IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナブテスコ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-減速機 図1
  • 特許-減速機 図2
  • 特許-減速機 図3
  • 特許-減速機 図4
  • 特許-減速機 図5
  • 特許-減速機 図6
  • 特許-減速機 図7
  • 特許-減速機 図8
  • 特許-減速機 図9
  • 特許-減速機 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】減速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20240227BHJP
   F16H 57/08 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
F16H1/32 A
F16H57/08
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020112889
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2021134915
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2020031514
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】江藤 太一
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-014239(JP,A)
【文献】特開2015-175273(JP,A)
【文献】特開2017-141963(JP,A)
【文献】特開2000-177301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16H 57/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに対して回転自在に保持され第1部材と第2部材とからなるキャリアと、 前記第1部材に対して前記第2部材を固定する支柱ボルトと、
を備え、
周方向で前記支柱ボルトの配置に対応する前記ケースの外周部には、周方向部分よりも前記第1部材に前記第2部材を固定する前の状態で外周径が小さい変形吸収部が形成される
ことを特徴とする減速機。
【請求項2】
前記変形吸収部が、前記支柱ボルトにより前記第1部材と前記第2部材とを組み立てた際に、拡径する方向に膨張する
ことを特徴とする請求項1記載の減速機。
【請求項3】
前記変形吸収部が、軸方向視して前記ケースの外周の接線と平行な平坦面形状を有することを特徴とする請求項1または2記載の減速機。
【請求項4】
前記変形吸収部が、軸方向視した前記ケースの外周の接線と平行であり、前記ケースの端面から軸方向に離間するに従って回転軸線から外径が大きくなる平坦面形状を有することを特徴とする請求項1または2記載の減速機。
【請求項5】
前記変形吸収部が、前記ケースの外周に形成された切欠である
ことを特徴とする請求項1または2記載の減速機。
【請求項6】
前記支柱ボルトで前記第1部材と前記第2部材とを組み立てた際に、前記変形吸収部が拡径して、前記ケースの外周形が円状となる
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の減速機。
【請求項7】
前記変形吸収部が、軸方向において前記ケースの端面から前記キャリアを支持する軸受部まで形成される
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか記載の減速機。
【請求項8】
前記変形吸収部が、軸方向において前記ケースの端面から前記ケースの外周に設けられるフランジ部まで形成される
ことを特徴とする請求項7記載の減速機。
【請求項9】
前記変形吸収部が、前記キャリアの回転中心から前記支柱ボルトのボルトヘッドによって隠れる周方向の領域に形成される
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか記載の減速機。
【請求項10】
前記変形吸収部と前記支柱ボルトとが周方向で対応する位置として前記キャリアの回転位置を示すマークが設けられる
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか記載の減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
減速機は、特許文献1に記載されるように、ケーシングと、キャリヤとを有するものが知られている。キャリヤは、ボルトによって、締結される部品を有することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-109264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される構成では、ボルトでの締結において、予圧を付加した際に、キャリヤが膨張して、外形寸法が指定公差よりも大きくなる場合があり、これに起因して真円度の形状の崩れが発生し、ボルト締結付近の形状が突出することにより、減速機の外径が崩れ、減速機そのものの取り付けに支障を来す場合があった。
【0005】
さらに、これを解決しようとして、ボルト締結における厳密な予圧範囲設定をおこなおうとした場合、作業工程が増大するとともに作業時間が増大する、あるいは、減速機としての設定条件から予圧範囲を所定の値に設定できない場合がある、という問題があった。
【0006】
本発明は、ボルト締結に起因する外径の形状の崩れを防止可能な減速機を提供可能とするという目的を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る減速機は、ケースと、
前記ケースに対して回転自在に保持され第1部材と第2部材とからなるキャリアと、
前記第1部材と前記第2部材とを組み立てる支柱ボルトと、
を備え、
周方向で前記支柱ボルトの配置に対応する前記ケースの外周部には、周方向部分よりも前記第1部材に前記第2部材を固定する前の状態で外周径が小さい変形吸収部が形成される
ことにより上記課題を解決した。
【0008】
本発明の一態様に係る減速機によれば、支柱ボルトによって第1部材と第2部材とが締結された際に、キャリアの支柱ボルトに対応する周方向位置が径方向に膨張する。この膨張は、そのままでは、キャリアからケースへと伝達され、ケース外形は、その外径が拡大するように変形する。このため、ケース外形が崩れてしまい、減速機を嵌め込む際に、減速機の外形に対応した嵌め込み部よりも径寸法の大きな部分を挿入することができなくなる。
