(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】少なくとも1つの目標面に従って解剖学的構造を切断する外科用システム
(51)【国際特許分類】
A61B 34/20 20160101AFI20240227BHJP
A61B 34/30 20160101ALI20240227BHJP
A61B 17/22 20060101ALI20240227BHJP
A61B 17/14 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B34/30
A61B17/22 510
A61B17/14
(21)【出願番号】P 2020564160
(86)(22)【出願日】2019-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2019060674
(87)【国際公開番号】W WO2019219348
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-04-04
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516312682
【氏名又は名称】デピュイ・アイルランド・アンリミテッド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】DEPUY IRELAND UNLIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】Loughbeg Industrial Estate, Ringaskiddy, County Cork, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】シェアズ・ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ジラード-モントー・ダニエル
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/136768(WO,A2)
【文献】特表2015-534480(JP,A)
【文献】特表2018-506352(JP,A)
【文献】国際公開第2014/139023(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0331855(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の解剖学的構造(F、T)を前記解剖学的構造の座標系に画定された少なくとも1つの目標面に従って切断するための外科用システムであって、
(i)ロボットデバイス(100)であって、
切断ツール又は切断ブロックを備えるエンドエフェクタと、
前記切断ツール又は前記切断ブロックの位置及び向きを各目標面に対して調整するように構成された、前記エンドエフェクタに、前記エンドエフェクタの切断面に平行な平面を有する平面機構(24)によって取り付けられた、3~5つの電動自由度を備える作動ユニット(4)と、を備える、ロボットデバイスと、
(ii)前記作動ユニット(4)を支持する関節接合セグメントが関節接合されてなる係止可能保持アーム(5)であって、玉継手、回転継手、及び/又は並進継手で構成される、係止可能保持アーム(5)と、
(iii)前記解剖学的構造の前記座標系に対する
前記切断面の3次元の位置および向きであるポーズをリアルタイムで判定するように構成された追跡ユニット(200)
と、
(iv)前記目標面に対する前記切断面の前記ポーズを判定し、前記切断面を前記目標面と位置合わせするように前記作動ユニットを制御するように構成された制御ユニット(300)と、
を備え、
前記追跡ユニット(200)は、前記作動ユニット(4)に固定されるように取り付けられるように構成されたトラッカー(202)と、前記エンドエフェクタに固定されるように取り付けられるように構成されたトラッカー(203)と、前記解剖学的構造に固定されるように取り付けられるように構成されたトラッカー(201)と、撮像手段と、位置決めポインタと、位置決め手段と、を備え、
複数の前記トラッカー(201、202、203)のそれぞれは、前記位置決め手段によって位置を検出されて複数の前記トラッカー(201、202、203)の座標系を付与され、
外科手術中に収集された、複数の前記トラッカー(201、202、203)の前記座標系、前記撮像手段によって取得された骨の画像、前記位置決めポインタを用いて取得された骨表面の点を含む画像及び幾何学的患者データを前記目標面および位置決め情報として前記制御ユニット(300)に提供し、
前記制御ユニット
(300)は、
前記追跡ユニット(200)によって提供される
前記位置決め情報を使用して、前記作動ユニット(4)、前記エンドエフェクタ(2)、及び前記解剖学的構造の
前記ポーズを判定する工程(S1)と、
前記切断面と前記目標面との間の偏差を計算する工程(S2)と、
前記偏差が閾値未満である場合、前記切断ツールの動作を許容し、前記作動ユニット、前記エンドエフェクタ、及び前記解剖学的構造の新たなポーズを判定するために工程(S1)に戻る工程と、
前記偏差が前記閾値以上である場合、前記作動ユニットの前記座標系に前記切断面及び前記目標面を投影し、
前記外科用システムの表示装置(400)に表す工程(S3)と、
前記目標面に対する
前記平面機構の位置及び向きを修正するために、前記作動ユニットの出力に取り付けられた前記平面機構の平面と前記切断面との間の補正行列を計算する工程(S4)と、
工程(S4)で計算された前記補正行列を用いて前記目標面を更新する工程(S5)と、
前記作動ユニット(4)の新たな姿勢を計算して、前記切断面を更新された前記目標面と位置合わせし、前記位置合わせによる
前記作動ユニット(4)の前記座標系の変化により、前記ロボットデバイスを
前記目標面に対して移動させるために、前記作動ユニットのモータによって加えられる運動を判定する工程(S6)と、
前記作動ユニット(4)を作動させて、前記運動を加える工程(S7)と、
を含む制御ループを実施するように構成されている、外科用システム。
【請求項2】
前記追跡ユニットが、カメラ及び前記カメラによって検出可能な光学トラッカーを備える光学追跡ユニットである、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項3】
前記カメラは、前記制御ユニットが前記制御ループの各反復を実施するように構成されている周波数よりも少なくとも2倍大きい周波数で前記光学トラッカーの検出動作をするように構成されている、請求項2に記載の外科用システム。
【請求項4】
前記カメラが、200Hz超の周波数で動作するように構成されている、請求項2又は3に記載の外科用システム。
【請求項5】
前記制御ユニットが、50Hz超の周波数で前記制御ループの各反復を実施するように構成されている、請求項2~4のいずれか一項に記載の外科用システム。
【請求項6】
前記制御ユニットは、工程(S1)と工程(S2)との間に、前記追跡ユニットによって提供される前記位置決め情報に基づいて前記作動ユニットの現在のポーズが計算され得るかどうかを評価することを含む追加の工程を含む前記制御ループを実施するように構成されている、請求項2~5のいずれか一項に記載の外科用システム。
【請求項7】
前記制御ユニットは、前記現在のポーズが計算され得る場合に、前記制御ユニットのメモリに前記作動ユニットの前記現在のポーズを記憶し、前記作動ユニットの前記現在のポーズを用いて工程(S2)を実施することを含む追加の工程を含む前記制御ループを実施するように更に構成されている、請求項6に記載の外科用システム。
【請求項8】
前記制御ユニットは、前記作動ユニットの前記現在のポーズが計算できない場合、現在よりも前の制御ループにおいてメモリに記憶した前記作動ユニットの以前のポーズが前記制御ユニットの前記メモリに記憶されているかどうかを評価する追加の工程を含む前記制御ループを実施するように更に構成されている、請求項6に記載の外科用システム。
【請求項9】
前記制御ユニットは、前記作動ユニットの前記以前のポーズが前記制御ユニットの前記メモリに記憶されている場合、前記以前のポーズを使用して工程(S2)を実施することを含む前記制御ループを実施するように更に構成されている、請求項8に記載の外科用システム。
【請求項10】
前記制御ユニットは、以前のポーズが前記制御ユニットの前記メモリに記憶されていない場合、再度工程(S1)を実施することを含む前記制御ループを実施するように更に構成されている、請求項8に記載の外科用システム。
【請求項11】
前記制御ユニットが、工程(S4)と工程(S5)との間に、前記補正行列のノルムを計算することと、前記ノルムを所定の閾値と比較することと、を含む前記制御ループを実施するように構成されている、請求項2~10のいずれか一項に記載の外科用システム。
【請求項12】
前記制御ユニットは、前記ノルムが前記閾値よりも小さい場合、前記補正行列を使用して工程(S5)を実施することを含む前記制御ループを実施するように構成されている、請求項11に記載の外科用システム。
【請求項13】
前記制御ユニットは、前記ノルムが前記閾値より大きい場合、前記作動ユニットを停止するように構成されている、請求項11に記載の外科用システム。
【請求項14】
前記制御ユニットは、工程(S2)~(S4)で使用される前記作動ユニットの前記ポーズが以前に記憶されたポーズであるかどうかを判定し、
前記ポーズが以前に記憶されたポーズである場合、前記以前に記憶されたポーズを前記メモリから消去し、工程(S1)に戻り、
前記ポーズが前記作動ユニットの前記現在のポーズである場合、エラーを出力するように構成されている、請求項7又は8と組み合わせた請求項13に記載の外科用システム。
【請求項15】
前記ロボットデバイスは、前記補正行列の前記ノルムが前記閾値より大きいときに発光するように前記制御ユニットによって作動されるように構成された発光器を備える、請求項13又は14に記載の外科用システム。
【請求項16】
前記制御ユニットは、前記作動ユニットの前記トラッカー(202)が前記カメラの視野内にあることを確認するメッセージをユーザに出力するように構成されている、請求項13~15のいずれか一項に記載の外科用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの目標面に従って患者の解剖学的構造を切断するロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
全膝関節形成術は、典型的には、損傷した骨及び軟骨を除去し、人工膝関節を装着するために、大腿骨骨端及び脛骨骨端の両方を切断する必要がある。
【0003】
その目的のために、外科医は、切断ブロックを通じて振動鋸を使用することによって、大腿骨に対して5回以上及び脛骨に対して1回以上の切断を行う必要がある。
【0004】
図1は、大腿骨コンポーネントFC及び脛骨コンポーネントTCを含む人工膝関節を受容することが意図された膝の概略斜視図である。一般的に、大腿骨Fに対して行われる切断は、平面F1に沿った遠位切断、平面F2に沿った前方切断、平面F3に沿った後方切断、並びに遠位面を前方面及び後方面にそれぞれ接続する前方面取りF4及び後方面取りF5である。平面T1に沿った脛骨Tの切断を行う必要がある。
【0005】
外科医がこれら全ての平面を正確にかつ短時間で行うために、コンピュータ支援システムが開発されてきた。
【0006】
例えば、文献国際公開第2014/198784号は、ハンドヘルド型デバイスを備える外科用システムであって、当該ハンドヘルド型デバイスは、
ユーザの手に保持されるように設計された基部と、
患者の身体の一部の計画された体積を切削するように意図されたフライスを装着するためのエンドエフェクタと、
当該計画された体積を治療するため、基部に対してフライスを移動させるために当該基部及び当該エンドエフェクタに接続された作動ユニットと、
基部又はエンドエフェクタと治療対象部位との間の部分的機械リンクを提供するために基部又はエンドエフェクタに接続された支持ユニットと、を含む外科用システムを教示している。
【0007】
当該システムは、治療対象部位に対するフライス、エンドエフェクタ、及び基部のうちの少なくとも1つのポーズをリアルタイムで判定するように構成された追跡ユニットを更に備える。
【0008】
当該システムの制御ユニットは、
(a)当該測定されたポーズに応じて、基部に対するフライス又はエンドエフェクタの最適経路をリアルタイムで計算し、
(b)フライス又はエンドエフェクタの当該計算された経路が、基部のポーズを変更することなく達成され得るかどうかを検出し、達成され得ない場合、治療対象部位に対する基部の可能な再配置を判定し、
(c)当該計算された経路に従ってエンドエフェクタを移動させるように作動ユニットを構成し、
(d)計画された体積が治療されるまで、工程(a)~(c)を反復するように構成されている。
【0009】
ユーザインタフェースは、フィードバック情報をユーザに表示するために使用される。
【0010】
しかしながら、この文献に記載されているロボットが、身体の一部を切削するのに非常に効率的であるとしても、文献国際公開第2014/198784号に示されるような平面状の5バーリンクの形態の作動ユニットを有する設計は、鋸で身体部分を切断するのに最適ではない。実際に、作動ユニットによって提供される自由度は、切断される各平面と一致する鋸機構を使用して膝関節形成術を行う複数の切断面には適していない。
【0011】
文献米国特許出願公開第2011/0130761号は、全膝関節形成術において大腿骨で複数の切断を行うために鋸を誘導する専用のロボットシステムを教示している。このシステムは、骨及び器具に取り付けられたトラッカーを所定の位置及び向きで位置決めするナビゲーションシステムを備える。
【0012】
システムは、少なくとも1つのピンによって大腿骨に堅固に取り付けられた座部を備える。
【0013】
2つのねじを備える調節システムが、玉継手を介して座部に取り付けられる。
【0014】
切断面内で鋸刃を誘導するように意図されたスロットを備える切断ブロックが、2つのモータを支持するアームに取り付けられる。
【0015】
アームは、調節システムに枢動可能に装着され、座部に対するアームの向きは、調節システムの2つのねじによって調節可能である。
【0016】
アームは、第1のモータによって第1の回転軸を中心に座部に対して回転可能であり、切断ブロックは、第2のモータによって第2の回転軸を中心にアームに対して回転可能であり、両方の回転軸は互いに対して平行である。
【0017】
使用中、座部は、少なくとも1つのピンによって大腿骨に堅固に固定され、次いで、第1及び第2の回転軸の位置が、外科医によって手動で操作される調節デバイスによって、ナビゲーションシステムからの視覚フィードバックに応じて修正される。
【0018】
適切な位置が発見されると、切断ブロックに取り付けられたトラッカーは取り外され、切断ブロックがそれ以上誘導されない。
【0019】
次いで、モータは、2つの回転軸を中心に切断ブロックを移動させるように動作する。次に、外科医は、切断ブロック内に収容された鋸を使用して、所望の各切断面に沿って骨を切断する。したがって、システムは、目標面に対する切断ブロックのスロットの起こり得る位置ずれをリアルタイムで検出又は補償することができない。
