(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】鉄道車両及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B61F 1/10 20060101AFI20240227BHJP
B61D 17/06 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B61F1/10
B61D17/06
(21)【出願番号】P 2020191975
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】松尾 直茂
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-163955(JP,A)
【文献】特開2019-111928(JP,A)
【文献】特開2020-164016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 1/10
B61D 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠と先頭構体と側構体と屋根構体とを有し、前記先頭構体の下端部と前記台枠の端梁とが溶接部を介して接合された車体を備えた鉄道車両であって、
前記端梁には、車両後方へ凹む第2端梁部を備えると共に、前記先頭構体の下端部には、床下で前記第2端梁部に向けて延設された補助梁部を備え、
前記溶接部には、前記第2端梁部と前記補助梁部とから水平状に延設された底板同士が上下方向で当接する当接部で少なくとも車両前後方向に溶接された第1溶接部を有することを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記第2端梁部は、車幅方向で左右に分割された前記端梁の間に配置され、前記第2端梁部には、車両前後方向に延設された中梁の前端部が接合されていること、
前記補助梁部は、前記中梁と対応する位置で車両前後方向に延設されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された鉄道車両において、
前記補助梁部の上端面と前記第2端梁部の上端面とに当接された塞ぎ板を備えること、
前記溶接部には、前記塞ぎ板の外縁部と前記補助梁部の上端面及び前記第2端梁部の上端面とが少なくとも車両前後方向に溶接された第2溶接部を有することを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載された鉄道車両の製造方法において、
前記端梁に前記第2端梁部を形成すると共に、前記第2端梁部に前記底板を延設して前記台枠を形成する台枠形成工程と、前記先頭構体の下端部に前記補助梁部を延設すると共に、前記補助梁部に前記底板を延設して前記先頭構体を形成する先頭構体形成工程と、前記台枠形成工程で形成した前記台枠と前記先頭構体形成工程で形成した前記先頭構体とを組み付ける組付け工程と、前記組付け工程の後に、前記第1溶接部を下向き溶接によって形成する第1溶接部形成工程とを備えていることを特徴とする鉄道車両の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載された鉄道車両の製造方法において、
前記端梁に前記第2端梁部を形成すると共に、前記第2端梁部に前記底板を延設して前記台枠を形成する台枠形成工程と、前記先頭構体の下端部に前記補助梁部を延設すると共に、前記補助梁部に前記底板を延設して前記先頭構体を形成する先頭構体形成工程と、前記台枠形成工程で形成した前記台枠と前記先頭構体形成工程で形成した前記先頭構体とを組み付ける組付け工程と、前記組付け工程の後に、前記第1溶接部を下向き溶接によって形成する第1溶接部形成工程と、前記第1溶接部形成工程の後に、前記補助梁部の上端面と前記第2端梁部の上端面とに前記塞ぎ板を当接させて、前記第2溶接部を下向き溶接によって形成する第2溶接部形成工程を備えていることを特徴とする鉄道車両の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両及びその製造方法に関し、詳しくは、先頭構体の下端部と台枠の端梁とが溶接品質が安定した溶接部を介して接合された鉄道車両及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両が、車高が高く且つ質量の大きな車両(例えば、大型トラック等)に衝突した場合には、鉄道車両の先頭構体が室内側へ変形して、台枠の端梁との接合部から引き剥がされて分断される懸念がある。このような衝突時における、先頭構体と台枠との分断を防止し得る補強構造を備えた鉄道車両の発明が、例えば、特許文献1、2に開示されている。
【0003】
すなわち、特許文献1には、
