(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】外科用器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
A61B17/29
(21)【出願番号】P 2020524495
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 US2018057439
(87)【国際公開番号】W WO2019089331
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-18
(32)【優先日】2017-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518379234
【氏名又は名称】グレナ ユーエスエー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロダチェウスキー、ビースロウ、ミエチスロウ
(72)【発明者】
【氏名】デセウィツ、アンドルゼイ、ヤヌツ
(72)【発明者】
【氏名】ワウリニュウク、グジェゴシ アンジェイ
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02790437(US,A)
【文献】特開2009-082705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0018856(US,A1)
【文献】特開2008-220960(JP,A)
【文献】特開平10-277050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/29-17/295
A61B 17/128
A61B 17/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い胴部、前記胴部の遠位端に固定された保持具、前記保持具に取り付けられたエフェクタ・ジョー、前記胴部内に配置されたロッド、前記エフェクタ・ジョーを開閉するために前記エフェクタ・ジョーに動作可能に連結された前記ロッドの遠位端、前記胴部
の近位端の持ち手、球に固定された前記ロッドの近位端を備える外科用器具であって、前記持ち手が直線駆動部を備え、前記直線駆動部が受け口及び溝穴を有し、前記球が前記受け口内に収められ、前記持ち手が更に枢動可能に取り付けられた握りを備え、前記握りが主脚を備え、前記主脚が前記溝穴に受けられ、それによって前記握りの枢動が前記ロッドの直線的な動き及び前記エフェクタ・ジョーの相互の相対的な動きをもたらすようになっており、
前記エフェクタ・ジョーが通常は開となるように、前記ロッドを遠位方向に押す戻しばねを前記直線駆動部が備える、外科用器具。
【請求項2】
前記持ち手が胴部回転つまみ、保持具関節運動つまみ及び不注意による前記握りの操作を自動的に防止するための安全機構を備える、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項3】
それぞれのエフェクタ・ジョーが、カム溝穴及び前記ロッドの前記遠位端に動作可能に連結されたピンを備え、前記ピンが前記カム溝穴を貫通して横断的に延在し、それによって前記ロッドの直線的な動きが、前記エフェクタ・ジョーを互いに相対的に動かすようになっている、請求項1又は2に記載の外科用器具。
【請求項4】
前記持ち手が胴部回転つまみ及び主スリーブを備え、前記胴部回転つまみ、前記胴部及び前記主スリーブが同調して回転するように結合し、環状歯車が前記主スリーブの中に受けられ、前記環状歯車が回転に対して固定され、前記持ち手が更に前記主スリーブを貫通して半径方向に延在するボール式デテント機構を備える止め金を備え、前記ボール式デテント機構を備える止め金が前記環状歯車と係合し、それによって前記胴部回転つまみを回転させると、ボール式デテント機構により止め金が前記環状歯車に対して押圧されて音が鳴る制限停止を伴ってその回転が増分されるようになっている、請求項1から3のいずれか一項に記載の外科用器具。
【請求項5】
前記安全機構が、前記握りが回転することが防止されるロック位置から、前記握りが回転することが防止されないロック解除位置へ回転可能なレバーを備え、前記
安全機構が更に、前記レバーを前記ロック位置へ付勢するばね要素、及び前記レバーの表面を支圧して前記レバーを前記ばね要素の前記付勢に対抗して前記ロック解除位置に保持するように回転可能なカムを備える、請求項
