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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/00 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
B43K21/00 Z
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020219984
(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公開番号】P2021121491
(43)【公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-12-04
(31)【優先権主張番号】16/725,646
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000156134
【氏名又は名称】株式会社壽
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】▲陰▼山 秀平
(72)【発明者】
【氏名】小高 忠夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊和
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-189898(JP,A)
【文献】特開2006-027027(JP,A)
【文献】米国特許第2510312(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記芯と、
前記筆記芯を把持して該筆記芯を前方へ送り出すチャックと、
前記チャックを前方へ送り出すためのクリックボタンと、
前記チャックを後方に付勢するチャックスプリングと、該チャックスプリングに当接する金属ストッパと、
前記筆記芯及び前記チャックを収容する軸筒と、を含み、
前記チャックを前方へ送り出すためのクリック操作がおこなわれたときに、前記軸筒内を前方へと流れる噴流が生じ、
前記軸筒の少なくとも一部が金属材料を含み、該軸筒の一部と前記金属ストッパとが該軸筒の一部の外周面から径方向内側に一体として押圧されるスウェージング加工により、該金属材料を含む軸筒の一部に該金属ストッパが一体として固定され、
前記チャックの近傍に、前記噴流の流路が狭められた加速流路を含み、
前記加速流路は前記スウェージング加工により形成される、
シャープペンシル。
【請求項2】
前記クリックボタンは前記軸筒に組み付けられ、該クリックボタンと軸筒との間の気密性を高めるスペーサをさらに含む、請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項3】
前記チャックに隣接して、前記噴流を乱流にする径方向に突出した突起をさらに含む、請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項4】
前記スウェージング加工が前記軸筒のその周方向の全周に渡っておこなわれた、請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項5】
前記チャックの後方に、前記噴流を乱流にする径方向に突出した突起が形成された、請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項6】
前記チャックに嵌合するチャックリングをさらに含み、該チャックとチャックリングとが、軸線方向に対して傾斜した嵌合面で互いに面接触する、請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項7】
前記筆記芯を保持する略筒状の筆記芯ホルダをさらに含み、該筆記芯ホルダの内径が後方へ向かうに従って大きくなるように構成された、請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項8】
前記軸筒の後筒の後端部に配置されたスペーサをさらに含み、
該スペーサは、スペーサの他の部分よりもその内径が小さい絞りを有して前記噴流のための流路を提供する、請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項9】
前記スペーサは、該スペーサの後端部に経方向外側へ突出したシールをさらに含み、該シールは前記軸筒の後筒の後端面に当接する、請求項8に記載のシャープペンシル。
【請求項10】
前記シール、前記クリックボタンの外筒、前記クリックボタンの内筒、および前記クリックボタンの後壁によって形成された第1のチャンバをさらに含み、
クリック操作がおこなわれると、前記クリックボタンの前進によって前記第1のチャンバ内に噴流が生じる、請求項9に記載のシャープペンシル。
【請求項11】
