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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】保護素子及びバッテリパック
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/76 20060101AFI20240227BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240227BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20240227BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20240227BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
H01H37/76 Q
B60L3/00 H
B60L58/10
H02H7/18
H02J7/00 S
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020074410
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021174575
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕二
(72)【発明者】
【氏名】小森 千智
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-073288(JP,A)
【文献】特開2015-225786(JP,A)
【文献】特開2015-053260(JP,A)
【文献】特開2017-117774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 69/02
H01H 85/00 - 87/00
B60L 3/00
B60L 58/10
H02H 7/18
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、
上記絶縁基板の一面側に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、
上記絶縁基板の一面側に形成され、上記発熱体を発熱させる電流が給電される発熱体給電電極と、
上記発熱体給電電極から引き出され、上記発熱体の一端部と接続された第1の引出電極と、
上記ヒューズエレメントと接する中間電極と、
上記絶縁基板の一面側の、上記発熱体及び上記中間電極との間に形成され、上記発熱体及び上記中間電極を接続する発熱体接続電極と、
上記発熱体接続電極から引き出され、上記発熱体の他端部と接続された第2の引出電極と、
上記発熱体、上記第1の引出電極及び上記第2の引出電極を被覆し、上記中間電極が積層された絶縁層を有し、
上記中間電極は、上記絶縁層を介して、上記第1の引出電極と重畳せず、且つ上記第2の引出電極と重畳し、
上記中間電極は、最も短い辺が上記第1の引出電極と対向しないように配置されている、保護素子。
【請求項2】
上記第1の引出電極は、矩形状に形成された上記発熱体の一側縁に沿って延在されるとともに、当該発熱体の一側縁が重畳され、
上記第2の引出電極は、上記発熱体の他側縁に沿って延在されるとともに、当該発熱体の他側縁が重畳され、
上記中間電極は、上記第2の引出電極と上記第2の引出電極の延在方向に重畳されている、請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
絶縁基板と、
上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、
上記絶縁基板の一面側に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、
上記絶縁基板の一面側に形成され、上記発熱体を発熱させる電流が給電される発熱体給電電極と、
上記発熱体給電電極から引き出され、上記発熱体の一端部と接続された第1の引出電極と、
上記ヒューズエレメントと接する中間電極と、
上記絶縁基板の一面側の、上記発熱体及び上記中間電極との間に形成され、上記発熱体及び上記中間電極を接続する発熱体接続電極と、
上記発熱体接続電極から引き出され、上記発熱体の他端部と接続された第2の引出電極と、
上記発熱体、上記第1の引出電極及び上記第2の引出電極を被覆し、上記中間電極が積層された絶縁層を有し、
平面視において、上記第1の引出電極、上記発熱体、上記第2の引出電極、上記中間電極の順に配置されている、保護素子。
【請求項4】
上記第2の引出電極と上記中間電極は、平面視において重畳されていない請求項に記載の保護素子。
【請求項5】
上記中間電極の両側に、上記発熱体、上記第1の引出電極、及び上記第2の引出電極が、それぞれ設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項6】
上記絶縁基板の一面と反対側の他面には、上記ヒューズエレメントの溶融導体を保持する保持電極が形成され、
上記中間電極と上記保持電極とが、上記絶縁基板を貫通する貫通孔を介して連続される請求項に記載の保護素子。
【請求項7】
上記絶縁基板は、溶融した上記ヒューズエレメントの溶融導体を、上記貫通孔を介して
上記保持電極側に吸引する溶断部材を構成し、
上記ヒューズエレメントが上記溶断部材に挟持されている請求項記載の保護素子。
【請求項8】
絶縁基板と、
上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、
上記絶縁基板の上記一面と反対の他面側に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、
上記絶縁基板の他面側に形成され、上記発熱体を発熱させる電流が給電される発熱体給電電極と、
上記発熱体給電電極から引き出され、上記発熱体の一端部と接続された第1の引出電極と、
上記絶縁基板の一面側に形成され、上記ヒューズエレメントが配置された中間電極と、
上記絶縁基板の他面側の、上記発熱体及び上記中間電極との間に形成され、上記発熱体及び上記中間電極を接続する発熱体接続電極と、
上記発熱体接続電極から引き出され、上記発熱体の他端部と接続された第2の引出電極と、
上記発熱体、上記第1の引出電極及び上記第2の引出電極を被覆する絶縁層を有し、
上記中間電極は、上記絶縁基板を介して、上記第1の引出電極と重畳せず、上記第2の引出電極と重畳し、
上記中間電極は、最も短い辺が上記第1の引出電極と対向しないように配置されている、保護素子。
【請求項9】
絶縁基板と、
上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、
上記絶縁基板の上記一面と反対の他面側に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、
上記絶縁基板の他面側に形成され、上記発熱体を発熱させる電流が給電される発熱体給電電極と、
上記発熱体給電電極から引き出され、上記発熱体の一端部と接続された第1の引出電極と、
上記絶縁基板の一面側に形成され、上記ヒューズエレメントが配置された中間電極と、
上記絶縁基板の他面側の、上記発熱体及び上記中間電極との間に形成され、上記発熱体及び上記中間電極を接続する発熱体接続電極と、
上記発熱体接続電極から引き出され、上記発熱体の他端部と接続された第2の引出電極と、
上記発熱体、上記第1の引出電極及び上記第2の引出電極を被覆する絶縁層を有し、
上記中間電極は、上記絶縁基板を介して、上記第1の引出電極と重畳し、上記第2の引出電極と重畳する、保護素子。
【請求項10】
上記中間電極の両側に、上記発熱体、上記第1の引出電極、及び上記第2の引出電極が、それぞれ設けられている請求項8又は9のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項11】
上記絶縁層上に、上記ヒューズエレメントの溶融導体を保持する保持電極が形成され、
上記中間電極と上記保持電極とが、上記絶縁基板を貫通する貫通孔を介して連続される請求項10に記載の保護素子。
【請求項12】
上記絶縁基板は、溶融した上記ヒューズエレメントの溶融導体を、上記貫通孔を介して上記保持電極側に吸引する溶断部材を構成し、
上記ヒューズエレメントが上記溶断部材に挟持されている請求項11に記載の保護素子。
【請求項13】
1つ以上のバッテリセルと、
上記バッテリセルの充放電経路上に接続され、該充放電経路を遮断する保護素子と、
上記バッテリセルの電圧値を検出して上記保護素子への通電を制御する電流制御素子とを備え、
上記保護素子は、
絶縁基板と、
上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、
上記絶縁基板の一面側に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、
上記絶縁基板の一面側に形成され、上記発熱体を発熱させる電流が給電される発熱体給電電極と、
上記発熱体給電電極から引き出され、上記発熱体の一端部と接続された第1の引出電極と、
上記ヒューズエレメントと接する中間電極と、
上記絶縁基板の一面側の、上記発熱体及び上記中間電極との間に形成され、上記発熱体及び上記中間電極を接続する発熱体接続電極と、
上記発熱体接続電極から引き出され、上記発熱体の他端部と接続された第2の引出電極と、
上記発熱体、上記第1の引出電極及び上記第2の引出電極を被覆し、上記中間電極が積層された絶縁層を有し、
上記中間電極は、上記絶縁層を介して、上記第1の引出電極と重畳せず、且つ上記第2の引出電極と重畳し、
上記中間電極は、最も短い辺が上記第1の引出電極と対向しないように配置されている、バッテリパック。
【請求項14】
1つ以上のバッテリセルと、
上記バッテリセルの充放電経路上に接続され、該充放電経路を遮断する保護素子と、
上記バッテリセルの電圧値を検出して上記保護素子への通電を制御する電流制御素子とを備え、
上記保護素子は、
絶縁基板と、
上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、
上記絶縁基板の一面側に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、
上記絶縁基板の一面側に形成され、上記発熱体を発熱させる電流が給電される発熱体給電電極と、
上記発熱体給電電極から引き出され、上記発熱体の一端部と接続された第1の引出電極と、
上記ヒューズエレメントと接する中間電極と、
上記絶縁基板の一面側の、上記発熱体及び上記中間電極との間に形成され、上記発熱体及び上記中間電極を接続する発熱体接続電極と、
上記発熱体接続電極から引き出され、上記発熱体の他端部と接続された第2の引出電極と、
上記発熱体、上記第1の引出電極及び上記第2の引出電極を被覆し、上記中間電極が積層された絶縁層を有し、
平面視において、上記第1の引出電極、上記発熱体、上記第2の引出電極、上記中間電極の順に配置されている、
バッテリパック。
【請求項15】
