(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】手術用ロボットシステムのための追跡および案内装置ならびに関連する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/20 20160101AFI20240227BHJP
A61C 19/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61B34/20
A61C19/00 Z
(21)【出願番号】P 2021029684
(22)【出願日】2021-02-26
(62)【分割の表示】P 2019515334の分割
【原出願日】2017-09-14
【審査請求日】2021-03-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-01
(32)【優先日】2016-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518432274
【氏名又は名称】ネオシス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アロン・モーゼス
(72)【発明者】
【氏名】サルバギャ・バイシュ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・ピーター・コール
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ウーウェイ・ホー
(72)【発明者】
【氏名】ジュアン・サルセド
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・チュウ-ヒョン・マクマハン
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】栗山 卓也
【審判官】佐々木 正章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0188132(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B34/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット手術中の患者の動きを追跡するための手術用ロボットシステムであって、システムは、
案内アームの遠位端と係合された器具であって、対象と相互作用するように構成されている、器具と、
対象に結合された基準マーカと、
関節式アームの遠位端に連結されており且つ関節式アームと協働可能に基準マーカに隣接して基準マーカと3次元座標系空間において間隔をあけて配置される検出器であって、
基準マーカと相互作用し、且つ基準マーカを検出するように構成されており、案内アームおよび関節式アームそれぞれの近位端が、共通の基部に取り付けられている、カメラまたは電磁検出器である検出器と、
ハードウェアプロセッサおよびメモリを含む制御装置と
を備え、
制御装置は、検出器、器具、案内アーム、および関節式アームと通信し、
制御装置は、
基準マーカの検出に関する検出器からのデータを受信するように、
データに基づいて、
3次元座標系空間における検出器を、基準マーカ
に隣接する所望の位置であって、検出器と基準マーカとの間の最適な間隔を提供する所望の位置に移動するように、
検出器または関節式アームを操作して、検出器と基準マーカとの間の3次元座標系空間における
最適な間隔を維持するように、
検出器と関節式アーム
と案内アームとの間の3次元座標系空間における空間的関係に対して、器具と基準マーカとの間の3次元座標系空間における空間的関係を決定する
ように、
器具と基準マーカとの間の3次元座標系空間における決定された空間的関係に従って対象と相互作用するように、案内アームを介して器具を
案内するように、構成されている、手術用ロボットシステム。
【請求項2】
案内アームが、関節式アームに対して間隔をあけて配置されている、請求項1に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項3】
関節式アームが、共通の基部を介して案内アームに連結されている、請求項1に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項4】
関節式アームが複数の連続的に配置された部分を備え、隣接する部分がジョイントによって連結されており、制御装置と通信する位置指示装置が、ジョイントのうちの1つまたは複数と係合して、それと係合している連続的に配置された部分同士の間の3次元座標系空間における角度関係を示す、請求項1に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項5】
制御装置が、位置指示装置によって通信された角度関係を介して、関節式アームの遠位端と係合している検出器の3次元座標系空間における実際の空間的位置を決定するように構成されている、請求項4に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項6】
制御装置が、基準マーカと検出器との間の
最適な間隔の検出された変化に対して、
器具と基準マーカとの間の空間的関係を変化させるように構成されている、請求項1に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項7】
基準マーカが、対象に直接取り付けられているか、または対象に取り付けられたスプリントと係合している、請求項1に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項8】
手術用ロボットシステムを追跡および案内する方法であって、手術用ロボットシステムは、通信手段とハードウェアプロセッサとメモリとを備える制御装置
を有し
、方法は、
制御装置が、
関節式アームの遠位端に連結された検出器であって、対象に結合された基準マーカに隣接し対象に結合された基準マーカから3次元座標系空間において間隔をあけて配置された検出器と基準マーカとの間の相互作用を開始するステップであって、検出器は、カメラまたは電磁検出器であり、検出器は、基準マーカを検出するためのものである、相互作用を開始するステップと、
制御装置が、検出器から、通信手段を介して、検出器と基準マーカとの相互作用に関するデータを受信して、基準マーカを検出するステップと、
データに基づいて、3次元座標系空間における検出器を基準マーカ
に隣接する所望の位置であって、検出器と基準マーカとの間の最適な間隔を提供する所望の位置に制御装置が
移動するステップと、
制御装置が、検出器または関節式アームを操作して、検出器と基準マーカとの間の3次元座標系空間における
