(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】自動運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/00 20060101AFI20240227BHJP
B60W 30/182 20200101ALI20240227BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20240227BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240227BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B60W30/00
B60W30/182
B60W40/02
B60W60/00
A01B69/00 303M
(21)【出願番号】P 2020155565
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大倉 康平
(72)【発明者】
【氏名】石川 新之助
(72)【発明者】
【氏名】越田 典志
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-135963(JP,A)
【文献】特開2016-082884(JP,A)
【文献】特開2017-211734(JP,A)
【文献】特開2019-126268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00~60/00
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場内において、作業車両の自動運転の制御を行う自動運転制御部と、
前記自動運転を行ったときの前記作業車両の位置である実績位置を測位する測位装置と、
を備え、
前記自動運転制御部は、前記自動運転で既に走行した前記実績位置と、前記圃場の
土壌の状態としての前記土壌の硬さ及び前記土壌の凸凹のいずれかとに基づいて、
前記圃場内において、前記土壌の硬さ及び前記土壌の凹凸のいずれかが所定範囲内となるように、前記自動運転を継続する際の前記作業車両の進行方向を設定する自動運転支援装置。
【請求項2】
前記自動運転制御部は、前記実績位置における前記土壌の硬さ又は土壌の凹凸のいずれかを推定し、前記推定した前記土壌の硬さ又は土壌の凹凸が、前記所定範囲外である場合、前記作業車両の進行方向を前記既に走行したエリアに向ける設定を行う請求項
1に記載の自動運転支援装置。
【請求項3】
前記実績位置に対応する土壌の前記土壌の硬さ又は土壌の凹凸を計測する計測装置を備え、
前記自動運転制御部は、前記計測装置が計測した前記土壌の硬さ又は土壌の凹凸が、前記所定範囲外である場合、前記作業車両の進行方向を前記既に走行したエリアに向ける設定を行う請求項
1に記載の自動運転支援装置。
【請求項4】
前記自動運転制御部は、前記所定範囲外である場合には、前記エリアにおいて、前記作業車両が通過する回数を設定する請求項
2又は
3に記載の自動運転支援装置。
【請求項5】
前記自動運転制御部は、前記圃場内において
、複数の
前記作業車両を
前記自動運転させる場合、前記土壌の硬さ又は土壌の凹凸が、前記所定範囲内となり且つ前記自動運転
させる前記作業車両の衝突を回避するように、前記複数の
前記作業車両の進行方向を設定する請求項
1~
4のいずれかに記載の自動運転支援装置。
【請求項6】
前記自動運転制御部は、最短距離又は燃費を向上させる走行を支援する運転優先モードと、前記実績位置と前記圃場の
前記土壌の状態により走行を支援する圃場優先モードとを有し、
前記運転優先モードと前記圃場優先モードとを切り換え可能である請求項1~
5のいずれかに記載の自動運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トラクタ等の作業車両の自動運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ等の作業車両を自動運転させるための走行経路(作業走行ライン)を作成する技術として特許文献1に示す技術が知られている。特許文献1の作業車は、圃場の外周部の位置データを取得する取得部と、位置データに基づいて走行機体が走行する作業走行ラインを圃場に設定する作業設定部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、作業走行ラインを作成することができ、作業車両は、作業走行ラインに沿って自動運転をしながら作業を行うことができる。作業走行ラインの設定は、作業の内容を中心として設定されることから、圃場の状態を加味されておらず、状況によっては、自動運転をしながら適正に作業を行うことができない場合があった。
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、自動運転後の圃場の状態を意図した状態に保つような自動運転を行うことができる自動運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
自動運転支援装置は、圃場内において、作業車両の自動運転の制御を行う自動運転制御部と、前記自動運転を行ったときの前記作業車両の位置である実績位置を測位する測位装置と、を備え、前記自動運転制御部は、前記自動運転で既に走行した前記実績位置と、前記圃場の土壌の状態としての前記土壌の硬さ及び前記土壌の凸凹のいずれかとに基づいて、前記圃場内において、前記土壌の硬さ及び前記土壌の凹凸のいずれかが所定範囲内となるように、前記自動運転を継続する際の前記作業車両の進行方向を設定する。
【0007】
前記自動運転制御部は、前記実績位置における前記土壌の硬さ又は土壌の凹凸のいずれかを推定し、前記推定した前記土壌の硬さ又は土壌の凹凸が、前記所定範囲外である場合、前記作業車両の進行方向を前記既に走行したエリアに向ける設定を行う。
