(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ソレノイド
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
H01F7/16 E
H01F7/16 D
(21)【出願番号】P 2021048546
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】510118846
【氏名又は名称】シンフォニアマイクロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 崇紘
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-063807(JP,U)
【文献】実開昭62-072253(JP,U)
【文献】実開昭50-142154(JP,U)
【文献】特開2020-125833(JP,A)
【文献】実開平05-079908(JP,U)
【文献】特表2019-510933(JP,A)
【文献】特開平09-089143(JP,A)
【文献】特表平05-503562(JP,A)
【文献】実開昭55-173737(JP,U)
【文献】特表2011-525956(JP,A)
【文献】特表2003-509853(JP,A)
【文献】特開2001-065319(JP,A)
【文献】米国特許第04759528(US,A)
【文献】特開2003-307236(JP,A)
【文献】特開平08-312678(JP,A)
【文献】国際公開第2009/059843(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心に沿う方向に可動するように構成されたソレノイドにおいて、
前記軸心に対して周回する形状の固定子、可動子、コイルを備え、
前記固定子は、磁性体から構成され、前記可動子と軸心方向で対向する端面を有し、
前記可動子は、前記固定子に対して軸心方向に沿って移動する磁性体であり、前記軸心の周囲に設けられ、前記固定子に対して当接する中空の筒部と、該筒部の軸心方向端部に形成され、かつ、前記固定子の前記端面に対向する板状の対向部と、を備え、
前記コイルは、前記固定子に対して同心に周回しており、通電により前記可動子を前記固定子側に移動させるように構成され、
前記対向部の外周縁部に、前記固定子に向かって延びるとともに前記コイルの非通電時において該固定子の前記端面から離間した先端を有する延出部を備
え、
更に、
前記固定子は、軸心断面で前記コイルを周回する磁束線の磁路を形成するための磁路形成部を備え、
磁性体から構成されたシャフトを収容する収容部を有し、前記磁路形成部に挿入される非磁性体から構成されたシャフト収容部を備え、
前記シャフト収容部は、前記シャフトの外面を前記磁路形成部に対して露出させるための切欠き部又は貫通孔を備え、
前記磁路形成部は、前記シャフト収容部の切欠き部又は貫通孔を通して径方向内側に突出して前記シャフトに接触する凸部を備えていることを特徴とするソレノイド。
【請求項2】
前記延出部は、前記対向部の外周縁部の全周に亘って備え、前記コイルを通電して前記可動子を前記固定子に移動させたときに、前記延出部が前記固定子の外周面に重なるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のソレノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸心に沿う方向に可動するように構成されたソレノイドに関する。
【背景技術】
【0002】
上記ソレノイドは、軸心に対して周回する形状の固定子、可動子、コイルを備え、前記固定子は、磁性体から構成され、前記可動子と対向する端面を有し、前記可動子は、前記固定子に対して軸心方向に沿って移動する磁性体であり、前記軸心の周囲に設けられた中空の筒部と、該筒部の軸心方向端部に形成され、かつ、前記固定子の前記端面に対向する板状の対向部と、を備え、前記コイルは、前記固定子に対して同心に周回しており、通電により前記可動子を前記固定子側に移動させるように構成され、前記可動子の対向部が円板形状に構成されている(本発明の出願人が出願した特許文献1(公開公報未発行)参照)。
【0003】