しかし、本発明では、変形吸収部を設けることで、このケースの変形を吸収して、ケース外形を維持する。これにより、減速機を嵌め込む際に、嵌め込み部に対してケースを容易に挿入することが可能となる。
なお、キャリアの支柱ボルトの締結に起因した径方向への膨張は、支柱ボルトによる予圧によって変化する。本発明では、径方向の膨張を変形吸収部によって吸収することができるため、予圧の設定を任意におこなうことが可能となる。
【0009】
前記変形吸収部が、前記支柱ボルトで前記第1部材と前記第2部材とを組み立てた際に、拡径する方向に膨張することができる。
【0010】
前記変形吸収部が、軸方向視して前記ケースの外周の接線と平行な平坦面形状を有することができる。
【0011】
前記変形吸収部が、軸方向視した前記ケースの外周の接線と平行であり、前記ケースの端面から軸方向に離間するに従って回転軸線から外径が大きくなる平坦面形状を有することができる。
【0012】
前記変形吸収部が、前記ケースの外周に形成された切欠であることができる。
【0013】
前記支柱ボルトで前記第1部材と前記第2部材とを組み立てた際に、前記変形吸収部が拡径して、前記ケースの外周形が円状となることができる。
【0014】
前記変形吸収部が、軸方向において前記ケースの端面から前記キャリアを支持する軸受部まで形成されることができる。
【0015】
前記変形吸収部が、軸方向において前記ケースの端面から前記ケースの外周に設けられるフランジ部まで形成されることができる。
【0016】
前記変形吸収部が、前記キャリアの回転中心から前記支柱ボルトのボルトヘッドによって隠れる周方向の領域に形成されることができる。
【0017】
前記変形吸収部と前記支柱ボルトとが周方向で対応する位置として前記キャリアの回転位置を示すマークが設けられることができる。
【0018】
本発明の一態様に係る減速機は、ケースと、
前記ケースに対して回転自在に保持され第1部材と第2部材とからなるキャリアと、
前記第1部材と前記第2部材とを組み立てる支柱ボルトと、
を備え、
周方向で前記支柱ボルトの配置に対応する前記キャリアの外周部には、これ以外の周方向部分よりも小外周径とした変形吸収部が形成される
ことにより上記課題を解決した。
【0019】
本発明の一態様に係る減速機によれば、支柱ボルトによって第1部材と第2部材とが締結された際に、キャリアの支柱ボルトに対応する周方向位置が径方向に膨張する。この膨張は、そのままでは、キャリアからケースへと伝達され、ケース外形は、その外径が拡大するように変形する。このため、ケース外形が崩れてしまい、減速機を嵌め込む際に、減速機の外形に対応した嵌め込み部よりも径寸法の大きな部分を挿入することができなくなる。
しかし、本発明では、変形吸収部を設けることで、このキャリアの変形を吸収して、キャリア外形を維持する。これにより、ケース外形が膨張することがなく、減速機を嵌め込む際に、嵌め込み部に対してケースを容易に挿入することが可能となる。
なお、キャリアの支柱ボルトの締結に起因した径方向への膨張は、支柱ボルトによる予圧によって変化する。本発明では、径方向の膨張を変形吸収部によって吸収することができるため、予圧の設定を任意におこなうことが可能となる。
【0020】
前記変形吸収部が、前記支柱ボルトで前記第1部材と前記第2部材とを組み立てた際に、拡径する方向に膨張することができる。
【0021】
前記変形吸収部が、軸方向視して前記キャリアの外周の接線と平行な平坦面形状を有することができる。
【0022】
前記変形吸収部が、軸方向視した前記キャリアの外周の接線と平行であり、前記キャリアの端面から軸方向に離間するに従って回転軸線から外径が大きくなる平坦面形状を有することができる。
【0023】
前記変形吸収部が、前記キャリアの外周に形成された切欠であることができる。
【0024】
前記支柱ボルトで前記第1部材と前記第2部材とを組み立てた際に、前記変形吸収部が拡径して、前記キャリアの外周形が円状となることができる。
【0025】
前記変形吸収部が、軸方向において前記キャリアと前記ケースとを支持する軸受部に対応する領域に形成される
ことができる。
【0026】
前記変形吸収部が、前記キャリアの回転中心から前記支柱ボルトのボルトヘッドによって隠れる周方向の領域に形成される
ことができる。
【0027】
本発明の一態様に係る減速機は、
ケースと、
前記ケースに対して回転自在に保持され第1部材と第2部材とからなるキャリアと、
前記第1部材と前記第2部材とを組み立てる支柱ボルトと、
前記ケースの端部側が嵌め込まれて取り付けられる嵌め込み部と、
を備え、
周方向で前記支柱ボルトの配置に対応する前記ケースの径方向外側となる前記嵌め込み部の内周位置には、これ以外の周方向部分よりも小外周径とした変形吸収部が形成される
ことにより上記課題を解決した。
【0028】
本発明の一態様に係る減速機によれば、支柱ボルトによって第1部材と第2部材とが締結された際に、キャリアの支柱ボルトに対応する周方向位置が径方向に膨張する。この膨張は、そのままでは、キャリアからケースへと伝達され、ケース外形は、その外径が拡大するように変形する。このため、ケース外形が真円状から崩れてしまい、減速機を嵌め込む際に、減速機の外形に対応した嵌め込み部よりも径寸法の大きな部分を挿入することができなくなる。
しかし、本発明では、変形吸収部を設けることで、このキャリアの変形を吸収して、キャリア外形を維持する。これにより、ケース外形が膨張することがなく、減速機を嵌め込む際に、嵌め込み部に対してケースを容易に挿入することが可能となる。
なお、キャリアの支柱ボルトの締結に起因した径方向への膨張は、支柱ボルトによる予圧によって変化する。本発明では、径方向の膨張を変形吸収部によって吸収することができるため、予圧の設定を任意におこなうことが可能となる。
【0029】
前記変形吸収部が、前記支柱ボルトで前記第1部材と前記第2部材とを組み立てた際に、拡径する方向に膨張することができる。
【0030】
前記変形吸収部が、軸方向視して前記ケースの外周の接線と平行な平坦面形状を有することができる。
【0031】
前記変形吸収部が、軸方向視した前記ケースの外周の接線と平行であり、前記ケースの端面に向かって回転軸線からの内径が大きくなる平坦面形状を有することができる。
【0032】
前記変形吸収部が、前記嵌合部の内周に形成された切欠であることができる。
【0033】
前記変形吸収部が、軸方向において前記キャリアと前記ケースとを支持する軸受部に対応する領域に形成されることができる。
【0034】
前記変形吸収部が、前記キャリアの回転中心から前記支柱ボルトのボルトヘッドによって隠れる周方向の領域に形成されることができる。
【0035】
