(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】コンピュータ入力装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/02 20060101AFI20240227BHJP
G06F 3/0354 20130101ALI20240227BHJP
G06F 3/0338 20130101ALI20240227BHJP
【FI】
G06F3/02 E
G06F3/0354 442
G06F3/0338 411
(21)【出願番号】P 2021506323
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(86)【国際出願番号】 GB2019052220
(87)【国際公開番号】W WO2020030911
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-04
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520222597
【氏名又は名称】ソナス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ジェームス ヘイスティングス
(72)【発明者】
【氏名】マコーリフ,ジョン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,アーチボルド ジェー.
【審査官】木村 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04425511(US,A)
【文献】特表平01-500694(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0128337(US,A1)
【文献】特開平10-020977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/02
G06F 3/0354
G06F 3/0338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータキーボード、またはマウス、またはジョイスティック、またはゲームコントローラである、コンピュータ入力装置のための検知システムであって、
キートップもしくはボタンに取り付けるように構成されているか、またはキートップもしくはボタンを備えるか、またはキートップもしくはボタンから構成されており、軸に沿って移動可能であるか、または、ヒンジ式アクチュエータである、アクチュエータと、
センサと、
を備え、
前記センサは、前記アクチュエータに関連付けられ、前記アクチュエータの動きを検出するアクチュエータモーションセンサであり、
前記アクチュエータモーションセンサは、
前記アクチュエータによって移動するように構成され、共振周波数を有する受動共振回路と、
前記受動共振回路を前記共振周波数で励起するように構成された能動共振回路と、
を備え、
前記検知システムは、さらに、
前記軸に沿う方向に向けられたバイアス力を前記アクチュエータに印加するように構成され、および/または、前記アクチュエータの前記受動共振回路を前記能動共振回路から遠ざけるように付勢するバイアス力を前記アクチュエータに印加するように構成されたバイアス素子と、
前記共振周波数のRF駆動信号で前記能動共振回路を駆動する少なくとも1のセンサドライバと、
駆動されたアクチュエータモーションセンサからのRF信号のレベルを検知するために、当該アクチュエータモーションセンサに関連付けられたアクチュエータの位置および/または速度を検知するための、少なくとも1の検出器と、
を備える検知システム。
【請求項2】
前記アクチュエータ、前記バイアス素子、および前記受動共振回路のためのケーシングをさらに備え、
前記アクチュエータ、前記バイアス素子、および前記受動共振回路を有するケーシングがアクチュエータブロックを画定する、
請求項
1に記載の検知システム。
【請求項3】
前記コンピュータ入力装置をさらに備え、
前記コンピュータ入力装置は、前記アクチュエータブロック用の取付面を備え、
前記アクチュエータブロックは、一のアクチュエータブロックが他のアクチュエータブロックと交換可能なように、前記取付面に取り外し可能に嵌合されるように構成され、
前記アクチュエータブロックが前記取付面に嵌合されているとき、前記受動共振回路は前記能動共振回路に対して操作可能に近接する状態にある、
請求項
2に記載の検知システム。
【請求項4】
前記ケーシングは、保持位置と解放位置とを有する保持部をさらに備え、
前記保持部は、当該保持部が前記保持位置にあるとき、前記アクチュエータブロックの前記ケーシングを前記取付面に取り付けるように構成され、前記アクチュエータブロックを前記取付面から解放するように動作可能である、
請求項
3に記載の検知システム。
【請求項5】
複数の前記アクチュエータブロックのセットを備え、
各アクチュエータブロックは相異なる機械的応答を有し、
一のアクチュエータブロックの機械的応答により、前記検知された位置および/または速度の画定に必要な力が定まる、
請求項
3または4に記載の検知システム。
【請求項6】
前記コンピュータ入力装置は英数字キーボードであり、
前記複数のアクチュエータブロックのセットは前記英数字キーボードの複数のキー用である、
請求項
5に記載の検知システム。
【請求項7】
前記アクチュエータは、前記アクチュエータが静止状態にあるときの開始位置と、押下位置とを有し、
前記検知システムは、
前記センサに関連付けられたキー応答またはボタン応答を判定するために、RF信号の前記検出されたレベルを処理し、前記開始位置と前記押下位置との間における前記アクチュエータの位置および/または速度を検知するように構成された信号処理部をさらに含む、
請求項1
から6のいずれか一項に記載の検知システム。
【請求項8】
前記アクチュエータ用の変形可能エンドストップをさらに備え、
前記押下位置は、前記変形可能エンドストップによって画定され、
前記信号処理部は、RF信号の前記検出されたレベルを処理して、前記変形可能エンドストップを超えて前記アクチュエータを移動させるように前記アクチュエータに力が加えられた時点を検知し、アフタータッチ信号を供給するように構成される、
請求項
7に記載の検知システム。
【請求項9】
アレイ状に配置された複数のセンサを備え、
同時に駆動される複数のセンサが、直交する2つの方向のうち少なくとも1方向において、少なくとも1のセンサによって分離されるように、前記複数のセンサのRF駆動信号を多重化する多重化システムをさらに備える、
請求項1から
8のいずれか一項に記載の検知システム。
【請求項10】
各センサ用の1以上の巻線を有する各コイルを各々が備えた複数の前記能動共振回路を搭載するバックプレーンと、
RF信号の前記検出されたレベルを処理して前記アクチュエータの位置および/または速度を検知し、前記センサに関連付けられたキー応答またはボタン応答を判定するように構成された信号処理部と、
を備え、
前記信号処理部は、1以上の前記センサの前記キー応答または前記ボタン応答を、個別にまたはグループごとに調整するように設定可能であり、相異なる前記センサが動きに対して相異なる感度を有するように
、動きに対する前記センサの前記感度を設定する、
請求項1
から9のいずれか一項に記載の検知システム。
【請求項11】
前記複数のセンサの感度を定義する感度設定データを個別にまたはグループごとに記憶する、前記信号処理部に関連付けられた不揮発性メモリと、
前記感度設定データのユーザ定義、前記感度設定データのインポート、および前記感度設定データのエクスポートの1以上を可能にするためのインタフェースと、
をさらに備える請求項
10に記載の検知システム。
【請求項12】
少なくとも前記能動共振回路は、逆向きの複数の巻線を有するコイルを備え、特に、逆向きの前記複数の巻線が、逆向きの磁場を生成して互いに打ち消すように構成されている、
請求項1から
11のいずれか一項に記載の検知システム。
【請求項13】
前記受動共振回路および前記能動共振回路のそれぞれが、逆向きの第1の巻線および第2の巻線を備え、前記第1の巻線と前記第2の巻線とは前記軸の反対側にある、
請求項
12に記載の検知システム。
【請求項14】
請求項1から
13のいずれか一項に記載の検知システムであって、
バックプレーンを含み、
前記バックプレーンは、1以上の巻線を有する各コイルを各々が備えた複数の前記能動共振回路を搭載し、
前記複数の能動共振回路の少なくともいくつかが、一対の前記能動共振回路において、前記能動共振回路の一方のコイルの前記1以上の巻線の構成が、前記能動共振回路の他方のコイルの前記1以上の巻線の構成とは逆向きとなるように、対になっている、
検知システム。
【請求項15】
前記少なくとも1のセンサドライバをさらに含み、
前記複数の能動共振回路は、空間グループごとに配置され、
一空間グループのすべての能動共振回路について、前記複数の能動共振回路のコイルの前記1以上の巻線は同じ向きを有し、
隣接する複数の空間グループどうしでは、前記複数の能動共振回路のコイルの前記1以上の巻線は逆向きを有し、
一空間グループ内では、前記複数の能動共振回路が時間的に順次駆動されるように多重化される、
請求項
14の検知システム。
【請求項16】
RF信号の前記検出されたレベルを温度補償するための温度補償システムをさらに含み、
前記温度補償システムは、共振外駆動信号を前記複数の能動共振回路の少なくとも1に印加し、前記少なくとも1の検出器からの前記共振外駆動信号のレベルを測定し、前記共振外駆動信号の前記レベルに応じてRF信号の前記検出されたレベルを補償するように構成される、
請求項1から
15のいずれか一項に記載の検知システム。
【請求項17】
RF信号の前記検出されたレベルを温度補償するための温度補償システムをさらに含み、
前記温度補償システムは、共振外駆動信号を前記複数の能動共振回路の少なくとも1に印加し、前記少なくとも1の検出器からの前記共振外駆動信号のレベルを測定し、前記共振外駆動信号の前記レベルに応じてRF信号の前記検出されたレベルを補償するように構成され、
前記多重化システムは、前記複数のセンサの1つが複数のタイムスロットのセットの各々において駆動されるように前記RF駆動信号を多重化するように構成され、
前記温度補償システムは、前記複数のタイムスロットのセットへの追加のタイムスロットの期間中に前記共振外駆動信号を印加するように構成される、
請求項
9に記載の検知システム。
【請求項18】
請求項1から
17のいずれか一項に記載の検知システムを備え、
前記コンピュータ入力装置が、コンピュータマウス、ゲームコントローラ、コンピュータキーボードまたは英数字キーボード、またはジョイスティックである、
コンピュータマウス、ゲームコントローラ、コンピュータキーボードまたは英数字キーボード、またはジョイスティック。
【請求項19】
請求項1から
17のいずれか一項に記載の検知システムのためのバックプレーンであって、
前記バックプレーンは、1以上の巻線を有する各コイルを各々が備えた複数の前記能動共振回路を搭載し、
前記複数の能動共振回路の少なくともいくつかが、一対の前記能動共振回路において、前記能動共振回路の一方のコイルの前記1以上の巻線の構成が、前記能動共振回路の他方のコイルの前記1以上の巻線の構成とは逆向きとなるように、対になっている、
バックプレーン。
【請求項20】
前記少なくとも1のセンサドライバをさらに含み、
前記複数の能動共振回路は、空間グループごとに配置され、
一空間グループ内のすべての能動共振回路について、前記複数の能動共振回路の前記コイルの前記1以上の巻線は同じ向きを有し、
隣接する複数の空間グループどうしでは、前記複数の能動共振回路の前記コイルの前記1以上の巻線は逆向きを有し、
一空間グループ内では、前記複数の能動共振回路が時間的に順次駆動されるように多重化される、
請求項
19に記載のバックプレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーボード、例えばQWERTYキーボード、ゲームコントローラ、コンピュータマウスなどのコンピュータ入力装置のための検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータキーボードは、一般に、キーのひとつの打鍵位置を検知するメカニカルスイッチまたは類似の接触装置を用いる。この場合、スイッチの閉鎖がキー押圧イベントの検出に用いられ、スイッチの開放がキー解放イベントの検出に用いられる。このように、これらのメカニカルスイッチは、バイナリ(オン/オフ)応答を有する。さらに、この作動(切換)点におけるキーの物理的な押下は、スイッチの機械的構造に依存し、スイッチ自体を変更せずに作動点を変更することは不可能である。しかしながら、異なる状況下または異なる操作者によってキーの押込の大小(作動距離)に応じた様々な作動点が好まれる可能性がある。例えば、タイピングには長い作動距離が好まれることが多く、コンピュータゲームのプレイには短い作動距離が好まれることが多い。メカニカルスイッチのもう一つの限界は、スイッチバウンスとして知られている現象である。スイッチバウンスでは、スイッチの接触および解放の各段階は、数ミリ秒間持続する、数回にわたる短時間の接触と解放の周期で構成されている。このため、スイッチの応答速度が制限される。
【0003】
キーボードの中には、ホール・プローブに対して永久磁石を移動させて位置を検出するホール効果センサを用いるものがある。磁気センサは、塵や水分による汚れに対して感度が低下するが、外部の磁界や近くの鉄金属の動きからの干渉に対する感度、および、温度変化に対する感度を含む他の欠陥がある。センサにはヒステリシスの問題もあり、永久磁石と磁気センサを各キーに搭載する必要があるために、高価なものとなっている。
【0004】
