(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】腸溶性ソフトゲルカプセル剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/48 20060101AFI20240227BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240227BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240227BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240227BHJP
【FI】
A61K9/48
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/10
(21)【出願番号】P 2020573084
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 US2019022477
(87)【国際公開番号】W WO2019178481
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-03
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520355792
【氏名又は名称】アール.ピー.シェーラー テクノロジーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】アフメド,フメラ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ジン
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-185022(JP,A)
【文献】特開2017-039657(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03272341(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00-9/72
A61K47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)充填材料と、
(b)腸溶性シェル組成物と
を含む腸溶性ソフトゲルカプセル剤であって、
前記充填材料が、少なくとも1つの薬学的活性成分を含み、
前記腸溶性シェル組成物が、前記腸溶性シェル組成物の中で唯一の多糖類である2%w/w~10%w/wのイオタカラギーナン、10%w/w~30%w/wのゼラチン、10%w/w~35%w/wの可塑剤、および20%w/w~50%w/wの溶媒を含む組成物に由来し、
前記腸溶性シェル組成物が、リン酸二ナトリウムを含まず、
前記腸溶性ソフトゲルカプセル剤が、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー、アクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー、酢酸コハク酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ステアリン酸、及びシェラックからなる群より選択される従来の腸溶性ポリマーを含ま
ず、
前記ゼラチンが、A型ゼラチンである、前記腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
【請求項2】
(a)充填材料と、
(b)腸溶性シェル組成物と
を含む腸溶性ソフトゲルカプセル剤であって、
前記充填材料が、少なくとも1つの薬学的活性成分を含み、
前記腸溶性シェル組成物が、前記腸溶性シェル組成物の中で唯一の多糖類である2%w/w~10%w/wのイオタカラギーナン、10%w/w~30%w/wのゼラチン、10%w/w~35%w/wの可塑剤、20%w/w~50%w/wの溶媒、ならびに0.1%w/w~3%w/wのバッファーおよび/またはアルカリ化剤を含む組成物に由来し、
前記腸溶性ソフトゲルカプセル剤が、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー、アクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー、酢酸コハク酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ステアリン酸、及びシェラックからなる群より選択される従来の腸溶性ポリマーを含ま
ず、
前記ゼラチンが、A型ゼラチンである、前記腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
【請求項3】
前記可塑剤が、グリセロール、グリセリン、ソルビトールおよびそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
【請求項4】
前記可塑剤がグリセロールである、請求項
3に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
【請求項5】
前記溶媒が水である、請求項1または2に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
【請求項6】
前記バッファーがリン酸二ナトリウムである、請求項2に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
【請求項7】
バッファーをさらに含む、請求項1に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
【請求項8】
前記カプセル剤が、酸性媒体中で1時間、2時間、3時間、4時間、または5時間で崩壊する、請求項1~
7のいずれか1項に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
【請求項9】
前記充填材料のpHが、2.5~6.5である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
【請求項10】
請求項1または2に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤を調製する方法であって、
(a)充填材料を調製するステップと、
(b)前記充填材料を前記腸溶性シェル組成物でカプセル封入するステップと
を含む、方法。
【請求項11】
前記溶媒、前記可塑剤、および前記ゼラチンをメルターに添加して混合物を形成することにより、前記腸溶性シェル組成物を調製するステップをさらに含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物を真空下、70℃~80℃の温度で混合するステップを含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記混合物を82℃~85℃の温度まで加熱するステップをさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記混合物を前記イオタカラギーナンと前記可塑剤とのプレミックスと合わせるステップをさらに含む、請求項
