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▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】核酸の合成後修飾のための試薬及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20240227BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20240227BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20240227BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6876 Z
C12N15/10 Z
C12N15/11 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020566283
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2019063974
(87)【国際公開番号】W WO2019229128
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】62/678,927
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンダー ニールト
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0058073(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0147331(US,A1)
【文献】J. D. Carter, et al.,Journal of Nucleic Acids,2011年,Article ID 926595,p.1-8
【文献】J. Wrzesien, et al.,Tetrahedron,2012年,Vol.68,p.1230-1240
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出可能な標識による核酸の合成後修飾のための方法であって、前記方法が、以下:
(a)1つ以上のアミノ修飾を含む、アミノ修飾核酸分子を調製する工程;と、
(b)弱配位性又は非配位性アニオンである対アニオンの存在下において、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム(DMT-MM)カチオンによりカルボキシ修飾標識を活性化する工程、ここで、前記弱配位性又は非配位性アニオンがカルボン酸ではない;と、
(c)前記アミノ修飾核酸分子を前記活性化カルボキシ修飾標識と反応させて、標識された核酸分子を生成する工程と、
を含み、
前記検出可能な標識が、蛍光色素、発光色素、消光色素、リン光色素、及びアフィニティタグからなる群より選択され、そして
前記弱配位性又は非配位性アニオンが、テトラフルオロホウ酸イオン(BF 4 - )、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF 6 - )、ベンゼンスルホン酸イオン(CH 5 SO 3 - )、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド((N[SO 2 (CF 3 )] 2 - )、臭化物イオン(Br - )、10-カンファースルホン酸イオン(10-camphorosulfonate)、ヨウ化物イオン(I - )、メタンスルホン酸イオン(メシラート、CH 3 SO 3 - )、過塩素酸イオン(ClO 4 - )、リン酸イオン(PO 4 3- )、硫酸イオン(SO 4 2- )、テトラクロロアルミン酸イオン(AlCl 4 - )、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸イオン(B[3,5-(CF 3 2 6 3 4 - )、テトラキス(ヘキサフルオロイソプロピル)アルミン酸イオン(Al[OC(CF 3 3 4 - )、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン[B(C 6 5 4 - ]、p-トルエンスルホン酸イオン(トシラート、CH 3 6 4 SO 3 - )、及びトリフルオロメタンスルホン酸イオン(トリフラート、CF 3 SO 3 - )からなる群より選択される、方法。
【請求項2】
前記弱配位性又は非配位性アニオンが、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4 -)又はヘキサフルオロリン酸イオン(PF6 -)である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記核酸分子が、オリゴヌクレオチドである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドが、5’末端又は3’末端でアミノ修飾されている、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドが、内部でアミノ修飾されている、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドが、ホスホロアミダイトに基づくDNA合成を用いて合成される、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記標識が、蛍光色素である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記蛍光色素が、ホスホロアミダイトに基づくDNA合成と本質的に不適合である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記蛍光色素が、スルホン酸塩部分を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程がオリゴヌクレオチド合成中に行われ、ここで、前記オリゴヌクレオチドが固体支持体に結合している、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記核酸分子が、DNA、RNA、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、核酸類似体、並びにDNA、RNA、LNA、PNA、及び核酸類似体のハイブリッド混合物からなる群より選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法を実施することを含む、標識される標識を有する、合成後修飾を含む核酸を製造するための方法
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法を実施することを含む、標識される標識を有する、合成後修飾を含む核酸を備えるキットを製造するための方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、核酸化学の分野に関し、特に、カップリング試薬を用いた標識による核酸の合成後修飾のための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生物医学研究及び組換えDNA技術において使用される多くの手順は、標識されたヌクレオチド又はポリヌクレオチド誘導体の使用に依存する。修飾ヌクレオチドが天然に存在するヌクレオチドの標識形態として好適であるためには、典型的には、いくつかの基準が満たされなければならない。第一に、修飾された化合物は、特有の(すなわち、ヌクレオチド又はポリヌクレオチドに関連して通常は見出されない)置換基又はプローブを含有しなければならない。第二に、プローブは、高感度の検出システムを提供するために、化学的又は生物学的試薬と特異的に反応しなければならない。第三に、数多くの実際的な応用は類似体が酵素的に代謝されることを必要とする(例えば、類似体は核酸ポリメラーゼの基質として機能しなければならない)ため、類似体は、一般的に研究されている核酸酵素のための効率的な基質でなければならない。この目的のために、プローブ部分は、塩基の通常のワトソン・クリック水素結合ポテンシャルを立体的に又は他の方法で妨害する環位置に配置されるべきではない。このような場合、置換基はポリメラーゼ基質として不活性な化合物を生成することができる。第四に、検出システムは、核酸ハイブリダイゼーション方法と適合するために、一本鎖及び二本鎖ポリヌクレオチドの両方に組み込まれたプローブ置換基と相互作用することができるべきである。第五に、少数のプローブ置換基を含有するポリヌクレオチドの物理的及び生物化学的特性は、ハイブリダイゼーションプローブを用いる現在の手順が大幅に修正される必要がないように、大幅に改変されるべきではない。この基準は、プローブが酵素的手段又は直接化学的手段のいずれによって導入されるかにかかわらず満たされなければならない。最後に、プローブ部分を結合する結合は、正常なヌクレオチド及びポリヌクレオチドが日常的に供される全ての実験条件(例えば、高温におけるハイブリダイゼーション時間の延長、フェノール及び有機溶媒の抽出、又は電気泳動)に耐えるべきである。
【0003】
蛍光、発光、消光、若しくはリン光色素で、又はアフィニティタグで生体分子を標識するための方法は、現代の生命科学において不可欠となっており、これらの結合戦略については、それらが温和な条件下において複合分子の部位特異的な合成後カップリングを可能にすることが重要である。N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル化学はタンパク質と核酸分子の両方の標識化を支配してきたが、容易さ及びコストを考慮すると、小さな化学的に合成されたオリゴヌクレオチド、及び長い酵素的に増幅されたDNA鎖に好適な新しい標識化方法の必要性が促される。
【0004】
近年、天然生成物及びペプチド合成(Kunishimaら、「Tetrahedron」、第55巻第13159~13170頁(1999年))のため最初に開発されたトリアジン系化合物が、効果的なカップリング剤として注目されており、アミド化、エステル化、グリコシド化、及びホスホニル化反応における応用が見出されている。カルボキシ及びアミノ基のアミドへの縮合に対する4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム(DMT-MM)の高い反応性にもかかわらず、これは水及びアルコール中で著しく安定である。このように、DMT-MMは、リン酸塩と反応することができ、かつ低pHで分解する傾向があるカルボジイミドEDC[N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド]、又はペプチドカップリング試薬TBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロホウ酸塩)などの、他の水適合性試薬にとって魅力的な代替品である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、固相オリゴヌクレオチド合成から得られた核酸を、カップリング試薬として4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム(DMT-MM)塩を用いる標識(蛍光色素など)によって合成後修飾する方法を提供する。DMT-MMの化学構造を図1に示す。したがって、一態様では、本発明は、標識による核酸の合成後修飾のための方法に関し、以下の工程:(a)1つ以上のアミノ修飾を含むアミノ修飾核酸分子を調製すること;と、(b)DMT-MMによりカルボキシ修飾標識を活性化すること;と、(c)アミノ修飾核酸分子を活性化カルボキシ修飾標識と反応させて、標識された核酸分子を生成することと、を含む。一実施形態では、活性化工程は、対アニオンの存在下においてDMT-MMを含む。一実施形態では、対アニオンは弱配位性又は非配位性アニオンであり、ここで、該弱配位性又は非配位性アニオンはカルボン酸ではない。