最適な間隔を維持するステップと、
検出器と関節式アーム
と案内アームとの間の3次元座標系空間における空間的関係に対して、制御装置に通信する案内アームの遠位端に連結されている器具と、基準マーカとの間の3次元座標系空間における空間的関係を、制御装置が決定するステップであって、
案内アームと関節式アームとのそれぞれの近位端が共通の基部に
取り付けられているステップと、
器具と基準マーカとの間の3次元座標系空間における決定された空間的関係に従って対象と相互作用するように、案内アームを介して器具を制御装置が案内するステップと
を有する、方法。
【請求項9】
制御装置が、
3次元座標系空間における検出器を基準マーカに隣接する所望の位置に移動するステップは、案内アームが関節式アームと間隔をあけている状態で、制御装置が
3次元座標系空間における検出器を基準マーカに隣接する所望の位置に移動するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
制御装置が
3次元座標系空間における検出器を基準マーカに隣接する所望の位置に移動するステップは、関節式アームが共通の基部を介して案内アームに接続されている状態で
、制御装置が、
3次元座標系空間における検出器を基準マーカに隣接する所望の位置に移動するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
関節式アームが複数の連続的に配置された部分を備え、隣接する部分がジョイントによって連結されており、制御装置が
3次元座標系空間における検出器を基準マーカに隣接する所望の位置に移動するステップは、それと係合している連続的に配置された部分同士の間の角度関係を示すように、通信手段を介して、ジョイントのうちの1つまたは複数と係合されている位置指示装置と制御装置が通信するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
制御装置が
3次元座標系空間における検出器を基準マーカに隣接する所望の位置に移動するステップは、位置指示装置によって通信された角度関係を介して関節式アームの遠位端と係合している検出器の3次元座標系空間における実際の空間的位置を制御装置が決定するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
基準マーカと検出器との間の
最適な間隔の検出された変化に対して、基準マーカに対する器具の空間的関係を制御装置が変化させるステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
制御装置が
3次元座標系空間における検出器を基準マーカに隣接する所望の位置に移動するステップは、基準マーカが対象に直接取り付けられた状態で、または基準マーカが対象に取り付けられたスプリントと係合した状態で、制御装置が、
3次元座標系空間における検出器を基準マーカに隣接する所望の位置に制御装置が移動するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、手術用ロボットおよび関連する案内システムに関し、より詳細には、例えば歯科手術において使用される手術用ロボットシステムのための追跡および案内装置に関し、その装置は、手術器具を案内するために外科手術中の患者の動きを追跡するように構成される。
【背景技術】
【0002】
歯科外科手術などの処置のための多くの手術用ロボットシステムは、手術器具(例えばドリル)を案内するためのロボットアームと、手術器具に対する患者の動きを追跡するために患者に結合される機械的追跡アームとを含む案内システムを利用する。これらのシステムでは、ロボットアームおよび機械的追跡アームは物理的に一体に結合され、それらの相対位置が分かるように較正されている。患者の動きを追跡するために、機械的追跡アームは、患者に連結されたスプリントまたは他の取り付け装置を介して患者に物理的に取り付けられるか、あるいはつながれるかのいずれかであり得る。他の例では、患者の動きは、例えば光学式、電磁式、音響式などの追跡装置を使用して遠隔追跡され得る。これらの手術用ロボットシステムでは、患者に連結されたスプリントまたは他の取り付け装置は、患者の動きを参照するための基準マーカとして機能する。
【0003】
しかしながら、患者に物理的に取り付けられているか、あるいはつながれている機械的追跡アームは、不利なことに患者上に重量を生成し、患者の動きを物理的に束縛する可能性がある。これは手術中に患者の不快感を招く可能性がある。同様に、基準マーカとの相互作用を介して患者の動きを追跡するための遠隔追跡装置は、それ自体の欠点を有する。例えば、立体視カメラを使用する遠隔光学追跡システムは、広い視野内の1つまたは複数の基準マーカへの見通し線(line-of-sight)を必要とし、それにより手術器具、設備などの一定の再配置を招く可能性があり、あるいは通信線(すなわち、光学追跡システムの場合には視線)が、さもなければ処置中に妨げられる可能性がある。別の例では、電磁式追跡システムは、通信の干渉または中断が発生する可能性があり、それによりシステム効率を抑制し、または妨げる可能性があるので同様に不利になり得る。
【0004】
したがって、従来技術のシステムのこれらの指摘された例示的な制限に対処し、それを克服する手術用ロボットシステムおよび関連する方法のための追跡および案内装置を提供することが望ましい可能性がある。そのような特性は、望ましくは、患者にとってより快適な手術経験および改善された手術効率を促進することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの特定の態様において、案内アームの遠位端と係合する器具を含む対象相互作用装置を備える、手術用ロボットシステムのための追跡および案内装置を提供する本開示の態様によって、上記および他の必要性は満たされる。器具は対象と相互作用するように適合され得る。追跡および案内装置はまた、対象に結合された基準マーカを備える。追跡および案内装置はまた、関節式アームの遠位端に連結されており且つ関節式アームと協働可能に基準マーカに隣接して配置される検出器を備える。検出器は、基準マーカと相互作用するように構成され得る。追跡および案内装置は、ハードウェアプロセッサおよびメモリを含む制御装置もまた備える。制御装置は、基準マーカとのその相互作用に関する検出器からのデータを受信し、そのデータに基づいて基準マーカと検出器との間の空間的関係を決定し、基準マーカに対する器具の空間的関係を決定し、決定された空間的関係に従って対象と相互作用するように案内アームを介して器具を指示するように構成され得る。
【0006】
