(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】記録材冷却装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240227BHJP
B65H 5/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G03G21/00 530
G03G21/00 310
B65H5/00 G
(21)【出願番号】P 2020071653
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恵太
(72)【発明者】
【氏名】井上 優樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 健一
(72)【発明者】
【氏名】片野 真吾
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-157091(JP,A)
【文献】特開2011-090106(JP,A)
【文献】特開2016-018144(JP,A)
【文献】特開2010-002644(JP,A)
【文献】特開2015-094847(JP,A)
【文献】実開昭60-080479(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
B65H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な無端状のベルトと、前記ベルトを張架する第一ローラと、前記ベルトを前記第一ローラと共に張架する第二ローラと、前記ベルトの内周面に当接して前記ベルトを冷却する冷却手段とを備え、加熱によりトナー像が定着された記録材を冷却する記録材冷却装置において、
前記ベルトの回転方向に交差する幅方向に亘って前記ベルトの内周面に当接し、前記内周面に付着した付着物を除去する除去部材と、前記除去部材により除去された付着物を収容する収容容器とを有する清掃手段と、
前記ベルトの端部に接触して前記ベルトの前記幅方向の動きに追従する追従部材を有し、前記追従部材の位置に従い前記ベルトの端部位置を検出する位置検出手段と、
前記ベルトを張架した第一位置と、前記ベルトを前記幅方向に着脱自在に緩めた第二位置との間で、前記第二ローラを移動する移動手段と、
前記収容容器に設けられ、前記ベルトの装着時、前記ベルトの装着方向先端が前記追従部材に接触するように、装着される前記ベルトを重力方向下方から支持して前記追従部材に向け案内する案内部材と、を備える、
ことを特徴とする記録材冷却装置。
【請求項2】
前記案内部材は、前記装着方向から見たときに一部が前記追従部材と重なり合うように設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の記録材冷却装置。
【請求項3】
前記案内部材は、前記装着方向において上流端が前記除去部材の上流端よりも上流側に位置するように前記幅方向に亘って延設されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の記録材冷却装置。
【請求項4】
前記第二ローラを前記第一ローラに対して揺動し、前記ベルトを前記幅方向に往復移動させるステアリング機構を備え、
前記除去部材は、前記第二ローラよりも前記第一ローラに近い側で前記ベルトの内周面に当接する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録材冷却装置。
【請求項5】
前記追従部材は、前記除去部材が前記ベルトに当接する当接箇所よりも前記回転方向の下流側で前記ベルトの端部に接触する、
ことを特徴とする請求項4に記載の記録材冷却装置。
【請求項6】
前記案内部材は、前記回転方向において下流端が上流側よりも重力方向上方に位置するように傾斜している、
ことを特徴とする請求項5に記載の記録材冷却装置。
【請求項7】
前記ベルトの外周面に当接し、トナー像の形成された記録材を挟持搬送しつつ冷却するためのニップ部を形成する回転体と、
前記ベルトと前記回転体とが当接した状態と、前記ベルトと前記回転体とが離間した状態とに変更可能な接離手段と、を備え、
前記移動手段は、前記ベルトと前記回転体とが離間した状態のときに、前記第二ローラを移動可能である、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の記録材冷却装置。
【請求項8】
前記回転体は、無端状のベルトである、
ことを特徴とする請求項7に記載の記録材冷却装置。
【請求項9】
前記冷却手段は、前記ベルトに接触して放熱する放熱板である、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の記録材冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリあるいは複合機などの画像形成装置に用いて好適な、ベルトを介して記録材を冷却する記録材冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、記録材に形成されたトナー像を定着装置で加熱、加圧することによって記録材にトナー像を定着させている。そのため、定着装置から搬送される記録材は定着前に比べて温度が高くなる。そして、トナー像定着後の記録材が温度の高いまま積載部に排出され積載されると、積載された記録材同士がトナーにより貼り付く虞がある。こうした記録材の貼り付きを抑制するために、トナー像定着後の記録材の温度を下げる記録材冷却装置が設けられている(特許文献1)。特許文献1に記載の記録材冷却装置はベルト冷却方式の装置であり、定着装置を通過した記録材を挟持搬送する一対のベルトの少なくとも一方をヒートシンクにより冷却し、冷却したベルトを介して記録材の温度を下げるようにしている。
【0003】
こうしたベルト冷却方式の装置では、ベルトを効率よく冷却するために、フィルム状のベルトがヒートシンクに対し所定の圧力を加えた状態で当接されている。その場合、回転するベルトはヒートシンクに摺擦されて削られやすい。それ故、ベルトの摩耗粉(削れ粉とも呼ばれる)が生じ、摩耗粉が紙粉や埃などと共にベルトの内周面に付着することがあった。そして、こうした付着物がヒートシンクとベルトとの間に入り込むと、熱抵抗が増して記録材の冷却性能を低下させ得る。そこで、ベルトの内周面に付着した付着物をベルトから除去するスクレーパーと、スクレーパーにより除去された付着物を収容する収容ボックスとを備えた装置が提案されている(特許文献2)。
