(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】シート処理装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20240227BHJP
B65H 35/08 20060101ALI20240227BHJP
B65H 37/04 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G03G15/00 460
B65H35/08
B65H37/04 Z
(21)【出願番号】P 2020042347
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春名 純
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-211802(JP,A)
【文献】特開2013-237553(JP,A)
【文献】特開平11-005658(JP,A)
【文献】特開2013-091554(JP,A)
【文献】特開平09-085692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0036884(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
B65H 35/08
B65H 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートをシート搬送方向に搬送する搬送部と、
回転可能に支持され、前記搬送部によって搬送されているシートに所定位置において穿孔するパンチ部材と、
前記シート搬送方向における前記パンチ部材の上流に位置する検知位置でのシートの有無に基づいて出力値を変化させるセンサと、
前記パンチ部材を回転駆動する駆動源と、
前記駆動源を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記シート搬送方向において先行シートの最後の穿孔位置から後続シートの最初の穿孔位置までの穿孔間距離と、前記パンチ部材の回転位置と、に基づいて前記駆動源を制御し、
後続シートが前記検知位置に到達した際に、前記穿孔間距離と前記パンチ部材の回転位置とに基づいて後続シートへの穿孔処理を行わないと判断した場合、後続シートへの穿孔処理を回避する回避処理を実行する、
ことを特徴とするシート処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記回避処理において、前記パンチ部材が前記搬送部によって搬送されるシートに干渉しない回転位置で停止するように前記駆動源を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート処理装置。
【請求項3】
前記回転位置を検知する回転位置検知センサを備える、
ことを特徴とする請求項2に記載のシート処理装置。
【請求項4】
前記パンチ部材は、前記搬送部によって搬送されるシートに干渉可能な第1の回転範囲と、前記搬送部によって搬送されるシートに干渉しない第2の回転範囲と、を有し、
前記制御部は、前記回避処理において、先行シートの後端が前記所定位置を通過してから後続シートの先端が前記所定位置に到達するまでの間に、前記第1の回転範囲を通過するように前記駆動源を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート処理装置。
【請求項5】
前記シート搬送方向に直交する、前記パンチ部材の回転軸線方向に前記パンチ部材を移動させるパンチ移動部を備え、
前記制御部は、前記回避処理において、前記回転軸線方向に関して後続シートに重ならない位置に前記パンチ部材を移動させるように前記パンチ移動部を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、後続シートの先端が前記所定位置に到達する前に、前記回避処理を完了する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート処理装置。
【請求項7】
前記センサは、第1検知位置でのシートの有無に基づいて出力値を変化させる第1センサであり、
前記シート搬送方向における前記第1検知位置の上流に位置する第2検知位置でのシートの有無に基づいて出力値を変化させる第2センサを備え、
前記制御部は、前記パンチ部材によって先行シートに対する穿孔処理が終了した際に、後続シートの先端が前記シート搬送方向において前記第2検知位置と前記第1検知位置の間に位置する場合、前記第2センサの検知結果に基づいて前記パンチ部材の回転速度を制御する第1処理及び前記第1センサの検知結果に基づいて前記パンチ部材の回転速度を制御する第2処理を含む制御モードを実行可能である、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1処理を実行した後に、前記回避処理を実行可能である、
ことを特徴とする請求項7に記載のシート処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第2処理において、前記第2センサの検知結果に基づいて算出された前記穿孔間距離と、前記第1センサの検知結果に基づいて算出された前記穿孔間距離と、の差を補正するように前記駆動源を制御する、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載のシート処理装置。
【請求項10】
シートを受け入れる第1搬送路と、
前記第1搬送路から受け取ったシートを反転させる反転部と、
前記反転部によって反転されたシートが積載される積載部と、
前記第1搬送路の下方に延び、前記反転部によって反転したシートを受け取り、シートを前記積載部に案内する第2搬送路と、
シートを機外に排出する排出部と、
前記積載部から前記排出部に向けて延び、シートを前記排出部に案内する第3搬送路と、
前記第2搬送路に配置されると共にシートを前記積載部に排出する回転体対と、を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシート処理装置。
【請求項11】
前記パンチ部材は、前記第1搬送路に配置される、
ことを特徴とする請求項10に記載のシート処理装置。
【請求項12】
シートに画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置からシートを受け取る請求項1乃至11のいずれか1項に記載のシート処理装置と、を備える、
ことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを処理するシート処理装置及びこれを備える画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ等の画像形成装置に接続され、画像形成装置から排出されたシートに穿孔処理を施すフィニッシャが提案されている(特許文献1参照)。このフィニッシャは、シートを検知するシート検知センサと、シートを搬送する搬送ローラ対と、搬送ローラ対によって搬送されるシートに穿孔する穿孔手段と、を有している。穿孔手段は、ケーシングにそれぞれ軸支されるパンチ及びダイスと、パンチ及びダイスを同期させて駆動させるパンチ駆動モータと、を有している。
