情報を付与する。従って、情報付与装置は、個々の成形物に対して、直接情報を付与することができる。従って、後の検査工程で成形物に問題があった場合などに、当該成形物から直接情報を取得することができる。以上より、成形物のトレーサビリティを向上することができる。
【0012】
成形装置と、複数の成形物を集積する集積部と、の間に設けられてよい。集積部で多数の成形物が混在する状態となると、個々の成形物に関する情報を個別に付与することが難しくなる。従って、情報付与装置は、集積部で集積される前段階で成形物に個別に情報を付与することができる。
【0013】
本発明の一態様に係る判定システムは、型を有する成形装置で成形された成形物についての判定を行う判定システムであって、成形物に対して付与された情報に基づいて、成形物の成形条件を判定し、情報は、少なくとも成形物の成形条件を取得可能な情報である。
【0014】
情報は、少なくとも成形物の成形条件を取得可能な情報である。従って、後の検査工程で成形物に問題があった場合などに、当該成形物がどのような成形条件で成形がなされたかものであるかを特定することができる。従って、判定システムは、成形物に対して付与された情報に基づいて、成形物の成形条件を判定することで、問題のある成形物の成形条件を特定できる。以上より、成形物のトレーサビリティを向上することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、成形物のトレーサビリティを向上できる情報付与装置、及び判定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る情報付与装置を含む成形物製造システムのブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る成形装置の概略図である。
図3】ノズルが金属パイプ材料をシールした時の様子を示す断面図である。
図4】成形金型の断面図である。
図5】金属パイプ及び、金属パイプに付与された情報を示す図である。
図6】情報付与装置及び集積装置の一例を示す概略図である。
図7】変形例に係る情報付与装置及び判定システムを含む成形物製造システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る情報付与装置150を含む成形物製造システム100のブロック図である。図1に示すように、成形物製造システム100は、成形装置1と、情報付与装置150と、集積装置200(集積部)と、を備える。
【0019】
図2は、本実施形態に係る成形装置1の概略図である。図2に示すように、成形装置1は、ブロー成形によって中空形状を有する金属パイプ(成形物)を成形する装置である。本実施形態では、成形装置1は、水平面上に設置される。成形装置1は、成形金型2と、駆動機構3と、保持部4と、加熱部5と、流体供給部6と、冷却部7と、制御部8と、を備える。なお、本明細書において、金属パイプは、成形装置1での成形完了後の中空物品を指し、金属パイプ材料40(金属材料)は、成形装置1での成形完了前の中空物品を指す。金属パイプ材料40は、焼入れ可能な鋼種のパイプ材料である。また、水平方向のうち、成形時において金属パイプ材料40が延びる方向を「長手方向」と称し、長手方向と直交する方向を「幅方向」と称する場合がある。
【0020】
成形金型2は、金属パイプ材料40を金属パイプに成形する型であり、上下方向に互いに対向する下側の金型11(第1の金型)及び上側の金型12(第2の金型)を備える。下側の金型11及び上側の金型12は、鋼鉄製ブロックで構成される。下側の金型11は、ダイホルダ等を介して基台13に固定される。上側の金型12は、ダイホルダ等を介して駆動機構3のスライドに固定される。
【0021】
駆動機構3は、下側の金型11及び上側の金型12の少なくとも一方を移動させる機構である。図2では、駆動機構3は、上側の金型12のみを移動させる構成を有する。駆動機構3は、下側の金型11及び上側の金型12同士が合わさるように上側の金型12を移動させるスライド21と、上記スライド21を上側へ引き上げる力を発生させるアクチュエータとしての引き戻しシリンダ22と、スライド21を下降加圧する駆動源としてのメインシリンダ23と、メインシリンダ23に駆動力を付与する駆動源24と、を備えている。
【0022】
保持部4は、下側の金型11及び上側の金型12の間に配置される金属パイプ材料40を保持する機構である。保持部4は、成形金型2の長手方向における一端側にて金属パイプ材料40を保持する下側電極26及び上側電極27と、成形金型2の長手方向における他端側にて金属パイプ材料40を保持する下側電極26及び上側電極27と、を備える。長手方向の両側の下側電極26及び上側電極27は、金属パイプ材料40の端部付近を上下方向から挟み込むことによって、当該金属パイプ材料40を保持する。なお、下側電極26の上面及び上側電極27の下面には、金属パイプ材料40の外周面に対応する形状を有する溝部が形成される。下側電極26及び上側電極27には、図示されない駆動機構が設けられており、それぞれ独立して上下方向へ移動することができる。
