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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】急結剤及び吹付材料
(51)【国際特許分類】
   C04B 22/08 20060101AFI20240227BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20240227BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C04B22/08 Z
C04B22/14 A
C04B22/14 B
C04B22/06 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020079097
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021172568
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】室川 貴光
(72)【発明者】
【氏名】三島 俊一
(72)【発明者】
【氏名】水野 博貴
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-224519(JP,A)
【文献】特開平11-130500(JP,A)
【文献】国際公開第2008/056716(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/060760(WO,A1)
【文献】特開平11-043360(JP,A)
【文献】特開平09-256791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
B28B 1/00- 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セッコウと、カルシウムアルミネートと、水酸化カルシウムと、硫酸アルミニウム及び/又はミョウバンとを含み、
前記セッコウの含有量(X)と、前記カルシウムアルミネート、前記水酸化カルシウム、前記硫酸アルミニウム、及び前記ミョウバンの合計の含有量(Y)との質量比(X/Y)が0.5~1.5である急結剤。
【請求項2】
セッコウを含む急結剤構成材料Aと、カルシウムアルミネートと、水酸化カルシウムと、硫酸アルミニウム及び/又はミョウバンとを含み、セッコウを含まない急結剤構成材料Bとからなり、
前記セッコウの含有量(X)と、前記カルシウムアルミネート、前記水酸化カルシウム、前記硫酸アルミニウム、及び前記ミョウバンの合計の含有量(Y)との質量比(X/Y)が0.5~1.5である急結剤。
【請求項3】
前記硫酸アルミニウムにおける粒径10μm以下の硫酸アルミニウムの割合が1~40質量%である請求項1又は2に記載の急結剤。
【請求項4】
前記カルシウムアルミネート100質量部に対して、前記水酸化カルシウムを0.1以上10質量部未満含む請求項1~3のいずれか1項に記載の急結剤。
【請求項5】
セメントと、請求項1~4のいずれか1項に記載の急結剤とを含む吹付材料。
【請求項6】
前記セメント100質量部に対して、前記セメント中のセッコウ以外のセッコウを5~25質量部含む請求項5に記載の吹付材料。
【請求項7】
前記セメント中のセッコウ以外のセッコウが無水セッコウである請求項6に記載の吹付材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急結剤及び吹付材料に関し、特に土木・建築分野で使用される急結剤及び吹付材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントを急結させる技術としては、例えば、カルシウムアルミネートと無機硫酸塩とを主体とする粉状又は懸濁液状のセメント急硬材と、コンクリートとを、個別に圧送してから合流混合させて30秒~数十分で硬化させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ミョウバンはセメントの硬化促進材として知られており、吹付け用急結剤の一部として使用されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
そして現在市販されている急結剤は、水ガラス、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩とアルカリ金属炭酸塩の組み合わせ、アルカリ金属アルミン酸塩やアルカリ金属アルミン酸塩とアルカリ金属炭酸塩の組み合わせに仮焼明ばん石を組み合わせたもの、及びカルシウムアルミネートを主成分としたもの等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭57-10058号公報
