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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】電子鍵盤楽器の鍵盤装置
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/34 20060101AFI20240227BHJP
   G10B 3/12 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G10H1/34
G10B3/12 130
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020058675
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157104
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭裕
【審査官】渡部 幸和
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-265347(JP,A)
【文献】特開2005-275167(JP,A)
【文献】特開2018-155991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00
G10B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が前後方向に延び、長さ方向の所定位置を支点として揺動自在に構成され、左右方向に並んだ状態に配置された複数の鍵と、
これらの鍵の後ろ側に配置されたハンマーサポートと、
各々が前後方向に延び、後端部において前記ハンマーサポートの左右方向に延びるハンマー支点軸に上下方向に回動自在に支持され、下面から下方に突出した鍵当接部を介して、対応する前記鍵の後端部に上方から当接する複数のハンマーと、
前記ハンマーサポートの下部に設けられ、離鍵状態において、前記複数の鍵の後端部が上方から当接し、当該複数の鍵を所定の離鍵位置に保持するための鍵ストッパと、
を備え
前記鍵ストッパは、前記ハンマーサポートに着脱自在に取り付けられていることを特徴とする電子鍵盤楽器の鍵盤装置。
【請求項2】
前記鍵ストッパは、
前方に突出しかつ前記複数の鍵にわたって左右方向に延びる合成樹脂製のストッパ本体と、
このストッパ本体の長さ方向に沿って延びるとともに当該ストッパ本体上に取り付けられ、前記複数の鍵の後端部が上方から当接するクッションと、
を有していることを特徴とする請求項1に記載の電子鍵盤楽器の鍵盤装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ピアノなどの電子鍵盤楽器に適用され、押鍵された鍵で突き上げられることによって回動するハンマーを備えた電子鍵盤楽器の鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の鍵盤装置として、例えば本出願人がすでに出願した特許文献1に記載されたものが知られている。この鍵盤装置は、電子ピアノの左右方向に並んだ多数の鍵と、これらの鍵を支持する鍵盤シャーシと、この鍵盤シャーシの後端部に連結されたハンマーサポートと、鍵ごとに設けられ、押鍵された鍵に連動して回動する多数のハンマーなどで構成されている。鍵盤シャーシは、左右方向に延びる前レール、中レール及び後レールから成る3本の支持レールと、前後方向に延びる複数の補強用のリブとによって、井桁状に組み立てられている。
【0003】
各鍵は、前後方向に延びており、中央付近のピン孔を介して、鍵盤シャーシの中レールに固定された筬中に立設されたバランスピンに揺動自在に支持されている。また、離鍵状態において、各鍵は、下面後端部が後レール上のクッションに載置された状態で、後ろ下がり傾斜した姿勢に保持される。一方、各ハンマーは、前後方向に延びるアーム状に形成され、後端部においてハンマーサポートのハンマー支点軸に上下方向に回動自在に支持されるとともに、後部に設けられた鍵当接部が、鍵の後端部に上方から当接した状態で載置されている。このような状態から、鍵が押鍵されることで、鍵の前端部が下がるとともに後端部が上がるように揺動すると、その鍵に対応するハンマーは、鍵当接部を介して突き上げられ、上方に回動する。そして、鍵が押しきられると、ハンマーが上方のハンマーストッパに当接し、上方へのハンマーの回動が終了する。その後、鍵が離鍵されると、その鍵は押鍵時と反対方向に揺動し、それに伴い、ハンマーも下方に回動し、元の離鍵状態に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-155991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、上記の鍵盤装置では、離鍵状態において、各鍵の下面後端部がクッションを介して鍵盤シャーシの後レールに載置されるとともに、ハンマーの鍵当接部が鍵の後端部に載置される。このため、離鍵状態における鍵の下面後端部及びハンマーの鍵当接部の高さ位置は、後レールの上面高さによって決まり、このことから、離鍵状態における鍵及びハンマーを所定の姿勢や高さにセットするために、後レールには、その上面高さに非常に高い精度が要求される。
