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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】光走査装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20240227BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G02B26/10 D
G02B26/10 104Z
B41J2/47 101D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020121302
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018293
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 弥史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀礼
(72)【発明者】
【氏名】元山 貴晴
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第16/204267(WO,A1)
【文献】特開2013-041236(JP,A)
【文献】特開2011-090188(JP,A)
【文献】特開2003-285188(JP,A)
【文献】特開2014-103597(JP,A)
【文献】特開2012-042878(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0285238(US,A1)
【文献】特開昭60-233616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B26/00 - 26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1偏光成分を含むビーム光を照射する光源と、
前記ビーム光を被走査体へ向けて、主走査方向に走査しながら反射させるように回転駆動される偏向ミラーと、
前記ビーム光に含まれる前記第1偏光成分を前記偏向ミラーに向けて反射させるとともに、前記第1偏光成分に対して1/2波長の位相差を有する第2偏光成分を透過させる第1偏光部材と、
通過する前記ビーム光に対して1/4波長の位相差を生じさせる第2偏光部材とを備え、
前記第1偏光部材は、該第1偏光部材で反射した前記ビーム光を、前記偏向ミラーによる偏向角の略中央から該偏向ミラーに対して正面入射させるように配置されており、
前記第2偏光部材は、前記第1偏光部材と前記偏向ミラーとの間に配置され、前記第1偏光部材が反射した前記ビーム光の前記第1偏光成分を、前記偏向ミラーの反射前後で2回通過させて前記第2偏光成分に変化させるものであり、
前記偏向ミラーの回転軸は、前記第1偏光部材で反射される直前の前記ビーム光の光軸と平行であり、
前記第1偏光部材に対して前記第2偏光部材および前記偏向ミラーとは反対側において前記第1偏光部材に近接して配置され、第2偏光部材を2回通過した後に前記第1偏光部材を透過する前記ビーム光の中央走査光の光軸が、前記第1偏光部材で反射される直前の前記ビーム光の光軸と平行となるように、前記第1偏光部材を透過した直後の前記ビーム光を反射させる反射ミラーを有していることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光走査装置であって、
前記光源が照射する前記ビーム光に含まれ、前記偏向ミラーによる反射前に前記第1偏光部材を透過する前記第2偏光成分を遮光する遮光部を備えていることを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項に記載の光走査装置であって、
前記第1偏光部材および前記反射ミラーが、三角プリズムの一面に誘電体多層膜を形成し、前記三角プリズムの他の面にミラーコートを形成してなる一体型プリズムとして形成されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
請求項1からの何れか1項に記載の光走査装置であって、
前記第1偏光部材および前記第2偏光部材が、三角プリズムの一面に誘電体多層膜を形成し、前記三角プリズムの他の面に1/4波長板を貼付してなる一体型プリズムとして形成されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項5】
請求項1からの何れか1項に記載の光走査装置であって、