2に記載の外科用器具。
【請求項6】
前記直線駆動部が前記持ち手の中に形成された中空のケーシングの中に差し込まれる、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項7】
前記ロッドの前記遠位端が終端リンクに連結され、且つ前記ピンが終端クレビスの互いに反対向きの面を貫通して延在する、請求項3に記載の外科用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広く言えば外科用器具に関し、より具体的には結紮クリップを適用するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腹腔鏡下及び内視鏡下外科手術の間、外科医は多くの場合1本若しくは複数の血管又は管を通る血液或いは他の液体の流れを終端させなければならない。結紮クリップは、血管又は管を通る体液の流れを妨げるために、血管又は管に適用されてきた。内視鏡下クリップ適用外科用器具は、結紮クリップ、例えば米国特許出願公開第2017-0311954号(A1)(その全体を本明細書に引用して援用する)に開示されるようなポリマーの結紮クリップを適用するために使用されてきた。こうした結紮クリップは、典型的に生体適合性材料から製作され、通常血管又は管を覆って締め付けられる。一旦血管又は管に適用されると、締め付けられたクリップは、血管又は管を通る液体の流れを終端させる。
【0003】
クリップ適用外科用器具は通常、胴部の遠位端にエフェクタ・ジョーを、胴部の近位端に持ち手部分を含んでいた。エフェクタ・ジョーを作動させるための安全機構が近位端近傍に配置されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2017/0311954号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内視鏡下又は腹腔鏡下手術は、多くの場合切開部から遠隔で行われていた。その結果、結紮クリップの適用は、外科医にとって、狭められた視野を通して、又はより少ない触感の反応により遂行しなければならなかった。従って、向上した操作性を有し、施術者が2本の手を使用する必要無く多方向に関節運動でき、不注意によるエフェクタ・ジョーの作動を防止する器具を提供することにより、外科用器具の操作を改善することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ポリマーの結紮クリップを適用する等の手術用の改良された外科用器具は、操作性の向上及び片手での操作のために構成される。外科用器具は、その遠位端に固定された保持具に取り付けられたエフェクタ・ジョーを備える胴部を含む。持ち手部分は、胴部の近位端に配置される。持ち手部分は、エフェクタ・ジョーを開閉するための握りを含む。また、持ち手部分は、保持具を関節運動させるためのつまみ、胴部を回転させるためのつまみ、及び不注意による握りの作動を自動的に防止するための安全機構を含む。
【0007】
前述の概説から、本発明の1つの態様は、本発明の先行品の前記欠点を余儀なくされることのない、上述した全般的な特質の、改良された外科用器具を提供することであると理解されよう。
【0008】
本発明の特徴は、結紮クリップの適用を容易にする、上述した全般的な特質の、改良された外科用器具を提供することである。
【0009】
本発明の1つの考慮事項は、外科医が不適当な操作をすることなく血管壁を結紮することを可能にする、上述した全般的な特質の、改良された外科用器具を提供することである。
【0010】
本発明のもう1つの態様は、従来の結紮クリップの使用に適切に適合する、上述した全般的な特質の、改良された外科用器具を提供することである。
【0011】
本発明の更なる特徴は、経済的な量産製造に適切に適合する、上述した全般的な特質の、改良された外科用器具を提供することである。
【0012】
本発明の更なる考慮事項は、向上した操作性を備える、上述した全般的な特質の、改良された外科用器具を提供することである。
【0013】
施術者が2本の手を使用する必要無く多方向に関節運動できる、上述した全般的な特質の、改良された外科用器具を提供することが、本発明のもう1つの態様である。
【0014】
