(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】単層回路基板、多層回路基板及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/42 20060101AFI20240227BHJP
H05K 3/14 20060101ALI20240227BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240227BHJP
H05K 3/00 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
H05K3/42 610A
H05K3/14 A
H05K3/46 N
H05K3/00 R
(21)【出願番号】P 2020088788
(22)【出願日】2020-05-21
(62)【分割の表示】P 2018541466の分割
【原出願日】2016-11-23
【審査請求日】2020-05-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】201510747884.1
(32)【優先日】2015-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518155306
【氏名又は名称】武漢光谷創元電子有限公司
【氏名又は名称原語表記】RICHVIEW ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】10/F., Hi-Tech Plaza, No.18 Guandongyuan Rd., Wuhan East Lake High-Tech Development Zone, Wuhan, Hubei 430070, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100224616
【氏名又は名称】吉村 志聡
(72)【発明者】
【氏名】白 四平
(72)【発明者】
【氏名】呉 香蘭
(72)【発明者】
【氏名】王 志建
(72)【発明者】
【氏名】楊 志剛
(72)【発明者】
【氏名】張 金強
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】岩田 淳
【審判官】渡辺 努
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-540197(JP,A)
【文献】特開2007-305969(JP,A)
【文献】特開2002-271031(JP,A)
【文献】国際公開第2015/149580(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K3/42
H05K3/14-3/18
H05K3/46
H05K3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
止まり穴及び/または貫通穴を含む穴があけられた基材であって、前記穴の壁に第1導電種結晶層が形成された前記基材と、
前記基材の一部の表面上に形成された回路パターン層であって、前記基材の一部の表面に形成された、前記第1導電種結晶層と同時に形成された第2導電種結晶層を含む、前記回路パターン層と、
を含み、
前記基材の表面上に回路のネガパターンを有するフォトレジスト層と該フォトレジスト層上の第三導電種結晶層が形成されており、前記第三導電種結晶層は前記第一導電種結晶層と同時に形成され、且つ剥離液を用いて当該フォトレジスト層を溶解して前記第三導電種結晶層を前記フォトレジストとともに離脱させるように構成され、
前記第1導電種結晶層及び前記第2導電種結晶層は全て、前記基材の一部の表面の下方及び前記穴の壁の下方に注入されたイオン注入層と、前記イオン注入層の上方に付着したプラズマ堆積層とを含み、前記第三導電種結晶層は前記イオン注入層と前記プラズマ堆積層を含む、
単層回路基板。
【請求項2】
前記イオン注入層は前記基材の一部の表面の下方及び前記穴の壁の下方の1-500nmの深さに位置するとともに、前記基材と安定したドーピング構造を形成している、請求項1に記載の単層回路基板。
【請求項3】
前記プラズマ堆積層は、厚さが1-10000nmのプラズマ堆積層である、請求項1に記載の単層回路基板。
【請求項4】
前記第1導電種結晶層及び前記第2導電種結晶層を構成する導電材料は、Ti、Cr、Ni、Cu、Ag、Au、V、Zr、Mo、Nb、及びそれらの間の合金のうちの1種または多種を含む、請求項1に記載の単層回路基板。
【請求項5】
前記回路パターン層は、前記第1導電種結晶層及び前記第2導電種結晶層の上方に位置する導体肉厚層をさらに含み、前記導体肉厚層は、厚さが0.01-1000μmであり、Al、Mn、Fe、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Ag、Au、V、Zr、Mo、Nb、及びそれらの間の合金のうちの1種または多種によって構成される、請求項1に記載の単層回路基板。
【請求項6】
表面貼合層、
二層以上の単層回路基板
及び各前記単層回路基板同士の間の中間貼合
層、表面貼合層の順で構成され、穴があけられ、前記穴の壁に第1導電種結晶層が形成されるとともに、前記表面貼合層の一部の外面上に、前記第1導電種結晶層と同時に形成された第2導電種結晶層を有し、前記第二導電種結晶層の外表面の上方には回路パターンを有する導体肉厚層と回路のネガパターンを有するフォトレジスト層が形成され、前記第1導電種結晶層及び前記第2導電種結晶層は全て、前記穴の壁の下方及び前記表面貼合層の一部の外面の下方に注入されるイオン注入層と、前記イオン注入層の上方に付着したプラズマ堆積層とを含む、
多層回路基板。
【請求項7】
前記イオン注入層は前記穴の壁の下方及び前記表面貼合層の一部の外面の下方の1-500nmの深さに位置する、請求項6に記載の多層回路基板。
【請求項8】
前記プラズマ堆積層は、厚さが1-10000nmである、請求項6に記載の多層回路基板。
【請求項9】
前記第1導電種結晶層及び前記第2導電種結晶層を構成する導電材料は、Ti、Cr、Ni、Cu、Ag、Au、V、Zr、Mo、Nb、及びそれらの間の合金のうちの1種または多種を含む、請求項6に記載の多層回路基板。
【請求項10】
前記第1導電種結晶層及び前記第2導電種結晶層の上方に厚さが0.01-1000μmの導体肉厚層が形成されている、請求項6に記載の多層回路基板。
【請求項11】
前記穴は多層回路基板を貫通する貫通穴、または前記多層回路基板の表面上に形成される止まり穴、あるいは前記単層回路基板または中間貼合層に形成される止まり穴である、請求項6に記載の多層回路基板。
【請求項12】
前記中間貼合層及び前記表面貼合層は、PP、PI、PTO、PC、PSU、PES、PPS、PS、PE、PEI、PTFE、PEEK、PA、PET、PEN、LCP、PPAのうちの1種または多種を含む、請求項6に記載の多層回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単層回路基板、多層回路基板及びそれらの製造方法に関する。本発明は特に、穴を有する絶縁材料を基材とし、穴の壁に導体層が形成され、且つ基材の表面上に回路パターンが形成される単層回路基板と、複数の単層回路基板によって積層され、メッキスルーホールによってそれぞれの単層回路基板が導通される多層回路基板と、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板分野において、回路基板の表面と裏面における回路パターンまたは電子部品などの導通にメッキスルーホールが広く使用され、あるいは、多層回路パターンの設計を便利にするように、二層または多層回路基板のうちの各層の回路基板の間における導体層を互いに電気的接続する。
【0003】
従来技術において、メッキスルーホールを有する単層回路基板を製造する方法は主に、圧延法または電解法によって銅箔を製造するステップと、高温積層法によって銅箔を基材に貼り付けて銅張積層板を形成するステップと、銅張積層板に対し穿孔するとともに汚れを除去するステップと、スルーホールめっき(PTH)またはブラックホール、シャドーなどの工程によって、穴の壁に導電種結晶層を形成するステップと、めっきによって穴の壁に金属導体層を形成し、メッキスルーホールを有する銅張積層板を作成するステップと、銅張積層板の上方にフォトレジスト膜を覆い、リソグラフィ機で露光・現像し、次に銅張積層板における回路領域以外の銅層を除去するように、エッチングを行うことによって、回路パターンを有する回路基板を作成するステップと、を含む。
【0004】
その他に、メッキスルーホールを有する多層回路基板の製造方法は主に、単層回路基板を作成するステップと、銅箔、PP(プリプレグ)、単層回路基板、PP、単層回路基板、‥、PP、銅箔の順で基板をマッチングして積層するステップと、積層後の多層基板に対し貫通穴をあけて、表層の銅箔に対し止まり穴をあけるとともに、穴の金属化を行うステップと、最上層と最下層の銅箔にパターンめっきまたはパネルめっきを施し、回路パターンを作成するステップと、を含むプレス接合法がある。但し、穴の金属化も、通常スルーホールめっきまたはブラックホール、シャドーなどの工程によって穴の壁に導電種結晶層を形成し、次にめっきなどによって導体肉厚層を形成することによって実現される。
【0005】
上記の方法によってメッキスルーホールを有する単層または多層回路基板を形成する過程において、基材上に穴径が100μmよりも小さい穴をあけるためには、現在レーザー穿孔技術を採用しなければならない。この際に、穿孔しようとする位置の銅箔に対して予め薄くさせ、その後にレーザーで穿孔し、穿孔後にスルーホールめっき及びめっきを行う。しかし、エッチングで薄くさせる過程において、エッチングの箇所がずれると、基材における穿孔箇所もずれるようになる。そして、微細穴に対し金属化を行う際に、めっき銅層と穴の壁の間の結合力が弱く、銅層が穴の壁から離脱しやすい。その他に、従来技術を利用して銅張積層板上に作られた微細穴の最小穴径が20~50μmであり、穴径が20μmよりも小さくなると、穴のアスペクト比が高すぎることになり、スルーホールめっき及びめっきする際に穴の壁における銅層が不均一などの問題が発生する。微細穴の領域内に、電流密度の分布の不均一により、銅の微細穴の表面における堆積速度が穴の壁と底部より大きくなる。そのため、堆積する過程に空洞またはクラック(メッキ割れ)が形成されやすく、さらに、穴の表面における銅の厚さが穴の壁における銅の厚さよりも大きくなる。
【0006】