別の態様は、手術用ロボットシステムを追跡および案内する方法を提供し、その方法は、関節式アームの遠位端に連結されており且つ関節式アームと協働可能な検出器を、対象に結合された基準マーカに隣接して配置するステップであって、検出器が基準マーカと相互作用するように構成されているステップを含む。その方法はまた、検出器と通信する、ハードウェアプロセッサおよびメモリを含む制御装置を用いて、基準マーカと検出器との間の相互作用を開始するステップを含む。その方法はまた、制御装置によって、基準マーカとの相互作用に関するデータを検出器から受信するステップを含む。その方法はまた、制御装置によって、受信したデータに基づいて基準マーカと検出器との間の空間的関係を決定するステップを含む。その方法はまた、基準マーカに対して、対象相互作用装置の器具の空間的関係を決定するステップであって、器具が案内アームの遠位端に連結されている、空間的関係を決定するステップを含む。方法はまた、決定された空間的関係に従って対象と相互作用するように、案内アームを介して器具を指示するステップを含む。
【0007】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下に簡単に説明される添付の図面と共に以下の詳細な説明を読むことから明らかになろう。本開示は、そのような特徴または要素が本明細書の特定の実施形態の説明において明示的に組み合わされるか、あるいは列挙されているかどうかにかかわらず、本開示の中に示される2つ、3つ、4つまたはそれ以上の特徴または要素の任意の組み合わせを含む。本開示は、その開示の文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、その態様および実施形態のいずれかにおいて、本開示の任意の分離可能な特徴または要素が、意図される通り、すなわち組み合わせることができると見なされるべきであるように、全体的に読まれることが意図される。
【0008】
したがって、限定しないが、本開示は以下の実施形態を含む。
【0009】
実施形態1:手術用ロボットシステムのための追跡および案内装置であって、システムが、案内アームの遠位端と係合する器具を含む対象相互作用装置であって、器具が対象と相互作用するように適合されている、対象相互作用装置と、対象に結合された基準マーカと、関節式アームの遠位端に連結されており且つ関節式アームと協働可能に基準マーカに隣接して配置される検出器であって、基準マーカと相互作用するように構成されている検出器と、ハードウェアプロセッサおよびメモリを含む制御装置であって、基準マーカとのその相互作用に関する検出器からのデータを受信し、そのデータに基づいて基準マーカと検出器との間の空間的関係を決定し、基準マーカに対する器具の空間的関係を決定し、かつ決定された空間的関係に従って対象と相互作用するように、案内アームを介して器具を指示するように構成されている制御装置と、を備える、追跡および案内装置。
【0010】
実施形態2:案内アームが関節式アームに対して間隔をあけて配置されている、先行もしくは後続のいずれかの実施形態またはそれらの組合せの装置。
【0011】
実施形態3:関節式アームが案内アームに連結されている、先行もしくは後続のいずれかの実施形態またはそれらの組合せの装置。
【0012】
実施形態4:案内アームおよび関節式アームのそれぞれの近位端が共通の基部に取り付けられている、先行もしくは後続のいずれかの実施形態またはそれらの組合せの装置。
【0013】
実施形態5:関節式アームが複数の連続的に配置された部分を備え、隣接する部分がジョイントによって連結されており、位置指示装置が、1つまたは複数のジョイントと係合して、それと係合している連続的に配置された部分間の角度関係を示す、先行もしくは後続のいずれかの実施形態またはそれらの組合せの装置。
【0014】
実施形態6:制御装置が、位置指示装置によって通信された角度関係を介して、関節式アームの遠位端と係合している検出器の空間的位置を決定するように構成されている、先行もしくは後続のいずれかの実施形態またはそれらの組合せの装置。
【0015】
実施形態7:制御装置が、基準マーカと検出器との間の空間的関係の検出された変化に関して、基準マーカに対する対象相互作用装置の空間的関係を変化させるように構成されている、先行もしくは後続のいずれかの実施形態またはそれらの組合せの装置。
【0016】
実施形態8:基準マーカが、対象に直接取り付けられているか、または対象に取り付けられたスプリントと係合している、先行もしくは後続のいずれかの実施形態またはそれらの組合せの装置。
【0017】
実施形態9:検出器が光検出器または電磁検出器である、先行もしくは後続のいずれかの実施形態またはそれらの組合せの装置。
【0018】
実施形態10:手術用ロボットシステムを追跡および案内する方法であって、関節式アームの遠位端に連結されており且つ関節式アームと協働可能な検出器を、対象に結合された基準マーカに隣接して配置するステップであって、検出器が基準マーカと相互作用するように構成されている、配置するステップと、検出器と通信する、ハードウェアプロセッサおよびメモリを含む制御装置を用いて、基準マーカと検出器との間の相互作用を開始するステップと、制御装置によって、基準マーカとの相互作用に関するデータを検出器から受信するステップと、制御装置によって、受信したデータに基づいて基準マーカと検出器との間の空間的関係を決定するステップと、基準マーカに対して、対象相互作用装置の器具の空間的関係を決定するステップであって、器具が案内アームの遠位端に連結されている、空間的関係を決定するステップと、決定された空間的関係に従って対象と相互作用するように、案内アームを介して器具を指示するステップと、を含む方法。
【0019】
実施形態11:関節式アームに対して間隔をあけて案内アームを配置するステップをさらに含む、先行もしくは後続のいずれかの実施形態またはそれらの組合せの方法。
【0020】
実施形態12:関節式アームを案内アームに連結するステップをさらに含む、先行もしくは後続のいずれかの実施形態またはそれらの組合せの方法。
【0021】
実施形態13:案内アームおよび関節式アームのそれぞれの近位端を共通の基部に取り付けるステップをさらに含む、先行もしくは後続のいずれかの実施形態またはそれらの組合せの方法。
【0022】
実施形態14:関節式アームが複数の連続的に配置された部分を備え、隣接する部分がジョイントによって連結されており、方法が、それと係合している連続的に配置された部分間の角度関係を示すように、位置指示装置を1つまたは複数のジョイントと係合させるステップを含む、先行もしくは後続のいずれかの実施形態またはそれらの組合せの方法。
【0023】
実施形態15:位置指示装置によって通信された角度関係を介して、関節式アームの遠位端と係合している検出器の空間的位置を制御装置によって決定するステップをさらに含む、先行もしくは後続のいずれかの実施形態またはそれらの組合せの方法。
【0024】
