(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ポリシアル酸および/またはその他のポリマーを含む薬物送達のシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/51 20060101AFI20240227BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240227BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240227BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240227BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240227BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61K9/51
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/42
A61K39/395 N
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2020524446
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2018080050
(87)【国際公開番号】W WO2019086627
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-11-02
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】520144381
【氏名又は名称】ウニベルシダーデ デ サンティアゴ デ コンポステーラ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アロンソ フェルナンデス,マリア ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ティエイロ オソリオ,デジレ
(72)【発明者】
【氏名】ティエイロ ヴァリーノ,カルメン マリア
(72)【発明者】
【氏名】カデテ ピレス,アナ
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-505695(JP,A)
【文献】国際公開第2017/014655(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0023703(US,A1)
【文献】特表2014-527980(JP,A)
【文献】特表2011-516443(JP,A)
【文献】Biomacromolecules,2011年,12,314-320
【文献】International Journal of Pharmaceutics,2010年,385,150-156
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/48-9/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻に取り囲まれた内側部分を含み、前記外殻がポリマーを含み、前記内側部分が少なくとも1つの疎水性化合物を含
む、複数のナノカプセルを含む組成物であって、
前記ポリマーが、
ポリシアル酸(PSA)、および/またはペグ化-ポリシアル酸(PSA-PEG)、
ポリグルタミン酸(PGA)、および/またはペグ化-ポリグルタミン酸(PGA-PEG)、
ポリ(アスパラギン酸)(PASP)、および/またはペグ化-ポリ(アスパラギン酸)(PASP-PEG)、
ポリアスパラギ
ン、および/またはペグ化ポリアスパラギ
ン、
アルギン酸、および/またはペグ化アルギン酸、
ポリリンゴ酸、および/またはペグ化ポリリンゴ酸ならびに
その混合物
からなる群より選択され、かつ
前記疎水性化合物は、油、脂肪酸、アルカン、シクロアルカン、胆汁酸塩、テルペノイド、テルペン、脂溶性ビタミン、および界面活性剤からなる群より選択され、
前記ポリマーは、C
2~C
24の直鎖のアルキル基を備える疎水性部分と任意で結合し、
前記複数のナノカプセルのうち少なくとも幾つかは、1つまたは複数の医薬品を含み、前記複数の医薬品のうち1つはモノクローナル抗体または前記モノクローナル抗体抗体の機能的断片であ
る、
組成物。
【請求項2】
前記ポリマーが、
ポリシアル酸(PSA)、および/またはペグ化-ポリシアル酸(PSA-PEG)、
ポリグルタミン酸(PGA)、および/またはペグ化-ポリグルタミン酸(PGA-PEG)、
ポリ(アスパラギン酸)(PASP)、および/またはペグ化-ポリ(アスパラギン酸)(PASP-PEG)、
およびその混合物からなる群から選択される、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記疎水性化合物は、油、脂肪酸、脂溶性ビタミン、および界面活性剤からなる群より選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記外殻が標的化部分をさらに含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記標的化部分が、Lyp1、tLyp1、cLyp1、iNGR、iRGD、RPARPAR、TT1、直鎖状TT1、RGD-4C、cRGD、シレンジタイド、F3、9-RGD、RGD4C、デルタ24-RGD、デルタ24-RGD4C、RGD-K5、非環状RGD4C、二環式RGD4C、c(RGDfK)、c(RGDyK)、E-[c(RGDfK)2]、E[c(RGDyK)]2、KLWVLPKGGGC、CDCRGDCFC、LABL、アンジオペプチン-2、ペネトラチン、ペネトラチン-Arg、ペネトラチン-Lys、抗体、ナノボディ、トランスフェリン、アンキリン反復タンパク質、アフィボディ、葉酸、トリフェニルホスホニウム、ACUPA、炭水化物部分、およびアプタマーからなる群より選択される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記標的化部分が、Lyp1、tLyp1、cLyp1、iNGR、iRGD、RPARPAR、TT1、直鎖状TT1、およびF3からなる群より選択される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマーが、ポリシアル酸(PSA
)であって、かつ前記標的化部分が、tLyp1またはcLyp1である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリマーの少なくとも一部が疎水性部分と結合しており、前記疎水性部分が、アルキル基、シクロアルカン、胆汁酸塩および誘導体、テルペノイド、テルペン、テルペン由来部分、および脂溶性ビタミンから選択される、請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記疎水性部分がC
2~C
24直鎖アルキル基を含む、請求項
8に記載の組成物。
【請求項10】
薬剤として使用する、請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
複数のナノカプセルを含む組成物を作成する方法であって、前記複数のナノカプセルは外殻に取り囲まれた内部部分を含み、前記外殻はポリマーを含み、前記内部部分は少なくとも1つの疎水性化合物を含み、
前記ポリマーはヒアルロン酸(HA)、および/またはペグ化-ヒアルロン酸(HA-PEG)であり、
前記疎水性化合物は油、脂肪酸、アルカン、シクロアルカン、胆汁酸塩、テルペノイド、テルペン、脂溶性ビタミン、および界面活性剤からなる群より選択され、
前記複数のナノカプセルはモノクローナル抗体または前記モノクローナル抗体の機能的断片を含み、かつ
前記複数のナノカプセルは、疎水性相を調製し、前記モノクローナル抗体または前記モノクローナル抗体の機能的断片を混合した、ヒアルロン酸またはペグ化-ヒアルロン酸を含有する水相を調製し、かつ前記水相に前記疎水性相を混合することにより、1段階で調製されることを特徴とする、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2017年11月2日に出願された「Sistemas de Liberacion de Farmacos de Acido Polisialico y Metodos」と題するスペイン特許出願第P201731277号の優先権を主張するものである。米国およびその他の国では、該当する場合、本願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は全般的には、ポリシアル酸などのポリマーを含むナノカプセルもしくはナノ実体を含み、細胞の内部に薬物もしくはその他の活性物質を送達する担体としての役割を果たす、またはその他の用途のための粒子に関する。
【背景技術】
【0003】
医薬品を標的化して体内に送達することが現在も課題となっている。例えば、多数の薬物が、標的細胞へのアクセスが困難であるためにその作用を効率的に発揮できない。
【0004】
このため、医薬品送達の改善が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は全般的には、ポリシアル酸(本明細書では、以降「PSA」)などのポリマーを含むナノカプセルまたはその他のナノ実体を含む、粒子に関する。この粒子は、細胞内部にアクセスすることができ、そこで粒子の内容物を放出する。本発明の主題は、いくつかの場合には、1つまたは複数のシステムおよび/または物品の相互に関連する製品、特定の問題点に対する代替的解決法、および/または複数の異なる使用を含む。
【0006】
本発明者らは、外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻がポリシアル酸(PSA)を含み、PSAが標的化部分、具体的には細胞浸透性ペプチドLyp-1またはcLyp-1と結合している、ナノカプセルなどのナノ実体を作製した。このことは実施例1にみることができる。本発明者らはまた、これらのナノカプセルがパクリタキセルおよびドセタキセルなどの医薬品を含有できることを明らかにした。さらに、本発明者らは、前記ナノカプセルが同所性肺腫瘍モデルでは、腫瘍組織内への薬剤の送達が増強されるため、医薬品単独よりも高い効果を示すことを明らかにする(実施例2を参照されたい)。本発明者らはまた、他の標的化部分、例えばCendRも使用できることを明らかにした(実施例3を参照されたい)。実施例5では、パクリタキセルおよびその他の抗癌剤と結合したPSAナノカプセルの製剤化について説明する。実施例6、7および13に示すように、PSAおよびヒアルロン酸などのポリマーを疎水性部分、例えばC16アルキル基と結合させることができる。
【0007】
本発明者らはまた、実施例8~10にみられるように、モノクローナル抗体である医薬品と結合したナノカプセルの作製に成功を収め、ここでは、様々なポリマーおよびナノカプセル、すなわち、PSA、tLyp-1を有するPSA、C12アルキル基で官能化したPSA、C16およびtLypで官能化したヒアルロン酸、ポリグルタミン酸(PGA)、PGA/PEG、ならびにポリアスパラギン酸/PEGを使用している。試験した抗体はIgG2およびベバジムマブ(bevazimumab)である。ナノカプセルを例えば、その毒性、安定性、および搭載能力との関連で特徴付けた(実施例10および11を参照されたい)。さらに、作製したナノカプセルは、細胞と相互作用し、さらに、結合した抗体の細胞内部移行を誘発することが明らかになった、すなわち、ナノカプセルが細胞膜によって包み込まれて細胞内に引き込まれ、そこで抗体が放出された(実施例12を参照されたい)。
【0008】
したがって、一態様では、本発明は、外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻がポリマーと標的化部分とを含み、内側部分が少なくとも1つの疎水性化合物を含む、複数のナノ実体を含む、組成物に関する。
【0009】
別の態様では、本発明は、外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻がポリマーを含み、内側部分が少なくとも1つの疎水性化合物を含み、ただし、ポリマーの少なくとも約90%がヒアルロン酸ではない、複数のナノ実体を含む、組成物に関する。
【0010】
別の態様では、本発明は、複数のナノ実体を含み、薬剤として使用する、組成物に関する。
【0011】
一態様では、本発明は全般的には、組成物に関する。ある一連の実施形態では、組成物は、外殻に取り囲まれた内側部分(または核)を含む複数のナノ実体、例えばナノカプセルを含む。いくつかの場合には、外殻は、PSAなどのポリマーを含む。内側部分は、少なくとも1つの疎水性化合物を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、外殻は、標的化部分、すなわち、ナノ構造の標的化または選択的標的化を可能にする分子を含む。ある特定の実施形態では、外殻は、細胞浸透性および/または腫瘍/組織浸透性ペプチドを含む。いくつかの場合には、標的化部分および/または細胞浸透性ペプチドおよび/または腫瘍/組織浸透性ペプチドは、PSAと化学的に結合している。
【0013】
組成物は、別の一連の実施形態では、外殻に取り囲まれた内側部分を含む、複数のナノカプセルを含む。いくつかの実施形態では、外殻は、PSAと、PSAと化学的に結合した標的化部分とを含む。いくつかの場合には、標的化部分は、配列Z1X1X2Z2を有し、Z1がRまたはKであり、Z2がRまたはKであり、X1およびX2がそれぞれアミノ酸残基である、ペプチドを含む。いくつかの場合には、ペプチドは、配列RGDまたは配列NGRを含む。例えば、ペプチドは、配列J1RGD、J1RGDJ2、RGDJ2、J1NGR、J1NGRJ2、NGRJ2などを含む。(これらのK、R、N、G、Dなどの略号は、当業者が用いる標準的なアミノ酸残基の一文字コードであり;詳細については下を参照されたい)。いくつかの場合には、標的化部分は、Z1X1X2Z2配列とRGD配列の両方(例えば、iRGDペプチド)またはZ1X1X2Z2配列とNGR配列の両方(例えば、iNGR)を有する、ペプチドを含む。
【0014】
別の態様の別の一連の実施形態では、組成物は、外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻がPSAなどのポリマーを含み、ナノ実体の少なくとも一部が、内側部分の中に含まれるモノクローナル抗体をさらに含む、複数のナノ実体を含む。
【0015】
別の態様では、組成物は、外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻が、PSAと、PSAと化学的に結合した標的化部分とを含み、標的化部分が、配列Z1X1X2Z2および/または配列RGDおよび/または配列NGRを有するペプチドを含み、Z1がRまたはKであり、Z2がRまたはKであり、X1およびX2がそれぞれアミノ酸残基である、複数のナノカプセルを含む。
【0016】
別の態様のまた別の一連の実施形態では、組成物は、最大平均径が約1マイクロメータ未満である、実体を含む。この実体は、いくつかの実施形態では、PSAなどのポリマーと標的化部分とを含む、表面を有する。いくつかの場合には、この実体は、リポソームではない(リポソームに関する検討については下を参照されたい)。
【0017】
また別の一連の実施形態は、全般的には、外殻に取り囲まれた内側部分を含む複数のナノ実体、例えばナノカプセルを含む、組成物に関する。外殻は、任意選択で疎水性部分と、例えば共有結合、静電気的結合などにより結合した、PSAなどのポリマーを含む。内側部分は、特定の場合には少なくとも1つの疎水性化合物を含む。いくつかの実施形態では、外殻は、PSAなどのポリマーと、標的化部分と、疎水性部分とを含む。いくつかの場合には、PSAの少なくとも一部が、標的化部分および/または疎水性部分と結合している。いくつかの実施形態では、疎水性部分は、C2~C24またはC12などのアルキル基である。
【0018】
別の態様では、組成物は、外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻が、PSAと、PSAと化学的に結合した細胞浸透性ペプチドを含む標的化部分とを含む、複数のナノ実体を含む。
【0019】
別の態様の別の一連の実施形態では、組成物は、外殻に取り囲まれた内側部分を含む複数のナノ実体、例えばナノカプセルを含む。いくつかの場合には、外殻は、PSAなどのポリマーから実質的になる。特定の場合には、内側部分は少なくとも1つの疎水性化合物を含む。
【0020】
一態様では、組成物は、外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻がヒアルロン酸を含み、ナノ実体の少なくとも一部がモノクローナル抗体をさらに含む、複数のナノ実体を含む。
【0021】
別の態様では、組成物は、外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻が、PGAおよび/またはPASPと標的化部分とを含む、複数のナノ実体を含む。
【0022】
組成物は、さらに別の態様では、外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻が、PGAおよび/またはPASPと標的化部分とを含み、標的化部分が、配列Z1X1X2Z2および/または配列RGDおよび/または配列NGRを有するペプチドを含み、Z1がRまたはKであり、Z2がRまたはKであり、X1およびX2がそれぞれアミノ酸残基である、複数のナノカプセルを含む。
【0023】
さらに別の態様では、組成物は、外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻がPGAおよび/またはPASPを含み、ナノ実体の少なくとも一部が、内側部分の中に含まれるモノクローナル抗体をさらに含む、複数のナノ実体を含む。
【0024】
一態様では、組成物は、外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻が、疎水性部分と結合したヒアルロン酸を含む、複数のナノ実体を含む。
【0025】
組成物は、別の態様では、外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻が、ポリ酸、ポリエステル、ポリアミド、またはその混合物からなる群より選択されるポリマーを含み、ナノ実体の少なくとも一部が、モノクローナル抗体をさらに含む、複数のナノ実体を含む。
【0026】
組成物は、さらに別の態様では、外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻が、疎水性部分と結合したヒアルロン酸を含み、小分子をさらに含むナノ実体の少なくとも一部が、1000Da未満の分子量を有する、複数のナノ実体を含む。
【0027】
別の一連の実施形態では、組成物は医薬組成物である。
【0028】
本発明のさらなる実施形態は、全般的には、上記のいずれかの組成物または本明細書に記載される任意の組成物の薬剤としての使用に関する。さらに、本発明のいくつかの実施形態は、全般的には、上記のいずれかの組成物または本明細書の任意の組成物をヒトなどの生物体に投与する方法に関する。いくつかの場合には、生物体は、癌またはその他の疾患を有する1つの対象である。例えば、上記のいずれかの組成物(または本明細書に記載される任意の組成物)は、抗癌剤または抗体などの適切な治療剤をさらに含み得る。
【0029】
本発明の別の態様は、全般的には、ある方法に関する。いくつかの実施形態では、この方法は、PSA上のカルボキシラート部分と、アミノアルキル(C1~C4)マレイミドおよび/またはアミノアルキル(C1~C4)メタクリルアミドとを反応させ、得られたアミノアルキル(C1~C4)マレイミドおよび/またはアミノアルキル(C1~C4)メタクリルアミドと、標的化部分上のチオール基(例えば、システイン基由来のもの)とを反応させて、PSA-アミノアルキル(C1~C4)スクシンイミド-ペプチドおよび/またはPSA-アミノアルキル(C1~C4)アミド-イソプロピル-ペプチド組成物を得る行為を含む。いくつかの実施形態では、この方法は、PSA上のカルボキシラート部分と、活性化剤、例えばN-ヒドロキシスクシンイミド、トリアジン、またはカルボジイミドとを反応させ、形成された中間体と、標的化部分上のアミノ基(例えば、リジン基またはアルギニン基由来のもの)とを反応させて、PSA-アミド-ペプチドを得る行為を含む。
【0030】
対象に特定の病態の予防または治療のための化合物を投与するいくつかの方法が本明細書に開示される。本発明のこのような各態様では、本発明は、具体的には、その特定の病態の治療または予防に使用する化合物、およびその特定の病態の治療または予防のための薬剤の製造への化合物の使用も含むことを理解するべきである。
【0031】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載される実施形態のうちの1つまたは複数のもの、例えばナノカプセルの作製法を包含する。さらに別の態様では、本発明は、本明細書に記載される実施形態のうちの1つまたは複数のもの、例えばナノカプセルを使用法を包含する。
【0032】
本発明のその他の利点および新規な特徴については、以下に記載する本発明の様々な非限定的な実施形態の詳細な説明を添付図面とともに検討すれば明らかになるであろう。
【0033】
本発明の非限定的な実施形態について、模式的であり、正確な比率にする意図のない添付図面を参照しながら例として記載する。図面では、図示される同一またはほぼ同一の構成要素を通常、単一の数字で表す。当業者に本発明を理解させるのに図示が必要でない場合には、明確にする目的で、あらゆる構成要素をあらゆる図面に表示することはせず、また、示される本発明の各実施形態の構成要素をすべて表示することもしない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】シアル酸と、標的化部分として作用させるペプチドとのカップリング反応を示す図である。
【
図2】
図2A-
図2B。本発明の特定の実施形態による、マウスへのナノカプセルの送達を示すデータを示す図である。
【
図3】本明細書に記載される特定のナノカプセルとAbraxane(登録商標)(nab-パクリタキセル)の送達の比較を示す図である。
【
図4】本発明のさらに別の実施形態の特定のナノカプセルで処置したマウスの体重変化を示す図である。
【
図5】
図5A-
図5B。本発明の別の実施形態による特定のナノカプセルのin vivo効果を示す図である。
【
図6】本発明の別の実施形態による、修飾PSAを作製する方法を示す図である。
【
図7】本発明のまた別の実施形態の様々なポリマーナノカプセルの細胞毒性を示す図である。
【
図8】
図8A-
図8D。本発明の一実施形態による、細胞へのポリマーナノカプセルの送達の効果を示す図である。
【
図9】
図9A-
図9B。本発明の別の実施形態における、DLSにより測定した様々なmAb搭載ポリマーナノカプセルの安定性を示す図である。
【
図10】
図10A-
図10C。本発明のさらに別の実施形態における、NTAにより測定した様々なmAb搭載ポリマーナノカプセルの安定性を示す図である。
【
図11】本発明のさらに別の実施形態の様々なポリマーナノカプセルとインキュベートした陽性細胞を示す図である。
【
図13】
図13A-
図13C。本発明のある特定の実施形態のPSA、tLyp1、およびコンジュゲートPSA-tLyp1の
1H-NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(発明の詳細な説明)
本発明は、全般的には、ポリシアル酸(PSA)などのポリマーを含むナノカプセルまたはその他のナノ実体を含む、粒子に関する。この粒子は、細胞内部にアクセスし、かつ/または結合した薬物の細胞内での放出を生じさせることができる。一態様では、本発明は、PSAなどのポリマーを含む外面または表面を有する、ナノカプセルまたはその他の実体に関する。いくつかの場合には、例えばアミノアルキル(C1~C4)スクシンイミドまたはその他のリンカーを用いて、Lyp-1またはtLyp-1ペプチドなどの標的化部分をポリマーに結合させる。これらは、例えば、ポリマー上のカルボキシラート部分と、アミノアルキルマレイミド(C1~C4)またはアミノアルキル(C1~C4)メタクリルアミドとを反応させ、得られたアミノアルキル(C1~C4)マレイミドまたはアミノアルキル(C1~C4)メタシルラミド(methacyrlamide)と、システイン基またはその他の硫黄基とを反応させることによって生じる。例えば、ポリマー上のカルボキシラート部分とN-ヒドロキシスクシンイミドまたはカルボジイミドとを反応させ、形成された中間体と、標的化ペプチド上のリジン基またはアルギニン基とを反応させて、ポリマー-アミド-ペプチドを得ることによって、標的化部分をポリマーに結合させる。本発明のその他の態様は、全般的には、このような組成物、このような組成物を含むキットなどの作製法または使用法に関する。
【0036】
諸実体の用途
一態様では、本発明は、全般的には、PSAなどのポリマーを含む、粒子またはその他の実体に関する。このような粒子または実体を、例えば薬物送達用途に使用する。例えば、このような粒子を対象が罹患している腫瘍に到達するように対象内に送達する。粒子は、例えば、Lyp-1もしくはtLyp-1などの細胞浸透性もしくは組織浸透性ペプチド、または本明細書で検討するその他のペプチド(例えば、CendRペプチド)としての能力も有する、標的化部分によって促進されて、腫瘍細胞内に送達される。その他のペプチド、抗体(例えば、完全長抗体、ナノボディ、一本鎖可変フラグメントなど)、またはアプタマー標的化部分についても、例えば本明細書で検討するように、ある特定の実施形態で使用する。粒子は、送達された後、標的細胞、例えば腫瘍細胞にアクセスし、中に含まれる薬物(例えば、治療剤または抗癌剤など)を放出できる。これまで、標的化部分を有する修飾PSAを含む粒子またはその他の実体が薬物の選択的放出および細胞内放出に使用されたことはない。
【0037】
いくつかの場合には、実体は、本明細書で検討するように、薬学的に許容される担体内に存在し、例えば、実体を、例えば対象に投与するために、液体またはゲルに懸濁させる。実体は、実質的に固体であるか、または例えばカプセル内でのように、内部空間を画定するものであり得る。実体はまた、いくつかの実施形態ではミセルまたはリポソームであるが、ある特定の場合には、実体は、本明細書で検討するように、リポソームではない。
【0038】
諸実体-ナノ実体
「実体」は、例えば、カプセル剤、粒子、およびミセルを含む。いくつかの場合には、実体はナノ実体である。本明細書で使用される「ナノ実体」は通常、平均径が1,000nm未満、例えば、750nm未満、500nm未満、300nm未満、250nm未満、200nm未満、150nm未満、または100nm未満の実体である。いくつかの場合には、実体は、平均径が少なくとも1nm、5nm、10nm、50nm、100nm、500nm、または1,000nmである。上記のいずれかの直径の組合せも可能であり、例えば、実体は、直径の平均範囲が100nm~300nm、1,000nm~1nm、1,000nm~10nm、750nm~1nm、500nm~10nm、300nm~10nm、250nm~10nm、200nm~10nm、150nm~10nm、100nm~10nmなどである。いくつかの実施形態では、2つ以上の実体も存在し、このような場合には、複数の実体の平均(算術平均)径は、ここに記載される寸法を有する。いくつかの場合には、一定の範囲の直径を有する実体が存在する。このような実体は、動的またはレーザー光散乱法などの様々な方法によって決定される。ナノ実体の非限定的な例としては、ナノ粒子、ナノカプセル、ミセル、またはその他の実体、例えば本明細書に記載される実態などが挙げられる。このようなナノ実体は、いくつかの場合には、この段落に記載される寸法を有する。
【0039】
いくつかの場合には、実体は、外殻、例えば実体を取り囲む環境に露出した外殻に取り囲まれた内側部分を含む。内側部分は、実体内に対称または非対称に位置している。内側部分には、例えば、液体(例えば、非水性または水性のもの)、固体、および/またはその組合せが含まれている。いくつかの実施形態では、内側部分には、1つまたは複数の医薬品または薬物、例えば、本明細書に記載されるいずれかのものが含まれている。例えば、内側部分には、モノクローナル抗体または小分子、例えばドセタキセルなどが含まれている。いくつかの場合には、内側部分(含まれている部分を含む)を、例えば外殻によって、外部環境に露出しないようにする。
【0040】
諸実体-カプセル/ナノカプセル、粒子/ナノ粒子
いくつかの場合には、実体はカプセル(例えば、ナノカプセル)である。カプセルは、実質的に固体であるか、またはコム様またはゲル様の殻を有する。さらに、いくつかの場合には、実体は、ナノ粒子などの粒子である。粒子は、固体であり、明確な形状を有する。いくつかの場合には、粒子は、外殻に取り囲まれた内側部分を有する実体であり、例えば、粒子はカプセルである。ナノカプセルは、大きさがナノメートルの範囲内にある。ナノ粒子が概ね球状である場合、それをナノスフェアと呼ぶことがある。ナノカプセルは、実質的に均一であるが、ほかの表面的特徴、例えば本明細書に記載されるものを含めた標的化部分、浸透促進剤、抗体などを有する。
【0041】
いくつかの場合には、粒子は、外殻に取り囲まれた内側部分を有する実体であり、例えば、粒子はカプセルまたはナノカプセルである。いくつかの場合には、ナノカプセルは、内核と、内核と識別可能な組成を有する外殻とを含む、ナノメートルの範囲内の大きさを有する。内核は、例えば液体または固体材料であり得る。必ずというわけではないが、多くの場合、内核は油である。外殻は、連続する材料から形成され、通常、内核とは共有結合していない。いくつかの場合には、外殻は、平均の厚さが少なくとも1nm、少なくとも2nm、少なくとも3nm、少なくとも5nm、少なくとも10nm、少なくとも20nm、少なくとも30nm、少なくとも50nm、少なくとも100nm、または少なくとも200nmである。
【0042】
いくつかの場合には、ナノ実体は外殻を1つだけ含む。
【0043】
諸実体-ミセル
いくつかの場合には、実体はミセルである。ミセルは通常、内側部分と外面を画定する複数の界面活性剤または両親媒性分子から形成される。例えば、界面活性剤分子は、例えば、界面活性剤または両親媒性分子の単層から形成される、相対的に親水性の外面と相対的に疎水性の内側部分とを有するよう配置される。いくつかの場合には、ミセルは、大きさがナノメートルの範囲内にある。ミセルは、いくつかの実施形態では、外相に分散させたとき、CMC(臨界ミセル濃度)を上回る濃度の両親媒性分子によって構成される。外部の液相が水性である場合、両親媒性分子の親水性部分が外相の方を向く。両親媒性分子の濃度によっては、ミセル自体が組織化して、ミセルのクラスターというさらに大きい構造を形成することがある。ミセルは、例えば、親水性部分が表面にあり、疎水性部分が内部を向いている(または、いくつかの場合にはその逆である)界面活性剤分子から形成される。
【0044】
諸実体-リポソーム
