(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】蓄電池管理装置、蓄電池管理方法および蓄電池管理プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20240227BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240227BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240227BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240227BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20240227BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/00 130
H02J3/32
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
H02J3/38 130
H02J13/00 311U
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2020090057
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村井 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】坂田 将典
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-213364(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084396(WO,A1)
【文献】特開2017-229137(JP,A)
【文献】特開2015-156785(JP,A)
【文献】特開2015-126560(JP,A)
【文献】国際公開第2017/204011(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/004893(WO,A1)
【文献】特開2016-208638(JP,A)
【文献】特開2017-224125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/32
H02J 13/00
H02J 3/38
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池を有する1以上の需要家それぞれの時間単位ごとの需要電力量を予測する予測部と、
前記需要家ごとに定められた前記蓄電池の最低蓄電量と、電力系統からの電力供給が停止した場合の前記需要家ごとの前記時間単位ごとの負荷である非常時想定負荷と、に基づき、前記時間単位ごとの前記蓄電池の蓄電量下限値を算出する算出部と、
前記需要家ごとに、前記需要電力量と、前記蓄電量下限値と、に基づいて、前記蓄電池の蓄電量が前記蓄電量下限値を下回らない範囲で前記蓄電池の前記時間単位ごとの充電電力量および放電電力量を規定する充放電計画を作成する作成部と、を備える蓄電池管理装置。
【請求項2】
前記充放電計画に従って、前記蓄電池の充放電を制御する制御部を、さらに備える、請求項1に記載の蓄電池管理装置。
【請求項3】
前記予測部は、再生可能エネルギー電源をさらに備える前記需要家の前記時間単位ごとの前記再生可能エネルギー電源による発電量を予測し、
前記算出部は、前記最低蓄電量と、前記非常時想定負荷と、前記発電量と、に基づき、前記時間単位ごとの前記蓄電池の蓄電量下限値を算出し、
前記作成部は、前記需要家ごとに、前記需要電力量と、前記蓄電量下限値と、前記発電量と、に基づいて、前記蓄電池の蓄電量が前記蓄電量下限値を下回らない範囲で前記充放電計画を作成する、請求項1に記載の蓄電池管理装置。
【請求項4】
前記作成部は、前記需要家ごとに、前記需要電力量と、前記蓄電量下限値と、に基づいて、前記蓄電池の蓄電量が前記蓄電量下限値を下回らない範囲で、電気料金が最小になるように、前記充放電計画を作成する、請求項1に記載の蓄電池管理装置。
【請求項5】
前記蓄電池は、前記再生可能エネルギー電源とパワーコンディショナーを共有する、請求項3に記載の蓄電池管理装置。
【請求項6】
前記蓄電池は、定置型蓄電池と電気自動車用蓄電池の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の蓄電池管理装置。
【請求項7】
前記蓄電池は、定置型蓄電池と電気自動車用蓄電池の両方を含み、
前記定置型蓄電池、前記電気自動車用蓄電池、および、前記再生可能エネルギー電源のうち少なくとも2つはパワーコンディショナーを共有する、請求項3に記載の蓄電池管理装置。
【請求項8】
前記作成部は、前記需要家ごとに、前記需要電力量と、前記蓄電量下限値と、に基づいて、前記蓄電池の蓄電量が前記蓄電量下限値を下回らない範囲で、デマンドレスポンスの報酬が最大になるように、前記充放電計画を作成する、請求項1に記載の蓄電池管理装置。
【請求項9】
前記作成部は、前記需要家ごとに、前記需要電力量と、前記蓄電量下限値と、に基づいて、前記蓄電池の蓄電量が前記蓄電量下限値を下回らない範囲で、電気料金が最小になるように、かつ、デマンドレスポンスの報酬が最大になるように、前記充放電計画を作成する、請求項1に記載の蓄電池管理装置。
【請求項10】
蓄電池を有する1以上の需要家それぞれの時間単位ごとの需要電力量を予測する予測ステップと、
前記需要家ごとに定められた前記蓄電池の最低蓄電量と、電力系統からの電力供給が停止した場合の前記需要家ごとの前記時間単位ごとの負荷である非常時想定負荷と、に基づき、前記時間単位ごとの前記蓄電池の蓄電量下限値を算出する算出ステップと、
前記需要家ごとに、前記需要電力量と、前記蓄電量下限値と、に基づいて、前記蓄電池の蓄電量が前記蓄電量下限値を下回らない範囲で前記蓄電池の前記時間単位ごとの充電電力量および放電電力量を規定する充放電計画を作成する作成ステップと、を含む蓄電池管理方法。
【請求項11】
蓄電池を有する1以上の需要家それぞれの時間単位ごとの需要電力量を予測する予測ステップと、
前記需要家ごとに定められた前記蓄電池の最低蓄電量と、電力系統からの電力供給が停止した場合の前記需要家ごとの前記時間単位ごとの負荷である非常時想定負荷と、に基づき、前記時間単位ごとの前記蓄電池の蓄電量下限値を算出する算出ステップと、
前記需要家ごとに、前記需要電力量と、前記蓄電量下限値と、に基づいて、前記蓄電池の蓄電量が前記蓄電量下限値を下回らない範囲で前記蓄電池の前記時間単位ごとの充電電力量および放電電力量を規定する充放電計画を作成する作成ステップと、
をコンピュータに実行させるための蓄電池管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電池管理装置、蓄電池管理方法および蓄電池管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PV(Photovoltaics:太陽光発電)などの再生可能エネルギー電源を導入する需要家が増加している。また、CO2フリーである再生可能エネルギーを有効活用するため、PVなどと同時に蓄電池を導入するケースも多い。
【0003】
これらの蓄電池を統合制御し、かつ、それぞれの蓄電池にエネルギーマネジメントサービスやアンシラリーサービスなど、複数のサービスを並行して実施させるための技術が知られている。ここで、エネルギーマネジメントサービスとは、電気料金が安い時間帯に蓄電池に充電し、高い時間帯に放電するような蓄電池の充放電を行うサービスである。また、アンシラリーサービスとは、電力系統の需給バランス調整のために、蓄電池の充放電を行うサービスである。また、このような蓄電池は、停電などの非常時には、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)対応の電源として活用されることも多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-134522号公報