【0006】
しかし、上記の後レールでは、鍵盤シャーシの構造上、横幅が比較的長い金属板を、その長さ方向に沿って互いに平行に延びる複数の折曲げ線を基準として折り曲げ加工されるので、後レールの上面高さを高い精度で加工するには、製造上限界があり、困難を伴う。そのため、例えば、後レールの上面高さが所望の高さよりも低い場合には、後レールの上面とクッションの間に、所定のテープを貼り、そのテープの枚数によって、後レールの上面高さを微調整する必要がある。そのような調整作業は手間がかかり、非常に煩雑である。また、離鍵状態における鍵及びハンマーが、適正な所定の姿勢及び高さに対してずれていると、押鍵時に発音不良や無用な振動が生じるおそれもある。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、従来の調整作業を不要とし、離鍵状態における鍵の下面後端部及びハンマーの鍵当接部の高さ位置を、所定位置に容易に位置決めすることができ、それにより、離鍵状態における鍵及びハンマーを所定の姿勢及び高さに適正にセットすることができる電子鍵盤楽器の鍵盤装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、各々が前後方向に延び、長さ方向の所定位置を支点として揺動自在に構成され、左右方向に並んだ状態に配置された複数の鍵と、これらの鍵の後ろ側に配置されたハンマーサポートと、各々が前後方向に延び、後端部においてハンマーサポートの左右方向に延びるハンマー支点軸に上下方向に回動自在に支持され、下面から下方に突出した鍵当接部を介して、対応する鍵の後端部に上方から当接する複数のハンマーと、ハンマーサポートの下部に設けられ、離鍵状態において、複数の鍵の後端部が上方から当接し、複数の鍵を所定の離鍵位置に保持するための鍵ストッパと、を備え、鍵ストッパは、ハンマーサポートに着脱自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、各々が前後方向に延び、長さ方向の所定位置を支点として揺動自在の複数の鍵が左右方向に並んだ状態に配置されている。また、各々が前後方向に延びる複数のハンマーは、その後端部においてハンマーサポートの左右方向に延びるハンマー支点軸に上下方向に回動自在に支持されるとともに、下面から下方に突出した鍵当接部が、対応する鍵の後端部に上方から当接している。さらに、離鍵状態において、複数の鍵は、それらの後端部がハンマーサポートの下部に設けられた鍵ストッパに上方から当接し、所定の離鍵位置に保持される。この状態において、鍵が押鍵されると、ハンマーは、鍵当接部を介して突き上げられ、ハンマーサポートのハンマー支点軸を中心として上方に回動する。
【0010】
上記のハンマーの回動支点となるハンマー支点軸、及び鍵を所定の離鍵位置に保持するための鍵ストッパがいずれも、ハンマーサポートに設けられているので、離鍵状態における鍵の下面後端部及びハンマーの鍵当接部の高さ位置を、所定位置に容易に位置決めすることができ、それにより、離鍵状態における鍵及びハンマーを所定の姿勢及び高さに適正にセットすることができる。その結果として、押鍵時における発音不良や無用な振動の発生を防止することができ、また、従来と異なり、鍵の後端部の高さ調整が不要となるので、鍵盤装置を効率よく製造することができる。
また、上記の構成によれば、鍵ストッパがハンマーサポートに着脱自在に取り付けられているので、例えば、鍵盤装置の機種変更に伴い、鍵の後端部の高さ位置が変更される場合には、鍵ストッパのみを変更することにより、鍵盤装置の機種変更に容易に対応することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電子鍵盤楽器の鍵盤装置において、鍵ストッパは、前方に突出しかつ複数の鍵にわたって左右方向に延びる合成樹脂製のストッパ本体と、このストッパ本体の長さ方向に沿って延びるとともにストッパ本体上に取り付けられ、複数の鍵の後端部が上方から当接するクッションと、を有していることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、鍵ストッパが、上記のストッパ本体及びクッションを有しており、ストッパ本体が合成樹脂で構成されているので、その高さ位置を高い精度で設定することができる。また、ストッパ本体上にはクッションが取り付けられているので、押鍵された鍵が離鍵状態に戻った際には、鍵の後端部がクッションに当たり、雑音の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態による鍵盤装置を適用した電子ピアノの鍵盤装置を、一部を切り欠いた状態で示す側面図である。
