IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本発條株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ばね部材 図1
  • 特許-ばね部材 図2
  • 特許-ばね部材 図3
  • 特許-ばね部材 図4
  • 特許-ばね部材 図5
  • 特許-ばね部材 図6
  • 特許-ばね部材 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ばね部材
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/18 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
F16F1/18 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021029863
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131108
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 佳男
(72)【発明者】
【氏名】今泉 浩夫
(72)【発明者】
【氏名】田島 典拓
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀志
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-129108(JP,A)
【文献】特開2016-070408(JP,A)
【文献】特開2019-036444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00- 6/00
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向で互いに対向する一対の被押圧体の間に設けられ、
前記第1方向に積層された伝導板および支持板を備え、
前記伝導板は、前記支持板を形成する材質より電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つが高い材質で形成され、
前記支持板は、前記伝導板を形成する材質よりヤング率が高い材質で形成され、
前記伝導板および前記支持板に、前記第1方向に突出し、一対の前記被押圧体を互いが前記第1方向に離反する向きに付勢する複数のばね突片が形成され、
前記支持板には、前記伝導板に形成された前記ばね突片が挿通された挿通孔が形成され、
前記伝導板に形成された前記ばね突片が、前記挿通孔を通して、一対の前記被押圧体のうちのいずれか一方の被押圧体に当接することにより、前記伝導板が、一対の前記被押圧体の双方に当接する、ばね部材。
【請求項2】
前記伝導板は、前記支持板を形成する材質より電気伝導率が高い材質で形成され、
前記支持板は、一対の前記被押圧体のうちの少なくとも一方に対して電気的に絶縁される、請求項1に記載のばね部材。
【請求項3】
前記支持板および前記伝導板に形成された各前記ばね突片は、前記第1方向に積層され、
前記支持板の前記ばね突片は、前記伝導板の前記ばね突片の一部を、一対の前記被押圧体のうちのいずれか一方の被押圧体との間で前記第1方向に挟み込む、請求項1または2に記載のばね部材。
【請求項4】
前記ばね突片は、一端部が前記伝導板または前記支持板に連結された固定端とされ、かつ他端部が自由端とされて片持ち支持され、
前記挿通孔は、前記支持板において、この支持板に形成された前記ばね突片と前記第1方向で対向する全ての位置に各別に設けられ、
前記伝導板の前記ばね突片が、前記挿通孔に挿通された状態で、前記支持板の前記ばね突片の他端部に係合され、
前記支持板の前記ばね突片の他端部が、前記伝導板の前記ばね突片の一部を、一対の前記被押圧体のうちのいずれか一方の被押圧体との間で前記第1方向に挟み込む、請求項3に記載のばね部材。
【請求項5】
前記ばね突片は、一端部が前記伝導板または前記支持板に連結された固定端とされ、かつ他端部が自由端とされて片持ち支持され、
前記挿通孔は、前記支持板において、この支持板に形成された前記ばね突片と前記第1方向で対向する全ての位置に各別に設けられ、
前記伝導板の前記ばね突片に、前記第1方向に直交する沿面方向のうち、前記一端部および前記他端部に直交する第2方向に貫く貫通孔が形成され、
前記貫通孔に、前記支持板の前記ばね突片の他端部が挿通され、
前記支持板の前記ばね突片の他端部が、前記伝導板の前記ばね突片の一部を、一対の前記被押圧体のうちのいずれか一方の被押圧体との間で前記第1方向に挟み込む、請求項3に記載のばね部材。
【請求項6】
前記伝導板に形成された複数の前記ばね突片のうち、一部の前記ばね突片と、他の前記ばね突片と、で前記第1方向に突出する向きが互いに逆向きとされ、
