(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】JAK3選択的阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 403/04 20060101AFI20240227BHJP
C07D 403/14 20060101ALI20240227BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240227BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C07D403/04 CSP
C07D403/14
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61K31/404
(21)【出願番号】P 2020566808
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 CN2019089213
(87)【国際公開番号】W WO2019228442
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】201810535993.0
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514104645
【氏名又は名称】北京大学深▲ヂェン▼研究生院
【氏名又は名称原語表記】PEKING UNIVERSITY SHENZHEN GRADUATE SCHOOL
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】パン,ゼンイン
(72)【発明者】
【氏名】シ,リヤン
(72)【発明者】
【氏名】リ,シタオ
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-513168(JP,A)
【文献】特表2005-527563(JP,A)
【文献】特表2007-518730(JP,A)
【文献】J. Med. Chem.,2011年,54,284-288
【文献】SCIENTIFIC REPORTS,8:5273,2018年,1-11
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2017年,27(20),4622-4625
【文献】Organic & Biomolecular Chemistry,2018年,16,4127-4140
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 403/04
A61P 29/00
A61P 19/02
A61K 31/404
C07D 403/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩:
【化1】
(式中、
Rhは、Hまたはメチルであり、
Rgは、CH、-C-Rf、またはNであり、
Rfは、メチルまたはハロゲンであり、
mは、0、1、2、または3であり、
Reは、第三級アミンカチオン(-N+R’
3(式中、R’はHおよびC
1~C
6アルキルから独立して選択される))、ニトロ(-NO
2)、トリハロメチル(-CX
3、X=F、Cl、Br、またはI)、ハロゲン、ホルミル(-CHO)、アシル(-CO-C
1~4アルキル)、カルボキシル(-COOH)、シアノ(-CN)、およびスルホン酸基(-SO
3H)からなる群から選択される電子求引基であり、
Rdは、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有する、アルケニルまたはアルキニルであり、
Ra、Rb、およびRcは、以下の組合せ:
(1)Rbは、C
1~C
4アルキレンであり、かつ
RaおよびRcは、水素またはC
1~C
6アルキルである;
(2)Rbは、C
1~C
4アルキレンであり、かつ
RaおよびRcは、共に結合して、C
2~C
4アルキレンを形成する;
(3)Raは、水素またはC
1~C
6アルキルであり、かつ
RbおよびRcは、それらが結合しているN原子と共に、N原子を含有する5または6員の飽和複素環を形成する;
(4)Rcは、水素またはC
1~C
6アルキルであり、かつ
RaおよびRbは、それらが結合しているN原子と共に、N原子を含有する5または6員の飽和複素環を形成するから選択される)。
【請求項2】
-N(Ra)-Rb-N(Rc)-が、
【化2】
を形成する、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【化3】
【請求項3】
RhがHであり、RgがCHであり、mが0である、請求項1もしくは2に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
Reが-NO
2である、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項5】
Rdがビニルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
式IIの化合物または薬学的に許容されるその塩:
【化4】
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の式Iの化合物もしくは薬学的に許容されるその塩または請求項6に記載の式IIの化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項8】
関節リウマチなどの炎症を治療するための医薬の製造における、請求項1から5のいずれか一項に記載の式Iの化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、または請求項6に記載の式IIの化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、または請求項
7に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、JAK3選択的阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
JAKキナーゼ(JAK)ならびにその下流エフェクターであるシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)は、T細胞のシグナル伝達にとって不可欠である。JAKファミリーは、4つのメンバー、JAK1、JAK2、JAK3、およびTYK2を有し、これらは、対になってサイトカイン受容体に結合し、サイトカイン媒介シグナル経路の制御に関与する。JAK1と対になったJAK3は、γ-共通鎖を含有するサイトカイン受容体に結合し、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、IL-21などのインターロイキンのシグナル伝達に関与する。広範に発現される他のJAKと対照的に、JAK3は造血系でのみ発現される。したがって、JAK3の選択的阻害によって、安全で有効な免疫効果が得られると一般的に考えられていた。
【0003】
トファシチニブは、Pfizerによって開発された承認薬であり、当初は選択的JAK3阻害剤として開発されたが、後にトファシチニブがJAK1に対する高い阻害活性も有し、実際は非選択的JAK阻害剤であることが見出された。
【0004】
【0005】
Novartisによって開発された高選択的JAK3阻害剤であるNIBR3049は、酵素活性のレベルにおいてトファシチニブと同様の阻害活性を有するが、下流基質であるSTAT5のリン酸化に対する細胞内阻害活性の面ではトファシチニブより著しく弱い活性であった。
【0006】
【0007】
近年の間に、Pfizerによって開発され、現時点で第II相臨床研究下にあるPF-06651600を含む、高選択的JAK3阻害剤は、JAK3独自のシステイン残基であるCys909を共有結合的に標的とすることによって得られた。
【0008】
【0009】
高い酵素活性および細胞活性を有するJAK3選択的阻害剤は、依然として当該分野において早急に必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的の1つは、生物学的活性を有するJAK3選択的阻害剤を提供することである。
【0011】
一態様において、本発明は、式I
【0012】
【化4】
(式中、
Rhは、Hまたはメチル、好ましくはHであり、
Rgは、CH、-C-Rf、またはN、好ましくはCHであり、
Rfは、好ましくはメチルまたはハロゲン(F、Cl、Br、またはIなど)から選択される置換基であり、
mは、0、1、2、または3、好ましくは0または1、より好ましくは0であり、
Reは、第三級アミンカチオン(-N
+R’
3(式中、R’はHおよびC
1~C
6アルキルから独立して選択される))、ニトロ(-NO
2)、トリハロメチル(-CX
3、X=F、Cl、Br、またはI)、ハロゲン(F、Cl、Br、およびIなど)、ホルミル(-CHO)、アシル(-CO-C
1~4アルキル)、カルボキシル(-COOH)、シアノ(-CN)、スルホン酸基(-SO
3H)からなる群から選択される電子求引基であり、
Rdは、例えば、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有する、アルケニルまたはアルキニルであり、
Ra、Rb、およびRcは、以下の組合せ:
(1)Rbは、C
1~C
4アルキレン(例えば、メチレン、エチリデン、1,3-プロピリデンなどのC
1~C
