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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】神経活性ステロイドおよび調製の方法
(51)【国際特許分類】
   C07J 7/00 20060101AFI20240227BHJP
   A61K 31/57 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 23/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C07J7/00 CSP
A61K31/57
A61P23/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021522112
(86)(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 AU2019050697
(87)【国際公開番号】W WO2020006596
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】62/693,546
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521000817
【氏名又は名称】ドローブリッジ ファーマシューティカルズ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】230111590
【弁護士】
【氏名又は名称】金本 恵子
(72)【発明者】
【氏名】エドモンズ イアン
(72)【発明者】
【氏名】へスラー エドワード ジェイ.
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0265632(US,A1)
【文献】国際公開第2011/088503(WO,A1)
【文献】BROWNE, P. A. et al.,A study of the henbest reduction: the preparation of 3a-hydroxy-5a and 3beta-hydroxy-5beta-steroids,JOURNAL OF THE CHEMICAL SOCIETY. C. ORGANIC,1969年,pp.1653-1659
【文献】EUW, J. V. et al.,Ueber bestandteile der nebennierenrinde und verwandte stoffe. 68. Mitteilung. pregnandiol-(3.alpha., 11.alpha)-on-(20) und pregnandiol-(3.beta., 11.alpha.)-on-(20),HELVETICA CHIMICA ACTA,1944年,Vol.27, No.1,pp.821-839,DOI:10.1002/hlca.194402701107
【文献】PHILLIPPS, G. H.,STRUCTURE-ACTIVITY RELATIONSHIPS IN STEROIDAL ANAESTHETICS,Journal of Steroid Biochemistry,Vol. 6,1975年,pp.607-613,DOI:10.1016/0022-4731(75)9001-2
【文献】ZHANGA, Zonglei,First Synthesis of a C-Homosteroid from Pregn-4-ene-3,11,20-trione,Helvetica Chimica Acta,2011年,Vol.94,pp.98-104
【文献】HILL, C. K. and HARTWIG, J. F.,Site-selective oxidation, amination and epimerization reactions of complex polyols enabled by transfer hydrogenation,Nat Chem. Author manuscript,2017年,pp.1-18,DOI:10.1038/nchem.2835.,Nat Chem. 2017 December ; 9(12): 1213-1221.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】
を調製するためのプロセスであって、
式(II)の化合物
【化2】
の3-ケトンをルテニウム触媒還元して式(I)の化合物を提供するステップを含む、プロセス。
【請求項2】
還元が、式(I)の3α-ヒドロキシ:3β-ヒドロキシが80:20以上の立体選択性を提供する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
式(I)の化合物が、式(Ia)の3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン
【化3】
である、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
ルテニウム触媒が、RuCl(p-シメン)[(R,R)-Tsdpen]、RuCl(p-シメン)[(S,S)-Tsdpen]、RuCl(メシチレン)[(S,S)-Tsdpen]、RuCl(p-シメン)[(S,S)-Fsdpen]およびRuCl[(S,S)-Ms-DENEB]からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
ルテニウム触媒が、RuCl(p-シメン)[(S,S)-Tsdpen]である、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
