(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】燃料電池用不純物除去システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240227BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240227BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04 N
H01M8/04 Z
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2020130390
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉永 典裕
(72)【発明者】
【氏名】石井 恵奈
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽介
(72)【発明者】
【氏名】松岡 敬
(72)【発明者】
【氏名】山下 恭平
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-502702(JP,A)
【文献】特開2008-023497(JP,A)
【文献】特開2001-070736(JP,A)
【文献】特開2017-195052(JP,A)
【文献】特開2014-093269(JP,A)
【文献】特開2017-152132(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0120295(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主流路配管と、前記主流路配管に設置された、燃料ガスと酸化剤ガスを反応させて発電する燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気ブロアーと、を有する燃料電池システムの前記空気中の不純物を除去する燃料電池用不純物除去システムであって、
前記主流路配管の上流に配され、通常運転モードにおいて前記空気を外部から取り入れる主フィルターを有する主取入れ系統と、
前記主流路配管の上流に配され、前記主フィルターに付着した前記不純物を除去するフィルターリフレッシュモードにおいて前記空気を外部から取り入れる補助フィルターを有する補助取入れ系統と、
前記主フィルターに付着した前記不純物を除去する際に前記主流路配管から前記主フィルターに前記空気を導くフィルターリフレッシュ系統と、
を備えることを特徴とする燃料電池用不純物除去システム。
【請求項2】
前記主フィルターと前記補助フィルターは固定枠とともに互いに隣接して一体物を構成し前記一体物において互いに切り替え可能であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用不純物除去システム。
【請求項3】
前記一体物は、円板状であり、前記固定枠内で回転可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用不純物除去システム。
【請求項4】
前記フィルターリフレッシュモードにおいても前記燃料電池システムによる発電が可能に、前記主流路配管における前記空気の流れを確保可能な請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池用不純物除去システム。
【請求項5】
前記フィルターリフレッシュ系統は、前記主流路配管における前記空気ブロアーの出口から、前記主フィルターに戻る第1の戻り配管および前記第1の戻り配管に設けられた第1の戻り弁をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用不純物除去システム。
【請求項6】
前記フィルターリフレッシュ系統は、前記主流路配管における前記燃料電池スタックの出口から、前記主フィルターに戻る第2の戻り配管および前記第2の戻り配管に設けられた第2の戻り弁をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用不純物除去システム。
【請求項7】
前記燃料電池システムは、前記主流路配管において前記空気ブロアーと前記燃料電池スタックとの間に配されて、前記燃料電池スタックに供給される前記空気に湿分を加える加湿器をさらに有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用不純物除去システム。
【請求項8】
前記フィルターリフレッシュ系統は、前記主流路配管における前記加湿器の出口から、前記主フィルターに戻る第3の戻り配管および前記第3の戻り配管に設けられた第3の戻り弁をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池用不純物除去システム。
【請求項9】