図12に示すように、台枠101の端梁102に立設された貫通路柱103の下部車内側に板状の補強部材104を車両前後方向に向けて配置し、当該補強部材104の上下方向に延びる側縁104aを貫通路柱103の下部車内側面103aに接合(溶接)すると共に、車両前後方向に延びる下縁104bを床板105に接合した鉄道車両100が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、
図13に示すように、台枠201と当該台枠201から上方に延びる筒状の柱部材202とを備え、柱部材202の車外側の側面部202aは、他の側面部の下端よりも下方に伸びる延在部203を有している。そして、延在部203の両側面と下面は、台枠201の車外側の面201aに溶接接合(w2、w3)されている鉄道車両200が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-53306号公報
【文献】特開2014-108635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された鉄道車両100では、台枠101の端梁102に立設された貫通路柱103の下部車内側に、板状の補強部材104を床面105上に起立させ車両前後方向に向けて配置する構造であるので、車体室内のスペースが犠牲になる問題があった。
【0007】
また、台枠101の端梁102に立設され起立状態の貫通路柱103の下部車内側面103aに対して、補強部材104の上下方向に延びる側縁104aを接合(溶接)する構造であるので、作業者は、溶接トーチを横向きにして上下方向に移動させながら溶接(横向き溶接)する必要があった。かかる横向き溶接は、溶融金属の垂れ落ちやヒケ、スラグの巻き込み等が生じやすいため、作業者の技量が溶接品質に影響しやすい。そのため、横向き溶接が必要な上記接合構造では、溶接部の強度が安定せず、必要な強度を確保し得ない可能性があり、作業者が高度の技量を持つ熟練者に限定され、細心の注意力を要するため、生産性が低下するという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載された鉄道車両200では、柱部材202の延在部203の両側面と下端面とが、台枠201の車外側の面201aに溶接接合(w2、w3)されている構造であるので、例えば、延在部203の両側面には、溶接トーチを横向きにして上下方向に移動させながら溶接(横向き溶接)する必要があり、延在部203の下端面には、溶接トーチを上向きにして水平方向に移動させながら溶接(上向き溶接)する必要があった。かかる横向き溶接や上向き溶接は、溶融金属の垂れ落ちやヒケ、スラグの巻き込み等が生じやすいため、作業者の技量が溶接品質に影響しやすい。そのため、横向き溶接や上向き溶接が必要な接合構造では、溶接部の強度が安定せず、必要な強度を確保し得ない可能性があり、作業者が高度の技量を持つ熟練者に限定され、細心の注意力を要するため、生産性が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、先頭構体と台枠の端梁との接合部において、車体室内のスペースを犠牲にすることなく、溶接部の品質と強度を安定して確保しやすく、作業性と生産性を向上できる接合構造を備えた鉄道車両及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両及びその製造方法は、以下の構成を備えている。
(1)台枠と先頭構体と側構体と屋根構体とを有し、前記先頭構体の下端部と前記台枠の端梁とが溶接部を介して接合された車体を備えた鉄道車両であって、
前記端梁には、車両後方へ凹む第2端梁部を備えると共に、前記先頭構体の下端部には、床下で前記第2端梁部に向けて延設された補助梁部を備え、
前記溶接部には、前記第2端梁部と前記補助梁部とから水平状に延設された底板同士が上下方向で当接する当接部で少なくとも車両前後方向に溶接された第1溶接部を有することを特徴とする。
【0011】
本発明においては、端梁には、車両後方へ凹む第2端梁部を備えると共に、先頭構体の下端部には、床下で第2端梁部に向けて延設された補助梁部を備えるので、第2端梁部と補助梁部とを床下に配置でき、車体室内のスペースを犠牲にすることを容易に回避できる。また、溶接部には、第2端梁部と補助梁部とから水平状に延設された底板同士が上下方向で当接する当接部で少なくとも車両前後方向に溶接された第1溶接部を有するので、第1溶接部の全部又は一部において、溶接トーチを下向きにして車両前後方向に移動させながら溶接(下向き溶接)することができる。すなわち、第1溶接部を下向き溶接によって形成することによって、横向き溶接や上向き溶接に比較して、溶接部の品質と強度が安定し、作業性と生産性が向上する。また、第1溶接部の全部又は一部は、第2端梁部と補助梁部とから水平状に延設された底板同士が上下方向で当接する当接部で車両前後方向に溶接されたものであるので、車両前後方向の溶接長が増大し、車両衝突時における先頭構体の下端部と台枠の端梁との剥離強度に対して、効果的に寄与できる。
【0012】
よって、本発明によれば、先頭構体と台枠の端梁との接合部において、車体室内のスペースを犠牲にすることなく、溶接部の品質と強度を安定して確保しやすく、作業性と生産性を向上できる接合構造を備えた鉄道車両を提供することができる。
