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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】排水パン
(51)【国際特許分類】
   B67C 3/00 20060101AFI20240227BHJP
   B08B 9/20 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B67C3/00 Z
B08B9/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020089859
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183317
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】391035430
【氏名又は名称】東洋製罐グループエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】原 雄一
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-282283(JP,A)
【文献】特開2006-160352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/00-11/06
B08B 1/00- 1/54
B08B 5/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器充填設備における生産装置の基台上面に設けられた排水パンであって、
前記排水パンは、少なくとも2つの傾斜面で構成され、
前記傾斜面の最も低い位置には、生産装置側から流れ落ちてくる廃液等を排出するドレンが設けられ
前記パンの外周縁部には上方に立設した壁部を有し、
複数の前記傾斜面は、山折り状の稜線で区画され、
前記排水パンは、生産装置の基部を基台に固定する取付座をさらに有し、
前記取付座は、生産装置の主要部を載置する主要取付座と、周辺取付座とを含み、
前記主要取付座は、前記稜線に跨るように配置され、
前記周辺取付座は、円筒形状以外の形状を含み、
前記周辺取付座は、前記壁部から離れた位置に前記稜線を跨がらないように配置され、前記周辺取付座の外側面のうち、前記稜線に最も近い位置から前記稜線に平行な方向で最も幅広な箇所である幅広部にかけて、前記幅広部の両端を結ぶ平行線に漸近していくような形状を向けて配置されていることを特徴とする排水パン。
【請求項2】
複数の前記傾斜面は、それぞれ隣接する傾斜面から前記ドレンに向う下り勾配に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の排水パン。
【請求項3】
前記稜線は、前記壁部のいずれの面とも平行でないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排水パン。
【請求項4】
前記複数の傾斜面は、傾斜角度が3度以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の排水パン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器充填設備の洗浄殺菌等で発生する洗浄排水等を受けて回収する廃液等の排水パンに関し、特に、容器充填設備の生産装置を固定する基台の上面に設けられ、生産装置側から流れ落ちてくる廃液等を受けて回収し排出するドレンを有した排水パンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、容器充填設備で容器や生産装置を蒸気や滅菌水などで洗浄した際に発生する廃液を生産装置外へ排出するものは公知である。
例えば、特許文献1には、無菌充填システムのクリーンブース無菌化構造が記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載の無菌充填システムのクリーンブース無菌化構造は、飲料充填機や缶蓋巻締機を収容可能なクリーンブース内の上方エリアで、缶蓋巻締機の表面やクリーンブースの内面に対して薬液や洗浄水を噴霧するサニタリー管や、缶蓋巻締機の本体周りから巻締作業領域に向けて加熱蒸気を噴霧するスーパースチーム管が配管されているものである。
このクリーンブース内には、上方エリアと下方エリアを区分するための隔壁と、廃液を回収して外部に排出する排水機構とが設けられており、排水機構は、隔壁に設けられた廃液を回収可能な凹部から外部へ排出するドレン管で構成されている。
【0004】
