(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】所定の溶着強度との相関関係に基づいてそれに関連する溶融層厚さを特定する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/82 20060101AFI20240227BHJP
B23K 20/10 20060101ALI20240227BHJP
B29C 65/08 20060101ALI20240227BHJP
G01N 3/08 20060101ALI20240227BHJP
G01N 19/04 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B29C65/82
B23K20/10
B29C65/08
G01N3/08
G01N19/04 Z
(21)【出願番号】P 2020569137
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 US2019037082
(87)【国際公開番号】W WO2019241578
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-06-10
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519092897
【氏名又は名称】デューケイン アイエーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サヴィツキー アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】クリンスタイン レオ
(72)【発明者】
【氏名】ホールト ケネス アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】パサク ハルディク シャイレシュ
(72)【発明者】
【氏名】アルダス ロバート エドワード
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-049570(JP,A)
【文献】特開2009-297786(JP,A)
【文献】特開2004-216859(JP,A)
【文献】特開2000-229360(JP,A)
【文献】特表2000-516873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
B29C
G01N 3/08,19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の強度を有する溶着接合部を作成するための溶着プロセス
を最適化する方法であって、
(i)溶着速度の第1の値を用いて第1の複数のサンプルアセンブリを作成することと、(ii)前記溶着速度の第2の値を用いて第2の複数のサンプルアセンブリを作成することと、(iii)前記溶着速度の前記第1の値と、動的ホールド距離の第1の値とを用いて第3の複数のサンプルアセンブリを作成することと、(iv)前記溶着速度の前記第1の値と、前記動的ホールド距離の第2の値とを用いて第4の複数のサンプルアセンブリを作成することと、
前記第1の複数のサンプルアセンブリの少なくとも一つ、前記第2の複数のサンプルアセンブリの少なくとも一つ、前記第3の複数のサンプルアセンブリの少なくとも一つ、および前記第4の複数のサンプルアセンブリ
の少なくとも1つにおける溶着接合部の複数の溶融層厚さを測定することと、
前記
第1の複数のサンプルアセンブリの少なくとも一つ、前記第2の複数のサンプルアセンブリの少なくとも一つ、前記第3の複数のサンプルアセンブリの少なくとも一つ、および前記第4の複数のサンプルアセンブリ
の少なくとも1つの溶着接合部における複数の破壊荷重を測定することと、
を含み、測定された前記複数の破壊荷重のそれぞれが、測定された前記複数の溶融層厚さのうちの1つに関連付けられおり、
前記方法はさらに、
前記第3の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくとも1つにおける溶着接合部、および、前記第4の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくとも1つにおける溶着接合部の、残留応力を測定することと、
測定された前記複数の破壊荷重のうちの
1つの破壊荷重が所定の溶着強度に対応すると特定されたことに応じて、前記
1つの破壊荷重を選択することと、
選択された前記
1つの破壊荷重に関連付けられている
前記溶融層厚さが得られる溶着プロセス設定を選択すること
であって、前記溶着プロセス設定が、前記溶着速度の前記第1の値と前記溶着速度の前記第2の値とのいずれかである、選択することと、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であってさらに、第1のパーツと第2のパーツとを溶着して、選択された前記溶融層厚さを有する溶着接合部を含む生産アセンブリを作成することを含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記所定の溶着強度は、母材強度の75%~100%の範囲内である、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記所定の溶着強度は、母材強度の少なくとも80%である、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記所定の溶着強度は、母材強度に等しい、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記複数の溶融層厚さを測定することは、前記
第1の複数のサンプルアセンブリの少なくとも一つ、前記第2の複数のサンプルアセンブリの少なくとも一つ、前記第3の複数のサンプルアセンブリの少なくとも一つ、または前記第4の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくともいくつかの断面を切り出すことを含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記複数の破壊荷重を測定することは、前記
第1の複数のサンプルアセンブリの少なくとも一つ、前記第2の複数のサンプルアセンブリの少なくとも一つ、前記第3の複数のサンプルアセンブリの少なくとも一つ、または前記第4の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくともいくつかを引張試験することを含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記溶着プロセスはサーボ駆動式超音波溶着プロセスである、方法。
【請求項9】
所定の溶着強度を有する溶着部を作成する方法であって、
