(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】幾何学的分離を採用する光ポンピングチューナブルVCSEL
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02253 20210101AFI20240227BHJP
H01S 5/183 20060101ALI20240227BHJP
H01S 5/068 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
H01S5/02253
H01S5/183
H01S5/068
(21)【出願番号】P 2020562733
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(86)【国際出願番号】 US2019031795
(87)【国際公開番号】W WO2019217868
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-19
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514156116
【氏名又は名称】エクセリタス テクノロジーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン バートリー シー.
(72)【発明者】
【氏名】アティア ワリド エー.
(72)【発明者】
【氏名】ホィットニー ピーター エス.
(72)【発明者】
【氏名】クズネツォフ マーク イー.
(72)【発明者】
【氏名】マロン エドワード ジェイ.
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-502288(JP,A)
【文献】特開平06-097545(JP,A)
【文献】特表2018-503966(JP,A)
【文献】特開2017-098303(JP,A)
【文献】特開2002-280668(JP,A)
【文献】特表2016-513889(JP,A)
【文献】特開平11-354864(JP,A)
【文献】特開2013-197593(JP,A)
【文献】米国特許第06611546(US,B1)
【文献】特開2018-139268(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0026312(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0288129(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0031289(US,A1)
【文献】米国特許第10714893(US,B2)
【文献】米国特許第06574255(US,B1)
【文献】特表2013-522920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0165641(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01S 3/00 - 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューナブルVCSELと、
前記チューナブルVCSELにより放出されたVCSELビームをコリメートするように構成されたレンズと、
前記レンズを透過
するポンプ光を生成するように構成されたポンプ
であって、前記ポンプ光の光軸は、前記レンズの光軸に対してオフセットしている
ポンプと、
前記VCSELビームが、ダイクロイックフィルタによって反射されるように、そして、前記ポンプ光と反射されたポンプ光の両方が、前記ダイクロイックフィルタを透過するように構成されたダイクロイックフィルタであって、前記反射されたポンプ光は、前記チューナブルVCSELから反射されたポンプ光である、ダイクロイックフィルタと、を備える、光ポンピングチューナブルVCSEL掃引光源モジュール。
【請求項2】
前記ポンプからの光を前記
チューナブルVCSELの前で
集束することにより、デフォーカスすることによって
、前記ポンプ光の光軸は、前記レンズの光軸に対してオフセットしている、請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
前記ポンプからの光を前記
チューナブルVCSELの後ろで
集束することにより、デフォーカスすることによって
、前記ポンプ光の光軸は、前記レンズの光軸に対してオフセットしている、請求項1に記載のモジュール。
【請求項4】
前記
チューナブルVCSELに対してある角度で、前記ポンプからの
光を結合することによって、前記ポンプ光の光軸は、前記レンズの光軸に対してオフセットしている、請求項1に記載のモジュール。
【請求項5】
前記角度が88°未満である、請求項4に記載のモジュール。
【請求項6】
前記ポンプが、VBGまたはFBG安定化レーザ、離散モードレーザ、DFBレーザ、FPレーザ、および/またはDBRレーザである、請求項1に記載のモジュール。
【請求項7】
前記ポンプが、スーパールミネッセントダイオード(SLED)である、請求項1に記載のモジュール。
【請求項8】
前記ポンプが、コヒーレンス崩壊で動作する、請求項1に記載のモジュール。
【請求項9】
統合ダイクロイックフィルタをさらに備える、請求項1に記載のモジュール。
【請求項10】
統合ダイクロイックフィルタおよびSOAをさらに備える、請求項1に記載のモジュール。
【請求項11】
統合ダイクロイックフィルタと、ある角度で、ポンプ光を結合する
チューナブルVCSELと、単一モード(周波数)挙動を誘発するためのVBGと、をさらに備える、請求項1に記載のモジュール。
【請求項12】
統合ダイクロイックフィルタと、SOAと、アイソレータと、をさらに備える、請求項1に記載のモジュール。
【請求項13】
チューナブルVCSELを光ポンピングするための方法であって、
ポンプ光源を用いてポンプ光を生成するステップと、
前記ポンプ光源からの前記ポンプ光を前記
チューナブルVCSELの中に結合するステップと、
前記
チューナブルVCSELに対してある角度で
前記ポンプ光を結合することによって、前記ポンプ光が前記ポンプ光源の中に再び結合されるのを防ぐステップと、
ダイクロイックフィルタによって、VCSELビームを反射するステップと、前記ポンプ光と前記チューナブルVCSELから反射されたポンプ光である反射されたポンプ光の両方が、前記ダイクロイックフィルタを透過するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記
チューナブルVCSELの前で
集束することにより、ポンプ光をデフォーカスすることによって
、前記ポンプ光の光軸は
、レンズの光軸に対してオフセットしている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記
チューナブルVCSELの後ろで
集束することにより、ポンプ光をデフォーカスすることによって
、前記ポンプ光の光軸は
、レンズの光軸に対してオフセットしている、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記
チューナブルVCSELに対してある角度で前記ポンプ光を結合することによって、前記ポンプ光の光軸は