筆記芯チューブであって、前記チャックの後端部の外周面は前記筆記芯チューブの前端部の内周面に接触する、筆記芯チューブと、
前記スペーサの絞りの後端面、前記筆記芯チューブの外周面、及び前記クリックボタンの内筒の前端面で形成された第2のチャンバとをさらに含み、
前記第1のチャンバから噴出した噴流は前記第2のチャンバ内に流入し、前記クリックボタンが前進すると前記第2のチャンバの体積が減少される、請求項10に記載のシャープペンシル。
【請求項12】
筆記芯チューブをさらに含み、前記チャックの後端部の外周面は前記筆記芯チューブの前端部の内周面に接触し、
前記流路は、前記絞りの内周面と前記筆記芯チューブの外周面との間に延在する、請求項8に記載のシャープペンシル。
【請求項13】
前記チャックと前記金属ストッパとの間に配置されたチャックリングをさらに含む、請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項14】
前記チャックと前記チャックリングを前進させると、前記チャックリングの前面が前記軸筒の後端面に当接して前記チャックリングが前記チャックの後端部から離脱する、請求項13に記載のシャープペンシル。
【請求項15】
前記チャックの面は前記チャックリングの面と軸線方向に対して斜めに接触する、請求項13に記載のシャープペンシル。
【請求項16】
前記チャックの面は前記チャックの前端部から前記チャックの後端部に向かって傾斜し、
前記チャックリングの面は前記チャックリングの後端部から前記チャックリングの前端部に向かって傾斜している、請求項15に記載のシャープペンシル。
【請求項17】
筆記芯と、
前記筆記芯を把持して該筆記芯を前方へ送り出すチャックと、
前記チャックを後方に付勢するチャックスプリングと、該チャックスプリングに当接する金属ストッパと、
前記筆記芯及び前記チャックを収容する軸筒と、
前記軸筒の後端部に配置されたスペーサと含み、
該スペーサは、前記チャックが前方に送り出されたときに前記軸筒内に生じる噴流のための流路を提供し、
前記軸筒の少なくとも一部が金属材料を含み、該軸筒の一部と前記金属ストッパとが該軸筒の一部の外周面から径方向内側に一体として押圧されるスウェージング加工により、該金属材料を含む軸筒の一部に該金属ストッパが一体として固定され、
前記チャックの近傍に、前記噴流の流路が狭められた加速流路を含み、
前記加速流路は前記スウェージング加工により形成される、
シャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で考察される実施形態は、シャープペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の筆記具は、筆記具用の筆記芯を挟んで把持するように構成されたチャックを備える。チャックは、筆記具用の筆記芯と点接触又は線接触して筆記具用の筆記芯を押圧することにより筆記具用の筆記芯に第1の接触応力を加える第1のチャック爪と、筆記具用の筆記芯を押圧することにより第1の接触応力よりも低い第2の接触応力を筆記具用の筆記芯に加える第2のチャック爪とを備え、第1のチャック爪によって筆記具用の筆記芯に加えられる第1の接触応力は、筆記具用の筆記芯に所定の衝撃が加わると、第1の接触応力を受けている筆記具用の筆記芯の接触部分が破損して所定の衝撃を吸収するように構成される(例えば、特許文献1の段落0007~0008参照)。特許文献1に開示される筆記具では、外部から筆記具用の筆記芯に伝達される衝撃を低減することが可能な筆記具を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2018-250977A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、従来よりも高い信頼性で筆記芯を把持することができるシャープペンシルを提供することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一例示的態様では、シャープペンシルは、筆記芯と、該筆記芯を把持して前方へ送り出すチャックと、該筆記芯及びチャックを収容する軸筒と、を含み、該チャックを前方へ送り出すためのクリック操作がおこなわれたときに、該軸筒内を前方へと流れる噴流が生じる。
【0006】
上述の例示的実施態様では、従来よりも高い信頼性で筆記芯を把持することができるシャープペンシルを提供することができる。
【0007】
本発明は、以下に提供される詳細な説明から更に十分に理解されるようになるであろう。他の適用可能な分野は、以下に提供される詳細な説明を参照することにより明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明及び具体的な例示的実施形態は、本発明の望ましい実施形態の例示であり、説明のみを目的として記載されるに過ぎない。当業者には、詳細な説明に基づき様々な変更及び修正が明らかになるであろう。いかなる開示される実施形態も、本出願人が公に付与する意図はない。従って、本開示の変更及び修正のうち、文言上本特許請求の範囲に含まれない可能性のあるものも、均等論により本発明の一部を成す。
