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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/04 20060101AFI20240227BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20240227BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
F27B9/04
F27D7/06 B
F27D7/02 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020058144
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156515
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトサーモシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】奥村 昌倫
(72)【発明者】
【氏名】中谷 淳司
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-002325(JP,A)
【文献】実開昭51-023551(JP,U)
【文献】特開2003-325340(JP,A)
【文献】特開2005-341834(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102138370(CN,A)
【文献】特開平09-307224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00 - 9/40
F27D 7/00 -15/02
H05K 3/32 - 3/34
B23K 1/008
B23K 1/012
A21B 1/08
A23L 3/04
A23L 3/18
F24C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱水蒸気で被処理物を加熱して当該被処理物の熱処理を行う熱処理装置であって、
前記被処理物が搬入される入口と前記被処理物が搬出される出口とが設けられ、前記入口から前記出口に向かって搬送される前記被処理物の熱処理が行われる熱処理室と、
前記熱処理室における前記被処理物の加熱が行われる領域である加熱領域に設けられて、前記熱処理室内に過熱水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
前記熱処理室において、前記水蒸気供給部に対して前記入口側と前記出口側とにそれぞれ設けられ、前記熱処理室内の過熱水蒸気を前記熱処理室の外部へ排出する水蒸気排出部と、
前記水蒸気排出部から過熱水蒸気を吸引して前記熱処理室の外部へ排出するエジェクタと、を備え
前記水蒸気排出部は、前記被処理物の搬送方向と垂直な方向である前記熱処理室の幅方向に沿って延びる中空の箱状に形成されているとともに、過熱水蒸気を吸い込む複数の貫通孔が設けられている、熱処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理装置であって、
前記熱処理室内に不活性ガス及び空気の少なくともいずれかを供給するガス供給部を更に備え、
前記入口は、前記熱処理室の外部に対して開放されており、
前記ガス供給部として、前記熱処理室において前記水蒸気供給部に対して前記入口側に設けられた前記水蒸気排出部よりも更に前記入口側に設けられた入口側ガス供給部が備えられている、熱処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の熱処理装置であって、
前記入口側ガス供給部は、一対で設けられ、
前記熱処理室において、一対の前記入口側ガス供給部の間に、前記熱処理室内のガスを前記熱処理室の外部へ排気する入口側排気部が設けられている、熱処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の熱処理装置であって、
前記熱処理室内に不活性ガス及び空気の少なくともいずれかを供給するガス供給部を更に備え、
前記出口は、前記熱処理室の外部に対して開放されており、
前記ガス供給部として、前記熱処理室において前記水蒸気供給部に対して前記出口側に設けられた前記水蒸気排出部よりも更に前記出口側に設けられた出口側ガス供給部が備えられている、熱処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の熱処理装置であって、
前記出口側ガス供給部は、一対で設けられ、
前記熱処理室において、一対の前記出口側ガス供給部の間に、前記熱処理室内のガスを前記熱処理室の外部へ排気する出口側排気部が設けられている、熱処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の熱処理装置であって、
前記水蒸気供給部は、前記被処理物の搬送方向において互いに対向して配置された一対のノズル部を備え、
一対の前記ノズル部のそれぞれは、対向する一対の前記ノズル部の中間位置側に向かって過熱水蒸気を吹き出すように構成されている、熱処理装置。
【請求項7】
請求項3に記載の熱処理装置であって、
一対の前記入口側ガス供給部のそれぞれと前記入口側排気部との間には、それぞれ入口側仕切板が設けられ、
前記入口側仕切板は、前記熱処理室における前記被処理物の搬送方向と平行な方向におけるガスの流動を部分的に規制するように構成されている、熱処理装置。
【請求項8】
請求項5に記載の熱処理装置であって、
一対の前記出口側ガス供給部のそれぞれと前記出口側排気部との間には、それぞれ出口側仕切板が設けられ、
前記出口側仕切板は、前記熱処理室における前記被処理物の搬送方向と平行な方向におけるガスの流動を部分的に規制するように構成されている、熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱水蒸気で被処理物を加熱して被処理物の熱処理を行う熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、過熱水蒸気で被処理物を加熱して被処理物の熱処理を行う熱処理装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載された熱処理装置は、加熱炉として設けられて被処理物の熱処理が行われる熱処理室を備えており、被処理物を加熱するための加熱領域が熱処理室内に形成される。熱処理室内の加熱領域は、被処理物の搬送方向の上流側から下流側に向かって順番に隣接して設けられた複数のゾーンに分けられている。そして、特許文献1の熱処理装置は、被処理物が各ゾーン内を順番に搬送されながら過熱水蒸気によって加熱され、被処理物の熱処理が行われるように構成されている。
【0003】
また、特許文献1の熱処理装置は、熱処理室内の複数のゾーンのそれぞれにおいて、過熱水蒸気としての水蒸気が供給されるように構成されている。より具体的には、熱処理室における各ゾーンの上面に開孔部が設けられ、各ゾーンの上面の開孔部から過熱水蒸気としての水蒸気が各ゾーン内に供給されるように構成されている。また、特許文献1の熱処理装置においては、熱処理室における各ゾーンの下面に排気孔が設けられている。これにより、特許文献1の熱処理装置は、熱処理室内の各ゾーンにおいて、上面の開孔部から供給されて各ゾーン内を通過した水蒸気が下面の排気孔から排出されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-2325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された熱処理装置は、熱処理室内で被処理物の搬送方向に並ぶ複数のゾーンのそれぞれにおいて、上面の開孔部から過熱水蒸気を供給し、下面の排気孔から水蒸気を排出するように構成されている。このため、熱処理室内に過熱水蒸気を供給し、その後に被処理物の加熱に用いた水蒸気を外部へと排出するための構成が、熱処理室内の複数のゾーンのそれぞれに必要となり、熱処理装置の構造が複雑化してしまうという問題がある。
【0006】
また、特許文献1の熱処理装置は、上記の通り、熱処理室内における複数のゾーンのそれぞれにおいて、上面の開孔部から過熱水蒸気を供給して下面の排気孔から水蒸気を排出する。このため、熱処理室内の各ゾーンにおいて上面の開孔部から下面の排気孔へと水蒸気が流れ、ゾーンごとに偏在して上方から下方へと流れる水蒸気の流れが形成される。これにより、熱処理室内で、被処理物の搬送方向と平行な方向に沿った水蒸気の流れが生じにくくなる。このことから、被処理物の搬送方向と平行な方向に沿った水蒸気の流れのばらつきが大きく生じ、水蒸気の流れが停滞する領域が生じ易くなり、その結果、熱処理室内において雰囲気が淀む領域が生じ易くなる。
【0007】
熱処理室内において雰囲気の淀みが生じ易くなると、熱処理室内において過熱水蒸気の分布のムラが発生し易くなり、同じ熱処理室内で熱処理が行われる複数の被処理物の間において熱処理のムラが生じ易くなるという問題がある。また、熱処理の際に被処理物から一部の成分が気化してガスが発生する処理の場合、熱処理室内において淀みが生じると、淀みの発生した領域において、被処理物から生じたガスが滞留してしまうことになる。そして、雰囲気の澱みが生じて熱処理の際に被処理物から生じたガスが滞留すると、加熱領域内の過熱水蒸気の純度が低下し、熱処理効率の低下を招いてしまうという問題がある。また、被処理物から生じて雰囲気の淀んだ領域に滞留したガスは、熱処理室から排出されず、熱処理が終了した際の温度の低下に伴って液化し、熱処理室内の天井或いは壁面で結露してしまうことになる。さらに、新たに熱処理が開始された際に、熱処理室内の天井或いは壁面で結露した成分が被処理物に滴下し、被処理物に汚れを発生させてしまうという問題がある。
【0008】
尚、熱処理の際に被処理物から一部の成分が気化してガスが発生する処理としては、例えば、焼結処理がある。焼結処理においては、油脂成分を含むバインダーで一体化された被焼結体としての被処理物を加熱してバインダーを気化させて除去する処理が行われる。この処理の際、気化したバインダーが雰囲気の淀んだ領域に滞留して排出されないと、熱処理が終了した際の温度の低下に伴って液化し、熱処理室内の天井或いは壁面で結露してしまうことになる。そして、新たに熱処理が開始された際に、熱処理室内の天井或いは壁面で結露したバインダーの成分が被処理物に滴下し、被処理物に汚れを発生させてしまうことになる。
【0009】
上述のように、熱処理室内において雰囲気の澱みが生じ易くなると、同じ熱処理室内で熱処理が行われる複数の被処理物の間において熱処理のムラを生じ易くなり、更に、被処理物中から生じたガスの滞留に伴う熱処理効率の低下及び被処理物の汚れの発生という問題も生じ易くなる。したがって、熱処理室内の雰囲気の澱みが発生してしまうことを抑制する熱処理装置の実現が望まれる。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、過熱水蒸気によって被処理物の熱処理を行う熱処理装置の構造の複雑化を防止できるとともに、被処理物の熱処理が行われる熱処理室内において雰囲気の淀みが発生してしまうことを抑制することができる、熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記課題を解決するために、本発明のある局面に係わる熱処理装置は、過熱水蒸気で被処理物を加熱して当該被処理物の熱処理を行う熱処理装置に関する。そして、本発明のある局面に係わる熱処理装置は、前記被処理物が搬入される入口と前記被処理物が搬出される出口とが設けられ、前記入口から前記出口に向かって搬送される前記被処理物の熱処理が行われる熱処理室と、前記熱処理室における前記被処理物の加熱が行われる領域である加熱領域に設けられて、前記熱処理室内に過熱水蒸気を供給する水蒸気供給部と、前記熱処理室において、前記水蒸気供給部に対して前記入口側と前記出口側とにそれぞれ設けられ、前記熱処理室内の過熱水蒸気を前記熱処理室の外部へ排出する水蒸気排出部と、前記水蒸気排出部から過熱水蒸気を吸引して前記熱処理室の外部へ排出するエジェクタと、を備え、前記水蒸気排出部は、前記被処理物の搬送方向と垂直な方向である前記熱処理室の幅方向に沿って延びる中空の箱状に形成されているとともに、過熱水蒸気を吸い込む複数の貫通孔が設けられている。
【0012】
この構成によると、熱処理室の加熱領域に設けられた水蒸気供給部から熱処理室内に供給された過熱水蒸気によって被処理物が加熱されて被処理物の熱処理が行われる。そして、被処理物の加熱に用いられた過熱水蒸気は、加熱領域に設けられた水蒸気供給部から熱処理室の入口側と出口側とにそれぞれ設けられた水蒸気排出部へと向かって流れ、水蒸気排出部から熱処理室の外部へと排出される。このため、熱処理室においては、加熱領域内の水蒸気供給部から入口側に向かって流れて水蒸気排出部から外部へ排出される水蒸気の流れと、加熱領域内の水蒸気供給部から出口側に向かって流れて水蒸気排出部から外部へ排出される水蒸気の流れとが形成される。そして、熱処理室内においては、加熱領域内の水蒸気供給部から入口側及び出口側のそれぞれに向かって、被処理物の搬送方向と平行な方向に沿って流速のばらつきの少ないより一様な水蒸気の流れが形成される。これにより、熱処理室内において、水蒸気の流れが停滞する領域が生じにくくなり、その結果、熱処理室内において雰囲気が淀む領域が生じにくくなる。
【0013】
よって、上記の構成によると、被処理物の熱処理が行われる熱処理室内において雰囲気の淀みが発生してしまうことを抑制することができる。また、上記の構成によると、熱処理室内において雰囲気の淀みが発生してしまうことを抑制できるため、同じ熱処理室内で熱処理が行われる複数の被処理物の間において熱処理のムラを生じてしまうことを抑制でき、更に、被処理物中から生じたガスの滞留に伴う熱処理効率の低下及び被処理物の汚れの発生も抑制することができる。
【0014】
また、上記の構成によると、水蒸気供給部が熱処理室の加熱領域に設けられ、水蒸気排出部が熱処理室の入口側及び出口側に設けられた簡素な構成によって、熱処理室内での雰囲気の淀みの発生を抑制できる熱処理装置を実現できる。このため、過熱水蒸気によって被処理物の熱処理を行う熱処理装置の構造の複雑化を防止できる。
【0015】
以上の通り、上記の構成によると、過熱水蒸気によって被処理物の熱処理を行う熱処理装置の構造の複雑化を防止できるとともに、被処理物の熱処理が行われる熱処理室内において雰囲気の淀みが発生してしまうことを抑制することができる、熱処理装置を提供することができる。
【0016】
(2)前記熱処理室内に不活性ガス及び空気の少なくともいずれかを供給するガス供給部を更に備え、前記入口は、前記熱処理室の外部に対して開放されており、前記ガス供給部として、前記熱処理室において前記水蒸気供給部に対して前記入口側に設けられた前記水蒸気排出部よりも更に前記入口側に設けられた入口側ガス供給部が備えられている場合がある。
【0017】
この構成によると、熱処理室の入口が外部に対して開放されているため、被処理物の熱処理室内への搬入作業を連続的に迅速に且つ容易に行うことができる。これにより、熱処理プロセスを連続化して熱処理の作業効率の向上を図ることができる。そして、上記の構成によると、入口が開放されていることに加え、水蒸気供給部に対して入口側に設けられた水蒸気排出部よりも更に入口側に設けられて熱処理室内に不活性ガス及び空気の少なくともいずれかのガスを供給する入口側ガス供給部が設けられている。このため、入口側ガス供給部から供給するガスによって、外部に開放された入口と水蒸気排出部との間において熱処理室内の雰囲気を分離することができる。即ち、水蒸気供給部から入口側ガス供給部までの領域の雰囲気と、外部に開放された入口から入口側ガス供給部までの領域の雰囲気とを分離することができる。これにより、熱処理の作業効率の向上のために入口が開放された熱処理装置において、水蒸気供給部から水蒸気排出部までの領域の雰囲気を外部に対して遮断でき、加熱領域における過熱水蒸気による被処理物の熱処理を効率よく行うことができる。
【0018】
(3)前記入口側ガス供給部は、一対で設けられ、前記熱処理室において、一対の前記入口側ガス供給部の間に、前記熱処理室内のガスを前記熱処理室の外部へ排気する入口側排気部が設けられている場合がある。
【0019】
この構成によると、入口側ガス供給部が一対で設けられてそれらの間に入口側排気部が設けられている。このため、水蒸気排出部から入口側に向かって、水蒸気排出部、一対の入口側ガス供給部の一方、入口側排気部、一対の入口側ガス供給部の他方、の順番で、これらが配置されることになる。この構成により、水蒸気排出部で完全に排出されずに漏れるように入口側へと流動した僅かな水蒸気は、一対の入口側ガス供給部の一方から供給されるガスと混ざり、希釈されることになる。そして、一対の入口側ガス供給部の一方から供給されたガスと混ざって希釈された水蒸気は、入口側排気部から外部へと排気される。このため、水蒸気排出部から漏れるように入口側へと流動した僅かな水蒸気も、入口側排気部から排気される。この結果、入口側排気部と入口との間の領域であって温度が低い領域に水蒸気が流入してしまうことを防止することができる。これにより、入口側排気部と入口との間の温度が低い領域に水蒸気が流入して結露が発生することが防止される。結露の発生が防止されることで、入口から搬入された被処理物に水分が滴下して被処理物が濡れ、被処理物の熱処理状態に影響が生じてしまうことが、防止される。また、上記の構成によると、一対の入口側ガス供給部の他方から供給されるガスによって、即ち、入口側排気部と入口との間に配置された入口側ガス供給部から供給されるガスによって、水蒸気供給部から入口側ガス供給部までの領域の雰囲気と、入口から入口側ガス供給部までの領域の雰囲気とをより確実に分離して遮断することができる。