【0020】
上記システムの主な欠点は、ロボットの重量を支えるために大型のピンを骨に埋め込むことを必要とし、ロボットに担持される切断ブロックに挿入された鋸による鋸引き中に加えられる力を補償するので、大腿骨に対する座部の堅固な固定が極めて侵襲的となることである。大きな重量を支え、大きな力に対応するために使用される大型ピンは、骨折を発生させる可能性があり得る。また、重量及び力は骨内でピンを移動させて、システムの精度に著しい影響を及ぼす可能性がある。
【0021】
その上、回転軸は、全ての目標面を達成するために、非常に精密に調節されなければならない。しかしながら、この調節は手動で行われ、ナビゲーションシステムによって提供される視覚フィードバックでしか支援されないため、困難であり、誤差又は不正確さをもたらしやすい。ユーザ又は鋸によって加えられた力を理由に切断面が鋸引き中にわずかに移動する場合、ユーザがその移動を見つけ、手動で調節を補正することは非常に困難であろう。
【0022】
更に、外科的制約、解剖学的制約、又は誤用により、ピンが正しい位置に配置されない場合、ロボットは、全ての切断部に到達することができるように切断ブロックを位置決めすることができず、骨内でピンをわずかに異なる場所に再配置する必要があり、この再配置は困難である。
【0023】
加えて、このシステムでは、座部が大腿骨に固定されている間に脛骨切断を行うことができず、したがって、脛骨の切断を実行するには特定のデバイスが必要であり、そのために追加の時間、追加のピン、追加のシステム及び努力が必要となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
開示の実施形態は、目標面に到達するために切断ツールの位置及び向きを正確に制御しながら患者の骨へのいかなる侵襲的な取り付けも必要としない、患者の解剖学的骨構造を少なくとも1つの目標面に従って切断するために切断ツールを誘導することが意図される外科用システムを提供する。
【0025】
したがって、外科用システムは、
(i)ロボット装置であって、
切断ツール又は切断ブロックを備えるエンドエフェクタと、
切断ツール又は切断ブロックの位置及び向きを各目標面に対して調整するように構成された、エンドエフェクタに取り付けられた、3~5つの電動自由度を備える作動ユニットと、を備えるロボット装置と、
(ii)作動ユニットを支持する受動的な関節接合された係止可能保持アームと、
(iii)解剖学的構造の座標系に対する切断面のポーズをリアルタイムで判定するように構成された追跡ユニットであって、作動ユニットに堅固に取り付けられるように構成されたトラッカーと、エンドエフェクタに堅固に取り付けられるように構成されたトラッカーと、を備える、追跡ユニットと、
(iv)目標面に対する切断面のポーズを判定し、切断面を目標面と位置合わせさせるように作動ユニットを制御するように構成された制御ユニットと、を備え、
制御ユニットは、
追跡ユニットによって提供される位置決め情報を使用して、作動ユニット、エンドエフェクタ及び解剖学的構造のポーズを判定する工程(S1)と、
切断面と目標面との間の偏差を計算する工程(S2)と、
偏差が閾値未満である場合、切断ツールの動作を許容し、作動ユニット、エンドエフェクタ、及び解剖学的構造の新たなポーズを判定するために工程(S1)に戻る工程と、
偏差が閾値以上である場合、作動ユニットの座標系に切断面及び目標面を投影する(すなわち、表す)工程(S3)と、
作動ユニットの出力に取り付けられた平面と切断面との間の補正行列を計算する工程(S4)と、
工程(S4)で計算された補正行列を用いて目標面を更新する工程(S5)と、
作動ユニットの新たな姿勢を計算して切断面を更新された目標面と位置合わせし、作動ユニットのモータによって加えられる運動を判定する工程(S6)と、
作動ユニットを作動させて当該運動を加える工程と、を含む制御ループを実施するように構成されている。
【0026】
「保持アーム」とは、少なくとも2つのセグメントから成り、所与の位置に係止され得る関節接合アームを意味する。保持アームは、手術台、脚部ホルダ、又はブロックされたホイールを有する可動カートなどの手術室の固定構造物に取り付けられる。
【0027】
「作動ユニット」とは、電動自由度により互いに連結された一連の剛性セグメントを意味する。作動ユニットは、保持アームの末端に堅固に取り付けられる。作動ユニットは、制御ユニットによって制御される。
【0028】
「平面機構」とは、少なくとも2つの自由度で、平面内でのみ移動するように物体を拘束する機構を意味する。例えば、平面機構は、2つの並進度及び1つの回転度を有するように作製することができる。
【0029】
「切断ツール」とは、骨の中での切断を実行することが可能な、鋸、フライス、レーザ、又は高圧ウォータージェットを意味する。膝手術では、一般的に、切断ツールは、振動鋸刃を但持し作動させる動力ユニットから成る。
【0030】
「解剖学的構造」とは、本明細書において、骨及び軟骨などのほぼ剛性の構造、又は2つ以上の骨から形成された関節を意味する。
【0031】
「ポーズ」とは、本明細書において、最大6つの自由度におけるツールの3D位置及び3D向きを意味する。用途に応じて、「ポーズ」は、必ずしも6つの自由度全てによって判定されず、1つの自由度又は6つ未満の自由度を含むサブセットによって判定されてもよいことに留意されたい。
【0032】
切断面と目標面との「位置合わせ」は、本明細書において、目標面からの当該切断面の偏差が距離1mm未満、角度1度未満であることを意味する。好ましくは、切断面は、目標面と完全に一致する。このような距離を測定するために、目標面の選択された点が切断面に投影され、投影された点と目標面との間の距離が測定される。選択された点は、切断対象の解剖学的構造の近傍にあるものとする。例えば、選択された点は、解剖学的構造の解剖学的点であってもよいし、あるいは、目標面に投影された、切断対象の解剖学的構造の中心であってもよい。
【0033】
一実施形態によれば、追跡ユニットは、カメラと、カメラによって検出可能な光学トラッカーとを備える光学追跡ユニットである。
【0034】
カメラは、制御ループの各反復(例えば、工程(S1)~工程(S6)の各シーケンス)を実施するように制御ユニットが構成される周波数よりも少なくとも2倍大きい周波数で動作するように有利に構成される。
【0035】
一実施形態によれば、カメラは、200Hz超、好ましくは300Hz超の周波数で動作するように構成される。
【0036】
一実施形態によれば、制御ユニットは、50Hz超、好ましくは100Hz超の周波数で制御ループの各反復を実施するように構成される。
【0037】
一実施形態によれば、制御ユニットは、工程(S1)と工程(S2)との間に、作動ユニットの現在のポーズが追跡ユニットによって提供される位置決め情報に基づいて計算され得るかどうかを評価することを含む追加の工程を含む制御ループを実施するように構成される。
【0038】
有利には、制御ユニットは、現在のポーズが判定され得る場合に、制御ユニットのメモリに作動ユニットの現在のポーズを記憶し、作動ユニットのその現在のポーズを用いて工程(S2)を実施することを含む追加の工程を含む制御ループを実施するように更に構成されてもよい。
【0039】
制御ユニットは、作動ユニットの現在のポーズを判定することができない場合、作動ユニットの以前のポーズが制御ユニットのメモリに記憶されているかどうかを評価する追加の工程を含む制御ループを実施するように更に構成されてもよい。
【0040】
一実施形態によれば、制御ユニットは、作動ユニットの以前のポーズが制御ユニットのメモリに記憶されている場合、その以前のポーズを使用して工程(S2)を実施することを含む制御ループを実施するように更に構成される。
【0041】
制御ユニットはまた、制御ユニットのメモリに以前のポーズが記憶されていない場合、再度工程(S1)を実施することを含む制御ループを実施するように構成されてもよい。
【0042】
一実施形態によれば、制御ユニットは、工程(S4)と工程(S5)との間に、補正行列のノルムを計算することと、そのノルムを所定の閾値と比較することと、を含む制御ループを実施するように構成される。
【0043】
有利には、制御ユニットは、ノルムが閾値よりも小さい場合、その補正行列を使用して工程(S5)を実施することを含む制御ループを実施するように構成される。
【0044】
制御ユニットは、ノルムが閾値より大きい場合、作動ユニットを停止するように更に構成されてもよい。
【0045】
一実施形態によれば、制御ユニットは、工程(S2)~(S4)で使用される作動ユニットのポーズが以前に記憶されたポーズであるかどうかを判定し、
そのポーズが以前に記憶されたポーズである場合、その以前に記憶されたポーズをメモリから消去し、工程(S1)に戻り、
そのポーズが作動ユニットの現在のポーズである場合、エラーを出力するように構成されている。
【0046】
一実施形態によれば、ロボットデバイスは、補正行列のノルムが閾値より大きいときに発光するように制御ユニットによって作動されるように構成された発光器を備える。
【0047】
一実施形態によれば、制御ユニットは、作動ユニットのトラッカーがカメラの視野内にあることを確認するためのメッセージをユーザに出力するように構成される。
【0048】
一実施形態によれば、外科用システムは、
(i)ロボット装置であって、
切断ツール又は切断ブロックを備えるエンドエフェクタと、
エンドエフェクタに取り付けられ、切断ツール又は切断ブロックの位置及び向きを各目標面に対して調整するように構成された、3~5つの電動自由度を備える作動ユニットと、を備えるロボット装置と、
(ii)作動ユニットを支持する受動的な関節接合された係止可能保持アームと、
(iii)解剖学的構造の座標系に対する切断面のポーズをリアルタイムで判定するように構成された追跡ユニットであって、作動ユニットに堅固に取り付けられるように構成されたトラッカーと、エンドエフェクタに堅固に取り付けられるように構成されたトラッカーと、を備える、追跡ユニットと、
(iv)目標面に対する切断面のポーズを判定し、切断面を目標面と位置合わせさせるように作動ユニットを制御するように構成された制御ユニットと、を備え、
制御ユニットは、
作動ユニット、エンドエフェクタ及び追跡ユニットによって提供される解剖学的構造の相対的ポーズに基づいて、切断面と目標面との間の偏差を計算する工程と、
偏差が閾値未満である場合、切断ツールの動作を許容する工程と、
偏差が閾値より大きい場合、作動ユニットの出力に取り付けられた平面と切断面との間の補正行列を計算する工程と、
計算された補正行列を用いて目標面を更新する工程と、
切断面を更新された目標面と整合させるために、作動ユニットの新たな姿勢を計算する工程と、を含む制御ループを実施するように構成される。
【0049】
有利なことに、膝関節形成術の場合、患者の脚部を同じ位置に保ち、システムをほぼ移動させることなく、全ての脛骨及び大腿骨の切断を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
例示的な実施形態の他の特徴、実施形態、及び利点は、添付図面に基づく以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【
図1】膝プロテーゼを埋め込むために大腿骨及び脛骨で実行される切断の概略図である。
【
図2】本発明による外科用システムの全体図である。
【
図3A】本発明の第1の実施形態によるロボットデバイスの斜視図である。
【
図3B】本発明の第1の実施形態によるロボットデバイスの斜視図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態によるロボットデバイスの斜視図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態によるロボットデバイスの斜視図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態による作動ユニットのアーキテクチャの概略図である。
【
図7】本発明の第5の実施形態による作動ユニットのアーキテクチャの概略図である。
【
図8A】それぞれ脛骨切断、遠位切断、前方切断、後方切断、前方面取り切断、及び後方面取り切断を行う間の
図3A~
図3Bに示すデバイスの斜視図である。
【
図8B】それぞれ脛骨切断、遠位切断、前方切断、後方切断、前方面取り切断、及び後方面取り切断を行う間の
図3A~
図3Bに示すデバイスの斜視図である。
【
図8C】それぞれ脛骨切断、遠位切断、前方切断、後方切断、前方面取り切断、及び後方面取り切断を行う間の
図3A~
図3Bに示すデバイスの斜視図である。
【
図8D】それぞれ脛骨切断、遠位切断、前方切断、後方切断、前方面取り切断、及び後方面取り切断を行う間の
図3A~
図3Bに示すデバイスの斜視図である。
【
図8E】それぞれ脛骨切断、遠位切断、前方切断、後方切断、前方面取り切断、及び後方面取り切断を行う間の
図3A~
図3Bに示すデバイスの斜視図である。
【
図8F】それぞれ脛骨切断、遠位切断、前方切断、後方切断、前方面取り切断、及び後方面取り切断を行う間の
図3A~
図3Bに示すデバイスの斜視図である。
【
図10】保持アームの別の実施形態を示す図である。
【
図11】脛骨に取り付けられた支持ユニットの一実施形態を示す図である。
【
図12】大腿骨に取り付けられた支持ユニットの一実施形態を示す図である。
【
図13】軟組織リトラクタを支持する支持ユニットの一実施形態を示す図である。
【
図14】軟組織リトラクタを支持する支持ユニットの別の実施形態を示す図である。
【
図15】本発明によるロボットデバイスを使用して大腿骨で切断される10個の目標面を有する実施形態の概略図である。
【
図16】エンドエフェクタに取り付けられたトラッカーを使用する、制御ユニットによって実施される補償制御ループの一実施形態を示す。
【
図17】作動ユニットに取り付けられたトラッカーの断続的な視認性の場合にロボットデバイスの動作を可能にするように構成された補償制御ループの実施形態を表す。
【
図18】6つの自由度を有する大型ロボットが、本発明で使用される平面機構を備えている状況を示す図である。
【
図19A】大腿骨及び脛骨の何回かの切断を行うためにロボットデバイスの位置決めを誘導するユーザインタフェースの一実施形態を示す図である。
【
図19B】大腿骨及び脛骨の何回かの切断を行うためにロボットデバイスの位置決めを誘導するユーザインタフェースの一実施形態を示す図である。
【
図19C】大腿骨及び脛骨の何回かの切断を行うためにロボットデバイスの位置決めを誘導するユーザインタフェースの一実施形態を示す図である。
【
図20】一実施形態によるロボットデバイスの設定を示す図である。
【
図21】別の実施形態によるロボットデバイスの設定を示す図である。
【
図22】別の実施形態によるロボットデバイスの設定を示す図である。
【
図24A】垂直切断を実行するためのロボットデバイスの利用を示す図である。
【
図24B】垂直切断を実行するためのロボットデバイスの利用を示す図である。
【
図24C】垂直切断を実行するためのロボットデバイスの利用を示す図である。
【
図25】切断ツールがフライスであるロボットデバイスの一実施形態を示す図である。
【