【文献】特公平2-1104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水ガラス、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属アルカリ炭酸塩、及びアルカリ金属アルミン酸塩やアルカリ金属アルミン酸塩とアルカリ金属炭酸塩の組み合わせに仮焼明ばん石を組み合わせたものは、急結性が小さい。また、初期強度の向上も期待できない。
【0006】
以上から、本発明は、良好な凝結性と高い初期強度を示す急結剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を行った結果、下記本発明により当該課題を解決できることを見出して本発明を完成するに至った。すなわち本発明は下記のとおりである。
【0008】
[1] セッコウと、カルシウムアルミネートと、水酸化カルシウムと、硫酸アルミニウム及び/又はミョウバンとを含む急結剤。
[2] セッコウを含む急結剤構成材料Aと、カルシウムアルミネートと、水酸化カルシウムと、硫酸アルミニウム及び/又はミョウバンとを含み、セッコウを含まない急結剤構成材料Bとからなる急結剤。
[3] 前記セッコウの含有量(X)と、前記カルシウムアルミネート、前記水酸化カルシウム、前記硫酸アルミニウム、及び前記ミョウバンの合計の含有量(Y)との質量比(X/Y)が0.5~1.5である[1]又は[2]に記載の急結剤。
[4] 前記硫酸アルミニウムにおける粒径10μm以下の硫酸アルミニウムの割合が1~40質量%である[1]~[3]のいずれかに記載の急結剤。
[5] 前記カルシウムアルミネート100質量部に対して、前記水酸化カルシウムを0.1以上10質量部未満含む[1]~[4]のいずれかに記載の急結剤。
[6] セメントと、[1]~[5]のいずれかに記載の急結剤とを含む吹付材料。
[7] 前記セメント100質量部に対して、前記セメント中のセッコウ以外のセッコウを5~25質量部含む[6]に記載の吹付材料。
[8] 前記セメント中のセッコウ以外のセッコウが無水セッコウである[7]に記載の吹付材料。
【0009】
ここで、本発明における急結剤とは、セメントペースト、セメントモルタル、セメントコンクリートに対して急結性能を付与させることができるものとして定義する。急結としては、上記ペースト、モルタル、コンクリートにおいて、急結剤を加えた直後より著しく凝結や流動性消失が起こるものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、良好な凝結性と高い初期強度を示す急結剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態(本実施形態)について詳細に説明する。なお、本発明で使用する部や%は特に規定のない限り質量基準である。
【0012】
[1.急結剤]
本実施形態に係る急結剤は、セッコウと、カルシウムアルミネートと、水酸化カルシウムと、硫酸アルミニウム及び/又はミョウバンとを含む。当該急結剤は、上記各成分を含む1剤型でもよいが、取り扱い性の観点から、セッコウを含む急結剤構成材料Aと、カルシウムアルミネートと、水酸化カルシウムと、硫酸アルミニウム及び/又はミョウバンとを含み、セッコウを含まない急結剤構成材料Bとからなる、2剤型の急結剤であることが好ましい。
なお、本発明の急結剤におけるセッコウとは、すでに配合されているセメント中のセッコウではなく、当該急結剤中のセッコウをいう。
以下、本実施形態に係る急結剤の各材料等について説明する。
【0013】
(セッコウ)
本実施形態に係るセッコウとしては、無水、半水、二水のいずれのセッコウも使用できる。これらの中では、良好な強度発現性の観点から無水石膏が好ましい。
【0014】
セッコウの粒度は、初期強度発現性の観点から、ブレーン比表面積で2000cm/g以上が好ましく、3000~6000cm/gがより好ましい。なお、本明細書におけるブレーン比表面積値は、JIS R 5201(セメントの物理試験方法)に準拠して求めることができる。
【0015】
(カルシウムアルミネート)
カルシウムアルミネート(以下、CA類という)とは、CaOとAlを主成分とし、水和活性を有する化合物の総称であり、CaO及び/又はAlの一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等と置換した化合物、あるいは、CaOとAlを主成分とするものにこれらが少量固溶した物質であり、CA類は結晶質、非晶質のいずれであってもよい。
【0016】
結晶質の具体例としては、CaOをC、AlをA、RO(例えば、NaO、KO、LiO)をRとすると、CAやこれにアルカリ金属が固溶したC14RA、CAやC12やC11・CaF、CA・Fe、及びC・CaSO等が挙げられるが、急結性が良好であることから、非晶質のカルシウムアルミネートが好ましい。
【0017】