式(II)の化合物を、有機溶媒中、炭酸塩と混合するステップを含む、請求項1からのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
炭酸塩が、炭酸水素カリウムまたは炭酸カリウムである、請求項に記載のプロセス。
【請求項8】
有機溶媒が、エタノール、メタノールおよびイソプロピルアルコールからなる群から選択される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
有機溶媒が、イソプロピルアルコールである、請求項に記載のプロセス。
【請求項10】
a.ルテニウム触媒がRuCl(p-シメン)[(S,S)-Tsdpen]であり、炭酸塩が炭酸カリウムであり、有機溶媒がイソプロピルアルコールである;
b.ルテニウム触媒がRuCl(p-シメン)[(S,S)-Tsdpen]であり、炭酸塩が炭酸水素カリウムであり、有機溶媒がエタノールである;
c.ルテニウム触媒がRuCl(p-シメン)[(R,R)-Tsdpen]であり、炭酸塩が炭酸水素カリウムであり、有機溶媒がエタノールである;
d.ルテニウム触媒がRuCl(p-シメン)[(S,S)-Fsdpen]であり、炭酸塩が炭酸水素カリウムであり、有機溶媒がエタノールである;
e.ルテニウム触媒がRuCl[(S,S)-Ms-DENEB]であり、炭酸塩が炭酸水素カリウムであり、有機溶媒がエタノールである;
f.ルテニウム触媒がRuCl(p-シメン)[(S,S)-Tsdpen]であり、炭酸塩が炭酸水素カリウムであり、有機溶媒がメタノールである;または
g.ルテニウム触媒がRuCl(p-シメン)[(S,S)-Tsdpen]であり、炭酸塩が炭酸水素カリウムであり、有機溶媒がイソプロピルアルコールである;
請求項6に記載のプロセス。
【請求項11】
i)式(III)の11α-ヒドロキシプロゲステロン
【化4】
を還元して式(IV)の11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-H-プレグナン
【化5】
を提供するステップ、
ii)式(IV)の11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-H-プレグナンを酸化して式(II)の3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナン
【化6】
を提供するステップ、
iii)式(II)の3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナンを還元して式(Ia)の化合物を提供するステップ
をさらに含む、請求項3から10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
ステップi)における還元が、パラジウム触媒水素化である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
パラジウム触媒が、Pd/CaCOである、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
水素化が、有機溶媒をさらに含む、請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項15】
有機溶媒が、ジクロロメタン、ジクロロメタン/トリメチルアミン、またはジクロロメタン/トリエチルアミンである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
ステップii)における酸化が、NaOClおよび相間移動触媒の添加を含む、請求項11から15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
相間移動触媒が、硫酸水素テトラブチルアンモニウムである、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
iv)式(Ia)の化合物
【化7】
をヒドロキシ化して式(V)の化合物
【化8】
を提供するステップをさらに含む、請求項3から17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
iv)式(Ia)の化合物
【化9】
をアセチル化して式(VI)の化合物
【化10】
を提供するステップをさらに含む、請求項3から17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
マルチグラムスケール、キログラムスケール、マルチキログラムスケールまたは工業スケールで実施される、請求項1から19のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年7月3日に出願された、「Neuroactive Steroids and Methods of Preparation」と題された米国仮特許出願第62/693,546号の優先権を主張するものであり、その内容全体は、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、神経活性ステロイド麻酔剤(neuroactive steroid anaesthetic agents)、それらの調製のための方法およびそれらを含む組成物を教示するものである。
【背景技術】
【0003】
麻酔および鎮静を導入する従来の麻酔薬の使用は、長く続く混乱および神経機能不全をもたらし得ることがますます明らかになってきた。これらは、数ある事象の中でも、認知機能障害、未成熟オリゴデンドロサイトのアポトーシス、シナプス構築(synaptic architecture)における変化および神経新生の減少につながる、神経炎症の状態の誘発を含む(Brinerら(2010)Anesthesiolgy 112:546~556;Tanら(2009)Chin.Med.J.(Engl)122:455~459;Zhuら(2010)J.Cereb.Blood Flow Metabl 30:1017~1030;Sandersら(2009)Anesthesiology 110:1077~1085)。