前記フィルターリフレッシュ系統は、前記主流路配管における前記空気ブロアーの出口、前記加湿器の出口および前記燃料電池スタックの出口のそれぞれから、前記主フィルターに戻る第1の戻り配管、第3の戻り配管および第2の戻り配管および前記第1の戻り配管、前記第3の戻り配管および前記第2の戻り配管にそれぞれ設けられた第1の戻り弁、第3の戻り弁および第2の戻り弁をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池用不純物除去システム。
【請求項10】
前記燃料電池システムは、前記燃料電池スタックの空気側流路を通過した前記空気から湿分を除去する除湿器をさらに有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用不純物除去システム。
【請求項11】
前記フィルターリフレッシュ系統は、前記主流路配管における前記除湿器の出口から、前記主フィルターに戻る第4の戻り配管および前記第4の戻り配管に設けられた第4の戻り弁をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の燃料電池用不純物除去システム。
【請求項12】
前記フィルターリフレッシュ系統は、前記主流路配管におけ
る加湿器、前記燃料電池スタックおよび前記除湿器のそれぞれの出口から、前記主フィルターに戻る第3の戻り配管、第2の戻り配管および第4の戻り配管および前記第3の戻り配管、前記第2の戻り配管および前記第4の戻り配管にそれぞれ設けられた第3の戻り弁、第2の戻り弁および第4の戻り弁をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の燃料電池用不純物除去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池用不純物除去システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池のカソード側に酸化剤としての酸素あるいは空気等を送る際には、有害な不純物に注意が必要である。たとえば、固体高分子形燃料電池(PEFC)においては、その中心部分である膜/電極接合体(MEA)を構成するイオン交換膜や電極部分に使用されている触媒は、塩素イオン、硝酸イオンあるいは硫酸イオン等が吸着すると、電圧上昇による過電圧や寿命の低下等の悪影響を受ける。
【0003】
このため、燃料電池に、たとえば酸化剤として空気を送る際には、空気中のこのような成分が燃料電池に至らないように、空気ブロアーの上流側には、フィルターが設けられている。
【0004】
通常、フィルターは、たとえば不織布等よりなる層と、その前段に設けられたたとえばガラス繊維等からなる層とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-113692号公報
【文献】特許第3259782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に、船舶に使用される燃料電池システムでは、前述の理由から、海塩粒子に含まれる不純物イオンを十分に除去する対策が必要である。
【0007】
従来、船舶に使用される燃料電池システムでも、塩分除去フィルターを通して不純物を吸着し劣化を抑制しているが、特に、海塩の多い環境の下での使用となる。このため、塩分除去フィルターに海塩粒子が吸着し、その後、湿度環境によって海塩粒子が水を吸いつけてフィルターの圧損が上がるだけでなく、さらに潮解した海塩粒子が内部に吸い込まれて、塩分除去フィルターの下流側の燃料電池への供給空気中に移行するリスクがある。また、高湿度などの使用状況によっては劣化が早まることから、頻繁な交換が必要となるなどの課題がある。
その他、燃料電池システム以外の保護対象を有するシステムでも、船舶あるいは臨界地域に使用されるような海塩を含む空気を使用する場合、あるいは、換気や冷却に使用される場合にも、同様の課題がある。
【0008】
そこで、本発明の実施形態は、塩分除去フィルターの使用可能期間を延長可能な燃料電池用不純物除去システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システムは、主流路配管と、前記主流路配管に設置された、燃料ガスと酸化剤ガスを反応させて発電する燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックに空気を供給する空気ブロアーと、を有する燃料電池システムの前記空気中の不純物を除去する燃料電池用不純物除去システムであって、前記主流路配管の上流に配され、通常運転モードにおいて前記空気を外部から取り入れる主フィルターを有する主取入れ系統と、前記主流路配管の上流に配され、前記主フィルターに付着した前記不純物を除去するフィルターリフレッシュモードにおいて前記空気を外部から取り入れる補助フィルターを有する補助取入れ系統と、前記主フィルターに付着した前記不純物を除去する際に前記主流路配管から前記主フィルターに前記空気を導くフィルターリフレッシュ系統と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システムの構成を示す系統図である。