図26】電動平面機構の一実施形態を示す図である。
【
図27】切断ブロックが、切断ブロックと切断対象の骨との間の距離を調節するスライダ上に装着するように意図さされているデバイスの一実施形態を示す図である。
【
図28A】それぞれ切断ツールを挿入するための2つのスロットを含む切断ブロックの斜視図と、3つのスロットを含む切断ブロックの斜視図である。
【
図28B】それぞれ切断ツールを挿入するための2つのスロットを含む切断ブロックの斜視図と、3つのスロットを含む切断ブロックの斜視図である。
【
図29A】それぞれ脛骨の切断、並びに大腿骨の遠位切断、前方切断、後方切断、前方面取り切断、及び後方面取り切断を行うように位置決めされた切断ブロックを有するロボットデバイスの斜視図である。
【
図29B】それぞれ脛骨の切断、並びに大腿骨の遠位切断、前方切断、後方切断、前方面取り切断、及び後方面取り切断を行うように位置決めされた切断ブロックを有するロボットデバイスの斜視図である。
【
図29C】それぞれ脛骨の切断、並びに大腿骨の遠位切断、前方切断、後方切断、前方面取り切断、及び後方面取り切断を行うように位置決めされた切断ブロックを有するロボットデバイスの斜視図である。
【
図29D】それぞれ脛骨の切断、並びに大腿骨の遠位切断、前方切断、後方切断、前方面取り切断、及び後方面取り切断を行うように位置決めされた切断ブロックを有するロボットデバイスの斜視図である。
【
図29E】それぞれ脛骨の切断、並びに大腿骨の遠位切断、前方切断、後方切断、前方面取り切断、及び後方面取り切断を行うように位置決めされた切断ブロックを有するロボットデバイスの斜視図である。
【
図29F】それぞれ脛骨の切断、並びに大腿骨の遠位切断、前方切断、後方切断、前方面取り切断、及び後方面取り切断を行うように位置決めされた切断ブロックを有するロボットデバイスの斜視図である。
【
図30】切断ブロックが装着されるスライダが、ラック・アンド・ピニオン機構によって提供される複数の所定位置を含むデバイスの一実施形態を示す図である。
【
図31A】デバイスの支持ユニットの各種実施形態を示す図である。
【
図31B】デバイスの支持ユニットの各種実施形態を示す図である。
【
図32】切断ブロックを有するロボットデバイスの設定を示す図である。
【
図33】本発明の実施形態を実施する少なくとも1つの骨切り術を実行するための外科的処置のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下の説明は、膝手術、特に全膝関節形成術(total knee arthroplasty、TKA)に焦点を当てており、この場合、切断対象の解剖学的構造は、大腿骨及び脛骨から成る関節である。
【0052】
しかしながら、本発明はこの特定の用途に限定されるものではなく、様々な用途に適用することができる。概して、実施形態は、少なくとも1つの骨切り術工程を必要とする任意の外科的介入において使用することができる。特に限定されるものではないが、本概念は、以下の外科的用途:単顆型膝関節形成術(unicompartmental knee arthroplasty、UKA)、脛骨又は大腿骨骨切り術、膝蓋骨修復、外反母趾手術、近位大腿骨を切断する股関節手術、上腕骨頭を切断する肩手術、変形を矯正し椎体の骨切り術を実行する脊柱手術、足首手術、顎顔面手術においても実施することができる。
【0053】
以下で更に詳述するように、デバイスは、解剖学的構造をそれに沿って切断される少なくとも1つの目標面が、切断(複数可)を実行する前に計画される状況で使用される。
【0054】
少なくとも1つの目標面の計画は、患者の術前画像(例えば、CT画像、MRI画像、超音波画像、統計的形状モデルやPETなどと組み合わせた2D又は3DのX線)、術中3Dデータ(例えば、術中CT又は術中CBCT、術中MRI、超音波画像、2D又は3Dの術中X線画像、システムの位置を特定し、3D点、3D点の集合体、3D点の集合体によって再構成される表面などを提供することによって提供される幾何学的データ)、又はその両方を使用して実行される。
【0055】
多くのコンピュータ支援外科術式は、外科手術中に収集された画像又は幾何学的患者データを使用して、切断対象の解剖学的構造に付与された座標系に目標面を登録するために存在する。
【0056】
典型的には、術中画像又はデータは、解剖学的構造に付与された固有の座標系に術前画像を登録するために使用され、通常、コンピュータ支援外科的技術のいずれかを使用可能なトラッカー(反射マーカで作製された光学トラッカー、能動的LEDで作製された光学トラッカー、コイルで作製された電磁トラッカー、慣性センサ、超音波センサ、RFIDセンサの組み合わせなど)である。
【0057】
これらの従来のコンピュータ支援外科術式のいずれかを使用することにより、目標面は、切断対象の解剖学的構造に付与された座標系内に既知の幾何学的表示を含み、以下に詳述するように、その表示の移動が追跡ユニットによってリアルタイムで追跡される。典型的には、全膝手術のための手術計画工程では、5つの目標面が、大腿骨に固定されたトラッカーに付与された座標系に画定され、1つの目標面が、脛骨に固定されたトラッカーに付与された座標系に画定される。
【0058】
図2は、本発明による外科用システムの全体図を示す。
【0059】
患者Pは、例えば全膝関節形成術(TKA)の観点から、手術台500に横たわっている。
【0060】
その目的のために、少なくとも1つの目標面、好ましくは複数の目標面に沿って脛骨及び大腿骨を切断するように意図された鋸2などの切断ツールが、外科医などのユーザによって使用される。
【0061】
一実施形態によれば、切断ツールは、ロボットデバイス100に取り付けられたエンドエフェクタによって保持され、作動ユニット4(
図2には示されていないが、後続の図面を見るとよりよく分かる)によって、各目標面内に拘束される。あるいは、少なくとも1つのスロットを備える切断ブロックは、エンドエフェクタによって保持され、作動ユニットによって各目標面内に拘束され、切断ツールは、案内面を画定するスロットを通して外科医によって自由に操作される。
【0062】
ロボットデバイス100は、作動ユニットを制御する制御ユニット300に接続される。
【0063】
当該制御ユニットは、典型的には、電源、AC/DCコンバータ、作動ユニットのモータに電力を供給する運動コントローラ、ヒューズ、リアルタイム制御システムインタフェース回路を備える。
【0064】
システムはまた、ロボットデバイス、エンドエフェクタ、及び切断対象の解剖学的構造の相対的ポーズが、リアルタイムで追跡され、リアルタイム制御ユニットと計画システムとの間で共有されるように、追跡ユニット200を備える。
【0065】
少なくとも1つの座標系がエンドエフェクタに及び別の1つの座標系がロボットデバイスに付与される一方、少なくとも1つの座標系が解剖学的構造に付与される。
【0066】
追跡ユニットは、両方の座標系間の相対運動をリアルタイムで測定する。リアルタイムとは、短い待ち時間、理想的には15ミリ秒未満で、20ヘルツ超、好ましくは100~500ヘルツの範囲の高周波数を意味する。
【0067】
追跡ユニットによって取得されたデータは、ワイヤ301又は無線による任意の好適な接続を介して、短待ち時間で制御ユニット300に転送される。
【0068】
好ましい実施形態によれば、追跡ユニットは、カメラと、カメラによって検出可能な光学トラッカーとを備える光学追跡ユニットである。
【0069】
リアルタイム制御ユニットは、解剖学的構造とロボットデバイスとの間の小さい相対運動を補償するために、追加の待ち時間が短い適度に高い周波数で、提案されるリアルタイム制御アルゴリズムを実行することができる。
【0070】
好ましくは、カメラは、制御ユニットが制御アルゴリズムを実施するように構成されている周波数よりも少なくとも2倍大きい周波数で動作するように構成される。
【0071】
好ましい実施形態によれば、カメラは、200Hz超、好ましくは300Hz超、例えば330Hzの周波数で動作するように構成される。制御ユニットは、50Hz超、好ましくは100Hz以上の周波数で制御アルゴリズムを実施するように構成される。
【0072】
外科用ロボットデバイスの場合、より一般的には、1つ又は複数のモータに依存する任意のシステムの場合、適切なモータタイプ(例えば、運動速度、トルク、位置決め精度など)を選択するために、異なる性能要件を定義しなければならない。追加の制約又は制限(寸法容量、利用可能な電源、温度、湿度、期待される耐用年数など)もまた考慮され得る。
【0073】
ロボットデバイスは、小さい運動のリアルタイム補償を実行するように作られているので、速度は主基準のうちの1つである。TKA手術中、脚部が外科医又は助手によって、場合によっては、ウェッジ又はパッド(典型的には脚部の下及び/又は脚部の側面に位置する)の助けを借りて、及び/又は専用の脚部ホルダを用いて保持される。したがって、切断中の継手の運動振幅は非常に制限される。典型的には、大腿骨膝中心は、ほぼ3センチメートルを超えて動かない。更に、ロボットデバイスは保持アームによって保持され、したがって切断中に著しく移動しない。しかしながら、非常に小さくて速い変位が、例えば振動に起因して、常に(典型的には数ミリメートル未満)生じる。したがって、モータは、ロボットデバイスが、ほぼリアルタイムでこれらの小さいが速い運動を補償するために、高い加速を実行することができるように選択される。
【0074】
ロボットデバイスのモータはまた、エンドエフェクタに加えられる潜在的に高い負荷又は力を支持することができる。例えば、TKA用に構成されたロボットデバイスは、外科用鋸(重量が約1.5kgである)を保持することができ、切断中に鋸を取り扱うときにユーザによって加えられるいくつかの垂直力に耐えなければならない。これらの制約は、通常の条件でモータによって支持/達成されなければならない最小トルクを規定する。
【0075】
加えて、特に小型のロボットデバイスでは、モータのサイズは制限されたままでなければならない。したがって、当業者は、高速、高トルク、及び小さいフットプリント間の妥協に基づいて好適なモータを選択する。
【0076】
リアルタイム制御ユニットは、当該測定されたポーズに応じて、目標面に対するエンドエフェクタの位置をリアルタイムで計算する。
【0077】
この図では、接続はワイヤ301によって表されているが、ロボットデバイスがバッテリ駆動式である場合は無線であってもよい。
【0078】
制御ユニット及び追跡ユニットは、手術室内を移動することができるカート302内に配置されてもよい。これらのユニットはまた、別個のカート、関節式保持アーム、照明システムに装着されてもよく、又は追跡ユニットは、解剖学的構造若しくはロボット装置に取り付けられたいくつかの部分に直接装着されてもよい。例えば、電磁センサが解剖学的構造に取り付けられ得る一方、エンドエフェクタは電磁エミッタを堅固に支持することができる。
【0079】
システムは、フィードバック情報をユーザに表示し、ユーザによるシステム構成を可能にするように意図された視覚的ユーザインタフェース400を更に備えてもよい。フィードバック情報は、以下を含むことができる。
解剖学的構造の切断前の、切断面と目標面との間の偏差(距離及び/又は角度)に関する表示
目標面がロボットデバイスの現在の位置で達成され得るか否かに関する表示
作動ユニットが切断面と目標面とを位置合わせできるようにするために、切断対象の解剖学的構造に対して作動ユニットを再配置する方向
解剖学的構造の切断中の、切断面と目標面との間の偏差(距離及び/又は角度)に関する表示
【0080】
当該ユーザインタフェース400は、有利なことに画面を備え、画面は、主述室内のカート、例えば、制御ユニット及び追跡ユニットと同じカート302又は別個のカートに配置されてもよい、又は手術室の壁又は天井に取り付けられてもよい。
【0081】
当該画面に加えて又は画面の代わりに、ユーザインタフェースは、ユーザに情報を提供するためにロボット装置自体に配置されたインジケータを含んでもよい。当該インジケータは、矢印、数字、又は文字を示すように配置されたLED、又は小型ディスプレイで作製することができる。
【0082】
制御ユニット、追跡ユニット、及び/又はユーザインタフェースがロボットデバイス自体に埋め込まれている外科用システムは、埋め込まれたユニットが十分に強力な電源又は電池から給電され、サイズ及び重量がユーザによるロボットデバイスの操作を妨げない限り、本発明の範囲内である。例えば、マイクロカメラを作動ユニットの基部に取り付けることができ、マーカを解剖学的構造及び切断ツールに付与することができる。
【0083】
一実施形態によれば、切断ツールは、作動ユニットに取り付けられたエンドエフェクタ上に装着された外科用鋸である。鋸2は、ケーシング23と、ケーシング23に対する所定平面(「切断面」と称する)内で振動する鋸刃22とを備える(特に
図3Aを参照)。よって、作動ユニット4が鋸をリアルタイムで目標面内に拘束する限り、鋸刃は、切断ブロックを必要とせずに目標面に従って解剖学的構造を切断するように操作され得る。通常、切断面はケーシングの長軸に対して平行であり、鋸刃はこの軸の両側で振動する。このような鋸は、医療分野において「矢状鋸」として既知である。
【0084】
一実施形態によれば、エンドエフェクタは、平面機構によって作動ユニットの出力に接続される。ケーシングは通常、切断面が平面機構の平面に対して平行になるように、平面機構に対して位置決めされる。
【0085】
このような平面機構の非存在下では、仮想平面(以下の説明では出力面と呼ばれる)が作動ユニットの出力に取り付けられていると考えられる。
【0086】
一実施形態によれば、鋸刃は、ケーシングの長軸に沿って前後に移動し、このような鋸は、医療分野において「往復鋸」として既知である。ケーシングは通常、切断面が平面機構の平面に対して直交するように、平面機構に対して位置決めされる。
【0087】
一実施形態(
図25を参照)によれば、切断ツールはフライス2’である。実際、特にフライスヘッドが小さい場合(例えば、3mm程度の直径を有する場合)、切断面内に拘束されるフライスの動作により、面状切断を実行することができる。フライスの先端は、球形又は円筒形であってもよい。典型的には、円筒軸に対して平行な平面内に留まるように平面機構によって拘束された直径3mmの円筒形フライスの先端は、大きな切断を行うのに十分な剛性を有し、高速切断を実行するのに十分小型である。
【0088】
一実施形態(図示せず)によれば、切断ツールは、骨の後方の軟組織の損傷を回避するためにレーザの貫通深さを制御するシステムを有するレーザである。
【0089】
別の実施形態(図示せず)によれば、切断ツールは、高圧ウォータージェット又は解剖学的構造を切断する任意の他のデバイスであってもよい。
【0090】
別の実施形態によれば、軟組織の切断のため、切断ツールは、メス又はランセットなどの任意の電気作動型デバイスであってもよい。
【0091】
以下に説明される図面において、切断ツールは通常、本発明を限定することを意図せず、鋸である。
【0092】
作動ユニットは、有利には、3~5つの電動自由度を備える。作動ユニットは、有利には、可能な限り軽くて小型であるように設計される。いくつかの実施形態では、作動ユニットは、6つの自由度を備えてもよい。
【0093】