【0008】
自動運転支援装置は、前記実績位置に対応する土壌の前記土壌の硬さ又は土壌の凹凸を計測する計測装置を備え、前記自動運転制御部は、前記計測装置が計測した前記土壌の硬さ又は土壌の凹凸が、前記所定範囲外である場合、前記作業車両の進行方向を前記既に走行したエリアに向ける設定を行う。
前記自動運転制御部は、前記所定範囲外である場合には、前記エリアにおいて、前記作業車両が通過する回数を設定する。
【0009】
前記自動運転制御部は、前記圃場内において、複数の前記作業車両を前記自動運転させる場合、前記土壌の硬さ又は土壌の凹凸が、前記所定範囲内となり且つ前記自動運転させる前記作業車両の衝突を回避するように、前記複数の前記作業車両の進行方向を設定する
前記自動運転制御部は、最短距離又は燃費を向上させる走行を支援する運転優先モードと、前記実績位置と前記圃場の前記土壌の状態により走行を支援する圃場優先モードとを有し、前記運転優先モードと前記圃場優先モードとを切り換え可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自動運転後の圃場の状態を意図した状態に保つような自動運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4A】圃場内における土壌の硬さの一例を示す図である。
【
図4B】圃場内における土壌の凹凸の一例を示す図である。
【
図5A】土壌の硬さを考慮しながら自動運転の一例を示す図である。
【
図5B】土壌の凹凸を考慮しながら自動運転の一例を示す図である。
【
図6A】通過前(鎮圧前)の土壌硬さのレベルと、通過後(鎮圧後)の土壌硬さとの関係を示した図である。
【
図6B】通過前(鎮圧前)の土壌の凹凸のレベルと、通過後(鎮圧後)の土壌の凹凸との関係を示した図である。
【
図7】自動運転を優先にした場合の走行ルートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図8は、作業車両の一例であるトラクタ1を示している。作業車両について、トラクタ1を例にあげ説明するが、作業車両は、トラクタに限定されず、田植機、コンバインであってもよい。
図8に示すように、トラクタ1は、走行装置7を有する走行車体3と、原動機4と、変速装置5とを備えている。走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rを有する装置である。前輪7Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。原動機4は、ディーゼルエンジン、電動モータ等である。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。走行車体3にはキャビン9が設けられ、当該キャビン9内には運転席10が設けられている。
【0013】
また、走行車体3の後部には、連結装置が設けられている。連結装置は、作業装置2と走行車体3とを連結し且つ昇降を行わないスイングドローバ、3点リンク機構等で構成されて昇降を行う昇降装置8等である。連結装置には、作業装置2が着脱可能である。作業装置2を連結装置に連結することによって、走行車体3によって作業装置2を牽引することができる。作業装置2は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、苗を植え付ける移植装置、灌水を行う灌水装置、農薬を散布する農薬散布装置、種を散布する播種散布装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。
【0014】
図2に示すように、昇降装置8は、リフトアーム8a、ロアリンク8b、トップリンク8c、リフトロッド8d、リフトシリンダ8eを有している。リフトアーム8aの前端部は、変速装置5を収容するケース(ミッションケース)の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム8aは、リフトシリンダ8eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ8eは、油圧シリンダから構成されている。リフトシリンダ8eは、制御弁36を介して油圧ポンプと接続されている。制御弁36は、電磁弁等であって、リフトシリンダ8eを伸縮させる。
【0015】
ロアリンク8bの前端部は、変速装置5の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク8cの前端部は、ロアリンク8bよりも上方において、変速装置5の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド8dは、リフトアーム8aとロアリンク8bとを連結している。ロアリンク8bの後部及びトップリンク8cの後部には、作業装置2が連結される。リフトシリンダ8eが駆動(伸縮)すると、リフトアーム8aが昇降するとともに、リフトロッド8dを介してリフトアーム8aと連結されたロアリンク8bが昇降する。これにより、作業装置2がロアリンク8bの前部を支点として、上方又は下方に揺動(昇降)する。
【0016】
図1に示すように、トラクタ1は、トラクタ1は、操舵装置29を備えている。操舵装置29は、ハンドル(ステアリングホイール)30と、ハンドル30の回転に伴って回転する回転軸(操舵軸)31と、ハンドル30の操舵を補助する補助機構(パワーステアリング機構)32と、を有している。補助機構32は、油圧ポンプ33と、油圧ポンプ33から吐出した作動油が供給される制御弁34と、制御弁34により作動するステアリングシリンダ35とを含んでいる。制御弁34は、制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁34は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁である。また、制御弁34は、操舵軸31の操舵によっても切換可能である。ステアリングシリンダ35は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)に接続されている。
