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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】シート供給装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/14 20060101AFI20240227BHJP
   B65H 7/14 20060101ALI20240227BHJP
   B65H 3/48 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B65H1/14 322A
B65H7/14
B65H3/48 320Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020052953
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151906
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】大河原 弥貴
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-137963(JP,A)
【文献】特開2015-134685(JP,A)
【文献】特開昭61-051444(JP,A)
【文献】特開2009-241478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
B65H 7/00-7/20
B65H 43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが積載された積載台と、
前記積載台を昇降させる駆動部と、
シートを浮上させるための空気を前記積載台上のシートに吹き付ける浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、
前記積載台上のシートの側方からシート側へ光を出射する発光部、およびシート側からの光を受光する受光部を有する検出部と、
前記搬送部によるシートの搬送周期ごとに設定された停止期間において前記浮上部による空気の吹き付けを停止するよう制御し、前記停止期間において、前記搬送部に搬送されるシート以外の前記浮上部により浮上させられたシートの落下中のタイミングで前記受光部の受光量を取得し、取得した受光量に基づき、前記駆動部を制御する制御部と
を備えることを特徴とするシート供給装置。
【請求項2】
シートが積載された積載台と、
前記積載台を昇降させる駆動部と、
シートを浮上させるための空気を前記積載台上のシートに吹き付ける浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、
前記積載台上のシートの側方からシート側へ光を出射する発光部、およびシート側からの光を受光する受光部を有する検出部と、
前記搬送部によるシートの搬送周期ごとに設定された停止期間において前記浮上部による空気の吹き付けを停止するよう制御し、前記停止期間において前記受光部の受光量を取得し、直近の複数回の前記停止期間において取得した受光量の平均値に基づき、前記駆動部を制御する制御部と
を備えることを特徴とするシート供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記停止期間において、前記搬送部に搬送されるシート以外の前記浮上部により浮上させられたシートの落下中のタイミングで前記受光部の受光量を取得することを特徴とする請求項2に記載のシート供給装置。
【請求項4】
シートが積載された積載台と、
前記積載台を昇降させる駆動部と、
シートを浮上させるための空気を前記積載台上のシートに吹き付ける浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、
前記積載台上のシートの側方からシート側へ光を出射する発光部、およびシート側からの光を受光する受光部を有する検出部と、
前記搬送部によるシートの搬送周期ごとに設定された停止期間において前記浮上部による空気の吹き付けを停止するよう制御し、前記搬送周期ごとの複数のタイミングにおける前記受光部の受光量の平均値に基づき、前記駆動部を制御する制御部と
を備えることを特徴とするシート供給装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記搬送周期ごとに、前記停止期間の開始時点の所定時間後の時点から当該停止期間の終了時点までの期間を除く期間における複数のタイミングにおいて前記受光部の受光量を取得して前記平均値を算出することを特徴とする請求項4に記載のシート供給装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記積載台を上昇させる際、前記停止期間において前記積載台の上昇を開始させるよう前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを供給するシート供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを供給するシート供給装置として、給紙台に積載された用紙に空気を吹き付けて用紙を浮上させ、浮上した用紙のうちの最上位(一番上)の用紙を吸着搬送手段により吸着搬送して給紙先に給紙する給紙装置が知られている。
【0003】
このような給紙装置において、光学式のセンサにより、浮上した用紙からの反射光による受光量(センサ値)を1枚の給紙ごとに1回取得し、取得したセンサ値が閾値未満の場合、給紙台を上昇させる制御が行われている(特許文献1参照)。これにより、給紙による給紙台上の用紙の減少に応じて給紙台を上昇させ、給紙台上の用紙を給紙に適切な高さ位置に維持している。
【0004】
ここで、給紙台の高さ位置が変わらなければ、給紙により給紙台上の用紙が減少すると、空気の吹出口からの吹き付けにより浮上可能な用紙の枚数が減少するため、センサの視界内に存在する用紙が減少し、取得されるセンサ値が低下する。そこで、上述のように、取得したセンサ値が閾値未満になると給紙台を上昇させることで、給紙台上の用紙を給紙に適切な高さ位置に維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-11150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のような給紙装置では、空気の吹き付けによる給紙台上の用紙揃えの悪化等により、用紙の浮上時に浮上ムラが生じることがある。そして、上述した用紙の減少に応じた給紙台の高さ位置の制御において、用紙の浮上ムラにより、センサ値にノイズが発生することがある。このノイズの影響により、給紙台の高さ位置の制御の精度が低下し、用紙の重送や空送等の、給紙の不具合が発生するおそれがある。