1つ以上のバッテリセルと、
上記バッテリセルの充放電経路上に接続され、該充放電経路を遮断する保護素子と、
上記バッテリセルの電圧値を検出して上記保護素子への通電を制御する電流制御素子とを備え、
上記保護素子は、
絶縁基板と、
上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、
上記絶縁基板の上記一面と反対の他面側に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、
上記絶縁基板の他面側に形成され、上記発熱体を発熱させる電流が給電される発熱体給電電極と、
上記発熱体給電電極から引き出され、上記発熱体の一端部と接続された第1の引出電極と、
上記絶縁基板の一面側に形成され、上記ヒューズエレメントが配置された中間電極と、
上記絶縁基板の他面側の、上記発熱体及び上記中間電極との間に形成され、上記発熱体及び上記中間電極を接続する発熱体接続電極と、
上記発熱体接続電極から引き出され、上記発熱体の他端部と接続された第2の引出電極と、
上記発熱体、上記第1の引出電極及び上記第2の引出電極を被覆する絶縁層を有し、
上記中間電極は、上記絶縁基板を介して、上記第1の引出電極と重畳せず、上記第2の引出電極と重畳し、
上記中間電極は、最も短い辺が上記第1の引出電極と対向しないように配置されている、バッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電流経路を溶断することにより、電流経路上に接続された回路を保護する保護素子、及びこれを用いたバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
充電して繰り返し利用することのできる二次電池の多くは、バッテリパックに加工されてユーザに提供される。特に重量エネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池においては、ユーザ及び電子機器の安全を確保するために、一般的に、過充電保護、過放電保護等のいくつもの保護回路をバッテリパックに内蔵し、所定の場合にバッテリパックの出力を遮断する機能を有している。
【0003】
多くのリチウムイオン二次電池を用いた電子装置においては、バッテリパックに内蔵されたFETスイッチを用いて出力のON/OFFを行うことにより、バッテリパックの過充電保護又は過放電保護動作を行う。しかしながら、何らかの原因でFETスイッチが短絡破壊した場合、雷サージ等が印加され、瞬間的な大電流が流れた場合、或いはバッテリセルの寿命によって出力電圧が異常に低下したり、逆に過大異常電圧を出力した場合であってもバッテリパックや電子機器は、発火等の事故から保護されなければならない。そこで、このような想定し得るいかなる異常状態においても、バッテリセルの出力を安全に遮断するために、外部からの信号によって電流経路を遮断する機能を有するヒューズ素子からなる保護素子が用いられている。
【0004】
このようなリチウムイオン二次電池等向けの保護回路の保護素子として、保護素子内部に発熱体を有し、この発熱体の発熱によって電流経路上の可溶導体を溶断する構造が用いられている。
【0005】
リチウムイオン二次電池の用途は、近年拡大しており、より大電流の用途、例えば電動ドライバ等の電動工具や、ハイブリッドカー、電気自動車、電動アシスト自転車等の輸送機器、蓄電池等に採用が検討され、一部採用が開始されている。これらの用途において、起動時等には、数10A~100Aを超えるような大電流が流れる場合がある。このような大電流容量に対応した保護素子の実現が望まれている。
【0006】
このような大電流に対応する保護素子を実現するために、断面積を増大させた可溶導体を用い、発熱体を形成した絶縁基板の表面に、この可溶導体を接続した保護素子も提案されている。
【0007】
図27は、従来の保護素子の一構成例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図であり、(B)は断面図であり、(C)は底面図である。図27に示す保護素子100は、絶縁基板101と、絶縁基板101の表面上に形成された第1、第2の電極102、103と、絶縁基板101の表面に形成された発熱体104と、発熱体104を被覆する絶縁層105と、絶縁層105上に積層されるとともに発熱体104と接続された中間電極106と、第1の電極102、中間電極106、及び第2の電極103にわたって接続用ハンダを介して搭載されるヒューズエレメント107とを備える。
【0008】
第1、第2の電極102,103は、保護素子100が接続される外部回路の電流経路上に接続される端子部であり、第1の電極102は絶縁基板101の裏面に形成された第1の外部接続電極102aとキャスタレーションを介して接続され、第2の電極103は絶縁基板101の裏面に形成された第2の外部接続電極103aとキャスタレーションを介して接続されている。保護素子100は、第1、第2の外部接続電極102a,103aが、保護素子100が実装される外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、ヒューズエレメント107が外部回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。
【0009】
発熱体104は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、例えばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。また、発熱体104は、絶縁基板101の表面上に形成された発熱体給電電極108と接続されている。発熱体給電電極108は、絶縁基板101の裏面に形成された第3の外部接続電極108aとキャスタレーションを介して接続されている。保護素子100は、第3の外部接続電極108aが、保護素子100が実装される外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、発熱体104が外部回路に設けられた外部電源と接続されている。そして、発熱体104は、図示しないスイッチ素子等により常時、電流及び発熱が制御されている。
【0010】
発熱体104は、ガラス層等からなる絶縁層105によって被覆されるとともに、絶縁層105上に中間電極106が形成されることにより、絶縁層105を介して中間電極106が重畳されている。また、中間電極106上には第1、第2の電極102,103間にわたって接続されたヒューズエレメント107が接続されている。
【0011】
これにより、保護素子100は、発熱体104とヒューズエレメント107が重畳されることにより熱的に接続され、発熱体104が通電によって発熱するとヒューズエレメント107を溶断することができる。
【0012】
ヒューズエレメント107は、Pbフリーハンダなどの低融点金属やAg、Cu又はこれらを主成分とする合金などの高融点金属により形成され、あるいは低融点金属と高融点金属の積層構造を有する。そして、ヒューズエレメント107は、第1の電極102から中間電極106を跨って第2の電極103にかけて接続されることにより、保護素子100が組み込まれた外部回路の電流経路の一部を構成する。そして、ヒューズエレメント107は、定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、あるいは発熱体104の発熱により溶断し、第1、第2の電極102,103間を遮断する。
【0013】
そして、保護素子100は、外部回路の電流経路を遮断する必要が生じると、スイッチ素子により発熱体104へ通電される。これにより、保護素子100は、発熱体104が高温に発熱され、外部回路の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント107が溶融される。ヒューズエレメント107の溶融導体は、濡れ性の高い中間電極106及び第1、第2の電極102,103に引き寄せられることによりヒューズエレメント107が溶断される。したがって、保護素子100は、第1の電極102~中間電極106~第2の電極103の間を溶断させ、外部回路の電流経路を遮断することができる。
【0014】
なお、保護素子としては、図27に示す構成の他にも図28に示すように、2つの発熱体104を備えたものも提案されている。図28に示す保護素子110は、絶縁基板101の表面上の第1、第2の電極102,103間に、2つの発熱体104が並列して設けられている。各発熱体104は絶縁層105によって被覆されるとともに、絶縁層105上に設けられた中間電極106が、両発熱体104間にわたって跨るように重畳形成されている。
【0015】
また、図28に示す保護素子110では、絶縁基板101の裏面に保持電極111が形成されるとともに、中間電極106と保持電極111間を貫く複数の貫通孔112が設けられている。保持電極111及び貫通孔112は、中間電極106上で溶融したヒューズエレメント107の溶融導体を吸引して大電流用途に対応して大型化したヒューズエレメント107の溶融導体の保持容量を増加させるものであり、貫通孔112の内周面には導電層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2018-78046号公報
【文献】特開2018-156959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図27に示す保護素子100や図28に示す保護素子110のような従来構造では、大電流用途のリチウムイオン二次電池の保護回路に用いられた場合、発熱体104に電力を供給する外部電源として当該大電流用途のリチウムイオン二次電池が用いられることから、保護素子100の作動時に発熱体給電電極108に高電圧が印加されることとなる。
【0018】
このため、保護素子100においては、図29に示すように、発熱体給電電極108から中間電極106の先端へスパーク(放電)が発生し、中間電極106が破損する場合がある。そして、中間電極106が破損すると、破損個所においてヒューズエレメント107への熱伝導率が下がり、ヒューズエレメント107を溶断させるまでの時間が延びて、速やかに安全に電流経路を遮断することができなくなる恐れがある。
【0019】
また、図30に示すように、保護素子110においても、発熱体給電電極108から中間電極106の先端へスパークが発生し中間電極106が破損すると、破損個所においてヒューズエレメント107への熱伝導率が下がり、ヒューズエレメント107を溶断させるまでの時間が延びて、速やかに安全に電流経路を遮断することができなくなる恐れがある。また、絶縁層(ガラス層)105は発熱体104の熱を効率よく中間電極106やヒューズエレメント107へ伝えるために、厚みが10~40μmと薄く形成されており、長時間にわたって発熱体104の熱が加わることにより破損が生じることがある。そして、図31に示すように、絶縁層105の破損個所において発熱体104の高電位側から中間電極106の中央部へスパークが発生する恐れがある。これにより中間電極106が破損すると、絶縁層105の破損に加え中間電極106の破損により、ヒューズエレメント107への熱伝導率が下がり、ヒューズエレメント107を溶断させるまでの時間が延びて、速やかに安全に電流経路を遮断することができなくなる恐れがある。
