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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】空気処理装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/12 20060101AFI20240227BHJP
   F24F 13/22 20060101ALI20240227BHJP
   F24F 13/28 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
F24F3/12
F24F1/0007 361D
F24F13/28
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021025545
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022127407
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2022-02-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】西村 政弥
(72)【発明者】
【氏名】宮本 英一
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】鈴木 充
【審判官】竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-193754(JP,A)
【文献】特開2010-185663(JP,A)
【文献】特開2006-336911(JP,A)
【文献】特開2011-196601(JP,A)
【文献】特開2003-93491(JP,A)
【文献】特開2009-127944(JP,A)
【文献】特開2001-96119(JP,A)
【文献】特開2009-97792(JP,A)
【文献】特開2019-152389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流路(41)を流通する流体と、第2流路(42)を流通する空気との間で熱交換を行う熱交換器(21)と、
前記熱交換器よりも、前記第2流路を流通する空気の流れの上流側に配置され、前記熱交換器へ流れる空気に含まれる物質を捕集する第1捕集部材(23)と、
外部の給水源からの水を所定の温度に調整した状態で前記第1捕集部材に供給する第3流路(43)と、
を備え、
前記第1捕集部材は、水が流れている表面、または、水が保持されている表面を有し、
前記第1捕集部材は、前記第1捕集部材を通過する空気が流れる流路であって、前記第2流路を流通する空気の流れの方向に平行でない第6流路(46)を形成し、
前記第6流路は、前記第6流路を流通する空気の流れの方向が途中で変更される形状を有し、
前記第1捕集部材に捕集される物質は、温度によって活性状態が変化する第1物質を含み、
前記所定の温度は、前記第1捕集部材に捕集された前記第1物質を不活性化できる温度である、
空気処理装置(102,202)。
【請求項2】
前記第1捕集部材の表面を流れる水、または、前記第1捕集部材の表面に保持されている水を排出する第4流路(44)をさらに備える、
請求項1に記載の空気処理装置。
【請求項3】
前記熱交換器よりも、前記第2流路を流通する空気の流れの下流側に配置され、前記熱交換器から流れる空気に含まれる前記物質を捕集する第2捕集部材(25)をさらに備え、
前記第2捕集部材は、水が流れている表面、または、水が保持されている表面を有する、
請求項1または2に記載の空気処理装置。
【請求項4】
前記第2捕集部材に所定の温度の水を供給する第5流路(45)をさらに備える、
請求項3に記載の空気処理装置。
【請求項5】
前記第1捕集部材よりも通風抵抗が小さいフィルター(26)をさらに備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の空気処理装置。
【請求項6】
前記フィルターは、前記第2流路を流通する空気の流れの方向において、前記第1捕集部材と前記熱交換器との間に配置される、
請求項5に記載の空気処理装置。
【請求項7】
前記空気処理装置は、冷凍サイクルを循環する冷媒と熱交換された水を前記第1捕集部材に供給する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の空気処理装置。
【請求項8】
前記第1捕集部材の表面を流れる水、または、前記第1捕集部材の表面に保持されている水は、前記物質を不活性化する成分を含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載の空気処理装置。
【請求項9】
前記第1捕集部材は、水に溶出しにくく、かつ、前記物質を不活性化する成分を担持する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の空気処理装置。
【請求項10】
前記第1捕集部材は、光が照射されることで前記物質を不活性化する成分を生成する光触媒を担持する、
請求項1から9のいずれか1項に記載の空気処理装置。
【請求項11】
前記第1捕集部材は、交換可能に構成されている、
請求項1から10のいずれか1項に記載の空気処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
空気処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(国際公開第2015/083297号)に記載のように、熱交換器へ流れる空気が通過するフィルターを備える空調機が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常のフィルターでは、屋外から屋内に導入される空気、または、屋内から屋内に循環する空気であって、熱交換器へ流れる空気に含まれる、1μm以下の微小物質(細菌、ウイルス、アレルゲンおよび粒子状物質等)を十分に捕集できず、微小物質が屋内に送られるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の空気処理装置は、熱交換器と、第1捕集部材とを備える。熱交換器は、第1流路を流通する流体と、第2流路を流通する空気との間で熱交換を行う。第1捕集部材は、熱交換器よりも、第2流路を流通する空気の流れの上流側に配置され、熱交換器へ流れる空気に含まれる物質を捕集する。第1捕集部材は、水が流れている表面、または、水が保持されている表面を有する。
【0005】