【
図2】第1の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システムの主フィルターの構成および配管との接続部分の構成を示す長手方向に沿った断面図である。
【
図3】第2の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システムの構成を示す系統図である。
【
図4】第2の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システムにおける回動式フィルターの回動式フィルター本体の正面図である。
【
図5】第2の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システムにおける回動式フィルターを示す正面図である。
【
図6】第2の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システムにおける回動式フィルターを示す
図5のVI-VI線矢視断面図である。
【
図7】第3の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システムの構成を示す系統図である。
【
図8】第4の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システムの構成を示す系統図である。
【
図9】第5の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システムの構成を示す系統図である。
【
図10】第6の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システムの構成を示す系統図である。
【
図11】第7の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システムの構成を示す系統図である。
【
図12】第7の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システムの有効性を説明するための参考用の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システムについて説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システム100の構成を示す系統図である。
図1は、燃料電池システム1の構成も併せて示している。
【0013】
まず、本実施形態に係る燃料電池用不純物除去システム100による空気が供給される対象となる燃料電池システム1の構成を説明する。
【0014】
燃料電池システム1は、主流路配管26に設けられた燃料電池スタック10、空気ブロアー21、加湿器22、および除湿器23を有する。なお、主流路配管26および後述するそれぞれの配管は、ダクトでもよい。以下、ダクトを含めて配管と呼称するものとする。
【0015】
燃料電池スタック10は、水素や炭化水素などの燃料ガスが流れるアノード電極側の燃料側流路12、酸化剤としての空気が流れるカソード電極側の空気側流路13、これらを隔離するイオン交換膜11を有する。空気側流路13は主流路配管26に接続されている。
【0016】
ここで、燃料側流路12を含む燃料側システム14は、空気側とは隔離され、空気側には開放されていない、空気側から見て閉じた体系となっている。
【0017】
運転状態においては、水素イオンがイオン交換膜11を介してカソード電極側に移動して空気中の酸素と反応する。この結果、燃料電池スタック10においては、電力の発生とともに、熱および水が発生する。
【0018】
空気ブロアー21は、後述する塩害防止フィルターを介して外部の空気を取り入れ、燃料電池スタック10に供給する。
【0019】
加湿器22は空気ブロアー21と燃料電池スタック10との間に配されて、空気ブロアー21により燃料電池スタック10に供給される空気を加湿する。
【0020】
除湿器23は、燃料電池スタック10からの湿分の多い空気を除湿する。除湿により分離された水は、純水戻り管23aを介して加湿器22に回収される。なお、加湿器22および除湿器23は、必ずしも、設けられていなくともよい。
【0021】
燃料電池システム1の、燃料電池スタック10、空気ブロアー21、加湿器22、および除湿器23は、収納容器25内に収納されている。また、空気ブロアー21、燃料電池スタック10、加湿器22、および除湿器23は、主流路配管26に配されている。
【0022】
次に、本実施形態に係る燃料電池用不純物除去システム100について説明する。
【0023】
燃料電池用不純物除去システム100は、主フィルター110を含む主取入れ系統、補助フィルター120を含む補助取入れ系統、通常運転モードから切り替わったフィルターリフレッシュモードにおいて主流路配管26から主フィルター110にリフレッシュ用の空気を送るためのフィルターリフレッシュ系統を有する。フィルターリフレッシュ系統は、主流路配管26から分岐して主フィルター110まで延びた戻り配管管および戻り配管に設けられた戻り弁を有する。