、レンズの光軸に対してオフセットしている、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記角度が88°未満である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポンプ光源が、VBGまたはFBG安定化レーザ、離散モードレーザ、DFBレーザ、FPレーザ、および/またはDBRレーザである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記ポンプ光源が、スーパールミネッセントダイオード(SLED)である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記ポンプ光源が、コヒーレンス崩壊で動作する、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記ポンプ光源からの前記ポンプ光を前記
チューナブルVCSELに結合するステップと、
ダイクロイックフィルタを使用して、前記
チューナブルVCSELによって生成された掃引光信号を分離するステップと、
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記掃引光信号をSOAで増幅するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
増幅器を使用して、統合気密パッケージの外部にある前記SOAを前記
チューナブルVCSELから分離するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幾何学的分離を採用する光ポンピングチューナブルVCSELに関する。
【0002】
(関連出願)
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2018年5月11日に出願された米国仮出願第62/670,423号の利益を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
MEMS(微小電気機械システム)のチューナブルVCSEL(垂直共振器面発光レーザ)は、そのチューニング速度、大きなコヒーレンス長[非特許文献1,2,3]、コヒーレンス再生アーティファクトがないこと[非特許文献4]により、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)において有用である。多くの波長帯域でVCSELが可能だが、これまでのほとんどの作業では、1550ナノメートル(nm)[非特許文献5,6,7]、850nm[非特許文献8]、1310nm[非特許文献9,10,11,12]、および1060nm[非特許文献9,10,13,14]の波長帯域で実行している。1550の帯域は、光通信で役立ち、850nmおよび1310nmはレーザで役立つ。1310および1060の帯域は、OCTでの使用が一般的である。特に1060の帯域は、網膜のイメージング[非特許文献14]やバイオメトリ(眼全体の構造の距離測定)[非特許文献14]などの眼科での用途のために興味深い。850nmの帯域は、その範囲の水の透明度とシリコン光検出器との互換性のため、眼科でも興味深い。
【0004】
光ポンピングMEMSチューナブルVCSELは、一般に、電気ポンピングされたものよりも広いチューニング範囲を有する[非特許文献2,9,13]。光ポンピングでは、ポンプレーザ光が、VCSELに給電するために使用される。その後、VCSELに吸収されたポンプ光は、チューナブルVCSEL光として、より長い波長で再放射される。
【0005】
しかしながら、光ポンピングには、低ノイズポンプレーザ光でVCSELを励起するという課題がある。一般に、ポンプのRIN(相対強度のノイズ)は、VCSEL光に転送される。ポンプレーザは、(1)基本的なRIN[非特許文献15]のために、(2)ファブリ・ペロー・レーザのモードホッピングのために、あるいは(3)VCSELから反射されたポンプ光のフィードバックがポンプを不安定にするために、ノイズが発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2014/0176958号
【非特許文献】
【0007】
【文献】B. Potsaid, V. Jayaraman, J.G. Fujimoto, J. Jiang, P.J.S. Heim, A.E. Cable, “MEMS tunable VCSEL light source for ultrahigh speed 60kHz- MHz axial scan rate and long range centimeter class OCT imaging”, Proc. of SPIE, 8213, 82130M-1/8,(2012)
【文献】D. D. John, C. B. Burgner, B. Potsaid, M. E. Robertson, B. K. Lee, W. J. Choi, A. E. Cable, J. G. Fujimoto, and V. Jayaraman, “Wideband electrically-pumped 1050nm MEMS-tunable VCSEL for ophthalmic imaging,” J. Lightwave Technol. 33, 3461-3468(2015)
【文献】Z. Wang, B. Potsaid, L. Chen, C. Doerr, H-C. Lee, T. Nielson, V. Jayaraman, A.E. Cable, E. Swanson, and J.G. Fujimoto, “Cubic meter volume optical coherence tomography”, Optica, 3, 1496-1503(2016)
【文献】B. Johnson, W. Atia, M. Kuznetsov, B.D. Goldberg, P. Whitney, and D.C. Flanders, “Coherence properties of short cavity swept lasers,” Biomed. Opt. Express 8, 1045-1055(2017)
【文献】Y. Matsui, D. Vakhshoori, P. Wang, P. Chen, C-C. Lu, M. Jiang, K. Knopp, S. Burroughs, and P. Tayebati, “Complete Polarization Mode Control of Long-Wavelength Tunable Vertical-Cavity Surface-Emitting Lasers Over 65-nm Tuning, Up to 14-mW Output Power”, IEEE J. Quantum Electronics, 39, 1037-1048(2003)
【文献】Y. Rao, W. Yang, C. Chase, M.C.Y. Huang, D.P. Worland, S. Khaleghi, M.R. Chitgarha, M. Ziyadi, A.E. Willner, and C.J. Chang-Hasnain, “Long-Wavelength VCSEL Using High-Contrast Grating”, IEEE J. Selected Topics in Quantum Electronics, 19, 1701311-1701311(2013)
【文献】Bandwidth10, Inc. tunable VCSELs. http://www.bandwidth10.com/
【文献】D. D. John, B. Lee, B. Potsaid, A. C. Kennedy, M. E. Robertson, C. B. Burgner, A. E. Cable, J. G. Fujimoto, and V. Jayaraman, “Single-Mode and High-Speed 850nm MEMS-VCSEL,” in Lasers Congress 2016, OSA Technical Digest (Optical Society of America,2016), paper ATh5A.2