前記偏向ミラーは、MEMSミラーであることを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
請求項1からの何れか1項に記載された光走査装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置およびこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源とポリゴンミラーやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーなどの偏向ミラーとを含む光学系を備え、光源からのビーム光を偏向ミラーに反射させて被走査体を走査する光走査装置が知られている。
【0003】
光走査装置は、偏向ミラーで反射させた後の出射光線を妨げないようにするため、偏向ミラーの正面ではなく側方から斜めにビーム光を入射させる光線レイアウトが採用されることが多い。
【0004】
また、光走査装置は、ビーム光が偏向ミラーから外れることを抑制するため、偏向ミラーに対するビーム光の照射位置の誤差を許容するケラレマージンを確保する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭60-205419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ビーム光を偏向ミラーに対して側方から斜めに入射する光線レイアウトでは、偏向ミラーの角度によっては反射面の有効領域が狭くなり、ケラレマージンを確保しにくい。特に、偏向ミラーとしてMEMSミラーを用いた場合、ポリゴンミラーと比較して主走査方向のミラーサイズが小さいため、ケラレマージンを確保できない問題があった。
【0007】
上記光線レイアウトと異なるレイアウトとして、偏向ミラーの正面から偏向ミラーの回転軸に対して角度をつけてビーム光を入射する光線レイアウトも知られている。この光線レイアウトによれば、偏向ミラーの正面からビーム光が入射されるため、ケラレマージンを確保しやすくなる。
【0008】
しかしながら、偏向ミラーの回転軸に対して角度をつけてビーム光を入射する光線レイアウトでは、ビーム光の光路が偏向ミラーの回転軸方向にも延びるため、光走査装置の厚みが増大するという問題がある。また、像高中心と走査端とでビーム光の反射位置が異なるため、反射光線の副走査ライン曲がり(ボウ)が生じる問題もある。
【0009】
特許文献1には、プリズムと1/4波長板により下側入射から上側入射へのビーム光の光路を形成する光線レイアウトが開示されている。しかしながら、この光線レイアウトでは、偏向ミラー(ここではポリゴンミラー)は1つの反射面でビーム光を2回反射する必要があり、偏向ミラーの角度によっては2つの反射点の距離が主走査方向に離れるため、ケラレマージンを確保する以前に、偏向ミラーが従来よりも大型化するといった問題がある。
【0010】
本発明の目的は、偏向ミラーへの正面入射を可能として、ケラレマージンを確保できるとともに、ボウを最小化することができる光走査装置およびこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様である光走査装置は、第1偏光成分を含むビーム光を照射する光源と、前記ビーム光を被走査体へ向けて、主走査方向に走査しながら反射させるように回転駆動される偏向ミラーと、前記ビーム光に含まれる前記第1偏光成分を前記偏向ミラーに向けて反射させるとともに、前記第1偏光成分に対して1/2波長の位相差を有する第2偏光成分を透過させる第1偏光部材と、通過する前記ビーム光に対して1/4波長の位相差を生じさせる第2偏光部材とを備え、前記第1偏光部材は、該第1偏光部材で反射した前記ビーム光を、前記偏向ミラーによる偏向角の略中央から該偏向ミラーに対して正面入射させるように配置されており、前記第2偏光部材は、前記第1偏光部材と前記偏向ミラーとの間に配置され、前記第1偏光部材が反射した前記ビーム光の前記第1偏光成分を、前記偏向ミラーの反射前後で2回通過させて前記第2偏光成分に変化させるものであり、前記偏向ミラーの回転軸は、前記第1偏光部材で反射される直前の前記ビーム光の光軸と平行であることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、第1偏光部材および第2偏光部材を備えることで、偏向ミラーにビーム光を正面入射することが可能となり、ケラレマージンを確保できるとともに、ボウを最小化することができる。偏向ミラーに正面入射されるビーム光は入射側に向かって反射されるが、第1偏光部材および第2偏光部材の光学機能によって、偏向ミラーで反射される前後のビーム光の光路を分離することができる。
