(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】エアロゾル形成基体を誘導加熱するためのエアロゾル発生装置
(51)【国際特許分類】
A24F 40/465 20200101AFI20240227BHJP
【FI】
A24F40/465
(21)【出願番号】P 2021519696
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2019077437
(87)【国際公開番号】W WO2020074622
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-10-06
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】クルバ ジェローム クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ストゥラ エンリコ
(72)【発明者】
【氏名】ルシオ ダニ
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/041450(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0261495(US,A1)
【文献】中国実用新案第206137197(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/465
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル形成基体を誘導加熱することによってエアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生装置であって、前記装置が、
加熱される前記エアロゾル形成基体を受容するために構成された空洞を備える装置ハウジングと、
前記空洞内に交番磁界を発生するための誘導コイルを備える誘導源であって、前記誘導コイルが前記受容空洞の少なくとも一部分の周りに配設されている、誘導源と、
前記誘導コイルの周りに配設された、かつ前記装置の使用中に前記誘導源の前記交番磁界を前記空洞に向かって歪めるように構成された磁束コンセントレータと、
前記磁束コンセントレータの少なくとも一部分にしっかりと連結された接合層であって、ポリ(p-キシレン)ポリマーを含むか、またはポリ(p-キシレン)ポリマーから成る接合層と、を備える、装置。
【請求項2】
前記接合層が高分子接合層である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ポリ(p-
キシレン)ポリマーが、化学蒸着されたポリ(p-
キシレン)ポリマーである、請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記接合層が、前記磁束コンセントレータの表面の少なくとも一部分を覆う被覆である、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記接合層が、蒸発によって前記磁束コンセントレータに施された被覆である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記接合層が、50ナノメートル~200マイクロメートルの範囲の層厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記磁束コンセントレータが管状磁束コンセントレータまたは磁束コンセントレータスリーブである、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記接合層が、前記管状磁束コンセントレータまたは前記磁束コンセントレータスリーブの内表面または外表面のうちの少なくとも一つの少なくとも一部分にしっかりと連結されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記磁束コンセントレータが複数の磁束コンセントレータセグメントを備え、
関連する磁束コンセントレータセグメントの少なくとも一部分にしっかりと連結されているそれぞれの接合層が各磁束コンセントレータセグメントに提供されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記複数の磁束コンセントレータセグメントが管状であり、互いに隣り合って同軸に配設されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記磁束コンセントレータが複数の磁束コンセントレータセグメントを備え、前記複数の磁束コンセントレータセグメントが細長く、かつ前記磁束コンセントレータの周囲の周りに相互に平行に配設されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記接合層が前記磁束コンセントレータの表面全体を覆う、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記空洞内に少なくとも部分的に配設された少なくとも一つのサセプタ素子をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置と、前記装置の前記空洞に少なくとも部分的に受容されたまたは受容可能なエアロゾル発生物品とを備えるエアロゾル発生システムであって、前記エアロゾル発生物品が、加熱される前記エアロゾル形成基体を含む、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであって、前記エアロゾル発生物品が前記装置の前記空洞に受容されている時、使用時
にサセプタ素子が前記誘導源によって誘導加熱されうるように、前記エアロゾル形成基体と熱的に近接または熱的に接触して位置付けられた少なくとも一つのサセプタ素子を前記エアロゾル発生物品が備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル形成基体を誘導加熱することによってエアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生装置に関する。本発明は、こうした装置とエアロゾル発生物品とを備えるエアロゾル発生システムにさらに関し、物品は加熱されるエアロゾル形成基体を含む。
【背景技術】
【0002】
吸入可能なエアロゾルを形成することができるエアロゾル形成基体の誘導加熱に基づくエアロゾル発生システムは、先行技術から一般的に周知である。こうしたシステムは、加熱される基体を受容するための空洞を有するエアロゾル発生装置を備えてもよい。基体は、装置で使用するために構成されているエアロゾル発生物品の一体型の一部であってもよい。基体を加熱するために、装置は、空洞内に交番磁界を発生するための誘導源を含む誘導ヒーターを備えてもよい。磁場は、加熱されるために基体と熱的に近接して、または基体と直接、物理的に接触して配設されているサセプタ中に、熱発生渦電流またはヒステリシス損失のうちの少なくとも一つを誘導するために使用されている。一般に、サセプタは装置に固定されるか、または物品の一体型の一部のいずれかでありうる。