これらの前記第1方向に突出する向きが互いに逆向きとされたそれぞれの前記ばね突片が、一対の前記被押圧体に各別に当接する、請求項1から5のいずれか1項に記載のばね部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばね部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、第1方向で互いに対向する一対の被押圧体の間に設けられ、表裏面が第1方向を向く基板部を備え、基板部に、第1方向に突出した複数のばね突片が形成され、ばね突片が、一対の被押圧体を互いが第1方向に離反する向きに付勢するばね部材が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5703737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のばね部材では、一対の被押圧体を第1方向に付勢するだけでなく、一対の被押圧体の間で、例えば電流を流したり、熱を伝えたりするのにも用いようとすると、前者の荷重特性と、後者の例えば導電性および伝熱性等の特性と、を両立させることが困難であるという問題があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、荷重特性と、例えば導電性および伝熱性等の特性と、を両立させることができるばね部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のばね部材は、第1方向で互いに対向する一対の被押圧体の間に設けられ、前記第1方向に積層された伝導板および支持板を備え、前記伝導板は、前記支持板を形成する材質より電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つが高い材質で形成され、前記支持板は、前記伝導板を形成する材質よりヤング率が高い材質で形成され、前記伝導板および前記支持板に、前記第1方向に突出し、一対の前記被押圧体を互いが前記第1方向に離反する向きに付勢する複数のばね突片が形成され、前記支持板には、前記伝導板に形成された前記ばね突片が挿通された挿通孔が形成され、前記伝導板に形成された前記ばね突片が、前記挿通孔を通して、一対の前記被押圧体のうちのいずれか一方の被押圧体に当接することにより、前記伝導板が、一対の前記被押圧体の双方に当接する。
【0007】
この発明によれば、ばね部材が、伝導板および支持板を備え、伝導板および支持板それぞれのばね突片が、一対の被押圧体を互いが第1方向に離反する向きに付勢し、かつ伝導板が、一対の被押圧体の双方に当接するので、主に支持板が有する荷重特性、並びに、主に伝導板が有する例えば導電性および伝熱性等の特性を各別に発揮させることが可能になり、荷重特性と、例えば導電性および伝熱性等の特性と、を両立させることができる。
ばね部材が伝導板を備えていて、支持板に、伝導板と同じ材質のメッキが施されているのではないことから、電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つを容易に高く確保することができるとともに、メッキの剥がれが無く、例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに長期にわたって発揮させることができる。
【0008】
前記伝導板は、前記支持板を形成する材質より電気伝導率が高い材質で形成され、前記支持板は、一対の前記被押圧体のうちの少なくとも一方に対して電気的に絶縁されてもよい。
【0009】
この場合、支持板が、一対の被押圧体のうちの少なくとも一方に対して電気的に絶縁されるので、支持板を通した一対の被押圧体同士の間の導通を遮断することが可能になり、伝導板が有する導電性の特性を、ばね部材において設計通りに精度よく安定して発揮させることができる。
【0010】
前記支持板および前記伝導板に形成された各前記ばね突片は、前記第1方向に積層され、前記支持板の前記ばね突片は、前記伝導板の前記ばね突片の一部を、一対の前記被押圧体のうちのいずれか一方の被押圧体との間で前記第1方向に挟み込んでもよい。
【0011】
この場合、支持板のばね突片が、伝導板のばね突片の一部を、一対の被押圧体のうちのいずれか一方の被押圧体との間で第1方向に挟み込むので、伝導板のばね突片を、前記一方の被押圧体に強く当接させることが可能になり、被押圧体に対する伝導板の接触状態を安定させることができる。これにより、伝導板が有する例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに精度よく安定して発揮させることができる。
【0012】
前記ばね突片は、一端部が前記伝導板または前記支持板に連結された固定端とされ、かつ他端部が自由端とされて片持ち支持され、前記挿通孔は、前記支持板において、この支持板に形成された前記ばね突片と前記第1方向で対向する全ての位置に各別に設けられ、前記伝導板の前記ばね突片が、前記挿通孔に挿通された状態で、前記支持板の前記ばね突片の他端部に係合され、前記支持板の前記ばね突片の他端部が、前記伝導板の前記ばね突片の一部を、一対の前記被押圧体のうちのいずれか一方の被押圧体との間で前記第1方向に挟み込んでもよい。