【0013】
(2)(1)に記載された鉄道車両において、
前記第2端梁部は、車幅方向で左右に分割された前記端梁の間に配置され、前記第2端梁部には、車両前後方向に延設された中梁の前端部が接合されていること、
前記補助梁部は、前記中梁と対応する位置で車両前後方向に延設されていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、第2端梁部は、車幅方向で左右に分割された端梁の間に配置され、第2端梁部には、車両前後方向に延設された中梁の前端部が接合され、また、補助梁部は、中梁と対応する位置で車両前後方向に延設されているので、先頭構体が受ける衝突荷重を、補助梁部を介して中梁に直線的に伝達でき、補助梁部及び中梁がそれぞれの強度を効果的に発揮することができる。その結果、先頭構体と台枠との分断をより効果的に防止し得る。
【0015】
(3)(1)又は(2)に記載された鉄道車両において、
前記補助梁部の上端面と前記第2端梁部の上端面とに当接された塞ぎ板を備えること、
前記溶接部には、前記塞ぎ板の外縁部と前記補助梁部の上端面及び前記第2端梁部の上端面とが少なくとも車両前後方向に溶接された第2溶接部を有することを特徴とする。
【0016】
本発明においては、補助梁部の上端面と第2端梁部の上端面とに当接された塞ぎ板を備え、また、溶接部には、塞ぎ板の外縁部と補助梁部の上端面及び第2端梁部の上端面とが少なくとも車両前後方向に溶接された第2溶接部を有するので、塞ぎ板の外縁部を溶接する第2溶接部の全部又は一部において、溶接トーチを下向きにして車両前後方向に移動させながら溶接(下向き溶接)することができる。すなわち、第2溶接部を下向き溶接によって形成することによって、横向き溶接や上向き溶接に比較して、溶接部の品質と強度が安定し、作業性と生産性が向上する。また、第2溶接部の全部又は一部は、塞ぎ板の外縁部と補助梁部の上端面及び第2端梁部の上端面とが少なくとも車両前後方向に溶接されたものであるので、車両前後方向の溶接長が増大し、車両衝突時における先頭構体の下端部と台枠の端梁との剥離強度に対して、より一層効果的に寄与できる。さらに、先頭構体の下端部に延設された補助梁部と、車幅方向で左右に分割された端梁の間に配置され車両後方へ凹む第2端梁部とを、底板と塞ぎ板とで連結することによって、強度をより一層増加し得るボックス断面の補強構造を形成することができる。そのため、衝突荷重が、先頭構体の下端部から台枠の端梁に伝達されたとき、上記補強構造によって両者の分断をより一層効果的に防止できる。
【0017】
(4)(1)又は(2)に記載された鉄道車両の製造方法において、
前記端梁に前記第2端梁部を形成すると共に、前記第2端梁部に前記底板を延設して前記台枠を形成する台枠形成工程と、前記先頭構体の下端部に前記補助梁部を延設すると共に、前記補助梁部に前記底板を延設して前記先頭構体を形成する先頭構体形成工程と、前記台枠形成工程で形成した前記台枠と前記先頭構体形成工程で形成した前記先頭構体とを組み付ける組付け工程と、前記組付け工程の後に、前記第1溶接部を下向き溶接によって形成する第1溶接部形成工程とを備えていることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、端梁に第2端梁部を形成すると共に、第2端梁部に底板を延設して台枠を形成する台枠形成工程を備えているので、台枠形成工程において、端梁に第2端梁部を形成し、第2端梁部に底板を延設する際、それらの各部品を任意の向きに姿勢変更して、溶接品質が安定しやすい下向き溶接によって接合できる。また、先頭構体の下端部に補助梁部を延設すると共に、補助梁部に底板を延設して先頭構体を形成する先頭構体形成工程を備えているので、先頭構体形成工程において、先頭構体の下端部に補助梁部を延設し、補助梁部に底板を延設する際、それらの各部品を任意の向きに姿勢変更して、溶接品質が安定しやすい下向き溶接によって接合できる。
【0019】
また、台枠形成工程で形成した台枠と先頭構体形成工程で形成した先頭構体とを組み付ける組付け工程と、組付け工程の後に、第1溶接部を下向き溶接によって形成する第1溶接部形成工程とを備えているので、台枠と先頭構体とを組付けた姿勢のままで、第1溶接部の全部又は一部において、溶接トーチを下向きにして車両前後方向に移動させながら溶接(下向き溶接)することができる。すなわち、台枠と先頭構体とを任意の向きに姿勢変更することなく、台枠と先頭構体とをつなぐ第1溶接部を溶接品質が安定しやすい下向き溶接で形成することができ、併せて、車両前後方向の溶接長を増加させることができる。よって、衝突荷重が、先頭構体の下端部から台枠の端梁に伝達されたとき、両者の分断をより一層効果的に防止できる。
【0020】
(5)(3)に記載された鉄道車両の製造方法において、