【0003】
しかしながら、磁場は、サセプタだけでなく、エアロゾル発生装置の他の感受性の部分、または装置に近接した感受性の外部物品も誘導加熱しうる。こうした望ましくない加熱を低減するために、エアロゾル発生装置には、磁気シールドとして働く磁界源の周りに配設された磁束コンセントレータが提供されてもよい。しかし、例えば装置が誤って落下した後に、過度な力の衝撃またはショックを受けた場合、シールド効果はしばしば低減したり、失われたりすることが観察されている。
【0004】
従って、先行技術の解決策の利点を有しつつも、それらによる制限事項を伴わずに、エアロゾル形成基体を誘導加熱するためのエアロゾル発生装置およびシステムを有することが望ましいであろう。特に、強化された堅牢性を提供する磁気シールドを備えるエアロゾル発生装置およびシステムを有することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明によると、エアロゾル形成基体を誘導加熱することによってエアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生装置が提供されている。装置は、加熱されるエアロゾル形成基体を受容するために構成された空洞を備える装置ハウジングを備える。装置は、空洞内に交番磁界を発生するための誘導コイルを備える誘導源をさらに備え、誘導コイルは受容空洞の少なくとも一部分の周りに配設されている。装置はまた、誘導コイルの周りに配設された、かつ装置の使用中に誘導源の交番磁界を空洞に向かって歪めるように構成された磁束コンセントレータを備える。さらに装置は、特に磁束コンセントレータが断片へと破損した場合、磁束コンセントレータの可能性のある断片を接合されたままにするために、磁束コンセントレータの少なくとも一部分にしっかりと連結された接合層を備える。すなわち接合層は、磁束コンセントレータが断片へと破損した場合、磁束コンセントレータの可能性のある断片を接合されたままにするために構成されていることが好ましい。
【0006】
本明細書で使用される「磁場を集中させる」という語句は、磁場の密度が空洞内で増大するように、磁束コンセントレータが磁場を歪めることが可能であることを意味する。
【0007】
空洞に向かって磁場を歪めることによって、磁束コンセントレータは、磁場が誘導コイルを越えて伝搬する範囲を減少させる。すなわち磁束コンセントレータは、磁気シールドとして働く。これは、装置の隣接する感受性の部分(例えば金属の外側ハウジング)、または装置の外部の隣接した感受性の物品の望ましくない加熱を低減しうる。望ましくない加熱損失を低減することによって、エアロゾル発生装置の効率は、さらに改善されうる。
【0008】
さらに、空洞に向かって磁場を歪めることによって、磁束コンセントレータは有利なことに、空洞内に磁場を集中、または集束させることができる。これは、磁束コンセントレータを有しない誘導コイルと比較して、誘導コイルを通過する所与のレベルの電力に対してサセプタ中に発生する熱のレベルを増加させうる。それ故に、エアロゾル発生装置の効率は改善されうる。
【0009】
本発明によると、磁束コンセントレータの効果の減少または喪失はしばしば、磁束コンセントレータの破損に起因することが認識されている。典型的に、磁束コンセントレータは、脆い材料で作製されていて、それ故に過度の力による衝撃に曝されると断片へと容易に破壊されうる。結果として、磁束コンセントレータの完全性が失われ、砕けた磁束コンセントレータを通る磁束が減少する。
【0010】
本発明によると、磁束コンセントレータの断片が、磁束を効果的に集中することが依然として可能であるように、一緒に近くに保たれている場合、磁束コンセントレータの効果は依然として十分でありうることが、さらに認識されている。これに関して、本発明による接合層は、磁束コンセントレータの少なくとも一部分に固定的に連結されている支持層の働きをする。その固定されたカップリングに起因して、接合層は、磁束コンセントレータが断片へと破損した場合に、磁束コンセントレータの可能性のある断片を接合されたままにする、すなわち所定の位置に保つ。
【0011】
有利なことに、接合層自体は耐衝撃性である。すなわち接合層は有利なことに、過度の力による衝撃が生じた場合に破損または破裂しないように構成されている。従って、接合層は、耐衝撃性または耐引裂性のうちの少なくとも一つであってもよい。
【0012】
その接合機能に加えて、接合層はまた、衝撃吸収特性を有しうる。これは有利なことに、磁束コンセントレータの破損を防止すること、すなわち過度の力による衝撃の場合に磁束コンセントレータの完全性を保護することさえも可能にしうる。
【0013】
接合層は、接着、クラッディング、溶接、メッキ、堆積、および被覆、特にディップコーティングまたはロールコーティングまたは蒸着のうちの少なくとも一つによって、磁束コンセントレータの少なくとも一部分に固定的に連結されうる。
【0014】
接合層は、磁束コンセントレータの表面の少なくとも一部分を覆う被覆であることが好ましい。有利なことに、被覆は、磁束コンセントレータの製造後に、ただし装置の組み立て前に、容易に施されうる。被覆プロセスは有益なことに、磁束コンセントレータの表面の大部分にわたり、または表面全体にさえわたり均一な接合をもたらす。接合層は、真空下で、好ましくは室温で(例えば20℃で)蒸発させることによって、磁束コンセントレータに被覆として施されうる。これは有利なことに、磁束コンセントレータの外側寸法を著しく増大させない薄い接着層を提供することを可能にする。これは寸法精度に関して特に重要である。加えて、室温で接合層を施すことは、磁束コンセントレータの材料への追加的熱応力を防止しうる。
【0015】
接合層は、0.1マイクロメートル~200マイクロメートル、特に0.2マイクロメートル~150マイクロメートル、好ましくは0.5マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲の層厚さを有する。別の方法として、接合層は、0.5マイクロメートル~200マイクロメートルの範囲の層厚さを有してもよい。上述の通り、こうした層厚さは、磁束コンセントレータの外側寸法に実質的に影響しない。
【0016】
接合層は高分子接合層であることが好ましい。高分子接合層は、柔軟性があり、それ故に耐衝撃性であるため、有利である。加えて、高分子接合層は単純な処理を可能にしうる。
【0017】