11~
13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼラチンベースのシェル組成物が、腸溶性コーティングまたは従来の腸溶性ポリマーの添加を必要とせずに、腸溶性を有する、腸溶性ソフトゲルカプセル剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトカプセル剤、具体的には、ソフトゼラチンカプセル剤(またはソフトゲルカプセル剤)は、カプセル剤が飲み込みやすく、かつ活性剤の不快な味を隠すために香味を付ける必要がないため、患者により容易に受け入れられる剤形を提供する。薬物のソフトゲルカプセル封入は、医薬品のバイオアベイラビリティを改善する可能性をさらに提供する。例えば、活性成分は、ゼラチンシェルが破裂するとすぐに、液体の状態で容易に放出され得る。
【0003】
腸溶性剤形を作成する努力がなされてきた。腸溶性剤形は、剤形の内容物を胃の条件から保護するように設計される。例えば、腸溶性剤形は、錠剤またはカプセル剤のような生産された剤形の表面に腸溶性コーティングを追加することによって製造することができる。そのようなコーティングは、剤形にスプレーし、その後、通常は高温で、その剤形を乾燥させることによって塗布することができる。この腸溶性コーティングでカプセル剤をコーティングする方法は、性能および外観の点での不利益につながり得る。例えば、カプセル剤の外観がざらざらになることがあり、コーティングが不均一に塗布されることがあり、および/またはコーティングが亀裂を生じやすい、もしくは剤形から剥がれ落ちやすい場合がある。さらに、腸溶性コーティングを塗布する方法は、極めて効率が悪い。
【0004】
他の腸溶性剤形で、カプセルシェルに従来の腸溶性ポリマー(すなわち、酸不溶性ポリマー)が添加されたものが開発された。しかしながら、従来の腸溶性ポリマーの添加は、不十分な封着により、漏出しやすいカプセル剤につながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、現在、腸溶性コーティングを塗布する必要も、シェルに従来の腸溶性ポリマーを添加する必要もない腸溶性ソフトゲルカプセル剤が必要とされている。
【0006】
驚くべきことに、本発明のゼラチンベースのシェル組成物は、腸溶性コーティングを塗布する必要なく、または従来の腸溶性ポリマーを混合する必要なく、十分な腸溶性を有することが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、腸溶性ソフトゲルカプセル剤に関する。この腸溶性ソフトゲルカプセル剤は、(a)充填材料と、(2)腸溶性シェル組成物とを含む。本発明による腸溶性ソフトゲルカプセル剤は、腸溶性コーティングも添加される従来の腸溶性ポリマーも含まない。したがって、この腸溶性シェル組成物は、腸溶性コーティングを添加する必要をなくし、このことはまた、コーティング工程中にカプセル剤を破損するリスクを最小限に抑える。本発明はまた、腸溶性ソフトゲルカプセル剤を作製する方法にも関する。
【0008】
ある実施形態では、腸溶性シェル組成物は、(a)ゼラチン、(b)カラギーナン、(c)可塑剤、および(d)溶媒を含む。別の実施形態では、腸溶性シェル組成物は、(a)ゼラチン、(b)カラギーナン、(c)可塑剤、(d)溶媒、ならびに(e)バッファーおよび/またはアルカリ化剤を含む。本発明はまた、腸溶性ソフトゲルカプセル剤を作製する方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、腸溶性コーティングを塗布する必要なく、またはカプセルシェルに従来の腸溶性ポリマーを添加する必要なく、従来の腸溶性剤形に関連する利点を達成する、腸溶性経口剤形、具体的には、腸溶性ソフトゲルカプセル剤を開発することにより、最新技術水準を向上させる。本発明の腸溶性ソフトゲルカプセル剤は、胃の環境では溶解しないが、腸内で溶解する。そのような機序は、胃の炎症を引き起こし得る、または胃の酸性環境に反応しやすい活性成分の送達に有益である。
【0010】
本明細書で使用されるとき、「腸溶性の」という用語は、胃の環境で溶解または崩壊が生じないような、物質の溶解または崩壊耐性を指して使用される。例えば、本明細書に記載の実施形態には、生体、人工、または模擬胃液にではなく、生体、人工、または模擬腸液に溶解する腸溶性シェル組成物が含まれる。
【0011】
本明細書で使用されるとき、「薬学的活性成分」とは、状態の診断、治療、緩和、処置、または予防に使用することができる薬物または化合物を指す。「状態」または「複数の状態」という用語は、有効量の活性剤を対象に投与することによって処置または予防され得る医学的状態を指す。腸溶性ソフトゲルカプセル剤により利益を得る可能性がある非限定的な例示的状態としては、限定するものではないが、乳酸菌を含有するカプセル剤、魚油カプセル剤、プロトンポンプ阻害剤、アスピリン、および類似の製品が挙げられる。
【0012】
本明細書で使用されるとき、「活性成分」という用語は、治療効果、予防効果、またはその他目的の効果を生じるよう意図される任意の材料を指し、その材料が、その目的で政府機関に承認されているかどうかには関わらない。特定の薬剤に関するこの用語には、薬学的活性剤、ならびにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、および結晶形態であって、薬学的活性を有する塩、溶媒和物、および結晶形態のすべてが含まれる。
【0013】
本発明の目的で任意の薬学的活性成分を使用することができるが、これには、水溶性のものおよび難水溶性のものの両者が含まれる。適切な薬学的活性成分としては、限定するものではないが、鎮痛剤および抗炎症剤、制酸剤、駆虫剤、抗不整脈剤、抗細菌剤、抗凝血薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、止瀉薬、抗てんかん薬、抗真菌剤、抗痛風剤、抗高血圧剤、抗マラリア薬、抗片頭痛剤、抗ムスカリン剤、抗腫瘍剤および免疫抑制薬、抗原虫剤、抗リウマチ薬、抗甲状腺剤、抗ウイルス薬、抗不安薬、鎮静薬、睡眠薬および神経遮断剤、β遮断剤、強心剤、副腎皮質ステロイド剤、鎮咳薬、細胞毒、うっ血除去剤、利尿剤、酵素、抗パーキンソン病剤、胃腸剤、ヒスタミン受容体拮抗剤、脂質調節剤、局所麻酔薬、神経筋作用剤、硝酸薬および抗狭心症剤、栄養剤、オピオイド鎮痛薬、経口ワクチン、タンパク質、ペプチド、および組換え薬、性ホルモン、および避妊薬、殺精子薬、興奮薬、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0014】