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、シート供給の不具合を低減できるシート供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、シートが積載された積載台と、前記積載台を昇降させる駆動部と、シートを浮上させるための空気を前記積載台上のシートに吹き付ける浮上部と、前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、前記積載台上のシートの側方からシート側へ光を出射する発光部、およびシート側からの光を受光する受光部を有する検出部と、前記搬送部によるシートの搬送周期ごとに設定された停止期間において前記浮上部による空気の吹き付けを停止するよう制御し、前記停止期間において、前記搬送部に搬送されるシート以外の前記浮上部により浮上させられたシートの落下中のタイミングで前記受光部の受光量を取得し、取得した受光量に基づき、前記駆動部を制御する制御部とを備えることを特徴とするシート供給装置が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、シートが積載された積載台と、前記積載台を昇降させる駆動部と、シートを浮上させるための空気を前記積載台上のシートに吹き付ける浮上部と、前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、前記積載台上のシートの側方からシート側へ光を出射する発光部、およびシート側からの光を受光する受光部を有する検出部と、前記搬送部によるシートの搬送周期ごとに設定された停止期間において前記浮上部による空気の吹き付けを停止するよう制御し、前記停止期間において前記受光部の受光量を取得し、直近の複数回の前記停止期間において取得した受光量の平均値に基づき、前記駆動部を制御する制御部とを備えることを特徴とするシート供給装置が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、シートが積載された積載台と、前記積載台を昇降させる駆動部と、シートを浮上させるための空気を前記積載台上のシートに吹き付ける浮上部と、前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、前記積載台上のシートの側方からシート側へ光を出射する発光部、およびシート側からの光を受光する受光部を有する検出部と、前記搬送部によるシートの搬送周期ごとに設定された停止期間において前記浮上部による空気の吹き付けを停止するよう制御し、前記搬送周期ごとの複数のタイミングにおける前記受光部の受光量の平均値に基づき、前記駆動部を制御する制御部とを備えることを特徴とするシート供給装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシート供給装置によれば、シート供給の不具合を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る給紙装置の概略構成図である。
図2図1に示す給紙装置の制御ブロック図である。
図3図1に示す給紙装置の部分拡大平面図である。
図4図1に示す給紙装置のメイン浮上エア吹出口近傍の拡大図である。
図5図1に示す給紙装置のサイドフェンスの部分拡大図である。
図6】用紙の浮上状態を示す図である。
図7】第1実施形態におけるセンサ値取得タイミングを示す図である。
図8】第1実施形態における上限追従制御を説明するためのフローチャートである。
図9】第2実施形態における上限追従制御を説明するためのフローチャートである。
図10】センサ値の推移の一例を示す図である。
図11図10のセンサ値から算出される移動平均値を示す図である。
図12】第3実施形態における上限追従制御を説明するためのフローチャートである。
図13】第3実施形態におけるセンサ値取得タイミングを示す図である。
図14図10のセンサ値から算出される周期平均値を示す図である。
図15】計測除外期間の説明図である。
図16】計測除外期間を設けた場合および計測除外期間を設けない場合の周期平均値の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0014】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る給紙装置の概略構成図である。図2は、図1に示す給紙装置の制御ブロック図である。図3は、図1に示す給紙装置の部分拡大平面図である。図4は、図1に示す給紙装置のメイン浮上エア吹出口近傍の拡大図である。図5は、図1に示す給紙装置のサイドフェンスの部分拡大図である。以下の説明において、図1の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
【0016】
図1図3に示すように、第1実施形態に係る給紙装置(シート供給装置に相当)1は、給紙台(積載台に相当)2と、昇降モータ(駆動部に相当)3と、給紙ガイド板4と、サバキゲート5と、2つのサイドフェンス6と、エンドフェンス7と、浮上部8と、分離部9と、搬送部10と、上限センサ(検出部に相当)11と、制御部12とを備える。
【0017】
給紙装置1は、印刷装置の印刷部(図示せず)に対して用紙(シートに相当)Pを給紙する装置である。図1において左から右に向かう方向が、給紙動作時の搬送部10による用紙Pの搬送方向である。以下の説明における上流、下流は、搬送部10による用紙Pの搬送方向における上流、下流を意味する。
【0018】
給紙台2は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。給紙台2は、昇降可能に構成されている。
【0019】
給紙台2には、後述するサイド浮上機構部22およびサイド分離機構部42が取り付けられたサイドフェンス6が挿通されたフェンス挿通穴2aが形成されている。2つのサイドフェンス6にそれぞれ対応する2つのフェンス挿通穴2aが形成されている。一方のフェンス挿通穴2aは給紙台2の前端部に形成され、他方のフェンス挿通穴2aは給紙台2の後端部に形成されている。
【0020】
昇降モータ3は、給紙台2を昇降させる。
【0021】
給紙ガイド板4は、給紙台2上の用紙Pの下流端(右端)の位置を規制する部材である。給紙ガイド板4は、給紙台2の下流側近傍であって、後述するベルトユニット51の下流端部の下方に配置されている。給紙ガイド板4の上端部は、下流側ほど高くなるように傾斜している。
【0022】
給紙ガイド板4には、図3図4に示すように、後述するメイン浮上機構部21から給紙台2上の用紙Pに空気を吹き付けるための切り欠き部4aが、前後方向における中央部の上部を切り欠いて形成されている。
【0023】
サバキゲート5は、浮上部8により浮上させられた用紙Pのうち搬送部10に吸着された最上位の用紙P以外の用紙Pをせき止める部材である。2つのサバキゲート5が、搬送部10の下流端部の下方近傍において、前後方向に互いに離間して設置されている。