接合層は、ポリ(p-キシレン)ポリマー、特に化学蒸着ポリ(p-キシレン)ポリマーを含むか、またはそれから成ってもよい。特に接合層は、パリレン(例えばパリレンC、パリレンN、パリレンD、またはパリレンHTのうちの一つ)を含むか、またはパリレンから成りうる。「パリレン」という用語は、ポリ(p-キシレン)ポリマー、特に水分バリアおよび誘電バリアとしてしばしば使用される化学蒸着ポリ(p-キシレン)ポリマーの群を示す。パリレンは生物安定性および生体適合性であり、医療用途の認可を受けている(FDA[食品医薬品局]認証済み)。パリレンは光学的に透明で柔軟性があり、また化学的に不活性であり、それ故に高い腐食保護を提供する。パリレンは熱的に安定していて、特定のパリレンの種類に応じて、290℃超の融点、またはより高い融点を有する。これによって、パリレンはエアロゾル発生システムでの使用に特に適切となる。
【0018】
パリレンは有利なことに、特に金属、ガラス、ワニス、プラスチック材料、フェライト材料、またはシリコーンなどの多様な基体に薄膜または被覆として施されうる。パリレン被覆は、真空下、特に室温(例えば20℃)で、気相からの再昇華によって、細孔のない透明な高分子膜として基体に施されうることが好ましい。このプロセスは、機械的に安定していて、耐摩耗性であり、低い機械的応力を生成し、ガス放出を示さない、均一な層形成を提供しうる。加えて、真空下での蒸着被覆は、複数の基体を同時に被覆することを可能にし、大量生産に適したプロセスとなる。
【0019】
パリレンのガス状堆積に起因して、鋭利な縁、ピーク、または狭く深いギャップなど、液体ベースのプロセスでは被覆できない領域および構造を達成し、被覆することができる。
【0020】
パリレン被覆は、0.1マイクロメートル~数百マイクロメートルの範囲の層厚さを有しうる。有利なことに、0.1マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲の層厚さを有するパリレン被覆を、一つのプロセスで施すことができる。0.6マイクロメートルの層厚さのパリレン被覆の上には、マイクロ細孔およびピンホールがない。
【0021】
本明細書で使用される「磁束コンセントレータ」という用語は、誘導コイルによって発生した磁場または磁力線を集中させる、および導くように働く、高比透磁率を有する構成要素を指す。
【0022】
本明細書で使用される「高比透磁率」という用語は、少なくとも5(例えば、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも80または少なくとも100)の比透磁率を指す。これらの例示的な値は、6~8MHzの周波数および摂氏25度の温度の場合の比透磁率の値を指す。
【0023】
本明細書および当技術分野で使用される「比透磁率」という用語は、磁束コンセントレータなどの材料または媒体の透磁率と、自由空間の透磁率「μ0」との比を指し、μ0は、4π・10-7N・A-2(4・Pi ・10E-07ニュートン/平方アンペア)である。
【0024】
従って、磁束コンセントレータは、25℃で少なくとも5、好ましくは25℃で少なくとも20の比透磁率を有する材料または材料の組み合わせを含むことが好ましい。磁束コンセントレータは、複数の異なる材料から形成されてもよい。こうした実施形態において、全体的な媒体としての磁束コンセントレータは、摂氏25度で少なくとも5の比透磁率、好ましくは摂氏25度で少なくとも20の比透磁率を有しうる。これらの例示的な値は、6~8MHzの周波数および25℃の温度の場合の比透磁率の値を指す。
【0025】
磁束コンセントレータは任意の適切な材料または材料の組み合わせから形成されてもよい。磁束コンセントレータは、強磁性材料(例えばフェライト材料など)、結合剤に保持されたフェライト粉末、またはフェライト材料(フェライト鉄、強磁性鋼鉄、またはステンレス鋼など)を含む任意のその他の適切な材料を含むことが好ましい。
【0026】
一般に、磁束コンセントレータは任意のタイプのものであってもよく、装置の使用中に、誘導源の交番磁界を空洞に向かって歪めるのに適した装置内の任意の構成、形状および配設を有しうる。特に、熱伝導体要素は、受容空洞および誘導源の構成、形状配設に基づいた、ならびに磁場の歪みの望ましいレベルに基づいた、構成、形状、配設を有しうる。
【0027】
磁束コンセントレータは、誘導コイルの長さの一部のみに沿って延びてもよい。磁束コンセントレータは、実質的に誘導コイルの全長に沿って延びることが好ましい。磁束コンセントレータは、誘導コイルの一方の端または両方の端にて誘導コイルを越えて延びてもよい。
【0028】
磁束コンセントレータは、誘導コイルの周囲の一部のみの周りに延びてもよい。同様に、磁束コンセントレータは、誘導コイルの周りに円周方向に配設されてもよい。磁束コンセントレータは、円筒状磁束コンセントレータ、管状磁束コンセントレータ、または磁束コンセントレータスリーブであってもよい。こうした構成において、磁束コンセントレータは、コイルの長さの少なくとも一部に沿って誘導コイルを完全に囲む。管状形状またはスリーブ形状は、空洞の円筒形状に関して、ならびに誘導コイルの円筒状および/またはらせん状の構成に関して特に有利である。この形状に関して、磁束コンセントレータは任意の適切な断面を有しうる。例えば、磁束コンセントレータは、正方形、楕円形、長方形、三角形、五角形、六角形または同様の断面形状を有しうる。磁束コンセントレータは円形断面を有することが好ましい。例えば、磁束コンセントレータは、環状の円筒形状を有しうる。
【0029】
接合層は、磁束コンセントレータの表面全体を覆うことが好ましい。しかしながら、磁束コンセントレータの可能性のある断片を接合されたままにするために、接合層が磁束コンセントレータの一部分のみを覆うことでも十分でありうる。例えばマスキングと組み合わせて被覆することによって、磁束コンセントレータの一部分のみに接合層を選択的に施すことが達成されうる。
【0030】
管状形状またはスリーブ形状または円筒形状に関して、接合層は、管状磁束コンセントレータまたは磁束コンセントレータスリーブまたは円筒状磁束コンセントレータの内表面または外表面の少なくとも一部分にしっかりと連結されうる。同様に、接合層は、管状磁束コンセントレータまたは磁束コンセントレータスリーブまたは円筒状磁束コンセントレータの内表面と外表面の両方の少なくとも一部分にしっかりと連結されうる。さらに、接合層はまた、管状磁束コンセントレータまたは磁束コンセントレータスリーブまたは円筒状磁束コンセントレータの一方の端面または両方の端面に連結されてもよい。
【0031】
