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特許7443313高能力での高品質球状粉末の生産のためのプラズマ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】高能力での高品質球状粉末の生産のためのプラズマ装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/14 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
B22F9/14 Z
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021166068
(22)【出願日】2021-10-08
(62)【分割の表示】P 2018515336の分割
【原出願日】2016-06-06
(65)【公開番号】P2022008977
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】62/171,618
(32)【優先日】2015-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513235739
【氏名又は名称】パイロジェネシス・カナダ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ドルヴァル ディオン、クリストファー アレックス
(72)【発明者】
【氏名】クレクルウェッツ、ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】キャラバン、ピエール
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/054113(WO,A1)
【文献】特開2001-181846(JP,A)
【文献】特許第5693249(JP,B2)
【文献】INJECTION MOULDING OF TITANIUM POWDERS FOR BIOMEDI,HORIZONTAL RESEARCH ACTIVITIES INVOLVING SMEs FP6-,2011年04月11日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00- 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ微粒化によってワイヤから粉末を生産するための装置であって、
-前記ワイヤを予熱するためのデバイスと、
-前記ワイヤを加熱して微粒化するための少なくとも1つのプラズマトーチであって、反応器において旋回および回転するように適合される、プラズマトーチと、
-微粒化された粒子を固体状態に冷却するためのチャンバと、を備える、装置。
【請求項2】
前記ワイヤを予熱するための前記デバイスは、誘導コイルを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
伝導、放射、および対流によって、熱を前記ワイヤに伝達するために、誘導コイルと結合するためのワイヤガイドが提供される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記誘導コイルからの熱が前記ワイヤに直接的に伝達されることを可能とするように構成されたワイヤガイドが提供される、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記ワイヤに対する前記トーチの角度および距離のうちの少なくとも1つを調整するためのシステムが提供される、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
より大きいロッドおよびワイヤ径を収容するように適合されている供給デバイスが提供される、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記供給デバイスは、前記より大きいロッドおよびワイヤ径を供給および矯正するように適合される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ワイヤ径は、包括的に、1/8インチ~6インチである、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記ワイヤが導電性である場合、前記ワイヤも、前記ワイヤガイドにより加熱されるのと同時に直接結合することによって加熱される、請求項3に記載の装置。
【請求項10】
プラズマ微粒化によってワイヤから粉末を生産するための装置であって、