【0024】
サイドフェンス6は、給紙台2上の用紙Pの前後方向における位置を規制する部材である。2つのサイドフェンス6は、前後方向に互いに離間して配置されている。図5に示すように、サイドフェンス6には、サイド浮上エア吹出口16およびサイド分離エア吹出口17が形成されている。また、図3図5に示すように、サイドフェンス6には、整流部材18が設けられている。なお、図5は、後側のサイドフェンス6を前側から見た図である。
【0025】
サイド浮上エア吹出口16は、後述するサイド浮上機構部22が発生させるサイド浮上気流の吹出口である。サイド分離エア吹出口17は、後述するサイド分離機構部42が発生させるサイド分離気流の吹出口である。
【0026】
整流部材18は、浮上部8によって浮上させられた給紙台2上の用紙Pのうちの最上位の用紙Pを引き寄せ、最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間にサイド分離気流が流れるようにするための部材である。整流部材18は、サイドフェンス6の内側(給紙台2側)の面において、サイド分離エア吹出口17の上縁に沿って取り付けられている。整流部材18は、前後方向における給紙台2の中央側に向かうほど高くなるように傾斜している。
【0027】
エンドフェンス7は、給紙台2上の用紙Pの上流端(左端)の位置を規制する部材である。エンドフェンス7は、給紙台2の上方に配置されている。エンドフェンス7は、左右方向に移動可能に構成されている。
【0028】
浮上部8は、給紙台2上の用紙Pに空気を吹きつけて用紙Pを浮上させる。浮上部8は、メイン浮上機構部21と、2つのサイド浮上機構部22とを備える。
【0029】
メイン浮上機構部21は、給紙台2上の用紙Pに対して下流側の側方から用紙Pを浮上させるための空気を吹き付ける。メイン浮上機構部21は、給紙台2の下流側近傍に配置されている。メイン浮上機構部21は、メイン浮上ファン26と、シャッタ27と、2つのメイン浮上エア吹出口28とを備える。
【0030】
メイン浮上ファン26は、給紙台2上の用紙Pに対して下流側から空気を吹き付けて用紙Pを浮上させるためのメイン浮上気流を発生させる。
【0031】
シャッタ27は、メイン浮上エア吹出口28からのメイン浮上気流の吹き出しのオンオフを切り替える。メイン浮上ファン26の駆動中において、シャッタ27が開放されている状態では、メイン浮上エア吹出口28からメイン浮上気流が吹き出し、シャッタ27が閉鎖されている状態では、メイン浮上エア吹出口28からのメイン浮上気流の吹き出しが停止される。
【0032】
メイン浮上エア吹出口28は、メイン浮上ファン26の駆動により発生するメイン浮上気流の吹出口である。2つのメイン浮上エア吹出口28は、搬送部10の下流端部の下方近傍において、前後方向に互いに離間して配置されている。
【0033】
2つのサイド浮上機構部22は、給紙台2を挟んで互いに前後方向に離間して配置されている。2つのサイド浮上機構部22は、2つのサイドフェンス6の外側に1つずつ設置されている。
【0034】
前側のサイド浮上機構部22は、給紙台2上の用紙Pに対して前側の側方から用紙Pを浮上させるための空気を吹き付ける。後側のサイド浮上機構部22は、給紙台2上の用紙Pに対して後側の側方から用紙Pを浮上させるための空気を吹き付ける。サイド浮上機構部22は、サイド浮上ファン31と、シャッタ32とを備える。
【0035】
サイド浮上ファン31は、給紙台2上の用紙Pに対してサイドフェンス6のサイド浮上エア吹出口16から空気を吹き付けて用紙Pを浮上させるためのサイド浮上気流を発生させる。
【0036】
シャッタ32は、サイド浮上エア吹出口16からのサイド浮上気流の吹き出しのオンオフを切り替える。サイド浮上ファン31の駆動中において、シャッタ32が開放されている状態では、サイド浮上エア吹出口16からサイド浮上気流が吹き出し、シャッタ32が閉鎖されている状態では、サイド浮上エア吹出口16からのサイド浮上気流の吹き出しが停止される。
【0037】
分離部9は、浮上部8により浮上させられた用紙Pのうちの最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとを分離させる。分離部9は、メイン分離機構部41と、2つのサイド分離機構部42とを備える。
【0038】
メイン分離機構部41は、浮上部8により浮上させられて搬送部10に吸着した最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間に下流側から空気を流し込む。メイン分離機構部41は、メイン分離ファン46と、2つのメイン分離エア吹出口47とを備える。
【0039】
メイン分離ファン46は、搬送部10に吸着した最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間に下流側から空気を流し込んで最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとを分離させるためのメイン分離気流を発生させる。
【0040】
メイン分離エア吹出口47は、メイン分離ファン46の駆動により発生するメイン浮上気流の吹出口である。2つのメイン分離エア吹出口47は、搬送部10の下流端部の下方近傍において、前後方向に互いに離間して配置されている。メイン分離エア吹出口47は、搬送部10に向けて上向きに空気を吹き出す。
【0041】
2つのサイド分離機構部42は、給紙台2を挟んで互いに前後方向に離間して配置されている。2つのサイド分離機構部42は、2つのサイドフェンス6の外側に1つずつ設置されている。サイド分離機構部42は、サイド浮上機構部22の右側に隣接して配置されている。
【0042】
サイド分離機構部42は、浮上部8により浮上させられた用紙Pのうちの最上位の用紙Pを整流部材18に引き寄せるとともに、最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとを分離させるためのサイド分離気流をサイドフェンス6のサイド分離エア吹出口17から吹き出す。サイド分離機構部42は、サイド分離気流を発生させるサイド分離ファン48を備える。
【0043】
搬送部10は、浮上部8により浮上させられた用紙Pのうちの最上位の用紙Pをエア吸引により吸着して搬送する。搬送部10は、2つのベルトユニット51と、搬送モータ52と、チャンバ53と、サクションファン54とを備える。
【0044】
ベルトユニット51は、用紙Pを吸着保持して搬送する。2つのベルトユニット51は、前後方向に並列して配置されている。ベルトユニット51は、左右方向において、給紙台2の右端を跨いで配置されている。ベルトユニット51は、搬送ベルト56と、駆動ローラ57と、従動ローラ58とを備える。
【0045】