一部の実施形態では、活性医薬成分は、限定するものではないが、ダビガトラン、ドロネダロン、チカグレロル、イロペリドン、アイバカフトール、ミドスタウリン、アシマドリン、ベクロメタゾン、アプレミラスト、サパシタビン、リンシチニブ、アビラテロン、ビタミンDアナログ(例えば、カルシフェジオール、カルシトリオール、パリカルシトール、ドキセルカルシフェロール)、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ)、タクロリムス、テストステロン、ルビプロストン、それらの薬学的に許容される塩、ならびにそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0015】
一部の実施形態では、剤形中の脂質は、限定するものではないが、アーモンド油、アルガン油、アボカド油、ルリジサ種子、カノーラ油、カシュー油、ヒマシ油、水素化ヒマシ油、ココアバター、ココナッツ油、菜種油、トウモロコシ油、綿実油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、ヘンプ油、水酸化レシチン、レシチン、亜麻仁油、マカダミア油、マンゴーバター、マニラ油、モンゴンゴナッツ油、オリーブ油、パーム核油、パーム油、落花生油、ピーカン油、エゴマ油、松の実油、ピスタチオ油、ケシ種子油、カボチャ種子油、米ぬか油、ベニバナ油、ゴマ油、シアバター、大豆油、ヒマワリ油、水素化植物油、クルミ油、およびスイカ種子油からなる群から選択することができる。他の油および脂肪としては、魚油(オメガ-3)、オキアミ油、動物または植物脂肪、例えば、それらの水素化形態、C8-、C10-、C12-、C14-、C16-、C18-、C20-、およびC22-脂肪酸を有する遊離脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリド、ならびにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
ある特定の実施形態によると、活性剤として脂質低下剤が挙げられ、これには、スタチン(例えば、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、およびピタバスタチン)、フィブレート(例えば、クロフィブレート、シプロフィブレート、ベザフィブレート、フェノフィブレート、およびゲムフィブロジル)、ナイアシン、胆汁酸捕捉剤、エゼチミブ、ロミタピド、フィトステロール、ならびにそれらの薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、およびプロドラッグ、上記のうち任意のものの混合物などが含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
適切な機能性活性剤としては、5-ヒドロキシトリプトファン、アセチルL-カルニチン、αリポ酸、α-ケトグルタル酸塩、蜂生成物、塩酸ベタイン、ウシ軟骨、カフェイン、ミリストオレイン酸セチル、木炭、キトサン、コリン、コンドロイチン硫酸塩、コエンザイムQ10、コラーゲン、初乳、クレアチン、シアノコバラミン(ビタミン812)、ジメチルアミノエタノール、フマル酸、ゲルマニウムセスキオキシド、腺生成物、グルコサミン塩酸塩、グルコサミン硫酸塩、酪酸ヒドロキシルメチル、免疫グロブリン、乳酸、L-カルニチン、肝臓生成物、リンゴ酸、無水マルトース、マンノース(d-マンノース)、メチルスルホニルメタン、フィトステロール、ピコリン酸、ピルビン酸塩、紅色酵母抽出物、S-アデノシルメチオニン、セレン酵母、サメ軟骨、テオブロミン、硫酸バナジル、および酵母が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
適切な栄養補助活性剤としては、ビタミン、ミネラル、繊維、脂肪酸、アミノ酸、ハーブサプリメント、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0019】
適切なビタミン活性剤としては、アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンB群、ビオチン、脂溶性ビタミン、葉酸、ヒドロキシクエン酸、イノシトール、アスコルビン酸ミネラル、ミックストコフェロール、ナイアシン(ビタミンB3)、オロチン酸、パラアミノ安息香酸、パントテン酸塩、パントテン酸(ビタミンB5)、塩酸ピリドキシン(ビタミンB6)、リボフラビン(ビタミンB2)、合成ビタミン、チアミン(ビタミンB1)、トコトリエノール、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンK、ビタミン油および油溶性ビタミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
適切なハーブサプリメント活性剤としては、アルニカ、ビルベリー、ブラックコホシュ、キャッツクロー、カモミール、エキナセア、月見草油、コロハ、亜麻仁、ナツシロギク、ニンニク、根ショウガ、イチョウ、朝鮮人参、アキノキリンソウ、サンザシ、カバカバ、甘草、マリアアザミ、オオバコ、ジャボク、センナ、大豆、セイヨウオトギリソウ、ノコギリヤシ、ウコン、カノコソウが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
ミネラル活性剤としては、ホウ素、カルシウム、キレートミネラル、塩化物、クロム、コーティングされたミネラル、コバルト、銅、ドロマイト、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、ミネラルプレミックス、ミネラル生成物、モリブデン、リン、カリウム、セレン、ナトリウム、バナジウム、リンゴ酸、ピルビン酸塩、亜鉛、およびその他のミネラルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
その他の可能な活性剤の例としては、抗ヒスタミン剤(例えば、ラニチジン、ジメンヒドリネート、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、およびマレイン酸デクスクロルフェニラミン)、非ステロイド性抗炎症剤(例えば、アスピリン、セレコキシブ、Cox-2阻害剤、ジクロフェナク、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フルブフェン(flubufen)、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、フルプロフェン(fluprofen)、ブクロキシ酸(bucloxic