ゲームコントローラは、コンピュータゲームにおけるキャラクタの動きおよび/またはアクションを制御するコンピュータゲームの入力装置として用いられる。典型的には、ゲームコントローラは、バイナリ応答型の多数のスイッチで構成され、各スイッチのバイナリ応答により、動きおよび/またはアクションが発生する。動きおよび/またはアクションは、これらの両極間では制御されずに、オンまたはオフのいずれかとなる。より高度なゲームコントローラは、さらに、1または複数のアナログジョイスティックコントロールを備える。これにより、中心位置からのジョイスティックの相対的な変位を利用してゲーム内での相対的な動きおよび/またはアクションを制御することで、より優れたゲーム体験のために、キャラクタの細かな制御を可能とする。しかし、このような細かな制御はジョイスティックコントロールでのみ可能であり、スイッチでは不可能ではある。
【0005】
コンピュータマウスは、コンピュータの入力装置として使用される。典型的には操作者の机の上でのマウスの動きに応じて、コンピュータ画面上でカーソル(ポインタ)が移動する。また、マウスでは1または複数のボタンがバイナリ応答型スイッチに接続されている。マウスが移動することで正確な位置情報がコンピュータに送信されるが、ボタンはスイッチの状態に関するバイナリのオン/オフ情報しか送信することができない。
【0006】
コンピュータ入力装置用のアナログスイッチは、有用かもしれないが、容易に入手可能ではなく、いくつかの制限がある。
【0007】
ゲームコントローラのジョイスティックに使用される位置センサは、典型的には、ポテンショメータである。しかし、ポテンショメータはワイパーが常に抵抗体と物理的に接触しているため、摩耗を引き起こす。このため、ポテンショメータは信頼性が低いという問題がある。さらに、ポテンショメータの動きに対して物理的な抵抗があるため、スイッチの触知感に悪影響を及ぼす。
【0008】
アナログスイッチ用の力覚入力装置が、米国特許第8,922,399号明細書に記載されている。この装置は位置センサの原理として光学反射率を利用するが、この方法、一般的に光学的方法では、検出位置に対する高非線形応答、温度および周囲光の変動に対する感度、塵や埃または湿気による汚れに対する感度等の制限がある。さらに、光学部品と、サポートする電子機器が高価になる可能性がある。
【0009】
容量性位置センサは、電磁干渉と、操作者の手の位置と、温度とに敏感であり、位置センサとしてアナログスイッチに適用するのは非現実的である。
【発明の概要】
【0010】
したがって、一態様では、コンピュータ入力装置のための検知システムが提供される。コンピュータ入力装置は、例えば、コンピュータキーボード、またはマウス、またはジョイスティック、またはゲームコントローラ(ゲームパッド)であってもよい。コンピュータキーボードは、英数字キーボードであってもよく、記号は、ラテン文字もしくは非ラテン文字用であってもよく、および/または、文字、例えば東アジア言語の文字であってもよい。
【0011】
検知システムは、コンピュータ入力装置の例えばキーまたはボタンごとに可動上部部材またはアクチュエータを備える。アクチュエータは、キーまたはボタンごとに、キートップまたはボタンに取り付けられるように構成されていてもよいし、キートップまたはボタンを備えてもよいし、キートップまたはボタンで構成されていてもよい。いくつかの実施態様では、アクチュエータは、軸、特に直線軸に沿って移動可能である。他のいくつかの実施態様では、アクチュエータは、例えば、端部または支点において蝶番式に動くヒンジ式アクチュエータである。
【0012】
検知システムは、バイアス素子をさらに備えてもよい。バイアス素子は、アクチュエータ(可動上部部材)の動きに抵抗するバネまたは他の機械的な連結体であってもよい。バイアス素子は、アクチュエータの受動共振回路を能動共振回路から遠ざける方向に付勢するバイアス力をアクチュエータに加える、またはアクチュエータに抵抗して加えるように構成されていてもよい。このように、バイアス素子は、例えば軸に沿う方向のバイアス力をアクチュエータに加えるように構成されていてもよい。
【0013】
実施態様では、検知システムは、アクチュエータの動きを検出するために、アクチュエータに関連付けられたアクチュエータモーションセンサを有する。アクチュエータモーションセンサは、アクチュエータによって移動するように構成されて共振周波数を有する受動共振回路と、共振周波数で受動共振回路を励起するように構成された能動共振回路とを備えてもよい。アクチュエータモーションセンサは、共振周波数のRF駆動信号で能動共振回路を駆動する少なくとも1のセンサドライバと、アクチュエータモーションセンサに関連付けられたアクチュエータの位置および/または速度を検知するために、駆動されたアクチュエータモーションセンサからのRF信号のレベル、すなわち駆動された能動共振回路からのRF信号のレベルを検出するように構成された少なくとも1の検出器とをさらに備えてもよい。
【0014】
コンピュータ入力に関連付けられたコンピュータ、例えば、コンピュータ入力装置が有線または無線で接続されるコンピュータは、例えば、タブレットまたはモバイルデバイス、ラップトップまたはデスクトップコンピュータ、ゲームコンソール、工業用または科学的制御のためのコンピュータ、例えば工業用または科学的制御のための、工業用または科学的装置の一部を形成するコンピュータ、またはユーザ操作による入力装置を有する任意のコンピュータ化された機器であってもよく、特に、例えば微細な間的位置決めまたは正確なタイミング制御を目的とした微細な制御が望まれる場合のものである。
【0015】
別の態様では、コンピュータキーボードの検知システムは、複数のキーセンサを備えてもよい。各キーセンサは、受動共振回路と能動共振回路とからなり、受動共振回路は共振周波数を有し、能動共振回路は共振周波数で受動共振回路を励起するように構成されてもよい。任意選択で、キーセンサは、前述したアクチュエータであってもよい。検知システムは、共振周波数のRF駆動信号で能動共振回路を駆動する少なくとも1のセンサドライバをさらに備えてもよい。検知システムは、多重化システムをさらに備えてもよい。検知システムは、キーセンサに関連付けられたキーの位置および/または速度を検知するための駆動キーセンサからのRF信号のレベルを検出する少なくとも1の検出器をさらに備えてもよい。多重化システムは、2次元の各次元において、キーが隣接キーと同時に駆動されないように構成されてもよい。
【0016】
いくつかの実施態様では、例えば、アクチュエータと、バイアス素子と、受動共振回路とを包囲するためにケーシングが提供される。よって、ケーシングは、アクチュエータと、バイアス素子と、受動共振回路とともに、アクチュエータブロックを画成してもよい。アクチュエータは、押込嵌めボタンまたはクリップ嵌めボタン、またはキートップを、例えば、アクチュエータの突起部に取り付け可能なように構成される。
【0017】
コンピュータ入力装置は、アクチュエータブロックの取付面、例えば、平らまたは湾曲した取付板を有してもよい。例えば、これは、キーボードまたはゲームコントローラの一部であってもよい。アクチュエータブロックを他のアクチュエータブロックと交換可能なように、例えば、押込嵌めまたはクリップ嵌めにより、アクチュエータブロックが着脱可能に取付面に嵌合されるように構成されてもよい。アクチュエータブロックが取付板に嵌合されると、受動共振回路は能動共振回路に対して動作可能に近接する。つまり、検知システムが正常に動作するように、アクチュエータブロックが取付板に嵌合される。
【0018】
例えば、ケーシングは、保持位置と解放位置とを有する保持部を有していてもよく、保持部は、当該保持部が保持位置にあるときにアクチュエータブロックのケーシングを取付面に取り付けるように構成され、アクチュエータブロックを取付面から取り外すように動作可能である。
【0019】
ケーシングは、形成部、例えばリップを有していてもよく、アクチュエータは、ケーシング内で軸に沿って移動するように構成されていてもよい。形成部は、例えば、バイアス力に逆らう方向にアクチュエータに通常の力を与えることによって、ケーシング内にアクチュエータを制止する制止部として機能するように構成されていてもよい。
【0020】
このような配置により、キーまたはボタンを容易に取り外し/交換可能となる。バックプレートまたはPCB(プリント回路基板)は、能動共振回路を搭載してもよい。いくつかの実施態様では、アクチュエータはバイアス素子に取り付けられ、アクチュエータとバイアス部と受動共振回路とが、ひとつの取り外し可能なユニットを形成する。
【0021】
ケーシングは、バックプレートまたはPCBの凹部と係合し、能動的共振回路に対してアクチュエータブロックの位置を合わせる形成部を有してもよい。ひとつの実施態様では、ケーシングの外部突起が内側の凹部を画定する。この凹部は、バイアス素子を形成するバネの一端を保持してもよい。
【0022】
いくつかの実施態様では、例えば、英数字または他のコンピュータキーボードの複数のキーのために、複数のアクチュエータブロックのセットが提供される。各アクチュエータブロックは、互いに異なる機械的応答を有してもよい。例えば、アクチュエータブロックの機械的応答により、検知位置および/または検知速度の画定に必要な力を画定してもよい。よって、キーのアクチュエータブロックを相互に交換して、キーボードの1以上のキーまたはゲームコントローラの各ボタンの機械的応答および/または電気的応答を変更してもよい。バイアス素子(例えば、バネの強度)を変更することによって、または、アクチュエータの変形可能エンドストップ(後述)を変更することによって(例えば、エンドストップの厚さまたは材質を変更することによって)、アクチュエータブロックの機械的応答を変更してもよい。
【0023】
実施態様では、アクチュエータには、アクチュエータが静止状態にあるときの開始位置と、押下位置とがある。検知システムは、信号処理部をさらに備えてもよい。信号処理部は、例えば、前記アクチュエータモーションセンサに関連付けられたキー応答またはボタン応答を判定するために、RF信号の検出されたレベルを処理して、開始位置と終了位置間におけるアクチュエータの位置および/または速度を検知するように構成される。
【0024】
信号処理部は、ハードウェア、すなわち電子回路で実現されてもよいし、ソフトウェア、例えばマイクロコントローラなどのプロセッサのプロセッサ制御コードで実現されてもよいし、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせで実現されてもよい。
【0025】
信号処理部は、アクチュエータの検知された位置および/または速度を処理することにより、キー応答またはボタン応答を判定するように構成されてもよい。検知システムのデータ出力(および/またはデータ入力)は、例えば、USB接続などの、任意の標準的なデータ/通信フォーマットを用いてもよい。出力データは、キーまたはボタンの中間的な位置/速度を含んでもよい。すなわち、検知システムでは非バイナリ応答を可能としてもよい。アクチュエータの検知された位置が、定義された作動位置に対応すると判定された場合にキー/ボタンはオン応答であると判定されてもよい。後述するように、応答の感度を調整するために作動位置は調整可能であってもよい。
【0026】
検知システムは、アクチュエータ用の変形可能エンドストップを有してもよい。押下位置は、変形可能エンドストップによって画定されてもよい。信号処理部は、RF信号の検出されたレベルを処理して、変形可能エンドストップを超えてアクチュエータを移動させるようにアクチュエータに力が加えられた時点を検知し、例えば、「アフタータッチ」信号(例えば、通常のオン位置を超えてアクチュエータ(すなわち、キーまたはボタン)に対する圧力から生じる信号)を供給するように構成されてもよい。
【0027】
処理部は、アフタータッチなしで、例えば工場でのキャリブレーションによって終了位置を特定するように構成され、当該位置を超えたアクチュエータの動きを検出してもよい。これは、マウス、キーボード、またはゲームコントローラで使用することができ、作動後のキーへの圧力によりさらなる次元での制御が可能となる。バイアス素子の調整、および/または、変形可能エンドストップ(存在する場合)の調整または選択によりキー応答を変更してもよい。
【0028】
検知システムは、アレイ状に配置された複数のアクチュエータモーションセンサを備えてもよい。検知システムは、直交する2方向のうち少なくとも1方向において少なくとも1のアクチュエータモーションセンサによって、同時に駆動される複数のアクチュエータモーションセンサが分離されるように、アクチュエータモーションセンサのRF駆動信号を多重化する多重化システムをさらに備えてもよい。分離されたセンサ間のセンサ(複数可)は、分離されたセンサ間の直線上にある必要はない。
【0029】
実施態様では、検知システムは、複数の能動共振回路を搭載したバックプレーンを備える。各能動共振回路は、各アクチュエータモーションセンサ用の1以上の巻線を有する各コイルを備える。信号処理部(検出器に接続されている)は、RF信号の検出されたレベルを処理してアクチュエータの位置および/または速度を検知し、アクチュエータモーションセンサに関連付けられたキー応答またはボタン応答を判定するように構成されてもよい。信号処理部は、個別にまたはグループごとに、1以上のアクチュエータモーションセンサのキー応答またはボタン応答を(電子的に)調整するように構成可能でもよい。このように、検知システムでは、相異なるアクチュエータモーションセンサが動きに対して相異なる感度を有するように、アクチュエータモーションセンサの動きに対する感度をユーザが(電子的に)設定可能としてもよい。例えば、アクチュエータモーションセンサは、アクチュエータが「オン」位置に到達するまでの移動距離、および/または、位置および/もしくは速度に対するアクチュエータモーションセンサの感度を定義するように構成されてもよい。これは、キーボードの異なるキーまたはゲームコントローラのボタンが異なる応答をするように設定する際に有用である。
【0030】
検知システムは、アクチュエータモーションセンサの感度を定義する感度設定データを個別にまたはグループごとに記憶するために、信号処理部に関連付けられた不揮発性メモリを含んでもよい。検知システムはまた、例えば、感度設定データのユーザ定義、感度設定データのインポート、および感度設定データのエクスポートのうちの1以上を可能にするインタフェースを有してもよい。例えば、検知システムまたはコンピュータ入力装置が接続されているコンピュータに関連付けられたユーザインタフェースおよび/または通信インタフェースには、個別またはグループごとのキー応答またはボタン応答の設定または編集、および/または、通信インタフェースを介したインポート(ダウンロード)またはエクスポートによる設定情報の共有を可能にするためのユーザインタフェースが設けられてもよい。
