(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240227BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20240227BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20240227BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G03G21/00 500
G03G21/00 384
G03G15/16
G03G15/02 102
G03G15/16 103
G03G15/01 Y
(21)【出願番号】P 2020068707
(22)【出願日】2020-04-06
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】砂村 海斗
(72)【発明者】
【氏名】小原 泰成
(72)【発明者】
【氏名】関 浩行
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-074602(JP,A)
【文献】特開2019-074601(JP,A)
【文献】特開2019-086596(JP,A)
【文献】特開2005-352369(JP,A)
【文献】特開2006-047491(JP,A)
【文献】特開2001-125402(JP,A)
【文献】特開2007-286270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/16
G03G 15/02
G03G 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する回転可能な感光体と、
前記感光体の表面を帯電処理する帯電部材と、
前記帯電部材に電圧を印加する帯電電圧印加部と、
前記感光体から一次転写されたトナー像を転写材に二次転写するために搬送する移動可能な中間転写体と、
前記感光体と前記中間転写体の外周面とが接触する一次転写部で前記感光体から前記中間転写体にトナー像を一次転写させる一次転写部材であって、前記中間転写体の移動方向に関して、前記感光体と前記中間転写体との接触領域と、前記一次転写部材と前記中間転写体との接触領域と、が重ならない位置で前記中間転写体の内周面に接触する前記一次転写部材と、
前記一次転写部材に電圧を印加する一次転写電圧印加部と、
を有する画像形成装置において、
前記帯電電圧印加部により前記帯電部材に電圧が印加されることで前記帯電部材に流れる電流を検知する電流検知部と、
非画像形成時に、前記帯電部材により帯電処理され前記一次転写部材に電圧が印加されている状態で前記一次転写部を通過した前記感光体の表面を前記帯電部材により帯電処理している際の前記電流検知部の検知結果を取得する検知動作を実行し、該検知結果に基づく前記一次転写部材と前記感光体との間の放電の発生に関する情報に基づいて前記画像形成装置の動作設定を変更することが可能な制御部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記情報に基づいて、画像形成時の動作設定を、第1のモードと、第2モードと、の間で切り替えることが可能であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検知動作において前記電流検知部により検知された電流の絶対値が所定の閾値未満の場合は画像形成時の動作設定を前記第1のモードとし、該検知動作において前記電流検知部により検知された電流の絶対値が該閾値以上の場合は画像形成時の動作モードを前記第2のモードとすることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1のモードにおける前記一次転写電圧印加部が前記一次転写部材に印加する電圧の絶対値よりも、前記第2のモードにおける前記一次転写電圧印加部が前記一次転写部材に印加する電圧の絶対値の方が小さいことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1のモードにおける前記帯電部材により帯電処理された前記感光体の表面の帯電電位の絶対値よりも、前記第2のモードにおける前記帯電部材により帯電処理された前記感光体の表面の帯電電位の絶対値の方が小さいことを特徴とする請求項3又は4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1のモードにおけるプロセススピードよりも、前記第2のモードにおけるプロセススピードの方が遅いことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記情報に基づいて、前記画像形成装置の内部の温度を上昇させる暖気運転を実行することが可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記検知動作において前記電流検知部により検知された電流の絶対値が所定の閾値以上の場合に前記暖気運転を実行することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記画像形成装置は、前記一次転写部の電気抵抗と相関する指標値を検知する電気抵抗検知部を有し、
前記制御部は、前記電気抵抗検知部の検知結果に基づいて前記検知動作を実行するか否かを切り替えることが可能であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記電気抵抗検知部の検知結果が示す前記一次転写部の電気抵抗が所定の閾値以上の場合に、前記検知動作を実行することを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記画像形成装置は、前記中間転写体の温度と相関する指標値を検知する温度検知部を有し、
前記制御部は、前記温度検知部の検知結果に基づいて前記検知動作を実行するか否かを切り替えることが可能であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記温度検知部の検知結果が示す前記中間転写体の温度が所定の閾値以上の場合に、前記検知動作を実行することを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記画像形成装置は、前記一次転写部の電気抵抗と相関する指標値を検知する電気抵抗検知部と、前記中間転写体の温度と相関する指標値を検知する温度検知部と、を有し、
前記制御部は、
前記電気抵抗検知部の検知結果が示す前記一次転写部の電気抵抗が所定の電気抵抗閾値以上の場合に前記検知動作を実行し、該検知動作において前記電流検知部により検知された電流の絶対値が所定の電流閾値未満の場合は動作設定を前記第1のモードとして画像形成を実行し、該検知動作において前記電流検知部により検知された電流の絶対値が該電流閾値以上の場合は動作設定を前記第2のモードとして画像形成を実行し、
前記第2のモードで画像形成を実行した場合に、前記温度検知部の検知結果が示す前記中間転写体の温度が所定の温度閾値以上となった場合に、前記検知動作を実行し、該検知動作において前記電流検知部により検知された電流の絶対値が前記電流閾値未満の場合は動作設定を前記第1のモードに変更して後続の画像形成を実行し、該検知動作において前記電流検知部により検知された電流の絶対値が前記電流閾値以上の場合は動作設定を前記第2のモードに維持して後続の画像形成を実行することを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記中間転写体は、イオン導電材料を含有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記一次転写部材は、前記中間転写体の移動方向に関して、前記感光体と前記中間転写体との接触領域よりも、前記一次転写部材と前記中間転写体との接触領域の方が下流側に位置するように配置されることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いたプリンター、複写機、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた複写機、ページプリンターなどの画像形成装置として、感光体上に形成されたトナー像が中間転写体上に一次転写された後に記録用紙などの転写材に二次転写される中間転写方式を採用したものが知られている。中間転写体としては、無端状のベルトで構成された中間転写ベルトが用いられることが多い。フルカラー画像の形成が可能なカラー画像形成装置では、中間転写体の搬送方向に沿って複数の感光体が並べて配置され、各感光体上に形成された異なる色のトナー像が、中間転写体上に重ね合わされるようにして一次転写される。
【0003】
このような画像形成装置では、色ずれの発生を抑制して高画質化を図るなどの理由から、中間転写体の走行安定性の向上が求められている。中間転写体の走行安定性を乱す要因として、一次転写部における感光体と中間転写体との当接圧(一次転写圧)がある。
【0004】