【0017】
したがって、ハンドル30を操作すれば、当該ハンドル30に応じて制御弁34の切換位置及び開度が切り換わり、当該制御弁34の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ35が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。なお、上述した操舵装置29は一例であり、上述した構成に限定されない。
トラクタ1は、測位装置40を備えている。測位装置40は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星)により、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。即ち、測位装置40は、測位衛星から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、衛星信号に基づいて、トラクタ1の位置(例えば、緯度、経度)、即ち、車体位置を検出する。測位装置40は、受信装置41と、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)42とを有している。受信装置41は、アンテナ等を有していて測位衛星から送信された衛星信号を受信する装置であり、慣性計測装置42とは別に走行車体3に取付けられている。この実施形態では、受信装置41は、走行車体3、即ち、キャビン9に取付けられている。なお、受信装置41の取付箇所は、実施形態に限定されない。
【0018】
慣性計測装置42は、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等を有している。走行車体3、例えば、運転席10の下方に設けられ、慣性計測装置42によって、走行車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角等を検出することができる。
図1に示すように、トラクタ1は、表示装置50を備えている。表示装置50は、トラクタ1に関する様々な情報を表示したり、
図3に示すように、トラクタ1が自動運転を行う作業エリアA1を含む作業マップMP1の作成を行う。
【0019】
以下、表示装置50について詳しく説明する。
図1に示すように、表示装置50は、表示部51と、エリア作成部52と、記憶部53とを備えている。表示部51は、液晶パネル、タッチパネル、その他のパネル等で構成されていて、様々な情報を表示する。エリア作成部52は、CPU、電気電子回路、表示装置50に格納されたプログラム等から構成されている。
図3に示すように、エリア作成部52は、トラクタ1で作業を行う作業エリアA1を含む作業マップMP1の作成を行う。記憶部53は、不揮発性のメモリ等から構成されている。記憶部53は、作業マップMP1等を記憶する。
【0020】
図3に示すように、表示装置50に対して所定の操作を行うと、エリア作成部52は、表示部51にマップ作成画面M1を表示させる。マップ作成画面M1は、フィールド部65と、操作部(ソフトウェアスイッチ)66とを含んでいる。フィールド部65には、位置情報(緯度、経度)が割り当てられている。フィールド部65に設けられた操作部66を操作することによって、フィールド部65に、圃場の輪郭を示す圃場エリアH1と、圃場エリアH1内に作業エリアA1を設定することが可能である。操作部66は、マップ作成画面M1に表示されるポインタ67を、当該フィールド部65に対して、上、下、左、右に移動させる矢印66aと、決定ボタン66b、キャンセルボタン66cを有している。
【0021】
マップ作成画面M1において、矢印66aによって、ポインタ67を動かし、フィールド部65内において、圃場エリアH1の境界点を示す複数の点P10、P11、P12、P13を選択すると、エリア作成部52は、点P10、P11、P12、P13を結ぶ複数の線を圃場エリアH1の境界線として設定し、当該複数の線で囲まれた部分を圃場エリアH1として作成する。また、エリア作成部52は、圃場エリアH1の任意の位置に、フィールド部65に割り当てられた位置情報(緯度、経度)を対応付ける。
【0022】
また、圃場エリアH1の作成と同様に、矢印66aによって、ポインタ67を動かし、フィールド部65内において、作業エリアA1の境界を示す複数の点P20、P21、P22、P23を選択すると、エリア作成部52は、点P20、P21、P22、P23を結ぶ複数の線を作業エリアA1の境界線として設定し、当該複数の線で囲まれた部分を作業エリアA1として作成する。また、エリア作成部52は、作業エリアA1の任意の位置に、フィールド部65に割り当てられた位置情報(緯度、経度)を対応付ける。
【0023】
圃場エリアH1と作業エリアA1とが設定されると、圃場エリアH1及び作業エリアA1を含む作業マップMP1は、記憶部53に記憶される。
なお、上述した作業マップMP1の作成方法は、一例であり、限定されない。また、上述した実施形態では、圃場エリアH1と作業エリアA1との両方を設定していたが、作業エリアA1のみを設定して、当該作業エリアA1を作業マップMP1として記憶部53に記憶してもよい。
【0024】
図1は、自動運転支援装置を含むトラクタ1のブロック図を示している。トラクタ1は、制御装置60と、光学式センサ61とを備えている。制御装置60は、CPU、電子・電気回路等から構成されていて、トラクタ1における走行系の制御、作業系の制御等を行う装置である。