【0004】
脳は毒性生体異物に対して先天的防御機構を有する(Selye(1971)J Pharm Sci 60:1~28)が、先天的防御機構は、幼年者、高齢者、または急性疾病、感染症、慢性疼痛もしくは手術の後等のストレス下にある対象において、効率的でない場合があると認識されている(Ekら(2010)Toxicol Lett 197:61~59)。
【0005】
アルファキサロン(alfaxalone)(alphaxaloneまたは3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオンとしても知られる)は、獣医学において現在使用されている強力な神経活性ステロイド麻酔薬である(Childら、British Journal of Anaesthesia 43:2~13、1971)。
【0006】
アルファキサロンは、アルファドロン(Alfaxalone)(alphadoloneまたは3α,21-ジヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオンとしても知られる)と一緒に静脈内麻酔薬として世界中で広く使用された。この組合せ麻酔薬(アルテシン、アルファテシンとしても知られる)は、1983年までヒト患者において使用された。これらの麻酔薬は高い治療指数(therapeutic index)を有するが、それにもかかわらず、投与用製剤の一部を形成するポリエトキシル化ヒマシ油賦形剤(クレモホルEL)に対する、時折の、予測不可能であるが重度のアナフィラキシー様反応により、臨床診療から撤退された。
【0007】
【化1】
【0008】
最近、神経活性ステロイド麻酔薬のための薬物送達系について記述されている(国際公開第WO2011/088503号を参照されたい)。具体的には、哺乳動物対象において麻酔または鎮静を導入するのに使用するための、神経活性ステロイド麻酔薬およびシクロデキストリンまたはその修飾形態(神経活性ステロイド麻酔薬の投与を可能にする)を含むホスト/ゲスト複合体製剤について記述されている。このホスト/ゲスト薬物送達系は、予測不可能で重度のアナフィラキシー様反応を引き起こすと認識されたポリエトキシル化ヒマシ油賦形剤の使用なしに、神経活性ステロイド麻酔薬の製剤化および投与を可能にする。
【0009】
さらに、神経活性ステロイド麻酔薬のための、経口およびまたは腹腔内投与ルートを含む代替的な投与ルートが記述されている。例えば、i)Goodchild CSら、British Journal of Anaesthesia(2001)、86:528~34;ii)Goodchild CSら、Pain Med(2009)、10:890~901;iii)Nadeson RおよびGoodchild CS.British Journal of Anaesthesia(2001)、86:704~8;およびiv)Winter Lら、Anesth Analg(2003)、97:798~805を参照されたく、これらはすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0010】
代替的な製剤化の方法および/または投与ルートは、ヒト患者において先に同定されたアルテシン等の麻酔薬を含む神経活性ステロイドに関連する欠陥のいくつかを克服し得ることが理解される。
【0011】
神経活性ステロイドの製剤化および投与のための新しく効果的な方法にもかかわらず、これらの複雑なステロイドの調製は未だ課題である。
【0012】
米国特許第3,714,352号において記述されているもの等、アルファキサロンの調製のための先に記述された方法は、低収率に悩まされ、選択性を欠き、大規模な精製を必要としおよび/または大規模化を図るのが容易ではない。
【発明の概要】
【0013】
比較的少ない化学的ステップで、高純度のおよび/または工業的に適用可能である、神経活性ステロイド麻酔薬の迅速な調製のための新たな合成方法が必要である。加えて、神経活性ステロイドの調製のための新たな立体選択的合成方法、とりわけ工業スケールで適用され得る立体選択的合成方法が必要である。
【0014】
本発明は、神経活性ステロイド麻酔薬の合成のための新たな方法の同定に、一つには基づいている。特に、本明細書において記述されている方法は、ステロイドコアの位置および/または立体選択的官能化を提供する。1つまたは複数の態様において、本発明のプロセスは、有利なことに、神経活性ステロイドの効率的な調製を、キログラムを含むマルチグラムスケールの量で、良好から高収率で提供する。本明細書において開示されるプロセスは、スケールアップに適していることが示され、式(I)の化合物およびその塩の生成を、医学的投与に適した材料の生成のためのGMP条件に従う効率的かつ安全な方法で、大スケールで可能にする。
【0015】
したがって、1つまたは複数の態様において、本発明は、式(I)の化合物
【0016】
【化2】
を調製するためのプロセスであって、
式(II)の化合物
【0017】
【化3】
の3-ケトンをルテニウム触媒還元して式(I)の化合物を提供するステップを含む、プロセスを提供する。
【0018】
1つまたは複数の実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ia)の3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン:
【0019】
【化4】

である。
【0020】
他の態様において、本発明のプロセスは、
i)式(III)の11α-ヒドロキシプロゲステロン
【0021】
【化5】


を還元して式(IV)の11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-H-プレグナン