図2】鍵盤シャーシを、一部を切り欠いた状態で示す平面図である。
図3】白鍵及び黒鍵の一例を示す斜視図である。
図4】鍵の後端部に取り付けられるハンマー当接高さ規定部を示す斜視図である。
図5】(a)はハンマーサポートを示す斜視図であり、(b)はハンマーサポートから鍵ストッパのストッパ本体及びクッションを取り外した状態を示す斜視図である。
図6】(a)はハンマーサポートの平面図、(b)はハンマーサポートの正面図である。
図7】ハンマーサポートを、一部を切り欠いた状態で示す斜視図であり、(a)は鍵ストッパの取付部の位置で切断した状態、(b)は鍵ストッパの取付部以外の位置で切断した状態を示す。
図8】鍵ストッパを示す斜視図であり、(a)は前方から見たときの状態、(b)は後方から見たときの状態を示す。
図9】ハンマーを示す側面図である。
図10】押鍵時におけるハンマーの動作を説明するための図であり、(a)は離鍵状態、(b)は押鍵状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による電子ピアノの鍵盤装置を、離鍵状態において示している。
【0017】
同図に示すように、鍵盤装置1は、電子ピアノの左右方向(図1の表裏方向)に並んだ多数の鍵2(白鍵2aおよび黒鍵2bを各1つのみ図示)と、これらの鍵2を支持する鍵盤シャーシ3と、この鍵盤シャーシ3の後端部(図1の右端部)に連結されたハンマーサポート4と、鍵2ごとに設けられ、押鍵された鍵2に連動して回動する多数のハンマー5(1つのみ図示)と、ハンマー5ごとに設けられ、鍵2の押鍵時にレットオフ感を付与するための多数のレットオフ部品6(1つのみ図示)と、鍵2の押鍵情報を検出するための鍵スイッチ7と、離鍵状態における鍵2の下面後端部が載置される鍵ストッパ8などで構成されている。
【0018】
図1及び図2に示すように、鍵盤シャーシ3は、いずれも左右方向に延び、互いに前後方向(図1の左右方向、図2の上下方向)に所定間隔を隔てて配置された前レール11、中レール12及び後レール13から成る3本の支持レール10と、前後方向に延び、互いに左右方向に所定間隔を隔てて配置された複数本(例えば5本)の補強用リブ14(図1及び図2では1本のみ図示)とを、井桁状に組み立てたものである。これらの支持レール10及びリブ14はいずれも、プレスによる打抜き及び折曲げ加工によって所定の形状に形成された鉄板で構成され、ねじ止めによって互いに連結されている。
【0019】
図1に示すように、前レール11は、水平な天板部11aと、この天板部11aの前端部から下方に直角に屈曲する前板部11bと、この前板部11bの下端部から後方に直角に屈曲する底板部11cとを有している。天板部11aの下面には、筬前15がねじ止めなどによって固定されている。筬前15は、合成樹脂から成る肉厚の板状に形成され、前レール11の全体にわたって左右方向に延びている。この筬前15には、白鍵2a及び黒鍵2bに対応する前後の位置に、多数のフロントピン16が、前レール11の天板部11aを貫通するとともに左右方向に並んだ状態で立設されている。
【0020】
中レール12は、水平な筬中載置部12aを有しており、その前端部が下方に、後端部が上方に直角に屈曲されている。上記の筬中載置部12aには、筬中17が載置された状態で、ねじ止めなどによって固定されている。筬中17は、合成樹脂から成る肉厚の板状に形成され、中レール12の全体にわたって左右方向に延びている。この筬中17には、白鍵2a及び黒鍵2bに対応する前後の位置に、多数のバランスピン18が、左右方向に並んだ状態で立設されている。なお、筬中17は、最大で1オクターブ分に対応する複数の射出成形品から成り、図2に示すように、これらが互いに近接し、左右方向に並ぶように配置されている。
【0021】
後レール13は、上方に開放し、ハンマーサポート4の下部を収容した状態でこれに係合する収容凹部13aと、この収容凹部13aの前板部の上端部から直角に屈曲して前方に水平に延びる連結部13bとを有している。収容凹部13aの前板部には、前後方向に貫通するねじ孔が形成されており、ハンマーサポート4の前壁部がねじ止めされている。また、収容凹部13a及び連結部13bは、各リブ14の後端部にねじ止めされている。