一実施形態によれば、作動ユニット4は、複数の可動セグメントから成るシリアルアーキテクチャを有する。作動ユニットのセグメントは、全図面を通じて符号41、42、43で示す。いくつかの実施形態では、作動ユニットは、各目標面に対する切断面の位置及び向きを調節するための3つの電動回転自由度を有する。他の実施形態では、作動ユニットは、2つの電動回転自由度及び1つ又は2つの電動並進自由度を有する。一般的に、作動ユニットは、3つ~5つの電動自由度を有し、そのうちの少なくとも2つは、互いに対して直交する回転自由度である。本明細書において、用語「軸」は、当該自由度に対応する幾何学的回転軸又は並進軸を表す。
【0094】
セグメント及びそれらのコンポーネントは、ロボットデバイスが、面状関節接合及び切断ツールを保持するのに十分な強靭さを保ち、ユーザが切断ツールを操作するときにユーザによって加えられる標準的な圧力に抵抗しつつも、可能な限りコンパクトで軽量であるように最適に一体化される。
【0095】
本明細書では、軸及びセグメントは、基部(すなわち、ロボットデバイスの作動中、静止したままのロボットデバイスの部分)から切断ツールに向かって増加するように番号付けされている。この種の番号付けは、シリアルロボットアーキテクチャにとって伝統的な番号付けである。
【0096】
好ましくは、作動ユニットのアーキテクチャは、3つの回転自由度を有して作製される。
【0097】
好ましいアーキテクチャによれば、セグメントは、2つの隣接セグメントの回転軸(すなわち、第1及び第2の軸、又は第2の軸及び第3の軸のいずれか)が互いに対してほぼ平行であり、第1の軸が第3の軸に対してほぼ直交するように配置される。好ましくは、2つの隣接セグメントの回転軸は互いに対して平行であり、第1の軸は第3の軸に直交している。
【0098】
図3A~
図3Bに示す好適な実施形態によると、第2の軸A2は第1の軸A1に対して平行であり、第3の軸A3は第1及び第2の軸に対して直交している。有利なことに、第1の軸と第2の軸との間の距離は、80~100mmの固定距離である。このような場合、TKAに適用すると、ロボットデバイスの単一の初期位置で、脛骨切断及び大腿骨切断を行うことができる。
【0099】
膝関節形成術(TKA、UKAなど)で使用される際、対象の脚部の内側(内方)又は外側(外方)にロボットデバイスを配置することができる。第1の回転軸A1は、膝の矢状面に対してほぼ直交し、内側上顆又は外側上顆の水準にほぼ位置することが意図される。ロボットデバイスのどの用途でも、作動ユニットを大体の範囲で位置合わせするために識別及び使用しやすい何らかの解剖学的目印を定義することができる。
【0100】
図4に示す別の実施形態によれば、第2の軸A2は、第1の軸A1に対してほぼ直交し、第3の軸A3は第2の軸に対してほぼ平行である。この実施形態の好適な実装形態では、第2の軸A2は第1の軸A1に対して直交し、第3の軸A3は第2の軸に対して平行である。
【0101】
使用中、第1の回転軸は、膝の上顆軸に対してほぼ平行であることが意図され、通常は、手術台に対してほぼ平行であり、脚部軸に対して直交している。
【0102】
図5に示す別のアーキテクチャによれば、第2の軸A2は第1の軸A1に対してほぼ直交し、第3の軸A3は第2の軸A2に対してほぼ直交している。このアーキテクチャの好ましい実装形態では、第2の軸A2は第1の軸A1に対して直交し、第3の軸A3は第2の軸A2に対して直交している。第1の軸A1及び第3の軸A3は、一定の距離だけ分離される。
【0103】
図5のアーキテクチャと比較して、
図3A~
図3Bのアーキテクチャは以下の利点を有する。膝関節に対する第1の回転軸の意図された位置を前提とすると、後者のアーキテクチャは十分に調整されている。つまり、膝関節形成術の処置の例では、全ての意図された目標面位置について作動ユニットをわずかに移動させることによって、切断面のわずかな移動を達成し得る。
【0104】
有利なことに、膝関節形成術(TKA、UKAなど)に適用するため、作動ユニットは、ロボットデバイスを実質的に移動させることなく全ての大腿骨及び脛骨の切断を実行するのに十分な寸法である。この点において、
図5のアーキテクチャは、作動ユニットを更に小型化するので、
図3A、
図3B、及び
図4のいずれかのアーキテクチャよりも好ましい。使用時に、
図5のアーキテクチャは、第1の軸が大腿骨の上顆軸とほぼ位置合わせされているとき、膝関節形成術にとって十分に調整されている。
【0105】
図6に示す実施形態によれば、作動ユニット4は、2つの電動回転自由度及び1つの電動並進自由度を有し、以下のように配置されている。第1の軸A1は回転軸であり、第2の軸A2はA1に対してほぼ直交する(好ましくは直交する)並進軸であり、第3の軸A3はA1及びA2に対してほぼ直交する(好ましくは直交する)回転軸である。
【0106】
図7に示す実施形態によれば、作動ユニット4は、2つの電動回転自由度及び2つの電動並進自由度を有し、以下のように配置されている。第1の軸A1は並進軸であり、第2の軸A2はA1に対してほぼ直交する(好ましくは直交する)並進軸であり、第3の軸A3はA1及びA2に対してほぼ直交する(好ましくは直交する)回転軸であり、第4の軸A4はA3に対してほぼ直交する(好ましくは直交する)回転軸である。
【0107】
いくつかの実施形態では、作動ユニットのアーキテクチャは、切断面内における、電動化されてもよく、されなくてもよい追加の運動を可能にする。6つの電動自由度を排除することによって、本発明は、具体的にはリアルタイムでの骨の動きを補償するために必要とされる、特に第1の軸に従ったより低い慣性、ひいてはより大きな応答性によって、大型外科用ロボットに対して差別化される。
【0108】
以下でより詳述するように、作動ユニット4は、制御ユニット300によって制御される。制御ユニットは、ロボットデバイス内に一体化されてもよく、又はロボットデバイスから分離されてもよい。
【0109】
切断ツールは、全図面を通じて参照符号24で指定された平面機構によって作動ユニットに結合され、平面機構は、切断面内での切断ツールの運動を拘束するように構成されている。
【0110】
有利なことに、切断ツールは、平面機構から分離させることができる。好ましくは、特に切断ツールがトラッカーを収容することを意図しない場合、切断ツールの取り付け手段は、再現可能な固定を提供する。
【0111】
平面機構を実装するために、いくつかの異なるアーキテクチャが存在する。例えば、平面機構は、1つの回転軸と切断ツールを長手方向に沿って搬送する1つの並進軸とだけを有するように作製することができる。あるいは、平面機構は、2つの直交する並進軸と回転軸とを有して作製することができる。別の実施形態によれば、平面機構は、回転軸と切断ツールを搬送する並進軸とを含むアーチ状のスライダであってもよい。
【0112】
一実施形態によれば、平面機構24は受動的であり、つまり、機構が電動化されておらず、ユーザによって自由に操作され得る。例えば、
図8A~
図8Fに示す実施形態では、受動的機構24は、切断面に対して直交する3つの平行回転軸24e~24gによって連結されたセグメント24a~24dを備える。このような受動的機構の1つの利点は、鋸を骨内で操作するときにユーザの全知覚を保つことである。例えば、外科医は、切断ブロック内で鋸を自由に操作し、骨の抵抗の変化を感知することによって、鋸刃が骨の背後に到達した時点を見つけ、この知覚は、関節において非常に低い摩擦を有する受動的平面機構で完全に保たれる。
【0113】
あるいは、平面機構は、少なくとも部分的に能動的であってもよい、すなわち、少なくとも1つの電動自由度を有することができる。平面機構が能動的である場合、すなわち、少なくとも2つの電動自由度を有する場合(
図26を参照)、切断(複数可)は自動的に実行され得る。当該電動自由度は全て、切断面内で切断ツールを移動させるように構成されていることに留意されたい。
【0114】
実施形態にかかわらず、平面機構は、切断面が目標面と整合すると、各自由度をロックするロックシステムを備えてもよい。
【0115】
作動ユニット及び平面機構の滅菌コンポーネントは、各介入前に滅菌することが可能である。しかしながら、好適な実施形態では、ケーブル及び平面機構を備えた作動ユニットは、使い捨て滅菌ドレープによって覆われている。システムの追加コンポーネントも、滅菌ドレープ下で保護され得る。これは、製造及び設計を容易化し、そのコストを低減するだけでなく、デバイスの再滅菌を必要とせずに複数回の連続する手術に使用しやすいという利点を有する。切断ツール自体は、任意の従来の外科用ツールと同様に滅菌されている。典型的には、オートクレーブを使用して各介入前に滅菌される。滅菌ドレープと切断ツールとの間に様々な種類の機械的アダプタを設けることができる。このようなアダプタは、鋸が追跡要素(以下でより詳述する)を含む場合、非常に精密な再現可能な固定を必要としないため、システム全体の精度が高まる。滅菌ドレープは平面機構を覆って、デバイスの設計及び製造を容易にする。例えば、この設計は、オートクレーブが困難であるボールベアリング機構の使用を可能にする。
【0116】
システムは、作動ユニットを支持する関節接合する係止可能保持アーム5を備え、この保持アームは、手術台、脚部ホルダ又はホイールをブロックすることができる可動カートなどの機械的支持体に接続するのに適している。脚部ホルダは、患者が手術台に横たわっているとき、脚部を所定の屈曲位置に維持するように構成された調節可能な機構である。
【0117】
保持アーム5は、玉継手、回転継手、及び/又は並進継手を使用する、いくつかの関節接合セグメントから成る。
【0118】
保持アームは、手動でノブ(機械的ロックシステム)によって、又はロックシステムの専用アクチュエータによって能動的に係止可能である。ロックシステムは、電気システム、圧電システム、油圧システム、空気圧システム、又はこのようなシステムの組み合わせ(例えば、電気モータによって駆動される油圧シリンダ)であってもよい。例えば、SMITH & NEPHEW社は、SPIDER(商標)の名称で、能動的に係止可能な受動的保持アームを販売している。アクチュエータは、ボタン、フットスイッチ、遠隔ボタンなどであり得る。ロボットデバイスを操作するために、ユーザは、ロボットデバイスの所望のポーズが達成されるまでアクチュエータを作動させ続けなければならない。
【0119】
保持アームは、ロボットデバイスの重量を支え、治療される解剖学的構造に対するロボットデバイスの大まかな位置決めを維持する。このため、デバイスを操作する際のユーザの運動が制限され、有利な実施形態では、ユーザ及び/又は患者の運動、切断ツールの振動、及び作動ユニットの運動によって引き起こされる反発力が減衰される。
【0120】
一実施形態によれば、保持アームは受動的である。
【0121】
有利なことに、保持アームは、ロボットデバイスと、患者に固定されたトラッカーに対するロボットデバイスの目標位置との間の距離に応じて漸進的に制動されてもよい。例えば、制動力は、ロボットデバイスの目標位置までの距離に反比例してもよい。あるいは、1つ又は複数の同心体積(例えば、立方体又は球体)が、ロボットデバイスの目標位置の周囲に画定されてもよい。制動力は、当該体積のうちの1つにおけるロボットデバイスの存在に応じて調節することができる。よって、ロボットデバイスが目標位置に近接しているとき、保持アームは制動され、ユーザは力フィードバック情報を受け取ることができる。あるいは、フィードバック情報は、光信号又は音響信号の形態で提供されてもよい。例えば、光信号の可変フラッシュ周波数及び/又は強度は、ロボットデバイスと目標位置との間の距離を示すことができる。同様に、音響信号の可変周波数、反復速度、及び/又は振幅が、上記距離を示すことができる。いずれの場合も、制動は完全ではないため、ユーザは常に、最終的な所望の位置までロボットデバイスを常操作することができる。次に、保持アームは、ユーザからの動作(例えば、アクチュエータの操作、ボタンの解放又は押圧)に応じて係止される。ロボットデバイスを再び移動させることを望む場合、ユーザはおそらくは上述の制動力で、再度アクチュエータを操作して保持アームを解放しなければならない。ロボットデバイスの新たな目標位置が規定される場合、新たな制動量が規定され、当該新たな量に基づいて制動が調節される。
【0122】
一実施形態では、保持アームは、例えば、術野において顕微鏡の搬送及び配置のため一般的に使用されるように、制御ユニットの重量を相殺する重りが搭載されている。
【0123】
一実施形態では、保持アームは、システム全体の重量を補償するバネ機構により垂直並進し、次いで、3つの平行軸及び垂直軸から成る大きな平面構造のシリアルアーキテクチャを有する。各軸は、ロックシステムを備える。
【0124】
図9は、クランプ502によって手術台500のレール501に固定された保持アーム5の一実施形態を示す。保持アームは、クランプから旋回リンク51、玉継手52という順序の運動学的リンクで形成される。中央モジュール53は、押されたときに保持アームを解放するアクチュエータ54を備える。あるいは、このようなアクチュエータは、ユーザが解剖学的構造に対するロボットデバイスの位置を変更することを望む場合、アーム及びロボットデバイスの操作を容易にするため、保持アームの高い部分に配置されてもよい。
【0125】
図10は、クランプ501によって手術台500のレールに固定された保持アーム5の別の実施形態を示す。保持アームは、6つの旋回リンク51で形成される。保持アームは、アクチュエータ(図示せず)によって係止されてもよい。
【0126】
好ましくは、レバーアームの効果を最小限に抑えるために、保持アームと作動ユニットとの間の接続部を、作動ユニットの第1のセグメント又はロボットデバイスの重心に可能な限り近づける。保持アームに取り付けられた作動ユニットの一部は、ロボットデバイスの基部と呼ばれる。
【0127】
一実施形態によれば、作動ユニットの第1のセグメントは、保持アームに固定されてもよい。このような場合、作動ユニットの第2のセグメントは、必然的に第1のセグメントに対して移動可能である。このアーキテクチャは、作動ユニットの動いているコンポーネントの重量を最小限に抑えるという点で有利である。その結果、ロボットデバイスは応答性が高くなることができ、切断面のリアルタイム制御に好適である。
【0128】
一実施形態によれば、作動ユニットの第1のセグメントは、保持アームに対して移動可能であってもよい。このような場合、第1及び第2のセグメントは、好ましくは単一のハウジングに埋め込まれる。
【0129】
一実施形態によれば、デバイスは、作動ユニットと解剖学的構造との間に部分的機械リンクを形成するように構成された支持ユニットを更に備えてもよい。支持ユニットは、保持アーム又は作動ユニットに直接又は間接的に取り付けられてもよい。後者の場合、支持ユニットは、作動ユニットの固定セグメント(例えば、保持アームに固定されている場合は第1のセグメント)、又は(保持アームに対してセグメントの回転軸を中心に回転可能な)作動ユニットの可動セグメントに取り付けられてもよい。
図11及び
図12を参照して後述する実施形態によれば、支持ユニット6は、保持アーム5又は作動ユニット4に取り外し可能に取り付けられた中間部7に取り付けられてもよい。中間部7は、例えば、滅菌ドレープ(図示せず)上に配置されて、支持ユニット6と保持アーム又は作動ユニットとの間に滅菌接続部を形成する滅菌部分であってもよい。支持ユニットは通常、滅菌コンポーネントである。作動ユニットが滅菌ドレープで覆われている場合、支持ユニットと作動ユニット又は保持アームとの間の接続は、中間部を介して滅菌ドレープ上に確立され得る。ロボットデバイスが滅菌されている場合、支持ユニットは、ロボットデバイスに直接接続され得る。