前記変形吸収部と前記支柱ボルトとが周方向で対応する位置として前記キャリアの回転位置を示すマークが設けられることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、支柱ボルトの締結によって発生する膨張に起因する外径変化を吸収して、嵌め込み部に容易に嵌め込むことが可能になる減速機を提供することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明に係る減速機の第1実施形態を示す軸方向に沿った断面図である。
図2】本発明に係る減速機の第1実施形態における軸方向に見た端面図である。
図3】本発明に係る減速機の第1実施形態における変形吸収部を示す軸方向に沿った拡大断面図である。
図4】本発明に係る減速機の第2実施形態における変形吸収部を示す軸方向に見た端面図である。
図5】本発明に係る減速機の第2実施形態における変形吸収部を示す軸方向に沿った拡大断面図である。
図6】本発明に係る減速機の第3実施形態における変形吸収部を示す軸方向に沿った拡大断面図である。
図7】本発明に係る減速機の第4実施形態における変形吸収部を示す軸方向に見た端面図である。
図8】本発明に係る減速機の第4実施形態における変形吸収部を示す軸方向に沿った拡大断面図である。
図9】本発明に係る減速機の第5実施形態における変形吸収部を示す軸方向に沿った拡大断面図である。
図10】本発明に係る減速機の第6実施形態における変形吸収部を示す軸方向に沿った拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係る減速機の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における減速機を示す軸方向に沿った断面図であり、図2は、本実施形態における減速機を示す軸方向に見た端面図であり、図3は、本実施形態における減速機の変形吸収部を示す軸方向に沿った拡大断面図であり、図において、符号100は、減速機である。
【0039】
本実施形態に係る減速機100は、図1図3に示すように、筐体筒200と、歯車部(外歯部材)300と、3つのクランク組立体400と、を備える。筐体筒200は、歯車部300と、3つのクランク組立体400と、を収容する。
本実施形態において、減速機100は、偏心揺動減速機とされる。
【0040】
筐体筒200は、ケース(外筒部)210と、キャリア部(キャリア)220と、2つの主軸受230と、を含む。キャリア部220は、ケース(外筒部)210内に配置される。2つの主軸受230は、ケース(外筒部)210とキャリア部220との間に配置される。2つの主軸受230は、ケース(外筒部)210と、キャリア部220と、の間の相対的な回転運動を可能にする。本実施形態における減速機100の出力部は、ケース(外筒部)210およびキャリア部220のうち一方によって例示される。
【0041】
図1には、2つの主軸受230の回転中心軸として規定される減速機100の中心軸(主軸)F0を示す。ケース(外筒部)210が固定されている場合には、キャリア部220が、主軸F0周りに回転する。キャリア部220が固定されている場合には、ケース(外筒部)210が、主軸F0周りに回転する。すなわち、ケース(外筒部)210およびキャリア部220のうち一方は、ケース(外筒部)210およびキャリア部220のうち他方に対して、主軸F0周りに相対的に回転することができる。
本実施形態において、2つの主軸受230の回転中心軸として減速機100の中心軸(主軸)F0に沿った方向を軸方向という。
【0042】
円筒状であるケース(外筒部)210の外周には、フランジ部(取付フランジ)215が周設されている。フランジ部215の周縁には、取付穴216が互いに間隔を有して複数形成されている。フランジ部215は、たとえば、インローとして減速機100を嵌め込み部800(図3参照)に取り付ける際に用いられる。
【0043】
ケース(外筒部)210は、外筒211と、複数の内歯ピン(内歯)212と、を含む。外筒211は、キャリア部220、歯車部300およびクランク組立体400が収容される円筒状の内部空間を規定する。各内歯ピン212は、主軸F0に略平行に延びる円柱状の部材である。各内歯ピン212は、外筒211の内壁に形成された溝部に嵌入される。したがって、各内歯ピン212は、外筒211によって適切に保持される。
【0044】
複数の内歯ピン212は、主軸F0周りに略一定間隔で配置される。各内歯ピン212の半周面は、外筒211の内壁から主軸F0に向けて突出する。したがって、複数の内歯ピン212は、歯車部300と噛み合う内歯として機能する。
【0045】
キャリア部220は、基部(第1部材)221と、端板部(第2部材)222と、位置決めピン223と、支柱ボルト(固定ボルト)224と、を含む。キャリア部220は、全体的に、円筒形状をなす。キャリア部220には、主軸F0と同心となる貫通孔229が形成される。
【0046】
基部(第1部材)221は、基板部225と、3つのシャフト部226と、を含む。3つのシャフト部226それぞれは、基板部225から端板部(第2部材)222に向けて延びる。3つのシャフト部226それぞれの先端面には、ネジ孔227およびリーマ孔228が形成される。位置決めピン223は、リーマ孔228へ挿入される。この結果、端板部(第2部材)222は、基部(第1部材)221に対して精度よく位置決めされる。
【0047】
支柱ボルト224は、ネジ孔227に締結される。この結果、端板部(第2部材)222は、基部(第1部材)221に適切に固定される。
支柱ボルト224による基部(第1部材)221と端板部(第2部材)222との固定は、所定の予圧となるように設定される。端板部(第2部材)222はホールドと称される。
【0048】
歯車部300は、基板部225と端板部(第2部材)222との間に配置される。3つのシャフト部226は、歯車部300を貫通し、端板部(第2部材)222に接続される。
【0049】
歯車部300は、2つの歯車310,320を含む。歯車310は、基板部225と歯車320との間に配置される。歯車320は、端板部(第2部材)222と歯車310との間に配置される。
【0050】
歯車310は、形状および大きさにおいて、歯車320と略等しい。歯車310,320は、内歯ピン212に噛み合いながら、外筒211内を周回移動する。したがって、歯車310,320の中心は、主軸F0周りを周回することとなる。
【0051】
歯車310の周回位相は、歯車320の周回位相から略180°ずれている。歯車310は、ケース(外筒部)210の複数の内歯ピン212のうち半数に噛み合う間、歯車320は、複数の内歯ピン212のうち残りの半数に噛み合う。したがって、歯車部300は、ケース(外筒部)210またはキャリア部220を回転させることができる。
【0052】
本実施形態において、歯車部300は、2つの歯車310,320を含む。あるいは、歯車部として、2を超える数の歯車を用いてもよい。更に代替的に、歯車部として、1つの歯車を用いてもよい。
【0053】