【0004】
また、上記したベルト冷却方式の記録材冷却装置の場合、ベルトの幅方向への寄りやベルトの蛇行を抑制するためにステアリング制御が行われる。ステアリング制御は、ベルト端部に接触し、その動きに追従する追従部材を有する端部センサの検出結果に基づいて、ベルトを張架するステアリングローラを刻々と傾動させることによって、ベルトの幅方向の位置決めを動的に実行するために行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-181055号公報
【文献】特開2015-94847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のようにベルトがヒートシンクによって削られる、あるいは時間がたつにつれベルトが劣化すると、ベルトの冷却性能が低下することから、ベルトは交換可能に設けられている。しかしながら、従来では、作業者がベルトの姿勢を安定させながらベルトを装着することが難しかった。特に、上記したスクレーパー及び端部センサを備えた装置の場合に、作業者はベルト装着時に、ベルト内周面にスクレーパーを当接させると共に、ベルト端部を端部センサの追従部材に接触させなければならないため、ベルトの装着に時間がかかり面倒であった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑み、ベルト内周面の付着物を除去するスクレーパーと、ベルト端部に接触してベルトの端部位置を検出する端部センサを備えたベルト冷却方式の記録材冷却装置において、作業者によるベルト交換が容易な装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る記録材冷却装置は、回転可能な無端状のベルトと、前記ベルトを張架する第一ローラと、前記ベルトを前記第一ローラと共に張架する第二ローラと、前記ベルトの内周面に当接して前記ベルトを冷却する冷却手段とを備え、加熱によりトナー像が定着された記録材を冷却する記録材冷却装置において、前記ベルトの回転方向に交差する幅方向に亘って前記ベルトの内周面に当接し、前記内周面に付着した付着物を除去する除去部材と、前記除去部材により除去された付着物を収容する収容容器とを有する清掃手段と、前記ベルトの端部に接触して前記ベルトの前記幅方向の動きに追従する追従部材を有し、前記追従部材の位置に従い前記ベルトの端部位置を検出する位置検出手段と、前記ベルトを張架した第一位置と、前記ベルトを前記幅方向に着脱自在に緩めた第二位置との間で、前記第二ローラを移動する移動手段と、前記収容容器に設けられ、前記ベルトの装着時、前記ベルトの装着方向先端が前記追従部材に接触するように、装着される前記ベルトを重力方向下方から支持して前記追従部材に向け案内する案内部材と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ベルト内周面の付着物を除去する除去部材を有する清掃手段と、ベルトの動きに追従する追従部材の位置に従いベルトの端部位置を検出する位置検出手段とを備えた記録材冷却装置において、作業者がベルトの交換を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】記録材冷却装置を装置背面側から見た斜視図。
【
図4】ステアリング機構について説明するための斜視図。
【
図5】ベルトの接離機構について説明するための図であり、(a)は当接状態、(b)は離間状態。
【
図8】ベルト装着ガイドについて説明するための上面図。
【
図9】ベルト装着ガイドについて説明するための斜視図。
【
図10】ベルト装着ガイドについて説明するための模式図であり、(a)ベルトが張架されていない場合、(b)ベルトが張架された場合、(c)ベルト装着ガイドがない比較例。
【
図11】画像形成装置の外部に記録材冷却装置を設けた例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<画像形成装置>
以下、本実施形態の記録材冷却装置について説明する。まず、本実施形態の記録材冷却装置を用いて好適な画像形成装置の概略構成について、
図1を用いて説明する。
図1に示す画像形成装置100は、電子写真方式のタンデム型のフルカラープリンタである。画像形成装置100は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成する画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを有する。画像形成装置100は、装置本体100Aに接続された原稿読取装置(不図示)又は装置本体100Aに対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等の外部機器(不図示)からの画像情報に応じてトナー像を記録材Sに形成する。記録材Sとしては、普通紙、厚紙、ラフ紙、凹凸紙、コート紙等の用紙、プラスチックフィルム、布など、といった様々な種類のシート材が挙げられる。
【0012】
画像形成装置100の記録材の搬送プロセスについて説明する。記録材Sは給紙カセット10内に積載される形で収納されており、給紙ローラ13により画像形成タイミングに合わせて給紙カセット10から送り出される。給紙ローラ13により送り出された記録材Sは、搬送パス114の途中に配置されたレジストレーションローラ12へと搬送される。そして、レジストレーションローラ12において記録材Sの斜行補正やタイミング補正を行った後、記録材Sは二次転写部T2へと送られる。二次転写部T2は、二次転写内ローラ14と二次転写外ローラ11とにより形成される転写ニップ部であり、二次転写外ローラ11に二次転写電圧が印加されることに応じて記録材上にトナー像が転写される。
【0013】
以上説明した二次転写部T2までの記録材Sの搬送プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部T2まで送られて来る画像の形成プロセスについて説明する。まず、画像形成部について説明するが、各色の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、現像装置1a、1b、1c、1dで使用するトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外はほぼ同様に構成される。そこで、以下では、代表としてブラックの画像形成部Pdについて説明し、その他の画像形成部Pa、Pb、Pcについては説明を省略する。