-前記ワイヤを微粒化するためのプラズマトーチであって、反応器において旋回および回転するように適合される、プラズマトーチと、
-微粒化された粒子を固体状態に冷却するためのチャンバと、を備える、装置。
【請求項11】
プラズマ微粒化によってワイヤから金属粉末を生産するための装置であって、
-前記ワイヤを微粒化するためのプラズマトーチであって、前記ワイヤとの前記プラズマトーチの角度は、粉末の粒径分布を調整するために調整されるように適合される、プラズマトーチと、
-微粒化された粒子を固体状態に冷却するためのチャンバと、を備える、装置。
【請求項12】
プラズマ微粒化によってワイヤから金属粉末を生産するための方法であって、
-ワイヤまたはロッドを供給することと、
-前記ワイヤを予熱することと、
-前記ワイヤを加熱して微粒化することと、
-微粒化された粒子を固体状態に冷却することと、を含む、方法。
【請求項13】
前記ワイヤは、直接的または間接的に誘導熱によって予熱される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
放射によって、熱を前記ワイヤに伝達するために、誘導と反応させるためのワイヤガイドが提供される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
対流によって、熱を前記ワイヤに伝達するために、誘導と反応させるためのワイヤガイドが提供される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
誘導に透過的であるワイヤガイドが提供され、それによって、前記誘導熱を供給する誘導コイルからの熱が、前記ワイヤに直接的に伝達される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ロッドは、1/8インチ以上の直径を有する、請求項12~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
プラズマ微粒化によってワイヤから金属粉末を生産するための方法であって、
-プラズマトーチを提供することであって、前記プラズマトーチは、反応器において旋回および回転するように適合される、提供することと、
-前記反応器における前記プラズマトーチの位置を調整することと、
-前記ワイヤを微粒化するために前記プラズマトーチを使用することと、
-微粒化された粒子を固体状態に冷却することと、を含む、方法。
【請求項19】
プラズマ微粒化によってワイヤから金属粉末を生産するための方法であって、
-前記ワイヤを微粒化するためにプラズマトーチを提供することと、
-粉末の粒径分布を調整するために、前記ワイヤに対する前記プラズマトーチの角度を調整することと、
-前記ワイヤを微粒化するために前記プラズマトーチを使用することと、
-微粒化された粒子を固体状態に冷却することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2015年6月5日に出願し、現在係属中である米国仮出願第62/171,618号に基づく優先権を主張し、該仮出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の主題は、主に付加製造(3D印刷)および熱間等方圧加圧(HIP)に使用するための高純度球状粉末の生産に関する。
【背景技術】
【0003】
微細な高品質球状金属粉末の需要が増大している。例えば、このような粉末の主な用途の1つとして3D印刷産業が挙げられ、概して45~45ミクロンまたは45~106umの高品質で球状のサテライトを含まないTi-6Al-4V(チタン合金)の細かいサイズの切断が必要とされている。106~250umの切断サイズの切断は、熱間等方圧加圧(HIP)に使用されている。
【0004】
本用途は、現在市販されている最高品質の粉末を消費するため、品質の水準を引き上げている。粉末の品質、つまり粉末の球形度、粉末の粒径分布、サテライト(主粒子に付着する著しく小さい粒子)の不在を評価するために多くの基準が使用されている。現在の問題の1つとして、このような上質粉末の生産能力が非常に限られていることが挙げられる。別の問題は、一般的な微粒化システムが広範囲の粒径を生産する一方で、この業界は非常に細かくかつ特定の切断を求めていることである。
【0005】
微粒子化によって粉末を生産するために、多くの方法がここ数年にわたって開発されている。
【0006】
