(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】耐電圧試験装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/14 20060101AFI20240227BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20240227BHJP
H02B 3/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G01R31/14
G01R31/00
H02B3/00 M
(21)【出願番号】P 2020124418
(22)【出願日】2020-07-21
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】乙幡 将吾
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 健作
(72)【発明者】
【氏名】橋本 優平
(72)【発明者】
【氏名】鳥飼 領佑
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-151576(JP,A)
【文献】特開平01-219675(JP,A)
【文献】特開2008-113516(JP,A)
【文献】特開平11-220815(JP,A)
【文献】特開2001-028813(JP,A)
【文献】特開2010-197132(JP,A)
【文献】中国実用新案第203732715(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/12-31/20、
31/00-31/01、
31/24-31/25、
31/327-31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子が試験対象の開路状態の開閉装置の第1の端子に接続され、第2の端子が接地点に接続される電源と、
第1の端子が前記開閉装置の第2の端子に接続され、第2の端子が接地点に接続される避雷装置と、
第1の端子が前記電源の第1の端子と前記開閉装置の第1の端子に接続され、第2の端子が接地点に接続される第1の電圧測定装置と、
第1の端子が前記開閉装置の第2の端子と前記避雷装置の第1の端子に接続され、第2の端子が接地点に接続される第2の電圧測定装置と、
を備える耐電圧試験装置。
【請求項2】
演算装置を更に備え、
前記演算装置は、前記第1の電圧測定装置が測定した電圧波形から、前記第2の電圧測定装置が測定した電圧波形を差し引くことで、前記開閉装置の両端の電圧波形を算出する、請求項1に記載の耐電圧試験装置。
【請求項3】
前記避雷装置は、非線形抵抗特性を有しており、極小電流が通電する時の前記避雷装置の両端における電圧値と前記電源の試験電圧が同じである、
請求項1または請求項2に記載の耐電圧試験装置。
【請求項4】
第1の端子が試験対象の閉路状態の開閉装置の第1の端子に接続され、第2の端子が接地点に接続される電源と、
第1の端子が前記開閉装置の絶縁部に接続され、第2の端子が接地点に接続される避雷装置と、
第1の端子が前記電源の第1の端子と前記開閉装置の第1の端子に接続され、第2の端子が接地点に接続される第1の電圧測定装置と、
第1の端子が前記開閉装置の前記絶縁部と前記避雷装置の第1の端子に接続され、第2の端子が接地点に接続される第2の電圧測定装置と、
を備える耐電圧試験装置。
【請求項5】
演算装置を更に備え、
前記演算装置は、前記第1の電圧測定装置が測定した電圧波形から、前記第2の電圧測定装置が測定した電圧波形を差し引くことで、前記開閉装置に対する接地の電圧波形を算出する、請求項4に記載の耐電圧試験装置。
【請求項6】
前記避雷装置は、非線形抵抗特性を有しており、極小電流が通電する時の前記避雷装置の両端における電圧値と前記電源の試験電圧が同じである、
請求項4または請求項5に記載の耐電圧試験装置。
【請求項7】
第1の端子が試験対象の開路状態の開閉装置の第1の端子に接続され、第2の端子が接地点に接続される電源と、
第1の端子が前記開閉装置の外装タンクに接続され、第2の端子が接地点に接続される第1の避雷装置と、
第1の端子が前記電源の第1の端子と前記開閉装置の第1の端子に接続され、第2の端子が接地点に接続される第1の電圧測定装置と、
第1の端子が前記開閉装置の前記外装タンクと前記第1の避雷装置の第1の端子に接続され、第2の端子が接地点に接続される第2の電圧測定装置と、
第1の端子が前記開閉装置の第2の端子に接続され、第2の端子が接地点に接続される第2の避雷装置と、
第1の端子が前記開閉装置の前記第2の端子と前記第2の避雷装置の第1の端子に接続され、第2の端子が接地点に接続される第3の電圧測定装置と、
