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特許7443183ピックアップ装置およびピックアップ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ピックアップ装置およびピックアップ方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/67 20060101AFI20240227BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
H01L21/68 E
H01L21/78 Y
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020125639
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021816
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000110859
【氏名又は名称】キヤノンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100148987
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】永元 信裕
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-155703(JP,A)
【文献】特開2019-047089(JP,A)
【文献】特開2001-118862(JP,A)
【文献】特開2012-169399(JP,A)
【文献】特開2007-042996(JP,A)
【文献】特開2010-062473(JP,A)
【文献】特開2005-328054(JP,A)
【文献】特開平04-298064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の正方形乃至矩形のチップが貼り付けられた粘着シート体から前記チップを剥離して分離するものであり、前記粘着シート体を受けるステージと、このステージに付設されて粘着シート体を介して前記ターゲットチップを支持する受け体と、負圧発生手段とを備え、前記受け体を移動させることにより、前記負圧発生手段にて発生している負圧によって前記粘着シート体と前記ターゲットチップ間の剥離を行うピックアップ装置であって、
前記受け体を移動させることによって行う剥離動作において、前記ターゲットチップに加わる応力の均一化を可能とする均一化構造を備え、前記受け体は、スライド方向と直交する幅方向寸法が、受け体の幅方向に対応する方向のチップの幅寸法よりも小さい正方形乃至矩形であるスライド体からなり、このスライド体のスライドにて、前記負圧発生手段にて発生している負圧によって前記ターゲットチップと粘着シート体とを剥離するものであり、前記スライド体のスライド方向下流側を除く3つの各外端辺から各外端辺に対向するステージの外端縁までの寸法、及び前記チップの3つの外端辺間で構成される2つの各コーナからステージの外端縁までの寸法を同一に設定することによって、前記均一化構造を構成することを特徴とするピックアップ装置。
【請求項2】
前記スライド体の上面における前記3つの各外端辺側に隆起部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のピックアップ装置。
【請求項3】
複数の正方形乃至矩形のチップが貼り付けられた粘着シート体から前記チップを剥離して分離するものであり、前記粘着シート体を受けるステージと、このステージに付設されて粘着シート体を介して前記ターゲットチップを支持する受け体と、負圧発生手段とを備え、前記受け体を移動させることにより、前記負圧発生手段にて発生している負圧によって前記粘着シート体と前記ターゲットチップ間の剥離を行うピックアップ装置であって、
前記受け体を移動させることによって行う剥離動作において、前記ターゲットチップに加わる応力の均一化を可能とする均一化構造を備え、前記受け体は、その外形寸法が前記チップの外形寸法よりも小さい正方形乃至矩形のブロック体からなり、このブロック体の鉛直方向移動にて、前記負圧発生手段にて発生している負圧によって前記ターゲットチップと粘着シート体とを剥離するものであり、前記ブロック体の各外端辺から各外端辺に対向するステージの外端縁までの寸法、及びブロック体の各外端辺で構成される4つのコーナからステージの外端縁までの寸法を同一に設定することによって、前記均一化構造を構成することを特徴とするピックアップ装置。
【請求項4】
前記ステージは、平面視で長円形をなすことによって、受け体からステージの外端縁までの寸法の同一化を図ったことを特徴とすることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のックアップ装置。
【請求項5】
複数の正方形乃至矩形のチップが貼り付けられた粘着シート体から前記チップを剥離して分離するものであり、前記複数のチップのうち分離対象とするターゲットチップを順次剥離するピックアップ方法であって、
前記請求項1記載の前記ピックアップ装置を用いて、複数のチップのうち分離対象とするターゲットチップを剥離する時に、前記ターゲットチップに加わる応力の均一化を図りつつターゲットチップを剥離していくことを特徴とするピックアップ方法。
