(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】モータ駆動装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H02P 5/46 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
H02P5/46 D
H02P5/46 J
(21)【出願番号】P 2020049728
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】黒木 謙治
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-093183(JP,A)
【文献】特開2011-215372(JP,A)
【文献】特開2011-025597(JP,A)
【文献】特開2019-168648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/00-5/753
H02P 29/00-29/68
B65H 7/00-7/20;43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置全体の制御を行うメイン制御部と、
用紙の搬送を行う複数のモータについての制御と状態監視と、用紙を検知するセンサを備えたサブ制御部とによって構成され、
前記サブ制御部は、前記メイン制御部からの指示に従って、接続されたモータの制御状態を第一の周期毎に取得したトルク情報について、予め設定された回数の平均値を計算し、
前記メイン制御部は、前記モータが駆動する搬送ローラに前記サブ制御部に紙先端が到達する予定時刻の前から、紙後端が抜けたことを前記センサで検知するまでの間、前記サブ制御部が有する前記平均値を、予め指定された回数ごとに転送することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記メイン制御部は、前記サブ制御部に接続されたモータの制御状態を所定周期ごとに演算したトルク情報について、
前記モータが駆動する搬送ローラに前記サブ制御部に紙先端が到達する予定時刻の前から、紙後端が抜けたことを前記センサで検知するまでの間、前記複数のモータのうち予め決められた数以下の平均化前の情報を転送することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記メイン制御部と、前記サブ制御部はシリアル通信で接続され、
前記メイン制御部は、平均化前の情報を転送する時に、
前記複数のモータのうち、同一のシリアル通信チャネルに接続されたモータについて予め決められた数以下において、
前記モータが駆動する搬送ローラに前記サブ制御部に紙先端が到達する予定時刻の前から、紙後端が抜けたことを前記センサで検知するまでの間、平均化前の情報を転送することを特徴とする請求項2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記メイン制御部は、前記サブ制御部に接続された前記モータが駆動する搬送ローラについて、紙先端が到達する予定時刻の前から紙後端が抜けたと検知するまでの間に取得したトルク情報に対して、
トルク値に基づいて異常を特定すると共に、異常が有ることを検出した場合には、前記メイン制御部に接続された通信手段もしくは表示手段によって異常が発生したことを通知することを特徴とする請求項2に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベクトル制御を実施するモータを備えた画像形成装置における通信制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の複写機では、低電力で高生産性を出すためのモータの制御方法として、モータの回転子の回転位相を基準とした回転座標系における電流値を制御することによってモータを制御する、ベクトル制御と称される制御方法が知られている。
【0003】
具体的には、例えば、回転子の位相指令と実際の回転位相との偏差が小さくなるように前記電流値を制御する位相フィードバック制御を行うことによってモータを制御する。また、回転子の指令速度と実際の回転速度との偏差が小さくなるように前記電流値を制御する速度フィードバック制御を行うことによってモータを制御する手法もある。
【0004】