磁束コンセントレータは、複数の磁束コンセントレータセグメントを備えてもよい。磁束コンセントレータセグメントは、互いに隣接して位置付けられてもよい。これは、セグメントが直接接触する配設、ならびにセグメントのうちの二つ以上がギャップ(空隙、または隣接したセグメント間の一つ以上の中間構成要素を含むギャップなど)によって分離されている配設を含む。それ故に、磁束コンセントレータは、複数の個別構成要素の組立品である。これは、磁束コンセントレータから一つ以上の磁束コンセントレータセグメントを取り除くことによって、または磁束コンセントレータに一つ以上の磁束コンセントレータセグメントを加えることによって、磁束コンセントレータ(および、それ故に磁場が歪められる度合い)を調整することを可能にする。例えば、一つ以上の磁束コンセントレータセグメントは、低比透磁率を有する材料(プラスチックなど)から形成されたセグメントと取り替えられて、磁場が磁束コンセントレータによって歪められる度合いを低減しうる。従って、複数の磁束コンセントレータセグメントは、第一の材料から形成された第一の磁束コンセントレータセグメントと、第二の異なる材料から形成された第二の磁束コンセントレータセグメントとを含んでもよく、第一の材料および第二の材料は、異なる値の比透磁率を有する。磁束コンセントレータのこの「調整」は、特にサセプタ素子が使用時に置かれる位置にて、所定の値の磁場強度が空洞内で達成されることを可能にしうる。
【0032】
各磁束コンセントレータセグメントには、関連付けられた磁束コンセントレータセグメントの少なくとも一部分にしっかりと連結されているそれぞれの接合層が提供されていることが好ましい。
【0033】
複数の磁束コンセントレータセグメントは、均一な大きさおよび形状を有しうる。その他の例において、複数の磁束コンセントレータセグメントのうちの一つ以上は、その他の磁束コンセントレータセグメントのうちの一つ以上と比較して、異なる大きさ、または異なる形状、または異なる大きさと形状を有しうる。これは、セグメントのうちの一つ以上を、異なる寸法を有するセグメントと取り替えることによる磁束コンセントレータの単純な調整を可能にする。
【0034】
磁束コンセントレータセグメントの形状は、結果として生じる磁束コンセントレータの望ましい形状に基づいて選択されうる。
【0035】
一例として、磁束コンセントレータは、複数の磁束コンセントレータセグメントを備えてもよく、複数の磁束コンセントレータセグメントは管状であり、相互に隣り合わせて同軸に配設されてもよい。こうした構成において、結果として生じる磁束コンセントレータは管状であり、コイルの長さの少なくとも一部に沿って誘導コイルを完全に囲む。管状の磁束コンセントレータセグメントは、部分的に円筒状でありうる。その他の実施形態において、管状のセグメントのうちの一つ以上の厚さは、その長さに沿って変化してもよい。管状の磁束コンセントレータセグメントは、結果として生じる磁束コンセントレータの望ましい形状に従って、正方形、楕円形、長方形、三角形、五角形、六角形または類似の断面形状を有しうる。
【0036】
別の例として、磁束コンセントレータは複数の磁束コンセントレータセグメントを備え、複数の磁束コンセントレータセグメントは細長く、(それらのそれぞれの長軸方向軸に関して)磁束コンセントレータの周囲の周りに相互に平行に配設されている。複数の細長い磁束コンセントレータセグメントは、それらの長軸方向軸が誘導コイルの磁気軸と実質的に平行であるように配設されていることが好ましい。別の方法として、細長いセグメントは、それらのそれぞれの長軸方向軸が平行でないように配設されてもよい。本明細書で使用される「細長い」という用語は、その幅と厚さの両方より大きい(例えば二倍の)長さを有する構成要素を指す。細長い磁束コンセントレータセグメントは、任意の適切な断面を有しうる。例えば、細長い磁束コンセントレータセグメントは、結果として生じる磁束コンセントレータの望ましい形状に従って、正方形、楕円形、長方形、三角形、五角形、六角形または同様の断面形状を有しうる。細長い磁束コンセントレータセグメントは、平面の、または平坦な断面領域を有しうる。細長い磁束コンセントレータセグメントは、円弧状の断面を有しうる。これは、誘導コイルが湾曲した外表面を有する場合、例えば誘導コイルが円形断面を有する場合に、特に有益でありうる。これは、細長い磁束コンセントレータセグメントが誘導コイルの外側形状に密接に追従し、エアロゾル発生装置の全体的な寸法を減少させることを可能にする。
【0037】
複数の磁束コンセントレータセグメントは、例えば接着剤を用いて、誘導コイルに直接、固定されうる。装置コイルは、誘導コイルと磁束コンセントレータセグメントの間に一つ以上の中間構成要素をさらに備えてもよく、これによってセグメントは、誘導コイルに対して所定の場所に保持される。
【0038】
例えば、装置は、セグメントが取り付けられている、誘導コイルを囲む外側支持スリーブをさらに備えうる。外側支持スリーブは、中に磁束コンセントレータセグメントが保持されている複数のスロットまたは陥凹部を有しうる。磁束コンセントレータセグメントが環状である場合、陥凹部は環状であってもよく、環状のセグメントを保持するように配設されうる。複数の磁束コンセントレータセグメントが細長く、かつ磁束コンセントレータの周囲の周りに位置付けられている場合、外側支持スリーブは誘導コイルを囲み、かつ中に細長い磁束コンセントレータセグメントが保持されている複数の長軸方向のスロットを有する。
【0039】
別の方法として、または追加的に、装置は、誘導コイルが保持されている外表面を有する内部支持スリーブを備えうる。内側支持スリーブの内表面は、空洞の長さの少なくとも一部に沿って空洞の側壁を画定しうる。内側支持スリーブは、例えば誘導モジュールの保守点検または交換を可能にするために、装置ハウジングから取り外し可能であってもよい。内側支持スリーブは、内側支持スリーブ上に誘導コイルを保持するための誘導コイルの一方の端または両方の端にて、その外表面上に少なくとも一つの突出部を備えることが好ましい。少なくとも一つの突出部は、内側スリーブに対する誘導コイルの長軸方向の移動を防ぐ、または低減させる。少なくとも一つの突出部はまた、磁束コンセントレータ、複数の磁束コンセントレータセグメント、および外側支持スリーブのうちの少なくとも一つを所定位置に保持するように構成および配設されていることがさらにより好ましい。このために、少なくとも一つの突出部は、誘導コイルと外側支持スリーブ(および好ましくは磁束コンセントレータ(セグメント))を組み合わせた厚さ以上の距離だけ、外表面の上方に(半径方向に)延びることが好ましい。
【0040】
磁束コンセントレータの厚さは、それが作られている材料または材料の組み合わせだけでなく、誘導コイルおよび磁束コンセントレータの形状と、磁場歪みの望ましいレベルとに依存しうる。磁束コンセントレータ材料および寸法の選択は、誘導源が使用中に連結されるサセプタ素子または複数のサセプタ素子の加熱要件と電力要件に従って、磁場の形状、強度および密度が調整されることを可能にする。例えば、磁束コンセントレータは、0.3ミリメートル~5ミリメートルの厚さ、好ましくは0.5ミリメートル~1.5ミリメートルの厚さを有しうる。特定の実施形態において、磁束コンセントレータはフェライトを含み、また0.3ミリメートル~5ミリメートルの厚さ、好ましくは0.5ミリメートル~1.5ミリメートルの厚さを有する。本明細書で使用される「厚さ」という用語は、特定の位置にあるエアロゾル発生装置の構成要素またはエアロゾル発生物品の構成要素の、その長さに沿った、またはその周囲の、横断方向の寸法を指す。磁束コンセントレータを特に参照すると、「厚さ」という用語は、特定の位置にある磁束コンセントレータの外径と内径の差の半分を指す。本明細書で使用される「長軸方向」という用語は、エアロゾル発生装置の主軸に沿った方向を記述するために使用され、また「横断方向」という用語は、長軸方向に対して直角を成す方向を記述するために使用される。