例えば、米国特許第5,707,419号では、プラズマトーチを使用してチタンワイヤを溶解および微粒化する方法が開示されている。この開示では、例えばチタンの供給速度は、3.2mm(1/8インチ)に限定されたワイヤ径を使用して0.75kg/hに限定され、プラズマトーチは、供給軸に対して30°の角度の位置に固定される。この30°の角度は、一定の状況下において最適角度であるように決定されている。ここで、トーチは、ワイヤとの整合を確実にするように、この特定の角度でロックされる。この方法は、稼働間の再現性に関する利点を有し、また、ワイヤへの狙いを外す可能性を最小限に抑えるが、出願人の経験により、この構成が最適ではないことが実証されている。
【0007】
PCT特許公開第WO2011/054113号では、予熱のために電極を使用するプラズマ微粒化の生産性を改善する方法が提案されている。予熱のために電極を使用することは、非常に複雑なプロセスである。この配置では、典型的には、均一の加熱を確実にするために、(3)電極ならびに3つの(3)プラズマトーチが存在する。ワイヤは、各電極からワイヤにアークを発することによって加熱される。ゆえに、3つの電流がワイヤを通過し、抵抗加熱によってワイヤを加熱する。これは、6つの電力供給が動作に必要になることを意味するが、存在する電源がより多くなると、ワイヤに向かう熱の管理がより困難となり、これに加えて、資本および運営費用も著しく増加することに留意されたい。
【0008】
また、この配置ではいくらか機械的に不便である。例えば、プラズマ微粒化を実行するためには、ワイヤに従うトーチ整合が非常に重要になる。全ての電極およびトーチ、ならびにワイヤは、同一の正確な地点に集合しなければならない。頂点集合点の周りの空間が非常に限られているため、アセンブリの設計は、プロセス自体によってではなく、機械的拘束によって左右される。
【0009】
ゆえに、プラズマ微粒化の生産性の向上を可能にする簡略化デバイスを有することが望ましいであろう。また、粒径分布の制御を可能にするシステムを有することも利益になるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、上質粉末を生産するための新規の装置を提供することが極めて望ましいであろう。
【0011】
また、上質粉末を生産するための新規の方法を提供することも極めて望ましいであろう。
【0012】
本明細書に記載の実施形態は、一態様において、プラズマ微粒化によってワイヤから粉末を生産するための装置を提供し、本装置は、
-ワイヤを予熱するためのデバイスと、
-ワイヤを加熱して微粒化するための少なくとも1つのプラズマトーチと、
-微粒化された粒子を固体状態に冷却するためのチャンバと、
を備える。
【0013】
また、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、プラズマ微粒化によってワイヤから粉末を生産するための装置を提供し、本装置は、
-ワイヤを微粒化するためのプラズマトーチであって、反応器において旋回および回転するように適合されるプラズマトーチと、
-微粒化された粒子を固体状態に冷却するためのチャンバと、
を備える。
【0014】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、プラズマ微粒化によってワイヤから粉末を生産するための装置を提供し、本装置は、
-ワイヤを微粒化するためのプラズマトーチであって、ワイヤとのプラズマトーチの角度は、粉末の粒径分布を調整するために調整されるように適合される、プラズマトーチと、
-微粒化された粒子を固体状態に冷却するためのチャンバと、
を備える。
【0015】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、プラズマ微粒化によってワイヤから粉末を生産するための方法を提供し、本方法は、
-ワイヤを予熱することと、
-ワイヤを加熱して微粒化することと、
-微粒化された粒子を固体状態に冷却することと、
を含む。
【0016】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、プラズマ微粒化によってワイヤから粉末を生産するための方法を提供し、本方法は、
-プラズマトーチを提供することであって、プラズマトーチは、反応器において旋回および回転するように適合される、提供することと、
-反応器におけるプラズマトーチの位置を調整することと、
-ワイヤを微粒化するためにプラズマトーチを使用することと、
-微粒化された粒子を固体状態に冷却することと、
を含む。
【0017】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、プラズマ微粒化によってワイヤから粉末を生産するための方法を提供し、本方法は、
-ワイヤを微粒化するためにプラズマトーチを提供することと、
