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特許7443237注入システム、シリンジ、及びガスケット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】注入システム、シリンジ、及びガスケット
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20240227BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61M5/145 500
A61M5/315 514
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020546032
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2019035546
(87)【国際公開番号】W WO2020054715
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2018171532
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518234173
【氏名又は名称】株式会社サーキュラス
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】植木 潤
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/068957(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第02108852(GB,A)
【文献】特表2001-507963(JP,A)
【文献】米国特許第05928202(US,A)
【文献】特開平02-011164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/145
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口が拡径された穴を画定する内面と、外面とを含む複数の係合爪であって、広がった位置と窄まった位置との間で変位する係合爪を有するガスケットと、
前記係合爪と係合するように、前記穴に挿入されるラムと、
前記ガスケットが挿入されるシリンダであって、挿入後の前記ガスケットの前記係合爪の前記外面と当接するシリンダと、
前記ラムを前進させるように構成され、前記シリンダ内の薬液を注入する注入装置とを備え、
前記内面は、前記穴の底から延在する第1内面と、前記第1内面から延在するとともに、前記穴の底の垂線から離れる方向に前記第1内面に対して傾斜している第2内面とを含み、
前記ガスケットには、前記係合爪の変形の起点となる溝が、前記第1内面と前記第2内面との境界部分に対応する位置に形成されている、注入システム。
【請求項2】
前記溝は、前記ガスケットに形成されている環状溝である、請求項1に記載の注入システム。
【請求項3】
前記外面は、前記穴の底の垂線から離れる方向に傾斜している、請求項1に記載の注入システム。
【請求項4】
前記第1内面は、前記穴の底の垂線に沿って延在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の注入システム。
【請求項5】
前記係合爪は、前記穴の底の垂線に向かって突出する突起を有しており、
前記ラムは、前記突起が係合される係合溝を有している、請求項1から4のいずれか一項に記載の注入システム。
【請求項6】
前記第1内面は、前記垂線と平行に延在している、請求項1から5のいずれか一項に記載の注入システム。
【請求項7】
入口が拡径された穴を画定する内面と、外面とを含む複数の係合爪であって、広がった位置と窄まった位置との間で変位する係合爪を有するガスケットと、
前記係合爪と係合するように、前記穴に挿入されるラムと、
前記ガスケットが挿入されるシリンダであって、挿入後の前記ガスケットの前記係合爪の前記外面と当接するシリンダと、
前記ラムを前進させるように構成され、前記シリンダ内の薬液を注入する注入装置とを備え、
前記ガスケットには、前記係合爪の変形の起点となる溝が形成されており、
前記ガスケットは、前記係合爪に形成された溝に取り付けられたOリングを有する、注入システム。
【請求項8】
前記シリンダは、前記係合爪を覆うスカート部を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の注入システム。
【請求項9】
前記スカート部の内面は、前記係合爪が前記広がった位置に位置するように、前記外面に沿って傾斜している、請求項8に記載の注入システム。
【請求項10】
入口が拡径された穴を画定する内面と、外面とを含む複数の係合爪であって、広がった位置と窄まった位置との間で変位する係合爪を有するガスケットと、
前記係合爪と係合するように、前記穴に挿入されるラムと、
前記ガスケットが挿入されるシリンダであって、挿入後の前記ガスケットの前記係合爪の前記外面と当接するシリンダと、
前記ラムを前進させるように構成され、前記シリンダ内の薬液を注入する注入装置とを備え、
前記ガスケットには、前記係合爪の変形の起点となる溝が形成されており、
前記係合爪は、一の隣接する係合爪に向かって突出する凸部と、他の隣接する係合爪の凸部を受け入れる凹部とを有する、注入システム。
【請求項11】