光学式センサ61は、トラクタ1の周囲の状況を検出するセンサであって、例えば、CCD(Charge Coupled Devices:電荷結合素子)イメージセンサを搭載したCCDカメラ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサを搭載したCMOSカメラ、赤外線カメラ、レーザセンサ(ライダー(LiDAR: Light Detection And Ranging))等である。レーザセンサ(ライダー)は、1秒間に何百万回ものパルス状の赤外線等を照射し、跳ね返って戻ってくるまでの時間を測定することで、走行体3周辺の3Dマップを構築することができるセンサである。
【0025】
制御装置60には、運転切換スイッチ71が接続されている。運転切換スイッチ71は、ON/OFFに切り換え可能なスイッチであって、ONである場合に制御装置60を自動運転モードに設定することができ、OFFである場合に制御装置60を手動運転モードに設定することができる。
制御装置60は、自動運転制御部63を有している。自動運転制御部63は、制御装置60に設けられた電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。
【0026】
自動運転制御部63は、トラクタ1(走行車体3)の自動運転を制御する。自動運転を行うには、まず、トラクタ1を、自動運転を行う圃場に移動させ、表示装置50で作成した作業マップMP1を呼び出す。自動運転制御部63は、作業マップMP1を読み込んだ後、自動運転モードになっている場合に、自動運転を開始する。自動運転制御部63は、自動運転の開始後、トラクタ1の周囲をセンシングし、センシングしたときのセンシングデータを参照しながら、トラクタ1の操舵、車速等を調整することで、自立して圃場内などを自動的に走行する。
【0027】
さて、自動運転制御部63は、自動運転を行うに際して、圃場の状態を参照しながら、トラクタ1の進行方向を設定する。圃場の状態とは、圃場の土壌状態、圃場に作付けした作物の生育状態等である。この実施形態では、圃場の状態として、圃場の土壌状態を例にあげ説明する。ここで、圃場の土壌状態とは、圃場における土壌の硬さ、又は、土壌の凹凸である。
【0028】
土壌の硬さは、例えば、土壌の硬さを測定する硬度測定装置を用いて圃場内の複数の箇所の硬度を予め測定していてもよいし、トラクタ1に耕耘装置を連結して当該耕耘装置で耕耘を行ったときの負荷から土壌の硬さを推定してもよい。例えば、耕耘装置において耕耘したときに、トラクタ1にかかる負荷と車体位置との関係を作業情報として収集しておき、当該土壌の反発力によって負荷が大きい場合は、土壌の硬度は高く、負荷が軽い場合は、土壌の硬度は低いとして、負荷から土壌の硬さを推定してもよい。なお、土壌の硬さの測定方法及び推定方法は、一例であり、限定されない。
【0029】
図4Aは、圃場内における土壌の硬さを示した一例である。
図4Aでは、圃場を複数の区画Qn(n=1,2,3・・・・)に区切った場合の土壌の硬さDn(n=1,2,3・・・・)を示している。
図4Aの土壌の硬さDnは、例えば、土壌の硬さを5つのレベルに分け(レベル分け)た値であり、最も数値が大きい場合(レベル5)では、土壌の硬度は高いことを示しており、最も数値が小さい場合(レベル1)では、土壌の硬度は低いことを示している。
【0030】
図1、
図4Aに示した区画Qnと土壌の硬さDnとの関係を示す土壌硬さデータは、制御装置60の記憶部43又は表示装置50に記憶されている。
図1に示すように、土壌硬さデータは、例えば、トラクタ1に通信装置69を設けておき、パーソナルコンピュータ、携帯端末、サーバ等の外部機器70から通信装置69へ送信することによりトラクタ1が取得してもよいし、土壌硬さデータを記憶した電子記憶媒体をトラクタ1に接続することでトラクタ1が取得してもよい。
【0031】
土壌の凹凸は、例えば、トラクタ1で作業を行ったときに、光学式センサ61でトラクタ1の前方を撮像装置(CCDカメラ、CMOSカメラ)等で撮像したり、レーザセンサ(ライダー)等でスキャンしておき、センシングデータ(撮像画像、スキャンデータ)を解析することにより、土壌の凹凸を求めることができる。また、トラクタ1を圃場内で走行させたときに、所定位置における測位装置40で検出された高さの変化から土壌の凹凸を推定してもよい。土壌の凹凸の測定方法及び推定方法は、一例であり、限定されない。
【0032】
図4Bは、圃場内における土壌の凹凸を示した一例である。
図4Bでは、
図4Aと同様に、圃場を複数の区画Qnに区切った場合の土壌の凹凸Knを示している。
図4Bの土壌の凹凸Knは、例えば、土壌の凹凸を5つのレベルに分け(レベル分け)た値であり、最も数値が大きい場合(レベル5)では、土壌が下方へ最も凹んでいること(最も凹状になっていること)を示しており、最も数値が小さい場合(レベル1)では、土壌が上方へ最も突出していること(最も凸状になっていること)を示している。
【0033】
図4Bの区画Qnと土壌の凹凸Knとの関係は、上述したように、センシングデータ(撮像画像、スキャンデータ)から求めたものであっても、測位装置40の高さの変化から求めたものであっても、その他の方法により求めたものであってもよい。
図4Bの区画Qnと土壌の凹凸Knとの関係を示す土壌凹凸データは、制御装置60の記憶部43又は表示装置50に記憶されている。また、土壌凹凸データは、例えば、トラクタ1に通信装置69を設けておき、パーソナルコンピュータ、携帯端末、サーバ等の外部機器70から通信装置69へ送信することによりを取得してもよいし、土壌凹凸データを記憶した電子記憶媒体をトラクタ1に接続することで取得してもよい。
【0034】
図5Aは、土壌の硬さDnを考慮しながら自動運転を行う一例を示している。