実施形態16:基準マーカと検出器との間の空間的関係の検出された変化に関して、基準マーカに対する対象相互作用装置の空間的関係を制御装置によって変化させるステップをさらに含む、先行もしくは後続のいずれかの実施形態またはそれらの組合せの方法。
【0025】
実施形態17:基準マーカを対象に直接取り付けるステップ、または基準マーカを対象に取り付けられたスプリントと係合させるステップを含む、先行もしくは後続のいずれかの実施形態またはそれらの組合せの方法。
【0026】
実施形態18:検出器を連結するステップが、検出器を連結するステップを含み、検出器が、対象に結合された基準マーカに隣接して、光検出器または電磁検出器を備える、先行もしくは後続のいずれかの実施形態またはそれらの組合せの方法。
【0027】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下に簡単に説明される添付の図面と共に以下の詳細な説明を読むことから明らかになろう。本開示は、そのような特徴または要素が明確に組み合わされているか、あるいは特定の実施形態の説明または特許請求の範囲に列挙されているかどうかにかかわらず、本開示に記載されているか、あるいは1つまたは複数の請求項のいずれかに列挙されている2つ、3つ、4つまたはそれ以上の特徴または要素の任意の組み合わせを含む。本開示は、その開示の文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、その態様および実施形態のいずれかにおいて、本開示の任意の分離可能な特徴または要素が組み合わせ可能であると意図されると見なされるべきであるように、全体的に読まれることが意図されている。
【0028】
したがって一般的な用語で本開示を説明したが、ここで、必ずしも縮尺通りに描かれていない添付の図面に参照がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本開示の様々な態様による、手術用ロボットシステムのための追跡および案内装置の第1の例示的実施形態の概略図である。
【
図2】本開示の様々な態様による、手術用ロボットシステムのための追跡および案内装置の第2の例示的実施形態の概略図である。
【
図3】本開示の様々な態様による、手術用ロボットシステムのための追跡および案内装置を使用する追跡および案内する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示は、本開示のすべてではないが、いくつかの態様が示されている添付の図面を参照して、以下により完全に説明される。実際に、本開示は多くの異なる態様で実施されてもよく、本明細書に記載された例に限定されると解釈するべきではなく、むしろ、これらの態様は、この開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。同様の符号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0031】
本開示の様々な態様は、やはり本願の譲受人でもあるNeocisに譲渡された、例えば、Salcedoらの米国特許第8,808,000号明細書に開示されているものなどの案内される手術用ロボットシステムおよび方法に少なくとも部分的に基づいている可能性がある。Salcedoらの米国特許第8,808,000号の開示は、したがって、参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
図1~
図3は、手術用ロボットシステムおよび関連する方法のための追跡および案内装置の例示的実施形態を提供する。本開示のいくつかの態様によれば、手術用ロボットシステムおよび方法は、特に歯科インプラント処置のための歯科用途において利用され得る。しかしながら、手術用ロボットシステムおよび方法のための追跡および案内装置は、歯科用途に限定されず、従来の手術用ロボットシステムおよび方法(例えば、見通し線の制限、物理的限界、干渉など)に関連して、患者の解剖学的構造の移動の追跡、および手術用具の移動の案内が必要とされる任意の用途に利用され得る。
【0033】
ここで
図1~
図2を参照すると、全体に100で示される手術用ロボットシステムは、ロボット手術中の患者の動きを追跡するための追跡および案内装置110のそれぞれの例示的な実施形態を備え付ける。
図1~
図2に示されるように、追跡および案内装置110および/または手術用ロボットシステム100は、ロボットによる歯科手術(例えば、歯科インプラント手術)用に構成され得るが、追跡および案内装置110および/または手術用ロボットシステム100はまた、他の外科手術(例えば、頭蓋骨手術、耳、鼻および喉(ENT)手術、整形外科手術、または患者の解剖学的構造に関連する任意の他の外科的処置)に容易に応用可能であり、あるいは容易に適合可能であり得る。
【0034】
図1に関して、追跡および案内装置110は、ハイブリッド(すなわち、組み合わされた)機械的および光学的追跡および案内装置を備え、一方
図2では追跡および案内装置110は、ハイブリッドの機械的および電磁式追跡および案内装置を備える。図示された例示的な追跡および案内装置110のそれぞれにおいて、技術(例えば、機械的追跡および案内、ならびに光学的追跡および案内または電磁式追跡および案内)の組み合わせは、ある先行技術の追跡および案内装置に存在する顕著な欠陥を克服する。例えば、患者のための移動の自由度の増加、見通し線の必要性の最小化、干渉の可能性の低減などは、本開示による追跡および案内装置110からもたらされる自動ロボット手術の分野に対するいくつかの例示的な改善である。ハイブリッド追跡および案内装置110のための他の技術の組み合わせもまた企図される。
【0035】
全体に
図1~
図2を参照すると、追跡および案内装置110は、例えば関節式アーム部材(例えばロボットアーム)および器具140(すなわち手術器具)などの案内アーム120を含む対象相互作用装置130を備える。器具140は、案内アーム120の遠位端と係合するように構成され、案内アーム120によって案内されている間に対象と相互作用するか、あるいは通信するように適合されている。本明細書で使用されるように、「対象」は、患者の顎顔面の解剖学的構造(例えば、顎または口)、または単にそのモデルなど、移動可能なものであれば何でもよい。いくつかの態様では、対象相互作用装置130は、患者の顎顔面の解剖学的構造と相互作用することができ、「切断装置」、「穿孔装置」、「現場準備装置」、「インプラント装置」または同様の装置である患者相互作用装置と本明細書では言及されることがあり、この参照は、案内アーム120と係合する特定の器具140を示すと意図される。このように、対象相互作用装置130および器具140は、特定の対応する目的または処置のために構成されるので、本明細書では互換可能に言及され得る。対象相互作用装置130の器具140の要素が、侵襲部分、またはロボット外科手術の少なくとも対象相互作用部分に対して、案内アーム120を介して指示され、または案内されるように(例えば、内部の部位を「準備する」、あるいは患者の顎または口と相互作用するように)構成され、あるいはシステム100が応用される対象と相互作用するように構成されることを示すことを、そのような参照により意図されていることが分かる。