【0023】
加熱部5は、金属パイプ材料40を加熱する。加熱部5は、金属パイプ材料40へ通電することで当該金属パイプ材料40を加熱する機構である。加熱部5は、下側の金型11及び上側の金型12の間にて、下側の金型11及び上側の金型12から金属パイプ材料40が離間した状態にて、当該金属パイプ材料40を加熱する。加熱部5は、上述の長手方向の両側の下側電極26及び上側電極27と、これらの電極26,27を介して金属パイプ材料へ電流を流す電源28と、を備える。なお、加熱部は、成形装置1の前工程に配置し、外部で加熱をするものであっても良い。
【0024】
流体供給部6は、下側の金型11及び上側の金型12の間に保持された金属パイプ材料40内に高圧の流体を供給するための機構である。流体供給部6は、加熱部5で加熱されることで高温状態となった金属パイプ材料40に高圧の流体を供給して、金属パイプ材料40を膨張させる。流体供給部6は、成形金型2の長手方向の両端側に設けられる。流体供給部6は、金属パイプ材料40の端部の開口部から当該金属パイプ材料40の内部へ流体を供給するノズル31と、ノズル31を金属パイプ材料40の開口部に対して進退移動させる駆動機構32と、ノズル31を介して金属パイプ材料40内へ高圧の流体を供給する供給源33と、を備える。駆動機構32は、流体供給時及び排気時にはノズル31を金属パイプ材料40の端部にシール性を確保した状態で密着させ(図3参照)、その他の時にはノズル31を金属パイプ材料40の端部から離間させる。なお、流体供給部6は、流体として、高圧の空気や不活性ガスなどの気体を供給してよい。また、流体供給部6は、金属パイプ材料40を上下方向へ移動する機構を有する保持部4とともに、加熱部5を含めて同一装置としても良い。
【0025】
図3は、ノズル31が金属パイプ材料40をシールした時の様子を示す断面図である。図3に示すように、ノズル31は、金属パイプ材料40の端部を挿入可能な円筒部材である。ノズル31は、当該ノズル31の中心線が基準線SL1と一致するように、駆動機構32に支持されている。金属パイプ材料40側のノズル31の端部の供給口31aの内径は、膨張成形後の金属パイプ材料40の外径に略一致している。この状態で、ノズル31は、内部の流路63から高圧の流体を金属パイプ材料40に供給する。
【0026】
図2に戻り、冷却部7は、成形金型2を冷却する機構である。冷却部7は、成形金型2を冷却することで、膨張した金属パイプ材料40が成形金型2の成形面と接触したときに、金属パイプ材料40を急速に冷却することができる。冷却部7は、下側の金型11及び上側の金型12の内部に形成された流路36と、流路36へ冷却水を供給して循環させる水循環機構37と、を備える。
【0027】
制御部8は、成形装置1全体を制御する装置である。制御部8は、駆動機構3、保持部4、加熱部5、流体供給部6、及び冷却部7を制御する。制御部8は、金属パイプ材料40を成形金型2で成形する動作を繰り返し行う。
【0028】
具体的に、制御部8は、例えば、ロボットアーム等の搬送装置からの搬送タイミングを制御して、開いた状態の下側の金型11及び上側の金型12の間に金属パイプ材料40を配置する。あるいは、制御部8は、作業者が手動で下側の金型11及び上側の金型12の間に金属パイプ材料40を配置することを待機してよい。また、制御部8は、長手方向の両側の下側電極26で金属パイプ材料40を支持し、その後に上側電極27を降ろして当該金属パイプ材料40を挟むように、保持部4のアクチュエータ等を制御する。また、制御部8は、加熱部5を制御して、金属パイプ材料40を通電加熱する。これにより、金属パイプ材料40に軸方向の電流が流れ、金属パイプ材料40自身の電気抵抗により、金属パイプ材料40自体がジュール熱によって発熱する。
【0029】
制御部8は、駆動機構3を制御して上側の金型12を降ろして下側の金型11に近接させ、成形金型2の型閉を行う。その一方、制御部8は、流体供給部6を制御して、ノズル31で金属パイプ材料40の両端の開口部をシールすると共に、流体を供給する。これにより、加熱により軟化した金属パイプ材料40が膨張して成形金型2の成形面と接触する。そして、金属パイプ材料40は、成形金型2の成形面の形状に沿うように成形される。金属パイプ材料40が成形面に接触すると、冷却部7で冷却された成形金型2で急冷されることによって、金属パイプ材料40の焼き入れが実施される。
