(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】レーザーマーキング装置及びレーザーマーキング方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20240227BHJP
B41J 2/47 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B23K26/00 B
B23K26/00 M
B23K26/00 P
B41J2/47 101M
(21)【出願番号】P 2020037207
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇賀神 智久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 芳一
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-012232(JP,A)
【文献】特開2005-186080(JP,A)
【文献】特開平11-028586(JP,A)
【文献】特開2018-051585(JP,A)
【文献】特開2017-131963(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0179015(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
B41J 2/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光源と、該レーザー光源から出射されたレーザー光を印画媒体に照射するレーザー光照射部と、少なくとも前記レーザー光照射部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
入力されるマーキングデータに対して、ドット間隔を調整して調整済みマーキングデータを出力するドット間隔調整部と、
前記調整済みマーキングデータによって印画制御を行う印画制御部とを備え、
前記ドット間隔調整部は、前記レーザー光源の出力個体差による濃度ばらつきを抑制する調整係数に基づいて、前記調整済みマーキングデータを求める演算処理を行うことを特徴とするレーザーマーキング装置。
【請求項2】
前記調整係数は、前記レーザー光源の個体毎にマーキングした濃度を基準の濃度と比較して求めることを特徴とする請求項
1記載のレーザーマーキング装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記調整係数を個体毎に記憶する記憶部を備えることを特徴とする請求項
1又は2記載のレーザーマーキング装置。
【請求項4】
複数の前記レーザーマーキング装置に対して共通のマーキングデータを供給するマーキングデータ供給部を備えることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項記載のレーザーマーキング装置。
【請求項5】
元マーキングデータに対して、ドット間隔を調整して調整済みのマーキングデータを得るドット間隔調整工程と、
前記調整済みマーキングデータによって印画制御を行う印画工程とを有し、
前記ドット間隔調整工程は、
レーザー光源の出力個体差による濃度ばらつきを抑制する調整係数に基づいて、前記調整済みマーキングデータを求める演算処理を行うことを特徴とするレーザーマーキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーマーキング装置及びレーザーマーキング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザーマーキング装置は、レーザー光源と、レーザー光源から出射されるレーザー光を印画媒体に照射するレーザー光照射部(走査部)と、これらを制御する制御部とを備えている。従来、レーザーマーキング装置の濃度調整は、ドット密度の調整とレーザー出力の調整を組み合わせて行うことがなされている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したレーザーマーキング装置は、レーザー光源から出射されるレーザー光の出力に個体差がある場合があり、この個体差によって、印画濃度にばらつきが生じることが問題になっている。
【0005】
これに対して、従来技術は、レーザー光の出力を調整することを前提に濃度調整を行っているが、例えば、比較的安価なパッシブQスイッチ型のパルス発振レーザーをレーザー光源として用いるような場合には、レーザー光源の出力を調整する手段がないため、印画結果の画像濃度に個体毎のばらつきが生じ易くなる。
【0006】
また、レーザー光の出力調整が可能なレーザー光源であっても、レーザー光の出力調整は煩雑であり、これを調整パラメータに加えると、単に個体差毎による印画濃度のばらつきを無くすための調整であるにも拘わらず、調整が煩雑になってしまう問題があった。