3アルキレン)であり、かつ
RaおよびRcは、水素またはC
1~C
6アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチルなどのC
1~C
4アルキル)である;
(2)Rbは、C
1~C
4アルキレン(例えば、メチレン、エチリデン、1,3-プロピリデンなどのC
1~C
3アルキレン)であり、かつ
RaおよびRcは、共に結合して、C
2~C
4アルキレン(例えば、エチリデン、1,3-プロピリデンなどのC
2~C
3アルキレン)を形成する;
(3)Raは、水素またはC
1~C
6アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチルなどのC
1~C
4アルキル)であり、かつ
RbおよびRcは、それらが結合しているN原子と共に、N原子を含有する5または6員の飽和複素環を形成する;
(4)Rcは、水素またはC
1~C
6アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチルなどのC
1~C
4アルキル)であり、かつ
RaおよびRbは、それらが結合しているN原子と共に、N原子を含有する5または6員の飽和複素環を形成する
から選択される)
の化合物(その安定同位体置換体を含む)または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0013】
一態様において、本発明は、式II:
【0014】
【化5】
の化合物(その安定同位体置換体を含む)または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0015】
一態様において、本発明は、式Iの化合物(その安定同位体置換体を含む)もしくは薬学的に許容されるその塩、または式IIの化合物(その安定同位体置換体を含む)もしくは薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。薬学的に許容される担体には、不活性な固体充填剤または賦形剤および滅菌の水溶液または有機溶液が含まれる。化合物は、望ましい投与量を提供するために十分な量で、医薬組成物中に存在するべきである。本発明で開示される化合物の製剤化および投与の技術は、当業者に周知であり、例えば、Remington:the Science and Practice of Pharmacy、第19版、Mack Publishing Company、Easton、PA(1995)の中で見つけることができる。
【0016】
一態様において、本発明は、関節リウマチなどの炎症を治療するための医薬の製造における、式Iの化合物(その安定同位体置換体を含む)もしくは薬学的に許容されるその塩、式IIの化合物(その安定同位体置換体を含む)もしくは薬学的に許容されるその塩、または本発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0017】
一態様において、本発明は、式Iまたは式IIの化合物(その安定同位体置換体を含む)を、JAK3選択的阻害剤として提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】キナーゼのパネルに対する化合物の選択性アッセイの結果を示す図である。
【
図2】化合物の細胞活性アッセイの結果を示す図である。
【
図3】化合物の細胞活性アッセイの結果を示す図である。
【
図4】化合物の細胞活性アッセイの結果を示す図である。
【
図5】化合物の細胞活性アッセイの結果を示す図である。
【
図6】細胞における化合物の選択性アッセイの結果を示す図である。
【
図7】細胞における化合物の選択性アッセイの結果を示す図である。
【
図8】細胞における化合物の選択性アッセイの結果を示す図である。
【
図9】細胞ウォッシュアウト実験における化合物の評価結果を示す図である。
【
図10】刺激された炎症性サイトカインの放出を阻害することにおける化合物のアッセイの結果を示す図である。
【
図11】刺激された炎症性サイトカインの放出を阻害することにおける化合物のアッセイの結果を示す図である。
【
図12】刺激された炎症性サイトカインの放出を阻害することにおける化合物のアッセイの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
略記の定義:
Ala:アラニン
ATP:アデノシン三リン酸
AUC:曲線下面積
Boc:tert-ブトキシカルボニル
BTK:ブルトン型チロシンキナーゼ
CDI:1,1’-カルボニルジイミダゾール
Cys:システイン
DCM:ジクロロメタン
DIEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF:ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
EGFR:上皮成長因子受容体
GSK3β:グリコーゲン合成酵素キナーゼ3-β
HTRF:均一時間分解蛍光
IL-2:インターロイキン-2
IL-6:インターロイキン-6
IL-15:インターロイキン-15
IFN-α:インターフェロン-α
ITK:インターロイキン-2誘導性T細胞キナーゼ
JAK:ヤヌスキナーゼ
JAK3:ヤヌスキナーゼ3
Leu:ロイシン
LPS:リポ多糖
Lys:リジン
MCP-1:単球走化性タンパク質1
Met:メチオニン
PBMC:末梢血単核細胞
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
PE:石油エーテル
PK:薬物動態
PKC:プロテインキナーゼC
RA:関節リウマチ
RT(またはrt):室温
STAT:シグナル伝達兼転写活性化因子
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
Val:バリン
HATU:1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
Pd2(dba)3:トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
JohnPhos:2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)ビフェニル
RuPhos:2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニル。
【0020】
以下の通りのスキームI、II、III、またはIVに従って、前記化合物を調製した。
【0021】
【0022】
式中、
R
1は、CF
3およびNO
2から選択され、
R
2は、
【化7】
から選択され、
R
3は、
【化8】
から選択される。
【0023】
反応試薬および主な条件:
(a)i)CDI、DMF、rt、約0.5時間、
ii)MeOH中のNH3(7N)、rt、約1時間、
(b)tBuOK、THF、0℃~10℃、約45分間、
(c)Boc保護ピペラジンまたはアミン、DMSO、150℃、一晩、
(d)i)TFA/DCM、rt、約15分間、
ii)塩化アクリロイル/DIEA、THF、H2O、0℃~rt、約10分間、またはカルボン酸、HATU、DIEA、DMF。
【0024】
【化9】
反応試薬および主な条件:
(a)エチル2-クロロ-2-オキソアセテート、Et
2AlCl、DCM、約2時間、0℃、
(b)i)CDI、DMF、rt、約0.5時間、
ii)MeOH中のNH
3(7N)、rt、約1時間、
(c)
tBuOK、THF、0℃~10℃、約45分間、
(d)Boc保護ピペラジン、DMSO、150℃、一晩、
(e)i)TFA/DCM、rt、約15分間、
ii)塩化アクリロイル/DIEA、THF、H
2O、0℃~rt、約10分間。
【0025】
【化10】
反応試薬および主な条件:
(a)JohnPhosまたはRuPhos試薬、Boc保護ピペラジン、Pd
2(dba)
3、NaO
tBu、PhMeまたはDMF、マイクロ波、110℃、1時間、
(b)i)CDI、DMF、rt、約0.5時間、
ii)MeOH中のNH
3(7N)、rt、約1時間、
(c)
tBuOK、THF、0℃~10℃、約45分間(60~70%)、
(d)TFA/DCM、rt、約15分間、
(e)塩化アクリロイル/DIEA、THF、H
2O、0℃~rt、約10分間。
【0026】
【化11】
反応試薬および主な条件:
(a)インドール、Et
2O中のEtMgBr、THF、還流、約1時間、
(b)Boc保護アミン、DIEA、DMSO、100℃、
(c)(i)TFA/DCM、rt、約15分間、
(ii)塩化アクリロイル/DIEA、THF、H
2O、0℃~rt、約10分間。
【0027】
【0028】
化合物の合成過程は、上記のスキームI~IVを参照することおよび化合物5、20、28、32、34を例とすることによって、以下に詳細に説明される。他の化合物は、当業者に容易に理解され得る上記のスキームI~IVを参照にして、同様の方法で調製され得る。
【0029】