【文献】V. Jayaraman, J. Jiang, B. Potsaid, M. Robertson, P.J.S. Heim, C. Burgner, D. John, G.D. Cole, I. Grulkowski, J.G. Fujimoto, A.M. Davis, and A.E. Cable, “VCSEL Swept Light Sources”, 659-686, in Optical Coherence Tomography, W. Drexler, J.G. Fujimoto (eds.), Springer International Publishing Switzerland 2015
【文献】V. Jayaraman, D.D. John, C. Burgner, M.E. Robertson, B. Potsaid, J.Y. Jiang, T.H. Tsai, W. Choi, C.D. Lu, P.J.S. Heim, J.G. Fujimoto, and A.E. Cable, “Recent Advances in MEMS-VCSELs for High Performance Structural and Functional SS-OCT Imaging”, Proc. of SPIE 8934, 893402-1/11(2014)
【文献】Thorlabs 1310nm MEMS-VCSEL swept laser: https://www.thorlabs.com/newgrouppage9.cfm?objectgroup_id=7109
【文献】V. Jayaraman, G.D. Cole, M. Robertson, A. Uddin and A. Cable, “High-sweep-rate 1310nm MEMS-VCSEL with 150nm continuous tuning range,” Electronics Letters, 48, 867-869(2012)
【文献】V. Jayaraman, G.D. Cole, M. Robertson, C. Burgner, D. John, A. Uddin and A. Cable, “Rapidly swept, ultra-widely-tunable 1060nm MEMS-VCSELs”, Electronics Letters, 48, 1331-1333(2012)
【文献】I. Grulkowski, J.J. Liu, B. Potsaid, V. Jayaraman, C.D. Lu, J. Jiang, A.E. Cable, J.S. Duker, and J.G. Fujimoto,“Retinal, anterior segment and full eye imaging using ultrahigh speed swept source OCT with vertical-cavity surface emitting lasers,”Biomed. Opt. Express 3, 2733-2751(2012)
【文献】L.A. Coldren and S.W. Corzine, Diode lasers and photonic integrated circuits, Chapter 5, John Wiley & Sons, Inc.1995
【文献】Eblana Photonics. http://www.eblanaphotonics.com/news-and-events.php
【文献】J. O’Carroll, R. Phelan, B. Kelly, D. Byrne, L.P. Barry, and J. O’Gorman, “Wide temperature range 0<T<85°C narrow linewidth discrete mode laser diodes for coherent communications applications”, Optics Express, 19, B90-B95(2011)
【文献】H. Wenzel, K. Hausler, G. Blume, J. Fricke, M. Spreemann, M. Zorn, and G. Erbert, “High-power 808nm ridge-waveguide diode lasers with very small divergence, wavelength-stabilized by an external volume Bragg grating”, Optics Letters, 34, 1627-1629(2009)
【文献】Ondax, Inc. http://www.ondax.com/downloads/surelock/Laser-Selector-Guide-2.pdf
【文献】Laser Components, Inc. https://www.lasercomponents.com/fileadmin/user_upload/home/Datasheets/pd_ld/luxxmaster_785nm_butterfly.pdf
【文献】Q. Zou and S. Azouigui, “Analysis of Coherence-Collapse Regime of Semiconductor Lasers Under External Optical Feedback by Perturbation Method”, Chapter 5 in Semiconductor Laser Diode Technology and Applications, Edited by Dnyaneshwar Patil, open access https://www.intechopen.com/books/semiconductor-laser-diode-technology-and-applications
【文献】Lumics GmbH. 808nm pump laser with FBG option: http://www.lumics.de/wp-content/uploads/LU0808M250.pdf
【文献】Fiber Optic Test and Measurement, Dennis Derickson, Editor, Prentice Hall,1998, p.602, section entitled “Special Case for ASE Sources”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらのポンプのノイズ問題に対処する方法は、いくつかある。ポンプのフィードバックは、(1)ファラデー分離と(2)幾何学的分離によって減らすことができる。単一周波数ポンプレーザ(分布フィードバックレーザ(DFB))、分布ブラッグ反射レーザ(DBR)、離散モードレーザ[非特許文献16,17]、体積ブラッググレーティング(VBG)安定化レーザ[非特許文献18,19,20]は、波長ジッタと、モードホッピングに伴う振幅ノイズを排除できる。
【0009】
ポンプ光の波長変化または不確実性を排除することも、また別の理由から重要である。VCSELへの経路に波長依存伝送を備えた光は、光周波数シフトをポンプパワーの変化に変換できる(FMからAMへの変換)。これは、ノイズとともに生じる可能性がある。波長ジッタは、実効ポンプパワーノイズに変換できる。