一実施形態では、対アニオン、又は弱配位性若しくは非配位性アニオンは、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4 -)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6 -)、ベンゼンスルホン酸イオン(CH5SO3 -)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド((N[SO2(CF3)]2-)、臭化物イオン(Br-)、10-カンファースルホン酸イオン(10-camphoro-sulfonate)、塩化物イオン(Cl-)、ヨウ化物イオン(I-)、メタンスルホン酸イオン(メシラート、CH3SO3 -)、過塩素酸イオン(ClO4 -)、リン酸イオン(PO4 3-)、硫酸イオン(SO4 2-)、テトラクロロアルミン酸イオン(AlCl4 -)、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸イオン(B[3,5-(CF32634 -)、テトラキス(ヘキサフルオロイソプロピル)アルミン酸イオンAl[OC(CF334 -)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン[B(C654 -]、p-トルエンスルホン酸イオン(トシラート、CH364SO3 -)、及びトリフルオロメタンスルホン酸イオン(トリフラート、CF3SO3 -)からなる群より選択される。一実施形態では、対アニオン、又は弱配位性若しくは非配位性アニオンは、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4 -)又はヘキサフルオロリン酸イオン(PF6 -)である。一実施形態では、核酸分子は、オリゴヌクレオチドである。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、3~500ヌクレオチド長である。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、5’末端又は3’末端でアミノ修飾されている。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、5’末端及び3’末端でアミノ修飾されている。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、内部でアミノ修飾されている。更に別の実施形態では、標識は、蛍光色素、発光色素、消光色素、リン光色素、及びアフィニティタグからなる群より選択される。一実施形態では、標識は、蛍光色素である。別の実施形態では、蛍光色素は、ホスホロアミダイドに基づくDNA合成と本質的に不適合である。更に別の実施形態では、蛍光色素は、スルホン酸塩部分を含有する。一実施形態では、アミノ修飾オリゴヌクレオチド及び活性化カルボキシ修飾標識の化学量論は、1:3であるか、又はオリゴヌクレオチドが100ヌクレオチド長未満である場合、1:3~1:1.5の間である。別の実施形態では、活性化されたカルボキシ修飾標識は、オリゴヌクレオチドが100ヌクレオチド長を超える場合、アミノ修飾オリゴヌクレオチドの2~20倍のモル過剰で使用される。一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ホスホロアミダイドに基づくDNA合成を用いて合成される。一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、合成後に精製される。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、合成後に精製されない。一実施形態では、工程の方法は、オリゴヌクレオチドが固体支持体上に結合されるオリゴヌクレオチドの合成中に実施される。一実施形態では、核酸分子は、一本鎖である。一実施形態では、核酸分子は、二本鎖である。別の実施形態では、核酸分子は、酵素的に増幅された生成物である。別の実施形態では、核酸分子は、DNA、RNA、LNA、PNA、核酸類似体、並びにDNA、RNA、LNA、PNA、及び核酸類似体の混合物からなる群より選択される。
【0006】
本発明はまた、上述の方法のいずれかによって標識された標識核酸を提供し、ここで、該方法は、以下の工程:(a)1つ以上のアミノ修飾を含むアミノ修飾核酸分子を調製すること;と、(b)DMT-MMによりカルボキシ修飾標識を活性化すること;と、(c)アミノ修飾核酸分子を活性化カルボキシ修飾標識と反応させて、標識された核酸分子を生成することと、を含む。いくつかの実施形態では、標識核酸は、オリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、100ヌクレオチド長未満である。いくつかの実施形態では、標識オリゴヌクレオチドは、プライマオリゴヌクレオチドである。他の実施形態では、標識オリゴヌクレオチドは、プローブオリゴヌクレオチドである。
【0007】
本発明はまた、上述の方法のいずれかによって標識された標識核酸を含むキットを提供し、ここで、該方法は、以下の工程:(a)1つ以上のアミノ修飾を含むアミノ修飾核酸分子を調製すること;と、(b)DMT-MMによりカルボキシ修飾標識を活性化すること;と、(c)アミノ修飾核酸分子を活性化カルボキシ修飾標識と反応させて、標識された核酸分子を生成することと、を含む。いくつかの実施形態では、標識核酸は、オリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、100ヌクレオチド長未満である。いくつかの実施形態では、標識オリゴヌクレオチドは、プライマオリゴヌクレオチドである。他の実施形態では、標識オリゴヌクレオチドは、プローブオリゴヌクレオチドである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム(DMT-MM)の構造、とその対アニオンの選択例とを示す。
図2A図2Aは、5’標識反応のUPLC分析を示す。固相DNA合成からの未精製オリゴヌクレオチドを、5’末端において、Dy380XL又はDy395XLカルボン酸で標識した。30-mer(162071)及び33-mer(162073、162074)オリゴヌクレオチドの各々は、3’-BHQ-2クエンチャを含有した。反応転化率(%)は、出発物質(starting material:SM)及び生成物(product:P)のピーク面積を比較することによって決定した。
図2B図2Bは、Dy380XL(上)及びDy395XL(下)による標識前及び標識後のオリゴヌクレオチドの重層吸収スペクトルを示す。スペクトルは図2A(162071A及びB)の上2つのクロマトグラムから抽出した。
図3図3は、有機溶媒中で非常に低い溶解度を有する蛍光色素である、Dy395XLとの5’標識反応のUPLC分析を示す。反応条件は図2Aの試料第162074B号と同じであったが、予備活性化工程中に50%の水を用いた。反応転化率は、69.8%から80.4%に増加し、これは出発物質(SM)及び生成物(P)のピーク面積を比較することによって決定した。
図4A図4Aは、2つの時点(1.0時間、3.0時間)における5’標識反応のUPLCクロマトグラムを示す。未精製の29-merオリゴヌクレオチドを、5’末端において、Atto490LS及びChromeo(商標)494カルボン酸で標識した。オリゴヌクレオチドはどちらも3’-BHQ-2クエンチャを含有した。反応転化率(%)は、出発物質(starting material:SM)及び生成物(product:P)のピーク面積を比較することによって決定した。
図4B図4Bは、Atto490LS(上)及びChromeo(商標)494(下)による標識前及び標識後のオリゴヌクレオチドの重層吸収スペクトルを示す。スペクトルは図4A(162072B及びA)の1つ目及び3つ目のクロマトグラムから抽出した。
図5図5は、内部位置においてDNAオリゴヌクレオチド配列を標識するための代表的な例を示す。55-merのDNA-LNAハイブリッドオリゴヌクレオチド(161130)を、C343カルボン酸で標識した5’-BHQ-2クエンチャにより予め精製した、UPLCクロマトグラムを示す。反応前(参照)、並びに1.0時間後及び3.0時間後に、試料を採取した。反応転化率(%)は、出発物質(starting material:SM)及び生成物(product:P)のピーク面積を比較することによって決定した。
図6図6は、DMT-MMを用いた蛍光色素による標識反応及びその後の精製によって得られた、DNAオリゴヌクレオチドプローブの最終UPLC分析を示す。DNAオリゴヌクレオチド配列の長さは、30-mer(162071)、29-mer(162072)、及び33-mer(162073、162074)であり、各々が3’-BHQ-2クエンチャを含有していた。
図7図7は、実施例2に記載された定量的PCR(qPCR)実験から生成された増殖曲線を示す。
図8図8は、実施例2に記載されたqPCR実験に由来する、閾値サイクル(Ct)値、蛍光ベースライン、シグナル振幅、及び実験的速度定数値(Kexp)を示す表である。
図9A図9Aは、実施例3に記載されたDMT-MMを用いる大規模標識反応の代表例を示す。3’-BHQ-2クエンチャを有する33-merオリゴヌクレオチド(171742)を15μmolスケールで固相DNA合成から得て、事前に精製することなく5’末端をDy396XLで標識した。最初の2つのパネルは、15分間の反応の前及び後のDNAのUPLCクロマトグラムを示す。出発物質と生成物とのピーク面積を比較すると、生成物への転化率は約95%を示した。3つ目のパネルは、出発物質と生成物との重層吸収スペクトルを示す。
図9B図9Bは、大規模DNA標識反応の再現性を示す。図9Aと同一のDNA配列及び同一の条件下において、しかしながら蛍光色素の異なる合成バッチとの反応のUPLCクロマトグラムを示す。
図10A図10Aは、実施例3に記載のDMT-MMを用いた6つの独立した大規模標識反応によって得られた、精製DNAオリゴヌクレオチドプローブのUPLCクロマトグラムを示す。オリゴヌクレオチド配列の長さは、30-mer(171742、171743、171744)及び33-mer(171744、171745、171747)であり、各々が3’-BHQ-2クエンチャを含有していた。
図10B図10Bは、実施例3に記載のDMT-MMを用いた大規模標識反応によって得られた、精製DNAオリゴヌクレオチドプローブの質量分析を示す。
図11図11は、実施例3に記載されたqPCR実験に由来する、閾値サイクル(Ct)値、蛍光ベースライン、シグナル振幅、及び実験的速度定数値(Kexp)を示す表である。各qPCRについて、Dy396XLで標識された2つのプローブ配列を組み合わせ、標的DNA配列の2つの異なる領域にハイブリダイズさせた。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様である本質的に任意の方法及び材料が本発明の実施又は試験で使用され得るが、例示的な方法及び材料のみを記載する。本発明の目的のために、次の用語を以下のように定義する。
【0010】
用語「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0011】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「アルキル基」とは、飽和した、一価の、非分岐の、又は分岐の炭化水素鎖を意味する。アルキル基の例として、C1-C6アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-3-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、及びヘキシルなど、並びにより長いアルキル基、例えばヘプチル及びオクチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基は、非置換であってもよいか、又は1つ若しくは2つの好適な置換基で置換されていてもよい。
【0012】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語-O-アルキル(又はアルキル-O-)とは「アルコキシ基」を意味し、ここで、アルキルは、上で定義される通りである。アルコキシ基は、非置換であってもよいか、又は1つ以上の好適な置換基で置換されていてもよい。アルキルオキシ基のアルキル鎖は、例えば、1~6個の炭素原子長であり得る。
【0013】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「金属」とは、Li+、Na+、Mg2+、又はMn2+を含む、I族又はII族金属を指すが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「結合基」及び「リンカ」は同義に使用され、塩基を標識と共有結合することができ、例えば、ヌクレオシド、ヌクレオチド、又は核酸を標識に連結する「結合」を形成することができる検出可能な標識の部分を指す。リンカの例としては、O、S、又はNHが挙げられるが、これらに限定されない。任意に、結合基又はリンカは共有結合である(すなわち、標識は塩基に共有結合される)。