【0003】
パンチ及びダイスは、ホームポジションで停止して待機しており、シート検知センサがシートの後端を検知したことに基づいて、パンチ駆動モータによって駆動開始される。そして、パンチ及びダイスは、シートの後端部の所定位置において噛み合い、搬送ローラ対によって搬送されるシートに穿孔する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、画像形成装置では、先行シートの後端と後続シートの先端との間隔(以下、紙間とする)を短くし、生産性を向上することが求められている。例えば、紙間を短くする方法として、パンチ駆動モータを加減速制御する方法が知られている。しかしながら、シートの搬送バラツキ等によってパンチ駆動モータの加減速制御が可能な範囲を超えてしまう場合には、ユーザの意図しない低精度の穿孔が行われてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、穿孔精度と生産性の向上を両立したシート処理装置及びこれを備えた画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シート処理装置において、シートをシート搬送方向に搬送する搬送部と、回転可能に支持され、前記搬送部によって搬送されているシートに所定位置において穿孔するパンチ部材と、前記シート搬送方向における前記パンチ部材の上流に位置する検知位置でのシートの有無に基づいて出力値を変化させるセンサと、前記パンチ部材を回転駆動する駆動源と、前記駆動源を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記シート搬送方向において先行シートの最後の穿孔位置から後続シートの最初の穿孔位置までの穿孔間距離と、前記パンチ部材の回転位置と、に基づいて前記駆動源を制御し、後続シートが前記検知位置に到達した際に、前記穿孔間距離と前記パンチ部材の回転位置とに基づいて後続シートへの穿孔処理を行わないと判断した場合、後続シートへの穿孔処理を回避する回避処理を実行する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、穿孔精度と生産性の向上を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態に係る画像形成装置を示す全体概略図。
【
図2】(a)はホームポジションに位置するパンチ及びダイスを示す模式図、(b)は噛合位置に位置するパンチ及びダイスを示す模式図、(c)は穿孔終了位置に位置するパンチ及びダイスを示す模式図。
【
図3】画像形成システムのハードウェア構成を示すブロック図。
【
図4】画像形成システムの機能構成を示すブロック図。
【
図6】(a)は穿孔可能か否かの判断を示すフローチャート、(b)は穿孔可能か否かの判断を示す他のフローチャート。
【
図7】第2の実施の形態に係るハードウェア構成を示すブロック図。
【
図8】第2の実施の形態に係る機能構成を示すブロック図。
【
図10】(a)はA4サイズのシートに対する穿孔装置の移動について説明する平面図、(b)はA5サイズのシートに対する穿孔装置の移動について説明する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための例示的な形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
<第1の実施の形態>
〔全体構成〕
図1に示すように、第1の実施の形態に係る画像形成システム1Sは、画像形成装置1、画像読取装置2、原稿送り装置3及びシート処理装置4によって構成される。画像形成システム1Sは、記録材であるシートに画像を形成し、必要に応じてシート処理装置4によってシートに処理を施して出力する。以下、各装置の簡単な動作を説明した後、シート処理装置4について詳細な説明を行う。
【0012】
原稿送り装置3は、原稿トレイ18に載置された原稿を画像読取部16,19に搬送する。画像読取部16,19はそれぞれ原稿面から画像情報を読み取るイメージセンサであり、1度の原稿搬送で原稿の両面の読み取りが行われる。画像情報を読み取られた原稿は原稿排出部20に排出される。また、画像読取装置2は駆動装置17により画像読取部16を往復移動させることで、原稿台ガラスにセットされた静止原稿(ブックレット原稿などの原稿送り装置3が使用できない原稿を含む)から画像情報を読み取ることができる。
【0013】
画像形成装置1は、直接転写方式の画像形成部1Bを備えた電子写真装置である。画像形成部1Bは、感光ドラム9を備えたカートリッジ8と、カートリッジ8の上方に配置されたレーザスキャナユニット15と、を備えている。画像形成動作を行う場合、回転する感光ドラム9の表面が帯電させられ、レーザスキャナユニット15が画像情報に基づいて感光ドラム9を露光することでドラム表面に静電潜像を書き込む。感光ドラム9に担持された静電潜像は帯電したトナー粒子によってトナー像に現像され、感光ドラム9と転写ローラ10とが対向する転写部にトナー像が搬送される。画像形成装置1のコントローラは、画像読取部16,19によって読み取られた画像情報又は外部のコンピュータからネットワークを介して受信した画像情報に基づいて画像形成部1Bによる画像形成動作を実施する。
【0014】
画像形成装置1は、記録材としてのシートを1枚ずつ所定の間隔で給送する給送装置6を複数備えている。給送装置6から給送されたシートはレジストレーションローラ7にて斜行を補正された後に転写部に搬送され、転写部において、感光ドラム9に担持されたトナー像を転写される。シート搬送方向における転写部の下流には定着ユニット11が配置されている。定着ユニット11は、シートを挟持して搬送する回転体対と、トナー像を加熱するためのハロゲンランプ等の発熱体とを有し、シート上のトナー像を加熱及び加圧することで画像の定着処理を行う。
【0015】
画像形成されたシートを画像形成装置1の外部に排出する場合、定着ユニット11を通過したシートは水平搬送部14を介してシート処理装置4に搬送される。両面印刷において第1面の画像形成が終了したシートの場合、定着ユニット11を通過したシートは反転ローラ12に受け渡され、反転ローラ12によってスイッチバック搬送され、再搬送部13を介して再びレジストレーションローラ7に搬送される。そして、シートは、再び転写部及び定着ユニット11を通過することで第2面に画像を形成された後、水平搬送部14を介してシート処理装置4に搬送される。
【0016】
上記の画像形成部1Bはシートに画像を形成する画像形成部の一例であり、感光体に形成したトナー像を中間転写体を介してシートに転写する中間転写方式の電子写真ユニットを用いてもよい。また、インクジェット方式やオフセット印刷方式の印刷ユニットを画像形成部として用いてもよい。
【0017】
[シート処理装置]
シート処理装置4は、シートに穿孔処理を施す穿孔装置60を有し、画像形成装置1から受け取ったシートに穿孔処理を施してシート束として排出する。また、シート処理装置4は、画像形成装置1から受け取ったシートに穿孔処理を施さずに単に排出することもできる。
【0018】