また、上述した回路基板を生産する方法は製品の銅張積層板を予め生産する必要があり、次に製品の銅張積層板に対して穿孔と穴の金属化を行い、次にフィルムを貼り合わせ、露光・現像、エッチングなどのプロセスによって回路パターンを作成するため、工程プロセスが冗長になり、コストがより高くなる。更に、全ての工程プロセスにおいて金属を複数回エッチングするため、金属イオンを含有する汚水が大量に生じ、環境に重大な被害をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、回路基板の製造プロセスを簡略化するとともに、その中のメッキスルーホール(金属化孔)の導電性を向上させることができる、単層回路基板、多層回路基板及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の技術案は単層回路基板を製造する方法であって、基材上に止まり穴及び/または貫通穴を含む穴を穿孔するステップ(S1)と、基材の表面上に回路のネガパターンを有するフォトレジスト層を形成するステップ(S2)と、基材の表面及び穴の壁に導電種結晶層を形成するステップ(S3)と、基材の表面上に回路パターンを形成するように、フォトレジスト層を除去するステップ(S4)と、を含み、ステップS3は、導電種結晶層の少なくとも一部としてイオン注入層を形成するように、イオン注入によって導電材料を基材の表面の下方及び穴の壁の下方に注入することを含む、単層回路基板を製造する方法である。
【0009】
当該方法によれば、簡単な工程プロセスによって、金属化された穴を基材上に形成し、当該基材の表面上に回路パターンを形成することができる。回路パターンを形成する際に、導電種結晶層を形成する前に、基材の表面にフォトレジストを予め覆い、回路のネガパターンを有するフォトレジスト層をさらに形成し、次に剥離液を用いて当該フォトレジスト層を溶解し、非回路領域の導電種結晶層及び/または導体肉厚層をフォトレジスト層とともに離脱させるため、従来技術のように必ずエッチングによって回路パターンを得る必要がなく、または少なくともエッチング液の使用を減少することができ、よって、金属イオンを含有するエッチング廃水の環境に対する危害が軽減または解消される。
【0010】
本発明の第2の技術案において、第1の技術案におけるステップS3は、プラズマ堆積層を形成するように、プラズマの堆積によって導電材料をイオン注入層の上方に堆積することをさらに含み、プラズマ堆積層及びイオン注入層が導電種結晶層を構成する。
【0011】
本発明の第3の技術案において、第1の技術案におけるステップS3の後且つステップS4の前に、導電種結晶層上に導体肉厚層を形成するステップをさらに含む。
【0012】
本発明の第4の技術案において、第1の技術案におけるフォトレジスト層を除去するステップは、剥離液を用いてフォトレジスト層を溶解することを含む。
【0013】
本発明の第5の技術案は単層回路基板を製造する方法であって、基材に止まり穴及び/または貫通穴を含む穴を穿孔するステップ(S1)と、基材の表面と穴の壁に導電種結晶層を形成するステップ(S2)と、基材の表面上に回路パターンを形成するステップ(S3)と、を含み、ステップS2は、導電種結晶層の少なくとも一部としてイオン注入層を形成するように、イオン注入によって導電材料を基材の表面の下方及び穴の壁の下方に注入することを含む、単層回路基板を製造する方法である。
【0014】
本発明の第6の技術案において、第5の技術案におけるステップS2は、プラズマ堆積層を形成するように、プラズマ堆積によって導電材料をイオン注入層の上方に堆積することを更に含み、プラズマ堆積層及びイオン注入層が導電種結晶層を構成する。
【0015】
本発明の第7の技術案において、第5の技術案におけるステップS3は、先に導電種結晶層上に導体肉厚層を形成し、次に基材の表面の上方に位置する導体肉厚層上にパターンめっきまたはパネルめっきを行うことによって、回路パターンを得ることを含む。
【0016】
本発明の第8の技術案において、第5の技術案におけるステップS3は、基材の表面に形成された導電種結晶層上に直接にパターンめっきまたはパネルめっきを行うことによって、回路パターンを得ることを含む。
【0017】
本発明の第9の技術案において、第1から第8の技術案のいずれかにおける基材は、剛性板材または可撓性板材であって、剛性板材は有機高分子剛性板、セラミック板、ガラス板のうちの1種または多種を含み、有機高分子剛性板はLCP、PTFE、CTFE、FEP、PPE、合成ゴム板、ガラス繊維布/セラミックフィラー補強板のうちの1種または多種を含み、可撓性板材は有機高分子薄膜であり、PI、PTO、PC、PSU、PES、PPS、PS、PE、PP、PEI、PTFE、PEEK、PA、PET、PEN、LCP、またはPPAのうちの1種または多種を含む。
【0018】
本発明の第10の技術案において、第1または第5の技術案におけるイオン注入の期間に、導電材料のイオンは1-1000keVのエネルギーが与えられ、基材の表面の下方及び穴の壁の下方の1-500nmの深さまで注入されるとともに、基材と安定したドーピング構造を形成する。
【0019】
本発明の第11の技術案において、第2または第6の技術案におけるプラズマ堆積の期間に、導電材料のイオンは1-1000eVのエネルギーが与えられ、厚さが1-10000nmのプラズマ堆積層を形成する。
【0020】
本発明の第12の技術案において、第1から第8の技術案のいずれかにおける導電種結晶層を構成する導電材料は、Ti、Cr、Ni、Cu、Ag、Au、V、Zr、Mo、Nb、及びそれらの間の合金のうちの1種または多種を含む。
【0021】
本発明の第13の技術案において、第3または第7の技術案におけるめっき、無電解めっき、真空蒸着めっき、スパッタリングのうちの1種または多種によって、Al、Mn、Fe、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Ag、Au、V、Zr、Mo、Nb、及びそれらの間の合金のうちの1種または多種を用いて厚さが0.01-1000μmの導体肉厚層を形成する。
【0022】
本発明の単層回路基板を製造する方法によれば、基材の表面の金属化と穴の金属化は同時に行うことができる。そのため、基材上に一次成形によってメッキスルーホールを有する単層回路基板を直接に作成することができ、従来技術のように、より厚い金属箔を予め基材に覆って、次にエッチングによって金属箔を薄くさせてから基材を穿孔する必要がなく、メッキスルーホールを得るために、さらにスルーホールめっきまたはブラックホール、シャドーなどの工程によって穴の壁に導電層を形成する必要もない。従来技術に比べれば、本方法は工程プロセスが顕著に短縮されるとともに、エッチング液の使用を減少することができ、環境の保護に有益である。また、各種の工程パラメータを調整することによって、これらの方法で極薄の回路パターン層を容易に作成し、得られた単層回路基板は、HDI(高密度相互接続基板)及びCOF(チップオンフィルム)技術を基礎とする中高級精密電子製品の応用に有利である。また、イオン注入の期間に、導電材料のイオンはハイスピードで基材の内部に強制的に注入され、基材との間に安定したドーピング構造を形成し、基材の表面と穴の壁の下方に数多くのパイルの形成に相当する。パイルが存在し、且つ後続で作成される導電層(プラズマ堆積層または導体肉厚層)がパイルに連結されることよって、最終に作成される基板の導電層と基材との間の結合力がより高く、従来技術のマグネトロンスパッタリングによって作成される金属層と導体との間の結合力よりも遥かに高い。更に、イオン注入に用いられる導電材料イオンのサイズは通常ナノレベルであって、イオン注入の期間に分布が比較的に均一であり、基材の表面及び穴の壁までの入射角には大きな違いがない。そのため、後続でイオン注入層の上方に形成される導体肉厚層またはプラズマ堆積層の良好な均一性及び緻密性を確保することができ、ピンホール現象が生じにくい。微細穴の金属化の際に、穴の壁上に表面が均一で緻密な導電種結晶層が容易に形成され、且つ穴の壁の導体層の厚さと基材の表面の導体層の厚さの比が1:1に達することができるため、めっきなどの際に穴の壁の導体層の不均一及び空洞またはクラック(メッキ割れ)などの問題が生じることなく、メッキスルーホール(金属化孔)の導電性を有効に向上することができる。
【0023】
本発明の第14の技術案は、単層回路基板であって、止まり穴及び/または貫通穴を含む穴があけられた基材であって、穴の壁に導電種結晶層が形成された基材と、基材の一部の表面上に形成された回路パターン層であって、基材の一部の表面に形成された導電種結晶層を含む回路パターン層と、を含み、導電種結晶層は基材の一部の表面の下方及び穴の壁の下方に注入されたイオン注入層を含む、単層回路基板である。
【0024】
このような単層回路基板は、穴の壁においてイオン注入層が存在するため、穴の壁と導電種結晶層との間に非常に高い結合力を有し、よって、穴の壁の導電層が後続の各種の加工または応用の過程において容易に離脱するまたは引っかき傷が付けられることがない。そのため、穴の導電性の向上に有利で、導通性に優れた単層回路基板の作成が実現できる。
【0025】
本発明の第15の技術案において、第14の技術案におけるイオン注入層は、基材の一部の表面の下方及び穴の壁の下方の1-500nmの深さに位置するとともに、基材と安定したドーピング構造を形成する。
【0026】
本発明の第16の技術案において、第14の技術案における導電種結晶層は、イオン注入層の上方に付着した、厚さが1-10000nmのプラズマ堆積層をさらに含む。
【0027】
本発明の第17の技術案において、第14の技術案における導電種結晶層は、Ti、Cr、Ni、Cu、Ag、Au、V、Zr、Mo、Nb、及びそれらの間の合金のうちの1種または多種を含む導電材料によって構成される。
【0028】
本発明の第18の技術案において、第14の技術案における回路パターン層は、導電種結晶層の上方に位置する導体肉厚層をさらに含み、導体肉厚層は厚さが0.01-1000μmであり、Al、Mn、Fe、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Ag、Au、V、Zr、Mo、Nb、及びそれらの間の合金のうちの1種または多種によって構成される。
【0029】
本発明の第19の技術案は、多層回路基板を製造する方法であって、金属箔、中間貼合層、二層以上の単層回路基板及び各前記単層回路基板同士の間の中間貼合層、中間貼合層、金属箔の順で基板をマッチングして積層するステップ(S1)と、積層された多層基板上に貫通穴及び/または止まり穴を含む穴を穿孔するステップ(S2)と、穴の壁に導電種結晶層を形成するステップ(S3)と、回路パターンを形成するように、金属箔の一部を除去するステップ(S4)と、を含み、ステップS3は、導電種結晶層の少なくとも一部としてイオン注入層を形成するように、イオン注入によって導電材料を穴の壁の下方に注入することを含む、多層回路基板を製造する方法である。
【0030】
イオン注入の期間に、導電材料のイオンはハイスピードで穴の壁の下方に強制的に注入され、基材との間に安定したドーピング構造を形成し、穴の壁の下方に数多くのパイルの形成に相当する。パイルが存在し、且つ後続で作成される導電層(プラズマ堆積層または導体肉厚層)がパイルに連結されることよって、最終に作成される基板の導電層と基材との間の結合力がより高く、従来技術のマグネトロンスパッタリングによって作成される金属層と導体との間の結合力よりも遥かに高い。更に、イオン注入に用いられる導電材料イオンのサイズは通常ナノレベルであって、イオン注入の期間に分布が比較的に均一であり、穴の壁までの入射角には大きな違いがない。そのため、後続でイオン注入層の上方に形成される導体肉厚層またはプラズマ堆積層の良好な均一性及び緻密性を確保することができ、ピンホール現象が生じにくい。微細穴の金属化の際に、穴の壁上に表面が均一で緻密な導電種結晶層が容易に形成され、メッキスルーホール(金属化孔)の導電性を有効に向上することができる。