【0014】
画像形成部Pdは、主に現像装置1d、帯電装置2d、感光ドラム3d、感光ドラムクリーナ4d、及び露光装置5d等から構成される。矢印R1方向に回転される感光ドラム3dの表面は、帯電装置2dにより予め表面を一様に帯電され、その後、画像情報の信号に基づいて駆動される露光装置5dによって静電潜像が形成される。次に、感光ドラム3d上に形成された静電潜像は、現像装置1dにより現像剤を用いてトナー像に現像される。そして、画像形成部Pdと中間転写ベルト80を挟んで配置される一次転写ローラ6dに一次転写電圧が印加されることに応じて、感光ドラム3d上に形成されたトナー像が、中間転写ベルト80上に一次転写される。感光ドラム3d上に僅かに残った一次転写残トナーは、感光ドラムクリーナ4dにより回収される。
【0015】
中間転写ベルト80は、二次転写内ローラ14、テンションローラ15、及び張架ローラ16によって張架され、矢印R2方向へと駆動される。本実施形態の場合、張架ローラ16は中間転写ベルト80を駆動する駆動ローラを兼ねている。画像形成部Pa~Pdにより並列処理される各色の画像形成プロセスは、中間転写ベルト80上に一次転写された上流の色のトナー像上に順次重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト80上に形成され、二次転写部T2へと搬送される。なお、二次転写部T2を通過した後の二次転写残トナーは、転写クリーナ22によって中間転写ベルト80から除去される。
【0016】
以上、それぞれ説明した搬送プロセス及び画像形成プロセスをもって、二次転写部T2において記録材Sとフルカラートナー像のタイミングが一致し、二次転写が行われる。その後、記録材Sは定着装置50へと搬送され、所定の圧力と熱量が加えられて記録材上にトナー像が定着される。定着装置50は、トナー像が形成された記録材Sを挟持搬送することにより、搬送される記録材Sを加熱、加圧してトナー像を記録材Sに定着させる。即ち、加熱、加圧によって記録材Sに形成されたトナー像のトナーが溶融、混合され、フルカラーの画像として記録材Sに定着される。このようにして、一連の画像形成プロセスは終了する。そして、本実施形態の場合、トナー像が定着された記録材Sは定着装置50から記録材冷却装置20へと搬送されて冷却される。例えば、記録材Sの温度は記録材冷却装置20の直前で90℃程度であるが、記録材冷却装置20の通過後で約60℃程度まで低下される。
【0017】
記録材冷却装置20により冷却された記録材Sは、片面画像形成の場合、一対の排出ローラ105に挟持搬送されて、そのまま排出トレイ120上に排出される。他方、両面画像形成の場合、切り替え部材110(フラッパーなどと呼ばれる)によって、搬送経路が排出トレイ120に続く経路から両面搬送パス111へ切り替えられ、排出ローラ105に挟持搬送される記録材Sは両面搬送パス111へと送られる。その後、反転ローラ112によって先後端が入れ替えられ、両面パス113を介して再び搬送パス114へと送られる。その後の搬送ならびに裏面(二面目)の画像形成プロセスに関しては、上述と同様なので説明を省略する。
【0018】
<記録材冷却装置>
次に、本実施形態の記録材冷却装置20について、
図2乃至
図5を用いて説明する。本実施形態の記録材冷却装置20は、ベルト冷却方式の冷却装置である。
図2に示すように、記録材冷却装置20は無端状の第一ベルト21と、第一ベルト21と記録材Sを挟持して搬送する無端状の第二ベルト25とを有している。第一ベルト21と第二ベルト25は共に、例えば強度の高いポリイミド樹脂などを用いて、厚みが100μm、ベルト周長が942mmに形成されたフィルム状のエンドレスベルトである。
【0019】
図2に示すように、第一ベルト21は複数の第一ベルト張架ローラ(22a~22d)に架け渡され、第一ベルト張架ローラ(22a~22d)のうち少なくともいずれか1つのローラが不図示の駆動モータによって回転される。本実施形態の場合、例えばローラ22dが駆動モータ(不図示)によって回転されることで、第一ベルト21が矢印Q方向へ移動する。駆動ローラとしてのローラ22dは、例えば表層に厚み1mmのゴム層を有し、外径φ40mmに形成されている。
【0020】
第二ローラとしてのローラ22bは、第一ベルト21の内周面に当接してローラ22cと共に第一ベルト21を張架可能に設けられて、第一ベルト21の幅方向(ローラ22cの回転軸線方向)の寄りを制御するステアリングローラである。ローラ22bは表層に厚み1mmのゴム層を有し、第一ローラとしてのローラ22cに対して舵角を切るステアリング制御が行われることによって、第一ベルト21の蛇行をコントロールし得る。ローラ22bはローラホルダ81aに回転自在に軸支されて、後述のステアリング機構400によってステアリング制御される。そのため、第一ベルト21の回転経路の一箇所には、第一ベルト21の端部位置を検出する端部センサ90が設けられている。この端部センサ90の検出信号に基づいて、回転中の第一ベルト21の端部位置が検出される。そして、ステアリング機構400が端部位置に基づいて動作されることで、ローラ22b(ステアリングローラ)の舵角は調整される。端部センサ90の詳細については後述する。
【0021】
ステアリング機構400及びローラホルダ81aについて、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、記録材冷却装置20を装置背面側から見た斜視図である。ただし、
図3では、第一ベルト21の図示を省略している。
図3に示すように、ステアリング機構400は、記録材冷却装置20の背面側の支持フレーム200に取り付けられている。支持フレーム200には、
図2に示した第一ベルト張架ローラ(22a~22d)、ヒートシンク30、ベルトクリーナ70(詳しくは収容ボックス72)それぞれの一端側が支持されている。ローラ22bとステアリング機構400とは、支持フレーム200を挟むようにして互いに反対側に配置されている。支持フレーム200には、少なくともステアリング操作軸406が挿通される貫通孔が形成されている。このように、フォーク板404を備える駆動変換部410は、支持フレーム200に対してローラ22bと反対側に位置している状態であっても、ローラ22bをステアリング制御可能となっている。