第1観点の空気処理装置では、第1捕集部材によって、屋外または屋内の空気に含まれる微小物質を熱交換器の上流側で捕集することで、微小物質が屋内に送られることが抑制される。
【0006】
第2観点の空気処理装置は、第1観点の空気処理装置であって、第3流路をさらに備える。第3流路は、所定の温度の水を第1捕集部材に供給する。
【0007】
第2観点の空気処理装置では、所定の温度の水を第1捕集部材に供給することで、第1捕集部材に捕集された微小物質の不活性化が促進される。
【0008】
第3観点の空気処理装置は、第1観点または第2観点の空気処理装置であって、第4流路をさらに備える。第4流路は、第1捕集部材の表面を流れる水、または、第1捕集部材の表面に保持されている水を排出する。
【0009】
第3観点の空気処理装置では、第1捕集部材が捕集した微小物質を含む水が排出されるので、第1捕集部材が清浄に保たれる。
【0010】
第4観点の空気処理装置は、第1乃至第3観点のいずれか1つの空気処理装置であって、第2捕集部材をさらに備える。第2捕集部材は、熱交換器よりも、第2流路を流通する空気の流れの下流側に配置され、熱交換器から流れる空気に含まれる物質を捕集する。第2捕集部材は、水が流れている表面、または、水が保持されている表面を有する。
【0011】
第4観点の空気処理装置では、第2捕集部材によって、屋外または屋内の空気に含まれる微小物質を熱交換器の下流側で捕集することで、微小物質が屋内に送られることが抑制される。
【0012】
第5観点の空気処理装置は、第4観点の空気処理装置であって、第5流路をさらに備える。第5流路は、第1捕集部材および第2捕集部材の少なくとも1つに所定の温度の水を供給する。
【0013】
第5観点の空気処理装置では、第1捕集部材または第2捕集部材の温度を調整することで、第1捕集部材または第2捕集部材に捕集された微小物質の不活性化が促進される。
【0014】
第6観点の空気処理装置は、第1乃至第5観点のいずれか1つの空気処理装置であって、第1捕集部材よりも通風抵抗が小さいフィルターをさらに備える。
【0015】
第6観点の空気処理装置では、フィルターによって、第1捕集部材が捕集しにくい微小物質が捕集される。
【0016】
第7観点の空気処理装置は、第6観点の空気処理装置であって、フィルターは、第2流路を流通する空気の流れの方向において、第1捕集部材と熱交換器との間に配置される。
【0017】
第7観点の空気処理装置では、フィルターによって、第1捕集部材を通過した微小物質が捕集される。
【0018】
第8観点の空気処理装置は、第1乃至第7観点のいずれか1つの空気処理装置であって、冷凍サイクルを循環する冷媒と熱交換された水を第1捕集部材に供給する。
【0019】
第8観点の空気処理装置では、例えば、冷媒と熱交換されて冷却された水を第1捕集部材に供給することで、屋内に送られる空気の温度が調整される。
【0020】
第9観点の空気処理装置は、第1乃至第8観点のいずれか1つの空気処理装置であって、第1捕集部材は、第1捕集部材を通過する空気が流れる流路であって、第2流路を流通する空気の流れの方向に平行でない第6流路を形成する。
【0021】
第9観点の空気処理装置では、第1捕集部材を通過する空気が第1捕集部材に衝突しやすいので、第1捕集部材の微小物質の捕集効果が高まる。
【0022】
第10観点の空気処理装置は、第1乃至第9観点のいずれか1つの空気処理装置であって、第1捕集部材の表面を流れる水、または、第1捕集部材の表面に保持されている水は、物質を不活性化する成分を含む。
【0023】
第10観点の空気処理装置では、第1捕集部材が清浄に保たれる。
【0024】
第11観点の空気処理装置は、第1乃至第10観点のいずれか1つの空気処理装置であって、第1捕集部材は、水に溶出しにくく、かつ、物質を不活性化する成分を担持する。
【0025】
第11観点の空気処理装置では、第1捕集部材が清浄に保たれる。
【0026】
第12観点の空気処理装置は、第1乃至第11観点のいずれか1つの空気処理装置であって、第1捕集部材は、光が照射されることで物質を不活性化する成分を生成する光触媒を担持する。
【0027】
第12観点の空気処理装置では、第1捕集部材が清浄に保たれる。
【0028】
第13観点の空気処理装置は、第1乃至第12観点のいずれか1つの空気処理装置であって、第1捕集部材は、交換可能に構成されている。
【0029】
第13観点の空気処理装置では、捕集対象物質の種類に応じて適切な第1捕集部材を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】空気調和装置101の冷媒回路の概略図である。
図2】室内機102の内部構造を示す上面図である。
図3】室内機102の内部構造を示す側面図である。
図4】変形例Bにおける、室内機102の内部構造を示す上面図である。
図5】変形例Bにおける、室内機102の内部構造を示す側面図である。
図6】変形例Cにおける、室内機102の内部構造を示す上面図である。
図7】変形例Cにおける、室内機102の内部構造を示す側面図である。
図8】変形例Dにおける、空気流路42に沿う方向から見た第1加湿エレメント23の概略図である。
図9】変形例Dにおける、図8の矢印Vの方向から見た第1吸水部材23aの概略図である。
図10】変形例Dにおける、図8の矢印Vの方向から見た第2吸水部材23bの概略図である。
図11】変形例Jにおける、エアハンドリングユニット202の内部構造を示す上面図である。
図12】変形例Jにおける、エアハンドリングユニット202の内部構造を示す側面図である。
図13】変形例Nにおける、図8の矢印Vの方向から見た第1吸水部材23aの概略図である。
図14】変形例Nにおける、図8の矢印Vの方向から見た第2吸水部材23bの概略図である。
図15】変形例Nにおける、図8の矢印Vの方向から見た第1吸水部材23aまたは第2吸水部材23bの概略図である。吸水エレメント23cの変形例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(1)空気調和装置101の構成
空気調和装置101は、建物内に設置される室内機102と、屋外に設置される室外機103とを有する。室内機102は、例えば、対象空間の天井裏の空間に設置される。対象空間とは、空気調和装置101によって少なくとも温度が調節される空間である。対象空間は、例えば、建物の屋内の空間である。室内機102および室外機103は、冷媒配管104を介して互いに接続され、これにより、空気調和装置101の冷媒回路が構成される。空気調和装置101は、対象空間において冷房運転および暖房運転等を行うための、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを備える。本開示に係る空気処理装置は、室内機102に相当する。