一次転写部材を感光体に対して中間転写体の搬送方向下流側にオフセットさせて配置し、一次転写部材が中間転写体を介して感光体に圧接しないようにすることで、一次転写圧を小さくした画像形成装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、画像形成装置には、高画質化の他に長寿命化も求められている。一般的に、中間転写体は、繰り返し使用量の増加に伴い電気抵抗が上昇する。そのため、画像形成装置の長寿命化のためには、中間転写体が高抵抗化した場合でも高品質の画像を形成できることが求められる。
【0007】
しかしながら、上述のように一次転写部材を中間転写体を介して感光体に圧接しない位置に配置した構成では、例えば寿命末期かつ低温低湿環境下などで中間転写体が高抵抗化した状況などにおいて、異常放電による画像不良が発生する可能性がある。つまり、この構成の場合、上述のような状況などにおいて、一次転写部材に比較的高い一次転写電圧を印加する必要が生じることがあり、その場合に一次転写部材と感光体との間で異常放電が発生しやすくなり、異常放電による画像不良が発生しやすくなる。
【0008】
したがって、本発明は、一次転写部材を中間転写体を介して感光体に圧接しない位置に配置した構成において、異常放電による画像不良を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像を担持する回転可能な感光体と、前記感光体の表面を帯電処理する帯電部材と、前記帯電部材に電圧を印加する帯電電圧印加部と、前記感光体から一次転写されたトナー像を転写材に二次転写するために搬送する移動可能な中間転写体と、前記感光体と前記中間転写体の外周面とが接触する一次転写部で前記感光体から前記中間転写体にトナー像を一次転写させる一次転写部材であって、前記中間転写体の移動方向に関して、前記感光体と前記中間転写体との接触領域と、前記一次転写部材と前記中間転写体との接触領域と、が重ならない位置で前記中間転写体の内周面に接触する前記一次転写部材と、前記一次転写部材に電圧を印加する一次転写電圧印加部と、を有する画像形成装置において、前記帯電電圧印加部により前記帯電部材に電圧が印加されることで前記帯電部材に流れる電流を検知する電流検知部と、非画像形成時に、前記帯電部材により帯電処理され前記一次転写部材に電圧が印加されている状態で前記一次転写部を通過した前記感光体の表面を前記帯電部材により帯電処理している際の前記電流検知部の検知結果を取得する検知動作を実行し、該検知結果に基づく前記一次転写部材と前記感光体との間の放電の発生に関する情報に基づいて前記画像形成装置の動作設定を変更することが可能な制御部と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一次転写部材を中間転写体を介して感光体に圧接しない位置に配置した構成において、異常放電による画像不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】異常放電の発生メカニズムを説明するための模式図である。
【
図5】一次転写電圧と一次転写効率との関係を示すグラフ図である。
【
図7】中間転写ベルトの温度と一次転写部のインピーダンスとの関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0013】
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することのできる、中間転写方式を採用したタンデム型(インライン方式)のレーザービームプリンターである。
【0014】
画像形成装置100は、複数の画像形成部(ステーション)として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成部PY、PM、PC、PKを有する。各画像形成部PY、PM、PC、PKにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを表す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。
図2は、代表して1つの画像形成部Pを示す概略断面図である。本実施例では、画像形成部Pは、後述する感光ドラム1(1Y、1M、1C、1K)、帯電ローラ2(2Y、2M、2C、2K)、露光装置3(3Y、3M、3C、3K)、現像装置4(4Y、4M、4C、4K)、一次転写ローラ5(5Y、5M、5C、5K)、ドラムクリーニング装置6(6Y、6M、6C、6K)などを有して構成される。
【0015】
トナー像を担持する像担持体としての、回転可能なドラム状(円筒形)の電子写真感光体(感光体)である感光ドラム1は、図中矢印R1方向(時計回り)に、所定の周速度で回転駆動される。本実施例では、例えば転写材Sが普通紙の場合には、感光ドラム1は300mm/sの周速度で回転駆動される。回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段としてのローラ状の帯電部材である帯電ローラ2によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に帯電処理される。帯電処理時に、帯電ローラ2には、帯電電圧印加部(帯電電源)70から所定の負極性の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。なお、本実施例では、画像形成装置100は、帯電ローラ2(帯電電圧印加部70)に流れる電流を帯電電流検知部71で検知できるように構成されている。本実施例では、帯電電圧印加部70及び帯電電流検知部71は、各画像形成部Pに対してそれぞれ個別に設けられている。帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光手段としての露光装置(レーザースキャナーユニット)3によって画像信号に基づいて走査露光され、感光ドラム1上に静電潜像(静電像)が形成される。感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像が形成される。現像装置4は、現像剤担持体としての現像ローラ41と、トナーを収容するトナー容器42と、を有する。現像時に、現像ローラ41には、現像電圧印加部(現像電源)(図示せず)から所定の負極性の現像電圧(現像バイアス)が印加される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する(反転現像)。
【0016】
各画像形成部Pの各感光ドラム1と接触して移動可能(回転可能)なように、可撓性を有する無端状のベルトで構成された中間転写ベルト8が配置されている。中間転写ベルト8は、像担持体から一次転写されたトナー像を転写材に二次転写するために搬送する中間転写体の一例である。中間転写ベルト8は、複数の張架ローラ(支持部材)としての駆動ローラ9と従動ローラ10とに掛け回されて、所定の張力で張架されている。中間転写ベルト8は、駆動ローラ9が回転駆動されることによって、図中矢印R2方向(反時計回り)に、感光ドラム1の周速度(表面の移動速度)に対応した周速度(表面の移動速度)で回転(周回移動)する。本実施例では、例えば転写材Sが普通紙の場合には、中間転写ベルト8は、感光ドラム1の周速度に対応した300mm/sの周速度で回転(周回移動)する。中間転写ベルト8の内周面側には、各感光ドラム1に対応して、一次転写手段としてのローラ状の一次転写部材である一次転写ローラ5が配置されている。本実施例では、一次転写ローラ5は、対応する感光ドラム1に対して中間転写ベルト8の搬送方向(表面の移動方向)下流側にオフセットされて配置されている。つまり、一次転写ローラ5は、中間転写ベルト8の搬送方向に関して、感光ドラム1と中間転写ベルト8との接触領域と、一次転写ローラ5と感光ドラム1との接触領域とが重ならないように配置されている。また、一次転写ローラ5は、一次転写ローラ5と中間転写ベルト8との接触領域が、感光ドラム1と中間転写ベルト8との接触領域よりも、中間転写ベルト8の搬送方向下流側に位置するように配置されている。これにより、一次転写ローラ5は、中間転写ベルト8を介して、対応する感光ドラム1に圧接しない位置に配置されている。一次転写ローラ5は、中間転写ベルト8を感光ドラム1に向けて押圧するように付勢され、感光ドラム1と中間転写ベルト8とが接触する一次転写部N1を形成する。上述のように感光ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写部N1において、回転している中間転写ベルト8上に一次転写される。一次転写時に、一次転写ローラ5には、一次転写電圧印加部(一次転写電源)50からトナーの正規の帯電極性(現像時のトナーの帯電極性)とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。なお、本実施例では、画像形成装置100は、一次転写部N1(一次転写電圧印加部50)に流れる電流を一次転写電流検知部51で検知できるように構成されている。本実施例では、一次転写電圧印加部50及び一次転写電流検知部51は、各画像形成部Pに対してそれぞれ個別に設けられている。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1Y、1M、1C、1K上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト8上に重ね合わされるようにして順次一次転写される。