を備える耐電圧試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、耐電圧試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用開閉装置は、電力系統において事故電流遮断や系統切替、機器保守等に用いられる。電力用開閉装置は、一対の電極を備え、これらの電極を接離させることで電路を開閉する。事故電流が検知されると電力用開閉装置に遮断信号が入力され、電力用開閉装置は、遮断信号を契機に電流を遮断すべく各電極を開離させる。
【0003】
電力用開閉装置の形式試験項目としては、開閉装置の短絡電流遮断能力を検証するための遮断試験がある。遮断試験では、電極間に数[A]から数十[kA]の電流に相当するアーク放電によって電極間や周囲の部品が損耗する。このため、規格では規定されている短絡遮断電流の100[%]もしくは90[%]の電流遮断試験を行った後に機器の健全性を示すための耐電圧試験を実施することが求められている。
【0004】
遮断試験は、一般的に試験用の電源である短絡発電機を用いて電源供給が行われる。しかしながら定格電圧の高い開閉器の試験条件を満たすには短絡発電機のみでは電源容量が不足する。その場合の試験方法としては、短絡電流を短絡発電機より供給し、電流遮断後の過渡回復電圧及び回復電圧を別電源回路を用意して供給する試験方法(合成遮断試験法)がある。合成遮断試験法に用いられる過渡回復電圧及び回復電圧を供給する別電源回路は、一般的にコンデンサ、リアクトル、抵抗を組み合わせた回路構成であり、それらの値を調整することで任意の電圧波形を供給することが出来る。
【0005】
一方、短絡電流遮断試験後の開閉装置の健全性を検証するための耐電圧試験の電圧波形は、規格上では、雷インパルス波形、開閉インパルス波形、短絡電流遮断後の過渡回復電圧波形のいずれかの電圧波形である。雷インパルス波形及び開閉インパルス波形は、インパルスジェネレーターという設備を用いて発生させることが一般的であるが、短絡電流遮断試験を実施する試験エリアには、一般的にインパルスジェネレーターが設置されていない。このため、試験の利便性を考えると合成短絡遮断試験回路の過渡回復電圧供給回路を用いることが最も利便性が良い。従って、合成短絡遮断試験後に、過渡回復電圧供給回路のパラメータを調整して耐電圧試験を実施することが一般的である。しかし、試験対象機器が絶縁破壊した場合に、通電される短絡電流が数[kA]のオーダーになり、例えば開閉器の電極間を支える構造物の絶縁物が絶縁不良を起こすと絶縁物の沿面に通電され焼損してダメージを受ける場合があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】IEC 62271-101 High-voltage switchgear and Controlgear-Part 101: Synthetic testing
【文献】IEC 62271-100 High-voltage switchgear and controlgear-Part 100: Alternating-current circuit-breakers
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、試験対象機器である開閉装置の電極間を支える絶縁物が絶縁不良を起こした場合であっても絶縁物が受けるダメージを低減することができる耐電圧試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の耐電圧試験装置は、電源と、避雷装置と、第1の電圧測定装置と、第2の電圧測定装置とを持つ。電源は、第1の端子が試験対象の開路状態の開閉装置の第1の端子に接続され、第2の端子が接地点に接続される。避雷装置は、第1の端子が前記開閉装置の第2の端子に接続され、第2の端子が接地点に接続される。第1の電圧測定装置は、第1の端子が前記電源の第1の端子と前記開閉装置の第1の端子に接続され、第2の端子が接地点に接続される。第2の電圧測定装置は、第1の端子が前記開閉装置の第2の端子と前記避雷装置の第1の端子に接続され、第2の端子が接地点に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る耐電圧試験装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図3】従来の耐電圧試験装置で開閉装置の試験を行った際に絶縁破壊が発生した場合の絶縁物の内部の図。
【
図4】第1の実施形態に係る耐電圧試験装置で開閉装置の試験を行った際に絶縁破壊が発生した場合の絶縁物の内部の図。
【
図5】第1の実施形態に係る耐電圧試験の際の波形例を示す図。
【