【0032】
図1に示されるように、空気調和装置101の冷媒回路は、主として、室内熱交換器21と、圧縮機31と、四路切換弁32と、アキュムレータ33と、室外熱交換器34と、膨張弁35と、液側閉鎖弁37と、ガス側閉鎖弁38とから構成される。空気調和装置101は、室内ファン22と室外ファン39とをさらに有する。
【0033】
室内熱交換器21および室内ファン22は、室内機102の内部に設けられている。圧縮機31、四路切換弁32、アキュムレータ33、室外熱交換器34、膨張弁35、液側閉鎖弁37、ガス側閉鎖弁38および室外ファン39は、室外機103の内部に設けられている。図1では、冷房運転時の冷媒の流れが、実線の矢印で示され、暖房運転時の冷媒の流れが、点線の矢印で示されている。
【0034】
室内熱交換器21は、伝熱管と、伝熱管に取り付けられるフィンとを有する。室内熱交換器21は、伝熱管の内部を流れる冷媒と、フィンを通過する空気との間で熱交換を行う。室内熱交換器21は、冷房運転時には吸熱器(蒸発器)として機能して、フィンを通過する空気を冷却する。室内熱交換器21は、暖房運転時には放熱器(凝縮器)として機能して、フィンを通過する空気を加熱する。
【0035】
圧縮機31は、アキュムレータ33から送り込まれるガス状の冷媒を圧縮する。圧縮機31で圧縮された冷媒は、冷房運転時には室外熱交換器34に送られ、暖房運転時には室内熱交換器21に送られる。
【0036】
四路切換弁32は、冷房運転時の冷媒回路と、暖房運転時の冷媒回路とを切り替えるための機構である。
【0037】
アキュムレータ33は、圧縮機31の吸入側に接続され、圧縮機31に吸入される前の冷媒の気液分離を行う。
【0038】
室外熱交換器34は、伝熱管と、伝熱管に取り付けられるフィンとを有する。室外熱交換器34は、伝熱管の内部を流れる冷媒と、フィンを通過する空気との間で熱交換を行う。室外熱交換器34は、冷房運転時には放熱器(凝縮器)として機能し、暖房運転時には吸熱器(蒸発器)として機能する。
【0039】
膨張弁35は、放熱器から吐出され、吸熱器に吸入される前の冷媒が通過する位置に設けられる。膨張弁35は、放熱器から吐出された高温高圧の冷媒を、吸熱器において蒸発しやすい状態まで減圧する。
【0040】
液側閉鎖弁37は、膨張弁35と冷媒配管104との間に設けられる。
【0041】
ガス側閉鎖弁38は、四路切換弁32と冷媒配管104との間に設けられる。
【0042】
室外ファン39は、室外熱交換器34において熱交換が行われた空気を室外機103から排出する。室外ファン39は、室外ファンモータ39aによって駆動する。
【0043】
(2)室内機102の構成
図2および図3に示されるように、室内機102は、ケーシング16と、室内熱交換器21と、室内ファン22と、第1加湿エレメント23と、ドレンパン24とを有する。室内機102は、室外空気OAおよび室内空気RAを取り入れて、第1加湿エレメント23および室内熱交換器21をこの順番で通過させて、供給空気SAとして対象空間に供給する。室外空気OAは、屋外から屋内に導入される空気である。室内空気RAは、屋内から屋内に循環する空気である。供給空気SAは、空気調和装置101によって少なくとも温度が調節された空気である。
【0044】
(2-1)ケーシング16
ケーシング16は、対象空間の天井裏の空間に設置される。ケーシング16は、直方体の形状を有する。室内熱交換器21、室内ファン22、第1加湿エレメント23およびドレンパン24は、ケーシング16の内部に設けられる。
【0045】
ケーシング16は、屋外から室外空気OAを取り入れるための第1開口16aと、対象空間から室内空気RAを取り入れるための第2開口16bと、対象空間に供給空気SAを供給するための第3開口16cとを有する。室内機102が対象空間の天井裏の空間に設置されている状態において、ケーシング16の第3開口16cは、対象空間の天井の高さ位置において開口している。空気調和装置101の運転中、ケーシング16の内部空間には、第1開口16aおよび第2開口16bから、第3開口16cに向かう空気流路42が形成される。空気流路42では、第1開口16aから取り入れられた室外空気OAと、第2開口16bから取り入れられた室内空気RAとが合流して、第3開口16cに向かって流れる。
【0046】
ケーシング16の内部には、電装品ボックスが設けられる。電装品ボックスは、室内機102の各構成部品を制御するためのマイクロコンピュータである制御部を収納する。制御部の制御対象は、例えば、室内ファン22を駆動する室内ファンモータ22aである。
【0047】
(2-2)室内熱交換器21
室内熱交換器21は、ケーシング16の内部の空気流路42に配置される。空気流路42(第2流路)を流れる空気は、室内熱交換器21を通過する際に、室内熱交換器21の伝熱管の内部の冷媒流路41(第1流路)を流れる冷媒と熱交換される。言い換えると、室内熱交換器21は、冷媒流路41を流通する流体と、空気流路42を流通する空気との間で熱交換を行う。空気流路42を流れる空気は、室内熱交換器21によって加熱または冷却される。
【0048】
(2-3)室内ファン22
室内ファン22は、ケーシング16の内部に配置される。室内ファン22は、室内熱交換器21よりも、空気流路42を流通する空気の流れの下流側に配置される。図2に示されるように、室内ファン22は、第3開口16cの近傍に配置される。室内ファン22は、室内ファンモータ22aによって駆動することで、室外空気OAおよび室内空気RAをケーシング16の内部に取り入れて、対象空間に供給空気SAを供給する。言い換えると、室内ファン22が駆動することによって、ケーシング16の内部空間に、空気流路42を流れる空気の流れが形成される。
【0049】
(2-4)第1加湿エレメント23
第1加湿エレメント23は、ケーシング16の内部の空気流路42に配置される。第1加湿エレメント23は、室内熱交換器21よりも、空気流路42を流通する空気の流れの上流側に配置される。
【0050】
第1加湿エレメント23は、複数の吸水部材が組み合わされた構造を有する。吸水部材は、例えば、多孔質セラミックスおよび不織布である。吸水部材は、格子状、波板状およびハニカム状等の形状を有する。第1加湿エレメント23は、組み合わされた吸水部材の間に形成される隙間、および、吸水部材の多孔質構造によって、吸水性、保水性および通風性を有する。
【0051】