【0041】
磁束コンセントレータの厚さは、その長さに沿って実質的に一定であってもよい。その他の実施例において、磁束コンセントレータの厚さは、その長さに沿って実質的に一定であってもよい。例えば、磁束コンセントレータの厚さは、一方の端から他方の端に、または磁束コンセントレータの中央部分から両方の端に向かって、先細りしていてもよい、または減少してもよい。磁束コンセントレータの厚さは、その周囲の周りで実質的に一定であってもよい。その他の実施例において、磁束コンセントレータの厚さは、その周囲の周りで変化してもよい。
【0042】
誘導源に加えて、エアロゾル発生装置は、装置の一部である少なくとも一つのサセプタ素子を備えうる。別の方法として、少なくとも一つのサセプタ素子は、加熱されるエアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品の一体型の一部であってもよい。装置の一部として、少なくとも一つのサセプタ素子は、使用中にエアロゾル形成基体と熱的に近接または熱的に接触するように、好ましくは物理的に接触するように、少なくとも部分的に空洞内に配設されているかまたは配設可能である。
【0043】
本明細書で使用される「サセプタ素子」という用語は、交番磁界に曝された時に磁気エネルギーを熱に変換する能力を有する要素を指す。これは、サセプタ材料の電気的特性および磁性に依存して、サセプタの中で誘導されたヒステリシス損失または渦電流のうちの少なくとも一つの結果でありうる。ヒステリシス損失は、交番磁界の影響下で切り替えられる材料内の磁区に起因して、強磁性またはフェリ磁性のサセプタ中で生じる。渦電流は、サセプタが導電性である場合に誘導されうる。導電性の強磁性またはフェリ磁性サセプタの場合、渦電流とヒステリシス損失の両方によって熱が発生しうる。
【0044】
従って、サセプタ素子は、エアロゾル形成基体からエアロゾルを発生させるのに十分な温度に誘導加熱されることができる任意の材料から形成されてもよい。好ましいサセプタ素子は金属または炭素を含む。好ましいサセプタ素子は、強磁性材料(例えばフェライト鉄)、または強磁性の鋼鉄またはステンレス鋼を含みうる。適切なサセプタ素子はアルミニウムであってよく、またはアルミニウムを含んでもよい。好ましいサセプタ素子は、400シリーズのステンレス鋼、例えばグレード410、またはグレード420、またはグレード430のステンレス鋼から形成されてもよい。
【0045】
サセプタ素子は、様々な幾何学的構成を含みうる。サセプタ素子は、サセプタピン、サセプタロッド、サセプタブレード、サセプタ細片、またはサセプタプレートであることが好ましい。別の方法として、サセプタ素子は、フィラメントサセプタ、メッシュサセプタ、芯サセプタ、またはサセプタスリーブ、サセプタカップ、または円筒状サセプタであってもよい。
【0046】
本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」という用語は、基体を加熱することによってエアロゾルを発生するように、少なくとも一つのエアロゾル形成基体と相互作用する能力、特にエアロゾル発生物品内に提供されたエアロゾル形成基体と相互作用する能力を有する電気的に作動する装置を概して指す。エアロゾル発生装置は、ユーザーによってユーザーの口を通して直接吸入可能なエアロゾルを発生するための吸煙装置であることが好ましい。特に、エアロゾル発生装置は手持ち式のエアロゾル発生装置である。
【0047】
誘導コイルに加えて、誘導源は交流(AC)発電機を備えてもよい。AC発電機はエアロゾル発生装置の電源によって電力供給されてもよい。AC発電機は少なくとも一つの誘導コイルに動作可能に連結される。特に、少なくとも一つの誘導コイルは、AC発電機の一体型の一部であってもよい。AC発電機は、交番磁界を発生させるために誘導コイルを通過する高周波振動電流を発生するように構成されている。AC電流はシステムの起動後、誘導コイルに連続的に供給されてもよく、または断続的に(例えば毎回の吸煙ごとに)供給されてもよい。
【0048】
誘導源は、LCネットワークを含むDC電源に接続されたDC/ACコンバータを備え、LCネットワークはコンデンサーと誘導コイルの直列接続を備えることが好ましい。
【0049】
誘導源は高周波磁場を発生するように構成されていることが好ましい。本明細書において参照される通り、高周波磁場は、500kHz(キロヘルツ)~30MHz(メガヘルツ)、特に5MHz(メガヘルツ)~15MHz(メガヘルツ)、好ましくは5MHz(メガヘルツ)~10MHz(メガヘルツ)の範囲内でありうる。
【0050】
エアロゾル発生装置は、装置の動作を制御するように構成されたコントローラをさらに備えてもよい。特に、所定の動作温度へのエアロゾル形成基体の加熱を制御するために、コントローラは、好ましくは閉ループ構成で誘導源の動作を制御するように構成されうる。エアロゾル形成基体の加熱に使用される動作温度は、少なくとも300℃、特に少なくとも350℃、好ましくは少なくとも370℃、最も好ましくは少なくとも400℃でありうる。これらの温度は、エアロゾル形成基体を加熱するが燃焼させないための典型的な動作温度である。
【0051】
コントローラは、マイクロプロセッサ、例えばプログラマブルマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または特定用途向け集積回路チップ(ASIC)もしくは制御を提供する能力を有するその他の電子回路を備えてもよい。コントローラは、DC/ACインバータまたは電力増幅器(例えばクラスDまたはクラスE電力増幅器)のうちの少なくとも一つなど、さらなる電子構成要素を備えてもよい。特に、誘導源はコントローラの一部であってもよい。
【0052】
エアロゾル発生装置は電源、特に誘導源にDC供給電圧およびDC供給電流を提供するように構成されたDC電源を備えうる。電源はリン酸鉄リチウム電池などの電池であることが好ましい。代替として、電源は別の形態の電荷蓄積装置(コンデンサーなど)であってもよい。電源は再充電を必要としてもよく、すなわち電源は充電可能であってもよい。電源は、一回以上のユーザー体験のために十分なエネルギーの貯蔵を可能にする容量を有する場合がある。例えば、電源は約六分間、または六分の倍数の時間にわたるエアロゾルの連続的な発生を可能にするのに十分な容量を有してもよい。別の実施例において、電源は所定の吸煙回数、または誘導コイルの不連続的な起動を可能にするのに十分な容量を有してもよい。
【0053】
エアロゾル発生装置は主本体を備えてもよく、これは誘導源、誘導コイル、磁束コンセントレータ、接合層、内側支持スリーブ、外側支持スリーブ、コントローラ、電源、および空洞の少なくとも一部分のうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0054】