図6】第2の実施形態に係る耐電圧試験装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図7】第3の実施形態に係る耐電圧試験装置の構成の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の耐電圧試験装置を、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る耐電圧試験装置の構成の一例を示すブロック図である。
図1のように、耐電圧試験装置1は、電源2、開閉装置3、避雷装置4、第1の電圧測定装置5、第2の電圧測定装置6、および演算装置7を備える。なお、耐電圧試験装置1は、電流回路も含むが、
図1では省略している。
【0012】
次に、耐電圧試験装置1の接続関係を説明する。開閉装置3は、互いに対向する第1の電極(電極306)と、第2の電極(電極307)を備える。開閉装置3の第1の端子31は、電源2の高圧側の第1の端子21と第1の電圧測定装置5の第1の端子に接続され、第2の端子32は、避雷装置4の第1の端子41と第2の電圧測定装置6の第1の端子61に接続されている。電源2の高圧側の第1の端子21は、開閉装置3の第1の端子31と第1の電圧測定装置5の第1の端子51に接続され、第2の端子22が接地点eに接続されている。第1の電圧測定装置5の第2の端子52と、第2の電圧測定装置6の第2の端子62と、避雷装置4の第2の端子42は、接地点eに接続されている。第1の電圧測定装置5の出力端子53は、演算装置7の第1の端子71に接続されている。第2の電圧測定装置6の出力端子63は、演算装置7の第2の端子72に接続されている。なお、開閉装置3の第1の端子31は、避雷装置4の第1の端子41と第2の電圧測定装置6の第1の端子61に接続され、開閉装置3の第2の端子32は、電源2の高圧側の第1の端子21と第1の電圧測定装置5の第1の端子に接続されていてもよい。
【0013】
電源2は、開閉装置3に試験電圧を供給する電源回路である。開閉装置3は、試験対象の例えば電力用の開閉装置である。避雷装置4は、絶縁破壊した際の短絡電流を抑制するための装置である。避雷装置4の定格電圧は、試験電圧よりも高い。
【0014】
第1の電圧測定装置5は、電源2の第1の端子21と開閉装置3の第1の端子31との接点cと、接地点eとの間の電圧を測定する装置である。第2の電圧測定装置6は、開閉装置3の第2の端子32と避雷装置4の第1の端子41との接点dと、接地点eとの間の電圧を測定する装置である。
【0015】
演算装置7は、第1の電圧測定装置5が測定した電圧波形から、第2の電圧測定装置6が測定した電圧波形を差し引いて開閉装置3の極間電圧を算出する。
【0016】
なお、演算装置7はLSI等のハードウェア機能部であってもよく、ソフトウェア機能部で実現してもよい。演算装置7の機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが、メモリに記憶されたプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。また、演算装置7の機能は、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されていてもよい。
【0017】
次に、試験方法について説明する。開閉装置3の試験を行う際、開閉装置3を開路状態で、開閉装置3の電極間に電圧を印加する。開閉装置3の極間絶縁耐力が試験電圧よりも高い場合は、電極間が絶縁破壊することなく試験合格となる。電極間の絶縁耐力が試験電圧よりも低い場合は、電極間で絶縁破壊が発生し電極間は電気的に接続された状態となる。
【0018】
ここで、開閉装置3の構成の一例を説明する。
図2は、開閉装置3の構成の一例を示す図である。なお、
図2では、開閉装置3の構成のうち、一部の構成を省略して示している。
図2のように、開閉装置3は、操作機構301、外装タンク302、絶縁物303、導体304、絶縁物305、電極306、電極307、導体308、ブッシング309、およびブッシング310を備えている。
【0019】
操作機構301は、電極306の可動を操作するソレノイドである。外装タンク302は、例えば、円筒状の金属容器であり、内部に導体304、絶縁物305、電極306、電極307、導体308を収容している。
【0020】
電極306と電極307とは、絶縁物305(極間絶縁筒)で覆われている。電極306は、導体304と接続されている。導体304は、ブッシング309の内部の導体と接続されている。電極307は、導体308と接続されている。導体308は、ブッシング310の内部の導体と接続されている。なお、
図2に示した構成は一例であり、構成はこれに限らない。
【0021】
次に、従来の耐電圧試験装置で開閉装置3の試験を行った結果例と、本実施形態の耐電圧試験装置1で開閉装置3の試験を行った結果例を説明する。