【0010】
コヒーレンス崩壊[非特許文献21,22]に持ち込まれたレーザポンプなどによるノイズの整形と制御は、潜在的に有用である。発光ポンプの帯域幅を単一共振器モードに狭める代わりに、低ノイズを得る別の方法は、広帯域エミッタであるスーパールミネッセント発光ダイオード(SLED)を使用することである。RIN≒1/Δv[非特許文献23]なので、RINは放射帯域幅に比例して低下する[非特許文献23]。
【0011】
ポンプノイズに関して、1060nmVCSELは、特別な問題を提起する。このVCSELは、通常、750~850nmの波長範囲で励起され、この範囲では、ファラデーアイソレータが大きく、重く、高価だからである。
【0012】
ファラデー回転子に基づく分離の代替として、ここに提示された幾何学的分離のアイデアは、VCSELからポンプレーザへの光フィードバックを少なくとも低減し、場合によっては防止することもできる。これらの解決策は、ミニチュアバルク光パッケージで特に有用で、この場合、VCSEL、場合によってはSOA(半導体光増幅器)および/またはポンプが1つの気密パッケージに統合されている(一緒にパッケージ化されている)。これは、VCSELと、ダイクロイックミラーによって形成されたWDM(波長分割マルチプレクサ)フィルタだけが一緒にパッケージ化されている場合にも当てはまる。
【0013】
さらに、以下の説明は、1060nmVCSELにおけるノイズ制御に関するが、このアプローチは、他のVCSEL波長にも同様に適用することができる。
【0014】
一般に、一態様によれば、本発明は、光ポンピングチューナブルVCSEL掃引光源モジュールを特徴とし、このモジュールは、VCSELと、光を生成して、VSCELをポンピングするためのポンプとを含み、ポンプは、VCSELから幾何学的に分離されている。
【0015】
異なる実施形態では、ポンプは、VCSELの前で、VCSELの後ろでポンプからの光をデフォーカスすることによって、および/またはVCSELに対してある角度で、ポンプからの光を結合することによって、幾何学的に分離される。後者の場合、角度は、通常80°未満である。
【0016】
ポンプは、VBGまたはFBG安定化レーザ、離散モードレーザ、DFBレーザ、および/またはDBRレーザであり得る。
【0017】
ポンプはまた、スーパールミネッセントダイオード(SLED)であり得る。
【0018】
モジュールは、統合ダイクロイックフィルタをさらに備えることができる。
【0019】
モジュールは、また、SOAおよび/または場合によっては統合ポンプチップを含むことができる。アイソレータは、SOAからの後方反射からVCSELを分離するのにも役立つ。
【0020】
一般に、別の態様によれば、本発明は、VCSELを光ポンピングするための方法を特徴とする。この方法は、ポンプ光源を用いてポンプ光を生成するステップと、ポンプ光源からのポンプ光をVCSELの中に結合するステップと、幾何学的分離によって、ポンプ光がポンプ光源に結合されるのを防ぐステップと、を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、ポンプ光源は、デフォーカスすることによって、VCSELの前でポンプ光を集束することによって、またはVCSELの後ろでポンプ光を集束することによって、幾何学的に分離される。
【0022】
ポンプ光源は、また、VCSELに対してある角度で、ポンプ光を結合することによって、幾何学的に分離させることができる。典型的には、この角度は88°未満である。
【0023】
ポンプ光源は、VBGまたはFBG安定化レーザ、離散モードレーザ、DFBレーザ、FPレーザおよび/またはDBRレーザであり得る。
【0024】
ポンプ光源は、また、スーパールミネッセントダイオード(SLED)であり得る。
【0025】
ポンプ光源は、また、コヒーレンス崩壊で動作することもできる。
【0026】
いくつかのモジュールでは、ポンプ光源からのポンプ光は、VCSELに結合され、VCSELによって生成された掃引光信号は、ダイクロイックフィルタを使用して分離される。
【0027】
掃引光信号をSOAで増幅することも可能である。
【0028】
構造および部品の組合せの様々な新規の詳細を含む本発明の上記および他の特徴、ならびに他の利点は、添付の図面を参照してより具体的に説明し、特許請求の範囲で指摘する。本発明を具体化する特定の方法および装置は、例示として示され、本発明を限定するものとしてではないことが理解されよう。本発明の原理および特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な多数の実施形態で使用することができる。
【0029】
添付の図面において、参照文字は、異なる図の全体にわたって同じ部分を指す。図面は、必ずしも縮尺どおりではない。代わりに、本発明の原理を説明することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】デフォーカスすることによって、チューナブルVCSEL掃引光源において、ポンプとVCSELとの間に幾何学的分離を作成するための1つのアプローチを示す概略図である。
【
図1B】デフォーカスすることによって、チューナブルVCSEL掃引光源において、ポンプとVCSELとの間に幾何学的分離を作成するための1つのアプローチを示す概略図である。
【
図2】光ポンピングチューナブルVCSEL掃引光源モジュールの上面図であり、また、幾何学的分離への第三のアプローチを示し、ここでは、戻りポンプビームがオフセットされ、次いで、場合によっては遮断される。
【
図3】VCSELの波長掃引の過程にわたるマイクロ秒単位の一般的な時間スケールに対する様々な性能測定値のプロットであり、クロックプロット310は、両方のVCSEL掃引の過程にわたるkクロックサンプリング周波数を示し、トリガプロット312は、2つの掃引のそれぞれのトリガ電圧を示し、パワープロット314は、VCSELからのパワー出力を示し、第一のスペクトログラムプロット316は、ファイバ内のチップから1m離れて配置されたファイバブラッググレーティングからのフィードバックとともに、コヒーレンス崩壊レジームで動作中の808nmポンプレーザからの光パワー出力のスペクトログラムであり、第二のスペクトログラムプロット318は、ファイバ内に0.14m離れて配置されたファイバブラッググレーティングとともに、コヒーレンス崩壊レジームで動作中の808nmポンプレーザの光パワー出力のスペクトログラムである。
【
図4A】3つの異なる光ポンピングチューナブルVCSEL掃引光源モジュールの平面図である。
【
図4B】3つの異なる光ポンピングチューナブルVCSEL掃引光源モジュールの平面図である。
【
図5】
図5は、VCSEL115およびその利得基板116の一例を示す、MEMSチューナブルVCSELの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、本発明の例示的な実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下で、十分に説明される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底して完全であり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連するリストされた項目の1つまたは複数の任意のすべての組合せを含む。さらに、単数形および冠詞「1つの(a、an)および「その(the)」は、特に明記しない限り、複数形も含めることが意図される。以下の用語、含む、備える、含んでいる、および/または備えているという用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素および/またはコンポーネントの存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことがさらに理解されよう。さらに、コンポーネントまたはサブシステムを含む要素が、別の要素に接続または結合されていると言及および/または図示される場合、それは、他の要素に直接接続または結合されることも、あるいは介在要素が存在することもあり得ることが理解される。