リポソームは、類似した構造を有し得るが、通常、界面活性剤または両親媒性分子の二重層(例えば、脂質二重層)から形成され、それにより内側部分、中間部分、および外殻が画定され得るものであり、例えば、内側部分が相対的に親水性となり、中間部分(例えば、界面活性剤または両親媒性分子の二層構造によって形成される、リポソームの外殻)が相対的に疎水性となり、リポソームの外部が水性または親水性の環境となる。
【0045】
本明細書で使用される「親水性」であるという特性は、分子または官能基が水相に入り込む、またはそこに留まるという本質的な特性であると理解される。したがって、「疎水性」であるという特性は、分子または官能基が水に対して外側に向かう挙動を示す、すなわち、水に入り込まない、または水相を離れる傾向を示すという本質的な特性であると理解される。さらなる詳細については、Rompp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,N.Y.,1998,“Hydrophilicity”,“Hydrophobicity”,294および295ページを参照されたい。いくつかの場合には、親水性(または水溶性)の実体とは、log Pが1.5未満である実体のことであり、疎水性(または脂溶性)の実体とは、log Pが1.5を上回る実体のことであり、ここでは、log Pは実体のオクタノール-水分配係数である。
【0046】
内側部分が実体内に存在する場合、内側部分には液体が含まれており、いくつかの場合には、液体は水性または非水性である。いくつかの場合には、液体には生理食塩水または塩水溶液が含まれている。液体は任意選択で、例えば対象に送達するための、薬物またはその他の医薬品を含有し得る。薬物またはその他の医薬品の非限定的な例については、本明細書で検討される。例えば、内側部分には、モノクローナル抗体または小分子、例えばドセタキセルなどが含まれている。
【0047】
いくつかの実施形態では、ナノ実体は、PSAなどのポリマーを含む材料の単層から実質的になる、外殻を含む。他の実施形態では、ナノ実体は、PSAなどのポリマーを含む単殻を含む。他の実施形態では、外殻は複数の層を含み、その層のうちの1つがPSAなどのポリマーを含む。さらなる実施形態では、ポリマーを含む層が最外層である。
【0048】
いくつかの実施形態では、ナノ実体、例えば、ナノカプセル、ナノ粒子、ミセル、またはリポソームの内側部分は、固体、半固体(例えば、ゲル)、液体、気体、またはその組合せを含む。内側部分は、水性もしくは非水性であるか、または水性部分と非水性部分をともに含む。いくつかの実施形態では、内側部分は、1つまたは複数の医薬品、薬物などを含む。
【0049】
他の実施形態では、内側部分は非水性部分を含む。さらなる実施形態では、非水性部分は非水性液体である。さらなる実施形態では、非水性液体は疎水性化合物、例えば油を含む。さらなる実施形態では、非水性液体は、油と界面活性剤とを含む。さらなる実施形態では、内側部分は脂肪酸を含む。さらなる実施形態では、内側部分はモノグリセリドを含む。さらなる実施形態では、内側部分はジグリセリドを含む。さらなる実施形態では、内側部分はトリグリセリドを含む。さらなる実施形態では、内側部分は中鎖トリグリセリドを含む。さらなる実施形態では、内側部分は長鎖トリグリセリドを含む。
【0050】
疎水性化合物
実体(例えば、カプセル、粒子、ミセル、またはその他のナノ実体、例えば本明細書で検討されるものなど)の内側部分が非水性である場合、内側部分を形成している非水性液体は、例えば、油、脂肪酸、アルカン、シクロアルカン、胆汁酸塩、胆汁酸塩誘導体、テルペノイド、テルペン、テルペン由来部分、および脂溶性ビタミンから選択される、1つまたは複数の疎水性化合物、ならびに/あるいは少なくとも1つの界面活性剤を含む。これらの油は、製薬に使用する天然油、半合成油、および合成油、例えば植物もしくは動物源由来の油、炭化水素油、またはシリコーン油などから選択され得る。本発明の特定の実施形態を実施するのに適した油としては、特に限定されないが、鉱油、スクアレン油、香味油、シリコーン油、精油、非水溶性ビタミン、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸セチル、ベヘン酸トリデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、アントラニル酸メンチル、オクタン酸セチル、サリチル酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールケトール、オレイン酸デシル、乳酸C12~C15アルキル、乳酸セチル、乳酸ラウリル、ネオペンタン酸イソステアリル、乳酸ミリスチル、ステアロイルステアリン酸イソセチル、ステアロイルステアリン酸オクチルドデシル、炭化水素油、イソパラフィン、流動パラフィン、イソドデカン、石油ゼリー、アルガン油、ナタネ油、ラー油、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、アマニ油、ブドウ種子油、カラシ油、オリーブ油、パーム油、分画パーム油、ラッカセイ油、ヒマシ油、松の実油、芥子油、カボチャ種子油、米ぬか油、ベニバナ油、ティーツリー油、トリュフ油、植物油、キョウニン油、ホホバ油、マカダミアナッツ油、コムギ胚芽油、アーモンド油、ダイズ油、ゴマ種子油、ハシバミ油、ヒマワリ油、麻実油、シタン油、ククイナッツ油、アボカド油、クルミ油、魚油、ベリー油、オールスパイス油、杜松油、種子油、アーモンド種子油、アニス種子油、セロリ種子油、クミン種子油、ナツメグ種子油、バジル葉油、ベイリーフ油、桂皮葉油、セージ葉油、ユーカリ葉油、レモン葉油、メラレウカ葉油、オレガノ油、パチョリ葉油、ハッカ葉油、マツ葉油、ローズマリー葉油、スペアミント油、ティーツリー葉油、タイム油、花精油、カミツレ油、クラリーセージ油、チョウジ油、ゼラニウム花精油、ヒソップ花精油、ジャスミン油、ラベンダー油、マウカ花精油、マジョラム花精油、オレンジ花精油、バラ花精油、イランイラン花精油、樹皮油、カッシア樹皮油、桂皮油、ササフラス樹皮油、桐油、クスノキ木油、シダーウッド油、シタン油、ビャクダン油、生姜油、トール油、ヒマシ油、ミルラ油、果皮油、ベルガモット果皮油、グレープフルーツ果皮油、レモン果皮油、ライム果皮油、オレンジ果皮油、タンジェリン果皮油、根油、吉草油、オレイン酸、リノール酸、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイン酸エチル、中鎖トリグリセリド、例えばデカノイルグリセリドとオクタノイルグリセリドの混合物(Miglyol(登録商標)810N、Miglyol(登録商標)812N、Kollisolv(登録商標)MCT、Captex(登録商標)300、Captex(登録商標)355、Labrafac(登録商標)Lipophile WL1349)、Labrafil(登録商標)M 2125 CS(リノレオイルマクロゴール-6グリセリド)、Labrafil(登録商標)M2130 CS(ラウロイルマクロゴール-6グリセリド)、Labrafil(登録商標)M 1944 CS(オレオイルポリオキシル-6グリセリド)、Labrafac(登録商標)PG(プロピレングリコールジカプリロカプラート)、Rylo(登録商標)(脂肪酸の混合物)、Peceol(登録商標)(グリセロールモノオレアート)およびMaisine(登録商標)(グリセロールモノリノレアート)など、その合成または半合成誘導体、ならびにその組合せが挙げられる。
【0051】
いくつかの場合には、油は、ラッカセイ油、綿実油、オリーブ油、ヒマシ油、ダイズ油、ベニバナ油、ゴマ油、トウモロコシ油、パーム油、アルファ-トコフェロール(ビタミンE)、ミリスチン酸イソプロピル、スクアレン、Miglyol(登録商標)、Labrafil(登録商標)、Labrafac(登録商標)、Peceol(登録商標)、Captex(登録商標)、Kollisolv(登録商標)MCT、およびMaisine(登録商標)、またはその混合物のうちの1つまたは複数のものである。その他の適切な油としては、イソプレン単位(2-メチルブタ-1,3-ジエン)によって形成され、その炭素原子に従って細分されるテルペンファミリー、すなわち、ヘミテルペン(C5)、モノテルペン(C10)、セスキテルペン(C15)、ジテルペン(C20)、セスタテルペン(C25)、トリテルペン(C30)、テトラテルペン(C40、カロテノイド)およびポリテルペンに由来する油、ビタミンA、スクアレンなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、内側部分を形成する非水性液体は、製剤の安定性を最大限にするため、非水溶性の安定剤、保存剤、界面活性剤、有機溶媒、およびその混合物を含有し得る。様々な実施形態では、これらの油および/またはその他の油のうちの1つまたは複数のものの組合せも可能である。
【0052】
実体(例えば、カプセル剤、粒子、ミセル、またはその他のナノ実体、例えば本明細書で検討されるものなど)の内側部分が水性である場合、内側部分を形成する水性液体は、ある特定の実施形態では、少なくとも1つの塩を含有する水からなるものであり得る。
【0053】
さらに、いくつかの実施形態では、内側部分を形成する水性液体は、1つまたは複数の水溶性の安定剤、保存剤、界面活性剤、グリコール、ポリオール、糖、増粘剤、ゲル化剤、およびこれらの組合せ、ならびに/あるいはその他の適切な補形剤を含有し得る。これらの補形剤は、例えば、製剤の安定性を改善するため、最終組成物の粘度を調整するため、内部水相からの放出速度を制御するためなどに使用される。
【0054】
ポリマー
ある一連の実施形態では、実体(例えば、カプセル剤、粒子、ミセル、またはその他のナノ実体、例えば本明細書で検討されるものなど)は、PSAなどのポリマーを含む。ポリマーは、実体全体に均等に分布するか、または、実体の特定の領域内に、例えば、カプセルの外殻もしくは実体のその他の外表面に濃縮される。いくつかの場合には、実体の一部分、例えば殻などの少なくとも50重量%がポリマーを含み、特定の場合には、実体の一部分の少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも99重量%がポリマーを含み得る。いくつかの場合には、実体の一部分は、ポリマーから実質的になるものであり得る。
【0055】
本発明の特定の実施形態では、様々なポリマーを使用する。例えば、ポリマーは、ある一連の実施形態では、ポリ酸、ポリ(アミノ酸)、またはポリエステルである。これらのポリマーの非限定的な例としては、PSA、ヒアルロン酸(HA)、ポリグルタミン酸(PGA)、ペグ化ポリグルタミン酸(PGA-PEG)、ポリ(アスパラギン酸)(PASP)、ペグ化ポリアスパラギン酸(PASP-PEG)、ポリ乳酸、ペグ化ポリ乳酸(PLA-PEG)、ペグ化ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA-PEG)、ポリアスパラギン、ペグ化ポリアスパラギン、アルギン酸、ペグ化アルギン酸、ポリリンゴ酸、ペグ化ポリリンゴ酸などが挙げられる。ある特定の実施形態では、これらのポリマーおよび/またはその他のポリマーの組合せも使用される。例えば、このようなポリマーは、例えばナノ実体の内側部分の中に含まれるモノクローナル抗体または小分子を含有する、ナノ実体を形成するために、または本明細書に記載される用途などのその他の用途に使用される。
【0056】
ポリマー-ポリシアル酸、PSA
ある一連の実施形態では、ポリマーはPSAを含む。PSAは一般に、複数のシアル酸単位から構成され、シアル酸単位は多くの場合、2-->8および/または2-->9結合を介して一緒に結合して、ポリマーを形成するが、その他の結合配置も可能である。通常、一緒に結合してPSAを形成するシアル酸単位が少なくとも2個、少なくとも4個、少なくとも6個、少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも400個、または少なくとも500個存在する。いくつかの場合には、PSAは、一緒に結合してPSAを形成するシアル酸単位を1000個以下、500個以下、200個以下、100個以下、50個以下、30個以下、または10個以下有する。これらのうちのいずれかの組合せも可能であり、例えば、PSAは、一緒に結合したシアル酸単位を2~100個有する。シアル酸単位は同一である必要はなく、同じPSA分子内であっても独立に同じものまたは異なるものであり得ることに留意するべきである。また、PSAは必ずしも一直線の(直鎖状の)鎖である必要はなく、様々な分岐配置も可能であることに留意するべきである。例えば、あるシアル酸単位が3つ以上の異なるシアル酸単位と結合し、それにより、PSA分子内に分岐点が生じる。
【0057】
非限定的な例として、PSAは、分子量が様々であり、例えば、4kDa、30kDa、95kDaなどである。いくつかの場合には、PSAは300個超のシアル酸単位を含む。ほかの非限定的な例として、PSAは、分子量が少なくとも1kDa、少なくとも3kDa、少なくとも5kDa、少なくとも10kDa、少なくとも20kDa、少なくとも25kDa、少なくとも30kDa、少なくとも40kDa、少なくとも50kDa、少なくとも60kDa、少なくとも70kDa、少なくとも75kDa、少なくとも80kDa、少なくとも90kDa、少なくとも100kDaなどである。いくつかの場合には、PSAは、分子量が100kDa以下、90kDa以下、80kDa以下、75kDa以下、70kDa以下、60kDa以下、50kDa以下、40kDa以下、30kDa以下、25kDa以下、20kDa以下、10kDa以下、5kDa以下、3kDa以下、または1kDa以下である。これらのうちのいずれかの組合せも可能であり、例えば、PSAは、分子量が約1kDa~約100kDa、約5kDa~約80kDa、または約10kDa~約50kDaなどである(別途明示されない限り、本明細書に記載される分子量は数平均分子量である)。
【0058】
また、ポリシアル酸は必ずしも同一である必要はないことに留意するべきである。例えば、いくつかの実施形態では、PSAは、シアル酸単位の数が様々であり、かつ/または、存在する様々なPSA分子中に様々なシアル酸単位が存在する。いくつかの場合には、1種類または数種類のPSA分子が存在してよく、例えば、1つまたは複数の形態が、存在するPSA分子を、すなわち、モルベースで、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上含む。
【0059】
PSA内に存在するシアル酸単位の非限定的な例としては、特に限定されないが、N-アセチルノイラミン酸(Neu)、2-ケト-3-デオキシノン酸(deoxynonic acid)(Kdn)、ラクタミン酸、N-シアル酸、および/またはO-シアル酸が挙げられる。その他の例としては、N-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)、9-O-アセチル-8-O-メチル-N-アセチルノイラミン酸(Neu5,9Ac28Me)、および7,8,9-トリ-O-アセチル-N-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc7,8,9Ac3)が挙げられる。「Sia」は一般に、不特定のシアル酸単位を表す。いくつかの実施形態では、シアル酸単位は、天然に通常みられる43種類の誘導体を含めたノイラミン酸(9炭素糖)の任意の誘導体を含む。このようなものとしては、特に限定されないが、Neu;Neu5Ac;Neu4,5Ac
2;Neu5,7Ac
2;Neu5,8Ac
2;Neu5,9Ac
2;Neu4,5,9Ac
3;Neu5,7,9Ac
3;Neu5,8,9Ac
3;Neu5,7,8,9Ac
4;Neu5Ac9Lt;Neu4,5Ac
29Lt;Neu5Ac8Me;Neu5,9Ac
28Me;Neu5Ac8S;Neu5Ac9P;Neu2en5Ac;Neu2en5,9Ac
2;Neu2en5Ac9Lt;Neu2,7an5Ac;Neu5Gc;Neu4Ac5Gc;Neu7Ac5Gc;Neu8Ac5Gc;Neu9Ac5Gc;Neu7,9Ac
25Gc;Neu8,9Ac
25Gc;Neu7,8,9Ac
35Gc;Neu5Gc9Lt;Neu5Gc8Me;Neu9Ac5Gc8Me;Neu7,9Ac
25Gc8Me;Neu5Gc8S;Neu5GcAc;Neu5GcMe;Neu2en5Gc;Neu2en9Ac5Gc;Neu2en5Gc9Lt;Neu2en5Gc8Me;Neu2,7an5Gc;Neu2,7an5Gc8Me;Kdn;およびKnd9Acが挙げられる。ある一連の実施形態では、シアル酸単位(重合してPSAを形成する前)はそれぞれ独立に、以下の構造を有し得る:
【化1】
R
1は、H;Gal(3/4/6)、GalNAc(6)(N-アセチルガラクトサミン)、GlcNAc(4/6)、Sia(8/9)、もしくは5-O-Neu5Gcとのアルファ結合;2,7-アンヒドロ分子中のC-7と結合した酸素;またはNeu2en5Acで除去されるアノマーヒドロキシル(C-3との二重結合)である。R
2は、H;Gal(3/4/6)、GalNAc(6)、GlcNAc(4/6)、Sia(8/9)、または5-O-Neu5Gcとのアルファ結合;2,7-アンヒドロ分子中のC-7との結合した酸素;またはNeu2en5Acで除去されるアノマーヒドロキシル(C-3との二重結合)である。R
4は、H;-アセチル;C-8とのアンヒドロ;Fuc(フコース);またはGal(ガラクトース)である。R
5は、アミノ;N-アセチル;N-グリコリル;ヒドロキシル;N-アセトイミドイル;N-グリコリル-O-アセチル;N-グリコリル-O-メチル;またはN-グリコリル-O-2-Neu5Gcである。R
7は、H;-アセチル;C-2とのアンヒドロである;またはLeg(レジオナミン酸)においてアミノおよびN-アセチルによって置換されている。R
8は、H;-アセチル;C-4とのアンヒドロ;-メチル;-硫酸;Sia(シアル酸);またはGlc(グルコース)である。R
9は、H;-アセチル;-ラクチル;-リン酸;-硫酸;Sia;またはLegにおいてHによって置換されたOHである。いくつかの場合には、PSAはコロミン酸(2-->8結合だけが存在する場合)である。
【0060】
本明細書で使用されるシアル酸は、シアル酸の水溶性塩および水溶性誘導体を含む。例えば、シアル酸塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、または亜鉛塩である。一実施形態では、シアル酸の少なくとも一部がナトリウム塩として存在する。複数の種類のシアル酸の組合せを例えば、PSAのサブユニットとして、および/または異なる分子のPSAとして使用してもよい。
【0061】
ある一連の実施形態では、PSA内のシアル酸の少なくとも一部が修飾されている(ただし、他の実施形態では、PSAが必ずしも修飾されているわけではないことを理解するべきである)。例えば、いくつかの場合には、1つまたは複数のシアル酸単位が、例えば、ポリエチレングリコール、アルキル、またはその他の疎水性部分などとの結合によって修飾されている。疎水性部分は、疎水性分子またはその一部分、例えば、本明細書で検討されるものなどのアルキル基を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、ナノ実体はポリアルギニンもプロタミンも含まない。
【0063】
ただし、例えばPSAに加えて、かつ/またはこれに代えて、他のポリマーも使用し得ることを理解するべきである。
【0064】
ポリマー-ヒアルロン酸、HA
ある一連の実施形態では、ポリマーはヒアルロン酸を含む。ヒアルロン酸は、下の式に示すように、交互に存在するベータ-1,4グリコシド結合とベータ-1,3グリコシド結合によって結合したD-グルクロン酸とD-N-アセチルグルコサミンを交互に付加することによって形成される二糖構造の反復を含む、直鎖状ポリマーである:
【化2】
式中、整数nは重合度、すなわち、ヒアルロン酸鎖中の二糖単位の数を表す。例えば、nは、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、または少なくとも500である。いくつかの場合には、nは、1000以下、500以下、200以下、100以下、50以下、30以下、または10以下である。これらのうちのいずれかの組合せも可能であり、例えば、nは2~100である。ヒアルロン酸単位は同一である必要はなく、同じヒアルロン酸鎖内であっても独立に同じものまたは異なるものであり得ることに留意するべきである。また、ヒアルロン酸は必ずしも一直線の(直鎖状の)鎖である必要はなく、様々な分岐配置も可能であることに留意するべきである。
【0065】
したがって、広範囲にわたる分子量のヒアルロン酸を使用できる。分子量の大きいヒアルロン酸は市販されているのに対し、分子量の小さいヒアルロン酸は、例えばヒアルロニダーゼ酵素を用い、高分子量ヒアルロン酸を断片化することによって入手できる。非限定的な例として、ヒアルロン酸は、分子量が様々であり、例えば、4kDa、30kDa、95kDaなどである。例えば、ヒアルロン酸は、分子量が少なくとも1kDa、少なくとも3kDa、少なくとも5kDa、少なくとも10kDa、少なくとも20kDa、少なくとも25kDa、少なくとも30kDa、少なくとも40kDa、少なくとも50kDa、少なくとも60kDa、少なくとも70kDa、少なくとも75kDa、少なくとも80kDa、少なくとも90kDa、少なくとも100kDaなどである。いくつかの場合には、ヒアルロン酸は、分子量が100kDa以下、90kDa以下、80kDa以下、75kDa以下、70kDa以下、60kDa以下、50kDa以下、40kDa以下、30kDa以下、25kDa以下、20kDa以下、10kDa以下、5kDa以下、3kDa以下、または1kDa以下である。これらのいずれかの組合せも可能であり、例えば、ヒアルロン酸は、分子量が約1kDa~約100kDa、約5kDa~約80kDa、または約10kDa~約50kDaなどである。
【0066】
本明細書で使用されるヒアルロン酸はまた、その共役塩基(ヒアルロン酸塩)を含む。この共役塩基は、無機塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、およびリチウム塩など、有機塩、例えば中性pHの塩基性アミノ酸塩などを含めたヒアルロン酸のアルカリ塩であり得る。いくつかの場合には、塩は薬学的に許容されるものである。一実施形態では、アルカリ塩は、ヒアルロン酸のナトリウム塩である。また、複数の種類のヒアルロン酸の組み合わせを例えば、ヒアルロン酸鎖のサブユニットとして、および/または異なる分子のヒアルロン酸として使用する。
【0067】
したがって、ヒアルロン酸は必ずしも同一である必要はない。例えば、いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸単位(上記のものなど)の数が様々であり、かつ/または、存在する様々なヒアルロン酸鎖中に様々なヒアルロン酸単位が存在する。いくつかの場合には、1つまたは複数の種類のヒアルロン酸分子が存在し、例えば、1つまたは複数の形態が、存在するヒアルロン酸分子を、すなわち、モルベースで、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸単位の少なくとも一部が修飾されている(ただし、他の実施形態では、ヒアルロン酸が必ずしも修飾されているわけではないことを理解するべきである)。例えば、いくつかの場合には、1つまたは複数のヒアルロン酸単位が、例えば、ポリエチレングリコール、アルキル、またはその他の疎水性部分などとの結合によって修飾されている。疎水性部分は、疎水性分子またはその一部分、例えば、本明細書で検討されるものなどのアルキル基を含む。
【0069】
ポリマー-ポリグルタミン酸、PGA
別の一連の実施形態では、ポリマーはポリグルタミン酸(PGA)を含む。ポリグルタミン酸(PGA)は、負荷電のグルタミン酸単位からなる親水性で生分解性のポリマーである。これは以下の式によってあらわされ得る:
【化3】
式中、整数nは重合度、すなわち、グルタミン酸単位の数を表す。例えば、nは、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、または少なくとも500である。いくつかの場合には、nは、1000以下、500以下、200以下、100以下、50以下、30以下、または10以下である。これらのうちのいずれかの組合せも可能であり、例えば、nは2~100である。ヒアルロン酸グルタミン酸単位は同一である必要はなく、同じポリグルタミン酸内であっても独立に同じものまたは異なるものであり得ることに留意するべきである。このようなグルタミン酸単位の例としては、のちに検討するものなどが挙げられる。また、グルタミン酸単位は必ずしも一直線の(直鎖状の)鎖である必要はなく、様々な分岐配置も可能であることに留意するべきである。
【0070】
したがって、広範囲にわたる分子量のポリグルタミン酸を使用できる。非限定的な例として、ポリグルタミン酸は、分子量が様々であり、例えば、4kDa、30kDa、95kDaなどである。例えば、ポリグルタミン酸は、分子量が少なくとも1kDa、少なくとも3kDa、少なくとも5kDa、少なくとも10kDa、少なくとも20kDa、少なくとも25kDa、少なくとも30kDa、少なくとも40kDa、少なくとも50kDa、少なくとも60kDa、少なくとも70kDa、少なくとも75kDa、少なくとも80kDa、少なくとも90kDa、少なくとも100kDaなどである。いくつかの場合には、ヒアルロン酸は、分子量が100kDa以下、90kDa以下、80kDa以下、75kDa以下、70kDa以下、60kDa以下、50kDa以下、40kDa以下、30kDa以下、25kDa以下、20kDa以下、10kDa以下、5kDa以下、3kDa以下、または1kDa以下である。これらのいずれかの組合せも可能であり、例えば、ポリグルタミン酸は、分子量が約1kDa~約100kDa、約5kDa~約80kDa、または約10kDa~約50kDaなどである。
【0071】
本明細書で使用されるポリグルタミン酸(またはPGA)は、特に限定されないが、その共役塩基(グルタミン酸塩)、ならびに/あるいはアンモニウム塩のようなPGAの水溶性塩、およびリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などのようなPGAの金属塩を含む。一実施形態では、PGAは、例えば、ポリ-D-グルタミン酸、ポリ-L-グルタミン酸L-グルタミン酸、ポリ-D酸、ポリ-グルタミン酸、ポリ-D-グルタミン酸、グルタミン酸ポリ-およびポリ-アルファ-L-グルタミン酸、ポリ-アルファ-D酸、L-グルタミン酸、ポリ-ガンマ-D-グルタミン酸、ポリ-ガンマ-L-グルタミン酸およびポリ-ガンマ-D、L-グルタミン酸、ならびにその混合物を含む。別の実施形態では、PGAはポリ-L-グルタミン酸として存在する。いくつかの場合には、PGAはポリ-L-グルタミン酸のナトリウム塩として存在する。別の実施形態では、PGAはポリ-アルファ-グルタミン酸として存在する。さらに別の実施形態では、PGAはポリ-a-グルタミン酸のナトリウム塩として存在する。上記の通り、複数の種類のポリグルタミン酸の組合せを例えば、ポリグルタミン酸鎖のサブユニットとして、および/または異なる分子のポリグルタミン酸として使用してもよい。
【0072】
したがって、ポリグルタミン酸は必ずしも同一である必要はない。例えば、いくつかの実施形態では、ポリグルタミン酸は、グルタミン酸単位(上記のものなど)の数が様々であり、かつ/または、存在する様々なポリグルタミン酸鎖中に様々なポリグルタミン酸が存在する。いくつかの場合には、1つまたは複数の種類のポリグルタミン酸分子が存在し、例えば、1つまたは複数の形態が、存在するポリグルタミン酸を、すなわち、モルベースで、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、ポリグルタミン酸単位の少なくとも一部が修飾されている(ただし、他の実施形態では、ポリグルタミン酸が必ずしも修飾されているわけではないことを理解するべきである)。例えば、いくつかの場合には、1つまたは複数のポリグルタミン酸単位が、例えば、ポリエチレングリコール、アルキル、またはその他の疎水性部分などとの結合によって修飾されている。疎水性部分は、疎水性分子またはその一部分、例えば、本明細書で検討されるものなどのアルキル基を含む。
【0074】
ポリマー-ポリ(エチレングリコール)、PEG
ある一連の実施形態では、ポリマーはポリ(エチレングリコール)(PEG)を含む。いくつかの場合には、PEGがPGAとコンジュゲートされて、例えば、ポリグルタミン酸-ポリエチレングリコール酸コポリマー(PGA-PEG)を形成する。ただし、他の場合には、PEGが存在する、すなわち、PGAとコンジュゲートされていない。
【0075】
ポリエチレングリコール(PEG)は、その最も一般的な形態では、式:
H-(O-CH2-CH2)n-OH
を有するポリマーであり、式中、nは、PEG重合度を表す整数である。コンジュゲートPGA-PEGの形成には、2つの末端ヒドロキシル基のうち1つまたは2つのヒドロキシル基を修飾する。修飾されたPEGは、例えば、以下の通りであり:
X1-(O-CH2-CH2)n-X2
式中、X1は、水素、またはのちの反応のためのOHラジカル基をブロックするヒドロキシル保護基である。例えば、nは、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、または少なくとも500である。いくつかの場合には、nは、1000以下、500以下、200以下、100以下、50以下、30以下、または10以下である。これらのうちのいずれかの組合せも可能であり、例えば、nは2~100である。
【0076】
ヒドロキシルラジカルの保護基は当該技術分野で周知であり、代表的な(酸素を含む)保護基には、例えば、シリルエーテル、例えばトリメチルシリルエーテル、トリエチルシリルエーテル、tert-ブチルジメチルシリルエーテル、tert-ブチルジフェニルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、ジエチルイソプロピルシリルエーテル、トリエチルジメチルシリルエーテル、トリフェニルシリルエーテル、ジ-tert-ブチルメチルシリルエーテルなど;アルキルエーテル、例えばメチルエーテル、tert-ブチルエーテル、ベンジルエーテル、3,4-ジメトキシベンジルエーテルのp-メトキシベンジルエーテル、トリエチルエーテル、アリルエーテル;アルコキシメチルエーテル、例えばメトキシメチルエーテル、2-メトキシエトキシメチル、ベンジルオキシメチルエーテル、p-メトキシベンジルオキシメチルエーテル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチルエーテルなど;テトラヒドロピラニルエーテルおよびそれに関連するエーテル;メチルチオメチルエーテル;エステル、例えば酢酸エステル、安息香酸エステル、ピバル酸エステル、メトキシ酢酸エステル、クロロ酢酸エステル、レブリン酸エステルなど;炭酸エステル、例えば炭酸ベンジル、炭酸p-ニトロベンジル、炭酸tert-ブチル、炭酸2,2,2-トリクロロエチル、炭酸2-(トリメチルシリル)エチルアリルなどがある。具体例として、保護基は、メチルエーテルなどのアルキルエーテルである。X2は、ポリグルタミン酸基およびそれから誘導される基への固定を可能にする架橋基である。いくつかの場合には、X2は、他のPGAおよびその誘導体との固定を可能にする基であり得る。
【0077】
ポリマー-PGA/PEG
いくつかの場合には、PEGは、PGAおよびその誘導体のアミン基および/またはカルボン酸を介して、PGAおよびその誘導体と結合している。ポリマーのPEG化は、当該技術分野で利用可能な任意の適切な方法を用いて実施できる。
