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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】鋳造用プレミックス組成物の製造
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/00 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
B22C1/00 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021517251
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2019053386
(87)【国際公開番号】W WO2020069272
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】62/738,273
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】398031330
【氏名又は名称】アイメリーズ ユーエスエー,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】レフェイ,ヴィク
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ,ブライアン
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0325113(US,A1)
【文献】特公昭49-025091(JP,B1)
【文献】特開平09-168839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00-3/02
B22C 5/00-9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造用プレミックス組成物を製造する方法であって、該方法が、
粘土成分を含有するユニット(I)及び炭素成分を含有するユニット(II)に、送風機によって空気を供給することと、
前記粘土成分及び前記炭素成分を、ユニット(III)に導入することと、
前記ユニット(III)において、前記粘土成分と前記炭素成分とを現場ブレンドして、前記鋳造用プレミックス組成物を得ることと、
を含み、
前記鋳造用プレミックス組成物が、30lbs/ft~45lbs/ftの範囲の嵩密度を有
前記ユニット(I)及び前記ユニット(II)が、搬送ラインを介して、前記送風機を備えたトラックに接続していること、及び、
前記ユニット(I)、前記ユニット(II)、及び前記ユニット(III)が、搬送ラインを介して、前記送風機、重量タンク、及び粉体ポンプを備えた平床トレーラに接続しており、かつ、前記粘土成分及び前記炭素成分を、前記重量タンクに供給し、次いで、前記粉体ポンプを介してフィルターに搬送すること
のいずれかを含む、方法。
【請求項2】
前記粘土成分がベントナイトを含有する、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記ベントナイトが、ナトリウムベントナイト、カルシウムベントナイト、カリウムベントナイト、及びアルミニウムベントナイトからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記粘土成分がボール粘土を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記炭素成分が歴青炭を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記歴青炭が石炭粉である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記ユニット(III)において、前記粘土成分及び前記炭素成分を、少なくとも1つの他の成分とブレンドする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの他の成分が、10超のアスペクト比を有する高アスペクト比シリケートを含有する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記高アスペクト比シリケートが雲母である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの他の成分が、リサイクルした砂型鋳造媒体を含有する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの他の成分が液体を含有する、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの他の成分が、ポリマー、界面活性剤、酸化鉄、セルロース、コーンシリアル、及びデンプンからなる群より選択される少なくとも1つの添加剤である、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記粘土成分及び前記炭素成分を、ユニット(III)に導入する前に、前記粘土成分及び前記炭素成分をフィルターに通す、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
砂型鋳造の方法であって、該方法が、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって得られた鋳造用プレミックス組成物を、砂及び水と混合して、砂型鋳造媒体を作製することと、
前記砂型鋳造媒体を成形して、鋳型を作製することと、
を含む、方法。
【請求項15】
鋳物を鋳造する方法であって、該方法が、
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって得られた鋳造用プレミックス組成物と、砂と、水とを含む鋳型に加熱した材料を導入することと、
前記加熱した材料を冷却することと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記加熱した材料が、溶融金属又は溶融金属合金を含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本PCT国際出願は、2018年9月28日付けで出願された米国仮特許出願第62/738,273号の優先権の利益を主張し、その主題は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。
【0002】
本開示は、概して、平均粒度が小さく、粒度分布が狭く、嵩密度が小さい鋳造用プレミックス組成物の製造に関する。また、本開示は、このようにして製造したプレミックス組成物の砂型鋳造成形のための使用に関する。
【背景技術】
【0003】
鋳造は、加熱液体材料、多くの場合金属又は金属合金を、鋳型の空洞に流し込み、空洞部の形状で冷却して鋳物を製造する鋳造方法である。次いで、鋳造した鋳物を、鋳型から取り出す。鋳造する材料の性質に応じて、鋳型を形成するために種々の材料を用いることができる。砂型鋳造は、例えば、金属及び金属合金を鋳造するのに有用である。この方法においては、典型的には、砂を、結合剤(粘土と水との混合物等)及び他の添加剤と混合して、砂型鋳造媒体を形成し、次いで、この砂型鋳造媒体を、所望の鋳型形状に成形する。鉄の鋳造のための砂型鋳造媒体は、3つの基本成分、すなわち、砂、粘土、及び業界で一般的に「石炭粉(sea coal)」として知られる歴青炭微粉を含む。砂型は、型(例えば、鋳造する鋳物のレプリカ)の周囲に砂型鋳造媒体を充填し、型を取り除いて所望の形状及び構成を有する空洞を残すことによって形成することができる。溶融金属を鋳型に導入し、冷却して固化させてから、多くの場合砂型を破壊することによって、鋳造した金属鋳物を取り出すことができる。
【0004】
砂型鋳造の1つの方法として、湿潤状態の砂を使用した鋳型の形成を指す「生砂型鋳造」(green sand casting)と呼ばれる方法がある。生砂型鋳造媒体は、典型的には、約86重量%~90重量%の砂成分と、ベントナイト粘土等の無機結合剤8重量%~10重量%、有機添加剤2重量%~4重量%、及び水分2重量%~4重量%を含む非砂成分とを含む。結合剤は、鋳型がその形状を維持することができ、鋳造プロセス中に印加される応力に耐えることができるように、砂粒子を凝集させる。生砂型鋳造中、砂型が或る程度の水分を保持することによって、周囲温度及び高温の両方で、粘土の凝集性を維持することが可能となる。型を取り除いた後、砂型鋳造媒体がまだ湿った状態又は「生(green)」の状態にある間に、溶融金属を鋳型空隙部に注ぐ。鋳型空隙部表面上に直接隣接する石炭粉は、溶融金属が鋳型に注がれるにつれて溶融金属の熱で分解する。この分解の生成物は、鋳型空隙部と注がれた溶融金属との間の界面にある、黒鉛の形態の単体炭素である。この単体黒鉛は、固化した鋳造物を、砂粒子を含まないように、鋳型から取り出すことを可能にするという主要な機能を果たし、鋳造した鋳物がより平滑な表面を有するように鋳型の空洞表面を平らにするという第2の利点を有する。