【0022】
ステアリング機構400は、
図4に示すように、ステアリングモータ401、ウォーム402、駆動変換部410、回動軸部405、ステアリング操作軸406、ポジションフラグ408、ポジションセンサ407を有している。ステアリングモータ401はステッピングモータであり、正逆方向の任意の方向に所定の回転数で回転可能である。ステアリングモータ401が回転すると、ステアリングモータ401の回転軸に取り付けられたウォーム402が回転される。
【0023】
ここで、駆動変換部410は、ウォームホイール403とフォーク板404とを一体的に有している。ウォーム402の回転は、ウォーム402と噛合されたウォームホイール403に伝達される。このとき、ステアリングモータ401の正逆回転に伴うウォーム402の回転に従って、ステアリングモータ401の回転軸線方向においてウォームホイール403が往復移動可能になっている。こうして、ウォーム402とウォームホイール403とを介して、ステアリングモータ401の回転に伴って駆動変換部410が回動軸部405を回動中心として回動し得る。つまり、駆動変換部410は、ウォームホイール403を介してステアリングモータ401の駆動を伝達されることで、フォーク板404が揺動するように、回動軸部405を揺動中心として揺動し得る。
【0024】
また、ステアリング機構400は、駆動変換部84の移動に伴って移動するポジションフラグ87と、ポジションフラグ87を介して駆動変換部84の位置を検出するポジションセンサ88とを備えている。そして、ポジションセンサ88の検出結果に応じたステアリング制御を実行可能となっている。
【0025】
ローラホルダ81aは、
図4に示すように、ローラ22dの回転軸を回転自在に軸支するためのベアリング部810が設けられている。また、ローラホルダ81aには、上記した駆動変換部410に嵌合されるステアリング操作軸406が固定されている。ステアリング操作軸406は、駆動変換部410のフォーク板404に隙間をもって嵌合されており、フォーク板404の揺動に伴って、駆動変換部410とともに動作し得る。このように、ステアリング操作軸406がフォーク板404の揺動に伴って動作することで、ローラホルダ81aは、ローラ22bの回転軸線に交差する揺動中心軸(不図示)を中心として揺動可能となっている。そして、ローラホルダ81aに支持されているローラ22bもローラホルダ81aの揺動に倣って揺動することで、ローラ22bの舵角を調整することができる。こうして、ローラ22bの舵角が調整されると、第一ベルト21が幅方向に往復移動されるので、第一ベルト21の幅方向の所定範囲内に位置付ける、第一ベルト21のステアリング制御を実現できる。
【0026】
図2に戻って、ローラ支持機構81は、上記したローラホルダ81aと、ローラホルダ81aを第一ベルト21に向けて付勢するバネ81bとを有する。このバネ81bは、例えば第一ベルト21の張力が約39.2N(約4kgf)となる付勢力でローラ22bを付勢可能なバネ圧固定のものである。
【0027】
第一ベルト21の内周側には、複数の第一ベルト張架ローラ(22a~22d)やローラ支持機構81の他に、ヒートシンク30、ベルトクリーナ70、ベルト張架機構部61が設けられている。これらヒートシンク30、ベルトクリーナ70、ベルト張架機構部61については後述する。
【0028】
他方、回転体としての第二ベルト25は複数の第二ベルト張架ローラ(26a~26d)に架け渡されて、第一ベルト21の外周面に当接される。第二ベルト25と第一ベルト21とが当接されることで、トナー像の形成された記録材Sを搬送しつつ冷却するための冷却ニップ部T4が形成される。ローラ26dは図示を省略したが、駆動ギアを介してローラ22dを駆動する駆動モータに接続されており、この駆動モータにより回転されることで、第二ベルト25が矢印R方向へ回転する。即ち、第二ベルト25は第一ベルト21と共に回転する。ローラ26bは、第二ベルト25の幅方向(ローラ26cの回転軸線方向)の寄りを制御するステアリングローラであり、幅方向中央部を揺動中心としてローラ26cに対して舵角を切るステアリング動作を行って、第二ベルト25の蛇行をコントロールする。即ち、ローラ26bは、上記したステアリング機構400と同様のステアリング機構420によってステアリング動作される。
【0029】
第二ベルト25の内周側には、第一ベルト21の内周側に配設されている後述のヒートシンク30に向かって第二ベルト25を加圧するために、複数の加圧ローラが設けられている。本実施形態では一例として、記録材搬送方向(矢印R方向)に関し、加圧ローラ26eが冷却ニップ部T4の上流側に、加圧ローラ26fが冷却ニップ部T4の下流側に設けられている。これら加圧ローラ26e、26fは例えば4.9N(0.5kgf)の加圧力で第二ベルト25を加圧しており、第二ベルト25を介して第一ベルト21をヒートシンク30により確実に当接させている。
【0030】
なお、ここでは第一ベルト21と第二ベルト25の両方を駆動させる例を示したが、これに限らない。例えば、第一ベルト21のみを駆動して第二ベルト25を第一ベルト21に従動させるようにしてもよいし、あるいは第二ベルト25のみを駆動して第一ベルト21を第二ベルト25に従動させるようにしてもよい。
【0031】
<ヒートシンク>
上記のように、第一ベルト21の内周側には、第一ベルト21を冷却するためのヒートシンク30が配設されている。本実施形態の場合、ヒートシンク30は、定着装置50(
図1参照)によりトナー像が形成された面側で記録材Sに当接する第一ベルト21の内周面に当接されている。即ち、トナー像が定着された記録材Sは、第一ベルト21と第二ベルト25とによって挟持され、これらの回転に従って記録材搬送方向(矢印R方向)へ搬送される。その際に、記録材Sは、第一ベルト21と第二ベルト25とが当接することにより形成されるニップ部としての冷却ニップ部T4を通過する。本実施形態の場合、冷却ニップ部T4を形成するうちの第一ベルト21がヒートシンク30により冷却されている。ヒートシンク30は、記録材Sを効率よく冷却するために、冷却ニップ部T4を形成する箇所において第一ベルト21の内周面に当接している。記録材Sは冷却ニップ部T4を通過する際に、ヒートシンク30によって冷却された第一ベルト21を介して温度が下げられる。
