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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】大腿骨頸部切除治具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/15 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
A61B17/15
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020572959
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019066596
(87)【国際公開番号】W WO2020002190
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】1810479.4
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1904244.9
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516312682
【氏名又は名称】デピュイ・アイルランド・アンリミテッド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】DEPUY IRELAND UNLIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】Loughbeg Industrial Estate, Ringaskiddy, County Cork, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ビバーランド・デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ブッシェル・サラ
(72)【発明者】
【氏名】ネイラー・ジェイソン
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0236341(US,A1)
【文献】特表2016-506848(JP,A)
【文献】米国特許第04959066(US,A)
【文献】国際公開第02/026145(WO,A1)
【文献】米国特許第05578037(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
股関節置換術の手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を実行するための外科的装置であって、前記外科的装置が、
本体部分であって、前記本体部分が、
開口部を備えるフレームであって、前記開口部が、前記大腿骨の大腿骨頭部を受容して、前記本体部分を前記大腿骨頭部の中心に対して位置付けるように寸法決めされている、フレーム、
前記大腿骨頸部上の切除平面のポジションを示すための切除ガイド、及び
前記フレームから延在し、大腿骨頭部オフセットを読み取るためのマーキングを含む、アーム、を備える、本体部分と、
前記大腿骨の髄内管内に位置する髄内ロッド上に前記本体部分を装着するため、及び前記アームをスライド可能に受容するためのコネクタと、を備え、
前記コネクタが、ポインタを含み、前記大腿骨頭部オフセットが、前記アーム上の前記マーキングに対する前記ポインタの前記ポジションを読み取ることによって示される、外科的装置。
【請求項2】
前記コネクタが、前記アームをスライド可能に受容するように構成されたスロットを備える、請求項1に記載の外科的装置。
【請求項3】
前記コネクタが、前記アームに沿った位置で前記コネクタをロックするためのロック機構を更に備える、請求項1又は2に記載の外科的装置。
【請求項4】
前記コネクタが、中を通して前記アーム上の前記マーキングを視認することができる、視認用窓を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の外科的装置。
【請求項5】
前記コネクタが、切断スロットを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の外科的装置。
【請求項6】
前記コネクタが、近位端及び遠位端を有し、前記切断スロットが、前記遠位端から近位方向に延在する、請求項5に記載の外科的装置。
【請求項7】
前記切除ガイドが、前記大腿骨頸部上の切除平面のポジションを示すためのガイドスロット又はガイド面を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の外科的装置。
【請求項8】