また、無菌充填に限らず一般的に飲料充填機や缶蓋巻締機などの容器充填設備の生産装置から流れ落ちてくる廃液においては、生産装置を固定する基台の上面に設けられたパンにドレンを配置して直接排出できるように構成された排水パンが用いられている。
このような排水パンは、図5に示すように、排水パン上に複数のドレンを設けて、排水パン上に落ちた廃液を近傍のドレンから排出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-88823
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1等に記載の排水機構や排水パンには、未だ改善の余地があった。
すなわち、特許文献1等に記載の排水機構や排水パンでは、排水パンの上面を水平に設ける場合、排水パン上に落ちた廃液がドレンに到達せずに排水パン上に溜まってしまう問題があった。
また、製造開始前に的確に洗浄殺菌を行ったとしても、製造開始時或いは製造中において、上記洗浄廃液ばかりでなく製品から漏れ出た液状物や装置から滲み出た潤滑油等がパン上に残液として滞留すると、菌が繁殖する温床になりかねないことから品質上大きな問題となる虞があった。
【0007】
また、図6に示すように、排水パンを傾斜方向に伸びる谷線で区画し複数の傾斜面で構成し、排水パンの上面全体をドレンを配置した方向へ緩やかな傾斜を持たせて形成することで、排水パン上に受けた廃液を谷線に沿ってドレン側へ流すような構成も考えられるが、谷線上に生産装置を固定する為の座を設けると廃液の流れをせき止めてしまう虞があるため、取付座の配置、形状、大きさに制約があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、簡単な構成で、排水パン上に受けた廃液が生産装置の取付座など固定部にせき止められることがなく、迅速に廃液を回収可能な排水パンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の排水パンは、容器充填設備における生産装置の基台上面に設けられた排水パンであって、前記排水パンは、少なくとも2つの傾斜面で構成し、前記傾斜面の最も低い位置には、生産装置側から流れ落ちてくる廃液等を排出するドレンを設け、前記パンの外周縁部には上方に立設した壁部を有し、複数の前記傾斜面は、山折り状の稜線で区画され、前記排水パンは、生産装置の基部を基台に固定する取付座をさらに有し、前記取付座は、生産装置の主要部を載置する主要取付座と、周辺取付座とを含み、前記主要取付座は、前記稜線に跨るように配置され、前記周辺取付座は、円筒形状以外の形状を含み、前記周辺取付座は、前記壁部から離れた位置に前記稜線を跨がらないように配置され、前記周辺取付座の外側面のうち、前記稜線に最も近い位置から前記稜線に平行な方向で最も幅広な箇所である幅広部にかけて、前記幅広部の両端を結ぶ平行線に漸近していくような形状を向けて配置されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る排水パンによれば、排水パンは少なくとも2つの傾斜面で構成し、傾斜面の最も低い位置にはドレンを設けているため、排水パンの上面に落ちた廃液はそれぞれの傾斜面に沿って流れ、確実にドレンに到達し、排出することができる。
また、例えば、生産装置の基部を基台に固定する取付座を傾斜面の最も高い位置に配置することで、取付座から排水パンの上面に落ちた廃液を取付座によってせき止めることなく傾斜面に沿って流すこともでき、これによって、廃液は確実にドレンに到達し、排出することができる。
また、複数の傾斜面は、山折り状の稜線で区画されているため、例えば、稜線に接するかまたは稜線上の位置に取付座を設けることで、排水パン上の廃液は、傾斜面上に液溜まりを発生させることなく確実にいずれかの傾斜面上を流れ、それぞれの傾斜面の最も低い位置に配置されたドレンへ廃液を分けて流すことができる。
さらに、主要取付座は、稜線に跨るように配置されているため、稜線に跨るように配置された主要取付座に固定された生産装置から流れ落ちる廃液が主要取付座に遮られることなく、確実にいずれかの傾斜面上に落ち、より確実にドレン側に廃液を流すことができる。
また、周辺取付座は、壁部から離れた位置に稜線を跨がらないように配置され、周辺取付座の外側面のうち、稜線に最も近い位置から稜線に平行な方向で最も幅広な箇所である幅広部にかけて、幅広部の両端を結ぶ平行線に漸近していくような形状を向けて配置されているため、例えば、周辺取付座が円柱ではない形状であっても、意図しない水溜まりを作らないように、稜線側に向かって凹にならないよう配置され、廃液は周辺取付座にせき止められることなく傾斜面を流れ落ちていくことができる
【0011】