【0031】
いくつかの実施態様では、少なくとも能動共振回路は、逆向きの巻線を有するコイルを備え、特に、互いに打ち消すような逆向きの磁場を逆向きの巻線が発生するように構成されている。よって、受動共振回路と能動共振回路のそれぞれが、逆向きの第1の巻線と第2の巻線を有するコイルを備えてもよい。第1の巻線と第2の巻線とは、アクチュエータモーションセンサの軸(直線軸)の反対側にある。
【0032】
前述したように、いくつかの実施態様では、検知システムは、平らなバックプレーンまたは湾曲したバックプレーンを含んでもよい。バックプレーンは、1以上の巻線を有するコイルをそれぞれが備えた複数の能動共振回路を搭載してもよい。複数の能動共振回路の少なくともいくつかを対としてもよく、ひとつの対において一方の能動共振回路のコイルの1以上の巻線の構成が他方の能動共振回路のコイルの1以上の巻線の構成とは逆向きとなるようにしてもよい。例えば、ひとつの巻線のコイルが複数ある場合、巻線どうしは逆向きであってもよく、二重巻線のコイルが複数ある場合、各二重巻線が逆向きに構成されていてもよい(すなわち、各巻線は逆向きの巻線と一対にしてもよい)。多重化されたシステムでは、対のコイルは同時に駆動されてもよい。
【0033】
いくつかの実施態様では、能動共振回路は、空間グループごと(ブロックごと)に配置されてもよい。一空間グループでは、複数の能動共振回路の各コイルの1以上の巻線は、同じ向きであってもよい。隣接する空間グループどうしでは、複数の能動共振回路の各コイルの1以上の巻線は、逆向きであってもよい。一空間グループ内では、複数の能動共振回路は、時間的に順次(各々が順番に)駆動されるように、例えば、能動共振回路の1つだけが一度に駆動されるように、多重化されていてもよい。
【0034】
検知システムは、RF信号の検出されたレベルを温度補償する温度補償システムをさらに備えてもよい。温度補償システムは、複数の能動共振回路の少なくとも1つに共振外駆動信号を印加するように構成されてもよく、少なくとも1の検出器からの共振外駆動信号のレベルを測定してもよく、共振外駆動信号のレベルに応じてRF信号の検出されたレベルを補償するように構成されてもよい。多重化システム(存在する場合)は、複数のアクチュエータモーションセンサの一が、複数のタイムスロットのセットの各タイムスロットにおいて駆動されるように、駆動信号を多重化するように構成されてもよい。温度補償システムは、一組のタイムスロットへの追加のタイムスロットの期間中に共振外駆動信号を印加するように構成されてもよい。
【0035】
上述したように、検知システムにはバックプレーンがさらに備えられている。バックプレーンは、1以上の巻線を有するコイルをそれぞれが備えた複数の能動共振回路を搭載してもよい。複数の能動共振回路の少なくともいくつかを対としてもよく、ひとつの対において一方の能動共振回路のコイルの1以上の巻線の構成が他方の能動共振回路のコイルの1以上の巻線の構成とは逆向きとなるようにしてもよい。
【0036】
バックプレーンは、さらに、センサドライバを備えてもよい。複数の能動共振回路は、空間的なグループごとに配置されてもよい。一空間グループでは、複数の能動共振回路の各コイルの1以上の巻線は、同じ向きであってもよい。隣接する空間グループどうしでは、複数の能動共振回路の各コイルの1以上の巻線は、逆向きであってもよい。一空間グループ内では、複数の能動共振回路は、時間的に順次(各々が順番に)駆動されるように多重化されてもよい。
【0037】
また、キー応答またはボタン応答を調整する方法も提供される。一態様では、当該方法は、バイアス素子を、アクチュエータに異なるバイアス力を与える別のバイアス素子と交換することによって、アクチュエータモーションセンサを構成する。別の態様では、当該方法は、能動共振回路と、ドライバと、検出器とを残す一方で、アクチュエータと、受動共振回路と、バイアス素子とからなるユニットを交換する。
【0038】
したがって、上述した機能を実行するためのコードおよび/またはデータを伝送する、不揮発性メモリ等の非一過性のデータキャリアも提供される。コード/データは、解釈もしくはコンパイルされた従来のプログラミング言語でのソースコード、オブジェクトコードもしくは実行可能コードで構成され得る。またはVerilog(商標)等のハードウェア記述言語用のコードなど、ASICもしくはFPGAを設定もしくは制御するためのアセンブリコード、コード/データで構成され得る。当業者に理解されるように、そのようなコードおよび/またはデータは、互いに通信する複数の接続された構成要素の間で配信されてよい。
【0039】
コンピュータキーボードのスイッチまたはキーボードスイッチ、ゲームコントローラ、コンピュータマウスなどのコンピュータ入力装置の検知システムの実施態様のいくつかの利点を、以下に記載する。
【0040】
スイッチの作動点は、キー押圧イベントとキー解放イベントが送信される位置的な閾値を変更することで調整可能である。スイッチの位置は、ジョイスティック的制御イベントの送信に使用可能である。スイッチの押下位置の変化率(速度)は、スイッチがどの程度の速さで作動されたかを判定するために使用可能である。スイッチのエンドストップに変形可能部材が追加されている場合には、エンドストップが変形可能部材と非接触の際に発生する位置イベントとは別個の、エンドストップの位置が変形可能部材に接触している際の圧力イベントを、スイッチは送信することができる。
【0041】
検知システムを備えたコンピュータ入力装置のいくつかの実施態様によれば、小さなフォームファクタ内に嵌合可能であり、応答時間(典型的には1ミリ秒以下)が速く、スイッチの触覚(tactile)応答または触知(haptic)応答が実質的に影響を受けず、長寿命で信頼性が高く、環境条件の変化の影響を受けにくく、そして、スイッチを密閉する必要がないため、塵、埃または湿気による汚れの影響を受けにくい。
【0042】
コンピュータキーボードでは、検知システムの実施態様によれば、各キーの作動距離を変更することができ、スイッチの任意の押下位置が切換点となるように選択可能である。さらに、操作者の好みに合わせて、または実行中のタスクについて操作者によって容易に変更可能である。同様に、コンピュータゲームをプレイする際には、キーのリアルタイム位置をジョイスティック的入力装置として利用することで、ゲームキャラクタの細かな制御を行うことができる。作動点におけるキーの速度は、コンピュータプログラムへの入力として使用され得る。例えば、キーを用いてキャラクタをジャンプさせるコンピュータゲームでは、キーの検知された速度を、ジャンプの高さの制御に用いることができる。
【0043】
検知システムの実施態様によれば、ゲームコントローラでは、すべてのボタンやスイッチがジョイスティック的入力装置として機能するようになる。例えば、ドライビングゲームでは、ジョイスティックをステアリングに用いてもよいし、模擬車両を、滑らかに変化するように加速させる制御、および、模擬車両のブレーキの制御を行う際に、検知システムに接続されたスイッチを備えたボタンを用いてもよい。
【0044】
検知システムの実施態様によれば、コンピュータマウスでは、マウスボタンの位置またはマウスボタンに加える圧力を用いて、コンピュータプログラムの各態様を制御可能となる。例えば、アートワークプログラムにおいて、マウスボタンに加える圧力を用いてペンまたはブラシの重みを制御し、描画物の幅、強度、または色に変化をつけることが可能である。
【0045】
検知システムの実施態様によれば、直接的な電気的接続を必要としないコンピュータキーボード、ゲームコントローラ、またはマウスのメカニカルスイッチを提供可能である。これにより、簡易かつ信頼性の高いスイッチの交換が容易となり、例えば、作動力または所望の他の特性を異ならせた複数のスイッチの使用が可能となる。
【0046】
検知システムの実施態様によれば、キーの押下に必要な作動力の調整を容易にするコンピュータキーボードをさらに提供可能である。これは、電子的に達成してもよいし、または弾力を異ならせたバネを使用することで達成してもよい。後者の場合、キーの可動部に対して直接電気的な接続が必要とされないため、製造後であってもキーを容易に取り外して交換することが可能である。
【0047】
システムの他の態様を以下に説明する。これらは、前述したものと組み合わせてもよい。
【0048】
したがって、さらなる一態様では、キーボード、例えばコンピュータキーボードのための検知システムが提供される。検知システムは、複数のキーセンサを備えてもよい。各キーセンサは、例えばキーの移動部に搭載するための受動共振回路、および例えば基準位置に搭載するための能動共振回路を備えてもよい。実施態様では、受動共振回路は共振周波数を有し、能動共振回路は、共振周波数において受動共振回路を励起するように構成される。検知システムは、共振周波数のRF駆動信号で能動共振回路を駆動するための少なくとも1のセンサドライバをさらに備えてもよい。当該センサドライバは、複数のセンサ間で共有してもよい。実施態様では、検知システムは、駆動信号を多重化し、駆動されたキーセンサからの出力信号を非多重化する、1または複数のマルチプレクサおよび/または1または複数のデマルチプレクサ等の多重化システムをさらに備えてもよい。検知システムは、駆動されたキーセンサからのRF信号のレベルを検出する少なくとも1の検出器、例えば読出し回路および/またはマイクロプロセッサをさらに備えてもよい。キーセンサに関連付けられたキーの位置および/または速度を検知するために検出器を用いてもよい。少なくとも1の検出器は、能動共振回路と受動共振回路との相対的な位置から、能動共振回路における共振RF信号の変動を検出してもよく、RF信号のレベルをピーク検出してもよい。
【0049】
少なくとも能動共振回路、および、任意選択で受動共振回路は、特に、逆向きの巻線を有する1または2以上のコイルを備えてもよい。したがって例えば、巻線は、特にセンサから遠距離において、特に互いを打ち消すように均衡または相互に一致する逆向きの複数の磁界を発生してもよい。
【0050】
実施態様では、逆向きの巻線(および、つまりは逆向きの電流/磁界)を有するコイルと、多重化センサによるアドレッシングとを組み合わせることにより、極めて近接した位置で複数のセンサを容易に使用可能となる。したがって、実施態様では、逆向きの巻線は、均衡した逆向きの磁界を生成するように構成される。これにより、センサから距離が離れた箇所において、例えば、最大のコイル寸法の少なくとも10倍の距離において、磁界をほぼ完全に相殺し得る(センサからのRF場が、そのような離れた距離において検出不能であるというわけではない)。
【0051】
いくつかの実施態様では、能動共振回路は、2または3以上の横方向に隣接するパンケーキコイルを備える。(本明細書において、2以上のコイルとの記載は、例えば巻線が逆向きである、2以上の巻線をもつ1つのコイルを含むと解釈され得る)。複数のコイルは、1つのキーにより画定される長手方向に沿って、当該長手方向において相互に隣り合うように配置されてもよい。製造を容易にする目的で、パンケーキコイルをプリント回路基板(PCB)上に形成してもよく、PCBはフレキシブルPCBであってもよい。複数のコイルは必ずしも逆向きの巻線を有する必要はないが、このコイル構成を採用するだけで、相互干渉がある程度低減され得る。
【0052】
実施態様では、システム、特に多重化システムは、非駆動キーセンサの能動共振回路の動きを抑制するように構成される。例えば、コイル/センサを短絡、および/または共振外信号(例えば低周波数またはDC信号)で駆動することによって非駆動キーセンサの能動共振回路の動きを抑制する。この構成によれば、センサ間の干渉を低減することによって、共振回路ベースのセンサの使用が容易になる。
【0053】
上述した技術のうち1または複数を、近接するセンサ間の干渉を制限するために採用してもよい。どの技術を、および、いくつの技術を採用するかは、キーが上に位置するときの能動共振回路と受動共振回路との間の距離、および/またはキーアップ位置とキーダウン位置との間の移動距離に部分的に依存し得る。例えば、コンピュータ型キーボードでは、設計次第で1mm~6mmの近似範囲内での移動があり得る。距離が大きいほど、あるキーを押圧すると他の近接するキーが動いてしまう可能性がある。したがって、上記技術の1または複数を有益に採用することで、かかる結果を改善し得る。このように、概して、本検知システムのいくつかの実施態様では、近接するセンサ間の干渉を低減するために、本明細書に記載する多重化の構成およびいくつかの追加手段を利用してもよい。
【0054】
検知システムは、RF信号の検出されたレベルを温度補償するための温度補償システムをさらに備えてもよい。温度補償システムは、複数の能動共振回路のうちの少なくとも1つに共振外駆動信号を印加するように構成されてもよい。温度補償システムは次に、少なくとも1の検出器からの共振外駆動信号のレベルを測定し、次に、共振外駆動信号のレベルに応じてRF信号の検出されたレベルを補償(例えばオフセット)してもよい。いくつかの実施態様では、多重化システムは、複数のキーセンサのうちの1つが、複数のタイムスロットのセットの各タイムスロットにおいて駆動されるように、駆動信号を多重化するように構成される。そして、温度補償システムは、追加のタイムスロット、特に、キー検査に用いないタイムスロットにおいて共振外駆動信号を印加するように構成されてもよい。
【0055】
いくつかの実施態様では、各キーセンサは、弾性変形可能な要素を備えてもよい。弾性変形可能な要素は、例えば共振回路のうちの1の共振回路の下に、例えば変形可能エンドストップとして設けられるか、または複数の共振回路の間に設けられてもよい。弾性変形可能な要素は、特に弾性変形可能な要素に対する動きを検出することで圧力を検知するために、特に受動共振回路および能動共振回路の一方または両方の動きを制限する。
【0056】