シート処理装置4には、シートを搬送する搬送路として受入パス81、内排出パス82、第1排出パス83及び第2排出パス84が設けられており、シートを排出する排出先として上排出トレイ25及び下排出トレイ37が設けられている。第1搬送路としての受入パス81は、画像形成装置1からシートを受け取って案内する搬送路であり、第2搬送路としての内排出パス82は、受入パス81の下方に延び、整合部4Aへ向けてシートを案内する搬送路である。第1排出パス83は、シートを上排出トレイ25に排出する搬送路であり、第3搬送路としての第2排出パス84は、中間積載部39から束排出ローラ36に向けて延び、シートを束排出ローラ36に案内する搬送路である。
【0019】
画像形成装置1の水平搬送部14から排出されるシートは、受入パス81に配置された搬送部としての入口ローラ21によって受け取られ、受入パス81を通って反転前ローラ22へ向けて搬送される。シート搬送方向において入口ローラ21と反転前ローラ22との間には、穿孔装置60が配置されており、受入パス81を搬送されるシートは、後述する穿孔装置60によって穿孔処理が施される。また、入口センサ27は、入口ローラ21と反転前ローラ22との間の第2検知位置でのシートの有無に基づいて出力値(例えば電圧値や出力信号)を変化させる。第2センサとしての入口センサ27は、後述する搬送方向におけるパンチ前センサ63の上流に位置している。反転前ローラ22は、入口ローラ21から受け取ったシートを第1排出パス83へ向けて搬送する。
【0020】
なお、入口ローラ21によるシートの搬送速度を水平搬送部14よりも大きく設定し、入口ローラ21がシートを受け取った後にシートの搬送速度を加速してもよい。この場合、水平搬送部14の搬送ローラとこれを駆動するモータとの間にワンウェイクラッチを設置し、入口ローラ21によってシートが引っ張られたとしても搬送ローラが空転するように構成すると好適である。
【0021】
シートの排出先が上排出トレイ25の場合、反転ローラ24は反転前ローラ22から受け取ったシートを上排出トレイ25に排出する。シートの排出先が下排出トレイ37の場合、反転部としての反転ローラ24は反転前ローラ22から受け取ったシートを反転させるスイッチバック搬送を行って、シートを内排出パス82に搬送する。反転ローラ24によるシートの排出方向において反転ローラ24よりも上流側で受入パス81及び内排出パス82が第1排出パス83から分岐する分岐部には、逆流防止弁23が配置されている。逆流防止弁23は、反転ローラ24によってスイッチバックされたシートが受入パス81に逆流することを規制する機能を有する。
【0022】
内排出パス82に配置された回転体対としての内排出ローラ26、中間搬送ローラ28及び蹴り出しローラ29は、反転ローラ24から受け取ったシートを順に受け渡しながら整合部4Aへ向けて搬送する。中間積載前センサ38は、中間搬送ローラ28と蹴り出しローラ29との間でシートを検知する。入口センサ27、パンチ前センサ63及び中間積載前センサ38としては、例えば光を用いて検知位置におけるシートの有無を検出する光学センサや、シートに押圧されるフラグを用いたフラグセンサが用いられる。
【0023】
整合部4Aは、束押さえフラグ30と、積載部としての中間積載部39と、束排出ガイド34と、駆動ベルト35と、を有している。中間積載部39は、中間上ガイド31及び中間下ガイド32から構成され、複数枚のシートがシート束として積載される。ローラ対からなる蹴り出しローラ29によって中間積載部39に向けて排出されたシート束は、束押さえフラグ30によって中間下ガイド32に押し付けられる。
【0024】
そして、中間積載部39に排出されたシート束は、中間下ガイド32に沿って下方に案内され、中間積載部39のシート搬送方向における下流端部に設けられる縦整合板によって整合される。また、縦整合板によってシート搬送方向に整合されたシート束は、不図示の横整合板によってシート搬送方向に直交する幅方向に整合される。このような整合処理が行われた後、シート束は、駆動ベルト35に固定された束排出ガイド34によって押し出され、第2排出パス84を介して束排出ローラ36に受け渡される。シート束は、排出部としての束排出ローラ36によって機外へ排出されて下排出トレイ37に積載される。
【0025】
上排出トレイ25及び下排出トレイ37は、いずれもシート処理装置4の筐体に対して上下に移動可能である。シート処理装置4は、上排出トレイ25及び下排出トレイ37におけるシートの上面位置(シートの積載高さ)を検知するシート面検知センサを備えており、いずれかのセンサがシートを検知すると、対応するトレイをA2,B2方向に下降させる。また、上排出トレイ25又は下排出トレイ37のシートが取り除かれたことをシート面検知センサによって検知すると、そのトレイをA1,B1方向に上昇させる。従って、上排出トレイ25及び下排出トレイ37は、積載されたシートの上面を一定に保つように昇降制御される。
【0026】
[穿孔装置]
次に、穿孔装置60について説明する。穿孔装置60は、回転するパンチによってシートに穿孔するロータリー方式の穿孔装置である。穿孔装置60は、
図2(a)に示すように、パンチ軸65を中心に回転可能に支持されるパンチ61と、ダイス軸66を中心に回転するダイス62と、パンチ前センサ63と、パンチHPセンサ69と、パンチHPフラグ70と、を有している。ダイス62は、パンチ61に噛合可能なダイス穴64を有しており、パンチ軸65及びダイス軸66は、パンチ駆動モータ102(
図3参照)によって駆動される不図示のギヤに噛合している。
図2(a)において、パンチ部材としてのパンチ61は、駆動源としてのパンチ駆動モータ102が駆動することで、時計回り方向に回転駆動し、ダイス62は、反時計回り方向に回転駆動する。また、パンチHPフラグ70は、ダイス軸66に連動して回転する。
【0027】
センサ及び第1センサとしてのパンチ前センサ63は、搬送方向においてパンチ61及びダイス62よりも上流に位置する第1検知位置にてシートを検知する。より具体的には、パンチ前センサ63は、第1検知位置におけるシートの有無に基づいて出力値(例えば電圧値や出力信号)を変化させるため、シートの先端や後端が第1検知位置を通過する際に、出力値が変化する。
【0028】
図2(a)は、ホームポジションに位置するパンチ61及びダイス62を示す模式図である。パンチ61及びダイス62は、シートに画像を形成する画像形成ジョブの開始時及び終了時にはホームポジションに位置し、ジョブが入力されていない間もホームポジションで停止している。パンチ61及びダイス62は、ホームポジションにおいて、シートの搬送を妨げることが無いように配置されている。また、パンチ61のホームポジションは、回転方向においてパンチ61及びダイス62が噛合する噛合位置よりも角度θだけ上流に回転した位置である。パンチ61のホームポジションは、回転位置検知センサとしてのパンチHPセンサ69がパンチHPフラグ70を検知することで認識される。
【0029】
図2(b)は、噛合位置に位置するパンチ61及びダイス62を示す模式図である。パンチ61及びダイス62が噛合位置に位置すると、パンチ61がダイス62のダイス穴64に噛み合い、シートが穿孔される。
図2(c)は、穿孔終了位置に位置するパンチ61及びダイス62を示す模式図である。
【0030】