なお、本実施形態で用いるカルシウムアルミネートは、工業原料から微量のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属が混入し、このアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含むCA類が一部生成する可能性があるが、これらのわずかなアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の存在によって何ら制限を受けるものではない。
【0018】
カルシウムアルミネートのCaO/Alモル比は特に限定はされないが、極初期の強度発現性を考慮すると、当該モル比は2.0~3.0が好ましく、2.2~2.8がより好ましい。モル比が2.0以上であると、極初期の凝結性状を良好にすることができ、3.0以下であると、良好な長期強度発現性が得られやすくなる。
【0019】
カルシウムアルミネートのブレーン比表面積(以下、単に「ブレーン」ということがある)は、4000~8000cm/gであることが好ましく、5000~7000cm/gであることがより好ましい。4000~8000cm/gであることで、初期強度発現性が得られやすく、吹き付け時のモルタル及び/又はコンクリートの取扱い性を良好にすることができる。
【0020】
(水酸化カルシウム)
水酸化カルシウムは、極初期の流動性低下や長期強度発現性を担保するものとして有効な材料である。水酸化カルシウムとしては特に限定されないが、生石灰が水和した際に生じる消石灰や、カーバイドが水和した際に生じるカーバイド滓も含まれる。また、市販されている水酸化カルシウムも使用可能であり、上記いずれかの併用も可能である。
【0021】
水酸化カルシウムのブレーン比表面積は、5000~15000cm/gであることが好ましく、7000~13000cm/gであることがより好ましい。5000~15000cm/gであることで、急結性状や長期強度発現性を担保することができ、良好な初期強度発現性を得られやすくすることができる。
【0022】
(硫酸アルミニウム)
硫酸アルミニウムとは、セメントモルタルやセメントコンクリートに対して、主に凝結速度を増進する効果を付与する。
【0023】
硫酸アルミニウムとしては、特に限定されるものではなく、市販されているものが使用でき、当該硫酸アルミニウムは、0~18水塩であることが好ましい。
【0024】
特に、硫酸アルミニウムは無水塩になると、溶解速度が小さくなるので、凝結特性を向上させる効果が小さくなる。そのため、有水塩(水和数18以下の有水塩)を使用することが好ましく、貯蔵安定性を考慮すると、8水塩を含むことがより好ましい。
【0025】
硫酸アルミニウムにおける粒径10μm以下の硫酸アルミニウムの割合が1~40質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。粒径10μm以下の硫酸アルミニウムが1~40質量%であるであると、凝結特性、強度発現性の向上が期待できる。なお、上記の粒径は例えば、篩によって調整することができる。
【0026】
(ミョウバン)
ミョウバンは、セメントモルタルやセメントコンクリートの配合した直後からの流動性消失を促進することや、1日程度の強度発現性を促進するために有効である。ミョウバンとしては特に限定されないが、例えば、カリミョウバン、クロムミョウバン、鉄ミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、天然ミョウバン等いずれのミョウバンも使用、併用が可能である。特にセメントモルタルやセメントコンクリート流動性を消失するものとして、カリミョウバン、ナトリウムミョウバン、アンモニウムミョウバンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0027】
ミョウバンにおける粒径10μm以下の割合が1~40質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。粒径10μm以下のミョウバンが1~40質量%であると、急結性状や長期強度発現性を担保することができ、良好な初期強度発現性を得られやすくすることができる。なお、上記の粒径は例えば、篩によって調整することができる。
【0028】
既述のとおり、本実施形態に係る急結剤としては、セッコウと、カルシウムアルミネートと、水酸化カルシウムと、硫酸アルミニウム及び/又はミョウバンとを含む1剤型急結剤と、セッコウを含む急結剤構成材料Aと、カルシウムアルミネートと、水酸化カルシウムと、硫酸アルミニウム及び/又はミョウバンとを含み、セッコウを含まない急結剤構成材料Bとからなる2剤型急結剤の態様が挙げられる。
【0029】
1剤型急結剤の場合、当該急結剤100部に対して、セッコウは33~60部が好ましく、45~55部がより好ましい。上記範囲であることで、初期凝結と長期強度を良好にすることができる。
【0030】
カルシウムアルミネートは、当該急結剤100部に対して、25~75部が好ましく、35~65部がより好ましい。上記範囲であることで、初期凝結と長期強度を良好にすることができる。