図3は、従来の耐電圧試験装置で開閉装置3の試験を行った際に絶縁破壊が発生した場合の絶縁物305の内部の図である。
図3のように、従来の耐電圧試験装置で開閉装置3の耐電圧試験を実施した際に絶縁物305で絶縁破壊が発生した場合は、絶縁物305に黒い焼損の痕(g101)がある。従来の耐電圧試験装置で耐電圧試験を行った際に絶縁破壊が発生した場合は、数kAの短絡電流によって
図3のように絶縁物305沿面が激しく損傷する。この結果、
図3のように、絶縁破壊の起点特定が不可能であった。
【0022】
図4は、本実施形態に係る耐電圧試験装置1で開閉装置3の試験を行った際に絶縁破壊が発生した場合の絶縁物305の内部の図である。
図4のように、本実施形態の耐電圧試験装置1で開閉装置3の耐電圧試験を実施した際に絶縁物305で絶縁破壊が発生した場合は、絶縁破壊の起点が特定しやすくなっており、放電経路がより詳細に把握出来る様になった(g111)。
【0023】
図4のように絶縁物305で絶縁破壊が発生した場合に放電の起点と経路が鮮明になる理由を説明する。耐電圧試験で電極間に絶縁破壊が発生した場合は、開閉装置3と接続されている避雷装置4の両端(d-e)に、ほぼ試験電圧と同等の電圧が印加される。接続される避雷装置4の特性によるが、試験電圧が印加されると例えば約1[mA]以下の漏れ電流が接地点に向かって流れる。漏れ電流は、絶縁破壊の起因が電極間を支持している絶縁物305の絶縁耐力不足である場合、絶縁物の沿面に沿って通電される。この結果、
図4のように絶縁物305で絶縁破壊が発生した場合でも絶縁物が激しく損傷する事なく、絶縁破壊時の放電痕が詳細になる。ここで、避雷装置4は、非線形抵抗特性を有しており、特性より極小電流が通電する時の電圧値と電源2の試験電圧が同等である。
【0024】
このように、本実施形態では、短絡電流を漏れ電流程度の小さな電流値に抑制することが可能となるので、絶縁破壊時の放電痕を詳細に観察することが可能となった。この結果、本実施形態によれば、放電痕が詳細になることで、絶縁破壊の起点特定を行うことができる。
【0025】
次に、耐電圧試験の際に第1の電圧測定装置5と第2の電圧測定装置6で測定した波形例を説明する。
図5は、本実施形態に係る耐電圧試験の際の波形例を示す図である。
図5において、横軸は時間[ms]であり、縦軸は電圧[kV]である。なお、
図5の例は、耐電圧試験によって開閉装置3の極間に絶縁破壊が発生した際の波形である。波形g101は、第1の電圧測定装置5で測定した電圧波形であり、試験電圧の波形でもある。波形g102は、第2の電圧測定装置6で測定した電圧波形であり、避雷装置4の端子間の電圧波形でもある。波形g103は、波形g101から波形g102を減算した開閉装置3の極間電圧波形である。なお、
図5に示した波形は一例であり、開閉装置3や印加電圧等の条件によって波形が異なる。
【0026】
本実施形態において、試験対象が絶縁破壊した際でも第1の電圧測定装置5で測定した波形g101には大きな変化が見られない。試験が正常に完了したのか絶縁破壊したのかを確定する事ができないので、本実施形態では、第2の電圧測定装置6で波形g102を測定する。
【0027】
試験対象が絶縁破壊した場合は、一時的に第1の電圧測定装置5と第2の電圧測定装置6が導通状態となるため、同様の電圧を測定する事になると考えられる。このため、第2の電圧測定装置6の電圧波形を監視しておき、試験電圧に相当する電圧が測定された場合は絶縁破壊が発生していると判断し、試験電圧に相当する電圧が測定されなかった場合は正常に試験が完了と判断することができる。
【0028】
さらに、演算装置7が、波形g101から波形g102を差し引く事によって、開閉装置3の極間の電圧波形を測定する事が出来る。このため、本実施形態によれば、絶縁破壊した際にも、どの程度の電圧値で絶縁破壊したのかを知ることができる。なお、演算装置7は、電圧値の最大値または極大値をピーク検出等の手法によって検出するようにしてもよい。
【0029】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、開閉装置3を開路状態で、開閉装置3の電極間に電圧を印加する例を説明したが、本実施形態では開閉装置3を閉路状態で、開閉装置3の電極間に電圧を印加する試験装置例を説明する。
【0030】
図6は、本実施形態に係る耐電圧試験装置の構成の一例を示すブロック図である。
図6のように、耐電圧試験装置1Aは、電源2、開閉装置3、避雷装置4、第1の電圧測定装置5、第2の電圧測定装置6、および演算装置7を備える。なお、耐電圧試験装置1と同じ機能の装置には同じ符号を用いて説明を省略する。なお、耐電圧試験装置1Aは、電流回路も含むが、
図6では省略している。
【0031】