【0130】
一実施形態によれば、作動ユニットと解剖学的構造との間に部分的機械リンクを提供するように、支持ユニットは、切断対象の解剖学的構造又は切断対象の解剖学的構造に隣接する患者の身体のある部位との接触を目的とした少なくとも1つの要素を備える。
【0131】
支持ユニットが使用される場合、支持ユニットは、外科的介入を行うために必要な運動を妨げないように配置される。具体的には、支持ユニットは、各切断を実施するロボットデバイスの運動に干渉しないように配置されている。
【0132】
一般に、支持ユニットは、解剖学的構造(切断対象の解剖学的構造又は解剖学的構造に隣接する解剖学的構造、例えば、切断対象の骨を囲む軟組織)と接触するように意図された少なくとも1つの要素を備える。この要素60は、少なくとも1つのストラップ61によって患者に取り付けられ得る。その目的のために、この要素は、ストラップが延在する少なくとも1つのスロットを備えてもよい。ストラップは、可撓性又は半剛性(例えば、スキーブーツ用の締結デバイスのようなもの)であってもよい。ストラップは、締結機構、面ファスナー(Velcro(商標))としても知られる)などの任意の好適な手段によって調節することができる。あるいは、ストラップは、接着剤であってもよい、又は解剖学的構造と接触して配置された高摩擦係数材料(例えば、軟質熱プラスチック、シリコーン)で作製された少なくとも1つの部分を含むことができる。
【0133】
更に、支持ユニット6は、作動ユニットの基部(又は保持アーム又は上述の中間部)と、解剖学的構造と接触している支持ユニットの要素との間の機械的接続62を備える。この接続は、ロボットが使用中であるときは有効にし、外科医が脚部を移動させる必要があるときは無効にすることができる。一実施形態によれば、当該接続は剛性であってもよい。あるいは、当該接続は、ロボットデバイスと患者との間の距離を調節するために、又は患者の形態を考慮に入れるために、少なくとも1つの自由度で関節接合し、係止可能であり得る。ロボットデバイスが所望の位置及び向きに配置されると、支持ユニットが作動ユニットに対する解剖学的構造の運動及び振動を制限できる限り、いくつかの自由度は制御されないままであり得る。機械的接続62は、例えば、迅速固定具、ラッチ、又は磁石を使用して互いから着脱可能な少なくとも2つの部品62a、62bから成ってもよい。第1の部分62aは、解剖学的構造と接触している支持ユニットの要素60に取り付けられている。第2の部分62bは、作動ユニットの基部又は保持アーム若しくは上述の中間部に取り付けられている。したがって、中間部、作動ユニット、又は保持アームは、支持ユニットを患者から取り外す必要なく、機械的接続を解放するだけで解剖学的構造から分離させることができる。これは、例えば、靭帯バランスの確認又は脚部の術後アライメントの確認という観点から、ユーザが介入中に脚部の位置又は屈曲を変更することを望む場合に特に有用である。
【0134】
任意に、支持ユニットは、上述のコンポーネントと組み合わせて、解剖学的構造と接触するように意図された1つ又は複数のロッド63を含んでもよい(
図31A~
図31Bを参照)。例えば、TKAの場合、このようなロッドは上顆と接触し得る。当該ロッドは、剛性であり得る、又は(バネ部材を使用して)減衰され得る。したがって、当該ロッドは、骨に堅固に取り付けられることなく、ストラップが所定の方向に締め付けられたときに、解剖学的構造とロボットデバイスとの間の距離を維持することができる。
【0135】
ロッド(複数可)に加えて、又はロッドの代わりに、支持ユニットは、ロボットデバイス及び解剖学的構造が相対的に移動する場合、解剖学的構造(骨、皮膚、又は他の軟組織)上の定位置に留まり、制動を提供するように意図された少なくとも1つの(能動的又は受動的)吸引パッドを備えてもよい。
【0136】
好適な実施形態では、支持ユニットは脚部の周囲に取り付けられる。
【0137】
支持ユニットは、脛骨(
図11を参照)又は大腿骨(
図12参照)に取り付けられてもよい。支持ユニットは、脛骨及び大腿骨の両方に取り付けられてもよい。この場合、支持ユニットは有利には、支持ユニットを取り外すことなく脚部を動かす(特に脚部の屈曲を調節する)ことができるように関節接合される。
【0138】
一実施形態によれば、リトラクタが支持ユニットに取り付けられる。当該リトラクタは、外科医に大きな切開部及び視界を提供するように軟組織を引っ張る。第1のリトラクタは、張力をかけることができるリンクを使用して、切開部の内側及び支持ユニットの後部に取り付けられ得る。第2のリトラクタは、張力をかけることができるリンクを使用して、切開部の外側及び支持ユニットの後部に取り付けられ得る。脚部の操作中、支持ユニットは、迅速だが強力な機械的接続を使用して、作動ユニットの基部又は保持アーム若しくは中間部から取り外される。
【0139】
図13は、支持ユニットに取り付けられたリトラクタの一実施形態を示す。
【0140】
支持ユニット6は、保持アーム5に取り外し可能に取り付けられた中間部7に取り付けられている。具体的には、中間部7は、滅菌ドレープ(図示せず)全体にわたって保持アーム5との滅菌接続を可能にする。中間部7は、有利にトラッカー202を搬送することができる。支持ユニット6は、基部61を支持するストラップ61と、基部から延在する第1の締結具62aと、第1の締結具と協働して、迅速かつ強力なコネクタ62を形成する第2の締結具62bとを有する接続部材とを備え、接続部材は中間部に取り付けられる。
【0141】
各リトラクタ64は、解剖学的構造と接触するように構成された第1の端部64aと、支持ユニットのストラップ61に取り付けられるように構成された第2の端部64bとを有する屈曲形状である。より正確には、2つのバー65は、ストラップ61が通過するスロットを含むので、バー65が脚部から離れて突出する方向に維持される。各バーは、複数の孔650を含む。各リトラクタの第2の端部64bは、リトラクタの第1の端部64aが解剖学的構造に当接し、軟組織を十分に引っ張るように、対応するバー65の選択された孔650に挿入される。
【0142】
図14は、支持ユニットに取り付けられたリトラクタの別の実施形態を示す。
【0143】
支持ユニット6は、保持アーム5に取り外し可能に取り付けられた中間部7に取り付けられている。具体的には、中間部7は、滅菌ドレープ(図示せず)全体にわたって保持アーム5との滅菌接続を可能にする。中間部7は、有利にトラッカーを搬送することができる。支持ユニット6は、基部60を支持するストラップと、基部から延在する第1の締結具と、第1の締結具と協働して、迅速かつ強力なコネクタ62を形成する第2の締結具を有する接続部材とを備え、接続部材は中間部に取り付けられる。
【0144】
各リトラクタ64は、軟組織を把持するように構成された第1の端部64aと、支持ユニットのストラップ61に取り付けられるように構成された第2の端部64bとを有する。より正確には、ストラップ61は、
図13のストラップよりも幅広であってもよく、2つの側面上に複数のフック610を備える。各リトラクタの第2の端部64bは、孔640を含む。この孔640は、リトラクタの第1の端部64aが軟組織を十分に引っ張るように、ストラップの選択されたフック610と結合される。
【0145】
リトラクタを支持ユニットに取り付けることは、外科医の助手がリトラクタを保持する必要がなく、切開部近傍の空間を節約するために特に有利である。
【0146】
支持ユニットは、安定装置として作用する。当該支持ユニットは、剛性である、減衰する(例えば、バネ式)、及び/又は調節可能な減衰特性を提供することができる。支持ユニットと患者の身体との間の接触は、1つ若しくは複数の点又は少なくとも1つの表面から成ってもよい。
【0147】
解剖学的構造の切断前に、ユーザは、術前及び/又は術中の医用画像及びデータに基づいて、計画システムで介入を計画する。
【0148】
この計画工程により、解剖学的構造の切断を実行するのに適した各目標面を判定することができる。計画工程は各用途に特有のものである。
【0149】
例えば、既に上述したように、TKAの場合、膝のプロテーゼの植込計画は通常、大腿骨上の5つの目標面及び脛骨上の1つの目標面を画定する。例えば、個々の解剖学的構造に基づいてプロテーゼの形状を最適化するために、プロテーゼを骨に固定するための6つ以上の切断面を画定することも可能である。これは、
図15に示されており、10個の切断面f1~f10が、大腿骨の矢状図で患者の解剖学的構造に適合するように画定される。このような骨の準備のため、本発明によるロボットデバイスを使用して、高精度で多くの切断を迅速に実行できることが特に有利である。
【0150】
計画システムは、本発明による外科手術システムの一部を形成し得る。さもなければ、計画システムは、別々に提供され、制御ユニットに接続されてもよい。
【0151】
外科手術的介入の間、ユーザは、術前データ/画像を術中登録方法と共に使用してもよく、又は術中データ/画像を直接使用してもよい。両方の場合において、計画の結果は、少なくとも1つの目標面からなり、各平面のポーズは、切断対象の解剖学的構造の座標系内で判定される。
【0152】
次いで、各目標面のポーズを制御ユニットに転送する。
【0153】
制御ユニットは、そのサブシステムを初期化し、デバイスの使用準備が整う。
【0154】
デバイスの開始前、関節接合保持アームは、作動ユニットを解剖学的構造に対する大まかな好適位置に導くようにユーザによって移動された後に係止される。次いで、切断ツールが、平面機構に取り付けられる。
【0155】
支持ユニットも使用される場合、支持ユニットは、切断対象の解剖学的構造又は患者の身体の隣接領域に接続されて、作動ユニットと解剖学的構造との間に部分的機械リンクを提供する。支持ユニットによって提供される部分的機械リンクにより、ユーザが再配置のためにデバイスをわずかに移動させることができる、又はロボットデバイスが患者の不随意運動を補償することができる。患者に対する追加の侵襲的動作(例えば、ピンの植え込み)が不要である。
【0156】
デバイスの動作がユーザによって開始されると、追跡ユニットは、再計算及び可視化のために、制御ユニットに追跡情報を連続的に供給する。
【0157】
加えて、ユーザインタフェースは、切断面と現在のデバイス位置内の目標面とを位置合わせできるか否かに関する情報をユーザに提供し、適宜、デバイスを適切に再配置する方法を表示する。
【0158】
システムは、切断対象の解剖学的構造に対する鋸のポーズをリアルタイムで判定するように構成された追跡ユニット200を含む。
【0159】
追跡ユニットは、典型的には、追跡システムを含んでもよく、それ自体は既知である。
【0160】
コンピュータ支援手術において一般的に使用される追跡システムは、個別に又は組み合わせて使用することができる様々な技術(受動光学、能動光学、電磁、ジャイロ、ジャイロスコープ慣性測定、超音波など)を使用する。好適な実施形態によれば、追跡システムは、受動光学技術に基づく。
【0161】
追跡ユニットは、作動ユニットの任意のコンポーネント、例えば、可動セグメントのうちの1つに取り付けられ得る少なくとも1つのトラッカーを備える。
【0162】
作動ユニットの各セグメントの位置は、モータのエンコーダ又はセンサ、並びにロボットセグメントの全ての軸及び距離を含むロボットの較正モデルにより、リアルタイムで既知となる。このモデル、及びロボットにおける周知の幾何学的モデリング技術を用いて、全てのセグメントの相対位置を計算することが可能であるため、外部トラッカーを使用してロボットに付与された座標系において1つの測定値が既知である場合、どのセグメント位置も同じ座標系において既知である。加えて、トラッカーが作動ユニットの基部に取り付けられ、第2のトラッカーが解剖学的構造に取り付けられている場合、作動ユニットのいかなるセグメントのポーズも、解剖学的構造のトラッカーに付与された座標系において既知である。
【0163】
好適な実施形態では、作動ユニットとエンドエフェクタとの間に存在し得るあらゆる機械的バックラッシュを考慮に入れ、安全上、エンドエフェクタの位置及び向きを過剰かつより正確に測定するために、第1のトラッカーが作動ユニットの第1又は第2のセグメントに取り付けられ、第2のトラッカーがエンドエフェクタに取り付けられる。
【0164】
加えて、切断対象の解剖学的構造の座標系に対して切断面を位置決めできるように、少なくとも1つのトラッカーが患者の解剖学的構造に堅固に取り付けられる。
【0165】
全ての図面を通じて、解剖学的構造に取り付けられたトラッカーは、参照符号201で示され、作動ユニット又は保持アームに取り付けられたトラッカーは、参照符号202で示され、エンドエフェクタに取り付けられたトラッカーは、参照符号203で示される。
【0166】
エンドエフェクタに取り付けられたトラッカーのおかげで、動き補償が改善される。この追加のトラッカーにより、ロボットデバイスの座標系においてエンドエフェクタの位置及び向きを確実に判定することができる。
【0167】
当該追加のトラッカーをエンドエフェクタに取り付ける代わりに、作動ユニットの反対側の平面機構(もしあれば)の端部に堅固に取り付けることが可能である。平面機構の当該端部は、上述した任意の種類の切断ツール(矢状鋸、往復鋸、フライスなど)だけでなく、その他の外科的ツール、例えば、プロテーゼ及び/又は切断ガイドなどを埋め込む穴を開けるために使用されるドリルガイドなども収容することができるインタフェースを備えてもよい。例えば、ドリルガイドは、穿孔される解剖学的構造の表面をしっかりと捉えるように意図された鋸歯状端部を有することができる。好都合なことに、ハンドルがドリルガイドの反対端に設けられて、外科医による操作を容易にする。したがって、歯付き端部が解剖学的構造に適用されると、外科医は、ナビゲーションインタフェースによって、単にドリルガイドの向きを変更するだけでよい。ドリルは、平面機構の端部に担持されるトラッカーを有する代わりに、トラッカーを担持してもよい。
【0168】
ロボットデバイスと解剖学的構造との間の相対運動の補償は、切断ツール又は平面機構の端部に堅固に取り付けられた追加のトラッカーを用いて、以下のように実施することができる。
【0169】
制御ループでは、エンドエフェクタ又は平面機構(もしあれば)の端部の正確な位置が、作動ユニットの出力面の、又は平面機構の理論上の位置の代わりに使用される。
【0170】
これにより、補償機構の信頼性が大幅に高まる。
【0171】
更に、切断ツールに取り付けられたトラッカーと、作動ユニットに取り付けられたトラッカーとを関連付けることによって、2つのトラッカー間の位置合わせ誤差を動的に推定することができる。次いで、この位置合わせ誤差を使用して、目標面に対する平面機構の位置及び向きを修正する。
【0172】
図16は、補償を可能にする制御ループを説明するフローチャートである。
【0173】
工程S1で、ロボットデバイス、エンドエフェクタ、及び解剖学的構造の新たなポーズが、トラッカーによって提供される位置決め情報を使用して判定される。
【0174】