【0015】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「対イオン」又は「対アニオン」とは、安定であり、かつ合成的にアクセス可能であるイオンを指す。対アニオンの例は図1に記載され、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4 -)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6 -)、ベンゼンスルホン酸イオン(CH5SO3 -)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド((N[SO2(CF3)]2-)、臭化物イオン(Br-)、10-カンファースルホン酸イオン(10-camphorosulfonate)、塩化物イオン(Cl-)、ヨウ化物イオン(I-)、メタンスルホン酸イオン(メシラート、CH3SO3 -)、過塩素酸イオン(ClO4 -)、リン酸イオン(PO4 3--)、硫酸イオン(SO4 2-)、テトラクロロアルミン酸イオン(AlCl4 -)、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸イオン(B[3,5-(CF32634 -)、テトラキス(ヘキサフルオロイソプロピル)アルミン酸イオンAl[OC(CF334 -)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン[B(C654 -]、p-トルエンスルホン酸イオン(トシラート、CH364SO3 -)、及びトリフルオロメタンスルホン酸イオン(トリフラート、CF3SO3 -)が挙げられるが、これらに限定されない。対アニオンは、任意の弱配位性アニオン又は非配位性アニオンであり得る。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「非配位性アニオン」は、用語「弱配位性アニオン」と同義に使用され、カチオンに配位しないか、又はカチオンに弱く配位し、それによって中性のルイス塩基によって置換されるのに充分に不安定なままである、アニオンを意味する。「同義に使用される」非配位性アニオンは、最初に生成した錯体が分解しても中性に分解しないアニオンである。更に、該アニオンは、アニオン置換基又は断片をカチオンに移動させることで、アニオンから中性遷移金属化合物及び中性副生成物を形成させない。本発明に従って有用な非配位性アニオンは、互換性であり、DMT-MMカチオンをそのイオン電荷を+1で平衡させるという意味で安定化させ、しかし反応中の置換を可能にするのに充分な不安定性を保持するアニオンである。
【0017】
本明細書で使用される場合、「生物学的に適合する」物質は、使用されるような毒性はなく、生体分子に対して実質的に有害な効果を有しない。
【0018】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「核酸塩基」とは、アデニン、シチジン、グアニン、チミン、又はウラシルを指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「核酸塩基類似体」とは、相補的な核酸塩基又は核酸塩基類似体とのワトソン・クリック水素結合を形成することができる、置換又は非置換の窒素含有親ヘテロ芳香族環を指す。好ましくは、核酸塩基類似体は、プリン、デアザプリン、又はピリミジンである。例示的な核酸塩基類似体としては、7-デアザアデニン、イノシン、ネブラリン、ニトロピロール、ニトロインドール、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、ヒポキサンチン、プソイドウリジン、5-プロピニルシチジン、イソシチジン、イソグアニン、7-デアザグアニン、2-チオピリミジン、6-チオグアニン、4-チオチミン、4-チオウラシル、O6-メチルグアニン、N6-メチルアデニン、O4-メチルチミン、5,6-ジヒドロチミン、5,6-ジヒドロウラシル、4-メチルインドール、エテノアデニン等が挙げられるが、これらに限定されない。更なる例示的な核酸塩基類似体は、Fasman(1989年)「Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology」、第385~394頁、CRC Press(フロリダ州ボカラトン)及びそこに引用されている参考文献に見出すことができる。
【0020】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「ヌクレオシド」とは、置換又は非置換リボース糖のC1’炭素に共有結合した核酸塩基からなる化合物を指す。典型的な置換リボース糖としては、その炭素原子の1つ以上、好ましくは1つ、最も好ましくは3’炭素原子が、同一であるか又は異なる-R、-OR、-NRR、若しくはハロゲン基の1つ以上で置換されたものが挙げられるが、これらに限定されず、ここで、各Rは独立して、-H、(C1~C6)アルキル又は(C5~C14)アリールである。特に好ましいリボース糖は、リボース、2’-デオキシリボース、2’,3’-ジデオキシリボース、3’-ハロリボース、3’-フルオロリボース、3’-クロロリボース、3’-アルキルリボース等である。核酸塩基がA又はGの場合、リボース糖は、核酸塩基のN9位に結合する。核酸塩基がC、T、又はUの場合、ペントース糖は、核酸塩基のN1位に結合している(例えば、Kornberg及びBaker(1992年)「DNA Replication」第2版、Freeman and Company、サンフランシスコを参照されたい)。
【0021】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「ヌクレオシド類似体」とは、核酸塩基、リボース糖、又はその両方が、それぞれの類似体で置き換えられているヌクレオシドを指す。例示的な核酸塩基類似体は、上で定義したものである。例示的なリボース糖類似体としては、1環当たり5員より多い又は少ないメンバを有する置換又は非置換フラノース、例えばエリトロース及びヘキソース、並びに置換又は非置換3~6炭素非環状糖が挙げられるが、これらに限定されない。典型的な置換フラノース及び非環状糖は、炭素原子の1つ以上が、同一又は異なる-R、-OR、NRR、又はハロゲン基の1つ以上で置換されたものであって、ここで、各Rは独立して、H、(C1~C6)アルキル、又は(C5~C14)アリールである。
【0022】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「ヌクレオチド」とは、リボース炭素の1つ以上、典型的には1つが、以下の式を有するリン酸エステルで置換されているヌクレオシドを指す:
式中、aは0~4の整数である。好ましくは、aは2であり、リン酸エステルはリボース、例えば、リボース3’-三リン酸、2’-デオキシリボース3’-三リン酸、リボース5’-三リン酸、2’-デオキシリボース5’-三リン酸、3’-ハロリボース5’-三リン酸、3’-アルキルリボース5’-三リン酸、2’,3’-ジデオキシリボース5’-三リン酸等の3’又は5’炭素に結合している。
【0023】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「ヌクレオチド誘導体」及び「ヌクレオチド類似体」は、同義に使用され、核酸塩基、リボース糖、及び/又は1つ以上のリン酸エステルがそれぞれの類似体で置き換えられるヌクレオチドを指す。例示的な核酸塩基及びリボース糖類似体は、ヌクレオシド類似体と共に前述したものである。リン酸エステル類似体の例としては、アルキルホスホネート、メチルホスホネート、ホスホロアミデート、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホオセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニリデート、ホスホロアミデート、ボロノホスフェート、ペプチド核酸(PNA)モノマー等が挙げられるが、これらに限定されず、存在する場合、任意の関連する対イオンを含む。
【0024】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「ヌクレオシド又はヌクレオチド」とは、ヌクレオシド及び/若しくはヌクレオチド、並びに/又はそれらの混合物を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「核酸」とは、リン酸エステルヌクレオチド間結合によって互いに共有結合的に連結されているヌクレオシドモノマー単位の線状ポリマー鎖を指す。特に言及されない限り、本明細書で使用される「核酸」は、オリゴヌクレオチド、核酸、及び当技術分野で一般的に使用される用語としての核酸を含む、任意の長さのポリマーを含む。したがって、本発明に係る核酸は、いくつかのモノマー単位(例えば、4~40)から、数百のモノマー単位、数千のモノマー単位、又は更に多くのモノマー単位までのサイズの範囲であり得る。そのような核酸はまた、プライマ又はプローブなどのそれらの機能に関して、本明細書中に記載され得る。核酸が文字の配列、例えば「ATGCCTG」によって表される場合はいつでも、これは5’から3’への方向で示されることが理解されるであろう。特に明記されない限り、配列が本明細書に記載される核酸は、2’-デオキシリボ核酸である。
【0026】
本発明に係る「オリゴヌクレオチド」及び「修飾オリゴヌクレオチド」は、主に当技術分野に記載され、当分野の専門家に公知であるように合成することができる。特定の配列のオリゴマー化合物を調製する方法は当技術分野で公知であり、例えば、適切な配列のクローニング及び制限、並びに直接的な化学合成が挙げられる。化学合成法としては、例えば、Narang,S.A.ら、「Methods in Enzymology」、第68巻(1979年)、第90~98頁に記載のホスホトリエステル法、Brown,E.L.ら、「Methods in Enzymology」、第68巻(1979年)、第109~151頁に開示のホスホジエステル法、Beaucageら、「Tetrahedron Letters」、第22巻(1981年)、第1859頁及び米国特許第4,415,732号に開示のホスホロアミダイト法、Gareggら、「Chem.Scr.」、第25巻(1985年)、第280~282頁に開示のH-ホスホネート法、並びに米国特許第4,458,066号に開示の固体支持法(solid support method)を挙げることができる。
【0027】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「核酸類似体」とは、少なくとも1つのヌクレオシドモノマー単位が「ヌクレオシド類似体」であり、及び/又は少なくとも1つのリン酸エステルヌクレオチド間結合が「ヌクレオチド類似体」の下で上記に定義されるようにリン酸エステル類似体である、核酸を指す。核酸類似体の好ましい分類は、糖及びヌクレオチド間結合が、モルホリノカルバミン酸塩及びペプチド核酸(peptide nucleic acid:「PNA」)などの非荷電の中性アミド基で置き換えられているものである。好ましいPNAは、N-(2-アミノエチル)グリシンアミド骨格を有するPNAである(例えば、Nielsenら(1991年)「Science」、第254巻第1497~1500頁を参照)。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「アミノ修飾オリゴヌクレオチド」とは、カルボキシ部分(例えば、標識上のカルボキシ部分)と反応することができる、アミノ基又は複数のアミノ基で修飾されたオリゴヌクレオチドを指す。反対に、用語「カルボキシ修飾オリゴヌクレオチド」とは、アミノ部分(例えば、標識上のアミノ部分)と反応することができる、カルボキシ基又は複数のカルボキシ基で修飾されたオリゴヌクレオチドを指す。したがって、本発明の目的のために、アミノ官能基及びカルボキシ官能基は、標識目的のため逆になっていてもよい。
【0029】