【0020】
このようなスパークに伴う電極破壊によってヒューズエレメントが融け残り、電流遮断が阻害されるリスクは、高電圧、大電流化に伴ってヒューズエレメントが大型化するにつれて、また、電流定格が向上し電界強度が高くなるにつれて、さらには、保護素子の小型化に伴う発熱体給電電極108と中間電極106との近接化や絶縁層の薄型化に伴って、大きくなる。
【0021】
したがって、発熱体を内蔵した保護素子において、高電圧、大電流化に対応するとともに、素子内部で電極破壊を起こすことなく、より安全に且つ速やかに作動する対策が求められている。
【0022】
そこで、本技術は、高電圧が印加された場合でもスパークが発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる保護素子及びこれを用いたバッテリパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上述した課題を解決するために、本技術に係る保護素子は、絶縁基板と、上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、上記絶縁基板の一面側に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、上記絶縁基板の一面側に形成され、上記発熱体を発熱させる電流が給電される発熱体給電電極と、上記発熱体給電電極から引き出され、上記発熱体の一端部と接続された第1の引出電極と、上記ヒューズエレメントと接する中間電極と、上記絶縁基板の一面側の、上記発熱体及び上記中間電極との間に形成され、上記発熱体及び上記中間電極を接続する発熱体接続電極と、上記発熱体接続電極から引き出され、上記発熱体の他端部と接続された第2の引出電極と、上記発熱体、上記第1の引出電極及び上記第2の引出電極を被覆し、上記中間電極が積層された絶縁層を有し、上記中間電極は、上記絶縁層を介して、上記第1の引出電極と重畳せず、且つ上記第2の引出電極と重畳し、上記中間電極は、最も短い辺が上記第1の引出電極と対向しないように配置されているものである。
【0024】
また、本技術に係るバッテリパックは、1つ以上のバッテリセルと、上記バッテリセルの充放電経路上に接続され、該充放電経路を遮断する保護素子と、上記バッテリセルの電圧値を検出して上記保護素子への通電を制御する電流制御素子とを備え、上記保護素子は、絶縁基板と、上記絶縁基板の一面側に設けられたヒューズエレメントと、上記絶縁基板の一面側に形成され、発熱により上記ヒューズエレメントを溶断する発熱体と、上記絶縁基板の一面側に形成され、上記発熱体を発熱させる電流が給電される発熱体給電電極と、上記発熱体給電電極から引き出され、上記発熱体の一端部と接続された第1の引出電極と、上記ヒューズエレメントと接する中間電極と、上記絶縁基板の一面側の、上記発熱体及び上記中間電極との間に形成され、上記発熱体及び上記中間電極を接続する発熱体接続電極と、上記発熱体接続電極から引き出され、上記発熱体の他端部と接続された第2の引出電極と、上記発熱体、上記第1の引出電極及び上記第2の引出電極を被覆し、上記中間電極が積層された絶縁層を有し、上記中間電極は、上記絶縁層を介して、上記第1の引出電極と重畳せず、且つ上記第2の引出電極と重畳し、上記中間電極は、最も短い辺が上記第1の引出電極と対向しないように配置されているものである。
【発明の効果】
【0025】
本技術によれば、高電圧が印加される発熱体給電電極から第1の引出電極を引き出すと共に、中間電極が第1の引出電極と重畳せず、且つ第2の引出電極と重畳することにより、中間電極が第1の引出電極から離間された位置に形成される。これにより、高電位部となる第1の引出電極と低電位部となる中間電極との間の放電経路が形成されにくくなり、スパークが発生しにくくされている。したがって、絶縁層や中間電極が破損することなく、ヒューズエレメントへの熱伝導率を維持し、ヒューズエレメントを速やかに溶断させることができ、安全に電流経路を遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本技術が適用された保護素子の第1の実施の形態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
図2図2は、第1の実施の形態に係る保護素子の断面図である。
図3図3は、第1の実施の形態に係る保護素子においてヒューズエレメントが溶断した状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図4図4は、ヒューズエレメントの外観斜視図である。
図5図5は、バッテリパックの構成例を示す回路図である。
図6図6は、第1の実施の形態に係る保護素子の回路図である。
図7図7は、実施例に係る保護素子の相対寸法を示す平面図である。
図8図8は、比較例に係る保護素子の相対寸法を示す平面図である。
図9図9は、本技術が適用された保護素子の第2の実施の形態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
図10図10は、第2の実施の形態に係る保護素子の回路図である。
図11図11は、第2の実施の形態に係る保護素子の断面図である。
図12図12は、第2の実施の形態に係る保護素子においてヒューズエレメントが溶断した状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図13図13は、本技術が適用された保護素子の第3の実施の形態を示す平面図である。
図14図14は、本技術が適用された保護素子の第4の実施の形態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
図15図15は、第4の実施の形態に係る保護素子の断面図である。
図16図16は、第4の実施の形態に係る保護素子においてヒューズエレメントが溶断した状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図17図17は、本技術が適用された保護素子の第5の実施の形態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
図18図18は、第5の実施の形態に係る保護素子の断面図である。
図19図19は、第5の実施の形態に係る保護素子においてヒューズエレメントが溶断した状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図20図20は、本技術が適用された保護素子の第6の実施の形態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図21図21は、第6の実施の形態に係る保護素子の回路図である。
図22図22は、第6の実施の形態に係る保護素子においてヒューズエレメントが溶断した状態を示す断面図である。
図23図23は、本技術が適用された保護素子の第7の実施の形態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図24図24は、第7の実施の形態に係る保護素子においてヒューズエレメントが溶断した状態を示す断面図である。
図25図25は、第6の実施の形態に係る保護素子の変形例を示す図であり、(A)はヒューズエレメントの溶断前の状態を示す断面図であり、(B)はヒューズエレメントの溶断後の状態を示す断面図である。
図26図26は、第7の実施の形態に係る保護素子の変形例を示す図であり、(A)はヒューズエレメントの溶断前の状態を示す断面図であり、(B)はヒューズエレメントの溶断後の状態を示す断面図である。
図27図27は、従来の保護素子を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
図28図28は、従来の保護素子を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
図29図29は、図27に示す保護素子において、スパークが発生した状態を示す平面図である。
図30図30は、図28に示す保護素子において、スパークが発生した状態を示す平面図である。
図31図31は、図28に示す保護素子において、スパークが発生した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本技術が適用された保護素子及びバッテリパックについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0028】
[第1の実施の形態]
本技術が適用された保護素子の第1の実施の形態について説明する。本技術が適用された保護素子1は、図1(A)~(C)、図2に示すように、絶縁基板2と、絶縁基板2の表面2a側に設けられたヒューズエレメント3と、絶縁基板2の表面2a側に形成され、発熱によりヒューズエレメント3を溶断する発熱体4と、絶縁基板2の表面2a側に形成され、発熱体4を発熱させる電流が給電される発熱体給電電極5と、発熱体給電電極5から引き出され、発熱体4の一端部4aと接続された第1の引出電極6と、ヒューズエレメント3が搭載された中間電極8と、絶縁基板2の表面2a側の、発熱体4及び中間電極8との間に形成され、発熱体4及び中間電極8を接続する発熱体接続電極9と、発熱体接続電極9から引き出され、発熱体4の他端部4bと接続された第2の引出電極10と、発熱体4、第1の引出電極6及び第2の引出電極10を被覆し、中間電極8が積層された絶縁層7を有する。
【0029】
そして、図1(A)に示すように、保護素子1は、平面視において、中間電極8が第1の引出電極6と重畳せず且つ第2の引出電極10と重畳する。保護素子1は、発熱体給電電極5を介して発熱体4が通電されると、発熱体給電電極5から引き出された第1の引出電極6が第2の引出電極10に対して高電位となり、第2の引出電極10は低電位となる。これにより、保護素子1は、高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。これは以下の理由によるものと思われる。
【0030】
すなわち、スパークは絶縁層を介して対向する電極間において、高電位部から低電位部にかけて絶縁破壊が生じることにより瞬間的に大電流が流れる現象である。外部電源と接続され発熱体4に高電圧を印加する発熱体給電電極5及びこれより引き出された第1の引出電極6は、中間電極8と接続された発熱体接続電極9及びこれより引き出された第2の引出電極10よりも高電位とされている。発熱体接続電極9からは発熱体4に給電するための電流は印加されない。
【0031】
保護素子1は、高電圧が印加される発熱体給電電極5から第1の引出電極6を引き出すと共に、平面視において、中間電極8が第1の引出電極6と重畳せず、且つ第2の引出電極10と重畳することにより、中間電極8が第1の引出電極6から離間された位置に形成される。これにより、高電位部となる第1の引出電極6と低電位部となる中間電極8との間の放電経路が形成されにくくなり、スパークが発生しにくくされている。したがって、絶縁層7や中間電極8が破損することなく、ヒューズエレメント3への熱伝導率を維持し、ヒューズエレメント3を速やかに溶断させることができ、安全に電流経路を遮断することができる。