主本体に加えて、エアロゾル発生装置は、特に装置とともに使用されるエアロゾル発生物品がマウスピースを備えない場合、マウスピースをさらに備えうる。マウスピースは、装置の主本体に据え付けられてもよい。マウスピースは、マウスピースを主本体に据え付けると受容空洞を閉じるように構成されてもよい。マウスピースを主本体に取り付けるために、主本体の近位端部分は、マウスピースの遠位端部分にて対応する相手側と係合する磁気的マウントまたは機械的マウント、例えばバヨネットマウントまたはスナップ嵌めマウントを備えてもよい。装置がマウスピースを備えない場合、エアロゾル発生装置とともに使用されるエアロゾル発生物品はマウスピース、例えばフィルタープラグを備えてもよい。
【0055】
エアロゾル発生装置は、少なくとも一つの空気出口、例えばマウスピース(存在する場合)の空気出口を備えてもよい。
【0056】
エアロゾル発生装置は、少なくとも一つの空気吸込み口から、受容空洞を通って、そして場合によってはさらに、マウスピース(存在する場合)の空気出口に延びる空気経路を備えることが好ましい。エアロゾル発生装置は、受容空洞と流体連通する少なくとも一つの空気吸込み口を備えることが好ましい。従って、エアロゾル発生システムは、少なくとも一つの空気吸込み口から受容空洞の中に延びる、および場合によっては物品内のエアロゾル形成基体とマウスピースを通してユーザーの口の中にさらに延びる空気経路を備えてもよい。
【0057】
誘導コイル、内側支持スリーブ、磁束コンセントレータ、および存在する場合、外側支持スリーブは、装置ハウジング内に配設されている、かつ装置の空洞の少なくとも一部分を形成するか、またはその周りに円周方向に配設されている、特にその周りに取り外し可能に配設されている誘導モジュールを形成しうる。磁束コンセントレータに固定的に連結されているので、接合層はまた、誘導コイルの一部であってもよい。
【0058】
これに関して、本発明はまた、装置の空洞の少なくとも一部分を形成するか、またはその周りに円周方向に配設されているように、エアロゾル発生装置内に配設可能な誘導モジュールを提供し、空洞は、誘導加熱されるエアロゾル形成基体を受容するために構成されている。誘導モジュールは、使用時に空洞内に交番磁界を発生するための誘導コイルを備え、誘導コイルは、誘導モジュールが装置中に配設されている時、受容空洞の少なくとも一部分の周りに配設されている。誘導モジュールは、誘導コイルの周りに円周方向に配設された、かつ誘導モジュールが装置の中に配設されている時、使用中に空洞に向かって誘導コイルの交番磁界を歪めるように構成された磁束コンセントレータをさらに備える。加えて、誘導モジュールは、磁束コンセントレータが断片へと破損した場合、磁束コンセントレータの断片を接合されたままにするために、磁束コンセントレータの少なくとも一部分にしっかりと連結された接合層を備える。
【0059】
加えて、誘導モジュールは、前述の通りの内側支持スリーブおよび外側支持スリーブのうちの少なくとも一つを備えてもよい。
【0060】
同様に、磁束コンセントレータは、上述の通りの複数の磁束コンセントレータセグメントを備えてもよい。
【0061】
誘導モジュール、特に誘導コイル、磁束コンセントレータ、磁束コンセントレータセグメント、接合層、内側支持スリーブ、および外側支持スリーブのさらなる特徴および利点は、エアロゾル発生装置に関して説明されていて、繰り返さない。
【0062】
本発明によると、本発明による、および本明細書に記載のエアロゾル発生装置を備えるエアロゾル発生システムも提供されている。システムは、装置で使用するエアロゾル発生物品をさらに備え、物品は、装置によって誘導加熱されるエアロゾル形成基体を含む。
【0063】
本明細書で使用される「エアロゾル発生システム」という用語は、本明細書にさらに記載のエアロゾル発生物品と、本発明による、本明細書に記載のエアロゾル発生装置との組み合わせを指す。システムにおいて、物品と装置は呼吸に適したエアロゾルを発生するように協働する。
【0064】
本明細書で使用される「エアロゾル発生物品」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を、加熱された時に放出する少なくとも一つのエアロゾル形成基体を含む物品を指す。エアロゾル発生物品は、加熱式エアロゾル発生物品であることが好ましい。すなわち、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出するために、燃焼ではなく加熱されることが意図されている少なくとも一つのエアロゾル形成基体を含む、エアロゾル発生物品である。エアロゾル発生物品は、消耗品、特に単回使用後に廃棄される消耗品であってもよい。例えば、物品は、加熱される液体エアロゾル形成基体を含むカートリッジであってもよい。別の方法として、物品は従来の紙巻たばこに似ているロッド状の物品(特にたばこ物品)であってもよい。
【0065】
本明細書で使用される「エアロゾル形成基体」という用語は、エアロゾルを形成するために、加熱に伴い揮発性化合物を放出することが可能なエアロゾル形成材料から形成されるか、またはそれを含む基体を意味する。エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成揮発性化合物を放出するために、燃焼ではなく加熱されることが意図される。エアロゾル形成基体は固体エアロゾル形成基体であってもよく、または液体エアロゾル形成基体であってもよい。両方の場合において、エアロゾル形成基体は固体成分と液体成分の両方を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、加熱に伴い基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含有するたばこ含有材料を含んでもよい。別の方法として、または追加的に、エアロゾル形成基体は非たばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体はエアロゾル形成体をさらに含んでもよい。適切なエアロゾル形成体の例はグリセリンおよびプロピレングリコールである。エアロゾル形成基体はまた、その他の添加物および成分(ニコチンまたは風味剤など)を含んでもよい。エアロゾル形成基体はまた、ペースト様の材料、エアロゾル形成基体を含む多孔性材料のサシェ、または例えばゲル化剤または粘着剤と混合されたばらのたばこであってもよく、これはグリセリンなどの一般的なエアロゾル形成体を含むことができ、これはプラグへと圧縮または成形される。
【0066】
前述の通り、エアロゾル形成基体を誘導加熱するために使用される少なくとも一つのサセプタ素子は、装置の一部ではなく、エアロゾル発生物品の一体型の一部であってもよい。従って、エアロゾル発生物品は、物品が装置の空洞に受容されている時、使用時にサセプタ素子が誘導源によって誘導加熱されることが可能なように、エアロゾル形成基体と熱的に近接または熱的に接触して位置付けられた少なくとも一つのサセプタ素子を備えうる。