【文献】特開2019-213364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては、蓄電池容量のうち一定量をBCP対応のために確保しておき、残りの容量でその他のサービスを提供していたため、平常時に運用可能な蓄電池容量の範囲が狭く、改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、BCP対応等のために確保する蓄電池容量を適正化し、平常時に提供するサービスの範囲を拡大することができる蓄電池管理装置、蓄電池管理方法および蓄電池管理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の蓄電池管理装置は、蓄電池を有する1以上の需要家それぞれの時間単位ごとの需要電力量を予測する予測部と、前記需要家ごとに定められた前記蓄電池の最低蓄電量と、電力系統からの電力供給が停止した場合の前記需要家ごとの前記時間単位ごとの負荷である非常時想定負荷と、に基づき、前記時間単位ごとの前記蓄電池の蓄電量下限値を算出する算出部と、前記需要家ごとに、前記需要電力量と、前記蓄電量下限値と、に基づいて、前記蓄電池の蓄電量が前記蓄電量下限値を下回らない範囲で前記蓄電池の前記時間単位ごとの充電電力量および放電電力量を規定する充放電計画を作成する作成部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態にかかる電力需給システムの概要を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態にかかる蓄電池管理装置が有する機能の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態にかかる各需要家の契約内容データの一例である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態にかかる各需要家の蓄電池データの一例である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態にかかる各需要家の過去の受電電力量の実績データの一例である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態にかかる各需要家の過去の太陽光発電量の実績データの一例である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態にかかる各需要家の非常時想定負荷データの一例である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態にかかる蓄電池管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第1の実施形態にかかる非常時の蓄電池の充放電計画を説明するための図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態にかかる需要家の需給バランスを説明するための図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態にかかる充放電計画の一例を示すグラフである。
【
図12】
図12は、第2の実施形態にかかるハイブリッド蓄電池の場合の需要家の需給バランスを説明するための図である。
【
図13】
図13は、第3の実施形態にかかるEVが接続される場合の需要家の需給バランスを説明するための図である。
【
図14】
図14は、第3の実施形態にかかるハイブリッド蓄電池の場合の需要家の需給バランスを説明するための図である。
【
図15】
図15は、第3の実施形態にかかるPVおよびハイブリッド蓄電池の場合の需要家の需給バランスを説明するための図である。
【
図16】
図16は、第4の実施形態にかかるDR可能時間帯とDR発動時間帯との関係を示す図である。
【
図17】
図17は、第4の実施形態にかかる蓄電池管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、第4の実施形態にかかる蓄電池の余力を説明するための図である。
【
図19】
図19は、第4の実施形態にかかる蓄電池の余力が満たすべき条件を説明するための図である。
【
図20】
図20は、第4の実施形態にかかる第1の充放電計画の一例を示すグラフである。
【
図21】
図21は、第4の実施形態にかかる第1の充放電計画から、1つの需要家に関するデータを抽出したグラフである。
【
図22】
図22は、第4の実施形態にかかる第2の充放電計画の一例を示すグラフである。
【
図23】
図23は、第4の実施形態にかかる第2の充放電計画から、1つの需要家に関するデータを抽出したグラフである。
【
図24】
図24は、第3の実施形態にかかる電力需給システムの概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の蓄電池管理装置、蓄電池管理方法および蓄電池管理プログラムについて説明する。なお、以下において、時刻とは、時間の瞬間を指す場合と、所定時間単位(例えば30分単位)のその時間幅(例えば30分間)を指す場合の2種類がある。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、
図1~
図11を用いて第1の実施形態について説明する。
図1は、実施形態にかかる電力需給システムSの概要を示す図である。
図1に示す系統運用者6は、電力会社や送配電事業者等であり、電力系統5を運用して、発電機8を制御することにより、複数の需要家3および需要家7へ電力を供給する。
【0011】
需要家3および需要家7は、電力の供給を受け、当該電力を利用する主体である。本実施形態においては、需要家3は、後述のDR(Demand Response)アグリゲータ2の管理範囲1に含まれる需要家であり、例えば、事務所や商業施設が入居するビル等とする。また、需要家7は、工場やビル、住宅等とする。また、ビル等を運用する事業者を需要家3としても良い。
【0012】
また、各需要家3は、蓄電池4や太陽光発電装置(PV)9を有している。本実施形態においては、全ての需要家3は、蓄電池4を有するものとする。蓄電池4は、後述のピークカットおよびデマンドレスポンスに用いられる他、災害時等に電力系統5から各需要家3への電力供給が停止した場合においても需要家3が一定期間事業を継続するために必要な電力を蓄えるためにも用いられる。電力供給が停止した場合においても需要家3が一定期間事業を継続可能な電力量を、BCP容量という。BCP容量は、本実施形態における蓄電池4の最低蓄電量の一例であり、需要家3ごとに定められる。また、需要家3が蓄電池4をBCPのために利用しない場合は、BCP容量は“0”となる。
【0013】
DRアグリゲータ2は、需要家3の電力需要予測や太陽光発電装置9(再生可能エネルギー電源の一例)の発電予測に基づいて、需要家3の蓄電池4を制御することにより、需要家3の受電電力のピーク低減や、消費電力の時間シフトを行い、需要家3の電気料金を低減させるとともに、電力系統5の負荷平準化に貢献する。
【0014】
また、DRアグリゲータ2は、系統運用者6からの受電電力量の削減要請(DR要請)に基づいて、複数の需要家3の受電電力量を削減してデマンドレスポンスを行う事業者である。DRアグリゲータ2は、系統運用者6からの削減要請に基づいて、各需要家3の蓄電池4を制御することによって、所定の時間帯の各需要家3の受電電力量の合計を、各需要家3のベースライン電力の合計値から、予め決められた量だけ削減する。
【0015】