【0031】
本発明の第20の技術案は、多層回路基板を製造する方法であって、表面貼合層、二層以上の単層回路基板及び各前記単層回路基板同士の間の中間貼合層、表面貼合層の順で基板をマッチングして積層するステップ(S1)と、積層された多層基板上に貫通穴及び/または止まり穴を含む穴を穿孔するステップ(S2)と、表面貼合層の外面及び穴の壁に導電種結晶層を形成するステップ(S3)と、表面貼合層の外面に回路パターンを形成するステップ(S4)と、を含み、ステップS3は、導電種結晶層の少なくとも一部としてイオン注入層を形成するように、イオン注入によって導電材料を表面貼合層の外面の下方及び穴の壁の下方に注入することを含む、多層回路基板を製造する方法である。
【0032】
当該方法によれば、表面貼合層の外面の金属化と穴の金属化は同時に行うことができる。そのため、一次成形によってメッキスルーホール及び表面回路パターンを有する多層回路基板を直接に作成することができ、従来技術のように、予めより厚い金属箔を覆って、次にエッチングによって金属箔を薄くさせてから穿孔する必要がなく、メッキスルーホールを得るために、スルーホールめっきまたはブラックホール、シャドーなどの工程によって穴の壁に導電層を形成する必要もない。従来技術に比べれば、当該方法は工程プロセスが顕著に短縮されるとともに、エッチング液の使用を減少することができ、環境の保護に有益である。また、各種の工程パラメータを調整することによって、当該方法で極薄の表面回路パターン層を容易に作成し、得られた単層回路基板は、HDI(高密度相互接続基板)及びCOF(チップオンフィルム)技術を基礎とする中高級精密電子製品の応用に有利である。
【0033】
本発明の第21の技術案において、第19または第20の技術案におけるイオン注入の期間に、導電材料のイオンは、1-1000keVのエネルギーが与えられ、穴の壁の下方及び/または表面貼合層の外面の下方の1-500nmの深さまで注入されるとともに、基材と安定したドーピング構造を形成する。
【0034】
本発明の第22の技術案において、第19または第20の技術案におけるステップS3は、プラズマ堆積層を形成するように、プラズマの堆積によって導電材料をイオン注入層の上方に堆積することを含み、プラズマ堆積層及びイオン注入層が導電種結晶層を構成する。
【0035】
本発明の第23の技術案において、第22の技術案におけるプラズマ堆積の期間に、導電材料のイオンは、1-1000eVのエネルギーが与えられ、厚さが1-10000nmのプラズマ堆積層を形成する。
【0036】
本発明の第24の技術案において、第19または第20の技術案における導電種結晶層を構成する導電材料は、Ti、Cr、Ni、Cu、Ag、Au、V、Zr、Mo、Nb、及びそれらの間の合金のうちの1種または多種を含む。
【0037】
本発明の第25の技術案において、第19の技術案におけるステップS3は、穴の壁に形成された導電種結晶層上に導体肉厚層を形成することをさらに含む。
【0038】
本発明の第26の技術案において、第19または第20の技術案におけるステップS4は、先に導電種結晶層上に導体肉厚層を形成し、次に表面貼合層の外面の上方に位置する導体肉厚層上にパターンめっきまたはパネルめっきを行うことによって、回路パターンを得ることを含む。
【0039】
本発明の第27の技術案において、第25または第26の技術案におけるめっき、無電解めっき、真空蒸着めっき、スパッタリングのうちの1種または多種によって、Al、Mn、Fe、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Ag、Au、V、Zr、Mo、Nb、及びそれらの間の合金のうちの1種または多種を用いて厚さが0.01-1000μmの導体肉厚層を形成する。
【0040】
本発明の第28の技術案において、第20の技術案におけるステップS4は、表面貼合層の外面に形成された導電種結晶層上に直接にパターンめっきまたはパネルめっきを行うことによって、回路パターンを得ることを含む。
【0041】
本発明の第29の技術案において、第19または第20の技術案における少なくとも1つの中間貼合層には、穴があけられ、当該穴の壁に導電層が形成される。
【0042】
本発明の第30の技術案において、第19または第20の技術案における少なくとも1つの単層回路基板には、穴があけられ、当該穴の壁に導電層が形成される。
【0043】
本発明の第31の技術案において、第19または第20の技術案における中間貼合層及び/または表面貼合層は、PP、PI、PTO、PC、PSU、PES、PPS、PS、PE、PEI、PTFE、PEEK、PA、PET、PEN、LCP、PPAのうちの1種または多種を含む。
【0044】
本発明の第32の技術案は、多層回路基板であって、金属箔、中間貼合層、二層以上の単層回路基板及び各前記単層回路基板同士の間の中間貼合層、中間貼合層、金属箔の順で構成され、多層回路基板に穴があけられ、穴の壁に導電種結晶層が形成されるとともに、回路パターン層を形成するように、金属箔の一部の領域が除去され、導電種結晶層は穴の壁の下方に注入されたイオン注入層を含む、多層回路基板である。
【0045】
本発明の第33の技術案は多層回路基板であって、表面貼合層、二層以上の単層回路基板及び各前記単層回路基板同士の間の中間貼合層、表面貼合層の順で構成され、多層回路基板に穴があけられ、穴の壁に導電種結晶層が形成されるとともに、表面貼合層の一部の外面上に導電種結晶層を有する回路パターン層が形成され、導電種結晶層は穴の壁の下方及び表面貼合層の一部の外面の下方に注入されたイオン注入層を含む、多層回路基板である。
【0046】
このような多層回路基板は、穴の壁におけるイオン注入層が存在するため、穴の壁と導電種結晶層との間に非常に高い結合力を有し、よって、穴の壁の導電層が後続の各種の加工または応用の過程において容易に離脱するまたは引っかき傷が付けられることがない。そのため、穴の導電性の向上に有利で、導通性に優れた多層回路基板の作成が実現できる。
【0047】
本発明の第34の技術案において、第32または第33の技術案におけるイオン注入層は、穴の壁の下方及び/または表面貼合層の一部の外面の下方の1-500nmの深さに位置するとともに、基材と安定したドーピング構造を形成する。
【0048】
本発明の第35の技術案において、第32または第33の技術案における導電種結晶層は、イオン注入層の上方に付着した、厚さが1-10000nmのプラズマ堆積層をさらに含む。
【0049】
本発明の第36の技術案において、第32または第33の技術案における導電種結晶層は、Ti、Cr、Ni、Cu、Ag、Au、V、Zr、Mo、Nb、及びそれらの間の合金のうちの1種または多種を含む導電材料によって構成される。
【0050】
本発明の第37の技術案において、第32または第33の技術案における導電種結晶層の上方には、厚さが0.01-1000μmの導体肉厚層が形成される。
【0051】
本発明の第38の技術案において、第32または33の技術案における穴は、多層回路基板を貫通する貫通穴、または多層回路基板の表面に形成される止まり穴、あるいは単層回路基板または中間貼合層に形成される止まり穴である。
【0052】
本発明の第39の技術案において、第32または第33の技術案における中間貼合層及び/または表面貼合層は、PP、PI、PTO、PC、PSU、PES、PPS、PS、PE、PEI、PTFE、PEEK、PA、PET、PEN、LCP、PPAのうちの1種または多種を含む。
【0053】
図面を参照しながら以下の詳細な説明を読めば、当業者は本発明のこれらおよびそのほかの特徴と方面とメリットを容易理解することができる。明瞭にさせるために、図面は必ずしも縮尺で描かれたものではなく、細部を示すようにその中の一部が拡大されている可能性がある。全ての図面において、同一の記号は同一または類似の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1は本発明の第1の実施例に係る、単層回路基板を製造する方法のフローチャートである。
【
図2】
図2は
図1に示す方法の各ステップに対応される製品の断面模式図である。
【
図3】
図3は本発明の第2の実施例に係る、単層回路基板を製造する方法のフローチャートである。
【
図4】
図4は
図3に示す方法の各ステップに対応される製品の断面模式図である。
【
図5】
図5は本発明の第3の実施例に係る、単層回路基板を製造する方法のフローチャートである。
【
図6】
図6は
図5に示す方法の各ステップに対応される製品の断面模式図である。
【
図7】
図7は本発明の第4の実施例に係る、多層回路基板を製造する方法のフローチャートである。
【
図8】
図8は
図7に示す方法の各ステップに対応される製品の断面模式図である。
【
図9】
図9は本発明の第5の実施例に係る、多層回路基板を製造する方法のフローチャートである。
【
図10-1】
図10-1は
図9に示す方法の各ステップに対応される製品の断面模式図である。
【
図10-2】
図10-2は
図9に示す方法の各ステップに対応される製品の断面模式図である。
【
図11】
図11は本発明の第6の実施例に係る、多層回路基板を製造する方法のフローチャートである。
【
図12-1】
図12-1は
図11に示す方法の各ステップに対応される製品の断面模式図である。
【
図12-2】
図12-2は
図11に示す方法の各ステップに対応される製品の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。これらの説明が本発明の例示的な実施例に過ぎず、本発明の保護範囲がそれに限定されないことは、当業者が理解すべきである。
【0056】
図1は本発明の第1の実施例に係る、単層回路基板を製造する方法のフローチャートであり、
図2は
図1に示す方法の各ステップに対応される製品の断面模式図である。
図1に示すように、当該方法は、基材上に止まり穴及び/または貫通穴を含む穴を穿孔するステップ(S1)と、基材の表面上に回路のネガパターンを有するフォトレジスト層を形成するステップ(S2)と、基材の表面及び穴の壁に導電種結晶層を形成するステップ(S3)と、基材の表面上に回路パターンを形成するように、フォトレジスト層を除去するステップ(S4)と、を含む。
図2における(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれステップS1、S2、S3、S4に対応する。以下に
図1及び
図2を同時に参照し、当該方法の各ステップを詳細に説明する。
【0057】