【0030】
図4を参照して、成形装置1の成形の手順について説明する。図4(a)に示すように、制御部8は、成形金型2を型閉すると共に、流体供給部6で金属パイプ材料40に流体を供給することで、ブロー成形を行う(一次ブロー)。一次ブローでは、制御部8は、メインキャビティ部MCでパイプ部43を成形すると共に、フランジ部44に対応する部分をサブキャビティ部SCへ進入させる。そして、図4(b)に示すように、制御部8は、成形金型2を更に型閉することで、サブキャビティ部SCに進入した部分を更に潰すことで、フランジ部44を成形する。また、制御部8は、更に高い圧力でブロー成形を行う(二次ブロー)。次に、制御部8は、上側の金型12を上昇させて金属パイプ材料40から離間させることで、型開を行う。これにより、金属パイプ41が成形される。
【0031】
以上により、図5に示すような金属パイプ41が成形される。金属パイプ41は、長手方向に延びるパイプ部43と、パイプ部43から張り出したフランジ部44と、を有する。また、金属パイプ41は、保持部4で保持されたりノズル31でシールされる余剰部45を長手方向の両端に有している。
【0032】
図1に戻り、情報付与装置150は、成形装置1で成形された金属パイプ41(図5参照)に対して情報を付与する装置である。情報付与装置150は、金属パイプ41の何れかの箇所における表面にマーキングを行うことによって、情報を付与する。情報付与装置150は、成形装置1で成形された後の金属パイプ41に情報を付与する。なお、成形された後の金属パイプ41とは、成形が完了して、成形装置1から出た後の金属パイプ41を意味する。
【0033】
情報付与装置150は、成形装置1で一つの金属パイプ41が成形されるたびに、各々の金属パイプ41に対して情報を付与する。情報付与装置150は、成形装置1と、複数の成形物を集積する集積装置200と、の間に設けられる。従って、情報付与装置150でマーキングされた後の金属パイプ41が、集積装置200にて集積される。情報付与装置150は、情報取得部151と、マーキング部152と、判定部155と、を備える。
【0034】
情報取得部151は、金属パイプ41に付与するための情報を取得する。ここで、情報付与装置150が付与する情報は、少なくとも金属パイプ41の成形条件を取得可能な情報である。従って、情報取得部151は、成形装置1の制御部8から、成形直後の金属パイプ41の成形条件を取得する。成形条件として、金属パイプ材料40の加熱温度、金属パイプ41のフランジ部44(図5参照)を張り出させるための型開き幅、一次ブローの圧力及びタイミング、パイプ部43(図5参照)を成形するための型締め力及びタイミング、及び二次ブローの圧力及びタイミングなどの情報が挙げられる。成形装置1の制御部8は、これらの成形条件を予め設定された設定値として把握しており、あるいは、実際に成形した時の測定値として把握している。従って、情報取得部151は、これらの成形条件を制御部8から取得する。なお、情報取得部151は、成形条件の他、素材、成形時の環境(気温、湿度等)などの情報も取得し、情報付与装置150は、これらの情報も付与してよい。
【0035】
マーキング部152は、金属パイプ41に対してマーキングを行うことによって情報を付与する。マーキング部152は、情報取得部151にて取得された情報を反映するように、情報を金属パイプ41にマーキングする。マーキング部152は、例えば、レーザ加工を用いてマーキングを行ってよい。具体的には、図6(a)に示すように、マーキング部152は、レーザ装置153によって構成されてよい。レーザ装置153は、金属パイプ41の表面にレーザを照射することにより、当該表面にマーキングを行う。また、マーキング部152がレーザ装置153によって構成されている場合、当該レーザ装置153は、マーキングを行った後に、ただちに余剰部45の切断を行うこともできる(図6(b)参照)。このように、レーザ切断装置をマーキング部152として流用することができる。なお、マーキング部152のマーキング方法は、レーザ加工に限定されず、例えば、印刷、切削加工、ケガキなどの方法によってマーキングが行われてよい。ただし、加工容易性や、印刷したマークとは異なり消えにくいという点から、マーキング部152としてレーザ装置153が用いられることが好ましい。
【0036】
図5に示すように、マーキング部152は、パイプ部43の平面部分の情報表示箇所170にマーキングを行って情報を付与する。なお、情報表示箇所170は、パイプ部43の長手方向の一端側の箇所に設定されているが、情報表示箇所170は、読み取りが可能であれば金属パイプ41のどの箇所に設定されてもよい(ただし、余剰部45は除く)。