本実施形態のベースライン電力は、各需要家3の予想される需要電力量である。また、ベースライン電力は、デマンドレスポンスによって受電電力の削減が行われていない場合における各需要家3の受電電力量としても良い。また、本実施形態では、デマンドレスポンスにおいて契約等によって、複数の需要家3の受電電力量の合計に対して予め決められた削減量を、DR量という。
【0016】
また、本実施形態においては、系統運用者6から削減要請を受けてDRアグリゲータ2が受電電力量の削減を行うことを、「デマンドレスポンスを発動する」という。また、本実施形態においては、DRアグリゲータ2が系統運用者6から削減要請を受ける可能性のある時間帯を、「DR可能時間帯」という。また、DR可能時間帯のうち、系統運用者6から削減要請を受けてDRアグリゲータ2が実際にDRを発動する時間帯を、「DR発動時間帯」という。
【0017】
また、本実施形態のDRアグリゲータ2は、デマンドレスポンスだけではなく、各需要家3ごとの受電電力量のピークカットをする。具体的には、DRアグリゲータ2は、各需要家3の蓄電池4を制御することによって、各需要家3ごとの受電電力量の最大値を、予め定められたピークカットの目標値以下にする。ピークカットの詳細については、後述する。
【0018】
DRアグリゲータ2は、蓄電池管理装置10によって蓄電池4の充電または放電のスケジュール(充放電計画)を作成し、当該充放電計画に従って蓄電池4の充放電を制御する。蓄電池管理装置10は、PC(Personal Computer)等であり、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、HDD(Hard Disk Drive)と、通信インタフェース(I/F)と、ディスプレイ等の表示装置と、キーボードやマウス等の入力装置とを備える通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0019】
図2は、第1の実施形態にかかる蓄電池管理装置10が有する機能の一例を示す図である。
図2に示すように、蓄電池管理装置10は、入力部11と、記憶部12と、取得部13と、表示制御部14と、演算部15と、制御部16と、を備える。また、演算部15は、予測部17と、BCP容量最適化部18と、作成部19と、を備える。
【0020】
記憶部12は、入力部11から入力された需要家3の契約内容データ、蓄電池4に関するデータ、取得部13が取得したデータ、非常時の想定負荷、予測部17、BCP容量最適化部18、作成部19等でデータ処理を行うための計算条件、予測部17、BCP容量最適化部18、作成部19等の演算結果等を記憶する。記憶部12は、例えばHDDや、メモリである。
【0021】
図3は、第1の実施形態にかかる各需要家3の契約内容データの一例である。契約内容データは、各需要家3の契約に関するデータであり、より詳細には、需要家名と、各需要家3の契約電力と、各需要家3のピークカット電力とが対応付けられたデータである。ピークカット電力は、需要家3が受電電力の最大値の目標値として電力会社やDRアグリゲータ2と契約した値である。ピークカット電力を所定時間単位(本実施形態においては30分間)ごとの電力量に変換すると、ピークカットの目標値(目標電力量)となる。各需要家3は、一定期間以上、受電電力をピークカット電力以下に保つことができた場合に、契約電力を引き下げることが可能となり、基本料金を低くすることができる。
【0022】
また、
図4は、第1の本実施形態にかかる各需要家3の蓄電池データの一例である。蓄電池データは、各需要家3の蓄電池4に関するデータであり、より詳細には、蓄電池4を特定可能な蓄電池名と、当該蓄電池4を有する需要家名と、各蓄電池4の容量と、充電時の出力電力と効率と、放電時の出力電力と効率と、が対応付けられたデータである。
【0023】
図7は、第1の実施形態にかかる各需要家3の非常時想定負荷データの一例である。横軸は30分単位の時間で、縦軸は電力量である。非常時の想定負荷は、停電などの非常時の負荷として想定する機器の時間単位ごとの消費電力のデータである。具体的には、
図7には、防災無線と、テレビと、携帯電話と、LED(Light Emitting Diode)外灯と、LED天井照明とのそれぞれの消費電力と、それらの合計が示されている。
【0024】
図2に戻り、入力部11は、入力装置を介してデータの入力を受け、記憶部12に保存する。入力部11が受けるデータは、後述の最適化モデルにおけるパラメータ等である。
【0025】
取得部13は、需要家3に設置された電力量計21から、需要家3の受電電力量の計測値を取得する。ここで、
図5は、第1の実施形態にかかる各需要家3の過去の受電電力量の実績データの一例である。受電電力量の実績データは、30分単位の時刻(「0:00」はその時刻からの30分間を示す。)ごとの各需要家3の電力受電量の実績に関するデータである。取得部13は、日付と、時刻と、需要家3毎に、30分単位の受電電力量を電力量計21から取得し、これらのデータを対応付けて、受電電力量の実績データとして記憶部12に保存する。
【0026】
また、取得部13は、太陽光発電装置9から、需要家3のPV発電量を取得する。ここで、
図6は、第1の実施形態にかかる各需要家3の過去の太陽光発電量の実績データの一例である。太陽光発電量の実績データは、30分単位の時刻ごとの各需要家3の太陽光発電量の実績に関するデータである。
【0027】
図2に戻り、表示制御部14は、予測部17、BCP容量最適化部18、および作成部19の演算結果等を表示装置に表示する。
【0028】
予測部17は、各需要家3の時間単位ごとの需要電力量を予測する。より詳細には、予測部17は、記憶部12に保存された受電電力量の実績データや、曜日等のカレンダー情報に基づいて、デマンドレスポンスによって受電電力の削減が行われない場合の、翌日の時間単位ごとの各需要家3の需要電力量を予測する。予測部17の予測した結果が、時間単位ごとの各需要家3のベースライン電力となる。
【0029】
また、予測部17は、各需要家3の時間単位ごとの太陽光発電量を予測する。より詳細には、予測部17は、記憶部12に保存された太陽光発電量の実績データや、天気予報情報に基づいて、翌日の時間単位ごとの各需要家3の太陽光発電量を予測する。
【0030】
また、需要電力量(ベースライン電力)や太陽光発電量は、入力部11より入力されて、記憶部12に記憶されたものを取得して用いても良い。また、需要電力量(ベースライン電力)や太陽光発電量は、他システムより入力された値を用いても良い。
【0031】
BCP容量最適化部18は、需要家3ごとに定められた蓄電池の最低蓄電量と、電力系統5からの電力供給が停止した場合の需要家3ごとの時間単位ごとの負荷である非常時想定負荷と、に基づき、時間単位ごとの蓄電池4の蓄電量下限値を算出する。BCP容量最適化部18は、例えば、各需要家3の時間単位ごとの非常時想定負荷と、予測部17により予測された太陽光発電量の予測値に基づき、時間単位ごとの最適なBCP容量を計算する。
【0032】
作成部19は、需要家3ごとに、需要電力量と、蓄電量下限値と、太陽光発電装置9の発電量と、に基づいて、蓄電池4の蓄電量が蓄電量下限値を下回らない範囲で充放電計画を作成する。
【0033】
また、作成部19は、需要家3ごとに、需要電力量と、蓄電量下限値と、に基づいて、蓄電池4の蓄電量が蓄電量下限値を下回らない範囲で、電気料金が最小になるように、充放電計画を作成するようにしてもよい。
【0034】
作成部19は、例えば、需要家3ごとに、予測部17によって予測された需要電力量および太陽光発電量と、BCP容量最適化部18によって計算されたBCP容量に基づいて、蓄電池4の蓄電量がBCP容量を下回らない範囲で、時間単位ごとの受電電力量がピークカットの目標値を上回らないように、蓄電池4の時間単位ごとの充電電力量および放電電力量を規定する充放電計画を作成する。
【0035】