ベクトル制御を行うと、モータの巻線に供給する駆動電流を、回転子が回転するためのトルクを発生させる電流成分と、回転子の磁束強度に影響する電流成分とに分けて制御することができる。この結果、回転子にかかる負荷トルクが変化しても、負荷トルクの変化に応じて電流を制御することによって、回転に必要なトルクを効率的に発生させることができるため、モータで消費する電流を最適化することができる(参考文献1)。
【0005】
複写機装置は、
図1に示すように、給紙部12~16、レジ部17~18、作像部20~21、定着部22~23など、排紙部24、など多数の搬送ローラが取り付けられている。各所に配置されたモータを制御するために、モータの制御信号を出力するCPUやASICを複数の基板に分散配置している。
【0006】
このような構成の場合、全体の搬送シーケンスを制御するメイン制御部と、各モータを制御する複数のサブ制御部によって分かれた構成を取ることが多い。これらは通信信号線で接続され、メイン制御部はサブ制御部に対して動作の指示を行い、サブ制御部はメイン制御部に対して動作状況を通知することができるような構成を取る。
【0007】
そのため、各サブ制御部が制御しているモータの異常要因を特定しようとした場合、メイン制御部が各サブ制御に接続された各モータの制御情報を取得する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先に述べた負荷トルクは、モータに関する各所の要因、例えばモータで駆動されるローラによって搬送される用紙や、それら駆動を伝達するギアやシャフト、搬送部のガイド部材などによって変動する。そのため、負荷トルクの変動を分析することで、複写機内で発生している異常の要因を特定できる場合がある。
【0010】
昨今、より多くのデータから傾向を分析して要因を特定する深層学習技術が取り入れられ、異常の検出などに威力を発揮している。
【0011】
これらの分析を行うためにモータを制御するサブ制御部の制御情報をそのまま上位の制御部へと送信しようとすると、接続されているモータの数や制御情報の周期によっては通信帯域を占有する為、本来搬送制御に必要な情報を通信するのに遅延が発生してしまう。
【0012】
このような問題を解消するために通信速度を高くして通信帯域に余裕を持たすことも考えられるが、そうするとメイン制御部、サブ制御部ともに高速なCPUが必要になるためコストアップの要因となってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、
本発明はモータ制御装置であって、
装置全体の制御を行うメイン制御部と、
用紙搬送を行う複数のモータについての駆動制御と状態監視と、用紙搬送位置を検知するセンサを備えたサブ制御部とによって構成され、
前記サブ制御部は、前記メイン制御部からの指示に従って、接続されたモータの制御状態を第一の一定周期毎にサンプリングしたトルク情報について、予め設定された回数分の平均値を計算し、
前記メイン制御部は、前記モータが駆動する搬送ローラ部に前記サブ制御部に紙先端が到達する予定時刻の前から、紙後端が抜けたことを前記センサで検知するまでの間、前記サブ制御部が保持する前記平均値を、予め指定されたサンプリング回数ごとに転送する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果は、ベクトル制御モータなどのフィードバック機能を持つ駆動制御手段を複数、シリアル通信方式で制御部を接続した場合に、コストアップすることなく精度の高い稼働状況の分析を実現することができ、コスト制約と保守性の向上を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】本発明の実施例を説明するサブ制御部のフローチャート
【
図4】本発明の実施例1を説明するメイン制御部のフローチャート
【
図5】本発明の実施例1を説明するタイミングチャート
【
図6】本発明の実施例2を説明するメイン制御部のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0017】
最初に、本実施例の画像形成装置の断面図について、
図1で説明する。
【0018】
図1に示す電子写真方式の画像形成装置11は、用紙カセット12に格納されている用紙Pに画像形成を行う装置である。用紙Pは給紙ローラ104によって用紙カセット12から引き出され、正常に給紙できたことを給紙センサ14で検知される。そののち、用紙Pは縦パスローラ15によって上部へ搬送され、縦パスセンサ16によって正常に縦パス部を搬送できたことを検知される。
【0019】