3つのクランク組立体400それぞれは、クランク軸410と、4つの軸受421,422,423,424と、伝達歯車(外歯)430と、を含む。伝達歯車430は、一般的なスパーギアであってもよい。本実施形態の減速機100において、伝達歯車430は特定の種類に限定されない。
【0054】
伝達歯車430は、駆動源(例えば、モータ)が発生させた駆動力を直接的または間接的に受ける。減速機100は、その使用環境や使用条件に応じて駆動源から伝達歯車430までの駆動力の伝達経路を適宜設定することができる。したがって、本実施形態は、駆動源から伝達歯車430までの特定の駆動伝達経路に限定されない。
【0055】
図1には、クランク軸線(伝達軸)F2を示す。伝達軸F2は、主軸F0に対して略平行である。クランク軸410は、伝達軸F2周りに回転する。
クランク軸410は、2つのジャーナル(クランクジャーナル)411,412と、2つの偏心部(偏心体)413,414と、を含む。ジャーナル411,412は、伝達軸F2に沿って延びる。ジャーナル411,412の中心軸は、伝達軸F2に一致する。偏心部413,414は、ジャーナル411,412間に形成される。偏心部413,414それぞれは、伝達軸F2から偏心している。
【0056】
ジャーナル411は、軸受421に挿入される。軸受421は、ジャーナル411と端板部(第2部材)222との間に配置される。したがって、ジャーナル411は、端板部(第2部材)222と軸受421とによって支持される。ジャーナル412は、軸受422に挿入される。軸受422は、ジャーナル412と基部(第1部材)221との間に配置される。したがって、ジャーナル412は、基部(第1部材)221と軸受422とによって支持される。
本実施形態において、軸受421は、ニードル軸受とされ、複数のコロ431がジャーナル411の周囲に配置される。軸受422は、ニードル軸受とされ、複数のコロ432がジャーナル412の周囲に配置される。
【0057】
偏心部413は、軸受423に挿入される。軸受423は、偏心部413と歯車310との間に配置される。偏心部414は、軸受424に挿入される。軸受424は、偏心部414と歯車320との間に配置される。
本実施形態において、軸受423は、ニードル軸受とされ、複数のコロ433が偏心部(偏心体)413の周囲に配置される。軸受424は、ニードル軸受とされ、複数のコロ434が偏心部(偏心体)414の周囲に配置される。
【0058】
伝達歯車430に駆動力が入力されると、クランク軸410は、伝達軸F2周りに回転する。この結果、偏心部413,414は、伝達軸F2周りに偏心回転する。軸受423,424を介して偏心部413,414に接続された歯車310,320は、ケース(外筒部)210によって規定された円形空間内で揺動する。歯車310,320は、内歯ピン212に噛み合うので、ケース(外筒部)210とキャリア部220との間で相対的な回転運動が引き起こされる。
【0059】
本実施形態に係る減速機100において、図1図3に示すように、ケース(外筒部)210の外周部には、これ以外の周方向部分よりも小外周径とした変形吸収部290が形成される。変形吸収部290は、支柱ボルト224の締結による端板部(第2部材)222の拡径を吸収・緩和するための逃げ部として作用する。変形吸収部290は、ケース(外筒部)210の周方向において、支柱ボルト224の配置に対応するケース(外筒部)210の外周領域に形成される。本実施形態において、変形吸収部290は、小径部として形成される。
変形吸収部290の周方向中央位置には、マークMが形成され、キャリア部220にも対応するマークMが2本の支柱ボルト224から等距離となる位置に形成される。
【0060】
ここで、支柱ボルト224の配置に対応する領域とは、図2に示すように、キャリア部(キャリア)220の回転中心である主軸F0から径方向視して、支柱ボルト224のボルトヘッド224aによって隠れる周方向における周領域R29の内側位置に形成される。つまり、主軸F0からボルトヘッド224aに引いた2本の接線を延長した周方向の領域が周領域R29とされる。
【0061】
本実施形態において、2本の支柱ボルト224が一組とされているため、周領域R29は、2本の支柱ボルト224のボルトヘッド224aに引いた接線によって規定されるケース(外筒部)210外周の弧長が最大となるように設定される。
なお、支柱ボルト224の本数はこれに限定されず、1本、あるいは、さらに多くの複数本であることもできる。
【0062】
本実施形態において、変形吸収部290は、図2に示すように、周方向において、周領域R29よりも小さな領域として形成されている。つまり、変形吸収部290は、周方向における長さが、最大で周領域R29となるように形成される。なお、支柱ボルト224をネジ孔227に締結する際に設定される予圧の値や、減速機100のサイズ等によって、変形吸収部290は、周方向における長さが周領域R29よりも小さな所定の値となるように形成されることができる。
【0063】
変形吸収部290は、主軸F0に平行な平面とされる。また、変形吸収部290は、円状とされるケース(外筒部)210の外周に対して、その接線と平行な位置に形成される。
ケース(外筒部)210の外径の円状は真円状に形成してもよい。本明細書において、真円状とは、支柱ボルト224の締結による膨張に起因したケース(外筒部)210の外径が拡大するような変形が吸収された形状を意味する。具体的には、ケース(外筒部)210の外形が、嵌め込み部800に対してケース(外筒部)210を容易に挿入することが可能な程度に、連続して歪みのない円形となっていることを意味する。
ここで、変形吸収部290は、2本の支柱ボルト224から等距離にあるケース(外筒部)210の外周に対して接する接線と平行とされる。
具体的には、変形吸収部290は、ケース(外筒部)210におけるフランジ部215よりも端面210a側となる円筒部210bの外周を平面状に削ったカット面として形成される。
円筒部210bの外周には、その全周にシール溝210cが形成されている。なお、シール溝210cは、ケース(外筒部)210のフランジ部215に形成してもよい。シール溝210cの深さ寸法は、ケース(外筒部)210の径方向における変形吸収部290の寸法よりも大きいことができる。
【0064】
変形吸収部290は、図3に示すように、主軸F0に沿った方向において、端面210aからフランジ部215までの領域に形成される。
図3においては、変形吸収部290の周方向で中央となる位置と主軸F0とを通る断面を示している。この平面状に形成された変形吸収部290は、支柱ボルト224をネジ孔227に締結していない状態でその形状が設定される。
【0065】
本実施形態に係る減速機100においては、端板部(第2部材)222を基部(第1部材)221に固定する際に、支柱ボルト224がネジ孔227に締結される。
この支柱ボルト224による基部(第1部材)221と端板部(第2部材)222との固定は、所定の予圧を持つように支柱ボルト224を締結する。