搬送ベルト56は、駆動ローラ57と従動ローラ58とに掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト56には、複数のベルト穴56aが全周に渡って形成されている。搬送ベルト56は、サクションファン54の駆動によりベルト穴56aに発生する吸着力により、搬送ベルト56の下面である搬送面56bに用紙Pを吸着保持する。用紙Pを吸着保持した状態で駆動ローラ57の駆動により搬送ベルト56が回転(無端移動)することで、用紙Pが搬送される。
【0046】
駆動ローラ57は、搬送ベルト56を回転(無端移動)させる。2つのベルトユニット51の駆動ローラ57は、シャフト59により互いに接続されている。
【0047】
従動ローラ58は、駆動ローラ57とともに搬送ベルト56を支持する。従動ローラ58は、回転する搬送ベルト56に従動回転する。2つのベルトユニット51の従動ローラ58は、シャフト60により互いに接続されている。
【0048】
搬送モータ52は、シャフト59を回転させることにより、駆動ローラ57を回転させる。
【0049】
チャンバ53は、ベルトユニット51のベルト穴56aに吸着力を発生させるための負圧室を形成するものである。チャンバ53は、搬送ベルト56の搬送面56bが露出するように、ベルトユニット51を内部に保持している。チャンバ53の底板の搬送ベルト56が通過する部分には、通気穴(図示せず)が形成されている。搬送ベルト56の搬送面56bのベルト穴56aおよびチャンバ53の通気穴を介したチャンバ53内への空気の吸引により、ベルト穴56aに吸着力が発生する。
【0050】
サクションファン54は、チャンバ53から排気する。サクションファン54がチャンバ53から排気すると、搬送ベルト56の搬送面56bのベルト穴56aおよびチャンバ53の通気穴を介してチャンバ53外から空気がチャンバ53内に吸引される。サクションファン54は、チャンバ53の上側に配置されている。
【0051】
上限センサ11は、給紙台2上に積載された用紙Pの下流側(右側)の端面を監視するものである。上限センサ11は、給紙台2より下流側において、後述する浮上領域F内の浮上している用紙Pを検出可能な所定の高さ位置に配置されている。上限センサ11の視界(検出範囲)の上限は、浮上領域Fの上限より低い位置にあり、上限センサ11の視界の下限は、浮上領域Fの下限より高い位置にある。上限センサ11は、反射型の光センサであり、発光部61と、受光部62とを備える。
【0052】
発光部61は、給紙台2上の用紙Pの右側の側方から左側(用紙P側)へ光を出射する。受光部62は、左側(用紙P側)からの光を受光する。
【0053】
制御部12は、給紙装置1全体の動作を制御する。制御部12は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0054】
制御部12は、浮上部8および分離部9の駆動により給紙台2上の用紙Pを浮上させて最上位の用紙Pを搬送面56bに吸着させ、搬送部10により搬送して給紙先へ給紙するよう制御する。この際、制御部12は、最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとを分離させるために、浮上部8による用紙Pへの空気の吹き付けを搬送部10が搬送する用紙1枚ごとにオンオフ制御する。すなわち、後述するように、制御部12は、搬送部10による用紙Pの搬送周期ごとに設定された浮上気流停止期間(停止期間に相当)において浮上部8による空気の吹き付けを停止するよう制御する。
【0055】
また、制御部12は、給紙による給紙台2上の用紙Pの残量の減少に応じて給紙台2を上昇させる上限追従制御を行う。後述するように、上限追従制御において、制御部12は、浮上気流停止期間において所定のセンサ値取得タイミングで受光部62の受光量(センサ値)を取得し、取得したセンサ値に基づき、昇降モータ3を制御する。
【0056】
次に、給紙装置1の動作について説明する。
【0057】
給紙開始が指示されると、まず、制御部12は、初期位置出し動作を実行する。初期位置出し動作は、給紙台2上の最上位の用紙P(用紙束の上面)の高さ位置を、給紙に適切な位置である上限位置に合わせる動作である。
【0058】
具体的には、まず、制御部12は、昇降モータ3を制御して給紙台2の上昇を開始させる。ここで、初期位置出し動作の開始時において、給紙台2は、上限センサ11の視界(検出範囲)内に給紙台2上の用紙束が入っていない状態となる高さ位置にある。
【0059】
給紙台2の上昇開始後、給紙台2上の用紙束の上端部が上限センサ11の視界内に入ると、用紙束の上端部の右側の端面による反射光が受光部62で受光され始める。その後、給紙台2の上昇に伴って、給紙台2上の用紙束における上限センサ11の視界内に入っている範囲が広がるので、上限センサ11におけるセンサ値が大きくなる。
【0060】
そして、上限センサ11におけるセンサ値が所定の非浮上閾値に達すると、制御部12は、給紙台2の上昇を停止させる。
【0061】
ここで、非浮上閾値は、給紙台2上の最上位の用紙P(用紙束の上面)の高さ位置が、上限センサ11の視界内の所定のセンサ位置にあるときの受光部62の受光量(センサ値)として設定されたものである。このため、上述のようにセンサ値が非浮上閾値に達すると給紙台2の上昇を停止させることで、給紙台2上の最上位の用紙Pがセンサ位置にある状態で給紙台2が停止する。この後、制御部12は、給紙台2上の最上位の用紙Pの高さ位置を上限位置に合わせる。具体的には、制御部12は、昇降モータ3に接続されたエンコーダ(図示せず)の出力パルス数に基づき、用紙種類(用紙の厚さ)に応じた上限位置と、センサ位置との間の距離の分だけ、給紙台2を移動させる。これにより、初期位置出し動作が終了となる。
【0062】
初期位置出し動作が終了すると、制御部12は、給紙動作を開始させる。具体的には、制御部12は、メイン浮上ファン26、2つのサイド浮上ファン31、メイン分離ファン46、2つのサイド分離ファン48、およびサクションファン54の駆動を開始させる。シャッタ27および2つのシャッタ32はいずれも開放状態である。
【0063】
これにより、メイン浮上エア吹出口28からメイン浮上気流、サイド浮上エア吹出口16からサイド浮上気流、メイン分離エア吹出口47からメイン分離気流、サイド分離エア吹出口17からサイド分離気流がそれぞれ吹き出す。また、ベルトユニット51のベルト穴56aに吸着力が発生する。
【0064】
メイン浮上気流およびサイド浮上気流により、図6に示すように、給紙台2上の用紙Pのうちの最上部の、浮上領域F内の複数枚の用紙Pが浮上する。そして、浮上した用紙Pのうちの最上位の用紙Pが、ベルトユニット51の搬送面56bに吸着される。浮上領域Fは、上下方向における浮上部8が用紙Pを浮上させる領域である。
【0065】