次に、耐電圧試験装置1Aの接続関係を説明する。開閉装置3の第1の端子は、電源2の高圧側の第1の端子21と第1の電圧測定装置5の第1の端子51に接続され、外装タンク302は、第2の電圧測定装置6の第1の端子と避雷装置4の第1の端子41とに接続され、第2の端子32は、他の装置に接続されておらず開放状態である。電源2の高圧側の第1の端子21は、開閉装置3の第1の端子31と第1の電圧測定装置5の第1の端子51に接続され、第2の端子22は、接地点eに接続されている。第1の電圧測定装置5の第2の端子52と、第2の電圧測定装置6の第2の端子62と、避雷装置4の第2の端子42は、接地点eに接続されている。第1の電圧測定装置5の出力端子53は、演算装置7の第1の端子71に接続されている。第2の電圧測定装置6の出力端子63は、演算装置7の第2の端子72に接続されている。なお、開閉装置3の第1の端子31は、他の装置に接続されておらず開放状態であり、開閉装置3の第2の端子32は、電源2の高圧側の第1の端子21と第1の電圧測定装置5の第1の端子51に接続されていてもよい。
【0032】
第1の電圧測定装置5は、電源2の第1の端子21と開閉装置3の第1の端子31との接点fと、接地点eとの間の電圧を測定する装置である。第2の電圧測定装置6は、開閉装置3の絶縁物305と避雷装置4の第1の端子41との接点kと、接地点eとの間の電圧を測定する装置である。
【0033】
演算装置7は、第1の電圧測定装置5が測定した電圧波形から、第2の電圧測定装置6が測定した電圧波形を差し引いて開閉装置3対地電圧を算出する。
【0034】
次に、試験方法について説明する。開閉装置3の試験を行う際、開閉装置3を閉路状態で、開閉装置3の電極間に電圧を印加する。開閉装置3の対地間絶縁耐力が試験電圧よりも高い場合は、対地間が絶縁破壊することなく試験合格となる。対地間の絶縁耐力が試験電圧よりも低い場合は、対地間で絶縁破壊が発生し対地間は電気的に接続された状態となる。ここで、避雷装置4は、非線形抵抗特性を有しており、特性より極小電流が通電する時の電圧値と電源2の試験電圧が同等である。
【0035】
次に、従来の耐電圧試験装置で開閉装置3の試験を行った結果例と、本実施形態の耐電圧試験装置1Aで開閉装置3の試験を行った結果例を説明する。第2実施形態においても、漏れ電流は、絶縁破壊の起因が対地間を支持している絶縁物303または絶縁スペーサー311の絶縁耐力不足である場合、絶縁物の沿面に沿って通電される。この結果、
図4のように絶縁物303で絶縁破壊が発生した場合でも絶縁物が激しく損傷する事なく、絶縁破壊時の放電痕が詳細になる。
【0036】
このように、本実施形態では、短絡電流を漏れ電流程度の小さな電流値に抑制することが可能となるので、絶縁破壊時の放電痕を詳細に観察することが可能となった。この結果、本実施形態によれば、放電痕を詳細に観察することで、絶縁破壊の起点特定を行うことができる。
【0037】
次に、耐電圧試験の際に第1の電圧測定装置5と第2の電圧測定装置6で測定した波形例を説明する。測定された各電圧波形は、
図5と同様である。なお、本実施形態では、波形g103が開閉装置3対地電圧波形である。
【0038】
本実施形態でも、試験対象が絶縁破壊した場合は、第2の電圧測定装置6の電圧波形を監視しておき、試験電圧に相当する電圧が測定された場合は絶縁破壊が発生していると判断し、試験電圧に相当する電圧が測定されなかった場合は正常に試験が完了と判断することができる。
【0039】
さらに、演算装置7が、波形g101から波形g102を差し引く事によって、開閉装置3対地電圧の電圧波形を測定する事が出来る。このため、本実施形態によれば、絶縁破壊した際にも、どの程度の電圧値で絶縁破壊したのかを知ることができる。
【0040】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、開閉装置3に接続される避雷装置4を持つことにより、開閉装置3が有する絶縁物305または303、絶縁スペーサー311のダメージを低減することができる。また、以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、開閉装置3が有する絶縁物305または303、絶縁スペーサー311のダメージを低減するこができるので、放電痕が詳細になることで、絶縁破壊の起点特定を行うことができる。さらに、以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、試験電圧を測定する第1の電圧測定装置5と、避雷装置4の電圧を測定する第2の電圧測定装置6とを持つことにより、開閉装置3の極間の電圧波形または開閉装置3対地電圧の電圧波形を測定する事が出来る。これにより、以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、絶縁破壊した際にも、どの程度の電圧値で絶縁破壊したのかを知ることができる。
