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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】扉付きのフェンス本体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 17/16 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
E04H17/16 101
E04H17/16 105Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020061953
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021075995
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2019203885
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】香月 康彦
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-092976(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0053440(US,A1)
【文献】特開平08-284125(JP,A)
【文献】特許第6542565(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/00-17/26
E04G 21/32
E01F 13/00
A01M 29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱間に複数のフェンス本体が取付けられたフェンスにおいて、前記複数のフェンス本体の一部を扉付きのフェンス本体とするための、前記扉付きのフェンス本体の製造方法であって、
多数の縦材と多数の横材とが交差部で接合された格子状のフェンス本体の一部を除去して前後方向に通過可能に開口部を形成する工程と、
矩形状の前枠材を有する開口枠であって内周部に沿って後面部が設けられた前記開口枠を前記開口部に取付ける工程と、
前記除去したフェンス本体を用いて形成した扉を前記開口部の前側から前記開口枠の内周部に沿って配置して、扉枠を前記後面部の前側に当接させる工程と、
前記開口枠の前記後面部に取付けられて前記開口部の後側のみから操作可能な固定手段であって前記後面部に前記扉枠を固定する前記固定手段によって前記開口枠に前記扉を固定する工程と、
を含むことを特徴とする扉付きのフェンス本体の製造方法。
【請求項2】
前記開口枠の前記後面部前記扉の前記扉枠とを磁石を介して固定する工程を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の扉付きのフェンス本体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商業施設、公共施設、鉄道、高速道路、工場等の敷地境界部、隣地境界部に沿って取付けられるフェンスであって、非常時に既設の扉以外の箇所から通過することができるフェンスに関する。
【背景技術】
【0002】
商業施設、公共施設、鉄道、高速道路、工場等の敷地境界部、隣地境界部には、その敷地内に一般人が容易に入られないようにフェンスが設置されている。フェンスの形態としては、一般には、境界部に沿って適宜間隔をおいて支柱を埋設し、これら支柱間に、格子状や板状のパネルを取付けたものが利用されている。更に、侵入防止を図るために、フェンスの高さをより高くしたり、フェンスの上端にさらに鉄条網を取付けたり、フェンスの上端を敷地外の方向に向けて傾けたもの、あるいは敷地外の方向に向けて鏃状の突出部を有する忍び返しを取付けたりしたものが用いられている。
【0003】
このようなフェンスには、通常、所定の場所に敷地内を出入りする箇所に門扉等が設置されており、通行可能となされている。そのため、天候の急変や地震により、敷地内から外へ避難が必要となった場合は、既存の門扉に避難者が集中して、スムーズに避難できない状況が生じたり、避難者が集中して転倒等による怪我人が発生したりするおそれがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、フェンスの隣接する支柱間の一部を両側から枠状の固定具で挟んで固定し、固定具を固定してから固定具で囲まれた部分の除去対象金網を切断除去して進入用開口部を形成し、形成した進入用開口部に開閉可能な扉体を取り付けることを特徴とするフェンス用扉の取付方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許6542565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記フェンス用扉の取付方法によると、支柱間の一部を両側から枠状の固定具で挟んで固定し、固定具を固定してから固定具で囲まれた部分の除去対象金網を切断除去するので、除去する部分を容易に特定し除去作業もしやすくなる。しかしながら、固定具は支柱の両側から挟んで固定するので、作業者がフェンスの前後両側にいる必要がある。そのため、フェンスの前側又は後側に作業者が行きにくい場合は、扉の取付作業が困難となる場合があった。