制御部16は、作成部19によって作成された充放電計画に従って、各蓄電池4の充放電を制御する。より詳細には、制御部16は、充放電計画を、時間単位ごとの充電または放電の電力値を示す指令信号に変換して、各蓄電池4に送信する。蓄電池4は、制御部16から充電を指示する指令信号を受信した場合は、時間単位ごとに指定された量だけ、電力系統5や太陽光発電装置9から電力を取得して充電をする。また、蓄電池4は、放電を指示する指令信号を受信した場合は、時間単位ごとに指定された量だけ、放電をして屋内配電線22を介して負荷23に電力を供給する。負荷23は、照明や空調等の電力を消費する機器である。
【0036】
(作用)
次に、以上のように構成された本実施形態の蓄電池管理装置10が実行する処理の流れについて説明する。
図8は、第1の実施形態にかかる蓄電池管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0037】
まず、予測部17は、記憶部12から受電電力量の実績データ(
図5)や、曜日等のカレンダー情報を読み出し、これらの情報に基づいて、翌日の時間単位ごとの各需要家3の需要電力量を予測する(S1)。また、予測部17は、記憶部12から太陽光発電電力量の実績データ(
図6)や、日射量等の気象情報を読み出し、これらの情報に基づいて、翌日および翌々日の時間単位ごとの各需要家3の太陽光発電電力量を予測する(S2)。なお、需要電力量や太陽光発電電力量は、入力部11から入力し、記憶部12に記憶しておいたものを取得して用いても良い。また、他システムより入力した値を用いても良い。
【0038】
次に、BCP容量最適化部18は、予測部17によって予測された需要家3の太陽光発電量と、記憶部12から読み出した需要家3の非常時の想定負荷データ(
図7)と、需要家3の蓄電池4に関するデータ(
図4)とに基づいて、各時間単位において停電の発生を想定した場合に非常時負荷を賄うことのできる蓄電池4の初期蓄電量(BCP容量)曲線を作成する(S3)。
【0039】
より詳細には、BCP容量最適化部18は、各時間単位において、式(2)~(7)に示される制約条件下で、式(1)の目的関数を最小化する最適化モデル(最適化問題)の最適解を算出することにより、需要家3の蓄電池4の時間単位ごとの充放電電力量、蓄電量(SoC)、および、BCP容量を求める。式(1)~(7)の最適化問題は、線形計画問題と呼ばれる問題である。BCP容量最適化部18は、例えば、単体法や内点法等の手法によって(1)の目的関数を最小化する最適解を算出する。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
式(1)は、需要家3の時刻t0におけるBCP容量を最小化することを示す。SBCP(t0)は、需要家3に設置された蓄電池4の時刻t0におけるBCP容量である。BCP容量は、災害時等に電力系統5からの電力供給が停止した場合においても需要家3が一定期間事業を継続するために、蓄電池4が蓄える電力量である。
【0044】
ここで、tは30分間隔の時間単位を示し、t0は停電発生時刻、Teは停電継続時間単位を示す。式(1)~(7)の説明では、時間単位を時刻tという。
【0045】
BCP容量最適化部18は、式(2)~(7)を満たした上で、蓄電池4のBCP容量SBCP(t0)がより少なくなる変数Ppvr(t)、Pbc(t)、Pbd(t)、Sb(t)の値を求める。
【0046】
Ppvr(t)は、時刻tにおける太陽光発電装置9の出力抑制量(kWh/30min)である。Pbc(t)は、蓄電池4の時刻tにおける充電電力量(kWh/30min)である。Pbd(t)は、蓄電池4の時刻tにおける放電電力量(kWh/30min)である。また、Sb(t)は、蓄電池4の時刻tにおける蓄電量(kWh)である。また、この最適化モデルによってBCP容量最適化部18が算出するSBCP(t0)の値が、時刻t0のBCP容量となる。
【0047】
BCP容量最適化部18は、記憶部12に保存されたデータから、入力パラメータPpv、Pde(t)、ηbc、ηbd、Pbc
max、Pbd
max、Sb
max、Sb
minについて、式(1)~(7)への入力値を取得し、各入力パラメータに入力した上で、式(1)~(7)の最適化モデルの最適解を求める。
【0048】
Ppv(t)は、時刻tにおける太陽光発電の発電電力量の予測値(kWh/30min)である。Pde(t)は需要家3の時刻tにおける非常時負荷(kWh/30min)である。ηbcは需要家3に設置された蓄電池4の充電効率、ηbdは需要家3に設置された蓄電池4の放電効率である。
【0049】
P
bc
maxは需要家3に設置された蓄電池4の充電電力量の上限値(kWh/30min)である。P
bd
maxは需要家3に設置された蓄電池4の放電電力量の上限値(kWh/30min)である。S
b
maxは需要家3に設置された蓄電池4の蓄電量の上限値(kWh)である。S
b
minは需要家3に設置された蓄電池4の蓄電量の下限値(kWh)である。ここで、蓄電池4の充電電力量および放電電力量の上限値P
bc
maxおよびP
bd
maxは、それぞれ、
図4における各蓄電池の充電時および放電時の出力電力を30分間継続したときの電力量である。
【0050】
ここで、
図9は、第1の実施形態にかかる非常時の蓄電池4の充放電計画を説明するための図である。例えば、日付D1の時刻t
0=15:00に停電が発生したとすると、T
e=24時間後の翌日D2の時刻15:00までの非常時負荷(線L2)を蓄電池4による放電と太陽光発電装置9による発電(線L1)によって供給可能であるための最小の蓄電池4の蓄電量がBCP容量S
BCP(t
0)(点P1)である。このとき、蓄電池4の蓄電量は線L3となり、ちょうど24時間後の翌日15時まで、蓄電量が過不足なくBCP負荷へ電力が供給される。停電発生時の蓄電量がS
BCP(t
0)を下回ると、蓄電量の推移は線L4となって不足し、上回ると、蓄電量の推移は線L5となって余剰となる。各時刻で停電が発生したときのBCP容量をつないだものが、最適BCP容量(例えば
図11(b)の線L15)である。
【0051】
式(2)は、需要家3の時刻tごとの非常時負荷と、太陽光発電装置9および蓄電池4からの供給電力量が等しくなるという電力の需給バランスを保つという制約条件である。
【0052】
ここで、
図10は需要家3の電力の需給バランスを説明するための図である。
図10に示す通り、式(2)は、太陽光発電量P
pv(t)に対して、太陽光発電の出力抑制量P
pvr(t)を減算し、蓄電池4の放電電力量P
bd(t)を加算し、蓄電池4の充電電力量P
bc(t)を減算した値が、需要家3の時刻tごとの非常時想定負荷P
de(t)と等しくなるという制約条件である。
【0053】
式(3)は、蓄電池4におけるエネルギー保存則の制約条件である。より詳細には、式(3)は、時間単位における蓄電池4の蓄電残量の変化量は、充電電力量に充電効率を乗算した値から、放電電力量を放電効率で除算した値を減算した値となることを規定する。
【0054】
式(4)は、蓄電池4の充電電力量の上下限の制約条件である。また、式(5)は、蓄電池4の放電電力量の上下限の制約条件である。需要家3に設置された蓄電池4の時刻tにおける放電電力量および充電電力量の上限は、蓄電池4のそれぞれの上限値によって規定される。
【0055】
式(6)は、蓄電池4の蓄電量の上下限の制約条件である。式(6)は、蓄電池4の蓄電量が、蓄電量の上下限値の範囲内にあることを規定する。
式(7)は、停電発生時の蓄電池4の蓄電量が、BCP容量であることをいう定義式である。
【0056】
以上の計算を、停電発生時刻t0が翌日0:00~23:30までをそれぞれ仮定して、BCP容量を最適化し、翌日のBCP容量曲線SBCP(t)を算出する。
【0057】
図8に戻って、S3の後、表示制御部14は、最適BCP容量曲線を表示装置に表示する(S4)。これにより、DRアグリゲータ2の担当者等(ユーザ)は、充放電計画を表示装置上で確認することができる。
【0058】
次に、作成部19は、予測部17によって予測された需要電力量と、需要家3それぞれの蓄電池4に関するデータ(