さらに、用紙Pはレジストセンサ17まで搬送され、先端がレジストセンサ17に到達したタイミングを検知したのち、レジストローラ18によって画像形成部20によって形成された可視トナー像を二次転写する二次転写部21に搬送される。
【0020】
用紙Pは二次転写部21で可視トナー像が二次転写されたあと、定着前センサ22を経由して熱定着ローラ23によって可視トナー像を永久固着され、排紙フラッパ24を通って排紙縦パス30に搬送される。
【0021】
本実施例の画像形成装置のブロック図について、
図2で説明する。
【0022】
メイン制御部200は、メインCPU201、ROM202、RAM203、UART-I/F1(211)、UART-I/F2(212)、によって構成される。メイン制御部200はプリンタ装置(装置全体)各部の制御基板に指示を出し、全体の制御タイミングを統括する制御部である。
【0023】
メインCPU201は、ROM202に格納されたプログラムを読み込んで動作する。RAM203にはメインCPU201が演算を行う際の作業データを置く。
【0024】
UART-I/F211~212は、調歩同期式の2線シリアルインターフェイスであり、UART-I/F1は後述のサブ基板310、UART-I/F2はサブ基板410と双方向で接続されている。
【0025】
UART-I/F211~212は、CPU201から指定された8ビットのデータに対し、先頭にスタートビットを1ビット、末尾にストップビットを1ビット付加し、1ビットずつシリアル信号として送信する機能と、接続先から送信されたシリアル信号についてスタートビットを検出してから1ビットずつ受信し、ストップビットまでのデータを取り込む機能とを有する。これらを繰り返す事で、複数バイトのバイト列の送受信を行う事が出来る。
【0026】
サブ制御部1を構成するサブ基板310は、サブCPU1-311、ROM312、RAM313、UART-I/F314、タイマ315、I/Oポート320、PWM制御部321~323、フォトセンサ331~333、AD変換器341~343、モータドライバ351~353、モータ361~363によって構成される。
【0027】
サブCPU1-311は、サブ基板上の動作を制御するCPUであり、ROM312に格納されたプログラムを読み込んで動作する。
【0028】
ROM312は、サブCPU1-311が使用するプログラムコードおよびデータテーブルを格納する不揮発性メモリである。RAM313はサブCPU1-311が作業するためのデータを一時的に格納する揮発性メモリである。
【0029】
UART-I/F314は調歩同期式の2線シリアルインターフェイスであり、メイン基板200上のUART-I/F1 211と接続されている。
【0030】
タイマ315は、入力されたクロック信号をカウントし、サブCPU311に対して一定周期毎で処理を行うためのトリガを提供するための時計測手段である。
【0031】
I/Oポート320は、サブ基板220に接続された搬送センサの信号論理を読み取るため入力ポートによって構成される。I/Oポート320には搬送センサ331~333が接続されている。搬送センサ331~333はフォトインタラプタによって構成され、用紙が発光部と受光部の間を遮光するとLレベル、そうでない場合はHレベルを出力する。搬送センサ331は給紙センサ14に、搬送センサ332は縦パスセンサ16に、搬送センサ33はレジストセンサ17に接続される。
【0032】
PWM制御部321~323は、それぞれ4本の出力ポートを備え、サブCPU1-311によって設定されたレジスタ値に従った周期とデューティ比のパルス信号を、二相パターンとして出力する。
【0033】
モータドライバ351~353は、PWM制御部321~323が出力したそうパターンの駆動信号を元に、モータ361~363に駆動電流を流す回路である。
【0034】
AD変換器341~343は、モータドライバ351が実際にモータ361~363を駆動した電流についてI-V変換した電圧が入力されることで、モータ361~363の駆動電流を12ビットのデジタル値として読み取り可能である。
【0035】
モータ361~363はステッピングモータであり、モータドライバ351~353からの相パターンに応じた駆動電流によって回転駆動される。モータ361は給紙ローラ13を駆動する給紙モータ、モータ362は縦パスローラ15を駆動する縦パスモータ、モータ363はレジストローラ17を駆動するレジストモータである。
【0036】
PWM制御部321~323にはステッピングモータ361~363が接続されており、PWM制御部321~323が出力した二相パターンのPWM信号によって回転駆動される。