【0032】
冷却手段としてのヒートシンク30は、例えばアルミなどの金属で形成された放熱板である。ヒートシンク30は、第一ベルト21に接触して第一ベルト21から熱を奪うための受熱部30aと、熱を放熱するための放熱部30bと、受熱部30aから放熱部30bに熱を伝導するためのフィンベース30cとを有する。放熱部30bは、空気との接触面積を増やして効率のよい放熱を促すために、多数の放熱フィンにより形成されている。例えば、放熱フィンは厚みが1mm、高さが100mm、ピッチが5mmに設定され、フィンベース30cは厚みが10mmに設定される。また、ヒートシンク30自体を強制的に冷却するために、ヒートシンク30(詳しくは放熱部30b)に向けて送風する冷却ファン40が設けられている。この冷却ファン40の風量は、例えば2m3/minに設定される。
【0033】
<ベルトクリーナ>
また、第一ベルト21の内周側には、清掃手段としてのベルトクリーナ70が第一ベルト21の回転方向(矢印Q方向)に関し、ローラ22cの下流からローラ22b(ステアリングローラ)の上流までの間に設けられている。ベルトクリーナ70は、スクレーパー71と収容ボックス72とを有する。さらに、本実施形態の場合、ベルトクリーナ70はベルト装着ガイド73を有している。ベルト装着ガイド73については後述する。
【0034】
本実施形態の場合、スクレーパー71がヒートシンク30よりも重力方向上方で、且つ第一ベルト21の回転方向に関しローラ22cの下流からローラ22bの上流までの間で、第一ベルト21に当接するように、ベルトクリーナ70は設けられる。除去部材としてのスクレーパー71は例えば厚み0.1mmのPETシートにより、第一ベルト21の幅方向において少なくとも記録材Sが通過する範囲に亘って当接する長さに形成されたフィルム状のシート部材である。こうしたスクレーパー71は柔軟性を有しており、回転する第一ベルト21の動きに追従して第一ベルト21に当接した状態を維持し得る。本実施形態の場合、スクレーパー71は、第一ベルト21に対しカウンター方向から当接するように配置されている。
【0035】
上記のスクレーパー71は、第一ベルト21に付着した摩耗粉(削れ粉)や紙粉あるいは埃などの付着物を第一ベルト21から除去する。即ち、ヒートシンク30は第一ベルト21の内周面に当接していることから、回転する第一ベルト21はその内周面がヒートシンク30に摺擦される。そうすると、第一ベルト21がヒートシンク30によって削られるので、ベルトの摩耗粉が生じ得る。この摩耗粉は紙粉や埃などと共に第一ベルト21の内周面に付着物として付着し、ヒートシンク30の上流端に溜りやすい。そして、溜った付着物の量が多くなり、溜った付着物のうちの一部がヒートシンク30と第一ベルト21との間に入り込むと、熱抵抗が増し記録材Sの冷却性能を低下させ得る。
【0036】
こうしたベルトの摩耗粉の発生を抑制するために、第一ベルト21として、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィラーを含有するポリイミド樹脂により形成されたベルトが用いられる。PTFEフィラー含有率は、例えば重量パーセントで5%程度である。基材のポリイミド樹脂にPTFEフィラーを含有させると、ヒートシンク30との摩擦抵抗が低下するので、PTFEフィラーを含有させた第一ベルト21はPTFEフィラーを含有させていない場合に比べて、ヒートシンク30によって削られ難くなる。ただし、PTFEフィラーを含有させたベルトを用いても、摩耗粉はどうしても生じ得る。この摩耗粉はPTFEフィラーを含むため、第一ベルト21に付着し難いが、そうした摩耗粉であってもヒートシンク30と第一ベルト21との摺動面を通過すると、第一ベルト21に付着し得る。そうであるから、第一ベルト21の使用時間が長くなるにつれ、ヒートシンク30の上流端に溜る付着物の量は多くなる。そこで、第一ベルト21に付着した付着物を第一ベルト21から除去するために、上記したように、スクレーパー71が設けられている。
【0037】
ベルトクリーナ70において、スクレーパー71の重力方向下方には、スクレーパー71により第一ベルト21の内周面から掻き落された付着物を収容するために、収容容器としての収容ボックス72が配置されている。収容ボックス72は重力方向上方が開口しており、その開口部がスクレーパー71と第一ベルト21との当接箇所よりも第一ベルト21の回転方向上流側で付着物を受け入れできるように、収容ボックス72は配置されている。なお、スクレーパー71は、例えば両面テープなどによって収容ボックス72に固定されている。
【0038】
なお、ベルトクリーナ70は、スクレーパー71が第一ベルト21の回転方向に関し、ローラ22cとローラ22b間の中央よりもローラ22cに近い側で内周面に当接するように設けられるのが好ましい。即ち、本実施形態の場合、ローラ22bはステアリングローラであり、ステアリング制御に伴い舵角が調整されることから、ローラ22b側ではローラ22c側に比較して第一ベルト21が幅方向に大きく移動され得る。そうであれば、仮にローラ22bに近い側で第一ベルト21の内周面にスクレーパー71を当接させると、スクレーパー71が第一ベルト21の内周面に適切に当接しない場合が生じ、付着物を除去し難くなる虞がある。これを避けるため、本実形形態では、スクレーパー71がローラ22bよりもローラ22cに近い側で第一ベルト21の内周面に当接するように、ベルトクリーナ70が配設されている。
【0039】
上述したように、第一ベルト21はヒートシンク30により削られて摩耗し、また時間がたつにつれて劣化し得る。そこで、本実施形態では、作業者が第一ベルト21を交換できるようにしている。即ち、第一ベルト21は記録材冷却装置20の上枠体62(後述の
図5(a)、
図5(b)参照)に対して第一ベルト張架ローラ(22a~22d)の回転軸線方向に挿抜自在に設けられている。ただし、作業者が第一ベルト21を交換する際に、第一ベルト21と第二ベルト25とが当接した状態のままではベルトを挿抜し難い。そこで、第一ベルト21と第二ベルト25とが当接した当接状態と、第一ベルト21と第二ベルト25とが離間した離間状態、言い換えれば第一ベルト21が緩んだ状態とに変更可能に、第一ベルト21と第二ベルト25とは相対的に移動可能に設けられている。
【0040】
<接離機構>