【0078】
このようなポリマーは、様々な分子量で用いることができる。例えば、適切なPEGまたはPGA-PEGの分子量は、約1kDa~約100kDa、約5kDa~約80kDa、約10kDa~約50kDa、または約10kDa、約15kDa、約20kDa、約25kDa、約30kDa、および約35kDaである。
【0079】
別の例として、適切なPEGまたはPGA-PEGおよびその水溶性誘導体の分子量は、約1kDa~約50kDa、約2kDa~約40kDa、約3kDa~約30kDa、または約4kDa、約5kDa、約6kDa、約7kDa、約8kDa、約10kDa、約15kDa、約20kDa、約21kDa、約22kDa、約23kDa、約24kDa、約25kDa、もしくは約30kDaであり得る。
【0080】
ほかの非限定的な例として、PEGまたはPGA-PEGは、分子量が少なくとも1kDa、少なくとも3kDa、少なくとも5kDa、少なくとも10kDa、少なくとも20kDa、少なくとも25kDa、少なくとも30kDa、少なくとも40kDa、少なくとも50kDa、少なくとも60kDa、少なくとも70kDa、少なくとも75kDa、少なくとも80kDa、少なくとも90kDa、少なくとも100kDaなどである。いくつかの場合には、PEGまたはPGA-PEGは、分子量が100kDa以下、90kDa以下、80kDa以下、75kDa以下、70kDa以下、60kDa以下、50kDa以下、40kDa以下、30kDa以下、25kDa以下、20kDa以下、10kDa以下、5kDa以下、3kDa以下、または1kDa以下である。これらのいずれかの組合せも可能であり、例えば、PEGまたはPGA-PEGは、分子量が約1kDa~約100kDa、約5kDa~約80kDa、または約10kDa~約50kDaなどである。
【0081】
いくつかの場合には、PGA-PEGポリマーおよびその水溶性誘導体は、様々なPEG化度で用いることができる。このPEG化度がPGAの官能基の割合と定義される、または官能基PGA誘導体がPEGで官能化される。したがって、PEG化PGA-PEGポリマーおよびその水溶性誘導体の適切な度数は、例えば、約0.1%~約10%、約0.2%~約5%、約0.5%~約2%、または約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、もしくは約2%であり得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、PGA-PEGおよびその誘導体水溶性ポリマー中のPEGの割合は、ポリマーの総重量に対して約10%~90%(w/w)、約15%~80%、約20%~70%、または約20%、約22%、約24%、約26%、約28%、約30%、約32%、約34%、約36%、約38%、約40%、約42%、約44%、約46%、約48%、約50%、約52%、約54%、約56%、約58%、もしくは約60%であり得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、PGAが1つまたは複数の利用可能な位置、例えばアミン基および/またはカルボン酸において、必要に応じて1つまたは複数の基で置換されている、PGAまたはPGA-PEGの水溶性誘導体を含む。適切なPGAおよびPGA-PEG誘導体の誘導体としては、ポリ(アルキルグルタミン)および誘導体PEG-ポリ(アルキルグルタミン)、例えばポリ(N-2-(2’-ヒドロキシエトキシ)エチル-L-グルタミン)(PEEG)、PEG-PEEG、ポリ(N-3-(ヒドロキシプロピル)-L-グルタミン)(PHPG)、PEG-PHPG、ポリ(N-2-(ヒドロキシエチル)-L-グルタミン)(PHEG)、PEG-PHEG、ポリ(アルファ-ベンジル-L-グルタミン酸)(PBG)、PEG-PBG、ポリ(ガンマ-トリクロロエチル-L-グルタミン酸)(pTCEG)、PEG-pTCEG、ポリ(ジメチルアミノエチル-L-グルタミン)(pDMAEG)、PEG-pDMAEG、ポリ(ピリジノエチル-L-グルタミン)(pPyAEG)、PEG-pPyAEG、ポリ(アミノエチル-L-グルタミン)(PAEG)、PEG-PAEG、ポリ(ヒスタミノ-L-グルタミン)(pHisG)、PEG-pHisG、ポリ(アグマチン-L-グルタミン)(pAgmG)、およびPEG-pAgmG、ならびにその混合物が挙げられる。
【0084】
ポリマー-ポリ(アスパラギン酸)、PASP
また別の一連の実施形態では、ポリマーは、アミノ酸であるアスパラギン酸のポリマー、例えば(PAsp)nである、ポリ(アスパラギン酸)(PASP)を含む。ポリマー内には任意の数のアスパラギン酸単位が存在する。例えば、nは、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、または少なくとも500である。いくつかの場合には、nは、1000以下、500以下、200以下、100以下、50以下、30以下、または10以下である。これらのうちのいずれかの組合せも可能であり、例えば、nは2~100である。また、PASP鎖内には他のアミノ酸が存在し、ポリマーは直鎖状または分岐鎖状であることに留意するべきである。さらに、本明細書で使用されるPASPは、水溶性塩および水溶性PASPおよび/またはPASP誘導体を含む。
【0085】
ポリ(アスパラギン酸)は、任意の適切な分子量を有する。例えば、ポリ(アスパラギン酸)は、分子量が少なくとも1kDa、少なくとも3kDa、少なくとも5kDa、少なくとも10kDa、少なくとも20kDa、少なくとも25kDa、少なくとも30kDa、少なくとも40kDa、少なくとも50kDa、少なくとも60kDa、少なくとも70kDa、少なくとも75kDa、少なくとも80kDa、少なくとも90kDa、少なくとも100kDaなどである。いくつかの場合には、ポリ(アスパラギン酸)は、分子量が100kDa以下、90kDa以下、80kDa以下、75kDa以下、70kDa以下、60kDa以下、50kDa以下、40kDa以下、30kDa以下、25kDa以下、20kDa以下、10kDa以下、5kDa以下、3kDa以下、または1kDa以下である。これらのいずれかの組合せも可能であり、例えば、ポリ(アスパラギン酸)は、分子量が約1kDa~約100kDa、約5kDa~約80kDa、または約10kDa~約50kDaなどである。
【0086】
さらに、いくつかの場合には、ポリ(アスパラギン酸)は、例えば1つまたは複数のPEG部分でペグ化されている。PEGは、本明細書に記載されるいずれかの式を有する。例えば、PEGは、コンジュゲートPASP-PEGの形成が可能なように修飾されている。修飾PEGは、例えば以下のもの:
X1-(O-CH2-CH2)n-X2
であり、式中、X1は、水素、またはのちの反応のためのOHラジカル官能基をブロックするヒドロキシル保護基である。例えば、nは、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、または少なくとも500である。いくつかの場合には、nは、1000以下、500以下、200以下、100以下、50以下、30以下、または10以下である。これらのうちのいずれかの組合せも可能であり、例えば、nは2~100である。
【0087】
疎水性部分と結合したポリマー
いくつかの実施形態では、ポリマー(例えば、PSA)は疎水性部分と結合している。いくつかの場合には、ナノ実体はミセルである。いくつかの場合には、ナノ実体は、外側の親水性表面と疎水性の内側部分とを有する。疎水性部分はアルキル基、例えば直鎖アルキル基を含む。いくつかの実施形態では、疎水性部分は少なくとも2個の炭素原子を含む。他の実施形態では、疎水性部分は少なくとも3個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、疎水性部分はC2~C24直鎖アルキル基(例えば、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、および/またはC24)を含む。特定の実施形態では、疎水性部分は直鎖C12アルキル基を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、ポリマー(例えば、PSA)と共有結合した脂肪族炭素鎖をさらに含む。いくつかの実施形態では、脂肪族炭素鎖はC2~C24脂肪族炭素鎖(例えば、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、および/またはC24)を含む。
【0088】
疎水性部分の非限定的な例としては、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、またはその他のアルキル基(例えば、直鎖または分岐鎖アルキル基、例えばイソアルキル基)が挙げられる。いくつかの場合には、疎水性部分は、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、または少なくとも24個の炭素原子を含む。疎水性部分は、飽和であるか、または、例えば1つもしくは複数の炭素間二重結合もしくは三重結合を含む、不飽和である。疎水性部分を結合させる技術の1つが、非限定的な例としてC12を用いて実施例7で検討される。いくつかの場合には、疎水性部分(例えば、C12のドデシルアミンなどのアルキルアミン)との反応の前に、第四級アンモニウム塩(例えば、水酸化テトラブチルアンモニウム)およびテトラフルオロホウ酸(例えば、2-ブロモ-1-エチルピリジニウムテトラフルオロホウ酸)による活性化を用いて疎水性部分を結合させる。他の実施形態では、例えばクリックケミストリー、グリニャール反応などを用いる、疎水性部分を結合させるその他の方法も用いる。
【0089】
付加する疎水性部分のほかの非限定的な例としては、シクロアルカン(例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シルコヘキサン(cylcohexane)など)、胆汁酸塩、テルペノイド、テルペン、テルペン由来部分、および脂溶性ビタミン、例えばビタミンA、D、E、Kなど、ならびにその誘導体が挙げられる。胆汁酸塩の非限定的な例としては、非誘導体化胆汁酸塩、例えばコール酸塩、デオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、およびウロソデオキシコール酸塩などが挙げられる。誘導体化胆汁酸塩の非限定的な例としては、タウロコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、タウロウルソデオキシコール酸塩、タウロケノデオキシコール酸塩、グリコール酸塩、グリコデオキシコール酸塩、グリコウルソデオキシコール酸塩、グリコケノデオキシコール酸塩、タウロリトコール酸塩、およびグリコリトコール酸塩などが挙げられる。
【0090】
別の一連の実施形態では、ポリマーのシアル酸またはその他のモノマーの少なくとも一部がポリエチレングリコール(PEG)と結合しているが、PEGがいずれの実施形態でも必要なものであるというわけではないことを理解するべきである。ポリエチレングリコール(PEG)は、その最も一般的な形態では、以下の式:
H-(O-CH2-CH2)p-OH
のポリマーであり、式中、pは、PEG重合度を表す整数である。いくつかの場合には、PEGはまた、修飾されて、例えば:
X3-(O-CH2-CH2)p-X4
を含み、式中、X3は、水素、またはのちの反応のためのOH官能基をブロックするヒドロキシル保護基である。ヒドロキシルラジカルの保護基は当該技術分野で周知であり、代表的な(保護する酸素を既に含む)保護基としては、特に限定されないが、シリルエーテル、例えばトリメチルシリルエーテル、トリエチルシリルエーテル、tertブチルジメチルシリルエーテル、tert-ブチルジフェニルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、ジエチルイソプロピルシリルエーテル、テトラジメチルシリルエーテル、トリフェニルシリルエーテル、ジ-tert-ブチルメチルシリルエーテルなど、アルキルエーテル、例えばメチルエーテル、tert-ブチルエーテル、ベンジルエーテル、p-メトキシベンジルエーテル、3,4-ジメトキシベンジルエーテル、トリチルエーテル、アリルエーテルなど;アルコキシメチルエーテル、例えばメトキシメチルエーテル、2-メトキシエトキシメチルエーテル、ベンジルオキシメチルエーテル、p-メトキシベンジルオキシメチルエーテル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチルエーテルなど、テトラヒドロピラニルエーテルおよびそれに関連するエーテル;メチルチオメチルエーテル、エステル、例えば酢酸エステル、安息香酸エステル、ピバル酸エステル、メトキシ酢酸エステル、クロロ酢酸エステル、レブリン酸エステル、炭酸エステル、例えば炭酸ベンジル、炭酸p-ニトロベンジル、炭酸tert-ブチル、炭酸2,2,2-トリクロロエチル、2-(トリメチルシリル)エチル、炭酸アリルなどが挙げられる。一実施形態では、保護基は、メチルエーテルなどのアルキルエーテルである。
【0091】
X4は、ポリマーのシアル酸または別のモノマーへの固定を表し、共有結合または架橋部分、例えばN-ヒドロキシ-スクシンイミド(NHS)、マレイミド基、ビオチンなど(これらはそれぞれ、修飾されたシアル酸またはその他のモノマー上で、例えば第一級アミンなどのアミン、スルフィドリル部分、またはアビジンもしくはストレプトアビジンと結合し得る)である。いくつかの場合には、X3はまた、例えばシアル酸または別のモノマーへの固定を可能にする基である。さらに、いくつかの場合には、X3は、本明細書で検討される、疎水修飾されたPSAまたはその他のポリマーを含む。例えば、ある一連の実施形態では、ポリマー(例えば、PSA)と結合した疎水性部分、例えばC3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、または別のアルキル基(例えば、直鎖または分岐鎖アルキル基、例えば、イソアルキル基)などを使用する。いくつかの場合には、疎水性部分は、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、または少なくとも24個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、疎水性部分は、疎水性が十分高いため、X4基を有さない未修飾PSAと比較して、X4を有するPSAの方が疎水性が高く、例えば、X4基を有さない場合よりもオクタノール/水分配系のオクタノールに多く分配される。
【0092】
ある一連の実施形態では、PEGは、アミン基および/またはカルボン酸基を介してポリマーと結合している。PEG化は、当該技術分野で利用可能任意の適切な方法を用いて実施できる。例えば、Gonzalez and Vaillard,“Evolution of Reactive mPEG Polymers for the Conjugation of Peptides and Proteins,”Curr.Org.Chem.,17(9):975-998,2013、およびGiorgi,et al.,“Carbohydrate PEGylation,an approach to improve pharmacological potency,”Beilstein J.Org.Chem.,10:1433-44,2014を参照されたい。PEGは、様々な分子量で用いることができ、所与の使用に適した分子量は、当業者によって容易に決定される。したがって、例えば、適切なPEGの分子量は、約1kDa~約100kDa、約5kDa~約80kDa、または約10kDa~約50kDa、例えば、約10kDa、約15kDa、約20kDa、約25kDa、約30kDa、または約35kDaである。
【0093】
いくつかの実施形態では、PEG化度は、官能基またはPEGで官能化されているポリマー中の官能基の割合と定義される。適切なPEG化度の例は、約0.1%~約10%、約0.2%~約5%、または約0.5%~約2%、例えば、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%;約0.9%、約1%、約1.1%;約1.2%、約1.3%、約1.4%;約1.5%、約1.6%、約1.7%;約1.8%;約1.9%;約2%であり得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、最終的なポリマー中のPEGの割合は、ポリマーの総重量に対して約10%~90%(w/w)、約15%~80%、約20%~70%、または約20%~60%、例えば、約22%、約24%、約26%、約28%、約30%、約32%、約34%、約36%、約38%、約40%、約42%、約44%、約46%、約48%、約50%、約52%、約54%、約56%、約58%、または約60%であり得る。
【0095】
標的化部分
一態様では、実体はまた、標的化部分を含むが、いくつかの実施形態では標的化部分が存在しないことに留意するべきである。標的化部分(存在する場合)は、実体の送達を、例えば対象内の特定の細胞集団に標的化するのに使用される。例えば、標的化部分は、1種類の細胞、例えば、癌細胞、内皮細胞、または免疫細胞へのナノ実体のアクセスを促進する。いくつかの実施形態では、標的化部分は、対象内の特定の場所、例えば、特定の器官または特定の細胞型(例えば、腫瘍または癌細胞)への実体の標的化を可能にする。いくつかの場合には、実体は、標的化部分を必要とせずに細胞によって取り込まれ、いくつかの他の場合には、標的化部分(例えば、標的化部分は細胞浸透性ペプチドおよび/または組織浸透性ペプチド、例えば、Lyp-1もしくはtLyp-1、または本明細書で検討されるCendRペプチドもしくはその他のペプチドである)が内部移行を促進する。ただし、ある特定の実施形態では、標的化部分が必ずしも内部移行も促進するわけではないことがあることを理解するべきである。いくつかの実施形態では、2種類以上の標的化部分が存在する。いくつかの実施形態では、標的化部分は細胞浸透性ペプチドおよび/または腫瘍/組織浸透性ペプチドを含む。
【0096】
対象は、ヒトまたは非ヒト動物であり得る。対象の例としては、特に限定されないが、哺乳動物、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ、ブタ、マウス、ラット、イヌ、ネコ、霊長類(例えば、サル、チンパンジーなど)などが挙げられる。いくつかの場合には、対象は、鳥類、両生類、または魚類などの非哺乳動物である。
【0097】
多種多様な標的化部分を様々な実施形態に使用し得る。例えば、標的化部分としては、ペプチド、タンパク質、アプタマー、抗体(モノクローナル抗体、ナノボディ、および抗体フラグメントを含む)、核酸、有機分子、リガンドなどが挙げられる。非限定的な具体例としては、インスリンまたはトランスフェリンが挙げられる。
【0098】
例えば、ある一連の実施形態では、標的化部分は、例えば、長さが50アミノ酸以下、40アミノ酸以下、30アミノ酸以下、または10アミノ酸以下のペプチドである。ある特定の実施形態では、標的化部分は、RGD(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸)を含む配列などの細胞認識配列を含む。ある特定の実施形態では、標的化部分は、NGR(アスパラギン-グリシン-アルギニン)を含む配列などの細胞認識配列を含む。
【0099】
「アミノ酸」は、生化学の分野で用いられる通常の意味を有する。単離アミノ酸は、(例えば、プロリンの場合のように)必ずというわけではないが、一般構造:
【化4】
を有するのが通常である。この構造では、アルファ(α)は任意の適切な部分であり;例えば、アルファ(α)は、水素原子、メチル基、またはイソプロピル基である。あるアミノ酸の-NH
2と別のアミノ酸の-COOHが反応してペプチド結合(-CO-NH-)を形成することによって一連の単離アミノ酸が連結して、ペプチドまたはタンパク質を形成し得る。このような場合、ペプチドまたはタンパク質上にあるR基をそれぞれアミノ酸残基と呼ぶことがある。本明細書で使用される「天然アミノ酸」とは、自然界に、通常L-異性体の形で一般にみられる、20種類のアミノ酸、すなわち、アラニン(「Ala」または「A」)、アルギニン(「Arg」または「R」)、アスパラギン(「Asn」または「N」)、アスパラギン酸(「Asp」または「D」)、システイン(「Cys」または「C」)、グルタミン(「Gln」または「Q」)、グルタミン酸(「Glu」または「E」)、グリシン(「Gly」または「G」)、ヒスチジン(「His」または「H」)、イソロイシン(「Ile」または「I」)、ロイシン(「Leu」または「L」)、リジン(「Lys」または「K」)、メチオニン(「Met」または「M」)、フェニルアライン(phenylalaine)(「Phe」または「F」)、プロリン(「Pro」または「P」)、セリン(「Ser」または「S」)、トレオニン(「Thr」または「T」)、トリプトファン(「Trp」または「W」)、チロシン(「Tyr」または「Y」)、およびバリン(「Val」または「V」)のことである。
【0100】
ある一連の実施形態では、標的化部分は、細胞浸透性ペプチドおよび/または組織浸透性ペプチドである。様々な細胞浸透性ペプチドを用いることができる。例えば、ペプチドは、C末端「C-end Rule」(CendR)配列モチーフ(R/K)XX(R/K)を含む。細胞浸透性ペプチドは、細胞膜を透過する能力を有する。いくつかの場合には、細胞浸透性ペプチドおよび/または組織浸透性ペプチドはまた、細胞へのナノ実体の標的化を促進する。この配列中のXはそれぞれ独立に、アミノ酸または非アミノ酸である。
【0101】
いくつかの場合には、標的化部分は、配列Z1X1X2Z2を含み、Z1がRまたはKであり、Z2がRまたはKであり、X1およびX2がそれぞれ独立に、アミノ酸残基または非アミノ酸残基である。いくつかの場合には、ペプチドの一方または両方の末端が、例えば、構造J1Z1X1X2Z2、Z1X1X2Z2J2、またはJ1Z1X1X2Z2J2のように他のアミノ酸を含み、構造中、J1およびJ2はそれぞれ独立に、アミノ酸配列(例えば、アミノ酸残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個、またはそれ以上含むもの)または脂肪族炭素鎖である。脂肪族炭素鎖は、任意の適切な配列で、例えば直鎖状または分岐状に炭素原子および水素原子を含み、飽和または不飽和である。例えば、ある一連の実施形態では、脂肪族炭素鎖は、ある式、例えば、nが1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはその他の正の整数である-(CH2)n-を有する、直鎖アルキルである。さらに、いくつかの場合には、配列は、例えば、CJ1Z1X1X2Z2、CZ1X1X2Z2J2、またはCJ1Z1X1X2Z2J2のように、システイン残基で終わる。
【0102】
CendRペプチドの非限定的な例としては、Lyp-1、tLyp-1、iNGR、cLyp1、iRGD、RPARPAR、TT1、または直鎖状TT1が挙げられる。任意選択で、ペプチド中に他のアミノ酸も存在する。Lyp-1は配列CGNKRTRGC(配列番号1)を有する。いくつかの実施形態では、2つのCys残基がジスルフィド架橋を介して互いに結合し、それにより環状構造を形成する。いくつかの場合には、例えば、tLyp-1(CGNKRTR)(配列番号2)の場合のように、Lyp-1配列の一部分だけが存在する。cLyp1は配列CGNKRTRGC(配列番号3)を有し、2つのシステインが互いに結合している。iNGRは配列CRNGRGPDC(配列番号4)を有し、2つのシステインが互いに結合している。iRGDは配列(CRGDKGPDC)(配列番号5)または配列CRGDRGPDC(配列番号6)を有し、2つのシステインが互いに結合している。RPARPARは配列RPARPAR(配列番号7)を有する。TT1は配列CKRGARSTC(配列番号8)を有し、2つのシステインが互いに結合している。直鎖状TT1は配列AKRGARSTA(配列番号9)を有する。
【0103】
いくつかの実施形態では、標的化部分は配列RGDを含む。任意選択で、ペプチド中に他のアミノ酸も存在し得る。RGDペプチドの非限定的な例としては、RGD、RGD-4C、cRGD、またはシレンジタイドが挙げられる。任意選択で、ペプチド中に他のアミノ酸も存在し得る。RGDは配列RGD(配列番号10)を有する。RGD-4Cは配列CDCRGDCFC(配列番号11)を有する。cRGDは配列cRGDf(NMeV)(配列番号12)またはc(RGDyK)(配列番号13)を有する。シレンジタイドは配列、環状-(N-Me-VRGDf-NH)(配列番号14)を有する。
【0104】
いくつかの実施形態では、標的化部分は配列NGRを含む。任意選択で、ペプチド中に他のアミノ酸も存在し得る。
【0105】
例えば、Bertrand N.,et al.,Cancer Nanotechnology:The impact of passive and active targeting in the era of modern cancer biology,Advanced Drug Delivery Reviews 66(2014)2-25、Gilad Y.,et al.,Recent innovations in peptide based targeted delivery to cancer cells,Biomedicines,4(2016)、およびZhou G.,et al.Aptamers:A promising chemical antibody for cancer therapy,Oncotarget,7(2016)13446-13463に標的化部分がいくつかみられる。標的化部分は、ペプチド、例えば、CendRペプチド(例えば、Lyp1、cLyp1、tLyp1、iRGD、iNGR、TT1、直鎖状TT1、RPARPA、F3など)、RGDペプチド(例えば、9-RGD、RGD4C、デルタ24-RGD、デルタ24-RGD4C、RGD-K5、シレンジタイド、非環状RGD4C、二環式RGD4C、c(RGDfK)、c(RGDyK)、E-[c(RGDfK)2]、E[c(RGDyK)]2)、NGRペプチド、KLWVLPKGGGC(配列番号15)、CDCRGDCFC(配列番号16)、LABL、アンジオペプチン-2;タンパク質、例えば、トランスフェリン、アンキリン反復タンパク質、アフィボディ;小分子、例えば、葉酸、トリフェニルホスホニウム、ACUPA、PSMA、炭水化物部分(例えば、マンノース、グルコース、ガラクトース、およびその誘導体);およびアプタマーから選択されるが、これらに限定されない。
【0106】
上に開示したいずれかの配列を含めたペプチドは、いくつかの実施形態では、特に腫瘍組織において、細胞浸透活性または組織浸透活性を示す。ある一連の実施形態は全般的には、対象に非全身投与(例えば、腫瘍内投与、経鼻投与、局所投与、腹膜内投与、経膣投与、経直腸投与、経口投与、経肺投与、眼内投与など)する場合、または、例えば生きている細胞または組織に、in vitroもしくはex vivoに投与する場合に、細胞浸透性ペプチドと非標的化特性とを結びつけて、例えば、ナノ実体の少なくとも一部に細胞浸透活性または組織浸透活性を与えることに関する。いくつかの場合には、例えば非共有結合によって、ポリマー(例えば、PSA)の一部を細胞浸透性ペプチドと結合させる。
【0107】
例えば、Zhang D.et al.,Cell-penetrating peptides as noninvasive transmembrane vectors for the development of novel multifunctional drug-delivery systems,Journal of Controlled Release,Volume 229(2016)Pages 130-139、およびRegberg J.,et al.Applications of cell-penetrating peptides for tumor targeting and future cancer therapies,Pharmaceuticals,5(2012)991-1007に細胞浸透性ペプチドがいくつかみられる。本発明の特定の実施形態に有用な細胞浸透性ペプチドは、TAT、mTAT(C-5H-TAT-5H-C)、G3R6TAT、TAT(49-57)、TAT(48-60)、MPS、VP22、Antp、gH625、アルギニンリッチCPP(例えば、オクタアルギニン、ポリアルギニン、ステアリル-ポリアルギニン、HIV-1 Rev34-50、FHV coat35-49)ペネトラチン、ペネトラチン-Arg、ペネトラチン-Lys、SR9、HR9、PR9、H(7)K(R(2))、Pep-1、Pep-3、トランスポータン、トランスポータン10、pepFect、pVEC、JB577、TD-1、MPG8、CADY、YTA2、YTA4、SynB1、SynB3、PTD-4、GALA、SPACEなどから選択されるが、これらに限定されない。標的化部分と結合した細胞浸透性ペプチドは、PEGA(CPGPEGAGC)(配列番号18)、CREKA(配列番号19)、RVG(YTIWMPENPRPGTPCDIFTNSRGKRASNG)(配列番号20)、DV3(LGASWHRPDKG)(配列番号21)、DEVDG(配列番号22)、ACPP-MMP-2/9(PLGLAG)(配列番号23)、ACPP-MMP-2(IAGEDGDEFG)(配列番号24)、R8-GRGD(配列番号25)、ペネトラチン-RGDなどから選択されるが、これらに限定されない。
【0108】
例えば、Ruoslahti E.,Tumor penetrating peptides for improved drug delivery,Advanced Drug Delivery Reviews,Volumes 110-111(2017)Pages 3-12に腫瘍/組織浸透性ペプチドがいくつかみられる。本発明の特定の実施形態に有用な腫瘍/組織浸透性ペプチドは、CendRペプチド、例えば、iRGD(CRGDKGPDC)(配列番号26)、Lyp-1(CGNKRTRGC)(配列番号27)、tLyp-1(CGNKRTR)(配列番号28)、TT1(CKRGARSTC)(配列番号29)、直鎖状TT1(AKRGARSTA)(配列番号30)、iNGR(CRNGRGPDC)(配列番号31)、RPARPAR、F3(KDEPQRRSARLSAKPAPPKPEPKPKKAPAKK)(配列番号32)などから選択されるが、これらに限定されない。一実施形態では、腫瘍/組織浸透性ペプチドは、配列番号1~配列番号22からなる群より選択される配列を含む。さらなる実施形態では、腫瘍/組織浸透性ペプチドは、配列番号1~配列番号22からなる群より選択される配列からなる。
【0109】
いくつかの場合には、実体、例えばナノカプセルまたは本明細書に記載されるその他の実体などの表面または外殻に抗体(ナノボディ、抗体フラグメント、モノクローナル抗体、またはその他の抗体を含む)を結合させる。
【0110】
ポリマーと標的化部分との間の結合
ある特定の態様では、ポリマー(例えば、PSA)の一部が、例えば共有結合によって、標的化部分と結合している。ポリマーを標的化部分と直接、または例えば、リンカー、例えばアミノアルキル(C
1~C
4)スクシンイミドリンカー(C
1、C
2、C
3、およびC
4を含む)もしくはアミノアルキル(C
1~C
4)アミド-イソプロピルリンカー(C
1、C
2、C
3、およびC