【0013】
この場合、伝導板のばね突片が、挿通孔に挿通された状態で、支持板のばね突片の他端部に係合されているので、支持板および伝導板に形成され、かつ第1方向に積層された各ばね突片の相対的な位置ずれを抑制することが可能になり、被押圧体に対する伝導板の接触状態を確実に安定させることができる。
【0014】
前記ばね突片は、一端部が前記伝導板または前記支持板に連結された固定端とされ、かつ他端部が自由端とされて片持ち支持され、前記挿通孔は、前記支持板において、この支持板に形成された前記ばね突片と前記第1方向で対向する全ての位置に各別に設けられ、前記伝導板の前記ばね突片に、前記第1方向に直交する沿面方向のうち、前記一端部および前記他端部に直交する第2方向に貫く貫通孔が形成され、前記貫通孔に、前記支持板の前記ばね突片の他端部が挿通され、前記支持板の前記ばね突片の他端部が、前記伝導板の前記ばね突片の一部を、一対の前記被押圧体のうちのいずれか一方の被押圧体との間で前記第1方向に挟み込んでもよい。
【0015】
この場合、前記貫通孔に、支持板のばね突片の他端部が挿通されているので、支持板および伝導板に形成され、かつ第1方向に積層された各ばね突片の相対的な位置ずれを抑制することが可能になり、被押圧体に対する伝導板の接触状態を確実に安定させることができる。
【0016】
前記伝導板に形成された複数の前記ばね突片のうち、一部の前記ばね突片と、他の前記ばね突片と、で前記第1方向に突出する向きが互いに逆向きとされ、これらの前記第1方向に突出する向きが互いに逆向きとされたそれぞれの前記ばね突片が、一対の前記被押圧体に各別に当接してもよい。
【0017】
この場合、伝導板に形成された複数のばね突片のうち、一部のばね突片と、他のばね突片と、で第1方向に突出する向きが互いに逆向きとされ、これらの第1方向に突出する向きが互いに逆向きとされたそれぞれのばね突片が、一対の被押圧体に各別に当接するので、伝導板のばね突片を、一対の被押圧体それぞれにおける所望の位置に確実に当接させることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、荷重特性と、例えば導電性および伝熱性等の特性と、を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態のばね部材を第1方向から見た平面図である。
図2図1のII-II線矢視断面図である。
図3】第2実施形態のばね部材の要部を示す第1方向および第2方向に沿う縦断面図である。
図4】第3実施形態のばね部材の要部を示す第1方向および第2方向に沿う縦断面図である。
図5】第4実施形態のばね部材の要部を示す第1方向および第2方向に沿う縦断面図である。
図6】第5実施形態のばね部材の要部を示す第1方向および第2方向に沿う縦断面図である。
図7】第6実施形態のばね部材の要部を示す第1方向および第2方向に沿う縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るばね部材の第1実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本実施形態のばね部材1は、図1および図2に示されるように、第1方向Zで互いに対向する一対の被押圧体W1、W2の間に設けられる。ばね部材1は、第1方向Zに積層された伝導板11bおよび支持板11aを備えている。伝導板11bおよび支持板11aは、表裏面が第1方向Zに向けられた状態で設けられている。伝導板11bおよび支持板11aは、例えば溶接、加締め、枠体、ピン、若しくは締結部材等により互いに固定されている。
なお、伝導板11bおよび支持板11aは、枠体、若しくはピン等により、第1方向Zに直交する平面に沿う沿面方向で互いに位置決めされてもよい。
【0021】
伝導板11bは、支持板11aを形成する材質より電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つが高い材質で形成されている。伝導板11bは、例えば銅、アルミニウム、若しくはそれらを主成分とする合金等で形成されている。伝導板11bの板厚は、例えば50μm~100μm程度となっている。
支持板11aは、伝導板11bを形成する材質よりヤング率が高い材質で形成されている。支持板11aは、例えば炭素鋼、若しくはステンレス鋼等で形成されている。
【0022】
伝導板11bおよび支持板11aに、第1方向Zに突出し、一対の被押圧体W1、W2を互いが第1方向Zに離反する向きに付勢する複数のばね突片12が形成されている。
伝導板11bに形成された複数のばね突片12は、互いに同じ大きさで形成されている。支持板11aに形成された複数のばね突片12は、互いに同じ大きさで形成されている。
ばね突片12は、一端部(以下、基端部12aという)が伝導板11bまたは支持板11aに連結された固定端とされ、かつ他端部(以下、先端部12bという)が自由端とされて片持ち支持されている。
【0023】