【0017】
中間転写ベルト8の外周面側において、二次転写対向ローラを兼ねる駆動ローラ9と対向する位置には、二次転写手段としてのローラ状の二次転写部材である二次転写ローラ11が配置されている。二次転写ローラ11は、中間転写ベルト8を介して駆動ローラ9に向けて押圧され、中間転写ベルト8と二次転写ローラ11とが接触する二次転写部N2を形成する。上述のように中間転写ベルト8上に形成されたトナー像は、二次転写部において、中間転写ベルト8と二次転写ローラ11とに挟持されて搬送されている記録用紙などの転写材(記録材、シート)S上に二次転写される。二次転写時に、二次転写ローラ11には、二次転写電圧印加部(二次転写電源)(図示せず)からトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。転写材Sは、転写材カセット13に積載して収納されており、給搬送装置12の給送ローラ14によって転写材カセット13から給送され、給搬送装置12の搬送ローラ対15によってレジストローラ対16へと搬送される。そして、この転写材Sが、レジストローラ対16によって、中間転写ベルト8上のトナー像とタイミングが合わされて二次転写部N2に供給される。本実施例では、例えば転写材Sが普通紙の場合には、転写材Sは中間転写ベルト8の周速度に対応した300mm/sの搬送速度で搬送される。
【0018】
トナー像が転写された転写材Sは、定着手段としての定着装置17へと搬送される。定着装置17は、未定着のトナー像を担持した転写材Sを加熱及び加圧することで、転写材Sの表面にトナー像を定着(溶融、固着)させる。その後、転写材Sは、排出ローラ対18によって、画像形成装置100の装置本体110の外部に設けられた排出トレイ19上に排出(出力)される。
【0019】
また、一次転写時に感光ドラム1上に残留した一次転写残トナーは、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6によって感光ドラム1上から除去されて回収される。ドラムクリーニング装置6は、クリーニング部材としてのドラムクリーニングブレード61と、回収トナー容器62と、を有する。ドラムクリーニング装置6は、ドラムクリーニングブレード61によって、回転する感光ドラム1の表面から一次転写残トナーを掻き取って、回収トナー容器62内に収容する。ドラムクリーニングブレード61は、感光ドラム1の回転方向に対してカウンター方向となるように感光ドラム1の表面に当接している。また、二次転写時に中間転写ベルト8上に残留したトナー(二次転写残トナー)や転写材Sから中間転写ベルト8に付着した紙粉などの付着物は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置20によって中間転写ベルト8上から除去されて回収される。ベルトクリーニング装置20は、クリーニング部材としてのベルトクリーニングブレード21と、回収トナー容器22と、を有する。ベルトクリーニング装置20は、ベルトクリーニングブレード21によって、回転する中間転写ベルト8の表面から二次転写残トナーを掻き取って、回収トナー容器22内に収容する。ベルトクリーニングブレード21は、中間転写ベルト8の回転方向に対してカウンター方向となるように中間転写ベルト8の表面に当接している。
【0020】
画像形成装置100は、制御部(コントローラ)80を有する。制御部80は、演算制御手段としてのCPU、記憶手段としてのROMやRAMなどのメモリ、制御部80と各部との信号の入出力を制御する入出力回路などを有して構成される。制御部80は、CPUがメモリに記憶されたプログラムやデータに基づいた処理を実行することで、画像形成装置100の各部の動作を統括的に制御する。制御部80は、画像形成装置100に接続された、画像読取装置やパーソナルコンピュータなどの外部装置から入力される画像情報に基づいて、画像形成装置100の各部を制御して画像形成を実行させる。
【0021】
また、画像形成装置100は、画像形成装置100の内部又は外部の少なくとも一方の温度又は湿度の少なくとも一方を検知する環境検知手段として、画像形成装置100の装置本体110の内部(機内)の温度を検知する機内温度センサ90を有する。機内温度センサ90は、機内温度を検知して、その検知結果に関する信号を制御部80へと出力する。
【0022】
なお、本実施例では、各画像形成部Pにおいて、感光ドラム1と、これに作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置4及びドラムクリーニング装置6とは、一体的に装置本体110に対して着脱自在なプロセスカートリッジ7を構成している。また、本実施例では、中間転写ベルト8、駆動ローラ9、従動ローラ10、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kなどは、一体的に装置本体110に対して着脱可能な中間転写ユニット30を構成している。
【0023】
また、本実施例で用いたトナーは、平均粒径が5~8μmのほぼ球形のトナー(一成分非磁性現像剤)である。本実施例では、一次転写と二次転写との合計2回の転写が行われるため、トナーとして転写性の良好な球形トナーを用いている。本実施例で用いたトナーは、重合法によって製造される。このトナーは、製造法上略球形となる。また、本実施例で用いたトナーは、コアにワックスを内包しており、そのコア上の結着樹脂層にスチレン-ブチルアクリレートが用いられ、その上の最外殻の樹脂層にスチレン-ポリエステルが用いられている。また、帯電性能の安定化及び潤滑性の付与のために、トナーには外添剤が添加されている。なお、トナーの結着樹脂としては、スチレン系樹脂及びアクリル系樹脂からなるビニル系共重合体や、ポリエステル樹脂などを使用することが可能である。
【0024】
2.転写構成
本実施例では、上述のように、一次転写ローラ5は、中間転写ベルト8を介して対応する感光ドラム1に圧接しない位置に配置されている。特に、本実施例では、一次転写ローラ5は、感光ドラム1に対して中間転写ベルト8の搬送方向下流側にオフセットされて配置されている。本実施例では、一次転写ローラ5は、金属で構成された金属ローラで構成されている。特に、本実施例では、一次転写ローラ5として、SUM材(快削鋼)にメッキを施した外径6mmのものを用いた。なお、一次転写ローラ5は、SUM材の他にAl(アルミニウム)やSUS(ステンレス鋼)などを用いて形成してもよい。本実施例では、各画像形成部Pにおいて、中間転写ベルト8の搬送方向に関する、感光ドラム1と中間転写ベルト8との接触領域の下流側の端部から、一次転写ローラ5と中間転写ベルト8との接触領域の上流側の端部までの間の距離は、3mmである。
【0025】
一次転写ローラ5を中間転写ベルト8を介して感光ドラム1に圧接しない位置に配置することで、一次転写圧を小さくして、中間転写ベルト8の走行安定性を向上させやすい。また、一次転写ローラ5を中間転写ベルト8を介して感光ドラム1に圧接しない位置に配置することで、一次転写ローラ5として金属ローラを使用することが可能となり、発泡ローラなどを使用する構成に比べてコストを低減しやすい。また、本実施例では、一次転写ローラ5は、感光ドラム1に対して中間転写ベルト8の搬送方向下流側にオフセットされて配置されている。これにより、中間転写ベルト8の搬送方向に関して一次転写部N1の上流側において感光ドラム1と中間転写ベルト8との間で生じる放電(プレ放電)を抑制して、画像の乱れを低減しやすい。
【0026】
また、本実施例では、中間転写ベルト8は、基層と、表層と、を有する。特に、本実施例では、中間転写ベルト8は、基層と、基層上に形成された表層と、の2層で構成されている。表層は、基層よりも中間転写ベルト8の外周面側に設けられた層であって、感光ドラム1から転写されたトナーを担持(保持)する面を有する層である。
【0027】
本実施例では、中間転写ベルト8は、厚さが70μm、体積抵抗率が1.0×109Ω・cm、表面抵抗率が1.0×1010Ω/□である。この電気的特性の測定は、Hiresta・UP MCP-HT450(三菱化学社製)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、印加電圧250Vで行った。なお、表面抵抗率は、中間転写ベルト8の裏面側(内周面側)から測定した値である。
【0028】