ここで、用紙Pが浮上する際、サイドフェンス6近傍では、サイド分離エア吹出口17から吹き出したサイド分離気流が整流部材18に沿って流れることで、整流部材18と最上位の用紙Pとの間が負圧状態となる。これにより、最上位の用紙Pが整流部材18に引き寄せられ、整流部材18に接触する。この結果、最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間にサイド分離気流が流れるようになる。
【0066】
一方、メイン分離機構部41側では、最上位の用紙Pが搬送面56bに吸着された後、メイン分離エア吹出口47から吹き出すメイン分離気流が、搬送面56bに吸着された最上位の用紙Pに沿って、上流側(左側)へ向かって流れる。
【0067】
これにより、最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間において、メイン分離気流と前側からのサイド分離気流と後側からのサイド分離気流とが衝突して正圧が発生する。
【0068】
この状態において、制御部12は、シャッタ27,32を閉鎖するよう制御する。この後、制御部12は、搬送モータ52を制御してベルトユニット51の駆動を開始させる。
【0069】
ベルトユニット51の駆動開始により、搬送面56bに吸着された最上位の用紙Pが右方向に搬送され始める。
【0070】
また、シャッタ27,32が閉鎖されることで、給紙台2上の用紙Pへのメイン浮上エア吹出口28からのメイン浮上気流の吹き出し、およびサイド浮上エア吹出口16からのサイド浮上気流の吹き出しが停止される。すなわち、浮上部8による給紙台2上の用紙Pへの空気の吹き付けがオフ(停止)となる。これにより、最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間の正圧により上から2枚目以下の用紙Pが押し下げられることで、最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとが分離される。
【0071】
上記のようにして、ベルトユニット51により最上位の用紙Pが搬送されつつ、上から2枚目以下の用紙Pが落下する。
【0072】
次いで、制御部12は、ベルトユニット51の駆動開始後の所定のタイミングにおいて、ベルトユニット51を停止させる。この後、制御部12は、次の用紙Pの給紙のために、シャッタ27,32を開放して用紙Pを浮上させる。
【0073】
上記の動作を繰り返すことにより、用紙Pが給紙装置1から給紙先へ順次給紙される。
【0074】
ここで、シャッタ27,32の閉鎖は、図7に示すように、搬送部10による用紙Pの搬送周期ごと(搬送部10が搬送する用紙1枚ごと)に、周期的に行われる。すなわち、シャッタ27,32の閉鎖により浮上部8による給紙台2上の用紙Pへの空気の吹き付けがオフ(停止)となっている期間である浮上気流停止期間は、用紙Pの搬送周期ごとに設定されている。
【0075】
浮上気流停止期間は、メイン浮上気流およびサイド浮上気流により浮上した用紙Pのうちの最上位の用紙Pが搬送面56bに吸着されてから、次の用紙Pを給紙するためにメイン浮上気流およびサイド浮上気流の吹き付けを開始するまでの期間になっている。浮上気流停止期間の長さは、用紙Pのサイズ(搬送方向における長さ)、および連続して給紙される用紙Pどうしの間隔である紙間に応じて設定されている。用紙Pの搬送周期の長さは、浮上気流停止期間の長さに応じたものとなる。
【0076】
上述のような給紙動作中において、制御部12は、前述した給紙台2の上限追従制御を行う。この上限追従制御について、図8のフローチャートを参照して説明する。図8のフローチャートの処理は、給紙動作が開始されることにより開始となる。
【0077】
図8のステップS1において、制御部12は、浮上気流停止期間の開始時点においてシャッタ27,32を閉鎖する。
【0078】
次いで、ステップS2において、制御部12は、今回の浮上気流停止期間において搬送部10によって搬送される用紙Pが、今回の給紙動作で給紙する最後の用紙Pであるか否かを判断する。
【0079】
最後の用紙Pではないと判断した場合(ステップS2:NO)、ステップS3において、制御部12は、図7に示すセンサ値取得タイミングになったか否かを判断する。センサ値取得タイミングになっていないと判断した場合(ステップS3:NO)、制御部12は、ステップS3を繰り返す。
【0080】
ここで、センサ値取得タイミングは、浮上気流停止期間において、搬送部10に搬送される最上位の用紙P以外の浮上部8により浮上させられた用紙Pが落下中のタイミングとして設定されたものである。
【0081】
用紙Pの落下は、シャッタ27,32を閉鎖した時点(浮上気流停止期間の開始時点)の少し後に始まる。センサ値取得タイミングは、その用紙Pの落下が始まる時点より後に設定される。センサ値取得タイミングは、予め実験等に基づいて設定される。
【0082】
用紙Pが落下し始めるタイミングは、厚紙、薄紙等の用紙種類、および用紙サイズによって異なる。このため、センサ値取得タイミングは、用紙種類および用紙サイズの組み合わせに応じたタイミングに設定される。
【0083】
センサ値取得タイミングになったと判断した場合(ステップS3:YES)、ステップS4において、制御部12は、センサ値取得タイミングにおけるセンサ値を上限センサ11から取得する。
【0084】
ここで、用紙Pの浮上中におけるセンサ値は、上限センサ11の視界(検出範囲)内にある、浮上している用紙Pの端面からの反射光の受光量である。このため、用紙Pの浮上中におけるセンサ値は、上限センサ11の視界内の浮上している用紙Pの枚数が多いほど、大きくなる。
【0085】
また、浮上部8による空気の吹き付けにより浮上可能な用紙Pの枚数は、浮上領域F内にある用紙Pの枚数である。したがって、給紙台2上の用紙Pが浮上していない状態における給紙台2上の最上位の用紙P(用紙束の上面)の高さ位置が低いほど、浮上部8による空気の吹き付けにより浮上する用紙Pの枚数が少ない。
【0086】
このことから、用紙Pの浮上中におけるセンサ値を、擬似的に、給紙台2上の用紙Pが浮上していないとした場合の給紙台2上の最上位の用紙P(用紙束の上面)の高さ位置を示す上面位置情報として用いることができる。給紙台2の高さ位置が変わらなければ、給紙が進むにつれて浮上する用紙Pが減少し、センサ値は低下傾向になる。
【0087】
そこで、給紙装置1では、上述のステップS4において、上面位置情報として用いるためのセンサ値を取得している。
【0088】
センサ値取得タイミングを用紙Pの落下中のタイミングとするのは、用紙Pの落下中は用紙Pの浮上ムラによるセンサ値のノイズの影響を受けにくいからである。
【0089】
ここで、給紙装置1では、シャッタ27,32の開閉動作に応じて、用紙Pの浮上状態は規則性をもって変化する。それに応じて上限センサ11のセンサ値も規則性をもって変化する。
【0090】
しかし、例えば、給紙台2上の用紙Pに空気を吹き付けて浮上させることによる給紙台2上の用紙揃えの悪化により、複数の用紙Pがまとまって浮上する等の浮上ムラが発生することがある。そして、用紙Pの浮上ムラにより、例えば、一時的に上限センサ11の視界内に存在する用紙Pが多い状態となり、センサ値に図7に示すようなノイズが発生することがある。ノイズの値を取得すると、上限追従制御の精度が低下するおそれがある。