全ての試薬は、市販で購入され、特に明記しない限り、さらに精製することなく使用された。使用前に、溶媒を再蒸発させた。シリカゲル薄層プレート(TLC、GF254、60-F250、0.2mm、Yantai Jiangyouシリカゲル薄層クロマトグラフィー)で、反応をモニターした。Pukeシリカゲル(ZCX-II、200~300メッシュ)を使用して、フラッシュカラムクロマトグラフィーを実施した。NMRスペクトルを、Bruker ADVANCE400(1H:400MHz;13C:100MHz)またはBruker ADVANCE500(1H:500MHz;13C:125MHz)核磁気共鳴機器で記録した。TMSを内部標準として使用し、ピークの形状をs(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、およびm(マルチプレット)として記載した。ABI Q-star Elite高分解能質量分析計を使用して、高分解能質量分析(HRMS)を実施した;最終生成物の純度を、高速液体(HPLC)Agilent1260シリーズクロマトグラフ(Agilent PN959990-902Eclipse Plus C18(250mm*4.6mm)クロマトグラフィーカラム)によって検出し、この検出は254nmで行われた。
【0030】
化合物5の調製
3-(5-(4-アクリロイルピペラジン-1-イル)-2-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-(1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(化合物5)の合成
ステップ1:2-(5-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド(化合物38a)
バッチで、CDI(1.0g、4.5mmol)を(5-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェニル)酢酸のDMF(4mL)溶液に加えた。室温(rt)で0.5時間撹拌後、NH3(3.6mL、メタノール溶液中7N)を滴下して加え、さらにrtで1時間撹拌させた。この溶媒を蒸発させ、水および酢酸エチル(2×120mL)を用いて生成物を抽出した。この有機相を飽和塩水(2×40mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、白色の固体(0.73g)を収率73%で得た。
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.75 (dd, J = 8.7, 5.6 Hz, 1H), 7.52 (s, 1H), 7.32 (m, 2H), 7.03 (s, 1H), 3.66 (s, 2H); MS (ESI) m/z 222.0 (M+H)+.
【0031】
ステップ2:3-(5-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-(1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(化合物40a)
0℃で、tBuOK(5.5mL、THF中1M)を化合物38a(0.30g、1.3mmol)および化合物39(0.41g、2.0mmol)の無水THF(8.0mL)溶液に加えた。この溶液を10℃で45分間撹拌した。反応の完了後(TLCで検出)、HCl(5N)を加えてpHを6に調整し、溶媒を除去し、混合物を酢酸エチル(2×120mL)で抽出し、この有機相を飽和塩水(2×40mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、黄色の固体(0.35g)を収率66%で得た。
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.99 (s, 1H), 11.23 (s, 1H), 8.02 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 7.97 (dd, J = 8.9, 5.4 Hz, 1H), 7.60-7.52 (m, 1H), 7.49-7.38 (m, 2H), 7.07 (ddd, J = 8.1, 7.0, 1.1 Hz, 1H), 6.75 (ddd, J = 8.2, 7.1, 1.1 Hz, 1H), 6.46 (d, J = 8.3 Hz, 1H).
13CNMR (101 MHz, DMSO) δ 172.48, 172.01, 165.30, 162.80, 137.08, 136.25, 132.67, 126.18, 125.48, 125.25, 122.91, 120.95, 120.56, 120.19, 119.96, 117.31, 117.09, 112.94, 105.14.
MS (ESI) m/z 375.1 (M+H)+.
【0032】
ステップ3:tert-ブチル4-(3-(4-(1H-インドール-3-イル)-2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-イル)-4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペラジン-1-カルボキシレート(化合物41a)
1-Boc-ピペラジン(0.44g、2.4mmol)を化合物40a(0.3g、0.55mmol)のDMSO(2.0mL)溶液に加え、混合物を150℃で一晩還流した。反応の完了後(TLCで検出)、混合物をrtに冷却させ、酢酸エチル(2×120mL)で抽出し、この有機相を飽和塩水(2×40mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、黄色の固体(0.35g)を収率66%で得た。
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.88 (s, 1H), 11.10 (s, 1H), 7.95 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 7.64 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.18-7.10 (m, 1H), 7.09-6.99 (m, 1H), 6.92 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 6.72 (dd, J = 8.2, 7.0 Hz, 1H), 6.61 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 3.34-3.22 (m, 5H), 3.24-3.09 (m, 4H), 1.38 (s, 9H).
13CNMR (101 MHz, DMSO) δ 172.85, 172.40, 154.34, 152.82, 136.97, 135.64, 132.09, 131.86, 131.85, 128.70, 128.42, 126.50, 126.50, 125.39, 125.38, 122.69, 121.37, 120.70, 117.97, 114.87, 112.64, 105.55, 79.57, 49.00, 47.32, 30.63, 29.52, 28.55.
MS (ESI) m/z 541.2 (M+H)+.
【0033】
ステップ4:3-(5-(4-アクリロイルピペラジン-1-イル)-2-(トリフルオロメチル)-フェニル)-4-(1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(化合物5)
トリフルオロ酢酸(TFA)(2.0mL)を化合物41a(0.10g、0.18mmol)のDCM(2.0mL)溶液に加え、混合物をrtで15分間撹拌した。反応の完了後(TLCで検出)、TFAおよびDCMを蒸発させ、残留物を乾燥させ、さらに精製することなく次のステップで使用した。この残留物をTHF(2.0mL)および水(1滴)の混合物に溶解し、次にDIEA(0.10mL、0.36mmol)および塩化アクリロイル(24μL、0.27mmol)を加えた。氷浴を外して、得られた溶液をrtで10分間撹拌した。反応の完了後(TLCで検出)、混合物を酢酸エチル(2×120mL)で抽出し、この有機相を飽和塩水(2×40mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、黄色の固体(73mg)を収率82%で得た。
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.88 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 11.11 (s, 1H), 7.96 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 7.65 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.18-7.10 (m, 1H), 7.08-7.00 (m, 1H), 6.96 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.76 (m, 2H), 6.65 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.11 (dd, J = 16.6, 2.4 Hz, 1H), 5.68 (dd, J = 10.4, 2.4 Hz, 1H), 3.66-3.46 (m, 4H), 3.23 (m, 4H).
13CNMR (101 MHz, DMSO) δ 172.64, 172.20, 164.62, 152.49, 136.73, 135.43, 131.85, 131.65, 128.49, 128.34, 127.86, 126.28, 125.18, 123.57, 122.50, 121.15, 120.51, 117.67, 114.54, 112.42, 105.35, 47.58, 47.01, 44.37, 40.90.