【0005】
鋳造用プレミックス組成物としては、粘土成分及び炭素成分を含む組成物が典型的には知られている。このプレミックス組成物を、次いで、現地の供給源からの砂と混合し、砂型鋳造において使用する砂型鋳造媒体を製造することができる。
【0006】
鋳造用プレミックス組成物の製造は、長年、鋳造業において、一連の貯蔵サイロを備えた建物、粉砕に使用可能な粉砕設備、及び材料をブレンドする中央に配置されたブレンド装置を含むブレンド設備を含む伝統的な施設を使用して、完了されてきた。次いで、完成した製品は、輸送され、パッケージで販売される。伝統的な鋳造用プレミックス組成物は、典型的には、100μm~120μmの粒度及び45lbs/ft~60lbs/ftの嵩密度を有しているため、プレミックスは、利便性良く、安全に、貯蔵及び輸送することができる。しかしながら、より微細な粒子を有する低密度プレミックスによって、鋳造業における性能が向上した。そのため、輸送上の問題及び安全上の問題なく、そのようなプレミックス組成物をいかにして製造するかは、未解決のままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示では、微粒子を含有し、嵩密度の低い独自の鋳造用プレミックス組成物を製造する方法を説明する。この方法では、効率が向上した種々の機械設備設計アセンブリを利用して、製品の粒度分布(size distribution)を変更する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様によると、鋳造用プレミックス組成物を製造する方法は、粘土成分を含有するユニット及び炭素成分を含有するユニットに、送風機によって空気を供給することと、粘土成分及び炭素成分を、任意でフィルターに通した後、ブレンドユニットに導入することと、ブレンドユニットにおいて、粘土成分と炭素成分とを現場ブレンドして、約30lbs/ft~45lbs/ftの嵩密度を有する鋳造用プレミックス組成物を得ることとを含む。
【0009】
本開示の別の態様によると、鋳造用プレミックス組成物は、約85μm~100μmの平均粒度を有する粒子を含有する。
【0010】
本開示の別の態様によると、粘土成分を含有するユニット及び炭素成分を含有するユニットは、搬送ラインを介して、送風機を備えたトラックに接続している。
【0011】
本開示の別の態様によると、粘土成分を含有するユニット、炭素成分を含有するユニット、及びブレンドユニットは、搬送ラインを介して、送風機、重量タンク、及び粉体ポンプを備えた平床トレーラに接続しており、粘土成分及び炭素成分をフィルターに通す前に、任意で、粘土成分及び炭素成分を、重量タンクに供給し、次いで、粉体ポンプを介してフィルターに搬送する。
【0012】
本開示の別の態様によると、粘土成分は、ベントナイトを含有する。
【0013】
本開示の別の態様によると、ベントナイトは、ナトリウムベントナイト、カルシウムベントナイト、カリウムベントナイト、及びアルミニウムベントナイトからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0014】
本開示の別の態様によると、粘土成分は、ボール粘土(ball clay)を含有する。
【0015】
本開示の別の態様によると、炭素成分は、歴青炭(bituminous coal)を含有する。
【0016】
本開示の別の態様によると、歴青炭は、石炭粉(sea coal)である。
【0017】
本開示の別の態様によると、ブレンドユニットにおいて、粘土成分及び炭素成分を、少なくとも1つの他の成分とブレンドする。
【0018】
本開示の別の態様によると、少なくとも1つの他の成分は、10超のアスペクト比を有する高アスペクト比シリケートを含有する。
【0019】
本開示の別の態様によると、高アスペクト比シリケートは、雲母(mica)である。
【0020】
本開示の別の態様によると、少なくとも1つの他の成分は、リサイクルした砂型鋳造媒体(recycled sand molding medium)を含有する。
【0021】
本開示の別の態様によると、少なくとも1つの他の成分は、液体を含有する。
【0022】
本開示の別の態様によると、少なくとも1つの他の成分は、ポリマー、界面活性剤、酸化鉄、セルロース、コーンシリアル、及びデンプンからなる群より選択される少なくとも1つの添加剤である。
