(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】放射線遮蔽体
(51)【国際特許分類】
G21F 3/00 20060101AFI20240227BHJP
G21C 11/00 20060101ALI20240227BHJP
G21C 13/00 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
G21F3/00 G
G21F3/00 L
G21C11/00
G21C13/00 300
(21)【出願番号】P 2021098899
(22)【出願日】2021-06-14
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】中山 泰芳
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-94099(JP,A)
【文献】特開平11-183688(JP,A)
【文献】特開平1-132994(JP,A)
【文献】特開昭63-118690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 1/00- 7/06
G21C 9/00- 9/06
11/00-13/10
G21D 1/00- 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの隣り合う構造物の間の隙間を覆う放射線遮蔽体であって、
可撓性を有し前記隙間の間にたわんだ状態で架け渡された放射線の遮蔽シートと、
前記遮蔽シートを前記2つの隣り合う構造物に固定する固定具とを備えることを特徴とする放射線遮蔽体。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線遮蔽体であって、
前記固定具は、前記2つの隣り合う構造物に固定された複数のアンカーボルトと、当該複数のアンカーボルトに締結される複数のナットとを備えることを特徴とする放射線遮蔽体。
【請求項3】
請求項1に記載の放射線遮蔽体であって、
前記遮蔽シートは、積層された複数の遮蔽シートであることを特徴とする放射線遮蔽体。
【請求項4】
請求項1に記載の放射線遮蔽体であって、
前記遮蔽シートが前記2つの隣り合う構造物の所定の側から脱着自在であることを特徴とする放射線遮蔽体。
【請求項5】
請求項1に記載の放射線遮蔽体であって、
前記隙間の幅方向における中央部に湾曲部を有し、可撓性を有するガイド板を備えることを特徴とする放射線遮蔽体。
【請求項6】
請求項1に記載の放射線遮蔽体であって、
前記遮蔽シートと重なるように前記隙間に架け渡された止水ジョイントを備えることを特徴とする放射線遮蔽体。
【請求項7】
請求項3に記載の放射線遮蔽体であって、
前記2つの隣り合う構造物の間の隙間の長さより、前記2つの隣り合う構造物の間に並べた前記複数の遮蔽シートの長さの和の方が大きいことを特徴とする放射線遮蔽体。
【請求項8】
請求項3に記載の放射線遮蔽体であって、
前記複数の遮蔽シートは、同一層の隣り合う2枚の遮蔽シートの間に空隙を備え、
前記空隙の配置は隣り合う層で異なることを特徴とする放射線遮蔽体。
【請求項9】
請求項2に記載の放射線遮蔽体であって、
前記アンカーボルトは、前記2つの隣り合う構造物の表面に固定されていることを特徴とする放射線遮蔽体。
【請求項10】
請求項2に記載の放射線遮蔽体であって、
前記アンカーボルトは、前記2つの隣り合う構造物において前記隙間を介して対向する2つの側面の各々に設けられた段差部に固定されていることを特徴とする放射線遮蔽体。
【請求項11】
請求項1に記載の放射線遮蔽体であって、
前記2つの隣り合う構造物の前記遮蔽シートと接する面と、前記2つの隣り合う構造物において前記隙間を介して対向する2つの側面とが交わる隅部に施された面取り部を備えることを特徴とする放射線遮蔽体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線遮蔽体に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所における2つの建築・土木構造物(例えば、原子力建屋やタービン建屋)の間には、地震発生時に構造物同士が干渉することを防止するために隙間を設ける必要がある。この隙間は放射線の遮蔽に対して弱点となり得る。
【0003】
このような2つの構造物間の隙間に対する放射線の遮蔽対策として、例えば、特許文献1には、放射線取扱い施設の高線量区域と低線量区域との間に設置され段階状の間隙を形成する第1および第2の遮蔽体から成る放射線遮蔽体において、第1および第2の遮蔽体の厚さを、遮蔽する放射線源の強度に応じて当該間隙を遮蔽できる厚みに設定したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の放射線遮蔽体は、コンクリート壁の形状が複雑なため施工方法が容易ではない。また、原子力発電所内の既存の構造物にこの放射線遮蔽体を追加することも困難である。