HRMS(ESI)m/z、C26H21F3N4O3[M+H]+の計算値:495.1566;実測値、495.1578。
【0034】
化合物20の調製
3-(5-(4-アクリロイルピペラジン-1-イル)-2-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(化合物20)の合成
ステップ1:エチル2-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-2-オキソアセテート(化合物43a)
氷浴下で、化合物42a(0.50g、3.7mmol)のDCM(40mL)溶液に、Et2AlCl(ヘキサン中1M)5.6mLを加えた。混合物を0℃で30分間撹拌した。この溶液に、0℃で、エチルオキサリルモノクロリド(0.61mL、5.5mmol)を滴下して加えた。得られた溶液を0℃で2時間撹拌し、次に、反応が完了した後(TLCで検出)、氷水を加えて反応をクエンチした。この溶媒を蒸発させ、水および酢酸エチル(3×50mL)を用いて生成物を抽出した。この有機相を飽和塩水(2×30mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、灰白色の固体(0.38g)を収率50%で得た。
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.41 (s, 1H), 8.44 (s, 1H), 8.14 (dd, J = 8.7, 5.5 Hz, 1H), 7.35 (dd, J = 9.5, 2.4 Hz, 1H), 7.13 (ddd, J = 9.8, 8.7, 2.4 Hz, 1H), 4.35 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 1.33 (t, J = 7.1 Hz, 3H).
MS (ESI) m/z 236.1 (M+H)+.
【0035】
ステップ2:3-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-4-(5-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(化合物44a)
0℃で、tBuOK(4.0mL、THF中1M)を化合物38a(0.19g、0.85mmol)および化合物43a(0.30g、1.3mmol)の無水THF(4.0mL)溶液に加えた。この溶液を10℃で1時間撹拌した。反応の完了後(TLCで検出)、HCl(5N)を加えてpHを6に調整し、溶媒を除去し、混合物を酢酸エチル(3×50mL)で抽出し、この有機相を飽和塩水(2×20mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、黄色の固体(0.25g)を収率75%で得た。
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.06 (s, 1H), 11.26 (s, 1H), 8.03 (d, J = 3.1 Hz, 1H), 8.00 (dd, J = 8.9, 5.4 Hz, 1H), 7.60 (m, 1H), 7.49 (dd, J = 9.2, 2.7 Hz, 1H), 7.42 (dd, J = 8.9, 4.8 Hz, 1H), 6.94 (m, 1H), 6.14 (dd, J = 11.1, 2.5 Hz, 1H).
MS (ESI) m/z 393.0 (M+H)+.
【0036】
ステップ3:tert-ブチル4-(3-(4-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-イル)-4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペラジン-1-カルボキシレート(化合物45a)
1-Boc-ピペラジン(0.44g、2.4mmol)を、化合物44a(0.3g、0.55mmol)のDMSO(2.0mL)溶液に加え、混合物を150℃で一晩還流した。反応の完了後(TLCで検出)、混合物をrtに冷却させ、酢酸エチル(2×120mL)で抽出し、この有機相を飽和塩水(2×40mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、黄色の固体(0.35g)を収率30%で得た。
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.87 (s, 1H), 11.13 (s, 1H), 7.89 (s, 1H), 7.64 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.17 (dd, J = 9.5, 2.3 Hz, 1H), 7.13 (dd, J = 8.8, 2.6 Hz, 1H), 6.94 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 6.70-6.57 (m, 2H), 3.33-3.25 (m, 4H), 3.22 (m, 4H), 1.39 (s, 9H).
MS (ESI) m/z 559.2 (M+H)+.
【0037】
ステップ4:3-(5-(4-アクリロイルピペラジン-1-イル)-2-(トリフルオロメチル)-フェニル)-4-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(化合物20)
トリフルオロ酢酸(TFA)(2.0mL)を化合物45a(0.10g、0.18mmol)のDCM(2.0mL)溶液に加え、混合物をrtで15分間撹拌した。反応の完了後(TLCで検出)、TFAおよびDCMを蒸発させ、残留物を乾燥させ、さらに精製することなく次のステップで使用した。この残留物をTHF(2.0mL)および水(1滴)の混合物に溶解し、次にDIEA(0.10mL、0.36mmol)および塩化アクリロイル(24μL、0.27mmol)を加えた。氷浴を外して、得られた溶液をrtで10分間撹拌した。反応の完了後(TLCで検出)、混合物を酢酸エチル(2×120mL)で抽出し、この有機相を飽和塩水(2×40mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、黄色の固体(73mg)を収率80%で得た。
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.86 (s, 1H), 11.12 (s, 1H), 7.87 (s, 1H), 7.64 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.21-7.08 (m, 2H), 6.97 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 6.78 (m, 1H), 6.69 (m, 1H), 6.62 (m, 1H), 6.11 (dd, J = 16.7, 2.3 Hz, 1H), 5.68 (dd, J = 10.4, 2.3 Hz, 1H), 3.55 (m, 4H), 3.24 (m, 4H).
13CNMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 172.70, 172.30, 164.88, 158.20, 152.82, 137.14, 137.02, 135.41, 132.57, 129.48, 128.63, 128.05, 122.60, 122.51, 122.17, 117.72, 114.79, 109.16, 108.92, 105.65, 98.84, 98.59, 47.75, 47.16, 44.65, 41.14.
HRMS(ESI)m/z、C26H20F4N4O3[M+H]+の計算値:513.1472;実測値、513.1479。純度:99.2%。
【0038】
化合物28の調製
3-(5-(4-アクリロイルピペラジン-1-イル)-2-メトキシフェニル)-4-(1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(化合物28)の合成
ステップ1:2-(5-(4-(tert-ブトキシカルボニル)ピペラジン-1-イル)-2-メトキシフェニル)酢酸(化合物47d)
化合物46d(0.52g、2.0mmol)、1-Boc-ピペラジン(0.49g、2.6mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(0.59g、2.6mmol)、2-(ditert-ブチルホスフィノ)ビフェニル(JohnPhos、0.16g、0.41mmol)、およびPd2(dba)3(0.19g、0.20mmol)をマイクロ波バイアル中の無水PhMe(15mL)に加え、アルゴンガスでパージして酸素を除去した。このバイアルのキャップを閉め、110℃に1時間加熱した。rtに冷却させ、反応が完了した後(TLCで検出)、混合物を珪藻土で濾過し、濾液のpHを5に調整し、酢酸エチルを用いて抽出した(3×100mL)。この有機相を飽和塩水(2×40mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、白色の固体(0.35g)を収率49%で得た。
1HNMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 6.87-6.84 (m, 1H), 6.84 (s, 1H), 6.82 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 3.68 (s, 3H), 3.45 (s, 2H), 3.45-3.41 (m, 4H), 2.95-2.93 (m, 4H), 1.42 (s, 9H).