ばね突片12は、第1方向Zから見て、4つの辺部分を有する矩形状を呈する。前記4つの辺部分のうちの1つが、伝導板11bまたは支持板11aに連結された基端部12aとされ、かつ他の1つが、基端部12aと対辺をなす先端部12bとされ、ばね突片12は、基端部12aから先端部12bに向かうに従い、第1方向Zに延びている。ばね突片12の表裏面は、基端部12aから先端部12bに向けて直線状に延びている。なお、ばね突片12の表裏面は、基端部12aから先端部12bに向けて曲線状に延びてもよい。
【0024】
伝導板11bに形成された複数のばね突片12が、第1方向Zに直交する平面に沿う沿面方向において、基端部12aから先端部12bに向けて延びる向きは互いに同じになっている。この向きは、支持板11aに形成された複数のばね突片12においても互いに同じになっている。この向きは、伝導板11bおよび支持板11aにおいて互いに同じになっている。
以下、沿面方向のうち、ばね突片12における基端部12aおよび先端部12bに直交する方向を第2方向Xといい、ばね突片12における基端部12aおよび先端部12bに沿う方向を第3方向Yという。
【0025】
ばね突片12は、第2方向Xに同等のピッチ間隔をあけて複数設けられるとともに、第3方向Yに同等のピッチ間隔をあけて複数設けられている。
なお、第2方向Xおよび第3方向Yそれぞれのピッチ間隔を、不均一にしてもよいし、伝導板11bおよび支持板11aにおいて互いに異ならせる等してもよい。
【0026】
伝導板11bに形成された複数のばね突片12が、第1方向Zに突出する向きは互いに同じになっている。この向きは、支持板11aに形成された複数のばね突片12においても互いに同じになっている。この向きは、伝導板11bおよび支持板11aにおいて互いに同じになっている。
なお、伝導板11bおよび支持板11aそれぞれにおいて、複数のばね突片12のうち、一部のばね突片12と、他のばね突片12と、で第1方向Zに突出する向きを互いに逆向きにしてもよい。
【0027】
図示の例では、複数のばね突片12は、一対の被押圧体W1、W2のうちの第1被押圧体W1側に向けて突出し、支持板11aは、第1方向Zに沿う第1被押圧体W1側に位置し、伝導板11bは、一対の被押圧体W1、W2のうちの第2被押圧体W2に載置されている。
【0028】
支持板11aにおいて、支持板11aに形成されたばね突片12と第1方向Zで対向する全ての位置に各別に、第1方向Zに貫通した第1挿通孔13が形成されている。第1挿通孔13は、伝導板11bにおいても支持板11aと同様に設けられている。第1挿通孔13の大きさは、伝導板11bおよび支持板11aそれぞれにおいて、第1挿通孔13と第1方向Zで対向するばね突片12の大きさ以上となっている。本実施形態では、ばね突片12および第1挿通孔13は、プレス成形により形成されている。
【0029】
そして、本実施形態では、支持板11aに、伝導板11bのばね突片12が挿通された第2挿通孔14が形成されている。伝導板11bのばね突片12が、第2挿通孔14を通して、一対の被押圧体W1、W2のうちの第1被押圧体W1に当接することにより、伝導板11bが、一対の被押圧体W1、W2の双方に当接する。
【0030】
第2挿通孔14は、支持板11aにおける沿面方向の中央領域に形成されている。支持板11aに形成された複数のばね突片12は、支持板11aのうちの外周縁部にのみ形成されている。第2挿通孔14は、伝導板11bのばね突片12より大きくなっている。
伝導板11bのうち、沿面方向の中央領域にのみ複数のばね突片12が形成され、外周縁部には、ばね突片12が形成されておらず、外周縁部は、平坦に形成されている。
【0031】
伝導板11bに形成された複数のばね突片12が、支持板11aの第2挿通孔14に、第1方向Zに貫通した状態で挿通されている。伝導板11bおよび支持板11aに形成された複数のばね突片12が全て、第1被押圧体W1に当接する。伝導板11bのばね突片12の長さ(第2方向Xの大きさ)は、支持板11aのばね突片12の長さより長くなっている。伝導板11bおよび支持板11aに形成された複数のばね突片12の各先端部12bの、第1方向Zの位置は互いに同じになっている。なお、これらの第1方向Zの位置を互いに異ならせてもよい。
【0032】
伝導板11bのばね突片12の幅(第3方向Yの大きさ)は、支持板11aのばね突片12の幅と同じになっている。伝導板11bのばね突片12の厚さは、支持板11aのばね突片12の厚さ以下となっている。なお、伝導板11bのばね突片12の幅を、支持板11aのばね突片12の幅と異ならせてもよく、また、伝導板11bのばね突片12の厚さを、支持板11aのばね突片12の厚さより厚くしてもよい。
伝導板11bおよび支持板11aそれぞれにおいて、複数のばね突片12の、第1方向Zに対する各傾斜角度は互いに同等になっている。この傾斜角度は、伝導板11bおよび支持板11aにおいても互いに同等になっている。なお、伝導板11bおよび支持板11aに形成された複数のばね突片12のうち、少なくとも一部のばね突片12の前記傾斜角度を、他のばね突片12の前記傾斜角度と異ならせてもよい。
【0033】