【0037】
サブCPU311は、AD変換器341~343から読み取った駆動電流に応じてフィードバック制御を行うため、現在のトルク値を演算して最適な駆動電流となるようにPWM制御部321~323のデューティに反映する制御を行う。AD変換器341~343から読み取った駆動電流の履歴や、トルク値の履歴はRAM313上に保存される。
【0038】
サブ制御部2を構成するサブ基板410は、サブCPU2-411、ROM412、RAM413、UART-I/F414、タイマ415、I/Oポート420、PWM制御部421~423、フォトセンサ431~433、AD変換器441~443、モータドライバ451~453、モータ461~463によって構成される。
【0039】
サブ基板410の構成はサブ制御部1と同様の構成であるため、差異についてのみ説明する。
【0040】
UART-I/F414は調歩同期式の2線シリアルインターフェイスであり、メイン基板200上のUART-I/F2 212と接続されている。
【0041】
モータ461~463はステッピングモータであり、モータ461は定着ローラ23を駆動する定着モータ、モータ462は排紙縦パスローラ31を駆動する縦パスモータ、モータ463は排紙ローラ32を駆動する排紙モータである。
【0042】
サブCPU411がAD変換器441~443から読み取った駆動電流に応じて演算を行い、PWM制御部421~423によってフィードバック制御を行うのは。サブ制御部1と同様である。
【0043】
[ベクトル制御のトルク値の平均値の演算]
図3でモータ361~363のベクトル制御の状態監視について説明する。
【0044】
図3は、サブCPU311が、サブ制御部のモータそれぞれのトルク平均値を得るための手順である。
【0045】
サブCPU311は、まずRAM313内のカウンタ値nを0に初期化した後(ステップS2001)、一定周期でトルク演算を行うにあたってタイマ315によって所定時間経過したか否かを判断する(ステップS2002)。そして、所定時間経過した場合ステップS2003へ分岐する。所定時間はベクトル制御の演算周期よりも長い時間を設定する。
【0046】
ステップS2003では、AD変換器341~343によって得られたモータドライバのA相、B相の駆動電流の各AD変換値を回転座標系に変換し、巻線に流れる駆動電流であるq軸成分を演算してモータの回転子に発生するトルク電流値を求める。
【0047】
次に、ステップS2004で現在メインCPUからトルク値平均化を指示されている状態か否かを判断し、トルク値平均化中であればステップS2005へ分岐する。メインCPUからトルク値平均化の指示については
図4で後述する。
【0048】
ステップS2005ではn周期目のトルク値を加算する。さらにステップS2006でnに1加算する。ステップS2007でnが指定回数mに到達したかを判断する。指定回数mに到達していればステップS2008へ分岐し、加算した値から平均値を計算してトルク平均値情報を更新するとともに、ステップS2009でnを0に初期化し、ステップS2010に分岐する。
【0049】
ステップS2002で所定時間経過していない場合、ステップS2004でトルク値平均化中でない場合、ステップS2005でnが指定回数mに達していない場合は、トルク平均値を更新せずにステップS2010に分岐する。
【0050】
ステップS2010モータが停止状態か否かを判断し、モータが停止中であれば処理を終了し、停止中でなければステップS2002に戻って所定時間経過するのを待機する。
【0051】
本例では単純加算によってトルク情報の平均値を求めたが、移動平均値や、フィルタ演算によって平均値を求める方式も含む。
【0052】
[ベクトル制御状態の監視]
図4でモータ361~363のベクトル制御の状態監視について説明する。
【0053】
図4は、メインCPU201が、サブ制御部のモータそれぞれを通信経由で監視するための手順を説明したフロー図である。
【0054】
メインCPU201が、サブ制御部1-310のモータをUART通信経由でONすると(S2101)、モータが駆動するローラに用紙が挟持されるタイミングの直前に達するまで待機する(S2102)。当該タイミングは、対象のモータによって駆動される搬送ローラの前にセンサが配置されている場合は搬送センサのONタイミングであり、搬送ローラの前に搬送センサが配置されていない場合は直前の搬送センサを通過したタイミングと搬送ローラの速度から求めた時間によって決定される。給紙ローラ13の場合は、これよりも上流にモータが無いため、常に用紙を挟持した状態であるため、待機を行わない。