【0066】
その結果、端板部(第2部材)222が拡径するように膨張する。端板部(第2部材)222の膨張は、支柱ボルト224に対応するキャリア部220の周方向位置、すなわち、周方向で周領域R29の内側で発生する。
具体的には、図2に三点鎖線で示すように、端板部(第2部材)222は、拡径するように膨張する。なお、図2に三点鎖線で示した膨張状態は、わかりやすいように、膨張した寸法を拡大して記載しているとともに、キャリア部220の外周に対して重なるように記載している。真円状からの膨張は、数μmから数10μm程度である。
【0067】
この端板部(第2部材)222の膨張によって、主軸受230を介してケース(外筒部)210が拡径するように押圧される。押圧されたケース(外筒部)210は、その外径が拡大するように変形する。このため、ケース(外筒部)210が真円状から崩れてしまい、減速機100を嵌め込む際に、減速機100の外形に対応した嵌め込み部800よりも径寸法の大きな部分を挿入することができなくなる。
【0068】
しかし、本実施形態では、ケース(外筒部)210の外周の接線と平行な平坦面形状を有する変形吸収部290を形成することで、この締結によるケース(外筒部)210の変形を吸収して、ケース(外筒部)210の外形を真円状に維持することができる。つまり、変形吸収部290が、円筒部210bの径方向厚み寸法が変形吸収部290の周方向中央位置で最も薄くなり、円筒部210bの径方向厚み寸法が変形吸収部290の周方向中央位置から周方向両端位置に向けて増大するように形成されていることで、支柱ボルト224の締結での膨張によるキャリア部220の変形に対応することが可能となる。
【0069】
これにより、本実施形態に係る減速機100においては、端板部(第2部材)222を基部(第1部材)221に固定した場合、変形吸収部290が拡径して、ケース(外筒部)210の外形が真円状となるように変形する。
したがって、ケース(外筒部)210には、真円状である嵌め込み部800よりも径寸法の大きな部分がなく、減速機100を嵌め込む際に、嵌め込み部800に対してケース(外筒部)210を容易に挿入することが可能となる。
【0070】
また、本実施形態において、変形吸収部290は、平面形状に限定されるものではなく、支柱ボルト224の締結での膨張による変形を吸収して、ケース(外筒部)210の外形が真円状とすることが可能であれば、この形状以外でも可能である。例えば、変形吸収部290を、周方向で両端側に比べて中央部分が径方向外側に膨らんだ緩やかな円弧に対応する曲面形状等とすることが可能である。あるいは、大きな予圧に対応するために、変形吸収部290を、周方向で両端側に比べて中央が径方向内側に凹んだ緩やかな円弧に対応する曲面形状等とすることが可能である。
【0071】
また、本実施形態において、変形吸収部290が、主軸F0に沿った方向において、端面210aからフランジ部215までの領域に形成されるが、支柱ボルト224の締結での膨張による変形を吸収して、ケース(外筒部)210を嵌め込み部800に挿入することが可能であれば、この主軸F0方向長さに限定されるものではない。例えば、キャリア部220からケース(外筒部)210へと膨張を伝達する主軸受230を含む主軸F0方向長さに形成されることができる。これにより、嵌め込み部800に対してケース(外筒部)210を容易に挿入することが可能となる。
【0072】
また、本実施形態において、変形吸収部290が、周方向で支柱ボルト224に対応する位置、すなわち、主軸F0から径方向外側向きに見て、変形吸収部290が支柱ボルト224で隠れる領域とされていれば、支柱ボルト224の締結での膨張による変形を吸収して、ケース(外筒部)210を嵌め込み部800に挿入することを可能とすることができる。したがって、変形吸収部290は、周方向において周領域R29の内側に含まれるように形成されていればよい。なお、本実施形態では、周領域R29よりも小さくなるように変形吸収部290を形成したが、変形吸収部290が周領域R29と同じ周方向長さを有していてもよい。
【0073】
本実施形態において、変形吸収部290の周方向中央位置と、キャリア部220の支柱ボルト224から等距離となる外周位置と、に対応するマークMがそれぞれ形成されるが、これにより、支柱ボルト224の締結による膨張するキャリア部220の回転位置を、変形吸収部290の周方向位置に対応するようにできる。これにより、支柱ボルト224の締結によるキャリア部220の膨張変形を変形吸収部290で吸収して、ケース(外筒部)210を嵌め込み部800に挿入することを可能とすることができる。
【0074】
以下、本発明に係る減速機の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図4は、本実施形態における減速機を示す軸方向に見た端面図であり、図5は、本実施形態における減速機の変形吸収部を示す軸方向に沿った拡大断面図であり、本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、変形吸収部に関する点であり、これ以外の上述した第1実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0075】
本実施形態の減速機100では、変形吸収部290が、ケース(外筒部)210の外周に形成された切欠である。
本実施形態においては、図4図5に示すように、円筒部210bが周方向に断続的に形成され、この円筒部210bが除去された部分が変形吸収部290とされる。
本実施形態においても、変形吸収部290は、周領域R29よりも小さな周方向寸法を有する。
また、本実施形態においても、変形吸収部290とされる切欠は、主軸F0に沿った方向において、端面210aからフランジ部215までに形成される。つまり、変形吸収部290とされる切欠は、フランジ部215と面一の底面を有する。
なお、変形吸収部290とされる切欠において、周方向両端位置は、径方向に沿った側面とされている。
【0076】
本実施形態においても、円筒部210bに形成された切欠である変形吸収部290を形成することで、この締結によるケース(外筒部)210の変形を吸収して、ケース(外筒部)210の外形を真円状に維持することができる。つまり、支柱ボルト224の締結によって生じたキャリア部220の膨張は、切欠である変形吸収部290によって、径方向外側に位置するケース(外筒部)210に接触することがないため、ケース(外筒部)210の外形が真円状から変形してしまうことがない。したがって、支柱ボルト224の締結での膨張によるキャリア部220の変形に対応することが可能となる。
【0077】