【0036】
いくつかの態様では、1つまたは複数のアクチュエータ(図示せず)が案内アーム120と係合することができ、外科手術を成し遂げるために使用者によって操作されるに際に、6つの自由度で、案内アーム120の遠位端を協働して案内する(すなわち特定の方向(水平および/または垂直)に並進させる、および/またはある軸の周りに回転させる)ように、その1つまたは複数のアクチュエータ(図示せず)は構成および配置され得る。案内アーム120はまた、対象相互作用装置130、したがって器具140の動きを制限するように、あるいは制御するように、構成され得る。さらに、いくつかの例では、案内アーム120は、器具140が固定され、完全な移動の自由を有することが許容される小型の平行構造を有することができる。器具140が案内アーム120の遠位部分を含むか、またはそれに取り付けられているので、対象相互作用部分(すなわち切断/穿孔先端部)は対象相互作用装置130の器具140であり、したがって器具140は、既知の空間位置(すなわち、案内アーム120に関してシステム100に既知である)になければならない。
【0037】
いくつかの態様では、器具140は、追跡および案内装置110によって決定される空間的関係に従って、案内アーム120を介して案内され、または指示される。このように、追跡および案内装置110はまた、関節式アーム160の遠位端に連結されており且つ関節式アーム160と協働可能な検出器150と、患者の顎または口に連結された基準マーカ170とを備える。検出器150は、基準マーカ170と相互作用するように構成された光学検出器(例えば、カメラ)または電磁検出器(例えば、電磁放射器)、ならびに適切に構成された基準マーカ170と相互作用するように構成された他の種類の検出器(例えば、音響検出器)を備えることができる。基準マーカ170は、患者の顎または口などの対象に連結するように構成されたスプリントまたは他の係合部材であり得る。すなわち、一例では、基準マーカ170は、「固定した」または確実な相互作用で対象と係合するように構成される(例えば、スプリントは患者の歯と係合され、患者の口に対して動かない)。この場合、スプリントは対象に対して動かないので、相対座標系または3次元空間(すなわち、X、Y、Z系)におけるスプリントの初期空間位置が決定され得る。したがって、スプリントは、例えば、ロボット外科手術中に、案内アーム120を介して、対象相互作用装置130の器具140を案内するために使用され得る基準マーカ(すなわち、スプリントとの確実な相互作用によって形成されるか、あるいはスプリントに関連づけられるか、またはスプリントに取り付けられる、既知の原点または座標要素)を提供するように構成され得る。
【0038】
いくつかの態様では、対象相互作用装置130の相互作用部分/器具140は、基準マーカ170に関して位置合わせされ、または較正され得る。例えば、較正要素(図示せず)は、キネマティックカップリング(kinematic coupling)を介して対象相互作用装置130と係合され得る(すなわち、既知の反復可能な方法でそれに堅固に取り付けられる)。したがって、当業者は、対象相互作用装置130の相互作用部分/器具140が、そのとき様々な先端較正方法(例えば、不変点など)によって較正され得ることを理解するであろう。一旦位置合わせされると、較正要素は、既知の反復可能な方法で、対象相互作用装置130内の切断/穿孔要素(器具140)に置換可能であり、その結果、較正パラメータ(すなわち、最遠位点の位置、および相互作用部分/器具140に関連する軸の位置)は、位置合わせされた状態に維持される。
【0039】
一態様では、基準マーカ170は、様々な対象に「普遍的に適用可能」であり(すなわち、任意の患者の解剖学的構造と確実な係合を形成することができる)、または特定の範囲の対象にわたって少なくとも適用可能であるように構成される(1つのサイズは、患者の特定のサイズまたは年齢に適合する)。基準マーカ170に関連する基準原点を決定するために、本開示の一態様によれば、基準マーカ170(例えば、スプリントまたは他の係合部材)は、患者の歯などの対象と係合することが可能であり、そのとき例えばコンピュータ断層撮影法(CT)または例えば磁気共鳴映像法(MRI)などの任意の他の適切な撮像技術を使用して対象(例えば患者の顎骨構造)が画像表示される。そのような例では、例えば、基準マーカ170が、対象(例えば、患者の顎骨構造)の画像の中で容易に識別可能であるか、あるいは検出可能であるように、基準マーカ170は、例えば、CTまたはMRIによって得られる画像において明確に画定され得る放射線不透過材料から成ることが可能である。したがって、基準マーカ170は、例えば、相対座標系または3次元空間の基準原点として設定され得る。
【0040】
当業者は、基準マーカ170が、本明細書で説明されるように所望の機能を達成するために多くの異なる方法で構成され得ることを理解するであろう。一態様では、基準マーカ170は、追跡および案内装置110の中に装備された種類の検出器150に基づいて構成され得る。例えば、検出器150が光検出器である場合、光学検出器150が追跡あるいは相互作用するために、基準マーカが対象(例えば、患者の顎骨構造)の画像において容易に識別されるか、あるいはそうではなく検出可能かつ追跡可能であるように、基準マーカ170は、反射マーカ(すなわち、基準マーカ170を3次元空間で一意的に画定する幾何学的形状または他の特性もしくは特徴)を備えることができる(例えば
図1参照)。別の例では、検出器150が電磁検出器である場合、基準マーカ170は、電磁検出器150が追跡あるいは相互作用するための適切なセンサまたはエミッタを備えることができる(例えば、
図2参照)。
【0041】
別の態様では、基準マーカ170は、対象の状態に基づいて適切な方法で対象に結合するように構成され得る。例えば、例えば接着剤を使用して、または適切なクランプを使用して基準マーカを支持することができるいくつかの強い歯を患者が有する場合、基準マーカ170は患者の口に堅固に取り付けられることが可能である。別の例では、全歯欠損の患者(すなわち、歯のない患者)については、骨ピンが基準マーカ170を通して患者の顎骨構造の中に穿孔されて、基準マーカ170を定位置に確実に固定することが可能である。基準マーカ170はまた、例えば適切な骨ネジを使用して、任意の患者の顎骨構造に取り付けられることが可能である。さらなる態様では、基準マーカ170が堅固に定位置に留まりさえすれば、対象に対する基準マーカの位置決めが、重大または重要ではない可能性がある。