本発明の考慮事項の1つは、エフェクタ・ジョーを作動させるための握り、及び握りを自動的にロックして不注意による作動を防止するための安全機構を備えた持ち手部分を含む、上述した全般的な特質の、改良された外科用器具を提供することである。
【0015】
本発明の更なる特徴は、胴部の遠位端に固定された保持具に取り付けられたエフェクタ・ジョーを作動させるための握り、保持具を関節運動させるためのつまみ、胴部を回転させるためのつまみ、及び握りをロックするための止め金を備えた持ち手部分を含む、上述した全般的な特質の、改良された外科用器具を提供することである。
【0016】
本発明の更なる特徴は、細長い胴部、胴部の遠位端に固定された保持具、保持具に取り付けられたエフェクタ・ジョー、胴部内に配置されたロッド、エフェクタ・ジョーを開閉するためにエフェクタ・ジョーに動作可能に連結されたロッドの遠位端、胴部の近位端の持ち手、球に固定されたロッドの近位端を備え、持ち手が直線駆動部を含み、直線駆動部が受け口及び溝穴を有し、球が受け口内に収められ、持ち手が更に枢動可能に取り付けられた握りを含み、握りが主脚を含み、主脚が溝穴に受けられ、それによって握りの枢動がロッドの直線的な動き及びエフェクタ・ジョーの互いに相対的な動きをもたらす、上述した全般的な特質の、改良された外科用器具を提供することである。
【0017】
本発明のもう1つの態様は、細長い胴部であって、胴部の遠位端に固定された保持具に取り付けられたエフェクタ・ジョーを有する細長い胴部、胴部の遠位端の二股に分かれた先端スリーブ、及び胴部の近位端の持ち手を備え、先端スリーブが一対の間隔を空けて配置された壁部を有し、保持具がその近位端に溝フランジを有し、溝フランジが先端スリーブの間隔を空けて配置された壁部に回転軸で枢動可能に接合され、軸方向に移動可能なタペットが胴部内に保持され、タペットが回転軸からオフセットされた点で溝フランジに枢動可能に接合されたタペット脚を含み、それによってタペットの軸方向の動きが保持具を回転軸の周りで胴部に対して相対的に関節運動させる、上述した全般的な特質の、改良された外科用器具を提供することである。
【0018】
本発明の考慮事項の1つは、細長い胴部、胴部の遠位端近傍に配置されたエフェクタ・ジョー、胴部内に配置されたロッド、エフェクタ・ジョーを開閉するためにエフェクタ・ジョーに動作可能に連結されたロッドの遠位端、胴部の近位端の持ち手を有し、持ち手がロッドの近位端に動作可能に連結された握り及び不注意による握りの操作を自動的に防止するための安全機構を含み、安全機構が、握りが近位方向に回転することが防止されるロック位置から握りが近位方向に回転することが防止されないロック解除位置へ回転可能なレバーを含み、機構が更に、レバーをロック位置へ付勢するばね要素、及びレバーの表面を支圧してレバーをばね要素の付勢に対抗してロック解除位置に保持するように回転可能なカムを含む、上述した全般的な特質の、改良された外科用器具を提供することである。
【0019】
本発明のその他の態様、特徴及び考慮事項は、この後一部が自明となり、一部が指摘されるであろう。
【0020】
これらの目的を考慮すると、又は添付の図面を参照すると、本発明には、上述の態様、特徴及び考慮事項、並びに何らかその他の態様、特徴及び考慮事項がそれによって達成される、種々の要素の組合せ、部品の配置、及び一連のステップでの実施例があることがわかり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲において、より具体的に指摘され明示されるであろう。
【0021】
添付の図面に、本発明の種々の実施可能な例示的実施例のうちの1つを示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に従って構成され、本発明を例示し、胴部の遠位端の保持具に取り付けられた一対のエフェクタ・ジョー及び胴部の近位端の持ち手部分を示す、外科用器具の概略図である。
【
図2】エフェクタ・ジョーを閉じ且つ開くための構成部品の分解立体図である。
【
図3】開位置にあるエフェクタ・ジョーを示す、外科用器具の一部分の断片的な断面図である。
【
図5】閉位置にあるエフェクタ・ジョーを示す、外科用器具の一部分の断片的な断面図である。
【
図7】安全機構が、不注意によるエフェクタ・ジョーの作動を自動的に防止するための方向にある、エフェクタ・ジョーを閉じ且つ開くための持ち手部分の構成部品の分解立体図である。
【