【0032】
さらに、図1に示す保護素子1では、中間電極8が第2の引出電極10と重畳することにより、絶縁層7を介して中間電極8と第2の引出電極10とが熱的に接続されることとなり、効率よく中間電極8及びこれに搭載されたヒューズエレメント3を加熱することができる。したがって、発熱体4に通電後、速やかにヒューズエレメント3を溶断することができる。
【0033】
このような保護素子1は、外部回路に組み込まれることにより、ヒューズエレメント3が当該外部回路の電流経路の一部を構成し、発熱体4の発熱、あるいは定格を超える過電流によって溶断することにより電流経路を遮断する。以下、保護素子1の各構成について詳細に説明する。
【0034】
[絶縁基板]
絶縁基板2は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって形成される。その他、絶縁基板2は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。
【0035】
絶縁基板2の相対向する両端部には、第1、第2の電極11,12が形成されている。第1、第2の電極11,12は、それぞれ、AgやCu等の導電パターンによって形成されている。また、第1、第2の電極11,12の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。これにより、保護素子1は、第1、第2の電極11,12の酸化を防止し、導通抵抗の上昇に伴う定格の変動を防止することができる。また、保護素子1をリフロー実装する場合に、ヒューズエレメント3を接続する接続用ハンダが溶融することにより第1、第2の電極11,12を溶食(ハンダ食われ)するのを防ぐことができる。
【0036】
また、第1、第2の電極11,12は、絶縁基板2の表面2aより、キャスタレーションを介して裏面2bに形成された第1、第2の外部接続電極11a,12aと連続されている。保護素子1は、絶縁基板2の裏面2bに形成された第1、第2の外部接続電極11a,12aが、保護素子1が実装される外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、ヒューズエレメント3が回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。
【0037】
第1、第2の電極11,12は、接続ハンダ14等の導電接続材料によってヒューズエレメント3が搭載されることにより電気的に接続されている。また、図3(A)(B)に示すように、第1、第2の電極11,12は、保護素子1に定格を超える大電流が流れヒューズエレメント3が自己発熱(ジュール熱)によって溶断し、あるいは発熱体4が通電に伴って発熱しヒューズエレメント3が溶断することにより、遮断される。
【0038】
[発熱体]
発熱体4は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、例えばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱体4は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板2上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。一例として、発熱体4は、酸化ルテニウム系ペーストと銀とガラスペーストの混合ペーストを所定の電圧に応じて調整し、絶縁基板2の表面2aの所定の位置に所定の面積で製膜し、その後、適正条件にて焼成処理を行うことにより形成することができる。また、発熱体4の形状は適宜設計できるが、図1に示すように、絶縁基板2の形状に応じて略矩形状とすることが発熱面積を最大化するうえで好ましい。
【0039】
また、発熱体4は、一端部4aが第1の引出電極6と接続され、他端部4bが第2の引出電極10と接続されている。第1の引出電極6は発熱体給電電極5から引き出され、発熱体4の通電時には発熱体給電電極5と同電位となる。第2の引出電極10は発熱体接続電極9から引き出され、発熱体4の通電時には発熱体接続電極9と同電位となる。第1の引出電極6は、発熱体給電電極5から発熱体4の一端部4aに沿って引き出され、図1に示す保護素子1では、略矩形状に形成された発熱体4の一側縁に沿って延在されるとともに、当該発熱体4の一側縁が重畳されている。同様に、第2の引出電極10は、発熱体接続電極9から発熱体の他端部4bに沿って引き出され、図1に示す保護素子1では、略矩形状に形成された発熱体4の他側縁に沿って延在されるとともに、当該発熱体4の他側縁が重畳されている。
【0040】
発熱体給電電極5及び発熱体接続電極9は、絶縁基板2の第1、第2の電極11,12が設けられた側縁と異なる相対向する側縁に形成されている。発熱体給電電極5は、発熱体4の一端部4aと接続され発熱体4への給電端子となる電極であり、キャスタレーションを介して絶縁基板2の裏面2bに形成された第3の外部接続電極5aと連続されている。また、発熱体接続電極9は、中間電極8が接続されている。
【0041】
また、発熱体4、第1の引出電極6及び第2の引出電極10は、絶縁層7に被覆されている。絶縁層7上には中間電極8が形成されている。中間電極8は、接続ハンダ14等の接合材料を介して、第1、第2の電極11,12間において、ヒューズエレメント3が接続されている。
【0042】
絶縁層7は、発熱体4の保護及び絶縁を図るとともに、発熱体4の熱を効率よく中間電極8及びヒューズエレメント3へ伝えるために設けられ、例えばガラス層からなる。絶縁層7は発熱体4の熱を効率よく中間電極8やヒューズエレメント3へ伝えるために、厚みが例えば10~40μmと薄く形成されている。絶縁層7は、例えばガラス系のペーストを塗布することにより形成することができる。
【0043】
発熱体4は、保護素子1が外部回路基板に実装されることにより、第3の外部接続電極5aを介して外部回路に形成された電流制御素子等と接続され、平常時においては通電及び発熱が規制されている。そして、発熱体4は、外部回路の通電経路を遮断する所定のタイミングで第3の外部接続電極5aを介して通電され、発熱する。このとき、発熱体4は、発熱体給電電極5及び第1の引出電極6側が高電位部とされ、発熱体接続電極9、第2の引出電極10及び中間電極8側が低電位部とされる。保護素子1は、発熱体4の熱が絶縁層7及び中間電極8を介してヒューズエレメント3に伝達することにより、第1、第2の電極11,12を接続しているヒューズエレメント3を溶融させることができる。ヒューズエレメント3の溶融導体3aは中間電極8上及び第1、第2の電極11,12に凝集し、これにより第1、第2の電極11,12間の電流経路が遮断される。なお、後述するように、発熱体4は、ヒューズエレメント3が溶断することにより、自身の通電経路も遮断されることから発熱が停止する。
【0044】
なお、発熱体給電電極5は、第3の外部接続電極5aと接続される外部回路基板の電極に設けられた接続用ハンダがリフロー実装等において溶融し、キャスタレーションを介して発熱体給電電極5上に這い上がり、発熱体給電電極5上に濡れ拡がることを防止する規制壁を設けてもよい。第1、第2の電極11,12も同様に、規制壁を設けてもよい。規制壁は、例えばガラスやソルダーレジスト、絶縁性接着剤等ハンダに対する濡れ性を有しない絶縁材料を用いて形成することができ、発熱体給電電極5上に印刷等により形成することができる。規制壁を設けることにより、溶融した接続用ハンダが発熱体給電電極5まで濡れ広がることを防止し、保護素子1と外部回路基板との接続性を維持することができる。
【0045】
また、保護素子1は、絶縁基板2の表面2aに絶縁層7を形成した後に、発熱体給電電極5、第1の引出電極6、第2の引出電極10、発熱体接続電極9及び発熱体4を形成し、さらにこれらの上に絶縁層7を形成することにより、絶縁層7内に発熱体4等を形成してもよい。
【0046】
[中間電極]
中間電極8は、第1、第2の電極11,12と同様に、AgやCu等の導電パターンによって形成されている。また、中間電極8の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。
【0047】
中間電極8は、一端を発熱体接続電極9と接続されるとともに、絶縁層7上に形成され、絶縁層7を介して発熱体4と一部重畳されている。上述したように、中間電極8は、平面視において、通電時において発熱体4の通電方向上流側に位置する高電位の第1の引出電極6と重畳せず、発熱体4の通電方向下流側に位置する低電位の第2の引出電極10と重畳する。これにより、保護素子1は、高電位部となる第1の引出電極6と低電位部となる中間電極8との間の放電経路が形成されにくくなり、外部回路より高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。
【0048】
さらに、図1に示す保護素子1では、中間電極8が、発熱体4の他端部4bと重畳する第2の引出電極10と重畳することにより、第2の引出電極10及び絶縁層7を介して中間電極8と発熱体4とが熱的に接続される。これにより、効率よく中間電極8及びこれに搭載されたヒューズエレメント3を加熱することができる。したがって、発熱体4に通電後、速やかにヒューズエレメント3を溶断することができる。
【0049】
[ヒューズエレメント]
次いで、ヒューズエレメント3について説明する。ヒューズエレメント3は、第1及び第2の電極11,12間にわたって実装され、発熱体4の通電による発熱、又は定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、第1の電極11と第2の電極12との間の電流経路を遮断するものである。
【0050】
ヒューズエレメント3は、発熱体4の通電による発熱、又は過電流状態によって溶融する導電性の材料であればよく、例えば、SnAgCu系のPbフリーハンダや、BiPbSn合金、BiPb合金、BiSn合金、SnPb合金、PbIn合金、ZnAl合金、InSn合金、PbAgSn合金等を用いることができる。
【0051】
また、ヒューズエレメント3は、高融点金属と、低融点金属とを含有する構造体であってもよい。例えば、図4に示すように、ヒューズエレメント3は、内層と外層とからなる積層構造体であり、内層として低融点金属層15、低融点金属層15に積層された外層として高融点金属層16を有する。ヒューズエレメント3は、第1、第2の電極11,12及び中間電極8上に接続ハンダ14等の接合材料を介して接続される。
【0052】
低融点金属層15は、好ましくは、ハンダ又はSnを主成分とする金属であり、「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である。低融点金属層15の融点は、必ずしもリフロー炉の温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。高融点金属層16は、低融点金属層15の表面に積層された金属層であり、例えば、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属であり、第1、第2の電極11,12及び中間電極8とヒューズエレメント3との接続や保護素子1の外部回路基板上への実装をリフローによって行う場合においても溶融しない高い融点を有する。