【0006】
本発明の目的は、施工方法が容易で、既存の構造物への追加が容易な放射線遮蔽体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、可撓性を有し前記隙間の間にたわんだ状態で架け渡された放射線の遮蔽シートと、前記遮蔽シートを前記2つの隣り合う構造物に固定する固定具とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、原子力発電所内の2つの建屋等の構造物の間に設置される放射線遮蔽体の施工が容易で、原子力発電所内の既存の構造物への追加が容易できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】2つの建屋の間に設けられた隙間を示す平面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る放射線遮蔽体の斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る放射線遮蔽体の遮蔽シートの平面図である。
【
図5】板状部材の斜視図と板状部材の厚みと曲げ剛性の関係を示す式である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る放射線遮蔽体の斜視図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る放射線遮蔽体の斜視図である。
【
図8】
図7に示した放射線遮蔽体のA-A矢視断面図である。
【
図9】
図7に示した放射線遮蔽体の他の実施形態のA-A矢視断面図である。
【
図10】
図7に示した放射線遮蔽体の他の実施形態のA-A矢視断面図である。
【
図11】
図7に示した放射線遮蔽体の他の実施形態のA-A矢視断面図である。
【
図12】
図7に示した放射線遮蔽体の他の実施形態のA-A矢視断面図である。
【
図13】本発明の第4実施形態に係る放射線遮蔽体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明の第1~第4の実施形態に係る放射線遮蔽体について説明する。なお、各図において、同一符号は同一部分を示す。また、平面図と断面図の各々は、互いに直交するXYZ軸により方向を特定し、+Xを「右」、-Xを「左」、+Yを「上」、-Yを「下」、+Zを「前」、-Zを「後」と規定する。
【0011】
(第1実施形態)
原子力発電所内には放射線量の高い器具(以下、高放射線量器具)が存在する。例えば、高放射線量器具である主蒸気配管110は、
図1に示すように例えば遮蔽壁100で覆って遮蔽する必要がある。
図1の主蒸気配管110は蒸気を原子炉からタービンに流通させるため、原子炉建屋120内からタービン建屋130内に跨って敷設されている。そのため、遮蔽壁も原子炉建屋120とタービン建屋130に跨って設けられることが好ましい。しかし、地震等により各建屋120,130が揺れて生じる相対変位に対応するため、2つの建屋120,130の間には隙間140(
図2参照)が設けられる。そのため、実際の遮蔽壁100は2つの建屋に跨って設けることができず、隙間140(
図1参照)ができてしまう。本実施形態に係る放射線遮蔽体10はこの隙間140を覆うように敷設されるものである。
【0012】
図3は、本実施形態に係る放射線遮蔽体10の斜視図である。
図4は、本実施形態に係る放射線遮蔽体の遮蔽シート3の平面図である。
【0013】
放射線遮蔽体10は、2つの隣り合う構造物(構造物Aの遮蔽壁1と構造物Bの遮蔽壁2)の間に形成される隙間12を覆っている。放射線遮蔽体10は、例えば自重で変形可能な可撓性を有し隙間12の間にたわんだ状態で架け渡された放射線の遮蔽シート(放射線遮蔽シート)3と、当該遮蔽シート3を遮蔽壁1と遮蔽壁2のそれぞれに固定する固定具4とを備えている。
【0014】
遮蔽シート3は、上下方向(固定具4の軸方向)に沿って積層されており、複数の遮蔽シート3によって積層遮蔽シートが構成されている。各遮蔽シート3は隙間12においてたわみ下に凸の曲面を形成しており、隙間12に収納される部分の各遮蔽シート3の幅は隙間12の幅W12よりも大きくなっている。本実施形態では積層された複数の遮蔽シート3の下方に高放射線量器具(例えば主蒸気配管110)が位置している。
【0015】
遮蔽壁1と遮蔽壁2は、高放射線量器具から放出される放射線を遮蔽するために、隣接する2つの建屋の各々に設けられた壁で、例えば、主蒸気配管から放出される放射線を遮蔽するために、原子炉建屋とタービン建屋の各々に設けられた遮蔽壁である。
【0016】