【0022】
図3は、白鍵2a及び黒鍵2bを示している。同図に示すように、鍵2は、前後方向に延びるとともに矩形状の横断面を有する木製の鍵本体21と、その前半部の上面及び前面に接着された合成樹脂製の鍵カバー22とを有している。鍵本体21の長さ方向の中央付近には、バランスピン孔23が形成されており、鍵2は、このバランスピン孔23を介して、筬中17に立設されたバランスピン18に揺動自在に支持されている。
【0023】
なお、各バランスピン孔23は、鍵本体21の下面付近にほぼ円形の孔が形成されるとともに、その孔に連なる上部全体が、鍵本体21の長さ方向に延びる長孔状に形成されている。また、バランスピン孔23の左右の内面には、鍵2が揺動する際に、バランスピン18に対して円滑に摺動させるために、フェルトが23aが設けられている。なお、鍵本体21の上面には、バランスピン孔23の後ろ側にクッション20が接着されており、このクッション20により、演奏時やメンテナンス時などに、ハンマー5の前端部が鍵2に直接当たることが防止される。
【0024】
また、鍵本体21の前部の所定位置には、下方に開放するフロントピン孔24(図1参照)が形成されており、このフロントピン孔24が、筬前15に立設されたフロントピン16に係合することによって、鍵2が揺動する際の左右方向のぶれが防止される。
【0025】
さらに、図3に示すように、白鍵2a及び黒鍵2bの後端部には、離鍵状態におけるハンマー5の後述する鍵当接部66の下端が鍵2に当接する高さを所定高さに規定するためのハンマー当接高さ規定部25が設けられている。このハンマー当接高さ規定部25は、硬質の合成樹脂から成る所定形状の成形品で構成されている。
【0026】
具体的には、図4に示すように、ハンマー当接高さ規定部25は、前後方向に所定長さ延びる上片31と、この上片31の後端部に連なり下方に延びる後片32と、この後片32の下端部に連なり前方に所定長さ延びる下片33とにより、側面形状がコ字状に形成されている。また、ハンマー当接高さ規定部25の左側面には、上片31及び後片32に連なる側壁34が設けられている。
【0027】
上片31は、その前半部を構成するとともに、上片31自体を鍵2の上面後端部に固定するための上片固定部31aと、上片31の後半部を構成するとともに、上面が平坦に形成され、ハンマー5の鍵当接部66を下方から支持した状態で受けるハンマー受け部31bとを有している。上片固定部31aの大部分は、ハンマー受け部31bよりも厚さが薄く形成されており、コ字状の固定金具35が上片固定部31aに外側から打ち込まれることによって、上片31が鍵本体21の上面後端部に固定されている。
【0028】
後片32は、上片31のハンマー受け部31bに連なり、後方に凸状に形成された後片上部32aと、この後片上部32aに連なって下方に延び、厚さが薄く形成された後片固定部32bと、この後片固定部32bの下端部に連なり、後方に凸状に形成された後片下部32cとを有している。このように構成された後片32は、コ字状の固定金具36が後片固定部32bに外側から打ち込まれることによって、鍵本体21の後端面に固定されている。
【0029】
下片33は、後片32の下端部から前方に斜め上がりに延びており、その上面前端部に、鍵本体21の下面後端部に当接する下片凸部33aが設けられている。また、下片33は、後片32との接続部分を支点として上下方向に撓むことが可能なばね性を有している。なお、ハンマー当接高さ規定部25では、成形時の樹脂量の少量化及び成形品の軽量化を図るとともに、成形時のヒケや変形を防止するために、上片31のハンマー受け部31b、並びに後片32の後片上部32a及び後片下部32cに適宜、右方に開放する空洞が形成されている。
【0030】
以上のように構成されたハンマー当接高さ規定部25は、上片31の下面、後片32の前面及び側壁34の三面がそれぞれ、鍵本体21の後端部における上面、後端面及び左側面の三面にぴったりと接するとともに、下片33の下片凸部33aが鍵本体21の下面後端部に当接した状態で、鍵本体21の後端部に強固に取り付けられている。そして、このようなハンマー当接高さ規定部25を、全ての鍵2の後端部に設けることにより、各鍵本体21における後端部の厚さのばらつきを吸収しながら、全てのハンマー当接高さ規定部25のハンマー受部31bの高さを一定の所定高さにすることができる。
【0031】
ハンマーサポート4は、所定種類の合成樹脂(例えばABS樹脂)から成る射出成形品で構成され、最大で1オクターブ分に対応する複数の成形品を互いに連結したものであり、全てのハンマー5にわたるように左右方向に延びている。図1に示すように、ハンマーサポート4は、後レール13から直立するハンマー支持部38と、その上端部から前方に斜め上がりに延びるスイッチ取付部39などで構成されている。ハンマー支持部38の上端部には、各ハンマー5を支持するための水平なピン状のハンマー支点軸41が形成されている。