【0022】
【化6】

を提供するステップ、
ii)11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-H-プレグナンを酸化して式(II)の3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナン
【0023】
【化7】
を提供するステップ、
iii)式(II)の3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナンを還元して式(Ia)の化合物を提供するステップ
をさらに含む。
【0024】
さらに他の態様において、本発明のプロセスは、iv)式(Ia)の化合物をアセチル化またはヒドロキシ化して式(V)または式(VI)の化合物:
【0025】
【化8】

を提供するステップをさらに含む。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、本発明のプロセスによって調製された式(Ia)、式(V)または式(VI)の化合物を提供する。
【0027】
他の態様において、本発明は、本明細書において記述されている方法によって調製された1つまたは複数の神経活性ステロイドを含む、麻酔薬組成物を含む医薬組成物を提供する。
【0028】
本開示は、中枢神経系(CNS)の神経保護を誘導するための、本明細書において記述されている方法によって調製された神経活性ステロイドの使用も教示する。神経活性ステロイドは、麻酔薬もしくは鎮静製剤中でまたは非鎮静神経保護製剤としてのいずれかで与えられる場合、神経保護を容易にする。「神経保護」が意味するのは、神経炎症および神経炎症促進条件を、軽減すること、寛解すること、低減させることまたは別様で減少させることである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】CDCl中、25℃における、本発明の方法によって調製されたアルファキサロン(3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン)のH NMRスペクトルを示す図である。
図2】CDCl中、25℃における、本発明の方法によって調製されたアルファキサロン(3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン)の13C NMRスペクトルを示す図である。
図3】本発明の方法によって調製されたアルファキサロン(3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン)のIRスペクトルを示す図である。
図4】純度99.8%を指し示す、ダイオードアレイ検出付きVarian1100シリーズHPLCを使用する、本発明の方法によって調製されたアルファキサロン(3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン)のHPLC分析を示す図である。分析は、SiliaChrom(登録商標)dtC18、5μm、100Å、4.6×250mmのカラムを用いて205および235nmで行い、溶離は、水中40%アセトニトリルから90%アセトニトリルの勾配系を使用し、1ml/分で26分間にわたって行った。試料は、英国薬局方に従い、ベタメタゾンを内部標準として使用して、0.2%(w/v)で調製した。
図5】本発明の方法によって調製されたアルファキサロン(3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン)のUV-visスペクトルを示す図である。
図6】アルファキサロン(3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン)の質量スペクトルを示す図である。
図7】CDCl中、25℃における、11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-H-プレグナンのH NMRスペクトルを示す図である。
図8】CDCl中、25℃における、11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-H-プレグナンの13C NMRスペクトルを示す図である。
図9】CDCl中、25℃における、3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナンのH NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」等の変化形は、記載されている要素もしくは整数もしくは方法ステップ、または要素もしくは整数もしくは方法ステップの群の包含を暗示するが、任意の要素もしくは整数もしくは方法ステップ、または要素もしくは整数もしくは方法ステップの群の除外を暗示するものではないと理解されるであろう。
【0031】
主題明細書において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上明確に別のことを指示するのでない限り、複数の態様を含む。故に、例えば、「神経活性ステロイド」への言及は、単一の神経活性ステロイドおよび2つ以上の神経活性ステロイドを含み、「麻酔薬」への言及は、単一の麻酔薬および2つ以上の麻酔薬を含み、「本開示」への言及は、本開示によって教示される単一のおよび複数の態様を含む等である。本明細書において教示され可能になる態様は、用語「発明」によって包括される。すべてのそのような態様は、本発明の幅内で可能になる。
【0032】
その最も広い意味で、用語「神経活性ステロイド」は、神経系において活性を有しおよび/または神経活性を修正することができる、自然発生または合成ステロイド化合物を指す。
【0033】