13CNMR (126 MHz, DMSO) δ 173.04, 154.32, 152.01, 145.32, 124.49, 121.12, 116.45, 111.74, 79.40, 56.13, 50.34, 36.23, 28.53.
MS/ESI 351.2 (M+1)+.
【0039】
ステップ2:tert-ブチル4-(3-(2-アミノ-2-オキソエチル)-4-メトキシフェニル)ピペラジン-1-カルボキシレート(化合物48d)
バッチで、CDI(0.29g、1.29mmol)を、化合物47d(0.30g、0.86mmol)のDMF(4.0mL)溶液に加えた。rtで0.5時間撹拌後、NH3(0.6mL、メタノール溶液中7N)を加え、さらにrtで1時間撹拌させた。この溶媒を蒸発させ、水および酢酸エチル(2×120mL)を用いて生成物を抽出した。この有機相を飽和塩水(2×40mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、白色の固体(0.73g)を収率73%で得た。
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.75 (dd, J = 8.7, 5.6 Hz, 1H), 7.52 (s, 1H), 7.32 (m, 2H), 7.03 (s, 1H), 3.66 (s, 2H);
MS (ESI) m/z 222.0 (M+H)+.
【0040】
ステップ3:tert-ブチル4-(3-(4-(1H-インドール-3-イル)-2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-イル)-4-メトキシフェニル)ピペラジン-1-カルボキシレート(化合物49d)
0℃で、tBuOK(2.2mL、THF中1M)を化合物48d(0.2g、0.57mmol)および化合物38a(0.17g、0.85mmol)の無水THF(4.0mL)溶液にゆっくりと加えた。この溶液を10℃で1時間撹拌した。反応の完了後(TLCで検出)、HCl(5N)を加えてpHを5に調整し、溶媒を除去し、混合物を酢酸エチル(3×40mL)で抽出し、この有機相を飽和塩水(2×20mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮して中間化合物49dを得た。
MS (ESI) m/z 503.2 (M+H)+.
【0041】
ステップ4:3-(1H-インドール-3-イル)-4-(2-メトキシ-5-(ピペラジン-1-イル)フェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(化合物50d)
トリフルオロ酢酸(TFA)(2.0mL)を化合物49d(0.12g、0.24mmol)のDCM(2.0mL)溶液に加え、混合物をrtで15分間撹拌した。反応の完了後(TLCで検出)、TFAおよびDCMを蒸発させ、混合物を水および酢酸エチル(2×60mL)で抽出し、この有機相を飽和塩水(2×30mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、黄色の固体(0.15g)を収率52%で得た。
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.80 (s, 1H), 7.91 (s, 1H), 7.37 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.02 (ddd, J = 8.2, 7.0, 1.1 Hz, 1H), 6.95 (dd, J = 9.0, 3.0 Hz, 1H), 6.88 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 6.78 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 6.65 (ddd, J = 8.2, 7.0, 1.1 Hz, 1H), 6.51-6.41 (m, 1H), 3.26 (s, 3H), 2.89-2.81 (m, 4H), 2.80-2.78 (m, 4H).
13CNMR (101 MHz, DMSO) δ 173.08, 172.67, 152.06, 145.93, 136.87, 134.69, 130.87, 128.29, 125.38, 122.39, 121.29, 121.12, 120.23, 119.96, 118.58, 113.08, 112.38, 106.29, 55.97, 50.91, 45.78.
MS/ESI 503.2 (M+1)+.
【0042】
ステップ5:3-(5-(4-アクリロイルピペラジン-1-イル)-2-メトキシフェニル)-4-(1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(化合物28)
化合物50d(0.12g、0.24mmol)をTHF(2.0mL)および水(1滴)の混合物に溶解し、次にDIEA(0.16mL、0.96mmol)および塩化アクリロイル(30μL、0.36mmol)を加えた。氷浴を外して、得られた溶液をrtで10分間撹拌した。反応の完了後(TLCで検出)、混合物を酢酸エチル(2×60mL)で抽出した。この有機相を飽和塩水(2×30mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、黄色の固体(90mg)を収率82%で得た。
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.81 (s, 1H), 10.93 (s, 1H), 7.93 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.07-6.98 (m, 2H), 6.92 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.84 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 6.80 (dd, J = 16.7, 10.5 Hz, 1H), 6.66 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 6.45 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.10 (dd, J = 16.7, 2.4 Hz, 1H), 5.68 (dd, J = 10.4, 2.4 Hz, 1H), 3.59 (m, 4H), 3.29 (s, 3H), 2.91 (m, 4H).
13CNMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 173.05, 172.62, 164.74, 152.47, 144.97, 136.88, 134.75, 130.96, 128.69, 128.10, 127.93, 125.33, 122.42, 121.25, 121.20, 120.60, 120.26, 119.13, 113.12, 112.42, 106.23, 55.98, 50.83, 50.22, 45.27, 41.73.
HRMS(ESI)m/z、C26H24N4O4[M+H]+の計算値:457.1798;実測値、457.1794。
【0043】
化合物32の調製
ステップ1:2-(5-フルオロ-2-(ニトロ)フェニル)アセトアミド(化合物38b)
バッチで、CDI(1.2g、7.5mmol)を5-フルオロ-2-(ニトロ)フェニル酢酸(1.0g、5.0mmol)のDMF(4.0mL)溶液に加えた。rtで0.5時間撹拌後、NH3(3.5mL、メタノール溶液中7N)を滴下して加え、さらにrtで1時間撹拌させた。この溶媒を蒸発させ、水および酢酸エチル(2×120mL)を用いて生成物を抽出した。この有機相を飽和塩水(2×40mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、白色の固体(0.70g)を収率70%で得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.11 (dd, J = 9.0, 5.2 Hz, 1H), 7.54 (s, 1H), 7.46-7.29 (m, 2H), 7.02 (s, 1H), 3.88 (s, 2H).
MS (ESI) m/z 199.1 (M+H)+.