【0033】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、本明細書で特に明記しない限り、関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されないことがさらに理解されよう。
【0034】
一般に、幾何学的分離は、ポンプとVCSELとの間の結合光学系の位置合わせおよび/またはデフォーカスを利用して、ポンプチップに結合して戻ることもある反射のレベルを抑制する。デフォーカスの場合、VCSELのポンプスポットサイズとVCSEL共振器自体のモードサイズは必ずしも同じである必要はないことに注意されたい。これにより、ポンプ光がVCSELでわずかにデフォーカスし、その結果、フィードバック光がポンプで完全にバックフォーカスにならない。こうして、フィードバック光の有効量が減少する。
【0035】
図1Aおよび
図1Bは、ポンプのデフォーカスによる幾何学的分離の2つの例を示す。ポンプレーザ110は、事実上、点光源114である。ポンプ光開口114は、ポンプチップ出口ファセット、またはポンプチップからの光を結合光学系のレンズ列122に伝達する光ファイバであり得る。いずれの場合も、このポンプ光は、2つのレンズ、レンズAとレンズBとの結合レンズ列122によって、VCSEL115の利得基板116で焦点がデフォーカスする。
【0036】
より詳細には、
図1Aに示すように、ポンプ110からの光112は、その光がポンプ光開口114から離れて伝播するにつれて発散する。
【0037】
ポンプ光開口114は、一つの状況で、ポンプチップの出口ファセットである。一例のチップは、単一空間モードのエッジ発光リッジ導波路GaAlAsまたはInGaAsチップである。
【0038】
別の状況では、ポンプ光開口114は、単一モード光ファイバなどの光ファイバの出口ファセットであり、出口ファセットは、ポンプチップからレンズ列122に光を運ぶ。
【0039】
これらの状況の両方において、ポンプ光アパーチャ114は、点光源に接近し、多くの場合、直径が数マイクロメートル未満の範囲しかない。
【0040】
ポンプ光源110からの発散ポンプ光112は、結合レンズ列122によってVCSEL115の利得基板116に中継される。具体的には、ポンプ光は、第一のレンズ(レンズA)によってコリメートされ、次いで、第二のレンズ(レンズB)によってVCSEL115の利得基板116の表面116Sに向かって集束される。
【0041】
結合レンズ列122の特性、例えば、第一のレンズおよび第二のレンズのパワーと、ポンプ光源110の光の波長でのポンプ光開口114、第一のレンズ、第二のレンズ、および出口ファセット118の間の距離などは、ポンプ光112の焦点120が、VCSEL115の利得基板116の近位表面116Sの前にあるように選択される。
【0042】
VCSEL115の利得基板116の近位表面の前でポンプ光112を集束させるように結合レンズ列122を配置すると、反射ポンプ光124またはVCSEL115を出るポンプ光がポンプ光源110でデフォーカスする。
【0043】
図1Bは、結合レンズ列122の別の配置を示している。この実施形態では、ポンプ光112の焦点120は、VCSEL115の利得基板116の表面116Sの後ろにある。
【0044】
より詳細には、ポンプ光源110からの光112は、その光がポンプ光開口114から離れて伝播するにつれて発散する。
【0045】
ポンプ光源110からの発散ポンプ光112は、結合レンズ列122によってVCSEL115の利得基板116に中継される。
【0046】
結合レンズ列122の特性、この例では、ポンプ光源110の光の波長での第一のレンズおよび第二のレンズのパワーと、ポンプ光開口114、第一のレンズ、第二のレンズ、および出口ファセット118との間の距離などは、ポンプ光112の焦点120が、VCSEL115の利得基板116の近位表面116Sの後ろにあるように選択される。
【0047】
VCSEL115の利得基板116の近位表面116Sの後ろでポンプ光112を集束させるように結合レンズ列122を配置すると、VCSEL115から戻るポンプ光124がポンプ光源110でデフォーカスする。
【0048】
いずれの例においても、VCSEL利得基板116でのポンプ光がデフォーカスするために、フィードバックビームは、ポンプ光源110に戻る点に集束しない。このパワー密度の低下によって、ポンプを不安定にする光の総パワーが低下する。
【0049】
このタイプの幾何学的分離は、ミラー、WDMカプラー、および他の光学要素を含むより複雑なビーム経路に適用することができる。重要なことは、デフォーカスすることである。
【0050】
図2は、レンズAおよびレンズBを含む結合レンズ列122が、光ポンピングチューナブルVCSEL掃引光源モジュール100に、どのように統合されるかを示している。
【0051】
一例では、VCSEL115は、微小電気機械システム(MEMS)チューナブルミラーダイ130を光学利得/底部ミラー利得基板116に結合することによって製造される。好ましい実施形態では、VCSELは、Flanders、Kuznetsov、Atia、およびJohnsonによる特許文献1「結合されたMEMSチューナブルミラーVCSEL掃引光源を備えたOCTシステム」に記載されるようなものであり、これは、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0052】
MEMSチューナブルミラーと統合された前記VCSELは、別のオプションである。そのような統合VCSELの初期の例は、Tayebatiらによる米国特許第6,645,784号に記載されている。
【0053】
それにもかかわらず、光ポンピングVCSELのほとんどすべての構成を使用することができる。
【0054】
ダイクロイックミラー(フィルタ)によって、VCSEL115が放出したVCSELビーム134をポンプ光112、124から分離することが可能になる。
【0055】
図示の実施形態では、ポンプチップ160からの光は、ポンプ光ファイバ142を介してベンチ140に結合される。光ファイバ142からのポンプ光112は、ベンチ140に取り付けられた第一のレンズであるレンズAによってコリメートされる。次いで、ポンプ光112は、ダイクロイックミラー132を透過し、次いで、第二のレンズであるレンズBによって、VCSEL115の利得基板116上に集束する。
【0056】
好ましくは、ベンチ140は、次いで、パッケージ144のファイバフィードスルー146、148を通過する光ファイバを備えた気密パッケージ144内に設置される。
【0057】
ダイクロイックミラーは、VCSELによって放出されるVCSEL光134のより長い波長を反射するが、図示の例ではポンプ光112、124を透過する。具体的には、図示の例では、VCSEL115からのチューナブル信号は、ベンチ140に取り付けられたダイクロイックミラー132によって反射され、同じくベンチ140に取り付けられた折り返しミラー150に、次いで、ベンチ140に取り付けられた第三のレンズ152に向けられる。第三のレンズ152は、出力光ファイバ154の入口開口に光を集束させる。
【0058】