【0024】
なお、主フィルター110あるいは補助フィルター120は、燃料電池スタック10用の空気のみではなく、燃料電池システム1の機器あるいはその他の機器の冷却、あるいは換気用の空気も併せて通過させるものである場合であってもよい。
【0025】
ここで、通常運転モードとは、外気取入れ口の塩分除去フィルターとして主フィルター110が用いられ、主取入れ系統を経由して外気が取り入れられて、燃料電池スタック10により発電が行われる運転モードである。
【0026】
また、フィルターリフレッシュモードとは、主フィルター110のリフレッシュを行う運転モードである。フィルターリフレッシュモードにおいては、外気取入れ口の塩分除去フィルターとして、補助フィルター120が用いられ、補助取入れ系統を経由して外気が取り入れられる。なお、フィルターリフレッシュモードにおいても、燃料電池スタック10により発電が継続される。
【0027】
主取入れ系統は、主フィルター110、主フィルターに接続された主フィルター側配管141a、主フィルター側配管141aに設けられた主フィルター側止め弁151aを有する。主フィルター側配管141aは、燃料電池システム1の主流路配管26の入り口端部26a、すなわち、空気ブロアー21の上流側の端部と主フィルター110とを接続する。
補助取入れ系統は、補助フィルター120、補助フィルター側配管141b、補助フィルター側配管141bに設けられた補助フィルター側止め弁151bを有する。補助フィルター側配管141bは、主流路配管26の入り口端部26aと補助フィルター120を接続する。
フィルターリフレッシュ系統は、主流路配管26の加湿器22の出口側から分岐する戻り配管142hおよび戻り配管142hに設けられた戻り弁152h、戻り配管142hと主フィルター110を接続する戻り配管142を有する。
【0028】
燃料電池用不純物除去システム100の主フィルター110および補助フィルター120は、収納容器25に形成された開口に取り付けられており、以上に説明した各要素のうち、主フィルター110および補助フィルター120以外は、収納容器25内に収納されている。
【0029】
図2は、第1の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システム100の主フィルター110の構成および配管との接続部分の構成を示す長手方向に沿った断面図であり、
図1のA部の詳細を示している。
【0030】
主フィルター110は、たとえばガラス繊維等からなる第1層111、たとえば不織布等よりなる第2層112、これらを保持する固定枠113、および接続ピース118を有する。なお、主フィルター110のフィルター本体部分は、第1層111と第2層112とからの構成に限定されず、単一の層、あるいは3つ以上の層で構成された場合でもよい。
【0031】
接続ピース118は、一方の端部を固定枠113と接続し、二股に分岐して、分岐後の端部は、それぞれ、主フィルター側配管141aおよび戻り配管142と接続する。接続は、
図2に示すようなフランジによって結合してもよいし、あるいは溶接、ロー付け等によって接合してもよい。
【0032】
ここで、変形例を説明する。
以上の説明では、主流路配管26から主フィルター110にリフレッシュ用の空気を送るため系統をフィルターリフレッシュ系統としている。ここで、主流路配管26から補助フィルター120にリフレッシュ用の空気を送るための同様の系統を設けてもよい。この場合は、燃料電池用不純物除去システムにおいて、主フィルター110と補助フィルター120が、互いに同様の位置づけとなり、どちらのフィルターも主フィルターかつ補助フィルターとして機能させることができる。
【0033】
次に本実施形態に係る燃料電池用不純物除去システム100の作用を説明する。
【0034】
図1に示した系統図は、通常運転モードにおける状態を示している。すなわち、主フィルター側止め弁151aが開状態、補助フィルター側止め弁151bが閉状態、かつ、戻り弁152hが閉状態である。なお、以下、系統図においては、閉状態の弁を黒塗りで、開状態の弁を白塗りで表示している。
【0035】
この状態では、空気は、主フィルター110から取り入れられ、主流路配管26を流れて、空気ブロアー21、加湿器22、燃料電池スタック10、および除湿器23を経由して、最終的に、収納容器25外に排出される。
【0036】
通常運転モードからフィルターリフレッシュモードへの切り替えは、主取入れ系統と補助取入れ系統との切り替え、およびフィルターリフレッシュ系統により主流路配管26から主フィルター110への空気の還流により行われる。
燃料電池用不純物除去システム100このフィルターリフレッシュモードにおいては、主フィルター側止め弁151aが閉状態、補助フィルター側止め弁151bが開状態、かつ、戻り弁152hが開状態である。
【0037】
すなわち、主流路配管26には、補助フィルター側止め弁151bを介して補助フィルター120から外部の空気が供給され、燃料電池システム1の運転が継続可能である。
