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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/249 20060101AFI20240227BHJP
   G01D 5/347 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G01D5/249 Q
G01D5/347 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020070606
(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公開番号】P2021167744
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】村山 智大
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0071818(US,A1)
【文献】国際公開第2018/163424(WO,A1)
【文献】特開2001-296145(JP,A)
【文献】特開2007-218907(JP,A)
【文献】特開平07-229762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00- 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nが2以上の整数のとき、どの連続するN項を取り出しても同じ数列が存在しない位置検出用2値数列に基づいて作成される記録用2値数列を記録されたアブソリュートトラックと、
前記アブソリュートトラックから、前記記録用2値数列を読み取るアブソリュートセンサユニットと、
を備え、
前記記録用2値数列に含まれる複数の項のそれぞれは2値のいずれかの値で構成され、その2値を1と0としたとき、前記記録用2値数列は、前記位置検出用2値数列に含まれる2つの値のうち、一方の値を2つの値10で、前記位置検出用2値数列の他方の値を2つの値01で置き換えた数列である位置検出装置であって、
前記アブソリュートセンサユニットは、前記記録用2値数列から、1項おきに少なくともN+1項の数列を検出するセンサを有し、
前記アブソリュートセンサユニットが検出した検出数列をビット反転した反転数列を生成する反転部と、
前記検出数列および反転数列を、前記位置検出用2値数列から検索する検索部と、
前記検索部によって発見された前記位置検出用2値数列中の前記検出数列または前記反転数列の、前記位置検出用2値数列中の位置によって前記アブソリュートセンサユニットの位置を検出する位置検出部と、
をさらに備えた位置検出装置。
【請求項2】
前記検索部によって前記検出数列が発見されたか、または前記反転数列が発見されたかによって、前記位置検出用2値数列の1つの項から置き換えられた2つの項10または2つの項01における前後の項のうち、どちらの項を前記アブソリュートセンサユニットが検出しているか判別する判別部をさらに備えた請求項1に記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、非繰り返しコードに基づいて磁気媒体に記録された磁気信号を磁気センサで読み取ることで、位置を検出する位置検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平01-079619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、非繰り返しコードは、検出ヘッドの長さと同じ数の1が連続する部分もあれば、0と1が交互に出現する部分もある。したがって、非繰り返しコードの項1個を1方向の磁気記録と対応させる方式の場合、磁化反転間隔が非常に長い部分と短い部分が現れる。
【0005】
この場合、アブソリュートトラックから発生する磁気信号に対する波形干渉が顕著になる。そのため、波形干渉を受けた磁気信号による位置検出精度への影響が懸念されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、
Nが2以上の整数のとき、どの連続するN項を取り出しても同じ数列が存在しない位置検出用2値数列に基づいて作成される記録用2値数列を記録されたアブソリュートトラックと、
前記アブソリュートトラックから、前記記録用2値数列を読み取るアブソリュートセンサユニットと、
を備え、
前記記録用2値数列に含まれる複数の項のそれぞれは2値のいずれかの値で構成され、その2値を1と0としたとき、前記記録用2値数列は、前記位置検出用2値数列に含まれる2つの値のうち、一方の値を2つの値10で、前記位置検出用2値数列の他方の値を2つの値01で置き換えた数列である位置検出装置であって、
前記アブソリュートセンサユニットは、前記記録用2値数列から、1項おきに少なくともN+1項の数列を検出するセンサを有し、
前記アブソリュートセンサユニットが検出した検出数列をビット反転した反転数列を生成する反転部と、