【0020】
(4)前記熱処理室内に不活性ガス及び空気の少なくともいずれかを供給するガス供給部を更に備え、前記出口は、前記熱処理室の外部に対して開放されており、前記ガス供給部として、前記熱処理室において前記水蒸気供給部に対して前記出口側に設けられた前記水蒸気排出部よりも更に前記出口側に設けられた出口側ガス供給部が備えられている場合がある。
【0021】
この構成によると、熱処理室の出口が外部に対して開放されているため、被処理物の熱処理室からの搬出作業を連続的に迅速に且つ容易に行うことができる。これにより、熱処理プロセスを連続化して熱処理の作業効率の向上を図ることができる。そして、上記の構成によると、出口が開放されていることに加え、水蒸気供給部に対して出口側に設けられた水蒸気排出部よりも更に出口側に設けられて熱処理室内に不活性ガス及び空気の少なくともいずれかのガスを供給する出口側ガス供給部が設けられている。このため、出口側ガス供給部から供給するガスによって、外部に開放された出口と水蒸気排出部との間において熱処理室内の雰囲気を分離することができる。即ち、水蒸気供給部から出口側ガス供給部までの領域の雰囲気と、外部に開放された出口から出口側ガス供給部までの領域の雰囲気とを分離することができる。これにより、熱処理の作業効率の向上のために出口が開放された熱処理装置において、水蒸気供給部から水蒸気排出部までの領域の雰囲気を外部に対して遮断でき、加熱領域における過熱水蒸気による被処理物の熱処理を効率よく行うことができる。
【0022】
(5)前記出口側ガス供給部は、一対で設けられ、前記熱処理室において、一対の前記出口側ガス供給部の間に、前記熱処理室内のガスを前記熱処理室の外部へ排気する出口側排気部が設けられている。
【0023】
この構成によると、出口側ガス供給部が一対で設けられてそれらの間に出口側排気部が設けられている。このため、水蒸気排出部から出口側に向かって、水蒸気排出部、一対の出口側ガス供給部の一方、出口側排気部、一対の出口側ガス供給部の他方、の順番で、これらが配置されることになる。この構成により、水蒸気排出部で完全に排出されずに漏れるように出口側へと流動した僅かな水蒸気は、一対の出口側ガス供給部の一方から供給されるガスと混ざり、希釈されることになる。そして、一対の出口側ガス供給部の一方から供給されたガスと混ざって希釈された水蒸気は、出口側排気部から外部へと排気される。このため、水蒸気排出部から漏れるように出口側へと流動した僅かな水蒸気も、出口側排気部から排気される。この結果、出口側排気部と出口との間の領域であって温度が低い領域に水蒸気が流入してしまうことを防止することができる。これにより、出口側排気部と出口との間の温度が低い領域に水蒸気が流入して結露が発生することが防止される。結露の発生が防止されることで、被処理物が出口から搬出される際に被処理物に水分が滴下して被処理物が濡れてしまうことが防止される。また、上記の構成によると、一対の出口側ガス供給部の他方、即ち、出口側排気部と出口との間に配置された出口側ガス供給部から供給されるガスによって、水蒸気供給部から出口側ガス供給部までの領域の雰囲気と、出口から出口側ガス供給部までの領域の雰囲気とをより確実に分離して遮断することができる。
【0024】
(6)前記水蒸気供給部は、前記被処理物の搬送方向において互いに対向して配置された一対のノズル部を備え、一対の前記ノズル部のそれぞれは、対向する一対の前記ノズル部の中間位置側に向かって過熱水蒸気を吹き出すように構成されている場合がある。
【0025】
この構成によると、水蒸気供給部の一対のノズル部のそれぞれから吹き出された過熱水蒸気は、対向する一対のノズル部の中間位置側に向かって流れる。対向する一対のノズル部の間の領域には、被処理物の搬送方向と平行な方向におけるガスの流動を部分的に規制するように構成された仕切板が設置されている場合と、そのような仕切板が設置されていない場合とがある。仕切板が設置されている場合は、各ノズル部から吹き出されて一対のノズル部の中間位置側に向かって流れた各過熱水蒸気は、仕切板に衝突し、加熱領域において被処理物の搬送方向に垂直な断面の全体に亘って広がりながら被処理物の搬送方向と平行な方向において反転して折り返すように流れる。また、仕切板が設置されていない場合は、各ノズル部から吹き出されて一対のノズル部の中間位置側に向かって流れた各過熱水蒸気は、互いに衝突し、加熱領域において被処理物の搬送方向に垂直な断面の全体に亘って広がりながら被処理物の搬送方向と平行な方向において反転して折り返すように流れる。このため、仕切板が設置されている場合及びされていない場合のいずれにおいても、各ノズル部から吹き出された過熱水蒸気は、一対のノズル部の中間位置側に向かって流れて反転した後、加熱領域において被処理物の搬送方向に垂直な断面の全体に亘って広がった状態で、一対のノズル部の中間位置側と反対方向に向かって被処理物の搬送方向と平行な方向に沿って流れることになる。即ち、一対のノズル部のそれぞれから吹き出された過熱水蒸気は、一対のノズル部の中間位置側で流れが反転した後、加熱領域の断面の全体に広がった状態で、被処理物の搬送方向と平行な方向に沿って互いに離れる方向に沿って流れることになる。このため、一対のノズル部の一方から吹き出した過熱水蒸気は、一対のノズル部の中間位置側から熱処理室の入口側に向かって加熱領域の断面の全体に広がった状態で流れることになる。そして、一対のノズル部の他方から吹き出した過熱水蒸気は、一対のノズル部の中間位置側から熱処理室の出口側に向かって加熱領域の断面の全体に広がった状態で流れることになる。これにより、熱処理室内においては、一対のノズル部の中間位置側から入口側及び出口側のそれぞれに向かって、被処理物の搬送方向と平行な方向に沿って加熱領域の断面の全体に広がった状態で流速のばらつきの更に少ないより一様な水蒸気の流れが形成される。これにより、熱処理室内において、水蒸気の流れが停滞する領域が更に生じにくくなり、その結果、熱処理室内において雰囲気が淀む領域が更に生じにくくなる。よって、上記の構成によると、熱処理室内において雰囲気の淀みが発生してしまうことを更に抑制することができる。
【0026】
(7)一対の前記入口側ガス供給部のそれぞれと前記入口側排気部との間には、それぞれ入口側仕切板が設けられ、前記入口側仕切板は、前記熱処理室における前記被処理物の搬送方向と平行な方向におけるガスの流動を部分的に規制するように構成されている場合がある。
【0027】
この構成によると、一対の入口側ガス供給部のそれぞれと入口側排気部との間に、被処理物の搬送方向と平行な方向におけるガスの流動を部分的に規制する入口側仕切板が設けられる。このため、入口側排気部を挟んで配置された一対の入口側ガス供給部の間において、ガスが流動可能なように雰囲気が連通した状態を維持しつつ、雰囲気をより分離し易い状態を形成することができる。これにより、水蒸気供給部から入口側ガス供給部までの領域の雰囲気と、入口から入口側ガス供給部までの領域の雰囲気とをより効率よく分離して遮断することができる。
【0028】
(8)一対の前記出口側ガス供給部のそれぞれと前記出口側排気部との間には、それぞれ出口側仕切板が設けられ、前記出口側仕切板は、前記熱処理室における前記被処理物の搬送方向と平行な方向におけるガスの流動を部分的に規制するように構成されている場合がある。
【0029】
この構成によると、一対の出口側ガス供給部のそれぞれと出口側排気部との間に、被処理物の搬送方向と平行な方向におけるガスの流動を部分的に規制する出口側仕切板が設けられる。このため、出口側排気部を挟んで配置された一対の出口側ガス供給部の間において、ガスが流動可能なように雰囲気が連通した状態を維持しつつ、雰囲気をより分離し易い状態を形成することができる。これにより、水蒸気供給部から出口側ガス供給部までの領域の雰囲気と、出口から出口側ガス供給部までの領域の雰囲気とをより効率よく分離して遮断することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、過熱水蒸気によって被処理物の熱処理を行う熱処理装置の構造の複雑化を防止できるとともに、被処理物の熱処理が行われる熱処理室内において雰囲気の淀みが発生してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態にかかる熱処理装置の一例を模式的に示す図である。
図2】熱処理装置の水蒸気供給部、水蒸気供給系統、水蒸気排出部、水蒸気排出系統、ガス供給部、ガス供給系統、等について模式的に示す図である。
図3】熱処理装置の一部を拡大して示す図であり、図3(A)は、熱処理装置における熱処理室の入口及びその近傍を拡大して示す図であり、図3(B)は、熱処理装置における熱処理室の出口及びその近傍を拡大して示す図である。
図4】熱処理装置の熱処理室における水蒸気供給部及びその近傍を拡大して示す図である。
図5】熱処理装置の一部の模式的な断面図であり、図5(A)は、図4のA-A線矢視位置から見た状態を示す図であり、図5(B)は、図4のB-B線矢視位置から見た状態を示す図である。
図6】熱処理装置の熱処理室における入口側水蒸気排出部及び入口側ガス供給部とその近傍とを拡大して示す図である。
図7】熱処理装置の一部の模式的な断面図であり、図7(A)は、図6のC-C線矢視位置から見た状態を示す図であり、図7(B)は、図6のD-D線矢視位置から見た状態を示す図である。
図8】熱処理装置の熱処理室における出口側水蒸気排出部及び出口側ガス供給部とその近傍とを拡大して示す図である。
図9】熱処理装置の一部の模式的な断面図であり、図9(A)は、図8のE-E線矢視位置から見た状態を示す図であり、図9(B)は、図8のF-F線矢視位置から見た状態を示す図である。
図10】熱処理装置における熱処理室内の過熱水蒸気及び不活性ガスの流れを説明するための図である。
図11】熱処理装置における熱処理室内の過熱水蒸気及び不活性ガスの流れを説明するための図であって、図11(A)は、水蒸気供給部の周囲の領域での過熱水蒸気及び不活性ガスの流れを説明する図であり、図11(B)は、入口側水蒸気排出部及び入口側ガス供給部の周囲の領域での過熱水蒸気及び不活性ガスの流れを説明する図であり、図11(C)は、出口側水蒸気排出部及び出口側ガス供給部の周囲の領域での過熱水蒸気及び不活性ガスの流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0033】
[熱処理装置の概略]
図1は、本発明の実施形態にかかる熱処理装置1の一例を模式的に示す図である。図2は、熱処理装置1の水蒸気供給部13、水蒸気供給系統14、水蒸気排出部15、水蒸気排出系統(16a、16b)、ガス供給部17、ガス供給系統18、等について模式的に示す図である。図3は、熱処理装置1の一部を拡大して示す図であり、図3(A)は、熱処理装置1における熱処理室11の入口31及びその近傍を拡大して示す図であり、図3(B)は、熱処理装置1における熱処理室1の出口32及びその近傍を拡大して示す図である。
【0034】
図1乃至図3を参照して、熱処理装置1は、金属製の被処理物10を過熱水蒸気で加熱して被処理物10の熱処理を行う装置として構成されている。尚、過熱水蒸気は、沸点よりも高い温度に加熱された水蒸気であり、沸点よりも高い温度の乾いた水蒸気である。熱処理装置1は、被処理物10が搬入される入口31と被処理物10が搬出される出口32とが設けられた熱処理室11を備えている。そして、熱処理装置1においては、熱処理室11内において、入口31から出口32に向かって被処理物10が搬送されながら過熱水蒸気で加熱されて被処理物10の熱処理が行われる。熱処理装置1において過熱水蒸気を用いて行われる被処理物10に対する熱処理としては、例えば、脱脂処理、焼結処理、を例示することができる。
【0035】
熱処理装置1において脱脂処理が行われる場合、熱処理装置1での処理の前の処理工程において機械加工等が施された被処理物10が、熱処理装置1に搬入される。そして、熱処理装置1においては、被処理物10に付着した油脂が、過熱水蒸気によって加熱されることで気化され、被処理物10から除去される。また、熱処理装置1において焼結処理が行われる場合、油脂成分を含むバインダーで結合された被焼結材として構成された被処理物10が、熱処理装置1に搬入される。そして、熱処理装置1においては、過熱水蒸気によって被処理物10が加熱されてバインダーが気化されて除去され、続いて、過熱水蒸気によって更に加熱されることで、バインダーが除去された被処理物10が焼結される。
【0036】
熱処理装置1においては、被処理物10は、熱処理室11に搬入され、熱処理室11内において搬送されながら過熱水蒸気によって加熱される。これにより、被処理物10に対する熱処理が行われる。そして、熱処理室11内での熱処理が終了した被処理物10は、熱処理室11から搬出される。また、被処理物10は、熱処理室11へ連続的に搬送され、熱処理室11内で連続的に搬送されながら熱処理が施され、熱処理室11から連続的に搬出される。
【0037】
熱処理装置11で処理される被処理物10は、例えば、金属製の部材として設けられており、外形が略リング状或いは略円筒状の部材として設けられている。外形が略リング状或いは略円筒状の被処理物10としては、例えば、電動モータのコア(鉄心)、転がり軸受の外輪および内輪などのレース部材、平歯車などのギヤ、転がり軸受のころ、シャフト、ワッシャなどを例示することができる。尚、被処理物10は、略リング状又は略円筒状の部材として構成されていなくてもよく、略リング状又は略円筒状以外の形状に形成された部材として構成されていてもよい。例えば、円柱状、角柱状、角筒状、直方体状、立方体状、棒状、板状、特殊な断面形状或いは表面形状を有する形状等、種々の形状であってもよい。
【0038】
熱処理装置1における熱処理室11の入口31及びその近傍の拡大図である図3(A)においては、熱処理室11に被処理物10が搬入されている状態を示している。また、熱処理装置1における熱処理室11の出口32及びその近傍の拡大図である図3(B)においては、被処理物10が熱処理室11内を搬送されて熱処理室11から搬出されている状態を示している。図3(A)及び図3(B)を参照して、被処理物10は、熱処理室11に搬入される際には、例えば、薄型の箱状に形成されたケース10a内に配置された状態で、搬入される。ケース10aには、複数の被処理物10が、略均等間隔で広がって配置された状態で、収納される。そして、被処理物10は、ケース10a内に配置された状態で熱処理室11内に搬入される。尚、複数の被処理物10を収納するケース10aには、周囲の気体がほぼ抵抗無く通過できるように、例えば、周囲側面及び底面に形成された多数の孔と、上面に形成された開口とが、設けられている。これにより、熱処理室11内の雰囲気の過熱水蒸気がケース10aを通過して流動するように構成されている。尚、ケース10aは、熱処理室11内の雰囲気の過熱水蒸気がケース10aをほぼ抵抗なく通過するように流動できる構造であればよく、例えば、網状の部材で形成された形態であってもよい。
【0039】
熱処理装置1は、熱処理室11、ヒータ12、水蒸気供給部13、水蒸気供給系統14、水蒸気排出部15、水蒸気排出系統(16a、16b)、ガス供給部17、ガス供給系統18、入口側排気部19、出口側排気部20、排気系統(21a、21b)、仕切板22、バインダー排出部23、ガスカーテン部24、制御部25、等を備えて構成されている。以下、熱処理装置1の構成について詳細に説明する。
【0040】
[熱処理室]
図4は、熱処理装置1の熱処理室11における水蒸気供給部13及びその近傍を拡大して示す図である。図5は、熱処理装置11の一部の模式的な断面図であり、図5(A)は、図4のA-A線矢視位置から見た状態を示す図であり、図5(B)は、図4のB-B線矢視位置から見た状態を示す図である。図1乃至図5を参照して、熱処理室11は、被処理物10が搬入される入口31と被処理物10が搬出される出口32とが設けられ、入口31から出口32に向かって搬送される被処理物10の熱処理が行われる熱処理炉として構成されている。
【0041】
熱処理室11は、直線的に筒状に延びるトンネル状の外形を有しており、被処理物10が搬送されるとともに被処理物10の熱処理が行われる処理空間が内部に設けられている。被処理物10の搬送方向、即ち、熱処理室11内において被処理物10が搬送される方向は、熱処理室11が筒状に延びる長手方向と平行な方向となる。尚、図1乃至図3において、被処理物10の搬送方向については、一点鎖線の矢印X1で示しており、以下、搬送方向X1と称する。
【0042】
熱処理室11は、一対の側壁(11a、11b)、天井壁11c、及び底壁11dを有している。熱処理室11の一対の側壁(11a、11b)、天井壁11c、及び底壁11dは、鉄鋼製の板状の部材で形成されている。熱処理室11は、鉄鋼製の板状の部材で形成されていることで、熱処理室11を外部から加熱する後述するヒータ12からの熱が伝導し易いように構成されている。一対の側壁(11a、11b)は、平行に配置されており、いずれも上下方向と搬送方向X1とに沿って延びる壁部として設けられている。天井壁11cは、熱処理室11の上部の天井部分を区画する壁部として設けられ、一対の側壁(11a、11b)の上端部を一体に結合するように設けられている。また、天井壁11cは、搬送方向X1に垂直な断面においてアーチ状に延びるように形成されている。底壁11dは、熱処理室11の底部分を区画する壁部として設けられ、一対の側壁(11a、11b)の下端部を一体に結合するように設けられている。
【0043】