【0044】
ステップ2:3-(5-フルオロ-2-(ニトロ)フェニル)-4-(1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(化合物40b)
【0045】
【化12】
0℃で、
tBuOK(7.5mL、THF中1M)を化合物38b(0.30g、1.5mmol)および化合物39(0.45g、2.2mmol)の無水THF(15mL)溶液にゆっくりと加えた。この溶液を10℃で45分間撹拌した。反応の完了後(TLCで検出)、HCl(5N)を加えてpHを6に調整し、溶媒を除去し、混合物を酢酸エチル(2×120mL)で抽出し、この有機相を飽和塩水(2×40mL)で洗浄し、回収し、無水Na
2SO
4上で乾燥させ、濃縮して黄色の固体0.30gを収率72%で得た。
MS (ESI) m/z 352.2 (M+H)
+.
【0046】
ステップ3:tert-ブチル4-(3-(4-(1H-インドール-3-イル)-2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-イル)-4-(ニトロ)フェニル)ピペラジン-1-カルボキシレート(化合物41b)
【0047】
【化13】
1-Boc-ピペラジン(0.64g、3.4mmol)を化合物40b(0.3g、0.85mmol)のDMSO(2.0mL)溶液に加え、混合物を150℃で一晩還流した。反応の完了後(TLCで検出)、混合物をrtに冷却させ、酢酸エチル(2×120mL)で抽出し、この有機相を飽和塩水(2×40mL)で洗浄し、回収し、無水Na
2SO
4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、黄色の固体(0.27g)を収率62%で得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 11.94 (s, 1H), 11.12 (s, 1H), 8.17 (d, J = 9.4 Hz, 1H), 8.03 (s, 1H), 7.42 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.16-6.94 (m, 2H), 6.74 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.65-6.49 (m, 2H), 3.14 (d, J = 48.7 Hz, 4H), 2.97 (s, 4H), 1.37 (s, 9H).
13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 172.88, 171.47, 154.25, 153.43, 137.86, 137.08, 132.84, 131.86, 129.73, 129.47, 127.83, 124.65, 122.61, 121.04, 120.56, 116.08, 114.18, 112.80, 104.45, 79.61, 60.29, 57.90, 46.77, 28.52.
MS (ESI) m/z 518.4 (M+H)
+.
【0048】
ステップ4:3-(5-(4-アクリロイルピペラジン-1-イル)-2-(ニトロ)フェニル)-4-(1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(化合物32)
【0049】
【化14】
トリフルオロ酢酸(TFA)(2.0mL)を化合物41b(0.10g、0.19mmol)のDCM(2.0mL)溶液に加え、混合物をrtで15分間撹拌した。反応の完了後(TLCで検出)、TFAおよびDCMを蒸発させ、残留物を乾燥させ、さらに精製することなく次のステップで使用した。この残留物をTHF(2.0mL)および水(1滴)の混合物に溶解し、次にDIEA(70μL、0.38mmol)および塩化アクリロイル(26μL、0.28mmol)を加えた。氷浴を外して、得られた溶液をrtで10分間撹拌した。反応の完了後(TLCで検出)、混合物を酢酸エチル(2×120mL)で抽出し、この有機相を飽和塩水(2×40mL)で洗浄し、回収し、無水Na
2SO
4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、黄色の固体(70mg)を収率78%で得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 11.96 (s, 1H), 11.14 (s, 1H), 8.18 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 8.03 (s, 1H), 7.41 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.82-6.71 (m, 1H), 6.70-6.62 (m, 1H), 6.60-6.50 (m, 2H), 6.08 (d, J = 16.6 Hz, 1H), 5.66 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 3.26 (m, 4H), 3.10 (m, 4H).
13C NMR (101 MHz, DMSO-d
6) δ 173.17, 171.51, 164.85, 153.40, 138.29, 137.06, 133.13, 131.87, 129.76, 128.52, 128.09, 127.85, 124.69, 122.67, 121.05, 120.60, 115.95, 114.10, 112.83, 104.46, 80.45, 47.53, 46.29, 44.15, 43.52.
HRMS(ESI)m/z、C
25H
21N
5O
5[M+H]
+の計算値:472.1543;実測値、472.1539。
【0050】
化合物34の調製
3-((1-アクリロイルピペリジン-4-イル)アミノ)-4-(1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(化合物34)の合成
ステップ1:3-ブロモ-4-(1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(化合物52)
滴下漏斗を取り付けた二口フラスコ中のアルゴン下で、インドール(0.3g、1.2mmol)を無水THF(8.0mL)に溶解した。臭化エチルマグネシウムのEt2O(1.57mL、4.7mmol)溶液を、この混合物に滴下して加え、次に加熱して2時間還流した。rtに冷却後、3,4-ジブロモ-1H-ピロール-2,5-ジオン(化合物51、0.55g、4.7mmol)のTHF溶液を約1時間にわたって滴下して加えた。次に、反応混合物をrtで1時間撹拌した。反応の完了後(TLCで検出)、次にHCl水溶液を用いて混合物を加水分解してpH=9とした。飽和NH4Cl水溶液を加えた後、この水相を酢酸エチル(2×60mL)で抽出した。この有機相を飽和塩水(2×30mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、黄色の固体(0.28g)を収率82%で得た。
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.10 (s, 1H), 11.35 (s, 1H), 8.03 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 7.89 (dt, J = 8.1, 1.0 Hz, 1H), 7.51 (dt, J = 8.1, 1.0 Hz, 1H), 7.22 (ddd, J = 8.1, 7.0, 1.2 Hz, 1H), 7.14 (ddd, J = 8.1, 7.1, 1.2 Hz, 1H).
13CNMR (101 MHz, DMSO) δ 170.75, 167.99, 138.54, 137.01, 131.54, 125.05, 122.95, 122.77, 120.92, 115.13, 112.84, 104.25.
MS/ESI 291.0 (M+1)+.
【0051】
ステップ2:tert-ブチル4-((4-(1H-インドール-3-イル)-2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-イル)アミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート(化合物53)
化合物52(0.13g、0.45mmol)およびBoc保護ピペリジン-4-アミン(0.18g、0.89mmol)を、DMSO(1.5mL)に溶解し、次にDIEA(0.15mL、0.89mmol)を加えた。混合物を126℃で一晩加熱した。rtに冷却させ、反応が完了した後(TLCで検出)、水および酢酸エチルを用いて混合物を抽出した。この有機相を飽和塩水(2×20mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、黄色の固体(0.11g)を収率60%で得た。
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.21 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 10.34 (s, 1H), 7.40 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.37-7.27 (m, 2H), 7.14-7.06 (m, 1H), 7.04-6.95 (m, 1H), 6.86 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 3.67 (m, 2H), 3.43 (m, 1H), 1.97 (m, 2H), 1.47 (m, 2H), 1.31 (s, 9H), 1.26 (m, 2H). 13CNMR (101 MHz, DMSO).