【0007】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、フェンスの一部を除去する際、ガイドや補強部材を用いなくても、フェンスの前後の一方からフェンス本体の一部を除去し、除去した箇所に扉を取付けることができるフェンスについて、そのフェンスの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち本発明に係る扉付きのフェンス本体の製造方法は、支柱間に複数のフェンス本体が取付けられたフェンスにおいて、前記複数のフェンス本体の一部を扉付きのフェンス本体とするための、前記扉付きのフェンス本体の製造方法であって、多数の縦材と多数の横材とが交差部で接合された格子状のフェンス本体の一部を除去して前後方向に通過可能に開口部を形成する工程と、矩形状の前枠材を有する開口枠であって内周部に沿って後面部が設けられた前記開口枠を前記開口部に取付ける工程と、前記除去したフェンス本体を用いて形成した扉を前記開口部の前側から前記開口枠の内周部に沿って配置して、扉枠を前記後面部の前側に当接させる工程と、前記開口枠の前記後面部に取付けられて前記開口部の後側のみから操作可能な固定手段であって前記後面部に前記扉枠を固定する前記固定手段によって前記開口枠に前記扉を固定する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0009】
前記開口枠の前記後面部前記扉の前記扉枠とを磁石を介して固定する工程を含むものとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るフェンスは、多数の縦材と多数の横材とが交差部で接合された格子状のフェンス本体を備えているので、フェンス本体の一部を切除して開口部を形成する際、枠材のような補強部材がなくても、縦材や横材の切断をすることができる。しかも、切除したフェンス本体の一部を開口部に取付ける扉として利用できるので、扉の材料を必要最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るフェンスの実施の一形態を示す正面図である。
図2図1のフェンス本体から扉を外した状態を示す正面図である。
図3】フェンス本体と開口部との関係を示す正面図である。
図4】フェンス本体に開口部を形成するために除去した除去部の説明図である。
図5図1の扉の正面図である。
図6図5の扉の説明図であって、(a)は要部拡大正面図、(b)はA-A線拡大断面図である。
図7図2の開口部付近の拡大正面図である。
図8図7のB-B線拡大断面図である。
図9図1の扉付近の拡大正面図である。
図10図9のC-C線拡大断面図である。
図11図10の部分拡大図である。
図12図9のD-D線拡大断面図である。
図13】本発明に係るフェンスにおいてフェンス本体の他の実施形態を示す正面図である。
図14図13のE-E線拡大断面図である。
図15図13のF-F線拡大断面図である。
図16図13のF-F線拡大断面図である。
図17】本発明に係るフェンスにおいてフェンス本体の更に他の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0014】
図面において、10は立設された支柱、20は支柱10の間に取付けられたフェンス本体、30はフェンス本体20に取付けられた扉であって、本発明に係るフェンス100は、主に、支柱10、フェンス本体20、扉30から構成されている。
【0015】
図1は、本発明に係るフェンス100の実施の一形態を示す正面図である。支柱10は、その下部が設置面に埋設されて左右方向に間隔をおいて立設されている。支柱10は一般に強度的に安定している鋼管が用いられるが、鋼材以外に他の金属を用いてもよい。また、支柱10の耐食性や耐候性を高めるために金属めっきや塗装が施されてもよい。尚、フェンス100の前側とは図1の手前側、フェンス100の後側とは図1の奥側であって、以後、この様に説明する。
【0016】