【0031】
水酸化カルシウムは、当該急結剤100部に対して、0.2~7部が好ましく、1~3部がより好ましい。上記範囲であることで、初期強度と長期強度を良好にすることができる。
【0032】
硫酸アルミニウム又はミョウバンの含有量(これらを併用する場合はこれらの合計量)は、急結剤100部に対して、1~20部が好ましく、2~10部がより好ましい。上記範囲であることで、それぞれの有する特性が発揮されやすくなる。
【0033】
また、2剤型急結剤の場合、急結剤構成材料A中のセッコウは、急結剤構成材料Aの100部に対して、80部以上が好ましく、90部以上がより好ましい。80部以上であることで、初期凝結と長期強度を良好にすることができる。
【0034】
急結剤構成材料B中のカルシウムアルミネートは、当該急結剤構成材料Bの100部に対して、60~95部が好ましい。上記範囲であることで、初期凝結と長期強度を良好にすることができる。
【0035】
急結剤構成材料B中の水酸化カルシウムは、当該急結剤構成材料Bの100部に対して、0.1~10部が好ましい。上記範囲であることで、初期強度と長期強度を良好にすることができる。
【0036】
急結剤構成材料B中の硫酸アルミニウム又はミョウバンの含有量(これらを併用する場合はこれらの合計量)は、当該急結剤構成材料Bの100部に対して、5~20部が好ましい。上記範囲であることで、それぞれの有する特性が発揮されやすくなる。
【0037】
ここで、本実施形態に係る急結剤においては、セッコウの含有量(X)と、カルシウムアルミネート、水酸化カルシウム、硫酸アルミニウム、及びミョウバンの合計の含有量(Y)との質量比(X/Y)は0.5~1.5であることが好ましく、0.65~1.25であることがより好ましい。質量比(X/Y)が0.5~1.5であることで、初期凝結と強度発現性が向上することができる。
【0038】
また特に、本実施形態に係る急結剤においては、カルシウムアルミネート100質量部に対して、水酸化カルシウムを0.1以上10質量部未満含むことが好ましい。水酸化カルシウムを0.1以上10質量部未満含むことで、初期強度と長期強度を良好にすることができる。
【0039】
以上のような本実施形態に係る急結剤は、カルシウムアルミネート、水酸化カルシウム、炭酸アルカリ、硫酸アルミニウム及びミョウバン類以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で種々の添加剤を含有させることができるが、取り扱い性の観点から、アルミン酸ソーダは含有しないことが好ましい。
【0040】
本実施形態に係る急結剤としては、吹付材料、ロックボルト用定着材、導水路等の底板、及び舗装コンクリート等が挙げられるが、これらの中では吹付材料がより好ましい。
【0041】
[2.吹付材料]
本実施形態に係る吹付材料は、セメントと、本発明の急結剤を含む。
当該セメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱などの各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ又はシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などを混合したフィラーセメント、並びに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)を挙げることができる。
【0042】
急結剤の使用量は、吹付けモルタル又は吹付けコンクリート中のセメント100部に対し、5~20部が好ましく、7~15部がより好ましい。粉体急結剤の使用量が5~20部であると、本発明の粉末状急結剤の効果を充分に発揮させることができる。また、水/セメント比は65%以下が好ましい。
【0043】
セメント100質量部に対して、当該セメント中のセッコウ以外のセッコウを5~25部含むことが好ましく、7~15部含むことがより好ましい。5~25部含むことで、初期凝結と強度発現性を良好にすることができる。
この場合、セッコウ以外のセッコウ(具体的には、急結剤に用いるセッコウ)は、強度発現性の観点から、無水セッコウであることが好ましい。
【0044】
本実施形態に係る急結剤とセメント、モルタル、又はコンクリートとの混合方法は、当該急結剤が1剤型の場合はこれらに一度に混合、若しくは何回かに分けて逐次混合する方法が挙げられる。また、2剤型の場合は、急結剤構成材料Bを混合する前に、急結剤構成材料Aとセメントコンクリートとを混合していれば、特に制限されるものではない。
【0045】