acid)、インドメタシン、スリンダク、ゾメピラク、チオピナック、ジドメタシン、アセメタシン、フェンチアザク、クリダナク、オキセピナク、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルミン酸、トルフェナム酸、ジフルニサル、フルフェニサル、ピロキシカム、スドキシカム、イソキシカム、アセクロフェナク、アロキシプリン、アザプロパゾン、ベノリレート、ブロムフェナク、カプロフェン、サリチル酸コリンマグネシウム、ジフルニサル、エトドラク、エトリコキシブ、ファイスラミン(faislamine)、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロルノキシカム、ロキソプロフェン、メロキシカム、メフェナム酸、メタミゾール、サリチル酸メチル、サリチル酸マグネシウム、ナブメトン、ナプロキセン、ニメスリド、オキシフェンブタゾン、パレコキシブ、フェニルブタゾン、サリチル酸サリチル、スリンダク、スルフィンピラゾン、テノキシカム、チアプロフェン酸、トルメチン、それらの薬学的に許容される塩、およびそれらの混合物)、およびアセトアミノフェン、制吐薬(例えば、メトクロプラミド、メチルナルトレキソン)、抗てんかん薬(例えば、フェニトイン、メプロバメート、およびニトラゼパム)、血管拡張薬(例えば、ニフェジピン、パパベリン、ジルチアゼム、およびニカルジピン)、鎮咳剤および去痰薬(例えば、リン酸コデイン)、抗ぜんそく薬(例えば、テオフィリン)、制酸薬、鎮痙薬(例えば、アトロピン、スコポラミン)、抗糖尿病薬(例えば、インスリン)、利尿薬(例えば、エタクリン酸、ベンドロフルメチアジド)、抗低血圧薬(例えば、プロプラノロール、クロニジン)、抗高血圧薬(例えば、クロニジン、メチルドパ)、気管支拡張薬(例えば、アルブテロール)、ステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、プレドニゾン)、抗生物質(例えば、テトラサイクリン)、抗痔薬、睡眠薬、向精神薬、止瀉薬、粘液溶解薬、鎮静薬、うっ血除去薬(例えば、プソイドエフェドリン)、緩下薬、ビタミン、興奮薬(フェニルプロパノールアミンのような食欲抑制剤を含む)、およびカンナビノイド、ならびにそれらの薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、およびプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
活性剤は、ベンゾジアゼピン、バルビツール酸系、興奮薬、またはそれらの混合物であってもよい。「ベンゾジアゼピン」という用語は、ベンゾジアゼピン、およびベンゾジアゼピンの誘導体であり、中枢神経系を抑制することができる薬物を指す。ベンゾジアゼピンとしては、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロラゼプ酸、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、ハラゼパム、ケタゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、メチルフェニデート、ならびにそれらの薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、プロドラッグ、および混合物が挙げられるが、これらに限定されない。活性剤として使用することができるベンゾジアゼピン拮抗薬としては、フルマゼニル、ならびにその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、および混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
「バルビツール酸系」という用語は、バルビツール酸から誘導される鎮静催眠薬(2,4,6,-トリオキソヘキサヒドロピリミジン)を指す。バルビツール酸系としては、アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、メトヘキシタール、メホバルビタール、メタルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、ならびにそれらの薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、プロドラッグ、および混合物が挙げられるが、これらに限定されない。活性剤として使用することができるバルビツール酸拮抗薬としては、アンフェタミン、ならびにその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、および混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
「興奮薬」という用語には、アンフェタミン、例えば、デキストロアンフェタミン樹脂複合体、デキストロアンフェタミン、メタンフェタミン、メチルフェニデート、ならびにそれらの薬学的に許容される塩、水和物、および溶媒和物、および混合物が含まれるが、これらに限定されない。活性剤として使用することができる興奮性拮抗薬としては、ベンゾジアゼピン、ならびにその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、および混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本開示による剤形には、種々の活性剤およびそれらの薬学的に許容される塩が含まれる。薬学的に許容される塩としては、無機酸塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩など;有機酸塩、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩など;スルホン酸塩、例えば、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩など;アミノ酸塩、例えば、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など、および金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩など;アルカリ土類金属、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩など;有機アミン塩、例えば、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「治療上有効な」および「有効量」という用語は、所望の治療結果をもたらすために必要とされる活性剤の量またはそれが投与される速度を指す。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「シェル」または「シェル組成物」という用語は、充填材料をカプセル封入するソフトゲルカプセル剤のシェルを指す。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「従来の腸溶性ポリマー」とは、商標名EUDRAGIT(登録商標)として入手可能なアクリル酸およびメタクリル酸ポリマー、ならびにその他の従来の酸不溶性ポリマー、例えば、アクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマーを指すが、これらに限定されない。その他の従来の酸不溶性ポリマーとしては、限定するものではないが、酢酸コハク酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(酢酸コハク酸ヒプロメロース)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、アルギン酸塩、例えば、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸カリウム、ステアリン酸、ならびにシェラックが挙げられる。