【0053】
このようなヒューズエレメント3は、低融点金属箔に、高融点金属層をメッキ技術を用いて成膜することによって形成することができ、あるいは、他の周知の積層技術、膜形成技術を用いて形成することもできる。このとき、ヒューズエレメント3は、低融点金属層15の全面が高融点金属層16によって被覆された構造としてもよく、相対向する一対の側面を除き被覆された構造であってもよい。なお、ヒューズエレメント3は、高融点金属層16を内層とし、低融点金属層15を外層として構成してもよく、また低融点金属層15と高融点金属層16とが交互に積層された3層以上の多層構造とする、外層の一部に開口部を設けて内層の一部を露出させるなど、様々な構成によって形成することができる。
【0054】
ヒューズエレメント3は、内層となる低融点金属層15に、外層として高融点金属層16を積層することによって、リフロー温度が低融点金属層15の溶融温度を超えた場合であっても、ヒューズエレメント3として形状を維持することができ、溶断するに至らない。したがって、第1、第2の電極11,12及び中間電極8とヒューズエレメント3との接続や保護素子1の外部回路基板上への実装を、リフローによって効率よく行うことができ、また、リフローによってもヒューズエレメント3の変形に伴って局所的に抵抗値が高く又は低くなる等により所定の温度で溶断しない、あるいは所定の温度未満で溶断する等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0055】
また、ヒューズエレメント3は、所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、定格よりも高い値の電流が流れると、自己発熱によって溶融し、第1、第2の電極11,12間の電流経路を遮断する。また、発熱体4が通電され発熱することにより溶融し、第1、第2の電極11,12間の電流経路を遮断する。
【0056】
このとき、ヒューズエレメント3は、溶融した低融点金属層15が高融点金属層16を溶食(ハンダ食われ)することにより、高融点金属層16が溶融温度よりも低い温度で溶解する。したがって、ヒューズエレメント3は、低融点金属層15による高融点金属層16の浸食作用を利用して短時間で溶断することができる。また、ヒューズエレメント3の溶融導体3aは、中間電極8及び第1、第2の電極11,12の物理的な引き込み作用により分断されることから、速やかに、かつ確実に、第1、第2の電極11,12間の電流経路を遮断することができる(図3)。
【0057】
また、ヒューズエレメント3は、低融点金属層15の体積を、高融点金属層16の体積よりも多く形成することが好ましい。ヒューズエレメント3は、過電流による自己発熱又は発熱体4の発熱によって加熱され、低融点金属が溶融することにより高融点金属を溶食し、これにより速やかに溶融、溶断することができる。したがって、ヒューズエレメント3は、低融点金属層15の体積を高融点金属層16の体積よりも多く形成することにより、この溶食作用を促進し、速やかに第1、第2の外部接続電極11,12間を遮断することができる。
【0058】
また、ヒューズエレメント3は、内層となる低融点金属層15に高融点金属層16が積層されて構成されているため、溶断温度を従来の高融点金属からなるチップヒューズ等よりも大幅に低減することができる。したがって、ヒューズエレメント3は、同一サイズのチップヒューズ等に比して、断面積を大きくでき電流定格を大幅に向上させることができる。また、同じ電流定格をもつ従来のチップヒューズよりも小型化、薄型化を図ることができ、速溶断性に優れる。
【0059】
また、ヒューズエレメント3は、保護素子1が組み込まれた電気系統に異常に高い電圧が瞬間的に印加されるサージへの耐性(耐パルス性)を向上することができる。すなわち、ヒューズエレメント3は、例えば100Aの電流が数msec流れたような場合にまで溶断してはならない。この点、極短時間に流れる大電流は導体の表層を流れることから(表皮効果)、ヒューズエレメント3は、外層として抵抗値の低いAgメッキ等の高融点金属層16が設けられているため、サージによって印加された電流を流しやすく、自己発熱による溶断を防止することができる。したがって、ヒューズエレメント3は、従来のハンダ合金からなるヒューズに比して、大幅にサージに対する耐性を向上させることができる。
【0060】
なお、ヒューズエレメント3は、酸化防止、及び溶断時の濡れ性の向上等のため、フラックス(図示せず)を塗布してもよい。また、保護素子1は、絶縁基板2がケース(図示せず)に覆われることによりその内部が保護されている。ケースは、例えば、各種エンジニアリングプラスチック、熱可塑性プラスチック、セラミックス、ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成することができる。また、ケースは、絶縁基板2の表面2a上に、ヒューズエレメント3が溶融時に球状に膨張し、溶融導体3aが中間電極8や第1、第2の電極11,12上に凝集するのに十分な内部空間を有する。
【0061】
[回路構成例]
このような保護素子1は、例えばリチウムイオン二次電池のバッテリパック20内の回路に組み込まれて用いられる。図5に示すように、バッテリパック20は、例えば、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル21a~21dからなるバッテリスタック25を有する。
【0062】
バッテリパック20は、バッテリスタック25と、バッテリスタック25の充放電を制御する充放電制御回路26と、バッテリスタック25の異常時に充放電経路を遮断する本発明が適用された保護素子1と、各バッテリセル21a~21dの電圧を検出する検出回路27と、検出回路27の検出結果に応じて保護素子1の動作を制御するスイッチ素子となる電流制御素子28とを備える。
【0063】
バッテリスタック25は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル21a~21dが直列接続されたものであり、バッテリパック20の正極端子20a、負極端子20bを介して、着脱可能に充電装置22に接続され、充電装置22からの充電電圧が印加される。充電装置22により充電されたバッテリパック20は、正極端子20a、負極端子20bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0064】
充放電制御回路26は、バッテリスタック25と充電装置22との間の電流経路に直列接続された2つの電流制御素子23a、23bと、これらの電流制御素子23a、23bの動作を制御する制御部24とを備える。電流制御素子23a、23bは、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETという。)により構成され、制御部24によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック25の電流経路の充電方向及び/又は放電方向への導通と遮断とを制御する。制御部24は、充電装置22から電力供給を受けて動作し、検出回路27による検出結果に応じて、バッテリスタック25が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子23a、23bの動作を制御する。
【0065】
保護素子1は、例えば、バッテリスタック25と充放電制御回路26との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子28によって制御される。
【0066】
検出回路27は、各バッテリセル21a~21dと接続され、各バッテリセル21a~21dの電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路26の制御部24に供給する。また、検出回路27は、バッテリセル21a~21dのいずれか1つが過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子28を制御する制御信号を出力する。
【0067】
電流制御素子28は、たとえばFETにより構成され、検出回路27から出力される検出信号によって、バッテリセル21a~21dの電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、保護素子1を動作させて、バッテリスタック25の充放電電流経路を電流制御素子23a、23bのスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0068】
以上のような構成からなるバッテリパック20に用いられる、本発明が適用された保護素子1は、図6に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子1は、第1の外部接続電極11aがバッテリスタック25側と接続され、第2の外部接続電極12aが正極端子20a側と接続され、これによりヒューズエレメント3がバッテリスタック25の充放電経路上に直列に接続される。また、保護素子1は、発熱体4が発熱体給電電極5及び第3の外部接続電極5aを介して電流制御素子28と接続されるとともに、発熱体4がバッテリスタック25の開放端と接続される。このように、発熱体4は、一端を中間電極8を介してヒューズエレメント3及びバッテリスタック25の一方の開放端と接続され、他端を第3の外部接続電極5aを介して電流制御素子28及びバッテリスタック25の他方の開放端と接続され、これにより電流制御素子28によって通電が制御される発熱体4への給電経路が形成される。
【0069】
[保護素子の動作]
検出回路27がバッテリセル21a~21dのいずれかの異常電圧を検出すると、電流制御素子28へ遮断信号を出力する。すると、電流制御素子28は、発熱体4に通電するよう電流を制御する。保護素子1は、バッテリスタック25から、発熱体4に電流が流れ、これにより発熱体4が発熱を開始する。保護素子1は、発熱体4の発熱によりヒューズエレメント3が溶断し、バッテリスタック25の充放電経路を遮断する。また、保護素子1は、ヒューズエレメント3を高融点金属と低融点金属とを含有させて形成することにより、高融点金属の溶断前に低融点金属が溶融し、溶融した低融点金属による高融点金属の溶食作用を利用して短時間でヒューズエレメント3を溶解させることができる。
【0070】
このとき、保護素子1は、平面視において、中間電極8が高電位の第1の引出電極6と重畳せず、低電位の第2の引出電極10と重畳することにより、中間電極8が第1の引出電極6から離間した位置に形成されている。これにより、保護素子1は、高電位部となる第1の引出電極6と低電位部となる中間電極8との間の放電経路が形成されにくくなり、外部回路より高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。