溶着速度の第1の値を用いて第1の複数のサンプルアセンブリを作成することと、
前記
溶着速度の第2の値を用いて第2の複数のサンプルアセンブリを作成することと、
前記溶着速度の前記第1の値と、動的ホールド距離の第1の値とを用いて第3の複数のサンプルアセンブリを作成することと、
前記溶着速度の前記第1の値と、前記動的ホールド距離の第2の値とを用いて第4の複数のサンプルアセンブリを作成することと、
を含み、前記第2の値は前記第1の値とは異なり、
上記方法はさらに、
前記第1の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくとも1つにおける溶着接合部の第1の溶融層厚さ、および、前記第2の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくとも1つにおける溶着接合部の第2の溶融層厚さを測定することと、
前記第1の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくとも1つにおける第1の破壊荷重、および、前記第2の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくとも1つにおける第2の破壊荷重を測定することと、
前記第3の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくとも1つにおける溶着接合部の第3の溶融層厚さ、および、前記第4の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくとも1つにおける溶着接合部の第4の溶融層厚さを測定することと、
前記第3の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくとも1つにおける溶着接合部、および、前記第4の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくとも1つにおける溶着接合部の、残留応力を測定することと、
前記第1の破壊荷重が所定の溶着強度に対応すると特定されたことに応じて、前記第1の溶融層厚さと実質的に同じ溶融層厚さを有する溶着接合部を含む生産アセンブリを作成することと、
を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記第1の複数のサンプルアセンブリを作成することおよび前記第2の複数のサンプルアセンブリを作成することは、一定の振幅、一定のトリガー力、一定の溶融検知パーセンテージ、溶着速度、一定の静的ホールド時間、またはそれらの任意の組み合わせを保つことを含む、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記第1の複数のサンプルアセンブリのそれぞれが第1のパーツと第2のパーツとを含み、前記第2の複数のサンプルアセンブリのそれぞれが第1のパーツと第2のパーツとを含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記所定の溶着強度は、前記第1の複数のサンプルアセンブリのそれぞれの前記第1のパーツの材料強度、前記第1の複数のサンプルアセンブリのそれぞれの前記第2のパーツの材料強度、前記第2の複数のサンプルアセンブリのそれぞれの前記第1のパーツの材料強度、前記第2の複数のサンプルアセンブリのそれぞれの前記第2のパーツの材料強度、またはそれらの任意の組み合わせに、等しいかまたはそれより大きい、方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法であって、前記第1の複数のサンプルアセンブリを作成することおよび前記第2の複数のサンプルアセンブリを作成することは、サーボ駆動式超音波溶着プロセスを用いることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2018年6月13日に出願された米国仮特許出願第62/684,456号に基づく優先権を主張するものであり、本願において、当該米国仮特許出願の全体を引用して援用する。
【0002】
本開示は、一般に溶着プロセスに関し、より詳細には、溶着プロセスのための1つまたは複数の溶着プロセス設定を最適化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの工業分野において、留め具、接着剤、または溶剤などの追加の消耗品を導入することなく2つの部品を溶着して短時間でアセンブリを作成するために、熱可塑性プラスチックの超音波溶着が幅広く用いられている。超音波溶着プロセスは、高速かつ経済的で簡単に自動化でき、通常、当該プロセスを時間、エネルギー、または溶着距離によって制御することで、予測される品質の溶着を実現しようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際のパーツ寸法は多様であるうえ、溶けた材料の変位速度を空気圧駆動式の超音波溶着器で制御する能力に限界があるため、上記制御モードのいずれによっても、溶着品質の一貫性を保証することはできない。本開示は、上記および他の問題を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のいくつかの実施形態によれば、所定の強度を有する溶着接合部を作成するための溶着プロセスを最適化する方法は、溶着プロセスによって形成された複数のサンプルアセンブリにおける溶着接合部の複数の溶融層厚さを測定することと、上記複数のサンプルアセンブリにおける溶着接合部の複数の破壊荷重を測定することとを含む。測定された複数の破壊荷重のそれぞれが、測定された複数の溶融層厚さのうちの1つに関連付けられている。上記方法はさらに、測定された複数の破壊荷重のうちの第1の破壊荷重が所定の溶着強度に対応すると特定されたことに応じて、上記第1の破壊荷重を選択することと、測定された複数の溶融層厚さのうち、選択された上記第1の測定された破壊荷重に関連付けられている第1の溶融層厚さを選択することとを含む。
【0007】
本開示のいくつかの実施形態によれば、所定の溶着強度を有する溶着部を作成する方法は、第1の溶着プロセス設定の第1の値を用いて第1の複数のサンプルアセンブリを作成することと、第1の溶着プロセス設定の第2の値を用いて第2の複数のサンプルアセンブリを作成することとを含む。第2の値は、第1の値とは異なる。上記方法はさらに、第1の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくとも1つにおける溶着接合部の第1の溶融層厚さ、および、第2の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくとも1つにおける溶着接合部の第2の溶融層厚さを測定することと、第1の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくとも1つにおける第1の破壊荷重、および、第2の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくとも1つにおける第2の破壊荷重を測定することと、第1の破壊荷重が所定の溶着強度に対応すると特定されたことに応じて、第1の溶融層厚さと実質的に同じ溶融層厚さを有する溶着接合部を含む生産アセンブリを作成することとを含む。