沿面方向において、ばね突片12が点在している各個所に位置するばね突片12の数量は、1つとなっている。
沿面方向において、ばね突片12が点在している複数個所のうち、ばね部材1の外周縁部に点在している各個所のばね定数が、ばね部材1における沿面方向の中央領域に点在している各個所のばね定数より高くなっている。また、沿面方向において、ばね突片12が点在している複数個所のうち、ばね部材1の外周縁部に点在している各個所における電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つが、ばね部材1における沿面方向の中央領域に点在している各個所における電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つより低くなっている。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材1によれば、伝導板11bおよび支持板11aを備え、伝導板11bおよび支持板11aそれぞれのばね突片12が、一対の被押圧体W1、W2を互いが第1方向Zに離反する向きに付勢し、かつ伝導板11bが、一対の被押圧体W1、W2の双方に当接するので、主に支持板11aが有する荷重特性、並びに、主に伝導板11bが有する例えば導電性および伝熱性等の特性を各別に発揮させることが可能になり、荷重特性と、例えば導電性および伝熱性等の特性と、を両立させることができる。
【0035】
ばね部材1が伝導板11bを備えていて、支持板11aに、伝導板11bと同じ材質のメッキが施されているのではないことから、電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つを容易に高く確保することができるとともに、メッキの剥がれが無く、例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに長期にわたって発揮させることができる。
【0036】
次に、本発明の第2実施形態に係るばね部材2を、図3を参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0037】
本実施形態のばね部材2では、伝導板11bが、支持板11aを形成する材質より電気伝導率が高い材質で形成され、支持板11aが、一対の被押圧体W1、W2のうちの少なくとも一方に対して電気的に絶縁される。
図示の例では、伝導板11bと支持板11aとの間に、電気絶縁材料で形成された絶縁板11cが設けられている。これにより、支持板11aが、一対の被押圧体W1、W2のうちの第2被押圧体W2に対して電気的に絶縁される。
【0038】
なお、絶縁板11cとして、金属材料で形成され、かつ絶縁板11cのうち、少なくとも伝導板11bに当接する部分、または支持板11aに当接する部分が、電気絶縁材料で被覆された構成等を採用してもよい。
絶縁板11cを設けず、例えば、支持板11aのうち、少なくともばね突片12、若しくは伝導板11bに当接する部分が、電気絶縁材料で被覆された構成、または支持板11aが電気絶縁材料で形成された構成等を採用してもよい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材2によれば、荷重特性と、例えば導電性および伝熱性等の特性と、を両立させること等ができる。
支持板11aが、一対の被押圧体W1、W2のうちの少なくとも一方に対して電気的に絶縁されるので、支持板11aを通した一対の被押圧体W1、W2同士の間の導通を遮断することが可能になり、伝導板11bが有する導電性の特性を、ばね部材2において設計通りに精度よく安定して発揮させることができる。
【0040】
次に、本発明の第3実施形態に係るばね部材3を、図4を参照しながら説明する。
なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0041】
本実施形態のばね部材3では、支持板11aの第1挿通孔13に、伝導板11bのばね突片12が挿通されている。伝導板11bのばね突片12が、支持板11aの第1挿通孔13を通して、一対の被押圧体W1、W2のうちの第1被押圧体W1に当接することにより、伝導板11bが、一対の被押圧体W1、W2の双方に当接する。
支持板11aおよび伝導板11bに形成された各ばね突片12は、第1方向Zに積層されている。
【0042】
伝導板11bのばね突片12の先端部12bが、支持板11aのばね突片12の先端部12bを、第1方向Zに沿う第2被押圧体W2側から第1被押圧体W1側に向けて跨いで、支持板11aのばね突片12の先端部12bの表裏面に当接している。これにより、伝導板11bのばね突片12が、支持板11aの第1挿通孔13に挿通された状態で、支持板11aのばね突片12の先端部12b(他端部)に係合されている。支持板11aのばね突片12の先端部12bは、伝導板11bのばね突片12の先端部12bを、第1被押圧体W1との間で第1方向Zに挟み込む。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材3によれば、荷重特性と、例えば導電性および伝熱性等の特性と、を両立させること等ができる。