前記ガイドスロットが、前記頸部の前記切除中に切断デバイスのブレードを受容するための切断スロットである、請求項7に記載の外科的装置。
【請求項9】
前記フレームが、前記大腿骨頭部上に前記フレームを取り外し可能に装着するための骨ピンを取り外し可能に受容するように構成されたピン穴を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の外科的装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股関節置換術の手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を実行するための外科的デバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
股関節置換術は、股関節を人工関節インプラントに置換する外科的手技である。股関節全置換術において、患者の天然の股関節は、寛骨臼ソケットに取って代わる寛骨臼カップ構成要素と、大腿骨頭部に取って代わる大腿骨構成要素と、によって、置換される。
【0003】
かかる外科的手技中に、大腿骨の病変部分は、通常、大腿骨頸部の一部分に沿って切除することによって切り取られる。人工関節の大腿骨構成要素及び人工関節の大腿骨頭部が、外科的に除去される天然の構造に取って代わる。人工関節の大腿骨構成要素の位置付けは、大腿骨頭部のソケット(すなわち、寛骨臼シェル)内に大腿骨頭部が適切に収まり、滑らかに回転することを確実にするために重要である。
【0004】
股関節置換術の手術などの関節再建を実行する際、骨構造の手術前の形状が手術後の構造において複製されることが重要である。天然の関節の生体力学を維持し、関節と軟組織との適切なバランスを確実にとることが重要である。これが達成されない場合、より大きな関節力、及び全体的な関節の不安定性が生じる場合がある。
【0005】
したがって、整形外科的インプラントの構造が患者内部に適切に配置されることを確実にする必要がある。人工股関節の場合、寛骨臼シェル内での大腿骨頭部の回転の生来の解剖学的中心が、置換構造の移植中に位置特定及び維持されることが重要である。人工股関節の大腿骨構成要素の移植中の回転の中心の誤配置は、患者の下肢の長さに影響を与える可能性があり、患者にとって非常に不満足な結果をもたらし得る。
【0006】
主要な全股関節形成術において、測定によって大腿骨頭部の自然なオフセット及び頸部長さを決定することが重要である。オフセットは、大転子上の点から大腿骨頭部の中心まで測定され得る。頸部長さは、小転子の点から大腿骨頭部の中心まで測定され得る。
【0007】
米国特許第6,258,097号には、手術後の関節形状を手術前の関節形状と比較するための整形外科的器具が開示されている。当該器具は、ボール関節のボールに固定され得るヘッドチャックと、上に基準印を有するアームと、を含む。手術前の関節形状を示すマーキングが、ボール関節の中心を基準にして骨に対して行われる。人工関節ボールとの置換後、術後の形状は、ヘッドチャックを人工関節ボールに固定し、骨のマーキングの位置をアーム上の基準印と比較することによって検証される。必要に応じて、人工関節構成要素に調節が行われる。
【0008】
画像に基づくシステムもまた、大腿骨頭部の中心を位置特定するために股関節形成術において広く使用されている。当該システムは、術前撮像及び術中検証を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
手術中に実行される、エラーが生じやすい複雑な数学的計算を必要とせずに、外科医が大腿骨頭部オフセットを測定するのを支援する外科的器具が依然として必要とされている。人工関節内で股関節の回転の解剖学的中心を再現するために、外科医が適切な切除平面で大腿骨頸部を切除するのを支援する外科的器具も依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載される。従属請求項からの特徴の組み合わせは、独立請求項の特徴と適宜組み合わせることができ、請求項に明示的に記載されるものだけに限定されない。
【0011】
股関節置換術の手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を実行するための外科的装置であって、外科的装置が、
本体部分であって、
開口部を備えるフレームであって、開口部が、大腿骨の大腿骨頭部を受容して、本体部分を大腿骨頭部の中心に対して位置付けるように寸法決めされている、フレーム、
大腿骨頸部上の切除平面のポジションを示すための切除ガイド、及び
フレームから延在し、大腿骨頭部オフセットを読み取るためのマーキングを含む、アーム、を備える、本体部分と、
大腿骨の髄内管内に位置する髄内ロッド上に本体部分を装着するため、及びアームをスライド可能に受容するためのコネクタと、を備え、