【請求項6】
複数の正方形乃至矩形のチップが貼り付けられた粘着シート体から前記チップを剥離して分離するものであり、前記複数のチップのうち分離対象とするターゲットチップを順次剥離するピックアップ方法であって、
前記請求項2記載の前記ピックアップ装置を用いて、複数のチップのうち分離対象とするターゲットチップを剥離する時に、前記ターゲットチップに加わる応力の均一化を図りつつターゲットチップを剥離していくことを特徴とするピックアップ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体装置の製造工程において、ダイシングされた半導体チップ(以下、単にチップという。)を粘着シート体からピックアップする必要がある。従来のピックアップ装置として、粘着シート体を保持するステージと、このステージに対して進退する突き上げ台と、この突き上げ台によって突き上げられるニードルとを備えたものがある。すなわち、突き上げ台によって突き上げられたニードルによりステージの粘着シート体を裏面側から突いて、チップを粘着シート体から離脱させるように構成されている。
【0002】
しかしながら、ニードルを使用するピックアップ装置では、ニードルが粘着シート体を突き破ってチップを突き上げて粘着シート体から剥離する際に、ニードルの先端部が磨滅したり破損していたり曲がっていたりする場合がある。このような場合には、破損したニードルがチップ突き上げ時にチップ裏面を傷付けるおそれがある。また、磨滅や破損によって各ニードルの長さが相違することになって、チップが傾いて突き上げられる状態になり、隣合うチップ同士が衝突して傷付け合うおそれがある。
【0003】
さらに、チップはコレットにて吸着されて取り出される。しかしながら、チップが傾いて突き上げられれば、コレットによるチップの吸着ミスが発生する。コレットのチップ吸着ミスが発生すると、その後の作業に支障を来たすことになる。また、ニードルの突き上げによって、チップが損傷する場合もあった。
【0004】
そこで、近年このようなニードルを使用しないピックアップ装置(特許文献1)が提案されている。このピックアップ装置は、図11図13に示すように、チップ1が貼り付けられている粘着シート体2を保持するステージ3を備える。また、ステージ3には、その上面4aがステージ上面3aより突出する受け部(スライド体)4が付設される。このため、受け部4の外周側には、粘着シート体2との間に図12に示すように隙間6が形成される。さらに、ステージ3には、前記隙間6に連通される吸引孔5が設けられている。なお、この吸引孔5、5は、平面視において、その一部がチップ1の第1辺8aよりも外側に突出している。
【0005】
次に、前記ピックアップ装置を使用したピックアップ方法を説明する。まず、図12に示すように、上方からコレット(吸着コレット)7にてチップ1を吸着(保持)した状態で、吸引孔5を介して粘着シート体2を吸引する。これによって、隙間6のエアが矢印A1のように、吸引され、受け部4の周りの粘着シート体2が吸引され、チップ1の外周側において粘着シート体2が剥離する。
【0006】
その後、図13に示すように、受け部4を矢印B1の方向へ移動させる。つまり、第1辺8aに対面する第2辺8b側へ移動させる。これによって、受け部4にて受けられているチップ1の受け面積が減少していって、粘着シート体2の吸着(吸引)面積が増加して、最終的にこのチップ1から粘着シート体2を完全に剥離させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3209736号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来のピックアップ装置では、図14に示すように、ステージ3が、平面視において、円形である場合が多い。このように円形であれば、ピックアップするチップ1内で、剥離力に差が生じることになって、ピックアップするチップ1に加わる応力が不均一になってクラックや内部欠陥が生じるおそれがある。
【0009】
この欠点が生じる理由を図14を用いて説明する。すなわち、ステージ3は円盤体からなり、その上面に、スライド体4がスライド自在に嵌合する凹溝10が形成され、この凹溝10に、負圧室に連通される吸引孔5が開口している。また、スライド体4がこの凹溝10に遊嵌状に嵌合した状態では、各吸引孔5の開口部の半分乃至大半が上方に開口している。
【0010】
図示省略しているが、ステージ3の上面には、全面に亘って吸引孔が開口されている。このため、粘着シート体2がステージ3の上面に吸着される。
【0011】
この場合、スライド体4の側辺(長辺)4a、4aからステージ外端縁3bまでの寸法をS21とし、スライド体4のスライド方向上流端辺(短辺)4bからステージ外端縁3bまでの寸法をS22とし、スライド体4の上流側のコーナ4cからのステージ外端縁3bまでの寸法をS23とした場合、S21>S23>S22となる。
【0012】
すなわち、スライド体4の長辺4aからステージ外端縁3bまでの寸法S21よりも、スライド体4の短辺4bからステージ外端縁3bまでの寸法S22及びスライド体4のコーナ4cからステージ外端縁3bまでの寸法S23が短くなっている。
【0013】