【0038】
また、主流路配管26の加湿器22の出口側の空気の一部が、戻り弁152hを介して、主フィルター110に供給される。このとき、主フィルター側止め弁151aが閉状態であるから、主フィルター110には逆圧が印加され、主フィルター110に供給される空気は、全量、主フィルター110から外部に放出される。
【0039】
この状態においては、主フィルター110を通過する空気は、通常運転モードの流れ方向とは逆方向に流れる。また、主フィルター110を流れる空気は、加湿器22を通過した湿分の多い加湿空気である。
【0040】
主フィルター110には逆圧が印加され、加湿空気が流れることによって、主フィルター110に付着している海塩粒子は加湿空気中の湿分に溶解し、海塩粒子の溶解により生じていた溶解物とともに、主フィルター110の外側(外気側)に吹き飛ばされ、主フィルター110に付着していた海塩粒子およびその溶解物は除去される。
【0041】
その効果の程度とし、フィルターの交換間隔は、フィルターリフレッシュを行わない従来の場合を比較例とすると、その約2倍程度の交換間隔にまで延長される。
【0042】
このように、燃料電池システム1の運転を継続しながら、フィルターリフレッシュがなされることにより、塩分除去フィルターとしての主フィルター110の使用可能期間を延長することができる。
【0043】
[第2の実施形態]
図3は、第2の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システム100aの構成を示す系統図である。
【0044】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本実施形態においては、第1の実施形態における補助フィルター120は設けられておらず、また、主フィルター110に代えて回動式フィルター130が設けられている。この結果、第1開口側配管141cおよび第1開口側止め弁151cが設けられている。その他の点では、第1の実施形態と同様である。
【0045】
図4は、第2の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システム100aにおける回動式フィルター130の回動式フィルター本体130aの正面図である。
【0046】
回動式フィルター本体130aは、第1ユニット131、第2ユニット132、固定枠133および区画部材134を有する。ほぼ半円形の領域を占める第1ユニット131および第2ユニット132は、第1の実施形態における主フィルター110のフィルター本体と同様に第1層111および第2層112(
図6)よりなる構成であり、区画部材134を介して互いに隣接し、円形の固定枠133内に周囲を固定されている。
【0047】
図5は、第2の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システム100aにおける回動式フィルター130を示す正面図であり、
図6は、
図5のVI-VI線矢視断面図である。
【0048】
回動式フィルター130は、回動式フィルター本体130a、回動駆動部135、伝達部136、およびこれらを収納する回動式フィルター枠137を有する。
【0049】
回動式フィルター本体130aは、電動機などの回動駆動部135によりたとえばベルトなどの伝達部136を介して回転駆動される。なお、
図5および
図6では、回動式フィルター枠137内部の回動式フィルター本体130aおよび回動駆動部135の支持部の図示を省略しているが、通常の機構で構成されている。
【0050】
回動式フィルター枠137は、中空容器であり、収納容器25の内側に向かう側の面には、それぞれ半円状の第1開口137aおよび第2開口137bが形成され、反対側の面には円形の第3開口137cが形成されている。回動式フィルター枠137の第1開口137aが形成された部分は第1開口側配管141cに接続され、第2開口137bが形成された部分は戻り配管142に接続されている。
【0051】
回動式フィルター本体130a、回動駆動部135および伝達部136が、回動式フィルター枠137に収納された状態では、第1開口137aが形成されている領域に回動式フィルター本体130aの第1ユニット131が、また、第2開口137bが形成されている領域に第2ユニット132が位置するように調整、設定される。
【0052】
このように設定することにより、回動式フィルター本体130aの第1ユニット131は、通常運転モードにおいては、主フィルターに対応する機能を有し、第2ユニット132は待機側フィルターとして機能する。
【0053】
回動式フィルター本体130aは、回動駆動部135の動作により、この状態から周方向に180度回転して、第1ユニット131と第2ユニット132が入れ替わった状態となる。なお、さらに第1ユニット131と第2ユニット132とが入れ替わった状態にするにあたっては、そのままの回転方向に180度回転してもよいし、元の回転角度位置に復帰することでもよい。
【0054】
次に、本実施形態に係る燃料電池用不純物除去システム100aの作用を説明する。