前記端梁に前記第2端梁部を形成すると共に、前記第2端梁部に前記底板を延設して前記台枠を形成する台枠形成工程と、前記先頭構体の下端部に前記補助梁部を延設すると共に、前記補助梁部に前記底板を延設して前記先頭構体を形成する先頭構体形成工程と、前記台枠形成工程で形成した前記台枠と前記先頭構体形成工程で形成した前記先頭構体とを組み付ける組付け工程と、前記組付け工程の後に、前記第1溶接部を下向き溶接によって形成する第1溶接部形成工程と、前記第1溶接部形成工程の後に、前記補助梁部の上端面と前記第2端梁部の上端面とに前記塞ぎ板を当接させて、前記第2溶接部を下向き溶接によって形成する第2溶接部形成工程を備えていることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、端梁に第2端梁部を形成すると共に、第2端梁部に底板を延設して台枠を形成する台枠形成工程と、先頭構体の下端部に補助梁部を延設すると共に、補助梁部に底板を延設して先頭構体を形成する先頭構体形成工程と、台枠形成工程で形成した台枠と先頭構体形成工程で形成した先頭構体とを組み付ける組付け工程と、組付け工程の後に、第1溶接部を下向き溶接によって形成する第1溶接部形成工程と、第1溶接部形成工程の後に、補助梁部の上端面と第2端梁部の上端面とに塞ぎ板を当接させて、第2溶接部を下向き溶接によって形成する第2溶接部形成工程を備えているので、台枠と先頭構体とを組付けた姿勢のままで、第2溶接部の全部又は一部において、溶接トーチを下向きにして車両前後方向に移動させながら溶接(下向き溶接)することができる。すなわち、台枠と先頭構体とを任意の向きに姿勢変更することなく、台枠と先頭構体とをつなぐ第2溶接部を溶接品質が安定しやすい下向き溶接で形成することによって、車両前後方向の溶接長を更に増加させることができる。よって、衝突荷重が、先頭構体の下端部から台枠の端梁に伝達されたとき、両者の分断を更に一層効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、先頭構体と台枠の端梁との接合部において、車体室内のスペースを犠牲にすることなく、溶接部の品質と強度を安定して確保しやすく、作業性と生産性を向上できる接合構造を備えた鉄道車両及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態の一態様を表す鉄道車両の概略側面図である。
【
図2】
図1に示す鉄道車両におけるA視背面図である。
【
図4】
図2に示すC視平面図であって、(A)は塞ぎ板がない状態のC視平面図であり、(B)は塞ぎ板が有る状態のC視平面図である。
【
図9】
図1に示す鉄道車両の製造工程におけるフローチャート図である。
【
図10】
図4(A)に示す先頭構体のみの平面図である。
【
図11】
図4(A)に示す台枠のみの平面図である。
【
図12】特許文献1に開示された鉄道車両における先頭構体の概略断面図である。
【
図13】特許文献2に開示された鉄道車両における要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態の一態様を表す鉄道車両及びその製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本実施形態に係る鉄道車両の構成を詳細に説明した上で、他の実施形態に係る本鉄道車両の製造方法について詳細に説明する。
【0025】
<本鉄道車両の構成>
まず、本鉄道車両の構成について、
図1~
図8を用いて説明する。
図1に、本発明の実施形態の一態様を表す鉄道車両の概略側面図を示す。
図2に、
図1に示す鉄道車両におけるA視背面図を示す。
図3に、
図2に示すB視側面図を示す。
図4に、
図2に示すC視平面図を示す。具体的には、
図4(A)に、塞ぎ板がない状態のC視平面図を示し、
図4(B)に、塞ぎ板が有る状態のC視平面図を示す。
図5に、
図4(B)に示すD-D断面図を示す。
図6に、
図4(B)に示すE-E断面図を示す。
図7に、
図4(B)に示すF-F断面図を示す。
図8に、
図4(B)に示すG-G断面図を示す。
【0026】
図1~
図8に示すように、本鉄道車両10は、台枠1と先頭構体2と側構体3と屋根構体4とを有し、先頭構体2の下端部21と台枠1の端梁11とが溶接部YBを介して接合された車体10aを備えた鉄道車両10である。ここで、台枠1には、左右の側梁17の前端部と接合され車幅方向に延びる端梁11を備えている。当該端梁11は、車幅方向で左右に2分割されている。また、台枠1には、端梁11の後方に左右の側梁17に連結された枕梁18が形成され、当該枕梁18にレールRa上を走行する車輪51を装着する台車5が懸架されている。台枠1の上端には、仮想線で示す床板15が敷設されている。
【0027】
また、先頭構体2には、例えば、車幅方向中央部に貫通路24が形成され、貫通路24は、図示しない貫通路扉によって閉塞されている。貫通路24の両側には、妻窓25が形成されている。また、側構体3には、適宜位置に乗降扉31と側窓32とが形成されている。先頭構体2と側構体3との上端部には、屋根構体4が接合されている。本鉄道車両10は、上記の台枠1と先頭構体2と図示しない平妻(妻構体)と側構体3と屋根構体4とからなる概ね箱型に形成された車体10aを備え、通勤車両等として用いることができる。