熱処理室11の入口31は、熱処理室11における被処理物10が搬入される開口として設けられている。本実施形態では、入口31は、側壁11aの端部、側壁11bの端部、天井壁11cの端部、及び底壁11dの端部にて区画された開口として設けられている。そして、入口31は、熱処理室11において、搬送方向X1と平行な方向における一方の端部の開口として設けられ、熱処理室11における搬送方向X1の上流側の端部で開口している。入口31は、熱処理室11の外部に対して開放されており、扉は設けられておらず、常時、外部に対して開放されている。尚、被処理物10は、前述の通り、ケース10aに収納された状態で、入口31から熱処理室11に搬入される。
【0044】
熱処理室11の出口32は、熱処理室11における被処理物10が搬出される開口として設けられている。本実施形態では、出口32は、側壁11aの端部、側壁11bの端部、天井壁11cの端部、及び底壁11dの端部にて区画された開口として設けられている。そして、出口32は、熱処理室11において、搬送方向X1と平行な方向における入口31側の端部とは反対側の端部の開口として設けられ、熱処理室11における搬送方向X1の下流側の端部で開口している。出口32は、熱処理室11の外部に対して開放されており、扉は設けられておらず、常時、外部に対して開放されている。尚、被処理物10は、前述の通り、ケース10aに収納された状態で、出口32から熱処理室11の外部へ搬出される。
【0045】
また、熱処理室11においては、被処理物10の加熱が行われる領域である加熱領域HRが設けられている。加熱領域HRは、熱処理室11において、搬送方向X1における一部の領域として設定されている。尚、図1においては、熱処理室11における加熱領域HRについて、搬送方向X1における所定の範囲として両端矢印で示しており、熱処理室11の外部に図示した両端矢印で模式的に示している。
【0046】
熱処理室11内においては、被処理物10は、後述の水蒸気供給部13から供給される過熱水蒸気によって加熱されるとともに、熱処理室11を外部から加熱する後述のヒータ12によって熱処理室11が加熱されることで熱処理室11を介して加熱された熱処理室11内の雰囲気によっても加熱される。このため、熱処理室11において、被処理物10の加熱が行われる領域である加熱領域HRは、過熱水蒸気による加熱とヒータ12からの熱による加熱(即ち、ヒータ12からの熱によって熱処理室11を介して加熱された熱処理室11内の雰囲気による加熱)との少なくともいずれかが行われる領域として構成される。
【0047】
尚、熱処理室11内において、ヒータ12からの熱による被処理物10の加熱は、搬送方向X1においてヒータ12が配置されている領域において行われる。そして、過熱水蒸気による被処理物10の加熱は、熱処理室11内において雰囲気に過熱水蒸気が含まれる領域において行われる。本実施形態では、熱処理室11において過熱水蒸気による被処理物10の加熱が行われる領域は、水蒸気供給部13から後述のガス供給部17における入口側ガス供給部36aまでの領域、及び、水蒸気供給部13から後述のガス供給部17における出口側ガス供給部37bまでの領域となる。そして、本実施形態では、熱処理室11において、ヒータ12からの熱による被処理物10の加熱が行われる領域は、過熱水蒸気による被処理物10の加熱が行われる領域に含まれている。即ち、熱処理室11の搬送方向X1において、ヒータ12からの熱による被処理物10の加熱が行われる領域は、過熱水蒸気による被処理物10の加熱が行われる領域の内側に配置されている。このため、本実施形態では、加熱領域HRは、水蒸気供給部13から後述のガス供給部17における入口側ガス供給部36aまでの領域、及び、水蒸気供給部13から後述のガス供給部17における出口側ガス供給部37bまでの領域となる。
【0048】
また、本実施形態では、上記の通り、ヒータ12からの熱による加熱が行われる領域が、過熱水蒸気による加熱が行われる領域の内側に配置されている。このため、加熱領域HR内の領域であって、ヒータ12からの熱による加熱が行われる領域においては、ヒータ12からの熱による加熱と過熱水蒸気による加熱との両方の加熱が行われる。そして、加熱領域HR内の領域であって、ヒータ12が配置されておらずヒータ12からの熱による加熱が行われない領域においては、過熱水蒸気による加熱のみが行われる。
【0049】
尚、本実施形態では、ヒータ12からの熱による加熱が行われる領域が、過熱水蒸気による加熱が行われる領域の内側に配置された形態を例示したが、この通りでなくてもよい。ヒータ12からの熱による被処理物10の加熱が行われる領域が、過熱水蒸気による被処理物10の加熱が行われる領域の内側から外側にまで亘って配置されていてもよい。この場合、過熱水蒸気による加熱が行われる領域が、ヒータ12からの熱による加熱が行われる領域の内側に配置されることになる。そして、加熱領域HRは、過熱水蒸気による加熱が行われる領域を含む領域であって、ヒータ12からの熱による加熱が行われる領域となる。
【0050】
また、熱処理室11には、搬送機構33が設けられている。搬送機構33は、被処理物10を熱処理室11内において搬送する機構として設けられている。尚、本実施形態では、搬送機構33は、被処理物10をケース10aごと搬送するように、即ち、ケース10aに収納された状態で被処理物10を搬送するように、構成されている。搬送機構33は、熱処理室11内における下方の領域に配置され、底壁11dの上方で底壁11dの壁面と平行に搬送方向X1に沿って配置されている。搬送機構33は、例えば、周回する無端状のメッシュベルト34によって被処理物10を搬送する機構として構成されている。そして、搬送機構33は、メッシュベルト34が周回することで、メッシュベルト34の上面に配置されたケース10aに収納された被処理物10をケース10aとともに搬送するように構成されている。
【0051】
尚、無端状のメッシュベルト34は、例えば、その幅方向の両縁部にローラーチェーンがそれぞれ設けられた構造を有し、ローラーチェーンに噛み合うスプロケットが設けられた複数の駆動シャフト35によって駆動され、周回するように構成されている。複数の駆動シャフト35は、メッシュベルト34の内側に挿通された状態で、それぞれ軸心周りに回転するように設置されている。複数の駆動シャフト35は、互いに平行に延びるように配置され、一対の側壁(11a、11b)に対して垂直な方向に沿って延びるように配置されている。また、各駆動シャフト35は、一対の側壁(11a、11b)に対して、回転自在に支持されている。また、各駆動シャフト35には、その軸方向に離れて配置された一対のスプロケット(35a、35a)が設けられ、各スプロケット35aは、メッシュベルト34の両縁部の各ローラーチェーンに噛み合っている。また、複数の駆動シャフト35のうちの少なくとも1つは、制御部25からの制御指令に基づいて作動する電動モータ(図示省略)によって回転駆動されるように構成されている。駆動シャフト35が電動モータによって回転駆動されると、駆動シャフト35の回転駆動が、スプロケット35aとローラーチェーンとの噛み合いを介してメッシュベルト34に伝達される。そして、複数の駆動シャフト35によって周回自在に支持されたメッシュベルト34の周回動作が行われることになる。メッシュベルト34が周回動作を行うと、ケース10aに収納された状態でメッシュベルト34の上面に配置された被処理物10が搬送されることになる。
【0052】
[ヒータ]
図1を参照して、ヒータ12は、熱処理室11を外部から加熱する機構として設けられ、複数設けられている。複数のヒータ12は、熱処理室11の長手方向に沿って(即ち、搬送方向X1に沿って)直列に並んで配置されている。尚、図2及び図4以降の図面においては、ヒータ12の図示は省略されている。
【0053】
各ヒータ12は、熱処理室11の周囲に配置された発熱体(図示省略)と、熱処理室11の周囲に配置された発熱体の更に外側で熱処理室11の周囲と発熱体とを覆うように配置された断熱部材(図示省略)とを備えて構成されている。発熱体は、熱処理室11における一対の側壁(11a、11b)、天井壁11c、及び底壁11dを外部から加熱するように配置されている。発熱体は、例えば、図示が省略された電源から供給される電気エネルギーを熱エネルギーに変換する電熱体を備え、電熱体に通電が行われることで発熱するように構成されている。また、ヒータ12の発熱体は、制御部25からの制御指令に基づいて作動し、発熱する。制御部25からの制御指令に基づいてヒータ12の発熱体が作動して発熱すると、ヒータ12の発熱体からの熱によって熱処理室11の一対の側壁(11a、11b)、天井壁11c、及び底壁11dが加熱される。それにより、熱処理室11内の雰囲気が加熱される。そして、熱処理室11を搬送される被処理物10は、過熱水蒸気によって加熱されるとともに、ヒータ12からの熱によって加熱された熱処理室11内の雰囲気によっても加熱される。
【0054】
[水蒸気供給部]
図1図2図4図5を参照して、水蒸気供給部13は、熱処理室11における加熱領域HRに設けられて、熱処理室11内に過熱水蒸気を供給する機構として設けられている。本実施形態において例示した熱処理装置1では、水蒸気供給部13は、加熱領域HRにおける被処理物10の搬送方向X1の中央部分に設けられている。尚、水蒸気供給部13は、加熱領域HRに配置されていればよく、搬送方向X1の中央部分よりも入口31側或いは出口32側に設けられていてもよい。
【0055】
水蒸気供給部13は、後述する水蒸気供給系統14から供給される過熱水蒸気を熱処理室11内へ供給する一対のノズル部(38a、38b)を備えて構成されている。一対のノズル部(38a、38b)のそれぞれは、円筒状に延びるとともに円筒軸方向の両端部が閉鎖された部材として設けられている。一対のノズル部(38a、38b)は、被処理物10の搬送方向X1において互いに対向して配置されている。そして、被処理物10の搬送方向X1において、ノズル部38aがノズル部38bに対して入口31側に配置され、ノズル部38bがノズル部38aに対して出口32側に配置されている。また、本実施形態では、一対のノズル部(38a、38b)は、熱処理室11内において加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央部分に配置されている。そして、ノズル部38aが、加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央位置よりも入口31側に配置され、ノズル部38bが、加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央位置よりも出口32側に配置されている。また、各ノズル部(38a、38b)は、その円筒軸方向が、熱処理室11の幅方向に沿って水平に延びた状態で、熱処理室11内に配置されている。尚、熱処理室11の幅方向は、水平に延びる熱処理室11の長手方向(即ち、搬送方向X1)と、熱処理室11の高さ方向(即ち、上下方向)とに対して垂直な方向として規定される。
【0056】
また、各ノズル部(38a、38b)は、その円筒軸方向における略中央位置において、後述の水蒸気供給系統14の各水蒸気供給配管(42a、42b)に接続している。尚、ノズル部38aは、水蒸気供給配管42aに接続し、ノズル部38bは、水蒸気供給配管42bに接続している。各水蒸気供給配管(42a、42b)は、熱処理室11の天井壁11cを貫通して、熱処理室11内の各ノズル部(38a、38b)に接続している。各ノズル部(38a、38b)に接続した各水蒸気供給配管(42a、42b)は、天井壁11cを貫通した状態で、天井壁11cに固定されている。これにより、熱処理室11内において、各ノズル部(38a、38b)が、各水蒸気供給配管(42a、42b)を介して、天井壁11cに支持されている。
【0057】
各ノズル部(38a、38b)の内部と各水蒸気供給配管(42a、42b)の内部とは連通しており、各水蒸気供給配管(42a、42b)から供給される過熱水蒸気は、各ノズル部(38a、38b)の内部に供給される。また、各ノズル部(38a、38b)には、複数のノズル孔39が設けられている。各ノズル孔39は、例えば、円形の形状に開口した貫通孔として設けられている。尚、各ノズル孔39の開口形状は、円形の形状に限らず、例えば、矩形の形状、スリット状の形状、等の種々の形状に形成されてもよい。複数のノズル孔39は、各ノズル部(38a、38b)において、その円筒軸方向に沿って直線状に並んで配置され、例えば、等間隔に並んで配置されている。尚、各ノズル部(38a、38b)の円筒軸方向は、熱処理室11の幅方向に沿っているため、各ノズル部(38a、38b)における複数のノズル孔39は、熱処理室11の幅方向に沿って配置されている。各水蒸気供給配管(42a、42b)から各ノズル部(38a、38b)へと供給された過熱水蒸気は、各ノズル部(38a、38b)内で充満し、更に、複数のノズル孔39から外部へと吹き出す。複数のノズル孔39から過熱水蒸気が吹き出すことで、熱処理室11内に各ノズル部(38a、38b)から過熱水蒸気が供給されることになる。
【0058】
また、ノズル部38aにおいては、その円筒軸方向に沿って配置された複数のノズル孔39は、いずれも、対向する一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側に向かって開口しており、出口32側に向かって開口している。このため、一対のノズル部(38a、38b)のうち入口31側に配置されたノズル部38aから熱処理室11内に供給される過熱水蒸気は、入口31側とは反対側の出口32側に向かって、ノズル部38aから吹き出される。また、本実施形態では、ノズル部38aにおいて、複数のノズル孔39は、加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央位置側に向かって開口している。尚、ノズル部38aは、加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央位置よりも入口31側に配置されており、ノズル部38aの各ノズル孔39は、出口32側に向かって開口している。このため、加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央位置よりも入口31側に配置されたノズル部38aから熱処理室11内に供給される過熱水蒸気は、入口31側から、加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央位置側に向かって、ノズル部38aから吹き出される。
【0059】
また、ノズル部38bにおいては、その円筒軸方向に沿って配置された複数のノズル孔39は、いずれも、対向する一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側に向かって開口しており、入口31側に向かって開口している。このため、一対のノズル部(38a、38b)のうち出口32側に配置されたノズル部38bから熱処理室11内に供給される過熱水蒸気は、出口32側とは反対側の入口31側に向かって、ノズル部38bから吹き出される。また、本実施形態では、ノズル部38bにおいて、複数のノズル孔39は、加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央位置側に向かって開口している。尚、ノズル部38bは、加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央位置よりも出口32側に配置されており、ノズル部38bの各ノズル孔39は、入口31側に向かって開口している。このため、加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央位置よりも出口32側に配置されたノズル部38aから熱処理室11内に供給される過熱水蒸気は、出口32側から、加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央位置側に向かって、ノズル部38bから吹き出される。
【0060】
上記の構成により、一対のノズル部(38a、38b)のそれぞれは、対向する一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側に向かって過熱水蒸気を吹き出すように構成されている。また、本実施形態では、ノズル部38aは、加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央部分において、入口31側から加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央位置側に向かって過熱水蒸気を吹き出すように、配置されている。そして、ノズル部38bは、加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央部分において、出口32側から加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央位置側に向かって過熱水蒸気を吹き出すように、配置されている。このため、一対のノズル部(38a、38b)は、加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央位置を挟んで、被処理物10の搬送方向X1において互いに対向して配置されている。そして、一対のノズル部(38a、38b)のそれぞれは、加熱領域HRにおける被処理物10の搬送方向X1の中央位置側に向かって過熱水蒸気を吹き出すように構成されている。
【0061】
[水蒸気供給系統]
図2図4及び図5を参照して、水蒸気供給系統14は、過熱水蒸気を生成して水蒸気供給部13へ過熱水蒸気を供給する機構として設けられている。そして、水蒸気供給系統14は、過熱水蒸気生成部40、水蒸気供給配管(41、42a、42b)を備えて構成されている。
【0062】