回路基板の製造過程において、通常、基材として絶縁材料が用いられ、当該基材の片面または両面上に複合金属材料を貼り付けてそれに対してエッチングを行うことによって、回路基板が作成される。絶縁基材の例示として、剛性基材(ハードボードとも呼ばれる)、例えば、有機高分子剛性板、セラミック板(例えばシリカボード)、ガラス板などのうちの1種または多種を用いてもよく、有機高分子剛性板はLCP、PTFE、CTFE、FEP、PPE、合成ゴム板、ガラス繊維布/セラミックフィラー補強板のうちの1種または多種をさらに含んでもよく、ガラス繊維布/セラミックフィラー補強板は、有機高分子材料、例えばエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、PTFE、PPO、CE、BTなどを基礎材料として、ガラス繊維布/セラミックフィラーを補強相とする板材である。また、絶縁基材は、可撓性板(ソフトボードとも呼ばれる)、例えばPI、PTO、PC、PSU、PES、PPS、PS、PE、PP、PEI、PTFE、PEEK、PA、PET、PEN、LCP、またはPPAのうちの1種または多種を含む有機高分子薄膜を用いてもよい。
【0058】
まず、基材を穿孔する必要がある(ステップS1)。
図2(a)に貫通穴17のみが示されているが、基材11の表面12上に止まり穴を穿孔してもよい。貫通穴は基材の表面と背面を貫通した穴で、止まり穴は基材の内部まで入り込んだが、当該基材を貫通していない穴である。穴の形状は円形、矩形、三角形、菱形、台形などの様々な形状であってもよい。穿孔は機械穿孔、打ち抜き、レーザー穿孔、プラズマエッチング、反応性イオンエッチングなどによって行ってもよく、レーザー穿孔が赤外レーザー穿孔、YAGレーザー穿孔、紫外レーザー穿孔を含んでもよく、基材上に穴径が2-5μmの微細穴を形成することができる。熱影響領域を減少させ、穴の縁が熱を受けることによるダメージを防止するために、紫外レーザー穿孔を用いることが好ましい。ロールツーロール方法で可撓性回路基板を製造する場合に、連続穿孔方式でロール状可撓性板基材上に一連の穴を形成するようにしてもよい。基材上に穴が形成された後に、穴の中に存在する屑などの異物を除去するために、穴をきれいにする必要がある。
【0059】
次に、基材の表面上に回路のネガパターンを有するフォトレジスト層を形成する(ステップS2)。具体的には、
図2(b)に示すように、穿孔済できれいにした後の基材11の表面12上に1層のフォトレジスト膜24を被覆しまたは貼り付け、フォトレジスト膜24に覆われた基材をリソグラフィ機において露光・現像を行ってから、基材の表面を洗浄して乾燥させ、回路のネガパターン(即ち最終的に基材の表面上に形成される回路パターンと補い合うパターン)を有するフォトレジスト層を得る。このとき、フォトレジスト膜24は基材表面上の非回路領域162のみに存在し、それと補い合う回路領域161には当該フォトレジスト膜24は存在しない。
【0060】
次に、基材の表面と穴の壁に導電種結晶層(ステップS3)を形成する。基材の表面12上の非回路領域162にフォトレジスト膜24が形成されているため、この過程において、導電種結晶層13はフォトレジスト膜24の表面上にも同様に形成される。ステップS3は、導電種結晶層13の少なくとも一部としてイオン注入層131を形成するように、イオン注入によって導電材料を基材11の表面12の下方及び穴の壁19の下方に注入することを含むことが重要である。なお、前記「穴の壁の下方に注入する」とは、実際に穴の壁がある基材の表面(即ち、穴の壁面)に注入することを指す。例えば、
図2(c)において、イオン注入層131が穴17の壁19の下方に注入されることは、実際にイオン注入層131が、穴17の壁19がある箇所の基材の表面(即ち、穴の壁面)の下方に位置することを指す。
【0061】
イオン注入層の形成は、導電材料がターゲットとして用いられ、イオン注入装置において、真空中にアーク放電によってターゲットの中の導電材料をイオン化してイオンを発生させ、次に高電圧の電場で当該イオンを加速し、例えば、1-1000keVの非常に高いエネルギーを与えることができる。高エネルギーの導電材料イオンは続いてハイスピードで基材の表面及び穴の壁に直接に衝撃し、基材の表面及び穴の壁の下方の一定な深さ、例えば1-500nmまで注入される。注入された導電材料イオンと基材を構成する材料との間には、半導体の中のドーピング構造のような安定したドーピング構造が形成される。当該ドーピング構造(即ち、イオン注入層)の外面が基材の表面または穴の壁とは一致しているが、その内面は基材の内部に入り込んでいる。具体的な例示として、導電材料のイオンは、イオン注入の期間に、50keV、100keV,200keV,300keV,400keV,500keV、600keV、700keV、800keV、900keVのエネルギーが与えられ、基材の表面及び穴の壁の下方10nm、20nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nmの深さの範囲内に注入することができる。
【0062】
各種の金属、合金、導電酸化物、導電炭化物、導電有機物などをイオン注入用の導電材料として用いることができるが、それに限定されない。好ましくは、Ti、Cr、Ni、Cu、Ag、Au、V、Zr、Mo、Nb、及びそれらの間の合金のうちの1種または多種を含む、基材の分子との結合力が強い金属または合金を用いてイオン注入を行い、当該合金は、例えばNiCr、TiCr、VCr、CuCr、MoV、NiCrV、TiNiCrNbなどである。また、イオン注入層は1層または多層を含んでもよい。イオン注入の前に、穴があけられた基材に対して汚れ除去、表面洗浄、シーラー処理、真空環境におけるホールソース処理、表面堆積処理などの前処理を行ってもよい。
【0063】
イオン注入の期間に、導電材料のイオンは、ハイスピードで基材の内部に強制的に注入され、基材との間に安定したドーピング構造を形成し、基材の表面及び穴の壁の下方に数多くのパイルの形成に相当する。パイルが存在し、且つ後続で作成される金属層(プラズマ堆積層または導体肉厚層)がパイルに連結されるため、基材と後続でその上に形成される金属層との間の剥離強度は0.5N/mm以上、例えば0.7-1.5N/mmの間に、さらに特定的に0.8-1.2N/mmの間に、達することができる。それに対し、通常のマグネトロンスパッタリングの場合に、スパッタリング粒子のエネルギーは最大で数電子ボルトであるため、当該粒子は単に基材の表面及び穴の壁に堆積され、基材の内部に入らず、得られたスパッタリン堆積層と、基材の表面及び穴の壁との間の結合力が高くなく、最大で0.5N/mm程度過ぎず、本発明より明らかに低い。更に、イオン注入に用いられる導電材料イオンのサイズは通常ナノレベルで、イオン注入の期間に分布が比較的に均一であり、基材の表面及び穴の壁までの入射角には大きな違いがない。そのため、後続でイオン注入層の上方に形成される導体肉厚層またはプラズマ堆積層の良好な均一性及び緻密性を確保することができ、ピンホール現象が生じにくい。それに、微細穴の金属化の際に、穴の壁上に表面が均一で緻密な導電種結晶層が容易に形成され、且つ穴の壁の導体層の厚さと基材の表面の導体層の厚さの比が1:1に達することができるため、後続でめっきなどの際に穴の壁の導体層の不均一及び空洞またはクラック(メッキ割れ)などの問題が生じることなく、メッキスルーホール(金属化孔)の導電性を有効に向上することができる。
【0064】
イオン注入以外に、ステップS3は、プラズマ堆積層を形成するように、プラズマの堆積によって導電材料をイオン注入層の上方に堆積することを更に含んでもよく、当該プラズマ堆積層はイオン注入層とともに導電種結晶層を構成する。
図2(c)に示すように、ステップS3の後に、貫通穴17の壁19の下方と、回路領域161における基材の表面12の下方と、非回路領域162におけるフォトレジスト膜24の表面の下方とのいずれにもイオン注入層131が形成されているとともに、当該イオン注入層131にプラズマ堆積層132が形成されている。もちろん、ステップS3はプラズマ堆積を含まなくてもよく、この場合、
図2(c)に示すプラズマ堆積層132は存在せず、イオン注入層131のみが存在する。
【0065】
プラズマ堆積はイオン注入装置において前記イオン注入に類似の方法で行うことができ、ただし、より低い電圧を印加して導電材料イオンにより低いエネルギーを与える。即ち、導電材料をターゲットとして用いて、真空環境において、アーク放電によってターゲットの中の導電材料をイオン化してイオンを発生させ、次に電場で当該イオンを加速させ、一定のエネルギー、例えば、1-1000eVのエネルギーを当該イオンに与える。加速後の導電材料イオンは基材の表面及び穴の壁に飛び込んで、基材の表面及び穴の壁の下方に形成されたイオン注入層に堆積し、厚さが1-10000nmのプラズマ堆積層を構成する。具体的な例示として、導電材料イオンは、プラズマ堆積の期間に、50eV、100eV,200eV,300eV,400eV,500eV、600eV、700eV、800eV、900eVのエネルギーが与えられ、厚さが100nm、200nm、500nm、700nm、1μm、2μm、5μm、7μmまたは10μmのプラズマ堆積層を形成する。プラズマ堆積層がより厚い場合に、基材上に穿孔された貫通穴または止まり穴は埋められる可能性がある。つまり、穴の全体が導電材料に充填され、マクロ的に穴の構造がもはや存在しない。
【0066】
プラズマ堆積において、イオン注入と同じまたは異なる導電材料をターゲットとして用いることができる。また、用いた基材およびイオン注入層の組成成分と厚さなどに応じて導電材料を選択することができる。好ましくは、イオン注入層との結合性に優れた金属または合金を用いてプラズマ堆積を行い、例えばTi、Cr、Ni、Cu、Ag、Au、V、Zr、Mo、Nb、及びそれらの間の合金のうちの1種または多種を用いてもよく、当該合金は例えばNiCr、TiCr、VCr、CuCr、MoV、NiCrV、TiNiCrNbなどである。更に、プラズマ堆積層は1層または多層を含んでもよい。
【0067】
プラズマ堆積の期間に、導電材料イオンはよりハイスピードで基材の表面及び穴の壁に飛び込み、且つ基材の表面及び穴の壁の下方に形成されたイオン注入層上に堆積し、イオン注入層の中の導電材料との間により大きな結合力を形成するため、基材の表面及び穴の壁から離脱しにくい。また、プラズマ堆積に用いる導電材料イオンのサイズは通常ナノレベルで、プラズマ堆積の期間に分布が比較的に均一であり、基材の表面及び穴の壁までの入射角には大きな違いがないため、得られたプラズマ堆積層または後続でその上に形成される導体肉厚層の良好な均一性と緻密性を確保することができ、ピンホール現象が生じにくい。また、イオン注入層は厚さが通常薄くて、導電性に優れないが、プラズマ堆積層は導電種結晶層の導電性を向上することができ、よって、得られた回路基板の性能を改善する。
【0068】
導電種結晶層が形成された後に、基材の表面上に回路パターンを形成するように、フォトレジスト層を除去することができる(ステップS4)。