4を含む)などを介して間接的に結合させる。いくつかの場合には、その他のアミノアルキルスクシンイミドまたはアミノアルキルアミド-イソ-プロピルリンカーを使用する。いくつかの実施形態では、標的化部分は、例えば結合するためのC末端を含む。いくつかの場合には、アミノアルキル(C
1~C
4)スクシンイミドリンカーは、アミノエチルスクシンイミドリンカー、アミノプロピルスクシンイミド、アミノブチルスクシンイミドなどである。アミノアルキル(C
1~C
4)スクシンイミドリンカーは、例えば、EDC/NHS(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩/N-ヒドロキシスクシンイミド)カップリング反応を用いてマレイミド部分とモノマー単位(例えば、シアル酸単位)上のカルボン酸部分とを結合させて生じさせることができる。いくつかの場合には、N-アミノエチルマレイミド部分などのN-アミノアルキル(C
1~C
4)マレイミド部分とモノマー単位上のカルボン酸部分とを反応させてアミド結合を生じさせ、それによりマレイミド部分とポリマー(例えば、PSA)とを連結する。アミノアルキル(C
1~C
4)アミド-イソ-プロピルリンカーは、例えば、BOP/TBA(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス(ジメチル-アミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート/水酸化テトラ-n-ブチルアンモニウム)の存在下でアミノエチルメタクリルアミドまたはN-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドを用いて生じさせることができる。次いで、例えばマイケル型付加により、マレイミド部分またはメタクリロイル部分と、ペプチド内のシステイン、チオール基、またはその他の硫黄含有部分とを反応させて、アミノエチルスクシンイミドリンカーなどのアミノアルキル(C
1~C
4)スクシンイミドを介して(例えば、
図1を参照されたい)、またはアミノアルキル(C
1~C
4)アミド-イソ-プロピルリンカーを介してペプチドをポリマー(例えば、PSA)と結合させることができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、ポリマー(例えば、PSA)をアミド基により標的化部分と直接結合させる。例えば、Mojarradi,“Coupling of substances containing a primary amine to hyaluronan via carbodiimide-mediated amidation,”Master’s Thesis,Uppsala University,March,2011を参照されたい。アミド基は、例えば、モノマー単位(例えば、シアル酸単位)上のカルボン酸部分と、ペプチド内のリジン、アルギニン、またはその他の第一級アミン含有部分とを反応させることによって生じさせることができ、具体的には、第一級アミン基は、標的化上のリジンまたはアルギニンアミノ酸部分にある。いくつかの実施形態では、中間体、例えば、カルボジイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、またはDMTMM(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド)を形成させるため、反応内に活性化剤が存在する(Carbohydrate Polymers,108,(2014),239-246)。
【0112】
さらに、本発明のある特定の実施形態では、実体は、細胞内部移行または組織浸透を促進することができる浸透促進剤を含む。
【0113】
したがって、ある一連の実施形態は、全般的には、ポリマー(例えば、PSA)上のカルボキシラート部分とアミノアルキル(C1~C4)マレイミドおよび/またはアミノアルキル(C1~C4)メタクリルアミドとを反応させ、得られたアミノアルキル(C1~C4)マレイミドおよび/またはアミノアルキル(C1~C4)メタクリルアミドとペプチド上のシステイン基とを反応させて、ポリマー-アミノアルキル(C1~C4)スクシンイミド-ペプチドおよび/またはポリマー-アミノアルキル(C1~C4)アミドイソプロピル-ペプチド組成物を得る方法に関する。
【0114】
別の一連の実施形態は、ポリマー(例えば、PSA)上のカルボキシラート部分とN-ヒドロキシスクシンイミドまたはカルボジイミドとを反応させ、形成された中間体とペプチド上のリジン基またはアルギニン基とを反応させて、ポリマー-アミド-ペプチドを得る方法に関する。
【0115】
医薬品/薬物
ナノ実体は、様々な実施形態では、実施形態に応じてナノ実体の内部および/または表面に位置し得る任意の様々な医薬品または薬物を含む。1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の医薬品または薬物が、例えばナノ実体の内側部分の中に存在し得る。例えば、医薬品または薬物は、それがナノ実体の内側部分の中に含まれるのを可能にする大きさまたは分子量を有する。例えば、医薬品または薬物は、例えば、分子量が2000Da未満の小分子である。いくつかの場合には、小分子は、分子量が1000Da未満である。いくつかの実施形態では、分子量は500Daまたは200Da未満である。
【0116】
いくつかの場合には、医薬品は、製剤の製造に使用することを目的とし、薬物の製造に使用する場合には製剤中の有効成分となる、任意の物質または物質の混合物を含む。このような物質は、疾患の診断、治癒、緩和、治療、または予防において薬理活性および/またはその他の直接作用をもたらすか、または身体の構造および機能に影響を及ぼすものである。
【0117】
医薬品の例には、何らかの薬理作用をもたらし、病態の治療または予防に使用される任意の薬学的に活性な化学的または生物学的化合物、任意の薬学的に許容されるその塩、およびその任意の混合物を含むものがある。薬学的に許容される塩の例としては、特に限定されないが、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パモ酸塩、ラウリン酸塩、ステアリン酸塩、パルミチン酸塩、オレイン酸塩、ミリスチン酸塩、ラウリル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩などが挙げられる。いくつかの場合には、薬学的に許容される塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩などである。
【0118】
医薬品または薬物は、脂溶性、水溶性、または両親媒性(非極性基および極性基の両方を同時に含み、水性媒体中でミセルを形成する傾向がある)であると考えられる。医薬品または薬物をその溶解性だけに基づいて分類することの複雑さを考慮すると、簡略化するため、決して限定するわけではないが、以下の2種類の薬物、すなわち、脂溶性(油および/または脂質および/または有機溶媒を含有する媒体中である程度の溶解性を示し、log Pが1.5を超える化合物)および水溶性(水性媒体中である程度の溶解性を示し、log Pが1.5未満である化合物)に言及し、ここでは、log Pはオクタノール-水分配係数と定義される。
【0119】
ある特定の実施形態では、医薬品または薬物は、例えば、ナノカプセルまたはその他の実体の非水性の内側部分の中、例えば、油、脂質、および/または有機溶媒、例えば、油と混合した有機溶媒の中に含ませることができる、脂溶性のものである。さらに、いくつかの場合には、脂溶性の医薬品または薬物は、実体の外表面または殻上に存在する。有機溶媒の非限定的な例としては、特に限定されないが、エタノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール、イソブタノール、イソプロパノール、メタノール、プロパノール、プロピレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メシチルオキシド、トリクロロエチレン、臭化エチレン、クロロホルム、塩化エチレン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素、ジメチルホルムアミド、1,4-ジオキサン、ブチルエーテル、ジメチルホルムアミドエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、tert-ブチルメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ピリジン、シクロヘキサン、ヘキサン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン、キシレンおよびこれらの組合せ、ならびに/あるいはその他の有機溶媒が挙げられる。いくつかの場合には、脂溶性薬物は一般に、本来疎水性であり、例えば、log Pが1.5より大きく、Pは固有オクタノール-水分配係数である。
【0120】
使用できる脂溶性の医薬品または薬物の非限定的な例としては、特に限定されないが、以下のもの:化学療法剤または抗癌剤、例えばタキソイド(例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、カバジタキセル)、トムデックス、ダウノマイシン、アクラルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ラパマイシン、エピルビシン、バルルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、エレスクロモル、インゲノールメブテート、プリカマイシン、カリケアマイシン、エスペラマイシン、デガレリクス、エムタンシン、マイタンシン、マイタンシノイド(例えば、マイタンシノイドDM1、マイタンシノイド2、マイタンシノイドDM4)、マイトマイシン、アウリスタチン、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、エストラムスチン、シスプラチン疎水性誘導体、クロラムブシル、ベンダムスチン、カルムスチン、アマンタジン、リマンタジン、ロムスチン、セムスチン、アムサクリン、ラドリビン(ladribine)、シタラビン、(C12~C18)-ゲムシタビン、テガフール、トリメトレキサート、エポチロンA~E(例えば、サゴピロン、イクサペビロン(ixapebilone)、パツピロン)、エリブリン、カンプトテシン、アミノグルテチミド、ジアジクオン、レバミソール、メチル-GAG、ミトタン、ミトザントロン、テストラクトン、ミケラミンB、ブリオスタチン-1、ハロモン、ジデムニン(例えば、プリチデプシン)、トラベクテジン、ルルビネクテジン、ボリノスタット、ロミデプシン、イリノテカン、ボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲチフィニブ(getifinib)、イマチニブ、ベムラフェニブ、クリゾチニブ、ビスモデギブ、トレチノイン、アリトレチノイン、ベキサロテンなど;または免疫調節剤/免疫抑制剤、例えばイミキモド、シクロスポリン、タクロリムス、ピメクロリムス、エベロリムス、シロリムス、テンシロリムス(tensirolimus)、アザチオプリン、レフルノミド、ミコフェノール酸塩など;またはステロイド薬、例えばエンザルタミド、アビテロン(abiterone)、エキセメスタン、フルベストラント、2-メトキシエストラジオール、ホルメスタン、アタメスタン、ギムネステロール(gymnesterol)、メチルプロトジオシン、フィサリンB、フィサリンD、フィサリンF、ウィタフェリンA、ジンセノサイド、アザステロイド、シノブファギン、ブファリン、ジエノゲストなど;またはステロイドと細胞毒性薬(例えば、ヌクレオシド、パクリタキセル、クロラムブシル、および金属錯体)のコンジュゲート、例えばパクリタキセル-エストラジオールなどが挙げられる。
【0121】
脂溶性の性質を有し、生物学的に活性な分子のその他の例示的な非限定的な例としては、以下のもの:鎮痛剤および抗炎症剤(例えば、アロキシプリン、オーラノフィン、アザプロパゾン、ベノリラート、ジフルニサル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダクなど);駆虫剤(例えば、アルベンダゾール、ヒドロキシナフトエ酸ベフェニウム、カンベンダゾール、ジクロロフェン、イベルメクチン、メベンダゾール、オキサムニキン、オクスフェンダゾール、オキサンテルエンボナート、プラジカンテル、ピランテルエンボナート、チアベンダゾールなど);抗糖尿病剤(例えば、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリピジド、トラザミド、トルブタミドなど);抗うつ剤(例えば、アモキサピン、マプロチリン、ミアンセリン、ノルトリプチリン、トラゾドン、トリミプラミンなど);抗真菌剤(例えば、アンホテリシン、硝酸ブトコナゾール、クロトリマゾール、硝酸エコナゾール、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナタマイシン、ナイスタチン、硝酸スルコナゾール、テルビナフィン、テルコナゾール、チオコナゾール、ウンデセン酸など);抗マラリア剤(例えば、アモジアキン、クロロキン、クロルプログアニル、ハロファントリン、メフロキン、プログアニル、ピリメタミン、硫酸キニーネなど);抗片頭痛剤(例えば、ジヒドロエルゴタミン、エルゴタミン、メチセルジド、ピゾチフェン、スマトリプタンなど);抗原虫剤(例えば、ベンズニダゾール、クリオキノール、デコキネート、ジヨードヒドロキシキノリン、フロ酸ジロキサニド、ジニトルミド、フルゾリドン(furzolidone)、メトロニダゾール、ニモラゾール、ニトロフラゾン、オルニダゾール、チニダゾールなど);抗甲状腺剤(例えば、カルビマゾール、プロピルチオウラシルなど);抗不整脈剤(例えば、アミオダロン、ジソピラミド、フレカイニド酢酸塩、硫酸キニジンなど);抗菌剤(例えば、ベネタミンペニシリン、シノキサシン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クロファジミン、クロキサシリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、エチオナミド、イミペネム、ナリジクス酸、ニトロフラントイン、リファンピシン、スピラマイシン、スルファベンザミド、スルファドキシン、スルファメラジン、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファフラゾール、スルファメトキサゾール、スルファピリジン、テトラサイクリン、トリメトプリムなど);抗凝固剤(例えば、ジクマロール、ジピリダモール、ニクマロン、フェニンジオンなど);抗不安剤、神経遮断剤、鎮静剤、および睡眠剤(例えば、アルプラゾラム、アミロバルビトン、バルビトン、ベンタゼパム、ブロマゼパム、ブロムペリドール、ブロチゾラム、ブトバルビトン、カルブロマール、クロルジアゼポキシド、クロルメチアゾール、クロルプロマジン、クロバザム、クロチアゼパム、クロザピン、ジアゼパム、ドロペリドール、エチナメート、フルナニゾン(flunanisone)、フルニトラゼパム、フルオプロマジン、フルペンチキソールデカノアート、フルフェナジンデカノアート、フルラゼパム、ハロペリドール、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メダゼパム、メプロバメート、メタカロン、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、ペントバルビトン、ペルフェナジンピモジド、プロクロルペラジン、スルピリド、テマゼパム、チオリダジン、トリアゾラム、ゾピクロンなど);副腎皮質ステロイド(例えば、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、酢酸コルチゾン、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルコルトロン、プロピオン酸フルチカゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンなど);抗痛風剤(例えば、アロプリノール、プロベネシド、スルフィンピラゾンなど);利尿剤(例えば、アセタゾラミド、アミロライド、ベンドロフルアジド、ブメタニド、クロロチアジド、クロルタリドン、エタクリン酸、フロセミド、メトラゾン、スピロノラクトン、トリアムテレンなど);ベータ遮断剤(例えば、アセブトロール、アルプレノロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、ピンドロール、プロプラノロールなど);心変力作用剤(例えば、アムリノン、ジギトキシン、ジゴキシン、エノキシモン、ラナトシドC、メジゴキシンなど);抗パーキンソン病剤(例えば、ブロモクリプチン、リスリドなど);ヒスタミン受容体アンタゴニスト(例えば、アクリバスチン、アステミゾール、シンナリジン、シクリジン、シプロヘプタジン、ジメンヒドリナート、フルナリジン、ロラタジン、メクロジン、オキサトミド、テルフェナジンなど);脂質調整剤(例えば、ベザフィブラート、クロフィブラート、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、プロブコールなど);硝酸塩およびその他の抗狭心症剤(例えば、硝酸アミル、三硝酸グリセリン、二硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビド、四硝酸ペンタエリスリトールなど);栄養剤(例えば、ベータカロチン、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなど);オピオイド鎮痛剤(例えば、コデイン、デキストロプロピオキシフェン(dextropropyoxyphene)、ジアモルフィン、ジヒドロコデイン、メプタジノール、メサドン、モルヒネ、ナルブフィン、ペンタゾシンなど);性ホルモン(例えば、クエン酸クロミフェン、ダナゾール、エチニルエストラジオール、酢酸メドロキシプロゲステロン、メストラノール、メチルテストステロン、ノルエチステロン、ノルゲストレル、エストラジオール、コンジュゲートエストロゲン、プロゲステロン、スタノゾロール、スチベストロール(stibestrol)、テストステロン、チボロンなど)などが挙げられる。当然のことながら、ある特定の実施形態では、治療効果がある場合には脂溶性薬物の混合物を使用し得る。
【0122】
ただし、他の実施形態では、医薬品または薬物は、例えば、ナノカプセルの水性の内側部分の中に含ませるか、または前記ナノカプセルの表面に結合させることができる、水溶性のものである。いくつかの場合には、水溶性薬物は、水性媒体中である程度の溶解性を示す(例えば、log Pが1.5より小さく、Pは固有オクタノール-水分配係数である)。例としては、特に限定されないが、上記の脂溶性薬物のあらゆる薬学的に許容される塩、例えば、ドセタキセルまたはドセタキセル三水和物が挙げられ;例えば、塩は、塩化物塩、硫酸塩、臭化物塩、メシル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、塩酸塩;ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、アンモニア塩などである。様々な実施形態では、本明細書で検討するように、ナノカプセル内の適切な溶媒中に含ませることができる任意の適切な薬剤または薬物を使用する。
【0123】
使用し得る水溶性医薬品または薬物のその他の例としては、特に限定されないが、以下のもの:化学療法剤(例えば、トポテカン、テニポシド、エトポシド、プララトレキサート、オマセタキシン、ドキソルビシン、ダカルバジン、プロカルバジン、ヒドロキシダウノルビシン、ヒドロキシウレア、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フロクスウリジンまたは5-フルオロデオキシウリジン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、チオテパ、ゲムシタビン、ペントスタチン、メクロレタミン、ピボブロマン(pibobroman)、シクロホスファミド、イホスファミド、ブスルファン、カルボプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラパリン(satrapalin)、白金-DACH、オルマプラチン、オキサプラチン、メルファラン、アミノグルテチミドなど);抗菌剤(例えば、トリクロサン、塩化セチルピリジウム、臭化ドミフェン、第四級アンモニウム塩、亜鉛化合物、サンギナリン、フッ化物、アレキシジン、オクトニジン(octonidine)、EDTAなど);非ステロイド性抗炎症剤および疼痛軽減剤(例えば、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ジフルニサル、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェンナトリウム、ナプロキセン、トルメチンナトリウム、インドメタシン、セレコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブなど);鎮咳剤(例えば、ベンゾナタート、カラミフェンエジシル酸塩、メントール、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、クロフェジアノール塩酸塩など);抗ヒスタミン剤(例えば、ブロムフェニラミンマレイン酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩、クレマスチンフマル酸塩、デクスクロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェニルヒドラミン塩酸塩、アザタジンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミンクエン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、ドキシラミンコハク酸塩、プロメタジン塩酸塩、ピリラミンマレイン酸塩、トリペレナミンクエン酸塩、トリプロリジン塩酸塩、アクリバスチン、ロラタジン、デスロラタジン、ブロムフェニラミン、デクスブロフェニラミン(dexbropheniramine)、フェキソフェナジン、セチリジン、モンテルカストナトリウムなど);去痰剤(例えば、グアイフェネシン、トコン、ヨウ化カリウム、テルピン水和物など);鎮痛-解熱剤(例えば、サリチル酸塩、フェニルブタゾン、インドメタシン、フェナセチンなど);抗片頭痛薬(例えば、スミトリプタン(sumitriptan)コハク酸塩、ゾルミトリプタン、バルプロ酸エレトリプタン臭化水素酸塩など);H2-アンタゴニストおよび/またはプロトンポンプ阻害剤(例えば、ラニチジン、ファモチジン、オメプラゾールなど)などが挙げられる。
【0124】
いくつかの場合には、内側部分は、ペプチド、タンパク質、またはヌクレオチドを含んでよく、これらの多くが本来親水性である。さらに、いくつかの場合には、水溶性医薬品または薬物は、実体の外表面または殻上に存在する。ペプチド、タンパク質、またはヌクレオチドは、任意の種類の活性、例えば抗腫瘍性、抗血管新生性、免疫調節性/免疫抑制性、抗原性、抗炎症性、抗疼痛性、抗片頭痛性、抗肥満性、抗糖尿病性、抗菌性、創傷治癒性、駆虫性、抗不整脈性、抗ウイルス剤活性、抗凝固剤活性、抗うつ性、抗てんかん性、抗真菌性、抗痛風性、抗高血圧性、抗マラリア性、抗ムスカリン性、抗原虫性、抗甲状腺性、抗不安性、鎮静性、催眠性、神経遮断剤活性、ベータ遮断剤活性、心変力性、細胞接着阻害活性、副腎皮質ステロイド活性、サイトカイン受容体活性調節性、利尿性、抗パーキンソン病性、ヒスタミンH受容体アンタゴニスト活性、角質溶解性、脂質調整性、筋弛緩剤活性、抗狭心症性、栄養性、刺激剤活性、抗勃起不全性などを有する。
【0125】
ペプチドおよびタンパク質の例としては、特に限定されないが、IL-27インターロイキン、インターフェロン(例えば、インターフェロンアルファII、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンアルファ-n3、インターフェロンガンマ)、パラスポリン2、エンドスタチンフラグメント、マクロモマイシン、アクチノキサンチン、ヒスチジンリッチ糖タンパク質、カルボキシペプチダーゼG2、膵リボヌクレアーゼ、ミトマルシン、アルギニンデイミナーゼ、タンパク質P-30またはオンコナーゼ、メタロプロテイナーゼ阻害剤、グアニル酸キナーゼ、ベクリン-1、アロフェロン、リボヌクレアーゼミトギリン、アウレイン、CD276抗原、デルマセプチン-B2、ラクトフェリシンB、プランタリシンA、マクシミン、セクロピン、ヒト好中球ペプチド、カエリン、ナイシン、マクラチン、mCRAMP、BMAP-27、BMAP-28、シトロピン、ヒトインスリン、組換えインスリン、インスリン類似体(例えば、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングルリジン、インスリンデテミル、インスリンデグルデク、インスリングラルギン、NPHインスリンなど)、GLP-1類似体(例えば、エクセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、アルビグルチド、デュラグルチド、タスポグルチド、セマグルチドなど)、GLP-2類似体(例えば、テデュグルチド)、ソマトロピン、アナキンラ、ドルナーゼアルファ、乳清酸性タンパク質、SPARCまたはオステオネクチンタンパク質、プロテインC、ケラチンサブファミリーA、ヒト成長ホルモンまたはソマトトロピン、ゴナドトロピン、アンジオポエチン、コロニー刺激因子(例えば、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子など)、上皮成長因子、エリスロポエチン、線維芽細胞増殖因子、リガンドのGDNFファミリー、成長分化因子-9、肝細胞成長因子、肝細胞癌由来成長因子、インスリン様成長因子、ケラチノサイト成長因子、マクロファージ刺激タンパク質、ニューロトロフィン、胎盤成長因子、血小板由来成長因子、トロンボポエチン、トランスフォーミング成長因子、血管内皮成長因子、ケモカイン、インターロイキン、リンホカイン、腫瘍壊死因子(例えば、腫瘍壊死因子アルファ)、Fc融合タンパク質、コンツラキンGペプチドおよび誘導体、アンチフラミン、オピオイドペプチド、リポペプチド(例えば、スロトマイシン)、抗原、例えば破傷風およびジフテリアトキソイド、B型肝炎など、ならびに抗体、例えばモノクローナル抗体(mAb)などが挙げられる。したがって、非限定的な例として、ナノカプセルなどのナノ実体は、例えば、実体の内側部分の中、外側部分の中、またはその両方の中にモノクローナル抗体または小分子を含む。当然のことながら、ある特定の実施形態では、治療効果がある場合には水溶性薬物の混合物を使用し得る。
【0126】
本明細書で使用される「抗体」は、実質的に免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによってコードされる1つまたは複数のポリペプチドを有する、タンパク質または糖タンパク質を指す。認識されている免疫グロブリン遺伝子としては、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、およびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖はカッパまたはラムダに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類され、これらがさらに、免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEをそれぞれ定める。典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は四量体を含むことが知られている。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対から構成され、各対は1つの「軽鎖」(約25kD)と1つの「重鎖」(約50~70kD)を有する。各鎖のN末端は、主として抗原認識を担い、約100~110以上のアミノ酸からなる、可変領域を定める。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語はそれぞれ、これらの軽鎖および重鎖を指す。抗体は、インタクトの免疫グロブリンとして、または、様々なペプチダーゼで消化することによって得られ、よく特徴付けられた多数のフラグメントとして存在する。したがって、例えば、ペプシンにより抗体のヒンジ領域内のジスルフィド結合の下部(すなわち、Fcドメインに向かう部分)が消化されて、Fabの二量体であるF(ab)’2が生じ、それ自体は、ジスルフィド結合によってVH-CH1と結合した軽鎖である。このF(ab)’2を穏やかな条件下で還元してヒンジ領域内のジスルフィド結合を切断し、それにより(Fab’)2二量体をFab’単量体に転換する。このFab’単量体は基本的に、ヒンジ領域の一部分を有するFabである。インタクト抗体の消化の点から様々な抗体フラグメントが定義されるが、これらのフラグメントおよびその他のフラグメントはまた、例えば、組換えDNA法の利用、「ファージディスプレイ」法などによって化学的に、de novo合成される。抗体の例としては、一本鎖抗体、例えば、可変重鎖および可変軽鎖が(直接、またはペプチドリンカーを介して)結合して、連続するポリペプチドを形成している、一本鎖Fv(scFv)抗体が挙げられる。抗体のほかの非限定的な例としては、ナノボディ、抗体フラグメント、モノクローナル抗体、キメラ抗体、逆キメラ抗体などが挙げられる。抗原結合フラグメントとしては、Fab、Fab’、F(ab)2、dsFv、sFv、ユニボディ、ミニボディ、ダイアボディ、トライアボディ、テトラボディ、ナノボディ、プロボディ、ドメインボディ、ユニボディ、二特異性一本鎖可変フラグメント(bi-scFv)などが挙げられる。
【0127】
抗体の例としては、特に限定されないが、トラスツズマブ、ベバジズマブ、デュルバルマブ、ニボルマブ、イノツズマブ、アベルマブ、ペムブロリズマブ、オララツマブ、アテゾリズマブ、ダラツムマブ、エロツズマブ、ネシツムマブ、ジヌツキシマブ、ブリナツモマブ、ラムシルマブ、オビヌツズマブ、デノスマブ、イピリムマブ、ブレンツキシマブ、オファツムマブ、およびその組合せが挙げられる。
【0128】
ヌクレオチドの例としては、特に限定されないが、DNA、RNA、siRNA、mRNA、miRNA、PNAなどが挙げられる。ヌクレオチドは、様々な実施形態では、センスまたはアンチセンスである。
【0129】
医薬品は、システムの成分の総乾燥重量に対して最大約50重量%存在する。ただし、適切な割合は、組み込む医薬品、それを使用する適応症、投与効率などの様々な因子によって決まる。例えば、いくつかの場合には、医薬品は、最大約10重量%または最大約5重量%存在する。ある特定の実施形態では、組み込む活性医薬成分の性質に応じて、同じ溶液中に、または別個に溶解させ得る、2つ以上の医薬品が存在する。
【0130】