入口が拡径された穴を画定する内面と、外面とを含む複数の係合爪であって、広がった位置と窄まった位置との間で変位する係合爪を有するガスケットと、
前記ガスケットが挿入されるシリンダであって、挿入後の前記ガスケットの前記係合爪の前記外面と当接するシリンダとを備え、
前記内面は、前記穴の底から延在する第1内面と、前記第1内面から延在するとともに、前記穴の底の垂線から離れる方向に前記第1内面に対して傾斜している第2内面とを含み、
前記ガスケットには、前記係合爪の変形の起点となる溝が、前記第1内面と前記第2内面との境界部分に対応する位置に形成されている、シリンジ。
【請求項12】
入口が拡径された穴を画定する内面と、外面とを含む複数の係合爪であって、広がった位置と窄まった位置との間で変位する係合爪を備え、
前記内面は、前記穴の底から延在する第1内面と、前記第1内面から延在するとともに、前記穴の底の垂線から離れる方向に前記第1内面に対して傾斜している第2内面とを含み、
前記係合爪の変形の起点となる溝が、前記第1内面と前記第2内面との境界部分に対応する位置に形成されている、ガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液が充填されるシリンジと、当該シリンジのガスケットと、当該シリンジが搭載される注入システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液注入用のシリンジに用いられるラム及びガスケットとして、例えば、特許文献1には、拡張及び収縮可能な部分を有するプランジャと、第1の内径及び第1の内径より小さい第2の内径を有するシリンジとが記載されている。このプランジャの空間の中には、プランジャシャフトの終端部分が挿入される。そして、プランジャが、第2の内径に至るまでシリンジ内を前進すると、拡張及び収縮可能な部分が収縮する。これにより、プランジャ(ガスケット)のタブがプランジャシャフト(ラム)の溝と係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-111185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、ガスケットのタブがラムの溝と係合するが、タブが溝に侵入しやすくするために、溝の内寸はタブの外寸よりも大きく設定されている。また、製造公差に起因して、溝に侵入したタブと溝との間には隙間が生じることがある。そのため、ガスケットに対してラムがガタついて、異音が生じる原因となってしまう。さらに、ラムの中心軸がガスケットに対して傾いている場合、押圧力は、シリンジにガスケットを介して傾いた方向に加わってしまう。この場合、高圧で薬液を注入する際に、シリンジが注入装置から外れてしまう可能性もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一例としての注入システムは、入口が拡径された穴を画定する内面と、前記穴の中心を通る垂線から離れる方向に傾斜する外面とを含む複数の係合爪であって、広がった位置と窄まった位置との間で変位する係合爪を有するガスケットと、前記係合爪と係合するように、前記穴に挿入されるラムと、前記ガスケットが挿入されるシリンダであって、挿入後の前記ガスケットの前記係合爪の前記外面と当接するシリンダと、前記ラムを前進させるように構成され、前記シリンダ内の薬液を注入する注入装置とを備え、前記ガスケットには、前記係合爪の変形の起点となる環状溝が形成されている。
【0006】
また、本発明の他の例としてのシリンジは、入口が拡径された穴を画定する内面と、前記穴の中心を通る垂線から離れる方向に傾斜する外面とを含む複数の係合爪であって、広がった位置と窄まった位置との間で変位する係合爪を有するガスケットと、前記ガスケットが挿入されるシリンダであって、挿入後の前記ガスケットの前記係合爪の前記外面と当接するシリンダとを備え、前記ガスケットには、前記係合爪の変形の起点となる環状溝が形成されている。
【0007】
また、本発明の他の例としてのガスケットは、入口が拡径された穴を画定する内面と、前記穴の中心を通る垂線から離れる方向に傾斜する外面とを含む複数の係合爪であって、広がった位置と窄まった位置との間で変位する係合爪を備え、前記係合爪の変形の起点となる環状溝が形成されている。
【0008】
本発明のさらなる特徴は、添付図面を参照して例示的に示した以下の実施形態の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】注入ヘッドの概略上面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るシリンジの概略分解斜視図である。
図3】ガスケットの概略斜視図である。
図4】ラム及びガスケットの連結を説明する概略断面図である。
図5】ラム及びガスケットの連結を説明する概略断面図である。
図6】境界部分の概略拡大図である。
図7】ラム及びガスケットの連結を説明する概略断面図である。
図8】ラム及びガスケットの連結を説明する概略断面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るシリンジの概略断面図である。
図10】本発明の第3実施形態に係るガスケットの概略背面図である。