図8】安全機構がエフェクタ・ジョーの繰り返しの作動を可能にするロック解除の方向にある、エフェクタ・ジョーを閉じ且つ開くための持ち手部分の構成部品の分解立体図である。
【
図9】保持具の関節運動のための構成部品の分解立体図である。
【
図10】
図4と類似の、外科用器具の一部分を通しての断片的な断面図で、胴部と同軸上にある保持具を示す図である。
【
図11】外科用器具の一部分を通しての断片的な断面図で、関節運動した位置にある保持具を示す図である。
【
図12】胴部の軸方向回転のための構成部品の分解立体図である。
【
図13】安全機構が自動的にロックする位置にある状態の、外科用器具の断片的な側面図である。
【
図15】安全機構がロック解除された状態の、外科用器具の断片的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明について、当業者が本発明を実践できるように本発明の図示による実例として提供する図面を参照して、詳細に説明する。特に、以下の図及び実例は、本発明の範囲を単一の実施例に限定することを意味しておらず、説明又は図示された要素のいくつか或いは全てを交換することを通して、他の実施例が可能である。
【0024】
出願人は、明細書又は特許請求の範囲にあるいずれの用語に対しても、明確にそのように明記した場合を除き、普通ではない又は特別な意味とすることを意図していない。更に、本発明は、本明細書で図として示された公知の構成部品に対する、現在及び将来の公知の同等品を含む。
【0025】
次に図面を参照して、参照番号10は、本発明に従って構築され本発明を例示する、ポリマーの結紮クリップを適用する等の手術に使用可能な外科用器具を示している。器具10は近位端の持ち手部分12、長手方向軸15に沿って延在する中空の円筒形の主胴部14、及び一対のエフェクタ・ジョー18、20を保持する保持具16を含む。持ち手部分12は、握り22、柄23、関節運動つまみ24及び胴部回転つまみ26を含み、これらの全ては片手での操作のため、例えば施術者の手のひらが柄23に支えられた状態での施術者の指による握り22の引き絞り及び解放、並びに施術者の親指及び/又は人差し指によるつまみ24及び26の回転のために、互いに近接した関係で配置される。
【0026】
図2を参照して、ジョー18,20は、ローラ・チェーンのシングル・リンクに類似のリンク29を用いてロッド32の端部に連結された、終端クレビス30を介して動かされることに気づくであろう。ジャーナル41は、ロッド32の遠位端から一対の側板35の近位の穴を貫通して突出し、ピン43は側板35の遠位の穴及びクレビス・フランジ45の穴を貫通して延在する。更なるピン34は、クレビス30の互いに反対向きの面を貫通して延在し、ジョー18、20のそれぞれの曲線状のカム溝穴36、37と係合する。クレビス30及びロッド32が直線的に動くと、
図9に示すように保持具16のヨーク40を貫通して延在する、ピン38の周りをジョー18,20が枢動する。ジョー18、20の一部がヨーク40の内側に受けられる。
【0027】
ロッド32の近位端は、引張り棒42の遠位端に固定され、引張り棒42はその近位端に球44を含む。円筒形の直線駆動部46は、持ち手部分12の中空のケーシング47の中に差し込まれ、更に球44をその中に受ける受け口48を含む。握り22の主脚(primary leg)50は、3枚の板150、152及び154の溶接された積層物並びにカム面54を備え、主脚50は直線駆動部46の溝穴52に受けられる。
図7を参照して、握り22が柄23に向かって引き絞られると、主脚50が持ち手部分12の穴62に固定されたピン56の周りを枢動し、戻しばね60を圧縮して、直線駆動部46及び球44を軸15に沿って近位の方向に動かすことに気づくであろう。
【0028】
同時に、引張り棒42、ロッド32及び終端クレビス30が近位端に向かって動き、エフェクタ・ジョー18、20を、
図3に示した通常の開の位置から
図5に示した閉の位置へ動かす。
【0029】
次に
図9を参照すると、保持具16の関節運動のための構成部品が図示されており、保持具16は、間隔を空けて配置された平行な板65を有する、厚みが減少した近位の溝フランジ64を含み、板65は、先端スリーブ68内に形成された溝66の平行に間隔を空けて配置された壁部63の間に受けられる。ジャーナル70は板65のそれぞれから突出し、溝壁部63の穴72の中に収まる。先端スリーブ68は、胴部14の遠位端の中に収められる。