前記検出数列および反転数列を、前記位置検出用2値数列から検索する検索部と、
前記検索部によって発見された前記位置検出用2値数列中の前記検出数列または前記反転数列の、前記位置検出用2値数列中の位置によって前記アブソリュートセンサユニットの位置を検出する位置検出部と、
をさらに備えた位置検出装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、十分な位置検出精度を確保できる位置検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】第1実施形態に係る位置検出装置の構成を示すブロック図である。
図1B】第1実施形態に係る位置検出装置の効果を説明する図である。
図2】第2実施形態に係る位置検出装置の構成を説明するためのブロック図である。
図3A】第2実施形態に係る位置検出装置の詳しい構成を示すブロック図である。
図3B】第2実施形態に係る位置検出装置の詳しい構成を示すブロック図である。
図3C】第2実施形態に係る位置検出装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る位置検出装置のセンサ配置を説明する図である。
図5A】第3実施形態に係る位置検出装置の詳しい構成を示すブロック図である。
図5B】第4実施形態に係る位置検出装置の詳しい構成を示すブロック図である。
図5C】第2実施形態に係る位置検出装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
[第1実施形態]
第1実施形態としての位置検出装置100について、図1A図1Bを用いて説明する。図1Aに示すように、位置検出装置100は、アブソリュートトラック101とセンサユニット102とを含む。
【0011】
アブソリュートトラック101は、どの連続するN項(Nが2以上の整数)を取り出しても同じ数列が存在しない位置検出用2値数列111に基づいて作成される記録用2値数列112が記録されている。図1Aは、N=4の例である。
【0012】
センサユニット102は、左右方向に移動しつつ、アブソリュートトラック101から、記録用2値数列112を読み取る。
【0013】
記録用2値数列112に含まれる複数の項のそれぞれは、2つの値のいずれかで構成され、その2つの値を仮に1と0とする。このとき、記録用2値数列112は、位置検出用2値数列111に含まれる2つの値のうち、一方の値を10で、位置検出用2値数列の他方の値を01で置き換えた数列である。
【0014】
以上の構成によれば、記録される2値数列は、1が3つ以上連続したり、0が3つ以上連続したりすることがないため、波形干渉の影響が少ない磁気信号を用いて位置検出が可能な位置検出装置を提供できる。
【0015】
図1Bは、本実施形態の効果を説明するための図である。グラフ120は、従来技術での、位置による磁束密度の変化を示すグラフの一例である。グラフ130は、本実施形態での、位置による磁束密度の変化を示すグラフの一例である。
【0016】
グラフ120では、3連続以上、同じ向きに磁化している(つまり0または1が続く)部分123に大きな波形干渉が起きている。このため、波形の極小部分の最大値121と極大部分の最小値122との間の差分が小さく、その位置の磁束密度だけでは、どちらの値かを判別することが難しくなる。
【0017】
一方、グラフ130に示す本実施形態では最大でも2連続しか同じ向きに磁化する部分が無いため、波形の極小部分の最大値131と極大部分の最小値132とが離れており、判別がしやすい。つまり、位置検出精度が高くなる。
【0018】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る位置検出装置200について、図2を用いて説明する。図2に示すとおり、位置検出装置200は、それぞれ1つ以上のアブソリュートトラック211およびインクリメンタルトラック212を備えた磁気媒体201とセンサユニットとしての検出ヘッド202とを含む。アブソリュートトラック211には非繰り返しコードが記録され、インクリメンタルトラック212には繰り返しコードが記録されている。
磁気媒体201は、磁性体が各領域で磁化されることで磁気記録されている。磁気媒体201は、リニアエンコーダとして用いる場合は長板状、ロータリーエンコーダとして用いる場合は円筒状や円盤状である。磁化はある軸に対して+方向、または+方向に対して反対方向である-方向に行う。この軸は、磁気媒体201の長手方向と垂直方向とがありうる。
【0019】
検出ヘッド202は、磁気媒体201に対して相対的に移動可能である。検出ヘッド202は、磁気信号を電気信号に変換する磁気検出部としてのインクリメンタルセンサユニット221およびアブソリュートセンサユニット222と、電気信号を位置情報に変換する信号処理部223とを備えた磁気式エンコーダである。検出ヘッド202におけるインクリメンタルセンサユニット221とアブソリュートセンサユニット222の相対位置は変化しない。
【0020】
インクリメンタルセンサユニット221は、インクリメンタルトラック212から発生する漏れ磁界を読み取り信号を出力する。インクリメンタルセンサユニット221とインクリメンタルトラック212とは、検出ヘッド202の1周期λ中の前後位置を検出する前後検出部として機能する。