【0037】
上述のように、金属パイプ41に付与される情報は、少なくとも成形物の成形条件を取得可能な情報である。図5(b)に示すように、当該情報は、文字によって表現されてよい。ただし、情報は、記号によって表現されてもよく、文字と記号の組み合わせによって表現されてもよい。
【0038】
情報は、成形条件を直接的に読み取り可能な態様で示されてよい。例えば、マーキング部152は、成形条件を示す文字及び数字を金属パイプ41に直接的に書き込んでよい。例えば、マーキング部152は、「加熱温度:XX ℃、一次ブロー圧力:YY MPa、二次ブロー圧力:ZZ MPa…」などと、金属パイプ41に直接記載してよい。または、マーキング部152は、成形条件を簡易的に金属パイプ41に書き込んでよい。例えば、「左から順に加熱温度、一次ブロー圧力、二次ブロー圧力…の条件が示されている」という法則を予め設定しておき、マーキング部152は、金属パイプ41に「XX-YY-ZZ…」などと記載する。これにより、判定部155は、読み取り時には、「加熱温度がXX℃であり、一次ブロー圧力がYYMPaであり、二次ブロー圧力がZZMPaであり…」という成形条件を取得することができる。
【0039】
あるいは、情報は、成形条件と紐付けられたデータベースと照会可能な態様で示されてよい。例えば、マーキング部152は、文字、数字、QRコード(登録商標)、バーコード又は記号などの識別可能な内容を金属パイプ41に書き込む。判定部155が成形条件を読み取るときは、書き込まれた内容と、成形条件のデータベースとを照らし合わせ、成形条件を導き出す。具体的には、情報付与装置150は、ある金属パイプ41に対して固有のナンバーを付与すると共に、当該ナンバーと金属パイプ41に固有の成形条件とを紐づけてデータベースに登録しておく。これにより、判定部155は、金属パイプ41にマーキングされたナンバーを読み取りデータベースに照会すれば、当該ナンバーに対応する成形条件を取得できる。
【0040】
判定部155は、金属パイプ41に付与された情報に基づいて、成型条件を判定する。本実施形態では、情報付与装置150が判定部155を有するため、当該情報付与装置150によって判定システム300が構成される。判定システム300は、成形物についての判定を行うシステムである。判定部155は、金属パイプ41に対して付与された情報に基づいて、金属パイプ41の成形条件を判定する。具体的には、判定部155は、上述で説明したような処理を行うことで、成形条件を判定する。
【0041】
集積装置200は、複数の金属パイプ41を集積する装置である。図6(c)に示すように、集積装置200は、金属パイプ41を保持するロボットアーム201を備えてよい。ロボットアーム201は、情報付与装置150でのマーキングが完了したら、金属パイプ41を保持し、集積台車202に載せる。ロボットアーム201は、当該動作を繰り返すことで、集積台車202に金属パイプ41を積み上げることで集積する。
【0042】
次に、本実施形態に係る情報付与装置150の作用・効果について説明する。
【0043】
本実施形態に係る情報付与装置150は、成形金型2を有する成形装置1で成形された金属パイプ41に対して情報を付与する情報付与装置150であって、成形装置1で成形された後の金属パイプ41に情報を付与し、情報は、少なくとも金属パイプ41の成形条件を取得可能な情報である。
【0044】
情報付与装置150は、成形装置1で成形された後の金属パイプ41に情報を付与するものである。従って、成形にともなって金属パイプ41に付与された情報が消えてしまうなどの事態を回避できる。例えば、金属パイプ材料40にマーキングして情報を付与しておいた場合、成形中にマークが潰れたり引き延ばされるなどにより、読み取り難くなる可能性がある。
【0045】
また、情報は、少なくとも金属パイプ41の成形条件を取得可能な情報である。従って、後の検査工程で金属パイプ41に問題があった場合などに、当該金属パイプ41がどのような成形条件で成形がなされたものであるかを特定することができる。以上より、金属パイプ41のトレーサビリティを向上することができる。このような効果は、図2に示すSTAF成形を行う成形装置1を用いる場合に特に顕著となる。すなわち、冷間プレス、ハイドロフォーミング、ホットスタンピングなどの成形方法に比して、STAF成形では複雑な加工工程が必要になるため、成形物の一つ一つに対する管理項目の把握が必要となる。冷間プレス、ハイドロフォーミング、ホットスタンピングでは、集積装置200で集積した後で、再度集積台車202から取り出してロットなどをマーキングすれば十分であったが、STAF成形では、ロットの管理だけでは不十分であった。これに対し、情報付与装置150は、個々の金属パイプの詳細な成形条件まで管理することができる。