コネクタが、ポインタを含み、大腿骨頭部オフセットが、アーム上のマーキングに対するポインタのポジションを読み取ることによって示される、外科的装置が提供される。
【0012】
本発明による外科的装置は、大腿骨頸部切除治具である。本装置は、大腿骨頭部の中心を決定するための「画像に基づく」システムではなく、「現実に基づく」システムである。これは、装置が実際のインサイチューの大腿骨頭部を使用して、大腿骨頭部の中心を切除前に位置特定するためであるからである。したがって、本明細書に記載の外科的装置は、従来の「画像に基づく」システムと比較して、この重要な解剖学的パラメータを位置特定するための、少なくともより迅速、より安価、使用がより簡単、及びより正確な手段を提供する。
【0013】
この概念は、大腿骨頭部の中心を見つけること、次いでその大腿骨頭部の中心に対して頸部切除を行うことに基づく。
【0014】
フレーム
フレームは、大腿骨頭部に取り外し可能に装着されるように寸法決めされた単純なリング構造である。フレームの開口部は、装置の本体部分を大腿骨頭部の中心に対して位置付ける。フレームは、当業者によって「スフェロメータ」と称され得る。前方側面と比較して真球度をより維持すると思われるため、変形性関節症の後期ステージ中であっても、大腿骨頭部の後方側面を使用して、大腿骨頭部の中心を決定することができることが実証されている。しかしながら、外科的装置の使用は、大腿骨頭部の後方側面上へのフレームの装着に限定されず、フレームが大腿骨頭部の前方側面に装着され得ることも想定される。
【0015】
フレームは、大腿骨頭部上にフレームを取り外し可能に装着するための骨ピンを取り外し可能に受容するように構成されたピン穴を含み得る。
【0016】
ピン穴は、ピン穴が大腿骨頭部の中心に向かって向くように角度付けされ得る(すなわち、ドリルガイド穴は、大腿骨頭部の表面に対して90度に配向される)。
【0017】
任意選択的に、フレームはまた、ピン穴に隣接する「R」及び「L」ラベルを含む。これらのラベルは、「右股関節」又は「左股関節」を指す。ピン穴の角度付けにより、ラベルは、手術が左股関節又は右股関節に対して実行されているかどうかに応じて、使用するピン穴を外科医に知らせる。これにより、骨ピンがピン穴に挿入されると、ピンが大腿骨頭部から離れる方向ではなく、大腿骨頭部に向かって方向付けられることを確実にする。
【0018】
切除ガイド
切除ガイドは、フレームから延在する。切除ガイドは、大腿骨頸部上の第1の切除平面のポジションを示すための第1の切除ガイド面を画定する、第1の縦方向外側縁部を含み得る。
【0019】
切除ガイドは、大腿骨頸部上の第2の切除平面のポジションを示すための第2の切除ガイド面を画定する、第2の縦方向外側縁部を含み得る。
【0020】
第1の切除ガイド面は、第1の切除ガイド面が、標準的なオフセットの頸部切除平面に対応する切除平面を表し、第2の切除ガイド面が、高いオフセットの頸部切除平面に対応する切除平面を表すように、第2の切除ガイド面の近位に位置し得る。
【0021】
切除ガイドのいくつかの構成では、第1及び第2の切除ガイド面は平行である。
【0022】
切除ガイドは、第1の切除ガイドスロット及び第2の切除ガイドスロットを含み得る。第1及び/又は第2の切除ガイドスロットは、切断工具のブレードを受容するように寸法決めされた切断スロットとして構成され得る。
【0023】
第1の切除ガイドスロットは、第1の切除ガイドスロットが、標準的なオフセットの頸部切除平面に対応する切除平面を表し、第2の切除ガイドスロットが、高いオフセットの頸部切除平面に対応する切除平面を表すように、第2の切除ガイド面に近位に位置し得る。
【0024】
第1及び第2の切除ガイドスロットは、実質的に平行であってもよい。
【0025】
切除ガイドスロットは、どのスロットが標準的なオフセットの頸部切除平面を示すか、及びどのスロットが高いオフセットの頸部切除平面を示すかを、外科医が視覚的に区別するのを助けるように色分けされ得る。例えば、スロットの周辺縁部は色を備えることができる。緑の周辺縁部を有するスロットを使用して、標準的なオフセットの頸部切除平面に使用されるスロットを視覚的に示すことができる。赤い周辺内縁部を有するスロットを使用して、高いオフセットの頸部切除平面に使用されるスロットを視覚的に示すことができる。
【0026】
アーム
外科医が真の大腿骨頸部オフセットを視覚化することを可能にする、アーム上のマーキングは、スケール(例えば、目盛線)の形態であってもよい。例えば、スケールは、1mm刻みで目盛付けされ得る。スケールは、例えば、30mmで始まり、60mmで終了し得る。これは、非限定的な例である。
【0027】