支持板11aのばね突片12が、伝導板11bのばね突片12の一部を、一対の被押圧体W1、W2のうちのいずれか一方の被押圧体との間で第1方向Zに挟み込むので、伝導板11bのばね突片12を、前記一方の被押圧体に強く当接させることが可能になり、被押圧体W1、W2に対する伝導板11bの接触状態を安定させることができる。これにより、伝導板11bが有する例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに精度よく安定して発揮させることができる。
【0044】
伝導板11bのばね突片12が、支持板11aの第1挿通孔13に挿通された状態で、支持板11aのばね突片12の先端部12bに係合されているので、支持板11aおよび伝導板11bに形成され、かつ第1方向Zに積層された各ばね突片12の相対的な位置ずれを抑制することが可能になり、被押圧体W1、W2に対する伝導板11bの接触状態を確実に安定させることができる。
【0045】
次に、本発明の第4実施形態に係るばね部材4を、図5を参照しながら説明する。
なお、この第4実施形態においては、図4に示した第3実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0046】
本実施形態のばね部材4では、支持板11aのばね突片12に、第1方向Zに貫く第1貫通孔15が形成されている。伝導板11bのばね突片12が、支持板11aの第1挿通孔13に挿通された状態で、第1貫通孔15を通して、支持板11aのばね突片12を第1方向Zに貫いている。
【0047】
伝導板11bのばね突片12の先端部12bが、支持板11aのばね突片12の先端部12bを、第1方向Zに沿う第1被押圧体W1側から第2被押圧体W2側に向けて跨いで、支持板11aのばね突片12の先端部12bの表裏面を挟んでいる。これにより、伝導板11bのばね突片12が、支持板11aの第1挿通孔13に挿通された状態で、支持板11aのばね突片12の先端部12b(他端部)に係合されている。支持板11aのばね突片12の先端部12bは、伝導板11bのばね突片12の先端部12bを、第1被押圧体W1との間で第1方向Zに挟み込む。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材4によれば、第3実施形態のばね部材3と同様の作用効果を有する。
支持板11aの第1挿通孔13に挿通された伝導板11bのばね突片12が、第1貫通孔15を通して、支持板11aのばね突片12を第1方向Zに貫いた状態で、支持板11aのばね突片12の先端部12bに係合されているので、支持板11aおよび伝導板11bに形成され、かつ第1方向Zに積層された各ばね突片12の相対的な位置ずれを確実に抑制することができる。
【0049】
次に、本発明の第5実施形態に係るばね部材5を、図6を参照しながら説明する。
なお、この第5実施形態においては、図4に示した第3実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0050】
本実施形態のばね部材5では、伝導板11bのばね突片12に、第2方向Xに貫く第2貫通孔16が形成されている。第2貫通孔16に、支持板11aのばね突片12の先端部12bが挿通されている。
【0051】
伝導板11bのばね突片12の表裏面は、全長にわたって、基端部12aから先端部12bに向けて直線状に延びている。支持板11aのばね突片12の先端部12bは、第2貫通孔16を通して、伝導板11bのばね突片12の先端部12bを第2方向Xに貫き、ほぼ真直ぐ延びている。支持板11aのばね突片12の先端部12bは、第2貫通孔16の内周面を介して、伝導板11bのばね突片12の先端部12bを、第1被押圧体W1との間で第1方向Zに挟み込む。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材5によれば、荷重特性と、例えば導電性および伝熱性等の特性と、を両立させることができるとともに、伝導板11bが有する例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに精度よく安定して発揮させること等ができる。
伝導板11bのばね突片12の第2貫通孔16に、支持板11aのばね突片12の先端部12bが挿通されているので、支持板11aおよび伝導板11bに形成され、かつ第1方向Zに積層された各ばね突片12の相対的な位置ずれを抑制することが可能になり、被押圧体W1、W2に対する伝導板11bの接触状態を確実に安定させることができる。
【0053】
次に、本発明の第6実施形態に係るばね部材6、図7を参照しながら説明する。
なお、この第6実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0054】
本実施形態のばね部材6では、伝導板11bに形成された複数のばね突片12のうち、一部のばね突片12と、他のばね突片12と、で第1方向Zに突出する向きが互いに逆向きになっている。