空気調和装置101の運転中、図示されない給水源から第1給水用流路43(第3流路)を介して、第1加湿エレメント23に水が供給される。給水源は、例えば、室内機102の内部または外部に設置される給水タンク、または、建物内の上水道である。図3に示されるように、第1給水用流路43から第1加湿エレメント23に水が上方から供給されることで、第1加湿エレメント23の吸水部材は水を吸って保持する。吸水部材に保持されている水は重力によって下方に流れて、最終的に第1加湿エレメント23から流出する。これにより、空気調和装置101の運転中、第1加湿エレメント23は、水が流れている表面、または、水が保持されている表面を有する。
【0052】
第1加湿エレメント23を通過する空気は、第1加湿エレメント23の吸水部材が保持している水を気化させる。これにより、空気流路42を流れる空気は、第1加湿エレメント23を通過することで加湿される。第1加湿エレメント23を通過した空気は、室内熱交換器21に向かって流れる。
【0053】
ケーシング16の内部の空気流路42では、最初に、ケーシング16の内部に取り入れられた室外空気OAと室内空気RAとが合流する。次に、合流した空気が第1加湿エレメント23を通過する。次に、第1加湿エレメント23を通過した空気が室内熱交換器21を通過する。次に、室内熱交換器21を通過した空気が供給空気SAとしてケーシング16の内部から対象空間に供給される。供給空気SAは、第1加湿エレメント23によって加湿され、室内熱交換器21によって温度が調節された空気である。
【0054】
第1加湿エレメント23は、第1加湿エレメント23を通過する空気に含まれる捕集対象物質を捕集する。捕集対象物質とは、供給空気SAと共に対象空間に供給されると、対象空間に居るヒトあるいは動物に悪影響を及ぼす可能性がある微小物質(請求項1に記載の「物質」に相当する。)である。微小物質の大きさは、例えば、1μm以下である。捕集対象物質は、例えば、感染性物質、アレルゲン、および、粒子状物質である。感染性物質とは、病原体を含む。病原体とは、ヒトあるいは動物に疾病を引き起こすことができる微生物(例えば細菌、ウィルス、寄生虫、真菌)、および、非生物も含むその他の物質(例えばプリオン)である。アレルゲンとは、ヒトにアレルギー症状を引き起こす原因となる物質であり、例えば、ハウスダストおよび花粉である。粒子状物質とは、固体および液体の微粒子であり、例えば、煤、粉塵および排出ガスである。空気流路42を流通する空気に含まれる捕集対象物質は、第1加湿エレメント23の吸水部材に保持されている水と接触し、吸水部材に保持されている水に混入することで捕集される。第1加湿エレメント23に捕集された捕集対象物質は、吸水部材に保持されるか、または、吸水部材を下方に向かって流れる水と共に第1加湿エレメント23から流出する。
【0055】
(2-5)ドレンパン24
図3に示されるように、ドレンパン24は、第1加湿エレメント23の下方に配置される。ドレンパン24は、第1加湿エレメント23から流出した水を受ける容器である。ケーシング16は、ドレンパン24をケーシング16の内部から取り出すための点検用開口を有してもよい。この場合、ドレンパン24を点検用開口から取り出すことで、第1加湿エレメント23およびドレンパン24の点検および清掃を容易に行うことができる。
【0056】
図3に示されるように、ドレンパン24は、第1加湿エレメント23および室内熱交換器21の両方の下方に配置されてもよい。この場合、ドレンパン24は、冷房運転時に室内熱交換器21に付着して、室内熱交換器21の下端から落下した水をさらに受けることができる。
【0057】
図3に示されるように、ドレンパン24の下部には、ドレンパン24に溜まった水を排出するための排水口24aが形成されている。排水口24aは、ドレンパン24に溜まった水を屋外等に送るための排水用流路44(第4流路)に接続されている。室内機102は、ドレンパン24の排水口24aの代わりに、または、排水口24aと共に、ドレンパン24に溜まった水を屋外等に排出するためのポンプを有してもよい。
【0058】
(3)特徴
室内機102の第1加湿エレメント23は、室外空気OAおよび室内空気RAに含まれる捕集対象物質を、空気流路42において室内熱交換器21の上流側で捕集する。捕集対象物質が第1加湿エレメント23によって捕集されるので、室内機102は、捕集対象物質を含む供給空気SAが対象空間に送られることを抑制することができる。
【0059】
また、捕集対象物質が第1加湿エレメント23によって捕集されるので、室内熱交換器21に捕集対象物質が付着することが抑制される。そのため、室内機102は、室内熱交換器21の汚染を抑制し、室内熱交換器21に捕集対象物質が付着することによる熱交換効率の低下を抑制することができる。
【0060】
また、第1加湿エレメント23の表面を流れる水、または、第1加湿エレメント23の表面に保持されている水は、重力によって第1加湿エレメント23から流出する。そのため、第1加湿エレメント23によって捕集された捕集対象物質は、水と共に第1加湿エレメント23からドレンパン24に流出して、室内機102から排出される。これにより、室内機102は、捕集対象物質を含まない清浄な水を第1加湿エレメント23に供給することで、第1加湿エレメント23を清浄に保つことができる。
【0061】
(4)変形例
(4-1)変形例A
実施形態の室内機102は、給水源から第1給水用流路43を介して、所定の温度の水を第1加湿エレメント23に供給してもよい。この場合、室内機102は、所定の温度の水を第1加湿エレメント23に供給することで、第1加湿エレメント23に捕集された捕集対象物質の不活性化を促進することができ、かつ、第1加湿エレメント23を通過して対象空間に送られる供給空気SAの温度を調整することができる。捕集対象物質が微生物である場合、所定の温度の水とは、第1加湿エレメント23において微生物の繁殖が抑制される温度、または、微生物が死滅する温度の水である。所定の温度は、例えば、45℃以上である。
【0062】
この場合、第1加湿エレメント23に供給される所定の温度の水は、外部の給水源から供給された水を、空気調和装置101の冷凍サイクルを循環する冷媒と熱交換されて加熱された水であってもよい。例えば、第1加湿エレメント23に供給される所定の温度の水は、水道水を、放熱器(凝縮器)を通過した後の冷媒が流れる冷媒配管と接触させて、冷媒と熱交換させることで加熱した水であってもよい。この場合、例えば、膨張弁35を通過する直前の冷媒と熱交換させて加熱した水道水を、所定の温度の水として用いることが好ましい。
【0063】
また、本変形例では、室内機102は、空気調和装置101の冷房運転時において、冷却水を第1加湿エレメント23に供給することで、第1加湿エレメント23を通過する空気を冷却してもよい。これにより、室内熱交換器21および室外熱交換器34の熱負荷が低減される。この場合、冷却水として、空気調和装置101の冷凍サイクルを循環する冷媒と熱交換されて冷却された水道水が用いられてもよい。