過熱水蒸気生成部40は、水を加熱して過熱水蒸気を生成する機構として設けられており、ボイラと過熱器とを備えて構成されている。ボイラは、水を加熱して蒸発させて沸点程度の温度の飽和水蒸気を生成し、過熱器は、ボイラで生成された飽和水蒸気を更に加熱して過熱水蒸気を生成する。過熱水蒸気生成部40は、制御部25からの制御指令に基づいて作動し、過熱水蒸気を生成する。即ち、制御部25からの制御指令に基づいてボイラ及び過熱器が作動し、過熱水蒸気の生成が行われる。制御部25からの制御指令に基づいて過熱水蒸気生成部40が作動して過熱水蒸気が生成されると、後述の水蒸気供給配管(41、42a、42b)を介して水蒸気供給部13の一対のノズル部(38a、38b)に過熱水蒸気が供給される。
【0063】
水蒸気供給配管41は、その上流端側において過熱水蒸気生成部40に接続され、過熱水蒸気生成部40で生成された過熱水蒸気を供給する配管系統として設けられている。また、水蒸気供給配管41は、その下流端側において、水蒸気供給配管42aと水蒸気供給配管42bとに接続している。即ち、水蒸気供給配管41は、並列に分岐するように水蒸気供給配管(42a、42b)に接続している。水蒸気供給配管42aは、水蒸気供給配管41とノズル部38aとを接続する配管系統として設けられ、過熱水蒸気生成部40で生成されて水蒸気供給配管41を経て供給された過熱水蒸気をノズル部38aに供給するように構成されている。水蒸気供給配管42bは、水蒸気供給配管41とノズル部38bとを接続する配管系統として設けられ、過熱水蒸気生成部40で生成されて水蒸気供給配管41を経て供給された過熱水蒸気をノズル部38bに供給するように構成されている。
【0064】
[水蒸気排出部]
図6は、熱処理装置1の熱処理室11における後述の入口側水蒸気排出部15a及び後述の入口側ガス供給部(36a、36b)とその近傍とを拡大して示す図である。図7は、熱処理装置1の一部の模式的な断面図であり、図7(A)は、図6のC-C線矢視位置から見た状態を示す図であり、図7(B)は、図6のD-D線矢視位置から見た状態を示す図である。図8は、熱処理装置1の熱処理室11における後述の出口側水蒸気排出部15b及び後述の出口側ガス供給部(37a、37b)とその近傍とを拡大して示す図である。図9は、熱処理装置1の一部の模式的な断面図であり、図9(A)は、図8のE-E線矢視位置から見た状態を示す図であり、図9(B)は、図8のF-F線矢視位置から見た状態を示す図である。
【0065】
図1乃至図3図6乃至図9を参照して、水蒸気排出部15は、熱処理室11内の過熱水蒸気を熱処理室11の外部へ排出するための機構として設けられている。そして、水蒸気排出部15は、熱処理室11において、水蒸気供給部13に対して入口31側と出口32側とにそれぞれ設けられている。
【0066】
熱処理室11の入口31側には、水蒸気排出部15として、入口側水蒸気排出部15aが設けられている。熱処理室11の出口32側には、水蒸気排出部15として、出口側水蒸気排出部15bが設けられている。本実施形態では、入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bは、熱処理室11における加熱領域HR内に配置されており、加熱領域HRにおける搬送方向X1の両端部の近傍の領域にそれぞれ配置されている。また、本実施形態では、入口側水蒸気排出部15aは、熱処理室11において、搬送方向X1に沿って並ぶ複数のヒータ12のうちの最も入口31側に配置されたヒータ12に対応する位置に配置されている。そして、出口側水蒸気排出部15bは、熱処理室11において、搬送方向X1に沿って並ぶ複数のヒータ12のうちの最も出口32側に配置されたヒータ12に対応する位置に配置されている。また、入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bは、加熱領域HRの搬送方向X1と平行な方向における両端部のそれぞれの近傍の領域において、天井壁11c側の領域、即ち、熱処理室11の搬送方向X1と垂直な断面における上半分側の領域に配置されている。
【0067】
入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bは、同様に構成されており、熱処理室11の幅方向に沿って延びる中空の箱状に形成されている。そして、入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれは、搬送方向X1に垂直な断面において天井壁11cに沿ってアーチ状に延びる上壁43aと、水平に延びる下壁43bと、搬送方向X1に垂直な断面に沿って延びる一対の側壁(43c、43d)とを備えて構成されている。これにより、入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれの内側の中空領域は、上壁43a、下壁43b、及び一対の側壁(43c、43d)で囲まれた円弧状のドーム型の中空領域として形成されている。
【0068】
また、入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれの下壁43bには、過熱水蒸気を吸い込むための複数の貫通孔(図示省略)が設けられている。過熱水蒸気は、入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれから吸い込まれて熱処理室11から排出される。
【0069】
[水蒸気排出系統]
図2及び図6乃至図9を参照して、水蒸気排出系統(16a、16b)は、入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bから過熱水蒸気を吸い込んで熱処理室11の外部へ過熱水蒸気を排出する機構として設けられている。そして、水蒸気排出系統(16a、16b)は、入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれに接続されている。尚、水蒸気排出系統16aは、入口側水蒸気排出部15aに接続されており、入口側水蒸気排出部15aに吸い込まれた過熱水蒸気は、水蒸気排出系統16aに吸い込まれて熱処理室11から排出される。そして、水蒸気排出系統16bは、出口側水蒸気排出部15bに接続されており、出口側水蒸気排出部15bに吸い込まれた過熱水蒸気は、水蒸気排出系統16bに吸い込まれて熱処理室11から排出される。
【0070】
水蒸気排出系統16a及び水蒸気排出系統16bは、同様に構成され、いずれも、水蒸気排出管44とエジェクタ45とを備えて構成されている。
【0071】
水蒸気排出系統(16a、16b)の各水蒸気排出管44は、熱処理室11の天井壁11cを貫通して、熱処理室11内の入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれに接続されている。入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれの内部と各水蒸気排出管44とは連通しており、入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれに吸い込まれた過熱水蒸気は、各水蒸気排出管44に吸い込まれる。また、入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれに接続された各水蒸気排出管44は、天井壁11cを貫通した状態で、天井壁11cに固定されている。これにより、熱処理室11内において、入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれが、各水蒸気排出管44を介して、天井壁11cに支持されている。
【0072】
水蒸気排出系統(16a、16b)の各エジェクタ45は、各水蒸気排出管44に対して、各水蒸気排出管44における入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれに接続している端部とは反対側の端部において、接続されている。そして、各エジェクタ45は、高圧流体を用いて負圧を発生させることで、各水蒸気排出管44を介して入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれから過熱水蒸気を吸引し、更に吸引した過熱水蒸気を外部へ排出する機構として設けられている。
【0073】
水蒸気排出系統(16a、16b)の各エジェクタ45は、例えば、高圧流体としての圧縮空気が供給されるノズルと、ノズルの周囲を覆うボディと、ボディに連通するとともに外部に開口する吐出口が設けられたディフューザとを備えて構成されている。ノズルは、圧縮空気供給源(図示省略)から圧縮空気が供給されるように構成されている。尚、ノズルの上流側には、後述する制御部25からの制御指令に基づいて開閉する電磁弁が設けられ、ノズルへの圧縮空気の給排が制御される。ボディは、ノズルの下流端の周囲の領域を負圧発生領域として区画するとともに各水蒸気排出管44に接続されている。尚、ボディにおける各水蒸気排出管44の下流端に接続する部分には、制御部25からの制御指令に基づいて開閉する電磁弁が設けられ、エジェクタ45を作動させて各水蒸気排出管44を介した過熱水蒸気の吸引動作を行う場合にはその電磁弁が開放される。
【0074】
入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bによるバインダーの排出が行われる際には、制御部25からの制御指令に基づいて、水蒸気排出系統(16a、16b)の各エジェクタ45の電磁弁が開放され、エジェクタ45が作動する。即ち、ノズルの上流側の電磁弁が開放されるとともに、ボディにおける各水蒸気排出管44の下流端に接続する部分に設けられた電磁弁が開放され、各エジェクタ45が作動する。各エジェクタ45が作動すると、圧縮空気がノズルからボディ内に高速で吹き出すことによってボディ内で負圧が発生し、これにより、各水蒸気排出管44を介して入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれの内部の過熱水蒸気が吸引される。入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれの内部の過熱水蒸気が各水蒸気排出管44に吸引されることで、入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれの下壁43bに設けられた複数の貫通孔から熱処理室11内における過熱水蒸気が吸い込まれる。入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれに吸い込まれた過熱水蒸気は、各水蒸気排出管44を介して各エジェクタ45のボディへと流動し、ボディ内でノズルから吹き出された圧縮空気と混合される。そして、過熱水蒸気と圧縮空気とが混合した状態の混合ガスが、ディフューザ内を下流側へと流動し、ディフューザの吐出口から外部へ排出される。このようにして、熱処理室11内の過熱水蒸気が、入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれから吸い込まれて各水蒸気排出管44及び各エジェクタ45を介して外部へと排出される。
【0075】
[ガス供給部]
図1乃至図3及び図6乃至図9を参照して、ガス供給部17は、熱処理室11内に不活性ガス及び空気の少なくともいずれかを供給する機構として設けられている。即ち、ガス供給部17は、熱処理室11内に不活性ガスを供給する機構として、又は、熱処理室11内に空気を供給する機構として、或いは、熱処理室11内に不活性ガスと空気との混合ガスを供給する機構として、設けられている。尚、本実施形態では、ガス供給部17が熱処理室11内に不活性ガスを供給する機構として構成された形態を例示している。ガス供給部17が熱処理室11内に供給する不活性ガスは、例えば、窒素ガスである。尚、ガス供給部17が供給する窒素ガス以外の不活性ガスとして、例えば、ヘリウム、および、アルゴンガスを例示できる。
【0076】
熱処理装置1においては、ガス供給部17として、入口側ガス供給部(36a、36b)と、出口側ガス供給部(37a、37b)とが設けられている。熱処理室11において、入口側ガス供給部(36a、36b)は、水蒸気供給部13に対して入口31側に設けられ、出口側ガス供給部(37a、37b)は、水蒸気供給部13に対して出口32側に設けられている。
【0077】
入口側ガス供給部(36a、36b)は、一対で設けられ、熱処理室11において水蒸気供給部13に対して入口31側に設けられた入口側水蒸気排出部15aよりも更に入口31側に設けられている。一対の入口側ガス供給部(36a、36b)のそれぞれは、例えば、円筒状に延びるとともに円筒軸方向の両端部が閉鎖された部材として設けられている。一対の入口側ガス供給部(36a、36b)は、本実施形態では、加熱領域HRの搬送方向X1と平行な方向における入口31側の端部の近傍の領域に配置されている。そして、一対の入口側ガス供給部(36a、36b)は、搬送方向X1に沿って並んで配置されており、入口側ガス供給部36aが、入口側ガス供給部36bに対して、入口31側に配置されている。また、各入口側ガス供給部(36a、36b)は、その円筒軸方向が、熱処理室11の幅方向に沿って水平に延びた状態で、熱処理室11内に配置されている。
【0078】
また、各入口側ガス供給部(36a、36b)は、その円筒軸方向における略中央位置において、不活性ガスを供給する後述のガス供給系統18の各分岐配管(48a、48b)に接続している。尚、入口側ガス供給部36aは、分岐配管48aに接続し、入口側ガス供給部36bは、分岐配管48bに接続している。各分岐配管(48a、48b)は、熱処理室11の天井壁11cを貫通して、熱処理室11内の各入口側ガス供給部(36a、36b)に接続している。各入口側ガス供給部(36a、36b)に接続した各分岐配管(48a、48b)は、天井壁11cを貫通した状態で、天井壁11cに固定されている。これにより、熱処理室11内において、各入口側ガス供給部(36a、36b)が、各分岐配管(48a、48b)を介して、天井壁11cに支持されている。
【0079】
各入口側ガス供給部(36a、36b)の内部と各分岐配管(48a、48b)の内部とは連通しており、各分岐配管(48a、48b)から供給される不活性ガスは、各入口側ガス供給部(36a、36b)の内部に供給される。また、各入口側ガス供給部(36a、36b)には、複数のノズル孔(図示省略)が設けられている。複数のノズル孔は、各入口側ガス供給部(36a、36b)において、その円筒軸方向に沿って直線状に並んで配置され、例えば、等間隔に並んで配置されている。また、各入口側ガス供給部(36a、36b)において円筒軸方向に沿って配置された複数のノズル孔は、いずれも、下方に向かって開口している。このため、各入口側ガス供給部(36a、36b)からは、不活性ガスは、下方に向かって吹き出される。
【0080】
上記の構成により、各分岐配管(48a、48b)から各入口側ガス供給部(36a、36b)へと供給された不活性ガスは、各入口側ガス供給部(36a、36b)内で充満し、更に、複数のノズル孔から下方に向かって外部へと吹き出す。そして、複数のノズル孔から不活性ガスが吹き出すことで、熱処理室11内に各入口側ガス供給部(36a、36b)から不活性ガスが供給されることになる。入口側水蒸気排出部15aよりも入口31側に設けられた入口側ガス供給部(36a、36b)から不活性ガスが供給されることで、入口31と入口側水蒸気排出部15aとの間において熱処理室11内の雰囲気が分離されることになる。
【0081】
出口側ガス供給部(37a、37b)は、一対で設けられ、熱処理室11において水蒸気供給部13に対して出口32側に設けられた出口側水蒸気排出部15bよりも更に出口32側に設けられている。一対の出口側ガス供給部(37a、37b)のそれぞれは、例えば、円筒状に延びるとともに円筒軸方向の両端部が閉鎖された部材として設けられている。一対の出口側ガス供給部(37a、37b)は、本実施形態では、加熱領域HRの搬送方向X1と平行な方向における出口32側の端部の近傍の領域に配置されている。そして、一対の出口側ガス供給部(37a、37b)は、搬送方向X1に沿って並んで配置されており、出口側ガス供給部37bが、出口側ガス供給部37aに対して、出口32側に配置されている。また、各出口側ガス供給部(37a、37b)は、その円筒軸方向が、熱処理室11の幅方向に沿って水平に延びた状態で、熱処理室11内に配置されている。
【0082】
また、各出口側ガス供給部(37a、37b)は、その円筒軸方向における略中央位置において、不活性ガスを供給する後述のガス供給系統18の各分岐配管(48c、48d)に接続している。尚、出口側ガス供給部37aは、分岐配管48cに接続し、出口側ガス供給部37bは、分岐配管48dに接続している。各分岐配管(48c、48d)は、熱処理室11の天井壁11cを貫通して、熱処理室11内の各出口側ガス供給部(37a、37b)に接続している。各出口側ガス供給部(37a、37b)に接続した各分岐配管(48c、48d)は、天井壁11cを貫通した状態で、天井壁11cに固定されている。これにより、熱処理室11内において、各出口側ガス供給部(37a、37b)が、各分岐配管(48c、48d)を介して、天井壁11cに支持されている。
【0083】
各出口側ガス供給部(37a、37b)の内部と各分岐配管(48c、48d)の内部とは連通しており、各分岐配管(48c、48d)から供給される不活性ガスは、各出口側ガス供給部(37a、37b)の内部に供給される。また、各出口側ガス供給部(37a、37b)には、複数のノズル孔(図示省略)が設けられている。複数のノズル孔は、各出口側ガス供給部(37a、37b)において、その円筒軸方向に沿って直線状に並んで配置され、例えば、等間隔に並んで配置されている。また、各出口側ガス供給部(37a、37b)において円筒軸方向に沿って配置された複数のノズル孔は、いずれも、下方に向かって開口している。このため、各出口側ガス供給部(37a、37b)からは、不活性ガスは、下方に向かって吹き出される。
【0084】