しかしながら、ステージ外端縁3bまでの寸法に大小があれば、粘着シート体2の伸び量に差が生じ、そのため、剥離しようとするチップ1に作用する応力に差が生じる。すなわち、距離が短ければ、粘着シート体2が曲がりにくくなる。このような場合、初期剥離を誘発するために、スライド体4とステージ3との間に段差を設ければ、チップ1にクラックや内部欠陥が生じることになる。特に、チップ1が縦横比の大きな矩形のものでは、チップ1に加わる応力が不均一となる。
【0014】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、チップに加わる応力の均一化を図って、チップにクラックや内部欠損が生じにくいピックアップ装置およびピックアップ方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のピックアップ装置は、複数の正方形乃至矩形のチップが貼り付けられた粘着シート体から前記チップを剥離して分離するものであり、前記粘着シート体を受けるステージと、このステージに付設されて粘着シート体を介して前記ターゲットチップを支持する受け体と、負圧発生手段とを備え、前記受け体を移動させることにより、前記負圧発生手段にて発生している負圧によって前記粘着シート体と前記ターゲットチップ間の剥離を行うピックアップ装置であって、前記受け体を移動させることによって行う剥離動作において、前記ターゲットチップに加わる応力の均一化を可能とする均一化構造を備えているものである。
【0016】
本発明のピックアップ装置によれば、ターゲットチップを剥離する時には、均一化構造にて、ターゲットチップに加わる応力の均一化を図ることができる。これによって、チップにクラックや内部欠陥を生じることを有効に防止できる。
【0017】
前記受け体は、スライド方向と直交する幅方向寸法が、受け体の幅方向に対応する方向のチップの幅寸法よりも小さい正方形乃至矩形であるスライド体からなり、このスライド体のスライドにて、前記負圧発生手段にて発生している負圧によって前記ターゲットチップと粘着シート体とを剥離するものであってもよい。このように構成することによって、ターゲットチップの剥離時に、受け体であるスライド体をスライドさせることにより、安定して剥離していくことができる。
【0018】
前記スライド体のスライド方向下流側を除く3つの各外端辺から各外端辺に対向するステージの外端縁までの寸法、及び前記スライド体の3つの外端辺間で構成される2つの各コーナからステージの外端縁までの寸法を同一に設定することによって、前記均一化構造を構成することができる。
【0019】
このように構成することによって、スライド体からステージの外端縁までの距離の差がなく、ターゲットチップに対して剥離動作を行う際には、このチップに作用する応力の均一化を図ることができる。すなわち、簡単な構成によって、均一化構造を構成できる。
【0020】
前記スライド体の上面における前記3つの各外端辺側に隆起部を設けたものであってもよい。このように、隆起部を設けることによって、この隆起部に対応する部位のチップ乃至粘着シート体に屈曲部が形成され、しかも、このような隆起部を有さないスライド体と比べた場合、屈曲部の曲率が大きくなる。このため、チップに生じる応力が隆起部を有さないものに比べて大きくなって、応力に対応する復元力が大きくなり、チップのチップ支持面の端縁外側の部位を粘着シート体から効果的に分離できる利点がある。隆起部としては、チップと粘着シート体との開口角度が、15度以上確保できる形状のものが好ましい。
【0021】
前記受け体は、その外形寸法が前記チップの外形寸法よりも小さい正方形乃至矩形のブロック体からなり、このブロック体の鉛直方向移動にて、前記負圧発生手段にて発生している負圧によって前記ターゲットチップと粘着シート体とを剥離するものであってもよい。このように構成することによって、ターゲットチップの剥離時に、受け体であるブロック体を動作(上昇)させることにより、安定して剥離していくことができる。
【0022】
前記ブロック体の各外端辺から各外端辺に対向するステージの外端縁までの寸法、及びブロック体の各外端辺で構成される4つのコーナからステージの外端縁までの寸法を同一に設定することによって、前記均一化構造を構成することができる。このように構成することによって、ブロック体からステージの外端縁までの距離の差がなく、ターゲットチップに対して剥離動作を行う際には、このチップに作用する応力の均一化を図ることができる。すなわち、簡単な構成によって、均一化構造を構成できる。
【0023】
前記ステージは、平面視で長円形をなすことによって、受け体からステージの外端縁までの寸法の同一化を図ったものであってもよい。
【0024】
本発明のピックアップ方法は、複数の正方形乃至矩形のチップが貼り付けられた粘着シート体から前記チップを剥離して分離するものであり、前記複数のチップのうち分離対象とするターゲットチップを順次剥離するピックアップ方法であって、前記複数のチップのうち分離対象とするターゲットチップを剥離する時に、前記ターゲットチップに加わる応力の均一化を図りつつターゲットチップを剥離していくものである。
【0025】