【0013】
また、上記光走査装置は、前記第1偏光部材に対して前記第2偏光部材および前記偏向ミラーとは反対側に配置され、第2偏光部材を2回通過した後に前記第1偏光部材を透過する前記ビーム光の中央走査光の光軸を、前記第1偏光部材で反射される直前の前記ビーム光の光軸と平行となるように反射させる反射ミラーを有している構成とすることができる。
【0014】
上記の構成によれば、反射ミラーを備えることで、第1偏光部材で反射される直前のビーム光の光軸と、第2偏光部材を2回通過した後に第1偏光部材を透過するビーム光の中央走査光の光軸とを平行にすることができる。これにより、光走査装置を薄型化および小型化することができる。
【0015】
また、上記光走査装置は、前記光源が照射する前記ビーム光に含まれ、前記偏向ミラーによる反射前に前記第1偏光部材を透過する前記第2偏光成分を遮光する遮光部を備えている構成とすることができる。
【0016】
上記の構成によれば、被走査体の走査に使用しない第2偏光成分を遮光し、光走査装置から出射されることを防止できる。
【0017】
また、上記光走査装置では、前記第1偏光部材および前記反射ミラーが、三角プリズムの一面に誘電体多層膜を形成し、前記三角プリズムの他の面にミラーコートを形成してなる一体型プリズムとして形成されている構成とすることができる。
【0018】
上記の構成によれば、第1偏光部材および反射ミラーを一体型プリズムとして形成することで、光走査装置の組立時における部材配置などが容易となる。
【0019】
また、上記光走査装置では、前記第1偏光部材および前記第2偏光部材が、三角プリズムの一面に誘電体多層膜を形成し、前記三角プリズムの他の面に1/4波長板を貼付してなる一体型プリズムとして形成されている構成とすることができる。
【0020】
上記の構成によれば、第1偏光部材および第2偏光部材を一体型プリズムとして形成することで、光走査装置の組立時における部材配置などが容易となる。
【0021】
また、上記光走査装置では、前記偏向ミラーは、MEMSミラーである構成とすることができる。
【0022】
また、上記の課題を解決するために、本発明の第2の態様である画像形成装置は、上記記載された光走査装置を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光走査装置および画像形成装置は、第1偏光部材および第2偏光部材の光学機能によって、偏向ミラーにビーム光を正面入射することが可能となり、ケラレマージンを確保できるとともに、ボウを最小化することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施の形態1に係る光走査装置を適用した画像形成装置の全体構成を模式的に示す縦断面図である。
図2】画像形成装置における感光体ドラム周辺の構成を模式的に示す図である。
図3】実施の形態1に係る光走査装置の光学系を模式的に示す平面図である。
図4】実施の形態1に係る光走査装置の光学系を模式的に示す側面図である。
図5】実施の形態1に係る光走査装置に含まれるビーム偏向部の断面図である。
図6】実施の形態2に係る光走査装置の光学系を模式的に示す側面図である。
図7】実施の形態3に係る光走査装置の光学系を模式的に示す側面図である。
図8】実施の形態4に係る構成の一例であるビーム偏向部の断面図である。
図9】実施の形態4に係る構成の他の例であるビーム偏向部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る光走査装置100を適用した画像形成装置200の全体構成を模式的に示す縦断面図である。図1に示す画像形成装置200は、スキャナ81において読み取られる原稿の印刷、またはネットワークを介して外部機部から入力される画像データの印刷を行うことができるデジタル複合機である。
【0026】
画像形成装置200は、感光体ドラム60、帯電部62、クリーニング部64、光走査装置100、現像部74、転写部75、定着部76、スキャナ81、給紙トレイ82および排紙トレイ83を備えている。
【0027】
スキャナ81は、原稿セットトレイ、自動原稿搬送装置、原稿読み取り装置などを備えている。原稿読み取り装置には、原稿載置台、および原稿走査装置が設けられている。
【0028】
給紙トレイ82は、普通紙、コート紙、カラーコピー用紙、OHPフィルムなどの記録用紙を収容するトレイである。給紙トレイ82は複数設けられ、各給紙トレイ82には例えばサイズの異なる記録用紙が収容される。排紙トレイ83には、画像が形成された記録用紙が排出される。
【0029】