上記の構成により、各分岐配管(48c、48d)から各出口側ガス供給部(37a、37b)へと供給された不活性ガスは、各出口側ガス供給部(37a、37b)内で充満し、更に、複数のノズル孔から下方に向かって外部へと吹き出す。そして、複数のノズル孔から不活性ガスが吹き出すことで、熱処理室11内に各出口側ガス供給部(37a、37b)から不活性ガスが供給されることになる。出口側水蒸気排出部15bよりも出口32側に設けられた出口側ガス供給部(37a、37b)から不活性ガスが供給されることで、出口32と出口側水蒸気排出部15bとの間において熱処理室11内の雰囲気が分離されることになる。
【0085】
[ガス供給系統]
図2及び図6乃至図9を参照して、ガス供給系統18は、不活性ガスをガス供給部17に供給する機構として設けられている。そして、ガス供給系統18は、不活性ガス供給源46、共通配管47、分岐配管(48a、48b、48c、48d)、ガス供給弁(49a、49b、49c、49d)を備えて構成されている。
【0086】
不活性ガス供給源46は、大気圧以上の高圧の不活性ガスを供給する供給源として設けられ、例えば、大気圧以上の高圧に圧縮された状態の不活性ガスが貯蔵されたタンク或いはボンベ等の容器として構成されている。共通配管46aは、不活性ガス供給源46に接続され、不活性ガス供給源46から高圧の不活性ガスを分岐配管(48a、48b、48c、48d)に供給するための配管系統として設けられている。
【0087】
分岐配管(48a、48b、48c、48d)は、共通配管47から分岐し、共通配管47とガス供給部17の入口側ガス供給部(36a、36b)及び出口側ガス供給部(37a、37b)とを接続する配管系統として設けられている。4つの分岐配管(48a、48b、48c、48d)は、共通配管47から並列に分岐している。そして、各分岐配管(48a、48b)は、各入口側ガス供給部(36a、36b)にそれぞれ接続し、各分岐配管(48c、48d)は、各出口側ガス供給部(37a、37b)にそれぞれ接続している。具体的には、分岐配管48aは、共通配管47と入口側ガス供給部36aとを接続し、不活性ガスを入口側ガス供給部36aに供給するように構成されている。分岐配管48bは、共通配管47と入口側ガス供給部36bとを接続し、不活性ガスを入口側ガス供給部36bに供給するように構成されている。分岐配管48cは、共通配管47と出口側ガス供給部37aとを接続し、不活性ガスを出口側ガス供給部37aに供給するように構成されている。分岐配管48dは、共通配管47と出口側ガス供給部37bとを接続し、不活性ガスを出口側ガス供給部37bに供給するように構成されている。
【0088】
ガス供給弁(49a、49b、49c、49d)のそれぞれは、電磁弁として設けられ、分岐配管(48a、48b、48c、48d)のそれぞれに設けられている。尚、ガス供給弁49aが分岐配管48aに設けられ、ガス供給弁49bが分岐配管48bに設けられ、ガス供給弁49cが分岐配管48cに設けられ、ガス供給弁49dが分岐配管48dに設けられている。各ガス供給弁(49a、49b、49c、49d)は、開閉動作を行うことで、各分岐配管(48a、48b、48c、48d)の状態を開放状態と閉鎖状態とで切り替えるように構成されている。各ガス供給弁(49a、49b、49c、49d)は、制御部25からの制御指令に基づいて作動する。制御部25からの制御指令に基づいて各ガス供給弁(49a、49b、49c、49d)が開動作を行い、各分岐配管(48a、48b、48c、48d)の状態が開放状態に切り替えられたときには、不活性ガス供給源46と各入口側ガス供給部(36a、36b)及び各出口側ガス供給部(37a、37b)とが、共通配管47と各分岐配管(48a、48b、48c、48d)とを介して連通する。これにより、不活性ガス供給源46から供給される不活性ガスが、共通配管47及び各分岐配管(48a、48b、48c、48d)を介して各入口側ガス供給部(36a、36b)及び各出口側ガス供給部(37a、37b)に供給される。そして、各入口側ガス供給部(36a、36b)及び各出口側ガス供給部(37a、37b)から熱処理室11内に不活性ガスが供給される。尚、制御部25からの制御指令に基づいて各ガス供給弁(49a、49b、49c、49d)が閉動作を行い、各分岐配管(48a、48b、48c、48d)の状態が閉鎖状態に切り替えられて連通が遮断されたときには、不活性ガスは、熱処理室11へは供給されない。
【0089】
[入口側排気部、出口側排気部]
図1乃至図3及び図6乃至図9を参照して、入口側排気部19及び出口側排気部20は、熱処理室11内のガスを熱処理室11の外部へ排気するための機構として設けられている。
【0090】
入口側排気部19は、熱処理室11において、一対の入口側ガス供給部(36a、36)の間に設けられている。即ち、入口側排気部19は、熱処理室11において、入口側ガス供給部36aと入口側ガス供給部36bとの間の領域に設けられている。このため、熱処理室11内における入口側水蒸気排出部15aよりも入口31側の領域においては、入口側水蒸気排出部15a側から入口31側に向かって、入口側水蒸気排出部15a、入口側ガス供給部36b、入口側排気部19、入口側ガス供給部36aが、この順番で配置されている。また、入口側排気部19は、熱処理室11内における一対の入口側ガス供給部(36a、36)の間の領域において、天井壁11c側の領域、即ち、熱処理室11の搬送方向X1と垂直な断面における上半分側の領域に配置されている。
【0091】
出口側排気部20は、熱処理室11において、一対の出口側ガス供給部(37a、37b)の間に設けられている。即ち、出口側排気部20は、熱処理室11において、出口側ガス供給部37aと出口側ガス供給部37bとの間の領域に設けられている。このため、熱処理室11内における出口側水蒸気排出部15bよりも出口32側の領域においては、出口側水蒸気排出部15b側から出口32側に向かって、出口側水蒸気排出部15b、出口側ガス供給部37a、出口側排気部20、出口側ガス供給部36bが、この順番で配置されている。また、出口側排気部20は、熱処理室11内における一対の出口側ガス供給部(37a、37b)の間の領域において、天井壁11c側の領域、即ち、熱処理室11の搬送方向X1と垂直な断面における上半分側の領域に配置されている。
【0092】
入口側排気部19及び出口側排気部20は、同様に構成されており、熱処理室11の幅方向に沿って延びる中空の箱状に形成されている。そして、入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれは、搬送方向X1に垂直な断面において天井壁11cに沿ってアーチ状に延びる上壁50aと、水平に延びる下壁50bと、搬送方向X1に垂直な断面に沿って延びる一対の側壁(50c、50d)とを備えて構成されている。これにより、入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれの内側の中空領域は、上壁50a、下壁50b、及び一対の側壁(50c、50d)で囲まれた円弧状のドーム型の中空領域として形成されている。
【0093】
また、入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれの下壁50bには、熱処理室11内のガスを吸い込むための複数の貫通孔(図示省略)が設けられている。熱処理室11内のガスは、入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれから吸い込まれて熱処理室11から排出される。尚、入口側排気部19からは、入口側ガス供給部36bから熱処理室11内に供給された不活性ガスと、入口側ガス供給部36aから熱処理室11内に供給されて入口31側とは反対側へ流動した不活性ガスと、入口側水蒸気排出部15aで排出されずに入口31側へと流動したわずかな過熱水蒸気とが、熱処理室11内のガスとして吸い込まれて排出される。また、出口側排気部20からは、出口側ガス供給部37aから熱処理室11内に供給された不活性ガスと、出口側ガス供給部37bから熱処理室11内に供給されて出口32側とは反対側へ流動した不活性ガスと、出口側水蒸気排出部15bで排出されずに出口32側へと流動したわずかな過熱水蒸気とが、熱処理室11内のガスとして吸い込まれて排出される。
【0094】
[排気系統]
図2及び図6乃至図9を参照して、排気系統(21a、21b)は、入口側排気部19及び出口側排気部20から熱処理室11内のガスを吸い込んでその吸い込んだガスを熱処理室11の外部へ排気する機構として設けられている。そして、排気系統(21a、21b)は、入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれに接続されている。尚、排気系統21aは、入口側排気部19に接続されており、入口側排気部19に吸い込まれた熱処理室11内のガスは、排気系統21aに吸い込まれて熱処理室11から排出される。そして、排気系統21bは、出口側排気部20に接続されており、出口側排気部20に吸い込まれた熱処理室11内のガスは、排気系統21bに吸い込まれて熱処理室11から排出される。
【0095】
排気系統21a及び排気系統21bは、同様に構成され、いずれも、ガス排気管51とエジェクタ52とを備えて構成されている。
【0096】
排気系統(21a、21b)の各ガス排気管51は、熱処理室11の天井壁11cを貫通して、熱処理室11内の入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれに接続されている。入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれの内部と各ガス排気管51とは連通しており、入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれに吸い込まれたガスは、各ガス排気管51に吸い込まれる。また、入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれに接続された各ガス排気管51は、天井壁11cを貫通した状態で、天井壁11cに固定されている。これにより、熱処理室11内において、入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれが、各ガス排気管51を介して、天井壁11cに支持されている。
【0097】
排気系統(21a、21b)の各エジェクタ52は、各ガス排気管51に対して、各ガス排気管51における入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれに接続している端部とは反対側の端部において、接続されている。そして、各エジェクタ52は、高圧流体を用いて負圧を発生させることで、各ガス排気管51を介して入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれからガスを吸引し、更に吸引したガスを外部へ排出する機構として設けられている。排気系統(21a、21b)の各エジェクタ52は、水蒸気排出系統(16a、16b)の各エジェクタ45と同様に構成されている。即ち、各エジェクタ52は、高圧流体としての圧縮空気が供給されるノズルと、ノズルの周囲を覆うボディと、ボディに連通するとともに外部に開口する吐出口が設けられたディフューザとを備えて構成されている。そして、ノズルの上流側とボディにおけるガス排気管51の下流端に接続する部分とに設けられた電磁弁が後述の制御部25からの制御指令に基づいて開閉することで、エジェクタ52の作動が制御される。
【0098】
入口側排気部19及び出口側排気部20による熱処理室11内のガスの排出が行われる際には、制御部25からの制御指令に基づいて、排気系統(21a、21b)の各エジェクタ52の電磁弁が開放され、エジェクタ52が作動する。即ち、ノズルの上流側の電磁弁が開放されるとともに、ボディにおける各ガス排気管51の下流端に接続する部分に設けられた電磁弁が開放され、各エジェクタ52が作動する。各エジェクタ52が作動することで、各ガス排気管51を介して入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれの内部のガスが吸引される。入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれのガスが各ガス排気管51に吸引されることで、入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれの下壁50bに設けられた複数の貫通孔から熱処理室11内のガスが吸い込まれる。入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれに吸い込まれたガスは、各ガス排気管51を介して各エジェクタ52のボディへと流動し、ボディ内で圧縮空気と混合されて各エジェクタ52のディフューザの吐出口から外部へ排出される。このようにして、熱処理室11内のガスが、入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれから吸い込まれて各ガス排気管51及び各エジェクタ52を介して外部へと排出される。
【0099】
[仕切板]
図1乃至図9を参照して、仕切板22は、複数設けられており、本実施形態では、複数の仕切板22として、仕切板(22a、22b、22c、22d、22e、22f、22g、22h、22i、22j)が設けられている。複数の仕切板22(22a~j)は、熱処理室11内において搬送方向X1に沿って配置されている。
【0100】
各仕切板22(22a~j)は、熱処理室11の搬送方向X1と垂直な断面における上半分だけを部分的に塞ぐ平板状の部材として設けられている。また、各仕切板22(22a~j)は、その上端の縁部分が天井壁11cに沿って配置され、天井壁11cに対して固定されている。そして、各仕切板22(22a~j)は、熱処理室11内における上半分の領域で、熱処理室11の搬送方向X1と垂直な断面に沿って広がるように設置されている。各仕切板22(22a~j)は、上記のように設けられていることで、熱処理室11における被処理物10の搬送方向X1と平行な方向におけるガスの流動を部分的に規制するように構成されている。尚、本実施形態では、各仕切板22(22a~j)は、熱処理室11の搬送方向X1と垂直な断面において、上半分側の領域のガスの流動を規制し、下半分側の領域のガスの流動を許容するように、構成されている。
【0101】
また、図2図3図6図7を参照して、複数の仕切板22のうちの仕切板(22a、22b)は、本実施形態における入口側仕切板(22a、22b)として設けられている。入口側仕切板(22a、22b)は、一対の入口側ガス供給部(36a、36b)のそれぞれと入口側排気部19との間にそれぞれ設けられている。より具体的には、入口側仕切板22aは、入口側ガス供給部36aと入口側排気部19との間に設けられ、入口側排気部19に対して入口31側で隣り合って配置されている。また、入口側仕切板22bは、入口側排気部19と入口側ガス供給部36bとの間に設けられ、入口側排気部19に対して出口32側で隣り合って配置されている。
【0102】
上記の配置構成により、熱処理室11内における入口側ガス供給部(36a、36b)の近傍の領域において、入口31側から出口32側に向かって、入口側ガス供給部36a、入口側仕切板22a、入口側排気部19、入口側仕切板22b、入口側ガス供給部36bが、この順番で並んで設けられている。そして、入口側仕切板(22a、22b)は、入口側ガス供給部(36a、36b)の近傍の領域において、熱処理室11における被処理物10の搬送方向X1と平行な方向におけるガスの流動を部分的に規制するように構成されている。
【0103】
また、図2図3図6図7を参照して、複数の仕切板22のうちの仕切板(22c、22d)は、熱処理室11内において、入口側水蒸気排出部15aの近傍に配置されている。また、仕切板(22c、22d)は、入口側水蒸気排出部15aに対して、搬送方向X1における両側に配置されている。より具体的には、仕切板22cは、入口側ガス供給部36bと水蒸気排出部15aとの間に設けられ、入口側水蒸気排出部15aに対して入口31側で隣り合って配置されている。また、仕切板22dは、入口側水蒸気排出部15aに対して出口32側で隣り合って配置されている。
【0104】
また、図2図4図5を参照して、複数の仕切板22のうちの仕切板(22e、22f)は、熱処理室11内において、水蒸気供給部13における一対のノズル部(38a、38b)の間に設けられている。また、仕切板22eと仕切板22fとの間には、後述するバインダー排出部23が配置されている。尚、仕切板22eは、バインダー排出部23に対して入口31側で隣り合って配置され、仕切板22fは、バインダー排出部23に対して出口32側で隣り合って配置されている。
【0105】
また、図2図3図8図9を参照して、複数の仕切板22のうちの仕切板(22g、22h)は、熱処理室11内において、出口側水蒸気排出部15bの近傍に配置されている。また、仕切板(22g、22h)は、出口側水蒸気排出部15bに対して、搬送方向X1における両側に配置されている。より具体的には、仕切板22gは、出口側水蒸気排出部15bに対して入口31側で隣り合って配置されている。また、仕切板22hは、水蒸気排出部15bと出口側ガス供給部37aとの間に設けられ、出口側水蒸気排出部15bに対して出口32側で隣り合って配置されている。
【0106】
また、図2図3図8図9を参照して、複数の仕切板22のうちの仕切板(22i、22j)は、本実施形態における出口側仕切板(22i、22j)として設けられている。出口側仕切板(22i、22j)は、一対の出口側ガス供給部(37a、37b)のそれぞれと出口側排気部20との間にそれぞれ設けられている。より具体的には、出口側仕切板22iは、出口側ガス供給部37aと出口側排気部20との間に設けられ、出口側排気部20に対して出口32側で隣り合って配置されている。また、出口側仕切板22jは、出口側排気部20と出口側ガス供給部37bとの間に設けられ、出口側排気部20に対して出口32側で隣り合って配置されている。