このように、パンチ61及びダイス62は、ホームポジションで待機し、パンチ前センサ63がシートの先端を検知したことに基づいて、パンチ駆動モータ102によって所定のタイミングで駆動開始される。この時、パンチ61及びダイス62の周速度とシートの搬送速度が一致するようにパンチ駆動モータ102は制御され、穿孔時にシートが皺になったり破れたりすることを防止している。パンチ61及びダイス62は、穿孔終了位置にて穿孔されたシートから離間する。
【0031】
[ハードウェア構成]
図3は、画像形成システム1Sのハードウェア構成を示すブロック図である。なお、
図3では、主に本実施の形態の制御に関係するシート処理装置4の構成を示し、他の構成は省略している。
【0032】
画像形成システム1Sは、
図3に示すように、主制御部101と、ビデオコントローラ119と、エンジン制御部301と、を有しており、ビデオコントローラ119は、画像形成装置1とシート処理装置4とを統括する。エンジン制御部301は、画像形成装置1を制御し、主制御部101は、シート処理装置4を制御する。
【0033】
ビデオコントローラ119は、エンジン制御部301及び主制御部101にそれぞれシリアルコマンド送信信号線302,304を介して接続されており、これらエンジン制御部301及び主制御部101へ命令をシリアル通信で送信する。エンジン制御部301は、ビデオコントローラ119にシリアルステータス送信信号線303を介して接続されており、ビデオコントローラ119にステータスデータをシリアル通信で送信する。制御部としての主制御部101は、ビデオコントローラ119にシリアルステータス送信信号線305を介して接続されており、ビデオコントローラ119にステータスデータをシリアル通信で送信する。
【0034】
画像形成動作を行うに当たり、ビデオコントローラ119は、エンジン制御部301及び主制御部101に対し、シリアルコマンドを送信すると共に、エンジン制御部301及び主制御部101からのステータスデータを受信することで制御を行っている。このように、複数の装置が接続され動作する場合は、ビデオコントローラ119が各装置の制御や状態を一元管理し、各装置間の動作の整合性を保っている。
【0035】
主制御部101は、CPU306と、RAM307と、ROM308と、システムタイマ111と、通信手段320と、I/Oポート310と、等を有している。CPU306は、シート処理装置4の各種動作を制御する中央演算装置である。RAM307は、シート処理装置4の動作に必要となる制御データを一時的に記憶する揮発性メモリである。ROM308は、プログラムやシート処理装置4の動作に必要となる制御テーブルを記憶する不揮発性メモリである。
【0036】
システムタイマ111は、各種制御に必要なタイミングを生成し、通信手段320は、ビデオコントローラ119との交信処理を行う。これらCPU306、RAM307、ROM308、システムタイマ111及び通信手段320は、バス309を介してI/Oポート310に接続されており、I/Oポート310は、シート処理装置4の各種ユニットへ制御信号を出入力する。より具体的には、I/Oポート310は、入口センサ入力回路311及びパンチ前センサ入力回路312をそれぞれ介して、入口センサ27及びパンチ前センサ63に接続されている。また、I/Oポート310は、パンチ駆動モータ駆動回路313及び入口モータ駆動回路314をそれぞれ介して、パンチ駆動モータ102及び入口モータ103に接続されている。入口モータ103は、入口ローラ21を駆動する。更に、I/Oポート310は、パンチHPセンサ入力回路315を介して、パンチHPセンサ69に接続されている。
【0037】
[機能構成]
図4は、画像形成システム1Sの機能構成を示すブロック図である。なお、
図4では、主に本実施の形態のシートへの穿孔制御に関係する部分のみを抜き出して示し、他の部分は省略している。
【0038】
主制御部101は、
図4に示すように、システムタイマ111、穿孔制御手段112、センサ制御手段116及びモータ制御手段117を有しており、画像形成システム1Sにおけるシートの搬送及び穿孔の制御を行う。センサ制御手段116には、入口センサ27及び穿孔装置60のパンチ前センサ63及びパンチHPセンサ69からの信号が入力される。センサ制御手段116は、各検知位置でのシートの有無に関する情報及びパンチ61の位置に関する情報を穿孔制御手段112に出力する。穿孔制御手段112は、モータ制御手段117を制御することで、パンチ61、ダイス62及びパンチHPフラグ70を駆動するパンチ駆動モータ102と、入口ローラ21を駆動する入口モータ103と、を駆動させる。
【0039】
穿孔制御手段112は、穿孔間距離算出手段113と、パンチ回転位置管理手段114と、穿孔判断手段115と、パンチ駆動制御手段120と、を有している。穿孔制御手段112は、入口センサ27及びパンチ前センサ63の検知位置をシートの先端及び後端が通過する時刻に基づいて、先行シートと後続シートとの間の距離である紙間を検知する。また、穿孔制御手段112は、入口センサ27がシートの先端を検知した時刻を記憶する。
【0040】
穿孔間距離算出手段113は、先行シートの最後の穿孔位置と後続シートの最初の穿孔位置とのシート搬送方向における間隔である穿孔間距離を算出する。なお、同一シート内に複数の孔が明けられる場合、これら複数の孔の間隔及び位置(以下、予定穿孔位置情報とする)は規格によって予め決まっている。予定穿孔位置情報は、コントローラから受信する。例えばA4サイズの同一シートに2孔を明ける場合には、これらの孔の間隔は80mmであり、LTRサイズの同一シートに3孔(北米3孔)を明ける場合には、これらの孔の間隔は108mmである。上記穿孔間距離は、紙間と、予定穿孔位置情報と、シートの先端又は後端から穿孔位置までの距離と、等から算出される。
【0041】
パンチ回転位置管理手段114は、パンチ駆動モータ102の駆動ステップ情報と、パンチHPセンサ69の情報から、パンチ61の回転位置に関する情報(以下、パンチ回転位置情報とする)を管理する。パンチ回転位置情報は、パンチHPセンサ69によって検知されるパンチ61のホームポジションを起点に求められる。穿孔判断手段115は、パンチ回転位置情報と、穿孔間距離と、各モータの制御範囲情報と、から、後続シートの所望の位置に穿孔することが可能か判断し、その結果をパンチ駆動制御手段120に通知する。パンチ61の回転位置は、パンチ61のホームポジション(
図2(a)参照)に対する、パンチ軸65を回転中心とした回転方向におけるパンチ61の位置である。なお、パンチ61の回転位置は、パンチHPセンサ69を用いず、例えばエンコーダやポテンショメータ等を用いて検知してもよい。
【0042】
パンチ駆動制御手段120は、穿孔判断手段115による穿孔判断の結果と、算出された穿孔間距離と、パンチ回転位置情報と、パンチ前センサ63の情報と、から、パンチ駆動モータ102の動作を加減速して制御する。そして、パンチ駆動制御手段120は、パンチ駆動モータ102を停止してシートへの穿孔を停止するか、あるいはパンチ駆動モータ102を停止しての駆動を継続してシートへの穿孔を実施する。
【0043】
そして、穿孔制御手段112は、センサ制御手段116から受け取った各センサによって検知されるシートの位置情報と、パンチ回転位置管理手段114が管理するパンチ回転位置情報に基づいて、パンチ61の回転制御とシートの搬送制御を行う。この時、穿孔制御手段112は、各センサにおけるシート位置情報を監視つつ、システムタイマ111やモータ制御手段117が制御するモータの駆動ステップ数などを用いて、所定タイミングで各モータを駆動させる。