請求項2に記載の構成によれば、複数の傾斜面がそれぞれ隣接する傾斜面から前記ドレンに向かう下り勾配に形成されているため、排水パン上に廃液がせき止められるような箇所が発生することを抑制でき、迅速にドレン側に廃液を流すことができる。
【0013】
請求項に記載の構成によれば、稜線は、壁部のいずれの面とも平行でないため、傾斜面を流れて壁部に到達した廃液は、壁部に沿って傾斜面の最も低い箇所に配置されたドレン側へ流れるため、幅広なドレンを設ける必要がなく、コストアップを抑制することができる。
請求項に記載の構成によれば、複数の傾斜面は、傾斜角度が3度以上であるため、適正な流れ勾配を設定し得ることから、廃液はより一層確実に傾斜面を流れてドレンへ到達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る排水パン100を備えた容器充填設備Sの一例を示す概略図。
図2】本発明の一実施形態に係る排水パン100の斜視図。
図3】本発明の一実施形態に係る排水パン100の上面図。
図4】本発明の一実施形態に係る排水パン100の、周辺取付座116の配置例を示す上面拡大図。
図5】参考例の排水パン200を示す斜視図。
図6】参考例の排水パン300を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の一実施形態に係る排水パン100について、図面に基づいて説明する。
【0016】
排水パン100は、図1に示すように、容器充填設備Sの生産装置Mを固定する基台Bの上面に設けられ、図2および図3に示すように、生産装置Mの基部を固定する取付座114(主要取付座115、周辺取付座116)と、配水管等に接続する排水口としてのドレン113(第1ドレン113a、第2ドレン113b)と、外周縁部から上方に立設した壁部110とを有している。
【0017】
排水パン100の上面は、2つの傾斜面111(第1傾斜面111a、第2傾斜面111b)が形成され、第1傾斜面111aは第1ドレン113a側に向かって下がる方向へ傾斜し、第2傾斜面111bは第2ドレン113b側に向かって下がる方向へ傾斜している。
なお、傾斜面111の傾斜角度は、一般的な洗浄殺菌液や水道水に適した流れ勾配にて設定すれば良いが、発明者の鋭意検討の結果および近年使用されている洗浄殺菌液での経験値から流れ勾配として水平に対し3度以上が好適である。
【0018】
さらに、第1傾斜面111aと第2傾斜面111bとを山折り状に配置することで、分水嶺として機能する尾根からなる稜線112を形成している。
また、生産設備の主要部を載置する主要取付座115は、稜線112に跨るように配置し、傾斜面の最も高い位置に設けている。
なお、主要取付座115は必ずしも稜線112を跨るように配置される必要はなく、主要取付座115の外周縁部の一部が稜線112に接するように配置されていてもよい。
【0019】
一方、周辺取付座116は、その断面の外周形状を円形、方形、多角形、自由曲線に形成することが可能であるが、意図しない水溜まりを作らないように、稜線側に向かって凹にならないよう配置されている。
すなわち、周辺取付座116は、例えば、図4に示すように、第1周辺取付座116a、第2周辺取付座116b、第3周辺取付座116cのそれぞれについて、外側面のうち、稜線112に最も近い位置から稜線112に平行な方向で最も幅広な箇所である幅広部にかけて、幅広部の両端を結ぶ平行線117(第1平行線117a、第2平行線117b、第3平行線117c)に漸近していくような形状を向けて配置されている。
【0020】
壁部110は、排水パン100の外周縁部から上方に立設する接合部において廃液の流れを妨げる水平箇所を作らないよう、壁部110のいずれの壁面も稜線112とは平行にならないように設ける。
但し、主要形状ではない設計的な面取り等の細部についてはこの限りではない。
【0021】
次に、本発明の一実施形態に係る排水パン100による、廃液の排出手順について、図2および図3を用いて説明する。
まず、主要取付座115に固定された生産装置Mから洗浄液や容器から溢れた内容物などの廃液が、傾斜面111に落ちる。
【0022】
このとき、主要取付座115の上面が稜線112よりも高く形成されていれば、傾斜面111に落ちた廃液が主要取付座115上に溜まることがなく、迅速にドレン113に向かって廃液を流すことができる。
なお、主要取付座115は、稜線112に接するか跨るように配置されているため、第1傾斜面111aに落ちた廃液は第1ドレン113a側に、第2傾斜面111bに落ちた廃液は第2ドレン113b側に向かってそれぞれの傾斜面111に沿って流れ落ちる。
【0023】