【0055】
図3に示した系統図は、通常運転モードにおける状態を示している。すなわち、第1開口側止め弁151cが開状態、かつ、戻り弁152hが閉状態である。
【0056】
この状態では、空気は、主フィルターの機能を有する第1ユニット131から取り入れられ、主流路配管26を流れて、空気ブロアー21、加湿器22、燃料電池スタック10、および除湿器23を経由して、最終的に、収納容器25外に排出される。
【0057】
燃料電池用不純物除去システム100aのフィルターリフレッシュモードへの移行は、第1開口側止め弁151cおよび戻り弁152hが開状態となり、かつ、回動式フィルター本体130aが周方向に180度回動することにより行われる。
回動式フィルター本体130aは、回動の結果、第1ユニット131が第2開口側、第2ユニット132が第1開口側となる。
【0058】
すなわち、主流路配管26には、第1開口側止め弁151cを介して回動式フィルター本体130aの補助フィルターの機能を有する第2ユニット132から外部の空気が供給され、燃料電池システム1の運転が継続可能である。
【0059】
また、主流路配管26の加湿器22の出口側の空気の一部が、戻り弁152hを介して、主フィルターに相当する第1ユニットにリフレッシュ用の空気として供給される。このとき、第2ユニット132には逆圧が印加され、第2ユニット132に供給される空気は、全量、主フィルター110から外部に放出される。この結果、第1の実施形態で説明したように、第2ユニット132に付着していた海塩粒子及びその溶解物は除去される。
【0060】
このように、フィルターリフレッシュを実施した後は、回動式フィルター本体130aを180度回動させて、第1ユニット131と第2ユニット132の位置を交換することにより、第2ユニット132を補助フィルターとして、また、第1ユニット131を主フィルターとして使用することができる。
【0061】
以上のように、本実施形態では、第1の実施形態の主フィルターと補助フィルターに代えて、回動式フィルター130とすることにより、第1フィルター131と第2フィルター132が、モードに応じて、主フィルターの機能と補助フィルターの機能を果たす。
この結果、第1の実施形態と同様の効果に加えて、配管系、弁類を削減できる。また、第1ユニット131と第2ユニット132は互に機能交換が可能であるから、第1フィルター131と第2フィルター132の交互の切り替えにより、塩害除去フィルターのより有効な利用が可能となる。
【0062】
[第3の実施形態]
図7は、第3の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システム100bの構成を示す系統図である。
【0063】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。第1の実施形態における戻り配管142hおよび戻り弁152hに代えて、主流路配管26の除湿器23の出口から分岐して戻り配管142に接続する戻り配管142dおよび戻り配管142dに設けられた戻り弁152dを有する。これ以外は、第1の実施形態と同様である。
【0064】
本実施形態に係る燃料電池用不純物除去システム100bでは、燃料電池スタック10を通過し温度が上昇した後に除湿器23を経た乾燥空気が主フィルター110に供給される。このため、乾燥状態で、加熱しながら主フィルター110に付着した海塩粒子を吹き飛ばすことができる。
【0065】
その効果の程度とし、フィルターの交換間隔は、フィルターリフレッシュを行わない従来の場合を比較例とすると、その約2.3倍程度の交換間隔にまで延長される。
【0066】
このように、燃料電池システム1の運転を継続しながら、燃料電池スタック10の熱を利用したフィルターリフレッシュがなされることにより、塩分除去フィルターとしての主フィルター110の使用可能期間を延長することができる。
【0067】
[第4の実施形態]
図8は、第4の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システム100cの構成を示す系統図である。
【0068】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。第1の実施形態における戻り配管142hおよび戻り弁152hに加えて、主流路配管26の燃料電池スタック10の出口から分岐して戻り配管142に接続する戻り配管142fおよび戻り配管142fに設けられた戻り弁152fをさらに有する。これ以外は、第1の実施形態と同様である。
【0069】
本実施形態に係る燃料電池用不純物除去システム100cでは、戻り弁152hおよび戻り弁152fを開状態としたフィルターリフレッシュモードにおいて、加湿器22出口の加湿空気と、反応により温度が上昇している燃料電池スタック10の出口の加熱空気の両者が、主フィルター110に供給される。このため、加湿空気で加熱しながら主フィルター110に付着した海塩粒子を溶解させ、吹き飛ばすことができる。
【0070】