図11】変形例に係るシリンジの概略背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、及び構成要素の相対的な位置は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されるものではない。なお、以下の説明において、前側(「前」)は、シリンジの先端部側に対応し、その反対側が後側(「後」)に対応する。
【0011】
[実施例]
図1は薬液を注入するための注入システム1の概略斜視図である。図1に示すように、注入システム1は、ラム110を前進させるように構成され、シリンジ90(図2)のシリンダ91内の薬液を注入する注入ヘッド2(注入装置)を備えている。さらに、注入システム1は、シリンジ90を注入ヘッド2に搭載するためのアダプタ8を備える。このアダプタ8は、注入ヘッド2のホルダーに取り付けられている。この注入ヘッド2は、シリンジ90に挿入されるガスケット100(図2)を押す押圧部4を備えている。
【0012】
押圧部4は、シリンジ90内の薬液を送り出すために、制御部(不図示)によってシリンジ90内のガスケット100を押圧して前進するように制御される。また、押圧部4は、不図示の駆動機構に接続されたラム110を備えている。具体的に、制御部は、モーターが正転するときにラム110が前進し且つモーターが逆転するときにラム110が後進するように、注入ヘッド2内のモーターを制御する。また、注入ヘッド2は、アダプタ8に搭載されるシリンジ90に設けられたRFID又はバーコード等のデーターキャリアを読み取る読取部21を備えている。
【0013】
また、注入システム1は、撮像装置(不図示)に有線又は無線接続されている。そして、薬液の注入時及び画像の撮影時には、撮像装置と注入システム1との間で各種データが送受信される。このような撮像装置としては、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、CT(Computed Tomography)装置、アンギオ撮像装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、CTアンギオ装置、MRアンギオ装置、超音波診断装置、及び血管撮像装置がある。
【0014】
さらに、注入システム1は、薬液の注入状況が表示される表示部としてのタッチパネルを有するコンソールと、制御部及び電源を有する制御装置(いずれも不図示)とを備えている。このコンソールと注入ヘッド2とは、互いに有線又は無線接続することができる。さらに、ハンドスイッチ等の遠隔操作装置が、コンソールに有線又は無線接続されてもよい。この遠隔操作装置により、薬液注入をスタート又はストップさせることもできる。なお、注入ヘッド2と制御装置は、キャスタースタンド(不図示)と一体的に構成できる。代替的に、注入ヘッド2と制御装置をばらばらに設け、キャスタースタンドに搭載することもできる。
【0015】
制御装置には、動作パターン(注入プロトコル)のデータ、及び薬液のデータが予め記憶されている。患者に薬液を注入する場合、オペレーターは、コンソールのタッチパネルを操作して、注入速度、注入量、注入時間、体重、身長、体表面積、心拍数、及び心拍出量などの患者の身体的データと、薬液の種類のデータとを入力する。そして、制御装置は、入力されたデータと予め記憶されているデータに応じて、最適な注入条件を算出する。その後、制御装置は、算出された注入条件に基づいて、患者に注入する薬液の量及び注入プロトコルを決定する。
【0016】
さらに、制御装置は、薬液の量及び注入プロトコルを決定すると、所定のデータ又はグラフをコンソールのタッチパネル又は注入ヘッド2のヘッドディスプレイに表示させる。これにより、オペレーターは、表示されたデータ又はグラフを確認することができる。動作パターン(注入プロトコル)のデータ及び薬液のデータは、外部の記憶媒体から入力することもできる。
【0017】
薬液を注入する場合、オペレーターは注入ヘッド2の電源をオンにし、シリンジ90を注入ヘッド2に搭載する。その後、オペレーターは、タッチパネルに表示された注入ボタンを押す。また、注入ヘッド2に操作パネルが設けられている場合には、オペレーターはこの操作パネルの注入ボタンを押すこともできる。さらに、オペレーターは、ハンドスイッチのボタンを押して注入を開始することもできる。代替的に、オペレーターは、シリンジ90を搭載した後に、注入ヘッド2の電源をオンしてもよい。
【0018】
注入ボタンが押されると、制御部はモーターに駆動電圧として正転信号を送る。この正転信号に応じて、モーターのシャフトが正転し、押圧部4(ラム110)が前進する。その後、注入が終了しシリンジ90を取り外す場合、ラム110を後進させるために、制御部はモーターに駆動電圧として逆転信号を送る。この逆転信号に応じてモーターのシャフトが逆転し、ラム110が後進する。
【0019】
押圧部4は、不図示の駆動機構を有する。この駆動機構は、モーターのシャフトに接続された伝達機構と、伝達機構に接続されたボールネジ軸と、ボールネジ軸に取り付けられたボールネジナットと、ボールネジナットに接続されたアクチュエーターとを備える。また、伝達機構は、シャフトに接続されたピニオンギアと、ボールネジ軸に接続されたスクリューギアとを有している。そして、伝達機構は、モーターからの回転をボールネジ軸に伝達する。そのため、モーターのシャフトの回転は、ピニオンギア及びスクリューギアを介してボールネジ軸に伝達される。これにより、ボールネジ軸は、伝達された回転に従って回転する。そして、ボールネジナットは、ボールネジ軸の回転に伴い前進方向又は後進方向に摺動する。このボールネジナットの摺動に伴い、押圧部4のラム110が前進又は後進する。