関連する態様では、キーボードの応答を定期的に補償する方法が提供される。キーボードの各キーは、能動共振回路と受動同調共振回路と検出器とを備えるセンサを備えてもよい。当該方法は、第1の時刻t0に検出された、センサからの初期出力信号Ot0を記憶部から読み出してもよい。t0において、能動共振回路は、能動共振回路の共振周波数を下回る周波数で駆動される。当該方法は、さらに、複数のセンサの少なくとも1について、t0よりも後の時刻に、センサの後期出力信号Ot1を定期的に検出してもよい。当該方法は次に、調整値として、例えば、センサの初期出力信号とセンサの後期出力信号との差を算出してもよい。当該方法は次に、さらに、調整値を用いてセンサの動作出力を調整することによって、キーボードの応答を補償してもよい。動作出力は、能動共振回路の共振周波数で能動共振回路が駆動されているときのセンサからの出力であってよい。当該方法は、さらに、時分割多重化アドレス方式に従ってセンサを作動してもよい。そして当該方法は、時分割多重化アドレス方式において、センサが非作動中である「予備」タイムスロットを検出に用いてもよい。
【0057】
別の態様では、キーボード、特にコンピュータキーボード用の複数のセンサのセットが提供される。キーボードは複数のキーを有する。複数のセンサのセットは、検知システムの一部であってもよい。各センサは、キーの移動部に搭載するための受動共振回路と、例えばキーボードの一部における固定の基準位置に搭載するための能動共振回路とを備えてもよい。実施態様では、受動共振回路は共振周波数を有し、能動共振回路は、共振周波数において受動共振回路を励起する。各センサは能動共振回路と受動共振回路との相対的位置により能動共振回路における共振信号の変動を検出することでキーの位置および/または速度を検出する検出器をさらに備えてもよい。検出器を複数のセンサ間で共有してもよい。変動は、いくつかの実施態様では、共振信号における信号の振幅の変動であってよい。複数のセンサのセットは、キーボードの複数のキーを検知するために搭載される場合、同じ共振周波数を有するセンサが非隣接となるように配置された、2以上の異なる共振周波数を有する複数のセンサを備えてもよい。
【0058】
このアプローチの各実施態様は、比較的安価に構築可能だが、信頼性が高く、メカニカルスイッチのキーバウンスも生じにくい。よって、キーの動きに非常に素早くかつ確実に応答することが可能になる。例えば理想的には、各キーは、少なくとも毎秒250回のレートで測定される。101キーボードまたは104キーボードでは、これは約26,000キー/秒に相当する。上述のシステムのいくつかの実施態様は、この速さを優に10倍超えて動作し得る。本システムの各実施態様は、優れた温度安定性も提供することができ、また、非接触であるので、堅牢であり実質的に汚れの影響を受けない。上記センサのいくつかの実施態様においては、さらに、キー押圧位置およびキー解放位置との間でキーが動くときのキー位置を判定することができ、実質的に連続したキー位置の判定が可能である。基準位置は、例えばキーボード基体もしくは台の上の、キーの下方における固定位置であってもよく、またはキーボード用の複数のセンサのセットを搭載したプリント回路基板(PCB)上の位置であってもよい。ただし、代替的には、いくつかの実施態様においては、能動共振回路は、キーの上に、またはキーと関連付けて搭載されてもよく、共振回路は、基体やPCB等の上に搭載されてもよい。
【0059】
上記センサのいくつかの実施態様においては、センサは、キー押圧位置を超えてキーが動いた時点を検出することもでき、したがって、キーに加えられた圧力を検出する際に有用である。
【0060】
センサは、キー速度をさらに検知することができ、かつ/または、検知されたキー速度は、キー位置の判定に利用されてよい。
【0061】
いくつかの実施態様では、第1の共振周波数を有するセンサが、例えば交互に並ぶキーに対して周波数を交互に用いて、第2の異なる共振周波数を有するセンサでインターリーブされる。これにより、センサ間干渉が低減される。
【0062】
複数のセンサのセットは、異なる時点において隣接するキーボードセンサが選択されるように、センサの選択または走査を制御するコントローラを含んでもよい。やはりセンサ間干渉を低減する目的である。いくつかの実施態様では、コントローラは、例えば、能動共振回路の一部を、例えば抵抗器を介して接地することにより、複数の非選択センサの能動共振回路の応答を減衰させてもよい。コントローラは、多重化システムおよび/またはマイクロプロセッサを備えてもよい。
【0063】
いくつかの実施態様では、コントローラ/多重化システムは、複数のセンサの動作を時分割多重するように構成されてもよい。そのようなアプローチでは、各共振周波数によりセンサのグループを画定し、時分割多重により複数のn個のタイムスロットを画定してもよい。例えば各グループの連続するキーボードセンサには、連続するタイムスロットが割り当てられる。複数のグループの複数のセンサがインターリーブされている場合、例えば各グループの連続する複数のセンサはキーボード上で非隣接であってもよい。N個の共振周波数、および、よってN個のグループのセンサが存在してもよく、いくつかの実施態様では、N=1である。いくつかの実施態様では、現在のタイムスロットにおいてセンサの現在のグループの1つのセンサをアクティブ化した後、コントローラは、次のタイムスロットにおいて、同じグループ内の、キーボードに沿った次のセンサをアクティブ化してもよい。
【0064】
好ましくは、コントローラ/多重化システムは、隣接センサが同時にアクティブな状態とならないように構成されるが、隣のセンサのさらに隣のセンサは同時にアクティブ状態にあってもよい。同時にアクティブな複数のセンサどうしの間隔は、(m×N)+1であってもよい。ここで、mは1~n/2の範囲内であるが、より離れた構成が好ましい(間隔1は隣接センサを示す)。
【0065】
同じグループにおいて同時にアクティブな複数のセンサどうしの物理的間隔としては、最も近い間隔でn×N個のセンサ間隔であってもよい。このn×N個のセンサは、後段でセンサのサブセットと呼ばれる。これは通常、キーボードは複数のそのようなサブセットを有するからである。このように、コントローラ/多重化システムは、センサの同じグループ内で同じタイムスロットにおいてアクティブ化される複数のキーボードセンサの間に(n×N)-1個のセンサが存在するように構成されてもよい。いくつかの実施態様では、nは8であってもよく、Nは2であってもよい。
【0066】
コントローラは、センサをアドレッシングするためのデジタルデマルチプレクサ等のアドレッシングデバイスに接続されたプロセッサを用いて実現し、アナログマルチプレクサを介してセンサ能動共振器を読出し回路に選択的に接続することによって、アドレッシングされたセンサから信号を読み出してもよい。検出器、すなわち、読出し回路は、包絡線検出機能を実行してもよい。いくつかの実施態様では調整可能位相シフトを介して能動共振器に対する駆動信号から得られるイネーブル信号によって、読出し回路および/またはアナログマルチプレクサをイネーブルにしてもよい。デマルチプレクサ-マルチプレクサ配置のコンテキストにおいて、または別個に、調整可能位相シフトを用いて、能動共振回路からの信号の同期検出を実行してもよい。
【0067】
コントローラまたは別のプロセッサが、各センサの能動共振回路における共振信号の変動を処理して、キーの押下および/または解放時において、押下されたキーが解放位置と押下位置との間を動くときの一連の時間間隔にわたりキーボードの各キーの動きを判定するように構成されてもよい。各キーの動きは、キーが解放位置と押下位置との間を動くときのキーの位置および/または近似速度であってもよい。
【0068】
いくつかのアプローチでは、キーの位置は、直接的にではなく、例えば積分によって、キーの速度から判定されてもよい。プロセッサは、各キーについてまたは移動中の各キーについて、時間の経過に伴う近似位置および/または速度のプロファイルを画定するデータを出力し得る。
【0069】
いくつかの実施態様では、プロセッサは、各センサの能動共振回路における共振信号の変動を処理して、連続する時間間隔で判定されたキーの位置の変化からキーの近似速度を判定するように構成される。このようにして判定された速度は、キー速度に依存してフィルタリングされてよい。例えば、キーが低速で動いているときは、より大きなフィルタリング/平滑化を適用する。これにより、高速で動くキーの応答時間を大幅に損なうことなく、キーが低速で動いているときに正確なデータを提供することが可能となる。
【0070】
より一般的には、プロセッサは、共振信号の振幅および/または他の変動を処理して、例えばキー位置および/または速度の判定結果から、各キーについてのキー押圧イベントおよびキー解放イベントを判定してもよい。プロセッサはこのように、各キー/各アクティブなキーについての押圧イベント信号/解放イベント信号を出力することができる。
【0071】
いくつかのアプローチでは、一連のキー位置またはキーの動きプロファイルを用いて、例えばキー位置の軌道を外挿することによって、押圧された(または解放された)キーがキー押圧位置(またはキー解放位置)に達する時点を予測してもよい。予測位置は、後段でKと呼ばれる位置でもよい。
そしてプロセッサは、実際のキー押圧(またはキー解放)位置に達するより前に、キー押圧信号(またはキー解放信号)を発行すればよい。これは、処理遅延、例えばコンピュータゲームにおけるレイテンシーを補償するために有利であり得る。
【0072】
いくつかの実施態様では、一連のキー位置またはキーの動きプロファイルを用いて、例えば、キー押圧イベントの発行前および/または発行後に、または、キー押圧イベント/キー解放イベントを発行する代わりに、コンピュータゲームキャラクタの動きを制御する信号をコンピュータに供給してもよい。
【0073】
いくつかの実施態様では、プロセッサは、さらに、少なくとも3つの異なるキー位置、すなわち、第1にキー開放位置、第2にキー押下位置と、第3にアフタータッチ位置とを相互に区別するように構成されてもよい。アフタータッチ位置は、キー押下位置を超えた位置であってもよく、押下の後にキーに印加される追加圧力に対応してもよい。プロセッサは、キーがアフタータッチ位置に向けて動くとき/またはアフタータッチ位置から動くときのキーの位置および/または速度を判定して、例えば可変圧力センサとして作用してもよい。あるいはプロセッサは、アフタータッチ位置に達した時点を特定してもよい。アフタータッチ位置は、例えば、キーへの追加圧力の印加の結果、通常の押下位置を超えたキーの動きに対応する。各キーは、圧縮バネ/引張バネもしくは圧縮可能な素子もしくはブロック等の弾性付勢体または変形可能エンドストップデバイスを備えてもよい。この構成により、キーの押し下げ部分がデバイスと相互作用し、キーに対して追加の圧力が印加されない限り、デバイスによってさらなる動きが抑制される。追加圧力が印加されると、キーはそのアフタータッチ位置に向かって動く。アフタータッチ位置を各キーについて検出可能としてもよい。
【0074】
例えば、最大キー押圧位置とアフタータッチ検出開始との間に圧調節キー移動距離(デッドゾーン)を設け、アフタータッチの開始前に必要な圧力量を設定可能としてもよい。
【0075】
複数のセンサのセットは、プリント回路基板等の基板上に設けられてよい。これらのセンサは、特に、キーボードのキー位置に対応する位置に、基板に沿って配置される。より具体的には、受動共振回路がキーに位置する場合には、センサは隣接して配設されてよい。能動共振回路用のコイルは基板上にトラック状に形成されてもよく、例えばパンケーキコイルを構成する。複数のセンサのセットは、キーボード全体またはキーボードの長さの一部についての複数のセンサであってもよい。前述した複数のセンサのセットを1または複数セット備えたキーボードも提供される。
【0076】
概して、複数のセンサのセットのプロセッサ/コントローラは、いかなる種類の処理デバイス/回路であってもよい。例えば、プログラムコードで制御されるマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはFPGA(フィールドプログラム可能ゲートアレイ)もしくはASIC(特定用途向け集積回路)等のハードウェアのうちの1または複数を備えた処理装置/回路であってもよい。いくつかの実施態様では、複数のセンサのセット用の制御機能/処理機能を、単一の集積回路内に備えてもよい。
【0077】
プログラム可能デバイスが利用される場合、プロセッサは、関連付けられた作業メモリと、上述した機能の一部または全部を実装するようにプロセッサを制御するためのプロセッサ制御コードを記憶する不揮発性プログラムメモリとを有してもよい。したがって、上述した機能を実行するためのコードおよび/またはデータを伝送する、不揮発性メモリ等の非一過性のデータキャリアも提供される。コード/データは、解釈もしくはコンパイルされた従来のプログラミング言語でのソースコード、オブジェクトコードもしくは実行可能コードで構成されてもよい。またはVerilog(商標)等のハードウェア記述言語用のコードなど、ASICもしくはFPGAを設定もしくは制御するためのアセンブリコード、コード/データで構成されてもよい。当業者に理解されるように、そのようなコードおよび/またはデータは、互いに通信する複数の接続された構成要素の間で配信されてよい。
【0078】
例えばコンピュータキーボードの複数のキーの位置を検知する方法も提供される。この方法は、例えば、キーの移動部に搭載するための受動共振回路と、例えば、固定の基準位置、例えばキーボードの一部に搭載するための能動共振回路とを備えるセンサを各キーに設けてもよい。いくつかの実施態様では、受動共振回路は共振周波数を有し、能動共振回路は、共振周波数において受動共振回路を励起する。各センサはさらに検出器を備えてもよく、検出器は、能動共振回路と受動共振回路との相対的位置により、能動共振回路における共振信号の変動を検出し、キーの位置および/または速度を検出する。検出器は共有されてもよい。当該方法は、さらに、同一の共振周波数を有するキーボードセンサが非隣接となるように配置された2以上の異なる共振周波数で動作する複数のセンサを配置してもよい。追加的にまたは代替的に、当該方法は、さらに、少なくとも能動共振回路の1または複数のコイルを、また、任意選択で受動共振回路についての1または複数のコイルも、逆向きの巻線を有するように構成することによって、センサ間の干渉を低減してもよい。