【0071】
また、保護素子1では、中間電極8が第2の引出電極10と重畳することにより、第2の引出電極10及び絶縁層7を介して中間電極8と発熱体4とが熱的に接続されることとなり、効率よく中間電極8及びこれに搭載されたヒューズエレメント3を加熱することができる。したがって、発熱体4に通電後、速やかにヒューズエレメント3を溶断することができる。
【0072】
保護素子1は、ヒューズエレメント3が溶断することにより、発熱体4への給電経路も遮断されるため、発熱体4の発熱が停止される。
【0073】
なお、保護素子1は、バッテリパック20に定格を超える過電流が通電された場合にも、ヒューズエレメント3が自己発熱により溶融し、バッテリパック20の充放電経路を遮断することができる。
【0074】
このように、保護素子1は、発熱体4の通電による発熱、あるいは過電流によるヒューズエレメント3の自己発熱によってヒューズエレメント3が溶断する。このとき、保護素子1は、回路基板へのリフロー実装時や、保護素子1が実装された回路基板が更にリフロー加熱等の高温環境下に曝された場合にも、低融点金属が高融点金属によって被覆された構造を有することにより、ヒューズエレメント3の変形を抑制することができる。したがって、ヒューズエレメント3の変形による抵抗値の変動等に起因する溶断特性の変動が防止され、所定の過電流や発熱体4の発熱によって速やかに溶断することができる。
【0075】
本発明に係る保護素子1は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。
【実施例
【0076】
次いで、保護素子1の実施例について説明する。本実施例では、図1に示す保護素子1(実施例)と、図27に示す保護素子(比較例)を用意し、それぞれ50V、100V、200Vの電圧を印加した際のスパークの有無を判定した。また、低電力(43W)及び高電力(180W)を印加した際のヒューズエレメントの溶断時間のばらつき(標準偏差σ)を求め(サンプル数50)、対比した。
【0077】
実施例に係る保護素子の寸法を図7に示し、比較例に係る保護素子の寸法を図8に示す。図7及び図8に示す各サイズの数値は絶縁基板の長さを1とした際の割合を示す相対値である。
【0078】
[実施例]
実施例に係る保護素子のサイズは以下の通りである。
絶縁基板:1×0.65
中間電極:0.65×0.21
発熱体給電電極と中間電極との距離:0.026
第2の引出電極と中間電極との重畳幅:0.04
第1の引出電極と第2の引出電極の間の発熱体幅:0.12
【0079】
[比較例]
比較例に係る保護素子のサイズは以下の通りである。
絶縁基板:1×0.65
中間電極:0.65×0.21
発熱体給電電極と中間電極との距離:0.026
【0080】
【表1】
【0081】
発熱体給電電極と中間電極との距離は、実施例及び比較例とも0.026である。表1に示すように、実施例では、50V、100V、200Vのいずれの電圧を印加した場合もスパークの発生がなかった。一方、比較例では、50Vの電圧を印加した場合にはスパークが発生しなかったが、100V及び200Vの電圧を印加した場合にはスパークが発生した。
【0082】
これより、図1に示す保護素子1のごとく、高電圧が印加される発熱体給電電極5から第1の引出電極6を引き出すと共に、平面視において、中間電極8が第1の引出電極6と重畳せず、且つ第2の引出電極10と重畳することにより、中間電極8が第1の引出電極6から離間された位置に形成することができる。したがって、保護素子1は、高電位部となる第1の引出電極6と低電位部となる中間電極8との間の放電経路が形成されにくくなり、高電力を印加した場合にスパークの発生を防止する上で効果を発揮する構成であることが分かる。
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示すように、実施例に係る保護素子を43Wで動作させた場合、溶断時間(秒)の最大値が12.34秒、最小値が8.84秒、サンプル数50の平均値が10.37秒であり、標準偏差σ=0.74であった。一方、比較例に係る保護素子を43Wで動作させた場合、溶断時間(秒)の最大値が25.31秒、最小値が11.21秒、サンプル数50の平均値が17.36秒であり、標準偏差σ=1.59であった。
【0085】
【表3】
【0086】
表3に示すように、実施例に係る保護素子を180Wで動作させた場合、溶断時間(秒)の最大値が1.29秒、最小値が1.07秒、サンプル数50の平均値が1.18秒であり、標準偏差σ=0.045であった。一方、比較例に係る保護素子を180Wで動作させた場合、溶断時間(秒)の最大値が1.71秒、最小値が1.18秒、サンプル数50の平均値が1.35秒であり、標準偏差σ=0.079であった。
【0087】
表2及び表3に示すように、図1に示す保護素子1のごとく、中間電極8が第2の引出電極10と重畳することにより、第2の引出電極10及び絶縁層7を介して中間電極8と発熱体4とが熱的に接続されることとなり、効率よく中間電極8及びこれに搭載されたヒューズエレメント3を加熱し、速やかにヒューズエレメント3を溶断できるとともに、低電力下においても製品ごとの溶断時間のばらつきを抑制できることが分かる。一方、比較例に係る保護素子では、溶断時間も長く、ばらつきも大きくなった。
【0088】
[第2の実施の形態]
次いで、本技術が適用された保護素子の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。第2の実施の形態に係る保護素子30は、図9(A)~(C)に示すように、絶縁基板2と、絶縁基板2の表面2a側に設けられたヒューズエレメント3と、絶縁基板2に形成され、発熱によりヒューズエレメント3を溶断する複数の発熱体4と、各発熱体4への給電端子となる発熱体給電電極5と、発熱体給電電極5から引き出され、各発熱体4の一端部4aと接続された複数の第1の引出電極6と、発熱体4を被覆する絶縁層7と、絶縁層7上に形成され、ヒューズエレメント3が搭載された中間電極8と、絶縁基板2の表面2a側の、各発熱体4及び中間電極8との間に形成され、各発熱体4及び中間電極8を接続する発熱体接続電極9と、発熱体接続電極9から引き出され、各発熱体4の他端部4bと接続された第2の引出電極10を有する。
【0089】
そして、保護素子30は、複数の発熱体4が絶縁基板2の表面2a上に離間して並列して設けられている。各発熱体4は、一端部4aが第1の引出電極6を介して発熱体給電電極5と接続され、他端部4bが第2の引出電極10を介して発熱体接続電極9と接続されている。発熱体接続電極9は中間電極8と接続されている。各発熱体4は、発熱体給電電極5を介して通電されると、発熱体給電電極5及び第1の引出電極6側が高電位部とされ、第2の引出電極10、発熱体接続電極9及び中間電極8側が低電位部とされる。そして、保護素子30は、平面視において、中間電極8が各第1の引出電極6と重畳せず且つ各第2の引出電極10と重畳する。
【0090】
これにより、保護素子30は、中間電極8が各第1の引出電極6から離間された位置に形成され、高電位部となる第1の引出電極6と低電位部となる中間電極8との間の放電経路が形成されにくくなり、高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。
【0091】
また、保護素子30は、中間電極8が各第2の引出電極10と重畳することにより、絶縁層7を介して中間電極8と第2の引出電極10とが熱的に接続されることとなり、効率よく中間電極8及びこれに搭載されたヒューズエレメント3を加熱することができる。したがって、各発熱体4に通電後、速やかにヒューズエレメント3を溶断することができる。
【0092】
図10は、保護素子30の回路図である。保護素子30は、複数の発熱体4の各一端が絶縁基板2に形成された発熱体給電電極5を介して発熱体4を発熱させるための電源に接続され、各発熱体4の他端が中間電極8を介してヒューズエレメント3と接続されている。
【0093】
[保持電極]
また、保護素子30は、図11に示すように、絶縁基板2の裏面2bに、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを保持する保持電極32を形成し、中間電極8と保持電極32とを、絶縁基板2を貫通する貫通孔33を介して連続させ、溶融したヒューズエレメント3の溶融導体3aを、貫通孔33を介して保持電極32側に吸引するようにしてもよい。
【0094】
貫通孔33は、ヒューズエレメント3が溶融すると、毛管現象によってこの溶融導体3aを吸引し、中間電極8上で保持する溶融導体3aの体積を減少させることができる。これにより、図12(A)(B)に示すように、保護素子の高定格化、高容量化に伴いヒューズエレメント3が大型化することにより溶融量が増大した場合にも、大量の溶融導体3aを保持電極32、中間電極8及び第1、第2の電極11,12によって保持することができ、ヒューズエレメント3を確実に溶断することができる。
【0095】
保持電極32は、中間電極8と同様に、AgやCuあるいはAgやCuを主成分とする合金材料等の公知の電極材料を用いて印刷等の公知の方法により形成することができる。
【0096】
貫通孔33は、内面に導電層34が形成されている。導電層34が形成されることにより、貫通孔33は、溶融導体3aを吸引しやすくすることができる。導電層34は、例えば銅、銀、金、鉄、ニッケル、パラジウム、鉛、錫のいずれか、又はいずれかを主成分とする合金によって形成され、貫通孔33の内面を電解メッキや導電ペーストの印刷等の公知の方法により形成することができる。また、導電層34は、複数の金属線や、導電性を有するリボンの集合体を貫通孔33内に挿入することにより形成してもよい。
【0097】
貫通孔33の導電層34は、絶縁基板2の表面2aに形成された中間電極8と連続されている。中間電極8は、ヒューズエレメント3を支持するとともに溶断時には溶融導体3aが凝集するため、中間電極8と導電層34とが連続することにより、溶融導体3aを貫通孔33内に導きやすくすることができる。
【0098】
また、貫通孔33の導電層34は、絶縁基板2の裏面2bに形成された保持電極32と連続されている。これにより、ヒューズエレメント3が溶融すると、貫通孔33を介して吸引された溶融導体3aを保持電極32に凝集させることができ(図12参照)、より多くの溶融導体3aを吸引し、中間電極8及び第1、第2の電極11,12によって保持されるヒューズエレメント3の溶断部位における溶融導体3aの体積を減少させることができる。
【0099】
なお、保護素子30は、貫通孔33を複数形成することにより、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを吸引する経路を増やし、より多くの溶融導体3aを吸引することで、溶断部位における溶融導体3aの体積を減少させるようにしてもよい。
【0100】
また、保護素子30は、発熱体4を貫通孔33の両側に形成することが、保持電極32及び中間電極8を加熱し、またより多くの溶融導体3aを凝集、吸引するうえで好ましい。
【0101】
[第3の実施の形態]