【0067】
本発明によるエアロゾル発生システムのさらなる特徴および利点については、エアロゾル発生装置に関して説明されているため、繰り返さない。
【0068】
本発明を、添付図面を参照しながら、例証としてのみであるがさらに記載する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】
図1は、本発明の第一の実施形態によるエアロゾル発生システムの長軸方向の概略断面図を示す。
【
図3】
図3は、
図1によるシステムとともに代替的に使用されうる誘導モジュールの第二の実施形態の長軸方向の概略断面を示す。
【
図5】
図5は、
図1によるシステムとともに代替的に使用されうる誘導モジュールの第三の実施形態の長軸方向の概略断面を示す。
【0070】
図1は、本発明によるエアロゾル発生システム1の例示的な実施形態の概略断面図を示す。システム1は、エアロゾル形成基体91を誘導加熱することによってエアロゾルを発生するために構成されている。システム1は、加熱されるエアロゾル形成基体91を含むエアロゾル発生物品90と、物品90を受容するための受容空洞20、および物品90が受容空洞20の中に挿入されている時に物品90内の基体91を加熱するための誘導ヒーターを備える、物品90とともに使用するエアロゾル発生装置10との二つの主な構成要素を備える。
【0071】
物品90は、従来の紙巻たばこの形状に似たロッド形状を有し、かつ同軸配列に配設された四つの要素、すなわちエアロゾル形成基体91、支持要素92、エアロゾル冷却要素94、およびフィルタープラグ95を備え、フィルタープラグはマウスピースとして機能する。エアロゾル形成基体91は、例えばエアロゾル形成体としてグリセリンを含む均質化したたばこ材料の捲縮したシートを含んでもよい。支持要素92は、中央空気通路93を形成する中空コアを備える。フィルタープラグ95は、例えばセルロースアセテート繊維を含んでもよい。四つの要素はすべて、順々に連続的に配設されている実質的に円筒状の要素である。四つの要素は、実質的に同一の直径を有し、円筒状のロッドを形成するように、紙巻たばこ用紙で作製された外側ラッパー96によって囲まれている。
【0072】
装置10は、実質的に円筒状の装置ハウジングによって形成された実質的にロッド状の主本体11を備える。装置10は遠位部分13内に、電源16(例えばリチウムイオン電池)と、装置10の動作を制御するための、特に加熱プロセスを制御するためのコントローラを含む電気回路17とを備える。遠位部分13と反対側の近位部分14内に、装置10は受容空洞20を備える。受容空洞20は装置10の近位端12で開いていて、それ故に物品90を受容空洞20の中に容易に挿入することが可能である。
【0073】
受容空洞の底部分21は、装置10の近位部分14、特に受容空洞20を、装置10の遠位部分13から分離する。底部分は、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの断熱性材料で作製されていることが好ましい。 それ故に、遠位部分13内の電気的な構成要素は、空洞20内のエアロゾル発生プロセスによって生成されるエアロゾルまたは残留物から分離された状態に保たれうる。
【0074】
装置10の誘導ヒーターは、交流の、特に高周波の磁場を発生するための誘導コイル31を含む誘導源を備える。本実施形態において、誘導コイル31は、円筒状の受容空洞20を円周方向に包囲するらせん状コイルである。誘導コイル31はワイヤ38から形成されていて、その長さに沿って延びる複数の巻または巻線を有する。ワイヤ38は、正方形、長円形、または三角形などの任意の適切な断面形状を有してもよい。この実施形態において、ワイヤ38は円形断面を有する。他の実施形態において、ワイヤは平坦な断面形状を有してもよい。
【0075】
誘導ヒーターは、誘導コイル31によって発生される磁場を経験するように受容空洞内に配設されているサセプタ素子60をさらに備える。本実施形態において、サセプタ素子60はサセプタブレード61である。その遠位端64で、サセプタブレードは、装置の受容空洞20の底部分21に配設されている。そこからサセプタブレード61は、装置10の近位端12にある受容空洞20の開口に向かって受容空洞20の内側空間の中に延びる。サセプタブレード60の他方の端、すなわち遠位自由端63は、サセプタブレードが物品90の遠位端部分内のエアロゾル形成基体91を容易に貫通することを可能にするように、先細りしている。
【0076】
装置10が作動する時、高周波の交流電流が誘導コイル31を通過する。これはコイル31に、空洞20内で交番磁界を発生させる。結果として、サセプタブレード60の材料の磁気特性および電気特性に依存して、渦電流またはヒステリシス損失のうちの少なくとも一つに起因して、サセプタブレード61が加熱する。次にサセプタ60は、エアロゾルを形成するのに十分な温度まで物品90のエアロゾル形成基体91を加熱する。エアロゾルはエアロゾル発生物品90を通して下流に引き出されて、ユーザーによって吸入されうる。高周波磁場は、500kHz(キロヘルツ)~30MHz(メガヘルツ)、特に5MHz(メガヘルツ)~15MHz(メガヘルツ)、好ましくは5MHz(メガヘルツ)~10MHz(メガヘルツ)の範囲内でありうることが好ましい。
【0077】
誘導コイル31は、エアロゾル発生装置10の近位部分14とともに配設されている誘導モジュール30の一部である。誘導モジュール30は、実質的にロッド状の装置10の長軸方向中心軸Cと同軸に整列した実質的に円筒状の形状を有する。
図1から分かる通り、誘導モジュール30は、空洞20の少なくとも一部分、または空洞20の内表面の少なくとも一部分を形成する。
【0078】
図2は、誘導モジュール30をより詳細に示す。誘導コイル31の他に、誘導モジュール30は、らせん状に巻かれた円筒状誘導コイル31を運ぶ管状の内側支持スリーブ32を備える。両方の端にて、管状内側支持スリーブ32は、内側支持スリーブ32の周囲の周りに延びる一対の環状の突出部34を有する。突出部34は、誘導コイル31のいずれかの端に位置し、内側支持スリーブ32上の所定の場所にコイル31を保持する。内側支持スリーブ32は、プラスチックなどの任意の適切な材料から作られうる。特に、内側支持スリーブ32は、空洞20の少なくとも一部分、すなわち、空洞20の内表面の少なくとも一部分であってもよい。
【0079】