本発明のピックアップ方法によれば、ターゲットチップを剥離する時にはターゲットチップに加わる応力の均一化を図ることができる。これによって、チップにクラックや内部欠陥を生じることを有効に防止できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、ターゲットチップのピックアップ動作時(ターゲットチップを剥離する時)に、ターゲットチップに加わる応力の均一化を図ることができる。これによって、チップにクラックや内部欠陥を生じることを有効に防止でき、チップを高品質のままリードフレームなどの基板に供給することができる。すなわち、チップから粘着シート体を剥がす際の剥離力が均等に作用するとともに、剥離角度が均一となって、チップを変形や損傷させることなく、安定して剥離できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のピックアップ装置のステージを示し、受け体としてのスライド体が装着された状態の平面図である。
図2】本発明のピックアップ装置のステージを示し、受け体としてのスライド体が装着された状態の側面図である。
図3】チップとスライド体との関係を示す拡大平面図である。
図4】ピックアップポジションでの粘着シート体の保持機構を示し、(a)は粘着シート体に張力を付与している状態の簡略図であり、(b)は張力解除状態の簡略図である。
図5】本発明に係るピックアップ装置を用いたダイボンダ(ボンディング装置)の簡略図である。
図6】ピックアップ工程を示し、(a)は剥離開始状態のステージの簡略断面図であり、(b)は剥離終了直前のステージの簡略断面図である。
図7】スライド体の長辺側の粘着シートの変形を示す簡略図である。
図8】スライド体の短辺側の粘着シートの変形を示す簡略図である。
図9】本発明の他のピックアップ装置を示し、受け体としてのブロック体が装着された状態の平面図である。
図10図9に示すブロック体を示し、(a)は拡大平面図であり、(b)は要部拡大断面図であり、剥離初期状態の簡略断面図である。
図11】従来のピックアップ装置の簡略平面図である。
図12】従来のピックアップ装置の簡略断面図である。
図13】従来のピックアップ装置を使用した剥離工程を示す簡略断面図である。
図14】従来のピックアップ装置の課題を説明するためのステージの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下本発明の実施の形態を図1図10に基づいて説明する。
【0029】
図1及び図2に本発明のピックアップ装置のステージを示す。このピックアップ装置は、図4に示すように、ピックアップポジションPでの粘着シート体12上に貼り付けられた複数の矩形薄肉のチップ(半導体チップ)11を、粘着シート体12から順次剥離して取り出す装置である。
【0030】
チップ11はウエハを素材とし、この素材を正方形や短冊状(矩形)に切断することによって最終製品となる。このため、チップ11には正方形や短冊状(矩形)のものである。すなわち、ウエハ全体として円形であり、図4(a)(b)に示すように、ダイシングにより個々のチップ11に分割され、複数のチップ11が粘着シート体12に貼り付けられている。
【0031】
この場合、図4(a)に示すように、分割された複数個のチップ11が貼着している粘着シート体12を、ウエハリング13に貼付けたままで、エキスパンドリング14とウエハリング押さえ15とで構成されたエキスパンド装置に設置する。そして、ウエハリング押さえ15でウエハリング13を押さえ、それによりエキスパンドリング14上に載った粘着シート体12を放射方向に伸張させて、個々のチップ11の間隔を広げる(エキスパンド)。
【0032】
その後に、図4(b)に示すように、ダイシング押さえ15を上方へ移動させて、エキスパンド装置にて粘着シート体12をエキスパンドしたまま、個々のチップ11を、本発明に係るピックアップ装置にて、粘着シート体12から剥離させつつコレット37(図5等参照)で吸着してピックアップする。
【0033】
本発明に係るピックアップ装置は、図1図2に示すステージ20(20A)と、このステージに付設される受け体21としてのスライド体25と、負圧発生手段22(図6参照)とを備える。この場合、ステージ20Aはその上面20aが長円形をなすブロック体からなり、その上面20aには、受け体21が嵌合する凹溝23が形成されている。
【0034】
図3に示すように、凹溝23の幅寸法をW1とし、チップ11の幅寸法をW2とし、スライド体25の幅寸法をW3とした場合、W1>W2>W3となる。凹溝23の長さ寸法をL1とし、チップ11の長さ寸法をL2とし、スライド体25の長さ寸法をL3としたときに、L3>L1>L2となる。ここで、幅寸法とは、スライド体25のスライド方向と直交する方向に寸法である。
【0035】
スライド体25の上面25aには、スライド体25の両長辺(外端辺32a、32b)側及び先端辺(外端辺32c)側に隆起部26(26a、26b、26c)が設けられている。また、凹溝23には、吸引孔27が設けられている。吸引孔27は、スライド体25のスライド方向上流側のコーナの吸引孔27a、27bと、コーナの吸引孔27a、27b間の上流端中央の吸引孔27cと、凹溝23の各長辺中央部の吸引孔27d、27eを有する。この場合、粘着シート体12を有さない状態で、各吸引孔27の一部乃至大半が、スライド体25を介して上方へ開口している。
【0036】