図4)とに基づいて、翌日の充放電計画を作成する(S5)。より詳細には、作成部19は、式(8)~(14)に示される制約条件下で、式(8)の目的関数を最小化する最適化モデル(最適化問題)の最適解を算出することによって、各需要家3の蓄電池4の時間単位ごとの充放電電力量を求める。式(8)~(14)の最適化問題は、線形計画問題と呼ばれる問題である。作成部19は、例えば、単体法や内点法等の手法によって(8)の目的関数を最小化する最適解を算出する。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
式(8)は、計画対象の時間Tにおける需要家3の従量電気料金を示す。ここでは、Tは、この処理が実行される日の翌日の24時間とする。tは30分間隔の時間単位を示す。式(8)~(14)の説明では、時間単位を時刻tという。
【0063】
作成部19は、式(8)~(14)を満たした上で、需要家3の従量電気料金がより少なくなる変数Pr(t)、Sb(t)、Pbc(t)、Pbd(t)の値を求める。
【0064】
Pr(t)は、需要家3の時刻tにおける受電電力量(kWh/30min)である。Ppv(t)は、需要家3ごとの時刻tにおける太陽光発電の発電電力量の予測値(kWh/30min)である。Sb(t)は、需要家3に設置された蓄電池4ごとの時刻tにおける蓄電残量(kWh)である。
【0065】
また、Pbc(t)は、蓄電池4の時刻tにおける充電電力量(kWh/30min)である。Pbd(t)は、蓄電池4の時刻tにおける放電電力量(kWh/30min)である。この最適化モデルによって作成部19が算出するPbc(t)とPbd(t)の値が、蓄電池の充放電計画となる。作成部19は、記憶部12に保存されたデータから、入力パラメータΔT、ce(t)、Pdn(t)、Ppv(t)、ηbc、ηbd、Pbc
max、Pbd
max、Sb
max、SBCP(t)について、式(8)~(14)への入力値を取得し、各入力パラメータに入力した上で、式(8)~(14)の最適化モデルの最適解を求める。
【0066】
ΔTは、時間ステップ(time step)であり、各式の時間単位を示す。本実施形態の時間ステップは、30分刻みである。Pdn(t)は、平常時の時刻tにおける電力需要の予測値(kWh/30min)である。Pr
maxはピークカット閾値電力(契約電力)(kW)である。ce(t)は、時刻tにおける買電単価(円/kWh)である。ηbcは蓄電池4の充電効率、ηbdは蓄電池4の放電効率である。
【0067】
Pbc
maxは蓄電池4の充電電力量上限(kWh/30min)、Pbd
maxは蓄電池4の放電電力量上限(kWh/30min)、Sb
maxは蓄電池4の蓄電量上限(kWh)である。SBCP(t)は、需要家3に設置された蓄電池4ごとのBCP容量である。
【0068】
なお、ce(t)は、電力取引所の時刻tにおける電力単価の予測値(円/kWh)であってもよい。この場合、式(8)は、計画対象の時間Tにおいて電力小売り事業者が電力取引所から調達する電力調達コストの合計値を示す。
【0069】
ここで、
図10は需要家3の電力の需給バランスを説明するための図である。
図10に示す通り、式(9)は、需要家3の時刻tごとの受電電力量P
r(t)に対して、太陽光発電量予測値P
pv(t)を加算し、太陽光発電装置9の出力抑制量P
pvr(t)を減算し、蓄電池4の充電電力量P
bc(t)を減算し、蓄電池4の放電電力量P
bd(t)を加算した値が、需要家3の時刻tごとの電力負荷予測値P
dn(t)と等しくなるという制約条件である。
【0070】
式(10)は、需要家3ごとのピークカットの制約条件である。式(10)は、需要家3ごとの時刻tにおける受電電力量が、需要家3ごとのピークカットの目標値以下となるように規定する。
【0071】
式(11)は、BCP最適化における式(3)と同様である。また、式(12)は、BCP最適化における式(4)と同様である。また、式(13)は、BCP最適化における式(5)と同様である。
【0072】
式(14)は、需要家3に設置された蓄電池4のBCPの制約条件である。式(14)は、蓄電池4の蓄電量が、BCP容量以上であることを規定するとともに、蓄電量の最大値が蓄電量上限を超えないことを規定する。
【0073】
図11は、第1の実施形態にかかる充放電計画の一例を示すグラフである。
図11(a)において、横軸は時刻t、縦軸は受電電力量または需要電力量(kWh/30min)を示す。
図11(b)において、横軸は時刻t、縦軸は蓄電量(kWh)を示す。
図11(a)の線グラフは、太陽光発電量予測値(L13)、需要電力量予測値(L11)、受電電力量計算結果(L12)を示す。また、
図11(a)の棒グラフは、蓄電池4の充放電電力量計画値を示し、正の数が放電、負の数が充電を示す。また、
図11(b)の線グラフは、蓄電池4の最適BCP容量(L15)、蓄電量(L14)、蓄電量運用下限(L16)を示す。
【0074】
本実施形態では、ピークカット電力量を29.5kWh/30minとする。
図11に示す充放電計画では、受電電力量(L12)が蓄電池の放電によりピークカット電力量の29.5kWh/30min以下になっており、かつ、蓄電池の蓄電量(L14)は、最適BCP容量(L15)を下回らないことが確認できる。したがって、この間いつ停電が起こっても、非常時想定負荷を賄うことが可能であり、かつピークカットを実現できていることがわかる。
【0075】
図8に戻って、S5の後、作成部19は、作成した充放電計画を、記憶部12に保存する。次に、表示制御部14は、充放電計画を表示装置に表示する(S6)。これにより、DRアグリゲータ2の担当者等(ユーザ)は、充放電計画を表示装置上で確認することができる。
【0076】
次に、制御部16は、作成された充放電計画に従って、各蓄電池4の充放電を制御することによって、充放電計画を実行する(S7)。ここで、このフローチャートの処理は終了する。
【0077】
(効果)
このように、第1の実施形態の蓄電池管理装置10によれば、BCP対応等のために確保する蓄電池容量を適正化し、平常時に提供するサービスの範囲を拡大することができる。具体的には、以下の通りである。
【0078】
従来技術においては、1つの蓄電池により、停電などの非常時対応を含む複数のサービスを行う場合、非常時対応のために常に一定容量を確保し、残りの蓄電容量によって他のサービスを行っていたため、平常時に運用可能な蓄電池容量の範囲が狭く、その効果が小さかった。
【0079】
これに対して、本実施形態の蓄電池の蓄電池管理装置10は、翌日の太陽光発電量の予測と、非常時負荷の想定値に基づき、BCP対応のために確保する蓄電池容量を最適化することにより、平常時に充放電する蓄電池4の運用範囲を拡大することができ、ピークカット等のサービスの範囲を拡大し、電気料金をより削減することができる。
【0080】
なお、本実施形態の蓄電池管理装置10では、太陽光発電装置9と蓄電池4が別個に設置されている場合について述べたが、太陽光発電装置9と蓄電池4がパワーコンディショナーを共有するハイブリッド蓄電池であってもよい。これについて、第2の実施形態で説明する。また、蓄電池4はEV(Electric Vehicle:電気自動車)であってもよい。これについて、第3の実施形態で説明する。
【0081】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について、
図12を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0082】
蓄電池4は、再生可能エネルギー電源とパワーコンディショナーを共有する。以下、例を挙げて説明する。
【0083】
(構成)
図1、
図2の構成は第1の実施形態と同様であるが、
図12に示すように、蓄電池4と太陽光発電装置9はパワーコンディショナーを共有するハイブリッド蓄電池29の一部である。
【0084】
(作用)