工程S2で、エンドエフェクタの平面(切断面)と目標面との間の偏差dが計算される。この工程では、両方の面が、位置決めシステム(例えば、光学追跡の場合の追跡カメラ)の座標系において知られる。
【0175】
偏差dが閾値thr未満である場合、切断ツールを作動させることができ、ロボットデバイス及び解剖学的構造の新たなポーズが判定される(工程S1)。
【0176】
偏差dが閾値thr以上である場合、工程S3で、エンドエフェクタの平面(切断面)及び目標面がロボットデバイスの座標系に投影される(すなわち、表される)。この座標系の変化により、ロボットデバイスを目標面に対してどのように移動させるかを判定することが可能になる(以下の工程S6で)。
【0177】
工程S4で、作動ユニットの出力面(又はもしあれば平面機構の平面)と切断面との間の剛性変換に対応する補正行列Terrが計算される。作動ユニット(又は平面機構)はロボットデバイスに属するため、両方の面は、ロボットデバイスの座標系である同じ座標系で表される。
【0178】
工程S5で、目標面がTerrで更新される。
【0179】
工程S6で、目標面に到達するように、ロボットデバイスの新たな姿勢が計算される。この計算は、作動ユニットのモータによって加えられる運動を判定する。
【0180】
工程S7で、作動ユニットのモータが、工程S6に従って作動する。
【0181】
次いで、ロボットデバイス及び解剖学的構造の新たな位置が判定される(工程S1)。
【0182】
この基本アルゴリズムは、以下のロボットデバイスの挙動を更に改善させることが証明されている。
各種要素の位置の空間的フィルタリング(例えば、カルマンフィルタ又はその等価物による)
例えば、四元数平均化法による、所与の時間枠におけるTerrの推定の平均化。このため、変換推定と機械的リンクのより複雑な実体との間の小さい不一致に起因する潜在的振動を低減することができる。
【0183】
補正行列Terrは、平面機構の現在の延長に応じて変化する場合があり、一定ではない。また、補正行列は、平面機構の機械的バックラッシュ及び屈曲、ロボットの位置、及びその他の要因にも依存する。補正行列は、ユーザによる鋸の妥当な運動を考慮に入れて、2つの計算の間の偏差Terrが有意でなくなるようにリアルタイムで計算される。この補正方法は、モデルにおける機械的欠陥、バックラッシュ、及び誤差を補正するうえで極めて正確かつ効率的である。
【0184】
上述したように、このような制御ループは、制御ユニットによって、少なくとも2倍の周波数、例えば、200Hzより大きい、又は更に300Hzより大きい周波数で取得された追跡情報に基づいて、高周波数、例えば、100Hzより大きい周波数で制御ユニットによって実施されてもよい。実際、この制御ループの実施は、複雑かつ長い計算を伴わない。必要に応じて、計算時間を短縮するために、平行計算を実施することができる。
【0185】
加えて、トラッカーを備えるエンドエフェクタを提供することにより、作動ユニットに取り付けられたトラッカーが追跡カメラによって断続的に見える場合であっても、ロボットデバイスを動作させることも可能になる。このような断続的な視認性は、医療スタッフのメンバー、又はトラッカーとカメラとの間に介在する手術室の設備によって引き起こされ得る。
【0186】
そのため、制御ループは、上述したものと比較して、いくつかの追加の工程を含む。この適合された制御ループは、
図17に表される。両方の制御ループにおける同じ番号付けを有する工程は同じであり、再び詳細に説明されない。
【0187】
工程S1で、作動ユニット、エンドエフェクタ、及び解剖学的構造の新たなポーズが、トラッカーによって提供される位置決め情報を使用して判定される。
【0188】
工程C1で、制御ユニットは、作動ユニットの現在のポーズが、追跡ユニットによって提供される位置決め情報に基づいて計算され得るかどうかを評価する。
【0189】
作動ユニットの現在のポーズが判定され得る場合、それは、制御ユニットのメモリに後の使用のために記憶される。
【0190】
作動ユニットの現在のポーズを判定することができない場合(例えば、トラッカーが見えないため)、制御ユニットは、作動ユニットの以前のポーズが制御ユニットのメモリに記憶されているかどうかを工程C2で評価する。以前に記憶されたポーズは、利用可能な場合に使用することができる。作動ユニットのポーズが現在記憶されていない場合、又はエンドエフェクタ又は解剖学的構造のポーズを判定することができない場合、ロボットデバイスは停止し、システムは工程S1に戻る。
【0191】
工程S2で、エンドエフェクタの平面(切断面)と目標面との間の偏差dが計算される。
【0192】
偏差dが閾値thr未満である場合、エンドエフェクタは動作することができ、ロボットデバイス、エンドエフェクタ、及び解剖学的構造の新たなポーズが判定される(工程S1)。
【0193】
偏差dが閾値thr以上である場合、工程S3で、エンドエフェクタの平面(切断面)及び目標面が、作動ユニットの最後の既知のポーズに従って作動ユニットの座標系に投影される(表される)。
【0194】
工程S4で、作動ユニットの出力面(又は、もしあれば平面機構の平面)とエンドエフェクタの平面との間の剛性変換に対応する補正行列Terrが計算される。
【0195】
次いで、補正行列Terrのノルム(ノルム(Terr)と示されるを計算する。
【0196】
このノルムが所定の閾値Eより大きい場合(エンドエフェクタの平面の予期される位置と作動の出力面との間の差が大き過ぎることを示唆する)には、
・現在使用されているロボットデバイスのポーズが、以前に記憶されたものであった(すなわち、ロボットデバイスのポーズは、制御ループの現在の反復中に判定できなかった)場合には、ロボットデバイスは停止し、ロボットデバイスの以前に記憶されたポーズが消去され、制御ユニットが工程S1に戻り(この根拠は、ロボットデバイスの基部が無視できない方法で移動した可能性があり、システムがロボットデバイスの新たなポーズを判定する必要があることにある)、
・ロボットデバイスのポーズが最新のものである場合(すなわち、ロボットデバイスのポーズが制御ループの現在の反復中に判定できた)場合には、ロボットデバイスは停止し、制御ユニットによってエラーが出力される(この根拠は、この場合、エンドエフェクタの平面の予期される位置と作動ユニットの出力面(又は、もしあれば平面機構の平面)との間の不一致が大き過ぎ、トラッカーを再び可視化することによって解決することができない機械的問題が、それを引き起こした可能性があることにある)。
【0197】
一実施形態によれば、ロボットデバイスは、補正行列のノルムが閾値より大きいときに発光するように制御ユニットによって作動されるように構成された発光器を備えてもよい。例えば、発光器は、補正行列のノルムが閾値よりも小さい限り連続光を発し、補正行列のノルムが閾値を超えるとすぐに点滅光を発することができる少なくとも1つのLEDを含んでもよい。このような発光器は、有利には、切断面に近い位置に配置される。したがって、ユーザに、作動ユニットのトラッカーが見えないという視覚情報を提供することができる。
【0198】
一実施形態によれば、制御ユニットは、作動ユニットのトラッカーがカメラの視野内にあること、及び/又は機械的問題が生じた可能性があることを確認するために、ユーザにメッセージを出力するように構成されてもよい。例えば、このメッセージは、制御ユニットに結合された画面上のテキストとして表示されてもよい。
【0199】
補正行列Terrのノルムが閾値Eよりも小さい場合、目標面は、工程S5でTerrで更新される。
【0200】
工程S6で、目標面に到達するように、ロボットデバイスの新たな姿勢が計算される。この計算は、作動ユニットのモータによって加えられる運動を判定する。
【0201】
工程S7で、作動ユニットのモータが、工程S6に従って作動する。
【0202】
次いで、ロボットデバイス、エンドエフェクタ、及び解剖学的構造の新たなポーズが判定される(工程S1)。
【0203】
ちなみに、上述した補償方法は、平面機構を用いるか用いないかにかかわらず、エンドエフェクタを保持する6つの自由度を有する大型の外科用ロボットにとっても有利であることに留意されたい。特に、平面機構は術野に非常に近接しているため、小型のままにする必要があり、その結果、切断時に外科医によりかけられる力で屈曲しやすい。大型外科用ロボットが正確である場合であっても、それ自体が、平面機構の上記屈曲を補償することができない。しかしながら、エンドエフェクタ上のトラッカーを使用して上記補償方法を実施することにより、この問題を克服することができる。
図18は、このような大型ロボットを示す。ロボット1000は、6つの電動自由度を含むシリアルアーキテクチャを有するアーム1001と、アームの最後のセグメントを切断ツール2に接続する平面機構24とを備える。ロボットは、患者の解剖学的構造の座標系に対する切断面のポーズをリアルタイムで判定するように構成された追跡ユニットと共に使用される。追跡ユニットは、解剖学的構造に取り付けられるように構成された少なくとも1つのトラッカー(図示せず)と、ロボットのアームのセグメントに取り付けられたトラッカー202と、エンドエフェクタに取り付けられたトラッカー203とを備える。ロボットは、目標面に対する切断面のポーズを判定し、切断面を目標面と位置合わせするようにアームを制御するように構成されている制御ユニットによって制御される。制御ユニットは、以下の工程、すなわち、
追跡ユニットのトラッカーによって提供される位置決め情報を使用して、アーム、エンドエフェクタ、及び解剖学的構造のポーズを判定する工程(S1)と、
切断面と目標面との間の偏差を計算する工程(S2)と、
偏差が閾値未満である場合、切断ツールの動作を許容し、アーム、エンドエフェクタ、及び解剖学的構造の新たなポーズを判定するために工程(S1)に戻る工程と、
偏差が閾値以上である場合、ロボットの座標系に切断面及び目標面を表す工程(S3)と、
作動ユニット又は平面機構の平面の出力面と切断面との間の変換を計算する工程(S4)と、
目標面を、工程(S4)で計算された変換を用いて更新する工程(S5)と、
更新された目標面に到達するようにロボットの新たな姿勢を計算し、アームのモータによって加えられる運動を判定する工程(S6)と、を含む補償方法を実施するように構成されている。
【0204】
有利なことに、エンドエフェクタ及び/又は作動ユニットへのトラッカーの取り付けは、可逆的かつ再現可能である。
【0205】
一実施形態によれば、トラッカーが作動ユニットに取り付けられる代わりに、システムはまた、支持ユニットを保持アーム又は作動ユニットに、ロボットデバイスと保持アームとの間の接続部が十分に剛性である(機械的遊びを有しない)場合は保持アームに接続する中間部(
図11~
図14に示す部品7)に取り付けられたトラッカー、並びに/又はロボットデバイスに堅固に接続された任意の他のコンポーネントに取り付けられたトラッカーを備える。
【0206】
前述したように、ユーザインタフェースは、切断面を目標面と位置合わせさせるのに好適な作動ユニットの潜在的な位置及び向きをユーザに表示するように定義される。
【0207】
適宜、ユーザインタフェースは、作動ユニットを最適なポーズで再配置し、切断面と目標面との位置合わせを可能にする情報をユーザに提供してもよい。ユーザインタフェースは、全ての目標切断面が作動ユニットの現在位置から到達することができるか否かを表示し、できない場合は、最適位置に到達するように移動する方向をユーザに表示してもよい。
【0208】
当該ユーザインタフェースは、視覚的及び/又は聴覚的であってもよい。
【0209】
一実施形態によれば、ユーザインタフェースは、制御ユニットに接続された画面、例えば、
図2に示す画面400を含んでもよい。
【0210】
図19A~
図19Cは、ロボットデバイスの様々なポーズに対応するスクリーニングを示す3つの図である。
図19Aの状況では、ロボットデバイスは、計画された切断のいずれも実行できない位置及び向きにある。この状況は、TKAに必要な6つの目標面のそれぞれを表す領域A内のアイコンに交差線が引かれていることによって示される。
図19Bの状況では、ロボットデバイスは、計画された切断の全部ではないが一部を実行することができる位置及び向きにある。この状況は、領域A内のTKAに必要な6つの目標面のうちの2つを表すアイコンに交差線が引かれていることによって示される。
図19Cの状況では、ロボットデバイスは、計画された切断の全てを実行できる位置及び向きにある。この状況は、TKAに必要な6つの目標面のそれぞれを表す領域A内のアイコン全てに交差線が引かれていないことによって示される。
【0211】
したがって、このようなユーザインタフェース(他の実施形態は後述する)では、ユーザは、ロボットデバイスの再配置を必要とせずに、システムがTKAの6回の切断(5回の大腿骨切断及び1回の脛骨切断)を実行することができるようにロボットデバイスを位置決めすることができる。このようにして、TKA手術は、従来技術のデバイスよりもはるかに高速に実施することができる。
【0212】
解剖学的構造の現実的な3Dモデルが利用可能である場合(すなわち、患者の術前又は術中の撮像によって得られる)場合、切断ツール(例えば、振動ブレードのエンベロープ)のリアルタイム表示と共に当該3Dモデルを画面に表示してもよい。例えば、切断ツールが鋸である場合、鋸刃の先端が絶対に骨から突出しないようにするために、ユーザが骨に対する鋸刃の先端位置の映像を視認することができるようにする。鋸を作動ユニットに接続する平面機構が電動化される場合、この制御は自動化されてもよい。
【0213】
デバイスの使用中、制御システムは、鋸が目標面と位置合わせされ得るか否かをリアルタイムで確認する。ロボットデバイスが、鋸が当該目標面と位置合わせされ得ないように移動する場合、例えば、振動及び/又は患者の不随意運動が生じた場合、ユーザに提供される情報は変化し得る。例えば、矢印の色が変化する、又は音響フィードバックが生成される。
【0214】
別の実施形態(図示せず)によれば、ユーザインタフェースは、LEDなどの視覚的インジケータを含む。これらのLEDは、ロボットデバイスに固定される支持面に配置されてもよい。あるいは、LEDは、ロボットデバイスとは別個の支持体に配置され、ワイヤによってその支持体に接続されてもよい。あるいは、LEDは、ロボットデバイスとは別個の支持体に配置され、ロボットデバイスに無線で接続されてもよい。このような別個の支持体は、ユーザの視野内でロボットデバイス/切断ツールの近傍に配置することができる。
【0215】
当該インジケータは、ロボットデバイスが、切断面と目標面との間の位置ずれを補償することができない場合に、ユーザに切断ツールを作動させないように指示するように意図されている。例えば、解剖学的構造及び/又は切断ツールに取り付けられたトラッカーが不可視になるとすぐ、赤色光及び点滅光が点く。トラッカーの視認性が回復するとすぐに、光が消えるか、緑色光に変えられる。
【0216】
ユーザに情報を提供する別の方法は、仮想アルコール水準器を表す数値表示(例えば、LCD画面によって提供される)を使用することである。ロボットデバイスの全般的な向きは、ロボットデバイスの頂部の仮想アルコール水準器と側部(患者の脚部の反対側)の仮想アルコール水準器に基づいて、ユーザによって調節することができる。ロボットデバイスの距離は、支持ユニットを使用して、及び/又は所望の方向を指す矢印を表すLEDなどのインジケータを使用して、及び/又はユーザインタフェースの画面を介して調節することができる。