【0107】
上記の配置構成により、熱処理室11内における出口側ガス供給部(37a、37b)の近傍の領域において、入口31側から出口32側に向かって、出口側ガス供給部37a、出口側仕切板22i、出口側排気部20、出口側仕切板22j、出口側ガス供給部37bが、この順番で並んで設けられている。そして、出口側仕切板(22i、22j)は、出口側ガス供給部(37a、37b)の近傍の領域において、熱処理室11における被処理物10の搬送方向X1と平行な方向におけるガスの流動を部分的に規制するように構成されている。
【0108】
[バインダー排出部]
図1図2図4及び図5を参照して、バインダー排出部23は、熱処理装置1において焼結処理が行われる際に、被処理物10から発生する気化したバインダーを熱処理室11の外部へ排出するための機構として設けられている。バインダー排出部23は、例えば、熱処理装置1での焼結処理の際、被処理物10からバインダーが大量に発生するような場合に、大量に発生したバインダーを排出するために用いられる。
【0109】
バインダー排出部23は、熱処理室11において、仕切板22eと仕切板22fとの間に配置され、加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央位置に配置されている。仕切板(22e、22f)は、水蒸気供給部13の一対のノズル部(38a、38b)の間に配置されており、バインダー排出部23に対して、入口31側に仕切板22eが配置され、出口32側に仕切板22fが配置されている。このため、本実施形態では、加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央部分において、入口31側から出口32側に向かって、ノズル部38a、仕切板22e、バインダー排出部23、仕切板22f、ノズル部38bが、この順番で並んで設けられている。また、バインダー排出部23は、熱処理室11内における仕切板(22e、22f)の間の領域において、天井壁11c側の領域、即ち、熱処理室11の搬送方向X1と垂直な断面における上半分側の領域に配置されている。
【0110】
バインダー排出部23は、熱処理室11の幅方向に沿って延びる中空の箱状に形成されている。そして、バインダー排出部23は、搬送方向X1に垂直な断面において天井壁11cに沿ってアーチ状に延びる上壁23aと、水平に延びる下壁23bと、搬送方向X1に垂直な断面に沿って延びる一対の側壁(23c、23d)とを備えて構成されている。これにより、バインダー排出部23内の中空領域は、上壁23a、下壁23b、及び一対の側壁(23c、23d)で囲まれた円弧状のドーム型の中空領域として形成されている。そして、バインダー排出部23の下壁23bには、バインダーを吸い込むための複数の貫通孔(図示省略)が設けられている。尚、バインダー排出部23からバインダーが吸い込まれて熱処理室11から排出される際には、バインダーは、熱処理室11内の雰囲気のガスとともにバインダー排出部23に吸い込まれて排出される。即ち、熱処理室11内の雰囲気における高濃度のバインダーを含むガスがバインダー排出部23に吸い込まれることで、バインダーがバインダー排出部23に吸い込まれて熱処理室11から排出される。
【0111】
また、バインダー排出部23は、バインダー排出部23からバインダーを多く含むガスを吸い込んで熱処理室11の外部へバインダーを含むガスを排出するためのバインダー排出系統53に接続されている。バインダー排出系統53は、バインダー排出管54と、エジェクタ55とを備えて構成されている。
【0112】
バインダー排出管54は、熱処理室11の天井壁11cを貫通して、熱処理室11内のバインダー排出部23に接続されている。バインダー排出部23の内部とバインダー排出管54とは連通しており、バインダー排出部23に吸い込まれたバインダーを含むガスは、バインダー排出管54に吸い込まれる。また、バインダー排出部23に接続したバインダー排出管54は、天井壁11cを貫通した状態で、天井壁11cに固定されている。これにより、熱処理室11内において、バインダー排出部23が、バインダー排出管53を介して、天井壁11cに支持されている。
【0113】
エジェクタ55は、バインダー排出管54に対して、バインダー排出部23に接続している端部とは反対側の端部において、接続されている。そして、エジェクタ55は、高圧流体を用いて負圧を発生させることで、バインダー排出管54を介してバインダー排出部23からバインダーを含むガスを吸引し、更に吸引したガスを外部へ排出する機構として設けられている。バインダー排出系統53のエジェクタ55は、水蒸気排出系統(16a、16b)のエジェクタ45と同様に構成されている。即ち、エジェクタ55は、高圧流体としての圧縮空気が供給されるノズルと、ノズルの周囲を覆うボディと、ボディに連通するとともに外部に開口する吐出口が設けられたディフューザとを備えて構成されている。そして、ノズルの上流側とボディにおけるバインダー排出管54の下流端に接続する部分とに設けられた電磁弁が後述の制御部25からの制御指令に基づいて開閉することで、エジェクタ55の作動が制御される。
【0114】
バインダー排出部23によるバインダーの排出が行われる際には、制御部25からの制御指令に基づいて、エジェクタ55の電磁弁が開放され、エジェクタ55が作動する。即ち、ノズルの上流側の電磁弁が開放されるとともに、ボディにおけるバインダー排気管54の下流端に接続する部分に設けられた電磁弁が開放され、エジェクタ55が作動する。エジェクタ55が作動することで、バインダー排気管54を介してバインダー排出部23内のガスが吸引される。バインダー排出部23のガスがバインダー排気管54に吸引されることで、バインダー排気部23の下壁23bに設けられた複数の貫通孔から熱処理室11内におけるバインダーを含むガスが吸い込まれる。バインダー排気部23に吸い込まれたバインダーを含むガスは、バインダー排気管54を介してエジェクタ55のボディへと流動し、ボディ内でノズルから吹き出された圧縮空気と混合されてエジェクタ55のディフューザの吐出口から外部へ排出される。このようにして、熱処理室11内のバインダーを含むガスが、バインダー排出部23から吸い込まれてバインダー排気管54及びエジェクタ55を介して外部へと排出される。
【0115】
[ガスカーテン部]
図1及び図3を参照して、ガスカーテン部24は、熱処理室11における入口31側の端部と出口32側の端部とにおいて、不活性ガスがカーテン状に広がる領域を形成するように不活性ガスを噴射する機構として設けられている。熱処理室11の入口31側の端部においては、ガスカーテン部24として、入口ガスカーテン部24aが設けられ、熱処理室11の出口32側の端部においては、ガスカーテン部24として、出口ガスカーテン部24bが設けられている。
【0116】
入口ガスカーテン部24a及び出口ガスカーテン部24bは、それぞれ、中空の箱状に形成されているとともに不活性ガス供給源46からの不活性ガスが供給されるガス供給箱を有している。入口ガスカーテン部24aのガス供給箱は、熱処理室11における入口31側の端部に設置され、出口ガスカーテン部24bのガス供給箱は、熱処理室11における出口32側の端部に設置されている。入口ガスカーテン部24a及び出口ガスカーテン部24bのそれぞれのガス供給箱は、ガス供給系統18の共通配管47に対して、図示が省略された配管を介して接続されており、不活性ガス供給源46からの不活性ガスが供給されるように構成されている。
【0117】
また、入口ガスカーテン部24a及び出口ガスカーテン部24bの各ガス供給箱には、熱処理室11内に連通する複数の噴射孔が設けられている。そして、各ガス供給箱に設けられた複数の噴射孔は、不活性ガス供給源46から供給された不活性ガスを熱処理室11の内部に噴射するように構成されている。また、入口ガスカーテン部24aのガス供給箱の複数の噴射孔は、入口31の開口面と平行な方向に沿ってカーテン状に不活性ガスが広がるように、不活性ガスを噴射するように構成されている。そして、出口ガスカーテン部24bのガス供給箱の複数の噴射孔は、出口32の開口面と平行な方向に沿ってカーテン状に不活性ガスが広がるように、不活性ガスを噴射するように構成されている。熱処理室11の入口31側の端部において入口ガスカーテン部24aから不活性ガスがカーテン状に噴射されることによって、熱処理室11の入口31の近傍において、熱処理室11の内側の領域と外側の領域との雰囲気が分離されることになる。また、熱処理室11の出口32側の端部において出口ガスカーテン部24bから不活性ガスがカーテン状に噴射されることによって、熱処理室11の出口32の近傍において、熱処理室11の内側の領域と外側の領域との雰囲気が分離されることになる。
【0118】
[制御部]
図2を参照して、熱処理室11の搬送機構33、ヒータ12、水蒸気供給系統14、水蒸気排出系統(16a、16b)、ガス供給系統18、排気系統(21a、21b)、バインダー排出系統53の動作は、制御部25によって制御される。具体的には、制御部25は、搬送機構33の駆動シャフト35を駆動する電動モータ、ヒータ12の発熱体、水蒸気供給系統14の過熱水蒸気生成部40のボイラ及び過熱器、水蒸気排出系統(16a、16b)のエジェクタ45の電磁弁、ガス供給系統18のガス供給弁(49a~d)、排気系統(21a、21b)のエジェクタ52の電磁弁、及び、バインダー排出系統53のエジェクタ55の電磁弁の作動を制御することで、搬送機構33、ヒータ12、水蒸気供給系統14、水蒸気排出系統(16a、16b)、ガス供給系統18、排気系統(21a、21b)、及び、バインダー排出系統53の動作を制御する。
【0119】
また、制御部25は、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェア・プロセッサ、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等のメモリ、ユーザによって操作される操作パネル等の操作部、インターフェース回路、等を備えて構成されている。制御部25のメモリには、駆動シャフト35を駆動する電動モータ、ヒータ12の発熱体、過熱水蒸気生成部40のボイラ及び過熱器、エジェクタ45の電磁弁、ガス供給弁(49a~d)、エジェクタ52の電磁弁、エジェクタ55の電磁弁、等の作動を制御する制御指令を作成するためのプログラムが記憶されている。例えば、作業者によって操作部が操作されることで、メモリから上記のプログラムがハードウェア・プロセッサによって読み出されて実行される。これにより、上記の制御指令が作成され、その制御指令に基づいて、駆動シャフト35を駆動する電動モータ、ヒータ12の発熱体、過熱水蒸気生成部40のボイラ及び過熱器、エジェクタ45の電磁弁、ガス供給弁(49a~d)、エジェクタ52の電磁弁、エジェクタ55の電磁弁、等が作動する。
【0120】
[熱処理装置の動作]
次に、熱処理装置1の処理動作の一例について説明する。熱処理装置1の処理動作が開始される際には、まず、制御部25からの制御指令に基づいて、熱処理室11の搬送機構33、ヒータ12、水蒸気供給系統14、水蒸気排出系統(16a、16b)、ガス供給系統18、排気系統(21a、21b)の作動が開始される。制御部25からの制御指令に基づいて熱処理装置1の処理動作が開始されると、具体的には、熱処理装置1においては、以下の動作が行われる。
【0121】
まず、ヒータ12による熱処理室11内の雰囲気の加熱が行われる。具体的には、ヒータ12の発熱体の電熱体への通電が行われて発熱体が発熱し、熱処理室11が外部からヒータ12によって加熱される。そして、熱処理室11が外部から加熱されることで、熱処理室11内の雰囲気の加熱が行われる。
【0122】
また、熱処理室11において、搬送機構33の駆動シャフト35を駆動する電動モータの運転が開始されて、搬送機構33のメッシュベルト34の周回動作が開始され、搬送機構33による熱処理室11内での被処理物10の搬送が可能な状態となる。尚、電動モータの回転速度が適宜設定されることで、メッシュベルト34の周回動作によって被処理物10を搬送する際の搬送速度、即ち、搬送機構33による被処理物10の搬送速度が、所定の速度となるように設定される。また、搬送機構33による被処理物10の搬送速度は、熱処理室11内で熱処理される被処理物10の熱処理時間等の熱処理条件に応じて適宜設定される。
【0123】
また、水蒸気供給系統14の過熱水蒸気生成部40のボイラ及び過熱器が作動し、過熱水蒸気の生成が連続的に行われる。尚、過熱水蒸気生成部40で生成される過熱水蒸気の温度と単位時間あたりに生成される過熱水蒸気の量とは、過熱水蒸気による加熱によって熱処理が行われる熱処理対象としての被処理物10の熱処理条件に応じて適宜設定される。過熱水蒸気生成部40で生成される加熱水蒸気は、水蒸気供給配管(41、42a、42b)を介して水蒸気供給部13の一対のノズル部(38a、38b)に連続的に供給される。更に、各ノズル部(38a、38b)に供給される過熱水蒸気は、各ノズル部(38a、38b)の複数のノズル孔39から吹き出し、熱処理室11内に過熱水蒸気が連続的に供給される。
【0124】
また、水蒸気排出系統(16a、16b)の各エジェクタ45の作動が開始される。これにより、熱処理室11内の過熱水蒸気が、入口側水蒸気排出部15a及び出口側水蒸気排出部15bのそれぞれから吸い込まれて各水蒸気排出管44及び各エジェクタ45を介して外部へと連続的に排出される。
【0125】
また、ガス供給部17の入口側ガス供給部(36a、36b)及び出口側ガス供給部(37a、37b)からの熱処理室11内への不活性ガスの供給が開始される。具体的には、ガス供給系統18のガス供給弁(49a~d)が開動作を行うように作動し、不活性ガス供給源46から供給される不活性ガスが、共通配管47及び各分岐配管(48a~d)を介して入口側ガス供給部(36a、36b)及び出口側ガス供給部(37a、37b)に連続的に供給される。そして、入口側ガス供給部(36a、36b)及び出口側ガス供給部(37a、37b)から熱処理室11内へ不活性ガスが連続的に供給される。
【0126】
また、排気系統(21a、21b)のエジェクタ52の作動が開始される。これにより、熱処理室11内のガスが、入口側排気部19及び出口側排気部20のそれぞれから吸い込まれて各ガス排気管51及び各エジェクタ52を介して外部へと連続的に排出される。
【0127】
尚、バインダー排出系統53は、熱処理装置1で焼結処理が行われ、被処理物10からバインダーが大量に発生するような熱処理条件の場合に、制御部25からの制御指令に基づいて作動する。バインダー排出系統53のエジェクタ55の作動中は、熱処理室11内の雰囲気における高濃度のバインダーを含むガスがバインダー排出部23に吸い込まれて熱処理室11から排出される。
【0128】
上記のように、熱処理装置1の処理動作が開始されると、加熱領域HRにおける搬送方向X1の中央部分に設けられた水蒸気供給部13から供給される過熱水蒸気が、熱処理室11内で充満しながら流動する。そして、水蒸気供給部13から入口31側及び出口32側の水蒸気排出部15へと流れる過熱水蒸気の流れが継続的に形成される。即ち、熱処理室11内で過熱水蒸気が充満しながら、水蒸気供給部13から入口側水蒸気排出部15aへと流れる過熱水蒸気の流れと、水蒸気供給部13から出口側水蒸気排出部15bへと流れる過熱水蒸気の流れとが、継続的に形成される。
【0129】
また、ガス供給部17の入口側ガス供給部(36a、36b)から供給される不活性ガスが、熱処理室11内における入口側ガス供給部(36a、36b)の近傍の領域で広がるように流動する。これにより、入口側ガス供給部(36a、36b)の近傍の領域において、不活性ガスによる雰囲気の分離が行われる。また、ガス供給部17の出口側ガス供給部(37a、37b)から供給される不活性ガスが、熱処理室11内における出口側ガス供給部(37a、37b)の近傍の領域で広がるように流動する。これにより、出口側ガス供給部(37a、37b)の近傍の領域において、不活性ガスによる雰囲気の分離が行われる。
【0130】
上記のように、熱処理装置1の処理動作が開始されると、熱処理室11内において、水蒸気供給部13から入口31側及び出口32側の水蒸気排出部15へと流れる過熱水蒸気の流れが継続的に形成されるとともに、ガス供給部17から供給される不活性ガスによる雰囲気の分離も行われる。
【0131】
ここで、熱処理装置1の動作中における熱処理室11内での水蒸気の流れと不活性ガスによる雰囲気の分離とについて更に説明する。図10及び図11は、熱処理装置1における熱処理室11内の過熱水蒸気及び不活性ガスの流れを説明するための図である。尚、図11(A)は、水蒸気供給部13の周囲の領域での過熱水蒸気の流れを説明する図である。図11(B)は、入口側水蒸気排出部15a及び入口側ガス供給部(36a、36b)の周囲の領域での過熱水蒸気及び不活性ガスの流れを説明する図である。図11(C)は、出口側水蒸気排出部15b及び出口側ガス供給部(37 、37b)の周囲の領域での過熱水蒸気及び不活性ガスの流れを説明する図である。尚、図10及び図11においては、熱処理室11内における過熱水蒸気の流れの方向を破線の矢印で模式的に示しており、熱処理室11内における不活性ガスの流れの方向を実線の矢印で模式的に示している。
【0132】