これにより、本実施形態に係る減速機100においては、端板部(第2部材)222を基部(第1部材)221に固定した場合でも、ケース(外筒部)210には、真円状である嵌め込み部800よりも径寸法の大きな部分がなく、減速機100を嵌め込む際に、嵌め込み部800に対してケース(外筒部)210を容易に挿入することが可能となる。
【0078】
また、本実施形態において、切欠とされた変形吸収部290が、主軸F0に沿った方向において、端面210aからフランジ部215までの領域に形成されるが、支柱ボルト224の締結での膨張による変形をケース(外筒部)210に伝達せずに、ケース(外筒部)210を嵌め込み部800に挿入することが可能であれば、この主軸F0方向長さに限定されるものではない。例えば、キャリア部220からケース(外筒部)210へと膨張を伝達する主軸受230を含む主軸F0方向長さに形成されることができる。これにより、嵌め込み部800に対してケース(外筒部)210を容易に挿入することが可能となる。
なお、円筒部210bにおいては、剛性の高いフランジ部215付近では、変形量が小さくなるため、この現象を考慮して、主軸F0に沿った方向における変形吸収部290の形成範囲を設定することが好ましい。
【0079】
また、本実施形態において、切欠とされた変形吸収部290が、周方向で支柱ボルト224に対応する位置、すなわち、主軸F0から径方向外側向きに見て、変形吸収部290が支柱ボルト224で隠れる領域とされていれば、支柱ボルト224の締結での膨張による変形がケース(外筒部)210に伝達することを防止して、ケース(外筒部)210を嵌め込み部800に挿入することを可能とすることができる。したがって、変形吸収部290は、周方向において周領域R29の内側に含まれるように形成されていればよい。なお、本実施形態では、周領域R29よりも小さくなるように変形吸収部290を形成したが、変形吸収部290が周領域R29と同じ周方向長さを有していてもよい。
【0080】
本実施形態において、変形吸収部290の周方向中央位置と、キャリア部220の支柱ボルト224から等距離となる外周位置と、に対応するマークMがそれぞれ形成されるが、これにより、支柱ボルト224の締結による膨張するキャリア部220の回転位置を、変形吸収部290の周方向位置に対応するようにできる。これにより、変形吸収部290によって、支柱ボルト224の締結によるキャリア部220の膨張変形がケース(外筒部)210に伝達することを防止して、ケース(外筒部)210を嵌め込み部800に挿入することを可能とすることができる。
【0081】
本実施形態においても、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0082】
以下、本発明に係る減速機の第3実施形態を、図面に基づいて説明する。
図6は、本実施形態における減速機の変形吸収部を示す軸方向に沿った拡大断面図であり、本実施形態において、上述した第1,第2実施形態と異なるのは、変形吸収部に関する点であり、これ以外の上述した第1,第2実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0083】
本実施形態の減速機100では、変形吸収部290が、主軸F0に対して傾斜したテーパ状に形成される。
具体的には、上述した第1実施形態と同様に、変形吸収部290は、主軸F0に沿った方向視したケース(外筒部)210の外周の接線と平行な平面形状を有するが、図6に示すように、端面210aから主軸F0方向に離間するに従って、主軸F0から外径が大きくなる平坦面形状を有する。
【0084】
本実施形態においても、変形吸収部290は、周領域R29よりも小さな周方向寸法を有する。
また、本実施形態においても、変形吸収部290は、主軸F0に沿った方向において、端面210aからフランジ部215までに形成される。
なお、変形吸収部290において、端面210aから主軸F0方向に離間した位置では、フランジ部215の内周と一致している。
【0085】
本実施形態においても、円筒部210bにテーパ状の変形吸収部290を形成することで、支柱ボルト224の締結によるケース(外筒部)210の変形を吸収して、ケース(外筒部)210の外形を真円状に維持することができる。
【0086】
つまり、円筒部210bの径方向厚み寸法が、変形吸収部290の周方向中央位置で最も薄くなり、円筒部210bの径方向厚み寸法が、変形吸収部290の周方向中央位置から周方向両端位置に向けて減少するとともに、主軸F0に沿った方向において、円筒部210bの径方向厚み寸法が、端面210a側で最も薄くなり、円筒部210bの径方向厚み寸法がフランジ部215に向けて減少するように形成されていることで、支柱ボルト224の締結での膨張によるキャリア部220の変形に対応することが可能となる。
【0087】
さらに、支柱ボルト224の締結によって生じたキャリア部220の膨張が想定よりも大きい場合であっても、円筒部210bの径方向厚み寸法が、端面210a側で最も薄くなることで、少なくとも円筒部210bの端面210a側を嵌め込み部800に挿入することが可能となる。これにより、嵌め込み部800に対してケース(外筒部)210を容易に挿入することが可能となる。
【0088】
ケース(外筒部)210においては、剛性の高いフランジ部215付近では小さな膨張量であるのに対し、端面210a付近では大きな膨張量となる。このような主軸F0方向の位置による膨張量の偏在(傾斜)に対して、本実施形態では、変形吸収部290がテーパ状に形成されているため、容易に対応して、嵌め込み部800へのケース(外筒部)210挿入が可能となる。
【0089】
本実施形態においても、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0090】
以下、本発明に係る減速機の第4実施形態を、図面に基づいて説明する。
図7は、本実施形態における減速機を示す軸方向に見た端面図であり、図8は、本実施形態における減速機の変形吸収部を示す軸方向に沿った拡大断面図であり、上述した第1~第3実施形態と異なるのは、変形吸収部に関する点であり、これ以外の上述した第1~第3実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0091】
本実施形態の減速機100では、変形吸収部290が、円筒部210bの内周面に形成される。変形吸収部290は、円筒部210bの径方向厚み寸法が変形吸収部290の周方向中央位置で最も薄くなり、円筒部210bの径方向厚み寸法が変形吸収部290の周方向中央位置から周方向両端位置に向けて増大するように形成されている。
具体的には、上述した第1実施形態と同様に、変形吸収部290は、主軸F0に沿った方向視してケース(外筒部)210の外周の円弧よりも曲率の大きな円弧に沿った曲面として形成される。変形吸収部290は、図8に示すように、主軸F0に平行な曲面となる側面を有する。
【0092】
本実施形態においても、変形吸収部290は、周領域R29よりも小さな周方向寸法を有する。