フェンス本体20は、多数の縦材21と多数の横材22とが格子状に配置され、その交差部で溶接により接合されたものである。縦材21及び横材22は、本形態では、強度的に安定しておりコストの安い鋼線が好適に用いられるが、ステンレス合金やアルミニウム合金などの他の金属からなる線材を用いてもよい。また縦材21及び横材22の耐食性や耐候性を高めるために金属めっきや塗装を施してもよい。
【0017】
支柱10とフェンス本体20との連結構造は、本形態では、フェンス本体20を支柱10の前面側に配置し、連結金具11を介して支柱10の前側にフェンス本体20を固定したものである。また、フェンス本体20の側端部には別の連結金具12を配置して、フェンス本体20の隣り合う側端部同士を連結することによって、フェンス本体20が左右方向に複数連結されている。すなわち、本形態における連結構造は、いわゆる自由柱構造であるが、本形態以外の連結構造を用いてもよい。例えば、図示しないが、フェンスの側端部と支柱とを連結した、いわゆる固定柱構造を用いてもよい。
【0018】
複数のフェンス本体20のうち、一部のフェンス本体20、本形態では、上下2段配置したフェンス本体20のうち、避難時に利用しやすい下段のフェンス本体20において扉30が取付けられている。
【0019】
図2はこのフェンス本体20から扉30を外した状態を示す正面図である。フェンス本体20から扉30を外すと、前後方向に通過可能な開口部23が現出する。すなわち、フェンス本体20の一部に開口部23を形成し、この開口部23に扉30を取付けたものが図1の下段中央部のフェンス本体20である。なお、図示しないが、扉30に「非常口」等を記載した表示部材を取付けてもよい。
【0020】
この構造により、天候の急変や地震発生のような緊急時において敷地内(フェンス100の後側)から敷地外(フェンス100の前側)へ避難が必要となった場合、避難者は、通常の出入口(図示せず)のみならず、開口部23を通って敷地外へ移動できる。
【0021】
図3はフェンス本体20と開口部23との関係を示す説明図であって、(a)は開口部23の形成前、(b)は開口部23の形成後の正面図である。開口部23は、(a)に示すように、その位置を決め、(b)に示すように、開口部23の大きさに合わせて縦材21及び横材22の一部を切断し、フェンス本体20から該当箇所を除去することによって形成したものである。したがって、本形態のように設置されたフェンス100に対して避難経路として適宜位置に開口部23を形成することができる。
【0022】
開口部23は、本形態では矩形状であるので、除去する箇所について、角部にマスキングテープ等の目印を付けておけば、この目印を起点として縦材21、横材22と平行に切断作業を行えばよいので、開口部23の大きさに合わせた枠材等のガイドとなる部材を準備しなくても、作業が容易となる。
【0023】
フェンス本体20は、前述の通り、多数の縦材21と多数の横材22とが格子状に配置され、その交差部で溶接により接合されたものであるので、開口部23の形成の際、フェンス本体20に切除するための補助部材や補強部材を取付ける必要がなく、フェンス100の設置状態においても、開口部23の周縁部に位置する縦材21及び横材22をニッパーやクリッパー等の工具を用いて切断し、開口部23を形成することができる。
【0024】
図4は、フェンス本体20に開口部23を形成するために除去した除去部の説明図であって、(a)は除去部31の正面図である。本形態では、フェンス本体20から除去された除去部31は矩形状である。更に詳しく説明すると、除去部31は、隣り合う縦材32と隣り合う横材33とによって形成された単位格子34aが上下方向及び左右方向に複数配置された格子部34と、格子部34の外側であって、切断された縦材32及び横材33を有する外周部35を備えている。換言すると、除去部31は、格子部34と、格子部34の外周部に切断された縦材32及び横材33からなる外周部35とを備えている。
【0025】
これにより、除去部31は、縦方向横方向に複数配置された単位格子34aからなる格子部34を備えているので、特段の補強をしなくても十分な強度を有したものとなる。なお、縦材32及び横材33は、フェンス本体20の縦材21及び横材22を切断したものであるが、除去部31として説明するために符号を変更している。
【0026】
扉30は、除去部31を用いて作成した扉本体36を利用している。これにより、扉本体36として別の材料を準備する必要がないので、扉30の材料を必要最小限に抑えることができる。
【0027】
具体的には、扉本体36として、(a)に示された除去部31をそのまま用いると、開口部23の形成の際に切断した縦材21又は横材22と接触して取付けにくい場合があるので、除去部31の外周部35において、縦材32及び横材33の切断端部から格子部34に向かう途中で更に切断して、縦材32及び横材33の長さを短くして、扉30に用いる扉本体36としている。