【0008】
上記概要は、本発明の各実施形態またはすべての態様を表すことを意図するものではない。本発明の追加の特徴および利点は、以下に記載の詳細な説明および図面から明らかである。
【0009】
本特許または出願のファイルには、カラーで作成された図面が少なくとも1つ含まれている。カラー図面を含むこの特許または特許出願の公報のコピーは、申請および必要な料金の支払いに応じて担当官庁から提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本開示のいくつかの実施形態に従って溶着されるパーツ一式の一例を示す斜視図である。
【
図1B】本開示のいくつかの実施形態に係る溶着プロセス前の、
図1Aのパーツ一式の一例を示す部分断面図である。
【
図1C】本開示のいくつかの実施形態に係る溶着プロセス後の、
図1Aのパーツ一式の一例を示す部分断面図である。
【
図2A】本開示のいくつかの実施形態に係る超音波溶着器を示す斜視図である。
【
図2B】本開示のいくつかの実施形態に係る
図2Aの超音波溶着器を、内部構造を現すためにハウジングの壁の一部を切り取った状態で示す斜視図である。
【
図2C】
図2Aの超音波溶着器の超音波溶着スタックを示す部分分解立面図である。
【
図3】本開示のいくつかの実施形態に係る、所定の溶着強度を有する溶着接合部を作成する方法に関するプロセスフロー図である。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態に係る第1のサンプルアセンブリの第1の溶着接合部の断面画像の一例を示す図である。
【
図5】本開示のいくつかの実施形態に係る第2のサンプルアセンブリの第2の溶着接合部の断面画像の一例を示す図である。
【
図6】本開示のいくつかの実施形態に係る第3のサンプルアセンブリの第3の溶着接合部の断面画像の一例を示す図である。
【
図7】本開示のいくつかの実施形態に係る第4のサンプルアセンブリの第4の溶着接合部の断面画像の一例を示す図である。
【
図8】本開示のいくつかの実施形態に係る第5のサンプルアセンブリの第5の溶着接合部の断面画像の一例を示す図である。
【
図9】本開示のいくつかの実施形態に係る複数のサンプルアセンブリにおける、測定された溶融層厚さと測定された破壊荷重との関係を示す例示的なグラフである。
【
図10】本開示のいくつかの実施形態に係る、第1の溶着速度および第2の溶着速度についての力対距離の関係を示す例示的なグラフである。
【
図11】本開示のいくつかの実施形態に係る、第1の動的ホールド距離と、第1の動的ホールド速度および第2の動的ホールド速度とについての力対距離の関係を示す例示的なグラフである。
【
図12】本開示のいくつかの実施形態に係る、第2の動的ホールド距離と、
図11の第1の動的ホールド速度および第2の動的ホールド速度とについての力対距離の関係を示す例示的なグラフである。
【
図13】本開示のいくつかの実施形態に係る第6のサンプルアセンブリの第6の溶着接合部の断面画像の一例を示す図である。
【
図14】本開示のいくつかの実施形態に係る第7のサンプルアセンブリの第7の溶着接合部の断面画像の一例を示す図である。
【
図15】本開示のいくつかの実施形態に係る第8のサンプルアセンブリの第8の溶着接合部の断面画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は様々な修正および代替形態を許容するものであるが、ここでは本開示の特定の実施形態を、例として図面に示し本明細書で詳細に説明する。ただし、本発明を、開示された特定の形態に限定することは意図しておらず、逆に、添付の請求の範囲で定義された本発明の趣旨および範囲に属する全ての修正、同等物、および代替物を網羅することを意図していると理解すべきである。
【0012】
図1A~
図1Cを全体的に参照すると、一例であるアセンブリ100は、溶着プロセスを用いて溶着される第1のパーツ110および第2のパーツ120を含む。第1のパーツ110は、第1のパーツ110を第2のパーツ120に溶着させることに寄与するように構成されたエネルギーダイレクタ112(
図1Bおよび
図1C)を含む。
図1Bに示すように、溶着の前に、第1のパーツ110および第2のパーツ120は、エネルギーダイレクタ112が第2のパーツ120の上面に当接するように互い接して配置される。溶着プロセスでは、エネルギー(たとえば熱エネルギー、振動エネルギー、または電磁エネルギー)および圧力(たとえば、第1のパーツ110と第2のパーツ120とをクランプすることによるもの)が、第1のパーツ110および第2のパーツ120に印加されることで、それらの2つのパーツが溶着される。エネルギーダイレクタ112は、溶着プロセス中に完全に使い尽くされ、すなわち溶融される。第1のパーツ110と第2のパーツ120との溶着または接合に用いられる溶着プロセスは、たとえば、サーボ制御式超音波溶着プロセス、空気圧制御式超音波溶着プロセス、レーザー溶着プロセス、もしくは、ホットプレートまたはホットバー溶着プロセスであることが可能である。
【0013】
図1Cに示すように、溶着プロセスでは、第1のパーツ110と第2のパーツ120との間に溶着接合部130が形成される。溶着接合部130は、溶融層厚さ132を有し、その溶融層厚さ132は、印加されたエネルギーによって第1のパーツ110の一部分および第2のパーツ120の一部分が溶着プロセス中に溶融する範囲である。本明細書でさらに詳細に論じるように、溶融層厚さ132は、1つまたは複数の溶着プロセスパラメータ(たとえば溶着速度、動的ホールド速度、動的ホールド距離、振幅、トリガー力、溶融検知パーセンテージ、静的ホールド時間、または、それらの任意の組み合わせ)を調整することによって正確に制御することができる。また、本明細書でさらに詳細に論じるように、溶融層厚さ132は、溶着接合部130の強度と密接に相関している。
【0014】
図1A~
図1Cでは第1のパーツ110および第2のパーツ120が略円形に描かれているが、より全般的には、第1のパーツ110および第2のパーツ120は、任意の適切な形状(たとえば三角形、長方形、正方形、多角形など)であることが可能である。さらに、第1のパーツ110および第2のパーツ120は、同じまたは異なる形状またはサイズであることが可能である。第1のパーツ110および第2のパーツ120は、溶着に適した任意の材料(たとえば熱可塑性材料)で構成されることができる。
【0015】
図2A~
図2Cに、本開示の様々な実施形態において(たとえば