【0028】
また、
図4~
図8に示すように、台枠1の端梁11には、車両後方へ凹む第2端梁部12を備えている。ここでは、第2端梁部12は、車幅方向で左右に分割された端梁11に対して、車両後方へコの字状に凹むように形成されている。具体的には、第2端梁部12は、左右に分割された端梁11の内端部から車両後方に延設された左右一対の第2縦端梁部12aと、左右の第2縦端梁部12aの後端部から車幅方向に延びて両者をつなぐ第2横端梁部12bと、を備えている。
【0029】
また、先頭構体2の下端部21には、床下で第2端梁部12に向けて延設された補助梁部22を備えている。補助梁部22は、車両中央部側で車両前後方向に延びる一対の補強部材として形成され、その後端部が第2横端梁部12bと接合されている。補助梁部22は、一対の第2縦端梁部12aの間で、車幅方向で略等間隔に配置されている。また、先頭構体2の下端部21には、左右に分割された端梁11の上端面111に当接して接合される端梁繋ぎ板211が車幅方向に延設されている。端梁繋ぎ板211の後端縁は、端梁11の上端面111に溶接され、溶接部YBの一部を構成する。溶接部YBは、例えば、MIG(Metal Inert Gas)溶接法によって形成することができる。
【0030】
また、溶接部YBには、第2端梁部12と補助梁部22とから水平状に延設された底板13、23同士が上下方向で当接する当接部TBで少なくとも車両前後方向に溶接された第1溶接部YB1を有する。第1溶接部YB1では、溶接トーチを下向きにして溶接(下向き溶接)することができる。下向き溶接であるため、作業者の技量が溶接品質に影響しにくい。そのため、作業者の熟練した技量が必要な横向き溶接や上向き溶接と異なり、溶接品質が安定し、必要な強度を確保しやすく、作業性も向上する。
【0031】
ここでは、補助梁部22から水平状に延設された底板23は、第2端梁部12から水平状に延設された底板13に対して上方から重なり、且つ第2端梁部12に対して所定の隙間を有するように略矩形状に形成されている。第1溶接部YB1は、補助梁部22から水平状に延設された底板23の外縁部と第2端梁部12から水平状に延設された底板13の上面とを、略L字状に溶接することによって形成されている。なお、底板23は、補助梁部22の側面下端部と先頭構体2の下端部21の内面とに接合されている。また、底板13は、第2縦端梁部12aの側面下端部と第2横端梁部12bの側面下端部とに接合されている。
【0032】
上述したように、第1溶接部YB1を下向き溶接によって形成することによって、横向き溶接や上向き溶接に比較して、溶接部YBの強度が安定し、作業性も生産性も向上する。また、第1溶接部YB1の一部は、車両前後方向に溶接されたものであるので、車両前後方向の溶接長が増大し、車両衝突時における先頭構体2の下端部21と台枠1の端梁11との剥離強度に対して、効果的に寄与できる。
【0033】
また、第2端梁部12から水平状に延設された底板13は、補助梁部22に対して所定の隙間を有するように略矩形状に形成されている。したがって、第2端梁部12の底板13が、補助梁部22に対して所定の隙間を有し、補助梁部22の底板23が、第2端梁部12に対して所定の隙間を有することになり、台枠1と先頭構体2とを組み付けるときに、互いの位置調整が可能となっている。
【0034】
なお、第2端梁部12には、車両前後方向に延設された中梁14の前端部が接合され、補助梁部22は、中梁14と対応する位置で車両前後方向に延設されていることが好ましい。ここでは、中梁14は、車両中央部側で車両中心に対して左右対称な位置に一対配置され、その後端部が枕梁18に接合されている。したがって、先頭構体2が車高が高く且つ質量の大きな車両(例えば、大型トラック等)に衝突した場合に、その衝突荷重を補助梁部22を介して中梁14に直線的に伝達でき、補助梁部22及び中梁14がそれぞれの強度を効果的に発揮することができる。その結果、先頭構体2と台枠1との分断をより効果的に防止し得る。
【0035】
また、補助梁部22の上端面221と第2端梁部12の上端面121とに下面が床板15の下面と同一面上に当接された塞ぎ板16を備え、溶接部YBには、塞ぎ板16の外縁部161と補助梁部22の上端面221及び第2端梁部12の上端面121とが少なくとも車両前後方向に溶接された第2溶接部YB2を有することが好ましい。この場合、第2溶接部YB2は、溶接トーチを下向きにして溶接(下向き溶接)することができる。ここでは、塞ぎ板16の板厚は、床板15の板厚と同一に形成されているが、両者の板厚は異なっても良い。例えば、塞ぎ板の板厚を、床板の板厚より厚く形成することによって、第2溶接部の強度をより一層高めることもできる。
【0036】
また、第2溶接部YB2の一部は、塞ぎ板16の外縁部161と補助梁部22の上端面221及び第2端梁部12の上端面121とが少なくとも車両前後方向に溶接されたものであるので、車両前後方向の溶接長が更に増大し、車両衝突時における先頭構体2の下端部21と台枠1の端梁11との剥離強度に対して、より一層効果的に寄与できる。