【0028】
図4の(b)は除去部31から形成した扉本体36と開口部23との関係を示す正面である。このように、扉本体36は、開口部23より小さくなるので、開口部23内に扉本体36を配置することが容易となる。更に、扉本体36の縦材32及び横材33を、フェンス本体20を切断する前の位置に合わせることができる。これにより、正面視において、フェンス本体20の縦材21及び横材22と、扉30の縦材32及び横材33の左右及び上下の位置を揃えることができるので、外観上の違和感を抑えることができる。
【0029】
次に、開口部23に対する扉30の取付構造について詳しく説明する。図5図1の扉30の正面図である。扉30は、扉本体36と、扉本体36の外周部に沿って配置された扉枠37とを備えている。
【0030】
図6図5の扉30の説明図であって、(a)は図5の要部拡大正面図、(b)は図5のA-A線拡大断面図である。扉枠37は、上下左右に配置された枠材によって矩形状に形成されており、扉本体36を固定するための前板部37aと、前板部37aの外側部及び内側部から後方に向けて一対のリブ37b、37cが形成されて断面コ字状に形成されている。
【0031】
前板部37aは、前後に貫通する貫通孔37dを有しており、前後に配置されたワッシャ41a、41bが配置されている。これらの前後に貫通するフックボルト41が通されており、前板部37aの前側においてフック箇所に扉本体36の縦材32が抱持されており、前板部37aの後側でナット42により締結されている。フックボルト41は、図5に示すように、扉枠37の上下左右各所に配置されており、扉枠37の上下では縦材32を固定し、左右では横材33を固定している。これにより、扉本体36が扉枠37に固定される。なお、扉本体36の縦材32及び横材33は、切断箇所にキャップ32a、33aが取付けられている。
【0032】
図7図2の開口部付近の拡大正面図、図8図7のB-B線拡大断面図である。開口部23は、周縁部に沿って開口枠24が配置されている。開口枠24は、開口部23の前側に配置され、上下左右の前枠材25からなる矩形状に形成されている。そして、開口部23の後側であって開口枠24と対向する位置に配置される上下左右の枠材からなる矩形状の補助枠26と前述の開口枠24とを前後に貫通するボルト43にナット44を螺着する。これにより、開口部23の周縁部に開口枠24及び補助枠26が固定される。なお、開口枠24をフェンス本体20とは異なる色彩に着色し、避難者が開口部23の位置を認識しやすいようにしてもよい。
【0033】
図9図1の扉付近の拡大正面図、図10図9のC-C線拡大断面図、図11図10の部分拡大図であって、扉枠37と開口枠24との関係を示す説明図である。開口枠24は、図11に示すように、その内周部に沿って扉枠37が収納される収納部27を備えている。収納部27は、上面部27aと後面部27bと下面部27cとがこの順で配置されており、前側に開口する断面コ字状に形成されている。そして扉30をフェンス本体20の前側から矢印の方向に移動させて、上面部27aと下面部27cとの間に扉30の扉枠37が配置されるようになされている。
【0034】
これにより、フェンス本体20の開口部23に扉30を取付けることができる。なお、収納部27の後面部27bは前枠材25よりも後方に位置している。これにより、収納部27の収納空間は前枠材25よりも後側に位置することになるので、開口部23に扉30を取り付けた際、フェンス本体20と扉30との前後位置、具体的には、縦材21と縦材32の前後位置を合わせることができる。
【0035】
本形態では、扉枠37は、フェンス100の後側(敷地内)から操作される固定手段45によって開口枠24に固定される。
【0036】
これにより、フェンス100の前側からは固定手段45を操作できないので、通常時は通行人がフェンス100の前側から扉30を外すことができない。緊急時には、避難者が固定手段45を操作して開口部23から扉30を外すことができるものが好ましい。固定手段45の具体例としては、本形態のように、開口枠24の収納部27の後面部27bに貫通孔27dを設け、扉枠37の前板部37aの後側にナット38を溶接で固定し、貫通孔27dに対して、フェンス本体20の後側から矢印の方向に向けてローレットつまみを有するねじ45aを通してナット38に螺着して、開口枠24に扉枠37を固定する形態を挙げることができる。なお、ねじ45aとしては蝶ねじを用いてもよく、ナット38の代わりに、前板部37aにバーリング加工によるねじ孔を設けてもよい。
【0037】