【0044】
[穿孔制御]
次に、
図5乃至
図6(b)を参照して、複数枚のシートに連続して穿孔する穿孔制御について説明する。
図5に示すように、穿孔制御が開始されると、主制御部101は、先行シートの穿孔が終了したか否かを判断する(ステップS1)。穿孔の終了は、パンチ駆動モータ102によってパンチ61が噛合位置に位置したことに基づいて判断される。
【0045】
先行シートの穿孔が終了したと判断された場合(ステップS1:Yes)、主制御部101は、後続シートの位置情報を取得する(ステップS2)。後続シートの位置情報は、入口センサ27の検知結果に基づいて得られる。すなわち、先行シートの穿孔終了時に、入口センサ27によって既に後続シートの先端が検知されている場合には、入口センサ27がONとなったタイミングから後続シートの位置情報が求められる。先行シートの穿孔終了時に、入口センサ27によって後続シートの先端が検知されていない場合には、先行シートと後続シートは十分に距離が空いているものと判断する。
【0046】
そして、主制御部101は、ステップS2で得られた後続シートの位置情報を基に先行シートと後続シートの穿孔間距離D1を算出する(ステップS3)。すなわち、穿孔間距離D1は、入口センサ27の検知結果に基づいて求められる、先行シートの最後の穿孔位置と後続シートの最初の穿孔位置とのシート搬送方向における間隔である。穿孔間距離D1の算出は、主制御部101の穿孔間距離算出手段113によって行われる。以降、本穿孔制御は、算出された穿孔間距離D1に応じて、一時停止制御と、モータ加減速制御と、モータ粗調微調制御と、の3つの制御方式のいずれかでパンチ駆動モータ102を制御する。3つの制御方式のうち、どの制御方式を選択するかの判断は、穿孔判断手段115が行う。
【0047】
穿孔間距離D1が十分に長い場合には、一時停止制御が実行される。一時停止制御は、パンチ61の回転位置をホームポジションで一時停止させ、後続シートがパンチ前センサ63に到達するのを待つ制御である。
【0048】
モータ加減速制御及びモータ粗調微調制御は、基本的に、パンチ61を一時停止することなく、パンチ61の回転速度を変更する制御である。先行シートへの穿孔処理終了時に、後続シートがパンチ前センサ63によって既に検知されている場合にはモータ加減速制御が実行され、後続シートがパンチ前センサ63によって検知されていない場合にはモータ粗調微調制御が実行される。
【0049】
本実施の形態では、モータ加減速制御又はモータ粗調微調制御を実行する際に、パンチ駆動モータ102の加減速制御の能力範囲を加味して、穿孔が可能か否かの判断を行う。この判断は、主制御部101の穿孔判断手段115によって行われる。以下、順番に3つの制御方式について説明する。
【0050】
[一時停止制御]
まず、一時停止制御を実行する場合について説明する。主制御部101は、
図5に示すように、ステップS3において算出された穿孔間距離D1が150mm以上であるかを判断する(ステップS4)。そして、穿孔間距離D1が150mm以上であると判断された場合(ステップS4:YES)、上記一時停止制御を実行する。穿孔間距離D1の閾値である150mmという値は、本実施例において決めた値であり、パンチ前センサ63とパンチ61との距離、装置構成やモータの仕様などに応じて決めるべき値である。
【0051】
本実施例では、パンチ駆動モータ102の動作仕様として、シート搬送速度を420mm/sec、このシート搬送速度と同期するパンチ駆動モータ102の回転速度を1000pps、パンチ駆動モータ102の回転速度の上限速度を2100ppsとする。また、本実施例では、パンチ駆動モータ102の回転速度の下限速度を500pps、パンチ駆動モータ102の速度変更時の傾きを35msec当たり1000ppsとする。また、パンチ61の1回転に要する時間は、ステッピングモータからなるパンチ駆動モータ102の駆動ステップ数で250ステップに相当する。
【0052】
パンチ61が先行シートに対して穿孔処理が終了したとき、パンチ駆動モータ102の回転速度(以下、穿孔速度とする)は1000ppsである。そして、上述した条件及び構成において、最短時間でパンチ61をホームポジションで一時停止させるためには、まずパンチ駆動モータ102が上限速度である2100ppsまで加速される。そして、パンチ駆動モータ102は、上限速度である2100ppsの速度を所定時間維持した後、ホームポジションでパンチ61が停止できるタイミングで減速を開始する。
【0053】
その後、所定のホールド時間が経過した後に、後続シートに穿孔処理を行うためにパンチ駆動モータ102は駆動が再開する。なお、ホールド時間は、ステッピングモータからなるパンチ駆動モータ102の振動が収まるまでに必要な時間である100msec以上に設定される。パンチ駆動モータ102は穿孔速度である1000ppsまで加速すると、パンチ61が後続シートに対して穿孔を行う。
【0054】
このような動作をパンチ1回転のステップ数である250ステップ内で行う場合、最低でも117.9mmの穿孔間距離D1が必要であると計算できる。すなわち、穿孔間距離D1が117.9mmよりも短い場合には、一時停止制御は実行不能となる。ここで、一時停止制御を実行するか、モータ加減速制御及びモータ粗調微調制御のいずれかを実行するかの判断に使用される閾値を、一時停止判断閾値と呼称する。本実施例では、搬送バラツキや検知誤差などを考慮してマージンを加えて、一時停止判断閾値を固定値である150mmに設定する。このようにして、装置構成やモータ駆動仕様に応じて、それぞれの場合において適切な一時停止判断閾値を予め定めておく必要がある。
【0055】
図5に示すフローチャートの説明に戻る。穿孔間距離D1が150mm以上であると判断された場合(ステップS4:YES)、主制御部101は、パンチ61をホームポジションで一時停止するように、パンチ駆動モータ102を制御する(ステップS5)。この時、上述したように、パンチ駆動モータ102は、1000ppsから2100ppsに加速してその速度を所定時間維持した後、ホームポジションでパンチ61が停止するようにスローダウンする。パンチ61のホームポジションは、パンチHPセンサ69がパンチHPフラグ70を検知する位置である。そして、主制御部101は、後続シートの先端がパンチ前センサ63で検知されるまでパンチ前センサ63を監視する(ステップS6)。
【0056】
後続シートの先端がパンチ前センサ63で検知された場合(ステップS6:Yes)、主制御部101は、パンチ駆動モータ102の駆動開始タイミングとなったか否かを判断する(ステップS7)。この駆動開始タイミングは、後続シートの先端から噛合位置におけるパンチ61までの距離と、パンチ駆動モータ102の停止状態から穿孔速度1000ppsに加速するまでの時間と、等を考慮して算出される。主制御部101は、システムタイマ111を用いて駆動開始タイミングとなるまで計時する。
【0057】