スライド体25は図示省略の駆動機構にて矢印G1、G2方向に凹溝23に沿った往復動が可能とされる。この場合の駆動機構としては、ボルト軸部材とこれに螺合するナット部材からなる往復動機構やシリンダ機構等の種々の公知公用の既存の機構を用いることができる。(後述するように剥離動作を行う際における、スライド体25がスライドする方向(矢印G1方向)を下流側と呼び反対方向を上流側と呼ぶ。)
【0037】
また、このステージ20Aの上面20aには、その全面に多数の吸引孔30が設けられている。そして、各吸引孔30及び吸引孔27には、負圧発生手段22が接続される。負圧発生手段22は真空ポンプやエジェクタ等の真空発生器で構成される。なお、ステージ20Aの上面20aには、吸引孔30を有さないものであってもよい。
【0038】
このため、粘着シート体12が、このステージ20A上に配置されて負圧発生手段22が駆動されれば、吸引孔30が負圧状態になって、粘着シート体12がステージ20の上面20aに吸着される。この場合、剥離すべきチップ(ターゲットチップ)11が図3に示すように、スライド体25に対応し、両側辺(両長辺)及び先端辺(スライド方向上流側の短辺)側において外側にスライド体25からはみ出している。また、このはみ出している部位に吸引孔27が対応している。
【0039】
ところで、図7図8に示すように、ステージ20Aの上面20aよりスライド体25の上面25aが高位とされる。隆起部26を除いた上面25aと、ステージ20Aの上面20aとの高低差H1、隆起部26の高さH2等は任意に設定できる。なお、この実施形態の隆起部26では、頂点部の断面形状(横断面形状)がアール形状とされる。この隆起部26の厚さ寸法Wとしての任意に設定できる。また、隆起部26として、内方から外端側向かって順次上傾する傾斜面でも構成できる。さらには、傾斜面として凹状の傾斜面であっても凸状の傾斜面であってもよい。
【0040】
そして、このステージ20Aでは、図1に示すように、その上面20aの形状を平面視において、長円形状とされる。すなわち、ステージ20Aは、スライド体25の4つの外端辺32a、32b、32c、32dに対向する4つの外端縁33a、33b、33c、33dと、コーナの円弧辺33e、33f、33g、33hとで長円形をなすように構成している。この場合、スライド体25からステージの外端縁33までの寸法の同一化を図っている。
【0041】
すなわち、スライド体25の外端辺32aからステージ20の外端縁33(外端縁33a)の寸法をS1とし、スライド体25の外端辺32bからステージ20の外端縁33(外端縁33b)の寸法をS2とし、スライド体25の外端辺32cからステージ20の外端縁33(外端縁33c)の寸法をS3としたときに、S1=S2=S3となる。また、スライド体25の3つの外端辺32a、32b、33cで構成される2つのコーナ32d、32eのうち、一のコーナ32dから外端縁33までの寸法をS4とし、他のコーナ32eから外端縁33までの寸法をS5としたときに、S4=S5となって、S1=S2=S3=S4=S5となる。この場合、S1(S2、S3、S4、S5)は、チップ11の大きさやスライド体25等の大きさによって相違する。
【0042】
ところで、このピックアップ装置は、ピックアップすべきチップ11の上方には、図6及び図7に示すような保持手段35が配置され、この保持手段35にて、剥離すべきチップ11を上方からその高さ位置を維持する。
【0043】
保持手段35は、チップ11を吸着するヘッド36を有する吸着部材(コレット)37にて構成している。ヘッド36は、その下端面36aに吸着孔が開口し、この吸着孔を介してチップ11が真空吸引され、このヘッド36の下端面36aにチップ11が吸着する。このため、この真空吸引(真空引き)が解除されれば、ヘッド36からチップ11が外れる。そして、このコレット37は例えばロボットのアームに連結され、後述するように、鉛直方向(図5の矢印A,B、C、D方向)、水平方向(図5の矢印E、F方向)、およびこれらを組み合わせた方向の移動が可能とされる。
【0044】
ピックアップ装置は、図5に示すようなダイボンダ(ボンディング装置)に用いられる。ボンディング装置は、ウエハから切り出されるワークとしてのチップ11をピックアップポジションPにてコレット(吸着コレット)37でピックアップして、リードフレームなどの基板40のボンディングポジションQに移送(搭載)するものである。
【0045】
すなわち、このピックアップ装置は、吸着コレット37が着脱自在に装着されるボンディングアームと、このボンディングアームを、X、Y、Z及びθ方向に駆動することができる駆動機構とを備える。この場合、駆動機構としては、ロボットアーム機構やXYZθ軸ステージ等で構成できる。また、ステージ20(20A)も、X、Y、Z及びθ方向に駆動することができる駆動機構にて、移動できるように構成されている。この場合も駆動機構もロボットアーム機構やXYZθ軸ステージ等で構成できる。後述するステージ20B(図9参照)も同様である。
【0046】
このため、コレット37は、ピックアップポジションPとボンディングポジションQとの間の矢印E、F方向の往復動とが可能とされ、かつ、矢印A、B、C、D、E、Fの移動が可能とされる。
【0047】