一部の実施形態では、本発明の腸溶性シェル組成物は、酸不溶性ポリマーを含まない。言い換えると、腸溶性シェル組成物および腸溶性ソフトゲルカプセル剤は、「従来の腸溶性ポリマーを含まないまたは実質的に含まない」。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「含まないまたは実質的に含まない」とは、組成物中に当該要素を約1%w/w未満、約0.5%w/w未満、約0.25%w/w未満、約0.1%w/w未満、約0.05%w/w未満、約0.01%w/w未満、または0%w/w含む組成物を指す。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「充填材料」または「充填物」とは、腸溶性カプセルシェルによりカプセル封入される、少なくとも1つの薬学的活性成分を含有する組成物を指す。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「腸溶性カプセル剤」または「腸溶性ソフトゲルカプセル剤」とは、充填材料をシェル中にカプセル封入し、このカプセル剤を乾燥させたときに腸溶性を有するカプセル剤を指す。さらなる加工ステップは必要とされない。
【0033】
本明細書で使用されるとき、測定量に関連しての「約」とは、測定を行い、測定の目的および測定機器の精度に応じた程度の注意を払う際に当業者が予想するような、その測定量の正常な変動値を指す。ある特定の実施形態では、「約」という用語は、記載される数±10%を含み、例えば、「約10」は、9~11を含むことになる。
【0034】
測定量に関連しての「少なくとも約」という用語は、測定を行ない、測定の目的および測定機器の精度に応じた程度の注意を払う際に当業者が予想するような、その測定量の正常な変動値およびそれを超える任意の数を指す。ある特定の実施形態では、「少なくとも約」という用語は、記載される数-10%およびそれを上回る任意の数を含み、例えば、「少なくとも約10」は、9および9よりも大きい任意の数を含むことになる。この用語は、「約10以上」と表すこともできる。同様に、「約~未満」という用語は、典型的には、記載される数+10%およびそれを下回る任意の数を含み、例えば、「約10未満」は、11および11よりも小さい任意の数を含むことになる。この用語は、「約10以下」と表すこともできる。
【0035】
本明細書で使用されるとき、「a」、「an」、または「the」は、特に明記しない限り、1つまたは複数を指す。したがって、例えば、「賦形剤」というとき、単一の賦形剤だけでなく、2つまたはそれ以上の異なる賦形剤の混合物なども含む。
【0036】
本明細書における数値の範囲の記載は、本明細書に特別の定めのない限り、その範囲に含まれる別々の値それぞれに個別に言及することの簡略な方法として意図されるにすぎず、別々の値それぞれは、本明細書において個別に記載されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に特別の定めのない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。
【0037】
本明細書において提示されるあらゆる例または例示的表現(例えば、「~のような(such as)」)の使用は、ある特定の材料および方法を明らかにするためにすぎず、範囲を制限するものではない。本明細書中のいかなる表現も、任意の特許請求されていない要素が開示される材料および方法の実施に不可欠なものであることを示すものと解釈されるべきではない。
【0038】
第1の実施形態によると、腸溶性ソフトゲルカプセル剤は、(a)充填材料と、(b)腸溶性シェル組成物とを含み、充填材料は、少なくとも1つの薬学的活性成分を含み、腸溶性シェル組成物は、ゼラチン、カラギーナン、可塑剤、および溶媒を含み、腸溶性シェル組成物は、従来の腸溶性ポリマーを含まない。
【0039】
第2の実施形態によると、腸溶性ソフトゲルカプセル剤は、(a)充填材料と(b)腸溶性シェル組成物とを含み、充填材料は、少なくとも1つの薬学的活性成分を含み、腸溶性シェル組成物は、ゼラチン、カラギーナン、可塑剤、溶媒、ならびに場合により、バッファーおよび/またはアルカリ化剤を含み、腸溶性シェル組成物は、従来の腸溶性ポリマーを含まない。
【0040】
適切な充填材料は、少なくとも1つの薬学的活性成分を含み、公知の方法によって作製することができる。少なくとも1つの薬学的活性成分に加え、適切な充填材料は、追加の充填要素、例えば、香味剤、甘味剤、着色剤、および充填剤、またはその他の薬学的に許容される賦形剤もしくは添加剤、例えば、合成染料およびミネラル酸化物を含んでもよい。薬学的活性成分および薬学的に許容される賦形剤の適切な量は、当業者により、容易に判断することができる。とりわけ、本明細書に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤およびpHが約2.5~約6.5、または約3.0~約6.0、または約3.5~約5.5の充填組成物を含む剤形は、適切な安定性を示すことが判明した。実施形態によると、充填組成物は、アルカリ充填物、例えば、エソメプラゾールであってもよい。
【0041】
ある実施形態では、腸溶性シェル組成物中のゼラチンは、単独でまたは組み合わせて使用されるA型ゼラチン、B型ゼラチン、皮ゼラチン、魚ゼラチン、豚ゼラチン、および/または骨ゼラチンを含んでもよいが、これらに限定されない。ある実施形態では、ゼラチンは、A型高ブルームゼラチンである。ある実施形態では、ゼラチンは、B型高ブルームゼラチンである。一実施形態では、ゼラチンは、250ブルームゼラチンである。別の実施形態では、1種類のゼラチンのみが存在する。また別の実施形態では、ゼラチンは、少なくとも2種類のゼラチンの組合せである。ある実施形態では、腸溶性シェル組成物中のゼラチンの量は、約10%w/w~約30%w/w、より好ましくは約15%w/w~約30%w/w、最も好ましくは約25%w/w~約30%w/wである。
【0042】
ある実施形態では、腸溶性シェル組成物中のカラギーナンは、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、ラムダカラギーナン、およびそれらの混合物であってもよい。一実施形態によると、カラギーナンは、カッパカラギーナンである。別の実施形態によると、カラギーナンは、イオタカラギーナンである。ある実施形態では、腸溶性シェル組成物中のカラギーナンの量は、約2%w/w~約10%w/w、より好ましくは約2%w/w~約8%w/w、最も好ましくは約2%w/w~約5%w/wである。
【0043】