【0042】
したがって、本開示のいくつかの態様では、基準マーカ170に近接して相互作用することによって患者の動きを追跡するために、検出器150は、関節式アーム160を介して、基準マーカ170に隣接するように構成され、または位置決めされ得る。特に、
図1および
図2に示された追跡および案内装置110は、検出器150および基準マーカ170が物理的に連結されるようには構成されていない。むしろ、関節式アーム160は、検出器150を基準マーカ170に隣接して、またはその近傍に位置決めするように有利に構成されている。例えば、関節式アーム160は、基準マーカ170の数センチメートル以内に検出器150を位置決めするように構成されている。このようにして、患者は手術用ロボットシステムに物理的につながれることはなく、検出器150は、例えば、通信の障害(impedance)(すなわち、光検出器の場合には視線の遮断)、干渉、または基準マーカからの検出器の距離など、従来技術において直面するいくつかの制限なしに、基準マーカ170と相互作用するのに適した範囲に位置決めされ得る。
【0043】
関節式アーム160は、連続的に配置された複数の部分162A~Cを備えることができ、隣接する部分162A~Cはジョイント164A~Bによって連結されている。ジョイント164A~Bは、連続的に配置された部分162A~Cのそれぞれが、相対座標系または3次元空間内で独立して位置決め可能(すなわち並進可能、移動可能、回転可能)であることを可能にする運動学的機構であり得る。
図1~
図2のそれぞれにおいて、3つの連続的に配置された部分162A~Cが図示されており、第1の部分162Aは、基部180に取り付けられた近位端を有し、第2の部分162Bは近位端で、第1のジョイント164Aによって第1の部分162Aの遠位端に連結され、第3の部分162Cは近位端で、第2のジョイント164Bによって第2の部分162Bの遠位端に連結されている。検出器150は、例えば機械的リンク機構を用いて、第3の部分162Cの遠位端に連結されている。例えば、ジョイント164A~Bと同様の追加のジョイントは、第3の部分162Cの遠位端、および/または関節式アーム160が基部180に取り付けられるか、あるいは基部180に連結される、第1の部分162Aの近位端に配置され得る。あるいは、検出器150は、第3の部分162Cの遠位端に堅固に連結され得る。このようにして、関節式アーム160の1つまたは複数の連続的に配置された部分162A~Cの操作は、検出器150が基準マーカ170に対して所望の位置に旋回、移動すること、および/またはさもなければ位置決めされることを可能にすることができる。当業者が気付くように、
図1~
図2に示された数より多いかまたは少ない数の連続的に配置された部分および/またはジョイントが、関節式アーム160の中に利用され得る。
【0044】
いくつかの態様では、関節式アーム160および案内アーム120が基部180を介して動作可能に連結、結合、または通信するように、関節式アーム160は基部180に取り付けられる。例えば、関節式アーム160および案内アーム120は、近位端で、基部180で、または各アームの長さに沿った別の位置で互いに機械的に連結され得る。他の態様では、関節式アーム160および案内アーム120が互いに対して間隔をあけて配置されるように、関節式アーム160は基部180に取り付けられ得る。それにもかかわらず、有利には、基部180は、様々な異なる空間、患者の位置(例えば、仰向け、直立、リクライニング)、手術の必要性などにおいて使いやすくするために移動可能であり得る。あるいは、関節式アーム160および/または案内アーム120は、移動可能でない基部(例えば、壁、天井、床などのような固定プラットフォーム)に取り付けられ得る。関節式アーム160および/または案内アーム120が取り付けられる方法にかかわらず、結果として得られる取付け装置は、関節式アーム160が検出器150を基準マーカ170に隣接して位置決めすることを可能にし、対象相互作用装置130の案内アーム120が対象と相互作用するように器具140を指示することを可能にし得る。
【0045】
図1~
図2は、検出器150および基準マーカ170が一体に結合されるのではなく、互いに隣接して配置される追跡および案内装置110を開示しているので、基準マーカ170と検出器150との間の空間的関係は、基準マーカ170と検出器150との間の相互作用から生じるデータ(例えば、追跡データ)に基づいて決定され得る。これら2つの構成要素間の空間的関係を決定し、ならびにロボット手術システム100の追跡および案内に関連する他の機能を実行するために、追跡および案内装置110は、追跡および案内装置110の1つまたは複数の構成要素と動作可能に係合するハードウェアプロセッサおよびメモリを含む制御装置190をさらに備えることができる。
図1~
図2に示すように、例えば、少なくとも検出器150、関節式アーム160、案内アーム120、対象相互作用装置130および器具140と、制御装置190は、通信要素(図示せず)を介して無線通信する。いくつかの態様では、通信要素は、無線トランシーバ、ハードワイヤ接続、または電気的、機械的、電気機械的、音響的、または光学的性質に拘らず、任意の他の適切な機構であり得る。
【0046】
制御装置190は、基部180とは別々に配置されているか、または基部180と一体化されている、特殊用途のコンピュータ装置を備えることができる。基準マーカ170に関連する基準点または原点を定義された相対座標系または3次元空間において決定するように、検出器150が基準マーカ170に隣接する所望の位置に配置するために基準マーカ170に対して検出器150を関節式に運動させるように、一旦検出器150が所望の位置に関節式に移動されると、定義された相対座標系または3次元空間における検出器150の空間的位置を決定するように、検出器150と基準マーカ170との間の相互作用を開始するように、基準マーカ170との相互作用に関して検出器150からデータを受信するように、且つそのデータに基づいて基準マーカ170と検出器150との間の空間的関係を決定するように、制御装置190は構成されることが可能である。
【0047】
いくつかの態様では、基準マーカ170に関連する基準点または原点を決定することは、患者が定義された相対座標系または3次元空間内の初期位置にある間に、患者に連結された基準マーカ170を撮像することによって達成され得る。制御装置190は、どのような撮像診断法が利用されている場合でも(例えば、CTまたはMRI撮像)、インターフェースで接続することによって撮像を開始するように構成され得る。画像またはデータは、制御装置190と関連するデータ記憶装置(図示せず)に記憶され、相対座標系または3次元空間内の基準マーカ170の初期位置を原点として確立するために利用され得る。