【0079】
当該方法は、さらに、少なくとも3つの相異なるキー位置、すなわち第1にキー解放位置、第2にキー押下げ位置、および第3にアフタータッチ位置を区別することによって、キーごとのアフタータッチを可能としてもよい。この場合、アフタータッチ位置は、キー押下位置を超えた位置であり、エンドストップ位置を超えたキーの押下および移動の後にキーに印加される追加の圧力に対応する。
【0080】
位置、速度、および、キーボード上の複数の可動キーに印加される圧力の測定値から導出された出力信号を供給するキーボード、特に、コンピュータキーボードがさらに提供される。可動キー上のアクチュエータモーションセンサから測定値を導出してもよい。各アクチュエータモーションセンサは、能動同調共振回路と、共振周波数で当該能動同調共振回路を駆動するための、能動同調共振回路に接続された駆動電子回路と、可動キーに関連付けられた電気的リアクティブ素子とを備え得る。任意選択で、駆動電子回路はセンサ間で共有される。電気的リアクティブ素子は、能動同調共振回路に対する電気的リアクティブ素子の相対的な位置に応じて、能動同調共振回路の応答を可変に修正してもよい。キーボードは、能動同調共振回路に対する電気的リアクティブ素子の相対的な位置に応じて可変の出力信号を供給するための、能動同調共振回路に接続された読出し電子回路をさらに備えてもよい。読出し電子回路の可変の出力信号は、アクチュエータモーションセンサ出力を提供してもよい。
【0081】
好ましくは、ただし必須ではなく、電気的リアクティブ素子は、能動同調共振回路が駆動される周波数に同調した受動同調共振回路を備える。したがって、アクチュエータモーションセンサは単一の共振周波数で作動される。このアプローチの利点には、次のようなものがある。第1に、あるサイズのアクチュエータモーションセンサに対して、より大きな有効検知距離が達成され得る。第2に、アクチュエータモーションセンサの出力信号では、検知された位置の変動に対してより大きな変動が取得可能である。よって、アクチュエータモーションセンサ用の出力増幅器が不要となる場合が多く、複雑さおよびコストを削減することができる。第3に、近接配置された複数のアクチュエータモーションセンサの動作が容易となる。なぜならば、第2のアクチュエータモーションセンサが第1のアクチュエータモーションセンサの共振周波数とは大幅に異なる共振周波数に同調されている場合、第1のアクチュエータモーションセンサの共振周波数に同調した当該第1のアクチュエータモーションセンサの受動同調共振回路は、第2のアクチュエータモーションセンサの出力に実質的に影響しないことを本件発明者は見出したからである。
【0082】
広義には、共振周波数の例示的範囲は、寄生容量の有害な影響に対して速さを均衡させる1~10MHzである。例えば、第1の共振周波数は3~4MHzの範囲内であってもよく、第2の共振周波数は4~5MHzの範囲内であってもよい。
【0083】
能動同調共振回路および受動同調共振回路で用いるコイルを、プリント回路基板上のトラックで画定される平らなまたは平面のコイルで形成するのが特に有利であることがわかっている。これは、明確に定義された再現可能な形状を達成するのに役立ち、他の電気的に能動的な構成要素をプリント回路基板上で近接して配置することが容易になる。
【0084】
アクチュエータモーションセンサから放射される電磁放出を最小限にし、かつ、アクチュエータモーションセンサの電磁干渉信号に対する感受性を最小限にするために、能動同調共振回路のコイルを、電気的に接続された複数の「より小さな」一次コイルから形成してもよい。ここで、一次小コイルの巻線方向は、一次小コイルから放射される遠方電磁界の合計が実質的にゼロとなるように選択される。この場合、受動同調共振回路に用いるインダクタンスコイルは、一次小コイルのサブセットのみに誘導結合されるか、または複数の電気的に接続された二次小コイルで構成されてもよい。この場合、二次小コイルの巻方向および巻数は、アクチュエータモーションセンサの出力信号の変動を最大限にするように選択されてもよい。
【0085】
上述したシステムおよび方法は、キーボードとの使用に特に有利であるが、それらの適用はキーボードに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1aおよび
図1bは、それぞれ、システムの例示的な実施態様で用いる能動同調共振回路および受動同調共振回路を示す。
【0087】
図2は、本システムの実施態様例で用いる同期復調器を備える読出し電子回路の一例を示す図である。
【0088】
図3aおよび
図3bは、それぞれ、能動同調共振回路および受動同調共振回路用のプリント回路設計例を示す。
【0089】
図4aおよび
図4bは、それぞれ、キーアセンブリを有するキーボードで用いる能動同調共振回路および受動同調共振回路用の、逆向き巻線のコイルを備えたセンサ共振回路の例を示す図である。
【0090】
図5は、同時にアクティブな対のコイルが逆方向に巻かれたコンピュータキーボード用の能動同調共振回路のコイルのプリント回路設計例を示す図である。
【0091】
図6aから
図6dは、それぞれ、キーボードキー用のアクチュエータブロックの断面図、アクチュエータブロックの等角図、複数のアクチュエータブロックを備えるコンピュータキーボード、およびコンピュータキーボード用のヒンジ式アクチュエータの一例を示す。
【0092】
図7は、コンピュータキーボード用の複数の能動同調共振回路の多重化に使われる時分割多重化回路のタイミング図である。
【0093】
図8は、キーボードの複数のアクチュエータの位置を判定する複数の能動同調共振回路を多重化する時分割多重化システムの回路図である。
【0094】
図9は、アクチュエータモーションセンサの出力とキーボードのアクチュエータのキー変位に対するアクチュエータモーションセンサの出力とのプロットを示す。
【0095】
図10は、キーボードにおけるキー押下時の測定位置および測定速度の例を示す。
【0096】
図11は、キーボードにおけるアクチュエータキーの検出位置をキャリブレーションするためのキャリブレーション手順の一例を示す図である。
【0097】
図12は、キーボードのアクチュエータのキーオンイベント、キーオフイベント、表現イベント、および圧力イベントの検出に用いる処理の一例を示す図である。
【0098】
図13は、コンピュータ入力装置の検知システムの一実施態様例のブロック図を示す。
【0099】
図では、同様の要素は、同様の参照数字で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0100】
図1aを参照すると、能動同調共振回路は、入力抵抗素子4と、コイル1と、2つの容量素子2および3と、出力抵抗素子5と、駆動電子回路を入力抵抗素子に接続する手段6と、読出し電子回路を出力抵抗素子に接続する手段7とを備える。入力抵抗素子を省略してもよいが、入力抵抗素子は好ましい。なぜなら、入力抵抗素子は駆動電子回路から能動同調共振回路に供給される電流を制限する結果、動作電流を削減する。また、電力消費と能動同調共振回路からの電磁放出との両方を削減する。また、入力抵抗素子は、読出し電子回路が能動同調共振回路に接続されたときの近接検出の感度を増大する。出力抵抗素子を省略してもよいが、出力抵抗素子もまた好ましい。入力抵抗素子および出力抵抗素子により、能動同調共振回路のインピーダンスに対する接続配線の影響が低減されるため、駆動電子回路への接続および読出し電子回路への接続長にかかわらず、すべてのアクチュエータモーションセンサを本質的に同一にすることができるからである。
【0101】
図1bを参照すると、リアクティブ素子は、好ましくは、コイル8および容量素子9を備える受動同調共振回路である。ここで、コイルおよび容量素子は、閉共振LC回路を形成するように接続される。コイル1および8のサイズも、それらのインダクタンスの値も、実質的に同様である必要はない。容量素子9の静電容量の値としては、好ましくは、受動同調共振回路の共振周波数が
図1aの能動同調共振回路の共振周波数と一致するように受動同調共振回路の共振周波数を調整する値が選択される。受動回路と能動回路とがこのように同調すると、複数のアクチュエータモーションセンサを作動させることが可能である。近接して位置するアクチュエータモーションセンサは実質的に異なる共振周波数に調整され、これにより、近接して位置するアクチュエータモーションセンサ間の相互作用を最小限にする。さらに、受動回路および能動回路がこのように同調すると、
図1aの出力7における信号振幅は、受動回路と能動回路との間の距離が減少するほど低下する。というのは、より多くのエネルギーが、受動同調共振回路に結合されて受動同調共振回路によって放散されるからである。信号振幅のこうした変動は好ましい。なぜなら、信号振幅の変動を測定する方が、能動同調共振回路がリアクティブ素子に近接することにより離調されてしまった場合の共振周波数の変動の測定よりも速いからである。
【0102】
駆動電子回路は、能動同調共振回路の共振周波数に等しい周波数または近い周波数の振動電圧駆動波形の生成器を備える。典型的には、一例では、この波形はマイクロコントローラタイマーまたはデジタルもしくはアナログのタイミング回路の出力によって生成される方形波形である。
【0103】
読出し電子回路は、読出しポイント7における信号の振幅に比例する電圧を生成する手段を備える。
【0104】
図2を参照すると、一例では、読出し電子回路は同期復調器回路であってもよい。例えば、読出しポイントからの信号はポイント20に接続され、例えばアナログスイッチ22によって復調される。アナログスイッチ22は、位相シフト素子21によってその位相が任意選択で調整される19に接続される振動電圧駆動波形によって制御される。出力ポイント25では、例えば、抵抗素子23および容量素子24を備えたローパスフィルタによって低周波数(またはdc)電圧となる。代替の読出し電子回路は、位相感応整流器、位相非感応整流器、非同期復調器、またはピーク検出器等であってもよい。
【0105】
能動同調共振回路および受動同調共振回路で用いられるコイル1および8は、どのタイプであってもよい。ただし、プリント回路基板上にトラック状に形成された平面らせんコイルを使用した場合には主な利点が3点ある。コイルは安価であり、高度に再現可能なインダクタンス値で作ることが可能である。また、プリント回路基板は、容量素子2、3、9、および抵抗素子4および5といった他の構成要素を搭載するために使うこともできる。したがって、インダクタンス値がほぼ一致した複数のコイルを設計することが可能である。
【0106】
図3aを参照すると、能動同調共振回路の一例は、単一の導電性レイヤまたは複数の導電性レイヤを備えるプリント回路基板上に形成されてもよい。実施態様では、コイル1は、連続するらせん状トラックから成り、トラックの電気的の連続性は、接続配線、または別の導電レイヤ上の別のらせん状トラック、またはプリント回路基板の複数の導電レイヤ上の複数のらせん状トラックに対する、接続ビア53を介した電気的接続によって維持される。また、容量素子2および3、ならびに抵抗素子4および5が近接して配置され、接続ポイント6および7が駆動電子回路および読出し電子回路用に対してそれぞれ設けられる。
【0107】
いくつかの実施態様では、例えば、キーボードが複数の取り外し可能なアクチュエータブロックを備える場合、能動同調共振回路は、バックプレーン上に形成されてもよい。バックプレーンは、プリント回路基板であってもよい。いくつかの実施態様では、バックプレーンは、位置合わせのためにアクチュエータブロックの一部、例えば突起を収容するための開口部60を備える。
【0108】
図3bは、受動同調共振回路の一例を示す。受動同調共振回路は、単一の導電性レイヤまたは複数の導電性レイヤを備えるプリント回路基板上に形成してもよい。実施態様では、コイル8は、連続するらせん状トラックから成り、トラックの電気的な連続性は、接続配線、または別の導電レイヤ上の別のらせん状トラック、またはプリント回路基板の複数の導電レイヤ上の複数のらせん状トラックに対する、接続ビア54を介した電気的接続によって維持される。また、容量素子9が近接して位置する。
【0109】
いくつかの実施態様では、受動同調共振回路は、アクチュエータブロックの一部を形成し、プリント回路基板上に形成されていてもよい。プリント回路基板は、後述するように、例えばアクチュエータブロックの可動上部部材へのプリント回路基板の取り付けを容易にする開口部61を有していてもよい。
【0110】
電気的に接続された複数の一次小コイルから能動同調共振回路の誘導コイルが形成される場合には、能動同調共振回路からの電磁放出、および能動同調共振回路の電磁干渉信号に対する感受性は、実質的に低減され得る。ここで、一次小コイルの巻方向は、複数の一次小コイルから放射される遠方電磁界の合計が実質的にゼロとなるように選択される。
【0111】
誘導コイル1の一例が、
図4aに示される。ここでは、2つの一次小コイルが8の字コイルを形成するように、逆巻方向58で直列に配線接続される。このような配置では、8の字コイルの第1の半分56から放射される遠方電磁界と8の字コイルの第2の半分57から放射される遠方電磁界とは大きさが等しいが、反極性を有する。したがって、8の字コイルから放射される遠方電磁界は実質的にゼロである。
【0112】
このような配置では、
図3bに示すような受動同調共振回路は、受動同調共振回路の誘導コイルが能動同調共振回路の8の字コイルの半分56または半分57の1つのみに主として誘導結合されない限り、非効率的となる可能性がある。
【0113】
アクチュエータモーションセンサの出力信号を最大限にするために、
図4bに示すように、受動同調共振回路の誘導コイルを8の字誘導コイルで同様に形成してもよい。8の字誘導コイルは、例えば、逆巻方向58で直列に配線接続された2つの二次小コイルを備え、各二次小コイルは、能動同調共振回路の8の字コイルの、異なる一次小コイルに主として誘導結合される。
【0114】