また、本実施形態においても、変形吸収部290は、主軸F0に沿った方向において、端面210aからフランジ部215までの領域よりも大きく、主軸受230の軸方向寸法と同等の寸法に形成される。つまり、変形吸収部290は、主軸F0に沿った方向において、主軸受230のアウターレース端面と面一の底面を有することができる。
なお、主軸F0方向において、端面210aに近接する部分は、主軸受230に対して接触しない位置では、変形吸収部290を形成しないこともできる。
【0093】
本実施形態においても、円筒部210bの内周面に変形吸収部290を形成することで、
支柱ボルト224による締結に起因したキャリア部(キャリア)220の変形を吸収して、ケース(外筒部)210の外形を真円状に維持することができる。
【0094】
つまり、円筒部210bの径方向厚み寸法が、変形吸収部290の周方向中央位置で最も薄くなり、円筒部210bの径方向厚み寸法が、変形吸収部290の周方向中央位置から周方向両端位置に向けて減少するように形成されていることで、支柱ボルト224の締結での膨張によるキャリア部220の膨張で径方向外側に変形した主軸受230の膨張に対応することが可能となる。
これにより、ケース(外筒部)210の外形が真円状から崩れてしまうことを防止して、嵌め込み部800に対してケース(外筒部)210を容易に挿入することが可能となる。
【0095】
本実施形態においては、膨張がケース(外筒部)210に伝達される主軸受230に対応する部分のみ変形吸収部290を形成することが可能である。
【0096】
なお、本発明に係る変形吸収部290は、上述した第3実施形態のように、テーパ状に形成することもできる。
【0097】
本実施形態においても、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0098】
以下、本発明に係る減速機の第5実施形態を、図面に基づいて説明する。
図9は、本実施形態における減速機の変形吸収部を示す軸方向に沿った拡大断面図であり、本実施形態において、上述した第1~第4実施形態と異なるのは、変形吸収部に関する点であり、これ以外の上述した第1~第4実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0099】
本実施形態に係る減速機100において、図9に示すように、キャリア部(キャリア)220の外周部には、これ以外の周方向部分よりも小外周径とした変形吸収部290が形成される。変形吸収部290は、キャリア部(キャリア)220の周方向において、支柱ボルト224の配置に対応するキャリア部(キャリア)220の外周領域に形成される。
変形吸収部290は、端板部(第2部材)222において主軸受230に対向する外周面に形成される。
【0100】
つまり、端板部(第2部材)222は、その全周において主軸受230のインナーレースに接触するが、変形吸収部290に対応する部分だけ、端板部(第2部材)222が主軸受230のインナーレースに接触しないように、その外周形状が形成される。なお、端板部(第2部材)222が主軸受230のインナーレースに接触しない状態は、キャリア部(キャリア)220を組み立てていない状態におけるものである。
【0101】
本実施形態においても、変形吸収部290は、キャリア部(キャリア)220の回転中心である主軸F0から径方向視して、支柱ボルト224のボルトヘッド224aによって隠れる周方向における周領域R29の内側位置に形成される。つまり、主軸F0からボルトヘッド224aに引いた2本の接線を延長した周方向の領域が周領域R29とされる。
【0102】
本実施形態において、2本の支柱ボルト224が一組とされているため、周領域R29は、2本の支柱ボルト224のボルトヘッド224aに引いた接線によって規定されるケース(外筒部)210外周の弧長が最大となるように設定される。
【0103】
本実施形態においても、変形吸収部290は、周方向において、周領域R29よりも小さな領域として形成されている。つまり、変形吸収部290は、周方向における長さが、最大で周領域R29となるように形成される。なお、支柱ボルト224をネジ孔227に締結する際に設定される予圧の値や、減速機100のサイズ等によって、変形吸収部290は、周方向における長さが周領域R29よりも小さな所定の値となるように形成されることができる。
【0104】
変形吸収部290は、主軸F0に平行な平面とされる。また、変形吸収部290は、真円状とされるキャリア部(キャリア)220の外周に対して、その接線と平行な配置に形成される。ここで、変形吸収部290は、2本の支柱ボルト224から等距離にあるキャリア部(キャリア)220の外周に対して接する接線と平行とされる。
具体的には、変形吸収部290は、端板部(第2部材)222の外周における周領域R29対応する領域を平面状に削ったカット面として形成される。
【0105】
変形吸収部290は、図9に示すように、主軸F0に沿った方向において、主軸受230に接触する領域に形成される。
図9においては、変形吸収部290の周方向の中央位置と主軸F0とを通る断面を示している。この平坦面状に形成された変形吸収部290は、支柱ボルト224をネジ孔227に締結していない状態、つまり、予圧がかかっていない状態でその形状が設定される。
【0106】
本実施形態に係る減速機100においても、端板部(第2部材)222を基部(第1部材)221に固定する際に、支柱ボルト224がネジ孔227に締結される。
この支柱ボルト224による基部(第1部材)221と端板部(第2部材)222との固定は、所定の予圧を持つように支柱ボルト224を締結する。
【0107】
その結果、端板部(第2部材)222が拡径するように膨張する。端板部(第2部材)222の膨張は、支柱ボルト224に対応するキャリア部220の周方向位置、すなわち、周方向で周領域R29の内側で発生する。
しかし、本実施形態では、端板部(第2部材)222に平坦面形状を有する変形吸収部290を形成することで、この締結による端板部(第2部材)222の変形を吸収して、端板部(第2部材)222の外形を真円状に維持することができる。
【0108】
つまり、変形吸収部290の径方向寸法が、変形吸収部290の周方向中央位置で最も大きくなり、変形吸収部290の周方向中央位置から周方向両端位置に向けて減少するように形成されていることで、支柱ボルト224の締結での膨張によるキャリア部220の変形に対応することが可能となる。
【0109】
これにより、本実施形態に係る減速機100においては、端板部(第2部材)222を基部(第1部材)221に固定した場合、変形吸収部290が拡径して、端板部(第2部材)222における主軸受230に対応する外形が真円状となるように変形する。