ところで、コンピュータは、基本的には、入力機能を備えた入力手段と、出力機能を備えた出力手段と、記憶機能を備えた記憶手段と、演算機能を備えた演算手段と、制御機能を備えた制御手段にて構成される。入力機能は、外部からの情報を、コンピュータに読み取るためのものであって、読み込まれたデータやプログラムは、コンピュータシステムに適した形式の信号に変換される。出力機能は、演算結果や保存されているデータなどを外部に表示するものである。記憶手段は、プログラムやデータ、処理結果などを記憶して保存するものである。演算機能は、データをプログラムの命令に随って、計算や比較して処理するものである。制御機能は、プログラムの命令を解読し、各手段に指示を出すものであり、この制御機能はコンピュータの全手段の統括をする。
【0048】
入力手段には、キーボード、マウス、タブレット、マイク、ジョイスティック、スキャナ、キャプチャーボード等がある。また、出力手段には、モニタ、スピーカー、プリンタ等がある。記憶手段には、メモリ、ハードディスク、CD・CD-R,PD・MO等がある。演算手段には、CPU等があり、制御手段には、CPUやマザーボード等がある。
このため、スライド体25の駆動機構、ボンディングアームの駆動機構、負圧発生手段22、及びステージ20の駆動機構等を1つの公知公用の既存のコンピュータで制御できる。
【0049】
次に前記のように構成されたピックアップ装置にて、ターゲットチップ11を粘着シート体12から剥離する方法を説明する。まず、ステージ20(20A)上に、複数のチップ11がマトリックス状に粘着されている粘着シート体12を配置する。この際、ステージ20Aを水平方向に移動させることによって、ターゲットチップ11がスライド体25の上方位置となるように粘着シート体12をステージ20Aの上面20aに配置する。すなわち、ターゲットチップ11とスライド体25とが図1に示す状態となるようにする。具体的には、平面視で、ターゲットチップ11の各長辺がスライド体25の長手方向の外端辺32a、32bよりも外方にはみ出し、ターゲットチップ11のスライド体25のスライド方向(剥離動作時のスライド方向)の上流側の短辺が、スライド体25のスライド方向上流側の外端辺32cからはみ出している状態で、ターゲットチップ11がステージ20Aの凹溝23からはみ出さない状態とする。
【0050】
この状態で、図6(a)に示すように、粘着シート体12をステージ20の上面20aに吸着するとともに、コレット37にて、ターゲットチップ11を上方から吸着(保持)した状態とする。この状態では、凹溝23の吸引孔27から粘着シート体12が吸引された状態となるので、スライド体25からはみ出している部位に対応している粘着シート体12が、チップ11から剥離した状態となる。
【0051】
その後、スライド体を図6(b)の矢印G1方向にスライド(移動)させていくことによって、スライド体25にて受けられているチップ11の面積(範囲)が減少していって、粘着シート体12に対する下方への吸引面積が増加して、最終的にこのチップ11から粘着シート体12を剥離(分離)することができる。このように剥離されたチップ11は、コレット37に吸着されたまま、リードフレームや基板40のボンディングポジションQに移送されて、この基板40に搭載される。
【0052】
その後は、次に剥離すべきチップ11をターゲットチップとして、上述した剥離動作を順次行うことによって、粘着シート体12のチップ11を順次ピックアップしていくことができる。
【0053】
ところで、本ピックアップ装置は、前記したように、ステージ20Aは、平面視において、長円形状であって、図1に示すように、S1=S2=S3=S4=S5となっている。このため、このステージ20Aは、ターゲットチップ11に加わる応力の均一化を可能とする均一化構造Mを構成することができる。
【0054】
すなわち、図14に示す従来の装置のように、スライド体4の側辺4aからステージ外端縁3bまでの寸法S21よりも、スライド体4の短辺4bからステージ外端縁3bまでの寸法S22及びスライド体4のコーナ4cからステージ外端縁3bまでの寸法S23が短くなっている場合、つまり、ステージ外端縁3bまでの寸法に大小があれば、粘着シート体2の伸び量に差が生じ、そのため、剥離しようとするチップ1に作用する応力に差が生じる。
【0055】
しかしながら、本発明では、スライド体25からステージ外端縁33までの寸法に差が無くなり、粘着シート体12の伸び量に差が生じず、そのため、剥離しようとするチップ11に作用する応力に差が生じない。また、図7は、図1のX1-X1線断面図を示し、図8図1のY1-Y1線断面図を示しているが、この図7及び図8から分かるように、本発明に係る装置では、粘着シート体12の変形が段差に追従している。
【0056】
このように、本発明のピックアップ装置では、ターゲットチップ11のピックアップ動作時(ターゲットチップ11を剥離する時)に、ターゲットチップ11に加わる応力の均一化を図ることができる。これによって、チップ11にクラックや内部欠陥を生じることを有効に防止でき、チップ11を高品質のままリードフレームなどの基板40に供給することができる。
【0057】
すなわち、チップ11から粘着シート体12を剥がす際の剥離力を均等に作用するとともに、剥離角度が均一となって、チップ11を変形や損傷させることなく、安定して剥離できる。
【0058】
ターゲットチップ11の剥離時に、受け体21であるスライド体25をスライドさせることにより、安定して剥離していくことができる。
【0059】