上記特許文献1では、コイルへの通電により発生する磁界の磁束線が固定子から可動子の筒部を介して対向部へと移動し、対向部から固定子へ移動することにより、可動子を固定子側へ引き付ける力が発生して可動子が固定子側へ移動する。しかし、可動子の対向部が円板形状に構成されているため、対向部に移動した磁束線が対向部の外周面から出た方向に固定子が存在していないため、該磁束線が分散し、固定子側に向かい難い。そのため、可動子から固定子の前記端面に向かう磁束線の量が少なくなってしまい、可動子を固定子へ移動させる力が小さくなるという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、可動子から固定子に移動する磁束線の量が少なくなることを抑制できるソレノイドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のソレノイドは、軸心に沿う方向に可動するように構成されたソレノイドにおいて、前記軸心に対して周回する形状の固定子、可動子、コイルを備え、前記固定子は、磁性体から構成され、前記可動子と軸心方向で対向する端面を有し、前記可動子は、前記固定子に対して軸心方向に沿って移動する磁性体であり、前記軸心の周囲に設けられ、前記固定子に対して当接する中空の筒部と、該筒部の軸心方向端部に形成され、かつ、前記固定子の前記端面に対向する板状の対向部と、を備え、前記コイルは、前記固定子に対して同心に周回しており、通電により前記可動子を前記固定子側に移動させるように構成され、前記対向部の外周縁部に、前記固定子に向かって延びるとともに前記コイルの非通電時において該固定子の前記端面から離間した先端を有する延出部を備えていることを特徴としている。
【0007】
本発明によれば、対向部の外周縁部に、前記固定子に向かって延びるとともに可動子から離間した先端を有する延出部を備えているので、コイルを通電して発生する磁界の磁束線が、固定子から筒部を介して対向部に移動し、固定子側へ向いている延出部の先端から固定子側に向かいやすい。これにより、可動子から固定子へ移動する磁束線の量が少なくなることを抑制できる。
【0008】
また、本発明のソレノイドは、前記延出部が、前記対向部の外周縁部の全周に亘って備え、前記コイルを通電して前記可動子を前記固定子に移動させたときに、前記延出部が前記固定子の外周面に重なるように構成されていてもよい。
【0009】
上記構成によれば、コイルを通電して可動子を固定子に向かって移動させたときに、延出部が固定子の外周面に重なるように構成されていれば、ソレノイドの軸心方向の寸法を短くすることができる。
【0010】
また、本発明のソレノイドは、軸心に沿う方向に可動するように構成されたソレノイドにおいて、前記軸心に対して周回する形状の固定子、可動子、コイルを備え、前記固定子は、軸心断面で前記コイルを周回する磁束線の磁路を形成するための磁路形成部を備え、磁性体から構成されたシャフトを収容する収容部を有し、前記磁路形成部に挿入される非磁性体から構成されたシャフト収容部を備え、前記シャフト収容部は、前記シャフトの外面を前記磁路形成部に対して露出させるための切欠き部又は貫通孔を備え、前記磁路形成部は、前記シャフト収容部の切欠き部又は貫通孔を通して径方向内側に突出して前記シャフトに接触する凸部を備えていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、コイルが通電されて磁路形成部がコイルを周回する磁束線の磁路を形成する。磁束線が、磁路形成部の凸部からシャフトへ移動し、シャフトに移動した磁束線がコイルを周回する磁束線に合流することによって、磁束線の量が少なくなることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、対向部の外周縁部に、固定子側に延びるとともに可動子から離間した先端を有する延出部を備える、又は固定子に備える磁路形成部がシャフト収容部の切欠き部又は貫通孔を通して径方向内側に突出してシャフトに接触する凸部を備えることによって、可動子から固定子に移動する磁束線の量が少なくなることを抑制できるソレノイドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】同ソレノイドの背面側から見た斜視図である。
【
図5】同ソレノイドを構成する部品を示し、(a)はシャフト収容部の斜視図、(b)はフィールドの斜視図である。
【
図6】
図1におけるVI-VI線断面図であり、磁束線の流れを記載している。
【
図7】
図6において同ソレノイドの可動子が固定子に吸着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明につき、一実施形態を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。