図2は、画像形成装置200(図1参照)における感光体ドラム60周辺の構成を模式的に示す図である。図2に示すように、感光体ドラム60の周辺には、帯電部62、クリーニング部64、光走査装置100、現像部74、転写部75、定着部76が設けられている。
【0030】
感光体ドラム60は、矢印R1方向に駆動回転可能に設けられたローラ状の部材である。感光体ドラム60の表面には静電潜像およびトナー像が形成される感光膜が形成されている。
【0031】
帯電部62は、感光体ドラム60の外周面を所定の極性および電位に帯電させる。本実施の形態の帯電部62は、帯電ローラ63である。帯電ローラ63は、感光体ドラム60の外周面に接触することで感光体ドラム60を帯電させる。
【0032】
クリーニング部64は、感光体ドラム60の外周面に残留する残留トナーを除去する。クリーニング部64は、クリーニングブレード65を備えている。
【0033】
光走査装置100(図1参照)は、画像データに応じたビーム光Lを、帯電状態にある感光体ドラム60に照射する。感光体ドラム60の外周面に照射されたビーム光Lにより、画像データに応じた静電潜像が形成される。
【0034】
現像部74は、感光体ドラム60の外周面にトナーを供給し、感光体ドラム60の外周面に形成された静電潜像をトナー像として顕像化する。
【0035】
転写部75は、感光体ドラム60および転写部75の間を通る記録用紙Pの裏面から転写バイアスを与え、感光体ドラム60の外周面に顕像化されたトナー像を記録用紙Pに転写する。
【0036】
定着部76は、定着ニップ部を通過する記録用紙Pを加熱・加圧することで、記録用紙Pに転写されたトナー像を溶融・固着させる。
【0037】
図3は、光走査装置100の光学系を模式的に示す平面図である。図4は、光走査装置100の光学系を模式的に示す側面図である。図5は、光走査装置100に含まれるビーム偏向部20の断面図であり、光源10から出射されるビーム光Lを含む箇所でのY-Z断面図である。光走査装置100は、光源10から照射されたビーム光Lを、偏向ミラーを用いて主走査方向に偏向させ、被走査体(感光体ドラム60)を走査する装置である。尚、これらの図では、ビーム光Lの主走査方向をX軸方向とし、光源10から出射されるビーム光Lの光軸方向をY軸方向とし、X軸方向およびY軸方向と直交する方向をZ軸方向とする。
【0038】
図3および図4に示すように、光走査装置100は、光源10、コリメートレンズ11、シリンドリカルレンズ12、ビーム偏向部20、および出射レンズ30を備えている。以下の説明では、ビーム偏向部20に対してビーム光Lの入射側に配置される光学系(すなわち、光源10、コリメートレンズ11、シリンドリカルレンズ12)を入射光学系と称し、ビーム光Lの出射側に配置される光学系を出射光学系と称する。尚、図3では、出射光学系として記載されているのは出射レンズ30のみであるが、出射光学系にはこれ以外のレンズやミラーが含まれていてもよい。
【0039】
光源10は、入力された画像データに応じてビーム光Lを射出する。光源10は、例えばLD(Laser Diode)やLED(Light Emitting Diode)などを用いることができる。本実施の形態では、光源10としてLDが用いられており、ビーム偏向部20に対してS偏光成分を入射する向きに回転調整されている。S偏光成分に対して1/2波長の位相差を有する偏光成分がP偏光成分である。ここでは、S偏光成分が本発明の第1偏光成分に相当し、P偏光成分が本発明の第2偏光成分に相当する。
【0040】
コリメートレンズ11は、光源10から拡散するように射出される円錐状のビーム光Lを平行状のビーム光Lにする光学部材である。シリンドリカルレンズ12は、コリメートレンズ11で平行光にされたビーム光Lを副走査方向に集光する光学部材である。
【0041】
図5に示すように、ビーム偏向部20は、第1偏光部材21、第2偏光部材22、偏向ミラーであるMEMSミラー23および反射ミラー24を備えており、これらは所定の位置関係を有するように配置されている。
【0042】
第1偏光部材21は、ビーム光Lに含まれている偏光成分の一方(第1偏光成分)を反射させ、他方(第2偏光成分)を透過させる光学部材であり、光学入射系からのビーム光Lが最初に入射される位置に配置されている。第1偏光部材21としては、例えば、ワイヤーグリッド偏光フィルムや誘電体多層膜などを有する偏光板を用いることができる。本実施の形態では、第1偏光部材21にワイヤーグリッド偏光フィルムが用いられている。ワイヤーグリッド偏光フィルムは、配置する向きによって反射および透過させる偏光成分を変化させることができる。第1偏光部材21は、ビーム光Lに含まれているS偏光成分を反射させ、P偏光成分を透過させる向きに設置されている。