本実施例では、中間転写ベルト8の基層として、ポリエチレンナフタレートを使用して形成されたベルトを用いた。中間転写ベルト8の基層に使用する材料としては、上記の他に、例えば、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン-1、ポリスチレン、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルニトリル、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、サーモトロピック液晶ポリマー、ポリアミド酸などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは混合して2種以上使用することもできる。また、本実施例では、中間転写ベルト8の基層の基材(上記熱可塑性樹脂など)中に、導電材料としてイオン導電材料が熔融混煉される。本実施例では、イオン導電材料として、イオン液体を用いた。ただし、これに限定されるものではなく、イオン導電材料としては、上記の他に、導電性オリゴマー及び第4級アンモニウム塩などが挙げられる。なお、導電材料としては電子導電材料を用いてもよいし、電子導電材料とイオン導電材料とを用いてもよい。電子導電材料としては、例えば、粒子状、繊維状又はフレーク状のカーボン系導電性フィラーや、粒子状、繊維状又はフレーク状の金属系導電性フィラーや、粒子状の金属酸化物系導電性フィラーが挙げられる。
【0029】
中間転写ベルト8の表層としては、中間転写ベルト8の表面硬度を高め、耐久性(耐摩耗性)を向上させる観点から、熱硬化性、又は紫外線や電子線などのエネルギー線の照射によって硬化する硬化性材料が用いられる。特に、硬化性の高い紫外線や電子線などで硬化する硬化性材料が好ましいが、これに限定されるものではない。本実施例では、硬化性材料として、アクリル樹脂を用いた。ただし、これに限定されるものではなく、上記の他に、有機材料としては、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、フッ素性硬化性樹脂などの硬化性樹脂が挙げられる。無機材料としては、アルコキシシラン・アルコキシジルコニウム系材料、ケイ酸塩系材料などが挙げられる。有機・無機ハイブリッド材料としては、無機微粒子分散有機高分子系材料、無機微粒子分散オルガノアルコキシシラン系材料、アクリルシリコン系材料、オルガノアルコキシシラン系材料などが挙げられる。中間転写ベルト8の表層の耐摩耗性、耐クラック性などの観点から硬化性材料の中でも樹脂材料が好ましく、硬化性樹脂の中でも不飽和二重結合含有アクリル共重合体を硬化させて得られるアクリル樹脂が好ましい。不飽和二重結合含有アクリル共重合体は、例えば、アクリル系紫外線硬化型ハードコート材料であるルシフラール(商品名、日本ペイント社製)として入手可能である。
【0030】
3.一次転写電圧制御
本実施例では、画像形成装置100は、中間転写ベルト8の環境変動、電気抵抗ムラなどを補正して安定して最適な一次転写電圧を印加できるように、一次転写電圧制御を行う。本実施例では、画像形成装置100は、一次転写電圧制御として、所謂ATVC制御(Auto Transfer Voltage Controll)により画像形成時の一次転写電圧を決定する制御を行う。つまり、非画像形成時としての画像形成前の前回転動作時などにおいて、感光ドラム1上の非画像部が一次転写部N1を通過しているときに、一次転写ローラ5に印加する電圧を予め設定された電流値で定電流制御する。このときの発生電圧値の変動により、一次転写部N1におけるインピーダンス変動を検知することができる。そして、画像成時には、先の発生電圧値を演算処理して決定した電圧値で一次転写ローラ5に印加する電圧の定電圧制御を行う。上記演算処理としては、上記発生電圧値の平均値を求めたり、更にその平均値に所定の係数を乗じたりすることが行われる。このような制御により、画像形成時には適切な一次転写電圧が印加できるようになり、安定して良好な画像の出力が可能となる。
【0031】
なお、ATVC制御は、複数の画像形成部Pのうち少なくとも1つの画像形成部Pで行うことができる。複数の画像形成部Pのうちいずれか1つの画像形成部Pで行ってもよいし、複数(全部でもよい)の画像形成部Pで行ってもよい。ATVC制御を複数の画像形成部Pのうちいずれか1つの画像形成部P(例えばブラック用の画像形成部PK)で行う場合は、その結果を全ての画像形成部Pに反映させることができる。このとき、その結果に基づいて全ての画像形成部Pで同じ一次転写電圧値を設定してもよいし、その結果に基づいて少なくとも1つの画像形成部P(全部でもよい)で異なる一次転写電圧値を設定してもよい。また、ATVC制御を複数の画像形成部Pで行う場合は、各画像形成部で得られた結果に基づいて各画像形成部Pの一次転写電圧をそれぞれ設定すればよい。
【0032】
ここで、画像形成装置100は、1つの開始指示により開始される、単一又は複数の転写材Sに画像を形成して出力する一連の動作であるジョブ(印刷ジョブ、プリントジョブ)を実行する。ジョブは、一般に、画像形成工程、前回転工程、複数の転写材Sに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に転写材Sに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の一次転写、二次転写を行う期間であり、画像形成時とはこの期間のことをいう。より詳細には、画像形成時のタイミングは、上記静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の一次転写、二次転写の各工程を行う位置で異なり、感光ドラム1上や中間転写ベルト8上の画像領域が上記各位置を通過している期間に相当する。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の転写材Sに対する画像形成を連続して行う際(連続印刷、連続画像形成)の転写材Sと転写材Sとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。より詳細には、非画像形成時のタイミングは、感光ドラム1上や中間転写ベルト8上の非画像領域が、上記静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の一次転写、二次転写の各工程を行う各位置を通過している期間に相当する。なお、感光ドラム1上や中間転写ベルト8上の画像領域とは、転写材Sに転写されて画像形成装置100から出力される画像が形成され得る領域であり、非画像領域は画像領域以外の領域である。
【0033】
本実施例では、制御部80は、一次転写電圧制御を、典型的には、前回転工程、あるいは前多回転工程で実行する。ただし、これに限定されるものではなく、一次転写電圧制御は、紙間工程や後回転工程で実行してもよい。また、本実施例では、制御部80は、後述する帯電電流Iを測定する動作(異常放電発生有無検知動作)を、典型的には、前回転工程、あるいは前多回転工程で実行する。ただし、これに限定されるものではなく、帯電電流Iを測定する動作は、紙間工程や後回転工程で実行してもよい。
【0034】
4.異常放電の発生のメカニズム
図3は、一次転写部N1の近傍を拡大した模式的な断面図である。一次転写ローラ5と感光ドラム1との間で高い電位差が生じた場合に、一次転写ローラ5と感光ドラム1との間で異常放電が発生することがある。この異常放電を受けた感光ドラム1上の領域の電位は、感光ドラム1の正規の帯電極性とは逆極性である正極性の電位となることがある。そして、この異常放電を受けた感光ドラム1上の領域には、帯電ローラ2によって帯電処理された後も上記電位の反転の履歴が残り、現像ローラ41によってトナーが供給されて放電跡として現像されることがある。つまり、本実施例の構成で言えば、上記放電を受けた感光ドラム1上の領域は、帯電ローラ2による帯電処理後も、その周囲の領域よりも電位の絶対値が小さくなる(より絶対値が小さい負極性の電位までしか帯電処理できない)。そのため、露光装置3により露光されて電位の絶対値が低下させられる画像部と同様に、上記放電を受けた領域にもトナーが付着してしまう。また、上記放電を受けた感光ドラム1上の領域が画像部となる場合でも、露光装置3による露光後の電位が周囲の画像部の電位と異なることで、画像ムラが生じることがある。
【0035】
イオン導電材料を含有する中間転写ベルト8は、低温低湿環境下や、繰り返し使用量の増加によって、電気抵抗が上昇しやすい。特に、一次転写ローラ5が中間転写ベルト8を介して感光ドラム1に圧接しない位置に配置された構成では、おおよそ中間転写ベルト8の電気抵抗が一次転写部N1のインピーダンスとなる。そのため、上述のように中間転写ベルト8の電気抵抗が上昇した状況では、所望の一次転写電流を供給するために一次転写ローラ5と感光ドラム1との間で高い電位差が必要となり、上述のような異常放電が発生しやすくなる。
【0036】
ここでは、上述のようなメカニズムにより一次転写ローラ5と感光ドラム1との間に発生する異常放電を、単に「異常放電」と呼ぶことがある。
【0037】
5.異常放電発生有無検知
本実施例における中間転写ベルト8は、温度15℃、相対湿度10%の環境下(低温低湿環境下)では、表面抵抗率が1.0×1010.7Ω/□であり、一次転写電圧の値によっては、異常放電が発生する可能性がある。なお、この表面抵抗率は、中間転写ベルト8を15万枚の印刷に使用した後の表面抵抗率である。表面抵抗率の測定方法は前述の方法と同様である。
【0038】
異常放電が発生すると、感光ドラム1の電位が正極性に反転するため、その分だけ帯電電流検知部71で検知される帯電電流が増加する。表1は、本実施例の構成における、異常放電の発生の有無と、帯電電流検知部71で検知される帯電電流Iと、の関係を示す。この帯電電流Iとしては、感光ドラム1上の所謂べた白画像(非画像部)に対して一次転写電圧を印加した際の、感光ドラム1の1周分の帯電電流を平均した値を用いた。本実施例では、この帯電電流Iを求める動作には約4秒かかる。