【0007】
そして、このようなレーザー光源の出力個体差を見逃していると、複数のレーザーマーキング装置を用いて単一製品への印画を行う場合に、使用したレーザーマーキング装置毎に異なる濃度の印画がなされてしまい、製品の品質にばらつきが生じてしまう問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、レーザー光源の出力調整を行わない簡易な調整で、レーザー光源の出力個体差による印画濃度のばらつきを解消できるようにすること、複数のレーザーマーキング装置を用いて印画を行う場合に、製品の印画品質にばらつきが生じないようにすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明は以下の構成を具備するものである。
レーザー光源と、該レーザー光源から出射されたレーザー光を印画媒体に照射するレーザー光照射部と、少なくとも前記レーザー光照射部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、入力されるマーキングデータに対して、ドット間隔を調整して調整済みマーキングデータを出力するドット間隔調整部と、前記調整済みマーキングデータによって印画制御を行う印画制御部とを備え、前記ドット間隔調整部は、前記レーザー光源の出力個体差による濃度ばらつきを抑制する調整係数に基づいて、前記調整済みマーキングデータを求める演算処理を行うことを特徴とするレーザーマーキング装置。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有するレーザーマーキング装置によると、レーザー光源の出力調整を行わない簡易な調整で、レーザー光源の出力個体差による印画濃度のばらつきを解消することができる。また、複数のレーザーマーキング装置を用いて印画を行う場合に、レーザー光源の出力個体差による濃度ばらつきが生じないように個々のレーザーマーキング装置のドット間隔調整を行うので、製品の印画品質にばらつきが生じることを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】複数のレーザーマーキング装置を用いて共通のマーキングデータを印画する場合の説明図。
【
図4】レーザーマーキング装置の他の構成例を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1に示すように、レーザーマーキング装置1は、レーザー光源2と、レーザー照射部3と、制御部4とを備えており、印画媒体Wにレーザー光Lを照射して文字や絵柄などのマーキング(印画)を行うものである。レーザー光源2としては、パルス発振型のレーザー光源を用いることができ、適例として、比較的安価なパッシブQスイッチ型の固体レーザー光源を用いることができる。但し、レーザー光源2はこれに限定されるものではない。
【0014】
レーザー光照射部3は、レーザー光源2から出射されたレーザー光(例えば、パルスレーザー光)Lをマーキングデータに応じて印画媒体Wに照射するものであり、レーザー光Lを印画媒体Wの表面に集光する光学系(fθレンズなど)30と、レーザー光Lの集光位置を走査するスキャナ(ガルバノスキャナなど)31などを備えている。
【0015】
スキャナ31は、駆動部31Aを備えており、マーキングデータに応じて制御部4から出力される制御信号によって駆動部31Aが制御されることで、レーザー光Lは、所定のドット間隔で印画媒体Wに照射され、印画媒体W上にマーキングデータに応じた所定濃度の印画がなされる。
【0016】
制御部4は、少なくともレーザー光照射部3の動作、すなわち、スキャナ31の駆動部31Aの動作を制御するものである。制御部4は、適宜、レーザー光源2のオン・オフ等の動作を合わせて制御するものであってもよい。制御部4には、PC(パーソナルコンピュータ)などによって構成されるマーキングデータ供給部5からのマーキングデータが供給される。レーザーマーキング装置1としては、図示のようにマーキングデータ供給部5を外して構成しても良いし、マーキングデータ供給部5を含めて構成しても良い。
【0017】
図2は、制御部4の構成例を示している。制御部4は、入力されるマーキングデータに対して、ドット間隔を調整して調整済みマーキングデータを出力するドット間隔調整部40と、調整済みマーキングデータによって印画制御を行う制御信号を出力する印画制御部41とを備えている。また、制御部4は、適宜、後述する調整係数を記憶する調整係数記憶部42を備えていてもよい。
【0018】
制御部4におけるドット間隔調整部40は、レーザー光源2の出力個体差による濃度のばらつきを抑制するために、ドット間隔を調整した調整済みマーキングデータを出力する。レーザー光源2の出力は、レーザー光源2の個体毎にばらつきがある。これに対して、入力されるマーキングデータが持つドット間隔のパラメータは、入力されるマーキングデータ毎に決まっている。これにより、共通のマーキングデータを異なるレーザーマーキング装置1の制御部4に入力すると、ドット間隔調整部40による調整が無い場合には、レーザー光源2の個体毎の出力のばらつきによって、印画濃度に濃淡のばらつきが生じることになる。