アミノ修飾は、1つ以上の一級アミン又は二級アミンを構成する種々の部分の付加を含んでもよく、又は1つ以上の一級又は二級アミンの付加を含んでもよい。したがって、アミノ修飾は、[O]がオリゴヌクレオチドである一般式[O]-Znを含むことができる。ここで、Zは、各発生において、NH2、NHR、RNH2、又はRNHRから選択され、nはゼロ以外の整数であり、そしてRは、各発生において、独立してヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル基から独立して選択される。明確化のために、Rが二価基である場合、そのような二価のR基は、限定されるものではないが、アルキレン又は置換アルキレン基を含むヒドロカルビレン又は置換ヒドロカルビレン基であり得ることが理解される。Rが一価基である場合、Rは、限定されるものではないが、アルキル及び置換アルキル基を含む任意の数のヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル基であり得る。Rはまた、一価基である場合、「Protective Groups in Organic Synthesis」(Green、Wuts、第3版(1999年)、John Wiley&Sons,Inc.)に記載されているような、当該技術分野で一般的に知られている任意の数の保護基であってもよい。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド内の任意の位置でアミノ修飾され得る。いくつかの実施形態では、アミノ修飾は、5’末端又は3’末端にある。他の実施形態では、アミノ修飾は、オリゴヌクレオチド内の1つ以上の内部位置にある。アミノ修飾末端を含むオリゴヌクレオチドは、当技術分野で一般的に使用される方法及び試薬を用いて調製することができる。例えば、5’末端にアミノ修飾を有するオリゴヌクレオチドは、限定されるものではないが、C2~C12アミノリンカ又はそのアミノ保護誘導体を含む種々のリンカ(当該技術分野では修飾剤としても知られる)を用いて調製することができる。C2~C12アミノリンカ又はそのアミノ保護誘導体の例としては、2-[2-(4-モノメトキシトリチル)アミノエトキシ]エチル(2-シアノエチル)-N,N-ジイソプロピル-)ホスホロアミダイド(C5MMTアミノリンカ)、6-(4-モノメトキシトリチルアミノ)ヘキシル[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]ホスホロアミダイド(C6MMTアミノリンカ)、6-(トリフルオロアセチルアミノ)ヘキシル[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]ホスホロアミダイド(C6TFAアミノリンカ)、7-(4-モノメトキシトリチルアミノ)ヘプチル[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]ホスホロアミダイド(C7MMTアミノリンカ)、12-(4-モノメトキシトリチルアミノ)ドデシル[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]ホスホロアミダイド(C12MMTアミノリンカ)が挙げられるが、これらに限定されない。更に他の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、3’又は5’末端以外の位置に1つ以上のアミノ修飾を含む。例えば、オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの1つ以上の塩基に直接結合された、又はそうでなければ繋ぎ止められた(tethered)アミノ修飾基を含み得る。このようなアミノ修飾オリゴヌクレオチドは、以下:アミノC6dT(例えば、5’-ジメトキシトリチル-5-[N-(トリフルオロアセチルアミノヘキシル)-3-アクリイミド]-2’-デオキシウリジン、3’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]ホスホロアミダイド、5’-ジメトキシトリチル-5-[N-((9-フルオレニル-メトキシカルボニル)-アミノヘキシル)-3-アクリル-イミド]-2’-デオキシウリジン、及び3’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]ホスホロアミダイドなど);アミノC6dA(例えば、5’-ジメトキシトリチル-N6-ベンゾイル-N8-[6-(トリフルオロアセチルアミノ)-ヘキス-1-イル]-8-アミノ-2’-デオキシアデノシン-3’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]ホスホロアミダイド);アミノC6dG(例えば、5’-ジメトキシトリチル-N2-(N,N-ジメチルアミノメチリデン)-N8-[6-(トリフルオロアセチルアミノ)-ヘキス-1-イル]-8-アミノ-2’-デオキシグアノシン-3’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]ホスホロアミダイド)、アミノC6dC(例えば、5’-ジメトキシトリチル-N-ジメチルホルムアミジン-5-[N-(トリフルオロアセチルアミノヘキシル)-3-アクリイミド]-2’-デオキシシチジン、3’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]ホスホロアミダイド)、及び/又はアミノC2dT(例えば、5’-ジメトキシトリチル-5-[N-(トリフルオロアセチルアミノエチル)-3-アクリイミド]-2’-デオキシウリジン、3’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]ホスホロアミダイド)を含むがこれらに限定されない当技術分野で一般的に知られている、任意の数のホスホロアミダイドを用いて調製することができる。明確化のために、上記のホスホロアミダイドを含むがこれらに限定されない保護アミノ基を含む任意のホスホロアミダイドは、アミノ修飾オリゴヌクレオチドの合成後に、当技術分野で公知の脱保護方法を用いて任意に脱保護することができることが理解される。
【0030】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「保護基」とは、ヒドロキシル又はアミン部分に可逆的に結合し、その後の反応の間にヒドロキシル又はアミン部分を非反応性にし、その保護目的が供されるとヒドロキシル又はアミン部分を再生するために選択的に切断され得る基を指す。保護基の例は、Greene,T.W.、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版(1999年)で見出される。一実施形態では、保護基は塩基性反応媒体中で安定であるが、酸によって切断され得る。本発明での使用に好適な塩基安定性、酸不安定性保護基の例としては、メチル、メトキシメチル、メチルチオメチル、メトキシエトキシメチル、ビス(2クロロエトキシ)メチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、1-エトキシエチル、1-メチル-1-メトキシエチル、tert.-ブチル、アリル、ベンジル、o-ニトロベンジル、トリフェニルメチル、α-ナフチルジフェニルメチル、p-メトキシフェニル-ジフェニルメチル、9-(9-フェニル-10-オキソ)アントラニル、トリメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、tert.-ブチルジメチルシリル、tert.-ブチルジフェニルシリル、トリベンジルシリル、及びトリイソプロピルシリルなどのエーテル;並びに、ピバロエート、アダマントエート、及び2,4,6-トリメチルベンゾエートなどのエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「標識」とは、ヌクレオシド若しくはヌクレオチド、ヌクレオシド類似体若しくはヌクレオチド類似体、核酸、核酸類似体、又はターミネータに共有結合的又は非共有結合的に付着した、検出可能な分子又は原子を指す。一実施形態では、ヌクレオシド若しくはヌクレオチド、ヌクレオシド類似体若しくはヌクレオチド類似体、核酸、核酸類似体、又はターミネータは、核酸塩基に共有結合した検出可能な標識を有する。用語「標識」とはまた、クエンチャなどの別の検出可能な標識の検出を調節する分子を指すこともある。本明細書で使用される場合、用語「検出可能な標識」とは、「直接」検出される分子又は標識(例えば、クロモゲン又はフルオロフォア)だけでなく、第2、第3、又はそれ以上の結合パートナ(例えば、アビジン又はストレプトアビジン)との結合によって「間接的に」検出され、その内1つは「直接」標識を担持する部分(例えば、ビオチン)も含むことが意図されている。
【0032】
標識の他の例としては、適切な波長の光に曝露されると蛍光によって検出可能となり、顕微鏡又は蛍光測定法によって検出及び/又は測定される、蛍光化合物が挙げられる。一般的に使用される蛍光標識化合物は、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、γ-フタルアルデヒド、及びフルオレスカミンが挙げられる。検出可能な標識は、152Euなどの蛍光発光金属、又はジエチレントリアミン五酢酸若しくはエチレンジアミン四酢酸などの金属キレート基を用いてオリゴヌクレオチドに結合され得る、ランタニド系列の他の標識であってもよい。
【0033】
標識は化学発光化合物であってもよく、その存在は、化学反応の過程で生じる発光を測定することによって検出される。有用な化学発光標識化合物の例には、ルミノール、イソルミノール、テロマティックアクリジニウムエステル(theromatic acridinium ester)、イミダゾール、アクリジニウム塩、及びシュウ酸エステルがある。同様に、生物発光化合物を用いてオリゴヌクレオチドを標識し、発光を測定することによって検出することができる。この場合、触媒タンパク質は化学発光反応の効率を高める。生物発光標識化合物の例としては、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、及びエクオリンが挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「蛍光色素」とは、光に曝露されると蛍光の形でエネルギーを放出する、蛍光化合物を指す。「レポータ色素のクロモフォア」は、光に曝露されると、従来の分光手段によって検出可能なレベルの放射線を放出する、レポータ色素の原子のネットワークである。
【0035】
大部分の蛍光色素(例えば、スルホン酸塩部分を含有する色素)は、固相オリゴヌクレオチド合成中に使用されるホスホロアミダイト(phosphormaidite)化学と本質的に不適合である。これは主として、アンモニア水のなどの強塩基又はメチルアミンのような一級アミンが最も頻繁に使用される、核酸の脱保護及び固相からの切断の最中に存在する化学的条件に対するこれらの色素の不安定性に起因する。例えば、Atto490LS(ATTO-TEC,Inc.、ジーゲンドイツ)、CF640R、CF680R(Bio-Techne,Inc.、米国)、並びにDy380XL、及びDy395XL、Dy396XL(Dyomics,GmbH、イェーナ、ドイツ)、並びにJA286(Roche Molecular Systems、カリフォルニア州プレザントン)などのスルホン化蛍光色素は、固相支持体上でのホスホロアミダイドに基づくDNA合成と不適合である。