図5Aに示した土壌の硬さは、自動走行を開始する前の状態を示している。また、
図5Aの走行ルートL1は、トラクタ1が走行したルート(実績ルート)を示している。
図5Aでは、作業装置2は、トラクタ1に牽引された作業を行うことになるが、当該作業装置2は、土壌(対地)に対して、土を掘り起こすなどの土壌の硬さを変えない作業装置(肥料散布装置、灌水装置、農薬散布装置、播種散布装置、刈取装置、拡散装置、集草装置、成形装置)である。
【0035】
図5Aに示すように、自動運転制御部63は、圃場における土壌の硬さDnに基づいて、自動運転におけるトラクタ1の進行方向を設定する。具体的には、自動運転の開始位置J1において、トラクタ1の前方(前部)が
図5Aの下向きになっている場合、まずは、自動運転制御部63は、開始位置J1から所定距離、トラクタ1を直進させる。自動運転制御部63は、自動運転中、作業マップMP1及び当該作業マップMP1に対応する土壌硬さデータ(区画Qnに対応する土壌の硬さDn)を参照する。
【0036】
車体位置(実績位置)J2において、土壌の硬さD4は「レベル4」であるのに対し、当該実績位置J2に隣接する土壌の硬さD5が「レベル4」の区画Q5と、土壌の硬さD16が「レベル1」の区画Q16が存在する。ここで、自動運転制御部63は、区画Q5ではなく区画Q16の方向に、トラクタ1の進行方向を設定し右側へ操舵する。つまり、自動運転制御部63は、現在の実績位置J2を起点として、当該起点となった実績位置J2の周囲の土壌の硬さDnを参照し、土壌の硬さDnが所定範囲外である「レベル1」に対応する区画Q16にトラクタ1の進行方向を向ける。
【0037】
また、トラクタ1が車体位置(実績位置)J3に達すると、自動運転制御部63は、車体位置(実績位置)J2と同様に、車体位置(実績位置)J3の周囲の土壌の硬さDnを参照し、土壌の硬さDnが所定範囲外である「レベル1」に対応する区画Q17に進むようにトラクタ1を制御し、車体位置(実績位置)J3から、「レベル1」に対応する区画Q17~Q19までトラクタ1を直進させる。
【0038】
さらに、トラクタ1が車体位置(実績位置)J4に達すると、自動運転制御部63は、車体位置(実績位置)J4の周囲の土壌の硬さDnを参照し、土壌の硬さの「レベル」が小さい区画Q7にトラクタ1の進行方向に向け、トラクタ1を走行させる。トラクタ1が車体位置(実績位置)J5に達した以降も、自動運転制御部63は、土壌の硬さを参照し、土壌の硬さの「レベル」が小さい区画Qnに進行方向を向けながら、自動走行を継続する。
【0039】
上述したように、自動運転制御部63は、自動運転で既に走行した実績位置J2、J3、J4、J5と、土壌の硬さDnに基づいて、自動運転を継続する際のトラクタ1の進行方向を設定しながら、自動走行を行う。
さて、上述したように、区画Q16~区画Q19は、実績位置J3~J4に示すように、トラクタ1を走行させているため、当該トラクタ1の走行によって鎮圧されて、土壌の硬さD16~土壌の硬さD19は、トラクタ1が走行する前よりも硬くなっていると考えられる。自動運転制御部63は、トラクタ1を既に走行させたときの実績位置、即ち、区画Q16~区画Q19の土壌の硬さD16~土壌の硬さD19を推定する。
【0040】
図6Aは、通過前(鎮圧前)の土壌硬さDnのレベルと、通過後(鎮圧後)の土壌硬さDnとの関係を示した図である。自動運転制御部63は、
図6Aに示すような通過後(鎮圧後)の土壌硬さDnを推定する推定データを有している。
図6Aに示すように、通過前(鎮圧前)の土壌の硬さDnがレベル1である場合、1回トラクタで鎮圧すると、土壌の硬さDnはレベル2に相当する硬さになるものの、予め定められた所定範囲G1~G2外である。通過前(鎮圧前)の土壌の硬さDnがレベル2である場合、1回トラクタで鎮圧すると、土壌の硬さDnはレベル3に相当する硬さになり、土壌の硬さDnは、所定範囲G1~G2内になる。通過前(鎮圧前)の土壌の硬さDnがレベル3~レベル5である場合、1回トラクタが走行すると、土壌の硬さDnは増加するものの、所定範囲G1~G2内である。
【0041】
つまり、区画Q16~区画Q19において、トラクタ1を走行させて鎮圧させた場合であっても、自動運転制御部63は、区画Q16~区画Q19の土壌の硬さDnが所定範囲外であると、
図6Aの推定データから判断する。即ち、自動運転制御部63は、実績位置J3~J4における土壌の硬さD16~D19を推定し、推定した土壌の硬さD16~D19が所定範囲G1~G2外である場合、トラクタ1の進行方向を既に走行したエリア(区画Q16~区画Q19)に向ける設定を行う。
【0042】
詳しくは、
図5Aに示すように、自動運転制御部63は、車体位置(実績位置)J5~J6に向けてトラクタ1を走行させる。このとき、トラクタ1が区画Q19に近づいた時点で、区画Q19にトラクタ1を再度進入させ、車体位置(実績位置)J6~J10に示すように、区画Q16~区画Q19を少なくとも合計で2回通過するようにトラクタ1の進行方向を切り換えながら、自動運転を継続する。なお、自動運転制御部63は、圃場内において、作業エリアA1の全ての区画Qnで作業が行えるように、自動運転を行う。自動運転制御部63は、実績位置J10以降、作業エリアA1の残りの区画Qnの全てを走行させながら、実績位置J11、J12、J13を経て、作業終了位置J14にて自動走行を終了(停止)する。
【0043】
以上によれば、自動運転制御部63は、自動走行中の実績位置の周囲の区画Qnにおける土壌の硬さDnを参照し、実績位置から、土壌の硬さDnが小さい方にトラクタ1の進行方向を向ける操舵を行う。なお、自動運転制御部63は、自動走行中に、実績位置の周囲の区画Qnを参照したとき、実績位置に隣接する土壌の硬さDnが同じである場合は、トラクタ1を直進させることを優先する。
【0044】
図5Bは、土壌の凹凸Knを考慮しながら自動運転を行う一例を示している。