【0055】
当該モータが駆動するローラに用紙が到達するタイミングに達するとS2103に分岐して、トルク平均データの取得状態を開始する。
【0056】
次にS2104で同一通信チャネルとして管理されたサブ制御部内に、今現在平均前データ転送中のモータが有るか判定する。平均前データ転送中のモータがない場合、ステップS2105へ分岐して当該モータの直前の動作時に平均前データ転送をしていたかを判断し、そうでない場合はステップS2106に分岐して当該モータ平均前データ取得を開始する。今現在平均前データ転送中のモータが有る場合、および、当該モータが直前の動作時に平均前データ転送をしていた場合はステップS2108へ分岐する。
【0057】
ステップS2108では、サブ制御部側で所定回数平均済かを判定する。所定回数平均済みであれば、ステップS2109へ分岐して、メイン制御部は平均化済みのデータについて通信を介して取得する。ここでサブ制御部から取得する値はステップS2008でサブCPU1-311が計算した値である。
【0058】
次にステップS2110で、当該モータが平均前データ取得状態であるかを確認し、平均前データ取得状態である場合、ステップS2111で平均前データをサブ制御部側から通信を介して取得する。
【0059】
次にステップS2112で、当該モータが駆動する搬送ローラを紙後端が通過したかを、搬送センサがON→OFFの変化か、もしくは所定時間経過したことかで判定する。当該駆動部を追加したと判定した場合、ステップS2113で平均化済みデータの最終値を取得して制御フローを終了する。そうでない場合はステップS2108へ戻る。
【0060】
実際に通信タイミングについて、
図5のタイミングチャートを用いて説明する。
【0061】
まず給紙ローラ13を駆動する給紙モータ361の制御について説明する。
【0062】
タイミングS3001で給紙モータ361をオンしたことにより給紙ローラ13が駆動されると、給紙ローラの場合は用紙カセット12の用紙Pにモータ駆動開始時から接しているため、同一タイミングのタイミングS3002で当該モータの平均値情報の転送を開始する。この時、他に平均前データを転送しているモータが無いため、同一タイミングS3003で平均前のデータ転送を開始する。
【0063】
この後、用紙Pの1枚目が搬送され遮光した後、さらに搬送されタイミングS3005で用紙Pの紙後端が抜けたことを検知すると、タイミングS305に示すように搬送センサ331は非検知状態に戻る。これを検知したメインCPU201は、タイミングS3008でモータ361をオフするとともに、タイミングS3006で平均値情報の転送および、タイミングS3007で平均前情報の転送を停止する。
【0064】
用紙Pの2枚目については、ステップS3010でモータ361をオンし、1枚目と同様に搬送を行う。同一タイミングS3012で用紙Pを挟持し、同一タイミングのS3011で平均値の転送を開始するが、
図4のフローのステップS2106の判断により、2枚目については平均前データの転送を行わない。
【0065】
次に、縦パスローラ15を駆動する縦パスモータ362の場合の判断について説明する。
【0066】
縦パスモータ362は、給紙センサ14で用紙Pの先端が検知されてから距離分の時間が経過するより若干前のタイミングS3101にオンする。
【0067】
次に、縦パスローラ15を駆動開始してから実際に用紙Pの先端が到達する前のタイミングS3102で、タイミングS3002で当該モータの平均値情報の転送を開始する。しかし、この時、給紙ローラ13を駆動するモータ361が平均前データを転送中であるため、平均前のデータ転送は開始しない。
【0068】
この後、用紙Pの1枚目が縦パスセンサ16を遮光し縦パスローラ15が用紙Pを挟持した時点を含む平均値情報がメイン制御部に転送される。タイミングS3105で用紙Pの紙後端が抜けたことを検知すると搬送センサ332は非検知状態に復帰する。これに伴い、ステップS3108でモータ362をオフするとともに、ステップS3106で平均値情報の転送を停止する。
【0069】
その後、用紙Pの2枚目については、タイミングS3110でモータ362をオンし、1枚目と同様に搬送を行う。この時、タイミングS3110で当該モータをオンしてから用紙Pが到達する前のタイミングS3111においては、他に平均前情報のモータが無いため、同一タイミングS3103で平均前のデータ転送を開始する。
【0070】