アブソリュートセンサユニット222は、アブソリュートトラック211から発生する漏れ磁界を読み取り信号を出力する。信号処理部223は、その漏れ磁界を示す信号を、磁気媒体201上における検出ヘッド202の位置を示す位置データ224に変換して外部システム250に出力する。
【0021】
図3A図3Bは、各センサと各トラックの磁気記録の位置関係の一例を説明する図である。図3A図3Bの違いは、アブソリュートセンサユニット222の位置である。
【0022】
アブソリュートトラック211は、どの連続するN項(Nは2以上の整数)を取り出しても同じ数列が存在しない位置検出用2値数列311に基づいて作成される記録用2値数列312が記録されている。アブソリュートセンサユニット222は記録用2値数列312から1項おきに少なくともN項の数列を読み取り、位置検出用2値数列全体中の検出数列の位置を確定することで、検出ヘッド202の磁気媒体(エンコーダ)201上での位置を確定する。
【0023】
位置検出用2値数列311は、Nビット(Nは2以上の整数)の線形帰還シフトレジスタ(LFSR:linear feedback shift register)によって生成された数列である。位置検出用2値数列311は、どのNビットを切り出しても重複するパターンが存在しない数列である。ここでは、4ビットのLFSRで生成された位置検出用2値数列311(例として110101100100011)を示している。この場合、帰還多項式はx4+x3+1となり、周期は15である。
数列表301は、位置検出用2値数列を4項ずつ抽出して位置Pと対応させた表である。図3Aのアブソリュートトラック211には、1101011001までの10項の位置検出用2値数列311に対応する記録用2値数列312が記録された例が示されている。位置検出用2値数列311の1項分が、位相符号化方式に基づき、磁石の極性の反転の向きによって記録される。例えば、図3Aでは、位置検出用2値数列311が1の時、記録用2値数列312は、1から0へと極性が反転するように10が記録される。位置検出用2値数列311が0の時、記録用2値数列312は0から1へと極性が反転するように01が記録される。
【0024】
インクリメンタルトラック212には、ある波長λを1周期として、+方向と-方向を交互に繰り返した磁気記録を行う。このインクリメンタル記録から発生するインクリメンタル信号は、記録用2値数列312と同じ周期λを持つ。このインクリメンタル信号を読み取ることで、インクリメンタルセンサユニット221は1周期内の前後位置を検出できる。つまり、インクリメンタルトラック212およびインクリメンタルセンサユニット221は記録用2値数列312の前後2つの値のいずれに対応する位置に検出ヘッドが存在しているかを検出する。
【0025】
信号処理部223は、記録用2値数列312と位置検出用2値数列311の対応関係に基づいて、アブソリュートセンサユニット222が検出した数列を位置データ224に変換する。そして、変換後の数列の位置検出用2値数列中の位置およびインクリメンタルトラック212およびインクリメンタルセンサユニット221の検出結果によって検出ヘッドの位置を検出する。
【0026】
アブソリュートトラック211には、あるタップシーケンスのNビットのLFSRで生成された0と1のビット列に基づく磁気記録を行う。この記録は位相符号化方式に従い、インクリメンタル周期の1周期につき、位置検出用2値数列1項に相当する記録を行う。つまり、この方式は、インクリメンタルトラック212の1周期(波長λ)に対して、アブソリュートトラック211の記録数列2項が対応する方式(2ビット方式)である。アブソリュートセンサユニット222は、記録用2値数列312から、1項置きに少なくともN項(Nは2以上の整数、図3AではN=4)の数列を検出する。
【0027】
アブソリュートセンサユニット212が読み取ったある領域の記録から発生する信号がある閾値よりも高い場合、その領域は1が記録されている。反対にその閾値よりも低い場合、その領域は0が記録されている。これらの数値が、記録用2値数列312を構成する。
【0028】
図3A図3Bの例では位相符号化方式によるアブソリュート記録について、位置検出用2値数列311が1のとき記録用2値数列は左から10、位置検出用2値数列311が0のとき記録用2値数列は01としている。位置検出用2値数列の1項に対応させる記録用2値数列2項は、上記の逆でもよい。つまり、位置検出用2値数列311が1のとき記録用2値数列は左から01、位置検出用2値数列311が0のとき記録用2値数列は10としてもよい。アブソリュート記録から発生するアブソリュート信号を読み取るアブソリュートセンサユニット222のセンサチップ302は、等間隔にλあたり1組配置されている。
【0029】
1つのセンサチップ302には、センサ素子321がλ/4間隔で2個配置されている。LFSRのビット長がNの場合、少なくとも連続するN項は位置検出用2値数列内で繰り返しが起こらないため、センサチップ302をN個以上配置する。つまり、センサ素子321は、2N組以上配置される。図3A図3Bの例では、LFSRのビット長が4なので、センサチップ302が4個、センサ素子321が8個配置されている。