【0030】
ジャーナル70と同心の回転軸71の周りでの保持具16の関節運動は、胴部14を貫通して延在する中空タペット74の相互の軸方向の動きを介してもたらされる。タペット74の遠位端から延在する脚(leg)75の末端部は、板65の間に受けられる。ピン73は、板65のオフセットされた穴79及び脚75の末端部を貫通して延在する。従って、タペット74の軸方向の動きが、保持具16のジャーナル70の周りでの関節運動をもたらす。中空タペット74を貫通して延在しているのが引張り棒42であり、一対のガスケット・シール45が引張り棒42とタペット74の間に設けられる。
【0031】
図9に示すように、関節運動つまみ24の回転が、らせん状の溝77を有する円筒形カム76を回すことを介してタペット74の軸方向の動きにつながる。カム76は、直線駆動部46の遠位端上にはめ込まれたつば78の上を覆って設置される。つば78はリング80の上を覆ってはめ込まれ、リング80は、対応する止め輪溝84に収まる一対の止め輪82によって相対的な軸方向の動きに対抗してタペット74に固定されている。直径に沿って互いに反対側に置かれた一対のカム・フォロワ86がリング80に固定され、且つカム76のらせん状の溝77に係合する。
【0032】
フォロワ86は、つば78の、直径に沿って互いに反対側に置かれた一対の溝87の中へも延在する。従って、カム・フォロワ86と円筒形カム76の間の係合を介して、関節運動つまみ24の回転によってタペット74が軸方向に動き、保持具16がジャーナル70の軸の周りを枢動することになる。
【0033】
関節運動つまみ24の中に収められているのは、つまみ24と共に回転する内歯歯車88である。つまみ24が回転すると、歯車88の歯が、つば78の直径に沿って互いに反対側に置かれた受け口に収められた一対のボール式デテント止め金90と係合し、譲歩可能で音が聞こえる制限停止を伴って回転を増分させる。
【0034】
人体の空洞の中での操作性向上のため、エフェクタ・ジョー18,20及び保持具16の寸法は、理想的に最小化される。例として、それぞれのエフェクタ・ジョーの、その遠位の先端から枢動ピン38の中心までの長さは約29mmとなり、
図10に図示したように、保持具16が最大50度のオフセット角度まで関節運動した状態で、保持具枢動ピン70の中心から、開位置にあるエフェクタ・ジョー18,20の遠位の先端までの距離は約50mmとなる。
【0035】
図12を参照して、胴部14の近位端に収められ固定されているのは、段付きつば92の直径が減少した突出部94である。中間直径部分96の肩部は、胴部14の近位端に当接する。つば92の直径がより大きい近位部分98は、主スリーブ100の内径部に受けられる。更に、主スリーブの内径部の中に配置されているのは移行スリーブ102であり、ガスケット104がつば92の近位端に当接し、更なるガスケット106がスリーブ102の上に配置されている。組み立てられると、流水式洗浄用の流路が、胴部つまみ26、段付きつば92及び主スリーブ100それぞれの位置合わせされた開口108、110及び112を貫通して設けられる。流水式洗浄用の差込み口組立て体115が、胴部つまみの開口108の中にはめ込まれる。
【0036】
主スリーブの内径部100の近位端に収められているのは、ガスケット114、環状歯車118及び終端つば120である。終端つば120及び環状歯車118は、胴部回転つまみ26、段付きつば92及び主スリーブ100が同調して回転する際、静止したままであることに気づくべきである。主スリーブ100が回転すると、環状歯車118の歯が、主スリーブ100の受け口119に収められたボール式デテント止め金122と係合し、譲歩可能で音が聞こえる制限停止を伴って、胴部14の回転を増分させる。
【0037】
本発明に準じて、エフェクタ・ジョー18、20の意図的でない作動を確実に防ぐために、安全機構が設けられる。
図7を参照して(ここで、持ち手部分12の握り22は、自動的なロック位置で示されている)、ロック/ロック解除レバー124は、一体化したアーム127の遠位端にある一対のぎざぎざのあるフィンガ・バー126を含む。ロック/ロック解除レバー124の上部は、柄23の中空部分の中に収められる。ロック/ロック解除レバー124は、柄23を貫通して延在するピン128の周りを枢動するように構成される。
【0038】