-粉末の粒径分布を調整するために、ワイヤに対するプラズマトーチの角度を調整することと、
-ワイヤを微粒化するためにプラズマトーチを使用することと、
-微粒化された粒子を固体状態に冷却することと、
を含む。
【0018】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、上記方法のいずれかによって生産される粉末を提供する。
【0019】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、別の態様において、上記装置のいずれかによって生産される粉末を提供する。
【0020】
本明細書に記載の実施形態についてさらに理解するために、また、それらの実施形態がいかに実施され得るかについてより明確に示すために、ほんの一例として添付の図面を参照されたく、図面は、少なくとも1つの例示的な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】例示的な実施形態に従うプラズマ装置の一般略図である。
図2】例示的な実施形態に従う誘導コイルおよびワイヤガイドの拡大詳細断面図である。
図3】例示的な実施形態に従うボールフランジを使用するトーチ角度調整機構の拡大詳細断面図である。
図4】ワイヤにおける温度プロファイルへの誘導周波数の影響に関する略図である。
図5a】従来のトーチと例示的な実施形態に従うトーチとの間の、トーチ角度およびワイヤに対する先端の近さに関する比較を示し、図5aでは、従来のトーチは、30°の固定角度を提供し、この角度によってより長い距離がもたらされ、一方、図5bでは、現トーチは、より急な角度を示し、この角度によってさらにノズルに近くなり、それによって、プラズマとワイヤとの間の熱伝達および運動量伝達が最大化される。
図5b】従来のトーチと例示的な実施形態に従うトーチとの間の、トーチ角度およびワイヤに対する先端の近さに関する比較を示し、図5aでは、従来のトーチは、30°の固定角度を提供し、この角度によってより長い距離がもたらされ、一方、図5bでは、現トーチは、より急な角度を示し、この角度によってさらにノズルに近くなり、それによって、プラズマとワイヤとの間の熱伝達および運動量伝達が最大化される。
【0022】
高品質粉末を生産し、粒径を制御し、かつプラズマ微粒化反応器において生産率を最大化するために、トーチ角度を調整することができ、かつワイヤを予熱する装置Pおよび方法が、本明細書に提示される。ワイヤに対するノズルの先端の角度および近接を変動させることによって、能力ならびに粒径分布に著しい影響を及ぼし得ることがここで実証される。
【0023】
図1に示すように、金属ワイヤスプール1に提供されたワイヤ2は、金属ワイヤスプール1から伸ばされ、次に、ワイヤ供給器および矯正器3を通して供給される。真っ直ぐなワイヤ2は、通過フランジ4を通して供給される。次に、ワイヤ2は、3つのプラズマトーチ7によってその頂点8(頂点は、ワイヤ2および3つのトーチ7の合流点である)で微粒化される前に、誘導コイル6によって囲まれるワイヤガイド5に入る。このように生産された粉末は、開口プレート9を通過し、反応器10に落下するときに冷める。
【0024】
予熱されると、次に、ワイヤ2は、頂点8に到達し、頂点8は、ワイヤ2および3つのプラズマトーチ7が微粒化のために合流する領域である。溶解している微粒化粒子は、反応器10のチャンバに落下するときに再び固体状態に凝固する。次に、粉末11は、空気圧でサイクロン12に運ばれる。サイクロン12は、粉末をその気相から分離する。粉末は、キャニスタ14の底部で収集されるが、清浄気体は、次に、排気口15を介して、より微細なろ過システム(図示せず)に送られる。キャニスタ14は、気密隔離弁13によってサイクロン12から隔離することができる。
【0025】
ここで誘導コイル6に注意を向けると、当装置Pは、誘導コイルを使用してワイヤ2を予熱し、誘導コイルは単一の電源を使用し、熱源は頂点領域を妨げない。この構成では、ワイヤの予熱は、単一の均一かつ小型の発生源から生じる。誘導電力を調整することによってワイヤ温度を制御することができ、誘導電力は、誘導コイル6における電流の関数である。
【0026】
誘導予熱デバイスを図2に示す。通過フランジ4は、反応器全体がコイルから確実に絶縁されるように、非導電性材料から作製される。通過フランジ4は、誘導コイル6の導線22を反応器10に通すために使用する圧縮具21を備える2つの気密穴を有する。
【0027】
ワイヤガイド5は、誘導と反応するか、または誘導に透過的であるように設計され得る。例えば、ワイヤガイド5は、アルミナまたは窒化ケイ素から作製されてもよく、これらは誘導に透過的である。また、ワイヤガイド5は、炭化ケイ素または黒鉛から作製されてもよく、これらは、誘導と反応する。後者の場合、誘導により加熱された高温ワイヤガイドは、熱をワイヤ2に再び放射する。