【0064】
また、本変形例では、室内機102は、空気調和装置101の暖房運転時において、所定の温度の水を第1加湿エレメント23に供給することで、第1加湿エレメント23を通過する空気を加熱してもよい。これにより、室内熱交換器21および室外熱交換器34の熱負荷が低減される。この場合、所定の温度の水として、空気調和装置101の冷凍サイクルを循環する冷媒と熱交換されていない水道水、または、室内機102の外部の給湯装置等から供給された水が用いられてもよい。
【0065】
(4-2)変形例B
図4および図5に示されるように、室内機102は、第1加湿エレメント23の他に、第2加湿エレメント25をさらに備えてもよい。第2加湿エレメント25は、ケーシング16の内部の空気流路42に配置される。第2加湿エレメント25は、室内熱交換器21よりも、空気流路42を流通する空気の流れの下流側に配置され、かつ、室内ファン22よりも、空気流路42を流通する空気の流れの上流側に配置される。
【0066】
第2加湿エレメント25は、複数の吸水部材が組み合わされた構造を有する。吸水部材は、例えば、多孔質セラミックスおよび不織布である。吸水部材は、格子状、波板状およびハニカム状等の形状を有する。第2加湿エレメント25は、組み合わされた吸水部材の間に形成される隙間、および、吸水部材の多孔質構造によって、吸水性、保水性および通風性を有する。第2加湿エレメント25は、第1加湿エレメント23と同じ部材であってもよい。
【0067】
空気調和装置101の運転中、図示されない給水源から第2給水用流路45(第5流路)を介して、第2加湿エレメント25に水が供給される。図5に示されるように、第2給水用流路45から第2加湿エレメント25に水が上方から供給されることで、第2加湿エレメント25の吸水部材は水を吸って保持する。吸水部材に保持されている水は重力によって下方に流れて、最終的に第2加湿エレメント25から流出する。これにより、空気調和装置101の運転中、第2加湿エレメント25は、水が流れている表面、または、水が保持されている表面を有する。
【0068】
第2加湿エレメント25を通過する空気は、第2加湿エレメント25の吸水部材が保持している水を気化させる。これにより、空気流路42を流れる空気は、第2加湿エレメント25を通過することで加湿される。第2加湿エレメント25を通過した空気は、第3開口16cに向かって流れる。
【0069】
本変形例では、図5に示されるように、ドレンパン24は、第1加湿エレメント23および第2加湿エレメント25の下方に配置される。第2加湿エレメント25の吸水部材から流出した水は、ドレンパン24に貯留される。
【0070】
第2加湿エレメント25は、空気流路42において室内熱交換器21を通過した空気に含まれる捕集対象物質を捕集する。本変形例では、第1加湿エレメント23に捕集されなかった捕集対象物質を、第2加湿エレメント25によって捕集することで、捕集対象物質を含む供給空気SAが対象空間に送られることが抑制される。
【0071】
本変形例では、変形例Aと同様に、室内機102は、第2加湿エレメント25用の第2給水用流路45を介して、所定の温度の水を第2加湿エレメント25に供給してもよい。この場合、室内機102は、所定の温度の水を第2加湿エレメント25に供給することで、第2加湿エレメント25を通過して対象空間に送られる供給空気SAの温度を調整することができる。
【0072】
本変形例では、図5に示されるように、給水源に接続される1本の共通流路47から、第1加湿エレメント23用の第1給水用流路43と、第2加湿エレメント25用の第2給水用流路45とが分岐してもよい。この場合、第1加湿エレメント23および第2加湿エレメント25の両方に、同じ温度の水を供給することができる。第1加湿エレメント23用の第1給水用流路43と、第2加湿エレメント25用の第2給水用流路45とが異なる給水源に接続されている場合、第1加湿エレメント23および第2加湿エレメント25の少なくとも一方に所定の温度の水が供給されてもよい。
【0073】
本変形例では、第1加湿エレメント23および第2加湿エレメント25に供給される水の温度を調整することで、第1加湿エレメント23および第2加湿エレメント25の温度を制御する。捕集対象物質が、温度によって活性状態が変化する物質、例えば、細菌およびウイルス等の微生物である場合、第1加湿エレメント23および第2加湿エレメント25の温度を適切に制御することで、捕集された微生物を不活性化することができる。不活性化とは、微生物の繁殖を抑制すること、または、微生物を死滅させることである。これにより、第1加湿エレメント23および第2加湿エレメント25に付着している微生物の繁殖が抑制され、第1加湿エレメント23および第2加湿エレメント25が消臭される。
【0074】
(4-3)変形例C
図6および図7に示されるように、室内機102は、第1加湿エレメント23よりも通風抵抗が小さいフィルター26をさらに備えてもよい。フィルター26は、ケーシング16の内部の空気流路42に配置される。フィルター26は、空気流路42を流通する空気の流れの方向において、第1加湿エレメント23と室内熱交換器21との間に配置される。フィルター26は、第1加湿エレメント23を通過した空気に含まれる異物を捕集する。フィルター26は、第1加湿エレメント23よりも、空気流路42を流通する空気の流れの上流側に配置されてもよい。
【0075】
本変形例では、室内機102は、変形例Bの第2加湿エレメント25をさらに備えてもよい。この場合、フィルター26は、空気流路42を流通する空気の流れの方向において、第2加湿エレメント25と室内熱交換器21との間、または、第2加湿エレメント25と室内ファン22との間に配置されてもよい。
【0076】
(4-4)変形例D
第1加湿エレメント23は、複数の吸水部材が組み合わされた構造を有する。第1加湿エレメント23を通過する空気は、組み合わされた複数の吸水部材の間の空間である加湿用流路46(第6流路)を通り抜ける。図8に示されるように、空気流路42を流通する空気の流れの方向に沿って見た場合、第1加湿エレメント23は、多数のセルが規則的に配置された、ハニカム構造に類似する構造を有している。図8の各セルは、加湿用流路46の入口または出口を表す。図9および図10では、空気流路42を流通する空気の流れが第1矢印D1で示され、加湿用流路46を流通する空気の流れの一例が第2矢印D2,D2´で示されている。第1矢印D1は、第1加湿エレメント23を通過する前、および、第1加湿エレメント23を通過した後の空気の流れの方向を示す。
【0077】