図1Cに示すようなアセンブリ100を作成するために)使用可能な超音波溶着器の一例を示す。たとえば、この一例の超音波溶着器は、双方向電動リニアアクチュエータ11(
図2B)によって制御されて上下方向に動作するように取り付けられた超音波溶着スタック10を含むことができる。スタック10については、
図2Cに関連して以下でより詳細に説明する。アクチュエータ11は、メインハウジング12内に設置されることができ、メインハウジング12は、溶着プレス機用の電源および電子制御部を収容する補助ハウジング13を支持するものでもある。このコンセプトの変形例では、ハウジング12と補助ハウジング13とを1つの構造体に一体化することができる。溶着対象のワークピースW1およびW2(
図2C)は、超音波スタック10の下方の定置式の固定具に取り付けることができ、アクチュエータ11は、スタック10を上側ワークピースW1に当たるように下方へ前進させることができる。スタック10の下端をワークピースW1に対して下方に押し付けて、ワークピースW1に機械的振動を加えつつ上側ワークピースW1を下側ワークピースW2に押し付けることにより、2つのワークピースW1とW2とを接合させる所望の溶着を実現する。
【0016】
メインハウジング12は、溶着対象のワークピースを受けて支持する固定具を担持するベース15から上方に延びる縦柱14を含むフレームに取り付けられている。ハウジング12は典型的には、ハウジング12全体の上下方向位置を様々なワークピースに合わせて調整できるように、柱14に調整可能に取り付けられている。制御パネル16は、ベース15の前部に設けられている。
【0017】
超音波溶着スタック10(
図2Cを参照のこと)は、電気エネルギーを機械的振動に変換する電気機械トランスデューサ20と、トランスデューサ20によって生成される機械的振動のゲイン(すなわち出力振幅)を変更するブースタ21と、ブースタ21から溶着対象のパーツに機械的振動を伝達するホーン22とを備える。
図2Cに示すように、トランスデューサ20は、トランスデューサ20を励起するための高周波電気信号を伝達する高電圧同軸ケーブル24を取り付けるためのコネクタ23を含むことができる。当該信号は、別個の超音波信号発生器(図示せず)によって供給することができる。トランスデューサの取り外しおよび設置をさらに容易にするために、他の接続方法を利用することも可能である。トランスデューサ20は、電気エネルギーを機械的運動に変換するランジュバン型圧電変換器として超音波振動を生成することができる。トランスデューサ20に印加される電力は、50ワット未満から5000ワットまでの範囲内であることが可能であり、周波数は典型的には20kHzである。
【0018】
トランスデューサ20は、薄い金属板によって隔てられて高圧下で一緒にクランプされたいくつかの標準的な圧電セラミック素子で構成され得る。セラミック素子に交流電圧が印加されると、対応する電界が生成され、その結果、セラミック素子の厚さが変化する。この厚さの変化が圧力波を誘発し、その圧力波が、材料内を伝播してトランスデューサの金属マスの端部で反射される。組立体の長さが励起周波数に合わせて調整されている場合は、組立体が共振して定在波の発生源となる。20kHz型トランスデューサの出力振幅は、典型的には約20ミクロン(0.0008インチ)である。パーツW1およびW2に有用な作用をもたらすには、この振幅をブースタ21およびホーン22で増幅する必要がある。ブースタおよびホーンは、音響導波管または音響変成器として機能し、超音波振動を増幅してワークピースに集束させる。
【0019】
ブースタ21の主要な機能は、スタック10のゲイン(すなわち出力振幅)を変更することである。ブースタは、ブースタのゲインが1より大きい場合に増幅を実施し、ゲインが1より小さい場合に減衰を実施する。20kHzにおけるゲインは典型的には、1/2未満~約3の範囲内である。ホーン22は、自由に振動する必要があるために通常はクランプされることができず、したがって、トランスデューサ20およびブースタ21のみが固定される。したがって、ブースタ21の二次的機能(時には唯一の目的)は、プレス機に固定された時にスタックの増幅作用を変えることなく追加の取り付け位置を提供することである。ニュートラルブースタまたはカップリングブースタが、トランスデューサとホーンの間に追加されて、ノードポイント(定在波の縦方向の振幅が最小になる箇所)に配置された取付リングによってプレス機に取り付けられる。
【0020】
ホーン22には3つの主要な機能がある。第1に、ホーン22は、直接の物理的接触を介して超音波の機械的振動エネルギー(トランスデューサ20で発生したもの)を熱可塑性ワークピース(W1およびW2)に伝達し、溶融が生じるべき領域にエネルギーを集中させる。第2に、ホーン22は、振動振幅を増幅して、熱可塑性ワークピースおよび溶着プロセスにおける要件に関して望ましい先端振幅を提供する。第3に、ホーン22は、接合面が溶けた時点で溶着を実現させるのに必要な圧力を加える。
【0021】
ホーンは精密加工されており、典型的には、15kHz、20kHz、30kHz、40kHz、50kHz、または70kHzのいずれかの周波数で振動するように設計されている。周波数が高くなるほど音響波長は短くなり、その結果としてホーンは小さくなる。ホーンのチューニングは典型的には、電子周波数測定を用いて実施する。ホーンは通常、高強度のアルミニウム合金またはチタンで製造される。それらの両金属とも、超音波エネルギーをほとんど減衰させずに伝達する優れた音響特性を備える。
【0022】
ホーンには、プロセス要件に応じた様々な形状および様式がある。ホーンの設計に影響を及ぼす要因は、溶着対象の材料および組み立て方法である。ホーンは、熱可塑性ワークピースをそれらの界面にて溶かすのに十分な振幅になるように機械的振動を増幅する必要があり、ホーンのゲインは、その外形(profile)によって決定される。ホーンの先端における振幅は典型的には、20kHzにてピーク間値が30~125ミクロン(1インチの1000分の1.2~5.0)の範囲内である。別の変形例では、ホーンがブースタの形状を有して安定化および溶着の機能を兼ね備えるように、ホーンを設計することができる。この変形例では、ブースタは削除され、ホーンがブースタ取付リング領域の位置でプレス機に固定される。周波数が高くなると、振動の振幅は小さくなる。より高い周波数は、大きい振幅を必要としない薄い材料や繊細なパーツの接合に使用される。周波数が高くなるほどホーンは小さくなるため、間隔を狭くすることもできる。
【0023】
プラスチックの溶着は、超音波による組み立ての最も一般的な利用事例である。超音波プラスチック溶着を実施するために、
図2Cに示すように、ホーンの先端を上側ワークピースW1に接触させる。圧力が加えられ、超音波エネルギーが上側ワークピースを伝って移動した結果、2つのワークピースの接触点における運動エネルギー(または熱)が増加する。熱が、両ワークピースのうちの一方に成形されたプラスチックのリッジ部を溶かし、溶けた材料は2つの表面の間を流動する。振動が止まると、材料は固化し、永久的な結合を形成する。