なお、戻り弁152hと戻り弁152fのいずれか一方を先に開いた状態を経過した後に他方を開くような運用を行ってもよい。
【0071】
本実施形態の効果の程度とし、フィルターの交換間隔は、フィルターリフレッシュを行わない従来の場合を比較例とすると、その約2.7倍程度の交換間隔にまで延長される。
【0072】
このように、燃料電池システム1の運転を継続しながら、燃料電池スタック10の熱を利用したフィルターリフレッシュがなされることにより、塩分除去フィルターとしての主フィルター110の使用可能期間を延長することができる。
【0073】
[第5の実施形態]
図9は、第5の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システム100dの構成を示す系統図である。
【0074】
本実施形態は、第4の実施形態の変形である。第4の実施形態の構成に加えて、主流路配管26の空気ブロアー21の出口から分岐して、戻り配管142に合流する戻り配管142bおよび戻り配管142bに設けられた戻り弁152bをさらに有する。
【0075】
本実施形態は、フィルター第1リフレッシュモードおよびフィルター第2リフレッシュモードの2つのフィルターリフレッシュモードを有する。
【0076】
燃料電池用不純物除去システム100dのフィルター第1リフレッシュモードにおいては、主フィルター側止め弁151aが閉状態、補助フィルター側止め弁151bが開状態であり、主フィルター110への戻りラインの状態は、空気ブロアー21の出口からの戻り弁152bが開状態、加湿器22の出口からの戻り弁152hおよび燃料電池スタック10からの戻り弁152fが閉状態である。すなわち、第1リフレッシュモードすなわち、リフレッシュモードの最初の段階では、空気ブロアー21の出口の加湿されていない状態の空気が主フィルター110を通過する。この結果、まず、主フィルター110に付着した海塩粒子が吹き飛ばされる。
【0077】
燃料電池用不純物除去システム100dのフィルター第2リフレッシュモードにおいては、主フィルター110への戻りラインの状態が変化し、空気ブロアー21の出口からの戻り弁152bが閉状態、加湿器22の出口からの戻り弁152hおよび燃料電池スタック10からの戻り弁152fが開状態であり、第4の実施形態のフィルターリフレッシュモードと同じ状態である。すなわち、第2リフレッシュモードすなわち、リフレッシュモードの後半の段階では、加熱された空気、および加熱後加湿された空気が主フィルター110を通過する。この結果、第1リフレッシュモードで除去されなかった残りの海塩粒子が溶解しながら吹き飛ばされる。
【0078】
その効果の程度とし、フィルター交換間隔は、フィルターリフレッシュを行わない従来の場合を比較例とすると、その約2.7倍程度にまで延長される。
【0079】
このように、性状の異なる空気を段階的に通過させることにより、除去効果をより高めることができる。
【0080】
なお、本実施形態の変形として、同じ構成のもとで、第2リフレッシュモードを先に実施し、その後に第1リフレッシュモードを実施してもよい。この場合、前半で、海塩粒子を溶かして吹き飛ばし、後半で、乾燥させるので、より高い効果が望める。その効果の程度とし、フィルターの交換間隔は、フィルターリフレッシュを行わない従来の場合を比較例とすると、その約4.3倍程度の交換間隔にまで延長される。
【0081】
[第6の実施形態]
図10は、第6の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システム100eの構成を示す系統図である。
【0082】
本実施形態は、第4の実施形態の変形である。第4の実施形態の構成に加えて、主流路配管26の除湿器23の出口から分岐して、戻り配管142に合流する戻り配管142dおよび戻り配管142dに設けられた戻り弁152dをさらに有する。
図10に示した系統図は、通常運転モードにおける状態を示している。
【0083】
本実施形態は、2つのフィルターリフレッシュモードを有する。
【0084】
燃料電池用不純物除去システム100eのフィルター第1リフレッシュモードにおける主フィルター110への戻りラインの状態は、加湿器22の出口からの戻り弁152hおよび燃料電池スタック10からの戻り弁152fが開状態、除湿器23の出口からの戻り弁152dが閉状態である。すなわち、第4の実施形態のフィルターリフレッシュモードと同じ状態である。具体的には、第1リフレッシュモードすなわち、リフレッシュモードの前半の段階では、加熱された空気、および加熱後加湿された空気が主フィルター110を通過する。この結果、海塩粒子が乾燥状態となる。
【0085】
燃料電池用不純物除去システム100eのフィルター第2リフレッシュモードにおける主フィルター110への戻りラインの状態は、加湿器22の出口からの戻り弁152hおよび燃料電池スタック10からの戻り弁152fが閉状態、除湿器23の出口からの戻り弁152dが開状態であり、除湿器23からの加熱された乾燥空気が主フィルター110を通過する。この結果、第1リフレッシュモードで除去されなかった残りの海塩粒子が乾燥状態で吹き飛ばされる。