駆動開始タイミングとなった場合(ステップS7:Yes)、主制御部101は、パンチ駆動モータ102を穿孔速度となるように駆動開始させる(ステップS8)。以上により、後続シートの所望の位置に穿孔することができる。以上のように、一時停止制御を実行する場合には、ステップS4における一時停止判断閾値(本実施例では150mm)を正しく設定することにより、どのケースにいても穿孔が可能であり、後述するようなシートの穿孔を回避する処理を行うことは無い。
【0058】
[モータ加減速制御]
次に、モータ加減速制御を実行する場合について説明する。ステップS4において穿孔間距離D1が150mm未満であると判断された場合(ステップS4:NO)、主制御部101の穿孔判断手段115は、パンチ前センサ63によって後続シートが検知されているか否かを判断する(ステップS9)。パンチ前センサ63によって後続シートが検知されていると判断された場合(ステップS9:Yes)、後続シートはパンチ61の噛合位置に近づいてきており、それ以降のシートの搬送バラツキは、無視できるレベルである。
【0059】
よって、主制御部101は、パンチ駆動モータ102を加減速制御するモータ加減速制御を実行する。言い換えれば、穿孔間距離D1が一時停止判断閾値である150mm未満であり、かつ後続シートがパンチ前センサ63の第1検知位置に到達している場合、モータ加減速制御が実行される。
【0060】
モータ加減速制御では、基本的には、パンチ駆動モータ102を一時停止させることなく、パンチ駆動モータ102の回転制御を制御することで所望の穿孔間距離での穿孔を実現する。しかしながら、後続シートがすでにパンチ61の噛合位置に近いため、パンチ駆動モータ102の能力範囲を超えた補正が必要となり、後続シートの所望の位置に穿孔できない場合が生じる。よって、主制御部101の穿孔判断手段115は、後続シートの所望の位置に穿孔しようとした場合に、パンチ駆動モータ102の駆動能力範囲内であり、穿孔可能か否かを判断する(ステップS10)。
【0061】
穿孔可能であると判断された場合(ステップS10:YES)、主制御部101のパンチ駆動制御手段120は、パンチ駆動モータ102の加減速制御を行い(ステップS11)、処理を終了する。一方、パンチ駆動モータ102の駆動能力範囲外であり穿孔不可能であると判断された場合(ステップS10:NO)、穿孔判断手段115は、パンチ61がホームポジションで停止するようにパンチ駆動モータ102を制御する(ステップS12)。
【0062】
次に、ステップS10における、穿孔判断手段115による穿孔可能か否かの判断について
図6(a)を参照して詳述する。主制御部101の穿孔間距離算出手段113は、まずパンチ前センサ63の検知結果に基づく先行シートと後続シートの位置情報と、先行シートおよび後続シートの予定穿孔位置情報と、から穿孔間距離D2を算出する(ステップS30)。すなわち、穿孔間距離D2は、パンチ前センサ63の検知結果に基づいて求められる、先行シートの最後の穿孔位置と後続シートの最初の穿孔位置とのシート搬送方向における間隔である。
【0063】
次に、主制御部101の穿孔判断手段115は、算出された穿孔間距離D2が、パンチ駆動モータ102によって対応可能な穿孔間距離の範囲内か否かを判断する(ステップS31)。具体的には、算出された穿孔間距離D2が、下記の表1に示す、パンチ61が1回転(パンチ駆動モータ102の駆動ステップ数で250ステップに相当)で対応可能な穿孔間距離の範囲に入っているかを確認する。
【表1】
【0064】
すなわち、本実施例では、ステップS31において、穿孔判断手段115は、67.0≦D2≦188.7の範囲内に穿孔間距離D2があるかを判断する。そして、穿孔間距離D2が対応可能な穿孔間距離の範囲内であると判断された場合(ステップS31:YES)、穿孔判断手段115は、穿孔可能であると判断する(ステップS32)。また、穿孔間距離D2が対応可能な穿孔間距離の範囲外であると判断された場合(ステップS31:NO)、穿孔判断手段115は、穿孔不可能であると判断する(ステップS33)。
【0065】
穿孔可能と判断された場合、パンチ駆動制御手段120は、穿孔間距離D2に相当するシート搬送時間でパンチ61が1回転(250ステップ)するように、パンチ駆動モータ102の目標速度及び速度変更タイミングを算出して制御する。
【0066】
[モータ粗調微調制御]
次に、モータ粗調微調制御を実行する場合について説明する。制御モードとしてのモータ粗調微調制御は、第1処理としてのモータ粗調制御(ステップS13)と、第2処理としてのモータ微調制御(ステップS17)と、を含む。
図5に示すように、ステップS9においてパンチ前センサ63によって後続シートが検知されていないと判断された場合(ステップS9:NO)、後続シートはパンチ61の噛合位置にまだ近づいておらず、後続シートの位置を精度良く検知できていない。しかしながら、パンチ駆動モータ102を一時停止させるほど穿孔間距離が開いているわけではないという状態である。
【0067】
このような場合、主制御部101の穿孔判断手段115は、モータ粗調制御を実行する(ステップS13)。モータ粗調制御では、パンチ前センサ63よりもシート搬送方向において上流に配置された入口センサ27の検知結果を用いてパンチ駆動モータ102を制御する。具体的には、入口センサ27によって検知された後続シートの位置情報、すなわち入口センサ27の検知結果に基づいて求められた穿孔間距離D1を用いて、パンチ駆動モータ102を加減速制御する。
【0068】
このように、パンチ61からある程度離れた入口センサ27によって得られた後続シートの位置情報は、この後に搬送バラツキが発生する余地があるため、さほど精度が高くない情報である。このため、モータ粗調制御の後に、より精度が高い情報を基にモータ微調制御が実行される。
【0069】
モータ粗調制御に続いてモータ微調制御が行われるため、パンチ61の1回転に要するステップ数である250ステップの内、モータ粗調制御全てに250ステップを割り当てるのではなく、モータ微調制御に割り当てるステップ数を残す必要がある。本実施例では、モータ粗調制御に170ステップを割り当て、残りの80ステップをモータ微調制御に割り当てている。
【0070】
なお、以下の表2に示すように、モータ粗調制御に割り当てるステップ数は、170ステップに限らず任意に設定してもよく、モータ粗調制御に割り当てるステップ数に応じて、モータ粗調制御において対応可能な穿孔間距離が変化する。
【表2】
【0071】
また、本実施例では、モータ粗調制御の終了時に、パンチ駆動モータ102の回転速度を穿孔時速度である1000ppsに戻すものとする。これは、モータ粗調制御及びモータ微調制御の速度制御の計算を比較的簡易に行うための処理であり、必ずしも穿孔時速度に戻す必要はない。すなわち、モータ粗調制御からモータ微調制御への切り替え時のモータ速度は、任意に設定してもよい。
【0072】
シートの搬送バラツキが無い場合、モータ粗調制御は、先行シートに対する穿孔処理が終了してから後続シートの先端がパンチ前センサ63の第1検知位置に到達するまでの間実行される。モータ微調制御は、後続シートの先端がパンチ前センサ63の第1検知位置に到達してからパンチ61の所定位置としてのパンチ位置に到達するまでの間実行される。しかしながら、シートの搬送バラツキがあると、例えばモータ粗調制御は先行シートに対する穿孔処理が終了してから後続シートの先端がパンチ前センサ63の第1検知位置に到達する前に終了する。
【0073】