【0032】
図5(a)及び図6は、鍵ストッパ8が取り付けられた1オクターブ分のハンマーサポート4を示しており、図7は、ハンマーサポートを、一部を切り欠いた状態で示している。これらの図に示すように、ハンマーサポート4は、互いに左右方向に所定間隔を隔てた状態で、隣り合うハンマー5を仕切る複数の仕切壁42を有している。各仕切壁42は、前記ハンマー支持部38に対応し、側面形状が縦長のほぼ長方形状に形成された方形壁43と、前記スイッチ取付部39に対応し、方形壁43の上部前端に連なりかつ側面形状がほぼ三角形状に形成された三角壁44とで構成されている。そして、このハンマーサポート4において、全ての方形壁43は、その下部の前端部及び下端部、並びに上部の後端部がそれぞれ、前壁部45、底壁部46および背壁部47を介して、左右方向に連なっている。一方、すべての三角壁44は、その上部の前半部が、上壁部48を介して、左右方向に連なっている。
【0033】
また、隣り合う仕切壁42、42間にはそれぞれ、方形壁43と三角壁44が連なる部分に、左右方向に延びる前記ハンマー支点軸41が設けられている。これらのハンマー支点軸41は、左右方向に水平に延びる軸線に沿って一直線状に配置され、各ハンマー支点軸41にハンマー5が回動自在に支持されている。
【0034】
さらに、ハンマーサポート4の前壁部45には、鍵ストッパ8が着脱自在に取り付けられている。この鍵ストッパ8は、左右方向に延び、ハンマーサポート4の左右方向の幅寸法とほぼ同じ長さを有するストッパ本体8aと、このストッパ本体8aの長さ方向に沿って延び、ストッパ本体8aの後述する突出部51上に取り付けられたクッション8bとで構成されている。
【0035】
図8(a)及び(b)はそれぞれ、鍵ストッパ8のストッパ本体8aを前方及び後方から見たときの状態を示している。両図に示すように、このストッパ本体8aは、所定種類の合成樹脂(例えばABS樹脂)から成る射出成形品で構成され、前方に所定長さ突出する突出部51と、この突出部51の後端部に連なり、上方に所定長さ起立する起立部52とで、側面形状がL字状に形成されている。これらの突出部51及び起立部52では、鍵2に対応する部分がそれぞれ厚く形成されている。なお、突出部51の鍵2に対応する肉厚部分に形成されている空洞は、成形時のヒケや変形を防止するための肉盗みである。
【0036】
また、ストッパ本体8aには、起立部52の背面から下方に所定長さ突出し、ストッパ本体8a自体をハンマーサポート4の前壁部45に取り付けるための複数(図8(b)では7つ)の取付部53が設けられている。各取付部53には、ねじ止めするための孔53aが形成されている。
【0037】
一方、クッション8bは、発泡ウレタンやフェルトなどから成り、所定の厚みを有する帯状に形成されている。そして、このクッション8bは、ストッパ本体8aの突出部51上に接着されている。
【0038】
このように構成された鍵ストッパ8は、前記図7に示すように、ストッパ本体8aの突出部51及び起立部52が、ハンマーサポート4の前壁部45及び方形壁43の前側に位置するとともに、ストッパ本体8aの全ての取付部53が、ハンマーサポート4の前壁部45の背面側に回り込んだ状態で、ねじ止めされている。これにより、鍵ストッパ8は、ハンマーサポート4の下部にしっかりと固定される。
【0039】
図9は、ハンマー5を拡大して示している。同図に示すように、ハンマー5は、前後方向に延びるアーム状のハンマー本体61と、その左右の側面の前端部に、リベット62を介して取り付けられた2つの錘板63(図9では1つのみ図示)とを有している。ハンマー本体61は、硬質の合成樹脂で構成され、錘板63は、比重が比較的大きな鉄などの金属で構成されている。
【0040】
ハンマー本体61の後端部には、ハンマーサポート4のハンマー支点軸41に係合する係合部64が設けられている。この係合部64には、側面形状がC字状に形成された円弧状の軸穴65が形成されている。また、ハンマー本体61の底面後部の所定位置には、下方に突出し、鍵2の後端部に設けられたハンマー当接高さ規定部25に上方から当接する鍵当接部66が設けられている。
【0041】
また、ハンマー本体61には、後端部の係合部64の前側上部に、押鍵時に鍵スイッチ7を押圧することによって作動させるためのアクチュエータ部67が設けられている。さらに、ハンマー本体61には、その上面の前後方向の中央付近に、押鍵時にレットオフ部品6に係合する板状の係合突起68が設けられている。
【0042】