【0023】
本開示の別の態様によると、砂型鋳造の方法は、本開示に記載の鋳造用プレミックス組成物を、砂及び水と混合して、砂型鋳造媒体を作製することと、砂型鋳造媒体を成形して、鋳型を作製することとを含む。
【0024】
本開示の別の態様によると、鋳物を鋳造する方法は、本開示に記載の鋳造用プレミックス組成物と、砂と、水とを含む鋳型に加熱した材料を導入することと、加熱した材料を冷却することとを含む。
【0025】
本開示の別の態様によると、加熱した材料は、溶融金属又は溶融金属合金を含む。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の説明は、本開示の明確な理解に関連する要素を解説するために簡略化されており、明確にする目的で、当業者によく知られているであろう他の要素又は理解され得る他の要素を排除していることを理解されたい。
【0028】
本明細書を通して、記載された全ての範囲は、特段の指示のない限り、その範囲内の全ての値及び全てのサブ範囲を含む。用語「およそ」及び「約」は、参照された数又は値とほとんど同じであることを指す。本明細書で使用される場合に、用語「およそ」及び「約」は、具体的な量又は値の±5%を含むと理解されるべきである。
【0029】
鋳造用プレミックス組成物は、粘土成分及び炭素成分を含む。粘土成分は、結合剤として働き、ベントナイト、ボール粘土材料、耐火粘土、及びこれらの組み合わせとすることができる。ベントナイトは、ナトリウムベントナイト、カルシウムベントナイト、カリウムベントナイト、アルミニウムベントナイト、及びこれらの組み合わせから選択することができる。ボール粘土は、焼成すると白色を呈するため、セラミックス製造の原料として広く知られており、典型的には、カオリナイト約20%~80%、雲母約10%~25%、石英約6%~65%、並びに他の種々の有機材料及び無機材料を含む天然起源の堆積粘土である。炭素成分は、レオナルダイト、褐炭、苛性褐炭、石炭粉(微粉砕タイプの歴青炭)等の歴青炭、Flocarb(商標)(Amcol社製の天然有機材料)、黒鉛、光沢炭素形成剤(例えば、ギルソナイト、ピッチ、有機副生成物、ポリマー)、石油ピッチ、及びこれらの組み合わせとすることができる。炭素成分は、表面処理したものでもよい。本開示による例示的な鋳造用プレミックス組成物は、ベントナイト及び石炭粉を含有する。
【0030】
本開示独自の鋳造用プレミックス組成物は、鋳造所により近い場所でプレミックスを製造できるように、特別に設計した効率が向上した機械設備アセンブリを使用して、製造する。このようにすることによって、取り扱い、及び伝統的なプレミックス製造設備から鋳造所へ長距離にわたる運搬によって引き起こされるプレミックス密度の増加を抑制することができ、輸送コストが節約でき、安全性はあまり問題にならなくなる。
【0031】
得られるプレミックス組成物は、例えば、鋳造業における生砂型鋳造の操作において、性能が向上し、適用性が向上する粒度分布を有する。また、得られるプレミックス組成物は、約85μm~約100μmの平均粒度を有するより細かな粒子を有し、およそ30lbs/ft~およそ45lbs/ftの嵩密度を有し、より低密度である。プレミックスがより低密度であると、該プレミックスから製造した生砂型鋳造媒体の生砂性質が向上することによって、より良好に機能する。ここで、生砂性質の向上としては、生圧縮強度(green compression strength)、生剪断強度(green shear strength)、及び乾燥圧縮強度(dry compression strength)の向上が含まれる。
【0032】
第1の実施形態に示す機械設備アセンブリは、平床トレーラ、粘土成分用ユニット、炭素成分用ユニット、並びにプレミックス組成物を製造するための車両ブリーダー及び任意のフィルターを備えたブレンドユニットを含む。そのため、鋳造所により近い所でプレミックス組成物を製造することができるように、ブレンドを現場で行う。平床トレーラは、少なくとも、送風機、計量タンク/フィーダー、粉体ポンプ、エアコンプレッサー、及び発電機を有する。送風機は、粘土成分用ユニット及び炭素成分用ユニットに接続しており、粒子が「ふわふわ(fluffy)」になるように、これらユニットに空気を吹き込む。その後、ふわふわの粘土粉末及び炭素粉末を、計量タンク/フィーダーに導入し、粉末ポンプによって、車両ブリーダー/フィルターを介して、ブレンドユニットへと投入して、プレミックス組成物を製造する。
【0033】