【0046】
情報は、成形条件を直接的に読み取り可能な態様で示されてよい。この場合、成形条件をデータベースで照会などしなくとも、成形物に反映された情報から、速やかに成形条件を読み取ることができる。
【0047】
情報は、成形条件と紐付けられたデータベースと照会可能な態様で示されてよい。この場合、成形物に反映された情報がシンプルなものであっても、データベースと照会することで、多くの成形条件を取得することができる。
【0048】
本実施形態に係る情報付与装置150は、成形金型2を有する成形装置1で成形された金属パイプ41に対して情報を付与する情報付与装置150であって、情報付与装置150は、成形装置1で一つの金属パイプ41が成形されるたびに、各々の金属パイプ41に対して情報を付与する。
【0049】
情報付与装置150は、成形装置1で一つの金属パイプ41が成形されるたびに、各々の金属パイプ41に対して情報を付与する。従って、情報付与装置150は、個々の金属パイプ41に対して、直接情報を付与することができる。従って、後の検査工程で金属パイプ41に問題があった場合などに、当該金属パイプ41から直接情報を取得することができる。以上より、金属パイプ41のトレーサビリティを向上することができる。上述の比較例のように、複数の金属パイプ41を集積した後でロットの情報を付与するだけでは、問題が生じた場合に個々の金属パイプ41の成形条件を十分に管理することができない。これに対し、情報付与装置150は、個々の金属パイプ41に対して情報を付与するため、十分な管理を行うことができる。
【0050】
なお、例えば、検査工程は次のように実行される。すなわち、個々の金属パイプ41に対して情報が付与された後で、金属パイプ41が仕様を満足しているか検査する検査工程が実行されてよい。このような検査工程は、金属パイプ41の納品前に実行される。この検査工程では、成形された金属パイプ41の寸法や強度等が検査される。(例えば顧客、あるいは製造者の社内で)要求される仕様が、検査された寸法や強度に対して、合格基準に達しているか否かを検査し、合格基準に達していない場合は、直ちに成形装置の作業者や管理者にアラート等を通知することができる。このような検査工程では、成形された金属パイプ41を全て検査しても良いし、サンプリングした金属パイプ41を検査しても良い。そして、判定システム300は、合格基準に達していない金属パイプ41の成形条件を直ちに取得することができる。
【0051】
また、金属パイプ41の納品後に検査工程が実行されてもよい。例えば、金属パイプ41の性能を確認する必要が生じた場合であっても、情報付与装置150による情報が金属パイプ41に付与されているので、判定システム300が、直ちに当該金属パイプ41の成形条件を取得し、当該金属パイプ41の性能を確認することができる。
【0052】
以上のように、判定システム300は、金属パイプ41に対して付与された情報に基づいて、金属パイプ41の成形条件を判定することで、問題のある金属パイプ41の成形条件を特定できる。以上より、金属パイプ41のトレーサビリティを向上することができる。
【0053】
成形装置1と、複数の金属パイプ41を集積する集積装置200と、の間に設けられてよい。集積装置200で多数の金属パイプ41が混在する状態となると、個々の金属パイプ41に関する情報を個別に付与することが難しくなる。従って、情報付与装置150は、集積装置200で集積される前段階で金属パイプ41に個別に情報を付与することができる。
【0054】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0055】
上述の実施形態では、情報付与装置150が判定部155を備えることで判定システム300として機能していた。これに代えて、図7に示すように、判定システム400が、情報付与装置150とは別体の専用システムとして設けられてもよい。
【0056】
成形物の形状は特に限定されない。また、成形材料は金属パイプ材料でなくともよく、金属板などであってもよい。
【0057】
なお、上述の実施形態では、STAF用の成形装置において採用される金型を例にして説明を行った。しかし、本発明に係る金型が採用される成形装置の種類は特に限定されず、冷間プレス、ハイドロフォーミング、ホットスタンピングの成形装置、その他の成形装置などであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…成形装置、2…成形金型、150…情報付与装置、200…集積装置(集積部)、300,400…判定システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7