マーキングは、測定された大腿骨頸部オフセットが標準的なオフセット及び/又は高いオフセットであるかどうかを外科医が視覚的に識別することを可能にする、色分けに関連付けられ得る。
【0028】
第1の範囲(例えば、30mm~40mm)内の大腿骨頭部オフセットを表す、アーム上の第1の一連のマーキングは、第1の色(例えば、緑)に関連付けられ得る。マーキングは、第1の色(例えば、着色されたインク)で提供され得るか、又は第1の色の背景上に提供され得る。コネクタのポインタが、測定された大腿骨頭部オフセットがこの第1の範囲内にあることを示す場合、外科医は、標準的なオフセットの切除ガイド面/スロットを使用する。
【0029】
第2の範囲(例えば、41mm~46mm)内の大腿骨頭部オフセットを表す、アーム上の第2の一連のマーキングは、第2の色(例えば、琥珀)に関連付けられ得る。マーキングは、第2の色(例えば、着色されたインク)で提供され得るか、又は第2の色の背景上に提供され得る。コネクタのポインタが、測定された大腿骨頭部オフセットがこの第2の範囲内にあることを示す場合、外科医は、標準的なオフセットの切除ガイド面/スロット、又は高いオフセットの切除ガイド面/スロットを使用するかどうかを決定するために、計画されたステムサイズを知る必要がある。
【0030】
第3の範囲(例えば、47mm~60mm)内の大腿骨頭部オフセットを表す、アーム上の第3の一連のマーキングは、第3の色(例えば、赤)に関連付けられ得る。マーキングは、第3の色(例えば、着色されたインク)で提供され得るか、又は第3の色の背景上に提供され得る。コネクタのポインタが、測定された大腿骨頭部オフセットがこの第3の範囲内にあることを示す場合、外科医は、高いオフセットの切除ガイド面/スロットを使用する。
【0031】
マーキングは、アームの反対側の表面上に提供され得る。これにより、アームを右又は左大腿骨頭部のいずれかに使用することができる。
【0032】
コネクタ
コネクタは、近位端及び遠位端と、それらの間に延在する縦軸と、を有する。コネクタが髄内ロッド上に装着されている場合、コネクタの縦軸は、大腿骨シャフト軸と実質的に平行である。
【0033】
いくつかの構成では、コネクタは、髄内ロッドを上下に進むように構成され得る。これを使用して、フレームが大腿骨頭部の中心を位置特定するために正しい高さにあることを確実にすることができる。
【0034】
アームは、摩擦嵌めによってコネクタのスロット内に保持され得る。任意選択的に、コネクタは、アームの長さに沿った位置でコネクタをロックするためのロック機構を更に備える。このロック機構は、ロックねじの形態をとり得る。
【0035】
アーム上のマーキングが、アームがコネクタと共に組み立てられたときに外科医に見えるようにするために、コネクタは、中を通してマーキングの少なくとも一部が視認可能である、視認用窓を含み得る。
【0036】
いくつかの構成では、ポインタは、視認用窓から近位方向及び/又は遠位方向に延在する線の形態であってもよい。
【0037】
任意選択的に、ポインタは、尖った突起部として画定され得る。
【0038】
コネクタは、大腿骨頸部上の垂直な切除平面のポジションを示すための切除スロット又は切除ガイドを更に含み得る。いくつかの構成では、コネクタは下方表面を有し、切除ガイドは下方表面から上方方向に延在する。これは、垂直な大腿骨頸部の切断の配置用に外科医を案内する。
【0039】
切除ガイドは、頸部切除中に切断デバイスのブレードを受容するための切断スロットであってもよい。
【0040】
本発明の第2の態様によれば、外科的装置を使用して股関節置換術の手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を実行するための方法であって、前記外科的装置が、
本体部分であって、
開口部を備えるフレームであって、開口部が、大腿骨の大腿骨頭部を受容して、本体部分を大腿骨頭部の中心に対して位置付けるように寸法決めされている、フレーム、
大腿骨頸部上の切除平面のポジションを示すための切除ガイド、及び
フレームから延在し、大腿骨頭部オフセットを読み取るためのマーキングを含む、アーム、を備える、本体部分と、
大腿骨の髄内管内に位置する髄内ロッド上に本体部分を装着するためのコネクタと、を備え、アームが、コネクタに対してスライド可能に調節可能であり、コネクタが、ポインタを含み、大腿骨頭部オフセットが、アーム上のマーキングに対するポインタのポジションを読み取ることによって示され、
コネクタを髄内釘上に装着することと、
コネクタをアームと共に組み立てることと、
アームをコネクタに対してスライド可能に調節することによって、フレームを大腿骨頭部上に装着することと、
アーム上のマーキングに対するポインタの位置を決定することによって、大腿骨頭部オフセットを測定することと、
切除ガイドを使用して、
大腿骨の頸部上の切除平面のポジションをマークすること、又は
