(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】自動変速機用オイルフィルタの濾過材
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20240227BHJP
B01D 35/02 20060101ALI20240227BHJP
D04H 1/498 20120101ALI20240227BHJP
D04H 1/74 20060101ALI20240227BHJP
D04H 1/4382 20120101ALI20240227BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20240227BHJP
【FI】
B01D39/16 A
B01D35/02 E
D04H1/498
D04H1/74
D04H1/4382
F16H57/04 F
(21)【出願番号】P 2020555613
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2019043808
(87)【国際公開番号】W WO2020096030
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2018211289
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】日尾 陽介
(72)【発明者】
【氏名】津村 達彦
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-193028(JP,A)
【文献】特開2012-125683(JP,A)
【文献】特開2004-270865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-41/04
B01D 24/00-35/04
B01D 35/06-37/04
D04H 1/00-18/04
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割可能な複合繊維から発生した細繊維が絡んだ絡合不織布を含む自動変速機用オイルフィルタの濾過材であって、濾過材の通気度が30mL/cm
2/sec.以上で
あり、前記絡合不織布は繊度0.4dtex以下の細繊維と繊度6.6dtex以上の太繊維とが混在していることを特徴とする自動変速機用オイルフィルタの濾過材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機用オイルフィルタの濾過材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車の低燃費を目的とした自動変速機の多段化や小型化の進行により、変速機内のフルード流路のバルブ間のクリアランスが小さくなっているため、従来より小さな粒子径のダストを捕捉できないと、バルブ内で詰まり、変速不良を引き起こすという問題があり、この問題に対して、濾過材に対しては、小粒径のダストを捕捉する濾過性能が要求されている。
【0003】
本願出願人は、自動変速機用オイルフィルタの濾過材(特許文献1)を提案しているが、乾式ウエブに対してニードルパンチを施したニードルパンチ不織布を好適に使用しており、小粒子径のダストを効率良く捕捉することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような現状下、本発明の課題は、小粒径のダストも捕捉できる濾過性能の優れる自動変速機用オイルフィルタの濾過材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、[1]分割可能な複合繊維から発生した細繊維が絡んだ絡合不織布を含む自動変速機用オイルフィルタの濾過材、である。
本発明は、[2]絡合不織布が繊度0.4dtex以下の細繊維を含み、且つ、通気度が30mL/cm2/sec.以上である[1]の自動変速機用オイルフィルタの濾過材、であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の濾過材は、分割可能な複合繊維から発生した細繊維が絡んだ絡合不織布からなり、細繊維を含んでいることによって、繊維表面積が広いだけでなく、細繊維が絡んでいることによって微小空間が形成されているため、小粒径のダストも捕捉できる濾過性能の優れるものである。
【0008】
本発明の濾過材は、細繊維を含むことによって、繊維表面積が広く、また細繊維が絡んでいることによって微小空隙が形成されているため、濾過性能に優れる濾過材である。また、好ましくは、通気度30mL/cm2/sec以上の空隙を有するため、低圧力損失の濾過材である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)分割可能な複合繊維;