また、廃液が周辺取付座116に接触することがあるが、周辺取付座116は円柱状に形成されているため、廃液は周辺取付座116にせき止められることなく傾斜面111を流れ落ちていく。
また、傾斜面111を流れ落ちた廃液が壁部110に接触した場合は、稜線112と壁部110とが平行でない、すなわち、傾斜面111の傾斜方向と壁部110とが直交していないため、排水パン110上に廃液が溜まるような水平部分を構成することはなく、壁部110に沿った状態でも廃液は流れは止まらずにドレン113側に流れ、外部に排出される。
なお、稜線112が壁部110の細部の全てと完全に平行でないように形成される必要はなく、例えば、ドレン113を排水パン100の端部面取り部に設けら場合の短いの周囲の壁部110と稜線112とが平行であっても問題はなく、排水パン100の外周縁が円形状で形成されている場合のごく短い箇所が稜線112と平行であってもよい。
【0024】
また、周辺取付座116に固定された生産装置Mから流れ落ちてくる廃液は、それぞれの周辺取付座116が設置された傾斜面111を流れ落ちて、ドレン113から外部に排出される。
以上のように、排水パン100上の各傾斜面111(第1傾斜面111a、第2傾斜面111b)のそれぞれの最も低い位置に廃液が集まるため、ドレン113(第1ドレン113a、第2ドレン113b)を各傾斜面111(第1傾斜面111a、第2傾斜面111b)に配置することで、排水パン100上に落ちてくる廃液を迅速且つ確実にドレン113(113a、113b)から外部へ排出することができる。
【0025】
また、ドレン113を傾斜面111(第1傾斜面111a、第2傾斜面111b)のそれぞれの最も低い位置に最低1箇所ずつ、すなわち、最低2箇所形成するのみで廃液を排出できるため、ドレン113の形成範囲を減らすことができ、ドレン113の設置コストを低減でき、ドレン113を幅広に形成する必要もなく、ドレンを幅広に設けることによる排水パン100の上面の強度の低下を抑制することもできる。
【0026】
以上のように、本発明によれば、製造開始前に的確に洗浄殺菌を行った後、製造開始時或いは製造中においては、上記洗浄廃液ばかりでなく製品から漏れ出た液状物や装置から滲み出た潤滑油等が流れ落ちても排水パン上に残液として滞留することなく排出できるので、菌が繁殖する温床になる心配はなく品質上大きな問題が発生する虞もない。
【0027】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0028】
なお、上述した実施形態では、周辺取付座が円柱状に形成されているものとして説明したが、周辺取付座の形状はこれに限定されず、周辺取付座の外側面のうち、稜線に最も近い位置から稜線に平行な方向で最も周辺取付座が幅広な箇所である幅広部にかけて、幅広部の両端を結ぶ線に漸近していればよく、例えば、多角形柱状に形成されていてもよい。
また、上述した実施形態では、傾斜面は第1傾斜面と第2傾斜面とで山折り状の稜線を形成するものとして説明したが、傾斜面の構成はこれに限定されず、例えば、排水パンの上面を角錐台状に形成し、角錐台の上面を主要取付座としてもよい。
【0029】
また、上述した実施形態では、ドレンは傾斜面の最も低い位置に孔状に形成されているものとして説明したが、ドレンの構成はこれに限定されず、例えば、傾斜面の最も低い位置の壁部を切り欠いて形成してもよい。
さらに、上述した実施形態では、それぞれの傾斜面を単一の平面(傾斜角が一定)とし、山折り状の稜線が直線で形成されるものとしたが、常に隣接する傾斜面からドレンに向かう下り勾配を形成できれば、それぞれの傾斜面を屈曲した平面や曲面(傾斜角が一定でない)としてもよく、稜線が直線状でなくてもよく、稜線が目視できる形で明確に形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0030】
100、200、300 ・・・ 排水パン
110、210、310 ・・・ 壁部
111、311 ・・・ 傾斜面
111a、311a ・・・ 第1傾斜面
111b、311b ・・・ 第2傾斜面
112 ・・・ 稜線
312 ・・・ 谷線
113、213、313 ・・・ ドレン
113a ・・・ 第1ドレン
113b ・・・ 第2ドレン
114、214、314 ・・・ 取付座
115、215、315 ・・・ 主要取付座
116、216、316 ・・・ 周辺取付座
116a ・・・ 第1周辺取付座
116b ・・・ 第2周辺取付座
116c ・・・ 第3周辺取付座
117 ・・・ 幅広部の両端を結ぶ平行線
117a ・・・ 第1平行線
117b ・・・ 第2平行線
117c ・・・ 第3平行線
B ・・・ 基台
C ・・・ 搬送路
M ・・・ 生産装置
S ・・・ 容器充填設備
図1
図2
図3
図4
図5
図6