【0015】
本発明の実施形態のソレノイド1は、回転せず、軸心に沿う方向にのみ可動するように構成され、
図1~
図4に示されている。このソレノイド1は、軸心に対して周回する形状の固定子2、コイル3(
図6参照)、可動子4を備えるとともに、ばね5、ボビン6、フィールド7、ボビン6に取り付けられる端子台8Aを覆う端子カバー8、磁性体から構成された円柱状のシャフト11を収容する収容部12Aを有するシャフト収容部12(
図5(a)参照)を備えている。このソレノイド1は、例えば、複写機の給紙機構等に適用される。シャフト11は、ソレノイド1には属しておらず、ソレノイド1の取付対象物である前記給紙機構等の一部に属している。尚、ボビン6及び端子カバー8並びにシャフト収容部12は、非磁性体である合成樹脂で構成されている。ばね5は、非通電時に、可動子4を固定子2から引き離す方向に移動させるように配置される。具体的には、
図6に示すように、後述するフィールド7の第2内側部73の下端と後述する可動子4の筒部41の上端との間に配置される。ここで、固定子2は、軸心断面でコイル3を周回する磁束線の磁路を形成するための磁路形成部を備え、この磁路形成部は、固定子2に接触するフィールド7から構成されている。端子台8A及び端子カバー8は、合成樹脂又は金属等で構成することができる。
【0016】
固定子2は、磁性体からなる金属板(例えばメッキ鋼板等)から構成され、
図4及び
図6に示すように、可動子4と対向する端面2Tを有し、外形が円形のリング状で板状の端面部21と、端面部21の外周縁から可動子4から離間する側へ延びる第1外側筒部22と、端面部21の内周縁から可動子4から離間する側へ延びる第1内側筒部23と、を備えている。前記端面部21には、径方向に分断された固定子窓部9を備えている。尚、以下において、ソレノイド1の軸心方向における可動子側を下方とし、ソレノイド1のフィールド側を上方とし、軸心方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0017】
第1外側筒部22は、
図6に示すように、軸心方向(図では上方)に沿って延びる円筒状に構成され、第1内側筒部23よりも軸心方向に短い寸法に構成されている。第1内側筒部23は、第1外側筒部22と同様に、軸心方向(図では上方)に沿って延びる円筒状に構成され、第1外側筒部22よりも軸心方向に長い寸法に構成されている。尚、第1内側筒部23が、第1外側筒部22よりも軸心方向に短い寸法に構成されていてもよいし、第1内側筒部23が、軸心方向において第1外側筒部22と同一長さに構成されていてもよい。
【0018】
可動子4は、固定子2に対して軸心方向に沿って移動可能に構成されている。可動子4は、磁性体からなる金属板(例えばメッキ鋼板等)から構成され、
図4及び
図6に示すように、軸心の周囲に設けられた中空の筒部41と、筒部41の軸心方向端部(軸心方向上端部)に一体に形成され、かつ、固定子2の端面2Tに対向する外形が円形で板状のリング状で板状の対向部42と、対向部42の外周縁に固定子2に向かって(固定子2側に)延びるように一体形成された円筒状の延出部43と、を備えている。延出部43の先端43Tは固定子2の下端とは隙間を空けて離間している。この隙間は、磁束線が延出部43から固定子2へ移動しやすい大きさに設定される。対向部42は、固定子2が有する固定子窓部9とは径方向及び周方向において異なる位置に設けられ、径方向に分断された可動子窓部10を有している。この実施形態では、可動子4は、金属板(例えばメッキ鋼板等)をプレス成形することで構成されている。
【0019】
延出部43の内径は、固定子2の外径よりも大きく設定されており、コイル3を通電して可動子4を固定子2に向かって移動させたときに、延出部43が固定子2の第1外側筒部22の可動子4側端部の外周面に重複するように構成されている(
図7参照)。このように、コイル3を通電して可動子4を固定子2に移動させたときに、延出部43が固定子2の第1外側筒部22の外周面に重複するように構成されていれば、ソレノイド1の軸心方向の寸法を短くすることができる。この実施形態のように、延出部43を、軸心方向と略平行に延びるように構成するのが好ましいが、延出部43の先端側(上端側)ほど外側に位置する外拡がり形状に構成してもよいし、場合によっては、延出部43の先端(上端)側ほど内側に位置する先窄まり形状に構成してもよい。
【0020】