また、この実施形態のように、スライド体25のスライド方向下流側を除く3つの各外端辺32a、32b、32cから各外端辺32a、32b、32cに対向するステージ20Aの外端縁33までの寸法S1、S2、S3、及びスライド体25の3つの外端辺32a、32b、32c間で構成される2つの各コーナ33d,33eからステージ20Aの外端縁33までの寸法S4,S5を同一に設定することによって、均一化構造Mを構成することができる。
【0060】
このように構成することによって、スライド体25からステージ20Aの外端縁33までの距離の差がなく、ターゲットチップ11に対して剥離動作を行う際には、このチップ11に作用する応力の均一化を図ることができる。すなわち、簡単な構成によって、均一化構造Mを構成できる。
【0061】
スライド体25の上面25aにおける3つの各外端辺32a、32b、32c側に隆起部26(26a、26b、26c)を設けたものであってもよい。このように、隆起部26を設けることによって、この隆起部26に対応する部位のチップ乃至粘着シート体12に屈曲部が形成され、しかも、このような隆起部26を有さないスライド体25と比べた場合、屈曲部の曲率が大きくなる。このため、チップ11に生じる応力が隆起部を有さないものに比べて大きくなって、応力に対応する復元力が大きくなり、チップ11のチップ支持面の端縁外側の部位を粘着シート体12から効果的に分離できる利点がある。この場合、図7図8に示すように、隆起部26としては、チップ11と粘着シート体12との開口角度θ1が、15度以上確保できる形状のものが好ましい。また、隆起部26として、内方から外端側向かって順次上傾する傾斜面でも構成できる。さらには、傾斜面として凹状の傾斜面であっても凸状の傾斜面であってもよい。チップ11と粘着シート体12との開口角度θ1が、15度以上確保できれば、安定した剥離と、チップ11の損傷を有効に防止できる。また、隆起部26として、内方から外端側向かって順次上傾する傾斜面でも構成できる。さらには、傾斜面として凹状の傾斜面であっても凸状の傾斜面であってもよい。
【0062】
次に、図9は、受け体21が上下動するブロック体50を用いたピックアップ装置を示している。ブロック体50は、矩形筒状体の第1ブロック51と、この第1ブロック51に遊嵌状に内嵌される矩形筒状体の第2ブロック52と、この第2ブロック52に内嵌される板形状の第3ブロック53とからなる。
【0063】
また、ブロック体50は、ステージ20(20B)の嵌合孔55に遊嵌状に嵌合され、第1ブロック51の外面と嵌合孔55の内面との間に隙間56が設けられ、第2ブロック52の外面と第1ブロック51との間に隙間57が設けられ、第3ブロック53の外面と第2ブロック52の内面との間に隙間58が設けられている。
【0064】
この場合、ブロック体50の各第1・第2・第3ブロック51,52,53はそれぞれ、独立して上下動が可能となっている。すなわち、各ブロック51,52,53は、公知公用の上下動機構で上下動可能となっている。また、各ブロック51,52,53の上下動機構も、前記したコンピュータで制御される。
【0065】
また、第1ブロック52の内面コーナには、吸引溝60が形成され、第2ブロック52の内面コーナには、吸引溝61が形成される。このため、隙間56には、負圧発生手段22にて、負圧状態とすることができ、吸引溝60を介して隙間57を負圧状態とすることができ、吸引溝61を介して隙間58を負圧状態とすることができる。
【0066】
この場合、ブロック体50、つまり、第1ブロック51の各外端辺62a、62b、62c、62dから各外端辺62a、62b、62cに対向するステージ20(20B)の外端縁33a、33b、33c、33dまでの寸法、及びブロック体50つまり、第1ブロック51の各外端辺62a、62b、62c、62dで構成される4つのコーナ62e、62f、62g、62hからステージ20の外端縁33e、33f、33g、33hまでの寸法を同一に設定することによって、前記均一化構造Mを構成している。
【0067】
すなわち、第1ブロック51の外端辺62aからステージ20の外端縁33aまでの寸法をS11とし、第1ブロック51の外端辺62bからステージ20の外端縁33bまでの寸法をS12とし、第1ブロック51の外端辺62cからステージ20の外端縁33cまでの寸法をS13とし、第1ブロック51の外端辺62dからステージ20の外端縁33dまでの寸法をS14とし、第1ブロック51のコーナ62eからステージ20の外端縁33eまでの寸法をS15とし、第1ブロック51のコーナ62fからステージ20の外端縁33fまでの寸法をS16とし、第1ブロック51のコーナ62gからステージ20の外端縁33gまでの寸法をS17とし、第1ブロック51のコーナ62hからステージ20の外端縁33hまでの寸法をS18とした際に、S11=S12=S13=S14=S15=S16=S17=S18とする。なお、S11(S12、S13、S14、S15、S16、S17、S18)は、チップ11の大きさやスライド体25等の大きさによって相違する。
【0068】
また、ブロック体50の各ブロック51,52,53における上面の各外端辺62a、62b、62c、62d、63a、63b、63c、63d、64a、64b、64c、64d側には、隆起部65、66、67が設けられている。各隆起部65、66、67の断面形状としてとして、図7図8に記載の隆起部26の断面形状と同様なものであっても、内側から外端辺に向かって順次上傾となる傾斜面でももって構成してもよい。