【0037】
さらに、先頭構体2の下端部21に延設された補助梁部22と、車幅方向で左右に分割された端梁11の間に配置され車両後方へ凹む第2端梁部12とを、底板13、23と塞ぎ板16とで連結することによって、強度をより一層増加し得るボックス断面の補強構造を形成することができる。そのため、衝突荷重が、先頭構体2の下端部21から台枠1の端梁11に伝達されたとき、上記補強構造によって両者の分断をより一層効果的に防止できる。
【0038】
<本鉄道車両の製造方法>
次に、本鉄道車両10の製造方法を、
図4、
図9~
図11を用いて説明する。
図9に、
図1に示す鉄道車両の製造工程におけるフローチャート図を示す。
図10に、
図4(A)に示す先頭構体のみの平面図を示す。
図11に、
図4(A)に示す台枠のみの平面図を示す。
【0039】
図4、
図9~
図11に示すように、鉄道車両10の製造方法は、端梁11に第2端梁部12を形成すると共に、第2端梁部12に底板13を延設して台枠1を形成する台枠形成工程(ステップS1)と、先頭構体2の下端部21に補助梁部22を延設すると共に、補助梁部22に底板23を延設して先頭構体2を形成する先頭構体形成工程(ステップS2)と、台枠形成工程(ステップS1)で形成した台枠1と先頭構体形成工程(ステップS2)で形成した先頭構体2とを組み付ける組付け工程(ステップS3)と、組付け工程(ステップS3)の後に、第1溶接部YB1を下向き溶接によって形成する第1溶接部形成工程(ステップS4)と、第1溶接部形成工程(ステップS4)の後に、補助梁部22の上端面221と第2端梁部12の上端面121とに塞ぎ板16を当接させて、第2溶接部YB2を下向き溶接によって形成する第2溶接部形成工程(ステップS5)を備えている。
【0040】
まず、
図11に示すように、台枠形成工程(ステップS1)において、端梁11に第2端梁部12を形成すると共に、第2端梁部12に底板13を延設して台枠1を形成する。すなわち、車幅方向で左右に分割された端梁11を水平状にセットして、端梁11の内端部に車両後方へ凹む第2端梁部12を、下向き溶接によって接合する。具体的には、左右に分割された端梁11の内端部に、車両後方に延設された左右一対の第2縦端梁部12aを下向き溶接によって接合し、左右の第2縦梁12aの後端部に、車幅方向に延びて両者をつなぐ第2横端梁部12bを下向き溶接によって接合する。また、第2端梁部12の側面下端部には、水平状に延設された底板13を、下向き溶接によって接合する。さらに、水平状にセットした側梁17の前端部には、第2端梁部12と底板13とが接合された端梁11の外端部を、下向き溶接によって接合する。そして、必要に応じて、第2端梁部12の第2横端梁部12bには、車両前後方向に延設された中梁14の前端部を、下向き溶接によって接合する。上述したように、台枠1の単体の状態で、端梁11と第2端梁部12と底板13と中梁14とを夫々接合することができるので、各部材を任意の姿勢(水平状の姿勢)にセットして、夫々下向き溶接によって溶接品質が安定した溶接部YBを形成することができる。
【0041】
次に、
図10に示すように、先頭構体形成工程(ステップS2)において、先頭構体2の下端部21に補助梁部22を延設すると共に、補助梁部22に底板23を延設して先頭構体2を形成する。すなわち、先頭構体2を水平状にセットして、その下端部21に、垂直状に起立する補助梁部22を下向き溶接によって接合する。また、先頭構体2の下端部21に、垂直状に起立する端梁繋ぎ板211を下向き溶接によって接合する。また、先頭構体2の下端部21に、垂直状に起立する底板23を、補助梁部22の側面下端部に当接させた状態で、下向き溶接によって接合する。さらに、先頭構体2を垂直状にセットして、底板23の姿勢を水平状に変更して、底板23と補助梁部22の側面下端部とを下向き溶接によって接合する。上述したように、先頭構体2の単体の状態で、先頭構体2の下端部21と補助梁部22と底板23と端梁繋ぎ板211とを夫々接合することができるので、各部材を任意の姿勢(水平状の姿勢)にセットして、夫々下向き溶接によって溶接品質が安定した溶接部YBを形成することができる。
【0042】
次に、組付け工程(ステップS3)において、台枠形成工程(ステップS1)で形成した台枠1と先頭構体形成工程(ステップS2)で形成した先頭構体2とを組み付ける(
図3を参照)。ここでは、台枠1は、水平状にセットされ、先頭構体2は、垂直状にセットされている。したがって、先頭構体2の下端部21に延設された端梁繋ぎ板211は、左右に分割された端梁11の上端面111に当接している。また、補助梁部22から水平状に延設された底板23は、第2端梁部12から水平状に延設された底板13と上方から重なった当接部TBにて当接している。
【0043】
次に、