13CNMR (101 MHz, DMSO) δ 173.82, 169.57, 154.19, 143.23, 136.10, 128.71, 126.48, 121.70, 119.91, 119.37, 112.05, 104.59, 100.05, 93.48, 79.22, 50.31, 32.01, 28.52.
MS/ESI 410.1 (M+1)+.
【0052】
ステップ3:3-((1-アクリロイルピペリジン-4-イル)アミノ)-4-(1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(化合物34)
TFA(2.0mL)を、化合物53(0.10g、0.18mmol)のDCM(2.0mL)溶液に加え、混合物をrtで15分間撹拌した。反応の完了後(TLCで検出)、TFAおよびDCMを蒸発させ、残留物を乾燥させ、さらに精製することなく次のステップで使用した。この残留物を、THF(2.0mL)および水(1滴)の混合物に溶解し、次にDIEA(0.10mL、0.36mmol)および塩化アクリロイル(24μL、0.27mmol)を加えた。氷浴を外して、得られた溶液をrtで10分間撹拌した。反応の完了後(TLCで検出)、混合物を酢酸エチル(2×120mL)で抽出し、この有機相を飽和塩水(2×40mL)で洗浄し、回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、次にカラムクロマトグラフィーによって分離して精製し、黄色の固体(80mg)を収率90%で得た。
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.23 (s, 1H), 10.43 (s, 1H), 7.54-7.20 (m, 3 H), 7.09 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 7.01 (t, J = 7.0 Hz, 1H), 6.64 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 5.75 (t, J = 14.6 Hz, 1H), 5.27 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 3.87 (d, J = 12.2 Hz, 1H), 2.93 (m, 1H), 2.82 (m, 1H), 2.56 (m, 1H), 1.75 (m, 1H), 1.57 (m, 2 H), 0.84 (m, 1H).
13CNMR (101 MHz, DMSO) δ 173.79, 169.60, 164.78, 142.34, 136.13, 128.48, 128.46, 127.84, 127.35, 126.68, 121.84, 119.96, 119.59, 112.24, 104.14, 50.10, 49.39, 41.81, 30.50, 28.52.
HRMS(ESI)m/z、C20H20N4O3[M+H]+の計算値:365.1535;実測値、365.1541。純度:99.3%。
【0053】
生物活性試験
(1)in vitroの酵素アッセイ
in vitroの酵素アッセイを、Km ATP(0.6マイクロモル)および高濃度ATP(1ミリモル)の条件で実施した。in vitroの酵素アッセイの結果を上記の表に記載した。
【0054】
in vitroの酵素アッセイの手順は以下の通りである:キナーゼをCarna Biosciencesから購入した。HTRF(商標)KinEaseTMアッセイを用いて、JAK3の酵素活性を、KmにおけるATPの濃度および1mMで個別に評価した。ATPキナーゼ酵素アッセイを、HTRF(商標)KinEaseTMアッセイの使用説明書(Cisbio Bioassays)で定められたプロトコールに従って実施した。
【0055】
(2)選択性アッセイ
キナーゼのパネルに対する化合物32の選択性を評価するために、50種の代表的なキナーゼを予備的選択性アッセイのために選択し、結果を
図1に示す。
【0056】
化合物32は、高い選択性を有することが示された。キナーゼのパネルに対して1μMで試験したところ、大半のキナーゼは、50%以下の阻害を示し、3種のキナーゼ、PKCα、PKCγ、およびGSK3βのみが、50%を超える阻害を示し、これはNIBR3049の選択性の結果に一致した。化合物32は、JAKファミリー内およびCys909に相当する位置にシステインを有する他の10種のキナーゼ内でも高い選択性を示し、これは、化合物32が、低分子プローブとしてJAK3の機能およびJAK-STATシグナル経路における研究に使用され得ることを示唆する。
【0057】
(3)細胞活性アッセイ
化合物32の細胞活性を評価するために、細胞内で、下流基質であるSTAT5のリン酸化を阻害する化合物32の能力を検出した。
【0058】
マウスT細胞(CTLL-2細胞)から成長因子を枯渇させ、一晩飢餓状態にした。次に、細胞を所定の濃度の化合物(JAK3阻害剤またはDMSO)と共に、37℃で2時間インキュベートした。500ng/mLのIL-2または500ng/mLのIL-5(R&D Systems)で30分間刺激した後、細胞を回収し、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含有する細胞溶解緩衝液中で細胞を溶解した。次に、SDS/PAGE電気泳動によって分離し、ニトロセルロース膜に移した後、ウエスタンブロット分析を行った。リン酸化STAT5、STAT5、およびβ-アクチン(全ての抗体をCell Signaling Technologiesから得た)を特異的な抗体を用いて個別にブロットした。結果を
図2および
図3に示す。このEC
50値を、GraphPad Prismソフトウェアを使用した定量的なストライプグレイ分析(stripe gray analysis)によって算出した。
【0059】
CTLL-2において、IL-2に誘導されたSTAT5のリン酸化は、600ナノモルの化合物32によってほぼ完全に阻害された(EC50=305ナノモル)。比較して、化合物NIBR3049で処理した細胞では、STAT5活性化を完全に阻害するために、6000ナノモルが必要とされた。化合物32は、IL-15に誘導されたSTAT5のリン酸化を、より高い感度で阻害した(EC50=141ナノモル)。
【0060】
同様に、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)において、NIBR3049と比較して、化合物32は、IL-2およびIL-15で誘導されたSTAT5のリン酸化に対しても、より高い阻害活性を示した。結果を
図4および5に示す。
【0061】
方法:解凍後、PBMC(AllCellsから購入)を10%FBSを含有するRPMI-1640に一晩再懸濁し、次に所定の濃度のJAK3阻害剤またはDMSOと共に2時間インキュベートした。IL-2(500ng/mL、R&D Systems)、IL-15(500ng/mL、R&D Systems)、IL-6(600ng/mL、R&D Systems)、またはIFN-α(400ng/mL、R&D Systems)で30分間の刺激した後、細胞を回収し、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含有する細胞溶解緩衝液中で細胞を溶解した。次に、SDS/PAGE電気泳動によって分離し、ニトロセルロース膜に移した後、ウエスタンブロット分析を行った。リン酸化STAT5、リン酸化STAT3、およびリン酸化STAT1(全てCell Signaling Technologiesから得た)を特異的な抗体を用いて個別にブロットした。同等ローディング(equal loading)のためにβ-アクチンをブロットした。このEC50値を、GraphPad Prismソフトウェアを使用した定量的なストライプグレイ分析によって算出した。