【0217】
システムは、鋸と目標面とを位置合わせさせるために、鋸のポーズを最適に制御するように意図された制御ユニットを更に備える。
【0218】
一実施形態によれば、制御ユニットは、切断を実行するために使用される外科用鋸に結合されてもよく、切断面が目標面と位置合わせされたときにのみ鋸の作動を可能にするように構成されてもよい。これにより、システムの安全性が向上する。
【0219】
【0220】
患者(
図20には1つの屈曲した脚部のみが示されている)は、脚部下側が脚部ホルダ600によって支持された状態で、手術台500に横たわっている。トラッカー201は大腿骨に固定され、別のトラッカー201は脛骨に固定されている。
【0221】
保持アーム5は、一端が脚部ホルダ600に取り付けられ、他端が作動ユニット4に取り付けられている。
【0222】
保持アームは、ロボットデバイスを患者に対する所望の位置に導くようにユーザによって自由に操作され、ロボットの重量を支えることができる。アーム5は、所望の位置が達成されると、係止することができる。保持アームは、
図9及び
図10を参照して説明されるアームのうちの1つであってもよい。
【0223】
この設定では、ロボットデバイスは、いかなる支持ユニットも含まない。しかしながら、本発明の範囲から逸脱することなく、支持ユニットを(保持アームに加えて)設けることができる。
【0224】
トラッカー202は、ロボットデバイスの作動ユニット4の第2のセグメントに固定されている。
【0225】
鋸2は、受動的平面機構24によって第3のセグメントに接続される。
【0226】
更に、トラッカー203が鋸2に取り付けられ、ロボットデバイスと鋸との間に存在し得る機械的遊びを補償することができる。
【0227】
【0228】
患者(
図21では1本の脚部のみが示されている)は、脚部が屈曲位置にある手術台500に横たわっている。図示されていないが、患者の脚部は、外科的介入に一般的に使用されるウェッジによって当該屈曲位置に維持され得る。例えば、屈曲脚部の内側及び外側への運動を低減するため、1つのウェッジを脚部の下に、別のウェッジを腰部の外側に配置することができる。
【0229】
トラッカー201は大腿骨に固定され、別のトラッカー201は脛骨に固定されている。
【0230】
保持アーム5は、一端が手術台500上に配置されたレール501に取り付けられており、他端が作動ユニット4に取り付けられている。保持アームが取り付けられるレールは、台の対象脚部と同じ側に位置するレール、又は台の対象脚部の反対側に位置するレールであってもよい。
【0231】
作動ユニットはまた、上側脚部の周囲に配置されたストラップ61に取り付けられて、解剖学的構造と作動ユニット4との間に部分的機械リンクを形成する支持ユニット6を提供する。支持ユニットが切断対象の解剖学的構造と直接的に接触する、又は切断対象の解剖学的構造に隣接する患者の身体の領域(ここでは、大腿骨を取り囲む軟組織)を介して間接的に接触するという事実により、支持ユニットは、デバイスを操作する際のユーザの運動を制限する部分的機械リンクの効果を発揮し、有利な実施形態では、ユーザ及び/又は患者の運動、切断ツールの振動、及び作動ユニットの運動によって引き起こされる反発力を減衰させる。
【0232】
トラッカー202は、ロボットデバイスの作動ユニット4の第2のセグメントに固定されている。
【0233】
鋸2は、受動的平面機構24によって作動ユニット4の第3のセグメントに接続されている。
【0234】
更に、トラッカー203が鋸2に取り付けられ、ロボットデバイスと鋸との間に存在し得る機械的遊びを補償することができる。
【0235】
【0236】
患者(
図22には1つの屈曲した脚部のみが示されている)は、脚部下側が脚部ホルダ600によって支持された状態で、手術台500に横たわっている。トラッカー201は大腿骨に固定され、別のトラッカー201は脛骨に固定されている。
【0237】
保持アーム5は、一端が脚部ホルダ600に取り付けられ、他端が作動ユニットに取り付けられている。
【0238】
図21の実施形態のように、作動ユニット4はまた、上部脚部の周囲に配置されたストラップに取り付けられており、解剖学的構造と作動ユニットとの間に部分的機械リンクを形成する支持ユニット6を提供する。
【0239】
【0240】
支持ユニット6は、患者の大腿骨Fの周囲の軟組織を共に包囲する可撓性ストラップ61及び剛性支持体60を備える。可撓性ストラップ61は、剛性支持体60を脚部に締め付けることができ、可撓性ストラップの張力は、患者の脚部の直径に応じて調節される。様々な厚さのクッションを、剛性支持体と患者の皮膚との間に挿入して、様々な大きさの脚部に適合させることができる。また、バネ機構を使用して剛性支持体の側面に圧力をかけることも可能であり、個々の患者に可変調節を提供する。最後に、作動ユニット4から支持ユニットの剛性支持体60を引き離すことができる機械システム62を使用し得る。距離は、離散位置又はクランプ機構によって設定することができる。
【0241】
任意の実施形態において、大腿骨に取り付けられた支持ユニットは、脛骨及び大腿骨が軟組織によって連結されて運動を安定させる機械的リンクを形成するので、脛骨の切断を実行するために使用することができる。別の実施形態では、支持ユニットは、脚部(脛骨)の下部に取り付けることができ、作動ユニットは、大腿骨及び脛骨の全ての切断を実行するために使用される。
【0242】
支持ユニットの基部62bは、第1の軸を中心に自由に回転するように、作動ユニット4の第1のセグメント41に取り付けられている(保持アームにも堅固に取り付けられている)。
【0243】
基部62bは、中央溝621を備える径方向に延在する部材620を備える。
【0244】
基部62bは、中央溝621に摺動可能に係合するねじによってストラップ支持体622に接続される。作動ユニットと脚部との間の距離は、ねじ622に対して基部62bを移動させることによって調節することができる。所望の距離が得られると、ねじ622は、基部をストラップ支持体60に堅固に接続するように締められる。
図11~
図12に示す他の実施形態によれば、調節用のねじ及び溝を有せずに径方向に延在する部材を使用して、作動ユニットと脚部との間に固定距離を設けることも可能であり、旋回リンクによって作動ユニット、保持アーム、又は中間部に接続するだけでよい。作動ユニットの基部に対する固定要素を使用して、支持ユニットの運動及び調節を排除することも可能である。
【0245】
図23は、支持ユニットの一例のみを示しており、当業者であれば、脚部に対するロボットデバイスの位置を調節するために、より多くの設定(並進及び/又は回転)を含むように支持ユニットを設計することができる。
【0246】
支持ユニットは、
図21、
図22及び
図23では大腿骨の周囲に示されているが、脛骨に又は大腿骨及び脛骨の両方に取り付けられ得る。
【0247】
図24A~
図24Cは、ロボットデバイスの別の用途を示す。本実施形態では、切断ツールは、平面機構の平面に対して直交する往復鋸である。
【0248】
この鋸は、いわゆる垂直又は矢状切断を実行するために使用し得る。具体的には、TKA手術中、これらの垂直切断により、大腿骨内に、後方安定型(PS)大腿骨コンポーネントを収容するように構成されたボックスBを形成することができる(
図24Aを参照)。UKA手術中、往復鋸を使用して、脛骨インプラントを設置するのに必要な矢状切断を実行することができる。
【0249】
切断の開始前に、第1の工程は、平面機構24を、切断部に対して直交する平面(例えば、脛骨の矢状切断、
図24B参照)と位置合わせさせることである。作動ユニット4は、切断対象の骨材料の上方又は下方の所与の平面内に平面機構24を拘束する。
【0250】
平面機構が能動的である場合(完全に電動化された場合)、鋸は自動的/能動的にシステムによって位置決めすることができる。
【0251】
さもなければ、平面機構が部分的に能動的である(電動及び非電動自由度の組み合わせを有する)場合、又は完全に受動的である場合、鋸2はトラッカー203によって三次元で位置決めしなければならない。外科医を支援するために、骨及び目標面に対する鋸の位置及び向きを示すインタフェースが表示される。次いで、外科医は、鋸2が目標位置及び向き(目標面に対して直交する平面内で考慮されるときに線(点線で表される線(以下、「目標線」と称する)である)に到達するまで、鋸を移動させることができる(
図24Cを参照)。
【0252】
別の選択肢として、平面機構が部分的又は完全に能動的であるか、又は位置係止機構を装備している場合、外科医に往復鋸を正しい位置に変位させた後、鋸刃が正しい位置に到達すると、鋸刃を目標線の内側に留まらせる又は拘束する。
【0253】
次いで、切断を実行し、往復鋸を上下に動かすことができる。
【0254】
第1の選択肢によれば、作動ユニットは、平面機構の面を規則的に変化させることによって、鋸を能動的に変位させる。作動ユニットが実際に移動する間に切断が実現され得るように、このプロセス中に鋸の切断動作を有効化しなければならない。好適な実施形態では、鋸の切断動作は、システムの制御ユニットによってオン又はオフに切り替えられる。平面機構が完全に能動的でない場合、外科医は、切断中に鋸刃を右向きに維持する必要があり得る。任意の時点で、平面機構の向き又は位置が、所定の閾値(例えば、2度又は2mm)を超えて目標線から逸脱した場合、作動ユニットは平面機構の面の降下又は上昇を停止する。加えて、安全上の理由から、外科医が例えばフットスイッチ及び/又はトリガの押圧によって切断動作を維持する場合のみ、平面機構の面の変位を可能にすべきである。フットスイッチ又はトリガが解放されるとすぐに、作動ユニットは、平面機構の面の下降又は上昇を停止する。必要に応じて、平面機構の面の変位速度は、切断中に進捗度に基づいて変更されてもよい。例えば、速度は、鋸刃と骨表面との間の初期接触による滑り、又は位置合わせの失敗の他の原因を回避するため、開始時は低速であってもよい。次いで、作動ユニットは、切断の途中でより高速に移動させ、最終的には、様々な所定速度プロファイルでの切断限界(例えば、脛骨切断面)に到達するときにゼロになるまで徐々に減速させることができる。
【0255】
別の選択肢によれば、外科医は鋸を押し上げたり押し下げたりして切断を実行する。ロボットデバイスは、外科医によって加えられた力の方向及び強度を検出し、作動ユニットは、平面機構の面を適宜変位させる(平面機構の面が目標面に対して常に直交するように向きを維持する)。刃が限界(例えば、UKAの場合には、計画された又は既に実行された横方向脛骨切断)に達した場合、作動ユニットはそれ以上移動せず、鋸が降下又は上昇することを防止するので、外科医は限界に到達したと感じる。前述のセクションと同様に、作動ユニットによって加えられる反力は、切断工程の進捗度に応じて変更し得る。
【0256】
上記の説明では、デフォルトで往復鋸が平面機構に堅固に締結されることが想定される。しかしながら、部分的機械リンクのみを使用することも可能である(例えば、鋸は平面機構上に静止するだけであってもよく、鋸と平面機構との間の望ましくない並進を防止するために、相補的特徴部を有する単純なインタフェースであってもよい)。このように、平面機構は主に、鋸の切断が不足する、又は過剰となることを防止するガードとして機能する。また、平面機構は、矢状切断に対して直角に変位される際に、鋸を部分的に案内することができる。更に、誤った切断を防止するために、作動ユニットは、鋸の位置及び向きが目標線に対して所定範囲(例えば、2mm及び2度)内に維持された場合にのみ移動し得る。
【0257】
図25は、切断ツールとしてフライス2’を有する
図3A~
図3Bに示すロボットデバイスの設定を示す。
【0258】
これらの図に示すトラッカーは光学トラッカーであるが、任意の他の追跡技術(例えば、電磁)を利用できることに留意されたい。
【0259】
なお、上記の実施形態は組み合わせ得ることに留意されたい。
【0260】
また、保持アーム及び、もしあれば、部分的機械リンクのみを提供する支持ユニットは、ロボットデバイスの重量を完全に支えつつ、患者に対するいかなる侵襲的動作も必要としない。
【0261】
したがって、文献米国特許出願公開第2011/0130761号における骨に埋め込まれた(すなわち、骨を数センチメートル貫通する)大きなねじ及びピンと比較して、本発明によるロボットデバイスは、患者に直接固定されず、患者に非侵襲的に固定されたコンポーネント(手術台、脚部ホルダなど)に取り付けられた保持アームによって保持されてもよく、非侵襲性取り付け手段(例えば、ストラップなど)によって患者に直接結合されてもよい。
【0262】
低速運動及び高速運動を含む、切断対象の解剖学的構造に対するロボットデバイスのマイクロ運動又はマクロ運動は、デバイスの精度を定義する許容誤差範囲及び所与の時間枠内で補償される。
【0263】
典型的には、骨手術用途では、十分な精度を得るために、数十分の1ミリメートルの範囲の運動を補償する必要がある。このような補償は、超高速運動の検出及び測定、並びに加えられる補償運動の計算及び所望の補償運動の実行を要する。
【0264】
6つの自由度の大型外科用ロボットは非常に頑健であるが、非常に複雑かつ高価である。加えて、それらのロボットは、切断面のリアルタイム制御に適合しない(特に第1の可動セグメント上での)大きな慣性を有する。一方、既存の小型軽量ロボットは、解剖学的構造に堅固に取り付けられていない場合には、使用することができない。対照的に、本発明は、患者へのいかなる侵襲的固定も必要とすることなく、切断面のリアルタイム制御を可能にする小型軽量ロボットデバイスを提供する。
【0265】
前述の説明は、作動ユニットに取り付けられたエンドエフェクタ上に装着された切断ツールを参照して行ってきたが、実施形態は、例えば、上述の平面機構を介して又はスライダを介して(
図27を参照)、作動ユニットにそれ自体が取り付けられたエンドエフェクタ上に装着された切断ブロックを備える。切断ブロックは、切断ツールの切断面に対応する案内面を画定する少なくとも1つのスロットを備える。各スロットにより、ユーザの手に保持された切断ツールをそれぞれの案内面内に拘束することができる。この切断ツールは、上述したように、矢状鋸、往復鋸、又はフライスであり得る。
【0266】
特定の実施形態によれば、切断ブロック2000は、2つのスロット20、20’(
図28Aを参照)又は3つのスロット20、20’、20’’(
図28Bを参照)を含んでもよい。よって、切断ブロックは、1つのスロットが目標面と位置合わせされた状態で配置されると、別のスロットを別の目標面と位置合わせするには、切断ブロックのポーズをわずかに調節するだけでよい。更に、スロットは、1つのスロットが目標面と位置合わせして配置されると、少なくとも1つの他のスロットも別の目標面と位置合わせされるように、所与の相対位置に配置されてもよい。このようにして、切断ブロック及びロボットデバイスを移動させることなく、何回かの切断を行うことが可能である。
【0267】
鋸刃を最適に誘導し、鋸刃の偏差を回避するために、スロットの幅wは可能な限り大きく設定される。例えば、限定するものではないが、スロットの幅は、10~25mmの範囲であり得る。
【0268】