分割可能な複合繊維(以下、「分割型複合繊維」と表記することがある)は、分割して細繊維を発生できる繊維である。例えば、(イ)横断面において、相溶性の低い樹脂同士がオレンジ状又は多層積層状に配置した繊維、(ロ)ある溶媒によって溶解する樹脂と、前記溶媒によって溶解しないか、溶解速度が前記樹脂よりも遅い樹脂とを含む繊維、(ハ)ある溶媒による膨潤の程度の異なる樹脂を含む繊維、などを挙げることができる。(イ)の分割型複合繊維の場合、水流などの流体流、ニードル、カレンダー、或はフラットプレスなどの物理的作用によって分割して、細繊維を発生させることができる。また、(ロ)の分割型複合繊維の場合、ある溶媒によって樹脂を溶解させて除去する化学的作用によって、細繊維を発生させることができる。更に、(ハ)の分割型複合繊維の場合、ある溶媒に晒し、膨潤の程度の差を利用する化学的作用により、細繊維を発生させることができる。これらの中でも、(イ)の分割型複合繊維であると、細繊維が発生することによる広い繊維表面を得られるのと同時に、発生した細繊維も絡んで微小空間を形成でき、小粒径のダストも捕捉しやすい絡合不織布とすることができるため好適である。また、(イ)の分割型複合繊維であると、細繊維が発生することにより形成される絡合不織布内部の微小空間によっても小粒径のダストを捕捉できるため、ダスト捕捉量を多くできる。特に、横断面においてオレンジ状に配置した分割型複合繊維であると、繊度の揃った細繊維を発生させることができ、捕集性能のバラツキが発生しにくいため好適である。なお、(ロ)又は(ハ)の分割型複合繊維であっても、細繊維を発生させた後に、水流等の物理的作用を作用させれば、細繊維が絡んだ絡合不織布とすることができる。なお、好適な(イ)の分割型複合繊維が2種類の樹脂からなる場合、例えば、ポリアミドとポリエステル、ポリアミドとポリオレフィン、ポリエステルとポリオレフィンなどの組み合わせを挙げることができる。また、分割型複合繊維の繊度、繊維長は細繊維に分割できる限り、特に限定するものではない。
【0010】
(2)細繊維;
本発明の濾過材に用いる絡合不織布に含まれる分割型複合繊維から発生した細繊維の繊度は、0.4dtex以下であるのが好ましく、0.3dtex以下であるのがより好ましく、0.2dtex以下であるのが更に好ましい。このような繊度の細繊維を含む絡合不織布からなると、繊維表面積が広く、また細繊維同士間又は細繊維と他の繊維との間に微小空隙が形成されており、絡合不織布内部でダストを捕捉できるため、濾過性能に優れる。
また、繊維強度が優れており、細繊維自体からダストを発生しないように、0.01dtex以上であるのが好ましい。
【0011】
細繊維の繊維長は、細繊維が脱落することなく、均一に分散した濾過材であるように、25~102mmであるのが好ましく、38~76mmであるのがより好ましく、38~51mmであるのが更に好ましい。なお、前記の各下限および上限は、所望に応じて、適宜組み合わせることができる。
【0012】
細繊維の横断面形状は特に限定するものではないが、例えば、円形、長円形状、楕円形状、半円形状、多角形形状(例えば、略三角形形状、略台形形状など)などであることができる。多角形形状であると、繊維の表面積が大きくなり、ダストの捕集性に優れるため好適である。
【0013】
細繊維の樹脂組成は、例えば、ポリアミド系樹脂(例えば、6ナイロン、66ナイロンなど)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン系樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、高温のオイル中で長期間の耐久性に優れるように、軟化温度が高く耐熱性に優れるポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂を含んでいるのが好ましい。
【0014】
なお、分割型複合繊維は完全に分割している必要はない。例えば、個々の分割型複合繊維の一部のみ、又は絡合不織布における一部の分割型複合繊維のみが分割して細繊維が発生していても良い。また、細繊維の一端が分割型複合繊維と結合していても良い。更に、細繊維が凝集しており、分散した状態になくても良い。
【0015】
本発明の濾過材に用いる絡合不織布に含まれる細繊維の割合は対象となるダストの粒径によって異なるため、特に限定するものではないが、濾過材の孔径が45μm以下であるように含んでいるのが好ましく、40μm以下であるように含んでいるのがより好ましく、35μm以下であるように含んでいるのが更に好ましく、33μm以下であるように含んでいるのが更に好ましく、31μm以下であるように含んでいるのが更に好ましく、29μm以下であるように含んでいるのが更に好ましく、27μm以下であるように含んでいるのが更に好ましく、25μm以下であるように含んでいるのが更に好ましい。