前記のとおり、地震による遮蔽壁1,2の相対変位に対応するため、遮蔽壁1の側面1aと遮蔽壁2の側面2aの間には、隙間12が設けられている。
【0017】
また、遮蔽壁1の上面1cと側面1aとが交わる隅には、段差部1dが設けられている。段差部1dは、上面1cに略平行な段差底面1eと、側面1aに略平行な段差側面1fとを有している。また、段差底面1eと側面1aとが交わる隅部は面取りされ、斜面(面取り部)1gが形成されている。
【0018】
また、遮蔽壁2の上面2cと側面2aとが交わる隅には、段差部2dが設けられている。段差部2dは、隙間12に対して段差部1dと左右対称の形状を有する。段差部2dは、上面2cに略平行な段差底面2eと、側面2aに略平行な段差側面2fとを有している。また、段差底面2eと側面2aとが交わる隅部は面取りされ、斜面2g(面取り部)が形成されている。なお、斜面1gと斜面2gの面取りは斜面でなく曲面であってもよい。
【0019】
なお、
図3には、便宜上、遮蔽壁1の下面1bと遮蔽壁2の下面2bを図中に示しているが、これらの下面1b,2bは図示よりも下方に位置することがある。また、隙間12の長さL10(前後方向の長さ)は図示よりも長いことがある。
【0020】
遮蔽シート3は放射線の透過を抑制するシートで、例えば、タングステンとビヒマスと鉄とが含浸するポリマーによって形成された柔軟な矩形のゴムシートである。遮蔽シート3の幅W3(
図4参照)は、遮蔽壁1と遮蔽壁2の隙間12の幅W12より大きい。また、遮蔽シート3の長さL3(
図4参照)は、本実施形態では遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間12の長さL10(
図3参照)と略同一になっている。また、遮蔽シート3の厚さは次に示す理由により薄いことが好ましい。
【0021】
図5は、板状部材の斜視図と板状部材の厚みと曲げ剛性の関係を示す式である。図に示すように、板状部材の曲げ剛性kは断面二次モーメントIに比例する。また、断面二次モーメントIは板状部材の厚みbの3乗に比例する。このことから、板状部材は厚さbを薄くすることにより、曲げ剛性kを小さくすることができる。したがって、遮蔽シート3の厚さは薄いことが好ましい。
【0022】
図4に示すように、遮蔽シート3の四隅の各々には第1貫通孔3aが設けられている。四隅に設けられた4つの第1貫通孔3aのうちX軸方向(左右方向)に隣り合う2つの第1貫通孔3aの間隔DW3は、遮蔽壁1と遮蔽壁2の隙間の幅W12より大きくなっている。
【0023】
また、四隅に設けられた4つの第1貫通孔3aのうちZ軸方向(前後方向)に隣り合う2つの第1貫通孔3aの中間には第2貫通孔3bが設けられている。なお、前後方向に隣り合う第1貫通孔3aと第2貫通孔3bの間隔はDL3である。
【0024】
図3に示すように、固定具4は、遮蔽シート3を遮蔽壁1と遮蔽壁2に固定する器具である。本実施形態の固定具4は、6つのアンカーボルト4aと、2枚の押さえ板4bと、6つのナット4cと、1つのガイド板4dとを備えている。
【0025】
6つのアンカーボルト4aの各々は、一方の端部(基端部)が遮蔽壁1または遮蔽壁2に埋め込まれ、他方の端部(先端部)であるネジ部が遮蔽壁1または遮蔽壁2から突き出たボルトである。
【0026】
遮蔽壁1に埋め込まれた3つのアンカーボルト4aのうちの中央に位置する1つのアンカーボルト4aは、遮蔽壁1の段差部1dの段差底面1eの略中央に設けられている。また、残りの2つのアンカーボルト4aは、段差底面1eの中央のアンカーボルト4aから前後方向に間隔D4をあけた位置に設けられている。
【0027】
遮蔽壁2に埋め込まれた3つのアンカーボルト4aのうちの中央に位置する1つのアンカーボルト4aは、遮蔽壁2の段差部2dの段差底面2eの略中央に設けられている。また、残りの2つのアンカーボルト4aは、段差底面2eの中央のアンカーボルト4aから前後方向に間隔D4をあけた位置に設けられている。したがって、段差底面1eに設けられた3つのアンカーボルト4aと段差底面2eに設けられた3つのアンカーボルト4aとは、隙間12に対して左右対称になっている。また、6つのアンカーボルト4aのうち前後方向に隣り合う2つのアンカーボルト4aの間隔D4は、遮蔽シート3の第1貫通孔3aと第2貫通孔3bの間隔DL3と略同一となっている。
【0028】
遮蔽壁1の段差底面1eに設けられた3つのアンカーボルト4aにおいて段差底面1eから突き出た部分の高さH1は、上面1cと段差底面1eとの距離D1と略同一となっている。同様に、遮蔽壁2の段差底面2eから突き出た部分の高さH2は、上面2cと段差底面2eとの距離D2と略同一になっている。なお、高さH1は距離D1より大きくしても良いし小さくしても良い。同様に高さH2は距離D2より大きくしても良いし小さくしても良い。
【0029】