神経認知機能の長期にわたる神経機能不全または混乱を最小限にして麻酔または鎮静を導入するための、神経炎症の誘導を最小化する、麻酔薬/鎮静製剤を使用することが提案される。非鎮静製剤は、神経炎症を低減させるためおよびCNSからの神経毒の輸送を増大させるための、神経保護製剤としての使用も提案される。
【0034】
1つまたは複数の(one more)態様において、本発明は、有利なことに、神経活性ステロイドの合成のための改善されたプロセスを提供する。
【0035】
1つまたは複数の実施形態において、本発明は、有利なことに、式(X)の化合物:
【0036】
【化9】

[式中、Rは、CHまたはCHOHまたはCHOC(O)CHである]
によって一般的に表される化合物の合成のための改善されたプロセスを提供する。
【0037】
1つまたは複数の実施形態において、神経活性ステロイドは、アルファキサロン(3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン)、アルファドロン(3α,21-ジヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン)またはアルファドロンアセテート:
【0038】
【化10】

である。
【0039】
例として、限定されないが、本発明のプロセスは、スキーム1を参照することによってさらに理解され得る。スキーム1は、アルファキサロン(13)、3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオンの調製のための一般的な合成プロセスを詳述するものである。
【0040】
【化11】
【0041】
1つまたは複数の態様において、本発明のプロセスは、有利なことに、神経活性ステロイド麻酔薬の位置選択的および/または立体選択的合成を提供する。
【0042】
特に、驚くべきことに、式(I)の化合物は、スキーム2において詳述されている通りの、式(II)の化合物の3-ケトンの位置選択的ルテニウム触媒還元:
【0043】
【化12】
によって調製され得ることが分かった。
【0044】
驚くべきことに、還元は、式(II)の化合物の3-ケトンに対して、11および20位のケトンよりも高度に位置選択的である。そのような位置選択性は、有利なことに、保護基の必要性を取り除き、そのため、アルファキサロン等の式(I)の化合物の調製を、低減されたステップ数で可能にし、それにより、全合成を簡略化する。
【0045】
1つまたは複数の態様において、式(I)の化合物は、スキーム3において詳述されている通りのアルファキサロン(3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン)である。
【0046】
【化13】
【0047】
1つまたは複数の態様において、ルテニウム触媒還元は、式(I)の3α-ヒドロキシに対して立体選択的である。1つまたは複数の実施形態において、3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナンのルテニウム触媒還元は、式(I)の3α-ヒドロキシ:3β-ヒドロキシ異性体に対して、60:40以上、66:34以上、70:30以上、75:25以上、80:20以上、81:19以上、82:18以上、83:17以上、84:16以上、85:15以上の立体選択性を提供する。
【0048】
ある実施形態において、3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナンのルテニウム触媒還元は、式(I)の3α-ヒドロキシ:3β-ヒドロキシ異性体に対して、80:20以上の立体選択性を提供する。
【0049】
1つまたは複数の実施形態において、3,11,20-トリケト-5α-Hプレグナンのルテニウム触媒還元は、式(I)の3α-ヒドロキシ:3β-ヒドロキシ異性体に対して、85:15以上を含む、84:16以上を含む、83:17以上を含む、82:18以上を含む、81:19以上の立体選択性を提供する。
【0050】
このような立体選択性は、有利なことに、保護基の必要性を取り除き、そのため、アルファキサロン等の式(I)の化合物の調製を、低減されたステップ数で可能にし、それにより、全合成を簡略化する。
【0051】
1つまたは複数の実施形態において、3,11,20-トリケト-5α-Hプレグナンの還元のための触媒は、適切なルテニウム触媒である。特に、1つまたは複数の実施形態において、ルテニウム触媒は、RuCl(p-シメン)[(R,R)-Tsdpen]、RuCl(p-シメン)[(S,S)-Tsdpen]、RuCl(メシチレン)[(S,S)-Tsdpen]、RuCl(p-シメン)[(S,S)-Fsdpen]およびRuCl[(S,S)-Ms-DENEB]からなる群から選択される。ある実施形態において、ルテニウム触媒は、RuCl(p-シメン)[(S,S)-Tsdpen]である。
【0052】
1つまたは複数の実施形態において、ルテニウム触媒の好適な量は、基質(すなわち、式(II)の化合物)のモル数に基づき、約0.005から約5.0モルパーセントまでである。特に、1つまたは複数の実施形態において、ルテニウム触媒の好適な量は、基質のモル数に基づき、約0.02から約1.0モルパーセントまでを含む、約0.01から約2.0モルパーセントまでである。
【0053】
1つまたは複数の実施形態において、3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナンのルテニウム触媒還元は、好適な塩基の存在下で行われる。特定の実施形態において、塩基は、カリウム塩である。1つまたは複数の実施形態において、塩基は、KHCOおよびKCOから選択される。いくつかの実施形態において、塩基は、KCOである。
【0054】