ファラデー分離であれ、あるいは幾何学的分離であれ、ポンプ分離が非常に効果的であっても、ポンプは、それ自体でノイズが多い可能性がある。振幅ノイズ、周波数ノイズ、またはジョイント振幅/周波数ノイズが問題になる可能性もある。ダイオードレーザは、最も実用的なポンプ光源であるが、自然放出によって駆動され、緩和振動によって成形される自然な振幅・周波数ノイズを有する[非特許文献15]。ファブリ・ペロー・ダイオードレーザは、モードホッピングノイズを有し得る。DFB(分布フィードバックレーザ)、DBR(分布ブラッグ反射レーザ)、離散モードレーザ[非特許文献16,17]などの単一周波数ポンプによって、この問題を回避できる。体積ブラッググレーティング安定化レーザは別の候補である[非特許文献18,19,20]。
【0059】
ポンプがコヒーレンス崩壊レジームで動作することにより、ポンプノイズを排除しなくても、制御することができる。コヒーレンス崩壊は、反射器をレーザダイオードチップからある程度離して配置し、制御された方法で不安定化することによって誘発できる[非特許文献21]。これは、多くの場合、レーザピグテール142の中に、ファイバブラッググレーティング(FBG)162を配置することによって行われる[非特許文献22]。FBG162は、レーザ放射を狭い波長帯域に制限し、コヒーレンス崩壊を引き起こす。これによって、ランダムに位相調整され、c/(2L)離れたモードが生成される。ここで、cは光の速度、LはレーザチップとFBG間の等価空気距離である。これらのモード間のビートは、RF周波数がc/(2L)離れた振幅ノイズ帯域を生成する。
図3に示すように、Lを小さくすると、ノイズがシフトして、拡散し、低ノイズの広帯域が作成され、多くのOCT用途での検出帯域幅から、このノイズ源を排除するのに十分である。DCの周りの狭い帯域には、まだノイズがあるが、これは多くの場合、許容可能であり得る。
【0060】
図2は、また、別の幾何学的分離の戦略を示している。VCSEL115は、ある角度でポンプビーム112を受け取る。入射ポンプビームと反射ポンプビームの間の角度は、ポンプビームの発散角よりも大きくなければならない。好ましくは、入射ポンプビーム112の中心軸と利得基板116の近位表面116Sとの間の角度θは、88°未満であり、好ましくは、水平面または垂直面、またはいくつかのハイブリッド面において、75°を超え、その角度θは、一般に、VCSELの前にある集束レンズであるレンズBの開口によって決定される。これは、ポンプ光のビーム112がレンズBの中心からオフセットされ、また、VCSEL115から出るVCSEL光134の軸からもオフセットされるように、レンズBを位置合わせすることによって達成される。
【0061】
この構成では、ポンプ光の反射ビーム124は、入射ビーム112から変位する。図示の実施形態では、光吸収ビームブロック基板170がベンチ140に設置されて、反射ビーム124を遮断する。これによって、ポンプを不安定にするフィードバックを防止する。
【0062】
ここで、VCSEL115への入射ポンプビーム112の入射角が垂直でないために、空間内の反射ビーム124がオフセットされ、自然のレンズ開口によってブロックすることも、あるいはパッケージに意図的に挿入され、ベンチに設置されたビームブロック170によって、ブロックすることもできる。単一の横モード光源、ファイバまたはレーザの場合、戻りビームのオフセット角度は、ビームブロックまたは開口がなくても、戻り光の結合を防ぐことができる。これらの方法によって、光がポンプ160にフィードバックされるのを防ぎ、ポンプを不安定にする(ポンプのノイズが多くなる)のを防げる。
【0063】
反射ビーム124のオフセットは、利得基板116でVCSELに集束される入射ポンプビーム112の入射角θを正確に制御することによって制御される。ここで、ポンプ160および任意のSOAは、統合気密パッケージ144の外部にあり、光ファイバ154、142を介して接続されている。他の方式では、ポンプまたはSOA、あるいはその両方をパッケージ144に組み込んでも、3つの形態の幾何学的分離のいずれかを使用することから、メリットを得ることができる。これらのアイデアにより、嵩張って、コストが高いファラデー分離を採用することなく、低ノイズのVCSELポンピングが可能になる。
【0064】
図3は、意図的にコヒーレンス崩壊の状態に置かれたポンプを使用することによって、VCSEL振幅ノイズがどのように広い低ノイズ帯域に調整され得るかを示すスペクトログラムを含む。コヒーレンス崩壊は、ファイバブラッググレーティング(FBG)162をポンプレーザ160のピグテール142に配置することによって誘発される。ポンプチップ160とFBG162との間の二次共振器を規定するファイバ長を、0.14mに短くすることによって、多くのOCT用途に十分な幅の700MHz幅の低ノイズ領域が作成される。一般に、二次共振器は、ファイバで約0.3m以下に、あるいは空気経路で0.5m以下に相当する必要がある。
【0065】
ポンプピグテール142内のFBG162は、不完全な幾何学的分離が存在する場合でさえ、改善された動作を提供する。この場合、コヒーレンス崩壊時のFBGポンプは、安定性を改善した。このポンプは、2つのことをする。すなわち、ポップコーン的なノイズプロセスをより滑らかなガウス的なプロセスに変える。次いで、ファイバの長さが短いと、ノイズ帯域がn×700Hzに移動する。残念ながら、DCの近くには、まだノイズがあるが、対処は簡単である。
【0066】
図4Aおよび
図4Bは、様々なレベルで一緒にパッケージ統合した2つの追加の光レイアウト、または光ポンピングチューナブルVCSEL掃引光源モジュールを示す。
【0067】
図4Aは、増幅段を備えた光ポンピングチューナブルVCSEL掃引光源モジュールを示す。
【0068】
より詳細には、ポンプ光は、別個にパッケージ化されたポンプレーザ160から、気密パッケージ144の中で、ベンチ140の上で受け取られる。ポンプのピグテール142は、パッケージ144内のフィードスルー146を介して受け取られ、その端部がファイバ取り付け構造FL1によってベンチ140に固定される。ファイバ取り付け構造FL1は、好ましくは、ファイバLIGAファイバホルダ(LIGA:Lithographic,Galvanoformung,Abformung(英語:Lithography(リソグラフィ),Electroplating(電解めっき),and Molding(形成))である。
【0069】
コヒーレンス崩壊ポンピングは、ピグテール142にファイバブラッググレーティングを追加することにより、このバージョンでは可能になる。
【0070】
ポンプ光は、角度付きWDMフィルタ/ダイクロイックミラー132を透過し、MEMSチューナブルミラーダイ130のチューナブルミラーを透過する。光は、レンズBによって利得基板116の近位表面116Sに集束される。
【0071】
ポンプ光を利得基板116に結合することに関して、以前の3つの技術のいずれかを使用することができる。ポンプ光は、
図1Aに示すように、近位表面116Sの前でデフォーカスすることができる。ポンプ光は、
図1Bに示すように、近位表面116Sの後ろでデフォーカスすることができる。または、
図2に関連して説明したように、ある角度で利得基板に結合されたポンプ光は、レンズBの中心軸から変位することができる。
【0072】
ダイクロイックミラー132は、VCSELによって放出されたVCSEL光134を反射する。VCSEL115からのチューナブル信号は、ベンチ140に取り付けられたダイクロイックミラー132によって反射され、同じくベンチ140に取り付けられた折り返しミラー150に向けられる。
【0073】