図2(d)に示すように、非回路領域162に存在するフォトレジスト膜24が除去され、当該フォトレジスト24上に形成された導電種結晶層13も一緒に除去され、穴の壁19と基材の表面12上の回路領域161における導電種結晶層13のみが残される。すなわち、基材の表面12上に、回路領域161のみに導電種結晶層13が存在し、よって、回路パターンを有する両面単層回路基板10が作成される。好ましい実施例において、剥離液を用いてフォトレジスト層を溶解することができ、例えば、回路のネガパターンを有するフォトレジスト層と導電種結晶層とが形成された基材を適切な剥離液において、撹拌または振動を補助として施してフォトレジスト層の溶解を加速させ、フォトレジスト層が完全に溶解された後に、洗浄液で徹底的な洗浄し、乾燥させる。なお、剥離液はフォトレジスト層を溶解させることができる有機溶媒またはアルカリ液などであってもよい。
【0069】
図2(d)に示すように、上記方法によって作成された単層回路基板10は、基材11と、基材の一部の表面上に形成された回路パターン層16と、を含み、基材11上に穴があけられ、当該穴の壁19に導電種結晶層13が形成されている。また、回路パターン層16も、基材11の一部の表面に形成された導電種結晶層13を含み、導電種結晶層13は、基材の表面12の下方及び穴の壁19の下方に注入されたイオン注入層131と、当該イオン注入層131上に付着しているプラズマ堆積層132と、を含む。もちろん、ステップS3がプラズマ堆積を含まない場合には、導電種結晶層13はイオン注入層131のみによって構成される。
【0070】
あるいは、ステップS3の後且つステップS4の前に、
図1に示す方法は、導電性を改善するように、導電種結晶層上に導体肉厚層を形成するステップをさらに含んでもよい。具体的には、めっき、無電解めっき、真空蒸着めっき、スパッタリングなどの方法のうちの1種または多種によって、Al、Mn、Fe、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Ag、Au、V、Zr、Mo、Nb、及びそれらの間の合金のうちの1種または多種を用いて厚さが0.01-1000μm(例えば0.5μm、1μm、5μm、10μm、50μm、100μmなど)の導体肉厚層を形成するようにしてもよい。基材に貫通穴または止まり穴が形成された場合に、当該貫通穴または止まり穴が導体肉厚層に埋められる可能性があること、即ち、マクロ的に穴の構造が存在しないことは容易に理解される。めっきの速度が速くて、コストが低く、また、めっきに適用できる材料の範囲が非常に広く、Cu、Ni、Sn、Ag及びそれらの合金などの各種の導電材料に用いることができるため、めっき法は最も通常に使用され、最も好ましい手法である。いくつかの導電材料、特に金属及び合金(例えばAl、Cu、Ag及びその合金)に対し、スパッタリングの速度は100nm/minに達することができるため、スパッタリングの方法で導電種結晶層上に迅速に導体層を覆うことができる。前のステップにおいて、イオン注入及び/またはプラズマ堆積によって基材の表面及び穴の壁に均一で緻密な導電種結晶層が既に形成されたため、上記各方法によって当該導電種結晶層上に均一で緻密な導体肉厚層を容易に形成することができる。
【0071】
導体肉厚層が形成された場合に、当該導体肉厚層は、相応的に導電種結晶層上に被覆し、フォトレジスト層が除去された後に、回路基板の表面回路パターンの一部として、最終的に回路領域における導電種結晶層上に存在する。
図2において、導電種結晶層13はイオン注入層131とプラズマ堆積層132とによって構成されるため、導体肉厚層はプラズマ堆積層上に付着している。導電種結晶層がイオン注入層のみを含む場合に、導体肉厚層が当該イオン注入層上に直接に付着していることは容易に理解される。
【0072】
上記方法によれば、簡単な工程プロセスによって、金属化された穴を基材上に形成し、当該基材の表面上に回路パターンを形成することができる。回路パターンを形成する際に、導電種結晶層を形成する前に、基材の表面にフォトレジストを予め覆い、回路のネガパターンを有するフォトレジスト層をさらに形成し、次に剥離液を用いて当該フォトレジスト層を溶解することによって、非回路領域における導電種結晶層及び/または導体肉厚層をフォトレジスト層とともに離脱させるため、従来技術のように必ずしもエッチングによって回路パターンを得る必要がなく、または少なくともエッチング液の使用を減少することができる。よって、金属イオンを含有するエッチング廃水の環境に対する危害が軽減または解消される。
【0073】
図3は本発明の第2の実施例に係る、単層回路基板を製造する方法のフローチャートであり、
図4は
図3に示す方法の各ステップに対応される製品の断面模式図である。
図3に示すように、当該方法は、基材上に止まり穴及び/または貫通穴を含む穴を穿孔するステップ(S1)と、基材の表面及び穴の壁に導電種結晶層を形成するステップ(S2)と、導電種結晶層上に導体肉厚層を形成するステップ(S31)と、基材の表面の上方にフォトレジスト膜を覆って露光と現像を行うステップ(S32)と、回路パターンを形成するように、エッチング及び膜抜きを行うステップ(S33)と、を含む。但し、ステップS31からS33は、いずれも基材の表面上に回路パターンを形成するステップであって、めっき法で導体肉厚層まで形成する場合に、これらのステップは「パネルめっき」と総称することができる。
図4における(a)、(b)、(c)、(d)、(e)はそれぞれ上記ステップS1、S2、S31、S32、S33に対応する。
【0074】
本実施例の方法において、ステップS1、S2はそれぞれ
図1に示す方法におけるステップS1、S3に対応し、
図1に対して前述した各種の方法で行うことができる。また、ステップS31も前述した方法、即ちめっき、無電解めっき、真空蒸着めっき、スパッタリングなどによって、Al、Mn、Fe、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Ag、Au、V、Zr、Mo、Nb、及びそれらの間の合金のうちの1種または多種を用いて厚さが0.01-1000μmの導体肉厚層を形成するように行ってもよい。ステップS1、S2、S31によって、基材の表面及び穴の壁のいずれにも導電種結晶層が形成されるとともに、当該導電種結晶層上に導体肉厚層が形成される。
図4(c)に示す例示において、導体種結晶層13は、基材11の表面12の下方及び穴の壁19の下方に形成されたイオン注入層131と、当該イオン注入層131上に付着したプラズマ堆積層132とを含み、導体肉厚層15がプラズマ堆積層132上にさらに付着し、当該導体肉厚層15は基材11を貫通した貫通穴17を埋めている。ステップS2にイオン注入のみを含むが、プラズマ堆積を含まない場合に、導体肉厚層15がイオン注入層131上に直接に付着することは容易に理解される。
【0075】
導体肉厚層が形成された後に、基材の表面の上方にフォトレジスト膜を覆って露光と現像を行う(ステップS32)。具体的には、
図4(d)に示すように、導体肉厚層15が形成された基材の表面12上に1層のフォトレジスト膜24を被覆しまたは貼り付け、フォトレジスト膜24に覆われた基材をリソグラフィ機において露光・現像を行ってから、基材の表面を洗浄して乾燥させ、回路のポジパターン(即ち最終的に基材の表面上に形成される回路パターンと同じパターン)を有するフォトレジスト層を得る。このとき、フォトレジスト膜24は基材表面上の回路領域161のみに存在し、それと補い合う非回路領域162には当該フォトレジスト膜24は存在しない。
【0076】
その後、通常のエッチング方法でフォトレジスト膜に覆われていない導電種結晶層及び導体肉厚層を除去し、次にフォトレジスト膜を抜き(ステップS33)、よって、基材の表面上の回路領域のみに導電種結晶層及び導体肉厚層が残され、表面回路パターンが形成される。
図4(e)に示すように、上記方法によって作成された単層回路基板10は、基材11と、基材の一部の表面上に形成された回路パターン層16と、を含み、基材11上に穴があけられ、当該穴の壁19に導電種結晶層13と導体肉厚層15とが形成され、また、回路パターン層16も導電種結晶層13と導体肉厚層15とを含み、導電種結晶層13は、基材の表面12の下方及び穴の壁19の下方に注入されたイオン注入層131と、当該イオン注入層131上に付着したプラズマ堆積層132と、を含む。もちろん、ステップS2がプラズマ堆積を含まない場合に、導電種結晶層13はイオン注入層131のみによって構成される。
【0077】
図5は本発明の第3の実施例に係る、単層回路基板を製造する方法のフローチャートであり、
図6は
図5に示す方法の各ステップに対応する製品の断面模式図である。
図5に示すように、当該方法は、基材上に止まり穴及び/または貫通穴を含む穴を穿孔するステップ(S1)と、基材の表面及び穴の壁に導電種結晶層を形成するステップ(S2)と、基材の表面の上方にフォトレジスト膜を覆って露光及び現像を行うステップ(S31)と、めっきを行うステップ(S32)と、回路パターンを形成するように、膜抜き及びエッチングを行うステップ(S33)と、を含む。但し、ステップS31からS33は、いずれも基材の表面上に回路パターンを形成するステップであって、「パターンめっき」と総称することができる。
図3に示す方法に比べれば、本実施例の方法の異なる点は、パネルめっきではなくパターンめっきで回路パターンを形成することである。
図6における(a)、(b)、(c)、(d)、(e)はそれぞれ上記ステップS1、S2、S31、S32、S33に対応する。
【0078】
本実施例の方法において、ステップS1、S2はそれぞれ
図3に示す方法におけるステップS1、S2に対応し、
図3に対して前述した各種の方法で行うことができる。ステップS2の後に、基材の表面及び穴の壁はいずれも導電種結晶層が形成される。
図6(b)に示すように、導電種結晶層13は、基材11の表面12の下方及び穴の壁19の下方に形成されたイオン注入層131と、当該イオン注入層131上に付着したプラズマ堆積層132と、を含む。ステップS2にイオン注入のみ含むがプラズマ堆積を含まない場合に、プラズマ堆積層132が存在しないことは容易に理解される。また、ステップS31は
図3に示す方法の中のステップS32に類似の方法で行ってもよく、即ち、導電種結晶層が生成された基材の表面の上方にフォトレジスト膜を覆って露光と現像を行う。具体的には、
図6(c)に示すように、導電種結晶層13が形成された基材の表面12上に1層のフォトレジスト膜24を被覆しまたは貼り付け、フォトレジスト膜24に覆われた基材をリソグラフィ機において露光・現像を行ってから、基材の表面を洗浄して乾燥させ、回路のネガパターンを有するフォトレジスト層を得る。このとき、フォトレジスト膜24は基材表面上の非回路領域162のみに存在し、それと補い合う回路領域161にはフォトレジスト膜24は存在しない。
【0079】
次に、めっきを行う(ステップS32)。フォトレジスト層が絶縁であるため、めっきの過程において、導体肉厚層はフォトレジスト層の上方に形成されず、フォトレジスト層に覆われていない導電種結晶層の上方に形成される。この場合、フォトレジスト層の下方にはイオン注入層及びプラズマ堆積層によって構成された導電種結晶層が存在しているが、上方には導体肉厚層が存在しない。
図6(d)に示すように、めっきによって、導電種結晶層13上のみに導体肉厚層15が形成され、また、当該導体肉厚層15は貫通穴17を埋めている。もちろん、貫通穴17の穴径が十分大きい場合に、当該貫通穴17が導体肉厚層15に埋められることはない。