図8のフローチャートについて、第1の実施形態と比較してS5のみ異なる。すなわち、S5において、作成部19は、式(8)~(14)に以下の式(15)を加えた制約条件下で、式(8)の目的関数を最小化する最適化モデル(最適化問題)の最適解を算出することによって、各需要家3の蓄電池4の時間単位ごとの充放電電力量を求める。
【0085】
【0086】
ここで、変数とパラメータは以下の通りである。
【数8】
【0087】
(効果)
このように、第2の実施形態によれば、蓄電池4の代わりにハイブリッド蓄電池29を用いても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0088】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について、
図24、
図13~
図15を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0089】
(構成)
図24は、第3の実施形態にかかる電力需給システムSの概要を示す図である。
図24に示す電力需給システムSにおいて、需要家3にV2X装置24を介してEV26が接続される。また、
図13は第3の実施形態にかかる蓄電池管理装置10が有する機能において、需要家3の一例を示す図である。
図13に示すように、需要家3は蓄電池4と太陽光発電装置9のほかにEV26と接続するV2X装置24を設置する。V2X装置24は、蓄電池のパワーコンディショナーと同様に、EV26の蓄電池の充放電を行う装置である。また、
図14に示すように、太陽光発電装置9、蓄電池4、V2X装置24はパワーコンディショナーを共有するハイブリッド蓄電池25であってもよい。また、
図15に示すように、蓄電池4とV2X装置24のみパワーコンディショナーを共有するハイブリッド蓄電池25であってもよい。
【0090】
(作用)
図8のフローチャートについて、第1の実施形態と比較してS3とS5のみ異なる。すなわち、S3において、BCP容量最適化部18は、式(1)~(7)のうち、式(2)の代わりに以下の式(16)を、また、以下の式(17)~(22)を追加した制約条件下で、式(1)の目的関数を最小化する最適化モデル(最適化問題)の最適解を繰り返し算出することによって、各需要家3の蓄電池4における最適なBCP容量を算出する。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
式(16)は、式(2)の非常時の需給バランスにおいて、V2X装置24からの供給電力量を追加したものである。
図13に示す通り、式(16)は、太陽光発電量P
pv(t)に対して、太陽光発電の出力抑制量P
pvr(t)を減算し、蓄電池4の放電電力量P
bd(t)を加算し、蓄電池4の充電電力量P
bc(t)を減算し、V2X装置24の放電電力量P
vd(t)を加算し、V2X装置24の充電電力量P
vc(t)を減算した値が、需要家3の時刻tごとの非常時想定負荷P
de(t)と等しくなることを規定する。
【0095】
式(17)~式(20)は、それぞれ、蓄電池4における式(3)~式(6)に対応するV2X装置24あるいはEV26(EV蓄電池)の制約条件である。
式(21)は、EV26不在時のV2X装置24の充放電電力量の制約条件である。式(21)は、EV26の不在時には、V2X装置24の充電電力量Pvc(t)および放電電力量Pvc(t)はゼロであることを規定する。
式(22)は、EV26帰着時のEV蓄電池の蓄電量の制約条件である。式(22)は、EV26が帰着した際には、充電電力量は一定値Sv
0であることを規定する。
【0096】
また、S5において、作成部19は、式(8)~(14)のうち式(9)の代わりに以下の式(23)および、ハイブリッド蓄電池の場合は式(24)あるいは(25)を考慮し、さらに式(26)~(32)を考慮した制約条件下で、式(8)の目的関数を最小化する最適化モデル(最適化問題)の最適解を算出することによって、各需要家3の蓄電池4およびV2X装置24の時間単位ごとの充放電電力量を求める。
【0097】
【0098】
【0099】
また、パラメータは、以下の通りである。
【数14】
【0100】
式(23)は、式(9)の平常時の需給バランスにおいて、V2X装置24からの供給電力量を追加したものである。
図13、
図14、あるいは
図15のいずれかに示す通り、式(23)は、太陽光発電量P
pv(t)に対して、太陽光発電の出力抑制量P
pvr(t)を減算し、蓄電池4の放電電力量P
bd(t)を加算し、蓄電池4の充電電力量P
bc(t)を減算し、V2X装置24の放電電力量P
vd(t)を加算し、V2X装置24の充電電力量P
vc(t)を減算した値が、需要家3の時刻tごとの電力負荷予測値P
dn(t)と等しくなることを規定する。
【0101】
式(26)~式(29)は、それぞれ、蓄電池4における式(17)~式(20)に対応するV2X装置24あるいはEV26(EV蓄電池)の制約条件である。
式(24)あるいは式(25)は、V2X装置24を含むハイブリッド蓄電池25の出力上限制約であり、式(15)に、V2X装置24からの充放電電力量を追加したものである。
式(30)は、EV26不在時のV2X装置24の充放電電力量の制約条件である。式(30)は、EV26の不在時には、V2X装置24の充電電力量Pvc(t)および放電電力量Pvc(t)はゼロであることを規定する。
【0102】
式(31)は、EV26帰着時のEV蓄電池の蓄電量の制約条件である。式(31)は、EV26が帰着した際には、蓄電量は一定値Sv
0であることを規定する。
式(32)は、EV26出発時のEV蓄電池の蓄電量の制約条件である。式(32)は、EV26が出発する時刻において、蓄電量が満充電Sv
maxとなることを規定する。
【0103】
また、Pvc(t)およびPvd(t)は、EVの非接続時は0である。
【0104】
(効果)
このように、第3の実施形態によれば、太陽光発電装置9と蓄電池4のほかにEVと接続するV2X装置24を含む場合でも、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0105】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について、
図16~
図23を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0106】
(構成)
図1、
図2の構成は第1の実施形態と同様であるが、作成部19の機能が異なり、デマンドレスポンスに対応する。例えば、作成部19は、需要家3ごとに、需要電力量と、蓄電量下限値と、に基づいて、蓄電池4の蓄電量が蓄電量下限値を下回らない範囲で、デマンドレスポンスの報酬が最大になるように、充放電計画を作成する。
【0107】
また、作成部19は、需要家3ごとに、需要電力量と、蓄電量下限値と、に基づいて、蓄電池4の蓄電量が蓄電量下限値を下回らない範囲で、電気料金が最小になるように、かつ、デマンドレスポンスの報酬が最大になるように、充放電計画を作成するようにしてもよい。
【0108】
図16は、第4の実施形態にかかるデマンドレスポンスについて説明するための図である。
図16において、横軸は24時間分の時刻t、縦軸は受電電力量、需要電力量(kWh)を示す。
図16の棒グラフは、需要家3ごとの受電電力量を積み上げた値を示す。また、
図16の折れ線グラフは、需要家3ごとの需要電力量(ベースライン電力)を積み上げた値(需要家Aだけが線L21。需要家A、Bの合計が線L22。需要家A、B、Cの合計が線L23)を示す。
【0109】
DRアグリゲータ2がデマンドレスポンスによって受電電力量の削減を行う可能性のある所定の時間帯をDR可能時間帯90と称し、実際に受電電力量の削減を行う所定の時間帯をDR発動時間帯91と称する。また、デマンドレスポンスによって受電電力量の削減を継続する時間、すなわち、DR発動時間帯の継続時間をDR継続時間(ΔTDR)、予め決められた削減量をDR量という。また、本実施形態のベースライン電力は、各需要家3の予想される需要電力量である。ベースライン電力は、デマンドレスポンスによって受電電力の削減が行われていない場合における各需要家3の受電電力量でもある。