ある実施形態では、腸溶性シェル組成物中の可塑剤は、グリセロール、グリセリン、ソルビトール、およびそれらの混合物を含んでもよい。その他の適切な可塑剤としては、糖アルコール可塑剤、例えば、イソマルト、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、アドニトール、ズルシトール、ペンタエリスリトール、もしくはマンニトール;またはポリオール可塑剤、例えば、ジグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、最大10,000MWのポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、エタノールアミン;およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。その他の例示的可塑剤としては、限定するものではないが、低分子量ポリマー、オリゴマー、コポリマー、油、有機小分子、脂肪族ヒドロキシルを有する低分子量ポリオール、エステル系可塑剤、グリコールエーテル、ポリ(プロピレングリコール)、マルチブロックポリマー、シングルブロックポリマー、クエン酸エステル系可塑剤、およびトリアセチンも挙げられる。そのような可塑剤は、1,2-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、スチレングリコール、モノプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸ソルビトール、乳酸エチル、乳酸ブチル、グリコール酸エチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、モノステアリン酸グリセリン、ポリソルベート80、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、およびグリコール酸アリル、ならびにそれらの混合物を含んでもよい。ある実施形態では、腸溶性シェル組成物中の可塑剤の量は、約10%w/w~約35%w/w、より好ましくは約10%w/w~約30%w/w、最も好ましくは約15%w/w~約28%w/wである。
【0044】
ある実施形態では、腸溶性シェル組成物および腸溶性ソフトゲルカプセル剤は、従来の腸溶性ポリマーを含まなくても、または実質的に含まなくてもよい。
【0045】
ある実施形態では、腸溶性シェル組成物および腸溶性ソフトゲルカプセル剤は、二価カチオン塩、例えば、Ca++(例えば、CaCl2)またはMg++(例えば、MgCl2)を含まなくても、または実質的に含まなくてもよい。
【0046】
ある実施形態では、腸溶性シェル組成物中の溶媒は、水であっても、または水を含んでもよい。ある実施形態では、カプセルシェル中の溶媒の量は、約20%w/w~約50%w/w、より好ましくは約30%w/w~約50%w/w、最も好ましくは約35%w/w~約50%w/wである。
【0047】
ある実施形態では、腸溶性シェル組成物は、バッファーおよび/またはアルカリ化剤も含む。適切なバッファーおよび/またはアルカリ化剤としては、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、および/またはリン酸二ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、バッファーは、リン酸二ナトリウムである。ある実施形態では、腸溶性シェル組成物中のバッファーの量は、約0.1%w/w~約3%w/w、より好ましくは約0.5%w/w~約1%w/w、最も好ましくは約0.5%w/w~約0.9%w/wである。
【0048】
ある実施形態では、腸溶性シェル組成物は、場合により、追加の薬剤、例えば、着色剤、香味剤、甘味剤、充填剤、抗酸化剤、希釈剤、またはその他の薬学的に許容される賦形剤もしくは添加剤、例えば、合成染料および酸化ミネラルを含んでもよい。
【0049】
例示的な適切な着色剤としては、例えば、白、黒、黄、青、緑、ピンク、赤、オレンジ、紫、藍、および茶などの色が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、剤形の色は、その剤形に含まれる内容物(例えば、1つまたは複数の活性成分)を表すことができる。
【0050】
例示的な適切な香味剤としては、多くの場合溶媒、例えば、エタノールまたは水を用いて、原材料、例えば、動物もしくは植物材料の一部を抽出することによって得られる「香味抽出物」;花、果実、根などから、または植物全体から精油を抽出することによって得られる天然エキスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
剤形中に含まれてもよいさらなる例示的香味剤としては、呼気清涼性化合物、例えば、メントール、スペアミント、およびシナモン、コーヒー豆、その他の香味または芳香、例えば、果実の香味(例えば、サクランボ、オレンジ、ブドウなど)、特に口腔衛生のために使用されるもの、ならびに歯および口腔洗浄に使用される活性物質、例えば、四級アンモニウム塩基が挙げられるが、これらに限定されない。香味の効果は、酒石酸、クエン酸、バニリンなどのような香味増強剤を使用して高めることができる。
【0052】
例示的甘味剤としては、1つまたは複数の人工甘味料、1つまたは複数の天然甘味料、またはそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。人工甘味料には、例えば、アセサルフェームおよびそのさまざまな塩、例えば、カリウム塩(Sunett(登録商標)として入手可能)、アリターム、アスパルテーム(NutraSweet(登録商標)およびEqual(登録商標)として入手可能)、アスパルテーム-アセスルファムの塩(Twinsweet(登録商標)として入手可能)、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ナリンギンジヒドロカルコン、ジヒドロカルコン化合物、ネオテーム、シクラミン酸ナトリウム、サッカリンおよびそのさまざまな塩、例えば、ナトリウム塩(Sweet’N Low(登録商標)として入手可能)、ステビア、ショ糖のクロロ誘導体、例えば、スクラロース(Kaltame(登録商標)およびSplenda(登録商標)として入手可能)、およびモグロシドが含まれる。天然甘味料には、例えば、グルコース、デキストロース、転化糖、フルクトース、ショ糖、グリチルリジン;グリチルリチン酸モノアンモニウム(商標名MagnaSweet(登録商標)で販売されている);ステビア・レバウディアナ(Stevia rebaudiana)(ステビオシド)、天然高強度甘味料、例えば、羅漢果、ポリオール、例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトールなどが含まれる。
【0053】