【0091】
これに対し、用紙Pの落下中は、用紙Pの挙動が安定し、センサ値のノイズが発生しにくい。そこで、センサ値取得タイミングを用紙Pの落下中のタイミングとしている。
【0092】
図8に戻り、ステップS5において、制御部12は、浮上気流停止期間の終了時点においてシャッタ27,32を開放する。
【0093】
次いで、ステップS6において、制御部12は、ステップS4で取得したセンサ値が、所定の浮上閾値未満であるか否かを判断する。浮上閾値は、給紙台2を上昇させるか否かを判断するための、センサ値取得タイミングにおけるセンサ値の閾値として予め設定されたものである。浮上閾値は、用紙種類ごとに、実験等に基づき予め設定されている。
【0094】
センサ値が浮上閾値以上であると判断した場合(ステップS6:NO)、制御部12は、ステップS1に戻り、次の浮上気流停止期間の開始時点においてシャッタ27,32を閉鎖する。
【0095】
センサ値が浮上閾値未満であると判断した場合(ステップS6:YES)、ステップS7において、制御部12は、ステップS4でセンサ値を取得した浮上気流停止期間の次の浮上気流停止期間の開始時点においてシャッタ27,32を閉鎖する。
【0096】
次いで、ステップS8において、制御部12は、昇降モータ3を制御して給紙台2の上昇を開始させる。
【0097】
具体的には、制御部12は、ステップS4でセンサ値を取得した浮上気流停止期間の次の浮上気流停止期間において、昇降モータ3の駆動による給紙台2の上昇を開始させる。ステップS7のシャッタ27,32の閉鎖と同時に給紙台2の上昇を開始させてもよい。
【0098】
この後、制御部12は、所定の駆動時間だけ昇降モータ3を駆動させて給紙台2を上昇させる。この際、制御部12は、ステップS4で取得したセンサ値と浮上閾値との差に応じて、昇降モータ3の駆動電圧を制御する。
【0099】
具体的には、制御部12は、センサ値と浮上閾値との差が大きいほど、昇降モータ3の駆動電圧を大きくして、給紙台2の上昇量が大きくなるよう制御する。センサ値と浮上閾値との差が大きいほど、浮上領域F内の用紙Pが少なく、給紙台2上の用紙Pが浮上していないとした場合の給紙台2上の最上位の用紙P(用紙束の上面)の高さ位置が低くなっている。このため、制御部12は、センサ値と浮上閾値との差が大きいほど、給紙台2の上昇量が大きくなるよう制御する。センサ値と浮上閾値との差と、昇降モータ3の駆動電圧との関係は、用紙種類ごとに、実験等に基づき予め設定されている。
【0100】
ステップS8の後、制御部12は、ステップS2に戻る。
【0101】
なお、昇降モータ3の駆動が終了して給紙台2の上昇が停止するタイミングが、ステップS8で給紙台2の上昇が開始した浮上気流停止期間におけるセンサ値取得タイミングより後になってもよい。
【0102】
また、浮上気流停止期間中に給紙台2の上昇が完了するように昇降モータ3の駆動制御を行うようにしてもよい。
【0103】
ステップS2において、最後の用紙Pであると判断した場合(ステップS2:YES)、制御部12は、上限追従制御を終了する。
【0104】
上述の上限追従制御により、給紙台2上の用紙Pが浮上していない場合の給紙台2上の最上位の用紙P(用紙束の上面)の高さ位置が、給紙に適切な位置である上限位置に維持される。
【0105】
以上説明したように、給紙装置1では、制御部12は、上限追従制御で用いる上限センサ11のセンサ値を、浮上気流停止期間において、搬送部10に搬送される最上位の用紙P以外の浮上部8により浮上させられた用紙Pの落下中のタイミングとして設定されたセンサ値取得タイミングで取得する。これにより、用紙Pの浮上ムラによるセンサ値のノイズの影響を受けにくくなるので、上限追従制御の精度を向上できる。この結果、浮上する用紙Pが多すぎることにより発生する重送や、浮上する用紙Pが少なすぎることにより発生する空送等の、給紙の不具合を低減できる。
【0106】
また、制御部12は、上限追従制御において給紙台2を上昇させる際、浮上気流停止期間において給紙台2の上昇を開始させるよう昇降モータ3を制御する。
【0107】
ここで、シャッタ27,32が開放されている期間中に給紙台2が上昇すると、給紙台2の上昇により新たに浮上領域Fに入って浮上する用紙Pが、浮上中の用紙Pの挙動に影響を与え、用紙Pの浮上ムラが生じるおそれがある。そして、この浮上ムラが、センサ値にノイズを発生させ、センサ値取得タイミングにおけるセンサ値にも影響を与えるおそれがある。この結果、上限追従制御の精度の低下が生じるおそれがある。
【0108】
これに対し、浮上気流停止期間において給紙台2の上昇を開始させることで、シャッタ27,32が開放されている期間中に給紙台2が上昇する状況を低減できる。この結果、上記のような要因で用紙Pの浮上ムラが発生することを低減できるので、上限追従制御の精度の低下が抑えられる。
【0109】
[第2実施形態]
次に、上述した第1実施形態の上限追従制御を変更した第2実施形態について説明する。
【0110】
第2実施形態では、制御部12は、直近の後述する移動平均回数分の浮上気流停止期間において取得した上限センサ11のセンサ値の平均値である移動平均値を上面位置情報として用いた上限追従制御を行う。
【0111】
第2実施形態における上限追従制御について、図9のフローチャートを参照して説明する。図9のフローチャートの処理は、給紙動作が開始されることにより開始となる。なお、第2実施形態においても、給紙動作は第1実施形態と同様である。
【0112】
図9のステップS11~S15の処理は、前述した図8のステップS1~S5の処理と同様である。
【0113】
ステップS16において、制御部12は、今回の給紙動作の開始からのセンサ値の取得回数が、所定の移動平均回数未満であるか否かを判断する。換言すれば、制御部12は、今回の給紙動作の開始から現在までの給紙枚数が、移動平均回数未満の枚数であるか否かを判断する。移動平均回数は、移動平均値を算出する個数分のセンサ値の取得回数として予め設定されたものである。移動平均回数は、複数回である。
【0114】
センサ値の取得回数が移動平均回数未満であると判断した場合(ステップS16:YES)、制御部12は、ステップS17へ進む。ステップS17~S19の処理は、前述した図8のステップS6~S8の処理と同様である。
【0115】
センサ値の取得回数が移動平均回数以上であると判断した場合(ステップS16:NO)、ステップS20において、制御部12は、今回を含む直近の移動平均回数分の浮上気流停止期間において取得したセンサ値の平均値である移動平均値を算出する。
【0116】
次いで、ステップS21において、制御部12は、ステップS20で算出した移動平均値が所定の移動平均閾値未満であるか否かを判断する。移動平均閾値は、給紙台2を上昇させるか否かを判断するための移動平均値の閾値として予め設定されたものである。移動平均閾値は、用紙種類ごとに、実験等に基づき予め設定されている。