【0030】
アブソリュートセンサユニット222は、左右方向に移動しつつ、対向するアブソリュートトラック211から、記録用2値数列312を検出する。
【0031】
記録用2値数列312に含まれる複数の項のそれぞれは、2つの値のいずれかで構成されている。その2つの値を仮に1と0としたとき、記録用2値数列312は、位置検出用2値数列311に含まれる2つの値のうち、一方の値を10で、位置検出用2値数列の他方の値を01で置き換えた数列である(いわゆるバイフェイズ)。このように数列を置き換えることにより、同じ記録信号が数多く連続することによる磁束密度の偏りをなくすことができる。読み取る際には、磁気の正負じゃなく、反転の向き(正から負なのか負から正なのか)に応じて、位置検出用2値数列1と0に置き換える。
【0032】
また、信号処理部223は、反転部303、判別部304、検索部305および位置検出部306を備えている。反転部303は、アブソリュートセンサユニット222が検出した検出数列331をビット反転した反転数列332を生成する。判別部304は、インクリメンタルセンサユニット221が検出した前後位置に基づいて、検出数列331と反転数列332のいずれを検索すべきかが発見されたかを判別する。
検索部305は、判別部304が判別した検出数列331または反転数列332を、位置検出用2値数列311から検索する。
位置検出部306は、検索部305によって発見された検出数列331または反転数列332の、位置検出用2値数列中の位置(ここでは例えばP=6)とインクリメンタルセンサユニット221が検出した前後位置によってアブソリュートセンサユニット222の位置を検出する。
【0033】
インクリメンタルセンサユニット221とアブソリュートセンサユニット222の位置関係は変動しないため、インクリメンタル信号によって、全てのアブソリュートセンサユニット222がアブソリュートトラック211の1周期内の前後のどちらにいるかが判別できる。図3Aのようにアブソリュートセンサユニット222が前半にいるとき、検出数列331をそのまま位置検出用2値数列311の一部として推定できる。図3Bのように、アブソリュートセンサが後半にいるとき、読取数列の全ての項をビット反転した読取反転数列が位置検出用2値数列に含まれると推定できる。位置検出用2値数列中の出現順序を検索して得られた出現順序P(ここではP=8)が、検出数列の位置となる。
【0034】
逆に言えば、アブソリュートセンサユニット222は前半か後半のいずれかの磁気信号をNビット以上読み取ることができるように配置される。アブソリュートセンサユニット222で読み取られた検出数列とその反転数列は、インクリメンタルトラック212の1周期内の位置によって、そのどちらかが記録された非繰り返しコードと推定できる。推定されたコードを位置情報にデコードすることで磁気媒体201と検出ヘッド202の相対位置を確定する。
【0035】
図3Cは、信号処理部223で行なわれる処理の流れを説明するフローチャートである。ステップS331において、判別部304は、インクリメンタルセンサユニット221からの信号に基づいて、アブソリュートセンサユニット222の前後位置を判別する。
【0036】
前側位置と判断された場合には、ステップS333において、検索部305は、位置検出用2値数列から検出数列331そのものを検索する。一方、後側位置と判断された場合には、ステップS335において、反転部303が、検出数列を反転して反転数列332を生成する。さらに、ステップS337において、検索部305は、位置検出用2値数列から反転数列332を検索する。
【0037】
次に、ステップS339は、検索部305の検索によって導かれた位置Pおよびインクリメンタルセンサユニット221が検出した前後位置を組み合わせて、アブソリュートセンサユニット222の位置を検出する。
【0038】
以上の処理の流れは、プロセッサがソフトウェアを実行することにより実現する。その他、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて実現してもよい。
【0039】
信号処理部223は、インクリメンタル信号から、あるインクリメンタル記録1周期内の位置は分かるため、ある記録数列を読み取ったときのその記録数列の磁気媒体201中の位置を知る必要がある。
【0040】
図4に示すように、アブソリュート信号は1か0に磁気記録してある領域の端部では判定の閾値に近づくため、安定した読み取りができない。そこで、安定して読み取りできる使用可能領域401を、端部以外の中心領域(1/2幅)に設定する。そして、センサ素子321を、この1/2幅だけ離間させる。
【0041】
このようにすれば、1組2個のセンサ素子321の内どちらかが、必ず使用可能領域401に存在することになる。インクリメンタル信号によって、ある領域中のセンサチップ302の位置は十分な精度で決定できるため、1組2個のセンサ素子321の内、使用可能領域401に存在するセンサ素子321を特定できる。したがって、領域のアブソリュート記録が1か0かを判別することができる。