ある実施形態による腸溶性ソフトゲルカプセル剤は、酸性媒体中で、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、または約1~5時間を超えて原形を保ってもよく、腸液中で、約120分以下、または約100分以下、または約80分以下、または約60分以下、または約45分以下、または約30分以下、または約10分以下、または約5分以下で崩壊してもよい。崩壊は、インラインBP/USP法を用いて測定することができる。例えば、USP<701>崩壊試験を用いて、ソフトゲルカプセル剤をバスケットラックアセンブリ中で崩壊させてもよい。バスケットラックアセンブリは、それぞれ長さ77.5±2.5mm、内径20.7~23mm、壁厚1.0~2.8mmの開口透明管6本を含んでもよく、これらの管は、それぞれ直径88~92mm、厚さ5~8.5mmのプレート2枚によって垂直位置に保持され、これらのプレートには、それぞれ直径22~26mmの穴が6つあり、これらの穴は、プレートの中心から等距離であり、互いに等間隔である。下方プレートの下面には、開口1.8~2.2mmの編みで、直径0.57~0.66mmのワイヤーで編まれたステンレス鋼が取り付けられている。装置のこれらの部分は、組み立てられ、2枚のプレートを貫通する3本のボルトによってしっかりと保持されている。バスケットラックアセンブリをその軸上の一点を用いて上げ下げデバイスから吊り下げるために、適切な手段が備えられている。ディスクの使用は、モノグラフ中で指定または許容されている場合のみ認められる。さらに、前述の編みおよび直径の仕様を有する取り外し可能なワイヤークロスが、バスケットラックアセンブリの上方プレートの表面に取り付けられている。
【0054】
バスケットラックアセンブリのバスケットの6本の管それぞれに、一(1)投薬単位を入れ、必要に応じてディスクを追加する。各腸溶性ソフトゲルカプセル剤を0.1N HClに浸漬し、これを37℃±2℃の温度に維持する。120分後、または100分後、または80分後、または60分後、または45分後、または30分後、または10分後、または5分後に、バスケットを液体から引き上げ、すべて完全に崩壊したかどうかを確かめるために、腸溶性ソフトゲルカプセル剤を観察する。1つまたは2つの腸溶性ソフトゲルカプセル剤が完全に崩壊しなかった場合、さらに12個の腸溶性ソフトゲルカプセル剤で試験を繰り返す。テストした腸溶性ソフトゲルカプセル剤合計18個のうち16個以上が崩壊した場合、要件は満たされる。
【0055】
充填材料のカプセル封入は、任意の従来法を用いて達成することができる。一例として、ロータリーダイ式カプセル封入を利用することができる。実施形態では、カプセル封入法は、腸溶性ソフトゲルカプセル剤中のゲルの融点が比較的高いため、ベジタリアンカプセル剤用の機器および方法を使用することができる。
【0056】
ある実施形態によると、腸溶性ソフトゲルカプセル剤は、(a)充填材料を調製するステップであって、上記充填材料が少なくとも1つの薬学的活性成分を含む、ステップと、(b)ステップ(a)の充填材料を腸溶性シェル組成物にカプセル封入するステップと、を含む方法により調製される。ステップ(b)によるカプセル封入法は、例えば、温度約50℃~約65℃でゼラチンを加熱して無気泡ゲルを生成し、ゼラチンの温度を約70℃~約90℃、好ましくは約80℃~約90℃に上げ、カラギーナンとグリセロール(グリセリン)とのプレミックスを撹拌下でゼラチンに分散させ、澄んだゲル溶液を生成することによって、腸溶性シェル組成物を調製するサブステップをさらに含んでもよい。
【0057】
ある実施形態では、腸溶性シェル組成物は、(a)カラギーナン、(b)ゼラチン、(c)可塑剤、(d)溶媒、ならびに場合により、(e)バッファーおよび/またはアルカリ化剤を含む。
【0058】
ある実施形態では、腸溶性シェル組成物は、(a)カラギーナン、(b)ゼラチン、(c)可塑剤、(d)溶媒、ならびに場合により、(e)バッファーおよび/またはアルカリ化剤から本質的になる。
【0059】
ある実施形態では、腸溶性シェル組成物は、(a)カラギーナン、(b)ゼラチン、(c)可塑剤、(d)溶媒、ならびに場合により、(e)バッファーおよび/またはアルカリ化剤からなる。
【0060】
ある実施形態では、腸溶性ソフトゲルカプセル組成物は、(a)約1%w/w~約20%w/w、または約1.5%w/w~約15%w/w、または約2%w/w~約10%w/wのカラギーナン、(b)約1%w/w~約50%w/w、または約5%w/w~約40%w/w、または約10%w/w~約30%w/wのゼラチン、(c)約1%w/w~約55%w/w、または約5%w/w~約45%w/w、約10%w/w~約35%w/wの可塑剤、(d)約5%w/w~約60%w/w、または約10%w/w~約55%w/w、または約20%w/w~約50%w/wの溶媒、ならびに場合により、(e)約0.01%w/w~約10%w/w、または約0.05%w/w~約5%w/w、または約0.1%w/w~約3%w/wのバッファーおよび/またはアルカリ化剤を含む。
【0061】
ある実施形態では、腸溶性ソフトゲルカプセル組成物は、(a)約1%w/w~約20%w/w、または約1.5%w/w~約15%w/w、または約2%w/w~約10%w/wのカラギーナン、(b)約1%w/w~約50%w/w、または約5%w/w~約40%w/w、または約10%w/w~約30%w/wのゼラチン、(c)約1%w/w~約55%w/w、または約5%w/w~約45%w/w、約10%w/w~約35%w/wの可塑剤、(d)約5%w/w~約60%w/w、または約10%w/w~約55%w/w、または約20%w/w~約50%w/wの溶媒、ならびに場合により、(e)約0.01%w/w~約10%w/w、または約0.05%w/w~約5%w/w、または約0.1%w/w~約3%w/wのバッファーおよび/またはアルカリ化剤から本質的になる。
【0062】
ある実施形態では、腸溶性ソフトゲルカプセル組成物は、(a)約1%w/w~約20%w/w、または約1.5%w/w~約15%w/w、または約2%w/w~約10%w/wのカラギーナン、(b)約1%w/w~約50%w/w、または約5%w/w~約40%w/w、または約10%w/w~約30%w/wのゼラチン、(c)約1%w/w~約55%w/w、または約5%w/w~約45%w/w、約10%w/w~約35%w/wの可塑剤、(d)約5%w/w~約60%w/w、または約10%w/w~約55%w/w、または約20%w/w~約50%w/wの溶媒、ならびに場合により、(e)約0.01%w/w~約10%w/w、または約0.05%w/w~約5%w/w、または約0.1%w/w~約3%w/wのバッファーおよび/またはアルカリ化剤からなる。
【実施例】
【0063】
本発明の特定の実施形態を下記の実施例を参照して説明する。これらの実施例は、本発明を説明するために開示されるにすぎないことを理解すべきであり、決して本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0064】
[実施例1]
下記の表1に記載の組成を有する腸溶性ソフトゲルカプセル剤を調製した。ゲルメルターに、水、グリセリン、およびゼラチンを添加した。この混合物を撹拌し、真空下で70℃~80℃に加熱したあと(標準的ゲル過程)、混合し、82℃~85℃に加熱した。次いで、室温のカラギーナンとグリセリンとのプレミックスを添加した。この混合物を真空下で再び82℃~85℃に加熱して脱気した。混合物をメルターから出し、色素および香味を混ぜ込んだ。最後に、この混合物をカプセル封入した。
【0065】
【0066】