【0019】
ドット間隔調整部40は、レーザー光源2の個体毎の出力が基準より低い場合には、入力されたマーキングデータのドット間隔パラメータを調整して、ドット間隔を狭くすることで、マーキング結果の印字濃度を高める調整を行い、レーザー光源2の個体毎の出力が基準より高い場合には、入力されたマーキングデータのドット間隔パラメータを調整して、ドット間隔を広くすることで、マーキング結果の印字濃度を低めに調整する。
【0020】
ドット間隔調整部40が、制御部4に入力されるマーキングデータのドット間隔パラメータをどの程度調整するかの調整度合いは、レーザーマーキング装置1が備えるレーザー光源2の個体毎、すなわち、レーザーマーキング装置1の個体毎に決まるので、レーザーマーキング装置1を組み立てる際に、レーザー光源2によってマーキングした図形の濃度と基準の濃度を比較することで、個々のレーザーマーキング装置1毎に定めることができる。また、レーザーマーキング装置1を組み立て後であっても、設置現場にてレーザー光源2が組み込まれたレーザーマーキング装置1によってマーキングした図形の濃度を測定することで、前述した調整度合いを定めることができる。
【0021】
前述したドット間隔調整部40における調整度合いは、調整係数として、個々のレーザーマーキング装置1毎に定めておき、個々のレーザーマーキング装置1における制御部4に設けた調整係数記憶部42に、装置出荷時等において、この調整係数を記憶させる。そして、ドット間隔調整部40は、調整係数記憶部42に記憶されている調整係数に基づいて、調整済みマーキングデータを求める演算処理を行う。
【0022】
印画制御部41は、ドット間隔調整部40から出力される調整済みマーキングデータに基づいて、レーザー光照射部3の駆動部31Aを制御する制御信号を出力する。これにより、レーザーマーキング装置1は、組み込まれているレーザー光源2の出力に個体差がある場合であっても、共通のマーキングデータに対しては同等の印画濃度でマーキングを行うことができる。
【0023】
このようなレーザーマーキング装置1は、複数のレーザーマーキング装置1を用いて、共通のマーキングデータを印画する場合に有効である。
図3に示すように、マーキングデータ供給部5から共通の元マーキングデータが複数のレーザーマーキング装置1A,1B,1C,…に入力される場合に、各レーザーマーキング装置1A,1B,1C,…における調整係数記憶部42に、それぞれ個体に応じた調整係数A,B,Cを記憶させておくことで、各レーザーマーキング装置1A,1B,1C,…における印画制御部41に入力される調整済みマーキングデータは、個体毎に調整されたデータになる。これによって、個々のレーザーマーキング装置1A,1B,1C,…におけるレーザー光源2の出力に個体差がある場合であっても、複数のレーザーマーキング装置1A,1B,1C,…によってマーキングされた結果は濃淡のばらつきが抑制されたものになり、均一な品質の製品を得ることができる。
【0024】
前述した例では、制御部4にドット間隔調整部40を設けているが、
図4に示すように、ドット間隔調整部40をマーキングデータ供給部5側(PC側)に設けても良い。この場合には、マーキングデータ供給部5におけるマーキングデータ生成部50で生成された元マーキングデータに対して、ドット間隔調整部40はレーザーマーキング装置1の個体毎の調整済みマーキングデータを求めて、これを個々のレーザーマーキング装置1A,1B,1Cに供給する。この際、マーキングデータ供給部5は、レーザーマーキング装置1の個体毎の調整係数をデータテーブル51として備えており、ドット間隔調整部40は、この調整係数を個別に用いて調整済みマーキングデータを求める。
【0025】
以上説明したレーザーマーキング装置1を用いたレーザーマーキン方法によると、元マーキングデータに対して、ドット間隔を調整して調整済みのマーキングデータを得るドット間隔調整工程と、調整済みマーキングデータによって印画制御を行う印画工程とを有し、ドット間隔調整工程は、レーザー光源2の出力個体差による濃度ばらつきを抑制する調整係数に基づいて、調整済みマーキングデータを求める演算処理を行うので、製品の印画品質にばらつきが生じることを抑止することができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1:レーザーマーキング装置,2:レーザー光源,3:レーザー光照射部,
4:制御部,5:マーキングデータ供給部,
30:光学系,31:スキャナ,31A:駆動部,
40:ドット間隔調整部,41;印画制御部,42:調整係数記憶部,
50:マーキングデータ生成部,51:データテーブル,
L:レーザー光,W:印画媒体