コイル3は、固定子2に対して同心に周回するように径方向外側が開放された合成樹脂製のボビン6に巻回されている。そして、コイル3は、通電されることで励磁されて、前記ばね5の付勢力に抗して可動子4を固定子2に吸着させる。コイル3が巻かれたボビン6の上部側は、フィールド(ケーシングともいう)7により覆われている。
【0021】
ボビン6は、
図4及び
図6に示すように、コイル3を巻くための円筒部61と、円筒部61の下端から左右方向外側に延びるリング状の下側板部62と、円筒部61の上端から左右方向外側に延びるリング状の上側板部63と、を備えている。下側板部62の下端面には、下方に突出する複数(
図4では3個)の円柱状の突起62Aが周方向に間隔を置いて形成されている。これら突起62Aは、固定子2の端面部21に周方向に間隔を置いて形成された複数(
図4では6個)の円形の貫通孔21Aのうちの3個の貫通孔21Aに係止されている。そして、係止された状態では、突起62Aの下端部が、固定子2の端面部21の下端面から下方に突出しており、可動子4が固定子2に吸着される際に、可動子4の対向部42の上端面42A(
図7参照)が突起62Aの先端面に当接することにより、可動子4の吸着位置を規制するようにしている。尚、突起62Aが係止しなかった残りの3個の貫通孔21Aのそれぞれには、後述する3つの突起125が逆方向(下方)から係止する。また、
図2、
図3及び
図7に示すように、上側板部63の上端面に上方に突出する角柱状の突出部13を備えている。この突出部13は、後述するフィールド7の板部71に形成されている角型状の貫通孔71Aに挿通され外部に突出している。この突出部13は、複写機内で固定子2側が回転しないように複写機内の固定部材側へ固定されて回り止めを行う部材として設けられている。
【0022】
シャフト収容部12は、非磁性体である合成樹脂から構成され、
図4に示すように、外形が円形で中心に円形の開口12Kを有するリング状の板部121と、板部121の内周縁から上方へ延びる円筒部122と、を備えている。このシャフト収容部12に、シャフト11が内嵌される。シャフト11は、複写機内に備えている。また、円筒部122の上端には、上方へ延びる複数(
図4では3個)の脚部123,123,123が周方向に間隔を置いて設けられている。これら脚部123,123,123の周方向で隣り合う脚部123,123同士間に、シャフト11の外面を露出させるための切欠き部(又は筒状体に貫通孔を形成してもよい)123Kが形成されている。板部121の上端面の外周縁の周方向3箇所に、可動子4の対向部42に形成されている3個の貫通孔42Kにそれぞれ挿通して固定子2の端面部21の下端面21Bに当接して固定子2の軸心方向下方側の位置を規制するための当接部124を形成している。また、各当接部124には、下方に突出する円柱状の突起125が形成されている。これら突起125が前記残りの3つの貫通孔21Aに下方から係止する。また、各脚部123の上端には、フィールド7の板部71の内周縁に軸心方向上方から係止してフィールド7の軸心方向上方側の位置を規制するための爪部126を備えている。したがって、シャフト収容部12をセットすることにより、3つの当接部124が固定子2の端面部21の下端面21Bに当接し、かつ、3つの爪部126がフィールド7の板部71の内周縁に係止する。これにより、ソレノイド1を構成する全ての部材を一体化した状態で固定することができる。
【0023】
また、前記3つの当接部124を設けることによって、可動子4が、回転すること及び軸心方向に対して傾くことを防止しつつ、軸心方向に沿ってスムーズかつ確実に案内される。詳述すると、
図6に示すように、3つの当接部124(
図6では1個のみ図示している)の円弧状の内側面124Aと円筒部122の外周面122Aとで可動子4の筒部41を案内支持し、3つの当接部124の円弧状の外側面124Bで可動子4の対向部42の3個の貫通孔42Kを形成する4つの面のうちの円弧状の外周面42Gを案内支持することによって、特に軸心方向に対して傾くことを確実に防止できる。
【0024】
フィールド7は、磁性体からなる金属板(例えばメッキ鋼板等)から構成され、
図4及び
図7に示すように、ボビン6の上側板部63に軸方向で対向して上側板部63を覆う板状でリング状の板部71と、板部71の外周縁のうちの前記端子台8Aが位置する部分を除いたボビン6の外周部を覆うための円弧状の第2外側部72と、板部71の内周縁からボビン側へ延びる筒状の第2内側部73と、を備えている。第2外側部72の下部側は、固定子2の第1外側筒部22の上部側の内側に位置して径方向で重複するとともに接触している。また、第2内側部73の下部側は、固定子2の第1内側筒部23の上部側の外側に位置して径方向で重複するとともに接触している。