【0024】
超音波溶着の一例を本出願の目的のために上記で説明したが、任意の超音波溶着を、本開示のシステムおよび方法に使用することができる。溶着プロセスの物理的コンポーネントおよび制御システムに関する追加の説明は、たとえばKlinstein, et al.(米国特許第8,052,816号)に記載されている。
【0025】
一般に、超音波溶着プロセスにおける最も信頼性の高い制御モードは、ほとんどのコンピュータ制御式溶着装置に備えられている「距離制御による溶着(weld by distance)」オプションである。溶着距離は通常、エンコーダによって監視され、スタックの動きを決定するプロセッサによって制御される。エネルギーダイレクタを設けた界面を用いた溶着接合部の設計の場合、溶着の強度と再現性のために最適な溶着距離は、通常、エネルギーダイレクタのサイズおよび高さに基づく値に設定される。ただし、この設定は、溶着が強力で過度のバリがないことを保証しない場合がある。たとえば、エネルギーダイレクタ(たとえば
図1A~
図1Cのエネルギーダイレクタ112)が溶融せずに、溶着プロセス中に部分的に変形した場合、動きが溶融無しに生じたにもかかわらず、その変形は、溶着プロセス制御部によって溶着距離の一部分であると判断されてしまう。その結果が「コールド溶着」であり、それは、エネルギーダイレクタにおいて実際の溶融よりも多くの物理的変形が生じた状態である。「コールド溶着」が形成される理由として考えられるものは、エネルギーダイレクタの成形ムラ、過度のトリガー力、パーツの整列ミス、周波数の選択ミス、不適切な振幅など、多数ある。重要なプロセスパラメータに対して適切な制限を設けた適格な溶着プロセスであれば、形成不十分な溶着のいくつかは検出される。しかし、プロセス制御部によって記録されるエネルギーレベル、溶着時間、および電力レベルが、良好な溶着についてのそれらの値と大きく異ならない場合があるため、溶着器からのデータが溶着の不全を表さないことが頻繁にある。
【0026】
また、プログラムされた溶着深さに達することが、望ましくないことに、過度のバリを発生させる可能性もある。エネルギーダイレクタが予定よりも短い場合に、過度のバリ形成が生じる可能性があり、それは、エネルギーダイレクタの細部の充填が(成形時の充填不良に起因して)不十分な箇所や、取扱い中にエネルギーダイレクタが破損した箇所などでも同様である。そのような場合に、パーツは、エネルギーダイレクタの範囲を超えて潰れ、意図しない溶融が引き起こされ、その結果、接合領域の周囲に過度のバリが生じる。このような溶着部のいくつかは、二次的な溶着制御用に設定された溶着エネルギー値を綿密にモニタリングすることにより、疑わしいものとして識別可能である。このアプローチの成功のレベルにはバラつきがあり、とりわけ、溶着用の機器構成の詳細に左右される。
【0027】
一貫性(たとえば再現性)があり高い溶着接合強度を有する溶着が、望ましい。場合によっては、溶着接合部の強度が母材の強度と同じかそれ以上であることが望ましい。言い換えれば、そのような溶着接合部は、組み付けられたパーツの構成材料よりも強度が高い。高強度の溶着接合部を実現するために、溶着システム(たとえば
図2A~
図2Cの機械)の操作者は、1つまたは複数の溶着プロセス設定を調整する必要がある。溶着強度の増加のためにこれらの溶着プロセス設定を最適化するいくつかの方法には、引張試験、曲げ試験、圧力試験などの破壊試験を実施することと、試験結果に基づいて1つまたは複数のプロセス設定を調整することと、この手順を繰り返すこととが含まれる。目的の溶着強度を達成するためのこのような方法は、多くのサンプルパーツを作成して破壊的に試験することを要するため、時間がかかり非効率的である。
【0028】
超音波溶着の利用事例(たとえば超音波サーボ駆動式溶着プロセス)においては、いくつかの溶着プロセス設定(たとえば溶着速度)を調整することで、溶融層厚さを正確に制御することが可能である。たとえば、空気圧制御式溶着システムとは異なり、サーボ制御式溶着システム(たとえば
図2A~
図2Cに示される溶着システムと同じまたは類似のもの)は、プレス機の下降動作の開始前に初期溶融層厚さが確実に存在するようにプログラムできる。つまり、溶着の開始時に、力の低下が検出されるまでプレス機を所定位置に保持することができる。それにより、溶着力を印加する以前のエネルギーダイレクタの変形が溶着距離にカウントされることを防ぐ。力の低下が所定の値(たとえば溶融パーセンテージとしてプログラムされた値)に達すると、そのことは初期の溶融した層の存在を示す。その後、プレスの下降動作を続ける。
【0029】
さらに、サーボ制御式超音波溶着システムでは、オペレーターが、たとえばプロセス全体にわたって溶けた材料の変位速度を正確に変化させることにより、溶着サイクル中の溶融層の伝播を制御できる。「ホールドフェーズ」中に他の溶着プロセス設定を調整することで、溶けた材料のスクイーズ流動率を直接制御でき、したがって、溶融層の厚さを制御できる。たとえば、動的ホールド機能により、超音波振動の停止後の、溶けた材料のスクイーズ流動率および潰れ距離(collapse distance)を制御できる。それにより、溶着の終盤における再結晶および固化の際の材料の変位を正確に制御できる。言い換えれば、溶融層の厚さは、1つまたは複数の溶着プロセス設定の値に基づいて正確に予測することが可能である。したがって、溶融層厚さと溶着強度との関係を確立し、予測された溶融層厚さに基づいて溶着部の溶着強度を予測できるようにすることが有利になる。
【0030】
図3に、所定の(たとえば十分な)溶着強度を有する溶着接合部を形成するために溶着プロセスを最適化する方法300を示す。本発明者らは、溶着接合部の溶融層の厚さと、溶着接合部の破壊荷重(すなわち強度)との間に密接な相関関係があることを発見した。たとえば、溶着接合部の溶融層厚さの増加は、溶着接合部の破壊荷重(強度)の増加に対応する可能性がある。1つまたは複数の溶着プロセス設定を調整することで溶融層厚さを正確に制御できるため、溶着接合部の望ましい強度(たとえば母材強度に等しいか非常に近い強度)を溶融層厚さに関連付けることが有利であり、それに従って、溶融層厚さを制御する溶着プロセス設定を調整することにより、高強度の溶着接合部を備えた生産アセンブリ(たとえば大量生産用アセンブリ)を作成することが有利である。
【0031】
方法300のステップ301は、溶着プロセス(たとえば、
図2A~
図2Cの機器と同じまたは類似の超音波溶着器を使用するサーボ制御式超音波溶着プロセス)を用いてパーツ(たとえば
図1Cの第1のパーツ110および/または第2のパーツ120と同じまたは類似のパーツ)を溶着することによって、第1の複数のサンプルアセンブリ(たとえば、