【0069】
次に、このように構成されたステージ20(20B)を有するピックアップ装置を用いたチップ11の剥離動作(剥離方法)を説明する。なお、この場合のステージ20Bも図示省略の駆動機構にて、X、Y、Z及びθ方向に駆動することができる。また、ブロック体50の外形寸法を、ターゲットチップ11の外形寸法よりも小さくしている。このため、まず、粘着シート体12をこのステージ20Bに吸着させた状態では、ターゲットチップ11の4つの辺は、ブロック体50の4つの外端辺62a、62b、62c、62dより外方へ突出している。ターゲットチップ11の4つの辺は、嵌合孔55よりも外方へはみ出ない状態となっている。
【0070】
まず、ステージ20Bの上面20aから、ブロック体50全体を所定寸だけ上昇させた状態として、ステージ20の上面20aに粘着シート体12を吸着するとともに、吸着コレット37にてターゲットチップ11を吸着保持する状態とする。この場合、隙間56を負圧状態とする。このため、ターゲットチップ11の外周部の粘着シート体12が隙間56内に引き込まれる吸引力が付与されることになる。
【0071】
次に、第1ブロック51をそのままで、第2ブロック52及び第3ブロック53をさらに所定寸(ここでの所定寸とは、ステージ20Bの上面20aからブロック体50全体を上昇させた所定寸と同一でも相違するものであってもよい。)だけ上昇させる。この際、コレット37もこの所定寸だけ上昇させ、ターゲットチップ11の第2ブロック52より外側の粘着シート体12を剥がす。この場合、隙間57も吸引溝60を介して負圧状態となっている。
【0072】
その後、第3ブロック53のみをさらに所定寸(ここでの所定寸とは、ステージ20の上面20aからブロック体50全体を上昇させた所定寸と同一でも相違するものであってもよい。)だけ上昇させる。この際、吸着コレット37もこの所定寸だけ上昇させ、ターゲットチップ11の第3ブロック53より外側の粘着シート体12を剥がす。この場合、隙間58も吸引溝61を介して負圧状態となっている。
【0073】
これによって、粘着シート体12は、第3ブロック53の上面の範囲でターゲットチップ11に粘着されている状態となり、この状態から、コレット37を上昇させることによって、ターゲットチップ11をこの粘着シート体12から完全に剥離することができる。
【0074】
この図9図10に示すものでも、S11=S12=S13=S14=S15=S16=S17=S18とすることによって、均一化構造Mを構成している。すなわち、ブロック体50からステージ外端縁33までの寸法に差が無くなり、粘着シート体12の伸び量に差が生じず、そのため、剥離しようとするチップ11に作用する応力に差が生じない。すなわち、ターゲットチップ11のピックアップ動作時(ターゲットチップ11を剥離する時)に、ターゲットチップ11に加わる応力の均一化を図ることができる。これによって、チップ11にクラックや内部欠陥を生じることを有効に防止でき、チップを高品質のままリードフレームなどの基板40に供給することができる。
【0075】
また、受け体21をブロック体50を構成したものであっても、各ブロック体51,52,53に隆起部65,57,58を有するので、スライド体25の上面25aに設けられた隆起部26と同様に、粘着シート体12から効果的に分離できる利点がある。
【0076】
本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、図1のピックアップ装置において、図1に示すステージ20Aはその上面20aが平面であったが、上面中心から外周側に向かって上傾状となるすり鉢形状のものであってもよい。図9図10に示すように、ブロック体50を用いる場合、前記実施形態では、3つのブロック51,52,53を用いたが、2つのブロックを用いたものでも、4つ以上のブロックを用いたものであってもよい。また、エアを吸引するための吸引孔27,30としても、数や口径等は任意である。
【0077】
ところで、チップ11として、各実施形態では、縦横比が大きいいわゆる長尺チップを用いたが、縦横比が比較的小さい矩形チップであっても、各辺が同じの正方形チップであってもよい。ステージ20が平面視円形のもので、縦横比が大きい長尺チップ11をピックアップする場合、受け体21からステージ20の外端縁までの距離の差が大きく、本発明のように、均一化構造を備えたものが、このような縦横比が大きい長尺チップ11に対して最適になる。
【符号の説明】
【0078】
11 チップ(ターゲットチップ)
12 粘着シート体
20 ステージ
20a 上面
21 受け体
22 負圧発生手段
25 スライド体
26 隆起部
32a 外端辺
32b 外端辺
32c 外端辺
32d コーナ
32e コーナ
33、33a、33b、33c、33d 外端縁
33e、33f、33g、33h 外端縁(円弧辺)
50 ブロック体
62a 外端辺
62b 外端辺
62c 外端辺
62d 外端辺
62e、62f、62g、62h コーナ
M 均一化構造
図1
図2
図3
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図5
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図14