【0062】
(4)細胞選択性アッセイ
我々は、JAKの下流基質のリン酸化に対する化合物の阻害作用を検出することによって、様々なサイトカイン(IL-15、IL-6、またはIFN-α)で刺激したときのPBMCにおける化合物32の細胞選択性をさらに特徴付けた。この方法は、セクション(4)に記載される通りであり、結果を
図6、7、および8に示す。
【0063】
これらのサイトカインの中で、IL-15を介したシグナル伝達のみがJAK3に依存する。IL-6を介したシグナル伝達は、JAK1、JAK2、およびTYK2に依存し、IFN-αを介したシグナル伝達は、JAK1およびTYK2に専ら関連する。化合物32は、濃度300nMで、STAT5のリン酸化を効果的に排除した。比較して、I-6およびIFN-αのシグナル経路では、10μMに達する用量においてさえ、STAT3のリン酸化およびSTAT1のリン酸化に対して部分的な阻害のみが観察された。化合物NIBR3049と比較して、化合物32は、ATPを高濃度で有する細胞環境において、細胞活性の増強だけでなく、他のJAKに対する選択性の向上をも示した。これに対し、非選択的なトファシチニブは、3種のサイトカインによって刺激された下流基質のリン酸化を阻害することにおいて、明白な選択性を示さなかった。
【0064】
(5)細胞ウォッシュアウト実験
細胞内で化合物32がJAK3に共有結合していることをさらに証明するために、細胞ウォッシュアウト実験を行った。
【0065】
ウォッシュアウト手順は以下の通りである:CTLL-2細胞を化合物で2時間処理した。次に、ウォッシュアウト群において、細胞をPBSで3回洗浄した。非ウォッシュアウト群は、一定状態に保った。次に、細胞をIL-15で30分間刺激し、溶解して、標準的なウエスタンブロットに用いた。結果を
図9に示す。化合物で処理した細胞をPBSでよく洗浄した。化合物32(細胞内でJAK3に共有結合している)で処理した細胞は、継続してSTAT5のリン酸化を阻害した。比較して、可逆的阻害剤であるトファシチニブおよび化合物NIBR3049の阻害活性は、ウォッシュアウト後にほぼ失われた。JAK1は、JAK3のCys909と同じ位置にシステインを有さないため、化合物32は、PBSでウォッシュアウトした後、JAK1の活性に干渉する可能性が低いであろう。したがって、このウォッシュアウト実験によって、JAK1の影響が軽減され、IL-15媒介γ
cサイトカイン受容体シグナル経路を効果的に阻害するには、JAK3の特異的な阻害のみで十分であることが実証された。
【0066】
(6)LPSで刺激された炎症性サイトカインの放出の阻害
関節リウマチ(RA)患者において、関節びらんは、IL-6、IL-1β、TNF-α、およびMCP-1を含む炎症性サイトカインの増加と同時に発生する。IL-6、IL-1β、TNF-α、およびMCP-1の放出は、IL-10-JAK-STAT3シグナル経路の負のフィードバックによって調節された。
【0067】
LPSで誘導されたIL-6およびTNF-αの放出アッセイを以下の通りに実施した:凍結PBMC(Allcellsから入手)を、10%FBSを含有するRPMI1640(Thermo Fisher)中で解凍し、37℃で一晩回復させた。翌日、細胞を1×106細胞/mLに希釈し、6ウェルプレートに播種した(500μL)。化合物またはDMSO(5μL、DMSOで段階希釈)を、前記プレートに加え、細胞と共に37℃で2時間インキュベートし、次にLPS(5μL、1μg/mL)で刺激し、5%CO2中、37℃で24時間インキュベートした。上清を回収し、製造業者の使用説明書に従って、ヒトIL-6またはヒトTHF-αのDuoSet ELISAキット(R&D Systems)を使用してIL-6およびTNF-αのレベルを求めた。
【0068】
IL-6で刺激された炎症性サイトカインであるMCP-1の放出アッセイを、同様の方法で実施した。実験結果は、
図10~12に示される通りである。
【0069】
LPSを負荷したPBMCにおいて、IL-6およびTNF-αの放出は、化合物32によって著しく阻害された。これに対し、非選択的阻害剤であるトファシチニブは、JAK1に対するトファシチニブの阻害によって、IL-10-JAK-STAT3の負のフィードバックのシグナル伝達が阻害されるため、異なる度合でサイトカイン産生を増加させた。化合物32は、JAK3に対するその選択的阻害によって、IL-10のシグナル経路の機能を維持した。化合物32およびトファシチニブは共に、IL-6に誘導されたMCP-1の放出(JAK媒介性ではない)を阻害せず、これは、この2つの化合物が、JAK-STATシグナル経路を介した炎症性サイトカインの放出を調整することを示唆した。これらの結果から、化合物32は、JAK3を選択的に阻害し、JAK3-STATシグナル経路の阻害を介して、炎症性サイトカインの放出の調整において重要な役割を果たすことが実証された。
【0070】
(7)薬物動態評価
静脈内投与および経口投与後に、マウスにおける化合物32の薬物動態的(PK)特性を評価した。
【0071】
in vivoのPK試験において、雄ICRマウス(n=3)を一晩絶食させ、化合物32を静脈内投与として投与するか(2mg/kg)、または胃管によって経口投与した(5mg/kg)。0.08、0.25、0.5、1、2、4、8、および24時間(iv)ならびに0.25、0.5、1、2、4、8、および24時間(po)の時点で、血液サンプルを採取した。内部標準を含有するアセトニトリルを用いて、この血漿サンプルからタンパク質を除去した。4℃で遠心分離後、LC/MS/MS分析のために上清を回収した。
【0072】
表示された時点における血漿濃度の分析によって、PKを測定した。結果を以下の表に示す。データは、静脈内用量2.0mg/kgおよび経口用量5mg/kgの単回投与後の血漿中の平均濃度を表す(n=3)。
【0073】
【0074】
5mg/kgの経口送達において、化合物32は、1.66時間の半減期(t1/2)、608ng・時間/mLの曲線下面積(AUC)、および24.4%の中程度の経口バイオアベイラビリティを伴うPKプロファイルを示した。これらの強力なPK特性によって、化合物32が、経口阻害剤または動物における追加の薬力学的試験および生物学的機能の探索のためのプローブとなり得ることが示唆された。
【0075】
上記の実施形態は、例示の目的のためのみのものであり、本発明の保護範囲に何らかの制限を設けるものではないことは理解されるべきである。本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって決定され、特許請求の範囲における技術的解決策を文字通り解釈したものだけでなく、特許請求の範囲における技術的解決策に相当するものも含む。例えば、化合物の安定同位体置換体も本発明の保護範囲内に含まれる。