大腿骨の頸部を切除するように切断デバイスのブレードを案内すること、のいずれかを行うことと、を含む、方法が提供される。
【0041】
フレームは、大腿骨頭部の後方側面上に取り外し可能に装着され得る。代替的に、フレームは、大腿骨頭部の前方側面上に取り外し可能に装着され得る。
【0042】
コネクタは、アームをスライド可能に受容するように構成されたスロットを含むことができ、コネクタをアームと共に組み立てる工程は、アームをスロットにスライド可能に挿入する工程を含む。
【0043】
フレームは、大腿骨頭部上にフレームを取り外し可能に装着するための骨ピンを取り外し可能に受容するように構成されたピン穴を含むことができ、フレームを大腿骨頭部上に装着する工程は、ピン穴を通して骨ピンを挿入する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明の構成を、単なる例として、添付図面を参照しながら以下に説明する。なお、図中、同様の参照符合は同様の要素を示す。
図1】本発明による外科的装置の第1の構成を例示している。
図2】本発明による外科的装置の第2の構成を例示している。
図3】本発明による外科的装置の第3の構成を例示している。
図4】本発明による外科的装置の第4の構成を例示している。
図5】本発明による外科的装置の第5の構成を例示している。
図6】本発明による外科的装置の第6の構成を例示している。
図7】本発明による外科的装置の第7の構成を例示している。
図8】本発明による外科的装置の第8の構成を例示している。
図9A】股関節置換術の手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を実行するための外科的手技を例示している。
図9B】股関節置換術の手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を実行するための外科的手技を例示している。
図9C】股関節置換術の手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を実行するための外科的手技を例示している。
図9D】股関節置換術の手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を実行するための外科的手技を例示している。
図9E】股関節置換術の手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を実行するための外科的手技を例示している。
図9F】股関節置換術の手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を実行するための外科的手技を例示している。
図9G】股関節置換術の手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を実行するための外科的手技を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1に示される外科的装置100は、本体110を含む。本体は、フレーム120、切除ガイド130、及びアーム140を含む。外科的装置はまた、外科的装置の本体部分を髄内ロッド上に装着するために使用される、コネクタ150を含む。本体は、一体型部品であってもよい。これは、製造の観点から有利であり、かつまた装置の滅菌にも有利である。本体は、金属、例えば、ステンレス鋼から製造され得る。金属の好適な厚さの非限定的な例は、約6mmである。
【0046】
フレーム120は、大腿骨の大腿骨頭部上に装着可能である。フレームを使用して、本体部分を大腿骨頭部の中心に対して位置付ける。
【0047】
フレームは、ピン穴122を含み、これらの各々は、大腿骨頭部上にフレームを取り外し可能に装着するための骨ピンを受容するように寸法決めされている。ピン穴は、ドリルガイド穴が大腿骨頭部の中心に向かって向くように角度付けされ得る(すなわち、ドリルガイド穴は、大腿骨頭部の表面に対して90度に配向される)。
【0048】
フレームはまた、ピン穴に隣接する「R」及び「L」ラベルを含む。これらのラベルは、「右股関節」又は「左股関節」を指す。ピン穴の角度により、ラベルは、手術が左股関節又は右股関節に対して実行されているかどうかに応じて、使用するピン穴を外科医に知らせる。これにより、骨ピンがピン穴に挿入されるときに、ピンが大腿骨頭部から離れる方向ではなく、大腿骨頭部に向かって方向付けられることを確実にする。
【0049】
切除ガイド130は、大腿骨頸部上の切除平面のポジションを外科医に視覚的に示す。示される構成では、切除ガイドは、2つの実質的に平行な切除ガイドスロット131、132を含む。各切除ガイドスロットは、大腿骨頸部の切除中に切断デバイスのブレードを受容するように構成されている。