【0020】
[第1実施形態]
図2は、第1実施形態に係るシリンジ90の概略分解斜視図であり、前側上方から見たシリンジ90を示している。図2に示すように、シリンジ90は、シリンダ91内において摺動可能であるガスケット100を有している。このシリンダ91にはガスケット100が挿入され、挿入されたガスケット100の外面S2(図4)と当接する。また、シリンダ91は、アダプタ8の溝に取り付けられるフランジ92を有している。そして、ガスケット100は、吸子120と、Oリング130と、シール部材140とを有している。
【0021】
吸子120は、略円盤状の挿入部121と、分割された複数の係合爪122とを有している。この挿入部121には、複数の交差するリブが形成されている。また、挿入部121と係合爪122との間には環状溝125が形成されている。シール部材140は、その外面に形成された環状突起を有している。そして、この環状突起がシリンダ91の内面と当接することにより、シリンダ91がシールされる。なお、図2においては、3つの環状突起が形成されているが、2つ又は1つ、若しくは4つ以上の環状突起が形成されていてもよい。また、シール部材140には、挿入部121を収容する空間が形成されており、シール部材140の後端部は当該空間に向かって突出している。また、係合爪122は、ラム110の前端部111に形成された係合溝112と係合する突起124(図3)を有している。
【0022】
ガスケット100を組み立てる際には、まず吸子120の挿入部121側からOリング130を嵌め込み、係合爪122に形成された溝123内にOリング130を取り付ける。次いで、挿入部121をシール部材140内の空間に挿入し、シール部材140を吸子120に取り付ける。このとき、シール部材140の後端部は、挿入部121の後方に形成された環状の溝に入り込む。これにより、シール部材140が吸子120に対して固定される。取り付けられたOリング130は、係合爪122が広がらないように規制する。そのため、隣り合う係合爪122同士の隙間を均等にすることができるので、係合爪122の突起124同士の間隔を一定にすることができる。
【0023】
このようにして、ガスケット100が組み立てられる。吸子120は、例えばPOM(ポリアセタール樹脂)等の弾性樹脂製であり、成型によって製造することができる。また、シール部材140は、例えばブチルゴム製であり、成型によって製造することができる。また、ラム110は、例えばステンレス又はアルミ製であり、中空のパイプに中実の略円柱状の前端部111を溶接して製造できる。代替的に、中空のパイプに中実の前端部111をねじ込むことによってラム110を製造してもよい。代替的に、ステンレス又はアルミ以外の材料であって、ガスケット100よりも高硬度の材料を用いて、前端部111を製造してもよい。
【0024】
ガスケット100の係合爪122がラム110の前端部111と連結した状態でモーターが正転すると、押圧部4はラム110を前進方向に押す。そして、ラム110及びガスケット100が前進すると、シリンダ91内の薬液が先端部93を通って押し出される。その結果、先端部93に接続される延長チューブ等を介して、患者の体内に薬液が注入される。薬液の注入後、モーターが逆転すると、押圧部4がラム110を後退方向に引いて、ガスケット100が後退する。
【0025】
図2に示すように、前端部111の端面と連続する角部は面取りされている。これにより、ラム110の挿入時に角部が突起124と接触することを防止できる。なお、前端部111の係合溝112の角部も面取りされており、当該角部は丸みを帯びている。これにより、突起124が係合溝112に係合するとき又は係脱するときに、突起124が削られることを抑制できる。
【0026】
図3は、後方から見たガスケット100の概略斜視図であるが、説明の便宜上、Oリング130は省略している。図3に示すように、吸子120は、略扇形の断面形状を有する複数の係合爪122を備えている。この複数の係合爪122の数は、2つ以上であればよく、6つには限られない。また、隣り合う係合爪122同士の間には隙間が形成されており、ガスケット100がシリンダ91に挿入されると、隣り合う係合爪122が近づくように各係合爪122が変位する。
【0027】
各係合爪122は、Oリング130が嵌め込まれる溝123と、ラム110の係合溝112と係合する突起124とを備えている。この突起124の先端は、ラム110の係合溝112に挿入しやすいように丸みを帯びている。なお、図3においては、1つの係合爪122の溝123と突起124にのみ参照符号を付している。しかし、溝123と突起124は、6つの係合爪122の全てに設けられている。係合爪122は、いずれも同じ大きさに形成されており、係合爪122同士の間には隙間も同じ長さを有する。これにより、変位時に、それぞれの係合爪122のラム110に対する位置が変動することを抑制できる。すなわち、ガスケット100が挿入されるにつれて、それぞれの係合爪122が同じ距離だけ変位する。
【0028】
吸子120には、挿入部121と係合爪122との間に環状溝125が形成されている。この環状溝125が形成された部分において、係合爪122は挿入部121と接続されている。係合爪122の変位(変形)を容易にするために、環状溝125が形成された部分は、突起124が形成された部分と比較して薄肉である。また、吸子120には、突起124に囲まれた穴H(図4)が形成されており、ラム110は係合爪122と係合するように当該穴Hに挿入される。