【0039】
なお、帯電電流Iの測定は、精度の向上の観点から、感光ドラム1の1周分以上にわたり行うことが好ましいが、これに限定されるものではなく、十分な精度で異常放電の発生の有無を検知できればよい。また、この帯電電流Iの測定のための感光ドラム1の回転回数は、制御時間が長くなりすぎないように、典型的には5周以下、好ましくは3周以下である。ここで、上記感光ドラム1の1周分とは、より詳細には、画像形成時と同等の所定の帯電電位に帯電処理された感光ドラム1上の位置が一次転写部N1を通過した後に再び帯電位置に到達した後の感光ドラム1の1周分である。ここで、帯電位置とは、感光ドラム1の回転方向に関する、帯電ローラ2により感光ドラム1の表面の帯電処理が行われる位置である。本実施例では、帯電ローラ2と感光ドラム1との接触部の感光ドラム1の回転方向上流側及び下流側における帯電ローラ2と感光ドラム1との微小間隔のうちの少なくとも一方で生じる放電によって感光ドラム1の表面の帯電処理が行われる。ただし、簡単のため、帯電ローラ2と感光ドラム1との接触部を帯電位置とみなしてもよい。
【0040】
異常放電が発生すると、帯電電流Iが増加し60μA以上流れる。したがって、異常放電の発生の有無は、帯電電流Iの閾値Ithを60μAに設定することで検知することができる。つまり、帯電電流Iが60μA以上の場合は、異常放電の発生有りと判断することができる。また、帯電電流Iが60μA未満の場合は、異常放電の発生無しと判断することができる。異常放電の発生に伴い帯電電流Iは安定して大きくなる方向に変化する傾向があるので、帯電電流Iを指標として用いることで、異常放電の発生を容易に検知することができる。
【0041】
【0042】
なお、帯電電流Iの閾値Ithは、異常放電の発生の有無を判断できるように適宜変えてもよい。例えば、本発明を適用する画像形成装置100の構成などに応じて、異常放電の発生の有無を判断できるように閾値Ithを適宜変えてもよい。また、画像形成装置100において、例えば環境や画像形成装置100(感光ドラム1など)の繰り返し使用量などに応じて、その時点で異常放電の発生の有無を判断できるように閾値Ithを適宜変更してもよい。なお、環境は、画像形成装置100の内部又は外部の少なくとも一方の温度又は湿度の少なくとも一方であってよい。
【0043】
6.異常放電抑制モードへの切り替え制御
本実施例では、画像形成装置100は、印刷モード(プリントモード)として、通常モード(第1のモード)と、異常放電抑制モード(第2のモード)と、を用いて印刷(プリント)を行うことが可能なように構成されている。ここでは、印刷モードの切り替え手順について説明し、通常モード及び異常放電抑制モードの内容については後述する。
【0044】
図4は、1つのジョブの実行中の通常モードと異常放電抑制モードとの切り替え動作(処理)の手順の概略を示すフローチャート図である。制御部80は、帯電電流検知部71による帯電電流Iの検知結果を取得する(S101)。次に、制御部80は、帯電電流Iが閾値Ith以上か否か(異常放電が発生しているか否か)を判断する(S102)。制御部80は、S102で帯電電流Iが閾値Ith以上(I≧Ith)である(異常放電が発生している)と判断した場合は、異常放電抑制モードで印刷を行う(S103)。そして、制御部80は、ジョブの最後の画像まで異常放電抑制モードで印刷を行うことを繰り返し(S104)、ジョブの最後の画像まで印刷したらジョブを終了する。一方、制御部80は、S102で帯電電流Iが閾値Ith以上ではない、すなわち、閾値Ith未満(I<Ith)である(異常放電が発生していない)と判断した場合は、通常のモードで印刷を行う(S105)。そして、制御部80は、ジョブの最後の画像まで通常モードで印刷を行うことを繰り返し(S106)、ジョブの最後の画像まで印刷したらジョブを終了する。なお、通常モード又は異常放電抑制モードで1枚の画像を印刷した後に、毎回帯電電流を検知する処理(S101)に戻ることも可能である。
【0045】
より具体的には、本実施例では、制御部80は、ジョブを開始する際に、前回転工程あるいは前多回転工程において一次転写電圧制御を実行して、通常モードにおける一次転写電圧を決定する。また、制御部80は、ジョブを開始する際に、前回転工程あるいは前多回転工程において、後述する通常モードのプロセススピード及び一次転写電圧制御で決定した通常モードにおける一次転写電圧の設定で、上述のようにして帯電電流Iの測定を行う。これにより、制御部80は、一次転写ローラ5と感光ドラム1との間での異常放電の発生の有無を検知する(S102)。帯電電流Iの測定では、感光ドラム1を帯電処理し、帯電処理した感光ドラム1の表面(べた白画像)を、一次転写ローラ5に一次転写電圧を印加した状態で一次転写部N1を通過させる。そして、前述のよう帯電電流Iを求めるのに十分な期間(本実施例では約4秒)だけ、上述のようにして一次転写部N1を通過させた感光ドラム1の表面が帯電位置を通過するようにする。そして、異常放電の発生の有無の検知結果に応じて、通常モード又は異常放電抑制モードでの印刷を開始する(S103~S106)。
【0046】
なお、異常放電発生有無検知(帯電電流の測定)は、複数の画像形成部Pのうち少なくとも1つの画像形成部Pで行うことができる。複数の画像形成部Pのうちいずれか1つの画像形成部P(例えばブラック用の画像形成部PK)で行ってもよいし、複数(全部でもよい)の画像形成部Pで行ってもよい。異常放電発生有無検知を複数の画像形成部Pで行う場合は、所定の数以上(例えば1つ以上)の画像形成部で異常放電が発生していることが検知された場合に、異常放電抑制モードに切り替えることができる。あるいは、帯電電流の測定(異常放電発生有無検知)を複数の画像形成部Pで行う場合に、各画像形成部Pで得られた帯電電流Iの測定結果に基づいて平均値(あるいは最大値や最小値)などの代表値を求めて、異常放電発生有無の判断に用いることができる。本実施例では、異常放電発生有無検知(帯電電流の測定)を全ての画像形成部Pで行い、1つの画像形成部Pでも異常放電が発生していることが検知された場合には、異常放電抑制モードに切り替える。
【0047】
7.異常放電抑制モード
異常放電は、一次転写ローラ5と感光ドラム1との間の電位差が大きいほど発生しやすい。したがって、本実施例では、異常放電抑制モードでは、通常モードよりも一次転写ローラ5に印加する一次転写電圧の絶対値を小さくする制御を行う。
【0048】
異常放電抑制モードでは更に、通常モードよりもプロセススピードを遅くすることができる。なお、本実施例では、中間転写ベルト8の周速度(及びこれに対応する感光ドラム1の周速度)が画像形成装置100のプロセススピードに相当する。つまり、上述のように一次転写電圧の絶対値を小さくすることで異常放電を抑制する効果が得られる。しかし、一次転写電圧の絶対値を通常最適値に設定されている通常モードにおける一次転写電圧の絶対値よりも小さくすると、画像によっては一次転写効率が低下して画質劣化を引き起こす可能性がある。
【0049】
図5は、本実施例の構成における、プロセススピードが300mm/sの場合と100mm/sの場合とでの、一次転写電圧と一次転写効率との関係を示すグラフ図である。一次転写効率は、感光ドラム1上に形成されたトナー像のトナーの総量のうち中間転写ベルト8に一次転写されたトナーの量の割合(百分率)である。例えば、所定の試験用のトナー像を感光ドラム1上に形成する。そして、一次転写前の感光ドラム1上の該トナー像の画像濃度と、一次転写後に感光ドラム1上に残留した該トナー像の画像濃度とを、該トナー像を透明の粘着テープに転写して市販の画像濃度測定装置を用いて測定する。これにより、一次転写効率を測定することができる。ここでは、温度15℃、相対湿度10%の環境下(低温低湿環境下)で、15万枚の印刷に使用した後の中間転写ベルト8を用いて、一次転写電圧制御で決定される通常モードでの一次転写電圧が2500~3000V程度である場合を例としている。また、このとき、転写材Sとして普通紙を用い、通常モードでのプロセススピードは300mm/sであるものとする。なお、ここでは、この条件を単に「異常放電が発生する条件」ともいう。
【0050】
図5に示すように、プロセススピードが300mm/sの場合に異常放電の発生を回避するために一次転写電圧を2500V以下に下げると、一次転写効率が約96%以下になってしてしまい、画像によっては濃度むらが見える場合がある。一方、プロセススピードを100mm/sまで遅くすると、異常放電の発生を回避するために一次転写電圧を1500Vまで下げても、一次転写効率は約99%のままである。つまり、プロセススピードを100mm/sとすることで、プロセススピードが300mm/sの場合よりも、濃度むらを小さくしつつ、異常放電の発生を回避することができる。このように、プロセススピードを下げて、一次転写電圧を下げることによって、画質劣化を抑制しつつ、異常放電の発生を抑制することできる。
【0051】