機械設備アセンブリの他の例を次のとおりに示す。第1の実施形態のアセンブリと比較すると、平床トレーラの代わりに、少なくとも送風機を有するトラックが使用されている。第1の実施形態のアセンブリと同様に、送風機は、粘土成分用ユニット及び炭素成分用ユニットに接続しており、粒子が「ふわふわ(fluffy)」になるように、これらユニットに空気を吹き込む。その後、ふわふわの粘土粉末及び炭素粉末を、車両ブリーダー/フィルターを介して、直接ブレンドユニットに導入して、プレミックス組成物を製造することができる。そのため、第1の実施形態のアセンブリと同様に、鋳造所により近い所でプレミックス組成物を製造することができるように、ブレンドを現場で行う。
【0034】
粘土成分及び炭素成分を、1つ以上の他の材料又は添加剤とブレンドして、鋳造用プレミックス組成物を製造することができる。そのような材料又は添加剤の例としては、液体、高アスペクト比シリケート、ポリマー、界面活性剤、酸化鉄、セルロース(例えば、粉砕植物生成物)、コーンシリアル、デンプン、及び固体状又は半固体状のリサイクルした砂型鋳造媒体が挙げられる。
【0035】
液体の添加によって、製造するプレミックスの性能を向上させることができる。高アスペクト比シリケートは、例えば、雲母及び/又はタルクを含み得る。例示的な雲母鉱物としては、白雲母、ソーダ雲母、鱗雲母、金雲母、黒雲母、及びこれらの組み合わせが挙げられる。高アスペクト比シリケートは、10超のアスペクト比を有する。例えば、このアスペクト比は、10、20、及び40から80、100、及び1000の範囲とすることができる。高アスペクト比シリケートは、約50μm、約55μm、約58μm、約60μm、約62μm、約65μm、約68μm、約70μm、約72μm、約75μm、約78μm、又は約80μmのd50粒子径を有し得る。水和ベントナイトが或る程度脱水した、固体状又は半固体状のリサイクルした砂型鋳造媒体は、プレミックスに独自の組成物特性を付与することができる。
【0036】
本開示の設備設計は、材料組成及び粒度分布の両方が、鋳造用プレミックス組成物の性能に影響を及ぼし得ることを示している。
【0037】
本開示は、上述の又は本明細書の他の箇所に記載された鋳造用プレミックス組成物を用いた砂型鋳造の方法を更に含む。この砂型鋳造の方法は、例えば、砂及びプレミックス組成物を水と混合して、砂型鋳造媒体を作製することと、砂型鋳造媒体を成形して、鋳型を作製することとを含み得る。
【0038】
本開示は、鋳物を成形する方法を更に含む。この方法は、例えば、上述の又は本明細書の他の箇所に記載された鋳造用プレミックス組成物と、砂と、水とを含む鋳型に加熱した材料を導入することと、加熱した材料を冷却することとを含み得る。加熱材料は、例えば、金属又は金属合金を含み得る。
【0039】
砂の例としては、シリカ砂(SiO)、クロマイト砂(FeCr)、及びジルコン砂(ZrSiO)等の天然若しくは合成砂、又は砂複合材料を挙げることができ、これらはいずれも、マグネシウム、アルミニウム、マンガン、及び/又は炭素(黒鉛)等の他の元素を任意で含んでもよい。本開示の原理から逸脱しない限り、他のタイプの砂を使用することもできる。砂の組成及びグレードは、鋳造する材料の組成、鋳造温度、及び/又は現地の供給源から得られる砂の入手可能性に少なくとも部分的に基づいて選択することができる。
【0040】
上述の又は本明細書の他の箇所に記載された鋳造用プレミックス組成物は、砂及び任意の添加剤と組み合わせて、水で湿潤させて、生砂型鋳造媒体を製造することができる。組成物を水で湿潤させると、鋳造媒体を砂型に成形するための粘土の結着性が活性化する。水は、鋳造媒体の総重量に対する鋳造媒体の水分量が、約1.0%、1.5%、1.8%、及び2.0%から約2.2%、2.4%、2.5%、3.5%、5.0%、及び7.0%の範囲となるように提供することができる。
【0041】
生砂型鋳造媒体は、生砂型鋳造媒体の総重量に対して、約75%~約95%の重量比の砂、例えば、約80重量%~約90重量%、又は約85重量%~約90重量%の砂を含み得る。さらに、鋳造媒体は、生砂の総重量に対して、約5重量%~約20重量%、例えば、約8重量%~約16重量%、約10重量%~約15重量%の粘土材料(例えば、ボール粘土材料、ベントナイト、及び/又は耐火粘土を含む)を含み得る。一例においては、鋳造媒体は、砂(例えば、シリカ砂)を約80重量%~約95重量%、ベントナイトを約5.0重量%~約15.0重量%、及び雲母等の高アスペクト比シリケートを約0.1重量%~約5.0重量%含む。他の例においては、鋳造媒体は、砂(例えば、シリカ砂)を約90重量%~約95重量%、ベントナイトを約5.0重量%~約8.0重量%、及び雲母を約1.8重量%~約2.2重量%含む。