【0036】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「非蛍光性」とは、放射線に曝露された場合、従来の分光手段によって検出可能なレベルでは放射線を放出しない化合物を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「弱蛍光性」とは、放射線に曝露された場合、従来の分光手段によって検出可能な低いレベルで放射線を放出する化合物を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「光」とは、レポータ色素を蛍光発光させる波長を有する電磁エネルギーを指し、ここで、該波長は190~800nmの範囲内であり得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「特異的」とは、反応で使用される核酸、例えば、ハイブリダイゼーション反応で使用されるプローブ、PCRで使用されるプライマ、又は組成物中に存在する核酸であって、意図された標的のみとハイブリダイズするが、通常の試験環境における試験試料中の他の核酸分子とはハイブリダイズしない核酸を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「選択的」とは、反応で使用される核酸、後エバ、ハイブリダイゼーション反応で使用されるプローブ、PCRで使用されるプライマ、又は医薬品中に存在する核酸であって、通常の試験環境における試験試料中の他の核酸と、より頻繁に、より急速に、又はより長い持続時間で、意図された標的とハイブリダイズする核酸を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」は、互いに同一のヌクレオチド配列が少なくとも60%(65%、70%、又は75%以上)で、典型的には互いにハイブリダイズしたままであるような条件下における、ハイブリダイゼーション及び洗浄のための条件を記述する。ストリンジェントな条件は、核酸の性質(例えば、長さ、GC含量等)及び方法そのもの(ハイブリダイゼーション、増幅等)に依存する。そのような方法は当該技術で公知であり、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley&Sons、ニューヨーク州(1989年)、第6.3.1~6.3.6頁に見ることができる。一実施形態では、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、6倍塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)で約45℃にてハイブリダイゼーションした後、0.1倍SSC、0.2%SDSで約68℃にて1回以上洗浄することである。別の実施形態では、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、6倍SSC中において約45℃でハイブリダイゼーションした後、0.2倍SSC中、0.1%SDS中において50~65℃で洗浄すること(すなわち、50℃、55℃、60℃、又は65℃にて1回以上洗浄)である。本発明の核酸は、A又はTヌクレオチドのみからなるヌクレオチド配列にだけ、これらの条件下でハイブリダイズする核酸分子を含まないことが理解される。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)における相補的配列へのおよそ15~40塩基のオリゴヌクレオチドのストリンジェントなハイブリダイゼーションは、以下の条件下で行うことができる:塩濃度50mM KCl、緩衝液濃度10mM Tris-HCl、Mg2+濃度1.5mM、pH7~7.5、及びアニーリング温度55~60℃。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)における相補的配列へのおよそ15~40塩基のオリゴヌクレオチドの、中程度のストリンジェントなハイブリダイゼーションは、以下の条件下で行うことができる:塩濃度50mM KCl、緩衝液濃度10mM Tris-HCl、Mg2+濃度1.5mM、pH7~7.5、及びアニーリング温度48~54℃。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)における相補的配列へのおよそ15~40塩基のオリゴヌクレオチドの、低度のストリンジェントなハイブリダイゼーションは、以下の条件下で行うことができる:塩濃度50mM KCl、緩衝液濃度10mM Tris-HCl、Mg2+濃度1.5mM、pH7~7.5、及びアニーリング温度37~47℃。
【0042】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、用語「立体異性的に純粋な」とは、化合物の1つの立体異性体を含み、その化合物の他の立体異性体を実質的に含まない組成物を指す。例えば、1つのキラル中心を有する化合物の立体異性的に純粋な組成物は、化合物の反対の鏡像異性体を実質的に含まない。2つのキラル中心を有する化合物の立体異性的に純粋な組成物は、化合物の他のジアステレオ異性体を実質的に含まない。典型的な立体異性的に純粋な化合物は、化合物の立体異性体の約80重量%超及び他の立体異性体の約20重量%未満、より好ましくは化合物の1つの立体異性体の約90重量%超及び化合物の他の立体異性体の約10重量%未満、更により好ましくは化合物の1つの立体異性体の約95重量%超及び化合物の他の立体異性体の約5重量%未満、そして最も好ましくは化合物の1つの立体異性体の約97重量%超及び化合物の他の立体異性体の約3重量%未満を含む。
【0043】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、「純粋な」又は「実質的に純粋な」化合物とは、1つの化合物を含み、検出可能な又は有意な量の他の化合物を含まない組成物を指す。典型的な実質的に純粋な組成物は、所望の化合物の約80重量%超及び1つ以上の他の化合物の約20重量%未満、より好ましくは所望の化合物の1つの約90重量%超及び1つ以上の他の化合物の約10重量%未満、更により好ましくは所望の化合物の約95重量%超及び1つ以上の化合物の約5重量%未満、そして最も好ましくは所望の化合物の約97重量%超及び1つ以上の化合物の約3重量%未満を含む。
【0044】
核酸増幅の方法は、その他の参考文献、米国特許第4,683,202号、同第4,683,195号、同第4,800,159号、及び同第4,965,188号に開示されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。PCRは、典型的には、選択された核酸鋳型(例えば、DNA又はRNA)に結合する2つ以上のオリゴヌクレオチドプライマを使用する。核酸分析に有用なプライマは、標的核酸の核酸配列内で核酸合成の開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドを含む。プライマは、従来の方法によって制限消化物から精製することができるか、又は合成的に生成することができる。プライマは増幅における最大効率のために一本鎖であり得るが、プライマは二本鎖であってもよい。二本鎖プライマは、最初に変性される、すなわち、鎖を分離するために処理される。二本鎖核酸を変性させる1つの方法は、加熱によるものである。
【0045】
鋳型核酸が二本鎖である場合、PCRで鋳型として使用することができるようにする前に、2本の鎖を分離することが必要である。鎖分離は、物理的、化学的、又は酵素的手段を含む任意の好適な変性方法によって達成することができる。核酸鎖を分離する1つの方法は、核酸が優位に変性する(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%を超える変性)まで加熱することを含む。鋳型核酸を変性させるのに必要な加熱条件は、例えば、緩衝塩濃度、並びに変性される核酸の長さ及びヌクレオチド組成に依存するが、典型的には、温度及び核酸長のような反応の特徴に応じて、約90℃~約105℃の範囲である。変性は、典型的には約5秒~9分間行われる。例えばZ05 DNAポリメラーゼのような各ポリメラーゼをそのような高温に長く晒さず、したがって機能酵素を損失する危険を冒さないために、短い変性工程を使用することが好ましい場合がある。
【0046】
二本鎖の鋳型核酸が熱により変性された場合、反応混合物は、標的核酸上のその標的配列に対する各プライマのアニーリングを促進する温度まで冷却される。
【0047】
アニーリングの温度は、約35℃~約70℃、又は約45℃~約65℃、又は約50℃~約60℃、又は約55℃~約58℃であり得る。アニーリング時間は、約10秒~約1分(例えば、約20秒~約50秒、約30秒~約40秒)であり得る。この文脈では、それぞれのアッセイの包括性を高めるために、異なるアニーリング温度を使用することが有利となり得る。要するにこれは、比較的低いアニーリング温度において、プライマが単一のミスマッチを有する標的にも結合し得ることを意味し、したがって特定の配列のバリアントもまた増幅され得る。これは、例えば、ある特定の生物が、同様に検出されるべき既知又は未知の遺伝的バリアントを有する場合に望ましくなり得る。一方で、温度が高くなるにつれて、正確には一致しない標的配列にプライマが結合する確率が連続的に減少するため、比較的高いアニーリング温度はより高い特異性を呈するという利点を持つ。両方の現象から利益を得るために、本発明のいくつかの実施形態では、上述の方法は、異なる温度で、例えば最初に低い温度で、次に高い温度でアニーリングすることを含む。例えば、最初のインキュベーションが55℃で約5サイクル行われる場合、正確には一致しない標的配列を(事前に)増幅してもよい。これに続いて、例えば、58℃で約45サイクル行って、実験の大部分を通してより高い特異性を得ることができる。こうすることで、潜在的に重要な遺伝的バリアントは見逃されず、一方で特異性は高く維持される。
【0048】
次いで、ポリメラーゼの活性が促進又は最適化される温度、すなわち、アニーリングされたプライマから伸長が起こって、分析される核酸に相補的な生成物を生成するのに充分な温度に、反応混合物を調節する。温度は、核酸鋳型にアニーリングされた各プライマから伸長生成物を合成するのに充分であるべきだが、その相補的な鋳型から伸長生成物を変性させるほど高くすべきではない(例えば、伸長のための温度は、概して、約40℃~約80℃(例えば、約50℃~約70℃、約65℃)の範囲である)。伸長時間は、約10秒~約5分、又は約15秒~約2分、又は約20秒~約1分、又は約25秒~約35秒とすることができる。新規に合成された鎖は、反応の後続工程で使用できる二本鎖分子を形成する。鎖分離、アニーリング、及び伸長の工程は、標的核酸に対応する所望の量の増幅産物を生成するために、必要に応じて何度でも繰り返すことができる。反応の制限因子は、反応中に存在するプライマ、熱安定性酵素、及びヌクレオシドトリホスフェートの量である。サイクル工程(すなわち、変性、アニーリング、及び伸長)は、少なくとも1回繰り返してもよい。検出での使用について、サイクル工程の数は、例えば試料の性質に応じる。試料が核酸の複雑な混合物である場合、検出に充分な標的配列を増幅するために、より多くのサイクル工程が必要となる。概して、サイクル工程は少なくとも約20回繰り返されるが、40、60、又は100回繰り返してもよい。
【0049】
PCRは、アニーリング及び伸長の工程が、同じ工程(1ステップPCR)で行われるものであってもよいし、又は上述のように、別々のステップ(2ステップPCR)で行われるものであってもよい。アニーリング及び伸長を、例えばZ05 DNAポリメラーゼのように好適な酵素を用いて一緒に、つまり同じ物理的及び化学的条件下で行うことには、各サイクルの追加工程の時間を節約し、また、アニーリングと伸長との間の追加の温度調整の必要をなくすという利点がある。このように、1ステップPCRは、それぞれのアッセイ全体の複雑さを減らす。
【0050】
一般的に、増幅全体に対する時間短縮は、結果に至るまでの時間が短縮され、可能性のあるより早い診断につながるため、好ましいことがある。
【0051】
使用されるその他の核酸増幅方法として、リガーゼ連鎖反応(Ligase Chain Reaction:LCR;Wu D.Y.及びWallace R.B.、「Genomics」、第4巻(1989年)、第560~69頁;及びBarany F.、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、第88巻(1991年)、第189~193頁);ポリメラーゼ/リガーゼ連鎖反応(Barany F.、「PCR Methods and Applic.」、第1巻(1991年)、第5~16頁);Gap-LCR(国際公開第90/01069号);修復連鎖反応(欧州特許出願公開第0439182A2号)、3SR(Kwoh D.Y.ら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、第86巻(1989年)、第1173~1177頁;Guatelli J.C.ら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、第87巻(1990年)、第1874~1878頁;国際公開第92/08808号)、並びにNASBA(米国特許第5,130,238号)が挙げられる。更に、鎖置換増幅(strand displacement amplification:SDA)、転写増幅(transcription mediated amplification:TMA)、及びQb増幅(概説は、例えば、Whelen A.C.及びPersing D.H.、「Annu.Rev.Microbiol.」、第50巻(1996年)、第349~373頁;Abramson R.D.及びMyers T.W.、「Curr.Opin.Biotechnol.」、第4巻(1993年)、第41~47頁を参照のこと)がある。