図12図9のD-D線拡大断面図である。扉枠37の前板部37aにおいて、ナット38の固定箇所とは異なる箇所に磁石39aを有する別の固定部材39を取付けている。本形態では、開口枠24は鋼材を用いているので、開口枠24と扉枠37とが前述のねじ45aとナット38とは異なる手段で固定された状態となる。したがって、ナット38からねじ45aを外しただけ開口部23から扉30が外れることを抑えることができる。この後、扉30をフェンス100の前側に向けて押せば、扉30が前側に外れるので、扉30が避難者側に外れることがない。なお、本形態では、扉枠37も鋼材を用いているので、開口枠24に固定部材39を取付けた形態であっても、同様な効果を奏することができる。
【0038】
なお、図示しないが、フェンス100の製造時にフェンス本体20に開口部23を形成することもできる。同様な構造を有するものであるので、詳しい説明は省略する。
【0039】
図13図16は、本発明に係る他の実施形態を示す説明図であって、図13は本発明に係るフェンス本体20の他の実施形態を示す正面図、図14図13のE-E線拡大断面図、図15図13のF-F線拡大断面図、図16図13のG-G線拡大断面図である。本形態に係るフェンス本体20は、図1図12に示されたフェンス本体20と比べて、開口枠及び扉枠の形態が異なるものであり、主にそれについて説明する。なお、既に説明した内容と同じ構成要素には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0040】
まず、フェンス本体20において、開口枠50は、開口部23の周縁部の前側の上下左右に配置された前板部51によって矩形状に形成されている。更に前板部51の内周部から後方に向けて設けられた側板部52と、側板部52の後端部から開口枠50の内側に向けて設けられた後板部53とを有している。前板部51は、前後に貫通する貫通孔51aを複数有しており、その前側にワッシャ51bが配置され、これらを前後に貫通するフックボルト41が通されている。そして、フックボルト41は、前板部51の後側においてフック箇所にフェンス本体20の縦材21が抱持されており、前板部51の前側でねじ部にナット42が締結されている。これにより、開口枠50がフェンス本体20に固定される。
【0041】
次に、扉30において、扉枠60は、扉本体36の外縁部の前側の上下左右に配置された前板部61によって矩形状に形成されている。更に前板部61は、その外周部から後方に向けて形成された側板部62を有しており、断面L型となされている。
【0042】
前板部61は、前後に貫通する貫通孔61aを有しており、その前側にワッシャ61bが配置され、これらを前後に貫通するフックボルト41が通されている。そして、フックボルト41は、前板部61の後側においてフック箇所に扉本体36の縦材32が抱持されており、前板部61の前側でナット42により締結されている。これにより、扉枠60が、扉本体36に固定される。
【0043】
扉30をフェンス本体20の前側から矢印の方向に移動させて、扉枠60が開口枠50の後板部53に対向するように配置することで、開口枠50に扉30を配置することができる。フェンス本体20の縦材21は前板部51の後面に固定され、扉本体36の縦材32は前板部61の後面に固定されているので、前板部51、61同士の前後位置を合わせることで、縦材21、32同士の前後位置も合わせることができる。
【0044】
次に、開口枠50に対する扉枠60の固定構造について説明する。本形態では、固定部材70、固定手段80を用いて固定される。固定部材70は、図12に示された固定手段39と同様に磁石71を用いているが、以下、その相違点について主に説明する。図15に示すように、固定部材70は、扉枠60の前板部61において、フックボルト41・ナット42の締結箇所とは異なる箇所に取付けられている。固定部材70は、前板部61の後面側に固定された台部72と、その後面側に固定された磁石71とを有している。一方、本形態では、開口枠50は鋼材を用いているので、扉30をフェンス本体20の前側から矢印の方向に移動させて、磁力により扉枠60を開口枠50に固定可能となる。
【0045】
固定手段80は、図12に示された固定手段45と同様に、ローレットつまみを有するねじ81を用いているが、以下、その相違点について主に説明する。図16に示すように、開口枠50の後板部53に貫通孔53aを設けてその前面にナット54を接合されている。一方、扉枠60の前板部61にも貫通孔61aとは異なる箇所に別の貫通孔61cを設けてその裏面側にナット63が接合されている。ねじ81は、ナット54、又はナット63と螺合可能な雄ねじ部82と、ナット54、63の雌ねじ部54a、63aの内径よりも小径の棒状部83と雌ねじ部54a、63aよりも大径でローレットつまみ84aを有する頭部84とを有しており、雄ねじ部82、棒状部83、頭部84の順に配置されている。