【0008】
本発明の例示的態様は、図面を参照した本発明の例示的実施形態の以下の詳細な説明により、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、例示的実施形態に係るシャープペンシルの断面図である。
図2図2は、図1のシャープペンシルの前部の拡大断面図である。
図3図3は、図1のシャープペンシルの後部の拡大断面図である。
図4図4は、図1のシャープペンシルのスペーサの拡大斜視図である。
図5図5は、図1のシャープペンシルのスペーサの後端部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本例示的実施形態に係るシャープペンシル1の断面図である。シャープペンシル1は、筆記芯Wと、後に詳述する、チャック2と、チャックリング3と、チャックスプリング4と、筆記芯ホルダ5と、金属ストッパ6と、軸筒7と、スペーサ8と、クリックボタン9と、筆記芯チューブ10とを含む。以下の説明では、シャープペンシル1の長手方向の中心軸線(「軸線」と呼ぶ)に沿って、チャック2が配置された側をシャープペンシル1の「前方」と呼び、その反対側を「後方」と呼ぶ。
【0011】
図2は、シャープペンシル1の前部の拡大断面図である。略筒状に形成されたチャック2は筆記芯Wの外周に配置される。チャック2の後端部の外周面は筒状に形成された筆記芯チューブ10の前端部の内周面に嵌合される。チャック2の前端部及び中央部は複数の突出片を形成するように周方向において分割される。チャック2の中央部の各々は、チャック2の前端部の各々が径方向に移動することができるように、チャック2の前端部の各々を弾性的に支持する。チャック2の前端部の各々は、その自由状態において、筆記芯Wの径方向の外側で筆記芯Wから離間するように形成される。
【0012】
後に詳述するチャックスプリング4がチャック2を後方へ付勢することによってチャック2が後退し、チャック2の前端部の各々の外周面がチャック2の後方に配置された略筒状のチャックリング3の内周面に嵌合する。これにより、チャックリング3に嵌合したチャック2の前端部の各々が筆記芯Wを径方向外側から径方向内側へ向けて押圧して筆記芯Wを把持する。一方、後に詳述するクリックボタン9(図1参照)へのクリック操作によって、チャックリング3が嵌合したチャック2が筆記芯Wを把持した状態で所定の距離だけ前進する。チャック2及びチャングリング3が前進すると、チャックリング3の前面が略筒状に形成された軸筒7の先具73の後端面に当接してチャックリング3がチャック2の後端へ離脱する。このとき、チャック2は弾性により自由状態に戻って、筆記芯Wはチャック2による把持から解放される。このようにして、筆記芯Wはチャック2により把持されると共に、前方へ送り出される。
【0013】
軸筒7の先具73の内周面には、エラストマー製の略筒形状に形成された筆記芯ホルダ5が組み付けられる。筆記芯ホルダ5の内周面は筆記芯Wの外周面に径方向外側から当接して筆記芯Wを保持する。これにより、筆記芯Wがチャック2による把持から解放されたときに筆記芯Wが軸線方向に自由に移動することが防止される。軸筒7の先具73の後部の外周面は、金属製の略筒状の軸筒7の先筒71の前部の内周面に嵌合する。
【0014】
軸筒7の先具73の後方に位置する軸筒7の先筒71の内周面には、金属製の略筒状の金属ストッパ6が組み付けられる。本例示的実施形態では、先筒71の外周面711の径方向外側から径方向内側へ軸筒7の先筒71と金属ストッパ6とが一体として押圧されるスウェージング加工により、金属ストッパ6を先筒71に一体として固定する(図2参照)。このように構成すると、高い生産性で金属ストッパ6を先筒71に一体として固定することができる。スウェージング加工は先筒71の周方向の全周に渡っておこなわれてもよい。この場合、例えば、先筒71の外周面上を周方向に周回するローラを用いてスウェージング加工をおこなうことにより、高い生産性で金属ストッパ6を先筒71に一体として固定することができる。
【0015】
金属ストッパ6の後方には、チャック2を後方に向けて付勢するコイルスプリングを含むチャックスプリング4が配置される。チャックスプリング4の前端面は金属ストッパ6の後端面と当接し、チャックスプリング4の後端面は筆記芯チューブ10の前端面と当接する。チャックスプリング4は、筆記芯チューブ10を金属ストッパ6に対して後方に向けて付勢することにより、筆記芯チューブ10の前端部に嵌合されたチャック2を金属ストッパ6に対して後方に向けて付勢する。チャックスプリング4に付勢されたチャック2が後退すると、チャックリング3の後端面が金属ストッパ6の前端面に当接し、チャック2とチャックリング3とが嵌合する。
【0016】