【0050】
切除ガイドスロット131は、標準的なオフセットの頸部切除平面を示す。切除ガイドスロット132は、高いオフセットの頸部切除平面を示す。標準的なオフセットの頸部切除平面と高いオフセットの頸部切除平面との間の差は、約7mmになる。切除ガイドスロット131、132を使用する大腿骨頸部の切除は、図9Gを参照して以下で更に例示される。本設計は、カルカーの上で内側に閉じ、転子に向かって横方向に開いている。切除ガイドスロット131、132のいずれかの使用は、計画された頸部切除の2mmの保存的な大腿骨頸部切除をもたらす。これにより、大腿管の準備後のカルカーリーマーの使用が可能になる。
【0051】
アーム140は、大腿骨頭部オフセットを読み取るために使用されるマーキング142を含む。この構成のマーキングは、目盛付けされたスケールの形態をとる。この構成に示されるスケールは、1mm刻みであり、30mm(すなわち、30mmの大腿骨頭部オフセット)から始まり、60mm(すなわち、60mmの大腿骨頭部オフセット)で終わる。同じスケールをアームの反対側の表面上に提供することができる。アーム上に提供される、例えば、右を表す「R」又は左を表す「L」のマーキングは、どちらの側のアームを使用するかを外科医に示す。
【0052】
コネクタ150は、外科的装置の本体部分を髄内ロッド上に装着するために使用される。示される構成では、コネクタは、髄内ロッド上に装着されるが、それにはロックされないように設計されている。装着は、摩擦嵌めを介してもよい。これにより、コネクタは、髄内ロッドを上下に移動することができる。任意選択的に、コネクタを髄内ロッドにロックするためのロック機構が含まれてもよい。
【0053】
コネクタは、アーム140をスライド可能に受容するように構成されたスロット152を含む。スロット152は、コネクタの縦軸(Y)を横断する、スロット軸(X)を有する。示される構成では、スロット軸は、コネクタの縦軸に対して約45度で角度付けされている。
【0054】
コネクタはまた、略矩形の視認用窓154を含む。視認用窓の寸法は、外科医がアーム140上の隣接するマーキング142の一部分を視認することができるようなものである。例えば、外科医は、少なくとも2つの隣接するマーキングを視認することができる。外科的装置のこの第1の構成に示されるように、視認用窓は、外科医が36mm~50mmのマーキングを見ることができるほど十分に大きい。
【0055】
コネクタはまた、コネクタの近位端と視認用窓154の近位面との間に延在する線の形態で本明細書に示される、ポインタ155を含む。アーム上のマーキング142に対するコネクタ上の線155のポジションは、外科医に大腿骨頭部オフセットの即時の視覚的読み出しを提供する。示される構成では、線155は、目盛付けされたスケールの44mmの増分と整列している。したがって、外科医は、大腿骨頭部オフセットが44mmであることを理解することができる。有利には、本発明の外科的装置を使用することによって、外科医は、時間がかかることに加えて、人為的過誤が生じやすい場合がある、いかなる暗算も行う必要がない。
【0056】
コネクタは、「R」及び「L」ラベルを含み得る。これらは、「右股関節」及び「左股関節」を指す。アームは対称性であるため、左股関節又は右股関節のいずれかで使用するためにコネクタをひっくり返すことができる。
【0057】
この構成に示されるように、ロック機構156がコネクタ上に提供され、これを使用して、アーム140とコネクタ150とを一緒にロックすることができる。これは、コネクタに対するアームのいかなる偶発的なスライド運動も防止し、それによって、大腿骨頭部オフセットの正確な読み取りが行われることを確実にする。示される構成では、ロック機構は、コネクタの近位端157に提供されたロックねじの形態である。このロックねじは、アームの近位面及び/又は遠位面上に提供された溝内でロック係合するように構成されている。この溝を図2に示す。この構成に示される溝は、アームの内側及び外側の端部まで延在しない。したがって、溝は、閉じ込められた溝である。これは、アームがコネクタ内で自由にスライドしている間、コネクタが、適所にロックされるまで、手術中にアームの端部から偶発的に落下しないことを確実にする。任意選択的に、溝は、アームの全長に沿って延在し得る。
【0058】
コネクタの遠位端158には切断スロット159が提供されている。このスロットを使用して、大腿骨頸部の垂直な切除を実行することができる。これは、図9Gを参照して以下に例示されている。
【0059】
外科的装置200の第2の構成が図2に示されている。本構成は、外科医を視覚的に助けるために色分けを使用すること以外、第1の構成と本質的に同じである。外科的装置のこの構成における同様の部分は、図1のものと同じ参照番号を100ずつ増分したものを使用して参照される。