【0042】
以上の構成によれば、最大でも2連続しか同じ向きに磁化する部分が無いため、位置検出精度が高くなる。
なお、アブソリュートセンサユニットの前後位置を検出するものとして、ここでは、インクリメンタルセンサユニットおよびインクリメンタルトラックを一例に挙げたが、本発明はこれに限定されるものではない。アブソリュートトラックと同じ周期で、前後を検出するものであれば十分である。周期的な信号を検出できれば、如何なる構成でもかまわない。
【0043】
[第3実施形態]
次に第3実施形態に係る位置検出装置500について、図5A図5Bを用いて説明する。図5A図5Bは、本実施形態に係る位置検出装置500の構成を説明するための図である。本実施形態に係る位置検出装置500は、上記第2実施形態と比べると、アブソリュートトラックの記録密度が半分となっている点およびアブソリュートセンサのセンサチップの数が5個になり、その間隔が2λとなっている点で異なる。さらに、信号処理部523の構成および動作が異なる。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0044】
アブソリュートトラック511には、インクリメンタルトラック212の繰り返しコード2周期に、位置検出用2値数列511の1ビット分に相当する情報が、位相符号化方式に基づき、磁気記録されている。位置検出用2値数列511は、偶数のタップを持つLFSRによって生成されたものである。
【0045】
アブソリュートセンサユニット522は記録用2値数列から1項おきに少なくともN+1項以上(ここでは5項)の数列を検出するセンサチップ502を備える。つまり、センサチップ502の数は、LFSRで生成したコードのビット数に1を加えたものとなっている。
【0046】
センサチップ502にはセンサ素子521がλ/2間隔で2個配置されている。このセンサチップ502の個数はLFSRのビット長をN(ここでは例として4)としたとき、N+1以上(ここでは例として5)となる。
【0047】
第2実施形態のようにアブソリュートトラック211に記録用2値数列を配置すると、1つ1つの磁石が小さくなり、磁力が弱くなる。そこで、図5A図5Bのように、アブソリュートトラック511の一つ一つの磁石の大きさを2倍にして、記録用2値数列512を記録する。すなわち、インクリメンタルトラック212の2周期(2λ)に、アブソリュートトラック511の1つの値を記録する。記録密度(つまり解像度)は第1実施形態に比べて落ちるが、磁力が強いため、より精度が高くなる。
【0048】
アブソリュートセンサユニット522で読み取った検出数列331と反転数列332は、いずれか一方のみがLFSRが生成する位置検出用2値数列511の全体中1箇所に存在するという性質がある。信号処理部523は、この性質を利用して、記録された位置検出用2値数列511を推定し、推定されたコードを位置情報にデコードすることで磁気媒体501とアブソリュートセンサユニット522の相対位置を確定する。
【0049】
信号処理部523は、反転部303、検索部504、判別部505および位置検出部506を備える。検索部504は、第2実施形態の検索部304と異なり、検出数列331と反転数列332の両方を位置検出用2値数列から検索する。
そして、検索部504は、検出数列331と反転数列332のいずれが、位置検出用2値数列511のどの位置に含まれているかを判別部505に伝える。判別部505は、検出数列331と反転数列332のいずれかが含まれる位置検出用2値数列511の位置に応じて、アブソリュートセンサユニット522が、アブソリュートトラック511のどの位置に対向しているかを検出する。つまり、判別部505は、大まかな位置を割り出す。そして、位置検出部506は、判別部505が割り出した位置にインクリメンタルセンサユニット221の出力を合成して、アブソリュートセンサユニット522の正確な位置を割り出す。
図5Cは、信号処理部523で行なわれる処理の流れを説明するフローチャートである。ステップS531において、反転部303は、検出数列331を反転して反転数列332を生成する。次に、ステップS533において、検索部504は、位置検出用2値数列511から検出数列331および反転数列332を検索する。
次に、ステップS535において、位置検出用2値数列511において見つかったのが検出数列331なのか、反転数列332なのか判定する。ステップS537において、判別部505は、位置検出用2値数列511において検出数列331または反転数列332が見つかった位置およびそれらのいずれが見つかったかによって、アブソリュートセンサユニット522の大まかな位置を決定する。
さらにステップS537では、インクリメンタルセンサユニット221からの信号に基づいて、アブソリュートセンサユニット222の正確な位置を判別する。
以上の処理の流れは、プロセッサがソフトウェアを実行することにより実現する。その他、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて実現してもよい。