【0028】
例えば、使用するワイヤが1/4インチ直径のTi-6Al-4V Grade 23 ELIであったとき、このワイヤの最適な誘導周波数は、170~290kHzであることが分かっている。最適周波数は、ワイヤガイドに使用する材料、ならびに材料の形状および寸法および性質に応じて変動する。
【0029】
図3は、旋回ボールフランジ30を含む調整可能なトーチ角度機構を示す。3つのプラズマトーチ7を使用してワイヤ2を微粒化する。これらの3つのトーチ7は、ここで、旋回ボールフランジを使用して反応器ヘッドの本体に取り付けられる。ボールフランジ30は各々、相互に適合する2つのフランジ、つまり、底部フランジ31および上部フランジ32を含み、相互に合わせて旋回することができる。反応器ヘッドに連結される底部フランジ31は、固定されるが、上部フランジ32は、全ての軸において4°の角度まで回転することができる。反応器ヘッドが30°の公称角度を有するように設計されていると仮定すると、これは、トーチ7が26°~34°のいずれの角度にもおよび得ることを意味する。
【0030】
ワイヤ2に対するトーチ角度を変動することによって、頂点8(ワイヤ2および3つのトーチ7の合流点)の位置も移動するため、これは、トーチ7の長さが一定であることから、効率に影響を及ぼす。このような問題を回避するために、スペーサに結合されたより長いトーチを使用することができる。本出願人は、ノズルの先端がワイヤに近いほど、能力が高くなり、平均粒径が小さくなることを発見した。より長いトーチおよび複数のサイズのスペーサを有することによって、いかなる角度も実現しながらも、頂点8の位置を同一場所に維持することが可能である。
【0031】
トーチ7を枢動させることは、プラズマ微粒化プロセスに重要な影響を及ぼすと思われる。従来のシステムでは、最適角度が30°に固定されることになると記述されていた。この記述を疑問視してきたが、トーチを旋回することができることは、明確な代替案ではなかった。ゆえに、固定角度を選択することは、旧システムの場合に正当化されていた。現配置は、ボールフランジ30の旋回を設計に加えることによってシステムに柔軟性を与えることを提案する。
【0032】
ワイヤ2とプラズマジェットとの間の迎え角を変動することによって、いくつかの点で微粒化に影響を及ぼすことができる。従来型の気体微粒化に関するプラズマ微粒化との主な違いとして、熱がジェットから供給されることが挙げられる。ゆえに、主に考慮することが2つあり、つまり、トーチ7からワイヤ2への熱伝達、および単独での微粒化である。
【0033】
プラズマ微粒化の重要な態様は、トーチ7とワイヤ2との間の熱伝達の質である。実際に、適切な整合が必要とされる。迎え角も、2つの異なる方式で熱伝達に影響を及ぼし、急角度(小角度)になるほど、熱を交換する表面積(A)が増える。一方、浅い角度(高角度)になるほど、高い交換係数(h)を促進する。また、ノズルを近づけることによって、ワイヤならびにその速度に見られるように、プラズマプルームの温度が高くなり、これによって、より高い温度差(ΔT)およびより高い交換係数(h)がそれぞれもたらされる。
【数1】

式中、Qは、伝達された熱であり、
hは、熱伝達係数であり、
Aは、交換に使用された表面積であり、
ΔTは、ワイヤとトーチとの間の温度差である。
【0034】
上記方程式は、古典的な熱伝達式である。その目的は、Qの値を最大化することにある。角度は、hとAの両方に影響を及ぼす。熱伝達の観点から、最適角度は、特定のワイヤ供給速度、サイズ、および材料についてQを最大化する角度である。
【0035】
微粒化を発生させるために、いくつかの微液滴が、ワイヤ2の表面で形成しなければならない(加熱相)。次に、気体流を使用して、その液滴をワイヤ2から分離し、その液滴を浮遊状態で気相にする(微粒化相)。ワイヤと液滴との間の結合を壊すために高速度が必要とされることが知られている。以下の方程式は、アルミニウムの水微粒化の文献[5]から抜粋され、平均粒径を、溶解流とアルゴンジェットとの間の角度に関連付ける。
【数2】

式中、Vは、プラズマジェット速度であり、
Cは、異なるパラメータおよび条件を再編成する大域定数であり、
【数3】

は、溶解流とプラズマジェットとの間の角度である。
【0036】