図8に示されるように、第1矢印D1の方向に沿って見た場合に、第1加湿エレメント23は、第1吸水部材23aと第2吸水部材23bとが交互に配置された構成を有している。加湿用流路46は、第1吸水部材23aと第2吸水部材23bとの間の空間に相当する。図8において、第1吸水部材23aおよび第2吸水部材23bは、鉛直方向に沿って延びている。
【0078】
図9および図10に示されるように、第1矢印D1および鉛直方向と直交する方向(図8の矢印Vの方向)から見た場合に、第1吸水部材23aおよび第2吸水部材23bは、それぞれ、1枚の吸水エレメント23cから構成される。吸水エレメント23cは、第1矢印D1の方向と交差する方向(鉛直方向)に沿って所定の間隔でV字形状の凹凸部が形成された板状部材である。図9および図10において、実線は凸部を表し、点線は凹部を表す。第2矢印D2は、第1吸水部材23aの吸水エレメント23cの凹凸部に沿って流れる空気の流れの一例を示す。第2矢印D2´は、第2吸水部材23bの吸水エレメント23cの凹凸部に沿って流れる空気の流れの一例を示す。第2矢印D2,D2´は、吸水エレメント23cの凹凸部に沿っているので、第1矢印D1と平行ではない。吸水エレメント23cに保持される水は、例えば、上方から下方に向かって落下しながら流れる。
【0079】
第1矢印D1に沿って見た場合において、第1吸水部材23aと第2吸水部材23bとが並んでいる方向に沿って互いに隣り合う吸水エレメント23cは、凹凸部のV字形状の向きが互いに反対方向になるように配置される。具体的には、第1吸水部材23aでは、図9に示されるように、吸水エレメント23cは、その凹凸部のV字形状がそのままの方向となるように配置される。また、第2吸水部材23bでは、図10に示されるように、吸水エレメント23cは、その凹凸部のV字形状が上下反対の方向となるように配置される。そのため、図8に示されるいずれかのセルから流入した空気の一部は、第1吸水部材23aに沿って上方に向かって流れ、残りは、第2吸水部材23bに沿って下方に向かって流れる。これにより、加湿用流路46を流れる空気は、第1加湿エレメント23の内部において、分流および合流を繰り返す。
【0080】
従って、本変形例では、空気流路42を流通する空気は、第1加湿エレメント23の加湿用流路46を通過する際に、水を保持している吸水エレメント23cと衝突しやすい。そのため、第1加湿エレメント23を通過する空気が加湿されやすくなり、かつ、第1加湿エレメント23の捕集対象物質の捕集効果が高まる。
【0081】
本変形例は、変形例Bの第2加湿エレメント25にも適用可能である。
【0082】
(4-5)変形例E
第1加湿エレメント23に供給される水は、捕集対象物質を不活性化する成分を含んでもよい。例えば、捕集対象物質が細菌である場合、第1加湿エレメント23に供給される水は、ヒドロキシラジカルおよび過酸化水素等の、殺菌作用または抗菌作用を有する強酸化性物質を含む水であってもよい。この場合、第1加湿エレメント23の表面を流れる水、または、第1加湿エレメント23の表面に保持されている水は、捕集対象物質の不活性化を促進する効果を有する。捕集対象物質が粒子状物質等の非生物である場合、第1加湿エレメント23に供給される水は、捕集対象物質を分解する成分、または、ヒトあるいは動物に対する捕集対象物質の影響力を低減させる成分を含む水であってもよい。
【0083】
本変形例では、第1加湿エレメント23の表面を流れる水、または、第1加湿エレメント23の表面に保持されている水は、第1加湿エレメント23に付着している捕集対象物質の不活性化を促進する効果を有する。これにより、第1加湿エレメント23が捕集対象物質で汚染されることが抑制されるので、第1加湿エレメント23を清浄に保つことができる。
【0084】
本変形例は、変形例Bの第2加湿エレメント25に供給される水にも適用可能である。
【0085】
(4-6)変形例F
第1加湿エレメント23の吸水部材は、水に溶出しにくく、かつ、捕集対象物質を不活性化する物質を担持してもよい。例えば、第1加湿エレメント23の吸水部材は、常時水と接触していても水に溶出しにくい、銅および銀等を含む無機系の抗菌剤を担持してもよい。例えば、捕集対象物質が細菌である場合、抗菌剤によって、第1加湿エレメント23に付着している細菌の繁殖が抑制され、第1加湿エレメント23が消臭される。
【0086】
同様に、変形例Bの第2加湿エレメント25の吸水部材、および、変形例Cのフィルター26は、抗菌剤を担持してもよい。これにより、第2加湿エレメント25およびフィルター26に付着している細菌の繁殖が抑制され、第2加湿エレメント25およびフィルター26が消臭される。
【0087】
(4-7)変形例G
第1加湿エレメント23の吸水部材は、親水性の光触媒を担持してもよい。この場合、室内機102は、第1加湿エレメント23に光を照射する光源をさらに備える。光源は、第1加湿エレメント23に対して、可視光線または紫外線を照射する。光源から照射される光によって光触媒が活性化されることで、第1加湿エレメント23の吸水部材に保持されている水が電離して、捕集対象物質を不活性化する成分が生成される。捕集対象物質が細菌である場合、捕集対象物質を不活性化する成分とは、ヒドロキシラジカルまたは過酸化水素等の、殺菌作用または抗菌作用を有する強酸化性物質である。この場合、第1加湿エレメント23に付着している細菌の繁殖が抑制され、第1加湿エレメント23が消臭される。
【0088】
本変形例では、室内機102は、光源から照射される光を反射する反射部材をさらに備えてもよい。この場合、光源は、第1加湿エレメント23に光を直接照射せず、反射部材に光を照射する。光源から照射され反射部材によって反射された光は、第1加湿エレメント23に照射され、捕集対象物質を不活性化する成分が生成される。反射部材は、例えば、鏡である。
【0089】
同様に、変形例Bの第2加湿エレメント25の吸水部材、および、変形例Cのフィルター26は、抗菌剤を担持してもよい。この場合、室内機102は、第2加湿エレメント25およびフィルター26に光を照射する光源をさらに備える。これにより、例えば、第2加湿エレメント25およびフィルター26に付着している細菌の繁殖が抑制され、第2加湿エレメント25およびフィルター26が消臭される。室内機102が反射部材を備える場合、光源から照射され反射部材に反射された光は、第1加湿エレメント23、第2加湿エレメント25およびフィルター26の少なくとも1つに照射されてもよい。
【0090】
(4-8)変形例H