用紙Pの2枚目が縦パスローラ15を通過したことを縦パスセンサ16で検出すると(S3113)、縦パスロータ15を停止し(S3115)、平均値情報の転送を停止(S3114)と平均前のデータ転送とを停止する(S3107)。
【0071】
次に、レジストローラ17を駆動するレジストモータ363の場合の判断について説明する。
【0072】
レジストモータ363は、用紙先端がレジストセンサ18を超えてレジストローラ17に達する前のタイミングS3201にオンする。そして、用紙先端がレジストローラ17に達するタイミングS3204より前のタイミングS3202に当該モータの平均値情報の転送を開始する。この時、給紙モータ361が平均前データを転送中であるため、当該モータの平均前のデータ転送を開始しない。
【0073】
この後、用紙Pの1枚目の後端がレジストセンサ18を抜けてから、レジストセンサ18~レジストローラ間の分の時間を経過したタイミングS3208でレジストモータ363をオフするとともに、同タイミングのS3206で平均値情報の転送を停止する。
【0074】
用紙Pの2枚目については、タイミングS3210でレジストモータ363をオンし、1枚目と同様に搬送を行う。レジストモータ363をオンしてから紙先端が到達するまでのタイミングS3211では、縦パスモータ362が平均前データを転送中であるため、当該モータの平均前のデータ転送は開始しない。
【0075】
さらに、用紙Pの3枚目については、タイミングS3220でレジストモータ362をオンし、1枚目、2枚目と同様に搬送を行う。レジストモータ363をオンしてから紙先端が到達するまでのタイミングS3221では、他に平均前情報を転送中であるモータがないため、タイミングS3203に示すように平均前データ転送を開始する。
【0076】
ステップS3222で紙先端が到達した後、ステップS3223で紙後端まで通過したのを検出すると、ステップS3224で平均値の転送を終了するとともにステップ3207で平均前データの転送を停止した後、ステップ3225で当該モータを停止する。
【0077】
これら
図4のフローによって、メイン制御部200のメインCPU201はサブ制御部310に接続されたモータ361~363のトルクの平均化前の値を取得することができる。
【0078】
この平均化前の値はRAM203に保存され、モータごとに高速フーリエ変換を行い、トルク情報に含まれる周波数成分を分解する。分解された周波数成分ごとの強度により、モータ361~363のシャフトや、これかモータ駆動する給紙ローラ13、縦パスローラ15、レジストローラ18のシャフト、ローラ自体に付着している異物の判定を行う。
【0079】
所定の周期ごとにトルクの強弱が発生していることで異物を検出した場合、LAN-I/F213に接続された管理サーバに対して当該駆動部に異常が発生していることを通知し、定期点検時にその箇所の点検を促す。また、液晶パネルI/F214に接続された液晶表示部220に、当該駆動部に異常が発生していることを表示し、部品交換や点検を促す。
【0080】
[異なる通信チャネルのトルク値の取得]
サブ制御部410はメインCPUのUART-I/F2-212に接続され、前述のサブ310とは別のシリアル通信チャネルに接続されている。
【0081】
メインCPU201は、サブ制御部410のサブCPU411から平均化前のトルク値を取得するための手順については、サブ制御部310の時と同じく
図4のフローに基づくが、サブ制御部310の時とサブ制御部410との差について説明する。
【0082】
先に説明した
図4のフローについて、メインCPU201はサブ制御部410に接続されたモータ461~463のトルク情報を取得しようとする。このとき、ステップS2104について、同一通信チャネル内で平均前データ転送中のモータが存在するか判断を行う。
【0083】
同一通信チャネルに含まれるのは、サブ制御部310ではモータ361~363であり、サブ制御部410ではモータ461~463である。
【0084】
ステップS2104で、サブ制御部310のモータ361について判断する際に、サブ制御部410のモータ461~463のいずれかが平均前データの転送中である場合は、同一通信チャネル内では平均前データ転送中のモータは無いと判断する。モータ362および363の場合も同様である。
【0085】
また、ステップS2104で、サブ制御部410のモータ461について判断する際に、サブ制御部310のモータ361~363のいずれかが平均前データの転送中である場合も、同一通信チャネル内では平均前データ転送中のモータは無いと判断する。
【0086】