その応用はわずかに異なるが、概念は類似しており、式におけるプラズマジェットは、水ジェットを置き換え、ジェットは、式において冷却の代わりに加熱のために使用される。実際、この式は、気体速度が速くなると、より微細な粒子を分離することができ、これは、溶解ワイヤからより微細な液滴を分離するのにより力が必要であることから、道理にかなう。この方程式によると、角度は、この式に従って同様の影響を及ぼし、これは、機械的エネルギー伝達が熱伝達と似ていることと、角度が、前述の熱伝達係数(h)に及ぼす影響と同じくらいの影響を機械的エネルギー伝達係数に及ぼし得ることとを考慮すると、道理にかなう。
【0037】
プラズマ微粒化プロセスを最適化するために、角度が異なる条件に適合するために変数でなければならないことがより明らかになる。2つの旧方程式は、パラメータがいかに結びつくかと、角度が変動可能であることが、現装置の大きな特徴となることとを示している。
【0038】
したがって、装置Pは、とりわけ、(1)能力を向上させるためのワイヤの誘導予熱、および(2)粒径分布(粉末品質)の制御を可能にするために、トーチ整合により到達可能な角度に関する柔軟性を可能にする旋回ボールフランジ30を使用して反応器ヘッドに設置されるトーチを含む。
【0039】
従来のシステムが、約80umの平均粒径と共に約0.75kg/hの生産率を可能にしたことに留意されたい。実際、最適なシナリオは、著しく能力を向上させる一方で、同時に平均粒径分布を低下させることであろう。しかしながら、既知の技術を使用して、能力を向上させることによって、残念ながら、粒径分布が粗くなることが一般的に受け入れられた。
【0040】
旧方法とは対照的に、現方法は、プロセスの伝達された機械的エネルギーおよび熱エネルギーを増加させることによって、両方のパラメータを同時に最適化することを可能にする。
【0041】
プラズマ微粒化は、超音速プラズマジェットを使用し、超音速プラズマジェットは、ワイヤ源から生じる金属を単一ステッププロセスで溶解および微粒化するために、約10 000Kのコア温度を有する。非常に強力であるが、そのプロセスは、エネルギー的に非効率的であり、プラズマからの熱のほんの一部だけが、ワイヤに伝達されて、ワイヤを溶解し(従来のシステムについて約0.4%)、ノズルから生じるごく少量の運動エネルギーを使用して、液滴をより微細なものに粉砕する(従来のシステムについて0.001%未満)。
【0042】
一般的に、伝達された熱を増加させることによって、より高い能力がもたらされ得、(気泡分裂するためのプルームの運動エネルギーから)伝達される機械的エネルギーを増加させることによって、より微細な粒子がもたらされる。例えば、平均粒径分布を80umから45umに移すことは、運動エネルギー(運動量)において約78%の増加を必要とし得る。これらは、中に入れる原料エネルギーを増加させるか、伝達の質を改善するか、またはそれらの組み合わせのいずれかによって達成されることができる。一方、原料エネルギーを増加させることによって、技術の運営費が増加するため、エネルギー伝達を改善するケースは稀である。
【0043】
以下は、2つの技術の比較を示す。
【表1】
【0044】
表1のデータが達成できるものの一例であることに留意することが重要であるが、実際の改善は、これらの値に限定されない。例えば、いくつらの調整により、能力は、約10kg/hまで増加し、平均粒径はさらにより小さくなり得る。
【0045】
以下の提案される改善の全ては、相互に作用して、能力および粒径分布の両方を同時に改善するが、単独で使用されてもよい。
ワイヤ径サイズの増加-旧方法では、ワイヤサイズは、1/8インチに限られていた。現方法は、ワイヤが大きくなると能力が高まり得ることを提案し、その2つの理由として、a)プラズマにおけるワイヤの滞留時間の増加、およびb)交換表面積の増加も挙げられる。両方の理由によって、プラズマプルームとワイヤとの間の熱交換の増加がもたらされる。
【0046】
誘導ワイヤ予熱-旧システムでは、ワイヤは、プラズマ微粒化領域に供給される前に予熱されなかったか、または複雑な抵抗加熱装置を使用して予熱されていた。より効率的な加熱技術を使用して困難な仕事をすることができるため、ワイヤ予熱は、システムの全体の熱収支を改善する。誘導加熱は、他の加熱技術よりも多くの利点を有し、その主な理由として、効率良く(約10~40%)物体を遠隔加熱できることが挙げられる。ワイヤ予熱によって、ワイヤを溶解温度まで(または局所的にはさらに上回って)上昇させることができ、液体供給物を使用して動作させることができる。部分的に液化したワイヤを過熱することは、溶解金属のその粘度および表面張力を著しく低下させることができるため、粒径分布にプラスの影響を及ぼす。ゆえに、プラズマから生じる大部分の加熱を使用して、主に潜熱を無駄にせずに、溶解および微粒化または単純に微粒化することができる。ワイヤ予熱は、生産能力および粒径分布に大きな影響を及ぼすことができる。