【0080】
次に、回路パターンを形成するように、膜抜き、エッチングを行う(ステップS33)必要がある。これによって、単層回路基板が作成される。
図6(e)に示す単層回路基板10は
図4(e)に示す単層回路基板10と同じような構造を有する。
【0081】
膜抜きは回路のネガパターンを有するフォトレジスト層を抜くことであって、以下のように行われる。導電種結晶層、フォトレジスト層、導体肉厚層が形成された絶縁基材を適切な剥離液(例えば、フォトレジスト層を溶解させることができる有機溶剤またはアルカリ液)内に置いて、撹拌または振動を補助として施してフォトレジスト層の溶解を加速させ、その後洗浄及び乾燥を行う。よって、基材の表面上の回路領域に導電種結晶層及び導体肉厚層が存在し、非回路領域に導電種結晶層のみが存在している。次に、金属基板の全ての表面に対して高速エッチングを行うことによって、非回路領域における導電種結晶層を除去し基板の表面上に最終的な回路パターンを得る。このとき、回路領域における導体肉厚層の導電種結晶層に相当する一定の厚さがエッチングされるが、後続の使用に影響がない。あるいは、フォトレジスト層が完全に溶解された後に、回路領域における導体肉厚層の上方に1層の保護層を覆って(例えば錫)、次に非回路領域における導電種結晶層を除去するように、エッチングを行うことによって、最終的な回路パターンを得るようにしてもよい。このとき、回路領域における導体肉厚層はエッチングされないため、導体肉厚層の良好な表面性質が維持される。また、基材を剥離液内に置く前に(即ち、フォトレジスト層が溶解される前に)、回路領域における導体肉厚層の上方に1層の保護層を覆って(例えば錫)、次にフォトレジスト層の溶解と非回路領域における導電種結晶層のエッチング除去を相次いで行い、基材の表面上に最終的な回路パターンを得るようにしてもよい。もちろん、保護層を用いた場合に、最終的な回路パターンを得る前に、当該保護層を除去する必要があり、例えば錫膜を抜くステップを採用する必要がある。
【0082】
上記説明した単層回路基板を製造する方法によれば、基材の表面の金属化と穴の金属化とは同時に行うことができる。そのため、基材上に一次成形によってメッキスルーホールを有する単層回路基板を直接に作成することができ、従来技術のように、より厚い金属箔を予め基材に覆って、次に金属箔に対しエッチングを行うことによって金属箔を薄くさせてから基材を穿孔する必要がなく、メッキスルーホールを得るように、さらにスルーホールめっきまたはブラックホール、シャドーなどの工程によって穴の壁に導電層を形成する必要もない。従来技術に比べ、上記方法の工程プロセスは顕著に短縮され、それにエッチング液の使用を減少することができ、環境の保護に有益である。また、各種の工程パラメータを調整することによって、このような方法で極薄(例えば12μm以下で、例えば5μm、7μm、9μmなど)の回路パターン層を容易に作成し、得られた単層回路基板がHDI(高密度相互接続基板)とCOF(チップオンフィルム)技術を基礎とする中高級精密電子製品の応用に有利である。
【0083】
同様に、上記いくつかの方法で作成された単層回路基板は、穴の壁にイオン注入層が存在しているため、穴の壁と導電種結晶層との間に非常に高い結合力(例えば0.5N/mm以上に、例えば0.7-1.5N/mmの間に、さらに特定的に0.8-1.2N/mmの間に達するもの)を有し、よって、穴の壁の導電層が後続の各種の加工または応用の過程において容易に離脱または引っかき傷が付けられることがない。そのため、穴の導電性の向上に有利で、導通性に優れた単層回路基板の作成が実現できる。
【0084】
なお、
図3に示す方法においてパネルめっき法で回路パターンが形成され(即ち、相次いで導体肉厚層を形成し、フォトレジスト膜を覆って露光・現像を行い、エッチングして膜抜きを行う)、
図5に示す方法においてパターンめっき法で回路パターンが形成される(即ち、相次いでフォトレジスト膜を覆って露光・現像を行い、めっきを行い、膜抜きのエッチングを行う)が、導電種結晶層上に導体肉厚層を形成してから、それをベースにしてパネルめっきを行うようにしてもよく、あるいは、導電種結晶層上に直接にパターンめっきを行う(例えば導電種結晶層がより厚い場合に)ようにしてもよいことは容易に理解される。
【0085】
前記により単層回路基板を製造するいくつかの方法を説明したが、以下に、本発明に係る多層回路基板を製造するいくつかの方法の実施例を説明する。
【0086】
図7は本発明の第4の実施例に係る、多層回路基板を製造する方法のフローチャートであり、
図8は
図7に示す方法の各ステップに対応される製品の断面模式図である。
図7に示すように、当該方法は、金属箔、中間貼合層、
二層以上の単層回路基板
及び各前記単層回路基板同士の間の中間貼合
層、中間貼合層、金属箔の順で基板をマッチングして積層するステップ(ステップS1)と、積層された多層基板上に貫通穴及び/または止まり穴を含む穴を穿孔するステップ(S2)と、穴の壁に導電種結晶層を形成するステップ(S3)と、回路パターンを形成するように、金属箔の一部を除去するステップ(S4)と、を含む。
図8における(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれステップS1、S2、S3、S4に対応する。以下に
図7と
図8とを同時に参照し、当該方法の各ステップを詳細に説明する。
【0087】
ステップS1において、単層回路基板の層数は必要に応じて調整することができ、例えば1層または多層であってもよい。単層回路基板の層数が1層の場合に、最終的に3層回路基板を得ることができるが、単層回路基板の層数が2層の場合に、最終的に4層回路基板を得ることができる。なお、各単層回路基板は同様でもよく、異なってもよい。金属箔の例示として、通常、銅箔またはアルミ箔などの導電性に優れた材料を用いる。また、中間貼合層は、単層回路基板同士の間、及び単層回路基板と金属箔との間のプレス嵌めに用いられ、通常、PP、PI、PTO、PC、PSU、PES、PPS、PS、PE、PEI、PTFE、PEEK、PA、PET、PEN、LCP、PPAなど、またはガラス繊維布を含まない純樹脂接着フィルム(例えばエポキシ接着フィルム)を用いることができる。また、各単層回路基板同士の間、及び単層回路基板と金属箔との間の各貼合層は同じ材料で作成されてもよいが、異なる材料で作成されてもよい。
図8(a)に示す例示において、
図1に示す方法で製造された2層の単層回路基板10を用いて、当該単層回路基板10は穴があけられており、穴の壁の下方及び一部の表面の下方に注入されたイオン注入層131と、当該イオン注入層の上方に付着したプラズマ堆積層132が形成されている。もちろん、ここで用いられる単層回路基板は、
図2に示すイオン注入層131のみを有する単層回路基板であってもよく、導電層を有する穴を有してもよく、有しなくてもよい。また、本分野における通常の金属箔で作成される回路基板であってもよい。更に、ここで使用される中間貼合層は、穴、特に貫通穴を有する貼合層であってもよい。穴の壁には導電層が形成されている。当該導電層は、本明細書に記載されたようなイオン注入層を含む導電種結晶層であってもよく、通常のマグネトロンスパッタリングなどの方法によって形成された金属層であってもよく、導電することができればよい。
【0088】
次に、積層後の多層基板上に止まり穴及び/または貫通穴を含む穴を穿孔する(ステップS2)。ステップS2は
図1に示す方法におけるステップS1に対応し、それと同じような方法で行うことができる。
図8(b)に示すように、積層後の多層基板において、多層基板の全体を貫通した貫通穴17と、金属箔21と当該金属箔に隣接する中間貼合層22のみを貫通した止まり穴18とが形成されている。もちろん、貫通穴17または止まり穴18のみが形成されるようにしてもよい。
【0089】
次に、穴の壁に導電種結晶層が形成される(S3)。当該ステップS3は
図1に示す方法におけるステップS3に類似し、それと同じような方法で行うことができる。異なる点は、金属箔が多層基板の外面に位置するため、本実施例の方法が必ずしも金属箔の表面上に導電種結晶層を形成するとは限らなく、穴の壁に導電種結晶層を形成すればよいことである。もちろん、金属箔に対して保護策を施さずにイオン注入またはプラズマ堆積を行う場合に、導電種結晶層は金属箔の外面にも形成される。
図8(c)に示すように、貫通穴17と止まり穴18との壁19上は、いずれにも穴の壁19の下方に注入されたイオン注入層131と、当該イオン注入層131上に付着したプラズマ堆積層132とによって構成された導電種結晶層が形成されている。もちろん、ステップS3がプラズマ堆積を含まない場合に、導電種結晶層は穴の壁19の下方に注入されたイオン注入層131のみによって構成される。
【0090】
最後に、回路パターンを形成するように、金属箔の一部を除去する(ステップS4)。金属箔は導電性を有するため、このステップにおいて、通常のエッチングなどの方法で、非回路領域における金属箔を除去するだけで、表面回路パターンを有する多層回路基板を得ることができる。例えば、ステップS4において、回路領域を形成しようとする金属箔の表面の上方に1層の保護層(例えば錫)を覆ってから、エッチングによって非回路領域における金属箔を除去し、最終的な回路パターンを得るようにしてもよい。
【0091】
図8(d)に示すように、非回路領域162における金属箔21が除去され、回路領域161における金属箔21のみが残され、よって、回路パターン16が形成される。上記方法によって作成される多層回路基板20は、金属箔21、中間貼合層22、単層回路基板10、中間貼合層22、単層回路基板10、中間貼合層22、金属箔21の順で構成され、当該多層回路基板20に穴17、18があけられ、穴の壁19に導電種結晶層が形成されるとともに、回路パターン層16を形成するように、金属箔21の一部の領域が除去され、導電種結晶層は、穴の壁19の下方に注入されたイオン注入層131と、当該イオン注入層131に付着したプラズマ堆積層132とを含む。もちろん、導電種結晶層はイオン注入層131のみによって構成されるようにしてもよい。また、多層回路基板20は当該多層回路基板を貫通する貫通穴と、その表面上に形成される止まり穴と、単層回路基板及び中間貼合層内に形成される止まり穴をさらに含む。
【0092】
あるいは、ステップS3の後且つステップS4の前に、本実施例の方法は、導電性を改善するように、導電種結晶層上に導体肉厚層を形成するステップをさらに含んでもよい。導体肉厚層の形成は、前述した方法で行うことができる。
【0093】
図8に示す方法によれば、多層回路基板中に穴が形成され、且つイオン注入によって当該穴の壁の下方にイオン注入層が形成されている。以上で検討したように、イオン注入は、基材と導電種結晶層との間により大きい結合力の形成に役に立つとともに、導電種結晶層の表面に優れた均一性及び緻密性を持たせ、ピンホール現象が生じにくい。また、微細穴の金属化の際に、穴の壁の導体層の不均一及び空洞またはクラック(メッキ割れ)などの問題が生じないため、メッキスルーホール(金属化孔)の導電性を有効に向上することができる。