次に、第一ベルト21と第二ベルト25とを相対的に移動させるための機構(接離機構と呼ぶ)について、説明する。
図5(a)及び
図5(b)は、記録材冷却装置20を記録材搬送方向の下流側から見た図である。ここで、
図3における左右方向が第一ベルト張架ローラ(22a~22d)の回転軸線方向であり、
図3において奥手前方向が記録材搬送方向である。なお、ここでは、上枠体62の幅方向一端側が下枠体63に対し重力方向上方に向け揺動される例を示したが、これに限らず、下枠体63の幅方向一端側が上枠体62に対し重力方向下方に向け揺動されるようにしてもよい。本実施形態の場合、接離機構(接離手段)は主に後述のフック部材64、ピン65、圧縮バネ66により構成されている。
【0041】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、本実施形態の記録材冷却装置20は上枠体62と下枠体63とに大きく分けられる。上枠体62は、上述した第一ベルト張架ローラ(22a~22d)を回転可能に保持し、またヒートシンク30、ベルトクリーナ70、後述のベルト張架機構部61を保持している。他方、下枠体63は、上述した第二ベルト張架ローラ(26a~26d)、加圧ローラ26e、26fを回転可能に保持している。これら上枠体62と下枠体63とは、記録材冷却装置20の背面側(装置本体の奥側、ベルトの装着方向下流側)の支持フレーム200に設けられた揺動軸200aを揺動中心として揺動可能に連結されている。第一ベルト21は、支持フレーム200とは反対側の幅方向一端側から、上枠体62に挿抜自在に設けられている(
図5(b)では右側)。
【0042】
上枠体62の幅方向一端側にはフック部材64が設けられ、下枠体63の幅方向他端側にはピン65が設けられている。下枠体63の幅方向他端側には、上枠体62を重力方向上方に向けて付勢する圧縮バネ66が配置されている。そして、フック部材64には把持部67が設けられており、作業者はこの把持部67を持ってフック部材64を回動させることによって、フック部材64をピン65に係合させたり、フック部材64とピン65との係合を解除させたりし得る。
図5(a)に示すように、フック部材64がピン65に係合されることで、第一ベルト21と第二ベルト25とは当接した当接状態となる。作業者は圧縮バネ66の力に抗して上枠体62を下枠体63に向けて押し下げるようにして、フック部材64をピン65に係合させる。
【0043】
作業者は第一ベルト21を交換する場合、フック部材64とピン65との係合を解除する。フック部材64とピン65との係合が解除されると、
図5(b)に示すように、上枠体62は圧縮バネ66によって上方に持ちあがるようにして揺動する。この際に、第一ベルト張架ローラ(22a~22d)、第一ベルト21、ヒートシンク30、ベルトクリーナ70、ベルト張架機構部61が、上枠体62と一体的に移動される。そして、上枠体62はストッパー(不図示)によって揺動が止められることで所定位置に位置づけられる。こうして、上枠体62が下枠体63に対して揺動することで、第一ベルト21と第二ベルト25とは離間した離間状態となる。
【0044】
<ベルト張架機構部>
図2に戻り、本実施形態の記録材冷却装置20には、ベルト交換を容易に行えるようにするために、ベルト張架機構部61が設けられている。移動手段としてのベルト張架機構部61は、第一ベルト21が張架された張架位置(第一位置、
図2参照)と、第一ベルト21が緩められた非張架位置(第二位置、
図6参照)との間で、ローラ22b(ステアリングローラ)を移動させるための機構である。ローラ22bが第二位置にある場合、ローラ22bが第一位置に位置する場合よりも第一ベルト21への当接圧が小さくなり、第一ベルト21の張架が緩まる。
【0045】
ここで、ローラ22bがステアリングローラでなく、圧縮バネにより第一ベルト21を所定の張力で張架する所謂テンションローラである場合、ローラ22bを張架位置と非張架位置との間で移動させるためには、ローラ22bのみを移動させてよい。即ち、ローラ22bを張架位置から非張架位置へ移動する際に、圧縮バネの付勢力に抗してローラ22bを移動させるようにすればよい。他方、ローラ22bがステアリングローラである場合にはローラ22bを揺動する機構を有していることから、ローラ22bを張架位置と非張架位置との間で移動させるには、ローラ支持機構81ごとローラ22bを移動させるようにしている。
【0046】
図2及び
図6に示すように、ベルト張架機構部61は、ローラ支持機構81を保持する保持体61aと、例えば楕円形状に形成されたカム部61bとを有する。保持体61aは、上枠体62(
図5(a)参照)に揺動軸61cを揺動中心として揺動可能に設けられている。また、カム部61bが上枠体62に回転可能に設けられている。カム部61bは作業者によって操作されることにより、
図2に示した位置から
図6に示した位置までの間を往復移動するように回転される。そして、カム部61bの回転により保持体61aが揺動される。このカム部61bが作業者により回転される向きに応じて、ローラ22bはヒートシンク30に近づく向き(ベルトの内側向き)に移動したり、ヒートシンク30から離れる向き(ベルトの外側向き)に移動したりする。こうして、ローラ22bは、第一ベルト21が第一ベルト張架ローラ(22a~22d)に張架された張架位置(
図2)と、第一ベルト21が第一ベルト張架ローラ(22a~22d)に張架されずに緩んでいる非張架位置(
図6)との間を移動し得る。
【0047】
ローラ22bが張架位置にある場合、第一ベルト21に対しスクレーパー71が当接し、また第一ベルト21がヒートシンク30に対し所定の圧力で当接した状態となる。その状態で、第一ベルト21の張力は約39.2N(約4kgf)となる。他方、ローラ22bが非張架位置にある場合、第一ベルト21が第一ベルト張架ローラ(22a~22d)に対し緩んだ状態となる。第一ベルト21が緩んだ状態であれば、作業者は第一ベルト21に対しスクレーパー71やヒートシンク30を当接させないようにできる。つまり、第一ベルト21の交換時、作業者は古いベルトをスクレーパー71やヒートシンク30に当接させることなく、上枠体62から取り外すことができる。そして、作業者は新しいベルトを第一ベルト張架ローラ(22a~22d)に架け渡すようにして、上枠体62に取り付けることができる。
【0048】
図6を用い、ベルト張架機構部61の具体的な動作を説明する。