【0047】
誘導予熱を金属材料および非金属材料の両方に使用することができるが、異なる手法を使用することに留意することが重要である。金属および合金等の導電性材料は、誘導に透過的または非透過的である材料から作製されたワイヤガイドと共に使用することができる。一方、セラミック等の非導電性材料から作製されたワイヤ原料は、誘導と結合せず、ゆえに、使用する周波数範囲内の誘導加熱に導電性かつ高感度であるインサートを使用して予熱しなければならない。後者の場合、ワイヤは、伝導、放射、および対流の組み合わせを介して、ワイヤインサートのみから間接的に予熱される。
【0048】
供給材料がワイヤと結合することができる場合、誘導周波数を使用して、ワイヤにおける温度プロファイルを微調整することができる。そうすることで、頂点位置におけるワイヤの形状に大きな影響を及ぼし、間接的に粒径分布に影響を及ぼす(図5)。より低い周波数によって、より均一の温度がもたらされ、一方、高周波数によって、ワイヤにおいて温度勾配がもたらされる。誘導周波数は、コイル長さを変更することによって容易に変動し、コイルが長いと、周波数は低くなる。
【0049】
ボールフランジの回転-旧システムでは、理想角度が30°であるという不正確なパラダイムがあったため、トーチを把持するフランジがその値に固定されていた。一方、出願人は、本明細書においてそれとは違うことを判断した。ボールフランジの回転の概念は、熱伝達および運動量伝達の質に関してかなりの柔軟性を提供する。距離も、角度と共に変動する(図5a対図5b)。実際、先端がワイヤに近いほど、プルームの温度は高くなり、ワイヤに見られるように、ジェットの速度が速くなる。また、ノズルの先端がワイヤに近くなるほど、およびワイヤとの垂直面に近くなるほど、熱および運動量交換の係数は高くなる。
【0050】
入口アルゴン圧の増加-アルゴン入口圧力を増加させることによって、気体速度および質量流が高くなる。圧力の増加は、以下の式のように、運動エネルギーに3次関係の影響を及ぼす。
【数4】

式中、mは、気体の質量流であり、vは、気体の速度であり、Eは、結果として生じた運動エネルギーである。
【0051】
技術データ:
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】
【0052】
原料が広範囲の材料から作製されてもよく、かつ金属だけに限定されないことに留意されたい。本明細書において微粒化され得る材料の例として、チタン(市販の純チタンおよびチタン基合金の両方)、アルミニウム、ステンレス鋼、Hastelloy(商標)、インコネル、タングステンが挙げられるがこれらに限定されない。非金属材料の例として、セラミックが挙げられ得るが、ワイヤまたはロッドの形態で作製することができる場合に限る。
【0053】
上記説明は実施形態の例を提供するが、上述の実施形態のいくつかの特長および/または機能は、上述の実施形態の動作の趣旨および原理を逸脱することなく修正が可能であることが理解されよう。したがって、上記説明は、実施形態の例証であり、かつ非限定的であるように意図されており、本明細書に添付される特許請求の範囲に規定される実施形態の範囲を逸脱することなく他の変形および修正を加えてもよいことが、当業者によって理解されよう。
参考文献
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[2]C.F.Yolton and J.H.Moll,’’Method for Atomizing Titanium’’.Patent US4544404,12 March 1985.
[3]M.Drouet,’’Methods and Apparatuses for Preparing Spheroidal Powders’’.Patent application WO2011054113,12 April 2011.
[4]C.F.Yolton,’’Induction melting titanium in a vacuum or nonoxidzing atmosphere and treatment of an electric current’’.Patent US5084091A,28 January 1992.
[5]B. Verlinden and L. Froyen,’’Aluminium Powder Metallurgy,’’Training in Aluminium Application Technologies,vol.Advanced level 1,1994.
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b