本明細書において特許請求される合成方法の反応は、有機合成の当業者によって容易に選択され得る好適な溶媒中で行われ、前記好適な溶媒は、一般的に、反応が行われる温度、すなわち、溶媒の目的が反応物をクエンチすることでない限り、該溶媒の凍結温度から該溶媒の沸騰温度までの範囲であってもよい温度で、出発材料(反応物質)、中間体または生成物と実質的に非反応性である任意の溶媒である。所与の反応は、1つの溶媒または1つを超える溶媒の混合物中で行われてもよい。特定の反応ステップに応じて、特定の反応ステップのための好適な溶媒が、任意の他の反応ステップとは無関係に選択されてもよい。ある特定の実施形態において、溶媒は、無水溶媒である。さらに他の実施形態において、溶媒および/または反応は、不活性雰囲気下である。
【0055】
1つまたは複数の実施形態において、3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナンのルテニウム触媒還元は、有機溶媒の存在下で行われる。特定の実施形態において、溶媒は、極性有機溶媒である。1つまたは複数の実施形態において、溶媒は、アルコール溶媒である。特に、ルテニウム触媒還元は、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソプロピルアルコール(IPA)またはそれらの組合せの存在下で行われる。特に、ルテニウム触媒還元は、イソプロピルアルコール(IPA)の存在下で行われる。
【0056】
ある特定の実施形態において、還元は、およそ25~27℃を含む、約20~30℃の範囲内の温度を含む、約25~35℃の範囲内の温度で行われる。ある特定の実施形態において、還元は、約16時間の期間を含む、12~18時間を含む、10~20時間を含む、約5~25時間の期間をかけて行われる。
【0057】
ある特定の実施形態において、所望生成物を、マグネゾール、シリカおよび炭素等の添加剤の添加によって精製し、濾過し、凝縮して、所望生成物を提供してもよい。
【0058】
1つまたは複数の実施形態において、3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナン(12)のルテニウム触媒還元の立体選択性を、3αおよび3β異性体の任意選択の分離によってさらに改善してもよい。有利なことに、3βOH異性体は、TBSCl等の大きいシリル化剤との異なる反応性を呈し、それにより、3αOHおよび3βOH異性体の分割を容易にすることが分かった。1つまたは複数の実施形態において、場合によっては、3αOHおよび3βOH異性体を、3αOH異性体のTBSClとの選択的反応によって分離して、アキシャルおよびエクアトリアルアルコールの反応性における差異を活用してもよい。これらの条件下で、3αOHは、大部分が保護されていないままである。次いで、TBS保護3βOHを、当技術分野において公知の標準的な条件下、クロマトグラフィーによって、所望の3αOH異性体から分離してもよい。
【0059】
1つまたは複数の実施形態において、結果として生じた生成物を、当技術分野において公知の方法によって単離および/または精製してもよい。ある特定の実施形態において、チオール樹脂処理およびカラムクロマトグラフィーは、残留ルテニウムが少ない高純度の所望生成物を提供し得る。他の実施形態において、所望生成物を、再結晶によって精製してもよい。
【0060】
ある特定の実施形態において、所望生成物を、IPA等の好適な有機溶媒からの再結晶によってさらに精製してもよい。有利なことに、そのような方法は、良好な収率および非常に高純度で規模の拡大が可能であるである。ある特定の実施形態において、精製された生成物は、99%以上が所望の3αOH異性体であり、残留金属は、1ppmのPdおよび1ppmのRu未満である。ある特定の実施形態において、そのような方法は、有利なことに、GMPガイドラインを満たすであろうと想定される。いくつかの実施形態において、精製された生成物は、10ppm未満、9ppm未満、8ppm未満、7ppm未満、6ppm未満、5ppm未満、4ppm未満、3ppm未満、2ppm未満、1ppm未満、または0.5ppm未満のRu、好ましくは1ppm未満のRuを含む。いくつかの実施形態において、精製された生成物は、10ppm未満、9ppm未満、8ppm未満、7ppm未満、6ppm未満、5ppm未満、4ppm未満、3ppm未満、2ppm未満、1ppm未満、または0.5ppm未満のPd、好ましくは1ppm未満のPdを含む。特定の実施形態において、精製された生成物は、組み合わせた濃度が10ppm未満、9ppm未満、8ppm未満、7ppm未満、6ppm未満、5ppm未満、4ppm未満、3ppm未満、2ppm未満、1ppm未満、または0.5ppm未満のPdおよびRu、好ましくは1ppm未満のPdおよびRuを含む。
【0061】
1つまたは複数の追加の態様において、本発明は、有利なことに、スキーム4において詳述されている通り、11α-ヒドロキシプロゲステロン(10)を還元して11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-H-プレグナン(11)を提供することによる、アルファキサロン等の式(X)の化合物の合成のための改善されたプロセスを提供する。11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-H-プレグナン(11)の酸化は、スキーム5において詳述されている通りの、3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナン(12)を提供し、これをその後、記述されているルテニウム触媒還元に供して、アルファキサロン(3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン、(13))等の式(X)の化合物を提供してもよい。
【0062】
【化14】
【0063】