2枚の押さえ板4bは、隙間12の長さ方向に延びる板状の部材であり、金属や樹脂により作られている。2枚の押さえ板4bの長さは、6つのアンカーボルト4aのうち前後方向に最も離れたアンカーボルト4aの距離(D4×2)よりも大きくなっている。また、2枚の押さえ板4bの幅は、段差底面1eの左右方向の幅W1e及び段差底面2eの左右方向の幅W2eの幅より小さく、6つのナット4cの各々の対角距離よりも大きくなっている。
【0030】
2枚の押さえ板4bの各々の中央には、アンカーボルト4aを挿入するためのボルト穴が設けられている。また、2枚の押さえ板4bの各々の中央のボルト穴から長手方向の両側に間隔D4離れた位置にさらにボルト穴が設けられている。
【0031】
6つのナット4cは、6つのアンカーボルト4aの各々に螺合される六角ナットである。
図3の例では6つのナット4cの下方に積層された複数の遮蔽シート3が位置している。なお、6つのナット4cの各々がアンカーボルト4aに対して緩まないようにダブルナットを用いても良い。
【0032】
ガイド板4dは、隙間12の幅方向に延びる可撓性を有する部材であって、その長手方向(隙間12の幅方向)の中央部には下側に向かって湾曲する下に凸状の湾曲部4daが設けられている。
図3の湾曲部4daは、たわんだ遮蔽シート3の形状に沿うような曲面を有している。例えば、湾曲部4daは、ガイド板4dを2つのアンカーボルト4aに固定する際に長方形状のガイド板4dを下に凸状にたわませることで形成でき、アンカーボルト4aへの固定前の長方形状のガイド板4dの長手方向の長さはW3とすることができる。湾曲部4daを設けた後のガイド板4dの長手方向の幅は、段差側面1fと段差側面2fの間隔(W1e+W12+W2e)より小さくなっている。ガイド板4dの長手方向の両端には平板部4dbが設けられ、平板部4dbの各々には、アンカーボルト4aを挿入するためのボルト穴が設けられている。両端の平板部4dbのボルト穴のピッチP4は、6つのアンカーボルト4aの左右方向に隣り合う2つのアンカーボルト4aのピッチと略同一になっている。
【0033】
なお、湾曲部4daは長方形状のガイド板4dに曲げ加工を加えて形成しても良い。この場合のガイド板4dは可撓性の無い剛体でも良い。
【0034】
次に、放射線遮蔽体10を遮蔽壁1と遮蔽壁2の間に設ける手順について説明する。
【0035】
まず、遮蔽シート3の左側(-X側)に位置する3つ貫通孔3a,3b(
図4参照)の各々を、遮蔽壁1における段差底面1eから突出する3つのアンカーボルト4aの各々に挿入する。段差底面1eの前後方向において隣り合う2つのアンカーボルト4aの間隔D4は、遮蔽シート3の第1貫通孔3aと第2貫通孔3bの前後方向(Z軸方向)の間隔DL3と略同一となっている。そのため、遮蔽シート3の左側端部は弛むことなく段差底面1eに取り付けられる。
【0036】
次に、遮蔽シート3の右側(+X側)に位置する3つの貫通孔3a,3b(
図4参照)の各々を、遮蔽壁2における段差底面2eから突出する3つのアンカーボルト4aの各々に挿入する。段差底面2eの前後方向において隣り合う2つのアンカーボルト4aの間隔D4は、遮蔽シート3の第1貫通孔3aと第2貫通孔3bの前後方向の間隔DL3と略同一となっている。そのため、遮蔽シート3の右側端部は弛むことなく段差底面2eに取り付けられる。
【0037】
一方、遮蔽シート3の幅W3(
図4参照)は、遮蔽壁1と遮蔽壁2の隙間の幅W12(
図3参照)より大きい。そのため、遮蔽シート3は左右方向の中央が下方に弛んでいる。
【0038】
次に、2枚目の遮蔽シート3を、1枚目の遮蔽シート3と同じ手順で1枚目の遮蔽シート3の上に取り付ける。また、次に、3枚目の遮蔽シート3を、2枚目の遮蔽シート3と同じ手順で2枚目の遮蔽シート3の上に取り付ける。この手順を繰り返し、所望の枚数の遮蔽シート3を遮蔽壁1と遮蔽壁2の間に取り付ける。これにより、複数の遮蔽シート3が遮蔽壁1と遮蔽壁2の間に積み重ねられる。
【0039】
次に、積層した複数の遮蔽シート3の上にガイド板4dを設置する。ここで、湾曲部4daを設けた後のガイド板4dの左右方向の幅は、段差側面1fと段差側面2fの間隔(W1e+W12+W2e)より小さい。そのため、ガイド板4dは、段差側面1fと段差側面2fの間に嵌め込むことができる。
【0040】
また、ガイド板4dの2つのボルト穴のピッチP4は、6つのアンカーボルト4aのうち左右方向に隣り合う2つのアンカーボルト4aのピッチと略同一である。そのため、ガイド板4dの2つの平板部4dbに設けられたボルト穴の各々は、遮蔽シート3の前後方向の中央をガイド板4dが押さえられるように、段差底面1eと段差底面2eの各々から突出する3つのアンカーボルト4aのうちの真ん中のアンカーボルト4aに嵌め込まれる。
【0041】