【0060】
マーキング242は、測定された大腿骨頸部オフセットが標準的な頸部オフセット及び/又は高い頸部オフセットであるかどうかを外科医が視覚的に識別することを可能にする、色分けに関連付けられている。
【0061】
アーム240上に提供された第1の一連のマーキング242aは、30mm~40mmの第1の範囲内の大腿骨頭部オフセットを表す。マーキングは黒であり、緑の背景上に提供される。これは、大腿骨頭部オフセットの「緑の範囲」と称される。
【0062】
アーム240上に提供された第2の一連のマーキング242bは、41mm~46mmの第2の範囲内の大腿骨頭部オフセットを表す。マーキングは黒であり、琥珀の背景上に提供される。これは、大腿骨頭部オフセットの「琥珀の範囲」と称される。
【0063】
アーム240上に提供された第3の一連のマーキング242cは、47mm~60mmの第2の範囲内の大腿骨頭部オフセットを表す。マーキングは黒であり、赤の背景上に提供される。これは、大腿骨頭部オフセットの「赤の範囲」と称される。
【0064】
切除ガイドスロット231、232は、マーキング(242a、242c)と同様の方法で色分けされる。したがって、切除ガイドスロット232(標準的なオフセットの切除平面を示す)は緑で縁取りされ、切除ガイドスロット231(高いオフセットの切除平面を示す)は赤で縁取りされる。
【0065】
使用中、コネクタのポインタ255が、測定された大腿骨頭部オフセットが大腿骨頭部オフセットの緑の範囲内にあることを示す場合、外科医は、緑の切除ガイドスロット232を使用して頸部切除平面をマークする。
【0066】
使用中、コネクタのポインタ255が、測定された大腿骨頭部オフセットが大腿骨頭部オフセットの赤の範囲内にあることを示す場合、外科医は、赤の切除ガイドスロット231を使用して頸部切除平面をマークする。
【0067】
使用中、コネクタのポインタ255が、測定された大腿骨頭部オフセットが大腿骨頭部オフセットの琥珀の範囲内にあることを示す場合、外科医は、緑の切除ガイドスロット232又は赤の切除ガイドスロット231を使用して頸部切除平面をマークするかどうかを決定するために、計画されたステムサイズを知る必要がある。
【0068】
図3図8は、本発明による外科的装置の第3~第8の構成を例示している。図1及び図2を参照して上で論じられるように、外科的装置の本体(310、410、510、610、710、810)は、フレーム(320、420、520、620、720、820)、切除ガイド(330、430、530、630、730、及び830)、並びにアーム(340、440、540、640、740、840)を含む。外科的装置の各構成はまた、コネクタ(350、450、550、650、750、及び850)を含む。コネクタの異なる設計が、外科的装置の第3~第8の構成の各々に示されている。例えば、各コネクタは、それを髄内ロッドに装着するための機構によって変化する。更に、各コネクタは、ポインタの設計によって変化する。
【0069】
図9は、本発明の外科的装置の第2の構成が股関節形成術中に使用される、外科的工程の流れの非限定的な実施例を提供している。
【0070】
図9A:(完全に丸いカラーを有する)髄内ロッドが大腿管に挿入される。
【0071】
図9B:本発明による外科的装置が予め組み立てられる。これは、本体のアームをコネクタのスロット内にスライドさせることを伴う。
【0072】
図9C:次いで、組み立てられた外科的装置のコネクタ250が髄内ロッド上に装着される。外科医は、フレーム220が大腿骨頭部上に装着されるまで、アーム240を概して内側/外側方向にスライドさせる。次いで、アームが、ロックねじ256のノブを時計方向に回転させることによって、適所にロックされる。
【0073】
図9D:フレーム上のピン穴222を使用して、大腿骨頭部にドリル穴が穿孔される。次いで、フレームを固定するために、ピンが所定の角度で大腿骨頭部に挿入される。
【0074】
図9E:外科医は、アーム上のマーキング242を用いてポインタ255の相対位置を見ることによって、真の大腿骨頭部オフセット測定を行う。示されるように、ポインタ255は、44mmの大腿骨頭部オフセットを示したマーキングと整列する。特に、これは、大腿骨頭部オフセットの「琥珀の範囲」内にある。
【0075】
図9F:髄内釘/ロッドが大腿骨から除去される。
【0076】
図9G:次に、外科医は大腿骨頸部を切除する。この概略では、外科医は、コネクタ250上の切断スロット259を使用して、垂直な頸部切除を行い、赤の切除ガイドスロット231を使用して、高いオフセットの頸部切除を実行する。次いで、大腿骨頭部が除去される。
【0077】
〔実施の態様〕