図示の例では、支持板11aが、伝導板11bを第1方向Zに挟む両側に各別に設けられている。
【0055】
2つの支持板11aにそれぞれ、ばね突片12および第1挿通孔13と、第2挿通孔14と、が、第2方向Xに間隔をあけて複数形成されている。2つの支持板11aのうち、いずれか一方の支持板11aに形成されたばね突片12および第1挿通孔13は、いずれか他方の支持板11aに形成された第2挿通孔14に対して、第1方向Zで対向し、かつ互いに同等の大きさに形成されている。
【0056】
伝導板11bのばね突片12は、第1方向Zに沿う伝導板11bからの突出方向の反対側から、2つの支持板11aのうちのいずれか一方の支持板11aに形成されたばね突片12に支持されている。つまり、伝導板11bおよび支持板11aの各ばね突片12は、第1方向Zに積層されている。支持板11aのばね突片12は、伝導板11bの第1挿通孔13に、第1方向Zに貫通した状態で挿通されている。
【0057】
2つの支持板11aのうち、伝導板11bのばね突片12が伝導板11bから突出した側に位置する他方の支持板11aの第2挿通孔14に、一方の支持板11a、および伝導板11bそれぞれのばね突片12が、第1方向Zに貫通した状態で挿通されている。伝導板11bのばね突片12の先端部12bは、このばね突片12を支持している、前記一方の支持板11aのばね突片12の先端部12bに対して、第1方向Zに突出している。伝導板11bのばね突片12の先端部12bが、被押圧体W1、W2に当接する。これにより、伝導板11bのばね突片12の先端部12bが、支持板11aのばね突片12と、一対の被押圧体W1、W2のうちのいずれか一方の被押圧体と、の間で第1方向Zに挟み込まれる。
【0058】
ここで、伝導板11bに形成された複数のばね突片12のうち、一部のばね突片12と、他のばね突片12と、で第1方向Zに突出する向きが互いに逆向きとされ、これらの第1方向Zに突出する向きが互いに逆向きとされたそれぞれのばね突片12が、2つの支持板11aに形成された各第2挿通孔14を通して、一対の被押圧体W1、W2に各別に当接する。これにより、伝導板11bが、一対の被押圧体W1、W2の双方に当接する。
なお、本実施形態において、2つの支持板11aのうちのいずれか一方を有しない構成を採用してもよい。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材6によれば、荷重特性と、例えば導電性および伝熱性等の特性と、を両立させることができるとともに、伝導板11bが有する例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに精度よく安定して発揮させること等ができる。
伝導板11bに形成された複数のばね突片12のうち、一部のばね突片12と、他のばね突片12と、で第1方向Zに突出する向きが互いに逆向きとされ、これらの第1方向Zに突出する向きが互いに逆向きとされたそれぞれのばね突片12が、一対の被押圧体W1、W2に各別に当接するので、伝導板11bのばね突片12を、一対の被押圧体W1、W2それぞれにおける所望の位置に確実に当接させることができる。
【0060】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0061】
第1、第2実施形態では、沿面方向において、ばね突片12が点在している複数個所のうち、ばね部材の外周縁部に点在している各個所のばね定数等が、ばね部材における沿面方向の中央領域に点在している各個所のばね定数等と異なっている構成を示したが、これに限らず例えば、第2方向X、若しくは第3方向Yの位置ごとで異ならせたり、沿面方向において千鳥状に異ならせたりする等、適宜変更してもよい。
【0062】
ばね突片12として、例えば、基端部12aを第2方向Xに挟む両側に先端部12bが各別に設けられ、第3方向Yから見てV字状、若しくはU字状を呈する構成等を採用してもよい。
【0063】
伝導板11bおよび支持板11aに形成された複数のばね突片12のうち、少なくとも一部のばね突片12と、他のばね突片12と、で、沿面方向において、基端部12aから先端部12bに向けて延びる向きを互いに異ならせてもよい。
この構成において、伝導板11bおよび支持板11aに形成された各ばね突片12の先端部12b同士が、第1方向Zに積層された構成等を採用してもよい。
【0064】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態、および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1~6 ばね部材
11a 支持板
11b 伝導板
12 ばね突片
12a 基端部(一端部)
12b 先端部(他端部)
13 第1挿通孔(挿通孔)
14 第2挿通孔(挿通孔)
15 第1貫通孔
16 第2貫通孔(貫通孔)
W1、W2 被押圧体
X 第2方向
Y 第3方向
Z 第1方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7