ガイド板4dは、遮蔽シート3の左右方向の幅W3と略同一の長さの板に湾曲部4daを設けることにより、遮蔽シート3と同様に段差側面1fと段差側面2fの間に設置している。そのため、ガイド板4dの湾曲部4daと遮蔽シート3の弛みの形状は略同一である。したがって、積層された複数の遮蔽シート3上にガイド板4dを設置することにより、湾曲部4daが遮蔽シート3の表面に密接して遮蔽シート3が弛まないようにできる。
【0042】
次に、2つの押さえ板4bの各々を、遮蔽シート3の左右方向の両端と、ガイド板4dの両端の平板部4dbを押さえるように設置する。2つの押さえ板4bの各々に設けられた3つのボルト穴のうち隣り合う2つのボルト穴の間隔D4は、段差底面1e、2eから突出する3つのアンカーボルト4aのうちの前後方向で隣り合う2つのアンカーボルト4aの間隔と略同一である。そこで、2つの押さえ板4bの各々に設けられた3つのボルト穴の各々を、段差底面1e、2eから突出する3つのアンカーボルト4aに嵌め込む。
【0043】
次に、6つのナット4cの各々を6つのアンカーボルト4aの各々に締め付け、6つのナット4cによって2つの押さえ板4bを上から押さえ、遮蔽シート3を遮蔽壁1と遮蔽壁2の各々に固定する。
【0044】
[効果]
本実施形態の放射線遮蔽体10は、2つの隣り合う構造物(遮蔽壁1と遮蔽壁2)が形成する隙間にたわんだ状態(弛んだ状態)で架け渡された遮蔽シート3と、遮蔽シート3を遮蔽壁1と遮蔽壁2に固定する固定具4とを備える。そのため、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間の幅W12が地震等で変位しても、たわんだ遮蔽シート3がその変位を許容し、遮蔽シート3は遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間を遮蔽し続けることができる。また、本実施形態の放射線遮蔽体10は、遮蔽シート3を2つの構造物の間に架け渡して成る簡素な構造を有するので、特許文献1のようにコンクリート壁の形状を複雑にすることがなく、施工方法が容易である。また、同様の理由で既存の建屋にこの放射線遮蔽体10を追加することも容易である。
【0045】
また、本実施形態の放射線遮蔽体10の固定具4は、2つの隣り合う構造物に固定された複数のアンカーボルト4aと、当該複数のアンカーボルト4aに締結された複数のナット6とを備える。そのため、コストを抑制し、耐久性を向上させることができる。
【0046】
本実施形態のアンカーボルト4aは、遮蔽壁1と遮蔽壁2において隙間12を介して対向する2つの側面1a,2aの各々に設けられた段差部1d,2d(より具体的には段差底面1e,2e)に固定されている。そのため、遮蔽壁1と遮蔽壁2の上面1c,2cよりも下方に放射線遮蔽体10の上端を位置させることができ、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間に放射線遮蔽体10を設けることができる。このことにより、上面1cと上面2cを障害物のない略1つの平面とすることができる。
【0047】
本実施形態の放射線遮蔽体10は、遮蔽シート3を複数有し、複数の遮蔽シート3が積み重ねられている。そのため、高放射線量器具から放射される放射線量に応じて遮蔽シート3の枚数を変更できる。
【0048】
本実施形態の放射線遮蔽体10では、遮蔽シート3が遮蔽壁1と遮蔽壁2の上面側(高放射線量器具の位置する方向と反対側)から脱着自在である。そのため、放射線遮蔽体10のメンテナンス作業等を作業者の被曝量を抑制しながら行うことができる。
【0049】
本実施形態の放射線遮蔽体10は、遮蔽壁1と遮蔽壁2の遮蔽シート3に接する面(段差底面1e,2e)と、遮蔽壁1と遮蔽壁2の対向する面(側面1a,2a)とが交わる隅部に施された面取り部1g,2gを備えている。そのため、段差底面1e,2eと側面1a,2aとが交わる角により遮蔽シート3が傷つく可能性を低減できる。
【0050】
本実施形態の放射線遮蔽体10は、可撓性を備えた板状部材で、長手方向の中央に湾曲部4daが形成されるガイド板4dを備える。そのため、ガイド板4dを遮蔽シート3上に設置することにより、湾曲部4daを遮蔽シート3の表面に密接させ、遮蔽シート3を固定することができる。
【0051】
(第2実施形態)
図6は、第2本実施形態に係る放射線遮蔽体20の斜視図である。本実施形態に係る放射線遮蔽体20が第1実施形態に係る放射線遮蔽体10と異なる点は、遮蔽シート3と重なるように隙間12に架け渡された止水ジョイント21を備える点である。
【0052】
なお、
図6には
図3と同様に、便宜上、遮蔽壁1の下面1bと遮蔽壁2の下面2bを図中に示しているが、これらの下面1b,2bは図示よりも下方に位置することがある。また、隙間12の長さL20(前後方向の長さ)は図示よりも長いことがある。
【0053】