(1) 股関節置換術の手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を実行するための外科的装置であって、前記外科的装置が、
本体部分であって、前記本体部分が、
開口部を備えるフレームであって、前記開口部が、前記大腿骨の大腿骨頭部を受容して、前記本体部分を前記大腿骨頭部の中心に対して位置付けるように寸法決めされている、フレーム、
前記大腿骨頸部上の切除平面のポジションを示すための切除ガイド、及び
前記フレームから延在し、大腿骨頭部オフセットを読み取るためのマーキングを含む、アーム、を備える、本体部分と、
前記大腿骨の髄内管内に位置する髄内ロッド上に前記本体部分を装着するため、及び前記アームをスライド可能に受容するためのコネクタと、を備え、
前記コネクタが、ポインタを含み、前記大腿骨頭部オフセットが、前記アーム上の前記マーキングに対する前記ポインタの前記ポジションを読み取ることによって示される、外科的装置。
(2) 前記コネクタが、前記アームをスライド可能に受容するように構成されたスロットを備える、実施態様1に記載の外科的装置。
(3) 前記コネクタが、前記アームに沿った位置で前記コネクタをロックするためのロック機構を更に備える、実施態様1又は2に記載の外科的装置。
(4) 前記コネクタが、中を通して前記アーム上の前記マーキングを視認することができる、視認用窓を含む、実施態様1~3のいずれかに記載の外科的装置。
(5) 前記コネクタが、切断スロットを更に含む、実施態様1~4のいずれかに記載の外科的装置。
【0078】
(6) 前記コネクタが、近位端及び遠位端を有し、前記切断スロットが、前記遠位端から近位方向に延在する、実施態様5に記載の外科的装置。
(7) 前記切除ガイドが、前記大腿骨頸部上の切除平面のポジションを示すためのガイドスロット又はガイド面を含む、実施態様1~6のいずれかに記載の外科的装置。
(8) 前記ガイドスロットが、前記頸部の前記切除中に切断デバイスのブレードを受容するための切断スロットである、実施態様1~7のいずれかに記載の外科的装置。
(9) 前記フレームが、前記大腿骨頭部上に前記フレームを取り外し可能に装着するための骨ピンを取り外し可能に受容するように構成されたピン穴を含む、実施態様1~8のいずれかに記載の外科的装置。
(10) 外科的装置を使用して股関節置換術の手技中に大腿骨の頸部の制御された切除を実行するための方法であって、前記外科的装置が、
本体部分であって、
開口部を備えるフレームであって、前記開口部が、前記大腿骨の大腿骨頭部を受容して、前記本体部分を前記大腿骨頭部の中心に対して位置付けるように寸法決めされている、フレーム、
前記大腿骨頸部上の切除平面のポジションを示すための切除ガイド、及び
前記フレームから延在し、大腿骨頭部オフセットを読み取るためのマーキングを含む、アーム、を備える、本体部分と、
前記大腿骨の髄内管内に位置する髄内ロッド上に前記本体部分を装着するため、及び前記アームをスライド可能に受容するためのコネクタと、を備え、
前記コネクタが、ポインタを含み、前記大腿骨頭部オフセットが、前記アーム上の前記マーキングに対する前記ポインタの前記ポジションを読み取ることによって示され、
前記コネクタを髄内釘上に装着することと、
前記コネクタを前記アームと共に組み立てることと、
前記アームを前記コネクタに対してスライド可能に調節することによって、前記フレームを前記大腿骨頭部上に装着することと、
前記アーム上の前記マーキングに対する前記ポインタの前記位置を決定することによって、前記大腿骨頭部オフセットを測定することと、
前記切除ガイドを使用して、
前記大腿骨の前記頸部上の前記切除平面の前記ポジションをマークすること、又は
前記大腿骨の前記頸部を切除するように切断デバイスのブレードを案内すること、のいずれかを行うことと、を含む、方法。
【0079】
(11) 前記フレームが、前記大腿骨頭部の後方側面上に取り外し可能に装着される、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記フレームが、前記大腿骨頭部の前方側面上に取り外し可能に装着される、実施態様10に記載の方法。
(13) 前記コネクタが、前記アームをスライド可能に受容するように構成されたスロットを含み、前記コネクタを前記アームと共に組み立てる前記工程が、前記アームを前記スロットに挿入する工程を含む、実施態様10~12のいずれかに記載の方法。
(14) 前記フレームが、前記大腿骨頭部上に前記フレームを取り外し可能に装着するための骨ピンを取り外し可能に受容するように構成されたピン穴を含み、前記フレームを前記大腿骨頭部上に装着する前記工程が、前記ピン穴を通して骨ピンを挿入する工程を含む、実施態様10~13のいずれかに記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図9e
図9f
図9g