【0048】
いくつかの態様では、検出器150が基準マーカ170に隣接する所望の位置に配置されるように、基準マーカ170に対して検出器150を関節運動させることは、1つまたは複数の連続的に配置された部分162A~Cを基準マーカ170に対して操作することによって達成され得る。例えば、制御装置190に関連する周辺装置(すべて図示されないが、例えば、3Dゴーグルと連結しているトラックボールまたはジョイスティック)が使用されて、関節式アーム160の連続的に配置された部分162A~Cの1つまたは複数の仮想操作(virtual manipulation)を補助するために、あるいは仮想操作を可能にするために使用され得る。さもなければ、ロボット手術システム100の操作者は、関節式アーム160の連続的に配置された部分162A~Cのうちの1つまたは複数を手動で操作して、検出器150を所望の位置に動かすことができる。
【0049】
いくつかの態様では、一旦検出器150が所望の位置に関節式に運動されると、定義された相対座標系または3次元空間における検出器150の空間的位置は、制御装置190が角度に関係する通信を1つまたは複数の位置指示装置(例えばエンコーダ)から受信することによって決定され得る。より具体的には、1つまたは複数の位置指示装置(図示せず)は、定義された相対座標系または3次元空間内で、それと係合している連続的に配置された部分162A~C間の角度関係を示すために、1つまたは複数のジョイント164A~Bと係合され得る。1つまたは複数の位置指示装置が、定義された相対座標系または3次元空間内のジョイントの角度関係を制御装置190に通信するように、位置指示装置および制御装置190は、互いに通信することができる。検出器150が第3の部分162Cの遠位端に配置されている場合、制御装置190は、それに通信する各ジョイント164A~Bの角度関係に基づいて、ならびに例えば各部分162A~Cの長さなどの他の情報に基づいて、検出器150の空間的位置を決定するように構成され得る。検出器150の空間的位置に関するそのようなデータは、制御装置190に関連するデータ記憶装置内に格納され得る。
【0050】
いくつかの態様では、一旦関節式アーム160が定義された相対座標系または3次元空間内の所望の位置にあると、制御装置190は、検出器150と基準マーカ170との間の相互作用を開始するように構成され得る。制御装置190は、検出器150と通信することができ、検出器150の動作を開始および/または作動させるように構成され得る。例えば、検出器150がカメラまたは他の画像取込装置である場合、制御装置190は、検出器150を作動させて、患者に連結された基準マーカ170の画像を特定のフレームレートで取得するように構成され得る。そのような態様では、最適な間隔(例えば、数センチメートル)が検出器150と基準170との間に維持されるように、関節式アーム160の1つまたは複数の連続的に配置された部分162A~Cの仮想操作を連続的に補助するように、またはその仮想操作を可能とするように、制御装置190に関連する周辺装置は構成され得る。他のそのような態様では、検出器150と基準170との間に最適な間隔が維持されるために、関節式アーム160の連続的に配置された1つまたは複数の部分162A~Cの仮想操作を自動的に補助するように、あるいはその仮想操作を可能するように、検出器150と基準マーカ170との間の間隔に関する検出器150とコントローラ190との間のフィードバック通信は構成され得る。
【0051】
いくつかの態様では、制御装置が基準マーカ170との相互作用に関して検出器150からデータを受信するように、検出器150から取得されたデータは、制御装置190に送信され得る。検出器150および制御装置190は、通信要素を介して有線または無線通信していることが可能である。
【0052】
いくつかの態様では、基準マーカ170と検出器150との間の空間的関係を決定するために、制御装置190は、基準マーカ170に関連付けられた基準点または原点、および所望の位置における検出器150の空間的位置を利用して、それらの間の第1の空間的関係を決定するように構成され得る。その後、制御装置190は、検出器150から取得された画像を利用して、定義された相対座標系または3次元空間における基準マーカ170の動きを追跡するように構成され得る。例えば、制御装置190は、基準マーカ170の空間位置が変化したかどうかを判定するために、基準マーカ170に関連する元の基準点または原点に関するデータを、検出器150によって取得される後続のデータと比較するように構成され得る。検出器150の既知の空間的位置に照らしてこの比較を使用して、制御装置190は、基準マーカ170と検出器150との間の変化した空間的関係を決定することができる。このようにして、患者の動きは、検出器150によって連続的に追跡され得る。
【0053】
いくつかの態様では、手術用ロボットシステム100または制御装置190はまた、計画装置を含むか、あるいはシステム100のハードウェアおよび/またはソフトウェアと共に、本明細書に開示される他の方法のように、ユーザが仮想手術計画(virtual surgical plan)を展開することを可能にする計画機能を含むことができる。いくつかの態様では、当業者によって理解されるように、仮想手術計画は、例えば定義された相対座標系または3次元空間(相対的または絶対的)に関連して生成され、計画パラメータを基準マーカ170(または患者に関する他の参照)に関連付けるように構成され得る。制御装置190は、対象相互作用装置130および/または器具140を基準マーカ170と位置合わせするように構成され得る。いくつかの態様では、計画パラメータは、外科手術の異なる部分で、または外科手術中に連続的に、基準マーカ170と対象相互作用装置130との間の空間的関係を定義することができる。しかしながら、患者が動く場合、対象相互作用装置130は、仮想手術計画の中で特定のポイントで定義されるように、対象相互作用装置130/器具140と基準マーカ170との間の定義された空間的関係に器具140を戻すことによって、患者の動きを補償する必要があり得る。いくつかの態様では、手術用ロボットシステム100の操作者は、仮想手術計画の助けを借りずに外科手術を実施することができる。
【0054】