【0052】
用語「Cp値」又は「交点(crossing point)」値とは、入力された標的核酸の定量を可能にする値を指す。Cp値は、二次導関数最大値法(second-derivative maximum method)に従って決定することができる(Van Luu-Theら、「Improved real-time RT-PCR method for high-throughput measurements using second derivative calculation and double correction」、BioTechniques、第38巻、第2号、2005年2月、第287~293頁)。二次導関数法では、Cpは、二次導関数曲線の第1のピークに相当する。このピークは対数線形フェーズ(log-linear phase)の始まりに相当する。二次導関数法は、リアルタイム蛍光強度曲線の二次導関数値を算出し、1つの値だけが得られる。元のCp法は、例えば多項式関数による、強度値の局所的に定義された微分可能な近似に基づく。次いで、三次導関数が計算される。Cp値は、三次導関数の最小根である。Cpは、対数線形領域中の補助線に対する平行線の交点により決定されるフィットポイント法(fit point method)を用いて決定することもできる。Cp値は、Rocheにより提供されたLight Cycler機器により、二次導関数最大値法に従って計算することによって提供される。
【0053】
用語「PCR効率」とは、サイクルからサイクルへの増幅効率の指標を指す。PCR効率は、式:%PCR効率=10(-傾き)-1)×100を用いて各条件について算出し、式中、傾きはy軸にプロットされたコピー数の対数とx軸にプロットされたCpとを用いる線形回帰により算出した。PCR効率は、完全に一致した又は不一致のプライマ鋳型を用いて測定することができる。
【0054】
用語「FRET」又は「蛍光共鳴エネルギー移動」又は「Foerster共鳴エネルギー移動」とは、少なくとも2つのクロモフォア、ドナークロモフォアとアクセプタクロモフォア(クエンチャと呼ばれる)との間のエネルギー移動を指す。典型的に、ドナーは好適な波長の光放射によって励起されると、アクセプタにエネルギーを移動させる。典型的に、アクセプタは転移されたエネルギーを異なる波長の光放射の形態で再放射する。アクセプタは、「ダーク」クエンチャである場合、移動されたエネルギーを光以外の形態で散逸させる。特定のフルオロフォアがドナー又はアクセプタとして作用するか否かは、FRET対の他の要素の性質に依存する。一般的に使用されるドナー-アクセプタ対は、FAM-TAMRA対を包含する。一般的に使用されるクエンチャは、DABCYL及びTAMRAである。一般的に使用されるダーククエンチャは、BlackHole Quenchers(商標)(BHQ)、(Biosearch Technologies,Inc.、カリフォルニア州ノヴァト)、Iowa Black(商標)(Integrated DNA Tech.,Inc.、アイオワ州コーラルビル)、及びBlackBerry(商標)Quencher 650(BBQ-650)(Berry&Assoc.、ミシガン州デクスタ)を包含する。
【0055】
上記に記載の方法は、ドナー蛍光部分とアクセプタ蛍光部分との間のFRETに基づいてもよい。代表的なドナー蛍光部分はフルオレセインであり、代表的な対応するアクセプタ蛍光部分は、LC-Red640、LC-Red705、Cy5、及びCy5.5を含む。典型的には、検出は、ドナー蛍光部分によって吸収された波長で試料を励起することと、対応するアクセプタ蛍光部分によって放出された波長を可視化及び/又は測定することと、を含む。本発明に係る方法では、検出の後に、FRETの定量化を行うことができる。例えば、検出は、各サイクル工程の後に行われる。例えば、検出は、リアルタイムで行われる。市販のリアルタイムPCR装置(例えば、LightCycler(商標)又はTaqMan(登録商標))を用いることで、PCR増幅と増幅産物の検出とを、サイクル時間を有意に短縮した単一のクローズドキュベットで組み合わせることができる。増幅と同時に検出が行われるため、リアルタイムPCR法は増幅産物を操作する必要がなく、増幅産物間の相互汚染のリスクを軽減することができる。リアルタイムPCRは、ターンアラウンド時間を大幅に短縮し、臨床検査室での従来のPCR技術に代わる魅力的な技術である。
【0056】
次の特許出願が、LightCycler(登録商標)技術で使用されるリアルタイムPCRについて記載する:国際公開第97/46707号、国際公開第97/46714号、及び国際公開第97/46712号。LightCycler(登録商標)装置は、高品質光学を利用したマイクロボリューム蛍光光度計と組み合わせた、急速サーマルサイクラである。これは薄いガラス製のキュベットを反応容器として使用する急速熱サイクル技術である。反応チャンバの加熱及び冷却は、加熱された空気と周囲の空気とを交互に供給することで制御する。空気の質量が少なく、キュベットの表面積と体積との比率が高いため、サーマルチャンバ内では非常に迅速な温度交換が可能である。
【0057】
TaqMan(登録商標)技術は、2つの蛍光部分で標識された一本鎖ハイブリダイゼーションプローブを利用する。第1の蛍光部分が好適な波長の光で励起されると、吸収されたエネルギーはFRETの原理に従って第2の蛍光部分に移動される。第2の蛍光部分は、一般的には、クエンチャ分子である。この形式で使用される典型的な蛍光色素としては、例えばとりわけ、FAM、HEX、Cy5、JA270、シアン、及びCy5.5がある。PCR反応のアニーリング工程の間、標識されたハイブリダイゼーションプローブは、標的核酸(すなわち、増幅産物)に結合し、その後の伸長段階において、Taq又は変異型Z05ポリメラーゼのような当業者に公知の別の好適なポリメラーゼの5’~3’エキソヌクレアーゼ活性によって分解される。その結果、蛍光部分とクエンチャ部分とが、互いに空間的に分離した状態となる。結果として、クエンチャの不在下において第1の蛍光部分を励起すると、第1の蛍光部分からの蛍光発光を検出することができる。
【0058】
上述したどちらの検出形態においても、放出されるシグナルの強度は、元の標的核酸分子の数と相関し得る。
【0059】
最近、多重化PCRアッセイを行うための「タグ付けされた」TaqMan(登録商標)プローブを使用する方法が、米国特許出願公開第2018/0073056号及び米国特許公開第2018/0073064号に記載されている。
【0060】
FRETの代替として、蛍光DNA結合色素(例えば、SYBRGREEN I(登録商標)又はSYBRGOLD(登録商標)(Molecular Probes,Inc.、オレゴン州ユージーン))のような二本鎖DNA結合色素を用いて、増幅産物を検出することができる。二本鎖核酸との相互作用の際、このような蛍光DNA結合色素は、好適な波長の光で励起した後、蛍光シグナルを発する。また、核酸インターカレート色素などの二本鎖DNA結合色素を用いることもできる。二本鎖DNA結合色素を使用する場合、増幅産物の存在を確認するために、通常は融解曲線分析を行う。
【0061】
また、本発明のリアルタイムPCR法を用いて増幅産物の存在を検出するために、FRETと組み合わせた分子ビーコンを使用することもできる。分子ビーコン技術は、第1の蛍光部分及び第2の蛍光部分で標識されたハイブリダイゼーションプローブを使用する。第2の蛍光部分は一般的にはクエンチャであり、蛍光標識は典型的にはプローブの各端部に配置される。分子ビーコン技術は、二次構造形成を可能にする配列(例えば、ヘアピン)を有するプローブオリゴヌクレオチドを使用する。プローブ内で二次構造が形成された結果、プローブが溶液中にある場合、両方の蛍光部分が空間的に近接する。増幅産物へのハイブリダイゼーション後、プローブの二次構造が破壊され、好適な波長の光で励起した後に第1の蛍光部分の発光を検出することができるように、蛍光部分が互いに分離される。
【0062】
したがって、本発明に係る方法はFRETを用いる上記の方法であって、ここで、該プローブは二次構造形成を許容する核酸配列を含み、ここで、該二次構造形成は、該第1の蛍光部分と第2の蛍光部分とを空間的に近接させる。
【0063】
効率的なFRETは、蛍光部分が直接局所的に近接しており、ドナー蛍光部分の発光スペクトルがアクセプタ蛍光部分の吸収スペクトルと重なっている場合にのみ起こり得る。
【0064】
したがって、一実施形態では、該ドナー及びアクセプタ蛍光部分は、該プローブ上で互いに5ヌクレオチド以下の範囲内にある。更なる実施形態では、該アクセプタ蛍光部分は、クエンチャである。
【0065】
上述の通り、TaqMan(登録商標)形式では、PCR反応のアニーリング工程の間、標識されたハイブリダイゼーションプローブは、標的核酸(すなわち、増幅産物)に結合し、その後の伸長段階において、Taq又は変異型Z05ポリメラーゼのような当業者に公知の別の好適なポリメラーゼの5’~3’-エキソヌクレアーゼ活性によって分解される。このように、一実施形態では、上記の方法において、増幅は、5’~3’-エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ酵素を使用する。
【0066】
上述の方法の結果として得られるアンプリコンの長さを慎重に選択することが、更に有利である。一般に、比較的短いアンプリコンは、増幅反応の効率を高める。したがって、本発明の一態様は、増幅された断片が、最大450塩基、最大300塩基、最大200塩基、又は最大150塩基を含む、上述の方法である。
【0067】
「配列」とは、核酸の一次構造、すなわち、それぞれの核酸が構成する単一核酸塩基の特定の配列である。用語「配列」は、RNA又はDNAのような特定の種類の核酸を示すものではなく、両方に適用されるだけでなく、例えばPNAなどの他のタイプの核酸にも適用されることが理解されなければならない。核酸塩基が互いに対応する場合、特にウラシル(RNA中に存在)及びチミン(DNA中に存在)の場合では、これらの塩基は、当業者によく知られているように、RNA配列とDNA配列との間で等価であると考えることができる。
【0068】
臨床的に関連する核酸は、多くの場合、例えばB型肝炎ウイルス(Hepatitis B Virus:HBV)及びサイトメガロウイルス(Cytomegalovirus:CMV)などの例えばDNAウイルス、又は例えばクラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis:CT)及び淋菌(Neisseria gonorrhoeae:NG)などの細菌に由来し得るDNAである。このような場合には、標的核酸の性質を反映させるために、DNAからなる内部制御核酸を使用することが有利となり得る。用語「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」とは、同義に使用することができ、全てのかかる表記が子孫を含む。このため、語「形質転換体」又は「形質転換細胞」とは、移行の数にかかわらず初代形質転換細胞及びその細胞由来の培養物を含む。全ての子孫が意図的な、又は想定外の変異に起因してDNA含量において厳密に同一でない場合がある。元々の形質転換細胞についてスクリーニングされる機能と同じ機能を有する変異体子孫が、形質転換体の定義に含まれる。細胞は原核生物又は真核生物であり得る。
【0069】
用語「制御配列」とは、特定の宿主生物における操作可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。例えば、原核生物に好適な制御配列には、プロモータ、任意選択にはオペレータ配列、リボソーム結合部位、陽性逆調節要素(positive retroregulatory element)(米国特許第4,666,848号参照)、及び場合によっては他の配列が挙げられる。真核細胞は、プロモータ、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサを利用することが知られている。
【0070】
用語「操作可能に連結された」とは、コード化配列によってコード化されたタンパク質の発現を駆動するために制御配列が機能するような、コード配列の配置を指す。このように、制御配列に「操作可能に連結された」コード配列とは、制御配列の指示の下でコード配列を発現させることができる構成を指す。