モータ粗調制御は、後続シートの先端が第1検知位置に到達した後、後続シートの搬送バラツキが無く、かつパンチ駆動モータ102の速度を1000ppsのまま維持した場合、後続シートの所望の位置に穿孔できるような制御に設定されている。例えば、モータ粗調制御では、パンチ駆動モータ102を、目標速度まで増速させた後、目標速度で所定時間駆動し、その後穿孔速度である1000ppsに減速させる。
【0074】
次に、モータ微調制御について説明する。
図5に示すように、主制御部101は、モータ粗調制御が終了したか否かを監視する(ステップS14)。モータ粗調制御が終了した場合(ステップS14:YES)、主制御部101は、パンチ前センサ63によって後続シートの先端が検知されたか否かを監視する(ステップS15)。
【0075】
パンチ前センサ63によって後続シートの先端が検知された場合(ステップS15:YES)、主制御部101の穿孔判断手段115は、パンチ駆動モータ102の駆動能力範囲を超えずに穿孔可能か否かを判断する(ステップS16)。すなわち、穿孔判断手段115は、入口センサ27からパンチ前センサ63までの間の搬送バラツキを再度調整するために、パンチ駆動モータ102の駆動を調整して穿孔可能かを判断する。
【0076】
穿孔可能であると判断された場合(ステップS16:YES)、主制御部101のパンチ駆動制御手段120は、後述するモータ微調制御を行い(ステップS17)、処理を終了する。モータ微調制御では、後続シートの所望の位置に穿孔できるようにパンチ駆動モータ102を制御する。
【0077】
パンチ駆動モータ102の駆動能力範囲外であり穿孔不可能であると判断された場合(ステップS16:NO)、穿孔判断手段115は、パンチ61がホームポジションで停止するようにパンチ駆動モータ102を制御し(ステップS18)、処理を終了する。
【0078】
次に、ステップS16における、穿孔判断手段115による穿孔可能か否かの判断について
図6(b)を参照して詳述する。主制御部101の穿孔間距離算出手段113は、まずパンチ前センサ63の検知結果に基づく先行シートと後続シートの位置情報と、先行シートおよび後続シートの予定穿孔位置情報と、から穿孔間距離D2を算出する(ステップS40)。
【0079】
次に、穿孔判断手段115は、穿孔間距離D1と穿孔間距離D2の差Gが、モータ微調制御に割り当てられたステップ数で調整可能な補正距離(以下、対応補正距離とする)の範囲内か否かを判断する(ステップS41)。差Gは、D2-D1で求められる。また、上記補正距離は、下記の表3に示すように、モータ微調制御に割り当てるステップ数に応じて、変化する。
【表3】
【0080】
そして、差Gが対応補正距離の範囲内であると判断された場合(ステップS41:YES)、穿孔判断手段115は、穿孔可能であると判断する(ステップS42)。また、差Gが対応補正距離離の範囲外であると判断された場合(ステップS41:NO)、穿孔判断手段115は、穿孔不可能であると判断する(ステップS43)。
【0081】
穿孔可能と判断された場合、パンチ駆動制御手段120は穿孔間距離D2に相当するシート搬送時間でパンチ61が1回転(250ステップ)するように、パンチ駆動モータ102の目標速度及び速度変更タイミングを算出して制御するモータ微調制御を行う。例えば、モータ微調制御では、パンチ駆動モータ102を、目標速度まで増速させた後、目標速度で所定時間駆動し、その後穿孔速度である1000ppsに減速させる。
【0082】
以上のように、本実施の形態では、後続シートがパンチ前センサ63の第1検知位置に到達した際に、穿孔間距離D2とパンチ61の回転位置とに基づいて後続シートへの穿孔が可能か不可能かを判断する(ステップS10,S16)。後続シートへの穿孔が不可能であると判断された場合(ステップS10,S16:NO)、主制御部101は、パンチ61をホームポジションで停止するようにパンチ駆動モータ102を制御する回避処理を実行する(ステップS12,S18)。すなわち、主制御部101は、モータ加減速制御及びモータ粗調微調制御において、回避処理を実行可能である。なお、パンチ61及びダイス62は、回転位置としてのホームポジションにおいて、入口ローラ21によって搬送されるシートに干渉しないように配置されている。また、回避処理は、後続シートの先端がパンチ61のパンチ位置に到達する前に完了される。
【0083】
回避処理が実行された場合、パンチ61及びダイス62がホームポジションで停止した状態で、入口ローラ21によって後続シートはパンチ61及びダイス62を通過する。このため、後続シートへの穿孔処理が回避され、ユーザの意図しない低精度の穿孔処理が防止される。ユーザは、回避処理が実行されて上排出トレイ25又は下排出トレイ37に排出されたシートに対し、別途、穿孔処理を行うことで、シートを有効活用することができる。
【0084】
また、本実施の形態では、先行シートの穿孔が終了した際に算出された穿孔間距離D1に応じて、一時停止制御、モータ加減速制御及びモータ粗調微調制御のいずれかが実行される。具体的には、穿孔間距離D1が一時停止判断閾値(150mm)以上の場合には、一時停止制御が実行される。特に、先行シートの穿孔が終了した際に、後続シートの先端が入口センサ27の第2検知位置よりもシート搬送方向上流に位置する場合、一時停止制御が実行される。
【0085】
また、穿孔間距離が一時停止判断閾値未満の場合、後続シートの先端がどの位置に位置するかによって、異なる制御でパンチ駆動モータ102を制御する。具体的には、先行シートの穿孔が終了した際に、後続シートの先端がパンチ前センサ63の第1検知位置よりもシート搬送方向下流に位置する場合、モータ加減速制御が実行される。先行シートの穿孔が終了した際に、後続シートの先端が入口センサ27の第2検知位置とパンチ前センサ63の第1検知位置との間に位置する場合、モータ粗調微調制御が実行される。
【0086】
特に、モータ加減速制御及びモータ粗調微調制御では、パンチ駆動モータ102を加減速することで紙間をより小さくすることができ、生産性を向上することができる。更に、モータ粗調微調制御では、モータ粗調制御とモータ微調制御の2段階でパンチ駆動モータ102を加減速制御するため、加減速の幅を小さくすることができ、モータ音を低減すると共に省エネに寄与することができる。また、パンチ61により近いパンチ前センサ63の検知結果に基づいてモータ微調制御を実行するので、精度良くシートに穿孔することができる。このように、穿孔精度と生産性の向上を両立したシート処理装置及びこれを備えた画像形成システムを提供することができる。
【0087】
<第2の実施の形態>
次いで、本発明の第2の実施の形態について説明するが、第2の実施の形態は、第1の実施の形態のとは異なる方法で回避処理を行うように構成したものである。このため、第1の実施の形態と同様の構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
【0088】
図7は、本実施の形態のハードウェア構成を示すブロック図である。なお、
図7では、主に本実施の形態の制御に関係するシート処理装置4(
図1参照)の構成を示し、他の構成は省略している。
【0089】
図7に示すように、本実施の形態に係るシート処理装置4(