表2に異常放電が発生する条件での本実施例の効果を示す。通常モードで印刷する比較例(一次転写電圧2500~3000V、プロセススピード300mm/s)では、異常放電による画像不良が発生してしまう。一方、異常放電抑制モードにおいて一次転写電圧の絶対値を小さくする実施例1-1(一次転写電圧1500V、プロセススピード300mm/s)では、異常放電を抑制することができる。さらに、一次転写電圧を下げると共にプロセススピードを遅くする実施例1-2(一次転写電圧1500V、プロセススピード100mm/s)では、異常放電を抑制することができ、かつ、最適な一次転写効率で一次転写を行うことができる。つまり、実施例1-2では、実施例1-1に比べてより良い画質となる。
【0052】
【0053】
なお、例えば本発明を適用する画像形成装置100の構成などに応じて、上記実施例1-1、実施例1-2のいずれを適用するかを適宜選択してもよいし、これらを組み合わせて適用してもよい。実施例1-1と実施例1-2とを組み合わせる場合、次のようにすることが考えられる。例えば、制御部80が画像情報を取得し、一次転写電圧の絶対値を小さくしても画質劣化が発生しない(あるいは画像劣化が目立ちにくい)画像の場合には、一次転写電圧の絶対値を小さくすることだけを行う実施例1-1を適用する。一方、一次転写電圧の絶対値を小さくするだけでは画質劣化が生じる(あるいは画像劣化が目立ちやすい)画像の場合には、一次転写電圧の絶対値を小さくすることに加えてプロセススピードを遅くすることを行う実施例1-2を適用する。ここで、上記画像劣化が発生しない(あるいは画像劣化が目立ちにくい)画像の一例としては、印字率が所定の閾値未満である低印字率の画像が挙げられる。また、上記画像劣化が発生する(あるいは画像劣化が目立ちやすい)画像の一例としては、印字率が該所定の閾値以上である高印字率の画像が挙げられる。ここで、「印字率」は、単位面積における全ての画素の画像データが最高濃度レベルである場合の画像データの合計を100%とした場合の、該単位面積における画素の画像データの合計の割合(画像比率)である。印字率は、トナー像の該単位面積当たりのトナーの量と相関する。
【0054】
また、異常放電抑制モードにおける一次転写電圧(通常モードとの一次転写電圧の差分)やプロセススピードは、異常放電の発生を抑制できるように適宜変えてもよい。例えば、本発明を適用する画像形成装置100の構成などに応じて、異常放電の発生を抑制できるように異常放電抑制モードにおける一次転写電圧やプロセススピードを適宜変えてもよい。また、画像形成装置100において、環境や画像形成装置100(感光ドラム1など)の繰り返し使用量などに応じて、その時点で異常放電の発生の抑制できるように、異常放電抑制モードにおける一次転写電圧やプロセススピードを適宜変更してもよい。
【0055】
8.効果
以上説明したように、本実施例では、画像形成装置100は、感光体1と中間転写体8の外周面とが接触する一次転写部N1で感光体1から中間転写体8にトナー像を一次転写させる一次転写部材5を有する。この一次転写部材5は、中間転写体8の移動方向に関して、感光体1と中間転写体8との接触領域と、一次転写部材5と中間転写体8との接触領域と、が重ならない位置で中間転写体8の内周面に接触する。そして、この画像形成装置100は、帯電電圧印加部70により帯電部材2に電圧が印加されることで帯電部材2に流れる電流を検知する電流検知部71と、制御部80と、を有する。この制御部80は、非画像形成時に、帯電部材2により帯電処理され一次転写部材5に電圧が印加されている状態で一次転写部N1を通過した感光体1の表面を帯電部材2により帯電処理している際の電流検知部71の検知結果を取得する検知動作を実行し、該検知結果に基づく一次転写部材5と感光体1との間の放電の発生に関する情報に基づいて画像形成装置100の動作設定を変更することが可能である。本実施例では、制御部80は、上記情報に基づいて、画像形成時の動作設定を、第1のモードと、第2モードと、の間で切り替えることが可能である。特に、本実施例では、制御部80は、上記検知動作において電流検知部71により検知された電流の絶対値が所定の閾値未満の場合は画像形成時の動作設定を第1のモードとし、該検知動作において電流検知部71により検知された電流の絶対値が該閾値以上の場合は画像形成時の動作モードを第2のモードとする。本実施例では、第1のモードにおける一次転写電圧印加部50が一次転写部材5に印加する電圧の絶対値よりも、第2のモードにおける一次転写電圧印加部50が一次転写部材5に印加する電圧の絶対値の方が小さい。また、第1のモードにおけるプロセススピードよりも、第2のモードにおけるプロセススピードの方を遅くしてもよい。本実施例では、中間転写体8は、イオン導電材料を含有する。また、本実施例では、一次転写部材5は、中間転写体8の移動方向に関して、感光体1と中間転写体8との接触領域よりも、一次転写部材5と中間転写体8との接触領域の方が下流側に位置するように配置される。
【0056】
本実施例によれば、異常放電の発生の有無を検知し、検知結果に応じて通常モードと異常放電抑制モードとを切り替えて印刷を行うことで、異常放電による画像不良を抑制することができる。
【0057】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1の画像形成装置と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0058】
本実施例は、実施例1の構成に加えて、異常放電発生有無検知の実行可否を、一次転写部N1のインピーダンスの検知結果に応じて切り替えることを行う点が、実施例1と異なる。
【0059】
1.異常放電発生有無検知の実行可否判断
一次転写部N1のインピーダンスは、一次転写ローラ5と感光ドラム1との間のインピーダンスであり、中間転写ベルト8の表面抵抗率に依存する。制御部80は、一次転写部N1のインピーダンスを、一次転写電圧印加部50が出力する電圧の値と、そのときの一次転写電流検知部51で検知された電流の値と、から検知することができる。本実施例では、制御部80は、ジョブを開始する際に、前回転工程、あるいは前多回転工程において、一次転写部N1のインピ―ダンスの検知を行う。この一次転写部N1のインピーダンスの検知動作は、一次転写電圧制御(ATVC制御)と同期して行うことができる。一次転写電圧制御(ATVC制御)において得られる電圧値、電流値の検知結果を用いてもよい。
【0060】
表3は、本実施例の構成における、一次転写部N1のインピーダンスと異常放電の発生の有無と、の関係を示す。インピーダンスRが110MΩ以上になると異常放電が発生しやすくなる。したがって、異常放電発生有無検知の実行可否は、インピーダンスRの閾値Rthを110MΩに設定することで判断することができる。つまり、インピーダンスRが110MΩ以上の場合は、異常放電発生有無検知を実行すべきと判断することができる。また、インピーダンスRが110MΩ未満の場合は、異常放電発生有無検知を実行する必要はないと判断することができる。
【0061】
【0062】
なお、インピーダンスRの閾値Rthは、異常放電発生有無検知の実行可否を判断できるように適宜変えてもよい。例えば、本発明を適用する画像形成装置100の構成などに応じて、異常放電発生有無検知の実行可否を判断できるように閾値Rthを適宜変えてもよい。また、画像形成装置100において、例えば環境や画像形成装置100(感光ドラム1など)の繰り返し使用量などに応じて、その時点で異常放電発生有無検知の実行可否を判断できるように、閾値Rthを適宜変更してもよい。
【0063】
2.異常放電抑制モードへの切り替え制御
図6は、1つのジョブの実行中の通常モードと異常放電抑制モードとの切り替え動作(処理)の手順の概略を示すフローチャート図である。制御部80は、一次転写部N1のインピーダンスRの検知を行う(S201)。具体的には、制御部80は、一次転写電圧印加部50が出力する電圧の値を取得すると共に、一次転写電圧印加部50がその電圧を出力している際に一次転写部N1(一次転写電流検知部51)に流れる電流の値を一次転写電流検知部51から取得する。一次転写電圧印加部50が出力する電圧の値は、制御部80による一次転写電圧印加部50の出力電圧の設定値や、一次転写電圧印加部50が備えた電圧検知部の検知結果から取得することができる。そして、制御部80は、取得した電圧値と電流値とに基づいて一次転写部N1のインピーダンスRを求める。次に、制御部80は、一次転写部N1のインピーダンスRが閾値Rth以上か否か(異常放電発生有無検知の実行可否)を判断する(S202)。制御部80は、S202で一次転写部N1のインピーダンスRが閾値Rth以上ではない、すなわち、閾値Rth未満(R<Rth)である(異常放電発生有無検知を実行しない)と判断した場合は、通常モードで印刷を行う(S203)。そして、制御部80は、ジョブの最後の画像まで通常モードで印刷を行うことを繰り返し(S204)、ジョブの最後の画像まで印刷したらジョブを終了する。
【0064】