実施形態の空気調和装置101は、対象空間において冷房運転および暖房運転等を行うための、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを備える装置である。しかし、空気調和装置101は、全熱交換器(請求項1に記載の「熱交換器」に相当する。)を備える換気装置であってもよい。この場合、換気装置は、本開示に係る空気処理装置に相当する。全熱交換器は、対象空間から屋外に排出される排出空気(請求項1に記載の「第1流路を流通する流体」に相当する。)と、屋外から対象空間に供給される供給空気(請求項1に記載の「第2流路を流通する空気」に相当する。)との間で熱交換を行うことで、排出空気から供給空気に熱および湿気の両方を戻すことができる。この場合、供給空気が流れる空気流路に、実施形態の第1加湿エレメント23が設置されてもよい。供給空気が流れる空気流路に、変形例Bの第2加湿エレメント25、および、変形例Cのフィルター26の少なくとも1つがさらに設置されてもよい。
【0091】
また、換気装置である空気調和装置101は、対象空間から屋外に排出される排出空気が通過する第1吸着熱交換器と、屋外から対象空間に供給される供給空気が通過する第2吸着熱交換器とからなる、2つの吸着熱交換器を備えてもよい。吸着熱交換器は、いわゆるクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器の表面に吸着剤を担持させたものである。この吸着剤としては、ゼオライト、シリカゲル、活性炭、および、親水性の官能基を有する有機高分子材料など、空気中の水分を吸着できる材料が用いられる。この場合、換気装置である空気調和装置101は、排出空気が流通する流路と、供給空気が流通する流路とを相互に切り替えてもよい。言い換えると、排出空気が第1吸着熱交換器を通過し、供給空気が第2吸着熱交換器を通過する状態と、排出空気が第2吸着熱交換器を通過し、供給空気が第1吸着熱交換器を通過する状態とを交互に切り替え可能であってもよい。この場合、供給空気が流れる空気流路に、実施形態の第1加湿エレメント23が設置されてもよい。供給空気が流れる空気流路に、変形例Bの第2加湿エレメント25、および、変形例Cのフィルター26の少なくとも1つがさらに設置されてもよい。
【0092】
また、本変形例では、換気装置である空気調和装置101は、供給空気の温度を調節するための熱交換器をさらに備えてもよい。この場合、温度調節用の熱交換器は、主に対象空間の近くに設置され冷媒と供給空気との間で熱交換を行う熱交換器でもよく、主に対象空間から離れた場所に設置され冷媒と熱交換された媒体と供給空気との間で熱交換を行う熱交換器でもよい。
【0093】
本変形例では、供給空気が流れる空気流路に第1加湿エレメント23が設置される場合、変形例Aと同様に、第1加湿エレメント23に所定の温度の水が供給されてもよい。また、供給空気が流れる空気流路に第2加湿エレメント25が設置される場合、変形例Bと同様に、第2加湿エレメント25に所定の温度の水が供給されてもよい。所定の温度の水は、例えば、換気装置の外部の冷凍サイクルを循環する冷媒と熱交換されて冷却された水である。
【0094】
(4-9)変形例I
空気調和装置101は、冷房機能および暖房機能を実現するための冷媒回路を有さない機器であってもよい。例えば、空気調和装置101は、対象空間の空気から異物等を除去し、清浄な空気を同じ対象空間に送る空気清浄装置であってもよい。また、空気調和装置101は、対象空間の空気から異物等を除去し、清浄な空気を異なる対象空間に送る空気清浄装置であってもよい。この場合、本開示に係る空気処理装置は、空気調和装置101に相当する。空気調和装置101は、室内空気を取り入れて、第1加湿エレメント23および室内熱交換器21をこの順番で通過させて、供給空気として対象空間に供給する。
【0095】
(4-10)変形例J
本開示に係る空気処理装置は、エアハンドリングユニット202であってもよい。エアハンドリングユニット202とは、比較的大型の設備に設置され、異物が除去されて温度および湿度が調整された空気を屋内に供給する装置である。エアハンドリングユニット202は、屋内または屋外に設置される。本変形例のエアハンドリングユニット202は、実施形態の室内機102と基本的な構成が同じである。以下、実施形態の室内機102との相違点を中心に説明する。
【0096】
図11および図12に示されるように、エアハンドリングユニット202は、第1加湿エレメント23と、フィルター26と、室内熱交換器21と、第2加湿エレメント25とを備える。
【0097】
第1加湿エレメント23は、実施形態と同様に、室外空気OAおよび室内空気RAに含まれる捕集対象物質を、空気流路42において室内熱交換器21の上流側で捕集する。
【0098】
フィルター26は、変形例Cと同様に、第1加湿エレメント23を通過した空気に含まれる異物を捕集する。
【0099】
室内熱交換器21は、実施形態と同様に、空気流路42を流れる空気の温度を調整する。室内熱交換器21は、流体(請求項1に記載の「第1流路を流通する流体」に相当する。)として冷水または温水を循環させて、室内熱交換器21を通過する空気の温度を調整する。この場合、図11および図12に示されるように、室内熱交換器21は、例えば、冷水が内部を流れる冷水管コイル21aと、温水が内部を流れる温水管コイル21bとを有してもよい。流体として用いられる冷水および温水は、異なる給水源から供給されてもよい。冷水管コイル21aは、室内熱交換器21を通過する空気の温度を低下させるために用いられる。温水管コイル21bは、室内熱交換器21を通過する空気の温度を上昇させるために用いられる。冷水管コイル21aおよび温水管コイル21bの内部の流路は、実施形態の冷媒流路41に相当する。
【0100】
第2加湿エレメント25は、変形例Bと同様に、室内熱交換器21を通過した空気に含まれる捕集対象物質を捕集する。第1加湿エレメント23および第2加湿エレメント25は、空気流路42を流れる空気の湿度を調整する。
【0101】
本変形例では、図12に示されるように、ドレンパン24は、第1加湿エレメント23および第2加湿エレメント25の下方に配置される。本変形例では、図12に示されるように、変形例Bと同様に、給水源に接続される1本の共通流路47から、第1加湿エレメント23用の第1給水用流路43と、第2加湿エレメント25用の第2給水用流路45とが分岐してもよい。この場合、1本の共通流路47を流れる水が冷水管コイル21aに供給されてもよい。また、1本の共通流路47を流れる水が加熱されて温水管コイル21bに供給されてもよい。
【0102】
(4-11)変形例K