図4(A)に示すように、第1溶接部形成工程(ステップS4)において、第1溶接部YB1を下向き溶接によって形成する。すなわち、補助梁部22から水平状に延設された底板23は、第2端梁部12から水平状に延設された底板13と上方から重なり、且つ第2端梁部12に対して所定の隙間を有するように略矩形状に形成されているので、第1溶接部YB1は、補助梁部22から水平状に延設された底板23の外縁部と第2端梁部12から水平状に延設された底板13の上面とを、下向き溶接によって略L字状に溶接する。この場合、台枠1と先頭構体2とを任意の向きに姿勢変更することなく、第1溶接部YB1を溶接品質が安定しやすい下向き溶接によって形成することができる。
【0044】
次に、
図4(B)に示すように、第2溶接部形成工程(ステップS5)において、補助梁部22の上端面221と第2端梁部12の上端面121とに塞ぎ板16を当接させて、第2溶接部YB2を下向き溶接によって形成する。すなわち、補助梁部22の上端面221と第2端梁部12の上端面121とに対して、塞ぎ板16を水平状に当接させてセットし、塞ぎ板16の外縁部161と補助梁部22の上端面221及び第2端梁部12の上端面121とを、下向き溶接によって略矩形環状に溶接する。この場合、台枠1と先頭構体2とを任意の向きに姿勢変更することなく、第2溶接部YB2を溶接品質が安定しやすい下向き溶接によって形成することができる。
【0045】
以上、詳細に説明したように、本鉄道車両10の製造方法によれば、台枠形成工程(ステップS1)と、先頭構体形成工程(ステップS2)と、第1溶接部形成工程(ステップS4)と、第2溶接部形成工程(ステップS5)とにおいて、各溶接部YB(YB1、YB2)を溶接品質が安定した下向き溶接によって形成することができ、溶接部の強度を安定して確保しやすい接合構造を備えた鉄道車両10の製造方法を提供することができる。
【0046】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両10によれば、端梁11には、車両後方へ凹む第2端梁部12を備えると共に、先頭構体2の下端部21には、床下で第2端梁部12に向けて延設された補助梁部22を備えるので、第2端梁部12と補助梁部22とを床下に配置でき、車体室内のスペースを犠牲にすることを容易に回避できる。また、溶接部YBには、第2端梁部12と補助梁部22とから水平状に延設された底板13、23同士が上下方向で当接する当接部TBで少なくとも車両前後方向に溶接された第1溶接部YB1を有するので、第1溶接部YB1の全部又は一部において、溶接トーチを下向きにして車両前後方向に移動させながら溶接(下向き溶接)することができる。すなわち、第1溶接部YB1を下向き溶接によって形成することによって、横向き溶接や上向き溶接に比較して、溶接部YBの強度が安定し、作業性と生産性が向上する。また、第1溶接部YB1の全部又は一部は、第2端梁部12と補助梁部22とから水平状に延設された底板13、23同士が上下方向で当接する当接部TBで車両前後方向に溶接されたものであるので、車両前後方向の溶接長が増大し、車両衝突時における先頭構体2の下端部21と台枠1の端梁11との剥離強度に対して、効果的に寄与できる。
【0047】
よって、本実施形態によれば、先頭構体2と台枠1の端梁11との接合部において、車体室内のスペースを犠牲にすることなく、溶接部YBの品質と強度を安定して確保しやすく、作業性と生産性を向上できる接合構造を備えた鉄道車両10を提供することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、第2端梁部12は、車幅方向で左右に分割された端梁11の間に配置され、第2端梁部12には、車両前後方向に延設された中梁14の前端部が接合され、また、補助梁部22は、中梁14と対応する位置で車両前後方向に延設されているので、先頭構体2が受ける衝突荷重を、補助梁部22を介して中梁14に直線的に伝達でき、補助梁部22及び中梁14がそれぞれの強度を効果的に発揮することができる。その結果、先頭構体2と台枠1との分断をより効果的に防止し得る。
【0049】
また、本実施形態によれば、補助梁部22の上端面221と第2端梁部12の上端面121とに下面が床板15の下面と同一面上に当接された塞ぎ板16を備え、溶接部YBには、塞ぎ板16の外縁部161と補助梁部22の上端面221及び第2端梁部12の上端面121とが少なくとも車両前後方向に溶接された第2溶接部YB2を有するので、第2溶接部YB2の全部又は一部において、溶接トーチを下向きにして車両前後方向に移動させながら溶接(下向き溶接)することができる。すなわち、第2溶接部YB2を下向き溶接によって形成することによって、横向き溶接や上向き溶接に比較して、溶接部YBの強度が安定し、作業性と生産性が向上する。また、第2溶接部YB2の全部又は一部は、塞ぎ板16の外縁部161と補助梁部22の上端面221及び第2端梁部12の上端面121とが少なくとも車両前後方向に溶接されたものであるので、車両前後方向の溶接長が更に増大し、車両衝突時における先頭構体2の下端部21と台枠1の端梁11との剥離強度に対して、より一層効果的に寄与できる。さらに、先頭構体2の下端部21に延設された補助梁部22と、車幅方向で左右に分割された端梁11の間に配置され車両後方へ凹む第2端梁部12とを、底板13、23と塞ぎ板16とで連結することによって、強度をより一層増加し得るボックス断面の補強構造を形成することができる。そのため、衝突荷重が、先頭構体2の下端部21から台枠1の端梁11に伝達されたとき、上記補強構造によって両者の分断をより一層効果的に防止できる。