第1の能動同調共振回路の第1の共振周波数に同調された第1の受動同調共振回路は、実質的に異なる第2の共振周波数に同調した隣接する第2の能動同調共振回路の出力に実質的に影響しないが、第2の共振周波数に同調した対応する第2の受動同調共振回路が近接して位置するとき、第1の受動同調共振回路が動くと、第1の受動同調共振回路と第2の受動同調共振回路とが相互に結合することにより、第2の能動同調共振回路の出力に影響し得る。このような望ましくない相互作用は、物理的に隣接する受動同調共振回路の位置を、オフセットしなければこれらの回路が占有するであろう位置からオフセットすることによって最小限にすることができる。
【0115】
いくつかの実施態様では、キーボードの可動キー上のアクチュエータモーションセンサは、アクチュエータモーションセンサのサブセットが任意の時点でイネーブルされる時分割多重化方式を用いて検査される。このスキームは、16個以上等の多数のキーを持つ典型的なキーボードについて、コスト、複雑さ、電力消費および電磁放出を削減するという利点を有し得る。
【0116】
第1の共振周波数で動作する第1のアクチュエータモーションセンサおよび実質的に異なる第2の共振周波数で動作する第2のアクチュエータモーションセンサが近接して位置する場合、第1の共振周波数と第2の共振周波数との周波数差に等しい変動周波数で変動する干渉成分を第1のアクチュエータモーションセンサの出力および第2のアクチュエータモーションセンサの出力が含むように、これらのアクチュエータモーションセンサが相互作用し得る。再構成ローパスフィルタのカットオフ周波数が周波数差よりも実質的に低い場合、アクチュエータモーションセンサの出力を同期復調することにより、干渉成分は実質的に取り除かれる。しかし、ローパスフィルタの時間応答はアクチュエータモーションセンサの応答の速さを制限し得るため望ましくない。したがって、この干渉を最小限にするための機構が望まれる。物理的に隣接するセンサが同時に駆動されない時分割多重化方式を使うことにより、この問題が回避され得る。
【0117】
しかし実際には、良好な性能を確保するために同期復調は必要ないことがわかっている。
【0118】
1以上の能動同調共振回路が同時に駆動される実施態様では、電磁放射を低減するためには、同時に駆動されたときに、コイルのある割合(例えば半分)が一方向に巻かれ、残りのコイルが逆方向で巻かれているように、能動同調共振回路のコイルの巻線方向を構成することが有利である。このようにして、コイルから放射される遠方電磁界の合計は、すべてのコイルが同一の方向で巻かれている場合と比較して大幅に減少し得る。
【0119】
図5は、コンピュータキーボード、例えばプリント回路基板の能動同調共振回路のコイルの配置を模式的に示す。キーボードの一例は、
図6を参照して後述する。複数の能動同調共振回路は時分割多重化方式によって駆動される。コイル内の数字は各コイルが駆動される期間であるタイムスロットを示す。各コイルの巻線方向58も示されている。コイルはグループ化されている。グループ1とグループ2を考えると、各タイムスロットでは、2つのコイルのみがアクティブであり、これらは逆向きで巻かれている。同様に、グループ3とグループ4においても、各タイムスロットで2つのコイルのみがアクティブであり、これらは逆向きで巻かれている。このような配置は、任意数のグループと任意数のタイムスロットに拡張することができ、ひいては、キーボードの任意数のキーに拡張することができる。能動同調共振回路のコイルの大部分には、逆向きで巻かれた対応するコイルが設けられている。遠方界における電磁放射の打ち消しを促進するためである。
【0120】
複数のキーを有するキーボードを備えた、上記検知システムの実施態様の一例について説明する。
【0121】
図6aおよび
図6bは、コンピュータ入力装置の検知システムを示す。図示のように、キーボードのキーを示し、先に説明したような電子機器の図示を省略する。同様の配置が、例えばゲームコントローラのボタンやコンピュータマウスに採用されてもよい。
図6aおよび6bの配置は、キーアセンブリとして記載されてもよい。
【0122】
コンピュータ入力装置は、装置のアクチュエータのケーシングを含んでもよく、ケーシングは、上部ハウジング部分63と下部ハウジング部分62とを備えてもよい。検知システムはアクチュエータ15を備え、このアクチュエータ15の移動軸65に沿う移動はケーシングによって制限されてもよい。アクチュエータ15は、キーまたはボタンに取り付けられるように構成されてもよいし、キーまたはボタンを備えるように構成されてもよい。例えば、
図6では、アクチュエータ15の上部は、キートップまたはボタンへの取り付けに適した十字形状である。
【0123】
アクチュエータ15は、バイアス素子16によって動きに抵抗する。バイアス素子はバネまたは他のバイアス素子であってもよく、アクチュエータ15を軸65に沿って付勢し、能動的共振回路と受動的共振回路とを分離する(後述)。ケーシングは、アクチュエータをケーシング内に保持するためのリップまたは他の保持機構67を備える。検知システムは、アクチュエータの動きを制限するために、変形可能エンドストップ68を含んでもよい。
【0124】
検知システムは、バックプレーン10a上に図示される能動同調共振回路10を備えたアクチュエーションモーションセンサを有している。能動同調共振回路10は受動同調共振回路11に誘導結合されている。受動同調共振回路11は、アクチュエータ15によって移動するように構成されている。実施態様では、受動同調共振回路11は、アクチュエータ15の可動上部部材に取り付けられている。アクチュエーションモーションセンサは、能動同調共振回路10と受動同調共振回路11間の相互間隔の変化に応じて変動するRF信号を供給する。駆動電子回路および読出し電子回路は、能動同調共振回路11に接続されている。上述したように、RF信号を処理して、アクチュエータモーションセンサに関連付けられたアクチュエータの位置および/または速度を判定することが可能である。
【0125】
実施態様では、装置ケーシングは、アクチュエータブロックを画定する。実施態様では、アクチュエータブロックは、取付面64(例えば、平面または湾曲した金属またはプラスチックプレート)に取り外し可能に嵌合されるように構成される。いくつかの実施態様では、
図6aおよび
図6bに示すように、アクチュエータモーションセンサの能動同調共振回路10は、アクチュエータブロックとは別体であってもよい。能動同調共振回路とアクチュエータブロックとの間の直接的な電気的接続は必要なく、よって、能動同調共振回路に接続された駆動電子機器および読出し電子機器への直接的な電気的接続も必要ない。このような配置は、クリップまたは他の保持装置66によって(または単に押込嵌合によって)、アクチュエータブロックをキーボードの取付面64から取り外し、実質的に類似するアクチュエータブロックだけれども潜在的には異なる機械的特性(例えば異なるバネ強度)を有するアクチュエータブロックと交換することが可能になる。したがって、実施態様では、電気的接続の一体性を損なうことなく、異なる特性を有するアクチュエータブロックどうしを交換することが可能である。これらの特性は、バイアス素子16の抵抗力、アクチュエータ15の移動距離、アクチュエータブロックの触覚応答、変形可能エンドストップ68の変形能、変形可能エンドストップ68が下部ハウジング62に接触したときの音響音を含むが、これらに限定されるものではない。
【0126】
図6cは、
図6aおよび
図6bに示すタイプのキーアセンブリを備えたキーボードの一例を示す。
【0127】
図6dは、コンピュータ、例えばラップトップキーボードのヒンジ式キーに使用され得るキーアセンブリの一例を示す。キーは、受動同調共振回路11を搭載したヒンジ式アクチュエータ70からなる。ヒンジ式アクチュエータ70は、別個のキートップを担持する必要はないが、支点72で蝶番式に動いてもよい。ヒンジ式アクチュエータ70が電気的に導電性である場合には、受動同調共振回路11は、非導電性のエアギャップまたはスペーサ74に取り付けられていてもよい。バックプレーン76は、能動同調共振回路10を担持してもよく、この場合にもエアギャップまたはスペーサ78を任意選択で備えてもよい。ヒンジ式アクチュエータ70は、例えばバックプレーンに取り付けられた、変形可能エンドストップ80を備えてもよい。バネなどのバイアス素子82は、ヒンジ式アクチュエータを付勢して、受動的共振回路と能動的共振回路とを分離する。
【0128】
一例では、ラップトップキーボードのヒンジ式キーは、支点を中心に回転し、バネまたは他の機械的な連動によって動きに抵抗する可動式のトップ部材と、固定式のボトム部材と、前記トップ部材の動きを制限する任意選択の変形可能エンドストップと、位置センサとを備え、位置センサは、電気的リアクティブ素子(以下、ターゲットと呼ぶ)に誘導結合された能動同調共振回路と、能動同調共振回路に接続された駆動用電子回路と、能動同調共振回路に接続された読出し電子回路とを備える。位置センサは、前記能動同調共振回路と前記ターゲットとの相互分離の変化に応じて変動する信号を供給する。
【0129】
別の実施態様では、キーボードの代替キー、すなわち代替アクチュエータモーションセンサは、異なる周波数で駆動されるように構成されてもよく、例えば、各第1共振周波数F1および第2共振周波数F2で動作するように構成されてもよい。この態様は、前述の実施態様と組み合わせてもよい。キーのサブセット、すなわちアクチュエータモーションセンサのサブセットのうち、各タイムスロットにおいては第1の共振周波数で動作する1つのアクチュエータモーションセンサのみがイネーブルされ、第2の共振周波数で動作する1つのアクチュエータモーションセンサのみがイネーブルされてもよい。さらに、実施態様では、物理的に隣接するアクチュエータモーションセンサが同時にイネーブルになることは一切なく、干渉成分を最小限に抑制可能である。アクチュエータモーションセンサの複数のサブセットが同時に動作してもよい。
【0130】
多重化スキームの一例を
図7に示す。検知システムのアクチュエータモーションセンサは、例えば、
図7の黒と白のバーで示されているように、相互に直接非隣接のキーを備えた空間グループに分割されていてもよい。あるキーグループの複数のセンサは、別のキーグループの複数のセンサとは異なる共振周波数を有し得る。例えば、黒いバーで例示される1つのグループでは、8個のタイムスロットがあり、8個おきのキーが同時にアクティブ化される(駆動される)。このアプローチは、k個おきのキーを同時に駆動する(すなわち、同時に駆動されるキーが、間にk-1個の非アクティブキーを有する)、k個のタイムスロットに適応されてもよい。例えば、黒と白のバーで例示される、同時にアクティブなグループのキーは、可能な限り(物理的に)分離されてもよい。
【0131】
例えば、実施態様では、同時に駆動されるキーセンサが少なくとも(k-1)個のキーによって分離されるか、または囲まれるように、RF駆動信号を多重化する多重化システムが提供される。(k-1)は1以上の整数であり、少なくとも1の検出器が、駆動されるアクチュエータモーションセンサからのRF信号のレベルを検出する。
【0132】
システムのいくつかの実施態様では、異なる共振周波数の異なるキーグループを採用しない。代わりに、すべてのセンサが実質的に同じ共振周波数を有し得る。前述の逆巻きのコイル設計によってこのようなアプローチを容易に利用できるようになる。このように、k個のタイムスロットがあってもよく、k個おきのキーが同時にアクティブになって(駆動されて)もよい。
【0133】
図8に、単一の共振周波数で動作する複数のアクチュエータモーションセンサのセットまたはサブセットを駆動するように構成された時分割多重化方式のコントローラの一例を示す。
図8のシステムでは、プロセッサ35は、アクチュエータモーションセンサの能動同調共振回路の共振周波数と周波数が一致する駆動波形36を生成する。プロセッサは、どのアクチュエータモーションセンサをイネーブルすべきかを選択するセレクタ信号37を生成する。アクチュエータモーションセンサの出力7はアナログマルチプレクサ34に結合される。アナログマルチプレクサの出力は、容量素子24とアナログマルチプレクサ内の抵抗素子とを備えるローパスフィルタを介して、プロセッサ内のAD変換器に結合される。プロセッサからの出力55は、アクチュエータモーションセンサの位置および速度に関する情報の送信に用いられる。アクチュエータモーションセンサの出力をAD変換器に結合する際にアナログマルチプレクサを採用することのさらなる利点として、アナログマルチプレクサが、同期復調に使われるアナログスイッチ22の機能を実行可能な点がある。これにより、アナログマルチプレクサの出力を、駆動波形36に結合されたイネーブル入力39を介して、同期してイネーブルまたはディスエーブルにすることが可能である。複数のアクチュエータモーションセンサが実質的に異なる共振周波数で作動される場合、時分割多重化方式は、必要に応じて複製され得る。好適なプロセッサはARM Cortex-M0である。
【0134】
図8は、デマルチプレクサ/マルチプレクサを1つのみ示すが、複数の共振周波数を用いる場合、用いる共振周波数の各々について1つのデマルチプレクサ/マルチプレクサを採用してもよい。例えば、キーボードの交互に並ぶキーに共振周波数を交互にマップする場合、第2のデマルチプレクサ/マルチプレクサを用いてもよい。
【0135】
例えば、部品公差のバラツキが原因で、アクチュエータモーションセンサの能動同調共振回路または受動同調共振回路の離調が生じる。ダイオード40、容量素子24および任意選択で抵抗素子41またはスイッチング素子42(容量素子24上の電荷をリセットする)を備えるピーク検出回路に、(任意選択の)同期復調回路の出力を結合することによって、離調に対する感度の抑制が容易となり得る。スイッチング素子が使われる場合には、スイッチング素子は、マルチプレクサの制御に用いられるセレクタ信号に同期して、検出されたピークレベルをリセットしてもよい。
【0136】
検出器(読出し回路)からの信号は、例えばプロセッサ35のアナログ入力に一体化された、AD変換器38に入力されてもよい。
【0137】