一方、制御部80は、S202で一次転写部N1のインピーダンスRが閾値Rth以上(R≧Rth)である(異常放電有無発生検知を実行する)と判断した場合は、帯電電流検知部71による帯電電流Iの検知結果を取得する(S205)。次に、制御部80は、帯電電流Iが閾値Ith以上か否か(異常放電が発生しているか否か)を判断する(S206)。制御部80は、S206で帯電電流Iが閾値Ith以上ではない、すなわち、閾値Ith未満(I<Ith)である(異常放電が発生していない)と判断した場合は、通常モードで印刷を行う(S203)。そして、制御部80は、ジョブの最後の画像まで通常モードで印刷を行うことを繰り返し(S204)、ジョブの最後の画像まで印刷したらジョブを終了する。また、制御部80は、S206で帯電電流Iが閾値Ith以上(I≧Ith)である(異常放電が発生している)と判断した場合は、異常放電抑制モードで印刷を行う(S207)。そして、制御部80は、ジョブの最後の画像まで異常放電抑制モードで印刷を行うことを繰り返し(S208)、ジョブの最後の画像まで印刷したらジョブを終了する。
【0065】
一次転写部N1のインピーダンスRが110MΩ未満の場合について説明する。本実施例の構成では、1回の異常放電発生発生有無検知には約4秒かかるのに対し、一次転写部N1のインピーダンスの検知には0.2秒しかかからない。実施例1では、異常放電発生有無検知を行うので、通常モードで印刷するまでに約4秒かかる。一方、本実施例では、異常放電有無検知を行わず、一次転写部N1のインピーダンスの検知のみを行うため、通常モードで印刷するまでに0.2秒しかかからない。
【0066】
このように、一次転写部N1のインピーダンスの検知結果に応じて異常放電発生有無検知の実行可否を判断することで、異常放電発生有無検知の実行回数を最小限にし、印刷スピードの低下を抑制する(印刷を行えないダウンタイムを低減する)ことができる。
【0067】
なお、帯電電流Iを測定する動作や、通常モード及び異常放電抑制モードの内容は、実施例1で説明したものと同じであるので、重複する説明は省略する。
【0068】
また、一次転写部N1のインピーダンスの検知は、複数の画像形成部Pのうち少なくとも1つの画像形成部Pで行うことができる。複数の画像形成部Pのうちいずれか1つの画像形成部P(例えばブラック用の画像形成部PK)で行ってもよいし、複数(全部でもよい)の画像形成部Pで行ってもよい。複数の画像形成部Pで行う場合は、各画像形成部Pで得られた結果に基づいて平均値(あるいは最大値や最小値)などの代表値を求めて用いることができる。本実施例では、ブラック用の画像形成部PKにおける一次転写部N1のインピーダンスの検知結果を用いる。
【0069】
また、ここでは、一次転写部N1の電気抵抗に関する情報として、一次転写部N1のインピーダンスを取得したが、これに限定されるものではない。一次転写部N1の電気抵抗に関する情報としては、一次転写部N1の電気抵抗(インピーダンス)と相関する指標値であれば用いることができる。例えば、この指標値は、一次転写電圧印加部50が所定の電圧を出力している際に一次転写部N1(一次転写電圧印加部50)に流れる電流の値であってもよい。また、この指標値は、一次転写部N1(一次転写電圧印加部50)に所定の電流を流している際に一次転写電圧印加部50が出力する電圧の値であってもよい。
【0070】
3.効果
以上説明したように、本実施例では、画像形成装置100は、一次転写部N1の電気抵抗と相関する指標値を検知する電気抵抗検知部(本実施例では一次転写電流検知部51)を有し、制御部80は、電気抵抗検知部51の検知結果に基づいて検知動作(異常放電発生有無検知動作)を実行するか否かを切り替えることが可能である。本実施例では、制御部80は、電気抵抗検知部51の検知結果が示す一次転写部N1の電気抵抗が所定の閾値以上の場合に、上記検知動作を実行する。
【0071】
本実施例によれば、実施例1と同様の効果が得られると共に、異常放電発生有無検知の実行回数を低減して、印刷スピードの低下を抑制することができる。
【0072】
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1の画像形成装置と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0073】
本実施例は、実施例2の構成に加えて、異常放電抑制モードで複数枚の連続印刷中に、中間転写ベルト8の昇温を検知した場合に、再度異常放電発生有無検知を行い、異常放電が発生していなければ、通常モードに戻すことを行う点が、実施例2と異なる。
【0074】
1.異常放電抑制モードから通常モードに戻す判断
中間転写ベルト8の温度は、画像形成装置100の装置本体110の内部(機内)の温度と相関が高く、本実施例では機内温度センサ90で検知された機内温度の値と相関が高い。そのため、本実施例では、中間転写ベルト8の温度を検知する中間転写体温度検知手段として、機内温度センサ90を用いた。なお、機内温度と中間転写ベルト8の温度との関係を示す所定のテーブルなどを用いて機内温度から中間転写ベルト8の温度に換算する方法や、画像形成履歴から、中間転写ベルト8の温度を予測する方法などを用いることも可能である。また、中間転写ベルト8の温度を接触又は非接触で直接的に検知する温度センサを用いてもよい。
【0075】
中間転写ベルト8の電気抵抗は温度特性を持つため、中間転写ベルト8の温度によって一次転写部N1のインピーダンスが変化する。本実施例における中間転写ベルト8は、温度15℃、相対湿度10%の環境下(低温低湿環境下)では、表面抵抗率が1.0×1010.7Ω/□である。なお、この表面抵抗率は、中間転写ベルト8を15万枚の印刷に使用した後の表面抵抗率である。
【0076】
図7は、本実施例の構成における、中間転写ベルト8の温度と、一次転写部N1のインピーダンスと、の関係を示すグラフ図である。中間転写ベルト8の温度Tが16℃以上の場合にインピ―ダンスRが110MΩ未満になり、異常放電が発生しなくなる(実施例2の表3参照)。したがって、異常放電抑制モードで連続印刷中に異常放電抑制モードから通常モードに戻すか否かは、中間転写ベルト8の温度Tの閾値Tthを16℃に設定することで判断することができる。つまり、異常放電抑制モードで連続印刷中に中間転写ベルト8の温度Tが16℃以上になった場合に、異常放電発生有無検知の実行可否判断を含めた、異常放電発生有無検知を行うこととすることができる。
【0077】
2.異常放電抑制モードへの切り替え制御
図8は、1つのジョブの実行中の通常モードと異常放電抑制モードとの切り替え動作(処理)の手順の概略を示すフローチャート図である。制御部80は、一次転写部N1のインピーダンスRの検知を行う(S301)。次に、制御部80は、一次転写部N1のインピーダンスRが閾値Rth以上か否か(異常放電発生有無検知の実行可否)を判断する(S302)。制御部80は、S302で一次転写部N1のインピーダンスRが閾値Rth以上ではない、すなわち、閾値Rth未満(R<Rth)である(異常放電発生有無検知を実行しない)と判断した場合は、通常モードで印刷を行う(S303)。そして、制御部80は、ジョブの最後の画像まで通常モードで印刷を行うことを繰り返し(S304)、ジョブの最後の画像まで印刷したらジョブを終了する。
【0078】
一方、制御部80は、S302で一次転写部N1のインピーダンスRが閾値Rth以上(R≧Rth)である(異常放電有無発生検知を実行する)と判断した場合は、帯電電流検知部71による帯電電流Iの検知結果を取得する(S305)。次に、制御部80は、帯電電流Iが閾値Ith以上か否か(異常放電が発生しているか否か)を判断する(S306)。制御部80は、S306で帯電電流Iが閾値Ith以上ではない、すなわち、閾値Ith未満(I<Ith)である(異常放電が発生していない)と判断した場合は、通常モードで印刷を行う(S303)。そして、制御部80は、ジョブの最後の画像まで通常モードで印刷を行うことを繰り返し(S304)、ジョブの最後の画像まで印刷したらジョブを終了する。また、制御部80は、S306で帯電電流Iが閾値Ith以上(I≧Ith)である(異常放電が発生している)と判断した場合は、異常放電抑制モードで印刷を行う(S307)。次に、制御部80は、機内温度センサ90による機内温度の検知結果に基づいて中間転写ベルト8の温度Tを取得し、中間転写ベルト8の温度Tが閾値Tth以上か否かを判断する(S308)。上述のように、制御部80は、機内温度センサ90による機内温度の検知結果を中間転写ベルト8の温度Tとして扱ったり、機内温度の検知結果から所定の処理を行って中間転写ベルト8の温度Tを求めたりすることができる。制御部80は、S308で中間転写ベルト8の温度Tが閾値Tth以上(T≧Tth)であると判断した場合は、S305の処理に戻って帯電電流Iの検知を行う。また、制御部80は、S308で中間転写ベルト8の温度Tが閾値Tth以上でない、すなわち、閾値Tth未満(T<Tth)であると判断した場合は、今回印刷した画像がジョブの最後の画像であるか否かを判断する(S309)。そして、制御部80は、S309でジョブの最後の画像ではないと判断した場合は、S307の処理に戻って異常放電抑制モードで印刷を行い、ジョブの最後の画像であると判断した場合はジョブを終了する。
【0079】