止水ジョイント21は、取り付けた構造物の変位を変形することにより吸収するとともに、圧縮されることで構造物とジョイント間の浸水を抑制できる可撓性の止水接続装置で、遮蔽壁1と遮蔽壁2とに密接させなければならない。そのため、止水ジョイント21は、遮蔽シート3を遮蔽壁1の段差底面1eと遮蔽壁2の段差底面2eとに取り付ける前に、段差底面1eと遮蔽壁2の段差底面2eとに取り付けられる。
【0054】
なお、止水ジョイント21はメンテナンスのため、遮蔽壁1と遮蔽壁2から取り外す場合がある。止水ジョイント21は、固定具4の複数のアンカーボルト4aに取り付けられ、複数のアンカーボルト4aに締結される複数のナット4cを締めつけることにより固定されている。したがって、本実施形態の放射線遮蔽体20は、止水ジョイント21を容易に取り外すことができる。
【0055】
[効果]
本実施形態の放射線遮蔽体20は、止水ジョイント21を備えるため、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間から雨水等が侵入することを抑制することができる。
【0056】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係る放射線遮蔽体30の斜視図である。本実施形態に係る放射線遮蔽体30が第1実施形態に係る放射線遮蔽体10と異なる点は、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間の長さL30と、固定具4の構成とである。
【0057】
なお、
図7には
図3と同様に、便宜上、遮蔽壁1の下面1bと遮蔽壁2の下面2bを図中に示しているが、これらの下面1b,2bは図示よりも下方に位置することがある。また、隙間12の長さL30(前後方向の長さ)は図示よりも長いことがある。
【0058】
本実施形態の遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間の長さL30は、遮蔽シート3の長さL3(
図4参照)よりも大きくなっている。そのため、第1実施形態に係る放射線遮蔽体10では、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間を遮蔽できない。
【0059】
そこで、本実施形態では、複数の遮蔽シート3を前後方向にずらして、隙間なく並べて、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間を遮蔽している。そのため、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間に並べた複数の遮蔽シート3の長さL3の和は、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間の長さL30より大きくなっている。
【0060】
また、本実施形態の固定具4が第1実施形態と異なる点は、アンカーボルト4aとナット4cとガイド板4dの各々の数と、2枚の押さえ板4bの形態である。
【0061】
本実施形態のアンカーボルト4aは10個で、遮蔽壁1の段差部1dの段差底面1eと、遮蔽壁2の段差部2dの段差底面2eの各々に5個ずつ設けられている。なお、段差底面1eと段差底面2eの各々に5個ずつ設けられたアンカーボルト4aのうち前後方向に隣り合う2つのアンカーボルト4aの間隔は、第1実施形態と同様にD4である。また、ナット4cは、アンカーボルト4aの数と同じ10個で、ガイド板4dは2つである。
【0062】
また、本実施形態の遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間の長さ及びアンカーボルト4aとナット4cの数が第1実施形態と異なるため、2枚の押さえ板4bの長さとボルト穴の数も第1実施形態と異なる。即ち、2枚の押さえ板4bの各々の長さは、段差底面1eと段差底面2eの各々に5個ずつ設けられたアンカーボルト4aのうち前後方向に最も離れたアンカーボルト4aの距離(D4×4)よりも大きくなっている。また、2枚の押さえ板4bの各々には5つのボルト穴が、長手方向に隣合あう2つのボルト穴の間隔がD4となるように設けられている。なお、2枚の押さえ板4bの各々を、1つ以上のボルト穴を備える板に分割し、複数枚として使用することもできる。
【0063】
次に、放射線遮蔽体30を遮蔽壁1と遮蔽壁2の間に設ける手順について説明する。
【0064】
まず、遮蔽シート3の左側(-X側)に位置する3つ貫通孔3a,3b(
図4参照)の各々を、段差底面1eから突出する5つのアンカーボルト4aのうち前側の3つに挿入する。段差底面1eの前後方向に隣り合うアンカーボルト4aの間隔D4は、遮蔽シート3の前後方向に隣り合う第1貫通孔3aと第2貫通孔3bの間隔DL3と略同一となっている。そのため、遮蔽シート3の左側端部は弛むことなく段差底面1eに取り付けられる。
【0065】
次に、遮蔽シート3の右側(+X側)に位置する3つの貫通孔3a,3b(