基準マーカ170に対する器具140の空間的関係を決定するために、基準マーカ170と検出器150との間の決定された空間的関係を対象相互作用装置130と適切に比較するように、制御装置190は構成され得、および配置され得る。この例では、基準マーカ170と検出器150との間の決定された空間的関係は、基準マーカ170と対象相互作用装置130/器具140との間の空間的関係の変化に対応または比例する、あるいは影響を及ぼす可能性がある患者の位置の変化を含み得る。次いで、検出器150によって検出された基準マーカ170の変化に反映されるような患者の動きに起因する、基準マーカ170と対象相互作用装置130/器具140との間の空間的関係の変化を補償するように、制御装置190は構成され得る。例えば、仮想手術計画に定義された対象相互作用装置130/器具140と基準マーカ170との間の計画された空間的関係に戻るように、対象相互作用装置130/器具140の空間的位置を指示(すなわち調整)し、または物理的に案内するように、制御装置は構成され得る。他の例では、例えば、器具140と基準マーカ170との間の偏差が閾値を超えており、患者の過度の動きまたは他の問題を示している場合、制御装置190は、警報を発すること、または仮想外科手術計画を中止し、器具140を安全な位置に後退させることされも指示することができる。あるいは、制御装置190からの通信に基づいて、対象相互作用装置130/器具140と基準マーカ170との間の計画された空間的関係に対象相互作用装置130/器具140を指示するように、案内アーム120は構成され得る。したがって、例えば、患者の動きに起因する基準マーカ170と検出器150との間の空間的関係の検出された変化に関係して、基準マーカ170に対する対象相互作用装置130/器具140の空間的関係を変更するように、制御装置190は構成され得る。
【0055】
ここで
図3を参照すると、全体に200で示される、手術用ロボットシステムを追跡し、案内する例示的な方法が開示される。追跡および案内装置は、
図1~
図2の参照の中で説明したものと同様のハイブリッド装置(例えば、要素110)を備えることができる。したがって、以下の例示的な方法200は、
図1~
図2に関連する参照符号の慣例を使用して本明細書で説明される。特に、追跡および案内装置は、追跡および案内のための、例えば電気的、機械的、電子機械的、音響的および光学的機構のハイブリッドを備えることができる。
【0056】
第1のステップ202において、関節式アーム160の遠位端に連結されており且つ関節式アーム160と協働可能な検出器150が、対象に結合された基準マーカ170に隣接して配置され、検出器150は、基準マーカ170と相互作用するように構成される。
図1に示すように、追跡および案内装置110は、ハイブリッドの機械式および光学式の追跡および案内装置110を備え、関節式アーム160と係合されている検出器150は、光学検出器(例えば、カメラ)を備え、基準マーカ170は、1つまたは複数の反射マーカを備える。対照的に、
図2に示すように、追跡および案内装置110は、ハイブリッドの機械式および電磁式の追跡および案内装置110を備え、検出器150は、電磁検出器(例えば、エミッタ)を備え、基準マーカ170は、1つまたは複数のセンサまたはエミッタを備える。特に、追跡および案内装置110はまた、追跡および案内のための、例えば電気的、機械的、電子機械的、音響的および光学的装置のハイブリッドを含むことができる。
【0057】
第2のステップ204において、基準マーカ170と検出器150との間の相互作用は、検出器150と通信している制御装置190によって開始される。いくつかの態様では、制御装置190はハードウェアプロセッサおよびメモリを含む。
【0058】
第3のステップ206において、制御装置190は、基準マーカ170との相互作用に関する検出器150からのデータを受信する。
【0059】
第4のステップ208において、制御装置190は受信したデータに基づいて基準マーカ170と検出器150との間の空間的関係を決定する。
【0060】
第5のステップ210において、制御装置190は、基準マーカ170に対して、対象相互作用装置130の器具140の空間的関係を決定し、器具140は案内アーム120の遠位端に連結されている。
【0061】
第6のステップ212では、器具140は、案内アーム120を介して、決定された空間的関係に従って対象と相互作用するように指示される。
【0062】
本明細書に記載された発明の多くの改変および他の実施形態は、これらの開示された実施形態が関係する、前述の説明および関連する図面に示された教示の利益を享受する当業者に思い浮かぶことであろう。したがって、本発明の実施形態は開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、変形形態および他の実施形態は本発明の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。さらに、前述の説明および関連する図面は、要素および/または機能の特定の例の組み合わせに関連して、例示的な実施形態を説明しているが、しかし要素および/または機能の異なる組み合わせが、開示の範囲から逸脱することなく、代替形態によって提供され得ることを理解すべきである。これに関して、例えば、明確に上述したもの以外の要素および/または機能の異なる組み合わせもやはり開示の範囲内で考えられる。本明細書では特定の用語を使用しているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定する目的で使用されるのではない。
【0063】
第1、第2などの用語は、様々なステップまたは計算を説明するために本明細書で使用され得るが、これらのステップまたは計算はこれらの用語によって制限されるべきではないことを理解すべきである。これらの用語は、1つの操作または計算を別の操作または計算と区別するためにのみ使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の計算は第2の計算と呼ばれることができ、同様に、第2のステップは第1のステップと呼ばれ得る。本明細書で使用される場合、用語「および/または」および「/」記号は、1つまたは複数の関連する列挙された項目の任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0064】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことが意図されている。本明細書で使用される場合、「備える」、「備えている」、「含む」および/または「含んでいる」という用語は、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素および/または構成要素の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。したがって、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものであり、限定することを意図するものではない。