いくつかの実施形態では、ナノ実体は1つまたは複数の界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、ナノ実体の殻は1つまたは複数の界面活性剤を含む。他の実施形態では、ナノ実体の内側部分は1つまたは複数の界面活性剤を含む。界面活性剤(存在する場合)は、製剤の親油性部分および親水性部分と同時に相互作用することを可能にする構造および/または官能基を有する、様々な成分のいずれかを含む。界面活性剤の例としては、特に限定されないが、以下のもの:モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80;Tween 80(登録商標);HLB15)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)60、HLB14.9およびTween 61(登録商標);HLB9.6)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 81(登録商標);HLB10)、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 65(登録商標);HLB10.5)、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 85(登録商標);HLB11)、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)20、HLB16.7およびTween 21(登録商標);HLB13.3)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)40、HLB15.6);ペグ化脂肪酸エステルおよびPEGとの混合物、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(HLB11.6)、ステアリン酸ポリエチレングリコール、ステアリン酸ポリエチレングリコール40(HLB17)、ステアリン酸ポリエチレングリコール100(HLB18.8)、ジラウリン酸ポリエチレングリコール400(HLB9.7)、ジラウリン酸ポリエチレングリコール200(HLB5.9)、モノパルミチン酸ポリエチレングリコール(HLB11.6)、Kolliphor HS15(登録商標)(HLB15)、ポリエチレングリコール-15-ヒドロキシステアラート(HLB14-16)、D-アルファ-トコフェリルポリエチレングリコールスクシナート(TPGS;HLB13.2)、オレイン酸トリエタノールアンモニウム(HLB12)、オレイン酸ナトリウム(HLB18)、コール酸ナトリウム(HLB18)、デオキシコール酸ナトリウム(HLB16)、ラウリン酸ナトリウム(HLB40)、グリコール酸ナトリウム(HLB16-18)、オレイン酸トリエタノールアミン(HLB12)、トラガントゴム(HLB11.9)、ならびにドデシル硫酸ナトリウム(HLB40);ポロキサマー124(HLB16)、ポロキサマー188(HLB29)、ポロキサマー237(HLB29)、ポロキサマー238(HLB28)、ポロキサマー278(HLB28)、ポロキサマー338(HLB27)およびポロキサマー407(HLB22)、モノオレイン酸ソルビタン(Span(登録商標)80、HLB4.3)、モノラウリン酸ソルビタン(Span(登録商標)20、HLB8.6)、モノステアリン酸ソルビタン(Span(登録商標)60、HLB4.7)、トリオレイン酸ソルビタン(Span(登録商標)85、HLB1.8)、セスキオレイン酸ソルビタン(Span(登録商標)83、HLB3.7)、モノパルミチン酸ソルビタン(Span(登録商標)40、HLB6.7)、イソステアリン酸ソルビタン(Span(登録商標)120、HLB4.7)、ラウロイルマクロゴールグリセリド(例えば、Gelucire(登録商標)44/14、HLB14、およびLabrafil(登録商標)M2130CS、HLB4)、ステアロイルマクロゴールグリセリド(例えば、Gelucire(登録商標)50/13、HLB13)、リノレオイルマクロゴールグリセリド(例えば、Labrafil(登録商標)M2125CS、HLB4)、オレオイルマクロゴールグリセリド(Labrafil(登録商標)M1944CS、HLB4)、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド(Labrasol(登録商標)、HLB14)、レシチン(例えば、卵レシチン、ダイズレシチン、非GMOレシチン、菜種レシチン、ヒマワリレシチン、リゾレシチンなど)、リン脂質(例えば、卵リン脂質、ダイズリン脂質、合成リン脂質、水素化リン脂質、ペグ化リン脂質、ホスファチジルコリン、リソホスファジチルコリン(lysophosphaditylcholine)、ホスファジジルエタノールアミン(phosphadidylethanolamine)、ホスファチジルセリンなど)、Phosal(登録商標)、Phospholipon(登録商標)、あるいはこれらのいずれかの界面活性剤および/またはその他の界面活性剤の任意の組合せが挙げられる。いくつかの場合には、界面活性剤は陽イオン性のもの、例えば、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、CTAB(臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム)、セトリミド、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウムなどである。いくつかの場合には、陽イオン界面活性剤はアンモニウム塩を、例えば頭部基として含む。例えば、頭部基は、第一級、第二級、第三級、または第四級アンモニウム塩を含む。さらに、このような界面活性剤が全部の実施形態で必要とされるわけではないことを理解するべきである。
【0131】
いくつかの実施形態では、実体は、少なくとも1つの陽イオン界面活性剤、例えば上記のものなどを含む。例えば、全般的にナノカプセルに関する本発明の特定の実施形態は、いくつかの場合には、陽イオン界面活性剤などの界面活性剤を含み得る。例えば、全般的にナノカプセルに関し、標的化部分を有する本発明の特定の実施形態は、陽イオン界面活性剤をさらに含み得る。
【0132】
実体の組成物を作製する方法
本発明の様々な態様はまた、全般的には、本明細書に記載される組成物などの組成物、例えば、ナノ粒子、ナノカプセル、ミセル、またはその他のナノ実体を作製するシステムおよび方法に関する。いくつかの場合には、組成物は医薬組成物である。
【0133】
一例として、ある一連の実施形態では、1段階の溶媒拡散法を用いてナノ実体、例えばナノカプセルを作製する。いくつかの場合には、これには、ポリマー(例えば、PSA)と、任意選択で1つまたは複数の水溶性界面活性剤とを含む、水溶液を調製すること、油性溶液(例えば、油と、1つまたは複数の界面活性剤と、有機溶媒などとを含むもの)を調製すること、および溶液を混合することが含まれる。いくつかの場合には、有機溶媒を完全に、または部分的に蒸発させる。
【0134】
別の一連の実施形態では、2段階の溶媒拡散法を用い得る。例えば、いくつかの場合には、この方法は、油性溶液(例えば、油と、1つまたは複数の界面活性剤と、有機溶媒などとを含むもの)を調製すること、およびそれを水相に加えること(または油相の上に水相を加えること)を含む。水相は任意選択で、1つまたは複数の水溶性界面活性剤を含有する。溶液を攪拌してナノエマルションを形成する。いくつかの場合には、有機溶媒を完全に、または部分的に蒸発させる。ナノエマルションが形成された後、ポリマー(例えば、PSA)を含む水溶液を攪拌下で加えて、ナノカプセルを作製する。
【0135】
また別の一連の実施形態では、超音波処理法を用いる。例えば、いくつかの場合には、この方法は、油と、1つまたは複数の界面活性剤と、任意選択で有機溶媒とを含む、油性溶液を調製すること、およびそれを水相に加えること(または油相の上に水相を加えること)を含む。水相は任意選択で、1つまたは複数の水溶性界面活性剤を含有する。溶液に超音波処理を実施しながら混合して、ナノエマルションを形成する。いくつかの場合には、有機溶媒を完全に、または部分的に蒸発させる。既に溶媒拡散法で記載した通り、超音波処理の前(1段階のナノカプセル形成)または超音波処理によりナノエマルションを得た後(2段階の工程)に、ポリマー(例えば、PSA)を水相に溶かす。
【0136】
別の実施形態では、本発明は、医薬品を封入する方法に関する。一実施形態では、ナノ実体を調製する前に、医薬品を水相に溶かし得る。別の実施形態では、医薬品をナノ実体とインキュベートし得る。
【0137】
別の実施形態では、医薬品はモノクローナル抗体であり、これをナノカプセルを調製する前に水相に溶かすことによって封入する。
【0138】
また別の一連の実施形態では、ホモジナイゼーション法を用いる。例えば、いくつかの場合には、この方法は、油と、1つまたは複数の界面活性剤と、任意選択で有機溶媒とを含む、油性溶液を調製すること、およびそれを水相に加えること(または油相の上に水相を加えること)を含む。水相は任意選択で、1つまたは複数の水溶性界面活性剤を含有する。溶液をホモジナイズしながら混合して、ナノエマルションを形成する。いくつかの場合には、有機溶媒を完全に、または部分的に蒸発させる。既に溶媒拡散法および超音波処理法の両方で記載した通り、ホモジナイゼーションの前(1段階のナノカプセル形成)またはホモジナイゼーションによりナノエマルションを得た後(2段階の工程)に、ポリマー(例えば、PSA)を水相に溶かす。
【0139】
別の実施形態では、例えば本明細書で検討するように、自己乳化法を用いてエマルションを作製する。例えば、いくつかの場合には、この方法は、油と、1つまたは複数の界面活性剤(および任意選択で共溶媒)とを含む、油性溶液を調製すること、およびそれを水相に加えること(または油相に水相を加えること)を含む。水相は任意選択で、1つまたは複数の水溶性界面活性剤を含有する。ある一連の実施形態では、共溶媒(例えば、エタノール、PEG、グリセリン、プロピレングリコールなど)を使用せずにエマルションを調製する。既に記載した通り、自己乳化の前(1段階のナノカプセル形成)またはナノエマルションを得た後(2段階の工程)に、ポリマー(例えば、PSA)を水相に溶かす。
【0140】
別の実施形態では、本発明は、ナノ実体を作製する方法であって、保管中にナノ実体を保護し得る追加の凍結乾燥段階を含む、方法に関する。いくつかの場合には、凍結乾燥時に凍結保護物質を使用する必要はない。いくつかの実施形態では、ナノ実体が凍結乾燥物の再構成時に凝集体を形成することはないため、凍結乾燥の前にコロイド系を希釈する必要はない。いくつかの場合には、1つまたは複数の糖、例えば、凍結保護物質作用を示す糖を加えることが可能である。凍結保護物質の例としては、特に限定されないが、以下のもの:トレハロース、グルコース、スクロース、マンニトール、マルトース、ポリビニルピロリドン(PVP)、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)、ラフィノース、デキストラン、フルクトース、スタキオースなどが挙げられる。いくつかの場合には、凍結保護物質またはその他の添加剤は、例えばpHを制御する緩衝剤として、他の作用を有する。凍結乾燥形態では、ナノ実体を長期間保管し、例えば水を加えることによって、再生できる。
【0141】
組成物の投与
別の態様は、本明細書で検討する任意の組成物を生物体に投与する方法を提供する。本発明の組成物を投与する場合、それを薬学的に許容される製剤として、治療有効量で適用する。本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、製剤が、生物体への投与に必要とされる形態と適合性があり、有害作用を引き起こさない薬剤または補形剤を含有することを意味する。本発明の組成物はいずれも、治療有効量で生物体に投与する。本明細書で使用される「治療有効」または「有効」は、治療する具体的な病態の発症を遅らせる、その進行を阻害する、その発症または進行を完全に停止させる、それを診断する、または別の方法で医学的に望ましい結果を得るのに必要な量を意味する。「治療する」、「治療される」、「治療すること」などの用語は一般に、生物体への本発明の組成物の投与を指す。生物体に投与する場合、有効量は、治療する具体的な病態および所望の転帰によって決まる。治療有効量は、例えば、のちに詳細に記載する因子などの諸因子を用い、日常の範囲を超えない実験を用いて、当業者により決定される。例えば、一実施形態では、本明細書で組成物を用いて、生物体へのドセタキセルの投与、例えば静脈内投与により癌を治療する。
【0142】
本発明のいくつかの実施形態は、全般的には、薬剤の調製への本明細書に開示される組成物の使用に関する。例えば、ある特定の実施形態は、癌治療に使用する、本明細書に開示される組成物を指す。
【0143】
本発明の組成物を生物体に投与するにあたっては、これらの組成物の既知の活性に影響を及ぼすよう投与量、投与スケジュール、投与経路などを選択する。任意選択で本発明の組成物に関するアッセイの結果と組み合わせて、実験モデルの結果に基づき、用量を推定する。局所または全身に所望の薬物レベルが得られるよう、投与様式に応じて用量を適宜調整する。投与は、1日、1週間、または1か月につき1回または複数回の投与で実施する。
【0144】
生物体への組成物の投与は、治療有効量の組成物が生物体内の組成物の作用部位に到達するものとする。投薬は、いくつかの場合には、生物体内で起こり得る有害な副作用を回避しながら、または最小限に抑えながら、最大量で実施する。投与する組成物の用量は、作用部位で望まれる最終濃度、生物体への投与方法、組成物の効果、生物体内での組成物の耐久性、投与のタイミング、現在実施している治療の影響などの因子によって決まる。送達する用量はまた、生物体に関連する状態によって決まることもあり、いくつかの場合には生物体によって異なり得る。例えば、年齢、性別、体重、大きさ、環境、物理的条件、または生物体の現在の健康状態が、必要な用量および/または作用部位での組成物の濃度に影響を及ぼすこともある。異なる個体間で、または同じ個体であっても日によって、投与の変動がみられることがある。いくつかの場合には、最大用量、すなわち、妥当な医学的判断による最大安全用量を用いる。いくつかの場合には、剤形は、実質的に生物体に悪影響を及ぼさないものとする。
【0145】
ある特定の実施形態では、癌を有する生物体に本発明の組成物を投与する。本発明の組成物の投与は、組成物をその標的まで到達させる任意の医学的に許容される方法によって達成される。選択する具体的な様式は、当然のことながら、既に記載した因子など、例えば、具体的な組成物、治療する生物体の状態の重症度、治療効果を得るのに必要な用量などの因子によって決まる。本明細書で使用される「医学的に許容される」治療様式とは、臨床的に許容されない有害作用を引き起こさずに、生物体内に有効レベルの組成物がもたらされる様式のことである。
【0146】
組成物を生物体に投与するのに、任意の医学的に許容される方法を用いる。投与は、治療する病態に応じて、限局されるもの(すなわち、特定の領域、生理系、組織、器官、または細胞型に限局されるもの)または全身投与となる。例えば、組成物を経口的に、またはその他の技術により、例えば経膣的に、直腸内に、頬側的に、経肺的に、局所的に、経鼻的に、経皮的に、腫瘍内に、非経口注射もしくは埋植により、外科的投与、または本発明の組成物による標的へのアクセスが得られる任意の他の方法により投与する。経口投与に適した組成物は、それぞれが所定量の活性化合物を含有する別個の単位、例えば硬カプセル剤もしくは軟カプセル剤、丸剤、サシェ剤、錠剤、トローチ剤、またはロゼンジ剤などとして提供する。本発明とともに使用するのに適したその他の経口組成物としては、シロップ剤などの水性もしくは非水性液体を用いた液剤もしくは懸濁剤、エリキシル剤、または乳剤が挙げられる。別の一連の実施形態では、組成物を用いて食品または飲料の栄養価を高める。いくつかの実施形態では、経直腸投与を例えば、浣腸、坐剤、またはフォーム剤の形態で使用し得る。
【0147】
ある一連の実施形態では、組成物の投与は、非経口、腫瘍内、または経口である。いくつかの実施形態では、組成物を注射または注入によって投与する。一実施形態では、注射は、腫瘍内注射、皮下注射、筋肉内注射、または静脈内注射から選択される。別の実施形態では、組成物を髄腔内への注射または注入により投与する。
【0148】
本発明のある特定の実施形態では、一定期間、例えば、数時間、数日間、数週間、数か月間、または数年間にわたって、組成物への連続的な曝露がもたらされるように、本発明の組成物の投与を設計する。このことは、例えば、上記の方法のうちの1つにより本発明の組成物を反復投与することによって、達成される。組成物の投与は、単独であっても、あるいは他の治療剤および/または組成物との併用であってもよい。
【0149】
本発明のある特定の実施形態では、組成物を例えば、ポリマー放出システム内に組み込んで、または液体に懸濁させて、例えば、溶解した形態またはコロイド形態で、適切な薬学的に許容される担体と組み合わせ得る。本発明での使用に適した薬学的に許容される担体は一般に、当業者に周知のものである。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」は、投与する活性化合物(1つまたは複数)の生物活性の効果にあまり干渉しないが、例えば、使用前の組成物中の活性化合物(1つまたは複数)を安定化または保護する、製剤成分として使用される、無毒性材料を指す。「担体」という用語は、本明細書で検討するように、本発明の1つまたは複数の活性化合物と組み合わせて、組成物の適用を促進する、天然または合成の有機成分または無機成分を意味する。担体は、実質的に所望の医薬効果を減じる可能性のある相互作用が全くみられないように、本発明の1つまたは複数の組成物と、および互いに混ぜ合わせる、または別の方法で混合する。担体は、用途に応じて可溶性または不溶性のものにする。よく知られた担体の例としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然セルロースおよび修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、および磁鉄鉱が挙げられる。担体の性質は、可溶性であっても不溶性であってもよい。当業者であれば、その他の適切な担体については知っているか、あるいは日常的な実験のみを用いてそれを確認できる。
【0150】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、薬学的に許容される担体を、活性化合物と使用する製剤成分、例えば塩、担体、緩衝剤、乳化剤、希釈剤、補形剤、キレート剤、充填剤、乾燥剤、抗酸化剤、抗菌剤、保存剤、結合剤、増量剤、シリカ、可溶化剤、または安定剤などとともに含み得る。例えば、製剤が液体である場合、担体は、溶媒、部分溶媒、または非溶媒であり得、水性または有機系のものであり得る。適切な製剤成分の例としては、希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、カオリン、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウムなど;コーンスターチまたはアルギン酸などの造粒剤および崩壊剤;デンプン、ゼラチン、またはアラビアゴムなどの結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクなどの滑沢剤;グリセロールモノステアラートまたはグリセロールジステアラートなどの遅延物質;懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンなど;レシチンまたはその他の天然のリン脂質などの分散剤または湿潤剤;セチルアルコールまたはミツロウなどの増粘剤;緩衝剤、例えば酢酸およびその塩、クエン酸およびその塩、ホウ酸およびその塩、またはリン酸およびその塩など;あるいは保存剤、例えば塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン、またはチメロサールなどが挙げられる。適切な担体濃度は、日常の範囲を超えない実験を用いて、当業者により決定され得る。本明細書で検討する組成物は、固体、半固体、液体、またはガス状の形態の調製物、例えば錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、保管所、吸入剤、または注射剤などに製剤化できる。当業者であれば、その他の適切な製剤成分については知っているか、あるいは日常的な実験のみを用いてそれを確認できる。
【0151】
調製物は、ある特定の実施形態では、生物体の血液と等張であり得る無菌の水性または非水性液剤、懸濁剤および乳剤を含む。非水性溶媒の例には、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、ゴマ油、ヤシ油、ラッカセイ油、鉱油など、注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチル、または合成モノグリセリドもしくはジグリセリドを含めた不揮発性油がある。水性担体としては、生理食塩水および緩衝媒体を含めた水、アルコール溶液/水溶液、乳剤、または懸濁剤が挙げられる。非経口媒体としては、塩化ナトリウム溶液、1,3-ブタンジオール、リンゲルデキストロース、デキストロース、および塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、または不揮発性油が挙げられる。静脈内媒体としては、体液および栄養補充液、電解質補充液(リンゲルデキストロースをベースとするものなど)などが挙げられる。保存剤およびその他の添加剤、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなども存在する。当業者であれば、過度の実験を用いずに、本明細書で検討する組成物を調製および製剤化するための様々なパラメータを容易に決定することができる。
【0152】
本発明はまた、上記のいずれかの組成物を、任意選択で癌またはその他の疾患の治療のための組成物を使用するための指示書を含む、キットの形で提供する。組成物を既に記載した任意の適切な技術によって、例えば経口的に、または静脈内に投与するための指示書を提供してもよい。
【0153】
本発明の組成物は、キットの形態であり得る。キットは通常、既に記載した本発明の組成物およびその他の成分のうちのいずれか1つ、またはその組合せを含む、パッケージを定義するものである。キットはまた、1つまたは複数の溶媒、界面活性剤、保存剤、および/または希釈剤(例えば、通常の生理食塩水(0.9%NaCl)または5%デキストロース)を含む他の容器、ならびに組成物を混合する、希釈する、または生物体に投与するための容器を含み得る。
【0154】
キットの組成物は、液体溶液または乾燥粉末として提供し得る。組成物を乾燥粉末として提供する場合、適切な溶媒の添加によって組成物を再構成し得る。液体形態の組成物を使用する実施形態では、液体形態は、濃縮されているか、またはすぐに使用できるものであり得る。溶媒は、組成物および使用または投与の様式によって決まる。
【0155】
米国およびその他の国では、該当する場合、2017年11月2日に出願された「Sistemas de Liberacion de Farmacos de Acido Polisialico y Metodos」と題するスペイン特許出願第P201731277号が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0156】
本明細書には、本発明の実施形態が複数記載および説明されているが、当業者には、機能を実施し、かつ/あるいはまたは本明細書に記載される結果および/または1つもしくは複数の利点を得るための様々な他の手段ならびに/あるいは構造が容易に想像され、このような変形および/または修正はそれぞれ、本発明の範囲内にあると見なされる。さらに一般的には、当業者には、本明細書に記載されるパラメータ、寸法、材料、および配置はいずれも例示的を意図するものであり、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または配置は、本発明の教示を用いる1つまたは複数の具体的用途によって決まることが容易に理解されよう。当業者には、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物が認識されるか、あるいは日常の範囲を超えない実験を用いてそれを確認できよう。したがって、上記の実施形態は単なる例として記載されるものであり、本発明は、添付の請求項およびそれに対する均等物の範囲内で、特異的に記載および特許請求されるもの以外の方法で実施され得ることが理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載される個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法のそれぞれに関するものである。さらに、このような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が互いに相容れないものでなければ、2つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組合せが本発明の範囲内に含まれる。
【0157】
本明細書および参照により組み込まれる文献に、矛盾する開示および/または相容れない開示が含まれる場合、本明細書が支配的な位置にある。参照により組み込まれる2つ以上の文献に、それぞれに対して相容れない開示および/または矛盾する開示が含まれる場合、発行日が新しい方の文献が支配的な位置にあるものとする。
【0158】
本明細書で定義および使用される定義はいずれも、定義される用語の辞書での定義、参照により組み込まれる文献での定義、および/または通常の意味に対して支配的な位置にあるものとする。
【0159】
本明細書および請求項で使用される不定冠詞「a」および「an」は、そうでないことが明記されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0160】
本明細書および請求項で使用される「および/または」という語句は、そのように等位結合される要素、すなわち、いくつかの場合には接続的に存在し、別の場合には選言的に存在する要素のうちの「一方または両方」を意味するものと理解されるべきである。「および/または」を用いて列挙される複数の要素も同じように、すなわち、「1つまたは複数の」要素がそのように等位結合されていると解釈されるべきである。「および/または」節によって具体的に特定される要素以外にも、具体的に特定されるその要素と関係があるか、無関係であるかを問わず、任意選択で他の要素が存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「含む」などの制限のない言葉とともに「Aおよび/またはB」と言う場合、それは、一実施形態ではAのみ(任意選択でB以外の要素を含む);別の実施形態ではBのみ(任意選択でA以外の要素を含む);さらに別の実施形態ではAとBの両方(任意選択で他の要素を含む)などを指し得る。
【0161】
本明細書および請求項で使用される「または」は、上で定義される「および/または」と同じ意味を有するものと理解されるべきである。例えば、1つのリストのなかの項目を分ける場合、「または」または「および/または」は、包括的なものである、すなわち、多数の要素または要素のリストのうち少なくとも1つの要素を含むだけでなく、2つ以上の要素、および任意選択で、列挙されていない他の項目を含むものと解釈されるべきである。「~のうちの1つのみ」もしくは「~のうちのちょうど1つ」、または請求項で使用される「~よりなる」など、そうでないことが明記される用語に限り、多数の要素または要素のリストのうちちょうど1つの要素が含まれることを指す。一般に、本明細書で使用される「または」という用語は、「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」、または「~のうちのちょうど1つ」などの排他的用語が先行する場合、排他的選択肢(すなわち、「一方または他方であって、両方ではない」)を示すものとのみ解釈されるべきである。
【0162】
本明細書および請求項で1つまたは複数の要素のリストを指して使用される「少なくとも1つ」という語句は、要素のリストのなかの要素のうちの任意の1つまたは複数のものから選択される、少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリストのなかに具体的に列挙されている少なくとも1つの要素および全要素を必ずしも含むものではなく、要素のリストのなかの要素の任意の組合せを除外するものではないことが理解されるべきである。この定義はまた、任意選択で、「少なくとも1つ」という語句が指す要素のリストのなかで具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定される要素と関係があるか、無関係であるかを問わず存在し得ることを認めるものである。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」も同様に、もしくは「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」も同様に)一実施形態では、任意選択で2つ以上を含む少なくとも1つのAが存在し、Bは存在しないこと(および任意選択で、B以外の要素を含む);別の実施形態では、任意選択で2つ以上を含む少なくとも1つのBが存在し、Aは存在しないこと(および任意選択で、A以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、任意選択で2つ以上を含む少なくとも1つのAと、任意選択で2つ以上を含む少なくとも1つのB(および任意選択で、他の要素を含む)などを指し得る。
【0163】
本明細書で、ある数を指して「約」という単語が使用される場合、本発明のさらに別の実施形態が、「約」という単語の存在によって修飾されていないその数を含むことが理解されるべきである。
【0164】
また、本明細書で特許請求され、2つ以上の段階または行為を含む方法ではいずれも、そうでないことが明記されない限り、その方法の段階または行為の順序は、必ずしもその方法の段階または行為が記載されている順序に限定されないことが理解されるべきである。
【0165】
請求項では、上の明細書と同じく、あらゆる移行句、例えば「comprising(含む)」、「including(含む)」、「carrying(有する)」、「having(有する)」、「containing(含有する)、「involving(含む)」、「holding(有する)」、「から構成され(~から構成される)」などは、制限のないものである、すなわち、特に限定されないが~を含むという意味であることが理解されるべきである。「consisting of(~からなる」および「consisting essentially(から実質的になる)」という移行句に限り、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures、2111.03節に記載されているように、それぞれクローズドまたはセミクローズドの移行句とするべきである。
【0166】
いわゆる請求項形式の本発明の態様/実施形態:
1.(態様1):外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻がポリシアル酸を含み、内側部分が少なくとも1つの疎水性化合物を含む、複数のナノ実体を含む、組成物。
【0167】
2.複数のナノ実体の少なくとも一部が、標的化部分および/または細胞浸透性ペプチドおよび/または腫瘍/組織浸透性ペプチドをさらに含む、請求項1の組成物。
【0168】
3.標的化部分が、ポリシアル酸と静電気的に結合している、請求項2の組成物。
【0169】