【0041】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、第2の実施形態の変形例である。
【0042】
図7は、本実施形態に係る耐電圧試験装置1Bの構成の一例を示すブロック図である。
図7のように、耐電圧試験装置1Bは、電源2、開閉装置3、第1の避雷装置4、第1の電圧測定装置5、第2の電圧測定装置6、演算装置7、第2の避雷装置8、および第3の電圧測定装置9を備える。なお、耐電圧試験装置1Aと同じ機能の装置には同じ符号を用いて説明を省略する。なお、耐電圧試験装置1Bは、電流回路も含むが、
図7では省略している。
【0043】
耐電圧試験装置1Bと耐電圧試験装置1Aとの差異は以下である。開閉装置3の第2の端子32は、第2の避雷装置8の第1の端子81と第3の電圧測定装置9の第1の端子91とに接続されている。第2の避雷装置8の第2の端子82と、第3の電圧測定装置9の第2の端子92は、接地点eに接続されている。第3の電圧測定装置9の出力端子93は、演算装置7Bの第3の端子73に接続されている。なお、開閉装置3の第1の端子31は、第2の避雷装置8の第1の端子81と第3の電圧測定装置9の第1の端子91とに接続され、開閉装置3の第2の端子32は、電源2の高圧側の第1の端子21と第1の電圧測定装置5の第1の端子51に接続されていてもよい。
【0044】
第3の電圧測定装置9は、開閉装置3の第2の端子32と第2の避雷装置8の第1の端子81との接点mと、接地点eとの間の電圧を測定する装置である。
【0045】
演算装置7Bは、第1の電圧測定装置5が測定した電圧波形から、第2の電圧測定装置6が測定した電圧波形を差し引いて開閉装置3対地電圧を算出する。また、第1の電圧測定装置5が測定した電圧波形から、第3の電圧測定装置9が測定した電圧波形を差し引いて開閉装置3の電極間の電圧を算出する。
【0046】
ここで、第1の避雷装置4および第2の避雷装置8は、非線形抵抗特性を有しており、特性より極小電流が通電する時の電圧値と電源2の試験電圧が同等である。
【0047】
第3の実施形態では、耐電圧試験の際、開閉装置3を開路状態で、開閉装置3に電圧を印加する。第2の避雷装置8と第3の電圧測定装置9とを接続することで、開閉装置3の電極間と、開閉装置3の第1の端子31の対地間も同時に検証することができる。
【0048】
なお、上述した各実施形態において、第2の電圧測定装置6のインピーダンスを調整することにより避雷器の役割を兼ねることが可能である。このため、上述した各実施形態において、第2の電圧測定装置6のインピーダンスを調整することで、
図1、
図6、
図7の構成から避雷装置4を取り除いた構成でも、上述した各実施形態と同等の試験を行うことができる。
【0049】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、第1の端子(21)が試験対象の開路状態の開閉装置(3)の第1の端子(31または32)に接続され、第2の端子(22)が接地点(e)に接続される電源(2)と、第1の端子(41)が前記開閉装置の第2の端子(32または31)に接続され、第2の端子(42)が接地点に接続される避雷装置(4)と、第1の端子(51)が前記電源の第1の端子と前記開閉装置の第1の端子に接続され、第2の端子(52)が接地点に接続される第1の電圧測定装置(5)と、第1の端子(61)が前記開閉装置の第2の端子と前記避雷装置の第1の端子に接続され、第2の端子(62)が接地点に接続される第2の電圧測定装置(6)と、を備える。これによって、試験対象機器である開閉装置の電極間を支える絶縁物が絶縁不良を起こした場合であっても絶縁物が受けるダメージを低減することができる。
【0050】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0051】
1,1A…耐電圧試験装置、2…電源、3…開閉装置、4…避雷装置(第1の避雷装置)、5…第1の電圧測定装置、6…第2の電圧測定装置、7…演算装置、8…第2の避雷装置、9…第3の電圧測定装置、305…絶縁物、21…電源の第1の端子、22…電源の第2の端子、31…開閉装置の第1の端子、32…開閉装置の第2の端子、41…避雷装置(第1の避雷装置)の第1の端子、42…避雷装置(第1の避雷装置)の第2の端子、51…第1の電圧測定装置の第1の端子、52…第1の電圧測定装置の第2の端子、53…第1の電圧測定装置の出力端子、61…第2の電圧測定装置の第1の端子、62…第2の電圧測定装置の第2の端子、63…第2の電圧測定装置の出力端子、71…演算装置の第1の端子、72…演算装置の第2の端子、81…第2の避雷装置の第1の端子、82…第2の避雷装置の第2の端子、91…第3の電圧測定装置の第1の端子、92…第3の電圧測定装置の第2の端子、93…第3の電圧測定装置の出力端子