例えば、次のような条件での印刷時間について説明する。つまり、100枚の印刷を行うジョブにおいて、中間転写ベルト8の温度Tが14℃から、50枚目以降で16℃以上に上昇する。異常放電抑制モードでは、プロセススピードを、通常モードにおける300mm/sから100mm/sに遅くする。プロセススピード300mm/sでの1枚当たりの印刷時間は1秒であり、プロセススピード100mm/sでの1枚当たりの印刷時間は3秒であり、プロセススピードの切り替え動作には約4秒かかる。この場合、実施例2の構成では、ジョブが完了するまでに約300秒かかる。一方、本実施例の構成では、51枚以降でプロセススピードを300mm/sに戻すため、ジョブが完了するまでに約204秒しかかからない。つまり、本実施例によれば、実施例2よりも約96秒印刷時間を短縮することができる。
【0080】
このように、中間転写ベルト8の昇温を検知した場合に、再度異常放電発生有無検知を行い、異常放電が発生していなければ、通常モードに戻すことで、印刷スピードの低下を抑制する(印刷を行えないダウンタイムを低減する)ことができる。中間転写ベルト8の温度によるインピーダンスの変化が十分に大きく、画像形成装置100が中間転写ベルト8の温度と相関する指標(本実施例における機内温度など)を検知する手段を備えている場合は、本実施例を適用するのが好適である。
【0081】
なお、帯電電流Iを測定する動作や、通常モード及び異常放電抑制モードの内容は、実施例1で説明したものと同じであるので、重複する説明は省略する。また、一次転写部N1のインピーダンスRを検知する動作は、実施例2で説明したものと同じであるので、重複する説明は省略する。
【0082】
また、本実施例では、閾値Tthを中間転写ベルト8の温度の絶対値に対応する16℃に設定したが、これに限定されるものではない。中間転写ベルト8の表面抵抗率は個体ばらつきがあるため、中間転写ベルト8に応じて適宜閾値を設定してもよい。また、中間転写ベルト8の温度変化量に対するインピーダンス変化量は、表面抵抗率に依らず一定である傾向がある。したがって、初期の一次転写部N1のインピーダンス検知結果と異常放電が発生しなくなるインピーダンス(本実施例の構成では110MΩ)までの差分を、異常放電が発生しなくなるまでの温度変化量に変換することができる。初期の温度に、その温度変化量を加算して、温度閾値Tthを設定してもよい。
【0083】
3.効果
以上説明したように、画像形成装置100は、中間転写体8の温度と相関する指標値を検知する温度検知部(本実施例では機内温度センサ90)を有し、制御部80は、温度検知部90の検知結果に基づいて検知動作(異常放電発生有無検知動作)を実行するか否かを切り替えることが可能である。本実施例では、制御部80は、温度検知部90の検知結果が示す中間転写体8の温度が所定の閾値以上の場合に、上記検知動作を実行する。特に、本実施例では、画像形成装置100は、一次転写部N1の電気抵抗と相関する指標値を検知する電気抵抗検知部(本実施例では一次転写電流検知部51)と、中間転写体8の温度と相関する指標値を検知する温度検知部(本実施例では機内温度センサ90)と、を有する。制御部80は、電気抵抗検知部51の検知結果が示す一次転写部N1の電気抵抗が所定の電気抵抗閾値以上の場合に上記検知動作を実行し、該検知動作において電流検知部71により検知された電流の絶対値が所定の電流閾値未満の場合は動作設定を第1のモードとして画像形成を実行し、該検知動作において電流検知部71により検知された電流の絶対値が該電流閾値以上の場合は動作設定を前記第2のモードとして画像形成を実行する。そして、制御部80は、第2のモードで画像形成を実行した場合に、温度検知部90の検知結果が示す中間転写体8の温度が所定の温度閾値以上となった場合に、上記検知動作を実行し、該検知動作において電流検知部71により検知された電流の絶対値が前記電流閾値未満の場合は動作設定を第1のモードに変更して後続の画像形成を実行し、該検知動作において電流検知部71により検知された電流の絶対値が電流閾値以上の場合は動作設定を第2のモードに維持して後続の画像形成を実行する。
【0084】
本実施例によれば、実施例2と同様の効果が得られると共に、異常放電が発生しにくい状況になったことを検知して、異常放電抑制モードから通常モードに戻すことを可能とすることで、より適切な制御を実行することが可能となる。具体的には、異常放電抑制モードを必要以上に実施しないことによって、適切な一次転写電圧を印加することが可能となり、また、印刷スピードの低下を更に抑制することができる。
【0085】
なお、本実施例においては、実施例2と同様に、一次転写部N1のインピーダンスRの検知を行い、その値に応じて異常放電発生有無検知の実行要否を判断する構成について説明した。これは、
図8のシーケンスにおけるS301、S302にあたる制御のことを指す。しかしながら、これに限らず、一次転写部N1のインピーダンスRの検知を行うことなく、帯電電流の検知結果に基づいて異常放電抑制モードの実施有無を判断し、温度検知部90の検知結果に基づいて再度実行モードを決定する構成としてもよい。即ち、実施例1で説明した
図4のS103とS104の間に、本実施例で説明した温度検知部90の検知結果に基づいて異常放電抑制モードから通常モードに戻す制御を実施してもよい。これにより、実施例1と同様の効果が得られると共に、異常放電が発生しにくい状況になったことを検知して、異常放電抑制モードから通常モードに戻すことを可能とすることで、より適切な一次転写電圧を印加することが可能となる。また、異常放電抑制モードを必要以上に実施しないことによって、印刷スピードの低下を更に抑制することができる。
【0086】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0087】
上述の実施例では、異常放電抑制モードにおいて一次転写ローラ5と感光ドラム1との間の電位差を小さくしてこれらの間での異常放電を抑制するために、一次転写ローラ5に印加する一次転写電圧の絶対値を小さくした。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、一次転写ローラ5と感光ドラム1(非画像部)との間の電位差を小さくしてこれらの間での異常放電を抑制するために、帯電電圧の絶対値を小さくすることも可能である。この場合、適切な現像コントラスト、バックコントラストとなるように、現像電圧の絶対値を小さくすること、更には露光光量を大きくすることなども併せて行うことができる。ここで、現像コントラストは、感光ドラム1上の画像部(露光部)と現像電圧(現像ローラ41)との間の電位差である。また、バックコントラストは、感光ドラム1上の非画像部(未露光部)と現像電圧(現像ローラ41)との間の電位差である。つまり、第1のモードにおける帯電部材2により帯電処理された感光体1の表面の帯電電位の絶対値よりも、第2のモードにおける帯電部材2により帯電処理された感光体1の表面の帯電電位の絶対値の方を小さくしてもよい。異常放電抑制モードにおいて、一次転写電圧と帯電電圧とを通常モードから変更してもよい。
【0088】
また、上述の実施例で説明した異常放電抑制モードで印刷を行うことに代えて、あるいはこれに加えて並行して、異常放電抑制モードの動作として、中間転写ベルト8の温度を高めるための暖気運転を行ってもよい。これにより、能動的に一次転写部N1のインピーダンスを下げることが可能となり、異常放電の発生を抑制することが可能となる。暖気運転の例としては次のものが挙げられる。印刷を中断して実行するものとしては、次のようなものが挙げられる。例えば、画像形成装置100が有する発熱体(ヒータ)、例えば、定着装置17が備える発熱体や別の発熱体を発熱させたり、通常よりも発熱量を高めたりした状態で、待機あるいは感光ドラム1や中間転写ベルト8の空回転を行うことが挙げられる。また、印刷動作を行いながら実行するものとしては、次のようなものが挙げられる。画像形成装置100が有する発熱体(ヒータ)を発熱させたり、通常よりも発熱量を高めたりすることが挙げられる。また、画像形成装置100の外部から内部への吸気、又は内部から外部への排気を行うファンの動作を停止したり、回転速度を遅くしたりして、画像形成装置100の内部の空気が昇温しやすくすることが挙げられる。このとき、画像形成装置100が有する発熱体(ヒータ)を発熱させたり、通常よりも発熱量を高めたりすることを併せて行ってもよい。つまり、制御部80は、検知動作(異常放電発生有無検知動作)における電流検知部71の検知結果に基づく一次転写部材5と感光体1との間の放電の発生に関する情報に基づいて、画像形成装置100の内部の温度を上昇させる暖気運転を実行することが可能である。制御部80は、上記検知動作において電流検知部71により検知された電流の絶対値が所定の閾値以上の場合に上記暖気運転を実行することができる。また、暖気運転は、上記検知動作において電流検知部71により検知された電流の絶対値が該所定の閾値未満になった場合に終了することができる。この暖気運転の実行の可否を判断するための閾値は、上述の実施例における第1のモードから第2のモードへの切り替えの可否を判断するための閾値と同じであっても異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
3 露光装置
4 現像装置
5 一次転写ローラ
8 中間転写ベルト
50 一次転写電圧印加部
51 一次転写電流検知部
70 帯電電圧印加部
71 帯電電流検知部
90 機内温度センサ
100 画像形成装置