ディスエーブルしたアクチュエータモーションセンサの能動同調共振回路が駆動中でない場合、能動同調共振回路は同調アンテナとして作用する。これは悪影響を有する。この悪影響により、ディスエーブルしたアクチュエータモーションセンサに対応するターゲットを動かすと、同様に同調したアクチュエータモーションセンサの出力に測定可能な変動が生じ得る。これは、同様に同調したアクチュエータモーションセンサが、ディスエーブルしたアクチュエータモーションセンサに物理的に隣接せず、かつ、ターゲットの動きが、ディスエーブルしたアクチュエータモーションセンサの上部における通常限度内に制約される場合であっても、同様である。この悪影響は、ディスエーブルの期間中、ディスエーブルしたアクチュエータモーションセンサの能動同調共振回路の共振周波数を変更することによって、例えば、能動同調共振回路の静電容量、抵抗、またはインダクタンスを電子スイッチによって変更することによって、削減され得る。これには、ディスエーブルしたセンサを直流電流または低周波数信号で駆動し、共振を防止するのが最も簡単である。
図8を参照すると、時分割多重化方式でこれを達成する方法としては、能動同調共振回路の入力6を駆動する際にデジタルデマルチプレクサ33を用いる方法がある。イネーブルしたアクチュエータモーションセンサの能動同調共振回路は、能動同調共振回路の共振周波数での波形36によって駆動され、ディスエーブルしたアクチュエータモーションセンサの能動同調共振回路は、デジタルデマルチプレクサの論理ハイレベルまたは論理ローレベルに対応する直流電流信号によって駆動される。
【0138】
キーボードの性能が、動作温度の範囲にわたって安定することが重要である。本明細書に記載するアクチュエータモーションセンサが用いる同調共振回路は、特に、同調共振回路がプリント回路基板上に形成され、かつ、同調共振回路の容量素子が温度安定誘電体(クラス1誘電体)である場合、優れた温度安定性を有するが、回路内の他の電子素子は、温度で変化する特性を有する場合がある。これにより、動作温度の変動に伴いアクチュエータモーションセンサの出力信号が変動する可能性がある。そのような電子素子は、ダイオード40、デジタルデマルチプレクサ33、アナログマルチプレクサ34、抵抗素子4、5、41、プリント回路基板上のトラック、ならびに電圧調整器を含むが、それらに限定されない。したがって、動作温度の変動が原因で生じるキーボード上の複数のアクチュエータモーションセンサの出力信号の変動を最小限にするために、温度補償方式が有用であり得る。
【0139】
温度補償方式の一例では、アクチュエータモーションセンサの受動同調共振回路がアクチュエータモーションセンサの出力信号に対して影響を与えないようにアクチュエータモーションセンサの能動同調共振回路を直流電流または低周波数信号で駆動する間、アクチュエータモーションセンサの出力信号の複数の測定を行い、複数の測定のうちの第1の測定はキャリブレーション手順中に実行され、後続の測定は定期的に、典型的には時分割多重化方式の追加タイムスロット内に実行され、第1の測定から後続の測定を減算することによって出力信号内の温度依存オフセットを算出し、位置を測定するために、能動同調共振回路が能動同調共振回路の共振周波数に等しい周波数または近い周波数で駆動されているときの出力信号の測定にオフセットを加算する。このような温度補償方式では、キーボードにおける各アクチュエータモーションセンサに対して、キーボードにおけるアクチュエータモーションセンサの各グループに対して、またはキーボードにおけるすべてのアクチュエータモーションセンサに対して、1つの温度依存オフセットを使用してもよい。
【0140】
可動キーを備えたキーボードでは、上述したような多重化方式を利用することにより、キーの位置を高速で正確に測定することが可能となる。例えば、
図8に示す例を多重化することが可能である。ここで、セレクタ信号37の更新頻度は少なくとも32,000Hzであり、したがって、8つの可動キーからなるサブセット内の各可動キーの位置を、4,000Hzの頻度において判定可能となる。この例を複製して、可動キーの他のサブセットに対して並行して実行してもよく、したがって、例えば101個のキーまたは104個のキーを備えたキーボードにおいて、これらのキーの位置が、少なくとも404,000または416,000キー/秒のレートで判定可能となる。キー/ボタンのオン・イベントおよびキー/ボタンのオフ・イベントのタイミングを適切に精度良く行うことを可能とし、かつ、任意選択で、イベントに関連付けられたアクチュエータの速度を判定するために、理想的には、例えば、101個のキーまたは104個のキー用に少なくとも約26,000キー/秒のレートに対応する少なくとも毎秒250回、キーの位置を判定すべきである。上述したシステムの実施態様は、これらの目標を容易に超える。
【0141】
図9を参照すると、上記システムの実装例にかかるキーボード上の可動キーが押下されたとき、キーの3つの1次位置がある。キーが静止しているときの静止位置Kmax43と、キー/アクチュエータの可動上部部材13が変形可能エンドストップと最初に接触したポイントKzero44と、典型的なユーザによってキーに印加される最大圧力のポイントに対応する最大押下ポイントKmin45である。最大押下ポイントKmin45において、変形可能エンドストップは、最大限に変形されると考えてもよい。複数の可動キーについては、機械的なバラツキにより、および電子部品公差により、第1のキーの複数の1次位置のうちのいずれか1つに位置する第1のキーのアクチュエータモーションセンサの出力信号が、同じ1次位置にある第2のキーのアクチュエータモーションセンサの出力信号と同一になる可能性は低い。したがって、いずれの可動キーの位置も可動キーの各1次位置に対して確実に既知となるように、キャリブレーション処理を行うことが望ましい。このようなキャリブレーション処理を
図11に示す。
【0142】
可動キーの位置が1次位置KmaxとKzeroとの間にある場合、キーのキャリブレーション後の位置Kは、KmaxとKzero間の押下割合として、次式K=100%×(Ko-Kzero)/(Kmax-Kzero)により、キーの測定位置Koから算出可能である。
【0143】
可動キーの位置が1次位置KzeroとKminとの間にある場合、キーのキャリブレーション後の位置Kpressは、KzeroとKmin間の押下割合、すなわち
図9の50の割合として、次式Kpress=100%×(Ko-Kmin)/(Kzero-Kmin)により、キーの測定位置Koから算出可能である。そのようなケースでは、Kpressは、キーの押下範囲50に対応する、キーに印加される圧力の量であると考えてもよい。
【0144】
いくつかの実施形態では、Kpressの算出には、オフセットKpoffを含んでもよい。これにより、Kpressは、キーの位置Koが(Kzero-Kpoff)とKminの間になるまでゼロである。すなわち、Kpress=100%×(Ko-Kmin)/(Kzero-Kpoff-Kmin)である。オフセットにより、キーの位置が変動しても、キーのキャリブレーション後の位置KもKpressも変動しないデッドゾーンが形成される。これにより、アフタータッチ閾値の実装が容易となる。
【0145】
典型的なキーボードでは、キーボードの各可動キーについて、キーの押下が2次位置Konを超えたときにキー押下げイベントを各可動キーが発行し、かつ、キーの押下が別の2次位置Koffに戻ったときにキー解放イベントを発行することが望ましい。KonがKoffに等しくなる場合があってもよいが、KonとKoffとは等しくないことが好ましい。
図9を参照すると、好ましくは、2次位置Kon48は、1次位置Kzero44に近くなるように選択される。同様に、2次位置Koff47は、2次位置Konに近くなるように選択される。
【0146】
いくつかの実施形態では、各可動キーの2次位置Koff46は、1次位置Kmax43に近くなるように選択される。そのような配置により、キーの位置を利用して、キー解放イベントの発行に先立って表現イベントを発行することが可能である。KoffとKzero間のキーの測定位置Koは、キーの押下範囲49に対応する、キャリブレーション後の表現値Kexp=100%×(Ko-Kzero)/(Koff-Kzero)の算出に利用し得る。
【0147】
図12の処理例は、システムの実施態様におけるキーボードの各可動キーに用いてもよい。このシステムにおいて、可動キーの測定位置Koが1次位置Kmax、KzeroおよびKminにより、それゆえに2次位置KonおよびKoffによりキャリブレーションされている場合、当該測定位置Koを利用してキーボードの各可動キーについてのキー押圧イベント、キー解放イベント、表現イベントおよび圧力イベントを発行してもよい。
【0148】
キーボードの可動キーの2次位置KonおよびKoffを可動キーの1次位置KmaxおよびKzeroから導出することで、単純な数値計算によって2次位置を容易に修正することができ、その結果キーボードの応答を変更可能であるという点で特に有利である。その上、そのような修正は、複数の可動キーを備えたキーボードの個々のキーごとに異ならせることができるため、キーボードに対するいかなる機械的変更も必要とすることなく、キーボードにおける広範囲の応答が可能となる。
【0149】
コンピュータシステムのさらなる制御を提供するために、キー押圧イベントに関する速度情報と、任意選択で、キー解放イベントに関連する情報も送信することができる。この速度情報は、キー押下の2つの既知のポイント間の時間差を測定することにより、または逆に2つの既知の時点におけるキー押下の変化を測定することによって判定可能である。
【0150】
実施態様では、可動キーの速度(速さおよび方向)は、平均化、フィルタリング、または類似の方法を用いて、複数の時点におけるキーの複数の位置から判定される。一例を以下に詳しく記載する。速度を算出する方法は、他の方法と比較していくつかの利点を有する。すなわち、2点測定方法に使われるような線形速度プロファイルを想定せず、キーの押下範囲全体にわたる速度の変化を検出させるため、速度の測定値はキーの真の速度をよりよく表し、キーの応答がより一貫したものとなる。また、より多くの統計的に有効なデータ点が使われるので、高分解能および高精度の速度を判定することができる。キーの将来の位置の予測の算出が可能となり、例えば、キーの位置が2次位置KonおよびKoffと等しくなる将来の時間を推定することが可能となるため、対応する物理イベントより前に予めキー押圧イベントまたはキー解放イベントを発行することが可能となる。したがって、コンピュータシステムにおけるレイテンシーを補償する。
【0151】
フィルタリング手順の一例は、以下の通りである。
deltaV=deltaPos(すなわち、固定の時間ステップ間の位置の変化)
alpha=k*abs(deltaV)
【0152】
フィルタリング係数alphaは、deltaVの大きさに依存し、alphaは、オーバーフロー/アンダーフローを回避するために検知可能値に限定される。
速度=alpha*last_velocity+deltaV*(1-alpha)
【0153】
この方法は、デジタル領域において実行してもよく、高速で動くキーに対する時間応答を大幅に損なうことなく、フィルタリングにより分解能を改善可能である。このフィルタリングは非常に低速で動くキーにとって特に重要である。フィルタリングおよび/または最大許容速度値の修正を用いて、例えば硬めまたは柔らかめの応答を付与することができる。
【0154】
こうした方法の上記のような利点を説明するべく、
図10は、可動キーのキャリブレーション後の位置51およびキーのキャリブレーション後の速度52を示す。ここで、キーの押下は、キーの押下開始から7ms以内に1次ポイントKzero44に達する。
図10のプロットは、微分された位置から直接算出された速度に近似する。しかし、位置がゆっくりと動くと、速度フィルタリングはより重くなるので、速度が少し遅れる。上記のような方法によれば、他の方法よりも、キーボードの可動キーの速度に関して実質的に多くの情報を得ることができる。
【0155】
コンピュータキーボードのための移動検知システムならびにキーボード入力装置のための検知システムおよび方法について記載した。しかしながら、上述の技術は、デスクトップコンピュータキーボードに限定されず、例えばラップトップキーボード、産業用または科学機器用のキーボード、ゲームコントローラ、およびコンピュータマウスボタンに使われてもよい。
【0156】
例えば、いくつかの実施態様では、上述した技術を、ラップトップキーボードにおいて利用してもよい。この場合、受動共振回路および能動共振回路の一方または両方を、フレキシブルPCBに搭載してもよい。例えば、受動共振回路をキーの下側のフレキシブルPCB上に搭載してもよく、能動共振回路を下層にあるリジッドPCB上に搭載してもよい。例えば、能動共振回路と受動共振回路との間に何らかの弾性物が設けられている場合、位置を検知する能力を、キーに印加される圧力の検知に用いてもよい。いくつかの実施態様では、例えば、ラップトップ、コンピュータ、または他のキーボード等、平面もしくは曲面上にキーが2次元パターンで配置されている場合には、どのキーも2次元で隣接するキーと同時に駆動されないように、例えば上述した構成と大体において対応する方法において多重化を適用してもよい。例えば、矩形2次元グリッドでは、キーボードによって画定される表面における2つの次元の各々における交互に並ぶキーは、タイムスロットにおいて交互にアクティブであってもよく(すなわち、非隣接のキーが2組特定されてもよい)、これは、同様に非隣接のキーが複数組特定され得る六角形および他のグリッドによって画定されるキーレイアウトに拡張されてもよい。キーボードによって画定される表面において相互に隣接するキーは、ターゲットキーが読み取られる期間内において非アクティブであってもよく、および/または減衰されてもよい。ただし、前述したように、キーボードの複数のキーを同時に読み取るように多重化されてもよい。上述の技術は、安価に製造可能であるうえ、応答時間が非常に速く、例えば1ms未満であり得るので、コンピュータおよび他のキーボードにとって有利であり得る。
【0157】