次に、VCSEL光は、後方反射を防止するアイソレータ180を通過するように向けられる。アイソレータの後、集束レンズ186は、VCSEL光をサブマウント184に取り付けられたSOA182に結合する。次いで、SOA182は、ベンチ140に取り付けられている。SOA182の出力側で、増幅されたVCSEL光は、出力集束レンズ188によって集束され、第二のファイバ取り付け構造FL2によってベンチに固定された出力ファイバピグテール154に光を結合する。
【0074】
図4Bは、増幅段を備えた別の光ポンピングチューナブルVCSEL掃引光源モジュールを示す。これは、
図4Aに示す実施形態と構造および動作が類似しているので、ここでも、その説明を適用する。
【0075】
違いは、ポンプ160がベンチ140の上で、パッケージ144の中に統合されていることである。具体的には、ポンプチップ190がポンプサブマウント192に取り付けられ、次いで、ポンプサブマウント192が、ベンチに取り付けられている。
【0076】
ファラデー分離であれ、あるいは幾何学的分離であれ、ポンプ分離が非常に効果的であっても、ポンプはそれ自体でノイズが多い可能性があることに留意すべきである。振幅ノイズ、周波数ノイズ、またはジョイントの振幅/周波数ノイズが問題になる可能性がある。上述のようなダイオードレーザは、最も実用的なポンプ光源であるが、自然放出によって駆動され、緩和振動によって成形される自然な振幅・周波数ノイズを有する[非特許文献15]。ファブリ・ペロー・ダイオードレーザは、モードホッピングノイズを有し得る。DFB(分布フィードバックレーザ)、DBR(分布ブラッグ反射レーザ)、離散モードレーザ[非特許文献16,17]などの単一周波数ポンプによって、この問題を回避できる。体積ブラッググレーティング安定化レーザは別の候補である[非特許文献18,19,20]
【0077】
したがって、一実施形態では、体積ブラッググレーティング(VBG)194がポンプチップ190とダイクロイックミラー132との間に追加された。具体的には、YBGは、図示のように、発散ビームのレンズL4の前、またはコリメートされたビームのレンズL4の後ろに追加され得る。
【0078】
あるいは、適切な角度のVBGを、WDMダイクロイックミラー132の一体部分として追加することもできる。この最後の構成は、垂直でない入射角に対して適切な角度でWDM基板内にVBGを製造することを必要とする。VBGは、また、光共振器の長さを短縮する(波長安定化のために、より有利な縦モードの間隔を広くすることができる)手段としても、アセンブリ全体のサイズを小さくする手段としても、光学列122内の第一の結合レンズであるレンズA(例えば、GRINレンズ、ガラス非球面レンズ)の一体部分として、製造され得る。
【0079】
チューナブルVCSELの低ノイズ光ポンピングのために、これらのアイデアを利用することができる多くのパッケージ構成が存在する。重要なアイデアは、(1)幾何学的なポンプ分離、(2)単一周波数ポンピング(DFB、DBR、離散モード、またはVBG安定化レーザを使用)、(3)SLEDを使用した広帯域ポンピング、(4)コヒーレンス崩壊時にFBG安定化レーザを使用したポンピング、および(5)VCSELからの小さなフィードバックにより、コヒーレンス崩壊時に標準ピグテールレーザ(FBGなし)を使用したポンピングである。
【0080】
図5は、上述の光ポンピングチューナブルVCSEL掃引光源モジュール100に含まれるための1つの例示的なMEMSチューナブルVCSEL115を示す。
【0081】
MEMSチューナブルVCSEL115は、光学利得/ボトムミラー利得基板116に結合されたMEMSチューナブルミラーダイまたはデバイス130を備え、また、これは、半VCSELとしても知られている。
【0082】
より詳細には、MEMSチューナブルミラー115は、支持体として機能するハンドルウェーハ材料210を備える。現在、ハンドルは、ドープされたシリコンで作られている。
【0083】
光学膜層またはデバイス層212がハンドルウェーハ材料210に追加される。通常、シリコンオンアイソレータ(SOI)ウェーハが使用される。膜構造214は、この光学膜層212で形成される。現在の実装では、膜層212は、透過光の自由キャリア吸収を最小限に抑えるために、抵抗率>1Ω・cm、キャリア濃度<5×1015cm-3で低ドープされたシリコンである。電気的接触の場合、膜層の表面は、通常、イオン注入でさらにドープされる。
【0084】
製造中、絶縁層216は、犠牲/解放層として機能し、これは、ハンドルウェーハ材料210から膜構造214を解放するために部分的に除去される。次に、動作中に、絶縁層216の残りの部分は、パターン化されたデバイス層212とハンドル材料210との間で、電気的分離を提供する。
【0085】
現在の実施形態では、膜構造210は、本体部分218を含む。デバイス115の光軸は、この本体部分218を同心円状に通過し、膜層212によって規定される平面に直交する。この本体部分218の直径は、好ましくは、300~600μmであり、現在は、約500μmである。
【0086】
テザー220(図示の例では4つのテザー)は、デバイス層212に作製された弧状スロット225によって定義される。テザー220は、本体部分218から、テザー220が終端するリングを含む外側部分222まで半径方向に延びる。現在の実施形態では、スパイラルテザーパターンが使用されている。
【0087】
膜ミラードット250は、膜構造210の本体部分218上に配置される。いくつかの実施形態では、膜ミラー250は、光学的に湾曲して光学的に凹面の光学要素を形成し、それによって湾曲したミラーレーザ共振器を形成する。他の場合には、膜ミラー250は、フラットミラーであるか、あるいは場合によっては凸面でさえある。
【0088】
湾曲した膜ミラー250が望まれる場合、この湾曲は、本体部分218にくぼみを形成し、次に、そのくぼみの上にミラー250を形成する1つまたは複数の材料層を堆積させることによって作成することができる。他の例では、膜ミラー250は、大量の圧縮材料を用いて、堆積することができ、その応力が、膜ミラーに湾曲をもたらすことになる。
【0089】
膜ミラードット250は、好ましくは、反射誘電体ミラースタックである。いくつかの例では、それは、VCSEL115で生成されるレーザ光の波長に対して規定された反射率、例えば、1~10%を提供するダイクロイックミラーフィルタである。一方、光学ドット250は、半VCSELデバイス116内の活性領域を光ポンピングするために使用されるポンプ光112の波長を透過する。
【0090】
図示の実施形態では、3つの金属パッド234を、膜デバイス110の近位側に堆積する。これらは、例えば、半VCSELデバイス116を膜デバイス130の近位面に、はんだ付けまたは熱圧着結合するために使用される。また、上部パッドは、半VCSELデバイス116への電気的接続を提供する。
【0091】
3つのワイヤ結合パッド334A、334B、および334Cも提供される。左側のVCSEL電極ワイヤ結合パッド334Aは、金属パッド234への電気的接続を提供するために使用される。一方、右側の膜ワイヤ結合パッド234Bは、膜層212、したがって、膜構造への電気的接続を提供するために使用される。最後に、ハンドルワイヤ結合パッド334Cは、ハンドルウェーハ材料210への電気的接続を提供するために使用される。
【0092】
半VCSELデバイス116は、一般に、任意選択の反射防止コーティング414と、好ましくは単一または複数の量子井戸構造を有する活性領域418とを備える。キャップ層は、反射防止コーティング414(存在する場合)と活性領域418との間に使用することができる。キャップ層は、ARコーティングおよび/または空気との界面での表面/界面効果から活性領域を保護する。レーザ共振器のバックミラー416は、分布ブラッグ反射(DBR)ミラーによって定義される。最後に、GaASなどのVCSELスペーサー415は、基板および機械的支持体として機能する。