用語「制限エンドヌクレアーゼ」及び「制限酵素」とは、特定のヌクレオチド配列で又は特定のヌクレオチド配列の近傍で、二本鎖DNAを切断する酵素、典型的には細菌由来の酵素を指す。
【0071】
類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリが本明細書で定義される。これらのファミリとして、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、システイン、グリシン)、β-分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を伴うアミノ酸が挙げられる。
【0072】
用語「試薬液」とは、PCR目的で必要とされるか又は使用される、少なくとも1つの試薬を含有する任意の溶液である。最も典型的な成分は、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、プライマ、イオン、マグネシウム、塩類、pH緩衝剤、ヌクレオシドトリホスフェート(nucleoside triphosphate:NTP)又はデオキシリボヌクレオシドトリホスフェート(deoxyribonucleoside triphosphate:dNTP)、プローブ、蛍光色素(プローブに結合してもよい)、核酸結合剤、核酸鋳型である。また、試薬は、ポリメラーゼ反応又はそのモニタリングに影響を与える別のポリメラーゼ反応添加剤であってもよい。
【0073】
用語「マスタミックス」とは、PCRが起こるために必要な成分又は因子の全て又は大部分の混合物を指し、場合によっては、試料及びアンプリコンに特異的な鋳型及びプライマを除く全ての混合物を指す。市販のマスタミックスは、通常、濃縮された溶液である。マスタミックスは、複数の試料に共通する全ての試薬を含有し得るが、1つの試料のみを対象に構成されていてもよい。マスタミックスを用いることで、ピペット操作の誤り、及びピペット操作された体積の違いによる試料間の差異を減らすことができる。
【0074】
用語「熱安定性ポリメラーゼ」とは、熱に対して安定であり、耐熱性であり、かつ二本鎖核酸を変性するのに必要な時間にわたり高温に曝された後に、続いてプライマ伸長反応を行うのに充分な活性を保持する酵素を指す。一般に、合成は各プライマの3’末端で開始され、鋳型鎖に沿って5’から3’方向へ進行する。核酸変性に必要な加熱条件は当技術分野で公知であり、米国特許第4,965,188号及び同第4,889,818号に例示されている。本明細書で使用される場合、熱安定性ポリメラーゼは、PCRのような温度サイクル反応で使用するのに適している。熱安定性核酸ポリメラーゼの例としては、Thermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼ、Thermus sp.Z05ポリメラーゼ、Thermus flavusポリメラーゼ、Thermotoga maritimaポリメラーゼ、例えばTMA-25ポリメラーゼ、TMA-30ポリメラーゼ、及びTth DNAポリメラーゼなどが挙げられる。それにもかかわらず、酵素が補充されるならば、熱安定性でないポリメラーゼをPCRアッセイに使用することもできる。
【0075】
「逆転写酵素活性を有するポリメラーゼ」とは、RNA鋳型を基にDNAを合成することができる核酸ポリメラーゼのことである。また、RNAが一本鎖cDNAに逆転写されると、一本鎖又は二本鎖DNAを複製することができる。本発明の一実施形態では、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼは熱安定性である。
【0076】
DNAポリメラーゼによるRNA分子の増幅では、最初の伸長反応はRNA鋳型を用いた逆転写であり、DNA鎖が生成される。DNA鋳型を用いた第2の伸長反応は、二本鎖DNA分子を生成する。このように、DNAポリメラーゼによるRNA鋳型からの相補的DNA鎖の合成は、増幅のための出発物質を提供する。
【0077】
熱安定性DNAポリメラーゼは、結合した一酵素逆転写/増幅反応(one-enzyme reverse transcription/amplification reaction)に使用することができる。この文脈では、用語「均質型(homogeneous)」とは、RNA標的の逆転写及び増幅のための2段階の単一付加反応を指す。均質型とは、逆転写(reverse transcription:RT)工程に続いて、増幅工程の前に反応容器を開けるか、又は反応成分を調整する必要がないことを意味する。非均質型RT-PCR反応では、逆転写に続いて、増幅の前に、増幅試薬などの反応成分の1つ以上を、例えば、調整、添加、又は希釈し、反応容器を開けるか、又は少なくともその内容物を操作しなくてはならない。均質型の実施形態及び非均質型の実施形態の両方が、本発明の範囲によって構成される。
【0078】
逆転写はRT-PCRの基礎的な工程である。例えば、RNA鋳型が、プライマ結合及び/又はそれぞれの逆転写酵素によるcDNA鎖の伸長を妨げ得る二次構造の形成に向かう傾向を示すことは、当技術分野で知られている。したがって、RT反応のための比較的高い温度が、転写効率の点で有利である。一方で、高いインキュベーション温度はまた、より高い特異性、すなわち、予想される配列又は配列(複数)とのミスマッチを示す配列に対してRTプライマがアニーリングしないことを示す。特に、複数の異なる標的RNAの場合では、単一のミスマッチを伴う配列を転写し、続いて増幅して検出することもまた、例えば、流体試料中に生物の未知又は稀な亜系又は亜種が存在する可能性がある場合には、望ましいことがある。
【0079】
上述した両方の利点、すなわち二次構造の減少及びミスマッチ伴う鋳型の逆転写による利点を得るために、RTインキュベーションは、1つを超える異なる温度で実施することができる。
【0080】
したがって、本発明の一態様は、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼの該インキュベーションが、30℃~75℃、又は45℃~70℃まで、又は55℃~65℃の異なる温度で行われる、上述の方法である。
【0081】
逆転写の更なる重要な態様として、長いRT工程は、流体試料中に存在し得るDNA鋳型を損傷する場合がある。流体試料がRNA及びDNAの両方の種を含有する場合、したがってRT工程の持続時間を可能な限り短く保つことが好ましいが、同時に、その後の増幅及び任意の増幅物の検出のために充分な量のcDNAの合成を確実にすることが好ましい。
【0082】
したがって、本発明の一態様は、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼをインキュベートする期間が、最大30分、20分、15分、12.5分、10分、5分、又は1分である、上述の方法である。
【0083】
本発明の更なる態様は、逆転写酵素活性を有し、かつ変異からなるポリメラーゼが、以下からなる群から選択される、上述の方法である。
【0084】
a)CS5 DNAポリメラーゼ
b)CS6 DNAポリメラーゼ
c)Thermotoga maritimaDNAポリメラーゼ
d)Thermus aquaticusDNAポリメラーゼ
e)Thermus thermophilusDNAポリメラーゼ
f)Thermus flavusDNAポリメラーゼ
g)Thermus filiformisDNAポリメラーゼ
h)Thermus sp.sps17DNAポリメラーゼ
i)Thermus sp.Z05 DNAポリメラーゼ
j)Thermotoga neapolitanaDNAポリメラーゼ
k)Termosipho africanusDNAポリメラーゼ
l)Thermus caldophilusDNAポリメラーゼ
【0085】
特に、ポリメラーゼドメインに変異を担持する酵素がこれらの要件に適しており、その逆転写効率をより速い伸長率の点で向上させる。
【0086】
したがって、上記の方法では、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼは、それぞれの野生型ポリメラーゼと比較して改善された核酸伸長率及び/又は改善された逆転写酵素活性を付与する変異を含む、ポリメラーゼである。
【0087】
一実施形態では、上記の方法において、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼは、それぞれの野生型ポリメラーゼと比較して改善された逆転写酵素活性を付与する変異を含む、ポリメラーゼである。
【0088】
それらを特に有用にする点変異を担持するポリメラーゼは、国際公開第2008/046612号に開示されている。特に、使用するポリメラーゼは、ポリメラーゼドメインに少なくとも以下:
T-G-R-L-S-S-Xb7-Xb8-P-N-L-Q-Nのモチーフを有する変異型DNAポリメラーゼであってもよく;ここで、Xb7は、S又はTから選択されるアミノ酸であり、Xb8は、G、T、R、K、又はLから選択されるアミノ酸であり、ポリメラーゼは、3’~5’エキソヌクレアーゼ活性を含み、野生型DNAポリメラーゼと比較して核酸伸長率及び/又は逆転写効率が改善されており、該野生型DNAポリメラーゼにおいて、Xb8は、D、E、又はNから選択されるアミノ酸である。
【0089】
一例として、Thermus species Z05(例えば、米国特許第5,455,170号に記載)に由来する熱安定性DNAポリメラーゼの変異体が挙げられ、該変異体は、それぞれの野生型酵素Z05と比較して、ポリメラーゼドメインに変異を含む。本発明に係る方法に対する実施形態は、580位のアミノ酸が、G、T、R、K、及びLからなる群から選択される、変異体Z05 DNAポリメラーゼである。改善された逆転写効率を有する突然変異体Z05 DNAポリメラーゼの他の例としては、米国特許第9,090,883号に記載されたD580G、E522G突然変異体;米国特許第9,017,979号に記載されたD580G、I709K突然変異体;米国特許第8,759,063号に記載されたD580G、I709K、I640F突然変異体;米国特許第8,945,882号に記載されたD580G、I709K、I616M突然変異体;及び、米国特許第9,080,156号明細書に記載されたD580G、I709K、Y698F突然変異体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
熱安定性ポリメラーゼを用いた逆転写について、Mn2+又はMg2+などの二価カチオンは、例えば、塩化マンガンイオン(MnCl2)、酢酸マンガンイオン[Mn(OAc)2]、又は硫酸マンガンイオン(MnSO4)、又は塩化マグネシウイオンム(MgCl2)、酢酸マグネシウムイオン[Mg(OAc)2]、又は硫酸マグネシウムイオン(MgSO4)などのイオンとして、典型的に含まれる。MnCl2が50mMのトリシン緩衝液を含有する反応に含まれる場合、例えば、MnCl2は概して0.5~7.0mMの濃度で存在し、200μMの各dGTP、dATP、dUTP、及びdCTP、を利用する場合、概して2.5~3.5mMが存在する。
【0091】
「修飾された」熱安定性ポリメラーゼとは、少なくとも1つのモノマーが参照配列と異なるポリメラーゼ、例えば、ポリメラーゼの天然型若しくは野生型の形態、又はポリメラーゼの別の修飾された形態を指す。例示的な修飾として、モノマーの挿入、欠失、及び置換が挙げられる。修飾ポリメラーゼはまた、2つ以上の親に由来する識別可能な成分配列(例えば、構造ドメイン又は機能ドメインなど)を有する、キメラポリメラーゼを含む。また、修飾ポリメラーゼの定義には、参照配列の化学修飾からなる定義も含まれる。修飾された熱安定性ポリメラーゼの更なる例としては、G46E E678G CS5 DNAポリメラーゼ、G46E L329A E678G CS5 DNAポリメラーゼ、G46E L329A D640G S671F CS5 DNAポリメラーゼ、G46E L329A D640G S671F E678G CS5 DNAポリメラーゼ、G46E E678G CS6 DNAポリメラーゼ、Z05 DNAポリメラーゼ、ΔZ05ポリメラーゼ、ΔZ05-Goldポリメラーゼ、ΔZ05Rポリメラーゼ、E615G Taq DNAポリメラーゼ、E678G TMA-25ポリメラーゼ、及びE678G TMA-30ポリメラーゼなどが挙げられる。
【0092】
用語「熱活性ポリメラーゼ」とは、特異的なプライミング及びプライマ伸長を確実に行うために必要な高温(例えば、55~80℃)で活性化される酵素を指す。