図1Cのアセンブリ100と同じまたは類似のもの)を作成することを含む。サンプルアセンブリは、試験(たとえば破壊試験)に使用されるものであり、消費者への販売のために大量生産されることはない。第1の複数のサンプルアセンブリは、任意の適切な数(たとえば2個、10個、15個、50個、100個など)のサンプルアセンブリを含むことができる。
【0032】
ステップ301の非限定的な実施形態の一例では、第1の複数のサンプルアセンブリは、以下の表1に示す溶着プロセス設定を用いて作成され得る。より全般的には、任意の適切な超音波振幅値、トリガー力値、溶融検知パーセンテージ値、溶着距離値、溶着速度値、静的ホールド値、またはそれらの任意の組み合わせを溶着プロセスに用いて、ステップ301において第1の複数のサンプルアセンブリを作成することができる。溶着速度値は、一定の溶着速度(たとえば約0.5mm/秒、約1.0mm/秒、約1.5mm/秒など)か、あるいは、線形プロファイルを有する溶着速度(たとえば0.25mm/秒から0.40mm/秒に直線的に増加する速度、または、0.40mm/秒から0.25mm/秒に直線的に減少する速度など)であることが可能である。
【0033】
【0034】
方法300のステップ302は、ステップ301で第1の複数のサンプルアセンブリを作成した後に第1の溶着プロセス設定の値を変更することを含む。変更対象の溶着プロセス設定はたとえば、溶着速度、動的ホールド距離、または動的ホールド速度であり得る。ステップ302の非限定的な実施形態の一例では、溶着速度の値が変更される。たとえば、ステップ301で溶着速度が0.25mm/秒から0.40mm/秒に直線的に増加するプロファイルを有する場合、ステップ302では溶着速度を、0.40mm/秒から0.25mm/秒に直線的に減少するプロファイルを有する溶着速度に変更できる。ステップ302の間、溶着プロセスの他の溶着プロセス設定(たとえば超音波振幅、トリガー力、溶融検知パーセンテージ、溶着距離、静的ホールド時間、動的ホールド距離、動的ホールド速度など)は一定に保たれる(すなわち変更されない)。
【0035】
ステップ303は、ステップ302で変更した第1の溶着プロセス設定を用いて、溶着プロセスに従って第2の複数のサンプルアセンブリを作成することを含む。言い換えれば、第1の溶着プロセス設定は、ステップ301で第1の複数のサンプルアセンブリを作成する時は第1の値を有し、ステップ303で第2の複数のサンプルアセンブリを作成する時は、第1の値とは異なる第2の値を有する。ステップ303で作成された第2の複数のサンプルアセンブリは、ステップ301で作成された第1の複数のサンプルアセンブリと同じ数のアセンブリを含むこともできるし、または、異なる数のサンプルアセンブリを含むこともできる。ただし、第1の複数のサンプルアセンブリと第2の複数のサンプルアセンブリとは、同じアセンブリである(たとえば、両方とも
図1Cの同じ第1のパーツ110および第2のパーツ120を含む)。
【0036】
図3に示すように、ステップ302およびステップ303を1回または複数回繰り返して、溶着プロセス設定を複数回(たとえば2回、6回、10回、…n回)変更することができる。その結果、溶着プロセス設定の変更された値ごとに複数のサンプルアセンブリが作成される。たとえば、方法300の非限定的な実施形態の一例では、ステップ302および303を3回繰り返し、それにより、5つの異なるサンプルアセンブリ群を作成する。
【0037】
方法300のステップ304は、ステップ301およびステップ303で作成された各サンプルアセンブリ群における溶着接合部の溶融層厚さを測定することを含む。具体的には、ステップ304は、ステップ301で作成された第1の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくとも1つにおいて断面を切り出すことと、ステップ303で作成された第2の複数のサンプルアセンブリのうちの少なくとも1つにおいて断面を切り出すこととを含む。そして、それらの断面を研磨し、顕微鏡下で(たとえば人間のユーザが)検査することで、溶着接合部の溶融層厚さを測定することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、ステップ304は、ステップ301で得られた第1の複数のサンプルアセンブリおよびステップ303で得られた第2の複数のサンプルアセンブリのうちの一方または両方について、2つまたはそれ以上のサンプルアセンブリで測定された溶融層厚さの平均値を求めることを含む。たとえば、ステップ301で作成された第1の複数のサンプルアセンブリおよびステップ303で作成された第2の複数のサンプルアセンブリがそれぞれ10個のサンプルアセンブリを含む場合、ステップ304は、各グループから5つのサンプルアセンブリの断面を切り出して、測定された溶融層厚さの平均値を求めることを含むことが可能である。測定された溶融層厚さの平均値を求めることは、より正確な結果を得るのに役立ち、当該平均値を求めることによって、溶着プロセスおよび/またはサンプルアセンブリにおける制御不可能なバラつきに対処することができる。
【0039】
図4~
図8を全般的に参照する。方法300のいくつかの実施形態では、ステップ302~303を3回繰り返し、それにより、変更された第1の溶着プロセス設定の値を用いて5つの異なるサンプルアセンブリ群を作成する。
図4~
図8の非限定的な実施例では、溶着速度が変更される。
図4に、第1のパーツ410、第2のパーツ420、および溶着接合部430を含む一例としてのサンプルアセンブリ400を断面切断したものを示す。溶着接合部430は溶融層厚さ432を有し、その溶融層厚さ432は、断面切断されたサンプルアセンブリ400を(たとえば顕微鏡下で)検査することで測定できるものである。この例では、サンプルアセンブリ400は、溶着プロセスに従って約1.5mm/秒の溶着速度で(たとえばステップ301において)作成された第1の複数のサンプルアセンブリのうちの1つであり、測定された溶融層厚さ432は約289ミクロンである。
【0040】
図5に、第1のパーツ510、第2のパーツ520、および溶着接合部530を含む一例としてのサンプルアセンブリ500を断面切断したものを示す。溶着接合部530は溶融層厚さ532を有し、その溶融層厚さ532は、断面切断されたサンプルアセンブリ500を検査することで測定できるものである。この例では、サンプルアセンブリ500は、溶着プロセスに従って約1.0mm/秒の溶着速度で(たとえばステップ303において)作成された第2の複数のサンプルアセンブリのうちの1つであり、測定された溶融層厚さ532は約356ミクロンである。
【0041】
図6に、第1のパーツ610、第2のパーツ620、および溶着接合部630を含む一例としてのサンプルアセンブリ600を断面切断したものを示す。溶着接合部630は溶融層厚さ632を有し、その溶融層厚さ632は、断面切断されたサンプルアセンブリ600を検査することで測定できるものである。この例では、サンプルアセンブリ600は、溶着プロセスに従って約0.5mm/秒の溶着速度で(たとえばステップ303の1回目の繰り返し時に)作成された第3の複数のサンプルアセンブリのうちの1つであり、測定された溶融層厚さ632は約469ミクロンである。