平面機構又はスライダは、スロット20によって画定される平面に対して平行な軸A4に沿った並進の追加の自由度を提供する(
図29A~
図29F及び
図27を参照)。このようなスライダは、作動ユニットの回転軸間の距離を短距離に維持することができ、スライダに沿った追加の並進は、解剖学的構造のより遠い領域への切断ブロックのアクセスを提供する。一実施形態によれば、スライダは手動で操作される。
図30に示すように、スライダは、複数の所定位置を提供するために、ラック・アンド・ピニオン機構210を備えてもよい。一実施形態によれば、スライダは、バネ(図示せず)などの弾性部材によって付勢されてもよい。一実施形態によれば、スライダは電動化されて、目標面内で制御ユニットによって制御される第4の電動自由度を提供することができる。切断ブロックの位置が調節されると、スライダは、切断ブロックの更なる移動を回避するために遮断されてもよい。
【0269】
平面機構は更に、スロット20によって画定される平面に対してほぼ直交する第5の軸A5を中心に切断ブロックを枢動させることができる。これにより、案内面の向きを変更することなく、切断ブロックを骨の近くに配置することができる。この切断ブロックの回転自由度は、上述のスライダによって提供される並進自由度と組み合わされてもよい。
【0270】
いくつかの実施形態では、支持ユニットは、切断ブロックと患者との間に配置され得る。
【0271】
例えば、
図31Aに示すように、切断ブロック2000は、解剖学的構造に接触するように構成された少なくとも1つの可撓性インタフェース(例えば、1つ以上のシリコーンクッション56)を含む。このようにして、切断ブロックは、解剖学的構造に(例えば、上述のスライダを使用して)押し付けられて、部分的機械リンクを確保することができる。膝をほぼ静止して保持する脚部ホルダと組み合わせて、圧力を保持アーム5に印加し得る。しかしながら、可撓性インタフェースを解剖学的構造に沿って数度又は数ミリメートル摺動させて位置を調節することが可能である。本実施形態では、作動ユニットは、切断ブロック2000を介して解剖学的構造に接続されており、支持ユニットはシリコーンクッション(複数可)56で作製されている。好適な実施形態によれば、可撓性インタフェースは、切断ブロックのスロット20の両側に配置された2つのシリコーンクッションを含み、両クッション間には、鋸で切断する際にこれらのクッションが損傷することを回避するように十分な距離がとられる。シリコーンの代わりに、任意の軟質生体適合性材料を使用することができる。
【0272】
別の実施形態(図示せず)によれば、切断ブロックは、複数の鋭利な歯で作製されたインタフェースを含んでもよい。このようにして、切断ブロックは、歯によって解剖学的構造に対して押圧及び保持されて、部分的機械リンクを確保することができる。
【0273】
別の実施形態によれば、切断ブロックは、小さなピン57によって解剖学的構造に固定されてもよい(
図31Bを参照)。当該ピンは、制御ユニットによって制御された専用モータを使用して、自動的に穿孔及び除去することができる。
【0274】
追跡ユニットは、切断ブロック又は切断ツールに取り付けられたトラッカーを含んでもよい。
【0275】
このような切断ブロックは、具体的には、ノッチを形成するために、解剖学的構造内のボックスの側壁を切断し得る。このため、後方安定型の大腿骨インプラントを位置決めすることが必要であり、インプラントは、完全な嵌合のために骨にノッチを形成する必要がある設計のボックスを含む。
【0276】
図32は、このような状況におけるロボットデバイスの設定を示す。
【0277】
患者(
図32には1本の屈曲した脚部のみが示されている)は、手術台500に横たわっている。トラッカー201は大腿骨に固定され、別のトラッカー201は脛骨に固定されている。
【0278】
保持アーム5は、一端部が台に取り付けられ、他端が作動ユニットに取り付けられている。
【0279】
この設定では、ロボットデバイスは、いかなる支持ユニットも含まない。しかしながら、保持アーム5に加えて、支持ユニットを設けてもよい。
【0280】
トラッカー202は、ロボットデバイスの作動ユニットの第2のセグメントに固定される。
【0281】
切断ブロック2000は、受動的平面機構24によって作動ユニット4の第3のセグメントに接続される。
【0282】
トラッカー203もまた、切断ブロックに取り付けられており、ロボットデバイスと切断ブロックとの間に存在し得る機械的遊びを補償することができる。
【0283】
切断ツールは、刃が切断ブロック2000のスロットを通過する往復鋸2である。
【0284】
制御ユニットの動作について以下でより詳細に説明する。
【0285】
図33は、全膝関節形成術などの少なくとも1つの骨切り術を実施するように意図された完全外科的介入のフローチャートである。初期工程及び最終工程は、本発明の一部を構成しない場合があることに留意されたい。
【0286】
工程101で、外科的介入によって治療される領域内の患者の解剖学的構造が取得される。この解剖学的構造は、例えば、骨の画像を取得する撮像手段を使用して、及び/又は画像を含まない外科用ナビゲーション技術において一般的に使用されるように、骨表面の複数の点を取得する位置決めポインタ(デジタル化プローブ)を使用して取得されてもよい。
【0287】
工程102で、取得された患者の解剖学的構造に基づいて手術計画が立てられる。この計画工程の結果、切断を行うように意図された目標面のポーズが定義される。
【0288】
工程103で、ユーザは、目標面に従った切断の実行を可能にするように意図された大体の位置に保持アームを有するロボットデバイスを位置決めする。この工程では、患者の解剖学的構造に、少なくとも1つのトラッカーが設けられる。ロボットデバイス及びエンドエフェクタはまた、ロボットデバイスとエンドエフェクタと切断対象の解剖学的構造との相対位置を位置決めできるように、少なくとも1つのトラッカーを備える。この工程で、特にロボットデバイスを再配置することなく何回かの切断が行われる場合、ユーザは、ユーザインタフェースを使用してロボットデバイスの好適な位置及び向きを判定することができる。
【0289】
工程104で、行われる切断の順序が選択される。その目的のために、制御ユニットは、対応する目標面のポーズを取得する。何回かの切断が実行される場合、それらの切断は、特定の順序でシステムに記憶され、順次ロードされてもよい。さもなければ、ユーザインタフェースにより、ユーザが特定の切断を選択し得る。この工程は、工程105の前の任意の時点で行われ得ることに留意されたい。
【0290】
工程105で、制御ユニットは、トラッカーの追跡データを受信する。したがって、制御ユニットは、切断対象の解剖学的構造に対するロボットデバイス及びエンドエフェクタの現在位置を計算することができる。
【0291】
ロボットデバイス、エンドエフェクタの現在位置、並びに目標面のポーズ及びロボットデバイスの運動学的設計に基づいて、制御は工程106において、目標面に到達できるようにする作動ユニットの移動量を計算する。工程107で、制御ユニットは、現在位置にあるロボットデバイスが目標面に到達し得るか否かを(すなわち、支持ユニットを移動させることなく)確認する。到達可能である場合、制御ユニットは、切断面と目標面とを位置合わせさせるため、切断ツール又は切断ガイドを必要な位置に移動させるように作動ユニットに指示する(工程108)。
【0292】
ロボットデバイスの現在位置が目標面での位置合わせを実現できない場合、制御ユニットは、切断を実行できず、実行してはならないことをユーザに警告し(工程109)、工程110で、目標面に到達するロボットデバイスの新たな位置を計算し(当該新たな位置はホルダユニットを移動させることを意味する)、工程105~107を再度行う。
【0293】
工程108で、切断面が目標面と位置合わせされると、切断が制御ユニットによって許可される(例えば、切断面が目標面と位置合わせしているという表示をユーザに提供する、及び/又は切断ツールの始動をユーザに許可する)。ユーザは、切断面内で切断ツールを操作することによって切断を実行することができる。この切断工程の間、制御ユニットは、追跡データを使用して、切断面と目標面との位置合わせが維持されているか否かを確認する(工程105と108との間のループを参照)。
【0294】
切断が完了すると(工程108の後)、ユーザは、切断が終了したことを制御ユニットに表示する。当該表示は、例えば、フットスイッチ又はボタンを押すことによって行うことができる。
【0295】
工程111で、ユーザ又は制御ユニットは、行うべき切断が残っているか否かを確認する。
【0296】
残っていない場合、工程112で、術後チェックが行われてもよい。
【0297】
行うべき切断が残っている場合、工程105~108(及び、適宜109及び110)は、全ての計画された切断が行われるまで反復される。
【0298】
参考文献
国際公開第2014/198784号
米国特許出願公開第2011/0130761号
【0299】
〔実施の態様〕
(1) 患者の解剖学的構造(F、T)を前記解剖学的構造の座標系に画定された少なくとも1つの目標面に従って切断するための外科用システムであって、
(i)ロボットデバイス(100)であって、
切断ツール又は切断ブロックを備えるエンドエフェクタと、
前記切断ツール又は前記切断ブロックの位置及び向きを各目標面に対して調整するように構成された、前記エンドエフェクタに取り付けられた、3~5つの電動自由度(motorized degrees of freedom)を備える作動ユニット(4)と、を備える、ロボットデバイスと、
(ii)前記作動ユニット(4)を支持する受動的な関節接合された係止可能保持アーム(5)と、
(iii)前記解剖学的構造の前記座標系に対する切断面のポーズをリアルタイムで判定するように構成された追跡ユニット(200)であって、前記作動ユニットに堅固に取り付けられるように構成されたトラッカーと、前記エンドエフェクタに堅固に取り付けられるように構成されたトラッカーと、を備える、追跡ユニット(200)と、
(iv)前記目標面に対する前記切断面の前記ポーズを判定し、前記切断面を前記目標面と位置合わせするように前記作動ユニットを制御するように構成された制御ユニット(300)と、
を備え、
前記制御ユニットは、
前記追跡ユニット(200)によって提供される位置決め情報を使用して、前記作動ユニット(4)、前記エンドエフェクタ(2)、及び前記解剖学的構造のポーズを判定する工程(S1)と、
前記切断面と前記目標面との間の偏差を計算する工程(S2)と、
前記偏差が閾値未満である場合、前記切断ツールの動作を許容し、前記作動ユニット、前記エンドエフェクタ、及び前記解剖学的構造の新たなポーズを判定するために工程(S1)に戻る工程と、
前記偏差が前記閾値以上である場合、前記作動ユニットの前記座標系に前記切断面及び前記目標面を表す工程(S3)と、
前記作動ユニットの出力に取り付けられた平面と前記切断面との間の補正行列を計算する工程(S4)と、
工程(S4)で計算された前記補正行列を用いて前記目標面を更新する工程(S5)と、
前記作動ユニット(4)の新たな姿勢を計算して、前記切断面を更新された前記目標面と位置合わせし、前記作動ユニットのモータによって加えられる運動を判定する工程(S6)と、
前記作動ユニット(4)を作動させて、前記運動を加える工程と、
を含む制御ループを実施するように構成されている、外科用システム。
(2) 前記追跡ユニットが、カメラ及び前記カメラによって検出可能な光学トラッカーを備える光学追跡ユニットである、実施態様1に記載の外科用システム。
(3) 前記カメラは、前記制御ユニットが前記制御ループの各反復を実施するように構成されている周波数よりも少なくとも2倍大きい周波数で動作するように構成されている、実施態様2に記載の外科用システム。
(4) 前記カメラが、200Hz超、好ましくは300Hz超の周波数で動作するように構成されている、実施態様2又は3に記載の外科用システム。
(5) 前記制御ユニットが、50Hz超、好ましくは100Hz超の周波数で前記制御ループの各反復を実施するように構成されている、実施態様2~4のいずれかに記載の外科用システム。
【0300】
(6) 前記制御ユニットは、工程(S1)と工程(S2)との間に、前記追跡ユニットによって提供される前記位置決め情報に基づいて前記作動ユニットの現在のポーズが計算され得るかどうかを評価することを含む追加の工程を含む前記制御ループを実施するように構成されている、実施態様2~5のいずれかに記載の外科用システム。
(7) 前記制御ユニットは、前記現在のポーズが判定され得る場合に、前記制御ユニットのメモリに前記作動ユニットの前記現在のポーズを記憶し、前記作動ユニットの前記現在のポーズを用いて工程(S2)を実施することを含む追加の工程を含む前記制御ループを実施するように更に構成されている、実施態様6に記載の外科用システム。
(8) 前記制御ユニットは、前記作動ユニットの前記現在のポーズが判定できない場合、前記作動ユニットの以前のポーズが前記制御ユニットの前記メモリに記憶されているかどうかを評価する追加の工程を含む前記制御ループを実施するように更に構成されている、実施態様6に記載の外科用システム。
(9) 前記制御ユニットは、前記作動ユニットの前記以前のポーズが前記制御ユニットの前記メモリに記憶されている場合、前記以前のポーズを使用して工程(S2)を実施することを含む前記制御ループを実施するように更に構成されている、実施態様8に記載の外科用システム。
(10) 前記制御ユニットは、以前のポーズが前記制御ユニットの前記メモリに記憶されていない場合、再度工程(S1)を実施することを含む前記制御ループを実施するように更に構成されている、実施態様8に記載の外科用システム。
【0301】
(11) 前記制御ユニットが、工程(S4)と工程(S5)との間に、前記補正行列のノルムを計算することと、前記ノルムを所定の閾値と比較することと、を含む前記制御ループを実施するように構成されている、実施態様2~10のいずれかに記載の外科用システム。
(12) 前記制御ユニットは、前記ノルムが前記閾値よりも小さい場合、前記補正行列を使用して工程(S5)を実施することを含む前記制御ループを実施するように構成されている、実施態様11に記載の外科用システム。
(13) 前記制御ユニットは、前記ノルムが前記閾値より大きい場合、前記作動ユニットを停止するように構成されている、実施態様11に記載の外科用システム。
(14) 前記制御ユニットは、工程(S2)~(S4)で使用される前記作動ユニットの前記ポーズが以前に記憶されたポーズであるかどうかを判定し、
前記ポーズが以前に記憶されたポーズである場合、前記以前に記憶されたポーズを前記メモリから消去し、工程(S1)に戻り、
前記ポーズが前記作動ユニットの前記現在のポーズである場合、エラーを出力するように構成されている、実施態様7又は8と組み合わせた実施態様13に記載の外科用システム。
(15) 前記ロボットデバイスは、前記補正行列の前記ノルムが前記閾値より大きいときに発光するように前記制御ユニットによって作動されるように構成された発光器を備える、実施態様13又は14に記載の外科用システム。
【0302】
(16) 前記制御ユニットは、前記作動ユニットの前記トラッカーが前記カメラの視野内にあることを確認するメッセージをユーザに出力するように構成されている、実施態様13~15のいずれかに記載の外科用システム。