【0043】
第1偏光部材21は、その反射/透過面がX軸方向と平行であり、かつ反射/透過面の法線がY軸方向およびZ軸方向と45°の角度をなすように配置されている。この配置により、第1偏光部材21に入射されるビーム光LのS偏光成分は、Y軸方向からZ軸方向に90°曲がるように反射される。また、ビーム光LのP偏光成分は、第1偏光部材21を透過してY軸方向に直進する。
【0044】
第1偏光部材21によって反射されたビーム光Lの進む先には、第2偏光部材22およびMEMSミラー23がZ軸方向に沿って配置されている。第2偏光部材22は、第1偏光部材21とMEMSミラー23との間に配置されている。第2偏光部材22は、第1偏光部材21で反射されたビーム光L(S偏光成分)に位相差を生じさせる光学部材である。第2偏光部材22として、例えば、1/4波長板を用いることができる。1/4波長板は、入射されたビーム光Lに1/4波長の位相差を生じさせる機能を有する波長板であり、S偏光成分を2回通過させることでP偏光成分に変化させることができる。
【0045】
MEMSミラー23は、回転軸を中心として往復回転するように駆動される駆動ミラー231と、駆動ミラー231を保持および駆動するミラー基板232とを備えている。MEMSミラー23は、駆動ミラー231を往復回転させてビーム光Lを反射させる方向を変化させることにより、ビーム光Lを主走査方向に偏向させることができる。また、駆動ミラー231の偏向角(光学的振れ角)を角度θとする。
【0046】
本実施の形態では、駆動ミラー231の回転軸が第1偏光部材21で反射される直前のビーム光Lの光軸と平行な方向(すなわちY軸方向)に配置され、かつ、ビーム光Lが駆動ミラー231に対して正面入射されるようにMEMSミラー23が配置される。尚、ここでの正面入射とは、駆動ミラー231に入射されるビーム光Lの光軸と、駆動ミラー231で反射されるビーム光L(走査光)における中央走査光(偏向角θを有する走査光のうち、偏向角θの中央に位置するビーム光)の光軸とが一致する(平行となる)形態を意味する。言い換えれば、正面入射では、駆動ミラー231に入射するビーム光Lは、駆動ミラー231による偏向角θの略中央から駆動ミラー231に対して入射する。駆動ミラー231で反射されるビーム光Lは、中央走査光の光軸がZ軸方向となり、XZ平面内で偏向される走査光となる。但し、ここでの正面入射は、入射されるビーム光Lの光軸と反射される中央走査光の光軸との完全な一致が要求されるものではなく、僅かなずれ(例えば±3°以内)は許容される。
【0047】
駆動ミラー231で反射されたビーム光Lは、第2偏光部材22に向けて折り返し反射され、第2偏光部材22を透過して再び第1偏光部材21に到達する。このとき、第1偏光部材21に再到達したビーム光Lは、駆動ミラー231での反射の前後で第2偏光部材22を2回通過しているため、S偏光成分がP偏光成分に変化しており、第1偏光部材21を透過する。
【0048】
第1偏光部材21に再到達し、第1偏光部材21を透過したビーム光Lの進む先には、反射ミラー24が配置されている。すなわち、反射ミラー24は、第1偏光部材21に対し、第2偏光部材22およびMEMSミラー23とはZ軸方向の反対側に配置されている。また、反射ミラー24は、その反射面がX軸方向と平行であり、かつ反射面の法線がY軸方向およびZ軸方向と45°の角度をなすように配置されている。この配置により、反射ミラー24に入射されるビーム光Lは、中央走査光の光軸がZ軸方向からY軸方向に90°曲がるように反射され、反射後はXY平面内での走査光となる(中央走査光の光軸が第1偏光部材21で反射される直前のビーム光Lの光軸と平行となる)。尚、ビーム偏向部20における第1偏光部材21、第2偏光部材22および反射ミラー24は、MEMSミラー23で反射された後の走査光を透過または反射させる必要があるため、主走査方向(X軸方向)を長手方向として形成されている。
【0049】
出射レンズ30は、ビーム偏向部20で偏向されたビーム光L(ここでは反射ミラー24で反射されたビーム光L)を被走査体(感光体ドラム60)へ向けて出射させるレンズである。出射レンズ30としては、例えば、Fθレンズやθレスレンズを用いることができる。
【0050】