一方で、濾過材の圧力損失が高くならないように、通気度が30mL/cm2/sec以上であるように細繊維を含んでいるのが好ましく、35mL/cm2/sec以上であるように含んでいるのがより好ましく、37mL/cm2/sec以上であるように含んでいるのが更に好ましく、39mL/cm2/sec以上であるように含んでいるのが更に好ましい。
【0016】
(3)太繊維;
本発明の濾過材に用いる絡合不織布が細繊維のみから構成されていると、絡合不織布構造が緻密になり過ぎて、圧力損失が大きくなる傾向があり、また、濾過材の厚みを大きくして、絡合不織布内部でもダストを捕捉でき、濾過寿命を長くすることができるように、細繊維以外に、繊度6.6dtex以上の太繊維を含んでいるのが好ましい。
太繊維の繊度の上限は特に限定するものではないが、濾過性能に優れているように、17dtex以下であるのが好ましい。
【0017】
太繊維の繊維長は特に限定するものではないが、太繊維が脱落することなく、均一に分散した濾過材であるように、25~127mmであるのが好ましく、38~102mmであるのがより好ましく、51~76mmであるのが更に好ましい。なお、前記の各下限および上限は、所望に応じて、適宜組み合わせることができる。
【0018】
太繊維の横断面形状は特に限定するものではないが、例えば、円形、長円形状、楕円形状、半円形状、多角形形状(例えば、略三角形形状、略台形形状など)などであることができる。
【0019】
太繊維の樹脂組成は、先述した前記細繊維と同様であり、特に、軟化温度が高く耐熱性に優れるポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。
【0020】
本発明の濾過材に用いる絡合不織布に含むことのできる太繊維の割合は、濾過材の通気度が30mL/cm2/sec以上であるように含んでいるのが好ましいが、太繊維は絡合不織布構成繊維の10~90mass%含まれているのが好ましく、20~80mass%含まれているのがより好ましく、30~70mass%含まれているのが更に好ましい。なお、前記の各下限および上限は、所望に応じて、適宜組み合わせることができる。
【0021】
(4)中繊維;
本発明の濾過材に用いる絡合不織布は、局所的な繊維目付のバラツキを小さくし、また、濾過性能と低圧力損失とを同時に満足しやすいように、細繊維以外に、繊度0.4dtexを超え、6.6dtex未満の中繊維を含んでいるのが好ましい。好ましくは繊度0.6~6dtexの中繊維を含み、より好ましくは繊度0.8~5dtexの中繊維を含み、更に好ましくは1~4dtexの中繊維を含む。なお、前記の各下限および上限は、所望に応じて、適宜組み合わせることができる。
なお、細繊維以外に中繊維と太繊維を含んでいる場合の細繊維以外の繊維の平均繊度は、濾過性能と低圧力損失とを同時に満足しやすいように、0.5~6dtexであるのが好ましく、0.8~5dtexであるのがより好ましく、1~4dtexであるのが更に好ましい。なお、前記の各下限および上限は、所望に応じて、適宜組み合わせることができる。
【0022】
中繊維の繊維長は特に限定するものではないが、中繊維が脱落することなく、均一に分散した濾過材であるように、25~102mmであるのが好ましく、38~76mmであるのがより好ましく、38~51mmであるのが更に好ましい。なお、前記の各下限および上限は、所望に応じて、適宜組み合わせることができる。
【0023】
中繊維の横断面形状は特に限定するものではないが、例えば、円形、長円形状、楕円形状、半円形状、多角形形状(例えば、略三角形形状、略台形形状など)などであることができる。
【0024】
中繊維の樹脂組成は、先述した前記細繊維と同様であり、特に、軟化温度が高く耐熱性に優れるポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。
【0025】
本発明の濾過材に用いる絡合不織布に含むことのできる中繊維は、濾過性能と低圧力損失とを同時に満足しやすいように、絡合不織布構成繊維の5~80mass%含まれているのが好ましく、10~70mass%含まれているのがより好ましく、20~60mass%含まれているのが更に好ましい。なお、前記の各下限および上限は、所望に応じて、適宜組み合わせることができる。
【0026】
(5)絡合不織布(濾過材);
本発明の濾過材に用いる絡合不織布は絡合(例えば、水流絡合、ニードルパンチ)した不織布であるが、絡合に加えて、繊維の融着及び/又はバインダによる接着により、繊維同士が固定された絡合不織布であることができる。特に、分割型複合繊維に水流を作用させることにより、分割型複合繊維を分割して細繊維を発生させると同時に絡合させた絡合不織布であるのが好ましい。このように絡合不織布であることによって、繊維が厚さ方向に配向しやすく、絡合不織布の内部でもダストを捕捉することができ、ダスト捕捉量が多くなる。
【0027】
繊維ウエブは乾式法又は湿式法により形成できるが、繊維が脱落することがないように、ある程度の長さを有する細繊維等であるのが好ましいため、乾式法により形成するのが好ましい。
【0028】