4.標的化部分が、リンカーを介してポリシアル酸と結合している、請求項2の組成物。
【0170】
5.標的化部分が、アミノアルキル(C1~C4)マレイミドリンカー、アミノアルキル(C1~C4)メタクリルアミドリンカーを介して、またはアミド基により直接、ポリシアル酸と結合している、請求項2の組成物。
【0171】
6.アミノアルキル(C1~C4)マレイミドリンカーが、EDC/NHS(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩/N-ヒドロキシスクシンイミド)によって、またはDMTMM(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド)カップリング反応によって生じるものである、請求項5の組成物。
【0172】
7.標的化部分が、アミノエチルマレイミドリンカーを介してポリシアル酸と結合している、請求項5の組成物。
【0173】
8.標的化部分がペプチドまたはタンパク質を含む、請求項2~7のいずれか1項の組成物。
【0174】
9.標的化部分がアプタマーを含む、請求項2~8のいずれか1項の組成物。
【0175】
10.標的化部分が核酸を含む、請求項2~9のいずれか1項の組成物。
【0176】
11.標的化部分が抗体またはそのフラグメントを含む、請求項2~10のいずれか1項の組成物。
【0177】
12.標的化部分が、ナノボディ、ユニボディ、ミニボディ、ダイアボディ、トライアボディ、および/またはテトラボディを含む、請求項2~11のいずれか1項の組成物。
【0178】
13.標的化部分が有機分子を含む、請求項2~12のいずれか1項の組成物。
【0179】
14.標的化部分がリガンドを含む、請求項2~13のいずれか1項の組成物。
【0180】
15.標的化部分が細胞浸透性ペプチドを含む、請求項2~14のいずれか1項の組成物。
【0181】
16.細胞浸透性ペプチドが、ポリシアル酸と化学的に結合している、請求項15の組成物。
【0182】
17.標的化部分がCendRペプチドを含む、請求項2~16のいずれか1項の組成物。
【0183】
18.標的化部分がアミノ酸配列Z1X1X2Z2を含み、Z1がRまたはKであり、Z2がRまたはKであり、X1およびX2がそれぞれアミノ酸残基である、請求項2~17のいずれか1項の組成物。
【0184】
19.標的化部分がアミノ酸配列RGDを含む、請求項2~18のいずれか1項の組成物。
【0185】
20.標的化部分がアミノ酸配列NGRを含む、請求項2~19のいずれか1項の組成物。
【0186】
21.標的化部分がアミノ酸配列CJ1Z1X1X2Z2を含み、J1がアミノ酸配列である、請求項2~20のいずれか1項の組成物。
【0187】
22.標的化部分がアミノ酸配列J1RGDを含み、J1がアミノ酸配列である、請求項2~21のいずれか1項の組成物。
【0188】
23.標的化部分がアミノ酸配列J1Z1X1X2Z2J2を含み、J1およびJ2がそれぞれ独立にアミノ酸配列である、請求項2~22のいずれか1項の組成物。
【0189】
24.標的化部分がアミノ酸配列J1RGDJ2を含み、J1およびJ2がそれぞれ独立にアミノ酸配列である、請求項2~23のいずれか1項の組成物。
【0190】
25.標的化部分がアミノ酸配列CJ1Z1X1X2Z2J2を含み、J1およびJ2がそれぞれ独立にアミノ酸配列である、請求項2~24のいずれか1項の組成物。
【0191】
26.標的化部分がLyp-1を含む、請求項2~25のいずれか1項の組成物。
【0192】
27.標的化部分がtLyp-1を含む、請求項2~26のいずれか1項の組成物。
【0193】
28.標的化部分がcLyp1を含む、請求項2~27のいずれか1項の組成物。
【0194】
29.標的化部分がiNGRを含む、請求項2~28のいずれか1項の組成物。
【0195】
30.標的化部分がiRGDを含む、請求項2~29のいずれか1項の組成物。
【0196】
31.標的化部分がRPARPARを含む、請求項2~30のいずれか1項の組成物。
【0197】
32.標的化部分がTT1を含む、請求項2~31のいずれか1項の組成物。
【0198】
33.標的化部分が直鎖状TT1を含む、請求項2~32のいずれか1項の組成物。
【0199】
34.標的化部分がRGD-4Cを含む、請求項2~33のいずれか1項の組成物。
【0200】
35.標的化部分がcRGDを含む、請求項2~34のいずれか1項の組成物。
【0201】
36.標的化部分がシレンジタイドを含む、請求項2~35のいずれか1項の組成物。
【0202】
37.標的化部分が、Lyp1、tLyp1、cLyp1、iNGR、iRGD、RPARPAR、TT1、直鎖状TT1、RGD-4C、cRGD、シレンジタイド、F3、9-RGD、RGD4C、デルタ24-RGD、デルタ24-RGD4C、RGD-K5、非環状RGD4C、二環式RGD4C、c(RGDfK)、c(RGDyK)、E-[c(RGDfK)2]、E[c(RGDyK)]2、KLWVLPKGGGC、CDCRGDCFC、LABL、アンジオペプチン-2、抗体、ナノボディ、トランスフェリン、アンキリン反復タンパク質、アフィボディ、葉酸、トリフェニルホスホニウム、ACUPA、PSMA、炭水化物部分、およびアプタマーからなる群より選択される、請求項2~36のいずれか1項の組成物。
【0203】
38.外殻が浸透促進剤をさらに含む、請求項1~37のいずれか1項の組成物。
【0204】
39.ポリシアル酸の少なくとも一部が疎水性部分と結合している、請求項1~38のいずれか1項の組成物。
【0205】
40.疎水性部分が、アルキル基、シクロアルカン、胆汁酸塩および誘導体、テルペノイド、テルペン、テルペン由来部分、ならびに脂溶性ビタミンから選択される、請求項39の組成物。
【0206】
41.疎水性部分が直鎖アルキル基を含む、請求項39または40のいずれか1項の組成物。
【0207】
42.疎水性部分が、少なくとも2個の炭素原子を含む、請求項39~41のいずれか1項の組成物。
【0208】
43.疎水性部分が、少なくとも3個の炭素原子を含む、請求項39~42のいずれか1項の組成物。
【0209】
44.疎水性部分がC2~C24直鎖アルキル基を含む、請求項39~43のいずれか1項の組成物。
【0210】
45.疎水性部分が直鎖C12アルキル基を含む、請求項39~44のいずれか1項の組成物。
【0211】
46.ポリシアル酸と共有結合した脂肪族炭素鎖をさらに含む、請求項1~45のいずれか1項の組成物。
【0212】
47.脂肪族炭素鎖がC2~C24脂肪族炭素鎖を含む、請求項46の組成物。
【0213】
48.外殻の少なくとも約90重量%がポリシアル酸を含む、請求項1~47のいずれか1項の組成物。
【0214】
49.複数のナノ実体の少なくとも一部が実質的に固体である、請求項1~48のいずれか1項の組成物。
【0215】
50.複数のナノ実体の少なくとも一部がナノカプセルである、請求項1~49のいずれか1項の組成物。
【0216】
51.ポリシアル酸の少なくとも一部がN-アセチルノイラミン酸を含む、請求項1~50のいずれか1項の組成物。
【0217】
52.ポリシアル酸の少なくとも一部が2-ケト-3-デオキシノン酸(deoxynonic acid)を含む、請求項1~51のいずれか1項の組成物。
【0218】
53.ポリシアル酸の少なくとも一部がラクタミン酸を含む、請求項1~52のいずれか1項の組成物。
【0219】
54.ポリシアル酸の少なくとも一部がN-シアル酸を含む、請求項1~53のいずれか1項の組成物。
【0220】
55.ポリシアル酸の少なくとも一部がO-シアル酸を含む、請求項1~54のいずれか1項の組成物。
【0221】
56.ポリシアル酸の少なくとも一部が、少なくとも2つのシアル酸単位を含む、請求項1~55のいずれか1項の組成物。
【0222】
57.ポリシアル酸の少なくとも一部が、少なくとも4個のシアル酸単位を含む、請求項1~56のいずれか1項の組成物。
【0223】
58.ポリシアル酸の少なくとも一部が、少なくとも8個のシアル酸単位を含む、請求項1~57のいずれか1項の組成物。
【0224】
59.ポリシアル酸の少なくとも一部が、2-->8結合を介して結合したシアル酸単位を含む、請求項1~58のいずれか1項の組成物。
【0225】
60.ポリシアル酸の少なくとも一部が、2-->9結合を介して結合したシアル酸単位を含む、請求項1~59のいずれか1項の組成物。
【0226】
61.内側部分が非水性である、請求項1~60のいずれか1項の組成物。
【0227】
62.内側部分が医薬品を含む、請求項1~61のいずれか1項の組成物。
【0228】
63.医薬品が脂溶性である、請求項62の組成物。
【0229】
64.医薬品が両親媒性である、請求項62の組成物。
【0230】
65.医薬品が水溶性である、請求項62の組成物。
【0231】
66.医薬品がモノクローナル抗体である、請求項62の組成物。
【0232】
67.医薬品がポリヌクレオチドである、請求項62の組成物。
【0233】
68.医薬品がドセタキセルである、請求項62の組成物。
【0234】
69.医薬品が抗癌剤である、請求項62の組成物。
【0235】
70.医薬品が、ゲムシタビン、パクリタキセル、カバジタキセル、トムデックス、ダウノマイシン、アクラルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ラパマイシン、エピルビシン、バルルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、エレスクロモル、インゲノールメブテート、プリカマイシン、カリケアマイシン、エスペラマイシン、デガレリクス、エムタンシン、マイタンシン、マイタンシノイドDM1、マイタンシノイド2、マイタンシノイドDM4、マイトマイシン、アウリスタチン、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、エストラムスチン、シスプラチン疎水性誘導体、クロラムブシル、ベンダムスチン、カルムスチン、アマンタジン、リマンタジン、ロムスチン、セムスチン、アムサクリン、ラドリビン(ladribine)、シタラビン、(C12~C18)-ゲムシタビン、テガフール、トリメトレキサート、サゴピロン、イクサペビロン(ixapebilone)、パツピロン、エリブリン、カンプトテシン、アミノグルテチミド、ジアジクオン、レバミソール、メチル-GAG、ミトタン、ミトザントロン、テストラクトン、ミケラミンB、ブリオスタチン-1、ハロモン、ジデムニン、プリチデプシン、トラベクテジン、ルルビネクテジン、ボリノスタット、ロミデプシン、イリノテカン、ボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲチフィニブ(getifinib)、イマチニブ、ベムラフェニブ、クリゾチニブ、ビスモデギブ、トレチノイン、アリトレチノイン、ベキサロテン、タクロリムス、エベロリムス、トポテカン、テニポシド、エトポシド、プララトレキサート、オマセタキシン、ドキソルビシン、ダカルバジン、プロカルバジン、ヒドロキシダウノルビシン、ヒドロキシウレア、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フロクスウリジンまたは5-フルオロデオキシウリジン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、チオテパ、ペントスタチン、メクロレタミン、ピボブロマン(pibobroman)、シクロホスファミド、イホスファミド、ブスルファン、カルボプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラパリン(satrapalin)、白金-DACH、オルマプラチン、オキサプラチン、メルファラン、アミノグルテチミド、トラスツズマブ、ベバジズマブ、デュルバルマブ、ニボルマブ、イノツズマブ、アベルマブ、ペムブロリズマブ、オララツマブ、アテゾリズマブ、ダラツムマブ、エロツズマブ、ネシツムマブ、ジヌツキシマブ、ブリナツモマブ、ラムシルマブ、オビヌツズマブ、デノスマブ、イピリムマブ、ブレンツキシマブ、オファツムマブ、およびその組合せからなる群より選択される、請求項69の組成物。
【0236】
71.内側部分が、少なくとも2つの医薬品を含む、請求項62~70のいずれか1項の組成物。
【0237】
72.外殻が医薬品を含む、請求項1~71のいずれか1項の組成物。
【0238】
73.外殻の医薬品が脂溶性である、請求項72の組成物。
【0239】
74.外殻の医薬品が両親媒性である、請求項72の組成物。
【0240】
75.外殻の医薬品が水溶性である、請求項72の組成物。
【0241】
76.外殻の医薬品がポリヌクレオチドである、請求項72の組成物。
【0242】
77.複数のナノ実体が、平均径が1マイクロメートル未満である、請求項1~76の組成物。
【0243】
78.複数のナノ実体が、平均径が250nm未満である、請求項1~77のいずれか1項の組成物。
【0244】
79.複数のナノ実体が、平均径が150nm未満である、請求項1~78のいずれか1項の組成物。
【0245】
80.複数のナノ実体がミセルを含む、請求項1~79のいずれか1項の組成物。
【0246】
81.複数のナノ実体がリポソームではない、請求項1~80のいずれか1項の組成物。
【0247】
82.複数のナノ実体がプロタミンを含まない、請求項1~81のいずれか1項の組成物。
【0248】
83.複数のナノ実体がポリアルギニンを含まない、請求項1~82のいずれか1項の組成物。
【0249】
84.複数のナノ実体が2つ以上の外殻は含まない、請求項1~83のいずれか1項の組成物。
【0250】
85.(態様2):薬剤として使用する、請求項1~84のいずれか1項の組成物。
【0251】
86.請求項1~85のいずれか1項の組成物を生物体に投与することを含む、方法。
【0252】
87.生物体がヒトである、請求項86の方法。
【0253】
88.(態様3):ポリシアル酸上のカルボキシラート部分とアミノアルキル(C1~C4)マレイミドおよび/またはアミノアルキル(C1~C4)メタクリルアミドとを反応させること;ならびに得られたアミノアルキル(C1~C4)マレイミドおよび/またはアミノアルキル(C1~C4)メタクリルアミドと標的化部分上のチオール基とを反応させて、ポリシアル酸-アミノアルキル(C1~C4)スクシンイミド-ペプチドおよび/またはポリシアル酸-アミノアルキル(C1~C4)アミドイソプロピル-ペプチド組成物を得ることを含む、方法。
【0254】
89.ポリシアル酸-アミノアルキル(C1~C4)スクシンイミド-ペプチド組成物および/またはポリシアル酸-アミノアルキル(C1~C4)アミドイソプロピル-ペプチド組成物を含むエマルションを形成すること;ならびにエマルションから複数のナノ粒子を形成することをさらに含む、請求項88の方法。
【0255】
90.複数のナノ粒子の少なくとも一部が、露出した外殻に取り囲まれた内側部分を含む、請求項89の方法。
【0256】
91.(態様4):ポリシアル酸上のカルボキシラート部分とN-ヒドロキシスクシンイミドおよび/またはカルボジイミドとを反応させて中間体を形成すること;ならびに中間体と標的化部分上のリジン基またはアルギニン基とを反応させて、ポリシアル酸-アミド-ペプチドを得ることを含む、方法。
【0257】
92.ポリシアル酸-アミド-ペプチドを含むエマルションを形成すること;およびエマルションから複数のナノ粒子を形成することをさらに含む、請求項91の方法。
【0258】
93.複数のナノカプセルの少なくとも一部が、露出した外殻に取り囲まれた内側部分を含む、請求項92の方法。
【0259】
94.(態様5):外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻がポリシアル酸を含み、ナノ実体の少なくとも一部が、内側部分中に含まれるモノクローナル抗体をさらに含む、複数のナノ実体を含む、組成物。
【0260】
95.モノクローナル抗体が、ナノ実体の外部に露出していない、請求項94の組成物。
【0261】
96.複数のナノ実体の少なくとも一部が、1つまたは複数の界面活性剤をさらに含む、請求項94または95のいずれか1項の組成物。
【0262】
97.複数のナノ実体の少なくとも一部が、標的化部分および/または細胞浸透性ペプチドおよび/または腫瘍/組織浸透性ペプチドをさらに含む、請求項94~96のいずれか1項の組成物。
【0263】
98.標的化部分が、ポリシアル酸と静電気的に結合している、請求項97の組成物。
【0264】
99.標的化部分が、リンカーを介してポリシアル酸と結合している、請求項97の組成物。
【0265】
100.標的化部分が、アミノアルキル(C1~C4)スクシンイミドリンカー、アミノアルキル(C1~C4)アミド-イソ-プロピルリンカーを介して、またはアミド基により直接、ポリシアル酸と結合している、請求項97の組成物。
【0266】
101.アミノアルキル(C1~C4)スクシンイミドリンカーが、EDC/NHS(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩/N-ヒドロキシスクシンイミド)カップリング反応によって生じるものである、請求項100の組成物。
【0267】
102.標的化部分が、アミノエチルスクシンイミドリンカーを介してポリシアル酸と結合している、請求項99の組成物。
【0268】
103.標的化部分が細胞浸透性ペプチドを含む、請求項97~102のいずれか1項の組成物。
【0269】
104.細胞浸透性ペプチドが、ポリシアル酸と化学的に結合している、請求項103の組成物。
【0270】
105.標的化部分がアミノ酸配列RGDを含む、請求項97~104のいずれか1項の組成物。
【0271】
106.標的化部分がアミノ酸配列NGRを含む、請求項97~105のいずれか1項の組成物。
【0272】
107.標的化部分がLyp-1を含む、請求項97~106のいずれか1項の組成物。
【0273】
108.標的化部分がtLyp-1を含む、請求項97~107のいずれか1項の組成物。
【0274】
109.標的化部分がcLyp1を含む、請求項97~108のいずれか1項の組成物。
【0275】
110.外殻が浸透促進剤をさらに含む、請求項94~109のいずれか1項の組成物。
【0276】
111.ポリシアル酸の少なくとも一部が疎水性部分と結合している、請求項94~109のいずれか1項の組成物。
【0277】
112.外殻の少なくとも約93重量%がポリシアル酸を含む、請求項94~111のいずれか1項の組成物。
【0278】
113.複数のナノ実体の少なくとも一部がナノカプセルである、請求項94~112のいずれか1項の組成物。
【0279】
114.複数のナノ実体が、平均径が1マイクロメートル未満である、請求項94~113のいずれか1項の組成物。
【0280】
115.複数のナノ実体が、平均径が250nm未満である、請求項94~114のいずれか1項の組成物。
【0281】
116.複数のナノ実体が、平均径が150nm未満である、請求項94~115のいずれか1項の組成物。
【0282】
117.複数のナノ実体がリポソームではない、請求項94~116のいずれか1項の組成物。
【0283】
118.複数のナノ実体がプロタミンを含まない、請求項94~117のいずれか1項の組成物。
【0284】
119.複数のナノ実体がポリアルギニンを含まない、請求項94~118のいずれか1項の組成物。
【0285】
120.複数のナノ実体が2つ以上の外殻は含まない、請求項94~119のいずれか1項の組成物。
【0286】
121.(態様6):薬剤として使用する、請求項94~120のいずれか1項の組成物。
【0287】
122.請求項94~120のいずれか1項の組成物を生物体に投与することを含む、方法。
【0288】
123.(態様7):外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻がポリシアル酸から実質的になり、内側部分が少なくとも1つの疎水性化合物を含む、複数のナノ実体を含む、組成物。
【0289】
124.外殻が、少なくとも90重量%のポリシアル酸である、請求項123の組成物。
【0290】
125.複数のナノ実体の少なくとも一部が、内側部分と外殻との間に位置する界面活性剤をさらに含む、請求項123または124のいずれか1項の組成物。
【0291】
126.複数のナノ実体の少なくとも一部が、ポリシアル酸と化学的に結合した細胞浸透性ペプチドを含む標的化部分をさらに含む、請求項123~125のいずれか1項の組成物。
【0292】
127.標的化部分がCendRペプチドを含む、請求項126の組成物。
【0293】
128.標的化部分がtLyp-1を含む、請求項126または127のいずれか1項の組成物。
【0294】
129.標的化部分が、リンカーを介してポリシアル酸と結合している、請求項126~128のいずれか1項の組成物。
【0295】
130.標的化部分が、アミノアルキル(C1~C4)スクシンイミドリンカーを介してポリシアル酸と結合している、請求項126~129のいずれか1項の組成物。
【0296】
131.複数のナノ実体がリポソームではない、請求項123~130のいずれか1項の組成物。
【0297】
132.複数のナノ実体がプロタミンを含まない、請求項123~131のいずれか1項の組成物。
【0298】
133.複数のナノ実体がポリアルギニンを含まない、請求項123~132のいずれか1項の組成物。
【0299】
134.複数のナノ実体が2つ以上の外殻は含まない、請求項123~133のいずれか1項の組成物。
【0300】
135.(態様8):薬剤として使用する、請求項123~134のいずれか1項の組成物。
【0301】
136.請求項123~134のいずれか1項の組成物を生物体に投与することを含む、方法。
【0302】
137.(態様9):外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻が、ポリシアル酸と、ポリシアル酸と化学的に結合した細胞浸透性ペプチドを含む標的化部分とを含む、複数のナノ実体を含む、組成物。
【0303】
138.複数のナノ実体がリポソームではない、請求項137の組成物。
【0304】
139.(態様10):薬剤として使用する、請求項137または138のいずれか1項の組成物。
【0305】
140.請求項137または138のいずれか1項の組成物を生物体に投与することを含む、方法。
【0306】
141.(態様11):外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻が、ポリシアル酸と、ポリシアル酸と化学的に結合した標的化部分とを含み、標的化部分が、配列Z1X1X2Z2および/または配列RGDおよび/または配列NGRを有するペプチドを含み、Z1がRまたはKであり、Z2がRまたはKであり、X1およびX2がそれぞれアミノ酸残基である、複数のナノカプセルを含む、組成物。
【0307】
142.複数のナノ実体がリポソームではない、請求項141の組成物。
【0308】
143.(態様12):薬剤として使用する、請求項141または142のいずれか1項の組成物。
【0309】
144.請求項141または142のいずれか1項の組成物を生物体に投与することを含む、方法。
【0310】
145.(態様13):最大平均径が約1マイクロメートル未満である複数の実体を含み、実体が、ポリシアル酸と標的化部分とを含む表面を有し、ただし、実体がリポソームではない、組成物。
【0311】
146.複数のナノ実体の少なくとも一部がナノカプセルである、請求項145の組成物。
【0312】
147.複数のナノ実体の少なくとも一部がミセルである、請求項145または146のいずれか1項の組成物。
【0313】
148.標的化部分が細胞浸透性ペプチドを含む、請求項145~147のいずれか1項の組成物。
【0314】
149.複数の実体がリポソームではない、請求項145~148のいずれか1項の組成物。
【0315】
150.(態様14):薬剤として使用する、請求項145~149のいずれか1項の組成物。
【0316】
151.請求項145~149のいずれか1項の組成物を生物体に投与することを含む、方法。
【0317】
152.(態様15):請求項1~84、94~120、123~134、137、138、141、142、または145~149のいずれか1項の組成物を含む、キット。
【0318】
153.(態様16):外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻がヒアルロン酸を含み、ナノ実体の少なくとも一部がモノクローナル抗体をさらに含む、複数のナノ実体を含む、組成物。
【0319】
154.外殻の少なくとも約90重量%がヒアルロン酸を含む、請求項153の組成物。
【0320】
155.複数のナノ実体の少なくとも一部がナノカプセルである、請求項153または154のいずれか1項の組成物。
【0321】
156.内側部分が非水性である、請求項153~155のいずれか1項の組成物。
【0322】
157.モノクローナル抗体が、内側部分の中に含まれている、請求項153~156のいずれか1項の組成物。
【0323】
158.複数のナノ実体が、平均径が1マイクロメートル未満である、請求項153~157のいずれか1項の組成物。
【0324】
159.ナノ実体がミセルである、請求項153~158のいずれか1項の組成物。
【0325】
160.複数のナノ実体が2つ以上の外殻は含まない、請求項153~159のいずれか1項の組成物。
【0326】
161.(態様17):薬剤として使用する、請求項153~160のいずれか1項の組成物。
【0327】
162.(態様18):外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻が、PGAおよび/またはPASPと標的化部分とを含む、複数のナノ実体を含む、組成物。
【0328】
163.標的化部分が、PGAおよび/またはPASPと静電気的に結合している、請求項162の組成物。
【0329】
164.標的化部分が、リンカーを介してPGAおよび/またはPASPと結合している、請求項162または163のいずれか1項の組成物。
【0330】
165.標的化部分が、アミノアルキル(C1~C4)マレイミドリンカー、アミノアルキル(C1~C4)メタクリルアミドリンカーを介して、またはアミド基により直接、PGAおよび/またはPASPと結合している、請求項162または163のいずれか1項の組成物。
【0331】
166.標的化部分が、アミノエチルマレイミドリンカーを介してPGAおよび/またはPASPと結合している、請求項165の組成物。
【0332】
167.標的化部分が細胞浸透性ペプチドを含む、請求項162~166のいずれか1項の組成物。
【0333】
168.細胞浸透性ペプチドが、PGAおよび/またはPASPと化学的に結合している、請求項162~167のいずれか1項の組成物。
【0334】
169.標的化部分がCendRペプチドを含む、請求項162~168のいずれか1項の組成物。
【0335】
170.標的化部分がLyp-1を含む、請求項162~169のいずれか1項の組成物。
【0336】
171.標的化部分がtLyp-1を含む、請求項162~170のいずれか1項の組成物。
【0337】
172.標的化部分がcLyp1を含む、請求項162~171のいずれか1項の組成物。
【0338】
173.外殻の少なくとも約90重量%がPGAおよび/またはPASPを含む、請求項162~172のいずれか1項の組成物。
【0339】
174.複数のナノ実体の少なくとも一部がナノカプセルである、請求項162~173のいずれか1項の組成物。
【0340】
175.内側部分が非水性である、請求項162~174のいずれか1項の組成物。
【0341】
176.内側部分が医薬品を含む、請求項162~175のいずれか1項の組成物。
【0342】
177.医薬品がモノクローナル抗体である、請求項176の組成物。
【0343】
178.複数のナノ実体が、平均径が1マイクロメートル未満である、請求項162~177のいずれか1項の組成物。
【0344】
179.ナノ実体がミセルである、請求項162~178のいずれか1項の組成物。
【0345】
180.複数のナノ実体が2つ以上の外殻は含まない、請求項162~179のいずれか1項の組成物。
【0346】
181.PGAおよび/またはPASPの少なくとも一部が疎水性部分と結合している、請求項162~180のいずれか1項の組成物。
【0347】
182.(態様19):薬剤として使用する、請求項162~181のいずれか1項の組成物。
【0348】
183.(態様20):外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻がPGAおよび/またはPASPと標的化部分とを含み、標的化部分が、配列Z1X1X2Z2および/または配列RGDおよび/または配列NGRを有するペプチドを含み、Z1がRまたはKであり、Z2がRまたはKであり、X1およびX2がそれぞれアミノ酸残基である、複数のナノカプセルを含む、組成物。
【0349】
184.標的化部分が、PGAおよび/またはPASPと静電気的に結合している、請求項183の組成物。
【0350】
185.標的化部分が、リンカーを介してPGAおよび/またはPASPと結合している、請求項183または184のいずれか1項の組成物。
【0351】
186.標的化部分が、アミノアルキル(C1~C4)マレイミドリンカー、アミノアルキル(C1~C4)メタクリルアミドリンカーを介して、またはアミド基により直接、PGAおよび/またはPASPと結合している、請求項183または185のいずれか1項の組成物。
【0352】
187.標的化部分が、アミノエチルマレイミドリンカーを介してPGAおよび/またはPASPと結合している、請求項186の組成物。
【0353】
188.外殻の少なくとも約90重量%がPGAおよび/またはPASPを含む、請求項183~187のいずれか1項の組成物。
【0354】
189.複数のナノ実体の少なくとも一部がナノカプセルである、請求項183~188のいずれか1項の組成物。
【0355】
190.内側部分が非水性である、請求項183~189のいずれか1項の組成物。
【0356】
191.内側部分が医薬品を含む、請求項183~190のいずれか1項の組成物。
【0357】
192.医薬品がモノクローナル抗体である、請求項191の組成物。
【0358】
193.複数のナノ実体が、平均径が1マイクロメートル未満である、請求項183~192のいずれか1項の組成物。
【0359】
194.ナノ実体がミセルである、請求項183~193のいずれか1項の組成物。
【0360】
195.複数のナノ実体が2つ以上の外殻は含まない、請求項183~194のいずれか1項の組成物。
【0361】
196.標的化部分がアミノ酸配列CJ1Z1X1X2Z2を含み、J1がアミノ酸配列である、請求項183~195のいずれか1項の組成物。
【0362】
197.標的化部分がアミノ酸配列J1RGDを含み、J1がアミノ酸配列である、請求項183~196のいずれか1項の組成物。
【0363】
198.標的化部分がアミノ酸配列J1Z1X1X2Z2J2を含み、J1およびJ2がそれぞれ独立にアミノ酸配列である、請求項183~197のいずれか1項の組成物。
【0364】
199.標的化部分がアミノ酸配列J1RGDJ2を含み、J1およびJ2がそれぞれ独立にアミノ酸配列である、請求項183~198のいずれか1項の組成物。
【0365】
200.標的化部分がアミノ酸配列CJ1Z1X1X2Z2J2を含み、J1およびJ2がそれぞれ独立にアミノ酸配列である、請求項183~199のいずれか1項の組成物。
【0366】