【0046】
これにより、例えば、図16に示すように、扉枠60の前板部61側からねじ81を取付ける場合、雄ねじ部82をナット63の雌ねじ部63aに螺入させ続けて通過した後、棒状部83が雌ねじ部63aに挿通された状態となる。これにより、ねじ81は、雄ねじ部82が再び雌ねじ部63aに螺入されない限りは外れることがない。
【0047】
続いて、雄ねじ部82を開口枠50側のナット54に螺入する。これにより、ねじ81を介して、開口枠50に扉枠60が固定される。また、棒状部83は雌ねじ部54a、63aよりも小径であるので、ナット54、63同士の軸がずれていても、雌ねじ部54a又は雌ねじ部63aを通過する棒状部83によって軸ずれに伴う寸法誤差が吸収されて、ねじ81による固定作業が可能となる。更に、反対側からは操作できない構造となっている。なお、図16に示すように開口枠50の後板部53側からもねじ81を用いて上記と同様な固定作業が可能となるが、詳しい説明は省略する。
【0048】
開口枠50に対する扉枠60の具体的な取付手順としては、固定部材70により、扉枠60を開口枠50に固定した後、磁石71により接着された範囲で、両ナット54、63が正面視で重合するように位置を調整して、ねじ81をナット54又はナット63に螺着させる。これにより、固定部材70と異なる方法で固定することができる。本形態では、ねじ81を扉枠60の前板部61側である前側から螺着できるように配置されているが、前後どちらからでも螺着することができるので、緊急時に通行人等が作業する側にねじ81の頭部84が配置されるようにしておけばよい。
【0049】
図17は、本発明に係る更に他の実施形態を示す正面図である。本形態に係るフェンス本体20は、図13図16に示されたフェンス本体20と比べて、開口枠50と扉枠60とがヒンジ部材90を介して接続されている点が主に異なるものであり、それについて説明する。
【0050】
開口枠50の前板部51の右部と扉枠60の前板部61の右部とがヒンジ部材90を介して連結されている。これにより、ヒンジ部材90を軸として、扉30が前方向に回動可能となり、通行人等が開口部23を通ることができる。本形態は、フェンス本体20の設置箇所が立体駐車場のような高所の外周部に設置された場合、緊急時に立体駐車場の地上側から内部に入ることができない際、内部に入るための経路として利用することができる。特に、立体駐車場の内部に入るために扉を開ける時に、図1図16に示された形態では、扉30が地上に落下してしまう可能性がある。そこでヒンジ部材90を用いることによって、そのような不具合が生じなくなる。なお、落下の危険性をより低減するために、前板部51、61同士を金属ワイヤーで接続しておけば、具体的には、金属ワイヤーの両端部を接続して形成したリング内に、前板部51、61同士が通るように配置して置けば、ヒンジ部材90が外れることがあったとしても、扉30が地面に落下することを防ぐことができる。
【0051】
以上、本発明のフェンスについて、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、フェンスの一部を除去して避難用の開口部を設けるとともに、除去した箇所を通常時に開口部に取付ける扉として利用するものであるので、既設のフェンスについて、特に、容易に乗り越えることができない高さのフェンスについて、緊急時の避難経路の形成する場合に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 支柱
11、12 連結金具
20 フェンス本体
21 縦材
22 横材
23 開口部
24 開口枠
25 前枠材
26 補助枠
27 収納部
27a 上面部
27b 後面部
27c 下面部
27d 貫通孔
30 扉
31 除去部
32 縦材
33 横材
34 格子部
34a 単位格子
35 外周部
36 扉本体
37 扉枠
37a 前板部
37b、37c リブ
37d 貫通孔
38 ナット
39 固定部材
39a 磁石
41 フックボルト
42 ナット
43 ボルト
44 ナット
45 固定手段
45a ねじ
50 開口枠
51 前板部
51a 貫通孔
51b ワッシャ
52 側板部
53 後板部
53a 貫通孔
54 ナット
54a 雌ねじ部
60 扉枠
61 前板部
61a 貫通孔
61b ワッシャ
61c 貫通孔
62 側板部
63 ナット
63a 雌ねじ部
70 固定部材
71 磁石
72 台部
80 固定手段
81 ねじ
82 雄ねじ部
83 棒状部
84 頭部
84a ローレットつまみ
90 ヒンジ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17