したがって、支柱ボルト224の締結による膨張が主軸受230を介してケース(外筒部)210には伝達されない。このため、ケース(外筒部)210の外形は真円状から崩れることがなく、真円状である嵌め込み部800よりも径寸法の大きな部分がケース(外筒部)210になく、減速機100を嵌め込む際に、嵌め込み部800に対してケース(外筒部)210を容易に挿入することが可能となる。
【0110】
なお、本実施形態において、変形吸収部290は、平面形状に限定されるものではなく、支柱ボルト224の締結での膨張による変形を吸収して、主軸受230およびケース(外筒部)210の外形が真円状とすることが可能であれば、この形状以外でも可能である。例えば、変形吸収部290を、周方向で両端側に比べて中央部分が径方向外側に膨らんだ緩やかな円弧に対応する曲面形状等とすることが可能である。あるいは、大きな予圧に対応するために、変形吸収部290を、周方向で両端側に比べて中央が径方向内側に凹んだ緩やかな円弧に対応する曲面形状等とすることが可能である。
【0111】
また、本実施形態において、変形吸収部290が、主軸F0に沿った方向において、主軸受230に対応する領域に形成されているが、支柱ボルト224の締結での膨張による変形を吸収して、ケース(外筒部)210を嵌め込み部800に挿入することが可能であれば、この主軸F0方向長さに限定されるものではない。例えば、主軸F0に沿った方向において、主軸受230よりも大きな長さ寸法に形成されることができる。これにより、嵌め込み部800に対してケース(外筒部)210を容易に挿入することが可能となる。
【0112】
また、本実施形態において、変形吸収部290が、周方向で支柱ボルト224に対応する位置、すなわち、主軸F0から径方向外側向きに見て、変形吸収部290が支柱ボルト224で隠れる領域とされていれば、支柱ボルト224の締結での膨張による変形を吸収して、ケース(外筒部)210を嵌め込み部800に挿入することを可能とすることができる。したがって、変形吸収部290は、周方向において周領域R29の内側に含まれるように形成されていればよい。なお、本実施形態では、周領域R29よりも小さくなるように変形吸収部290を形成したが、変形吸収部290が周領域R29と同じ周方向長さを有していてもよい。
【0113】
なお、本発明に係る変形吸収部290は、上述した第3実施形態のように、テーパ状に形成することもできる。
【0114】
本実施形態においても、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0115】
以下、本発明に係る減速機の第6実施形態を、図面に基づいて説明する。
図10は、本実施形態における減速機の変形吸収部を示す軸方向に沿った拡大断面図であり、本実施形態において、上述した第1~第5実施形態と異なるのは、変形吸収部に関する点であり、これ以外の上述した第1~第5実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0116】
本実施形態に係る減速機100において、図10に示すように、嵌め込み部800の内周部には、これ以外の周方向部分よりも大きな内周径とした変形吸収部890が形成される。変形吸収部890は、嵌め込み部800の周方向において、減速機100を嵌め込む際の支柱ボルト224の配置に対応する内周領域に形成される。
【0117】
つまり、嵌め込み部800は、その全内周において円筒部210bの外周に接触するが、変形吸収部890に対応する部分だけ、嵌め込み部800が円筒部210bに接触しないように、その内周形状が形成される。なお、嵌め込み部800が円筒部210bに接触しない状態は、キャリア部(キャリア)220を組み立てていない状態におけるものである。
【0118】
本実施形態においても、変形吸収部890は、減速機100の回転中心である主軸F0から径方向視して、支柱ボルト224のボルトヘッド224aによって隠れる周方向における周領域R29の内側位置に形成される。つまり、主軸F0からボルトヘッド224aに引いた2本の接線を延長した周方向の領域が周領域R29とされる。
【0119】
本実施形態において、2本の支柱ボルト224が一組とされているため、周領域R29は、2本の支柱ボルト224のボルトヘッド224aに引いた接線によって規定されるケース(外筒部)210外周の弧長が最大となるように設定される。
【0120】
本実施形態においても、変形吸収部890は、周方向において、周領域R29よりも小さな領域として形成されている。つまり、変形吸収部890は、周方向における長さが、最大で周領域R29となるように形成される。なお、支柱ボルト224をネジ孔227に締結する際に設定される予圧の値や、減速機100のサイズ等によって、変形吸収部890は、周方向における長さが周領域R29よりも小さな所定の値となるように形成されることができる。
【0121】
変形吸収部290は、嵌め込み部800の内周面が拡径するように形成される。変形吸収部890は、嵌め込み部800の内径寸法が変形吸収部890の周方向中央位置で最も大きくなり、嵌め込み部800の内径寸法が変形吸収部890の周方向中央位置から周方向両端位置に向けて現象するように形成されている。
具体的には、上述した第4実施形態と同様に、変形吸収部890は、主軸F0に沿った方向視してケース(外筒部)210の外周の円弧よりも曲率の大きな円弧に沿った曲面として形成される。変形吸収部890は、主軸F0に沿った方向視して嵌め込み部800の内周の円弧よりも曲率の大きな円弧に沿った曲面として形成される。
【0122】
本実施形態においても、嵌め込み部800の内周面に変形吸収部890を形成することで、支柱ボルト224による締結に起因したケース(外筒部)210の膨張に対応して、嵌め込み部800に対してケース(外筒部)210を容易に挿入することが可能となる。
【0123】
なお、本実施形態においては、嵌め込み部800の内周面に形成された変形吸収部890と、支柱ボルト224との位置から、嵌め込み部800への挿入時におけるキャリア部220の回転位置が目視で解る場合には、少なくともどちらか一方のマークMを設けないこともできる。
【0124】
本実施形態においても、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0125】
なお、本発明において、上述した各実施形態において、個々の構成を任意に組み合わせて他起用することもできる。
【符号の説明】
【0126】
100…減速機
210…ケース(外筒部)
210a…端面
210b…円筒部
215…フランジ部(取付フランジ)
220…キャリア部(キャリア)
221…基部(第1部材)
222…端板部(第2部材)
224…支柱ボルト(固定ボルト)
224a…ボルトヘッド
230…主軸受
290,890…変形吸収部
F0…中心軸(主軸)
M…マーク
R29…周領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10