【0029】
[ラム110とガスケット100の連結]
図4から図8を参照して、ラム110とガスケット100の連結について説明する。図4は、ラム110を吸子120の穴Hに挿入する前のシリンジ90の概略断面図である。図5は、ラム110を吸子120の穴Hに挿入した状態のシリンジ90の概略断面図である。図6は、図5において丸で囲んだ部分の概略拡大図である。図7は、ラム110とガスケット100とが連結した状態のシリンジ90の概略断面図である。図8は、ラム110がガスケット100を前進させた状態のシリンジ90の概略断面図である。また、図4から図8は、シリンダ91の中心軸を通り長手方向に沿った断面を示している。
【0030】
図4に示すように、ガスケット100は、入口が拡径された穴Hを有している。すなわち、穴Hにおいて、ラム110が挿入される入口は、ラム110の端面が押圧する底と比較してより長い内径を有している。また、ガスケット100は、広がった位置(図5)と窄まった位置(図7)との間で変位する係合爪122を有している。この係合爪122は、穴Hを画定する第1内面126及び第2内面127を含む内面S1と、穴H(底)の中心を通る垂線Pから離れる方向に傾斜する外面S2とを含んでいる。第1内面126は、ラム110の前端部111の端面が当接する吸子120の穴Hの底からリング状に延在している。また、第1内面126は、垂線Pと平行に延在している。第2内面127は、第1内面126から突起124までリング状に延在している。また、第2内面127は、第1内面126に対して、穴Hの入口に近付くにつれて垂線Pから離れる方向に傾斜している。
【0031】
係合爪122の外面S2は、穴Hの入口に近付くにつれて、穴Hの延在方向に延びる垂線Pから離れるように傾斜している。そのため、垂線Pと交差し且つ複数の係合爪122の外縁を結ぶ線分の長さは、シリンダ91の内径の長さよりも長い。すなわち、係合爪122の外縁は、シリンダ91の内面よりも外側に位置している。また、係合爪122は、垂線Pに向かって突出する突起124を有している。そして、ラム110は、突起124が係合される環状の係合溝112を有している。ただし、窄まった位置に変位した係合爪122の突起124が環状に配置されていない場合、係合溝112は、突起124に対応する位置に形成してもよい。
【0032】
ラム110の前端部111において、係合溝112より端面側の部分の外面も、ラム110の中心軸Rに対してわずかに傾斜している。この外面の中心軸Rに対する傾斜角度(一例として、1~5度)は、第2内面127の垂線Pに対する傾斜角度(一例として、4~10度)よりも小さく設定されている。前端部111の外面が傾斜していることにより、前端部111の挿入時に中心軸Rが垂線Pとの位置合わせされるように、前端部111を穴H内に導くことができる。
【0033】
図5に示すように、ラム110が穴Hに挿入されると、前端部111の端面は穴Hの底に当接する。このとき、係合爪122は広がった位置にあり、前端部111の外面は、係合爪122の第1内面126と第2内面127との境界部分B(図6)と当接する。すなわち、吸子120の穴Hの内寸は、当該境界部分Bにおいて前端部111の外面と当接するように設定されている。以下、図6を参照して境界部分Bについて説明する。
【0034】
図6に示すように、ガスケット100の第1内面126と第2内面127との境界部分Bに対応する位置には、係合爪122の変形の起点となる環状溝125が形成されている。この環状溝125は、断面略半円状の形状を有している。そして、境界部分Bは、環状溝125の底の中央に対応する位置に設定されている。すなわち、環状溝125の底の中央と境界部分Bとは、長手方向に直交する同一の断面内に位置している。その結果、係合爪122の内面S1は、境界部分Bを境に傾斜している。そのため、前端部111の挿入時には、前端部111の外面と第2内面127との間には隙間が生じている。また、前端部111の外面もわずかに傾斜しているため、当該外面と第1内面126との間にも隙間が生じている。なお、環状溝125は、内側に向かって窄まるように、略台形状又は略三角形状の断面形状を有していてもよい。
【0035】
ラム110がガスケット100を押すと、ガスケット100はシリンダ91内を前進する。ガスケット100が前進すると、係合爪122の外面S2(図4)が傾斜しているため、係合爪122の外面S2はシリンダ91の内面と当接する。そして、前進するにつれて、シリンダ91の内面からの反力によって、係合爪122は、吸子120の垂線Pに向かって変位する。このとき、係合爪122は、環状溝125の底の中央を起点として変形する。そのため、境界部分Bが、前端部111に押し付けられる。
【0036】
すなわち、境界部分Bは、吸子120の垂線Pに向かって変位する。これにより、穴H内において前端部111が垂線Pに対して偏った位置に挿入されていても、前端部111の中心軸Rの位置が垂線Pと合わされるように、前端部111が変位する。すなわち、前端部111は、境界部分Bに押されて穴Hの中心に向かって変位する。そのため、中心軸Rがガスケット100に対して傾くことを抑制できる。さらに、製造公差等に起因して前端部111と吸子120の穴Hとの間に隙間が生じていても、境界部分Bにおいて前端部111が保持される。これにより、ガスケット100に対してラム110がガタつくことを抑制できる。
【0037】