次いで、本技術が適用された保護素子の第3の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1,30と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。第3の実施の形態に係る保護素子40は、図13に示すように、平面視において、第1の引出電極6、発熱体4、第2の引出電極10、中間電極8の順に配置されている。そして、保護素子40は、第2の引出電極10と中間電極8は、平面視において重畳されていない。
【0102】
保護素子40では、中間電極8が第2の引出電極10と重畳しないため、保護素子1に比して、中間電極8と第2の引出電極10との熱的な接続が弱い。そのため、保護素子40は、保護素子1に比して、ヒューズエレメント3の速溶断性には劣ることがある。
【0103】
しかし、保護素子40は、中間電極8を発熱体4の発熱電流が通電する第1の引出電極6、発熱体8、及び第2の引出電極10と重畳させず、且つ保護素子1に比して、中間電極8が第1の引出電極6からさらに離間された位置に形成される。これにより、高電位部となる第1の引出電極6と低電位部となる中間電極8との間の放電経路がより形成されにくくなり、スパークの発生を防止することができる。したがって、絶縁層7や中間電極8が破損することなく、ヒューズエレメント3への熱伝導率を維持し、ヒューズエレメント3を速やかに溶断させることができ、安全に電流経路を遮断することができる。
【0104】
なお、保護素子40においても、保護素子30と同様に、複数の発熱体4及び複数の第1、第2の引出電極6,10を形成してもよい。この場合も、中間電極8は、各第2の引出電極10と重畳せず、且つ各第1の引出電極6から、より離間した位置に配置されるため、高電圧が印加された場合にもスパークの発生を防止することが出来る。
【0105】
[第4の実施の形態]
次いで、本技術が適用された保護素子の第4の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1,30,40と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。第4の実施の形態に係る保護素子50は、図14(A)~(C)、図15及び図16(A)(B)に示すように、絶縁基板2の表面2aと反対側の裏面2bに、発熱体4、発熱体給電電極5、第1の引出電極6、発熱体接続電極9、第2の引出電極10及びこれらを被覆する絶縁層7が形成されている。また、保護素子50は、絶縁基板2の表面2aに、ヒューズエレメント3が搭載される中間電極8と、中間電極8と発熱体接続電極9とを接続する第1の接続電極51と、発熱体給電電極5とキャスタレーションを介して接続された第2の接続電極52と、第1の電極11と、第2の電極12が形成されている。
【0106】
第1の接続電極51及び第2の接続電極52は、上述した発熱体給電電極5や発熱体接続電極9と同様の材料、同様の工程によって形成することができる。
【0107】
発熱体接続電極9と第1の接続電極51とは、絶縁基板2を貫通する貫通孔53によって連続されている。貫通孔53は、内部に導電層が形成された導電スルーホールであり、貫通孔53を介して発熱体接続電極9と第1の接続電極51とが電気的、熱的に接続される。すなわち、保護素子50は、発熱体4が絶縁基板2を介して中間電極8を加熱するとともに、熱伝導性に優れる発熱体接続電極9、貫通孔53及び第1の接続電極51を介して発熱体4の熱が中間電極8に伝わり、ヒューズエレメント3を加熱、溶断することができる(図16)。
【0108】
第2の接続電極52は、絶縁性の規制壁54が形成されている。規制壁54は、発熱体給電電極5を外部回路基板に接続する接続ハンダのフィレットが第2の接続電極52上に濡れひろがってきた際に、中間電極8やヒューズエレメント3に接触することを防止するためのものである。規制壁54は、例えばガラスペーストを第2の接続電極52上に塗布することにより形成することができる。
【0109】
保護素子50は、中間電極8が絶縁基板2を介して第2の引出電極10と重畳する。これにより、絶縁基板2を介して中間電極8と第2の引出電極10とが熱的に接続されることとなり、中間電極8及びこれに搭載されたヒューズエレメント3の加熱を補助することができる。
【0110】
また、保護素子50は、中間電極8が絶縁基板2を介して第1の引出電極6と重畳する。これにより、絶縁基板2を介して中間電極8と第1の引出電極6とが熱的に接続されることとなり、中間電極8及びこれに搭載されたヒューズエレメント3の加熱を補助することができる。なお、保護素子50は、中間電極8を、絶縁基板2を介して第1の引出電極6と重畳しない位置に形成してもよい。これにより、高電位部となる第1の引出電極6と低電位部となる中間電極8との間の放電経路がより形成されにくくなり、スパークの発生を防止することができる。
【0111】
[第5の実施の形態]
次いで、本技術が適用された保護素子の第5の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1,30,40,50と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。第5の実施の形態に係る保護素子60は、保護素子50に対して、絶縁基板2の裏面2bに、発熱体4、第1の引出電極6及び第2の引出電極10、絶縁層7がそれぞれ複数形成されている点で相違する。
【0112】
図17(A)~(C)、図18及び図19(A)(B)に示すように、保護素子60は、複数の発熱体4が絶縁基板2の裏面2b上に離間して並列して設けられている。各発熱体4は、一端部4aが第1の引出電極6を介して発熱体給電電極5と接続され、他端部4bが第2の引出電極10を介して発熱体接続電極9と接続されている。これら各発熱体4、各第1の引出電極6、各第2の引出電極10は、絶縁層7によって被覆されている。
【0113】
[保持電極]
また、保護素子60は、保護素子30と同様に、絶縁基板2の裏面2bに、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを保持する保持電極32を形成し、表面2aに形成された中間電極8と保持電極32とを、絶縁基板2を貫通する貫通孔33を介して連続させ、溶融したヒューズエレメント3の溶融導体3aを、貫通孔33を介して保持電極32側に吸引させる。これにより、保護素子の高定格化、高容量化に伴いヒューズエレメント3が大型化することにより溶融量が増大した場合にも、大量の溶融導体3aを保持電極32、中間電極8及び第1、第2の電極11,12によって保持することができ、ヒューズエレメント3を確実に溶断することができる。
【0114】
保持電極32は、絶縁基板2の裏面2bに設けられた絶縁層7に重畳して形成される。また、保持電極32は、中間電極8と同様に、AgやCuあるいはAgやCuを主成分とする合金材料等の公知の電極材料を用いて印刷等の公知の方法により形成することができる。
【0115】
貫通孔33は、中間電極8、絶縁基板2、絶縁層7及び保持電極32を貫通する。また、貫通孔33は、内面に導電層34が形成されている。導電層34は、中間電極8及び保持電極32と連続されている。これにより、中間電極8に凝集した溶融導体3aを貫通孔33内に導きやすくするとともに、貫通孔33を介して吸引された溶融導体3aを保持電極32に凝集させることができ、より多くの溶融導体3aを吸引し、中間電極8及び第1、第2の電極11,12によって保持されるヒューズエレメント3の溶断部位における溶融導体3aの体積を減少させることができる。
【0116】
また、保護素子60では、保持電極32の貫通孔33内に形成された導電層34が中間電極8と接続されることにより、発熱体給電電極5から保持電極32及びヒューズエレメント3を経て第1の電極11に至る発熱体4への給電経路が構成される。また、保護素子60は、保持電極32の貫通孔33内に形成された導電層34が中間電極8と接続されることにより、発熱体4の熱が導電層34及び中間電極8を経てヒューズエレメント3へ伝達される熱経路が構成される。
【0117】
なお、保護素子60においても、貫通孔33を複数形成することにより、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを吸引する経路を増やし、より多くの溶融導体3aを吸引することで、溶断部位における溶融導体3aの体積を減少させるようにしてもよい。
【0118】
各発熱体4は、発熱体給電電極5を介して通電されると、発熱体給電電極5及び第1の引出電極6側が高電位部とされ、第2の引出電極10、発熱体接続電極9及び中間電極8側が低電位部とされる。そして、保護素子60は、平面視において、中間電極8が各第1の引出電極6と重畳せず且つ各第2の引出電極10と重畳する。
【0119】
これにより、保護素子60は、平面視において中間電極8が各第1の引出電極6から離間された位置に形成され、高電位部となる第1の引出電極6と低電位部となる中間電極8との間の放電経路が形成されにくくなり、高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくく安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。
【0120】
また、保護素子60は、中間電極8が各第2の引出電極10と重畳することにより、絶縁基板2を介して中間電極8と第2の引出電極10とが熱的に接続されることとなり、効率よく中間電極8及びこれに搭載されたヒューズエレメント3を加熱することができる。したがって、各発熱体4に通電後、速やかにヒューズエレメント3を溶断することができる。
【0121】
なお、保護素子60は、発熱体4の通電方向下流側に位置する保持電極32も、第2の引出電極10と重畳し、第1の引出電極6と重畳させないことにより、高電位の第1の引出電極6と離間した位置に形成されることから、高電圧が印加された場合でもスパーク(放電)が発生しにくくなり、スパークによる破損を防止することができる。
【0122】
また、保護素子60は、発熱体4を貫通孔33の両側に形成することが、保持電極32及び中間電極8を加熱し、またより多くの溶融導体3aを凝集、吸引するうえで好ましい。
【0123】
[第6の実施の形態]
次いで、本技術が適用された保護素子の第6の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1,30,40,50,60と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。図20(A)(B)に示すように、第6の実施の形態に係る保護素子70は、絶縁基板2の表面2aに発熱体4及び中間電極8を形成し、絶縁基板2の裏面2bに保持電極32を形成することにより、絶縁基板2が中間電極8から貫通孔33を介してヒューズエレメント3の溶融導体3aを保持電極32側に吸引、保持させる溶断部材71を構成し、ヒューズエレメント3がこの溶断部材71に挟持されているものである。
【0124】