本実施の形態では、ビーム偏向部20に第1偏光部材21および第2偏光部材22を備えることで、偏向ミラー(すなわちMEMSミラー23)にビーム光Lを正面入射することが可能となる。MEMSミラー23に正面入射されるビーム光Lは、入射側に向かって反射されるが、第1偏光部材21および第2偏光部材22の光学機能によって、MEMSミラー23で反射される前後のビーム光Lの光路を分離することができる。MEMSミラー23にビーム光Lを正面入射することにより、MEMSミラー23の反射面(駆動ミラー231)の有効領域を最大にすることができ、ケラレマージンを確保できるとともに、ボウを最小化することができる。
【0051】
また、本実施の形態では、ビーム偏向部20に反射ミラー24を備えることで、入射光学系における光路と、出射光学系における光路(中央走査光の光路)とを平行にすることができる。これにより、光走査装置100を薄型化および小型化することができる。薄型化される光走査装置100は、Z軸方向を厚み方向とする。但し、本発明において、ビーム偏向部20の反射ミラー24は必須ではなく、反射ミラー24は省略することも可能である。
【0052】
また、本実施の形態では、ビーム偏向部20におけるMEMSミラー23では、駆動ミラー231の回転軸が第1偏光部材21で反射される直前のビーム光Lの光軸と平行な方向(Y軸方向)に配置されている。この配置では、往復回転(振動)する駆動ミラー231において、振動の中央位置にあるときの駆動ミラー231の反射面がXY平面となる。この場合、MEMSミラー23におけるミラー基板232の主面もXY平面となるように配置される。さらに、ビーム偏向部20が反射ミラー24を備える場合、反射ミラー24で反射された後のビーム光Lの走査面(出射光学系における走査面)もXY平面となる。このように、MEMSミラー23におけるミラー基板232の主面と、出射光学系における走査面とが平行となることにより、光走査装置100を極限的に薄型化することが可能となる。
【0053】
偏向ミラーにMEMSミラーを用いる従来の光走査装置では、ミラー基板の主面が出射光学系における走査面と直交するレイアウトが一般的であるが、この場合、光走査装置の厚みは、MEMSミラーのミラー基板サイズに律速される。これに対し、本実施の形態の光走査装置100では、その厚みがミラー基板232のサイズに律速されることはない。
【0054】
また、本実施の形態では、駆動ミラー231で偏向される前のビーム光Lの光軸と、駆動ミラー231で偏向された後のビーム光Lの中央走査光の光軸とは、同一のYZ平面(走査領域中心となるYZ平面)内に含まれる。これにより、本実施の形態では、光走査装置100に含まれる全ての光学部品を、走査領域中心となるYZ平面に対して対称配置することが可能となる。これにより、光学部品を光走査装置100内で高精度に配置することが容易となる。
【0055】
〔実施の形態2〕
実施の形態1では、光走査装置100の偏向ミラーとしてMEMSミラー23を用いた構成を例示した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、偏向ミラーにポリゴンミラーを用いることも可能である。図6は、実施の形態2に係る光走査装置100Aの光学系を模式的に示す側面図である。
【0056】
図6に示す光走査装置100Aは、図3の光走査装置100におけるビーム偏向部20に代えてビーム偏向部20Aを備えた構成である。ビーム偏向部20Aは、偏向ミラーとして、図3のMEMSミラー23に代えてポリゴンミラー25を備えている。光走査装置100Aでは、ポリゴンミラー25の回転軸が、MEMSミラー23における駆動ミラー231と同様に、第1偏光部材21で反射される直前のビーム光Lの光軸と平行な方向(すなわちY軸方向)に配置される。これにより、光走査装置100Aは、実施の形態1の光走査装置100と同様に、ポリゴンミラー25の反射面の有効領域を最大にすることができ、ケラレマージンを確保できるとともに、ボウを最小化することができる。
【0057】
〔実施の形態3〕
図3の光走査装置100では、光源10から射出されるビーム光LにS偏光成分およびP偏光成分が含まれており、第1偏光部材21で反射させたS偏光成分のみを被走査体の走査光として利用し、第1偏光部材21を透過させたP偏光成分は走査光として利用しない。このため、第1偏光部材21を透過したP偏光成分が、出射光学系を通過して光走査装置100から出射されないようにすることが必要である。
【0058】
図7は、実施の形態3に係る光走査装置100Bの光学系を模式的に示す側面図である。図7に示す光走査装置100Bは、図3の光走査装置100とほぼ類似した構成であるが、第1偏光部材21を透過するP偏光成分の先に、P偏光成分を遮光する遮光部40を有している。光走査装置100Bでは、第1偏光部材21に入射される前のビーム光Lの光軸と反射ミラーで反射された後のビーム光Lの光軸との間にZ軸方向の段差が生じるため、遮光部40は、この段差を利用して第1偏光部材21を透過するP偏光成分を遮光することできる。遮光部40は、例えば光走査装置100Bの筐体にリブを設け、このリブによって第1偏光部材21を透過するP偏光成分を遮光する構成とすることができる。このような遮光部40を設けることにより、第1偏光部材21を透過するP偏光成分が出射光学系を通過して光走査装置100から出射されることを防止できる。