【0094】
図9は本発明の第5の実施例に係る多層回路基板を製造する方法のフローチャートであり、
図10は
図9に示す方法の各ステップに対応する製品の断面模式図である。
図9に示すように、当該方法は、表面貼合層、
二層以上の単層回路基板
及び各前記単層回路基板同士の間の中間貼合
層、表面貼合層の順で基板をマッチングして積層するステップ(ステップS1)と、積層された多層基板上に貫通穴及び/または止まり穴を含む穴を穿孔するステップ(S2)と、表面貼合層の外面及び穴の壁に導電種結晶層を形成するステップ(S3)と、導電種結晶層上に導体肉厚層を形成するステップ(S41)と、表面貼合層の外面の上方にフォトレジスト膜を覆って露光及び現像を行うステップ(S42)と、回路パターンを形成するように、エッチング及び膜抜きを行うステップ(S43)と、を含む。但し、ステップS41からS43はいずれも表面貼合層の外面上に回路パターンを形成するステップであって、めっき法で導体肉厚層を形成する場合に、これらのステップは「パネルめっき」と総称することができる。
図10における(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)はそれぞれ上記ステップS1、S2、S3、S41、S42、S43に対応する。
【0095】
本実施例の方法において、ステップS1は
図7に示す方法におけるステップS1に類似し、異なる点は、金属箔を用いないことであり、ステップS2は
図7に示す方法におけるステップS2に対応し、ステップS3は
図7に示す方法におけるステップS3に類似し、異なる点は、穴の壁のみでなく、表面貼合層の外面にも導電種結晶層を形成することである。また、ステップS41からS43はそれぞれ
図3に示す方法におけるステップS31からS33に対応し、それと類似するパネルめっき方法で行うことができる。
【0096】
図10-2(f)に示すように、本実施例の方法によって作成された多層回路基板20は、表面貼合層23、単層回路基板10、中間貼合層22、単層回路基板10、表面貼合層23の順で構成され、当該多層回路基板20に穴17、18があけられており、表面貼合層23の一部の表面上に、導電種結晶層を有する回路パターン層16が形成されている。導電種結晶層は、穴の壁19の下方及び表面貼合層23の一部の外面の下方に注入されたイオン注入層131と、当該イオン注入層131上に付着したプラズマ堆積層132とを含む。もちろん、導電種結晶層13はイオン注入層131のみによって構成されるようにしてもよい。回路パターン層16は導体肉厚層15をさらに含み、もちろん、これが必須ではない。
【0097】
図11は本発明の第6の実施例に係る、多層回路基板を製造する方法のフローチャートであり、
図12は
図11に示す方法の各ステップに対応する製品の断面模式図である。当該方法は、表面貼合層、
二層以上の単層回路基板
及び各前記単層回路基板同士の間の中間貼合
層、表面貼合層の順で基板をマッチングして積層するステップ(ステップS1)と、積層された多層基板上に貫通穴及び/または止まり穴を含む穴を穿孔するステップ(S2)と、表面貼合層の外面及び穴の壁に導電種結晶層を形成するステップ(S3)と、表面貼合層の外面の上方にフォトレジスト膜を覆って露光及び現像を行うステップ(S41)と、めっきを行うステップ(S42)と、回路パターンを形成するように、膜抜き及びエッチングを行うステップ(S43)と、を含む。但し、ステップS41からS43はいずれも表面貼合層の外面上に回路パターンを形成するステップであって、「パターンめっき」と総称することができる。
図9に示す方法に比べれば、本実施例の方法の異なる点は、パネルめっきではなく、パターンめっきで回路パターンを形成することである。
図12における(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)はそれぞれ上記ステップS1、S2、S3、S41、S42、S43に対応する。
【0098】
本実施例の方法において、ステップS1、S2、S3はそれぞれ
図9に示す方法におけるステップS1、S2、S3に対応し、
図9に対して前述した各種の方法で行うことができる。また、ステップS41からS43はそれぞれ
図5に示す方法におけるステップS31からS33に対応し、それと類似するパターンめっき方法で行うことができる。
図12-2(f)に示すように、本実施例の方法によって作成された多層回路基板20は、
図10-2(f)に示す多層回路基板20と同じような構造を有する。
【0099】
図9または
図11に示す多層回路基板を製造する方法によれば、表面貼合層の外面の金属化及び穴の金属化は同時に行うことができる。そのため、一次成形によってメッキスルーホール及び表面回路パターンを有する多層回路基板を直接に作成することができ、従来技術のように、より厚い金属箔を予め覆って、次に金属箔に対しエッチングを行って金属箔を薄くさせてから穿孔する必要がなく、メッキスルーホールを得るように、スルーホールめっきまたはブラックホール、シャドーなどの工程によって穴の壁に導電層を形成する必要もない。従来技術に比べれば、本発明の方法の工程プロセスは顕著に短縮され、且つエッチング液の使用を減少することができ、環境の保護に有益である。また、各種の工程パラメータを調整することによって、このような方法で極薄(12μm以下で、例えば5μm、7μm、9μmなど)の表面回路パターン層を容易に作成し、得られた多層回路基板は、HDI(高密度相互接続基板)とCOF(チップオンフィルム)技術を基礎とする中高級精密電子製品の応用に有利である。
【0100】
上記いくつかの方法で作成された多層回路基板は、穴の壁においてイオン注入層が存在するため、穴の壁と導電種結晶層との間に非常に高い結合力を有し、よって、穴の壁の導電層が後続の各種の加工または応用の過程において容易に離脱または引っかき傷が付けられることがない。そのため、穴の導電性の向上に有利で、導通性に優れた多層回路基板の作成が実現できる。
【0101】
前述は本発明に係る単層回路基板と多層回路基板を製造する方法、及びこれらの方法によって作成された単層及び多層回路基板の具体的な構造を詳細に説明した。以下に、本発明に対する理解を深めるために、例を挙げて本発明を実施するためのいくつかの例示を示す。
(例示1)
【0102】
当該例示は有機高分子薄膜を基材として用いてメッキスルーホール(金属化孔)を有する可撓性回路基板を作成し、具体的には、液晶ポリマーフィルム(LCPフィルム)を基材として用いる。
【0103】
まず、付着した汚れを除去するように、アルコールに含浸されたガーゼでLCPフィルムの表面を軽く拭く。次に、レーザー穿孔技術で当該LCPフィルム上に一連の穴径が20μmの貫通穴をあけてから、残った屑とその他の汚れを除去するように、ドライヤーなどでLCPフィルムの表面及び穴の壁を徹底的に清潔にする。
【0104】
それから、清潔にしたLCPフィルム基材の表面上に1層のフォトレジスト膜を被覆し、当該基材をリソグラフィ機において露光・現像を行ってから、基材の表面上に回路パターンを形成しようとする領域(回路領域とも呼ばれる)における材料を洗浄し、フォトレジスト膜の塗層に覆われた回路のネガパターン(フォトレジスト層とも呼ばれる)を得る。この際に、フォトレジスト層は基材の表面上における非回路領域のみに存在している。
【0105】
次に、露光・現像後に回路のネガパターンを有するフォトレジスト層が形成された基材をオーブンに入れて乾燥させてから、それをイオン注入装置に移送してイオン注入を行う。当該イオン注入装置において、イオン注入キャビティを8.5×10-3Paまで真空引き、Niをターゲットとし、適切な注入電圧及び注入電流を選択し、イオン化されたNiイオンにおよそ60keVの注入エネルギーを与え、LCPフィルム基材の表面及び穴の壁に対しイオン注入を行い、NiイオンをLCPフィルム基材の表面の下方及び穴の壁の下方に注入する。その後、Cuをターゲットとして用いて、LCPフィルムの表面及び穴の壁にプラズマ堆積を行う。この際に、堆積されたCuイオンのエネルギーが1000eVになるように、プラズマ堆積の電圧を調整することができ、プラズマ堆積後の銅張積層板基材の測定シート抵抗を30Ω/□よりも小さくさせる。
【0106】
次に、マグネトロンスパッタリング方法によってLCPフィルム基材の表面上の銅フィルムを5μmまで厚くさせる。具体的なプロセスとして、マグネトロンスパッタリング機のコーティングチャンバーにおいて、10-2Paまで真空引き、アルゴンを注入し、その中の気圧を10Paになるように調整し、薄膜の表面を清潔にしてから、10-3Paまで真空引き、作動電圧を500Vに、スパッタリングデューティサイクルを70%に調整し、銅をターゲットとして用いて、LCPフィルム基材の表面及び穴の壁に対してスパッタリングを行い、それらの上に厚さが5μmの1層の銅層を覆う。
【0107】
次に、回路のネガパターンを有するフォトレジスト層と、導電種結晶層と、導体肉厚層とが形成されたLCPフィルム基材を、当該フォトレジスト層を溶解することができる対応する剥離液の中に置いて、撹拌または振動を補助として施してフォトレジスト層の溶解を加速させる。フォトレジスト層の溶解過程において、当該フォトレジスト層の上方の導電種結晶層及び導体肉厚層もフォトレジスト層とともに基材の表面から離脱して剥離液に入る。回路のネガパターンを有するフォトレジスト層が完全に溶解された後に、適切な洗浄液で基材の表面を徹底的に洗浄してから、オーブンに入れて乾燥させることによって、基材の表面上に所望の回路パターンを得ることができる。
【0108】
最後に、作成された回路基板に対してアニール処理を行ってもよく、即ち、銅層の中の残留応力を取り除いて銅層の断裂を防止するように、回路基板を80-100℃のオーブンに入れて15時間加熱する。次に、銅が大気において酸化されて変色することを防止するために、回路基板をパッシベーションソリューションに約1分間浸した後に取り出して自然乾燥させてもよい。パッシベーションソリューションは濃度が1g/Lのベンゾトリアゾールおよびその誘導体の水溶液である。
(例示2)
【0109】
当該例示はエポキシファイバーグラス布を基材として用いて、金属化穴を有する剛性単層回路基板を製造し、続いて当該単層回路基板を用いて多層回路基板を作製する。具体的には、エポキシファイバーグラス布基材の中のFR-4またはFR-5基材を用いる。
【0110】
まず、付着した汚れを除去するように、アルコールに含浸されたガーゼでFR-4基材の上面を軽く拭く。次に、レーザー穿孔技術で当該FRー4基材上にいくつかの穴径が大凡100μmである貫通穴と、いくつかの穴径が大凡100μmで深さが大凡200μmである止まり穴とをあける。穿孔の後に、残った屑とその他の汚れを除去するために、さらに超音波技術でFR-4基材の表面及び穴の壁を徹底的に洗浄して乾燥処理を行う。
【0111】