【0042】
種々の分析を用いて、生砂型鋳造媒体の特性を評価して、適切な特性を備えた鋳物を製造する能力を評価することができる。生砂型鋳造媒体の特性としては、流動性、透過性、生圧縮強度、生剪断強度、乾燥圧縮強度、熱間圧縮強度、脆弱性(friability)、及びコーン衝撃靭性(cone jolt toughness)が挙げられる。
【0043】
透過性は、常圧下で、試料を通過する空気の流量を測定することによって求めることができる。試験用の標準的な試料サイズは、一般的に、直径50.8mm(2インチ)、高さ50.8mmの円筒形(すなわち、2インチ×2インチの円筒形試料)、又は直径50mm、高さ50mmの円筒形である。本開示の幾つかの態様によると、透過性は、980Paの圧力で、2000cmの空気が試料を通過するのにかかる時間として求めることができる。透過性の値がより高いことは、鋳型を加熱する際に、気体を放出する能力がより高いことに対応している。本開示による生砂型鋳造媒体は、約105~約120、例えば、約108~約116、又は約110~約113の範囲の透過性を有し得る。
【0044】
本開示のプレミックス組成物を含有する生砂型鋳造媒体は、約5.0N/cm~約20.0N/cm、例えば、約10.0N/cm~約15.0N/cm、又は約10.5N/cm~約12.5N/cmの範囲の生圧縮強度、及び約1.0N/cm~約7.0N/cm、例えば、約2.0N/cm~約5.0N/cm、又は約2.5N/cm~約3.0N/cmの範囲の生剪断強度を有し得る。生砂型鋳造媒体は、約30N/cm~約70N/cm、例えば、約40N/cm~約50N/cm、又は約45N/cm~約55N/cmの乾燥圧縮強度、及び約0.100N/cm~約0.600N/cm、例えば、約0.150N/cm~約0.500N/cm、約0.250N/cm~約0.350N/cm、約0.275N/cm~約0.375N/cm、約0.300N/cm~約0.360N/cm、又は約0.325N/cm~約0.350N/cmの湿潤引張強度を有し得る。また、本明細書に開示する生砂型鋳造媒体は、米国鋳造協会の手順(AFS Mold and Core Test handbook)に従って、950℃と1100℃との間の温度で測定した熱間圧縮強度が、約300N/cm(約435psi)~約415N/cm(約600psi)、例えば、約350N/cm(約508psi)~約375N/cm(約544psi)の範囲であり得る。
【0045】
脆弱性としては、生砂型鋳造媒体の表面脆性及び耐摩耗性を、砂型の種々の表面で測定する。砂が緩いと鋳造物表面に砂介在欠陥が発生し得るため、粘土のレベルが高くなると、脆弱性が低下するのが一般的である。ボール粘土材料を、任意でベントナイトと組み合わせて含む鋳造組成物は、ベントナイト粘土のみから形成されたものと比較して、脆弱性のより低い生砂型を提供し得る。脆弱性は、一般的に、締固め性に反比例し、締固め性が低下すると、又は空気乾燥期間が短いと、脆弱性の増加につながり得る。本開示による生砂型鋳造媒体は、約1%~約20%、例えば、約3%~約15%、約6%~約13%、約8%~約12%、又は約9%~約11%の範囲の脆弱性を有し得る。
【0046】
コーン衝撃靭性としては、生砂試料に繰り返し応力を加え、試料が割れるポイントを測定することにより、生砂型鋳造媒体がエネルギーを吸収する能力を測定する。コーン衝撃靭性は、一般的に、鋳型の一体性を指す。典型的な試験では、生砂試料を、自動的に持ち上げてから落とし、試料の変位に対する衝撃の数を測定する。試料が割れるか、又は1.25mm(0.05インチ)の垂直変位を測定すると、この試験を終了し得る。本開示による生砂型鋳造媒体は、10点(jolts)~50点、例えば、15点~35点、20点~32点、又は23点~26点の範囲のコーン衝撃靭性を有し得る。生砂型鋳造媒体に或る特定の添加剤を入れると、生砂型のコーン衝撃靭性を高めるのに役立ち得る。例えば、コーン衝撃靭性が50点超になるように、コーンシリアル及び/又はデンプンを生砂型鋳造媒体に添加することができる。
【0047】
本開示に照らして、本明細書に記載の方法に対して多くの修正及び変形を行うことができる。添付の特許請求の範囲の範囲内であれば、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で上記方法を実施できると理解されたい。