本実施形態は、偶数のタップを持つLFSRによって生成された数列であれば、どの連続するN+1項の部分数列を取り出しても、この部分数列を全項反転した数列は、同じLFSRが生成する数列1周期内には存在しないという特性を利用したものである。つまり、検出数列331と反転数列332の両方が位置検出用2値数列511に含まれることはない。そして、どちらが数列内に存在するかを判定することで、位置検出2値数列511の1項に対応する2項の記録用2値数列312(つまり2つの磁石)のうち、前側の項を読んだのか、後側の項を読んだのか分かる。
【0050】
このように、本実施形態によれば、解像度を変えることなく、磁石およびセンサを2倍に大きくすることができる。
【0051】
なお本実施形態では、センサチップ502を5個設けたが、本願発明はこれに限定されることなく、6個でも7個でもよい。
【0052】
(検出数列と反転数列の、一方のみが位置検出用2値数列中1箇所に存在する理由)
N+1個のセンサチップ502が、ある位置検出用2値数列{b1,b2,...bN,bN+1}(ここでは、11010)と対向する位置にあるとする。このとき、位置検出用2値数列1ビットに相当する2λの前半領域に位置する場合の検出数列331は、図5Aの例のように、そのまま{b1,b2,...bN,bN+1}(ここでは、11010)である。一方、2λの後半領域に位置する場合の検出数列331は、{~b1,~b2,...~bN,~bN+1}(ここで記号~は反転の意味。図5Bの例では00101)である。{b1,b2,...bN}からタップシーケンスだけを抽出した数列を{t1,t2,...tm}とする。
【0053】
LFSRで生成した数列が2以上の周期で循環するとき、タップの個数は必ず偶数になるため、mは偶数である。フィボナッチ型LFSRによる生成を考えると、bN+1は{t1,t2,...tm}の全ての項の排他的論理和をとった計算結果になる。
【0054】
したがって、{t1,t2,...tm}の中の1または0の個数の偶奇によって、bN+1の値が決まる。同様に、{~b1,~b2,...,~bN}の次の生成項は、{~t1,~t2,...~tm}の全ての項の排他的論理和をとった計算結果になる。{t1,t2,...tm}と{~t1,~t2,...~tm}は1または0の個数の偶奇が一致するため、{~b1,~b2,...,~bN}の次の項はbN+1になる。
【0055】
よって、位置検出用2値数列中に{~b1,~b2,...,~bN,bN+1}が存在する。このとき、{~b1,~b2,...,~bN}は数列全体中1箇所しか存在しないため、{~b1,~b2,...,~bN,~bN+1}は存在しない。以上より、NビットのLFSRが生成する全ての数列の中に{b1,b2,...bN,bN+1}が存在するとき、{~b1,~b2,...~bN,~bN+1}は存在しない。つまり、検出数列と反転数列の、一方のみが位置検出用2値数列中1箇所に存在する。
【0056】
検索部504は、検出数列331と反転数列332の位置検出用2値数列511中の出現順序を検索する。図5Aの例のように前半領域に位置するときは検出数列331である{b1,b2,...bN,bN+1}(ここでは11010)の出現順序P(ここではP=1)が得られ、反転数列332の出現順序は得られない。反対に、図5Bの例のように後半領域に位置するときは反転数列332である{b1,b2,...bN,bN+1}(ここではこちらが11010)の出現順序P(ここではP=1)が得られ、検出取数列の出現順序は得られない。このことより、検出数列の出現順序が得られたときは、アブソリュートトラック511の2P-1(ここでは1)番目の磁石に対向していることがわかる。反転数列の出現順序が得られたときはアブソリュートトラック511の2P(ここでは2)番目の磁石に対向していることが分かる。本実施形態の場合、解像度に問題がなければ、インクリメンタルトラック212およびインクリメンタルセンサユニット221が不要になる。インクリメンタルトラック212およびインクリメンタルセンサユニット221を用いれば、解像度を2倍にすることができる。
【0057】
第3実施形態の構成では位相符号化方式では磁化反転間隔が最大でも2なので、細かい調整の手間を省くことができる。また、マージンそのものもNRZよりも大きくなる。さらに磁石一つ一つが大きいため安定性が高い。使用するセンサの感度と使用する際の磁気媒体とセンサとの距離に応じて第2実施形態の構成と第3実施形態の構成を使い分けることが好ましい。
【0058】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0059】
特に上記実施形態では、磁気により位置を検出する磁気式位置検出装置(磁気スケール)について説明したが、レーザ光により位置を検出する光学式位置検出装置(レーザスケール)にも適用可能である。
【0060】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるサーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C