【0093】
VCSELデバイス116の活性領域418の材料系は、所望のスペクトル動作範囲に基づいて選択される。一般的な材料系は、III-V半導体材料をベースとし、例えば、GaN、GaAs、InP、GaSb、InAsなどの二元材料、またInGaN、InAlGaN、InGaP、AlGaAs、InGaAs、GaInNAs、GaInNAsSb、AlInGaAs、InGaAsP、AlGaAsSb、AlGaInAsSb、AlAsSb、InGaSb、InAsSb、およびInGaAsSbなどの三元合金、四元合金、五元合金などである。まとめると、これらの材料系は、約400ナノメートル(nm)~2000nmまでの動作波長をサポートする。これには、数マイクロメートルの波長に及ぶより長い波長範囲が含まれる。半導体量子井戸および量子ドット利得領域は、通常、特に広い利得およびスペクトル発光帯域幅を得るために使用される。
【0094】
好ましい実施形態では、MEMSチューナブルVCSEL115によって生成される光の偏光は、好ましくは制御され、少なくとも安定化される。一般に、このクラスのデバイスには、直線偏光を放射する円筒形共振器がある。通常、光は結晶方向に沿って偏光され、これらの方向の1つは、通常、他の方向よりも強くなる。同時に、偏光の方向は、レーザ電流またはポンピングレベルによって変化する可能性があり、動作は、しばしば、ヒステリシスを示す。
【0095】
分極を制御するために、異なるアプローチをとることができる。一実施形態では、偏光選択ミラーを使用する。別の例では、非円筒形共振器を使用する。さらに別の実施形態では、電気ポンピングを使用する場合、非対称電流注入を使用する。さらに他の例では、活性領域基板は、非対称の応力、歪み、熱流束、または光エネルギー分布をもたらすトレンチまたは材料層を含み、指定された安定した偏光軸に沿って偏光を安定させるために使用される。さらに別の例では、非対称の機械的応力をVCSELデバイス116に加える。
【0096】
レーザ共振器のもう一方の端部を定義するのは、半VCSELデバイス116に形成されるリアミラー416である。一例では、これは、活性領域418に隣接する層であり、屈折率の不連続性を提供し、これにより、光の一部、例えば、1~10%が反射して共振器に戻る。他の例では、リアミラー116は、光の90%以上を反射してレーザ共振器に戻す高反射層である。
【0097】
さらに他の例では、リアVCSEL分布ブラッグ反射(DBR)ミラー416は、レーザ115で生成されるレーザ光の波長に対して規定された反射率、例えば、1~100%を提供するダイクロイックミラーフィルタである。一方、リアミラー116は、VCSELデバイス116の活性領域を光ポンピングするために使用される光の波長を透過する。こうして、VCSELデバイス112がポンプ光の入力ポートとして機能することが可能になる。
【0098】
図5は、A-Aに沿った断面におけるMEMSチューナブルVCSEL
115を概略的に示すことで、近位側静電共振器および遠位側静電共振器224を示している。
【0099】
ハンドルウェーハ材料210を通る光学ポート240は、一般に、ポート開口部246で終わる内向きに傾斜した側壁244を有する。その結果、ハンドルウェーハ210の遠位側を通して見ると、膜構造214の本体部分218が観察される。ポートは、好ましくは、膜ミラードット250と同心である。さらに、本体部分218の裏側は、いくつかの例では、膜裏側ARコーティング119でコーティングされている。このARコーティング119は、ポンプ光112のレーザ共振器への結合および/またはレーザ光134の共振器からの結合を容易にするために使用される。
【0100】
絶縁層216の厚さは、遠位側静電共振器224の静電共振器長さを規定する。現在、絶縁層216は、3.0~6.0μmの厚さである。一般的な経験則では、静電要素は、静電共振器の距離の3分の1以下でチューニングできる。結果として、一実施形態では、本体部分218、したがって、ミラー光学コーティング230は、遠位方向に(すなわち、VCSELデバイス112から離れて)1~3μmの間で偏向され得る。
【0101】
半VCSELデバイス116が膜デバイス130にどのように結合されるかに関する詳細も示される。MEMSデバイス結合パッド234は、VCSEL近位側静電共振器電極金属422に結合する。これらの金属層は、電気的に絶縁されている。具体的には、MEMSデバイス結合パッド234は、MEMSデバイス結合パッド分離酸化物236によって、膜層212から分離されている。VCSEL近位側静電共振器電極金属422は、VCSEL分離酸化物層128によって、VCSELデバイスの残りの部分から分離されている。VCSEL近位側静電共振器電極金属422も、VCSEL分離酸化物層128も、それらがレーザの光共振器の自由空間部分252の領域に延在しないので、光学動作を妨害しない。
【0102】
遠位側静電共振器224および近位側静電共振器226は、膜構造214のいずれかの側に配置される。具体的には、遠位側静電共振器224は、ハンドルウェーハ材料210と、膜層212の懸架部分である膜構造214との間に作成される。ハンドルウェーハ材料210と膜層212との間の電位は、層間に静電引力を生成し、膜構造210をハンドルウェーハ材料210に向かって引っ張る。一方、近位側静電共振器226は、膜構造210とVCSEL近位側静電共振器電極金属422との間に作成される。膜層212とVCSEL近位側静電共振器電極金属422との間の電位は、層間に静電引力を生成し、膜構造210をVCSELデバイス112に向かって引っ張る。
【0103】
一般に、デバイスの光軸に沿って測定される近位側静電共振器226のサイズは、結合金属の厚さ、VCSEL近位側静電共振器電極金属422およびMEMSデバイス結合パッド234の厚さ、ならびにVCSEL分離酸化物層128およびMEMSデバイス結合パッド分離酸化物236の厚さによって規定される。
【0104】
最小酸化物厚さは、必要な電圧分離によって決定される。酸化膜破壊は、公称1000V/μmである。したがって、200Vの絶縁の場合、2000Aになり、これは、マージンのために2倍にすることが望ましい。したがって、VCSEL分離酸化物層128およびMEMSデバイス結合パッド分離酸化物236の層の厚さは、4000Aよりも大きい。
【0105】
現在の金属結合の厚さは、6000A(各層)であり、結合中は、約3000Aに圧縮される。これに基づくと、近位側静電共振器226の最小サイズは0.85μmである。
【0106】
この最小静電ギャップ点において、膜ミラードット250が1.7μmの厚さである場合、ゼロ光学ギャップが生じる。
【0107】
光学ギャップを大きくするために、共振器の動作に影響を与えることなく、VCSEL分離酸化物層128の厚さを大きくすることができる。
【0108】
図1Aおよび
図1Bに関して論じたポンプ分離のデフォーカス法において、デフォーカスは、利得基板または半VCSEL116の表面116Sに対するものであることに留意されたい。この内部表面の位置は、
図6に最もよく示されている。
【0109】
同様の流れにおいて、ポンプビーム112の角度θは、
図6に示すように、表面116Sに対して測定される。
【0110】
本発明について、その好ましい実施形態を参照して特に図示して、説明してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更を行うことができることを理解されるべきである。