図5Bに示した土壌の凹凸は、自動走行を開始する前の状態を示している。
図5Bでも、作業装置2は、トラクタ1に牽引された作業を行うことになるが、当該作業装置2は、土壌(対地)に対して、土を掘り起こすなどの土壌の凹凸を変えない作業装置(肥料散布装置、灌水装置、農薬散布装置、播種散布装置、刈取装置、拡散装置、集草装置、成形装置)である。
【0045】
図5Bに示すように、自動運転制御部63は、圃場における土壌の凹凸Knに基づいて、自動運転におけるトラクタ1の進行方向を設定する。具体的には、自動運転の開始位置J20において、トラクタ1の前方(前部)が
図5Bの下向きになっている場合、まずは、自動運転制御部63は、開始位置J20から所定距離、トラクタ1を直進させる。自動運転制御部63は、自動運転中、作業マップMP1及び当該作業マップMP1に対応する土壌凹凸データ(区画Qnに対応する土壌の凹凸Kn)を参照する。
【0046】
車体位置(実績位置)J21において、土壌の凹凸K4は「レベル1」であるのに対し、当該実績位置J8に隣接する土壌の凹凸K9が「レベル4」の区画Q9と、土壌の凹凸K20が「レベル1」の区画Q20が存在する。ここで、自動運転制御部63は、区画Q9ではなく区画Q20の方向に、トラクタ1の進行方向を設定し右側へ操舵する。つまり、自動運転制御部63は、現在の実績位置J21を起点として、当該起点となった実績位置J21の周囲の土壌の凹凸Knを参照し、土壌の凹凸Knが所定範囲外である「レベル1」に対応する区画Q20にトラクタ1の進行方向を向ける。
【0047】
また、トラクタ1が車体位置(実績位置)J22に達すると、自動運転制御部63は、車体位置(実績位置)J21と同様に、車体位置(実績位置)J22の周囲の土壌の凹凸Knを参照し、土壌の凹凸Knが所定範囲外である「レベル1」に対応する区画Q19に進むようにトラクタ1を制御し、「レベル1」に対応する区画Q19~Q16までトラクタ1を直進させる。
【0048】
上述したように、自動運転制御部63は、自動運転で既に走行した実績位置J21~J23と、土壌の凹凸Knに基づいて、自動運転を継続する際のトラクタ1の進行方向を設定しながら、自動走行を行う。
さて、上述したように、区画Q4~区画Q8、区画Q16~区画Q20は、開始位置(実績位置)J20~J23に示すように、トラクタ1をさせているため、トラクタ1の走行によって鎮圧されて、土壌の凹凸K4~K8、土壌の凹凸K16~凹凸K20は、トラクタ1によって鎮圧されて高さが低くなっていると考えられる。自動運転制御部63は、トラクタ1を既に走行させたときの実績位置、即ち、区画Q4~区画Q8の土壌の凹凸K4~K8と、区画Q16~区画Q20の土壌の凹凸K16~凹凸K20とを推定する。
【0049】
図6Bは、通過前(鎮圧前)の土壌の凹凸Knのレベルと、通過後(鎮圧後)の土壌の凹凸Knとの関係を示した図である。自動運転制御部63は、
図6Bに示すような通過後(鎮圧後)の土壌の凹凸Knを推定する推定データを有している。
図6Bに示すように、通過前(鎮圧前)の土壌の凹凸Knがレベル1である場合、1回トラクタで鎮圧すると、土壌の凹凸Knはレベル2に相当する高さになるものの、予め定められた所定範囲G3~G4外である。通過前(鎮圧前)の土壌の凹凸Knがレベル2である場合、1回トラクタで鎮圧すると、土壌の凹凸Knはレベル3に相当する高さになり、土壌の凹凸Knは、所定範囲G3~G4内になる。通過前(鎮圧前)の土壌の凹凸Knがレベル3~レベル5である場合、1回トラクタが走行すると、土壌の凹凸Knは増加するものの、所定範囲G3~G4内である。
【0050】
つまり、区画Q4~区画Q8、区画Q16~区画Q20において、トラクタ1を走行させて鎮圧させた場合であっても、自動運転制御部63は、区画Q4~区画Q8の土壌の凹凸K4~K8と、区画Q16~区画Q20の土壌の凹凸K16~K20が所定範囲外であると、
図6Bの推定データから判断する。即ち、自動運転制御部63は、実績位置J4~J8における土壌の凹凸K4~K8を推定し、且つ、実績位置J22~J23における土壌の凹凸K16~K20を推定する。自動運転制御部63は、推定した土壌の凹凸K4~K8及び土壌の凹凸K16~K20が所定範囲G3~G4外である場合、トラクタ1の進行方向を既に走行したエリア(区画Q4~区画Q8、区画Q16~区画Q20))に向ける設定を行う。
【0051】
詳しくは、
図5Bに示すように、自動運転制御部63は、実績位置J23から実績位置J24に向けて走行させた際、トラクタ1が区画Q16に近づいた時点で、区画Q16にトラクタ1を再度進入させる。自動運転制御部63は、トラクタ1が車体位置(実績位置)J24に達すると、隣接する区画Q4にトラクタ1を再進入させ、区画Q4、Q5でターンU1の制御を行う。また、自動運転制御部63は、ターンU1後に実績位置J25へ向けて走行させた際、トラクタ1が区画Q18に近づいた時点で、区画Q18にトラクタ1を再度進入させ、車体位置(実績位置)J25に達すると、隣接する区画Q6にトラクタ1を再進入させ、区画Q6、Q7でターンU2の制御を行う。
【0052】
さらに、自動運転制御部63は、ターンU2後に実績位置J26へ向けて走行させた際、トラクタ1が区画Q20に近づいた時点で、区画Q20にトラクタ1を再度進入させ、車体位置(実績位置)J26に達すると、隣接する区画Q8にトラクタ1を再進入させ、区画Q8、Q9でターンU3の制御を行う。自動運転制御部63は、トラクタ1をターンU3させた後、作業エリアA1の残りの区画Qnの全てを走行させながら、作業終了位置J27にて自動走行を終了(停止)する。
【0053】
以上によれば、自動運転制御部63は、自動走行中の実績位置の周囲の区画Qnにおける土壌の凹凸Knを参照し、実績位置から、土壌の凹凸Knが小さい方にトラクタ1の進行方向を向ける操舵を行う。なお、自動運転制御部63は、自動走行中に、実績位置の周囲の区画Qnを参照したとき、実績位置に隣接する土壌の凹凸Knが同じである場合は、トラクタ1を直進させることを優先する。