図7に示すように、ガスケット100がシリンダ91内に挿入されると、シリンダ91の内面からの反力を受けて係合爪122が窄まる。そして、窄まった位置にある係合爪122の突起124が係合溝112内に侵入し、突起124が係合溝112と係合する。これにより、ガスケット100は、ラム110に連結される。また、係合爪122の変位に伴い、環状溝125は広がるように変形する。その後、図8に示すように、ガスケット100がシリンダ91内を前進すると、シール部材140はシリンダ91内の薬液を押圧する。これにより、薬液が先端部93から押し出され、延長チューブ等を介して患者の体内に注入される。
【0038】
薬液の注入後は、ラム110が後退し、ラム110と連結しているガスケット100も後退する。そして、ラム110及びガスケット100が図5に示す位置まで後退すると、シリンダ91の内面による規制が解除される。そのため、係合爪122が外方に広がり、変位した係合爪122の突起124が係合溝112から離脱する。これにより、突起124が係合溝112と係脱する。すなわち、係合爪122が広がった位置に変位するまでラム110及びガスケット100が後退すると、突起124が係合溝112と係脱する。また、係合爪122の変位に伴い、環状溝125は元の形状に戻るように狭まる。ラム110がさらに後退すると、ガスケット100は、シール部材140とシリンダ91との間の摩擦力によって図5に示す位置に留まる。その結果、ラム110は、ガスケット100から離脱し、図4に示す挿入前の位置に後退する。
【0039】
このような第1実施形態に係るラム110及びガスケット100によれば、環状溝125の底の中央を起点として係合爪122が変形する。そのため、複数の係合爪122が吸子120の垂線Pに向かって均等に変位する。また、境界部分Bにおいて前端部111が保持されている。そのため、ラム110の前端部111の中心軸Rの位置は、垂線Pと合わせされている。これにより、ラム110がガスケット100から離脱する際に、前端部111が垂線Pに対して偏った位置に位置することを抑制できる。そのため、前端部111の係合溝112が突起124に引っ掛ってしまうことを防止できる。
【0040】
また、第1実施形態に係るラム110及びガスケット100によれば、ガスケット100とラム110とを連結する際に、ガスケット100に対してラム110がガタつくことを抑制できる。さらに、ガスケット100とラム110とが直接連結されるため、シリンジ90と押圧部4との間の距離を短くすることができる。そのため、注入システム1内の注入ヘッド2のサイズを小さくすることができる。
【0041】
なお、突起124及び係合溝112に代えて、ガスケット100の係合爪122に係合溝を形成し、ラム110の前端部111に環状の突起を形成してもよい。また、係合爪122を精度よく製造できる場合には、Oリング130を省略することができる。
【0042】
[第2実施形態]
第1実施形態においては、挿入前のガスケット100の係合爪122がシリンジ90から外方に突出していた。第2実施形態においては、シリンジ290のシリンダ291が係合爪222を覆うスカート部295を有している。以下、図9を参照して第2実施形態について説明するが、第2実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について説明し、第1実施形態で説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0043】
図9は、ラム110を吸子220の穴Hに挿入する前のシリンジ290の概略断面図である。この図9は、シリンジ290の中心軸を通り長手方向に沿った断面を示している。なお、ラム110の構成は第1実施形態と同じであるため、図示を省略している。
【0044】
図9に示すように、シリンジ290のシリンダ291には、フランジ292よりも後方にスカート部295が形成されている。このスカート部295の内面は、係合爪222が広がった位置に位置するように、係合爪222の外面S2に沿って傾斜している。そのため、スカート部295の内寸は、広がった状態の係合爪222の外寸と一致するように設定されている。すなわち、スカート部295は、先端部293に向かって窄まる形状を有している。その結果、スカート部295の内側に挿入されたガスケット200の係合爪222は窄まった位置に変位していない。または、係合爪222がわずかに変位している場合であっても、対向する突起224同士の間隔はラム110を挿入可能な状態を維持している。このように、スカート部295が係合爪222を覆っているため、係合爪222に異物が付着することを抑制できる。
【0045】
第2実施形態のガスケット200は、第1実施形態と同様に、入口が拡径された穴Hを画定する第1内面226及び第2内面227を含む内面S1と、変形の起点となるように第1内面226と第2内面227との境界部分Bに対応する位置に形成された環状溝225とを有している。一方、ガスケット200の吸子220の係合爪222には、溝123が形成されておらず、Oリング130も取り付けられていない。そして、Oリング130の代わりにスカート部295によって、係合爪222が広がらないように規制されている。これにより、隣り合う係合爪222同士の隙間を均等にすることができると共に、Oリング130を省略することができる。
【0046】