溶断部材71の絶縁基板2は、表面2aに、複数の発熱体4と、各発熱体4への給電端子となる発熱体給電電極5と、発熱体給電電極5から引き出され、各発熱体4の一端部4aと接続された複数の第1の引出電極6と、発熱体4を被覆する絶縁層7と、絶縁層7上に形成され、ヒューズエレメント3に接続される中間電極8と、絶縁基板2の表面2a側の、各発熱体4及び中間電極8との間に形成され、各発熱体4及び中間電極8を接続する発熱体接続電極9と、発熱体接続電極9から引き出され、各発熱体4の他端部4bと接続された第2の引出電極10が形成されている。これら各電極5,6,8,9,10、発熱体4及び絶縁層7の構成や効果は上述した保護素子30と同様であるため、詳細は省略する。
【0125】
また、溶断部材71の絶縁基板2は、裏面2bに、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを保持する保持電極32が形成され、中間電極8と保持電極32とが、絶縁基板2を貫通し内面に導電層34が形成された貫通孔33を介して連続されている。これにより、絶縁基板2は、溶融したヒューズエレメント3の溶融導体3aを、貫通孔33を介して中間電極8から保持電極32側に吸引する。これら保持電極32、貫通孔33及び導電層34の構成や効果は上述した保護素子30と同様であるため、詳細は省略する。
【0126】
ここで、溶断部材71の絶縁基板2は、表面2aに、中間電極8とともに、ヒューズエレメント3に接続されるとともに、溶融導体3aを保持する補助電極73を設けてもよい。また、ヒューズエレメント3は、絶縁基板2とは別に設けられ、外部回路と接続された第1、第2の外部端子74,75と接続ハンダ14等の接合材料を介して接続されている。すなわち、第1、第2の外部端子74,75は、ヒューズエレメント3を介して電気的に導通されている。また、各溶断部材71の発熱体給電電極5も、同様に絶縁基板2とは別に設けられ、外部回路と接続された第3の外部端子76と接続されている。
【0127】
なお、保護素子70は、溶断部材71、ヒューズエレメント3、及び第1~第3の外部端子74~76が絶縁性のケース77に収納される。ケース77は、ヒューズエレメント3の下側に接続される溶断部材71及び第1~第3の外部端子74~76が配置される下ケース77aと、下ケース77a上を覆うカバー77bとを有する。下ケース77aには、配置された溶断部材71の保持電極32が溶融導体3aを保持するために十分な大きさを有する収納凹部78が形成されている。また、カバー77bは、ヒューズエレメント3の上側に接続される溶断部材71を収納するとともに、この溶断部材71の保持電極32が溶融導体3aを保持するために十分な内部空間を有する。
【0128】
第1、第2の外部端子74,75は、一端がケース77内においてヒューズエレメント3と接続され、他端がケース77外へ導出され、外部回路と接続される。また、第3の外部端子76は、一端がケース77内において各溶断部材71の発熱体給電電極5と接続され、他端がケース77外へ導出され、外部回路と接続される。
【0129】
そして、保護素子70は、図20に示すように、ヒューズエレメント3が複数の溶断部材71に挟持されている。図20に示す保護素子70は、溶断部材71が、ヒューズエレメント3の一方の面及び他方の面にそれぞれ配設されている。図21は、保護素子70の回路図である。ヒューズエレメント3の表面及び裏面に配設された各溶断部材71は、それぞれ発熱体4の一端が各絶縁基板2に形成された第1の引出電極6、発熱体給電電極5及び第3の外部端子76を介して発熱体4を発熱させるための電源に接続され、発熱体4の他端が各絶縁基板2に形成された第2の引出電極10、発熱体接続電極9及び中間電極8を介してヒューズエレメント3と接続されている。
【0130】
図22に示すように、保護素子70は、発熱体4の発熱によりヒューズエレメント3を溶断する際には、ヒューズエレメント3の両面に接続された各溶断部材71,71の発熱体4が発熱し、ヒューズエレメント3の両面から加熱する。したがって、保護素子70は、大電流用途に対応するためにヒューズエレメント3の断面積を増大させた場合にも、速やかにヒューズエレメント3を加熱し、溶断することができる。
【0131】
また、保護素子70は、ヒューズエレメント3の両面から溶融導体3aを、各溶断部材71の絶縁基板2に形成した各貫通孔33内に吸引するとともに保持電極32に凝集させる。したがって、保護素子70は、大電流用途に対応するためにヒューズエレメント3の断面積を増大させ、中間電極8による溶融導体3aの保持容量を超える溶融導体3aが発生した場合にも、中間電極8に加え、貫通孔33及び保持電極32で溶融導体3aを保持することにより、また、複数の溶断部材71によって溶融導体3aを吸引することにより、確実にヒューズエレメント3を溶断させることができる。また、保護素子70は、複数の溶断部材71によって溶融導体3aを吸引することにより、より速やかにヒューズエレメント3を溶断させることができる。
【0132】
保護素子70は、ヒューズエレメント3として、内層を構成する低融点金属を高融点金属で被覆する被覆構造を用いた場合にも、ヒューズエレメント3を速やかに溶断させることができる。すなわち、高融点金属で被覆されたヒューズエレメント3は、発熱体4が発熱した場合にも、外層の高融点金属が溶融する温度まで加熱するのに時間を要する。ここで、保護素子70は、複数の溶断部材71を備え、同時に各発熱体4を発熱させることで、外層の高融点金属を速やかに溶融温度まで加熱することができる。したがって、保護素子70によれば、外層を構成する高融点金属層の厚みを厚くすることができ、さらなる高定格化を図りつつ、速溶断特性を維持することができる。
【0133】
また、保護素子70は、図20に示すように、一対の溶断部材71,71が対向してヒューズエレメント3に接続されることが好ましい。これにより、保護素子70は、一対の溶断部材71,71で、ヒューズエレメント3の同一箇所を両面側から同時に加熱するとともに溶融導体3aを吸引することができ、より速やかにヒューズエレメント3を加熱、溶断することができる。
【0134】
また、保護素子70は、一対の溶断部材71,71の各絶縁基板2に形成された中間電極8及び補助電極73がヒューズエレメント3を介して互いに対向することが好ましい。これにより、一対の溶断部材71,71が対称に接続されることで、リフロー実装時等において、ヒューズエレメント3に対する負荷のかかり方がアンバランスとなることもなく、変形への耐性を向上させることができる。
【0135】
[第7の実施の形態]
次いで、本技術が適用された保護素子の第7の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1,30,40,50,60,70と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。図23(A)(B)、図24に示すように、第7の実施の形態に係る保護素子80は、絶縁基板2の表面2aに中間電極8を形成し、絶縁基板2の裏面2bに発熱体4及び保持電極32を形成することにより、絶縁基板2が中間電極8から貫通孔33を介してヒューズエレメント3の溶融導体3aを保持電極32側に吸引、保持させる溶断部材81を構成し、ヒューズエレメント3がこの溶断部材81に挟持されているものである。
【0136】
溶断部材81の絶縁基板2は、表面2aに、ヒューズエレメント3に接続される中間電極8が形成されている。この中間電極8の構成や効果は上述した保護素子60と同様であるため、詳細は省略する。また、溶断部材81においても、絶縁基板2の表面2aに、中間電極8とともに、ヒューズエレメント3に接続されるとともに、溶融導体3aを保持する補助電極73を設けてもよい。
【0137】
また、溶断部材81の絶縁基板2は、裏面2bに、複数の発熱体4と、各発熱体4への給電端子となる発熱体給電電極5と、発熱体給電電極5から引き出され、各発熱体4の一端部4aと接続された複数の第1の引出電極6と、発熱体4を被覆する絶縁層7と、絶縁基板2の表面2a側の、各発熱体4及び中間電極8との間に形成され、各発熱体4及び中間電極8を接続する発熱体接続電極9と、発熱体接続電極9から引き出され、各発熱体4の他端部4bと接続された第2の引出電極10と、絶縁層7上に形成され、ヒューズエレメント3の溶融導体3aを保持する保持電極32が形成され、中間電極8と保持電極32とが、絶縁基板2を貫通し内面に導電層34が形成された貫通孔33を介して連続されている。これにより、絶縁基板2は、溶融したヒューズエレメント3の溶融導体3aを、貫通孔33を介して中間電極8から保持電極32側に吸引するとともに、発熱体4の通電経路及びヒューズエレメント3への熱経路を構成する。これら各電極5,6,9,10、発熱体4、絶縁層7、保持電極32、貫通孔33及び導電層34の構成や効果は上述した保護素子60と同様であるため、詳細は省略する。
【0138】
保護素子70と同様に、ヒューズエレメント3は、外部回路と接続された第1、第2の外部端子74,75と接続ハンダ14等の接合材料を介して接続されている。また、各溶断部材81の発熱体給電電極5も、外部回路と接続された第3の外部端子76と接続されている。
【0139】
保護素子80における発熱体4の通電、ヒューズエレメント3の溶断の作用等は、上述した保護素子70と同様であるため、詳細は省略する。
【0140】
なお、保護素子70、80において、発熱体4を絶縁基板2の表面2a、裏面2bに形成するいずれの場合においても、貫通孔33の両側に形成することが、保持電極32及び中間電極8を加熱し、またより多くの溶融導体3aを凝集、吸引するうえで好ましい。
【0141】
また、図25(A)(B)、図26(A)(B)に示すように、保護素子70、80は、絶縁基板2の表面2a又は裏面2bに絶縁層7を形成した後に、発熱体給電電極5、第1の引出電極6、第2の引出電極10、発熱体接続電極9及び発熱体4を形成し、さらにこれらの上に絶縁層7を形成することにより、絶縁層7内に発熱体4等を形成してもよい。
【符号の説明】
【0142】
1 保護素子、2 絶縁基板、2a 表面、2b 裏面、3 ヒューズエレメント、3a 溶融導体、4 発熱体、4a 一端部、4b 他端部、5 発熱体給電電極、5a 第3の外部接続電極、6 第1の引出電極、7 絶縁層、8 中間電極、9 発熱体接続電極、10 第2の引出電極、11 第1の電極、11a 第1の外部接続電極、12 第2の電極、12a 第2の外部接続電極、14 接続ハンダ、15 低融点金属層、16 高融点金属層、17 規制壁、20 バッテリパック、20a 正極端子、20b 負極端子、21a~21d バッテリセル、22 充電装置、23 電流制御素子、24 制御部、25 バッテリスタック、26 充放電制御回路、27 検出回路、28 電流制御素子、30 保護素子、32 保持電極、33 貫通孔、34 導電層、40 保護素子、50 保護素子、51 第1の接続電極、52 第2の接続電極、53 貫通孔、54 規制壁、60 保護素子、70 保護素子、71 溶断部材、73 補助電極、74 第1の外部端子、75 第2の外部端子、76 第3の外部端子、77 ケース、77a 下ケース、77b カバー、80 保護素子、81 溶断部材
図1
図2
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