図10及び図11(A)に示すように、水蒸気供給部13の一対のノズル部(38a、38b)のそれぞれから吹き出された過熱水蒸気は、一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側に向かって流れ、本実施形態では、加熱領域HRにおける被処理物10の搬送方向X1の中央位置側に向かって流れる。また、一対のノズル部(38a、38b)の間の領域であって加熱領域HRの中央位置付近の領域には、仕切板(22e、22f)が設置されている。このため、各ノズル部(38a、38b)から吹き出されて一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側(本実施形態では、加熱領域HRの中央位置側)に向かって流れた各過熱水蒸気は、仕切板(22e、22f)に衝突する。即ち、ノズル部38aから吹き出された過熱水蒸気は、仕切板22eに衝突し、ノズル部38bから吹き出された過熱水蒸気は、仕切板22fに衝突する。そして、各ノズル部(38a、38b)から吹き出されて仕切板(22e、22f)に衝突した各過熱水蒸気は、加熱領域HRにおいて搬送方向X1に垂直な断面の全体に亘って広がりながら搬送方向X1と平行な方向において反転して折り返すように流れる。
【0133】
上記のように、ノズル部38aから吹き出された過熱水蒸気は、一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側に向かって流れて反転した後、加熱領域HRにおいて搬送方向X1に垂直な断面の全体に亘って広がった状態で、一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側と反対方向に向かって搬送方向X1と平行な方向に沿って流れる。即ち、ノズル部38aから吹き出した過熱水蒸気は、一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側から熱処理室11の入口31側に向かって加熱領域HRの断面の全体に広がった状態で流れる。そして、ノズル部38bから吹き出された過熱水蒸気は、一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側に向かって流れて反転した後、加熱領域HRにおいて搬送方向X1に垂直な断面の全体に亘って広がった状態で、一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側と反対方向に向かって搬送方向X1と平行な方向に沿って流れる。即ち、ノズル部38bから吹き出した過熱水蒸気は、一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側から熱処理室11の出口32側に向かって加熱領域HRの断面の全体に広がった状態で流れる。これにより、熱処理室11内においては、一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側から入口31側及び出口32側のそれぞれに向かって、搬送方向X1と平行な方向に沿って加熱領域HRの断面の全体に広がった状態で流速のばらつきの少ない略一様な水蒸気の流れが形成される。
【0134】
また、ノズル部38aから吹き出されて入口31側へと流れた過熱水蒸気は、図10及び図11(B)に示すように、入口側水蒸気排出部15aへと向かって流れ、入口側水蒸気排出部15aから吸い込まれて熱処理室11の外部へと排出される。尚、入口側水蒸気排出部15aへと向かって流れた過熱水蒸気は、仕切板22dの下方の領域を通過して入口側水蒸気排出部15aの下壁43bの複数の貫通孔から入口側水蒸気排出部15aに吸い込まれる。また、ノズル部38bから吹き出されて出口32側へと流れた過熱水蒸気は、図10及び図11(C)に示すように、出口側水蒸気排出部15bへと向かって流れ、出口側水蒸気排出部15bから吸い込まれて熱処理室11の外部へと排出される。尚、出口側水蒸気排出部15bへと向かって流れた過熱水蒸気は、仕切板22gの下方の領域を通過して出口側水蒸気排出部15bの下壁43bの複数の貫通孔から入口側水蒸気排出部15aに吸い込まれる。
【0135】
上記のように、熱処理室11内において、水蒸気供給部13から入口31側及び出口32側の水蒸気排出部15へと流れる略一様な過熱水蒸気の流れが継続的に形成される。このため、水蒸気供給部13から入口31側及び出口32側の水蒸気排出部15までの領域においては、流動している状態の過熱水蒸気が充満しているとともに、加熱領域HRの断面の全体に広がった状態で流速のばらつきの少ない略一様な過熱水蒸気の流れが継続的に形成される。
【0136】
また、熱処理室11内における入口側水蒸気排出部15aよりも入口31側の領域では、図10及び図11(B)に示すように、入口側ガス供給部36a及び入口側ガス供給部36bのそれぞれから不活性ガスが吹き出される。
【0137】
入口側ガス供給部36aからは、不活性ガスは、下方に向かって広がるようにして吹き出される。入口側ガス供給部36aから吹き出された不活性ガスは、入口側ガス供給部36bの近傍の領域において充満するように広がることになる。そして、入口側ガス供給部36aの近傍の領域で充満するように広がった不活性ガスの一部は、入口側ガス供給部36aよりも入口31側の領域へと向かって流動する。このため、入口側ガス供給部36aよりも入口31側の領域の雰囲気のガスが入口側ガス供給部36a側へ流動することが阻止される。これにより、水蒸気供給部13から入口側ガス供給部(36a、36b)までの領域の雰囲気と、入口31から入口側ガス供給部(36a、36b)までの領域の雰囲気とが、より確実に分離されて遮断される。また、入口側ガス供給部36aから吹き出された不活性ガスの一部は、入口側ガス排気部19へと向かって流れ、仕切板22aの下方の領域に充満するように広がった状態で仕切板22aの下方の領域を通過する。そして、仕切板22aの下方の領域を通過した不活性ガスは、入口側ガス排気部19の下壁50bの複数の貫通孔から入口側ガス排気部19に吸い込まれて熱処理室11の外部へと排出される。
【0138】
また、入口側ガス供給部36bからも、不活性ガスが、下方に向かって広がるようにして吹き出される。入口側ガス供給部36bから下方に広がって吹き出された不活性ガスは、入口側ガス排気部19へと向かって流れ、仕切板22bの下方の領域に充満するように広がった状態で仕切板22bの下方の領域を通過する。そして、仕切板22bの下方の領域を通過した不活性ガスは、入口側ガス排気部19の下壁50bの複数の貫通孔から入口側ガス排気部19に吸い込まれて熱処理室11の外部へと排出される。
【0139】
また、入口側ガス供給部36bの近傍の領域においては、入口側水蒸気排出部15aで完全に排出されずに漏れるように入口31側へと流動した僅かな水蒸気が、入口側ガス供給部36bから熱処理室11内に供給される不活性ガスと混ざり、希釈されることになる。そして、入口側ガス供給部36bから熱処理室11内に供給された不活性ガスと混ざって希釈された水蒸気は、入口側排気部19から外部へと排気される。このため、入口側水蒸気排出部15aから漏れるように入口31側へと流動した僅かな水蒸気も、入口側排気部19から排気される。
【0140】
上記のように、入口側ガス供給部(36a、36b)から供給される不活性ガスが、熱処理室11内における入口側ガス供給部(36a、36b)の近傍の領域で広がるように流動する。そして、入口31側へ流動する不活性ガスの流れと、入口側ガス供給部(36a、36b)の間に配置された入口側ガス排気部19へと流動する不活性ガスの流れとが継続的に形成される。これにより、入口側ガス供給部(36a、36b)の近傍の領域において、入口側ガス供給部(36a、36b)から熱処理室11内に供給される不活性ガスによる雰囲気の分離が行われる。
【0141】
また、熱処理室11内における出口側水蒸気排出部15bよりも出口32側の領域では、図10及び図11(C)に示すように、出口側ガス供給部37a及び出口側ガス供給部37bのそれぞれから不活性ガスが吹き出される。
【0142】
出口側ガス供給部37aからは、不活性ガスが、下方に向かって広がるようにして吹き出される。出口側ガス供給部37aから下方に広がって吹き出された不活性ガスは、出口側ガス排気部20へと向かって流れ、仕切板22iの下方の領域に充満するように広がった状態で仕切板22iの下方の領域を通過する。そして、仕切板22iの下方の領域を通過した不活性ガスは、出口側ガス排気部20の下壁50bの複数の貫通孔から出口側ガス排気部20に吸い込まれて熱処理室11の外部へと排出される。
【0143】
また、出口側ガス供給部37aの近傍の領域においては、出口側水蒸気排出部15bで完全に排出されずに漏れるように出口32側へと流動した僅かな水蒸気が、出口側ガス供給部37aから熱処理室11内に供給される不活性ガスと混ざり、希釈されることになる。そして、出口側ガス供給部37aから熱処理室11内に供給された不活性ガスと混ざって希釈された水蒸気は、出口側排気部20から外部へと排気される。このため、出口側水蒸気排出部15bから漏れるように出口32側へと流動した僅かな水蒸気も、出口側排気部20から排気される。
【0144】
また、出口側ガス供給部37bからも、不活性ガスは、下方に向かって広がるようにして吹き出される。出口側ガス供給部37bから吹き出された不活性ガスは、出口側ガス供給部37bの近傍の領域において充満するように広がることになる。そして、出口側ガス供給部37bの近傍の領域で充満するように広がった不活性ガスの一部は、出口側ガス供給部37bよりも出口32側の領域へと向かって流動する。このため、出口側ガス供給部37bよりも出口32側の領域の雰囲気のガスが出口側ガス供給部37b側へ流動することが阻止される。これにより、水蒸気供給部13から出口側ガス供給部(37a、37b)までの領域の雰囲気と、出口32から出口側ガス供給部(37a、37b)までの領域の雰囲気とが、より確実に分離されて遮断される。また、出口側ガス供給部37bから吹き出された不活性ガスの一部は、出口側ガス排気部20へと向かって流れ、仕切板22jの下方の領域に充満するように広がった状態で仕切板22jの下方の領域を通過する。そして、仕切板22jの下方の領域を通過した不活性ガスは、出口側ガス排気部20の下壁50bの複数の貫通孔から出口側ガス排気部20に吸い込まれて熱処理室11の外部へと排出される。
【0145】
上記のように、出口側ガス供給部(37a、37b)から供給される不活性ガスが、熱処理室11内における出口側ガス供給部(37a、37b)の近傍の領域で広がるように流動する。そして、出口32側へ流動する不活性ガスの流れと、出口側ガス供給部(37a、37b)の間に配置された出口側ガス排気部20へと流動する不活性ガスの流れとが継続的に形成される。これにより、出口側ガス供給部(37a、37b)の近傍の領域において、出口側ガス供給部(37a、37b)から熱処理室11内に供給される不活性ガスによる雰囲気の分離が行われる。
【0146】
上記のように、熱処理装置1の処理動作が開始されて各機器が作動すると、水蒸気供給部13から入口31側及び出口32側の水蒸気排出部15までの領域において、熱処理室11内で充満しながら略一様に流動する過熱水蒸気の流れが継続的に形成された状態となる。そして、入口側ガス供給部(36a、36b)の近傍及び出口側ガス供給部(37a、37b)の近傍のそれぞれにおいて、不活性ガスによる雰囲気の分離が行われた状態となる。この状態で、ケース10aに収納された被処理物10が、熱処理室11へ搬入される。
【0147】
ケース10aに収納された状態の被処理物10は、入口31から熱処理室11内へ、繰り返し連続的に順番に搬入される。より具体的には、被処理物10が複数収納されたケース10aの1つが入口31から熱処理室11へ搬入されると、所定時間経過後に、被処理物10が複数収納された次のケース10aが入口31から熱処理室11へ搬入される。そして、更に所定時間経過毎に、被処理物10が複数収納された更に次のケース10aが入口31から熱処理室11へ搬入される。こうして、被処理物10が複数収納されたケース10aが、入口31から熱処理室11内へ、繰り返し連続的に順番に搬入される。
【0148】
被処理物10を収納したケース10aは、入口31から熱処理室11内へ搬入されると、搬送機構33のメッシュベルト34の上面に配置された状態で、メッシュベルト34の周回動作とともに、熱処理室11内を搬送方向X1に搬送される。熱処理室11内を搬送方向X1にケース10aとともに搬送される被処理物10は、入口側ガス供給部36aの下方を通過すると、加熱領域HRへと進入し、加熱領域HRでの過熱水蒸気による加熱が開始される。尚、被処理物10は、入口側ガス供給部36aの下方を通過後から入口側ガス供給部36bの近傍に到達するまでの間は、入口側水蒸気排出部15aで排出されずに入口31側へと流動した僅かな過熱水蒸気によって加熱される。そして、入口側ガス供給部36bの近傍に到達してから入口側水蒸気排出部15aの下方の領域を通過するまでの間は、入口31側へと流動した上記の僅かな過熱水蒸気と、ヒータ12からの熱によって加熱された雰囲気とによって加熱される。
【0149】
被処理物10は、入口側水蒸気排出部15aの下方を通過すると、熱処理室11内で充満しながら略一様に水蒸気供給部13から入口側ガス排出部15aへと流動する過熱水蒸気の雰囲気の中を搬送方向X1に搬送される。そして、被処理物10は、過熱水蒸気が流動する上記の雰囲気の中で、加熱が継続される。尚、この間、被処理物10は、ヒータ12からの熱によって加熱された雰囲気によっても加熱される。
【0150】
被処理物10は、上記のように加熱されながら加熱領域HRの中央部分まで搬送される。そして、被処理物10は、加熱領域HRの中央部分に設けられた水蒸気供給部13の下方を通過すると、熱処理室11内で充満しながら略一様に水蒸気供給部13から出口側ガス排出部15bへと流動する過熱水蒸気の雰囲気の中を搬送方向X1に搬送される。そして、被処理物10は、過熱水蒸気が流動する上記の雰囲気の中で、加熱が継続される。尚、この間、被処理物10は、ヒータ12からの熱によって加熱された雰囲気によっても加熱される。
【0151】
熱処理室11内を上記のように加熱されながら搬送方向X1に搬送される被処理物10は、出口側水蒸気排出部15bの下方の領域まで継続して加熱されながら搬送される。尚、被処理物10に対して行うことが必要な過熱水蒸気による熱処理は、主として、入口側水蒸気排出部15aの下方を通過してから水蒸気供給部13の下方の領域を経て出口側水蒸気排出部15bの下方の領域に到達するまでの間における過熱水蒸気による加熱によって、行われる。
【0152】
被処理物10は、出口側水蒸気排出部15bの下方の領域を通過すると、出口側水蒸気排出部15bで排出されずに出口32側へと流動した僅かな過熱水蒸気によって加熱される。更に、被処理物10は、出口側水蒸気排出部15bの下方の領域から出口32側へと搬送されると、出口側排気部20の下方を通過して出口側ガス供給部37bの下方の領域へと到達し、加熱領域HRから抜けることになる。被処理物10は、出口側ガス供給部37bの下方の領域を通過して加熱領域HRから抜けると、加熱処理が行われることなく、熱処理室11内を出口32まで搬送方向X1に沿って搬送される。そして、出口32に到達すると、ケース10aに収納された状態の被処理物10は、出口32から熱処理室11の外へと搬出される。尚、被処理物10が収納されたケース10aは、繰り返し連続的に順番に熱処理室11内へ搬入されており、出口32からの搬出の際も、繰り返し連続的に順番に搬出される。
【0153】
熱処理装置1での熱処理が必要な全ての被処理物10の熱処理が終了し、全ての被処理物10が熱処理室11から搬出されると、制御部25からの制御指令に基づいて、搬送機構33、ヒータ12、水蒸気供給系統14、水蒸気排出系統(16a、16b)、ガス供給系統18、排気系統(21a、21b)の作動が停止される。これにより、熱処理装置1の処理動作が終了する。
【0154】
[本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態の熱処理装置1によると、熱処理室11の加熱領域HRに設けられた水蒸気供給部13から熱処理室11内に供給された過熱水蒸気によって被処理物10が加熱されて被処理物10の熱処理が行われる。そして、被処理物10の加熱に用いられた過熱水蒸気は、加熱領域HRに設けられた水蒸気供給部13から熱処理室11の入口31側と出口32側とにそれぞれ設けられた水蒸気排出部15(15a、15b)へと向かって流れ、水蒸気排出部15(15a、15b)から熱処理室の外部へと排出される。このため、熱処理室11においては、加熱領域HR内の水蒸気供給部13から入口31側に向かって流れて入口側水蒸気排出部15aから外部へ排出される水蒸気の流れと、加熱領域HR内の水蒸気供給部13から出口32側に向かって流れて出口側水蒸気排出部15bから外部へ排出される水蒸気の流れとが形成される。そして、熱処理室11内においては、加熱領域HR内の水蒸気供給部13から入口31側及び出口32側のそれぞれに向かって、被処理物10の搬送方向X1と平行な方向に沿って流速のばらつきの少ないより一様な水蒸気の流れが形成される。これにより、熱処理室11内において、水蒸気の流れが停滞する領域が生じにくくなり、その結果、熱処理室11内において雰囲気が淀む領域が生じにくくなる。
【0155】
よって、本実施形態の熱処理装置1によると、被処理物10の熱処理が行われる熱処理室11内において雰囲気の淀みが発生してしまうことを抑制することができる。また、熱処理装置1によると、熱処理室11内において雰囲気の淀みが発生してしまうことを抑制できるため、同じ熱処理室11内で熱処理が行われる複数の被処理物10の間において熱処理のムラを生じてしまうことを抑制でき、更に、被処理物10中から生じたガスの滞留に伴う熱処理効率の低下及び被処理物10の汚れの発生も抑制することができる。
【0156】
また、本実施形態によると、水蒸気供給部13が熱処理室11の加熱領域HRに設けられ、水蒸気排出部15(15a、15b)が熱処理室11の入口31側及び出口32側に設けられた簡素な構成によって、熱処理室11内での雰囲気の淀みの発生を抑制できる熱処理装置1を実現できる。このため、過熱水蒸気によって被処理物10の熱処理を行う熱処理装置1の構造の複雑化を防止できる。