【0086】
その効果の程度とし、フィルターの交換間隔は、フィルターリフレッシュを行わない従来の場合を比較例とすると、その約5.3倍程度の交換間隔にまで延長される。
【0087】
このように、性状の異なる空気を段階的に通過させることにより、除去効果をより高めることができる。
【0088】
[第7の実施形態]
図11は、第7の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システム100fの構成を示す系統図である。
【0089】
本実施形態は、第2の実施形態の変形であり、第2の実施形態における加湿器22の出口から分岐する戻り配管142hおよび戻り配管142hに設けられた戻り弁152hに代えて、空気ブロアー21の出口から分岐する戻り配管142bおよび戻り配管142bに設けられた戻り弁152bが設けられている。
図11に示されている状態は、通常運転モードにおける状態である。
【0090】
燃料電池用不純物除去システム100fのフィルターリフレッシュモードにおいては、回動式フィルター130の第1ユニット131からの外気取入れを継続しながら、空気ブロアー21の出口の空気が直接に第2ユニット132に送られる。
【0091】
この場合、加湿されていない空気により、第2ユニット132に付着した海塩粒子を吹き飛ばす。
【0092】
その効果の程度とし、フィルターの交換間隔は、フィルターリフレッシュを行わない従来の場合を比較例とすると、その約1.7倍程度の交換間隔にまで延長される。
【0093】
ここで、回動式フィルター130を用いず、かつ、補助フィルターを用いない場合は、本実施形態のような効果を奏しないことを、
図12を用いて説明する。
【0094】
図12は、第7の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システムの有効性を説明するための参考用の系統図である。
図12は、リフレッシュモードの状態を示し、主フィルター側止め弁151aおよび戻り弁152ともに開状態である。
【0095】
この構成により、空気ブロアー21が主フィルター110を介して外気を取り入れて、空気ブロアー21の出口側から戻り弁152bを経由して主フィルター110に空気を戻す。しかしながら、主フィルター110に戻った空気は、主フィルター110を逆流することはない。代わりに、主フィルター110から取り入れる外気の量が減少する。
【0096】
空気ブロアー21には、外部から主フィルター110を介して流入した外気と、戻り弁152bを流れる再循環空気の合計量が流れるという状態に落ち着く。
【0097】
すなわち、
図12のような構成では、主フィルター110を用いたのでは効果を奏することができず、このような構成では、回動式フィルター130を用いることが有効であることが示される。
【0098】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態に係る燃料電池用不純物除去システムを説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
たとえば、実施形態では、対象とする燃料電池について、燃料電池スタック10がPEFCの場合を例にとって示したが、たとえば、りん酸形燃料電池(PAFC)等の他の方式の燃料電池の場合でも適用可能である。
【0099】
第2の実施形態は、第1の実施形態に回動式フィルター130を適用したものである。第3ないし第6の実施形態についても、それぞれに第2の実施形態の特徴と組み合わせて、回動式フィルター130を適用してもよい。
【0100】
また、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0101】
実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0102】
1…燃料電池システム、10…燃料電池スタック、11…イオン交換膜、12…燃料側流路、13…空気側流路、14…燃料側システム、21…空気ブロアー、22…加湿器、23…除湿器、23a…純水戻り管、25…収納容器、26…主流路配管、26a…入り口端部、100、100a、100b、100c、100d、100e、100f…燃料電池用不純物除去システム、110…主フィルター、111…第1層、112…第2層、113…固定枠、114…分離部、118…接続ピース、120…補助フィルター、130…回動式フィルター、130a…回動式フィルター本体、131…第1ユニット、132…第2ユニット、133…固定枠、134…区画部材、135…回動駆動部、136…伝達部、137…回動式フィルター枠、137a…第1開口、137b…第2開口、137c…第3開口、140…配管類、141a…主フィルター側配管、141b…補助フィルター側配管、141c…第1開口側配管、142、142b、142d、142f、142h…戻り配管、150…弁類、151a…主フィルター側止め弁、151b…補助フィルター側止め弁、151c…第1開口側止め弁、152、152b、152d、152f、152h…戻り弁