【0059】
また、遮光部40におけるP偏光成分の入射面は、微少な凹凸を形成したり、スエード素材などで形成された反射低減部材41を設けたりすることで、P偏光成分の反射を低減させる構成としてもよい。遮光部40においてP偏光成分の反射を低減することで、P偏光成分が散乱して迷光となることを抑制することができる。あるいは、遮光部40におけるP偏光成分の入射面は、P偏光成分の光軸に対して傾斜させ、遮光部40で散乱したP偏光成分が、光走査装置100Bの筐体内壁に向かうように(出射光学系に向かわないように)してもよい。
【0060】
〔実施の形態4〕
図5のビーム偏向部20では、互いに別部材である第1偏光部材21、第2偏光部材22、および反射ミラー24を、所定の位置関係で配置した構成を例示している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものでなく、第1偏光部材21、第2偏光部材22、および反射ミラー24のうちの少なくとも2つは、プリズムなどを用いて一体的に構成されていてもよい。
【0061】
図8は、実施の形態4に係る構成の一例であるビーム偏向部20Bの断面図である。ビーム偏向部20Bは、三角プリズム26を用いて、この三角プリズム26の一面に第1偏光部材として機能する誘電体多層膜21Aをコート(もしくはワイヤーグリッド偏光フィルムを貼付)し、三角プリズム26の他の一面に反射ミラーとして機能するミラーコート24Aを形成した構成である。この構成では、第1偏光部材および反射ミラーを一体型プリズムとして形成することができ、ビーム偏向部20Bの組立時における部材配置などが容易となる。
【0062】
図9は、実施の形態4に係る構成の他の一例であるビーム偏向部20Cの断面図である。ビーム偏向部20Cは、三角プリズム26および27を用いて、この三角プリズム26の一面に誘電体多層膜21Aをコートし、三角プリズム26の他の一面にミラーコート24Aを形成する構成はビーム偏向部20Bと同じである。さらに、ビーム偏向部20Cは、三角プリズム27の一面を誘電体多層膜21Aと接触させるように(三角プリズム26と三角プリズム27で誘電体多層膜21Aを挟むように)配置し、三角プリズム27の他の一面に第2偏光部材として機能する1/4波長板22Aを貼付している。この構成では、第1偏光部材、第2偏光部材および反射ミラーを一体型プリズムとして形成することができ、ビーム偏向部20Cの組立時における部材配置などが容易となる。尚、図示は省略しているが、三角プリズム27のみを用いて、第1偏光部材および第2偏光部材を一体型プリズムとして形成することも可能である。
【0063】
〔他の実施の形態〕
尚、今回開示した実施形態は、全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【0064】
例えば、実施の形態の説明では、出射レンズ30から出射させて走査させるビーム光LがP偏光成分となるようにしたが、S偏光成分によって走査させるように光学系を構成するようにしてもよい。この場合、例えば第1偏光部材は、ビーム光Lに含まれているP偏光成分を反射させ、S偏光成分を透過させる向きに設置する。
【0065】
実施の形態の説明では、画像形成装置に適用される光走査装置として説明したが、光走査装置の用途は画像形成装置に限定されず、他の様々な用途に適用することができる。例えば、光走査装置は、光を走査して映像を表示するプロジェクタやディスプレイなどの画像表示装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 光源
11 コリメートレンズ
12 シリンドリカルレンズ
20,20A,20B ビーム偏向部
21 第1偏光部材
21A 誘電体多層膜(第1偏光部材)
22 第2偏光部材
22A 1/4波長板(第2偏光部材)
23 MEMSミラー(偏向ミラー)
231 駆動ミラー
232 ミラー基板
24 反射ミラー
24A ミラーコート(反射ミラー)
25 ポリゴンミラー(偏向ミラー)
26,27 三角プリズム
30 出射レンズ
100,100A,100B 光走査装置
200 画像形成装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9