201.(態様21):薬剤として使用する、請求項183~200のいずれか1項の組成物。
【0367】
202.(態様22):外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻がPGAおよび/またはPASPを含み、ナノ実体の少なくとも一部が、内側部分の中に含まれているモノクローナル抗体をさらに含む、複数のナノ実体を含む、組成物。
【0368】
203.外殻の少なくとも約90重量%がPGAおよび/またはPASPを含む、請求項202の組成物。
【0369】
204.複数のナノ実体の少なくとも一部がナノカプセルである、請求項202または203のいずれか1項の組成物。
【0370】
205.内側部分が非水性である、請求項202~204のいずれか1項の組成物。
【0371】
206.複数のナノ実体が、平均径が1マイクロメートル未満である、請求項202~205のいずれか1項の組成物。
【0372】
207.ナノ実体がミセルである、請求項202~206のいずれか1項の組成物。
【0373】
208.複数のナノ実体が2つ以上の外殻は含まない、請求項202~207のいずれか1項の組成物。
【0374】
209.(態様23):薬剤として使用する、請求項202~208のいずれか1項の組成物。
【0375】
210.(態様24):外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻が、疎水性部分と結合したヒアルロン酸を含む、複数のナノ実体を含む、組成物。
【0376】
211.ナノ実体の少なくとも一部が、内側部分の中に含まれているモノクローナル抗体をさらに含む、請求項210の組成物。
【0377】
212.ナノ実体の少なくとも一部が、内側部分の中に含まれている医薬品をさらに含む、請求項210または211のいずれか1項の組成物。
【0378】
213.ナノ実体の少なくとも一部が、内側部分の中に含まれている小分子をさらに含む、請求項210~212のいずれか1項の組成物。
【0379】
214.疎水性部分が、アルキル基、シクロアルカン、胆汁酸塩および誘導体、テルペノイド、テルペン、テルペン由来部分、ならびに脂溶性ビタミンから選択される、請求項210~213のいずれか1項の組成物。
【0380】
215.疎水性部分が直鎖アルキル基を含む、請求項210~214のいずれか1項の組成物。
【0381】
216.疎水性部分がC2~C24直鎖アルキル基を含む、請求項210~215のいずれか1項の組成物。
【0382】
217.疎水性部分が直鎖C16アルキル基を含む、請求項210~216のいずれか1項の組成物。
【0383】
218.複数のナノ実体の少なくとも一部が、標的化部分をさらに含む、請求項210~217のいずれか1項の組成物。
【0384】
219.標的化部分がLyp-1を含む、請求項218の組成物。
【0385】
220.標的化部分がtLyp-1を含む、請求項218または219のいずれか1項の組成物。
【0386】
221.標的化部分がcLyp1を含む、請求項218~220のいずれか1項の組成物。
【0387】
222.標的化部分が細胞浸透性ペプチドを含む、請求項218~221のいずれか1項の組成物。
【0388】
223.外殻の少なくとも約90重量%がヒアルロン酸を含む、請求項210~222のいずれか1項の組成物。
【0389】
224.複数のナノ実体の少なくとも一部がナノカプセルである、請求項210~223のいずれか1項の組成物。
【0390】
225.内側部分が非水性である、請求項210~224のいずれか1項の組成物。
【0391】
226.複数のナノ実体が、平均径が1マイクロメートル未満である、請求項210~225のいずれか1項の組成物。
【0392】
227.ナノ実体がミセルである、請求項210~226のいずれか1項の組成物。
【0393】
228.複数のナノ実体が2つ以上の外殻は含まない、請求項210~227のいずれか1項の組成物。
【0394】
229.(態様25):薬剤として使用する、請求項210~228のいずれか1項の組成物。
【0395】
230.(態様26):外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻が、ポリ酸、ポリエステル、ポリアミド、またはその混合物からなる群より選択されるポリマーを含み、ナノ実体の少なくとも一部がモノクローナル抗体をさらに含む、複数のナノ実体を含む、組成物。
【0396】
231.モノクローナル抗体が、内側部分の中に含まれている、請求項230の組成物。
【0397】
232.外殻の少なくとも約90重量%がポリマーを含む、請求項230または231のいずれか1項の組成物。
【0398】
233.ポリマーがポリシアル酸を含む、請求項230~232のいずれか1項の組成物。
【0399】
234.ポリマーがヒアルロン酸を含む、請求項230~233のいずれか1項の組成物。
【0400】
235.ポリマーがポリグルタミン酸および/またはPGA-PEGを含む、請求項230~234のいずれか1項の組成物。
【0401】
236.ポリマーがPASPおよび/またはPASP-PEGを含む、請求項230~235のいずれか1項の組成物。
【0402】
237.ポリマーがポリ乳酸-ポリエチレングリコール(PLA-PEG)を含む、請求項230~236のいずれか1項の組成物。
【0403】
238.ポリマーがポリ(乳酸-co-グリコール酸)および/またはペグ化ポリ(乳酸-co-グリコール酸)を含む、請求項230~237のいずれか1項の組成物。
【0404】
239.ポリマーがポリ乳酸および/またはペグ化ポリ乳酸を含む、請求項230~238のいずれか1項の組成物。
【0405】
240.ポリマーがポリアスパラギン酸および/またはペグ化ポリアスパラギン酸を含む、請求項230~239のいずれか1項の組成物。
【0406】
241.ポリマーがアルギン酸および/またはペグ化アルギン酸を含む、請求項230~240のいずれか1項の組成物。
【0407】
242.ポリマーがポリリンゴ酸および/またはペグ化ポリリンゴ酸を含む、請求項230~241のいずれか1項の組成物。
【0408】
243.ポリマーが疎水性部分と結合している、請求項230~242のいずれか1項の組成物。
【0409】
244.ナノ実体の少なくとも一部が標的化部分をさらに含む、請求項230~243のいずれか1項の組成物。
【0410】
245.複数のナノ実体の少なくとも一部がナノカプセルである、請求項230~244のいずれか1項の組成物。
【0411】
246.内側部分が非水性である、請求項230~245のいずれか1項の組成物。
【0412】
247.複数のナノ実体が、平均径が1マイクロメートル未満である、請求項230~246のいずれか1項の組成物。
【0413】
248.ナノ実体がミセルである、請求項230~247のいずれか1項の組成物。
【0414】
249.複数のナノ実体が2つ以上の外殻は含まない、請求項230~248のいずれか1項の組成物。
【0415】
250.(態様27):薬剤として使用する、請求項230~249のいずれか1項の組成物。
【0416】
251.(態様28):外殻に取り囲まれた内側部分を含み、外殻が、疎水性部分と結合したヒアルロン酸を含み、ナノ実体の少なくとも一部が、分子量が1000Da未満である小分子をさらに含む、複数のナノ実体を含む、組成物。
【0417】
252.小分子が、内側部分の中に含まれている、請求項251の組成物。
【0418】
253.小分子が医薬品である、請求項251または252のいずれか1項の組成物。
【0419】
254.小分子がドセタキセルである、請求項251~153のいずれか1項の組成物。
【0420】
255.疎水性部分が、アルキル基、シクロアルカン、胆汁酸塩および誘導体、テルペノイド、テルペン、テルペン由来部分、ならびに脂溶性ビタミンから選択される、請求項251~254のいずれか1項の組成物。
【0421】
256.疎水性部分が直鎖アルキル基を含む、請求項251~255のいずれか1項の組成物。
【0422】
257.疎水性部分がC2~C24直鎖アルキル基を含む、請求項251~256のいずれか1項の組成物。
【0423】
258.疎水性部分が直鎖C16アルキル基を含む、請求項251~257のいずれか1項の組成物。
【0424】
259.外殻の少なくとも約90重量%がヒアルロン酸を含む、請求項251~258のいずれか1項の組成物。
【0425】
260.複数のナノ実体の少なくとも一部がナノカプセルである、請求項251~259のいずれか1項の組成物。
【0426】
261.ナノ実体の少なくとも一部が標的化部分をさらに含む、請求項251~260のいずれか1項の組成物。
【0427】
262.標的化部分がLyp-1を含む、請求項251~261のいずれか1項の組成物。
【0428】
263.標的化部分がtLyp-1を含む、請求項251~262のいずれか1項の組成物。
【0429】
264.標的化部分がcLyp1を含む、請求項251~263のいずれか1項の組成物。
【0430】
265.標的化部分が細胞浸透性ペプチドを含む、請求項251~264のいずれか1項の組成物。
【0431】
266.標的化部分がヒアルロン酸と結合している、請求項251~265のいずれか1項の組成物。
【0432】
267.内側部分が非水性である、請求項251~266のいずれか1項の組成物。
【0433】
268.複数のナノ実体が、平均径が1マイクロメートル未満である、請求項251~267のいずれか1項の組成物。
【0434】
269.ナノ実体がミセルである、請求項251~268のいずれか1項の組成物。
【0435】
270.複数のナノ実体が2つ以上の外殻は含まない、請求項251~269のいずれか1項の組成物。
【0436】
271.(態様29):薬剤として使用する、請求項251~270のいずれか1項の組成物。
【0437】
272.(態様30):請求項153~160、162~181、183~200、202~208、210~2298、230~249、または251~270のいずれか1項に記載の組成物を含む、キット。
【0438】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を説明することを意図するものであるが、本発明の全範囲を例示するものではない。
【0439】
実施例1
この実施例では、腫瘍浸透性ペプチドtLyp1で官能化した、または官能化していない、ポリシアル酸(PSA)ナノカプセルを説明する。
【0440】
ナノカプセルの組成は以下の通りであった。ナノカプセルは、tLyp1ペプチドで官能化したPSAまたはPSAのポリマー殻に取り囲まれ、界面活性剤によって安定化した油性核から形成した。ナノカプセルは、水中油型乳剤の相間でPSAと正荷電界面活性剤が相互作用することにより形成された。特に明記されない限り、使用したPSAは分子量が約30kDaであった(26~30kDa、Serum Institute of India社)。
【0441】
使用したPSAの共有結合により、ペプチドtLyp1のチオール基とPSAのカルボキシラート基との間の選択的共有結合が可能になる。この合成法では、ヘテロ二官能性リンカー、アミノエチルマレイミドを使用し、このリンカーにより、2段階の工程に従って、最初にそのリンカーのアミン基からPSAのカルボキシラート基への取込み(カルボジイミド化学を用いる)、次に、リンカーのマレイミド基へのペプチドのチオール基(システイン残基)の付加(マイケル型付加)によるペプチド結合が可能になる(
図1)。この戦略により、tLyp1ペプチドの生物学的に活性な基の保護が可能となった。さらに、置換度を容易に制御できる。
【0442】
ポリマーナノカプセル、例えばPSAナノカプセルを様々な技術によって作製できる。ナノカプセル表面のtLyp1分子の数は、化学反応に用いる様々なモル比によって修正することができた(PSA:EDC:NHS:AEMのカルボン酸(COOH)の供給モル比を示す表1を参照されたい)。そのような技術の1つに、水相で極性溶媒を混合する溶媒置換技術がある。また別の技術として、有機溶媒の使用が不要な自己乳化技術がある。
【0443】
ポリマーナノカプセル、例えばPSAナノカプセルをtLyp1で官能化することができた。ナノカプセル表面のtLyp1分子の数を制御することができた。形成されたtLyp1官能化ナノカプセルは、大きさが約130nmで、負ゼータ電位が負(-44mV)であった。tLyp1官能化ナノカプセルは、血漿中、37℃でインキュベートしても安定であることがわかった。さらに、tLyp1官能化ナノカプセルに任意の適切な疎水性薬物のほかにも水溶性分子を搭載することができた。ある実験では、tLyp1官能化ナノカプセルにドセタキセル、例えば無水ドセタキセル(Mw807.289g/mol;LogP2.6)を搭載した。tLyp1に加えて、CendRペプチドなどの他の組織浸透性ペプチド(例えば、Lyp1およびiRGD)をPSA鎖に結合させ得る。
【0444】
PSAをN-(2-アミノエチル)マレイミドトリフルオロ酢酸塩で修飾した。PSAのカルボン酸基と、EDC、NHS、AEM、およびtLyp1との間の様々なモル比を試験した(表1)。この目的のために、PSAをpH6の0.1M MES緩衝液に最終濃度2mg/mLで溶かし、対応する量のEDC、NHS、およびAEMも0.1M MES緩衝液に溶かし、PSA溶液に加え、室温で4時間、磁気攪拌下で維持した。マレイミド官能化PSA(PSA-Mal)を最初にNaCl 50mMに対して、次いでMilliQ水に対して透析(再生セルロース、SnakeSkin 7KDa MWCO、Thermo Scientific社)することにより精製した。第二の反応には、PSA-Malを0.1M MES緩衝液とNaCl 50mMの溶液に最終PSA濃度1mg/mLで溶かした。この溶液にペプチドを加え、反応混合物を室温で4時間、磁気攪拌下で維持し、最終PSA-tLyp1生成物を既に記載した通りに透析することによって精製し、凍結乾燥させ(Pilot Lyophilizer VirTis Genesis 25 ES)、4℃で保管した。
【0445】
【0446】
PSAナノカプセルを以下の通りに調製した。様々な比の(例えば、8kDa、26~30kDa、および94kDaの異なるMwを有する)PSAまたはPSA-tLyp1のポリマーコーティングを有するナノカプセルを溶媒置換技術により調製した。有機相は、ドセタキセル搭載ナノカプセルの場合、アセトン4.75mLと、0.75mg/mLのレシチン(Epikuron 145V、Cargill社)、0.15mg/mLの臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB、Sigma-Aldrich社)、2.96mg/mLのカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(Miglyol(登録商標)812、IOI Eleo社)、および150マイクログラム/mLのドセタキセル(Hao Rui Enterprises社)を含有するエタノール0.25mLとから構成されるものとした。水相は、0.25mg/mLのPSAまたはPSA-tLyp1溶液10mLから構成されるものとした。有機相を磁気攪拌下で水相に滴加したところ、ナノ液滴が直ちに形成され、その周囲にポリマーが沈着した。ナノカプセル形成後、回転蒸発により有機溶媒を除去した。結果を3回の反復の平均+/-SDとして表す(表2)。
【0447】
Nanoassemblr(登録商標)Benchtopマイクロ流体工学機器(Precision Nanosystems社)を用いることにより、様々な比のPSAまたはPSA-tLyp1のポリマーコーティングを有するナノカプセルを以下の通りに調製した。水相は、0.25mg/mLのPSAまたはPSA-tLyp1溶液10mLから構成されるものとした。有機相は、ドセタキセル搭載ナノカプセルの場合、Lipoid S100(Lipoid社)3.75mg塩化ベンゼトニウム(Spectrum Chemical社)0.75mg、Labrafac lipophile WL 1349(Gattefosse社)15.3mg、および無水ドセタキセル(Hao Rui Enterprises社)0.75mgを含有するエタノール1mLから構成されるものとした。簡潔に述べれば、チャネル内に設計された微視的特徴が2つの流れの迅速かつ均一な混合を制御するNanoAssemblrカートリッジの各注入口に、水相および有機相の両方を調節可能な流速で注入して、ナノカプセルを作製した。ナノカプセル形成後、回転蒸発によりエタノールを除去した。作動流速の増大がナノカプセルの大きさの減少と直接相関していた(表3、PSA NC-A~C)。結果を3回の反復の平均+/-SDとして表す(表3)。
【0448】
ナノカプセルの単離/濃縮。ナノカプセルを84035g、15℃で0.5時間超遠心分離(Optima(商標)L-90K Ultracentrifuge、Beckman Coulter社;フラートン、カリフォルニア州)することにより単離した。次いで、媒体から下澄みを除去した。ナノカプセル(上清)を収集し、既知の濃度まで希釈した。
【0449】
ナノカプセルの物理化学的特徴付け。ナノカプセルを光子相関分光法(PCS)による平均粒子径および多分散指数(PI)の観点から特徴付けた。試料をMilliQ水で希釈し、解析を角度検出173°、25℃で実施した。レーザードップラー流速測定(LDA)によりゼータ電位測定を実施し、試料をMilliQ超純水で希釈した。NanoZS(登録商標)(Malvern Instruments社、マルバーン、イギリス)を用いて、PCSおよびLDA解析を三重反復で実施した。
【0450】
ドセタキセルの結合効率(AE%)。ドセタキセルの結合効率を総ドセタキセル量の点から、封入された薬物の割合として表した。したがって、一定分量の単離ナノカプセル中に封入された薬物を求め、一定分量の非単離ナノカプセル中の総薬物量を推定した。パクリタキセルを内部標準に用いて、UPLCまたは液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC-MS)により薬物の定量化を実施した。UPLCシステムには、Acquity UPLC(登録商標)Hクラスシステム(Waters社)およびカラムコンパートメント(BEH C18カラム2.1×100mm、1.7マイクロメートル、Waters社)を含めた。実験解析条件を以下の通りとした:移動相にはMilliQ水(A)およびアセトニトリル(B)を含めた。A55%およびB45%のイソクラティックプログラムを用いた。流速を0.4mL/分とし、実行時間を3.5分とした。カラムの温度を40℃に維持し、オートサンプラーを4℃の一定温度にした。注入体積を10マイクロリットルとした。これらの条件下、DCXを1.8+/-0.02分に溶出させた。LC-MSシステムには、UPLCシステム(Acquity UPLC(登録商標)Hクラスシステム(Waters社);エレクトロスプレーイオン化(ESI)インターフェースを備えたXevo(登録商標)Triple Quadrupole Detector(TQD)(Waters社、ミルフォード、米国)と連動したカラムコンパートメント(BEH C18カラム2.1×100mm、1.7マイクロメートル、Waters社)を含めた。質量分析検出をポジティブモードで稼働させ、多重反応モニタリング(MRM)に設定して、m/z830.4~m/z304.1およびm/z830.4~m/z549.2の推移をモニターした。発生源の温度には525℃、脱溶媒和温度には150℃を選択し、キャピラリー電圧を3.1kVとし、コーン電圧を40Vとした。脱溶媒和およびコーンガスには窒素をそれぞれ流速600L/時および80L/時で使用した。衝突ガスにはアルゴンを使用した。最適化衝突エネルギーを30eVとした。実験分析条件を以下の通りとした:移動相には0.1%ギ酸水溶液(A)およびアセトニトリル(B)を含めた。0~5分にわたる80%~20%の移動相Aから開始し、次いで、5~5.5分にわたって80%のAに戻し、それを6分まで一定に維持して、初期条件に達する、直線勾配プログラムを用いた。流速を0.6mL/分とし、総実行時間を6分とした。カラムの温度を40℃に維持し、オートサンプラーを4℃の一定温度にした。注入体積を10マイクロリットルとした。これらの条件下、DCXを4.11+/-0.02分に溶出させた。TargetLynx v4.1ソフトウェア(Waters社)を用いてデータの収集および解析を実施した。
【0451】
【0452】
【0453】
PSA-tlyp1コンジュゲートの特徴付け。一部のNMR実験をVarian Inova 750分光計で実施した。化学シフトをppmで報告した。酸化ジュウテリウム:MilliQ水が10:90の混合物中、ポリマー濃度0.4~0.8mg/mLでスペクトルを記録した。
1H-NMR解析を750MHz、スキャン回数256、各スキャン間の遅延時間10秒で実施した。MestreNova Software(Mestrelab Research社)をスペクトルの処理に用いた。PSA-tLyp1スペクトル中のペプチド由来の特徴的な
1H-NMRシグナルの存在を確認することによって、PSA-tLyp1コンジュゲートの形成を確認した。さらに、PSA-tLyp1の
1H-NMRスペクトルの6.5~8.5ppmにtLyp1ペプチドのアミノ酸に由来するアミンプロトンに特徴的なシグナルの存在が観察され(
図13)、したがって、PSAとtLyp1との間の共有結合が確認された。
【0454】
実施例2
この実施例では、実施例1に記載した粒子を用いたin vivoデータを示す。PSAをtLyp1で官能化することによって、同所性肺腫瘍モデルに正の標的化効果が得られた(肺に抗腫瘍薬、ドセタキセルが大量に蓄積した)。
図2Aに示す生体内分布のデータから、ペプチドをPSAと結合させる(例えば、共有結合させる)と、未結合tLyp1を(PSAナノカプセルおよびtLyp1を例えば別個に)投与する場合、および(tLyp1のない)未修飾PSAナノカプセルを投与する場合と比較して、この標的化効果が著明にみられることがわかる。
図2Bに示す生体内分布のデータから、上記の官能化ナノカプセル(PSA-tLyp1 NC)では、24時間後に腫瘍(肺)内に蓄積したドセタキセルの量が、市販のドセタキセル、Taxotere(登録商標)で得られた量の約26倍であったことがわかる。
【0455】
実施例1に記載した液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC-MS)を用いて、組織および血漿試料中のドセタキセルの定量化を実施した。組織試料の重量を測定し、gentleMACS(商標)Dissociator(Miltenyi Biotec社)を用いて、組織1g当たり8mLの0.01M PBS中でホモジナイズした。アセトニトリルを用いて、タンパク質沈殿法により薬物抽出を実施した。これを実施するため、内部標準のパクリタキセル9ngを含有するアセトニトリル900マイクロリットルを血漿またはホモジナイズ組織の試料100マイクロリットルに加えた。次いで、この混合物を20分間ボルテックスし、20817gで5分間遠心分離し、得られた上清800マイクロリットルを収集し、40℃で蒸発(MiVac Duo Concentrator、Genevac社)させることによって乾燥させた。最後に、得られた乾燥試料を移動相100マイクロリットルに溶かし、0.22マイクロメートルの孔径(Millex-GV 4mm、Millipore社)でろ過し、LCバイアルに移した。ブランクの血漿または組織にドセタキセル標準溶液を添加することにより、較正標準物質も同様に作製した。これらの条件下、内部標準のパクリタキセルを4.17+/-0.01分に溶出させ、854.6~286および854.6~569の推移をモニターした。TargetLynx v4.1ソフトウェア(Waters社)を用いて、データの収集および解析を実施した。
【0456】
この実施例では、PDX(患者由来移植)膵癌マウスモデルでtLyp1官能化PSAナノカプセルの効果を市販製剤、Abraxane(登録商標)(パクリタキセル)の効果と比較した。
図3の結果から、tLyp1官能化PSAナノカプセル(比2)の方がAbraxane(登録商標)よりも効果が高かったことがわかる。腫瘍の成長が有意に低下し、マウスの生存期間が有意に長くなった(42日対56日)。さらに、ナノカプセルは、健常マウスの体重減少からみたin vivo毒性(
図4)および血液毒性が低かった。
【0457】
図2に、等しいドセタキセル用量7.5mg/kgのTaxotere(登録商標)(市販のドセタキセル)、PSA NC、PSA-tLyp1 NC、およびtLyp1+PSA NCのIV投与から1時間後(
図2A)および24時間後(
図2B)のドセタキセルの蓄積を示す。データは5回の反復の平均+/-標準偏差(SD)で示されている。処置間の有意差(
*)p<0.01。
【0458】
図3に、Abraxane(登録商標)(パクリタキセル用量150mg/Kg)およびドセタキセル搭載tLyp1-PSAナノカプセル(ドセタキセル用量60mg/kg)のIV投与後の相対腫瘍体積を示す。いずれのデータも5回の反復の平均+/-標準誤差(SEM)で示されている。マウスは、疾患状態の進行を理由に、第42日(対照およびAbraxane(登録商標)処置)または第56日に死亡するか、屠殺した。
【0459】
図4に、等しい総ドセタキセル用量75mg/kgのtLyp1-PSAナノカプセルで処置したマウスの体重変化を示す。いずれのデータも5回の反復の平均+/-標準偏差(SD)で示されている。
【0460】
実施例3
tLyp1に加えて、その他の標的化ペプチドおよび/または組織浸透性ペプチド、例えばCendRペプチド(例えば、cLyp1およびiRGD)などをポリマー鎖、例えばPSAと結合させ得る。
【0461】
PSA-tLyp1に用いたのとほぼ同じ化学的戦略を用いて、cLyp1をPSAと共有結合させた。最初に、PSAをN-(2-アミノエチル)マレイミドトリフルオロ酢酸塩で修飾した。PSAのカルボン酸基とEDC、NHS、AEM、およびペプチド(cLyp1)との間のモル比を変えて試験した(表4)。この目的のために、PSAをpH6の0.1M MES緩衝液に最終濃度2mg/mLで溶かし、対応する量のEDC、NHS、およびAEMも0.1M MES緩衝液に溶かし、PSA溶液に加え、室温で4時間、磁気攪拌下で維持した。マレイミド官能化PSA(PSA-Mal)を最初にNaCl 50mMに対して、次いでMilliQ水に対して、実施例1に記載した通りに透析することにより精製した。第二の段階では、PSA-Malを0.1M MES緩衝液とNaCl 50mMの溶液にPSA濃度1mg/mLで溶かした。この溶液に、システイン2および10にアセトアミドメチル保護基があり、システイン1に保護基がない直鎖型のペプチド、(H-CC(Acm)GNKRTRGC(Acm)-OH)を加え、反応混合物を室温で24時間、磁気攪拌下で維持した。保護された直鎖型のペプチドで修飾したPSAを上記の同じ条件で透析することにより精製した。最終的な環状型のペプチドを得るため、1MのHCl 1mLをPSA-ペプチド溶液に加えることによってペプチドのシステイン2および10の脱保護を実施し、次に、ペプチドに対して1モル当量のI2(メタノール中5.10-3M)を含有するヨウ素のメタノール溶液(Sigma-Aldrich社)を磁気攪拌下で1時間、コンジュゲートに加えてシステイン酸化反応を実施し、次いで、この溶液に水中1Mのアスコルビン酸(Panreac社)を1滴加えて、過剰であると考えられる媒体由来のI2を中和した。最終PSA-cLyp1生成物を既に実施例1に記載した通りに透析によって精製し、凍結乾燥させ、4℃で保管した。
【0462】
PSA-cLyp1コンジュゲートの特徴付けを1H-NMRにより実施した。
【0463】
【0464】
自己乳化技術によるPSA-cLyp1およびPSA-tLyp1を用いたナノカプセルの調製。簡潔に述べれば、Labrafac lipophile WL1349(Gattefosse社)118mg、ポリソルベート80(Tween 80、Merck社)116mg、Macrogol 15 Hydroxystearate(Kolliphor HS15(登録商標)、BASF社)5mg、塩化ベンゼトニウム(Spectrum Chemical社)0.4mg、ドセタキセル無水物(Hao Rui Enterprises社)2mg、およびエタノール50マイクロリットルを含有する磁気攪拌下の有機相に、PSA-cLyp1 5.95mgを含有する水相1.75mLを加えた。
【0465】
上記の実施例1の方法に従い、ナノカプセルを平均粒子径、多分散指数(PI)、およびゼータ電位の観点から特徴付けた。一定分量の非単離ナノカプセル中の総ドセタキセル含有量を推定した。既に実施例1に記載した方法に従い、薬物の定量化をUPLCにより実施した。結果を3回の反復の平均+/-SDとして表す(表5)。
【0466】
【0467】
in vivo効果に関する予備試験。マウス(n=3~4個体/グループ)の転移性同所性肺癌モデル(A549細胞)で、cLyp1官能化およびtLyp1官能化PSAナノカプセル(5mg/kgドセタキセル)の効果を市販製剤のAbraxane(登録商標)(パクリタキセル、15mg/kg)およびTaxotere(登録商標)(ドセタキセル、5mg/kg)のものと比較した。
図5に、様々な処置(TAXO、taxotere;ABRAX、Abraxane(登録商標);A、PSA-tLyp1ナノカプセル 比30;B、PSA-cLyp1 比20;C19、第19日の未処置対照;C37、第37日の未処置対照)の後の(i)肺(
図5A)および(ii)縦隔リンパ節(
図5B)におけるex vivoのルシフェラーゼ活性の定量化を示す。
【0468】
図5の結果から、官能化製剤では2種類とも、肺および縦隔(転移)リンパ節における腫瘍細胞の減少の点で応答が類似していることがわかる。興味深いことに、官能化ナノカプセルの方がAbraxane(登録商標)およびTaxotere(登録商標)よりも転移を抑える効果が高かった。さらに、体重減少、血液像、および重要な臓器の組織病理の解析では、ナノカプセルに毒性の徴候は全くみられなかった(データ不掲載)。
【0469】
実施例4
この実施例では、ナノカプセルのバッチ生産量を増大できる可能性を示し、拡張可能な技術を確立する。したがって、例えば、さらに大きなPSAナノカプセルのバッチを溶媒置換により10倍規模(110mLのバッチ)で調製した。
【0470】
有機相には、ホスファチジルコリン(Lipoid S100、Lipoid社)37.5mg、塩化ベンゼトニウム(Spectrum Chemical社)7.5mg、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(Labrafac Lipophile WL 1349、Gattefosse社)152.8mg、およびドセタキセル無水物(Hao Rui Enterprises社)7.5mgを含有するエタノール10mLを含めた。水相は、0.25mg/mLのPSA溶液100mLから構成されるものとした。上部取付型プロペラ攪拌機(Ika RW 20デジタル)に4枚羽のプロペラ(10M/M-P15)を700rpmで用いて水相を維持し、蠕動ポンプ(Minipuls 3、Gilson社)を25rpmで用いて、有機相を蠕動ポンプ管(1.6×4.8×1.6白金硬化シリコーン、Freudemberg社)から水相に注入した。ナノカプセル形成後、回転蒸発により有機溶媒を除去した。
【0471】
上記の方法に従い、超遠心分離による単離/濃縮の後、ナノカプセルを平均粒子径、多分散指数(PI)、およびゼータ電位の観点から特徴付けた。既に実施例1でAE%について記載した方法に従い、薬物の定量化をUPLCにより実施した。3回の独立した反復に対応する結果を表6に示す。