【0054】
上述した実施形態では、土壌の硬さDnが所定範囲G1~G2内、土壌の凹凸Knが所定範囲G3~G4内になるように、自動運転制御部63は、走行ルートL1を設定していたが、自動運転制御部63は、土壌の硬さDnが所定範囲G1~G2外、又は、土壌の凹凸Knが所定範囲G3~G4外である場合は、エリア(区画Qn)において、トラクタ1が通過する回数を設定してもよい。例えば、土壌の硬さDnが「レベル1」、土壌の凹凸Knが「レベル1」である場合、いずれも少なくとも2回以上で所定範囲内になるため、エリア(区画Qn)において、トラクタ1が通過する回数(通過回数)を2回に設定する。トラクタ1の通過回数が2回に設定された場合は、自動運転制御部63は、区画Qnにおいて、通過回数になるように自動運転を行う。
【0055】
上述した実施形態では、トラクタ1を自動運転させた場合において、当該トラクタ1が既に通過したエリア(区画Qn)については、
図6A、
図6Bに示すような推定データを用いて、通過後(鎮圧後)の土壌の硬さDn、土壌の凹凸Knを推定していたが、
図1に示すように、計測装置68を用いて、トラクタ1の通過後(鎮圧後)の計測装置68が計測した土壌の硬さDn又は土壌の凹凸Knが、所定範囲内であるか否かを判断してもよい。
【0056】
計測装置68が土壌の硬さDnを計測する装置である場合、トラクタ1の後部であって車輪の後方に取り付けられている。計測装置68は、先端を圃場上の土に押し当てることで、土壌の硬さDnを計測する。自動運転制御部63は、例えば、トラクタ1が所定の区画Qnを通過後、当該トラクタ1を一旦停止させる。計測装置68は、トラクタ1が停止した時点で、所定の区画Qnの土壌の硬さDnを計測し、計測した結果(計測した土壌の硬さDn)は、自動運転制御部63に出力する。自動運転制御部63は、計測した土壌の硬さDnが所定範囲G1~G2である場合は、所定の区画Qnへの進入は行わず、計測した土壌の硬さDnが所定範囲G1~G2外である場合は、作業エリアA1において、少なくとも全ての区画Qnの走行(通過)が完了する前に、所定範囲G1~G2外となった区画Qnへトラクタ1を向けて、所定の区画Qnへの自動走行を行う。
【0057】
計測装置68が土壌の凹凸Knを計測する装置である場合は、光学式センサ61又は測位装置40である。計測装置68が光学式センサ61である場合、センシングデータに基づいて圃場の凹凸を演算する。また、計測装置68が測位装置40である場合、測位装置40における高さの変動を凹凸の値として演算する。この場合、自動運転制御部63は、例えば、トラクタ1が所定の区画Qnを通過後、光学式センサ61又は測位装置40で、所定の区画Qnの土壌の凹凸Knを演算し、演算した結果(演算した土壌の凹凸Kn)は、自動運転制御部63に出力する。自動運転制御部63は、演算した土壌の凹凸Knが所定範囲G3~G4である場合は、所定の区画Qnへの進入は行わず、演算した土壌の凹凸Knが所定範囲G3~G4外である場合は、作業エリアA1において、少なくとも全ての区画Qnの走行(通過)が完了する前に、所定範囲G3~G4外となった区画Qnへトラクタ1を向けて、所定の区画Qnへの自動走行を行う。
【0058】
自動運転制御部63は、現在の実績位置を起点として、起点とした実績位置の周囲の土壌の硬さDn、土壌の凹凸Knに基づいてトラクタ1の進行方向を設定している。ここで、トラクタ1の進行方向の設定を行うにあたって、人工知能の深層学習によって構築された学習済みモデル(進行設定モデル)を用いて、トラクタ1の進行方向を設定してもよい。進行設定モデルは、過去の実績データ、例えば、圃場における土壌の硬さDn、土壌の凹凸Knの分布と、実際の走行実績との実績データを、人工知能による学習を実行するコンピュータに格納して、当該コンピュータによって、進行設定モデルを構築する。
【0059】
進行設定モデルは、現在の実績位置から次の進行方向を求めるにあたって、最適な進行方向を求めるモデルであり、自動運転を行うにあたって、自動運転の開始から終了までの自動運転において、自動走行後の複数の区画Qnのそれぞれにおける土壌の硬さDn、土壌の凹凸Knのバラツキを最小化する進行方向を推定するモデルである。
なお、進行設定モデルは、自動運転を行うにあたって、自動運転の開始から終了までの自動運転において、自動運転の総距離又は燃費が少なく且つ土壌の硬さDn、土壌の凹凸Knのバラツキを最小化するモデルであってもよい。
【0060】
自動運転制御部63は、自動走行の開始後において、現在の実績位置と、圃場Qnの土壌の硬さDn、又は、土壌の凹凸Knを入力値として、進行設定モデルに適用し、進行設定モデルが出力した結果、即ち、進行設定モデルによって示された進行方向にトラクタ1を向けて、自動走行を継続する。
自動運転制御部63は、運転優先モードと、圃場優先モードとを有していてもよい。運転優先モードは、最短距離又は燃費を向上させる走行を支援するモードである。圃場優先モードは、実績位置と圃場の状態により走行を支援するモードである。運転優先モードと、圃場優先モードとは、運転席10の周囲に配置されたスイッチ、又は、表示装置50に表示されたスイッチ等により切り換えることが可能である。
【0061】
図7の走行ルートL1に示すように、運転優先モードに切り換えられた場合、自動運転制御部63は、作業エリアA1において、最短距離又は燃費が向上するように、トラクタ1の自動運転を行う。一方で、
図5A、
図5Bの走行ルートL1に示すように、圃場優先モードに切り換えられた場合、自動運転制御部63は、作業エリアA1において、圃場の土壌の硬さDnが所定範囲G1~G2内
になるように、或いは、圃場の凹凸Knが所定範囲G3~G4内になるように、自動走行を行う。
【0062】