【0042】
図7に、第1のパーツ710、第2のパーツ720、および溶着接合部730を含む一例としてのサンプルアセンブリ700を断面切断したものを示す。溶着接合部730は溶融層厚さ732を有し、その溶融層厚さ732は、断面切断されたサンプルアセンブリ700を検査することで測定できるものである。この例では、サンプルアセンブリ700は、溶着プロセスに従って、0.4mm/秒から0.25mm/秒に直線的に減少するプロファイルを有する溶着速度で(たとえばステップ303の2回目の繰り返し時に)作成された第4の複数のサンプルアセンブリのうちの1つであり、測定された溶融層厚さ732は約535ミクロンである。
【0043】
図8に、第1のパーツ810、第2のパーツ820、および溶着接合部830を含む一例としてのサンプルアセンブリ800を断面切断したものを示す。溶着接合部830は溶融層厚さ832を有し、その溶融層厚さ832は、断面切断されたサンプルアセンブリ800を検査することで測定できるものである。この例では、サンプルアセンブリ800は、溶着プロセスに従って、0.25mm/秒から0.4mm/秒に直線的に増加するプロファイルを有する溶着速度で(たとえばステップ303の3回目の繰り返し時に)作成された第5の複数のサンプルアセンブリのうちの1つであり、測定された溶融層厚さ832は約561ミクロンである。
【0044】
図3に戻ると、方法300のステップ305は、ステップ301で得られた第1の複数のサンプルアセンブリおよびステップ303で得られた第2の複数のサンプルアセンブリ(およびステップ302およびステップ303を1回または複数回繰り返した際に作成された任意の追加のサンプルアセンブリ群)において、破壊荷重を測定することを含む。破壊荷重とは、応力(たとえば引張応力)下でサンプルアセンブリに破壊(たとえば破損)を生じさせる荷重(たとえば印加される力)である。したがって、破壊荷重は、サンプルアセンブリの引張強度を示す。いくつかの実施形態では、ステップ305は、サンプルアセンブリに引張力を(たとえば引張試験用の固定具を使用して)印加することを含む。さらに、いくつかの実施形態では、ステップ305は、試験対象の各サンプルアセンブリ群内の複数のアセンブリについて測定された破壊荷重の平均値および/または標準偏差を求めること(たとえば、各サンプルアセンブリ群の15個のサンプルアセンブリの破壊荷重の平均値を求めること)を含む。
【0045】
図4~
図8に示すステップ304の実施形態例に戻る。各サンプルアセンブリ群内のサンプルアセンブリを引張試験して、破壊荷重を特定した。具体的には、サンプルアセンブリ群のそれぞれから15個のサンプルを引張試験した。表2(下記)に、溶着速度と、溶融層厚さと、破壊荷重との関係を要約する。
【0046】
【0047】
方法300のステップ306は、所定の溶着強度に対応する1つの溶融層厚さを、複数の測定された溶融層厚さ(ステップ304)から選択することを含む。本明細書で論じるように、本発明者らは、溶着接合部の溶融層の厚さが溶着接合部の強度と密接に相関することを発見した。サンプルアセンブリ群のそれぞれは、(1)測定された溶融層厚さ(ステップ304)と、(2)平均破壊荷重(ステップ305)とに関連付けられる。本明細書で論じるように、平均破壊荷重は、溶着接合部の強度を示す。平均破壊荷重がサンプルアセンブリを構成するパーツ(たとえば、第1のパーツ110および/または第2のパーツ)の母材強度に等しい場合、そのことは、溶着接合部の強度が少なくとも母材強度と同じ強度であることを意味する。溶着の利用事例において、母材強度と少なくとも同じ強度の溶着接合強度は望ましい。したがって、測定された(ステップ305で得られた)平均破壊荷重を調べ、どの測定された平均破壊荷重が所定の(たとえば母材強度以上の)溶着強度に対応するかを特定することにより、関連する溶融層厚さ(ステップ304で得られたもの)を選択することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、ステップ306は、測定された平均破壊荷重および測定された溶融層厚さ(たとえばy軸上に表示)を、変更された第1の溶着プロセス設定(たとえばx軸上に表示)に対してプロットしたグラフを作成することを含み得る。
図9に、
図4~
図8に示した例について、溶融層厚さと、破壊荷重と、第1の溶着プロセス設定(溶着速度)との関係を表すグラフの一例を示す。図示のように、測定された平均破壊荷重と測定された溶融層厚さとは、直線的に相関している。つまり、溶融層厚さが増加すると、平均破壊荷重(溶着強度)は増加する。ただし、それらの値が増加し続けるある時点で、平均破壊荷重は、サンプルアセンブリの母材強度(たとえば、アセンブリ100の第1のパーツ110および/または第2のパーツ120の材料強度)に近づくか、または等しくなる。母材強度の限界があるため、この時点で溶融層厚さがさらに増加しても、アセンブリの全体強度は影響されない。したがって、関連する破壊荷重が母材強度に等しいかまたは非常に近い(たとえば1%または5%以内である)溶融層厚さを選択することが、一般的に望ましい。
【0049】
たとえば、
図9の例では、第5の複数のサンプルアセンブリ(
図8)の溶融層厚さ(561ミクロン)が選択され、その理由は、関連する平均破壊荷重(3997N)がグラフ上の最大値であるためである。当該溶融層厚さは、0.25mm/秒から0.4mm/秒に直線的に増加するプロファイルを有する溶着速度を用いて形成されたものである。溶融開始時の速度が遅く、溶着の中盤と終盤の速度が速いと、溶着強度が増加し、溶着時間が短縮され、表面のマーキングが減少する。言い換えると、直線的に増加する溶着速度プロファイルによって、より大きくより均一な溶融層が生成される。
【0050】
ステップ306で溶融層厚さの選択のために用いられる所定の溶着強度は、上記の代わりに、母材強度の所定のパーセンテージであり得る。たとえば、所定のパーセンテージは、母材強度の約50%~約100%の範囲内(たとえば、母材強度の約50%、母材強度の約67%、母材強度の約75%、母材強度の約80%、母材強度の約90%、母材強度の約95%、母材強度の約100%、母材強度の少なくとも約60%、母材強度の少なくとも約75%、母材強度の少なくとも約80%、母材強度の少なくとも約90%、母材強度の少なくとも約95%など)であることが可能である。
【0051】
方法300のステップ307は、ステップ306で選択された溶融層厚さに関連する溶着プロセス設定を用いて生産アセンブリを作成することを含む。本明細書に記載のサンプルアセンブリとは異なり、生産アセンブリは、試験目的(たとえば破壊試験のため)ではなく、消費者のために製造される(たとえば大量生産される)溶着アセンブリである。本明細書に記載したように、様々な溶着プロセス設定(たとえば溶着速度、動的ホールド距離、動的ホールド速度など)を調整することで、ステップ306で得られた溶融層厚さと実質的に同じ溶融層厚さを有する溶着接合部を生産アセンブリが含む(たとえば、生産アセンブリの溶融層の厚さが、ステップ306で選択された溶融層厚さの±1%~5%以内である)ようにできる。それにより、生産アセンブリは、所定の溶着強度を有するようになる。