ロック/ロック解除レバー124の上部から遠位へ突出しているのが、凹型の当接端132を備える一体化した止め金130である。アーム127と止め金130を一体に接合しているのが、遠位の面136及び近位の面176を備える湾曲部134である。板154が、当接端158を備え近位へ突出している当て脚(strike leg)156を含むことに気づくべきである。
【0039】
左側トグル・アーム160及び右側トグル・アーム162は、持ち手部分12の互いに反対側の面に沿って、
図14に示す自動ロック位置と
図16に示すロック解除位置の間を回転するために、カム軸164の互いに反対側の端部に固定される。それぞれのトグル・アームの内側面は、球の止め金168を受ける凹所166を含む。球の止め金168は、ロック位置ではデテント170の中に、トグル・アームがロック解除位置にある場合はデテント172に収まる。止めピン173は、球の止め金がデテント170に収まると、トグル・アームの更なる回転を防止する。
【0040】
図14に最も適切に示す通り、トグル・アーム160,162が自動ロック位置にある状態で、握り22は、それぞれの当接端132及び158の間の当接接触によって、近位方向に移動することが防止される。ばねで負荷が掛けられた球の組立て体174は、持ち手部分12の近位端に収められ、湾曲部134の近位の面176を支圧し、一方で、カム軸164に固定されたカム178は、湾曲部134の遠位の面136に当接する。
【0041】
外科医は、ぎざぎざのあるフィンガ・バー126を握り、ロック/ロック解除レバー124を、ばねで負荷が掛けられた球の組立て体174の付勢に対抗して近位に引くことにより、ロック/ロック解除レバー124をピン128の周りで回転させ、それによって当て脚156がもはや止め金130と一直線に並ばなくなり、握り22をロック解除することができる。握り22はその後、近位へ引いて、例えば結紮クリップを取付け又は外すために、エフェクタ・ジョー18,20を開かせることができる。ぎざぎざのあるフィンガ・バー126を離すと、ロック/ロック解除レバー124は、近位の面176に対するばねと球の組立て体174の付勢によって、その
図14の位置に戻る。
【0042】
図16では、安全機構の構成部品は、ロック/ロック解除レバー124を回転させる必要無しに握り22を引くことができるように係合から外された状態で示されている。安全機構を係合から外すためには、トグル・アーム160、162をカム軸164と共に、
図16に示すように球の止め金168がデテント172に収まるまで、約90度反時計回りに(
図13~15の方向から見た時)回す。カム軸164の回転は、カム178を遠位の面136に支圧させ、ロック/ロック解除レバー124を、ばねと球の組立て体174の付勢に対抗してその
図16の位置まで反時計方向に回転させ、当て脚156はもはや止め金130と一直線に並ばず、握り22は外科手術の間中繰り返し自由に作動できる。
【0043】
上に詳述した実施例の中の具体的な要素の組合せ及び特徴は例示のみであり、これらの教示の、この用途での他の教示との入れ替えや代用も明らかに予期される。当業者なら認識することになるように、当技術分野の通常の技術者なら、特許請求の範囲に示すような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記述されたことの変形、変更、及びその他の実装を思いつくことが可能である。
【0044】
本発明の好ましい実施例を説明してきたが、本概念を具体化するその他の実施例が使用可能であることが、当技術分野の通常の技術者の1人なら今や明白となろう。更に、本明細書に説明されている本発明の実施例は、本明細書で参照した適用可能な技術及び基準の変更並びに改良に対して、適応且つ/又は準拠するために修正可能であることを、当技術分野の通常の技術者なら理解するであろう。
【0045】
当技術分野の通常の技術者なら、特許請求の範囲に示すような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記述されたことの変形、変更、及びその他の実装を思いつくことが可能である。従って、これらの実施例は、開示された実施例に限定されず、むしろ添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲によってのみ、限定されるべきであることがわかる。
【0046】
こうして本発明を説明してきたが、新規、及び特許証により確保されるべき要求として、ここに請求する。