【0025】
板部71には、前記突出部13が挿通可能な角型状の貫通孔71Aが形成されている。第2内側部73は、
図4に示すように、前記3つの脚部123が入り込む3つの凹部73Aと、前記3つの切欠き123Kに径方向内側へ突出してシャフト11の外面に接触する凸部73Bと、を備えている。したがって、磁束線がフィールド7の凸部73Bからシャフト11へ移動する。つまり、
図6に示すように、コイル3を通電して磁界が発生し、磁束線が、固定子2の第1外側筒部22、フィールド7の第2外側部72、フィールド7の板部71、フィールド7の第2内側部73を通って、固定子2の第1内側筒部23へ移動するとともに、第2内側部73の凸部73Bからシャフト11へ移動する。固定子2の第1内側筒部23へ移動した磁束線とシャフト11へ移動した磁束線の両方が可動子4の筒部41に合流することによって、磁束線の量が少なくなることを更に抑制することができる。また、磁束線が、可動子4の筒部41から対向部42へ移動し、対向部42の延出部43の先端から固定子側に向かって移動しやすい。これにより、対向部42から固定子側へ移動する磁束線の量が少なくなることを抑制でき、循環する磁束線の量が少なくなることを抑制することができる。尚、固定子2の第1内側筒部23へ移動した磁束線は、可動子4の筒部41の他、端面部21へも移動し、端面部21から固定子2の第1外側筒部22へと移動する。このとき、延出部43の先端43Tからの磁束線も固定子2の第1外側筒部22へ移動する。
【0026】
可動子4に備える可動子窓部10は、
図4に示すように、径方向1箇所に周方向に沿って間隔を置いて形成された複数(この実施形態では、4個)の円弧状の長短2種類のスリット10A,10Bから構成されている。長い方の2個のスリット10Aのそれぞれは、周方向の長さが同一で、かつ、径方向の幅も同一である。また、短い方の2個のスリット10Bのそれぞれは、周方向の長さが同一で、かつ、径方向の幅も同一である。そして、前記長い方の2個のスリット10A,10A間及び前記短い方の2個のスリット10B,10B間のそれぞれに、後述する操作対象物14に対して係合可能な係合部としての矩形状(略正方形状)の突起部10Tが形成されている。この実施形態では、コイル3が非励磁の時に、可動子4が固定子2に対して離間することによって、突起部10Tが操作対象物14に係合する(
図1参照)。
【0027】
固定子2に備える固定子窓部9は、
図4に示すように、径方向2箇所に周方向に沿って間隔を置いて形成された複数(この実施形態では、3個)の円弧状のスリット9A,9A,9A、9B,9B,9Bから構成されている。径方向外側の3個の円弧状のスリット9A,9A,9Aは、いずれも、径方向の幅が同一で、周方向の長さも同一である。また、径方向内側の3個の円弧状のスリット9B,9B,9Bは、いずれも、径方向の幅が同一で、周方向の長さも同一であるが、外側のスリット9A,9A,9Aよりも周方向の長さが短くなっている。尚、スリット9A,9Bの径方向の幅が、可動子4に備えるスリット10A,10Bの径方向の幅よりも大きく設定している。周方向で隣り合う外側のスリット9A,9A同士間の繋ぎ部9Cは、周方向において120度間隔で3箇所存在し、3箇所の繋ぎ部9Cの周方向の長さは全て同一である。周方向で隣り合う内側のスリット9B,9B同士間の繋ぎ部9Dは、周方向において120度間隔で3箇所存在し、3箇所の繋ぎ部9Dの周方向の長さは全て同一である。外側の繋ぎ部9Cと内側の繋ぎ部9Dは、径方向において異なる位置にある。
【0028】
そして、固定子2の径方向外側の3個のスリット9Aと径方向内側に位置する3個のスリット9Bとの間に、可動子4の4個のスリット10A,10Bが位置している。また、可動子4に備えるスリット10A,10Bの径方向の幅を、固定子2に備えるスリット9A,9Bの径方向の幅よりも小さくしている。これにより、固定子2の径方向で隣り合うスリット9Aと9Bとの間の距離を小さく抑えることができる。
【0029】
上記のように固定子2のスリット9A,9A間に可動子4のスリット10A,10Bを備えることによって、ソレノイド1のコイル3に通電して、可動子4が固定子2に移動して強固に吸着される。つまり、磁束線が、フィールド7から固定子2に流れる磁束線が、固定子2の端面部21の外周部から可動子4→固定子2→可動子4→固定子2へと内周部に向かって流れた後、フィールド7へ流れる。このように可動子4と固定子2との間を磁束線が繰り返し移動することによって、吸引量を大きくすることができる。したがって、固定子窓部9と可動子窓部10とを上述したように形成することにより磁気効率が低下しない。しかも、電磁クラッチのように回転することがないため、固定子窓部9に対する可動子窓部10の位置が変化することがないから、常に所定の大きさの吸引力を安定して発生できる。