上述した実施形態の走行ルートL1は、一例であり限定されない。
さて、作業エリアA1において、複数のトラクタ1で自動走行を行う場合がある。このような場合、自動運転制御部63は、土壌の硬さDn又は土壌の凹凸Knが、所定範囲内となり且つ自動運転のトラクタ1の衝突を回避するように、複数のトラクタ1の進行方向を設定する。例えば、自動運転制御部63は、複数台のトラクタ1で自動運転する場合、自己のトラクタ1とは異なる他のトラクタから実績位置(車体位置)を、通信等を用いて取得する一方、他のトラクタに自己のトラクタの実績位置(車体位置)を送信することで互いのトラクタ1が協調しながら自動運転を行う。即ち、自己のトラクタ1の自動運転制御部63及び、他のトラクタ1の自動運転制御部63は互いに実績位置を共有することで、互いが近づいたときは、衝突を回避する方向に移動することで、協調しながら自動運転を行うことができる。
【0063】
なお、作業エリアA1を自己のトラクタ1と他のトラクタ1とで分けてもよい。この場合、自動運転制御部63は、分けられた作業エリアA1のうち、自己のトラクタ1に対応する作業エリアA1において自動運転を行う。また、自動運転制御部63は、自立的に自動運転を行いながら、光学式センサ61で、自己のトラクタ1と異なる他のトラクタ1の自動運転の状況(走行ルート)をセンシングして、互いに干渉しないように、自動運転を実行してもよい。
【0064】
自動運転支援装置は、圃場内において、トラクタ(作業車両)1の自動運転の制御を行う自動運転制御部63と、自動運転を行ったときのトラクタ(作業車両)1の位置である実績位置を測位する測位装置40と、を備え、自動運転制御部63は、自動運転で既に走行した実績位置と、圃場の状態とに基づいて、自動運転を継続する際のトラクタ(作業車両)1の進行方向を設定する。これによれば、圃場の状態に基づいて、自動運転におけるトラクタ(作業車両)1の進行方向を設定しているため、圃場の状態に応じて、自動運転を行うことができる。即ち、自動運転支援装置は、例えば、自動運転の完了(終了)後の圃場の状態を良好な状態に保つことができる自動走行を実現することができる。
【0065】
自動運転制御部63は、圃場の状態として土壌状態と、実績位置とに基づいて、トラクタ(作業車両)1の進行方向を設定し、設定した方向にトラクタ(作業車両)1を向けて自動運転を継続する。これによれば、圃場の土壌状態を考慮した自動運転を行うことができ、自動運転の終了後に圃場の土壌状態をある程度、農作業者が意図した状態に保つことができる。
【0066】
自動運転制御部63は、土壌状態として、土壌の硬さ及び土壌の凹凸のいずれかと、実績位置とに基づいて、トラクタ(作業車両)1の進行方向を設定する。これによれば、土壌の硬さ又は土壌の凹凸を考慮した自動運転を行うことができ、自動運転の終了後に土壌の硬さ又は土壌の凹凸が、農作業者が意図した状態に保つことができる。
自動運転制御部63は、圃場内において、土壌の硬さ及び土壌の凹凸のいずれかが所定範囲内となるように、トラクタ(作業車両)1の進行方向を設定する。これによれば、自動運転の終了後に土壌の硬さ又は土壌の凹凸を所定範囲内に収めることができ、自動運転終了後の圃場において、作付けする作物の成長を促進することができる。
【0067】
自動運転制御部63は、実績位置における土壌の硬さ又は土壌の凹凸のいずれかを推定し、推定した土壌の硬さ又は土壌の凹凸が、所定範囲外である場合、トラクタ(作業車両)1の進行方向を既に走行したエリアに向ける設定を行う。これによれば、土壌の硬さ又は土壌の凹凸を所定範囲外であるときは、トラクタ(作業車両)1を自動運転によって簡単に所定範囲外のエリアを再度、走行させることができ、自動走行後の土壌の硬さ又は土壌の凹凸を所定範囲内にすることができる。
【0068】
自動運転支援装置は、実績位置に対応する土壌の土壌の硬さ又は土壌の凹凸を計測する計測装置68を備え、自動運転制御部63は、計測装置68が計測した土壌の硬さ又は土壌の凹凸が、所定範囲外である場合、トラクタ(作業車両)1の進行方向を既に走行したエリアに向ける設定を行う。これによれば、計測装置68によって自動運転後の土壌の硬さ又は土壌の凹凸を測定することができ、測定したときの土壌の硬さ又は土壌の凹凸が所定範囲外であるときは、自動走行によって、簡単に所定範囲外のエリアを再度、走行させることができ、自動走行後の土壌の硬さ又は土壌の凹凸を所定範囲内にすることができる。
【0069】
自動運転制御部63は、所定範囲外である場合には、エリアにおいて、トラクタ(作業車両)1が通過する回数を設定する。これによれば、トラクタ(作業車両)1が通過する回数によって、土壌の硬さ又は土壌の凹凸の度合いを調整することができる。
自動運転制御部63は、圃場内において、複数のトラクタ(作業車両)1を自動運転させる場合、土壌の硬さ又は土壌の凹凸が、所定範囲内となり且つ自動運転のトラクタ(作業車両)1の衝突を回避するように、複数のトラクタ(作業車両)1の進行方向を設定する。これによれば、同一の圃場に対して、複数のトラクタ(作業車両)1で作業を簡単に行うことができる。
【0070】
自動運転制御部63は、最短距離又は燃費を向上させる走行を支援する運転優先モードと、実績位置と圃場の状態により走行を支援する圃場優先モードとを有し、運転優先モードと圃場優先モードとを切り換え可能である。これによれば、最短距離又は燃費を向上させる自動走行と、自動走行後の圃場の状態を考慮した自動走行とを、運転者(農作業者)によって簡単に切り換えることができ、農作業者が意図した自動運転を実現することができる。
【0071】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
1 :作業車両(トラクタ)
40 :測位装置
63 :自動運転制御部
68 :計測装置
G1~G4:所定範囲
J3~J8、J10~J13、J21~J26:実績位置
Qn :圃場