【0472】
【0473】
さらに、超遠心分離の代替法としてタンジェンシャルフローろ過により単離/濃縮を評価した。タンジェンシャルフローろ過は、回転蒸発段階を理想的に省くことができる拡張可能な方法である。したがって、Sartoflow Smart Crossflow System(Sartorius社)を用いてクロスフロー試験を実施した。これらの試験では、体積1Lのドセタキセル含有PSAナノカプセル(回転蒸発していない110mLの個々のバッチを10バッチプールしたもの)をカセットHydrosart 100kDaで少なくとも20倍に濃縮することに成功した。平均流速(LMH)は120.6L/hm2であった。単離時間、濃縮倍数、最終ドセタキセル濃度、およびドセタキセル結合効率(ろ液中で測定した間接的AE%)の3回の反復の結果を表7に示す。
【0474】
【0475】
自己乳化技術を用いて、バッチ生産量の増大も評価した(バッチサイズ100mL)。これには、上部取付型プロペラ攪拌機(IKA RW 20デジタル)に4枚羽のプロペラ(10M/M-P15)を1000rpmで用いて、Labrafac Lipophile WL1349(Gattefosse社)5900mg、ポリソルベート80(Tween 80、Merck社)5800mg、Macrogol 15 Hydroxystearate(Kolliphor HS15(登録商標)250mg、BASF社)、塩化ベンゼトニウム(Spectrum Chemical社)20mg、ドセタキセル無水物(Hao Rui Enterprises社)100mg、およびエタノール500uLを含む有機相に、ポリマー297.5gおよび水87.5gを含有する水相を加えた。
【0476】
上記の実施例1の方法に従い、ナノカプセルを平均粒子径、多分散指数(PI)、およびゼータ電位の観点から特徴付けた。一定分量の非単離ナノカプセル中の総ドセタキセル含有量/濃度を推定した。既に実施例1に記載した方法に従い、薬物の定量化をUPLCにより実施した。3回の反復(PSAナノカプセル)および1回の反復(PSA-tLyp1 NC 比10および比20)に対応する結果を表8に示す。
【0477】
【0478】
100mLの10バッチからなる1つのプールの単離/濃縮に関するタンジェンシャルフローろ過(Sartoflow Smart Crossflow System、Sartorius社)による予備試験を既に記載した条件に従って実施した。一定分量の単離ナノカプセル(残余分)中の総ドセタキセル含有量/濃度を推定したのに対して、AE%は2つの異なる方法で、すなわち、(i)直接的に(残余分の解析)、および(ii)間接的に(ろ液の解析)求めた。既に実施例1に記載した方法に従い、薬物の定量化をUPLCにより実施した。結果を表9に示す。
【0479】
【0480】
実施例5
この実施例では、他の脂溶性小分子、例えば、抗癌剤のパクリタキセル(856.903g/mol;LogP3.2;Teva社)およびパツピロン(507.686g/mol;LogP3.7;Sigma-Aldrich社)と結合するPSAナノカプセルの製剤を説明する。
【0481】
以下のように、Nanoassemblr(登録商標)Benchtopマイクロ流体工学機器(Precision Nanosystems社)を用いることによってパクリタキセル搭載PSAナノカプセルを調製した。水相は、0.25mg/mLのPSA溶液に10mLから構成されるものとした。有機相は、Lipoid S100(Lipoid社)3.75mg、塩化ベンゼトニウム(Spectrum Chemical社)0.75mg、Labrafac Lipophile WL 1349(Gattefosse社)15.3mg、およびパクリタキセル(Teva社)0.75mgを含有するエタノール1mLから構成されるものとした。簡潔に述べれば、水相および有機相の両方をNanoAssemblrカートリッジの各注入口に総流速8mL/分で注入した。ナノカプセル形成後、回転蒸発によりエタノールを除去した。
【0482】
上の条件を用い、パクリタキセルだけパツピロン0.75mgに置き換えて、Nanoassemblr(登録商標)Benchtopマイクロ流体工学機器(Precision Nanosystems社)を用いることにより、パツピロン搭載PSAナノカプセルも調製した。
【0483】
上記の実施例1の方法に従い、超遠心分離によりナノカプセルを単離/濃縮後の平均粒子径、多分散指数(PI)、およびゼータ電位の観点から特徴付けた。AE%を求める薬物の定量化を2つの異なる解析法により実施し、簡潔に述べれば:
(i)パクリタキセル:薬物の定量化をUPLCにより実施した。UPLCシステムには、Acquity UPLC(登録商標)Hクラスシステム(Waters社)およびカラムコンパートメント(BEH C18カラム、2.1×100mm、1.7マイクロメートル、Waters社)を含めた。実験解析条件を以下の通りとした:移動相には、MilliQ水(A)およびアセトニトリル(B)を含めた。A55%およびB45%のイソクラティックプログラムを用いた。流速を0.6mL/分とし、実行時間を4分とした。カラムの温度を40℃に維持し、オートサンプラーを4℃の一定温度にした。注入体積を10マイクロリットルとした。これらの条件下、パクリタキセルを1.3分に溶出させた。
(ii)パツピロン;薬物の定量化をHPLCにより実施した。HPLCシステムには、VWR Hitachi ELITE LaChrom(日立社)およびカラムコンパートメントACE Equivalence逆相C18(5マイクロメートル×250mm×4.6mm)を含めた。実験解析条件を以下の通りとした:移動相には、0.1%のギ酸で酸性化したMilliQ水(A)およびアセトニトリル(B)を含めた。A80%およびB20%のイソクラティックプログラムを用いた。流速を1ml/分とし、実行時間を7.0分とした。カラムの温度を30℃に維持した。注入体積を50マイクロリットルとした。検出波長を248nmに設定した。これらの条件下、パツピロンを3.55分に溶出させた。
【0484】
パクリタキセル製剤およびパツピロン製剤の両方の3回の反復に対応する結果を表10に示す。
【0485】
【0486】
実施例6
C
12官能化PSAの調製に関する1つの例に以下のものがある。ここではC
12(ドデシル)を使用するが、他の実験ではこれ以外のアルキル基も同様に使用し得る。
図5を参照すると、PSAナトリウム塩(30kDa)をDowex、次いで、水酸化テトラブチルアンモニウムで処理した。限外ろ過による濃縮/精製および濃縮物の凍結乾燥の後、DMFに易溶性のPSAテトラブチルアンモニウム塩が得られた。
【0487】
次いで、この酸を2-ブロモ-1-エチルピリジニウムテトラフルオロホウ酸で活性化し、次いでドデシルアミンと反応させた。沈殿により生成物を単離した後、テトラブチルアンモニウム陽イオンをナトリウム陽イオンにより置換した。限外ろ過による濃縮/精製および濃縮物の凍結乾燥により、目的のドデシルアミド官能化PSAナトリウム塩を得た。1H-NMRによる解析で構造および4%の範囲内の置換度を確認した。
【0488】
数回の試験反応を実施して、2-ブロモ-1-エチルピリジニウムテトラフルオロホウ酸の量をさらに最適化した。5%の2-ブロモ-1-エチルピリジニウムテトラフルオロホウ酸を用いた最初の試験では、ポリマー内へのドデシルアミンの取込みが極めて低い(1%未満)となった。1当量の2-ブロモ-1-エチルピリジニウムテトラフルオロホウ酸を用いた実験では、水に溶けにくい生成物が得られた。30%の2-ブロモ-1-エチルピリジニウムテトラフルオロホウ酸を用いたところ、4%の範囲内の置換度が得られた。次いで、この反応を官能化ポリマー1グラムまでスケールアップした。
【0489】
限外ろ過。限外ろ過を用いて、PSAテトラブチルアンモニウム塩および誘導体化PSAを濃縮(および脱塩)した。Cassette(Pall社)10K Omega centramate Tシリーズ0.019m2(部品番号OS010T02、シリアル番号36049076R、膜ロット番号H5257E)を使用するPall社製のMinim II Tangential Flow Filtration(TFF)Systemを用いて、限外ろ過を実施した。ダイアフィルトレーションでは、リザーバー内に継続的に水を供給し、透過流が外に出る。塩および低分子量の不純物が膜を透過し、このため、PSA溶液から除去された。
【0490】
PSAテトラブチルアンモニウム塩(2)。PSAナトリウム塩(1g)を純水(100mL)に溶かし、Dowex 50WX8(200-400、H+型;水、次いでメタノール、次いで水で新たに洗浄したもの)(20mL)とともに30分間攪拌し、樹脂をろ過除去し、脱イオン水で洗浄した。溶液のpHは4未満であった。溶液をpHが約12になるまで水酸化テトラブチルアンモニウム(40重量%水溶液)で処理した。この手順全体を2回反復し、次いで、CO2のバブリング、次いでN2のバブリングにより最終pHを7.5~8に調整した。
【0491】
限外ろ過。PSAテトラブチルアンモニウム塩の溶液をリザーバー(400mL)に入れ、溶液を体積100mLまで濃縮した。ダイアフィルトレーションでは、リザーバー(300mL)内に継続的に水を供給した。透過流量を12mL/分とした。ダイアフィルトレーション終了時、溶液を最小限の体積までさらに濃縮し、リザーバーから取り出した。ダイアフィルトレーション時の膜間圧を0.6bar、P1=1.2barとした。濃縮物を凍結乾燥させて、表題化合物(1.6g)を白色の固体として得た。
【0492】
ドデシルアミド官能化PSAテトラブチルアンモニウム塩(3)。PSAテトラブチルアンモニウム塩2(1.3g、2.43mmol当量)のDMF(30mL)溶液に室温、N2下で2-ブロモ-1-エチルピリジニウムテトラフルオロホウ酸(233mg、0.85mmol、0.35当量)のDMF(1mL)溶液を加え、溶液を1時間攪拌した。1-アミノドデカン(270mg、1.46mmol)とEt3N(0.576mL、4.13mmol)のDMF(1mL)溶液を反応に加え、混合物を40時間攪拌した。反応混合物をEt2O(150mL)とアセトン(15mL)の溶液に滴加した。沈殿をろ過により収集し、Et2Oで洗浄し、減圧下で乾燥させた。
【0493】
ドデシルアミド官能化PSAナトリウム塩。白色の沈殿を脱イオン水(100mL)に溶かし、溶液をDowex 50WX8(200-400、H+型;水、次いでメタノール、次いで水で新たに洗浄したもの)(20mL)とともに30分間攪拌し、樹脂をろ過除去し、脱イオン水で洗浄した。溶液のpHは4未満であった。溶液をpHが12になるまで水酸化ナトリウム水溶液(1M)で処理した。この手順全体を2回反復し、次いで、CO2のバブリング、次いでN2のバブリングにより最終pHを7.5~8に調整した。
【0494】
限外ろ過。誘導体化PSAナトリウム塩の溶液をリザーバー(500mL)に入れ、溶液を体積100mLまで濃縮した。ダイアフィルトレーションでは、リザーバー(500mL)内に継続的に水を供給した。透過流量を10.4mL/分とした。ダイアフィルトレーション終了時、溶液を最小限の体積までさらに濃縮し、リザーバーから取り出した。ダイアフィルトレーション時の膜間圧を0.6~0.7bar(P1=1.2~1.3bar)とした。
【0495】
濃縮物を凍結乾燥させて、ドデシルアミド官能化PSAナトリウム塩4(800mg)を白色の固体として得た。1H-NMRにより、置換度が約4%であることがわかった。
【0496】
実施例7
二官能化ポリマーを以下の通りに調製したが、他の実験ではこれ以外のアルキル基および標的化ペプチドも同様に使用し得る。C16-HA-tLyp-1の調製には、市販のC16-HAを出発物質(Mw 55kDa、置換度S.D.7%、Contipro社)として使用し、tLyp1をHA主鎖のカルボキシラート基と化学的に結合させた。HAのカルボキシラート基に対するEDC:NHS:AEM:tLyp1のモル比1:2.16:0.36:0.072:0.0326(比4)を用いた。最初に、C16-HAをN-(2-アミノエチル)マレイミドトリフルオロ酢酸塩で修飾した。この目的のために、C16-HAをpH6の0.1M MES緩衝液に最終濃度2mg/mLで溶かし、対応する量のEDC、NHS、およびAEMも0.1M MES緩衝液に溶かし、C16-HA溶液に加え、室温で4時間、磁気攪拌下で維持した。得られた生成物を実施例1でPSA-tLyp1について記載した通りに透析によって精製した。第二の段階では、C16-HA-Malを0.1M MES緩衝液とNaCl 50mMの溶液に濃度1mg/mLで溶かした。次いで、この溶液にtLyp1を加え、反応混合物を室温で24時間、磁気攪拌下で維持した。最終生成物を既に記載した通りに透析によって精製し、凍結乾燥させた。
【0497】
このコンジュゲートの特徴付けを1H-NMRにより実施した。
【0498】
実施例8
この実施例では、モノクローナル抗体(mAb)の効率的な結合および送達のための様々なポリマーナノカプセルの製剤を説明する。非限定的な例として、生分解性のポリ酸またはポリアミドによってポリマー形成殻を作製することができ、これを標的化リガンドおよび/または腫瘍/組織浸透性リガンド、例えばtLyp-1でさらに官能化することができる。PSA(8kDa、30kDa、または94kDa、Serum Institute of India社)、またはPSA-tLyp1 比20、またはC12-PSA(実施例6)、またはHA(330kDa、Lehvoss Iberica社)、またはC16-HA(様々なMwおよびアルキル置換度:55kDa-S.D.7%;216kDa-S.D5%;216kDa-S.D.11%、Contipro社)、またはC16-HA-tLyp1(実施例7)、またはポリグルタミン酸(PGA、11.9KDa、Polypeptide Therapeutic Solutions社)、またはPGA-PEG(PGA 6.68KDa/PEG 5KDa、Polypeptide Therapeutic Solutions社)、またはポリアミドポリアスパラギン酸(PASP、ポリ-L-アスパラギン酸、200単位、平均Mw 27kDa、Alamanda Polymers社)、またはPASP-PEG(メトキシ-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(L-アスパラギン酸ナトリウム塩、mPEG5K-b-PLD200、平均MW 32kDa、Alamanda Polymers社)のポリマーコーティングを有するナノカプセルを自己乳化技術により調製した。
【0499】
(抗体のない)ブランクナノカプセルの調製。最初に、ポリソルベート80(Tween 80(登録商標)、Merck社)59mgおよび58mg カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(Mygliol(登録商標)812N、IOI Oleochemical社)を秤量して容量2mLのガラスバイアルに入れた(油相)。次いで、非疎水性に修飾したポリマーまたは非両親媒性ポリマーを殻として含む製剤では、油相(予めエタノール中で可溶化させたベンゼトニウム4マイクロリットル、50mg/mL)に陽イオン界面活性剤を加えた。油相の全成分を磁気攪拌(500rpm)下で維持した。これと並行して、各ポリマーを様々な濃度(例えば、PSA系製剤は3mg/mL、HA系製剤は0.25mg/mL、PGAは3mg/mL、PGA-PEGは6mg/mL、PASPは3mg/mL、PASP-PEGは6mg/mL)で25mM、pH7.3のPBS中で別個に可溶化させることにより水相を調製し、Macrogol 15 Hydroxystearate(Kolliphor HS15(登録商標)、BASF社)も25mM、pH7.3のPBS中、濃度20mg/mLで可溶化させた。そののち、ポリマー溶液0.75mLとKolliphor溶液125マイクロリットルとを適宜混合し、この水相を磁気攪拌(1100rpm)下で油相に加えた。
【0500】
mAbの結合。2つの異なる方法を用いた:
(i)1段階法:所望の最終mAb濃度(一例として0.5mg/mL)を得るのに必要な濃度のmAb溶液を必要な体積だけ水相に加えた後、油相と混合した。1段階法によりナノカプセルと結合させるmAbは、抗PD-L1 mAb(ラット抗マウスIgG2a、BioXcell(登録商標))およびベバシズマブ(ヒト化IgG1、Selleck Chemicals社)とした。
(ii)2段階法:予め形成したナノカプセルに所望の濃度(一例として1mg/mL)のmAbを含有する溶液を回転攪拌(550rpm)下で加えて、最終mAb濃度、例えば0.5mg/mLにした。mAbを室温で4時間、ナノカプセルとインキュベートした。2段階法によりナノカプセルと結合させるmAbの非限定的な例として、抗PD-L1 mAb(ラット抗マウスIgG2a、BioXcell(登録商標))がある(表14)。
【0501】
上記の方法に従い、ナノカプセルを平均粒子径、多分散指数(PI)、およびゼータ電位の観点から特徴付けた。3つの反復に対応する結果を表13(1段階法、抗PD-L1)、表14(2段階法、抗PD-L1)、および表16(1段階法、ベバシズマブ)に示す。
【0502】
モノクローナル抗体の結合効率。mAbのナノカプセルとの結合を判定するため、異なるそれぞれの製剤1mL量を1barの窒素圧下、4℃にてAmicon Stirred Cells(登録商標)(ポリエーテルスルホンBiomax(登録商標)500KDa Ultrafiltration Discs、Merck社)でろ過した。この単離工程の後、遊離mAbを含有するろ液を採取し、対応するELISAアッセイにより解析した。結合効率を(総mAb-遊離mAb)/総mAb×100として間接的に算出した。結果を表11(1段階法、抗PD-L1)、表14(2段階法、抗PD-L1)、および表16(1段階法、ベバシズマブ)に示す。
【0503】
室温(RT)での希釈時の漏出しやすさに関する試験。mAbが強固にナノ構造内に封入されるかどうかを評価するため、mAb結合効率について上に記載した方法に従い、RTでpH7.3のPBS(25mM)で希釈(1:2->1:16)したときのmAb結合を評価した。異なるmAb結合方法で得られた結果を1段階の製剤化については表12および表16に、2段階の製剤化については表15に示す。
【0504】
in vitro放出試験。mAb搭載ナノカプセルをpH7.3のPBS(25mM)中、37℃でインキュベートした(1:10希釈)。所定の時間(1時間および2時間)に、上記の方法に従って試料を採取し、ろ過して、放出されたmAbをELISAにより定量化した(表13、1段階法、抗PD-L1)。
【0505】
表11~16から、様々なmAbに適した物理化学的特性および高い結合効率を示す様々なポリマーナノカプセルの製剤化が可能であることがわかる。mAbの結合は、例えば、上で説明した1段階法および2段階法によって実施できるが、実施した希釈時のmAbの漏出しやすさに関する試験から推定できるように、1段階法の方がナノ構造内へのmAbの封入に優れている(1段階については表12;2段階については表15)。
【0506】
【0507】
【0508】
【0509】
【0510】
【0511】
【0512】
(mAbのない)様々な空ブランクポリマーナノカプセルの細胞毒性。クリスタルバイオレットアッセイを細胞生存能の指標に用いて細胞毒性を明らかにした。96ウェル組織培養プレートに播種したMDA-MB-231細胞と、(様々な濃度で)分散させた上記の製剤とを細胞培地で2時間、共インキュベートした後、細胞生存能を評価した。
図7にみられるように、いずれの場合も、6mg/mLまでの濃度で細胞生存能が80%を超えていた。
【0513】
mAb搭載ポリマーナノカプセルの形態学的解析。mAb(ベバシズマブ)搭載ナノカプセルの形態学的解析を透過型電子顕微鏡(TEM、CM12、Philips社、オランダ)で実施した。TEM観察には、試料をリンタングステン酸(2%、w/v)溶液で染色し、Formvard(登録商標)を張った銅グリッド上に置いた。ベバシズマブ(最終濃度3mg/mL)を含有するPSAナノカプセル(A)およびHA 216 SD5%(B)のTEM写真を
図8に示す(大きさを示すバーは、
図8Aおよび8Cが1マイクロメートル、
図8Bおよび8Dが200nm)。
【0514】
凍結乾燥試験。さらに、mAb含有ナノカプセル懸濁液を長期保管用に粉末に加工できるかどうかを評価するため、凍結乾燥試験を実施した。非限定的な例として、上で説明した1段階法により様々なベバシズマブ搭載ポリマーナノカプセルを調製し、ナノカプセル懸濁液にトレハロースとマンニトールの濃縮溶液を加えた(最終濃度、トレハロース5%w/vおよびマンニトール2.5%w/v)後、凍結乾燥させた(約50時間のサイクル;Pilot Lyophilizer VirTis Genesys 25 ES)。4℃で4か月間保管した凍結乾燥ナノカプセルの安定性を、粒子径、PI、pH、ゼータ電位、および総mAb含有量を(ELISAにより)測定することによって解析し、最初(凍結乾燥前)の値と比較した。測定は上に記載したものと同じ方法で実施した。3回の反復に対応する結果を表17に示し、この表では、4か月間保管した後、物理化学的特性に有意な変化はなかったのに対して、総mAbパーセントは約80~90%であったことがわかる。
【0515】
【0516】
実施例9
この実施例では、モノクローナル抗体(mAb)の効率的な結合および送達のための代替ポリマーナノカプセルの製剤を説明する。ポリマー形成殻をペグ化ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA-PEGまたはPLG-PEG)またはペグ化ポリ乳酸(PLA-PEG)などの生分解性非水溶性ポリマーによって作製でき、これを標的化リガンドおよび/または腫瘍/組織浸透性リガンド、例えばtLyp-1でさらに官能化することができる。
【0517】
PLA-PEGのポリマーコーティングを有するナノカプセルを溶媒置換法によって調製し、1段階法によって抗体を結合させた。5mLバッチの調製について簡潔に述べれば、
(1)油相の調製:ポリソルベート80(Tween 80(登録商標)、Merck社)290mgおよびMygliol(登録商標)812N(IOI Oleochemical社)295mgを秤量して25mLのガラスバイアルに入れ、磁気攪拌(500rpm)下で混合した。PLA-PEGポリマーをアセトン12.5mLで可溶化し、先の溶液に加え、磁気攪拌(500rpm)下で維持した;
(2)水相の調製:Kolliphor HS15(登録商標)の溶液(pH7.3、25mMのPBS中20mg/mL)625マイクロリットルを容量100mLのガラスバイアル、対応する量のmAbを含有するpH7.3、25mMのPBS 4.4mLおよび水25mLと混合した。
【0518】
次いで、20mLシリンジ(120×40mm針)を用いて油相を磁気攪拌(1250rpm)下で水相に加えたところ、ナノ液滴が直ちに形成され、その周囲にポリマーが沈着した。最終NC懸濁液を5mLに達するまで回転蒸発させた。上記の方法に従い、ナノカプセルを平均粒子径、多分散指数(PI)、ゼータ電位、および1:16希釈での結合の観点から特徴付けた。3回の反復に対応する結果を表18に示す。
【0519】
【0520】
実施例10
ナノ担体の主な制約の1つに、臨床に転換できる用量での薬物の結合効率および搭載能力が低いということがある。このため、mAbモデルとしてベバシズマブ(Selleck Chemicals社)について、抗体濃度が例えばPSAナノカプセルの物理化学的特性ならびにそのmAb結合効率および封入に及ぼす影響を評価した。mAb結合に用いる方法は1段階法とした。
【0521】
上記の方法(実施例8)に従い、ナノカプセルを平均粒子径、多分散指数(PI)、ゼータ電位、結合効率、および1:16希釈での結合の観点から特徴付けた。3回の反復に対応する結果を表19に示す。
【0522】
ナノカプセルの特性に有意な影響を及ぼさず、70%という高い結合効率を維持しながら、少なくとも5mg/mLの最終ベバシズマブ濃度が達成され、これは、mAb搭載含有量約3%(mAb搭載含有量=結合したmAbの重量/ナノカプセル成分の総重量)に相当する。
【0523】
【0524】
実施例11
多くの場合、ナノ担体で効果が得られないのは、それが複雑な培地中で凝集した結果であり、このことは、生物学的培地のイオン強度が高いこと、および/または生物学的培地中にタンパク質が存在することに起因するものと思われる。このため、mAbの非経口投与の可能性の指標として、様々なmAb搭載ポリマーナノカプセルの血漿中での安定性を検討した。
【0525】
血漿中での安定性。実施例8の1段階法により調製したベバシズマブ搭載ナノカプセルをマウス血漿(1:10希釈、37℃)中、水平振盪(300rpm、Heidolph Instruments社)下でインキュベートした。所定の時間に、インキュベーション環境の試料を採取し、Malvern Zeta-Sizerによる粒子径の解析ならびにNanoparticle Tracking Analysis(NTA)による大きさおよび大きさ分布の解析に供した。試料を適宜さらに希釈した(NTAにはpH7.4、10mMのPBSで1:10.000;DLSには水で1:1000)後、解析した。
【0526】
DLSによって測定した様々なmAb搭載ポリマーナノカプセルの安定性を
図9に示す(
図9A:C16-HA系ナノカプセル;
図9B:PSA系ナノカプセル)。結果は3回の反復の平均である。
【0527】
NTAによって測定した様々なmAb搭載ポリマーナノカプセルの安定性を
図10に示す(
図10A:C16-HA系ナノカプセル;
図10B:PSA系ナノカプセル;
図10C:PGA系ナノカプセルおよびPLAナノカプセル;n=1)。
【0528】
いずれのmAb搭載ナノカプセルも少なくとも24時間は血漿などの複雑な培地中で十分な安定性を示し、このことは、対象に非経口投与するのに重要な利点である。
【0529】
実施例12
この実施例では、様々なポリマーナノカプセルがin vitroで細胞と相互作用し、さらに、結合した抗体の細胞内部移行誘発できることを示す。この試験を実施するため、蛍光抗体モデル(FITC-IgG、純度98%超、Elabsciences社)と結合する様々なナノカプセルを実施例8で説明した通りに、1段階法により調製し、大きさ、PI、およびゼータ電位の観点から特徴付けた(表20)。
【0530】
【0531】
最初に、フローサイトメーターによる試験を実施して、ナノカプセルが細胞と相互作用できるかどうかを明らかにした。様々なポリマーナノカプセル(最終濃度がナノカプセル7mg/mL、IgG-FITC 105マイクログラム/mLになるよう細胞培地で希釈)を培養MBD-MB-231細胞(66,500個/ウェル)に加え、37℃(37℃、5%CO
2の加湿恒温器)でインキュベートしながら2時間放置した。インキュベーション後、細胞をPBSで穏やかに2回洗浄し、次いで、トリプシン処理して、フローサイトメトリー解析を実施した。様々なポリマーナノカプセルと2時間インキュベートした後の陽性細胞のパーセントを3回の反復について
図11に示す。陽性細胞のパーセントは、いずれのFITC-IgG搭載ナノカプセルも約40~55%であり、このことは、短時間(2時間)で細胞と相互作用するというナノカプセルの優れた能力を示している。
【0532】
次に、より進歩したイメージングフローサイトメーター(ImageStream(登録商標))でさらに試験を実施して、ナノカプセルが、結合した抗体の効果的な細胞内部への移行を誘発できるかどうかを明らかにした。簡潔に述べれば、試験する時点(例えば、0分、30分、2時間、4時間、6時間、および24時間)毎に別個のウェルを用いて、FITC-IgG搭載ナノカプセルを6ウェルプレートでA549細胞(1ウェル当たり6mg/mLのナノカプセルを含むDMEM 1mL)とインキュベートした。所定の各時点で、細胞をトリプシン処理し、ImageStream(登録商標)装置で画像を取得して、ナノカプセルの陽性細胞のパーセント(
図12A)および対応するFITC-IgG内部移行スコア(
図12B)を求めた。生細胞の蛍光マーカー、Lysotracker(登録商標)で細胞質酸性オルガネラを標識し、さらに共焦点顕微鏡法により確認することによって、効果的な内部移行を判定した(データ不掲載)。
【0533】
図12にみられるように、FITC-IgG搭載PSA、PSA-tLyp1、およびC16-HA216 SD5%ナノカプセルは、結合した抗体モデルの細胞内部への効果的な移行を時間依存性に陽性細胞100%まで誘発した。
【0534】
したがって、この実施例は、ポリマーナノカプセルが、結合したmAbの細胞内部移行を促進する可能性があることを示している。
【0535】
実施例13
この実施例では、性質および大きさが大きく異なる2つの活性物質を同じナノカプセル内で結合できる可能性を示す。非限定的な例として、mAbベバシズマブ(水溶性高分子)およびパクリタキセル(脂溶性小分子)の両方を用いて、自己乳化技術によりC16-HA 216 SD5%、C16-HA 55 SD7%-tlypナノカプセル、およびPSAナノカプセルを製剤化した。
【0536】
簡潔に述べれば、ポリソルベート80(Tween 80(登録商標)、Merck社)290mg、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(Labrafac Lipophile WL 1349(登録商標)、Gattefose社)295mg、Kolliphor HS15(BASF社)12.5mg、およびパクリタキセル5mgを秤量してガラスバイアルに入れ、全成分を700rpmの磁気攪拌下で攪拌して、それらを完全に混合し、可溶化することによって油相を調製した。PSAナノカプセルの場合、既に実施例8で非両親媒性ポリマーについて報告した通りに、油相にさらに塩化ベンゼトニウムを含ませた。
【0537】
これと並行して、ポリマーをpH7.3のPBS(25mM)中で別個に可溶化し(C16-HA系ナノカプセルは0.25mg/ml、PSAナノカプセルは3mg/mL)、製剤の最終濃度が0.5mg/mlになるよう対応する量のベバシズマブを加えることによって水相を調製した。そののち、水相4.415mLを磁気攪拌(1250rpm、10分)下で油相(597.5mg)に加えた。
【0538】
薬物の定量化をHPLCにより実施した。HPLCシステムには、VWR Hitachi ELITE LaChrom(日立社、東京、日本)およびカラムコンパートメントACE Equivalence逆相C-18(5マイクロメートル×250mm×4.6mm;Aberdeen社、スコットランド)を含めた。実験解析条件を以下の通りとした:移動相にはMilliQ水(A)およびアセトニトリル(B)を含めた。0.1%のトリフルオロ酢酸で酸性化したA40%およびB60%のイソクラティックプログラムを用いた。流速を1.5ml/分とし、実行時間を10.0分とした。カラムの温度を30℃に維持し、注入体積を25マイクロリットルとし、UV検出器を227nmとした。これらの条件下、PCXを4.21+/-0.02分に溶出させた。
【0539】
既にmAb搭載ナノカプセルについて記載した(実施例8)ものと同じ方法で、大きさ、PDI、ゼータ電位、および結合したmAbの測定を実施した。非単離ナノカプセル試料中のmAbおよびパリタキセル(palitaxel)の総量を、それぞれ対応するELISA法およびHLPC法により解析した。結果を表21に示す。
【0540】
【0541】
参考文献リスト
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