図1参照)は、第1の実施の形態で説明した構成に加えて、パンチ移動モータ入力回路800と、パンチ移動部としてのパンチ移動モータ801と、を有している。I/Oポート310は、パンチ移動モータ入力回路800を介して、パンチ移動モータ801に接続されている。パンチ移動モータ801は、
図10(a)(b)に示すように、シート搬送方向CDに直交する幅方向W、すなわちパンチ61及びダイス62の回転軸線方向に穿孔装置60(
図1参照)を移動することができる。
【0090】
また、
図8は、本実施の形態の機能構成を示すブロック図である。なお、
図8では、主に本実施の形態のシートへの穿孔制御に関係する部分のみを抜き出して示し、他の部分は省略している。
【0091】
穿孔制御手段112は、モータ制御手段117を介して、パンチ移動モータ801を制御するパンチ移動制御手段700を有している。パンチ移動制御手段700は、コントローラから予定穿孔位置情報を受信した後であってシートの穿孔の前までに、パンチ移動モータ801を駆動し、穿孔装置60を幅方向Wにおける所定の位置に移動させる回避処理を実行できる。
【0092】
[穿孔装置の移動]
次に、シートに対して穿孔処理をする際の、穿孔装置60の移動について、10(a)(b)を用いて詳しく説明する。
図10(a)(b)は、穿孔装置60及びシートを示す平面図である。また、
図10(a)(b)において、穿孔装置60は、例えば穿孔処理を行わないジョブにおいては、初期待機位置192で待機する。初期待機位置は、穿孔装置60のパンチ61及びダイス62が搬送されるシートに干渉しない位置に設定される。そして、穿孔装置60は、シートに対して穿孔処理を行うときには、初期待機位置192から搬送路中心線191に近づくように幅方向Wに移動する。
【0093】
図10(a)においては、例えばA4サイズのシートが搬送され、
図10(b)においては、例えばA5サイズのシートが搬送されている。シートの幅方向Wにおけるサイズが異なる場合、穿孔装置60の初期待機位置192からの移動距離も変わってくる。なお、初期待機位置192から搬送路中心線191までの距離は、距離L1である。
【0094】
図10(a)に示すように、A4サイズのシートに穿孔処理を行う際には、穿孔装置60は、初期待機位置192から距離L3だけ幅方向Wに移動する。そして、穿孔装置60は、距離L2だけ幅方向Wにおいてシートの内側に進入した位置で待機し、シートに対して第1孔193及び第2孔194を穿孔する。
【0095】
また、
図10(b)に示すように、A5サイズのシートに穿孔処理を行う際には、穿孔装置60は、初期待機位置192から距離L4だけ幅方向Wに移動する。そして、穿孔装置60は、距離L2だけ幅方向Wにおいてシートの内側に進入した位置で待機し、シートに対して第1孔195及び第2孔196を穿孔する。
【0096】
[穿孔制御]
次に、
図9乃至
図10(b)を参照して、複数枚のシートに連続して穿孔する穿孔制御について説明する。なお、本実施の形態は、第1の実施の形態において
図5で説明したフローチャートのステップS12,S18をステップS51,S52に置き換えた点のみが異なる。このため、他のステップについては説明を省略する。
【0097】
図9に示すように、穿孔不可能であると判断された場合(ステップS10,S16:NO)、パンチ移動制御手段700は、パンチ61を含む穿孔装置60を初期待機位置に退避させるように回避処理を実行する(ステップS51,S52)。穿孔装置60の初期待機位置への退避は、パンチ移動モータ801を制御することで行われる。なお、回避処理は、後続シートの先端が穿孔装置60のパンチ61の噛合位置に到達する前に完了される。
【0098】
以上のように、本実施の形態では、後続シートへの穿孔が不可能であると判断された場合(ステップS10,S16:NO)、主制御部101は、穿孔装置60を初期待機位置に退避させる回避処理を実行する(ステップS12,S18)。なお、パンチ61及びダイス62は、穿孔装置60が初期待機位置に位置する状態において、幅方向Wに関して後続シートに重ならない位置にあり、シートの搬送を妨げることが無いように配置されている。
【0099】
回避処理が実行された場合、入口ローラ21によって後続シートは幅方向Wにおいてパンチ61及びダイス62とは重ならない位置を通過する。このため、後続シートへの穿孔処理が回避され、ユーザの意図しない低精度の穿孔処理が防止される。ユーザは、回避処理が実行されて上排出トレイ25又は下排出トレイ37に排出されたシートに対し、別途、穿孔処理を行うことで、シートを有効活用することができる。
【0100】
<その他の実施形態>
なお、第1の実施の形態では、回避処理において、ホームポジションでパンチ61を回転停止させたが、これに限定されない。ここで、パンチ61は、入口ローラ21によって搬送されるシートに干渉可能な第1の回転範囲と、入口ローラ21によって搬送されるシートに干渉しない第2の回転範囲と、を有している。第1の回転範囲は、
図2(b)に示すような噛合位置を含み、例えばシートに穿孔する際に、パンチ61がシートに接触開始してから離間するまでの回転範囲である。第2の回転範囲は、第1の回転範囲以外の回転範囲である。そして、主制御部101は、回避処理において、先行シートの後端がパンチ61のパンチ位置を通過してから後続シートの先端がパンチ位置に到達するまでの間に、第1の回転範囲を通過するようにパンチ駆動モータ102を制御してもよい。これにより、後続シートへの穿孔処理が回避され、ユーザの意図しない低精度の穿孔処理が防止される。また、ホームポジションに限らず、第2の回転範囲のいずれかの位置でパンチ61を停止させてもよい。
【0101】
また、既述のいずれの形態においても、入口センサ27及びパンチ前センサ63の2つのセンサでシートの位置を検知していたが、これに限定されない。例えば、入口センサ27を省いてもよく、この場合、主制御部101は、パンチ前センサ63によって検知された後述シートの位置に応じてパンチ駆動モータ102を加減速制御する。
【0102】
また、既述のいずれの形態においても、電子写真方式の画像形成装置1を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ノズルからインク液を吐出させることでシートに画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置にも本発明を適用することが可能である。
【0103】
本発明は上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0104】
1:画像形成装置/1S:画像形成システム/4:シート処理装置/21:搬送部(入口ローラ)/24:反転部(反転ローラ)/26,28,29:回転体対(内排出ローラ、中間搬送ローラ、蹴り出しローラ)/27:第2センサ(入口センサ)/36:排出部(束排出ローラ)/39:積載部(中間積載部)/61:パンチ部材(パンチ)/63:センサ、第1センサ(パンチ前センサ)/69:回転位置検知センサ(パンチHPセンサ)/81:第1搬送路(受入パス)/82:第2搬送路(内排出パス)/84:第3搬送路(第2排出パス)/101:制御部(主制御部)/102:駆動源(パンチ駆動モータ)/801:パンチ移動モータ(パンチ移動部)/CD:シート搬送方向/D1,D2:穿孔間距離/G:差/W:幅方向(回転軸線方向)