このように、同一通信チャネル内で平均前データの転送中でない場合は、画像形装置内に他に平均前データの転送中のモータが無いと判断し、並列して平均前データの転送を行う。
【0087】
なお、本実施例ではSステップ2104で、同一通信チャネル内に平均前データを転送しているモータが他にあるか否か、および、ステップS2105で直前のモータON時に平均前データを転送済であるかを判定したが、これに加えて、用紙カセット12を開閉履歴が有るかをAND条件で合わせて判定してもよい。
【0088】
この場合、用紙束を用紙カセット12に補給した際に、用紙束の側面にバリが発生していたことによるひっかかりによって、主に給紙モータ361の始動タイミングで局所的にモータ駆動トルクが増大し、紙詰まりなどの発生確率が上がっていることが検出できる場合がある。
【0089】
以上説明したように、サブ制御部に複数接続されたモータに関する制御値について、平均化などデータを集約する前の値をメイン制御部へ転送する際に、同一通信チャネル内で重複しないタイミングで転送を行うことにより、通信速度を上げて高速なCPUを用いることなく、メイン制御部側で平均化前のデータによる詳細な要因分析を実現することができる。
【0090】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0091】
第2の実施の形態を実現する手段の接続構成は、第1の実施の形態と同様であり、
図1および
図2の通りであるため説明を省略する。
【0092】
図6でモータ361~363のベクトル制御の状態監視について説明する。
【0093】
図6は、
図4と同様に、メインCPU201がサブ制御部のモータそれぞれを通信経由で監視するための手順を説明したフロー図である。
【0094】
ステップS2201~S2206は
図4のステップS2101~S2106と同じであり、説明を省略する。
【0095】
ステップS2204で、同一通信チャネル内で平均前データの転送を行っているモータが他にある場合、もしくは、ステップS2205で直前にモータをオンした時に平均前のデータ転送をした場合、もしくは、ステップS2206で当該モータの平均前データの転送を開始した場合、ステップS2207へ分岐する。
【0096】
ステップS2207では、サブ制御部1内において、レジストセンサ17に用紙Pが突入する予定時刻の±10ms以内かを判定し、その時刻範囲内であれば、他の情報の転送処理を行わず待機する。その時刻範囲外であれば、ステップS2208へ分岐する。
【0097】
サブ制御部1において、レジストセンサ17が用紙Pの侵入を検知すると、サブCPU1-311はI/Oポート320に接続されたフォトセンサ333によってこれを検知し、UART-I/F314からメイン制御部へと送信する。この時、ステップS2207の判断により、モータ361~363のトルク値の平均前データと平均化したデータとも転送していないため、レジストセンサ17に用紙Pの先端が到達したことを最小限の遅延で転送することが出来る。
【0098】
ステップS2208~S2213は、
図4のステップS2108~S2213と同様である。
【0099】
以上説明したように、サブ制御部に複数接続されたモータに関する制御値について、平均化などデータを集約する前の値をメイン制御部へ転送する際に、同一通信チャネル内で重複しないタイミングで転送を行うことにより、通信速度を上げて高速なCPUを用いることなく、メイン制御部側で平均化前のデータによる詳細な要因分析を実現することができる。
【符号の説明】
【0100】
200 メイン制御部
201 メインCPU
202 ROM
203 RAM
211 UART-I/F1
212 UART-I/F2
213 LAN-I/F
214 液晶表示パネルI/F
220 液晶表示部
310 サブ制御部1
311 サブCPU1
312 ROM
313 RAM
314 UART-I/F
315 タイマ
320 I/Oポート
321,322,323 PWM制御部
331,332,333 フォトセンサ
341,342,343 AD変換器
351,352,353 モータドライバ回路
361,362,363 ステッピングモータ
410 サブ制御部2
411 サブCPU2
412 ROM
413 RAM
414 UART-I/F
415 タイマ
420 I/Oポート
421,422,423 PWM制御部
431,432,443 フォトセンサ
441,442,443 AD変換器
451,452,453 モータドライバ回路
461,462,463 ステッピングモータ