【0117】
移動平均値が移動平均閾値未満であると判断した場合(ステップS21:YES)、制御部12は、ステップS18へ進む。
【0118】
移動平均値が移動平均閾値以上であると判断した場合(ステップS21:NO)、制御部12は、ステップS11へ戻る。
【0119】
上述のような図9のフローチャートの処理により、移動平均回数分の枚数の給紙以降において、移動平均値を上面位置情報として用いた上限追従制御が行われる。それより前の段階では、移動平均値を算出できないため、第1実施形態と同様の上限追従制御が行われる。
【0120】
移動平均値では、図10に示すように、センサ値取得タイミングでノイズが発生したとしても、図11に示すように、ノイズの影響が緩和される。なお、図10図11の例において、移動平均回数は5回であり、nは5以上の整数である。
【0121】
以上説明したように、第2実施形態では、制御部12は、移動平均回数分のセンサ値の取得以降において、直近の移動平均回数分の浮上気流停止期間において取得したセンサ値の平均値である移動平均値に基づき、昇降モータ3を制御する。これにより、取得したセンサ値にノイズが含まれていたとしても、その影響を緩和できるので、上限追従制御の精度の低下を抑えることができる。この結果、重送や空送等の給紙の不具合をより低減できる。
【0122】
[第3実施形態]
次に、上述した第1実施形態の上限追従制御を変更した第3実施形態について説明する。
【0123】
第3実施形態では、制御部12は、搬送周期ごとの後述する規定取得回数分のセンサ値取得タイミングにおける上限センサ11のセンサ値の平均値である周期平均値を上面位置情報として用いた上限追従制御を行う。
【0124】
第3実施形態における上限追従制御について、図12のフローチャートを参照して説明する。図12のフローチャートの処理は、給紙動作が開始されることにより開始となる。なお、第3実施形態においても、給紙動作は第1実施形態と同様である。
【0125】
図12のステップS31,S32の処理は、前述した図8のステップS1,S2の処理と同様である。
【0126】
ステップS33において、制御部12は、上限センサ11のセンサ値の取得を開始する。具体的には、制御部12は、搬送周期ごとに規定取得回数分が設定されたセンサ値取得タイミングのうちの最初のタイミングでセンサ値を取得する。
【0127】
ここで、搬送周期ごとのセンサ値を取得する複数の回数である規定取得回数、および規定取得回数分のセンサ値取得タイミングは、搬送周期の長さに応じて予め設定されている。第3実施形態におけるセンサ値取得タイミングは、例えば、図13に示すように、均等間隔の複数のタイミングに設定されている。搬送周期における最初のセンサ値取得タイミングは、シャッタ27,32の閉鎖と同時でもよい。
【0128】
最初のセンサ値取得タイミングでセンサ値を取得した後は、制御部12は、予め設定された規定取得回数分の各センサ値取得タイミングでセンサ値を順次取得する。
【0129】
ステップS33でセンサ値の取得を開始した後、ステップS34において、制御部12は、浮上気流停止期間の終了時点においてシャッタ27,32を開放する。
【0130】
次いで、ステップS35において、制御部12は、規定取得回数分のセンサ値の取得が終了したか否かを判断する。規定取得回数分のセンサ値の取得が終了していないと判断した場合(ステップS35:NO)、制御部12は、ステップS35を繰り返す。
【0131】
規定取得回数分のセンサ値の取得が終了したと判断した場合(ステップS35:YES)、ステップS36において、制御部12は、今回の搬送周期で取得した規定取得回数分のセンサ値の平均値である周期平均値を算出する。
【0132】
次いで、ステップS37において、制御部12は、ステップS36で算出した周期平均値が所定の周期平均閾値未満であるか否かを判断する。周期平均閾値は、給紙台2を上昇させるか否かを判断するための周期平均値の閾値として予め設定されたものである。周期平均閾値は、用紙種類ごとに、実験等に基づき予め設定されている。
【0133】
周期平均値が周期平均閾値未満であると判断した場合(ステップS37:YES)、制御部12は、ステップS38へ進む。ステップS38,S39の処理は、前述した図8のステップS7,S8の処理と同様である。
【0134】
周期平均値が周期平均閾値以上であると判断した場合(ステップS37:NO)、制御部12は、ステップS31へ戻る。
【0135】
上述のような図12のフローチャートの処理により、搬送周期ごとの規定取得回数分のセンサ値の平均値である周期平均値を上面位置情報として用いた上限追従制御が行われる。周期平均値を上面位置情報として用いることで、図13のようにセンサ値にノイズが発生しても、上面位置情報に対するノイズの影響が緩和される。
【0136】
前述した図10のようにセンサ値が推移する場合、周期平均値は図14のようになる。図14に比較対象として示すセンサ値は、図11と同様のものであり、図10のセンサ値から第1および第2実施形態におけるセンサ値取得タイミングで取得されたものである。図14に示すように、周期平均値では、ノイズの影響が緩和されている。
【0137】
以上説明したように、第3実施形態では、制御部12は、搬送周期ごとの規定取得回数分のセンサ値取得タイミングにおけるセンサ値の平均値である周期平均値に基づき、昇降モータ3を制御する。これにより、取得したセンサ値にノイズが含まれていたとしても、その影響を緩和できるので、上限追従制御の精度の低下を抑えることができる。この結果、重送や空送等の給紙の不具合をより低減できる。
【0138】
また、第3実施形態では、第2実施形態と比べると、過去の搬送周期のセンサ値を利用しないため、応答性に優れる。
【0139】
なお、図15に示すように、浮上気流停止期間の開始時点の所定時間後の時点から当該浮上気流停止期間の終了時点までの期間を計測除外期間とし、搬送周期における計測除外期間以外の期間において、規定取得回数分のセンサ値を取得するようにしてもよい。
【0140】
この場合、計測除外期間の開始時点は、搬送部10に搬送される最上位の用紙P以外の浮上部8により浮上させられた用紙Pがすべて、上限センサ11の視界の下限より下方まで落下した状態になった時点である。すなわち、計測除外期間の開始時点は、用紙Pの落下により、用紙Pからの反射光によるセンサ値の変化がなくなると想定される時点である。浮上気流停止期間の開始時点から計測除外期間の開始時点までの時間は、給紙される用紙Pの紙間、用紙種類、および用紙サイズに応じて、実験等に基づき予め設定されている。なお、給紙される用紙Pの紙間が短い場合等、条件によっては計測除外期間が存在しない場合がある。
【0141】