【0110】
DR発動時間帯91はDR可能時間帯90に含まれる。また、DR可能時間帯90は、系統運用者6とDRアグリゲータ2との間で事前に結ばれた契約等によってあらかじめ定められているが、DR発動時間帯91やDR継続時間は、DRが発動される直前に、系統運用者6からDRアグリゲータ2への要請等により決定される。
【0111】
本実施形態のDRアグリゲータ2は、デマンドレスポンスだけではなく、各需要家3ごとの受電電力量のピークカットをする。具体的には、DRアグリゲータ2は、各需要家3の蓄電池4を制御することによって、各需要家3ごとの受電電力量の最大値を、予め定められたピークカットの目標値以下にする。
【0112】
DRアグリゲータ2は、蓄電池管理装置10によって蓄電池4の充電または放電のスケジュール(充放電計画)を作成し、当該充放電計画に従って蓄電池4の充放電を制御する。
【0113】
本実施形態の作成部19は、DR可能時間帯90のいずれかの時刻において、DR継続時間の間、1以上の需要家3の受電電力量の合計値を予測された需要電力量(ベースライン電力)の合計値よりもDR量以上削減可能とするとともに、予測された需要家3ごとの需要電力量に基づいて需要家3ごとの時間単位ごとの受電電力量がピークカットの目標値以下となるように、蓄電池4の時間単位ごとの充電電力量および放電電力量を規定する第1の充放電計画を作成する。第1の充放電計画は、デマンドレスポンスを行わない場合における蓄電池4の充放電計画である。
【0114】
また、作成部19は、DRアグリゲータ2が系統運用者6からデマンドレスポンスの発動要請を受けると、DR発動時間帯91においてデマンドレスポンスを行う場合のDR発動時間帯91以降の蓄電池4の時間単位ごとの充電電力量および放電電力量を規定する充放電計画を、第2の充放電計画として作成する。
【0115】
また、作成部19は、デマンドレスポンスを行う前日において、DR発動時間帯を想定して、デマンドレスポンス発動時の蓄電池4の時間単位ごとの充電電力量および放電電力量を規定する充放電計画を、第2の充放電計画として作成してもよい。
【0116】
制御部16は、作成部19によって作成された第1の充放電計画または第2の充放電計画に従って、各蓄電池4の充放電を制御する。
【0117】
(作用)
図17は、第4の本実施形態にかかる蓄電池管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。S1~S4については、
図8のS1~S4と同様である。
【0118】
S4の後、作成部19は、予測部17によって予測された需要電力量と、需要家3それぞれの蓄電池4に関するデータとに基づいて、翌日の第1の充放電計画を作成する(S8)。より詳細には、作成部19は、式(34)~(40)に示される制約条件下で、式(33)の目的関数を最小化する最適化モデル(最適化問題)の最適解を算出することによって、各需要家3の蓄電池4の時間単位ごとの充放電電力量を求める。式(33)~(40)の最適化問題は、線形計画問題と呼ばれる問題である。作成部19は、例えば、単体法や内点法等の手法によって(33)の目的関数を最小化する最適解を算出する。
【0119】
【0120】
ここで、パラメータは、以下の通りである。
【数16】
【0121】
式(33)は、計画対象期間における全需要家3の従量電気料金の合計値を最小化する目的関数である。dは需要家3を示す。Dは、DRアグリゲータ2が管理する全需要家3の数を示す。
【0122】
作成部19は、式(34)~(40)を満たした上で、全需要家3の従量電気料金の合計値がより少なくなる変数Pr(d,t)、Sb(d,t)、Pbc(d,t)、Pbd(d,t)の値を求める。この最適化モデルによって作成部19が算出するPbc(d,t)とPbd(d,t)の値が、第1の充放電計画となる。ここで、各需要家3は、蓄電池4を1つずつ設置しているものとし、dは需要家3とともに蓄電池4を示す。
【0123】
DRは、DR量、つまり、系統運用者6とDRアグリゲータ2との間の契約で予め決められた全需要家3の受電電力量の削減量(kWh)を示す。SBCP(d,t)は、S3で算出された、各需要家3に設置された蓄電池4ごとのBCP容量である。
【0124】
ここで、式(39)は、需要家3に設置された蓄電池4ごとのBCPの制約条件である。式(39)は、各蓄電池4の蓄電残量が、BCP容量以上であることを規定するとともに、蓄電残量の最大値が蓄電池容量を超えないことを規定する。そして、このBCP容量として、S3で算出された最適なBCP容量を用いることで、DR効果の拡大を狙っている。
【0125】
また、式(40)は、DRアグリゲータ2が、DR可能時間帯において、全需要家3の受電電力の合計値を、需要予測値の合計からDR量だけ削減するために、時刻tの開始時点において蓄電池が持つべき余力Sb(d,t-1)-SBCP(d,t-1)が、DR発動時間帯以降のピークカットを加味してDR量以上なければならないという制約式である。
【0126】
ここで、本実施形態における蓄電池4の余力電力量について、
図18を用いて説明する。
図18は、第4の実施形態にかかる蓄電池の余力を説明するための図である。
図18に示すように、蓄電池の余力は、時刻tの開始時点における蓄電池の充電残量からBCP容量を引いたものであり、放電可能な充電残量である。
【0127】
より具体的には、以下の通りである。
図18において、横軸は時刻t、縦軸は蓄電池4の蓄電残量(kWh)を示す。蓄電池4の蓄電残量は、蓄電池4の定格容量W(d)以下となる。
図18に示すように、時刻t-1の終了時における蓄電池4の余力電力量は、時刻t-1の終了時における蓄電残量S(d,t-1)からBCP容量(S
BCP(d))を除いた電力量である。また、需要家3が蓄電池4をBCPのために利用しない場合は、BCP容量S
BCP(d)は“0”となるため、蓄電池4の蓄電残量の全てが余力電力量となる。
【0128】
図19は、
図19は、第4の実施形態にかかる蓄電池の余力が満たすべき条件(式(40))を説明するための図である。式(40)の右辺第1項はDR量であり、第2項はピークカットに必要な蓄電池の放電電力量を表す。ピークカットに必要な蓄電池の放電電力量は、需要予測電力量が、ピークカット電力量を超過する場合に必要であるが、超過しない場合は逆に不足分を蓄電池に充電することができるため、充放電効率を考慮して必要量から減算する必要がある。これをDR発動時間帯以降の各時刻までのそれぞれに対して制約式として考慮する。式(40)は、異常がDR可能時間帯のすべての時刻において成り立つことを規定する。
【0129】
図20は、第4の実施形態にかかる第1の充放電計画の一例を示すグラフである。
図20は、翌々日にもデマンドレスポンスが発動されることを想定した第1の充放電計画を示す。
図20の横軸は24時間分の時刻t、縦軸は受電電力量または需要電力量(kWh/30min)を示す。
図20(a)の棒グラフは、需要家3ごとの受電電力量を積み上げた値を示す。また、
図20(a)の折れ線グラフは、需要家3ごとの需要電力量(ベースライン電力)を積み上げた値を示す。また、
図20(b)の棒グラフは、需要家3の蓄電池4ごとの充放電電力量を積み上げた値を示す。
図20(b)の棒グラフの正の数は放電、負の数は充電を示す。
図20(b)の折れ線グラフは、需要家3の蓄電池4ごとの蓄電容量を積み上げた値を示す。
【0130】
本実施形態では、DR可能時間帯90におけるDR量は、全需要家3の合計で6kWh+6kWh=12kWhであるとする。
図20に示す第1の充放電計画では、各蓄電池4は、DR可能時間帯90の開始前に、必要な余力、すなわち、DR量とピークカットに必要な電力量を確保するように充電する。これにより、DR可能時間帯90の任意の時間にDRが発動されてもDR量が確保できる。また、DR可能時間帯90のいずれの時間にDR量分の電力削減を行っても、各蓄電池4の蓄電残量はBCP容量以上であるとする。つまり、第1の充放電計画では、各蓄電池4は、BCP容量を確保した上で、余力分の蓄電残量を用いて、DR可能時間帯90に、受電電力量をDR量分減少させるための放電をすることが可能である。