誘導コイル31と内側支持スリーブ32の両方は、誘導コイル31の長さに沿って延びる管状の磁束コンセントレータ33によって包囲されている。磁束コンセントレータ33は、装置10の使用中に誘導コイル31によって発生された交番磁界を、空洞20に向かって歪めるように構成されている。磁束コンセントレータ33は、誘導コイル31の周りに固定されていて、かつ内側支持スリーブ32の管状突出部34によって所定の場所に保持されている。磁束コンセントレータ33は、好ましくは少なくとも6~8MHzの範囲内の周波数で、および25℃の温度にて、少なくとも5という高い比透磁率を有する材料から形成されている。これに起因して、誘導コイル31によって生成される磁場は、磁束コンセントレータ33に引き寄せられ、磁束コンセントレータ33によって誘導される。それ故に、磁束コンセントレータ33は、磁気シールドとして働く。これは、外部物体の望ましくない加熱、または外部物体との望ましくない干渉を低減しうる。誘導モジュール30によって画定された内部体積内の磁場はまた、空洞20内の磁場の密度が増大するように、磁束コンセントレータ33によって歪められる。これは、空洞20中に位置するサセプタブレード61内に発生される電流を増大しうる。このようにして、磁場を空洞20に向かって集中させて、サセプタ素子60のより効率的な加熱を可能にすることができる。
【0080】
本発明によると、装置は、磁束コンセントレータ33が断片へと破損した場合、磁束コンセントレータ33の可能性のある断片を接合されたままにするために、磁束コンセントレータ33にしっかりと連結されている接合層40を備える。本実施形態において、接合層40は、磁束コンセントレータ33の実質的に表面全体に延びるように、磁束コンセントレータ33の表面上に堆積されたパリレン被覆として提供されている。しかしながら、管状磁束コンセントレータ33の内表面35または外表面36のうちの一つにのみ接合層が施されることが十分である場合がある。
【0081】
パリレンは化学的に不活性であり、それ故に医療用に認可されているため、接合層材料として特に適している。加えて、パリレンは十分な機械的抵抗と熱抵抗の両方を提供する。パリレン被覆は、真空下で蒸発によって堆積され、非常に薄い層を達成することができる。有利なことに、薄い接合層40は、磁束コンセントレータ33の外側寸法を著しく増大させない。本実施形態において、接合層40は約50マイクロメートルの層厚さを有する。パリレン被覆は、磁束コンセントレータ33の表面にある可能性のある細孔を充填することさえもできる。
【0082】
加えて、パリレン接合層40は、空洞20の中の過酷な環境による腐食から磁束コンセントレータ33を保護する。
【0083】
図3および
図4は、本発明の第二の実施形態による誘導モジュール130を示す。誘導モジュール130は、
図1および
図2による誘導モジュール30と非常に類似している。従って、同様または同一の特徴は、
図1および
図2と同一の参照符号に100をさらに加えた参照符号で示されている。
図1および
図2に示す磁束コンセントレータ33とは異なり、第二の実施形態による誘導モジュール130は磁束コンセントレータ133を含み、この磁束コンセントレータは単一構成要素ではなく、その代わりに複数の磁束コンセントレータセグメント137から形成されている。磁束コンセントレータセグメント137は管状であり、かつ磁束コンセントレータ133の長さに沿って互いに隣接し、また同軸に位置付けられている。磁束コンセントレータセグメント137は、異なる比透磁率値を有しうる。これは、磁束コンセントレータ133が「微調整」されて、誘導コイルからの誘導の望ましいレベルと、空洞中の磁束の望ましいレベルとを達成することを可能にする。第一の実施形態の誘導モジュール30と同様に、誘導モジュール130は、誘導コイル131のらせん状に巻かれたワイヤ138および磁束コンセントレータセグメント137を所定の位置に保持する環状突出部134を有する管状内側支持スリーブ132を含む。
【0084】
磁束コンセントレータセグメント137のそれぞれには、各セグメント137が破損した場合に別々に一緒に保持されるように、接合層140が提供されている。前述の実施形態とは対照的に、接合層140は、各磁束コンセントレータセグメント137の内表面135上にのみ堆積されているパリレン被覆である。当然のことながら、別の方法として、接合層140は各セグメント137の実質的に表面全体に延びるように施されてもよい。
【0085】
図5および
図6は、本発明の第三の実施形態による誘導モジュール230を示す。誘導モジュール230は、
図3および
図4による誘導モジュール130と非常に類似している。従って、同様または同一の特徴は、
図3および
図4と同一の参照符号に100をさらに加えた参照符号で示されている。
図3および
図4に示す磁束コンセントレータ133とは異なり、誘導モジュール230は、複数の細長い磁束コンセントレータセグメント237を含む磁束コンセントレータ233を備える。細長い磁束コンセントレータセグメント237は、それらの長軸方向軸が誘導コイル231の磁気軸と実質的に平行であるように、磁束コンセントレータ233の周囲の周りに位置付けられている。誘導モジュール230は、外側支持スリーブ239をさらに備え、この外側支持スリーブは誘導コイル231を囲み、かつ磁束コンセントレータセグメント237を所定の場所に保持するために使用されている。この目的を達成するために、外側支持スリーブ239は、磁束コンセントレータセグメントが中に摺動可能に保持されている複数の長軸方向のスロットを含む。外側支持スリーブ239は円形の円筒状の形状を有する。従って、磁束コンセントレータセグメント237は、外側支持スリーブ239の外側形状に対応する円弧状の断面を有する。長軸方向のスロットは、磁束コンセントレータセグメント237の長さより大きい長さを有する。結果として、磁束コンセントレータセグメント237はそれぞれ、それらのそれぞれのスロット内で摺動し、それらのそれぞれのスロット内にとどまりながら、それらのそれぞれの長軸方向の位置が変化しうる。これは、細長い磁束コンセントレータセグメント237のうち一つ以上の長軸方向の位置を変えることによって、電磁場が調整されることを可能にする。この例において、磁束コンセントレータセグメント237は、それらが狭いギャップによって分離されるように、外側支持スリーブ239上に配設されている。その他の例において、磁束コンセントレータセグメントのうちの二つ以上は、その側部のいずれかで磁束コンセントレータセグメントのうち一方または両方と直接接触しうる。第一および第二の実施形態の誘導モジュール30、130と同様に、第三の実施形態の誘導モジュール230も、誘導コイル231、外側支持スリーブ239および磁束コンセントレータ233を所定の位置に保持する環状突出部234を有する内側支持スリーブ232を含む。
【0086】
磁束コンセントレータセグメント237のそれぞれには、各セグメント237が破損した場合に別々に一緒に保持されるように、接合層240が提供されている。前述の実施形態とは対照的に、接合層240は、各セグメント237の実質的に表面全体にわたって延びるように堆積されているパリレン被覆である。
【0087】
図1~6による三つの実施形態すべてにおいて、接合層40、140、240は、誘導モジュール30、130、230を組み立てる前に、それぞれの磁束コンセントレータ33、133、233に施される。