図6に示すように、作業者は不図示のつまみを持って反時計回り(矢印C参照)にカム部61bを回転させることで、保持体61aが揺動軸61cを揺動中心として自重でカム部61bに接触しながら下方に移動する。本実施形態の場合、ヒートシンク30の側面30dがカム部61bのストッパーの役割を果たしており、そこでカム部61bの回転が止まるようになっている。こうして、ローラ22bは張架位置dから非張架位置eに移動される。
【0049】
非張架位置eにおけるローラ22bの位置は、張架位置dにおけるローラ22bの位置よりも第一ベルト21の内側であり、言うなればヒートシンク30により近い位置である。そうなるように、保持体61aとカム部61bとは揺動軸61cを含め、上枠体62(
図5(a))に設けられている。ローラ22bが非張架位置eに移動して第一ベルト21から離れることにより、第一ベルト21の張力が解除されるので、作業者は緩んだ第一ベルト21を引き抜いてのベルト交換が可能になる。
【0050】
新しい第一ベルト21を上枠体62に取り付けた後、作業者はカム部61bを時計回りに回転させる。すると、保持体61aが揺動軸61cを揺動中心としてカム部61bに持ち上げられるようにして上方に移動する。そして、カム部61bは、保持体61aの揺動軸61cと反対側に形成されたストッパー部61dに接触することによって、回転が止まるようになっている。こうして、ローラ22bは非張架位置eから張架位置dに移動される。
【0051】
なお、ローラ22bが張架位置dにない場合、作業者は上枠体62を下枠体63に向けて押し下げることができず、第一ベルト21と第二ベルト25とを当接した当接状態にできないようにすると好ましい。
【0052】
<端部センサ>
次に、端部センサ90について、
図6乃至
図8を用いて説明する。位置検出手段としての端部センサ90は、ベルト追従部材91と、センサフラグ92と、複数の光学センサ(不図示)とを有している。
図7に示すように、センサフラグ92は、第一ベルト21が幅方向に移動した際に、第一ベルト21の移動にあわせて揺動可能にセンサ支持板95に支持されている。センサ支持板95は、上述の支持フレーム200に取り付けられている。
【0053】
図7及び
図8に示すように、センサフラグ92は例えば扇形柱の部材であり、円弧状の外周面に複数の開口部92aと複数の被検出部92bとが形成されている。このセンサフラグ92の内側から外周面に対向し、且つ、センサフラグ92の揺動方向に沿って所定間隔を空けて並べられるようにして、不図示の複数の光学センサがセンサ支持板95に固定されている。センサフラグ92がセンサ支持板95に対し揺動することに応じて、複数の光学センサと被検出部92b(又は開口部92a)それぞれの位置関係が変化し、光学センサそれぞれの受光状態が切り替わり得る。具体的には、光学センサが被検出部92bを検出している検出状態と、光学センサが開口部92aに対向し被検出部92bを検出していない非検出状態との切り替えが行われる。こうした光学センサそれぞれの検出状態と非検出状態との組み合わせによって、第一ベルト21の端部位置が検出可能になっている。
【0054】
上記のセンサフラグ92には、ベルト追従部材91が設けられている。ベルト追従部材91はセンサフラグ92から重力方向下方に向け延びるように設けられた、例えば棒状の部材である。ベルト追従部材91は、コイルばね(不図示)によって第一ベルト21の装着方向(回転方向に交差する方向、
図7の矢印X方向)の反対側に向けて付勢され、第一ベルト21の回転中に第一ベルト21の幅方向端部(装着方向先端21a)に常に当接している。それ故、第一ベルト21が幅方向に移動すると、ベルト追従部材91は第一ベルト21との接触状態を維持したまま、第一ベルト21の移動に追従して動く。こうしたベルト追従部材91の動きに従って、センサフラグ92はセンサ支持板95に対し揺動する。
【0055】
本実施形態では、
図6に示すように、第一ベルト21の回転方向(矢印Q方向)において、スクレーパー71がローラ22bよりもローラ22cに近い側で第一ベルト21の内周面に当接するように、ベルトクリーナ70は配設されている。そして、スクレーパー71が第一ベルト21に当接する当接箇所よりも下流側で、ベルト追従部材91が第一ベルト21の装着方向先端21a(
図7参照)に接触するように、端部センサ90は配設されている。こうした場合、スクレーパー71の当接箇所よりも上流側で、ベルト追従部材91が第一ベルト21の装着方向先端21aに接触するように端部センサ90を配設した場合に比べると、第一ベルト21の装着がしやすくなるので好ましい。
【0056】
<ベルト装着ガイド>
ベルトクリーナ70には、案内部材としてのベルト装着ガイド73が設けられている。ベルト装着ガイド73は例えば板状部材であって、収容ボックス72に固定されている。ベルト装着ガイド73について、
図6乃至
図10(b)並びに比較例を示した
図10(c)を用いて説明する。なお、
図7は第一ベルト21が装着されている状態を示し、
図8及び
図9は第一ベルト21が装着されていない場合を示す。また、
図9に記した点線は、第一ベルト21が装着された場合における第一ベルト21の装着方向先端21aの位置を示している。
【0057】
図6に示すように、ベルト装着ガイド73は、第一ベルト21の回転方向(矢印Q方向)において、スクレーパー71とは反対向きに、つまりベルト追従部材91側に向けて延びるように、収容ボックス72に設けられる。また、ベルト装着ガイド73は重力方向において、回転方向下流側の先端(下流端73c)がベルト追従部材91の重力方向下端部91aよりも上方側に位置するように、収容ボックス72に設けられる。そして、ベルト装着ガイド73は、第一ベルト21の装着方向(幅方向、ローラ22cの回転軸線方向)から見て、一部がベルト追従部材91に重なるように設けられるのが好ましい。
【0058】
さらに、ベルト装着ガイド73は、第一ベルト21の回転方向において、下流端73cが上流側よりも重力方向上方に位置するように傾斜して設けられるのが好ましい。ベルト装着ガイド73が傾斜していることで、第一ベルト21の装着時、ベルト装着ガイド73と第一ベルト21の内周面との接触範囲を狭くでき、もってベルト装着時の摺擦抵抗を抑制して第一ベルト21に傷が付き難くできる。第一ベルト21により傷が付き難くするため、ベルト装着ガイド73の下流端73cは丸めるなど曲線状に形成するのが好ましい。
【0059】