【0157】
以上の通り、本実施形態によると、過熱水蒸気によって被処理物10の熱処理を行う熱処理装置1の構造の複雑化を防止できるとともに、被処理物10の熱処理が行われる熱処理室11内において雰囲気の淀みが発生してしまうことを抑制することができる、熱処理装置1を提供することができる。
【0158】
また、本実施形態の熱処理装置1によると、熱処理室11の入口31が外部に対して開放されているため、被処理物10の熱処理室11内への搬入作業を連続的に迅速に且つ容易に行うことができる。これにより、熱処理プロセスを連続化して熱処理の作業効率の向上を図ることができる。そして、熱処理装置1によると、入口31が開放されていることに加え、水蒸気供給部13に対して入口31側に設けられた入口側水蒸気排出部15aよりも更に入口31側に設けられて熱処理室11内に不活性ガスを供給する入口側ガス供給部(36a、36b)が設けられている。このため、入口側ガス供給部(36a、36b)から供給する不活性ガスによって、外部に開放された入口31と入口側水蒸気排出部15aとの間において熱処理室11内の雰囲気を分離することができる。即ち、水蒸気供給部13から入口側ガス供給部(36a、36b)までの領域の雰囲気と、外部に開放された入口31から入口側ガス供給部(36a、36b)までの領域の雰囲気とを分離することができる。これにより、熱処理の作業効率の向上のために入口31が開放された熱処理装置1において、水蒸気供給部13から入口側水蒸気排出部15aまでの領域の雰囲気を外部に対して遮断でき、加熱領域HRにおける過熱水蒸気による被処理物10の熱処理を効率よく行うことができる。
【0159】
また、本実施形態の熱処理装置1によると、入口側ガス供給部(36a、36b)が一対で設けられてそれらの間に入口側排気部19が設けられている。このため、入口側水蒸気排出部15aから入口31側に向かって、入口側水蒸気排出部15a、入口側ガス供給部36b、入口側排気部19、入口側ガス供給部36a、の順番で、これらが配置されることになる。この構成により、入口側水蒸気排出部15aで完全に排出されずに漏れるように入口31側へと流動した僅かな水蒸気は、入口側ガス供給部36bから供給される不活性ガスと混ざり、希釈されることになる。そして、入口側ガス供給部36bから供給された不活性ガスと混ざって希釈された水蒸気は、入口側排気部19から外部へと排気される。このため、入口側水蒸気排出部15aから漏れるように入口31側へと流動した僅かな水蒸気も、入口側排気部19から排気される。この結果、入口側排気部19と入口31との間の領域であって温度が低い領域に水蒸気が流入してしまうことを防止することができる。これにより、入口側排気部19と入口31との間の温度が低い領域に水蒸気が流入して結露が発生することが防止される。結露の発生が防止されることで、入口31から搬入された被処理物10に水分が滴下して被処理物10が濡れ、被処理物10の熱処理状態に影響が生じてしまうことが、防止される。また、上記の構成によると、入口側排気部19と入口31との間に配置された入口側ガス供給部36aから供給される不活性ガスによって、水蒸気供給部13から入口側ガス供給部(36a、36b)までの領域の雰囲気と、入口31から入口側ガス供給部(36a、36b)までの領域の雰囲気とをより確実に分離して遮断することができる。
【0160】
また、本実施形態の熱処理装置1によると、熱処理室11の出口32が外部に対して開放されているため、被処理物10の熱処理室11からの搬出作業を連続的に迅速に且つ容易に行うことができる。これにより、熱処理プロセスを連続化して熱処理の作業効率の向上を図ることができる。そして、熱処理装置1によると、出口32が開放されていることに加え、水蒸気供給部13に対して出口32側に設けられた出口側水蒸気排出部15bよりも更に出口32側に設けられて熱処理室11内に不活性ガスを供給する出口側ガス供給部(37a、37b)が設けられている。このため、出口側ガス供給部(37a、37b)から供給する不活性ガスによって、外部に開放された出口32と出口側水蒸気排出部15bとの間において熱処理室11内の雰囲気を分離することができる。即ち、水蒸気供給部13から出口側ガス供給部(37a、37b)までの領域の雰囲気と、外部に開放された出口32から出口側ガス供給部(37a、37b)までの領域の雰囲気とを分離することができる。これにより、熱処理の作業効率の向上のために出口32が開放された熱処理装置1において、水蒸気供給部13から出口側水蒸気排出部15bまでの領域の雰囲気を外部に対して遮断でき、加熱領域HRにおける過熱水蒸気による被処理物10の熱処理を効率よく行うことができる。
【0161】
また、本実施形態の熱処理装置1によると、出口側ガス供給部(37a、37b)が一対で設けられてそれらの間に出口側排気部20が設けられている。このため、出口側水蒸気排出部15bから出口32側に向かって、出口側水蒸気排出部15b、出口側ガス供給部37a、出口側排気部20、出口側ガス供給部37b、の順番で、これらが配置されることになる。この構成により、出口側水蒸気排出部15bで完全に排出されずに漏れるように出口32側へと流動した僅かな水蒸気は、出口側ガス供給部37aから供給される不活性ガスと混ざり、希釈されることになる。そして、出口側ガス供給部37bから供給された不活性ガスと混ざって希釈された水蒸気は、出口側排気部20から外部へと排気される。このため、出口側水蒸気排出部15bから漏れるように出口32側へと流動した僅かな水蒸気も、出口側排気部20から排気される。この結果、出口側排気部20と出口32との間の領域であって温度が低い領域に水蒸気が流入してしまうことを防止することができる。これにより、出口側排気部20と出口32との間の温度が低い領域に水蒸気が流入して結露が発生することが防止される。結露の発生が防止されることで、被処理物10が出口32から搬出される際に被処理物10に水分が滴下して被処理物10が濡れてしまうことが防止される。また、上記の構成によると、出口側排気部20と出口32との間に配置された出口側ガス供給部37bから供給されるガスによって、水蒸気供給部13から出口側ガス供給部(37a、37b)までの領域の雰囲気と、出口32から出口側ガス供給部(37a、37b)までの領域の雰囲気とをより確実に分離して遮断することができる。
【0162】
また、本実施形態の熱処理装置1によると、水蒸気供給部13は、一対のノズル部(38a、38b)を備えている。そして、一対のノズル部(38a、38b)のそれぞれから吹き出された過熱水蒸気は、対向する一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側に向かって流れる。対向する一対のノズル部(38a、38b)の間の領域には、被処理物10の搬送方向X1と平行な方向におけるガスの流動を部分的に規制するように構成された仕切板(22e、22f)が設置されている。各ノズル部(38a、38b)から吹き出されて一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側に向かって流れた各過熱水蒸気は、仕切板(22e、22f)に衝突し、加熱領域HRにおいて被処理物10の搬送方向X1に垂直な断面の全体に亘って広がりながら被処理物10の搬送方向X1と平行な方向において反転して折り返すように流れる。このため、各ノズル部(38a、38b)から吹き出された過熱水蒸気は、一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側に向かって流れて反転した後、加熱領域HRにおいて被処理物10の搬送方向X1に垂直な断面の全体に亘って広がった状態で、一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側と反対方向に向かって被処理物10の搬送方向X1と平行な方向に沿って流れることになる。即ち、一対のノズル部(38a、38b)のそれぞれから吹き出された過熱水蒸気は、一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側で流れが反転した後、加熱領域HRの断面の全体に広がった状態で、被処理物10の搬送方向X1と平行な方向に沿って互いに離れる方向に沿って流れることになる。このため、ノズル部38aから吹き出した過熱水蒸気は、一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側から熱処理室11の入口31側に向かって加熱領域HRの断面の全体に広がった状態で流れることになる。そして、ノズル部38bから吹き出した過熱水蒸気は、一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側から熱処理室11の出口32側に向かって加熱領域HRの断面の全体に広がった状態で流れることになる。これにより、熱処理室11内においては、一対のノズル部(38a、38b)の中間位置側から入口31側及び出口32側のそれぞれに向かって、被処理物10の搬送方向HRと平行な方向に沿って加熱領域HRの断面の全体に広がった状態で流速のばらつきの更に少ないより一様な水蒸気の流れが形成される。これにより、熱処理室11内において、水蒸気の流れが停滞する領域が更に生じにくくなり、その結果、熱処理室11内において雰囲気が淀む領域が更に生じにくくなる。よって、上記の構成によると、熱処理室11内において雰囲気の淀みが発生してしまうことを更に抑制することができる。
【0163】
また、本実施形態の熱処理装置1によると、一対の入口側ガス供給部(36a、36b)のそれぞれと入口側排気部19との間に、被処理物10の搬送方向X1と平行な方向におけるガスの流動を部分的に規制する入口側仕切板(22a、22b)が設けられる。このため、入口側排気部19を挟んで配置された一対の入口側ガス供給部(36a、36b)の間において、ガスが流動可能なように雰囲気が連通した状態を維持しつつ、雰囲気をより分離し易い状態を形成することができる。これにより、水蒸気供給部13から入口側ガス供給部(36a、36b)までの領域の雰囲気と、入口31から入口側ガス供給部(36a、36b)までの領域の雰囲気とをより効率よく分離して遮断することができる。
【0164】
また、本実施形態の熱処理装置1によると、一対の出口側ガス供給部(37a、37b)のそれぞれと出口側排気部20との間に、被処理物10の搬送方向X1と平行な方向におけるガスの流動を部分的に規制する出口側仕切板(22i、22j)が設けられる。このため、出口側排気部20を挟んで配置された一対の出口側ガス供給部(37a、37b)の間において、ガスが流動可能なように雰囲気が連通した状態を維持しつつ、雰囲気をより分離し易い状態を形成することができる。これにより、水蒸気供給部13から出口側ガス供給部(37a、37b)までの領域の雰囲気と、出口32から出口側ガス供給部(37a、37b)までの領域の雰囲気とをより効率よく分離して遮断することができる。
【0165】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。例えば、次のような変形例が実施されてもよい。
【0166】
(1)前述の実施形態では、加熱領域が、水蒸気供給部から入口側ガス供給部までの領域、及び、水蒸気供給部から出口側ガス供給部までの領域、として構成された形態を例示したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。加熱領域は、熱処理室における被処理物の加熱が行われる領域であればよく、過熱水蒸気による加熱とヒータからの熱による加熱(即ち、ヒータからの熱によって熱処理室を介して加熱された熱処理室内の雰囲気による加熱)との少なくともいずれかが行われる領域として構成される。例えば、熱処理室を外部から加熱するヒータが、熱処理室の入口から出口までの領域に亘って配置されている形態であれば、熱処理室における入口から出口までの全長に亘る領域が、加熱領域となる。
【0167】
(2)また、前述の実施形態では、水蒸気排出部が、加熱領域における被処理物の搬送方向の中央部分に設けられた形態を例示したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。例えば、水蒸気供給部が、加熱領域における被処理物の搬送方向の中央部分よりも入口側又は出口側に設けられた形態が実施されてもよい。
【0168】
(3)また、前述の実施形態では、水蒸気供給部が、被処理物の搬送方向において互いに対向して配置された一対のノズル部を備えて構成された形態を例示したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。例えば、水蒸気供給部が、1つ或いは3つ以上のノズル部を備えて構成された形態が実施されてもよい。また、前述の実施形態では、円筒状に形成されたノズル部を例示したが、ノズル部の形状はこの通りでなくてもよく、種々変更して実施されてもよい。例えば、ノズル部が、箱状、角筒状、或いは、複数の円筒状の部分がそれらの内部が連通した状態で連結された形状、等の種々の形状に形成された形態が実施されてもよい。また、前述の実施形態では、ノズル部において、複数のノズル孔が、一対のノズル部の中間位置側に向かって過熱水蒸気を吹き出すように設けられた形態を例示したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。例えば、ノズル部において、複数のノズル孔が、上方又は下方に向かって過熱水蒸気を吹き出すように設けられた形態が実施されてもよい。或いは、ノズル部において、複数のノズル孔が、一対のノズル部の中間位置側と反対側に向かって過熱水蒸気を吹き出すように設けられた形態が実施されてもよい。
【0169】
(4)また、前述の実施形態では、水蒸気供給部の一対のノズル部の間に、一対の仕切板とバインダー排出部とが設けられた形態を例示したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。例えば、水蒸気供給部の一対のノズル部の間において、バインダー排出部が設けられておらず、1枚の仕切板が設けられた形態が実施されてもよい。又は、水蒸気供給部の一対のノズル部の間において、仕切板が設けられておらず、バインダー排出部が設けられた形態が実施されてもよい。或いは、水蒸気供給部の一対のノズル部の間において、仕切板及びバインダー排出部のいずれもが設けられていない形態が実施されてもよい。
【0170】
(5)また、前述の実施形態では、ガス供給部が熱処理室内に不活性ガスを供給する形態を例示したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。例えば、ガス供給部が熱処理室内に空気を供給する形態が実施されてもよい。或いは、ガス供給部が熱処理室内に不活性ガスと空気との混合ガスを供給する形態が実施されてもよい。
【0171】
(6)また、前述の実施形態では、入口側ガス供給部が一対で設けられた形態を例示したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。例えば、入口側ガス供給部が1つ或いは3つ以上設けられた形態が実施されてもよい。また、前述の実施形態では、円筒状に形成された入口側ガス供給部を例示したが、入口側ガス供給部の形状はこの通りでなくてもよく、種々変更して実施されてもよい。例えば、入口側ガス供給部が、箱状、角筒状、或いは、複数の円筒状の部分がそれらの内部が連通した状態で連結された形状、等の種々の形状に形成された形態が実施されてもよい。また、前述の実施形態では、入口側ガス供給部において、複数のノズル孔が、ガスを下方に向かって吹き出すように設けられた形態を例示したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。例えば、ノズル部において、複数のノズル孔が、下方以外の方向に向かってガスを吹き出すように設けられた形態が実施されてもよい。
【0172】
(7)また、前述の実施形態では、出口側ガス供給部が一対で設けられた形態を例示したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。例えば、出口側ガス供給部が1つ或いは3つ以上設けられた形態が実施されてもよい。また、前述の実施形態では、円筒状に形成された出口側ガス供給部を例示したが、出口側ガス供給部の形状はこの通りでなくてもよく、種々変更して実施されてもよい。例えば、出口側ガス供給部が、箱状、角筒状、或いは、複数の円筒状の部分がそれらの内部が連通した状態で連結された形状、等の種々の形状に形成された形態が実施されてもよい。また、前述の実施形態では、出口側ガス供給部において、複数のノズル孔が、ガスを下方に向かって吹き出すように設けられた形態を例示したが、この通りでなくてもよく、他の形態が実施されてもよい。例えば、ノズル部において、複数のノズル孔が、下方以外の方向に向かってガスを吹き出すように設けられた形態が実施されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明は、過熱水蒸気で被処理物を加熱して被処理物の熱処理を行う熱処理装置に関して、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0174】
1 熱処理装置
10 被処理物
11 熱処理室
13 水蒸気供給部
15、15a、15b 水蒸気排出部
17 ガス供給部
19 入口側排気部
20 出口側排気部
31 入口
32 出口
36a、36b 入口側ガス供給部(ガス供給部)
37a、37b 出口側ガス供給部(ガス供給部)
HR 加熱領域
図1
図2
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図11