図4参照)の各々を、段差底面2eから突出する5つのアンカーボルト4aにおける前側の3つに挿入する。段差底面2eの前後方向に隣り合うアンカーボルト4aの間隔D4は、遮蔽シート3の前後方向に隣り合う第1貫通孔3aと第2貫通孔3bの間隔DL3と略同一となっている。そのため、1枚目の遮蔽シート3の右側端部は弛むことなく段差底面2eに取り付けられる。
【0066】
次に、2枚目の遮蔽シート3の左側に位置する3つ貫通孔3a,3bの各々を、段差底面1eから突出する5つのアンカーボルト4aにおける後側の3つに挿入する。このとき、段差底面1eの中央のアンカーボルト4aには、1枚目の遮蔽シート3が既に挿入されている。そのため、段差底面1eの中央のアンカーボルト4aには、2枚の遮蔽シート3が挿入される。
【0067】
段差底面1eの前後方向に隣り合うアンカーボルト4aの間隔D4は、遮蔽シート3の前後方向に隣り合う第1貫通孔3aと第2貫通孔3bの間隔DL3と略同一となっている。そのため、2枚目の遮蔽シート3の左側端部は弛むことなく段差底面1eに取り付けられる。
【0068】
次に、左側端部を段差底面1eに取り付けた2枚目の遮蔽シート3の右側に位置する3つの貫通孔3a,3bの各々を、段差底面2eから突出する5つのアンカーボルト4aにおける後側の3つに挿入する。このとき、段差底面2eの中央のアンカーボルト4aには、1枚目の遮蔽シート3が既に挿入されている。そのため、段差底面2eの中央のアンカーボルト4aには、2枚の遮蔽シート3が挿入される。
【0069】
段差底面2eの前後方向に隣り合うアンカーボルト4aの間隔D4は、遮蔽シート3の前後方向に隣り合う第1貫通孔3aと第2貫通孔3bの間隔DL3と略同一となっている。そのため、2枚目の遮蔽シート3の右側端部は弛むことなく段差底面2eに取り付けられる。
【0070】
このようにして、段差底面1eと段差底面2eに取り付けられた2枚の遮蔽シート3は、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の前後方向の中央で重なる。したがって、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間を遮蔽できる。
【0071】
次に、3枚目の遮蔽シート3を、1枚目の遮蔽シート3と同じ手順で取り付け、4枚目の遮蔽シート3を、2枚目の遮蔽シート3と同じ手順で取り付ける。この手順を繰り返し、所望の枚数の遮蔽シート3を遮蔽壁1と遮蔽壁2の間に取り付ける。これにより、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間は、
図8に示すように積み重ねられた複数の遮蔽シート3により遮蔽される。
【0072】
次に、積層した複数の遮蔽シート3の上に2枚のガイド板4dを設置する。先ず、前側に積み重ねられた複数の遮蔽シート3の前後方向の中央を押さえるように、1枚目のガイド板4dの2つの平板部4dbに設けられたボルト穴の各々を、段差底面1eと段差底面2eの各々から突出する5つのアンカーボルト4aのうちの前から2番目のアンカーボルト4aに嵌め込む。
【0073】
次に、後側に積み重ねられた複数の遮蔽シート3の前後方向の中央を押さえるように、2枚目のガイド板4dの2つの平板部4dbに設けられたボルト穴の各々を、段差底面1eと段差底面2eの各々から突出する5つのアンカーボルト4aのうちの後ろから2番目のアンカーボルト4aに嵌め込む。
【0074】
なお、ガイド板4dを他の箇所に取り付けてもよい。例えば、1枚目の遮蔽シート3と2枚目の遮蔽シート3が重なり合う部分を押さえるように、ガイド板4dの2つの平板部4dbに設けられたボルト穴の各々を、段差底面1eと段差底面2eの各々から突出する5つのアンカーボルト4aのうちの前後方向の中央のアンカーボルト4aに嵌め込んでもよい。また、ガイド板4dの枚数も2枚でなく他の枚数、例えば、1枚や3枚であってもよい。
【0075】
次に、2つの押さえ板4bの各々を、遮蔽シート3の左右方向の両端部と、2枚のガイド板4dの両端の平板部4dbを押さえるように設置する。2つの押さえ板4bの各々に設けられた5つのボルト穴の隣り合う2つのボルト穴の間隔D4は、段差底面1e、2eから突出する5つのアンカーボルト4aのうちの前後方向に隣り合う2つのアンカーボルト4aの間隔と略同一である。そこで、2つの押さえ板4bの各々に設けられた5つのボルト穴の各々を、段差底面1e、2eから突出する5つのアンカーボルト4aに嵌め込む。
【0076】
次に、10個のナット4cの各々を10個のアンカーボルト4aの各々に締め付け、2つの押さえ板4bを上から押さえ、遮蔽シート3を遮蔽壁1と遮蔽壁2の各々に固定する。
【0077】
[効果]