各方向への強度が均等であるように、絡合不織布構成繊維は長手方向に対して交差して配向した繊維を含んでいるのが好ましい。
【0029】
濾過面積を広くするために、濾過材を襞折りした形態で使用する場合には、襞折り加工性に優れるように、また、襞折り形態を保持し、隣接する襞と密着することがないように、バインダで接着して剛性が高められた絡合不織布(濾過材)であるのが好ましい。
【0030】
このようなバインダとしては、絡合不織布(濾過材)の剛性を高められる限り特に限定するものではないが、ゴム系バインダ、熱硬化性バインダ、熱可塑性バインダの中から選ばれる少なくとも1つのバインダによって、接着されているのが好ましい。より具体的には、ゴム系バインダとして、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを挙げることができる。熱硬化性バインダとして、例えば、フェノール樹脂、架橋剤入りアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリイミドなどを挙げることができる。熱可塑性バインタとして、例えば、ケトン樹脂、ノルボルネン樹脂、フッ素プラスチック、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンオキサイド、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリビニルアルコールなどを挙げることができる。
【0031】
濾過性能に優れているように、絡合不織布(濾過材)の孔径は45μm以下であるのが好ましく、40μm以下であるのがより好ましく、35μm以下であるのが更に好ましく、33μm以下であるのが更に好ましく、31μm以下であるのが更に好ましく、29μm以下であるのが更に好ましく、27μm以下であるのが更に好ましく、25μm以下であるのが更に好ましい。絡合不織布(濾過材)の孔径の下限は特に限定されないが、絡合不織布(濾過材)の内部でもダストを捕捉しやすいように、例えば、12μm以上である。
【0032】
低圧力損失であるように、絡合不織布(濾過材)の通気度は30mL/cm2/sec以上であるのが好ましく、35mL/cm2/sec以上であるのがより好ましく、37mL/cm2/sec以上であるのが更に好ましく、39mL/cm2/sec以上であるのが更に好ましい。絡合不織布(濾過材)の通気度の上限は特に限定されないが、例えば、90mL/cm2/sec以下である。
【0033】
絡合不織布(濾過材)における繊維量(目付)は濾過性能と低圧力損失とを同時に満足しやすいように、80~140g/m2であるのが好ましく、90~130g/m2であるのがより好ましく、100~130g/m2であるのが更に好ましい。なお、前記の各下限および上限は、所望に応じて、適宜組み合わせることができる。
【0034】
なお、絡合不織布(濾過材)は繊維同士がバインダで接着して剛性が高いのが好ましいが、バインダ量(固形分)は特に限定するものではないが、3~40g/m2であるのが好ましく、5~30g/m2であるのがより好ましく、10~20g/m2であるのが更に好ましい。なお、前記の各下限および上限は、所望に応じて、適宜組み合わせることができる。
【0035】
絡合不織布(濾過材)の厚さは特に限定するものではないが、平板状の濾過材を濾過器に設置する場合は、濾過面積を広くすることが困難な為、厚い方が好ましいため、0.5~4.0mmであるのが好ましく、0.8~3.0mmであるのがより好ましく、1.0~2.5mmであるのが更に好ましい。一方で、襞折状態の濾過材を濾過器に設置する場合は、平板状の濾材より薄い方が好ましく、より具体的には、0.3~2.5mmであるのが好ましく、0.5~2.0mmであるのがより好ましく、0.8~1.5mmであるのが更に好ましい。なお、前記の各下限および上限は、所望に応じて、適宜組み合わせることができる。
【0036】
本発明の濾過材は前述のような絡合不織布に加えて、他の繊維シート(例えば、不織布、織物、編物など)を含んで構成することができるが、絡合不織布は繊維が厚さ方向に配向しているため、絡合不織布の内部でもダストを捕捉することができ、ダスト捕捉量が多くなり、特に、(1)太繊維及び/又は中繊維を含んでいる場合、(2)絡合不織布が乾式繊維ウエブに由来している場合のように、比較的絡合不織布の構造が粗い場合には、絡合不織布の内部でもダストを捕捉しやすく、ダスト捕捉量が多いため、他の繊維シートを含んでいる必要はなく、絡合不織布のみから構成することができる。
本発明の濾過材は平板で、或いは襞折状態などの所望形態に成形して使用することができる。
【0037】
(6)濾過材の製造方法;
本発明の濾過材は、以下に限定されるものではないが、例えば、以下の手順で製造することができる。
【0038】
(i)分割型複合繊維、並びに、所望により、更に太繊維及び/又は中繊維を用意する。
【0039】