図13は、前述のような信号処理部とアクチュエータモーションセンサを含む検知システム110を組み込んだコンピュータキーボード100の例を示す。コンピュータキーボードはまた、例えばアクチュエータモーションセンサの感度等の特性を定義する構成データを個別にまたはグループごとに記憶するための不揮発性メモリ120を含む。不揮発性メモリは、検知システム110に組み込まれてもよい。
【0158】
コンピュータキーボード100は、コンピュータ150に有線または無線接続によって接続されている。これにより、構成データのユーザ定義を可能にするためのユーザインタフェース160と、構成データのインポートおよび/またはエクスポートを可能にするための通信インタフェース170とが提供される。このようにして、コンピュータキーボードは、機械的に構成可能であるのと同様に、またはその代わりに、電子的に構成可能であってもよい。
【0159】
本発明のさらなる態様は、以下の節に記載されている。
【0160】
1.コンピュータキーボードのための検知システム。検知システムは、複数のキーセンサを備えてもよい。各キーセンサは、例えばキーの移動部に搭載するための受動共振回路、および例えば基準位置に搭載するために能動共振回路を備えてもよい。実施態様では、受動共振回路は共振周波数を有し、能動共振回路は、共振周波数において受動共振回路を励起するように構成される。検知システムは、共振周波数のRF駆動信号を用いて能動共振回路を駆動するための少なくとも1のセンサドライバをさらに備えてもよい。当該センサドライバは、複数のセンサ間で共有してもよい。実施態様では、検知システムは、同時に駆動されたキーセンサが少なくとも(k-1)個のキーによって(物理的に)分離されるように駆動信号を多重化する、1以上のマルチプレクサおよび/またはデマルチプレクサ等の多重化システムをさらに備えてもよい。ここで(k-1)は、1以上の整数である。したがって、実施態様では、あるキーは、隣のキーと同時には(または少なくともk個のキーだけ離れたキーと同時には)駆動されない。検知システムは、駆動されたキーセンサからRF信号のレベルを検出するための、少なくとも1の検出器、例えば読出し回路および/またはマイクロプロセッサをさらに備えてもよい。これは、キーセンサに関連付けられたキーの位置および/または速度を検知するために使われてもよい。少なくとも1の検出器は、能動共振回路および受動共振回路の相対的な位置により、能動共振回路における共振RF信号の変動を検出してもよく、RF信号のレベルをピーク検出してもよい。
【0161】
2.駆動されていない複数のキーセンサに対応する複数の能動共振回路を減衰させるように構成される、節1に記載の検知システム。
【0162】
3.少なくとも能動共振回路は、逆向きの巻線をもつ1または複数のコイルを備え、特に、逆向きの巻線は、互いを打ち消す逆向きの磁界を生成するよう構成される、節1または2に記載の検知システム。
【0163】
4.能動共振回路は、横方向に隣り合う一対のパンケーキコイルを備える、節1、2または3に記載の検知システム。
【0164】
5.RF信号の検出されたレベルを温度補償するための温度補償システムをさらに備え、温度補償システムは、複数の能動共振回路のうちの少なくとも1つに共振外駆動信号を印加し、少なくとも1の検出器からの共振外駆動信号のレベルを測定し、共振外駆動信号のレベルに応じてRF信号の検出されたレベルを補償するように構成される、節1から4のいずれか一項に記載の検知システム。
【0165】
6.多重化システムは、複数のキーセンサのうちの1つが、複数のタイムスロットのセットの各々において駆動されるように、駆動信号を多重化するように構成され、温度補償システムは、複数のタイムスロットのセットへの追加タイムスロットの期間中に共振外駆動信号を印加するように構成される、節5に記載の検知システム。
【0166】
7.各キーセンサは、圧力検知のために、受動共振回路および能動共振回路の一方または両方の動きを制限するための変形可能素子をさらに備える、節1から6のいずれか一項に記載の検知システム。
【0167】
8.コンピュータキーボード用のセンサのセット。キーボードは複数のキーを有する。複数のセンサのセットは、検知システムの一部であってもよい。各センサは、キーの移動部に搭載するための受動共振回路と、例えばキーボードの一部における固定の基準位置に搭載するための能動共振回路とを備えてもよい。実施態様では、受動共振回路は共振周波数を有し、能動共振回路は、共振周波数において受動共振回路を励起する。各センサは検出器をさらに備えてもよく、能動共振回路と受動共振回路との相対的位置により能動共振回路における共振信号の変動を検出することで、キーの位置および/または速度を検出する検出部をさらに備えてもよい。検出器は複数のセンサ間で共有してもよい。変動は、いくつかの実施態様では、共振信号における信号の振幅の変動であってよい。複数のセンサのセットは、コンピュータキーボードの複数のキーを検知するために搭載される場合、同じ共振周波数を有するセンサが非隣接となるように配置された、2以上の異なる共振周波数を有するセンサを備えてもよい。
【0168】
9.第1の共振周波数を有する複数のセンサは、第2の、異なる共振周波数を有する複数のセンサとインターリーブされる、節8に記載の検知システム。
【0169】
10.隣接するキーボードセンサが異なる時点において選択されるように、複数のセンサのセットうちの複数のセンサの選択を制御する多重化システムおよび/またはコントローラをさらに備える、節8または9に記載の検知システム。
【0170】
11.多重化システム/コントローラは、さらに、複数の非選択センサの複数の能動共振回路を減衰させるように構成される、節1から7および節10のいずれか一に記載の検知システム。
【0171】
12.多重化システム/コントローラは、センサの動作を時分割多重するように構成され、各共振周波数が複数のセンサのセットを画定し、時分割多重は、複数のn個のタイムスロットを画定し、各グループの連続するキーボードセンサには連続するタイムスロットが割り当てられる、節10または11に記載の検知システム。
【0172】
13.N個の共振周波数および複数のセンサのN個のグループがあり、複数のセンサの複数のグループのうちの複数のセンサはキーボード上でインターリーブされる、節12に記載の検知システム。
【0173】
14.多重化システム/コントローラは、同じグループ内で同じタイムスロットにおいてアクティブ化される複数のキーボードセンサが、当該複数のセンサの間に(n×N)-1個のセンサを有するように構成される、節13に記載の検知システム。
【0174】
15.各センサの能動共振回路における共振信号の変動を処理して、押下されたキーが解放位置と押下位置との間を動くときの一連の時間間隔にわたるキーボードの各キーの動きを判定するように構成されたプロセッサをさらに備え、特に、各キーの動きは、キーが解放位置と押下位置との間を動くときのキーの位置および速度を含む、先行する節のいずれか一項に記載の検知システム。
【0175】
16.プロセッサは、各センサの能動共振回路における共振信号の変動を処理して、キーが押下位置と解放位置との間を動くときの、キーの速度を、キー速度に応じてフィルタリングされた、連続する時間間隔で判定されるキーの位置の変化から判定するように構成される、節15に記載の検知システム。
【0176】
17.RF信号/共振信号のレベル/変動を処理して、各キーについてキー押圧イベントおよびキー解放イベントを判定するように接続されたプロセッサをさらに備える、先行する節のいずれか一項に記載の検知システム。
【0177】
18.プロセッサは、さらに、少なくとも3つの異なるキー位置、第1に、ノートオフ位置、第2に、ノートオン位置、および第3に、アフタータッチ位置を区別するように構成され、アフタータッチ位置は、ノートオン位置を超える位置であり、押下の後でキーに印加される追加圧力に対応する、節15から17のいずれか一に記載の検知システム。
【0178】
19.キーボードの複数のキーの並びに対応する並びで複数のセンサの複数の能動共振回路を支持する基板をさらに備える、先行する節のいずれか一項に記載の検知システム。
【0179】
20.先行する節のいずれか一項に記載の検知システムを備える、コンピュータキーボード。
【0180】
21.節19または20に記載の検知システムまたはキーボードを備えるポリフォニック・アフタータッチ・キーボードであって、各キーは、アフタータッチ位置が、変形可能エンドストップによって画定されるエンドストップ位置を超えるキーの移動に対応するように変形可能エンドストップを有し、キーについてのアフタータッチ位置を特定することにより、ポリフォニック・アフタータッチが可能となる、ポリフォニック・アフタータッチ・キーボード。
【0181】
22.例えば、コンピュータキーボードの、複数のキーの位置を検知する方法。この方法は、例えば、キーの移動部に搭載するための受動共振回路と、例えば、固定の基準位置、例えばコンピュータキーボードの一部に搭載するための能動共振回路とを備えるセンサを各キーに設けてもよい。いくつかの実施態様では、受動共振回路は共振周波数を有し、能動共振回路は、共振周波数において受動共振回路を励起する。各センサはさらに能動共振回路および受動共振回路の相対的位置により、能動共振回路における共振信号の変動を検出し、キーの位置および/または速度を検出する検出器を備えてもよい。検出器は共有されてもよい。当該方法は、さらに、同一の共振周波数を有するキーボードセンサが非隣接となるように、2以上の異なる共振周波数で動作するセンサを配置してもよい。追加的にまたは代替的に、当該方法は、さらに、少なくとも能動共振回路の1または複数のコイルを、また、任意に選択した場合には受動共振回路についての1または複数のコイルも、逆向きの巻線を有するように構成することによって、センサ間の干渉を低減してもよい。
【0182】
23.さらに、少なくとも3つの異なるキー位置、第1に、ノートオフ位置、第2に、ノートオン位置、および第3に、アフタータッチ位置を区別することによって、ポリフォニック・アフタータッチを提供し、アフタータッチ位置はノートオン位置を超える位置であり、エンドストップ位置を超えるキーの押下および移動の後でキーに印加される追加圧力に対応する、節22に記載の方法。
【0183】
24.コンピュータキーボードの応答を周期的に補償する方法。キーボードの各キーは、能動共振回路、受動同調共振回路および検出器を備えるセンサを有してもよい。当該方法は、第1の時刻t0に検出された、センサからの初期出力信号Ot0を記憶部から読み出してもよい。t0において、能動共振回路は、能動共振回路の共振周波数を下回る周波数で駆動される。当該方法は、さらに、複数のセンサの少なくとも1について、t0よりも後の時刻に、センサの後期出力信号Ot1を定期的に検出してもよい。当該方法は次に、調整値として、例えば、センサの初期出力信号とセンサの後期出力信号との差を算出してもよい。当該方法は次に、調整値を使ってセンサの動作出力をさらに調整することによって、キーボードの応答を補償してもよい。動作出力は、能動共振回路の共振周波数で能動共振回路が駆動されているときのセンサからの出力であってよい。当該方法は、さらに、時分割多重化アドレス方式に従ってセンサを作動してもよい。そして当該方法は、時分割多重化アドレス方式において、センサが非作動中である「予備」タイムスロットを検出に用いてもよい。
【0184】
25. さらに、時分割多重化アドレス方式に従ってセンサを作動し、時分割多重化アドレス方式のタイムスロットのうち、検出のために、センサが非動作中のタイムスロットを使う、節24に記載の方法。
【0185】
26.コンピュータキーボード用の複数のセンサのセット。キーボードは複数のキーを有する。複数のセンサのセットは、検知システムの一部であってもよい。各センサは、キーの移動部に搭載するための受動共振回路と、例えばコンピュータキーボードの一部における固定の基準位置に搭載するための能動共振回路とを備えてもよい。実施態様では、受動共振回路は共振周波数を有し、能動共振回路は、共振周波数において受動共振回路を励起する。各センサは、能動共振回路と受動共振回路との相対的位置により能動共振回路における共振信号の変動を検出することで、キーの位置および/または速度を検出する検出器をさらに備えてもよい。検出器を複数のセンサ間で共有してもよい。変動は、いくつかの実施態様では、共振信号における信号の振幅の変動であってよい。複数のセンサのセットは、キーボードの複数のキーを検知するために搭載される場合、同じ共振周波数を有するセンサが非隣接となるように配置された、2以上の異なる共振周波数を有するセンサを備えてもよい。
【0186】
例えば、上述した技術は、ラップトップキーボードにおいて採用されてよい。この場合、受動共振回路および能動共振回路の一方または両方が、フレキシブルなPCBに搭載されてもよい。例えば、受動共振回路はキーの下側のフレキシブルPCB上に搭載されてもよく、能動共振回路は下層にあるリジッドPCB上に搭載されてもよい。例えば、能動共振回路および受動共振回路の間に何らかの弾性物が設けられている場合、位置を検知する能力を用いて、キーに印加される圧力を検知してもよい。いくつかの実施態様では、例えば、ラップトップ、コンピュータ、または他のキーボード等、平面もしくは曲面上にキーが2次元パターンで配置されている場合には、どのキーも2次元で隣接するキーと同時に駆動されないように、例えば上述した構成と大体において対応する方法において多重化を適用してもよい。例えば、矩形2次元グリッドでは、キーボードによって画定される表面における2つの次元の各々における交互に並ぶキーは、タイムスロットにおいて交互にアクティブであってもよく(すなわち、非隣接のキーが2組特定されてよい)、これは、同様に非隣接のキーが複数組特定され得る六角形および他のグリッドによって画定されるキーレイアウトに拡張されてよい。キーボードによって画定される表面において相互に隣接するキーは、ターゲットキーが読み取られる期間内において非アクティブであってもよく、および/または減衰されてもよい。ただし、前述したように、キーボードの複数のキーを同時に読み取るように多重化されてもよい。
【0187】
疑いなく、多くの他の効果的な代替手段に当業者は思い至るであろう。本発明は、記載した実施態様には限定されず、本明細書に添付の請求項の趣旨および範囲内において、当業者にとって明らかな修正を包含することが理解されよう。