本実施形態の放射線遮蔽体30は、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間に並べた複数の遮蔽シート3の長さL3の和は、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間の長さL30より大きい。そのため、複数の遮蔽シート3を前後方向にずらして隙間なく並べ、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間を遮蔽できる。
【0078】
なお、本実施形態では、
図7,8に示すように、段差底面1eと段差底面2eに取り付けられた2枚の遮蔽シート3が、段差底面1eと段差底面2eの中央のアンカーボルト4aに取り付けられる2つ第1貫通孔3aがある帯域で重なる形態を示した。しかし、これに限定されない。例えば、
図9に示すように、2枚の遮蔽シート3が長く、段差底面1eと段差底面2eの各々から突出する5つのアンカーボルト4aのうち、前から2番目の2つのアンカーボルト4aと、中央の2つのアンカーボルト4aと、後ろから2番目のアンカーボルト4aの各々に取り付けられる貫通孔3a,3bがある帯域で重なるようにしても良い。
【0079】
また、
図10に示すように、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間の長さがさらに長い場合に対応するため、段差底面1eと段差底面2eの間に3枚の遮蔽シート3を並べて、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間を遮蔽しても良く、4枚以上の遮蔽シート3を並べて、遮蔽壁1と遮蔽壁2の間の隙間を遮蔽しても良い。
【0080】
また、アンカーボルト4aと第2貫通孔3bの数を前後方向に増やし、各々の間隔を狭くすることにより、
図11に示すように、前後方向に隣り合う2枚の遮蔽シート3の隙間を小さくし、遮蔽性が向上するように遮蔽シート3を並べてもよい。
【0081】
また、前記のようにアンカーボルト4aと第2貫通孔3bの数を増やし各々の間隔を狭くしたうえで、長さの異なる遮蔽シート3を用いて、
図12に示すように、同一層の前後方向に隣り合う2枚の遮蔽シート3の間の帯状の隙間(空隙3c)の位置が上下方向に重ならないようにし、遮蔽性がさらに向上するように遮蔽シート3を並べてもよい。
【0082】
即ち、本実施形態に係る放射線遮蔽体30は、複数の遮蔽シート3が、同一層の隣り合う2枚の遮蔽シート3の間に空隙3cを備え、空隙3cの配置が隣り合う層で異なる。そのため、本実施形態に係る放射線遮蔽体30は、遮蔽性を向上させることができる。
【0083】
(第4実施形態)
図13は、第4本実施形態に係る放射線遮蔽体40の斜視図である。本実施形態に係る放射線遮蔽体40が第1実施形態に係る放射線遮蔽体10と異なる点は、遮蔽壁1,2に段差部1d,2dがなく、遮蔽壁1,2の上面1c,2cに放射線遮蔽体40が設けられていない点である。
【0084】
なお、
図13には
図3と同様に、便宜上、遮蔽壁1の下面1bと遮蔽壁2の下面2bを図中に示しているが、これらの下面1b,2bは図示よりも下方に位置することがある。また、隙間12の長さL40(前後方向の長さ)は図示よりも長いことがある。
【0085】
[効果]
本実施形態の放射線遮蔽体40は、遮蔽壁1,2に段差部1d,2dを設けないため、既存の構造物に容易に追加することができる。
【0086】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0087】
なお、本発明の実施形態は、以下の態様であってもよい。即ち、各実施形態に係る放射線遮蔽体は、2つの構造物が形成する隙間を上から覆う態様(すなわち構造物の上面を覆う態様)としたが、当該隙間を横から覆う態様(すなわち構造物の側面を覆う態様)や当該隙間を下から覆う態様(すなわち構造物の下面を覆う態様)を採用しても良い。
【0088】
また、放射線遮蔽体10を取り付ける構造物はコンクリートや鉄筋コンクリート等の放射線遮蔽機能を有する剛体とすることが好ましい。
【0089】
また、遮蔽シート3の第2貫通孔3bの数と前後方向の位置は上記の形態だけでなく他の形態にしても良い。同様に、アンカーボルト4aの数と前後方向の位置は上記の形態だけでなく他の形態にしても良い。この場合、遮蔽シート3の第2貫通孔3bの数と、前後方向の位置とアンカーボルト4aの数と前後方向の位置は相関し、各々に値に基づいて決める必要がある。また、遮蔽シート3を取り付ける手順は上記に限定されることはない。
【符号の説明】
【0090】
1,2…遮蔽壁、1a,2a…側面、1c,2c…上面、1d,2d…段差、1e,2e…段差底面、1f,2f…段差側面、1g,2g…斜面、3…遮蔽シート、3a…第1貫通孔、3b…第2貫通孔、3c…空隙、4…固定具、4a…アンカーボルト、4b…押さえ板、4c…ナット、4d…ガイド板、4da…湾曲部、4db…平板部、10,20,30,40…放射線遮蔽体、12…隙間、21…止水ジョイント