軸筒7の先筒71の後部の外周面は、軸筒7の後筒72の前部の内周面に嵌合される。軸筒7の後筒72の前部の後端部は、二重筒形状に形成される。軸筒7の後筒72の前部の二重筒の内筒の内周面は、径方向内側に向けて突出した鉤形状に形成される。軸筒7の先筒71の後部が軸筒7の後筒72の前部に組み付けられたときに、軸筒7の先筒71の後端部を、その後方より円錐形状に形成されたパンチで軸線方向前方へ押圧することによって、軸筒7の先筒71の後端部が径方向外側へ開くように塑性変形される。塑性変形された軸筒7の先筒71の後端面は軸筒7の後筒72の前部の二重筒の内筒の鉤形状に形成された突出部の前端面に係合する。これにより、軸筒7の先筒71が軸筒7の後筒72に前後方向へ移動できないように固定される。組み立てられた先筒71と後筒72とは一体となって軸筒7を構成する。
【0017】
図3は、シャープペンシル1の後部の拡大断面図である。軸筒7の後筒72の後端部には、略筒状に形成されたスペーサ8が組み付けられる。スペーサ8の後端部には、径方向外側へ突出したシール81が形成される。スペーサ8のシール81の前端面は、軸筒7の後筒72の後端面に当接する。スペーサ8の前部には、スペーサ8の他の部分よりもその内径が小さい絞り82が形成される。スペーサ8の絞り82の内周面は筆記芯Wの外周面を覆う筆記芯チューブ10の外周面に近接して、筆記芯チューブ10との間に環状の流路(即ち、後に詳述する「第2の流路」)を形成する。
【0018】
筆記芯チューブ10の後端部には、底面を有する略二重筒形状に形成されたクリックボタン9が組み付けられる。クリックボタン9の内筒92の内周面は、筆記芯チューブ10の外周面に取り外し可能に嵌合する。クリックボタン9の内筒92の外周面は、スペーサ8のシール81の前方のスペーサ8の内周面に近接して、スペーサ8の内周面との間に環状の流路(即ち、後に詳述する「第1の流路」)を形成する。クリックボタン9の外筒91の内周面は、軸筒7の後筒72及びスペーサ8のシール81の外周面に近接して、それらとの間に環状の流路(後に詳述する「空気取入口」)を形成する。
【0019】
図4は、シャープペンシル1のスペーサ8の拡大斜視図である。図5は、シャープペンシル1のスペーサ8の後端部の拡大断面図である。スペーサ8の外周面には、径方向外側に向けて突出する2本の環状のリブ83が形成される。このスペーサ8のリブ83を軸筒7の後筒72の内周面に嵌合することにより、スペーサ8が軸筒7の後筒72に組み付けられる。スペーサ8のシール81の後端部の外周面には、径方向外側に向けて突出する環状の突起811が形成される。スペーサ8のシール81の環状の突起811の外周面はクリックボタン9の外筒91の内周面に近接して、それにより環状の突起811の外周面とクリックボタン9の外筒91の内周面との間に環状の流路(即ち、後に詳述する「空気取入口」)を形成する。スペーサ8のシール81の環状の突起811の断面形状は、その前面に軸線に直交する壁面を有し、後方へ向かうに従って径方向外側への突出量が小さくなる凸曲面を有するように構成される。このように構成すると、クリックボタン9の外筒91の内周面とスペーサ8のシール81の環状の突起811との間に、外部からの異物の侵入を防いで異物の詰まりを生じ難くしながら外気を取り込み得る環状の流路(即ち、空気取入口)を形成することができる。このため、本例示的実施形態は、建築現場のような屋外で使用する場合にも、シャープペンシル1内への外部からの異物の侵入を防いで、従来よりも高い信頼性で筆記芯Wを把持し得るシャープペンシル1を提供することができる。
【0020】
シャープペンシル1は、クリックボタン9にユーザによるクリック操作がおこなわれたときに、軸筒7内に前方へ向かう噴流が生じるように構成される。クリック操作がおこなわれると、クリックボタン9の前進によって、スペーサ8のシール81、クリックボタン9の外筒91、内筒92及び後壁によって形成された第1のチャンバ内の空気が圧縮される。スペーサ8の内周面とクリックボタン9の内筒92の外周面との間に形成される第1のチャンバの前方の環状の流路(以下、「第1の流路」という。)の流路面積(即ち、軸線に直交する断面積)は、環状の空気取入口の流路面積(即ち、断面積)よりも広く形成される。このため、クリック操作がおこなわれたときに、第1のチャンバ内の空気は、主に、環状の第1の流路を通って前方へ向かう第1の噴流を形成する。第1のチャンバでは、スペーサ8のシール81によって、クリックボタン9と軸筒7との間の気密性が高められている。クリックボタン9がユーザによるクリック操作から解放されると、チャックスプリング4による付勢力によってクリックボタン9が後退し、環状の空気取入口から第1のチャンバ内へ外気が取り入れられる。
【0021】