1つまたは複数の実施形態において、本発明は、好適なパラジウム触媒による11α-ヒドロキシプロゲステロン(10)の水素化を提供する。特に、1つまたは複数の実施形態において、パラジウム触媒は、Pd/CaCO、Pd/SrCOおよびPd/BaCOからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、パラジウム触媒は、5%Pd/CaCO、5%Pd/SrCOおよび5%Pd/BaCOからなる群から選択される。ある実施形態において、11α-ヒドロキシプロゲステロンの水素化のためのパラジウム触媒は、5%Pd/CaCOである。
【0064】
1つまたは複数の実施形態において、パラジウム触媒の好適な量は、約0.5wt%を含む、約0.1から約1.0wt%までを含む、約0.01から約2.0wt%までである。
【0065】
1つまたは複数の態様において、パラジウム触媒水素化は、立体選択的である。立体選択性は、有利なことに、アルファキサロン等の式(I)の化合物の全合成を簡略化し、合成ステップの数を減少させ、全収率を改善、および/または複雑な精製および単離手順の必要性を低減させる。1つまたは複数の実施形態において、11α-ヒドロキシプロゲステロンのパラジウム触媒水素化は、11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5-H-プレグナンの5αH:5βH異性体に対して、75:25以上、80:20以上、85:15以上、90:10以上、95:5以上、99.5:0.5以上の立体選択性を提供する。ある特定の実施形態において、11α-ヒドロキシプロゲステロン(10)のパラジウム触媒水素化は、11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-H-プレグナン(11)を、99.5:0.5以上の立体選択性で提供する。
【0066】
1つまたは複数の実施形態において、11α-ヒドロキシプロゲステロンのパラジウム触媒水素化は、好適な有機溶媒の存在下で行われる。1つまたは複数の実施形態において、好適な有機溶媒は、ジクロロメタン(DCM)、ジクロロメタンおよびトリメチルアミンの組合せ、またはジクロロメタンおよびトリエチルアミンの組合せを含む。
【0067】
11α-ヒドロキシプロゲステロンのパラジウム触媒水素化は、Hガスを含む水素源の存在下で行われることが理解される。ある特定の実施形態において、水素化は、圧力範囲103~3447kPa(15~500psi)で行われる。ある実施形態において、圧力は、約600kPa(100psi)である。ある特定の実施形態において、水素化は、およそ30℃を含む約20から約40℃の範囲内の温度で行われる。ある特定の実施形態において、水素化は、約3時間の期間を含む、約2から約4時間を含む、約1から約5時間を含む、約0.5から約6時間の期間をかけて行われる。
【0068】
結果として生じた生成物を、当技術分野において公知の方法によって単離および/または精製してもよい。ある特定の実施形態において、反応物をおよそ20℃に冷却し、濾過し、DCMで洗浄して、触媒を除去する。1つまたは複数の実施形態において、DCM濾液を、1.5M HClおよび10%重炭酸カリウムによる溶媒抽出によって抽出してもよい。次いで、水性相をDCMで再抽出し、硫酸マグネシウム等の薬剤(agents)で乾燥させ、濾過し、凝縮してもよい。1つまたは複数のさらなる実施形態において、単離された生成物を、tert-ブチルメチルエーテル(MTBE)の添加によってさらに精製して、約50℃を含む45~55℃の範囲内の温度で、およそ2時間にわたって、次いで、約20℃を含む15~25℃の範囲内の温度で、およそ1時間にわたって、スラリーを形成して、結晶性スラリーを提供し、これを、濾過し、乾燥させて、所望生成物を得てもよい。ある特定の実施形態において、所望生成物を、アセトニトリル等の好適な有機溶媒からの再結晶によってさらに精製してもよい。有利なことに、そのような方法は、良好な収率および非常に高純度で大規模化が可能である。ある特定の実施形態において、精製された生成物は、99%以上が所望の5αH異性体であり、残留金属は、1Pd ppm未満である。ある特定の実施形態において、そのような方法は、GMPガイドラインを満たすであろうと想定される。
【0069】
上述のように、1つまたは複数の実施形態において、本発明は、11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-H-プレグナン(11)の3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナン(12)への酸化を提供する。1つまたは複数の実施形態において、酸化は、好適な酸化剤の存在下で行われる。特に、11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-H-プレグナン(11)の酸化は、NaOCl.5HOを含むNaOClの存在下、場合により、1つまたは複数の相間移動触媒の存在下で行われる。1つまたは複数の実施形態において、11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-H-プレグナン(11)の酸化は、NaOCl.5HOの存在下、相間移動触媒としてBuNHSOを用いて、好適な条件下で行われる。1つまたは複数の実施形態において、NaOCl.5HOは、4時間以上を含む、3時間以上を含む、2時間以上を含む、1時間以上を含む、0.5時間以上の期間をかけて、小分けにして添加される。
【0070】
11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-H-プレグナン(11)の3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナン(12)への酸化は、DCMを含む好適な有機溶媒の存在下で行われることが理解される。
【0071】