【0030】
ソレノイド1の動作について説明する。可動子4の非作動時では、ばね5の付勢力により固定子2から離間(突出)した位置(
図6参照)に位置し、固定子2の係合部である一方の突起部10Tに操作対象物14が係合してその位置に操作対象物14が停止した状態を維持している(
図1参照)。操作対象物14は、ソレノイド1と同軸上に回転可能に設けられた回転体(図示せず)に取り付けられている。そして、可動子4の作動時では、コイル3に通電して可動子4をばね5の付勢力に抗して固定子2に吸着した状態(退避した位置、
図7参照)にする。これによって、操作対象物14との係合が解除され、操作対象物14が回転し、操作対象物14が他方の突起部10Tを通過して1回転する前にコイル3の通電を遮断することによって、可動子4がばね5の付勢力で突出位置(初期位置)まで復帰する。これにより、回転している操作対象物14が固定子2の係合部である突起部10Tに係合して1回転した位置で停止させられる。
【0031】
以上、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、本発明の出願人が出願した特願2020-142979のソレノイドの平板状の可動子を本発明の延出部43を備えた可動子4に取り換えて構成されるソレノイドであってもよい。
【0032】
前記実施形態では、シャフト収容部12が3つの脚部123を備えていたが、1つ又は2つあるいは4つ以上の任意の数の脚部から構成してもよい。
【0033】
また、前記実施形態では、金属板をプレス成形することによって、可動子4を構成したが、絞り成形、ロール成形、曲げ成形の他、鋳造や鍛造等により可動子4を構成してもよい。
【0034】
また、前記実施形態では、操作対象物14に対して係合可能な係合部10Tを可動子4に2箇所設けたが、1箇所でもよいし、3箇所以上に設けてもよい。また、係合部10Tの形状は、矩形状に限定されるものではなく、三角形状、5角形以上の多角形状、小判形状等、どのような形状であってもよい。また、係合部10Tは、突起ではなく、凹部であってもよい。また、係合部10Tと操作対象物14は、接近及び離間するものに限らず、リンク等により常時繋がっていてもよい。
【0035】
また、前記実施形態では、固定子2及び可動子4のそれぞれが、全周(360度)に亘る形状に構成されていたが、例えば180度から360度の範囲の任意の角度に亘る形状としてもよい。また、実施形態では、円周状に周回するものを示したが、多角形状に周回するものであってもよい。
【0036】
また、前記実施形態では、可動子4の外形を円形に構成したが、楕円形や多角形等、どのような形状にしてもよい。例えば、スリット10A,10Bは、実施形態と同一形状で、筒部41と対向部42が実施形態とは異なる別の形状にしてもよい。
【0037】
また、前記実施形態では、固定子2の外形を円形に構成したが、楕円形や多角形等、どのような形状にしてもよい。この場合、スリット9A,9Bは、実施形態と同一形状にして固定子2の外形のみを異なる形状にしてもよい。
【0038】
また、前記実施形態では、可動子4の外形を円形にし、固定子2の外形も円形にしたが、可動子4の外形を円形にし、固定子2の外形を円形以外の形状、例えば円弧状や多角形状に構成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…ソレノイド、2…固定子、2T…端面、3…コイル、4…可動子、6…ボビン、7…フィールド、8…端子カバー、8A…端子台、9…固定子窓部、9A,9B…スリット、9C,9D…繋ぎ部、10…可動子窓部、10A,10B…スリット、10T…突起部、10T…係合部、11…シャフト、12…シャフト収容部、12A…収容部、12K…開口、13…突出部、14…操作対象物、21…端面部、21A…貫通孔、21B…下端面、41…筒部、42…対向部、42A…上端面、42G…外周面、42K…貫通孔、43…延出部、43T…先端、61…円筒部、62…下側板部、62A…突起、63…上側板部、71…板部、71A…貫通孔、72…第2外側部、73…第2内側部、73A…凹部、73B…凸部、121…板部、122…円筒部、122A…外周面、123…脚部、123K…切欠き部、124…当接部、124A…内側面、124B…外側面、125…突起、126…爪部