第1のチャンバから噴出した第1の噴流は、スペーサ8の絞り82の後端面、筆記芯チューブ10の外周面及びクリックボタン9の内筒92の前端面で形成された第2のチャンバ内に流入する。第2のチャンバの体積は第1のチャンバの体積よりも小さく構成される。クリックボタン9が前進すると、第2のチャンバの体積が減少される。第2のチャンバ内の空気は、スペーサ8の絞り82の内周面と筆記芯チューブ10の外周面との間の環状の流路(以下、「第2の流路」という。)を通って第2のチャンバから前方へ向かう第2の噴流を形成する。第2の流路の流路面積(即ち、軸線に直交する断面積)は、第1の流路の流路面積(即ち、断面積)よりも小さく構成されるため、第2の噴流の流速は第1の噴流の流速よりも加速される。このように第2のチャンバの体積を第1のチャンバの体積よりも小さく構成すると共に、第2の流路の流路面積を第1の流路の流路面積よりも小さく構成することにより、流速の高い第2の噴流を形成することができる。流速の高い第2の噴流はシャープペンシル1の前端まで到達する主噴流を形成する。
【0022】
主噴流は筆記芯チューブ10の外周面と軸筒7の内周面との間に形成された環状の流路を通って軸筒7内を前方へ向かう。主噴流が金属ストッパ6に到達すると、主噴流は金属ストッパ6の内周面とチャック2の中央部の外周面との間に形成された環状の流路(即ち、後に詳述する「加速流路」)を通過する。金属ストッパ6の内周面には、前述のスウェージング加工によって形成された径方向内側へ向けて突出する環状の突起61(図2参照)が形成される。金属ストッパ6の環状の突起61の内周面と筆記芯チューブ10の外周面との間の環状の流路(即ち、加速流路)の流路面積(即ち、軸線に直交する断面積)は、第2の流路の流路面積(即ち、断面積)よりも小さく(狭く)構成される。このため、主噴流が金属ストッパ6の環状の突起61(即ち、加速流路)を通過することにより、主噴流の流速が加速される。さらに、本例示的実施形態では、金属ストッパ6の環状の突起61(即ち、加速流路)を通過する主噴流が乱流となるように、主噴流の流路が形成される。加速され、乱流となった主噴流はチャックリング3の内周面及び前進したチャック2の前端部に吹き付けられる。このため、加速され、乱流をなった主噴流により、チャック2の前端部及びチャックリング3の内周面を清掃することができる。加速され、乱流となった主噴流により清掃されたチャック2及びチャックリング3は、従来よりも高い信頼性で筆記芯Wを把持することができる。
【0023】
本例示的実施形態のチャック2の外周面は、チャック2の外周面の後端の外径がチャック2の外周面の前端の外径よりも小さいテーパ形状に形成される。チャックリング3の内周面も同様に、チャックリング3の内周面の後端の内径がチャックリング3の内周面の前端の内径よりも小さいテーパ形状に形成される。チャック2とチャックリング3とは、軸線方向に対して傾斜した嵌合面31で互いに面接触するように構成される(図2参照)。このため、チャック2とチャックリング3とは互いに強固に嵌合して筆記芯Wを把持することができる。さらに、軸線方向に加速され、乱流となった主噴流をチャック2とチャックリング3との嵌合面に吹き付けると、軸線方向に対して傾斜した嵌合面を主噴流によって効率的に清掃することができる。このように、主噴流によって効率的に清掃されるチャック2及びチャックリング3は、従来よりも高い信頼性で筆記芯Wを把持することができる。
【0024】
本例示的実施形態の筒状の筆記芯ホルダ5の内径は、後方へ向かうに従って大きくなるように構成される。このように構成すると、軸線方向に対して傾斜した筆記芯ホルダ5の内周面51(図2参照)を、加速され、乱流となった主噴流で効率良く清掃することができる。また、筆記芯ホルダ5の後端面の面積を小さくすることができるため、筆記芯ホルダ5の後端面に筆記芯Wの破片粉等のダストが付着することを抑制することができる。また、筆記芯ホルダ5は、軸筒7の先具73の先端開口の外部からの異物の侵入を防ぐことができる。
【0025】
シャープペンシル1は、クリックボタン9にユーザによるクリック操作がおこなわれたときに、筆記芯Wを前方へ送り出すと共に、軸筒7の先具73の先端開口の外部から侵入した異物や筆記芯Wの破片粉等の内部で生じたダストを前方へ吹き出し、軸筒7の先具73の先端開口の外部へと排出する。シャープペンシル1は、クリック操作がおこなわれたときに、前方へ向かう主噴流でシャープペンシル1の内部機構を清掃する。このため、シャープペンシル1は、従来よりも高い信頼性で筆記芯Wを把持することができる。シャープペンシル1は、建築現場、工事現場等の異物が多い屋外の環境で使用される場合にも、高い信頼性で筆記芯Wを把持することができる。
【0026】
例示的実施形態では、筆記芯を取り外して、ユーザがクリックボタンにクリック操作をおこなったときに、加速され、乱流となった主噴流がシャープペンシルの先具の先端開口から外部へと吹き出す。このように構成すると、クリック操作を複数回繰り返すことで、ユーザがシャープペンシルの作動機構を清掃することができる。
【0027】