(ii)分割型複合繊維、並びに、所望により太繊維及び/又は中繊維を混綿し、カード機などの開繊機により開繊し、繊維ウエブを形成する。繊維ウエブの繊維配向が一方向である場合には、繊維ウエブの長手方向に対して、繊維配向を交差させるのが好ましい。なお、分割型複合繊維は、濾過性能に優れるように、18g/m2以上含ませるのが好ましく、20g/m2以上含ませるのがより好ましく、22g/m2以上含ませるのが更に好ましい。分割型複合繊維量の上限は通気性に優れ、低圧力損失であるように、例えば、50g/m2以下であるのが好ましい。
【0040】
(iii)繊維ウエブに対して水流を作用させることにより、分割型複合繊維を分割して細繊維を発生させるとともに、細繊維同士を絡合し、太繊維及び/又は中繊維を含んでいる場合には、細繊維を太繊維及び/又は中繊維とも絡合し、絡合不織布を作製する。
【0041】
剛性を必要とする場合、絡合不織布に対して、バインダ樹脂を付与し、バインダ樹脂により剛性を高め、濾過材とする。
【実施例】
【0042】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0043】
《実施例1》
(1)繊維の準備
次の繊維をそれぞれ準備した。
(a)繊維横断面において、ポリエチレンテレフタレートとナイロン6とが交互に配列したオレンジ横断面を有する、繊度2.75dtex、繊維長51mmの分割型複合繊維(横断面が略三角形形状で、繊度0.17dtexのポリエチレンテレフタレート細繊維と、横断面が略三角形形状で、繊度0.17dtexのナイロン6細繊維を発生可能)
(b)ポリエチレンテレフタレートからなる繊度1.44dtex、繊維長38mmのポリエステル中繊維
(c)ポリエチレンテレフタレートからなる繊度6.7dtex、繊維長76mmのポリエステル太繊維
【0044】
(2)濾過材の製造
前記繊維を用い、表1に示す配合で繊維を混綿し、カード機により開繊して一方向性繊維ウエブを形成した後、繊維の配向方向が繊維ウエブの搬送方向と交差するように交差させ、交差繊維ウエブをそれぞれ形成した。
次いで、各交差繊維ウエブを針密度450本/cm2でニードルパンチ、又は圧力10MPaで3回の水流絡合加工をした後に乾燥して、それぞれ絡合不織布を形成した。
そして、各絡合不織布をエポキシ樹脂浴に浸漬した後、一対のロール間で、エポキシ樹脂付着量が固形分で15g/m2となるよう絞り、温度160℃で乾燥して、濾過材をそれぞれ製造した。
【0045】
【表1】
なお、濾過材の厚みは2kPa荷重時の値である。
【0046】
(3)濾過材の物性;
各濾過材の物性を表2に示す。なお、各測定は以下の方法で行った。
【0047】
(孔径)
ポロメータ(Perm Polometer、PMI社製)を用いてミーンフローポイント法により測定した。
【0048】
(通気度)
JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」に規定される6.8.1(フラジール形法)によって測定した。
【0049】
(積算効率)
ISO16889に規定された試験機を使用し、流量22.7L/min.、油量30L、試験時間1時間における積算効率を測定した。なお、積算効率は初期ダスト濃度50mg/Lからの濃度低下割合にて60%以上を濾過性能に優れると判断した。
【0050】
(圧力損失)
油温-20℃、流量8L/min.の時に発生する負圧を測定した。なお、圧力損失が40kPa以下である場合に圧力損失が低いと判断した。
【0051】
(エレメント成形性)
濾過材を襞折り機にて加工し、襞折り形態を保持できるかを判断した。
【0052】
【0053】
(考察)
(1)比較例1と比較例2の対比から、水流絡合はニードルパンチよりも若干孔径が小さくなり緻密になるが、充分な濾過効率に到達するまでには至らない。
(2)比較例2と実施例1との対比から、細繊維を含むと孔径が小さくなり、濾過効率が優れる。
(3)実施例1と実施例2との対比から、太繊維が多いと孔径が大きくなり、濾過効率が悪くなる。
(4)実施例1~7から、通気度が30mL/cm2/sec以上であれば、圧力損失が小さい。特に、実施例4と実施例7との対比から、通気度が35mL/cm2/sec以上であると、より圧力損失が小さくなる。
(5)実施例5と参考例との対比から、濾過材を襞折成形して使用する場合には、樹脂で固定するのが好ましい。
(6)実施例5と実施例6との対比から、分割型複合繊維量が多いと、孔径が小さくなり、濾過効率が上がる。
(7)実施例1~7から、孔径が45μm以下であれば、濾過効率に優れている。特に、実施例1、5、7の対比から、孔径が30μm以下であると、より濾過効率が優れている。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の濾過材は、自動変速機用オイルフィルタの製造に用いることができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。