【0093】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は、同義に使用される。用語「核酸」及び「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は、同義に使用される。アミノ酸配列は、特に明記されない限り、アミノ末端からカルボキシ末端まで記載する。一本鎖核酸配列は、特に明記されない限り、5’~3’と記載する。特に明記されない限り、二本鎖核酸配列の上鎖(top strand)は5’~3’と記載し、下鎖(bottom strand)は特に明記されない限り3’~5’と記載する。
【0094】
以下の実施例は、現在実施することが好ましい本発明の実施形態を例示するために示される。実施例は例示的なものであって、本発明は、添付の特許請求の範囲に示される場合を除いて、限定されたものとはみなされないことが理解されよう。
【実施例
【0095】
略語:dATP=2’-デオキシアデノシン5’-三リン酸、dCTP=2’-デオキシシチジン5’-三リン酸、DEPC=ジエチルピロカーボネート、dGTP=2’-デオキシグアノシン5’-三リン酸、DIPEA=N,N-ジイソプロピルエチルアミン、DMF=N,N’-ジメチルホルムアミド、DMSO=ジメチルスルホキシド、DMT-MM=4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチル-モルホリニウム塩、dUTP=2’-デオキシウリジン5’-三リン酸、eq.=等量、HEPBS=N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(4-ブタンスルホン酸)、HEPPS=4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸、LNA=ロックド核酸、MeCN=アセトニトリル、NHS=N-ヒドロキシスクシンイミド、NMP=1-メチル-2-ピロリジノン、qPCR=リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応、RT=室温、TEAA=酢酸トリエチルアンモニウム、TEAB=重炭酸トリエチルアンモニウム、Tris-HCl=トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、UPLC-MS=質量分析計に結合した超高性能液体クロマトグラフィ。
【0096】
一般的な材料及び方法:アミノ修飾剤ホスホロアミダイドを用いた固相DNA合成により、一次アミノ修飾を担持するDNAオリゴヌクレオチド及びDNA/LNAハイブリッドオリゴヌクレオチドを合成した。5’末端修飾には、6-(トリフルオロアセチルアミノ)-ヘキシル-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)-ホスホロアミダイドを使用した。内部修飾には、5’-ジメトキシトリチル-5-[N-(トリフルオロアセチルアミノヘキシル)-3-アクリイミド]-2’-デオキシウリジン、3’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイドを使用した。全てのDNA配列は3’-又は5’-BHQ-2(Black Hole Quencher(登録商標))を含有し、BHQ-2が5’末端にある場合、3’-リン酸塩を含有した。水は25℃で低効率が少なくとも18.2MΩ・cm以上の超高純度であった。定量的PCR(qPCR)のための全成分を、DEPCで処理した水で調製した。
【0097】
実施例1:蛍光色素によるDNA標識
DNA前処理:標準的な固相DNA合成から得られた未精製DNAオリゴヌクレオチド(クルード)を、標準的な方法で脱保護し、脱塩して、残留アミンの任意の痕跡を除去した。オリゴヌクレオチド(合成スケール1μmol)を凍結乾燥し、温浴で補助しながら水(100μL)に再溶解した。塩化リチウム(80μL、10M)の水溶液を加え、混合物を10分間激しく振盪した。氷冷エタノール(3.3mL)を加え、チューブを数回穏やかに反転させた。混合物を-20℃で20分間冷却し、予め冷却した遠心機で7℃にて30分間遠心分離した(2500rpm)。無色の上清を注意深くデカントし、廃棄した。残った固体を乾燥エタノールで洗浄し、高真空で乾燥し、水性緩衝液(1mL、50mM、pH8.0~9.0)に再溶解した。緩衝液は、ホウ酸塩、炭酸塩、HEPBS、HEPPS、又はTEABから選択した。DNAの分析量をUPLCで分析して、アミノ修飾標的配列の量を決定した。260nmにおける標的DNA配列の算出された吸光係数を用いて、分光光度計で全核酸濃度を決定した。
【0098】
予備活性化:蛍光色素Atto490LS(ATTO-TEC,Inc.、ジーゲン、ドイツ)、CF640R,CF680R,(Bio-Techne,Inc.、米国)、Chromeo(商標)494(ActiveMotif,Inc.、カリフォルニア州カールスバッド)、クマリン343(C343)、Dy380XL、Dy395XL、Dy396XL(Dyomics GmbH、イェーナ、ドイツ)、及びJA286(Roche Molecular Systems、カリフォルニア州プレザントン)をカルボン酸として得て、更なる操作なしに使用した。ガラスバイアル中で、蛍光色素(1.0等量のカルボン酸)を乾燥有機溶媒(20mM)中に溶解した。標識の溶解度に応じて、溶媒は、DMSO、NMP、DMF、又はこれらと水との50%混合物から選択した。1mg未満のカルボン酸を必要とする標識反応については、クロモフォアの吸光係数を用いた吸収分光法によって濃度を調整した。DIPEA(1.2等量)又は別の弱い非求核性塩基を加え、溶液を手短に混合した。別々の反応バイアルにおいて、DMT-MM(2.0等量)のテトラフルオロホウ酸塩を秤量し、カルボン酸溶液を加え、続いて全ての固体が溶解するまで激しく混合した。予備活性化はThermoshaker上において室温で15分間行った。
【0099】
標識反応:予備活性化溶液(75μL、3.0等量)を、DNA溶液(100μL、1.0等量、一級アミン)と迅速に混合し、Thermoshaker上において室温で標識反応を行った。反応の進行をUPLC分析によってモニターし、反応混合物(1μL)の試料を、UPLC注入(7μL)前に水(19μL)で希釈した。反応が完了したことをUPLC分析が示した場合、溶液を、TEAA緩衝液(100mM、pH7.0)又はTris-HCl緩衝液(50mM、pH7.5)で十倍に希釈し、精製まで凍結保存した。UPLC分析の結果を図2図5に示す。
【0100】
精製:標識DNAを、Tris-HCl(50mM、pH7.5)又はTEAA(0.1mM、pH7.0)及びMeCNを用いた逆相液体クロマトグラフィで精製した。結果を図6に示す。合わせた生成物画分を遠心真空濃縮器で濃縮し、サイズ排除クロマトグラフィによって脱塩した。精製したDNAプローブ(0.1mM)を凍結乾燥し、qPCRのためにTE緩衝液(10mM Tris-HCl、1mM EDTA)中に再溶解した。
【0101】
実施例2:DNAプローブのqPCR性能
DNAプローブの品質及び機能性は、DMT-MM試薬を用いて調製されたプローブと、従来のNHSエステル化学を用いて調製されたプローブとのqPCR性能を直接比較することにより検討した。qPCRはRoche cobas(登録商標)LIAT(登録商標)システムで行った。標的DNA配列はTrichomonas vaginalis及びMycoplasma genitalium病原菌に基づいた。
【0102】
以下のqPCR混合物を多倍量で調製して、複数の複製物とのシングルプレックス反応を可能にした。マスタ混合物は、トリシン緩衝液(30mM、pH8.7)、酢酸カリウム(40mM)、DMSO[1.08%(v/v)]、EDTA(20μM)、Tween(登録商標)20[0.02%(w/v)]、アジ化ナトリウム[0.09%(w/v)]、dATP(0.4mM)、dCTP(0.4mM)、dGTP(0.4mM)、及びdUTP(0.4mM)、順方向及び逆方向プライマ(各1μM)、並びにDNAプローブ(0.1μM)を含有した。補因子混合物は硫酸マグネシウム(1M)及びアジ化ナトリウム[10%(w/v)]を含有した。酵素混合物は、トリシン緩衝液(0.28M、pH8.75)、酢酸カリウム(0.28M)、アジ化ナトリウム[0.09%(w/v)]、EDTA(155μM)、DMSO[7.56%(v/v)]、グリセロール[7.015%(v/v)]、アプタマNTQ-46A(2.8μM)、ポリメラーゼ(5.4U/μL)、及びウラシル-DNAグリコシラーゼ(1.3U/μL)を含有した。溶出緩衝液は、Tris-HCl、ウシ血清アルブミン[1.25mg/mL(w/v)]、及びアジ化ナトリウム[0.09%(w/v)]を含有した。
【0103】
cobas(登録商標)LIAT(登録商標)試料チューブを、マスタ混合物(10μL、セグメント10)、補因子混合物(10μL、セグメント9)、酵素混合物(10μL、セグメント8)、及びqPCR標的を含有する溶出緩衝液(40μL、セグメント7)で満たした。標的DNAをセグメント7に加えた。qPCRは、(95℃、3秒)での変性、(61℃、1秒)でのアニーリング、及び(62℃、3秒)での伸長の5サイクルで行った。(93℃、2秒)での変性、(61℃、1秒)でのアニーリング、及び(62℃、3秒)での伸長による連続サイクルを行った。各DNAプローブについて、5つの複製物を、5つのcobas(登録商標)LIAT(登録商標)システム単位で実行した。
【0104】
結果:図7及び図8に見られるように、DMT-MMでのインサイチュ活性化によって標識されたDNAプローブは、より高いベースライン蛍光強度及び改善されたKexp係数を示し、より堅牢なqPCRを示した。結論として、DMT-MMによるインサイチュ活性化により調製したDNAプローブは、同等又はより良い性能を示した。
【0105】
実施例3:蛍光色素によるDNAの大規模標識
DNAオリゴヌクレオチド出発物質は、15μmolスケールの標準固相合成から得られ、精製することなく標識反応に使用された。
【0106】
DNA前処理:粗DNAオリゴヌクレオチド脱塩し、凍結乾燥し、温浴で補助しながら水(1mL)に再溶解した。乾燥ヨウ化ナトリウムを10Mの最終濃度まで添加し、塩が完全に溶解することを確認した。混合物をエタノール(200プルーフ、30mL)で希釈し、手短にボルテックス処理し、次いで室温(RT)で15分間保持した。形成された沈殿物を遠心分離(4000rpm、5分)によって室温で単離した。上清をデカントした後、固体沈殿物をエタノール(2×10mL)で充分に洗浄し、続いて高真空で乾燥した。標識反応のために、DNAオリゴヌクレオチドをTEAB緩衝液(0.1M、pH8.5)中に再溶解し、分析量をUPLCで分析して、アミノ修飾標的配列の量を決定した。260nmにおける標的配列の算出された吸光係数を用いて、分光光度計で全核酸濃度を決定した。
【0107】
予備活性化:蛍光色素(1.0等量のカルボン酸)を乾燥DMSO(6mM)中に溶解した。DIPEA(1.1等量)を加え、溶液を手短に混合した。ガラスバイアル中において、DMT-MMテトラフルオロホウ酸塩(2.0等量)を秤量し、直ちにカルボン酸溶液に加え、その後全ての固体が溶解するまで混合した。予備活性化はThermoshaker上において室温で15分間行った。
【0108】
標識反応:予備活性化溶液(3.0等量のカルボン酸)を、円錐型反応バイアル中のDNA出発物質(1.0等量の一級アミン)の撹拌溶液へ迅速に添加した。粗DNAの純度に依存して、有機溶媒の濃度は40%であり、標的配列の最終DNA濃度は1.5~1.7mMの間であった。標識反応を室温で20分間撹拌し続け、UPLCにより分析し、その後の精製のためにTEAA緩衝液(100mM、pH7.0)で十倍に希釈した。
【0109】
精製:標識DNAを、TEAA(0.1mM、pH7.0)及びMeCNを用いた逆相液体クロマトグラフィで精製した。合わせた生成物画分を固相抽出(C18)によって脱塩し、凍結乾燥し、qPCRのためにTE緩衝液(10mM Tris-HCl、1mM EDTA)中に再溶解した。
【0110】
結果:それぞれ異なる蛍光色素の合成バッチ(Dy396XL)を用いた2つの代表的な大規模標識反応の標識効率をUPLCで測定し、図9A及び図9Bに示す。精製生成物の純度及び完全性をUPLC-MSで決定した。6つの大規模標識反応から得られたDNAプローブの最終純度分析と、それらの測定された分子量とを、図10A及び図10Bに示す。標識されたDNAプローブの機能分析を実施例2に記載のように実施した。これを図11に示す。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11