以上説明した複数の実施形態では、シャープペンシル1の後端にクリックボタン9が配置されるものと説明した。しかしながら、他の例示的実施形態では、クリックボタンはシャープペンシルの軸筒の側面に配置されるものとしてもよい。あるいは、さらに他の例示的実施形態では、シャープペンシルの前筒と後筒とを相対的に周方向へ回転させることにより、チャックを前進させるクリック操作をおこなうようにシャープペンシルを構成してもよい。また、以上説明した複数の例示的実施形態では、加速流路を形成する環状の突起61は径方向内側へ向けて突出するように形成されるものと説明した。しかしながら、他の例示的実施形態では、加速流路を形成する環状の突起61は径方向外側へ向けて突出するように形成するものとしてもよい。
【0028】
本明細書に引用される全ての参考文献は、刊行物、特許出願、及び特許を含め、各参考文献が個別に且つ具体的に参照によって援用されることが明示され、且つ本明細書にその全体が示されたものとするのと同程度に本明細書によって参照により援用される。
【0029】
本発明を記載する文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)用語「a」及び「an」及び「the」及び同様の用語の使用は、本明細書に特に明示のない限り、又は文脈上明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。用語「~を備える(comprising)」、「~を有する(having)」、「~を含む(including)」、及び「~を含む(containing)」は、特に注記しない限り、オープンエンド形式の用語である(即ち、「~を含むが、限定はされない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書に特に明示のない限り、単にその範囲内に含まれる各個別の値について個々に言及する簡略な方法として役立つことが意図されるに過ぎず、各個別の値が、それが本明細書に個々に記載されたものとして本明細書に援用される。本明細書に記載される方法は全て、本明細書に特に明示のない限り、又は文脈上持に明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書に提供されるあらゆる例、又は例示する文言(例えば、「など」)の使用は、単に本発明を一層明らかにすることが意図されるに過ぎず、特に主張されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書の文言が、何らかの特許請求されない要素を本発明の実施に必須のものとして明示していると解釈されてはならない。
【0030】
本明細書には、本発明者らに知られた本発明を実施するための最良の形態を含め、本発明の例示的実施形態が記載される。当業者には、前述の記載を読めばこれらの例示的実施形態の変形例が明らかになり得る。本発明者らは、当業者がかかる変形例を適宜用いることを予想し、及び本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載されるものと別様に実施されることを意図する。従って、本発明は、準拠法により認められているとおりの本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題のあらゆる改良例及び均等物を含む。更に、その可能な全ての変形例における上述の要素の任意の組み合わせが、本明細書に特に明示されない限り、又は文脈上特に明らかに矛盾しない限り本発明に包含される。
【0031】
例示的発明は、上記に詳述した例示的実施形態に限定されない。各部分の具体的な構成は、例示的発明の目的から逸脱しない範囲内で変更することができる。
【0032】
本発明の様々な例示的実施形態の記載が説明のために提示されているが、それらが包括的である又は開示される実施形態に限定されることは意図されない。当業者には、記載される実施形態の範囲及び趣旨から逸脱することなく多くの改良例及び変形例が明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、実際の適用又は市場に見られる技術と比べた技術的改良を最良に説明するため、又は当業者に本明細書に開示される実施形態の理解が可能となるようにするために選択された。
【0033】
更に、本出願人の意図は、全てのクレーム要素の均等物を包含することであり、本願のいずれのクレームに対する補正も、補正されたクレームの任意の要素又は特徴の均等物の任意の利益又はそれに対する権利のディスクレーマーであると解釈されてはならない。
【符号の説明】
【0034】
1 シャープペンシル
2 チャック
3 チャックリング
4 チャックスプリング
5 筆記芯ホルダ
6 金属ストッパ
7 軸筒
8 スペーサ
9 クリックボタン
10 筆記芯チューブ
31 嵌合面
61 突起
71 先筒
72 後筒
73 先具
81 シール
82 絞り
83 リブ
91 外筒
711 外周面
811 突起
W 筆記芯
図1
図2
図3
図4
図5