【0052】
いくつかの実施形態では、ステップ306で選択された溶融層厚さを用いて方法300のステップ301~305を繰り返して、別の溶着プロセス設定を変更することができる。たとえば、溶着速度の値をステップ302で変更した場合、方法300を1回または複数回繰り返して、たとえば動的ホールド速度や動的ホールド距離などの追加の溶着設定パラメータも変更することができる。
【0053】
図10に、時間(x軸を参照のこと)に対してプロットされた力と距離との関係(y軸を参照のこと)を表すグラフの一例を示す。ここで説明する具体例では、0.25mm/秒~0.4mm/秒のプロファイルを有する溶着速度が最良の結果をもたらした。
図10のグラフに示すように、プロセスの後半段階で適度な力を加えることにより、安定した線形変位速度が得られた。安定した溶融速度によって、均質な分子構造と、より強力な溶着とが形成される。
【0054】
下記表3を参照すると、ステップ306で選択された溶融層厚さに関連する溶着速度(この例では0.25mm/秒~0.4mm/秒)を用いて、溶着プロセスの動的ホールド距離の設定を(たとえば25ミクロン~175ミクロンの範囲内で)、および/または、溶着プロセスの動的ホールド速度の設定を(たとえば1mm/秒~3mm/秒の範囲内で)変更しながら、方法300を繰り返すことができる。続いてステップ305を繰り返して、変更された溶着プロセス設定を用いて作成された各サンプルアセンブリ群について破壊荷重を測定することができる。
【0055】
【0056】
表3に示すように、線形プロファイルの0.25mm/秒~0.4mm/秒の溶着速度を用いて作成された全てのサンプルアセンブリにおいて、動的ホールド速度値および/または動的ホールド距離値に関係なく、破壊は母材から生じた。
【0057】
図11に、0.175mmの動的ホールド距離と、1mm/秒の動的ホールド速度および3mm/秒の動的ホールド速度とについての、力対距離の関係を表すグラフの一例を示す。
図12に、0.0375mm(37.5ミクロン)の動的ホールド距離と、1mm/秒の動的ホールド速度および3mm/秒の動的ホールド速度とについての、力対距離の関係を表すグラフの一例を示す。
図11および
図12のグラフは、3mm/秒の動的ホールド速度で形成された溶着部が、一般に、1mm/秒の動的ホールド速度で形成された溶着部よりも、動的ホールドサイクル中の力/時間曲線が急勾配であることを示している。
【0058】
図13に、第1のパーツ1310、第2のパーツ1320、溶着接合部1330、および溶融層厚さ1332を含む第6のサンプルアセンブリ1300の断面画像の一例を示す。
図13の第6のサンプルアセンブリ1300は、37.5ミクロンの動的ホールド距離と、1mm/秒の動的ホールド速度とを用いて作成された。
【0059】
図14に、第1のパーツ1410、第2のパーツ1420、溶着接合部1430、および溶融層厚さ1432を含む第7のサンプルアセンブリ1400の断面画像の一例を示す。
図14の第7のサンプルアセンブリ1400は、75ミクロンの動的ホールド距離と、1mm/秒の動的ホールド速度とを用いて作成された。
【0060】
図15に、第1のパーツ1510、第2のパーツ1520、溶着接合部1530、および溶融層厚さ1532を含む第8のサンプルアセンブリ1500の断面画像の一例を示す。
図15の第8のサンプルアセンブリ1500は、125ミクロンの動的ホールド距離と、1mm/秒の動的ホールド速度とを用いて作成された。
【0061】
いくつかの実施形態では、方法300は、変更された動的ホールド距離および/または動的ホールド速度を用いて作成されたサンプルアセンブリ(たとえば
図13~
図15と同じまたは類似のもの)の断面を(たとえば顕微鏡を使用して)検査することをさらに含むことができる。
図13~
図15の例では、37.5ミクロンの最小動的ホールド距離に達した後には、動的ホールド距離値の増加に関係なく、溶融層厚さは変化しなかった。材料が固化するにつれて、追加の溶着潰れ(weld collapse)をもたらすために必要な力をさらに増加しても、追加の材料変位は生じないが、代わりに溶着接合部の残留応力が増加する。これらの結果(
図11~
図15)は、溶けた材料に適度な力を加えることにより、動的ホールドフェーズ中にいくらかの材料変位が発生し、それが、溶着強度と、引張強度の標準偏差の縮小とにおいて有利に働くことを示す。材料が固化するにつれて、追加のホールド潰れ(hold collapse)をもたらすために力をさらに増加しても、追加の材料変位は生じず、溶着部の残留応力が増加する。
【0062】
特定の溶着速度プロファイルおよび動的ホールド設定を、アセンブリの界面における均質な溶融層の形成に関連付けると、最適な溶着パラメータの選択が容易になる。溶融層の厚さは溶着接合部の強度と密接に相関しているため、溶融層の厚さは、結果として得られる溶着品質の主要な予測因子である。サーボ駆動式超音波溶着器における溶着サイクルの全段階で材料の流動を制御する性能により、操作者は、既知の溶着強度に相関する溶融層特性の明確な範囲を経験的に確立することができる。それにより、操作者は、最良の速度プロファイルおよび動的ホールドパラメータを再利用して、特定の接合部形状に最適な溶融層厚さを生成できる。サーボ駆動式超音波溶着器の高い再現性および精度を考慮すると、製造プロセスでそれらの設定を維持することにより、予想通りの溶融層厚さおよび接合強度が得られるはずである。本明細書に記載される、溶着プロセス設定を選択して溶着プロセスを制御する方法は、製造作業において溶着品質を保証するよりロバストな方法をユーザに提供する。
【0063】
方法300を、サーボ制御式超音波溶着プロセスにおいて使用されるものとして説明してきたが、より全般的には、本明細書で開示されるいずれの方法も、たとえば非サーボ制御式溶着プロセス、空気圧駆動式超音波溶着プロセス、レーザー溶着プロセス、赤外線溶着プロセス、またはホットプレート溶着プロセスなどの、他の任意の溶着プロセスにおいて使用することができる。
【0064】
1つまたは複数の具体的な実施例または実施形態との関連で本開示の内容を説明してきたが、当業者であれば、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、それらに多くの変更を加えることができると認識するであろう。当該実施形態および明らかな変形例のそれぞれが、本開示の趣旨および範囲内に属すると考えられる。また、本開示の態様に従った追加の実施形態が、本明細書に記載の実施形態のいずれかにおける特徴を任意の数だけ兼ね備える場合があると想定される。