計測除外期間では、上限センサ11の視界内に浮上している用紙Pがないため、センサ値が小さな値でほとんど変化しない。このような期間のセンサ値を取得すると、周期平均値が小さな値となる。このため、周期平均値の変化の度合いが小さくなり、周期平均閾値との大小関係の判断の精度が低下するおそれがある。その結果、上限追従制御の精度が低下するおそれがある。
【0142】
これに対し、計測除外期間を設けることで、周期平均値の低下を抑え、上限追従制御の精度の低下を抑えることができる。
【0143】
計測除外期間を設けた場合および計測除外期間を設けない場合の周期平均値の例を図16に示す。図16に示すように、計測除外期間を設けることで、計測除外期間を設けない場合よりも周期平均値の低下が抑えられる。
【0144】
なお、搬送部10に搬送される最上位の用紙P以外の浮上部8により浮上させられた用紙Pがすべて給紙台2上に落下した状態で、上限センサ11の視界内に給紙台2上の用紙Pが入るような位置に上限センサ11が配置された構成である場合には、搬送部10に搬送される最上位の用紙P以外の浮上部8により浮上させられた用紙Pがすべて給紙台2上に落下した状態になると想定される時点を、計測除外期間の開始時点に設定すればよい。
【0145】
[その他の実施形態]
上述のように、本発明は第1~第3実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0146】
上述した第2実施形態では、センサ値取得タイミングを、第1実施形態と同様に、搬送部10に搬送される最上位の用紙P以外の浮上部8により浮上させられた用紙Pの落下中のタイミングとしたが、これに限らない。センサ値取得タイミングがこのタイミング以外であっても、直近の複数回の浮上気流停止期間において取得したセンサ値の移動平均値を上面位置情報として用いることで、センサ値のノイズの影響が緩和され、上限追従制御の精度の低下が抑えられる。
【0147】
上述した第1~第3実施形態では、上限追従制御において、浮上気流停止期間に給紙台2の上昇を開始させたが、シャッタ27,32が開放されている期間中に給紙台2の上昇を開始させてもよい。
【0148】
この場合でも、第1実施形態では、浮上気流停止期間において、搬送部10に搬送される最上位の用紙P以外の浮上部8により浮上させられた用紙Pの落下中のセンサ値取得タイミングでセンサ値を取得するので、用紙Pの浮上ムラによるセンサ値のノイズの影響を受けにくくなり、上限追従制御の精度の低下が抑えられる。また、第2実施形態では、移動平均値を上面位置情報として用いるので、センサ値のノイズの影響が緩和され、上限追従制御の精度の低下が抑えられる。また、第3実施形態では、周期平均値を上面位置情報として用いるので、センサ値のノイズの影響が緩和され、上限追従制御の精度の低下が抑えられる。
【0149】
上述した第1~第3実施形態では、用紙を給紙する給紙装置について説明したが、用紙以外のシートを供給する装置にも本発明は適用可能である。
【0150】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0151】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0152】
(付記1)
シートが積載された積載台と、
前記積載台を昇降させる駆動部と、
シートを浮上させるための空気を前記積載台上のシートに吹き付ける浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、
前記積載台上のシートの側方からシート側へ光を出射する発光部、およびシート側からの光を受光する受光部を有する検出部と、
前記搬送部によるシートの搬送周期ごとに設定された停止期間において前記浮上部による空気の吹き付けを停止するよう制御し、前記停止期間において、前記搬送部に搬送されるシート以外の前記浮上部により浮上させられたシートの落下中のタイミングで前記受光部の受光量を取得し、取得した受光量に基づき、前記駆動部を制御する制御部と
を備えることを特徴とするシート供給装置。
【0153】
(付記2)
シートが積載された積載台と、
前記積載台を昇降させる駆動部と、
シートを浮上させるための空気を前記積載台上のシートに吹き付ける浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、
前記積載台上のシートの側方からシート側へ光を出射する発光部、およびシート側からの光を受光する受光部を有する検出部と、
前記搬送部によるシートの搬送周期ごとに設定された停止期間において前記浮上部による空気の吹き付けを停止するよう制御し、前記停止期間において前記受光部の受光量を取得し、直近の複数回の前記停止期間において取得した受光量の平均値に基づき、前記駆動部を制御する制御部と
を備えることを特徴とするシート供給装置。
【0154】
(付記3)
前記制御部は、前記停止期間において、前記搬送部に搬送されるシート以外の前記浮上部により浮上させられたシートの落下中のタイミングで前記受光部の受光量を取得することを特徴とする付記2に記載のシート供給装置。
【0155】
(付記4)
シートが積載された積載台と、
前記積載台を昇降させる駆動部と、
シートを浮上させるための空気を前記積載台上のシートに吹き付ける浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを搬送する搬送部と、
前記積載台上のシートの側方からシート側へ光を出射する発光部、およびシート側からの光を受光する受光部を有する検出部と、
前記搬送部によるシートの搬送周期ごとに設定された停止期間において前記浮上部による空気の吹き付けを停止するよう制御し、前記搬送周期ごとの複数のタイミングにおける前記受光部の受光量の平均値に基づき、前記駆動部を制御する制御部と
を備えることを特徴とするシート供給装置。
【0156】
(付記5)
前記制御部は、前記搬送周期ごとに、前記停止期間の開始時点の所定時間後の時点から当該停止期間の終了時点までの期間を除く期間における複数のタイミングにおいて前記受光部の受光量を取得して前記平均値を算出することを特徴とする付記4に記載のシート供給装置。
【0157】
(付記6)
前記制御部は、前記積載台を上昇させる際、前記停止期間において前記積載台の上昇を開始させるよう前記駆動部を制御することを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載のシート供給装置。
【符号の説明】
【0158】
1 給紙装置
2 給紙台
3 昇降モータ
4 給紙ガイド板
5 サバキゲート
6 サイドフェンス
7 エンドフェンス
8 浮上部
9 分離部
10 搬送部
11 上限センサ
12 制御部
21 メイン浮上機構部
22 サイド浮上機構部
41 メイン分離機構部
42 サイド分離機構部
51 ベルトユニット
52 搬送モータ
53 チャンバ
54 サクションファン
61 発光部
62 受光部
図1
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