【0050】
また、本鉄道車両の製造方法に係る他の実施形態によれば、端梁11に第2端梁部12を形成すると共に、第2端梁部12に底板13を延設して台枠1を形成する台枠形成工程(ステップS1)を備えているので、台枠形成工程(ステップS1)において、端梁11に第2端梁部12を形成し、第2端梁部12に底板13を延設する際、それらの各部品を任意の向きに姿勢変更して、溶接品質が安定しやすい下向き溶接によって接合できる。また、先頭構体2の下端部21に補助梁部22を延設すると共に、補助梁部22に底板23を延設して先頭構体2を形成する先頭構体形成工程(ステップS2)を備えているので、先頭構体形成工程(ステップS2)において、先頭構体2の下端部21に補助梁部22を延設し、補助梁部22に底板23を延設する際、それらの各部品を任意の向きに姿勢変更して、溶接品質が安定しやすい下向き溶接によって接合できる。
【0051】
また、台枠形成工程(ステップS1)で形成した台枠1と先頭構体形成工程(ステップS2)で形成した先頭構体2とを組み付ける組付け工程(ステップS3)と、組付け工程(ステップS3)の後に、第1溶接部YB1を下向き溶接によって形成する第1溶接部形成工程(ステップS4)とを備えているので、台枠1と先頭構体2とを組付けた姿勢のままで、第1溶接部YB1の全部又は一部において、溶接トーチを下向きにして車両前後方向に移動させながら溶接(下向き溶接)することができる。すなわち、台枠1と先頭構体2とを任意の向きに姿勢変更することなく、台枠1と先頭構体2とをつなぐ第1溶接部YB1を溶接品質が安定しやすい下向き溶接で形成することができ、併せて、車両前後方向の溶接長を増加させることができる。よって、衝突荷重が、先頭構体2の下端部21から台枠1の端梁11に伝達されたとき、両者の分断をより一層効果的に防止できる。
【0052】
また、本他の実施形態によれば、端梁11に第2端梁部12を形成すると共に、第2端梁部12に底板13を延設して台枠1を形成する台枠形成工程(ステップS1)と、先頭構体2の下端部21に補助梁部22を延設すると共に、補助梁部22に底板23を延設して先頭構体2を形成する先頭構体形成工程(ステップS2)と、台枠形成工程(ステップS1)で形成した台枠1と先頭構体形成工程(ステップS2)で形成した先頭構体2とを組み付ける組付け工程(ステップS3)と、組付け工程(ステップS3)の後に、第1溶接部YB1を下向き溶接によって形成する第1溶接部形成工程(ステップS4)と、第1溶接部形成工程(ステップS4)の後に、補助梁部22の上端面221と第2端梁部12の上端面121とに塞ぎ板16を当接させて、第2溶接部YB2を下向き溶接によって形成する第2溶接部形成工程(ステップS5)を備えているので、台枠1と先頭構体2とを組付けた姿勢のままで、第2溶接部YB2の全部又は一部において、溶接トーチを下向きにして車両前後方向に移動させながら溶接(下向き溶接)することができる。すなわち、台枠1と先頭構体2とを任意の向きに姿勢変更することなく、台枠1と先頭構体2とをつなぐ第2溶接部YB2を溶接品質が安定しやすい下向き溶接で形成することができ、併せて、車両前後方向の溶接長を更に増加させることができる。よって、衝突荷重が、先頭構体2の下端部21から台枠1の端梁11に伝達されたとき、両者の分断を更に一層効果的に防止できる。
【0053】
<変形例>
以上、本実施形態に係る鉄道車両10及びその製造方法を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本実施形態では、第2端梁部12は、車幅方向で左右に分割された端梁11に対して、車両後方へコの字状に凹むように形成されている。しかし、必ずしも、これに限る必要はない。例えば、第2端梁部12は、車幅方向の中間部に形成された端梁11の両端部に対して、車両後方へコの字状又はL字状に凹むように形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、先頭構体の下端部と台枠の端梁とが溶接品質が安定した溶接部を介して接合された鉄道車両及びその製造方法として利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 台枠
2 先頭構体
3 側構体
4 屋根構体
5 台車
10 鉄道車両
10a 車体
11 端梁
12 第2端梁部
13 底板
14 中梁
15 床板
16 塞ぎ板
21 下端部
22 補助梁部
23 底板
121、221 上端面
161 外縁部
TB 当接部
S1 台枠形成工程
S2 先頭構体形成工程
S3 組付け工程
S4 第1溶接部形成工程
S5 第2溶接部形成工程
YB 溶接部
YB1 第1溶接部
YB2 第2溶接部