室内機102の制御部は、単位時間当たりに第1給水用流路43から第1加湿エレメント23に供給される水の量を制御してもよい。例えば、室内機102の制御部は、空気流路42を流通する空気に含まれる捕集対象物質の量が多いほど、第1加湿エレメント23に供給される水の量を増加させる制御を行ってもよい。捕集対象物質の量は、例えば、単位体積当たりの対象空間の空気に含まれる捕集対象物質の質量である。捕集対象物質の量は、例えば、対象空間に設置させるセンサによって測定される。第1加湿エレメント23に供給される水の量が多いほど、第1加湿エレメント23に捕集された捕集対象物質を含む水が第1加湿エレメント23から流出しやすくなるので、第1加湿エレメント23を清浄に保つことができる。
【0103】
本変形例は、変形例Bの第2加湿エレメント25にも適用可能である。具体的には、室内機102の制御部は、単位時間当たりに第2給水用流路45から第2加湿エレメント25に供給される水の量を制御してもよい。
【0104】
(4-12)変形例L
前出の変形例において、室内機102は、仕様が異なる複数の加湿エレメントを備えてもよい。例えば、変形例Bで説明したように、室内機102は、仕様が互いに異なる第1加湿エレメント23および第2加湿エレメント25を備えてもよい。加湿エレメントの仕様とは、例えば、保持できる水の量、水が保持される平均時間、および、使用可能な温度範囲である。それぞれの加湿エレメントは、実施形態の第1加湿エレメント23と同様に、給水用流路から水が供給される。
【0105】
室内機102は、仕様が異なる複数の加湿エレメントを備えることで、複数種類の捕集対象物質を効率的に不活性化することができる。例えば、捕集対象物質の種類に応じて、複数の加湿エレメントのそれぞれに、異なる温度の水を供給することで、特定の種類の捕集対象物質を特定の加湿エレメントによって効率的に不活性化することができる。
【0106】
本変形例では、複数の加湿エレメントは、ケーシング16の内部の空気流路42に配置される。複数の加湿エレメントの位置は、限定されない。例えば、全ての複数の加湿エレメントは、室内熱交換器21よりも、空気流路42を流通する空気の流れの上流側に配置されてもよく、下流側に配置されてもよい。また、複数の加湿エレメントの一部は、室内熱交換器21よりも、空気流路42を流通する空気の流れの上流側に配置され、残りは、下流側に配置されてもよい。
【0107】
(4-13)変形例M
第1加湿エレメント23は、交換可能に構成されていてもよい。具体的には、室内機102は、第1加湿エレメント23を容易に取り外し、または、取り付けることができる機構を有してもよい。この場合、第1加湿エレメント23の交換および清掃等の保守作業が容易になる。
【0108】
本変形例では、室内機102は、捕集対象物質の種類に適した構成を有する第1加湿エレメント23を備えることができる。例えば、第1加湿エレメント23が、図9~10に示されるような吸水エレメント23cを有する場合、捕集対象物質の種類、および、空気流路42を流通する空気の流量に応じて、吸水エレメント23cのV字形状の凹凸部の適切な間隔が異なる。そのため、第1加湿エレメント23が交換可能に構成されることで、室内機102は、適切な第1加湿エレメント23を備えることができるので、捕集対象物質を効率的に捕集することができる。
【0109】
本変形例は、変形例Bの第2加湿エレメント25にも適用可能である。
【0110】
(4-14)変形例N
変形例Dにおいて、図13および図14に示されるように、第1吸水部材23aおよび第2吸水部材23bは、それぞれ、複数枚の吸水エレメント23cが第1矢印D1に沿って配置された構成を有していてもよい。図13および図14において、実線は凸部を表し、点線は凹部を表す。この場合、第1吸水部材23aおよび第2吸水部材23bのそれぞれにおいて、第1矢印D1に沿って互いに隣り合う吸水エレメント23cは、V字形状の向きが互いに反対方向になるように配置される。これにより、第2矢印D2,D2´は、第1吸水部材23aおよび第2吸水部材23bの凹凸部に沿うジグザグ形状となる。従って、第2矢印D2,D2´は、第1矢印D1と平行ではない。
【0111】
本変形例では、第1矢印D1に沿って配置された複数枚の吸水エレメント23cは、互いに異なる条件下で用いられてもよい。例えば、第1矢印D1に沿って配置された複数枚の吸水エレメント23cのそれぞれを流れる水の量、速さおよび温度の少なくとも1つが、互いに異なってもよい。捕集対象物質を不活性化する効果が最も高い温度および湿度は、捕集対象物質の種類によって異なる。そのため、吸水エレメント23cを流れる水の量、速さおよび温度の少なくとも1つを、第1矢印D1に沿って配置された複数枚の吸水エレメント23cの間で互いに異ならせることで、第1加湿エレメント23は、複数種類の捕集対象物質を効率的に不活性化することができる。
【0112】
また、吸水エレメント23cを流れる水に含まれる、捕集対象物質を不活性化する成分の種類が、第1矢印D1に沿って配置された複数枚の吸水エレメント23cの間で互いに異なってもよい。捕集対象物質を不活性化する効果が高い成分は、捕集対象物質の種類によって異なる。そのため、吸水エレメント23cを流れる水に含まれる、捕集対象物質を不活性化する成分の種類を、第1矢印D1に沿って配置された複数枚の吸水エレメント23cの間で互いに異ならせることで、第1加湿エレメント23は、複数種類の捕集対象物質を効率的に不活性化することができる。
【0113】
また、本変形例では、第1吸水部材23aおよび第2吸水部材23bの吸水エレメント23cの凹凸部は、V字形状でなくてもよい。例えば、吸水エレメント23cの凹凸部は、図15に示されるように、第1矢印D1と平行でない方向に沿って延びている直線形状であってもよい。図15において、実線は凸部を表し、点線は凹部を表す。この場合、図15に示されるように、複数の吸水エレメント23cを第1矢印D1に沿って並べることで、図9および図10と同様に、加湿用流路46をV字形状にすることができる。
【0114】
本変形例は、変形例Bの第2加湿エレメント25にも適用可能である。
―むすび―
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0115】
21 :室内熱交換器(熱交換器)
23 :第1加湿エレメント(第1捕集部材)
25 :第2加湿エレメント(第2捕集部材)
26 :フィルター
41 :冷媒流路(第1流路)
42 :空気流路(第2流路)
43 :第1給水用流路(第3流路)
44 :排水用流路(第4流路)
45 :第2給水用流路(第5流路)
46 :加湿用流路(第6流路)
102 :室内機(空気処理装置)
202 :エアハンドリングユニット(空気処理装置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0116】
【文献】国際公開第2015/083297号
図1
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