【0131】
また、第1の充放電計画では、各蓄電池4の充放電によって、需要家3全体に対してデマンドレスポンスを行うだけではなく、需要家3ごとの受電電力量のピークカットを行う。
図21は、本実施形態にかかる第1の充放電計画から、1つの需要家3に関するデータを抽出したグラフである。
図21に示すように、当該需要家3に設置された蓄電池4は、需要電力量がピークカット目標値を超えることが予測される時間帯に放電をすることにより、受電電力量をピークカット目標値以下にする。
【0132】
DR可能時間帯90は全需要家3に共通して同じ時間帯であるが、各需要家3の需要電力量がピークカット目標値を超えることが予測される時間帯はそれぞれの需要家3によって異なる。このため、DR可能時間帯90と各需要家3の需要電力量がピークカット目標値を超えることが予測される時間帯とは、一致するとは限らない。作成部19は、需要家3ごとの需要電力量の予測値に基づいて第1の充放電計画を作成するため、各需要家3の需要電力量が増加する時間帯に合わせて各蓄電池4の放電をしてピークカットをする計画を作成することができる。
【0133】
図17のS8の後、作成部19は、作成した第1の充放電計画を、記憶部12に保存する。次に、表示制御部14は、第1の充放電計画を表示装置に表示する(S9)。これにより、DRアグリゲータ2の担当者等(ユーザ)は、第1の充放電計画を表示装置上で確認することができる。
【0134】
次に、制御部16は、作成された第1の充放電計画に従って、各蓄電池4の充放電を制御することによって、第1の充放電計画を実行する(S10)。
【0135】
DRアグリゲータ2が系統運用者6からDR要請を受けない場合(S11でNo)は終了する。DRアグリゲータ2がDR要請を受けると(S11でNo)、作成部19は、予測部17によって予測された需要電力量と、需要家3それぞれの蓄電池4に関する情報と、S8の処理で求めた変数の値とに基づいて、第2の充放電計画を作成する(S12)。より詳細には、作成部19は、DR発動時間帯以降の時刻において、上述の式(34)~(40)に示される制約条件に加えて、式(41)~(42)の制約条件を満たした上で、式(33)の目的関数を最小化する最適化モデルの最適解を算出することによって、各需要家3の蓄電池4の時間単位ごとの充放電電力量を求める。
【0136】
【0137】
式(41)は、DRアグリゲータ2がDR発動時間帯91において、全需要家3の受電電力量の合計値が、ベースライン電力からDR量を減算した値以下であるという制約条件である。
【0138】
作成部19は、式(42)の入力パラメータSb´(d,t)に、S8の処理で求めた第1の充放電計画の変数S(d,t)の値を入力する。
【0139】
式(42)は、DR発動時間帯91前の時刻においては、第2の充放電計画の各蓄電池4の時刻tDR開始時の蓄電残量は、第1の充放電計画の各蓄電池4の時刻tDR開始時の蓄電残量と等しいという制約条件である。
【0140】
本実施形態においては、DRアグリゲータ2がデマンドレスポンスを行うか否かは、当日DRが発動される直前まで不明である。このため、作成部19は、DR発動時間帯91よりも前の時刻においては、第1の充放電計画によりデマンドレスポンスを行うことが可能な量の各蓄電池4の蓄電残量を確保しておき、実際にDRが発動された場合には、式(41)~(42)の制約条件を満たす第2の充放電計画を作成する。
【0141】
また、作成部19は、デマンドレスポンスを行う前日において、DR発動時間帯を想定して、デマンドレスポンス発動時の蓄電池4の時間単位ごとの充電電力量および放電電力量を規定する充放電計画を、第2の充放電計画として作成してもよい。
【0142】
図22は、本実施形態にかかる第2の充放電計画の一例を示すグラフである。第2の充放電計画は、DR発動時間帯91の開始前までは、
図20に示した第1の充放電計画と同様である。第2の充放電計画では、DR発動時間帯91に、需要家3の蓄電池4が放電することによって、受電電力量がベースライン電力よりDR量分減少している。また、DR発動時間帯91にDR量分の電力削減を行っても、各蓄電池4の充電残量はBCP容量以上である。つまり、第2の充放電計画では、各蓄電池4は、BCP容量を確保した上で、余力分の充電残量を用いて、DR発動時間帯91に、受電電力をDR量分減少させるための放電をする。
【0143】
また、第2の充放電計画では、各蓄電池4の充放電によって、需要家3全体に対してデマンドレスポンスを行うだけではなく、需要家3ごとの受電電力量のピークカットを行う。
図23は、本実施形態にかかる第1の充放電計画から、1つの需要家3に関するデータを抽出したグラフである。
図23に示すように、当該需要家3に設置された蓄電池4は、需要電力量がピークカット目標値を超えることが予測される時間帯に放電をすることにより、受電電力量をピークカット目標値以下にすることが出来ている。
【0144】
図17のS12の後、作成部19は、作成した第2の充放電計画を、記憶部12に保存する。次に、表示制御部14は、第2の充放電計画を表示装置に表示する(S13)。これにより、DRアグリゲータ2の担当者等(ユーザ)は、第2の充放電計画を表示装置上で確認することができる。
【0145】
次に、制御部16は、作成された第2の充放電計画に従って、各蓄電池4の充放電を制御することによって、第2の充放電計画を実行する(S14)。ここで、このフローチャートの処理は終了する。
【0146】
(効果)
このように、第4の実施形態の蓄電池管理装置10によれば、翌日の太陽光発電量の予測と、非常時負荷の想定値に基づき、BCP対応のために確保する蓄電池容量を最適化することにより、平常時に充放電する蓄電池の運用範囲を拡大することができ、複数の需要家に対するデマンドレスポンスの制約を満たしながら、ピークカット等のサービスの範囲を拡大することができる。
【0147】
本実施形態の蓄電池管理装置10で実行される蓄電池管理プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。また、当該蓄電池管理プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、当該蓄電池管理プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、当該蓄電池管理プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0148】
当該蓄電池管理プログラムは、上述した各部(入力部、取得部、表示制御部、演算部、予測部、BCP容量最適化部、作成部、制御部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体から蓄電池管理プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ各部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0150】
例えば、上述の実施形態では、説明を簡潔にするために、需要家3のそれぞれが蓄電池4を備えるものとしたが、これに限定されない。例えば、需要家3が1つの場合や、複数の需要家3が1つの蓄電池4を共有する場合などの別のケースについても、同様に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0151】
2 DRアグリゲータ
3 需要家
4 蓄電池
5 電力系統
6 系統運用者
9 太陽光発電装置(PV)
10 蓄電池管理装置
11 入力部
12 記憶部
13 取得部
14 表示制御部
16 制御部
17 予測部
18 BCP容量最適化部
19 作成部
90 DR可能時間帯
91 DR発動時間帯