ラム110の前端部111の挿入後、前端部111を介してラム110がガスケット200を押すと、ガスケット200はシリンダ291内を前進する。ガスケット200が前進すると、係合爪222の外面はスカート部295を通過して、シリンダ291の内面と当接する。そして、前進するにつれて、シリンダ291の内面からの反力によって、係合爪222は、吸子220の穴Hの中心に向かって変位する。このとき、係合爪222は、環状溝225の底の中央を起点として変形する。
【0047】
そして、第1内面226及び第2内面227の境界部分Bは、前端部111に押し付けられる。ガスケット200がシリンダ291内へさらに挿入されると、シリンダ291の内面からの反力を受けて係合爪222が窄まる。そして窄まった位置に変位した係合爪222の突起224がラム110の係合溝112内に侵入し、突起224が係合溝112と係合する。これにより、ガスケット200は、ラム110に連結される。その後、ガスケット200がシリンダ291内を前進すると、シール部材240はシリンダ291内の薬液を押圧する。これにより、薬液が先端部293から押し出され、延長チューブ等を介して患者の体内に注入される。
【0048】
薬液の注入後は、ラム110が後退し、ラム110と連結しているガスケット200も後退する。そして、ラム110及びガスケット200が、シリンダ291の内面による規制が解除される位置まで後退する。これにより、係合爪222が外方に広がり、突起224が係合溝112から離脱する。その結果、突起224が係合溝112と係脱する。さらにラム110が後退すると、ラム110はガスケット200から離脱する。
【0049】
このような第2実施形態に係るラム110及びガスケット200によっても、環状溝225の底の中央を起点として係合爪222が変形する。そのため、複数の係合爪222が吸子220の垂線Pに向かって均等に変位する。また、ガスケット200とラム110とを連結する際に、ガスケット200に対してラム110がガタつくことを抑制できる。さらに、ガスケット200とラム110とが直接連結されるため、シリンジ290と押圧部4との間の距離を短くすることができる。そのため、注入システム1内の注入ヘッド2のサイズを小さくすることができる。さらに、第2実施形態に係るガスケット200によれば、係合爪222に異物が付着することを抑制することもできる。
【0050】
なお、第2実施形態のシリンダ291に、第1実施形態のガスケット100を取り付けることも可能である。
【0051】
[第3実施形態]
第3実施形態においては、ガスケット300の係合爪322が、凸部328と凹部329とを備えている。以下、図10を参照して第3実施形態について説明するが、第3実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について説明し、第1実施形態で説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0052】
係合爪322の凸部328は、四等分した球に一致する外形を有しており、ガスケット300の吸子320の後側端面において係合爪322と面一に構成されている。そのため、吸子320の後側から見た場合に、凸部328は略半円状の形状を有している。そして、凸部328は、一の隣接する係合爪322に向かって突出している。また係合爪322は、他の隣接する係合爪322の凸部328を受け入れる凹部329を有している。この凹部329は、凸部328と相補的な形状を有しており、他の隣接する係合爪322の凸部328と対向する位置に形成されている。吸子320の後側から見た場合に、凹部329も略半円状の形状を有しており、凸部328の外寸と凹部329の内寸とは一致するように設定されている。
【0053】
ラム110の前端部111の挿入後、前端部111を介してラム110がガスケット300を押すと、ガスケット300はシリンダ91内を前進する。ガスケット300が前進するにつれて、シリンダ91の内面からの反力によって、係合爪322は、吸子320の穴Hの中心に向かって変位する。このとき、係合爪322は、環状溝125の底の中央を起点として変形する。さらに、ガスケット300がシリンダ91内に挿入されると、シリンダ91の内面からの反力を受けて係合爪322が窄まる。
【0054】
同時に、隣り合う係合爪322同士は、互いに近づくように変位する。そのため、凸部328は、凹部329に受け入れられ、凹部329と係合する。両者の係合によって、穴Hの垂線Pと複数の係合爪322との距離を一定にして、挿入されたラム110が穴H内で偏ることを抑制できる。その後、ガスケット300がシリンダ91内をさらに前進すると、シール部材140はシリンダ91内の薬液を押圧する。これにより、薬液が先端部93から押し出され、延長チューブ等を介して患者の体内に注入される。
【0055】
薬液の注入後は、ラム110が後退し、ラム110と連結しているガスケット300も後退する。そして、ラム110及びガスケット300が、シリンダ91の内面による規制が解除される位置まで後退する。これにより、係合爪322が外方に広がり、突起124が係合溝112から離脱する。その結果、突起124が係合溝112と係脱する。さらにラム110が後退すると、ラム110がガスケット300から離脱する。
【0056】
このような第3実施形態に係るラム110及びガスケット300によっても、ガスケット300とラム110とを連結する際に、ガスケット300に対してラム110がガタつくことを抑制できる。さらに、ガスケット300とラム110とが直接連結されるため、シリンジ90と押圧部4との間の距離を短くすることができる。そのため、注入システム1内の注入ヘッド2のサイズを小さくすることができる。さらに、穴Hの垂線Pと複数の係合爪322との距離を一定にすることができる。