本発明の吹付工法では、乾式吹付法や湿式吹付法いずれも使用できる。乾式吹付工法としては、セメント、急結剤構成材料A、必要に応じて骨材、及び急結剤構成材料Bを混合し、空気圧送し、途中で、例えばY字管の一方から水を添加して、湿潤状態で吹付ける方法や、セメントと、必要に応じて骨材とを混合して空気圧送し、途中で急結剤構成材料A、急結剤構成材料B、及び水の順に吹付材料を添加し、湿潤状態で吹付ける方法等が挙げられる。湿式吹付工法の場合は、セメント、急結剤構成材料A、必要に応じて骨材、及び水を添加して混練し、空気圧送し、途中で、例えばY字管の一方から急結剤構成材料Bを添加して吹付ける方法等が挙げられる。
吹付工法においては、従来使用の吹付設備等が使用できる。通常、吹付圧力は3~6kg/cm、吹付速度は4~25m/hである。
【0046】
吹付設備は吹付が十分に行われれば、特に限定されるものではなく、例えば、コンクリートの圧送には商品名「アリバー285」等が、急結材の圧送には急結剤圧送装置「ナトムクリート」等が使用できる。
【実施例
【0047】
以下、実施例、比較例を挙げてさらに詳細に内容を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
「実験例1」
下記表1に示す配合で、セメント、細骨材、水、及び減水剤を混合しモルタルを作製し、さらに急結剤構成材料Aを添加して、モルタル組成物Aを作製した。
3402部のモルタル組成物Aに対し、表2に示した組成の各急結剤構成材料B-1~B-4を84部加えて急結モルタル(急結材料)を調製し、下記凝結試験を行った。また、下記圧縮強度を測定した。温度は20℃とした。結果を表3に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
「モルタル組成物Aの作製における使用材料」
セメント:市販品、普通ポルトランドセメント、密度3.15g/cm
細骨材:新潟県姫川水系川砂、密度2.61g/cm
水:工業用水
急結剤構成材料A:無水石こう、ブレーン値5000cm/g
減水剤:高性能減水剤FTN30(GCPケミカルズ社製)
急結剤構成材料B-1~B-4:下記表2に示す配合となるように、カルシウムアルミネートと、水酸化カルシウムと、炭酸アルカリと、硫酸アルミニウム及びミョウバン類を混合して急結剤構成材料B-1~B-4を調製した。
【0051】
【表2】
【0052】
「急結剤構成材料B-1~B-4の作製における使用材料」
カルシウムアルミネート(CA):CaO/Alモル比2.5となるように原料(CaCO及びAl)を粉砕混合し、電気炉で溶融し、急冷したもの、ガラス化率90%、ブレーン5500cm/g
水酸化カルシウム:JIS R 9001に規定された消石灰2号に相当する市販品
硫酸アルミニウム:硫酸アルミニウムA、市販品、8水塩、粒径10μm以下の粒子含有率:5%
ミョウバン:カリウムミョウバン12水和物、市販品
【0053】
「試験方法」
凝結試験:凝結試験では、プロクター貫入抵抗により凝結性状を評価した。プロクター貫入抵抗(凝結性状)は、ASTMC 403「貫入抵抗によるコンクリートの凝結時間試験方法」に準拠し、急結モルタル(急結材料)作製後から、0.75分後、1分後、3分後、5分後、10分後の凝結性状を評価した。なお、貫入抵抗値が3.5N/mmになると凝結が始まっている(始発)とされ、28.0N/mmになると凝結が終了した(終結)とされる。
【0054】
圧縮強度:JSCE D-102-1999に準じて、圧縮強度を測定した。材齢は10分、3時間、1日、28日とした。
【0055】
【表3】
【0056】
「実験例2」
試験1-2において、急結剤構成材料Aと急結剤構成材料B-2の含有量の比(急結剤構成材料A/急結剤構成材料B-2)を下記表4のように急結剤構成材料B-2の含有量を変化させた以外は実験例1と同様にして急結モルタル(急結材料)を調製し、各試験を行った。結果についても下記表4に示す。
【0057】
【表4】
【0058】
「実験例3」
試験1-2の急結剤構成材料B-2における硫酸アルミニウムAで、その粒径10μm以下の粒子の割合を表5となるように調整したものをそれぞれ使用した以外は実験例1と同様にして急結モルタル(急結材料)を調製し、各試験を行った。結果についても下記表5に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
「実験例4」
試験1-2の急結剤構成材料B-2における、カルシウムアルミネート100部に対する水酸化カルシウムの量を表6となるように調整したものをそれぞれ使用した以外は実験例1と同様にして急結モルタル(急結材料)を調製し、各試験を行った。結果についても下記表6に示す。
【0061】
【表6】
【0062】
「実験例5」
試験1-2において、モルタル組成物Aのセメント100に対する急結剤構成材料Aの量を表7となるように、急結剤構成材料Aの量を調整したものをそれぞれ使用した以外は実験例1と同様にして急結モルタル(急結材料)を調製し、各試験を行った。結果についても下記表7に示す。
【0063】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、特に土木分野、建築分野等で用いられる吹付材料に好適に使用できる。