次に、フィード機構を通じて乾燥後の基材をイオン注入装置に入れて、イオン注入キャビティを2×10-3Paまで真空引き、Niをターゲットとし、適切な注入電圧及び注入電流を選択することによって、Niイオンの注入エネルギーを30keVにし、FR-4基材の上面の下方及び穴の壁の下方にNiイオンを注入する。その後、Cuをターゲットとして用いて、FR-4の上面及び穴の壁上にプラズマ堆積を行う。堆積されるCuイオンのエネルギーが1000eVになるように、プラズマ堆積の電圧を調整することができ、導電種結晶層が形成されたFR-4基材の測定シート抵抗を50Ω/□よりも小さくさせる。
【0112】
次に、導電種結晶層が形成されたFR-4基材の表面上に1層のフォトレジスト層を貼り付け、当該基材をリソグラフィ機において露光・現像を行ってから、基材の表面上の回路領域における材料を洗浄して、回路のネガパターンを有するフォトレジスト層を得る。この際に、フォトレジスト層は基材上の非回路領域のみに存在しているが、当該フォトレジスト層の下方にも導電種結晶層が存在している。
【0113】
次に、銅めっき生産ラインにおいて、基材の表面上の回路領域における銅フィルムを5μmまで厚くさせる。めっき液の成分は硫酸銅100g/L、硫酸50g/L、塩素イオン濃度30mg/L、及び少量の添加剤である。めっきの電流密度を1A/dm2に設定し、温度を10℃に設定する。めっきのプロセスにおいて、フォトレジスト層は絶縁性のために銅層に被覆されない。つまり、めっきの導体肉厚層は基材の表面上の、フォトレジスト層が存在しない領域、即ち、回路領域のみに存在する。
【0114】
次に、導電種結晶層と、回路のネガパターンを有するフォトレジスト層と、導体肉厚層とが形成されたFR-4基材を、当該フォトレジスト層を溶解することができる対応する剥離液の中に置いて、撹拌を補助として施してフォトレジスト層の溶解を加速させる。フォトレジスト層が完全に溶解された後に、その下方における導電種結晶層が現れる。次に、基材の表面の導体肉厚層上に保護層として1層の錫を覆ってから、導体肉厚層の領域(即ち回路領域)以外の導電種結晶層を除去するように、基材に対してエッチングを行う。最後に、導体肉厚層上の錫めっき層を引き剥がして所望の回路パターンを得る。あるいは、まず基材の表面の導体肉厚層上に保護層として1層の錫を覆ってから、剥離液でフォトレジスト層を除去し、次にエッチングでもともとフォトレジスト層の下方にある導電種結晶層を除去するようにしてもよい。このように、メッキスルーホール(金属化孔)と表面回路パターンを有する単層回路基板を得る。
【0115】
次に、エポキシ接着フィルムを貼合層として用いて、上から下に銅箔、エポキシ接着フィルム、単層回路基板、エポキシ接着フィルム、単層回路基板、エポキシ接着フィルム、銅箔の順で基板をマッチングして、多層基板を形成するように、積層機の中に入れて積層を行う。もちろん、必要に応じて、層数がそれより多いまたは少ない単層回路基板を用いてもよい。
【0116】
次に、得られた多層基板上に機械ドリルでいくつかの穴径が大凡100μmである貫通穴をあけるとともに、表面層の銅箔及びエポキシ接着フィルム上にいくつかの穴径が大凡100μmである止まり穴をあける。穿孔の後に、残った屑とその他の汚れを除去するように、さらに超音波洗浄技術で多層基板の表面及び穴の壁面を徹底的に洗浄して乾燥処理を行う。
【0117】
次に、形成された貫通穴及び止まり穴に対して穴の金属化を行う。具体的には、フィード機構を通じて乾燥且つ洗浄後の多層基板をイオン注入装置の中に入れて、イオン注入キャビティを2×10-3Paまで真空引きする。Niをターゲットとし、適切な注入電圧及び注入電流を選択することによって、Niイオンの注入エネルギーを30keVにし、Niイオンを多層基板の上下表面及び穴の壁の中に注入し、イオン注入層を形成する。その後、Cuをターゲットとして用いて、多層基板の上下表面及び穴の壁にプラズマ堆積を行って、プラズマ堆積層を形成する。堆積されるCuイオンのエネルギーが1000eVになるように、プラズマ堆積の電圧を調整することができ、導電種結晶層が形成されたFR-4基材の測定シート抵抗を50Ω/□よりも小さくさせる。次に、銅めっき生産ラインにおいて、導電種結晶層上の銅フィルムを5μmまで厚くさせる。めっき液の成分は硫酸銅100g/L、硫酸50g/L、塩素イオン濃度30mg/L、及び少量の添加剤である。めっきの電流密度を1A/dm2に設定し、温度を10℃に設定する。
【0118】
次に、メッキスルーホール(金属化孔)が形成された多層基板の表層銅箔上に、パターンめっき方法によって所望の回路パターンを得る。即ち、表層銅箔の表面上にフォトレジスト層(例えばYQ-30SDフィルムまたはAQ-2058ネガティブフィルム)を覆って、露光・現像を行ってから、非回路領域における材料を洗浄する。この際に、フォトレジスト層は銅箔表面上の回路領域のみに存在し、非回路領域における銅箔は露出している。次に、非回路領域の中の銅箔を除去するように、酸性エッチング溶液(HCl+CuCl2)を用いてエッチングを行う。次に、NaOH溶液で膜抜きを行い、下方の銅箔が露出するように、銅箔上に覆われているフォトレジスト膜を抜いて、最終的に所望の表面回路パターンを得る。
【0119】
選択的に、作製された多層回路基板中の残留応力を取り除き、銅箔の破裂を防止するために、当該多層回路基板に対してアニール処理を行ってもよい。具体的なプロセスは、多層回路基板を100-120℃のオーブンに入れて12時間加熱してもよい。次に、銅が大気において酸化されて変色することを防止するように、アニール処理後の回路基板をパッシベーションソリューションに約1分間浸した後に取り出して自然乾燥させてもよい。パッシベーションソリューションは濃度が2g/Lのベンゾトリアゾールおよびその誘導体の水溶液である。
(例示3)
【0120】
本例示は有機高分子薄膜(例えば、PIフィルム)を基材とした両面可撓性銅張積層板を用いて単層回路基板を作製し、続いて当該単層回路基板を用いて多層回路基板を作成する。
【0121】
まず単層回路基板を製造する。具体的には、PIフィルムを基材として、付着した汚れを除去するように、アルコールに含浸されたガーゼでPIフィルムの両面を軽く拭く。次に、紫外線レーザー穿孔技術でPIフィルム上に一連の穴径が10μmの貫通穴をあけて、残った屑とその他の汚れを除去するように、超音波技術でPIフィルムの表面及び穴の壁を徹底的に洗浄する。次に、穿孔後のPIフィルムをイオン注入装置に入れる。当該イオン注入装置において、イオン注入キャビティを1×10-4Paまで真空引き、Niをターゲットとし、適切な注入電圧及び注入電流を選択することによって、注入されるNiイオンのエネルギーを大凡40keVにし、NiイオンをPIフィルム基材の上下両面及び穴の壁の中に注入する。それから、Cuをターゲットとして用いて、PIフィルム基材の上下両面及び穴の壁にプラズマ堆積を行う。堆積されるCuイオンのエネルギーが500eVになるように、プラズマ堆積の電圧を調整し、導電種結晶層が形成されたPIフィルム基材の測定シート抵抗を40Ω/□よりも小さくさせる。
【0122】
次に、銅めっき生産ラインにおいて、PIフィルム基材の表面上の銅フィルムを5μmまで厚くさせる。このめっきプロセスにおいて、めっき液の成分は硫酸銅160g/L、硫酸70g/L、塩素イオン濃度60mg/L、及び少量の添加剤である。めっきの電流密度を2.5A/dm2に設定し、温度を25℃に設定する。次に、PIフィルム基材の肉厚銅層上に1層のフォトレジスト層を被覆し、リソグラフィ機の中に入れて露光・現像を行ってから、基材の表面上の非回路領域における材料を洗浄し、フォトレジスト膜に覆われている回路のポジパターンを得る。この際に、フォトレジスト層は導電種結晶層の表面上の回路領域のみに存在している。
【0123】
その後に、非回路領域における導電種結晶層を除去するように、エッチングを行い、回路領域はフォトレジスト膜の保護作用によってエッチングされない。次に膜抜き液でフォトレジスト膜を除去してから、膜抜き後の基材をオーブンに入れて乾燥させ、よって、基材の表面上に所望の回路パターンを得る。こうすることによって、回路パターン及びメッキスルーホール(金属化孔)を有する単層回路基板が得られ、続いて当該単層回路基板は多層回路基板の作製に用いることができる。
【0124】
次に、PPフィルムを貼合層として用いて、下から上にPP、単層回路基板、PP、単層回路基板、PPの順で基板をマッチングして、多層基板を形成するように、積層機の中に入れて積層を行う。次に、レーザー穿孔技術で、得られた多層基板上にいくつかの穴径が大凡10μmである貫通穴をあけるとともに、表層のPP上にいくつかの穴径が大凡10μmである止まり穴をあける。穿孔の後に、残った屑とその他の汚れなどを除去するように、超音波洗浄などの技術で多層基板の表面と穴の壁を徹底的に洗浄して乾燥処理を行う。
【0125】
次に、穿孔後の多層基板を相次いでイオン注入装置及びプラズマ堆積装置の中に入れて、上記のように表層PPフィルムの表面及び穴の壁に導電種結晶層を形成する。回路を形成するために、続いて肉厚銅フィルムが形成された表層PPフィルムの上下両面上にフォトレジスト層(例えばYQ-40PNフィルムまたはASG-302ポジティブフィルム)を覆って、リソグラフィ機に入れて露光・現像を行ってから、回路領域における不要なフォトレジスト膜材料を洗浄し、回路領域における導電種結晶層のみを露出させる。次に、めっきによってPP膜の表面の回路領域及び穴の壁の中の導電種結晶層の銅フィルムを5μmまで厚くさせる。めっきが完了した後に、後続のエッチングの過程において当該銅めっき層を保護するために、引き続きその表面上に厚さが8μmの1層の錫を1めっきする。続いて、回路領域以外の導電種結晶層が現れるように、NaOH(またはKaOH)溶液で膜抜きを行う。それから、アルカリエッチング液NH
4Cl/NH
3・H
2Oを用いて回路領域以外の導電種結晶層をエッチングするとともに、HNO
3またはH
2O
2溶液などを用いて専用機器の中で銅めっき層の表面上の錫を除去し、よって、回路パターンを有する多層回路基板を得る。この際の多層回路基板は
図10-2(f)に示す断面構造を有する。
【0126】
上述した内容は本発明のより好ましい実施例に過ぎない。しかし、本発明は上述した特定の実施例に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、これらの実施例を特定の場合に適合させるように、各種の明らかな変更、調整及び置き換えを行うことができることは、当業者に容易に想到されえる。実際に、本発明の保護範囲は請求項によって限定されるものであり、当業者が想到できるほかの例示を含んでもよい。このようなほかの例示が請求項の文言上に差異のない構造要素を有するか、または、それらが請求項と文言上に非顕著な差異を有する同等の構造要素を有すれば、それらが請求項の保護範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0127】
10 単層回路基板
11 基材
12 基材の表面
13 導電種結晶層
131 イオン注入層
132 プラズマ堆積層
15 導体肉厚層
16 回路パターン層
161 回路領域
162 非回路領域
17 貫通穴
18 止まり穴
19 穴の壁
20 多層回路基板
21 金属箔
22 中間貼合層
23 表面貼合層
24 フォトレジスト膜