【0057】
なお、凸部328は、他の外形を有していてもよい。例えば、凸部328は、三角柱又は長手方向に二等分した円柱に一致する外形を有していてもよい。この場合、凸部328は垂線Pに沿って延在し、凹部329は凸部328と相補的な形状を有している。
【0058】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上述の各実施形態及び変形例は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0059】
例えば、係合爪122,222,322に、切欠き又は穴を形成してもよい。これにより、切欠き又は穴が形成された部分が変形するため、係合爪122,222,322が変位しやすくなる。また、ガスケットの内面S1は、2つの面に分割されていなくともよい。例えば、内面S1は、連続する傾斜面又は湾曲面を構成していてもよい。さらに、上記ガスケット100,200,300は、垂線Pに直交する断面が略円形の外側形状を有している。しかし、上記ガスケット100,200,300は、垂線Pに直交する断面が略楕円形の外側形状を有していてもよい。この場合、シール部材140,240及びシリンジ90,290は、ガスケット100,200,300と相補的な内側形状を有する。
【0060】
また、薬液が充填されたシリンジ90,290は、プレフィルシリンジであってもよい。また、薬液は、手動でシリンジ90,290に充填されてもよく、注入ヘッド2又は充填器によってシリンジ90,290に充填されてもよい。さらに、シリンジ90,290には、RFID又はバーコード等のデーターキャリアを設けることができる。このデーターキャリアには、充填された薬液の情報が記録されている。そして、注入システム1は、注入ヘッド2を介してデーターキャリアから記録された情報を読み取り、薬液の注入量を制御することができる。例えば、制御装置は、読み取った薬液の情報(ヨード量)に基づいて、体重当たりの最適な注入量を計算してコンソールのタッチパネルに表示させることができる。
【0061】
[変形例]
図11に示すように、フランジ492の外周の一部に切り欠き496を形成してもよい。具体的には、フランジ492は、シリンジ490の中心軸Cに対して円弧形状となる2つの円弧部497を有している。さらに、フランジ492は、円弧部497の間に、互いに対向する2つの平坦部498を有している。この平坦部498は、一例として、フランジ492の一部を、直線状かつ平行にカットして形成できる。そして、それぞれの円弧部497の略中央部分に、中心軸Cに対して点対称となるように、位置決め用の切り欠き496を形成する。つまり、2つの切り欠き496を結ぶ線分と平坦部498とが平行になるように、切り欠き496を形成する。さらに、アダプタ8には、切り欠き496と係合する係合部として、例えばロック爪、凸部、又はラッチを設ける。
【0062】
このように構成されたシリンジ490は、フランジ492をアダプタ8の溝に対して平行にした状態でアダプタ8にはめこまれる。このとき、平坦部498がアダプタ8の係合部に対向するように、シリンジ490をアダプタ8にはめこむ。その後、シリンジ490を90度回転させ、係合部を切り欠き496と係合させる。これにより、シリンジ490をアダプタ8に装着できる。係合部が切り欠き496と係合すると、平坦部498が水平となるように、シリンジ490がアダプタ8に対して位置決めされる。これにより、シリンジ490が適切にアダプタ8に保持され、シリンジ490の破損を防止できる。さらに、ラム110がガタつくことが抑制されるため、シリンジ490に対してまっすぐラム110を挿入することができる。これにより、高圧で薬液を注入する場合であっても、ガスケット100からシリンジ490外へ薬液が漏れることを抑制できる。代替的に、1つ又は3つ以上の切り欠き496を形成してもよく、切り欠き496を平坦部498に形成してもよい。
【0063】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0064】
(付記1)
挿入部及び係合爪を有する吸子と、前記吸子に取り付けられたOリング及びシール部材とを備えるガスケットの製造方法であって、
前記係合爪に形成された溝内に前記Oリングを取り付け、
前記挿入部を前記シール部材内の空間に挿入して、前記シール部材を前記挿入部に取り付ける、ガスケットの製造方法。
【0065】
この出願は2018年9月13日に出願された日本国特許出願第2018-171532号からの優先権を主張し、その全内容を引用してこの出願の一部とする。
【符号の説明】
【0066】
1:注入システム、2:注入ヘッド、90:シリンジ、91:シリンダ、100:ガスケット、110:ラム、112:係合溝、122:係合爪、124:突起、125:環状溝、126:第1内面、127:第2内面、130:Oリング、200:ガスケット、222:係合爪、224:突起、225:環状溝、295:スカート部、226:第1内面、227:第2内面、290:シリンジ、291:シリンダ、300:ガスケット、322:係合爪、328:凸部、329:凹部、490:シリンジ、B:境界部分、H:穴、P:垂線、S1:内面、S2:外面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11