以上のように構成されたハンマー5は、軸穴65の開口部を介して、ハンマーサポート4のハンマー支点軸41に対して着脱可能になっており、軸穴65がハンマー支点軸41に嵌合した状態で、ハンマーサポート4に回動自在に支持されている。
【0043】
次に、以上のように構成された鍵盤装置1の動作について、前述した図1、及び図10を参照して説明する。図10(a)は、図1に示す離鍵状態における鍵盤装置1の後部を拡大して示している。この離鍵状態では、鍵2の後端部に設けられたハンマー当接高さ規定部25の後片下部32cが、鍵ストッパ8のクッション8bに載置されている。これにより、全ての鍵2は、図1に示す離鍵位置に保持される。また、この離鍵状態では、ハンマー5の鍵当接部66が、鍵2の上記ハンマー当接高さ規定部25のハンマー受け部31bに上方から当接した状態で載置される。
【0044】
上記の離鍵状態から鍵2が押鍵されると、鍵2は、バランスピン18を中心として、図1の反時計方向に回動し、それに伴い、ハンマー5は、鍵当接部66を介して押し上げられ、ハンマー支点軸41を中心として、上方(図1及び図10の時計方向)に回動する。
【0045】
このハンマー5の回動の途中で、その係合突起68が、レットオフ部品6の先端部の頭部6aに係合し、その頭部6aを介してレットオフ部品6を圧縮させながら押圧することにより、レットオフ部品6からハンマー5に作用する反力が増大する。ハンマー5の回動が進むと、係合突起68が頭部6aから外れることで、レットオフ部品6からの反力が急激に消失する。このようなレットオフ部品6の反力の増大と消失によって、アコースティックピアノに近似したレットオフ感が得られる。
【0046】
その後、図10(b)に示すように、ハンマー5の前端部が、ハンマーサポート4の前端上部に設けられたハンマーストッパ70に当接することによって、ハンマー5の上方への回動が終了する。また、ハンマー5の上方への回動の間、そのアクチュエータ部67が鍵スイッチ7を押圧し、鍵スイッチ7をONすることによって、ハンマー5の回動量に応じた鍵2の押鍵情報が検出され、発音制御装置(図示せず)に出力される。そして、この発音制御装置により、検出された押鍵情報に基づいて、電子ピアノの発音が制御される。
【0047】
その後、鍵2が離鍵されると、鍵2は、押鍵時と反対方向に回動し、図1及び図10(a)に示す離鍵状態に復帰し、それに伴い、ハンマー5も、下方に回動し、離鍵状態に復帰する。
【0048】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ハンマー5の回動支点となるハンマー支点軸41、及び鍵2を所定の離鍵位置に保持するための鍵ストッパ8がいずれも、ハンマーサポート4に設けられているので、離鍵状態における鍵2の下面後端部及びハンマー5の鍵当接部66の高さ位置を、所定位置に容易に位置決めすることができ、それにより、離鍵状態における鍵2及びハンマー5を所定の姿勢及び高さに適正にセットすることができる。その結果として、押鍵時における発音不良や無用な振動の発生を防止することができ、また、従来と異なり、鍵2の後端部の高さ調整が不要となるので、鍵盤装置1を効率よく製造することができる。
【0049】
また、鍵ストッパ8では、ストッパ本体8aが合成樹脂で構成されているので、その高さ位置を高い精度で設定することができる。加えて、ストッパ本体8aの突出部51上にはクッション8bが取り付けられているので、押鍵された鍵2が離鍵状態に戻った際には、鍵2の後端部がクッション8bに当たり、雑音の発生を低減することができる。
【0050】
さらに、鍵ストッパ8は、ハンマーサポート4に着脱自在に取り付けられているので、例えば、鍵盤装置1の機種変更に伴い、鍵2の後端部の高さ位置が変更された場合には、鍵ストッパ8のみを変更することにより、鍵盤装置の機種変更に容易に対応することができる。
【0051】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、ハンマーサポート4と鍵ストッパ8とを別部品として構成したが、例えば、ハンマーサポート4と鍵ストッパ8のストッパ本体8aとを一体成形で構成することも可能である。また、実施形態で示した鍵盤装置1の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 鍵盤装置
2 鍵
2a 白鍵
2b 黒鍵
3 鍵盤シャーシ
4 ハンマーサポート
5 ハンマー
8 鍵ストッパ
8a ストッパ本体
8b クッション
21 鍵本体
41 ハンマー支点軸
51 ストッパ本体の突出部
52 ストッパ本体の起立部
53 ストッパ本体の取付部
66 鍵当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10