カプセル剤が乾燥するとすぐに、サンプルを0.1N HCl中で腸内崩壊試験に供した。カプセル剤は、溶解時間試験に合格した。また、カプセル剤をHDPEボトル中で保管し、25℃/60%RHおよび30℃/75%RHで安定性をテストした。0か月後、2か月後、3か月後、および6か月後、カプセル剤は、USP/BP/EP要件(例えば、上述のUSP崩壊試験を参照)に従って、0.1N HClおよびリン酸バッファーの双方中、両温度でDT試験に合格した。
【0067】
【0068】
比較した実施例
上述の方法により、下記の表3に記載の組成を有する腸溶性ソフトゲルカプセル剤を調製した。
【0069】
【0070】
実施例Bおよび実施例Dは、問題なくカプセル封入できる組成物をもたらさなかった。実施例Aおよび実施例Cは、カプセル封入することができた。カプセル剤が乾燥するとすぐに、サンプルを0.1N HCl中で腸内崩壊試験に供した(例えば、上述のUSP崩壊法を参照)。カプセル剤の両組とも、崩壊時間試験に合格しなかった。一部のカプセル剤をアニーリングのために35℃のオーブンに4日間入れた。すべてのカプセル剤は、アニーリング後、DT試験に合格した。カプセル封着(ホットメルト接合部)は、結合力を生じるために、さらなる熱平衡の期間を要することが示された。
【0071】
腸溶性ソフトゲル技術の重要な一態様は、製造方法である。耐酸性は、ソフトゲルカプセル剤の最も弱い部分として知られているカプセル封着の強さに依存する。強い封着は、強いゲル、金型の巧みな設計、およびカプセル封入時の工程パラメーターの管理が組み合わさってはじめて達成することができる。より強いゲルは、高ブルームゼラチンを使用し、ゲル製剤を最適化することにより達成された。実施例1では、腸溶性ソフトゲルのカプセル封入は、ロータリーダイ法を使用する。しかしながら、リボン形成は、Vegicapゲルと類似する方法、すなわち、ゼラチン法とは異なる、メルトオンデマンドを使用する。
なお、本発明は、以下の態様をも含むものである。
<1>
(a)充填材料と、
(b)腸溶性シェル組成物と
を含み、
前記充填材料が、少なくとも1つの薬学的活性成分を含み、
前記腸溶性シェル組成物が、約2%w/w~約10%w/wのカラギーナン、約10%w/w~約30%w/wのゼラチン、約10%w/w~約35%w/wの可塑剤、および約20%w/w~約50%w/wの溶媒を含み、
従来の腸溶性ポリマーを含まない、腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
<2>
(a)充填材料と、
(b)腸溶性シェル組成物と
を含み、
前記充填材料が、少なくとも1つの薬学的活性成分を含み、
前記腸溶性シェル組成物が、約2%w/w~約10%w/wのカラギーナン、約10%w/w~約30%w/wのゼラチン、約10%w/w~約35%w/wの可塑剤、約20%w/w~約50%w/wの溶媒、ならびに約0.1%w/w~約3%w/wのバッファーおよび/またはアルカリ化剤を含み、
従来の腸溶性ポリマーを含まない、腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
<3>
前記カラギーナンが、イオタカラギーナン、カッパカラギーナン、およびそれらの混合物のうち少なくとも1つを含む、上記1または2に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
<4>
前記カラギーナンがイオタカラギーナンである、上記3に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
<5>
前記ゼラチンが、A型ゼラチン、B型ゼラチン、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、上記1または2に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
<6>
前記ゼラチンが、魚ゼラチン、皮ゼラチン、骨ゼラチン、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、上記1または2に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
<7>
前記ゼラチンが、B型高ブルームゼラチンである、上記5に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
<8>
前記ゼラチンが、A型高ブルームゼラチンである、上記5に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
<9>
前記可塑剤が、グリセロール、グリセリン、ソルビトールおよびそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、上記1または2に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
<10>
前記可塑剤がグリセロールである、上記9に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
<11>
前記溶媒が水である、上記1または2に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
<12>
前記バッファーがリン酸二ナトリウムである、上記2に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
<13>
バッファーをさらに含む、上記1に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
<14>
前記カプセル剤が、酸性媒体中で約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、または約5時間で崩壊する、上記1~13のいずれかに記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
<15>
前記充填材料のpHが、約2.5~約6.5、または約3.0~約6.0、または約3.5~約5.5である、上記1~14のいずれかに記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤。
<16>
上記1または2に記載の腸溶性ソフトゲルカプセル剤を調製する方法であって、
(a)充填材料を調製するステップと、
(b)前記充填材料を前記腸溶性シェル組成物でカプセル封入するステップと
を含む、方法。
<17>
前記溶媒、前記グリセリン、および前記ゼラチンをメルターに添加して混合物を形成することにより、前記腸溶性シェル組成物を調製するステップをさらに含む、上記16に記載の方法。
<18>
前記混合物を真空下、約70℃~約80℃の温度で混合するステップを含む、上記17に記載の方法。
<19>
前記混合物を約82℃~約85℃の温度まで加熱するステップをさらに含む、上記18に記載の方法。
<20>
前記混合物を前記カラギーナンと前記可塑剤とのプレミックスと合わせるステップをさらに含む、上記17~19のいずれかに記載の方法。