図7に示すように、第一ベルト21はセンサ支持板95とベルト装着ガイド73(
図8参照)との間を回転可能に装着される。そして、第一ベルト21は張架された状態で、装着方向先端21aがベルト追従部材91に接触され、内周面がスクレーパー71に当接される。
【0060】
図10(a)に示すように、ベルト装着ガイド73は、第一ベルト21が緩められた状態で第一ベルト21の内周面に接触する。作業者により第一ベルト21が装着される場合、ベルト装着ガイド73が第一ベルト21の内周面に当接することで、第一ベルト21は重力方向下方から支持されながらベルト追従部材91に接触する位置へと案内される。そうできるようにするため、本実施形態では、上述したベルト装着ガイド73が収容ボックス72に設けられている。なお、
図10(b)に示すように、第一ベルト21が張架されている場合、ベルト装着ガイド73は第一ベルト21の内周面に接触しない。これは、第一ベルト21の回転時に、ベルト装着ガイド73によって第一ベルト21の内周面が摺擦されないようにするためである。
【0061】
また、ベルト装着時に第一ベルト21をベルト追従部材91に向けて確実に案内するため、
図9に示すように、ベルト装着ガイド73は第一ベルト21の幅方向に延びるように収容ボックス72に沿って設けられている。そして、ベルト装着ガイド73は装着方向(矢印X方向)において、下流端73bがベルト追従部材91の近傍に位置し、上流端73aがスクレーパー71の上流端71aよりも上流側に位置するように、幅方向に亘って延設されているのが好ましい。こうすると、作業者は第一ベルト21の装着開始から装着完了まで、第一ベルト21をベルト装着ガイド73によって支持させながら装着できるので、第一ベルト21をベルト追従部材91に接触する適切な位置に容易に装着し得る。
【0062】
ここで、ベルト装着ガイド73を設けていない比較例を、
図10(c)に示した。
図10(c)に示す比較例の場合、第一ベルト21の装着方向先端21a(
図7参照)がベルト追従部材91の重力方向下方に潜り込み、第一ベルト21の幅方向端部(装着方向先端21a)がベルト追従部材91に接触しない状態とされる虞がある。即ち、上述したように、ローラ22bがベルトの内側向きに移動された状態である場合、第一ベルト21は内側に緩んだ状態で装着方向に移動される。このとき、第一ベルト21の一部がベルト追従部材91の重力方向下端部91aよりも下方に垂れ下がりやすく、そのまま第一ベルト21が装着されてしまい得る。その状態で、ローラ22bがベルトの外側向きに移動され、つまり第一ベルト21が張架されると、第一ベルト21の上面部にベルト追従部材91の重力方向下端部91aが接触し、第一ベルト21の幅方向端部はベルト追従部材91に接触しない。この状態では、端部センサ90による第一ベルト21の端部位置の検出ができないし、また第一ベルト21や端部センサ90が破損し得る。
【0063】
これに対し、本実施形態では、上述したベルト装着ガイド73を収容ボックス72に設けた。ベルト装着ガイド73は、ベルト装着時に、第一ベルト21の一部がベルト追従部材91の重力方向下端よりも下方に垂れ下がるのを規制し、第一ベルト21をベルト追従部材91に向けて確実に案内する。これにより、作業者はベルト装着時に、スクレーパー71や第一ベルト21を傷つけたり変形させたりすることなく、第一ベルト21をベルト追従部材91に接触する適切な位置に装着することが容易にできるようになる。
【0064】
<他の実施形態>
なお、上述した実施形態では、ヒートシンク30やスクレーパー71が配置されていない第二ベルト25側にベルト張架機構部61を設けていないが、第二ベルト25側にもベルト張架機構部61を設けてもよい。即ち、ヒートシンク30が配設されていない第二ベルト25は、第一ベルト21に比べ摩耗や劣化するのが比較的に遅いが、使用に応じて摩耗するし、また時間がたつにつれて劣化するので、第二ベルト25が緩められて交換可能に設けられていてよい。
【0065】
なお、上述した実施形態では、画像形成装置100の装置本体100A内に記録材冷却装置20を設けた場合を例に示したが(
図1参照)、これに限らない。例えば、記録材冷却装置20は装置本体100Aの外部に設けられてもよい。
図11に、記録材冷却装置20を装置本体100Aの外部に設けた例を示す。
【0066】
図11に示すように、装置本体100Aには外部冷却装置としての外部冷却ユニット101が連結されている。外部冷却ユニット101は画像形成装置100の機能を拡張するために後付け可能な周辺機(オプションユニットなどと呼ばれる)の1つとして、画像形成装置100に連結可能に構成されている。外部冷却ユニット101は、画像形成装置100から排出される記録材Sを冷却して、定着前に比べて高い記録材Sの温度を所定温度以下に下げるために配設される。外部冷却ユニット101は、記録材Sを冷却するために上述した記録材冷却装置20を有している。
【0067】
外部冷却ユニット101により冷却された記録材Sは、排出ローラ85により外部冷却ユニット101から排出されて排出トレイ120に積載される。排出トレイ120は、外部冷却ユニット101や画像形成装置100に対し着脱自在に設けられている。即ち、排出トレイ120は、画像形成装置100に外部冷却ユニット101が連結されていない場合、画像形成装置100に装着されている(
図1参照)。そして、画像形成装置100に外部冷却ユニット101が連結される際に、作業者によって画像形成装置100から取り外されて外部冷却ユニット101に付け替えられる。なお、周辺機として、複数の外部冷却ユニット101が連結されてもよい。作業者は連結する外部冷却ユニット101の台数を増やすことによって、既存の画像形成装置100に対し記録材Sの冷却能力を向上させることが容易にできる。
【符号の説明】
【0068】
20…記録材冷却装置、21…ベルト(第一ベルト)、22b…第二ローラ(ローラ)、22c…第一ローラ(ローラ)、25…回転体(第二ベルト)、30…冷却手段(放熱板、ヒートシンク)、61…移動手段(ベルト張架機構部)、64…接離手段(フック部材)、65…接離手段(ピン)、66…接離手段(圧縮バネ)、70…清掃手段(ベルトクリーナ)、71…除去部材(スクレーパー)、72…収容容器(収容ボックス)、73…案内部材(ベルト装着ガイド)、90…位置検出手段(端部センサ)、91…追従部材(ベルト追従部材)、400…ステアリング機構、S…記録材、T4…ニップ部(冷却ニップ部)