ある特定の実施形態において、酸化は、およそ20~25℃を含む約15~30℃の範囲内の温度で行われる。ある特定の実施形態において、酸化は、3~5時間を含む、2~6時間を含む、約1~7時間の期間をかけて行われた後、およそ12℃を含む、約10~15℃の範囲内を含む、約5~20℃の範囲内の温度に冷却され、その後、反応物は、Na等の穏やかな還元剤を含む好適な還元剤の添加によってクエンチされる。
【0072】
結果として生じた生成物を、当技術分野において公知の方法によって単離および/または精製してもよい。ある特定の実施形態において、所望生成物を、DCM等の好適な有機溶媒を使用する溶媒抽出によって単離し、硫酸マグネシウム等の薬剤で乾燥させ、濾過し、凝縮してもよい。1つまたは複数のさらなる実施形態において、単離された生成物を、アセトニトリル等の好適な溶媒を用いる粉砕および/または再結晶によってさらに精製してもよい。1つまたは複数の実施形態において、所望生成物をカラムクロマトグラフィーによってさらに精製して、所望生成物を良好な収率および高純度で提供してもよい。
【0073】
本発明のプロセスによって調製された化合物を、クロマトグラフプロセスを含む当技術分野において公知の方法によって単離および/または精製してもよいことが理解される。
【0074】
本明細書において使用される場合、化合物または中間体に言及する際の用語「単離された」は、該化合物または中間体が任意の他の化合物、溶媒もしくは物質から物理的に除去されること、または任意の他の化合物、溶媒もしくは物質を物理的に除去する行為を指す。本明細書において使用される場合、「精製」ステップへの言及は、「単離」ステップとは異なっており、後者のみが完了した際には、化合物または中間体を単離された形態で提供し、前者が完了した際には、化合物または中間体を、少なくとも1つの他の化合物、溶媒または他の物質の存在下で提供する。例えば、精製ステップは、水性もしくは有機溶媒での洗浄、酸塩基抽出、単純濾過または溶媒交換等のステップを含んでもよい。これは、化合物を実質的に純粋な形態で提供する、クロマトグラフ分離ステップ、例えば、フラッシュカラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーおよび他の分取クロマトグラフィー方法と対照的である。
【0075】
有利なことに、本発明は、工業スケールを含む、マルチキログラムスケールを含む、キログラムスケールを含む、少なくともマルチグラムスケールで実施されることが予定されている。マルチグラムスケールは、本明細書において使用される場合、少なくとも1つの出発材料が、少なくとも100グラム以上を含む、少なくとも50グラム以上を含む、10グラム以上で存在する、スケールを含む。マルチキログラムスケールは、本明細書において使用される場合、1キログラムを超える少なくとも1つの出発材料が使用されるスケールを意味するように意図されている。工業スケールは、本明細書において使用される場合、実験室スケール以外であり、臨床試験または消費者への配布のいずれかに十分な製品を供給するために十分なものであるスケールを意味するように意図されている。
【0076】
1つまたは複数の態様において、本発明のプロセスは、有利なことに、適正製造基準(GMP)に従う。GMPは、食品および飲料、医薬製品、補給剤、医療デバイス等の製造および販売の権限付与およびライセンス供与を管理する機関によって推奨されるガイドラインを守るために必要とされる、製造慣行として理解されている。そのような機関は、米国食品医薬品局、欧州連合GMPおよび世界保健機関(WHO)を含む。そのため、本発明のプロセスは、有利なことに、結果として生じた生成物の製造、試験および品質保証が、ヒトによる消費または使用のために安全であるような、GMPガイドラインに従う神経活性ステロイド麻酔薬を提供する。
【0077】
さらに、アルファキサロン(3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン)を、先に記述された、例えば、スキーム6において詳述されている通りの方法によって、アルファドロンアセテートおよびアルファドロンに合成してもよいと一般的に認識されている。
【0078】
【化15】
【0079】
キログラムを含むマルチグラムスケールの量、良好から高収率での神経活性ステロイドの効率的な調製のための本発明のプロセス。効率的な合成を実現するために、ステップの多くは位置および/または立体選択的であり、複雑な保護基戦略の使用および/または不必要な官能基相互変換を回避する。しかしながら、それにもかかわらず、式(X)の化合物またはその溶媒和物の調製において、望ましくない副反応を防止するために、分子中の1つまたは複数の感受性基を保護することが必要および/または望ましい場合があることが想定される。式(X)の化合物の調製において使用される保護基は、従来の方法で使用されてもよい。例えば、Protective Groups in Organic Chemistry、J.F.W.McOmie編、Plenum Press、London(1973)またはProtective Groups in Organic Synthesis、Theodora Green、John Wiley and Sons、New York(1981)を参照されたい。
【0080】
本明細書において使用される場合、「良好な」収率は、工業プロセスを含むマルチグラムプロセスにとって実行可能である収率を指す。例えば、良好な収率は、95%以上を含む、90%以上を含む、85%以上を含む、80%以上を含む、75%以上を含む、70%以上を含む、65%以上を含む、60%以上を含む、55%以上を含む、50%以上であってもよい。
【0081】
本発明の化合物は、1つまたは複数の立体異性形態(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー)で存在してもよいことが理解される。具体的な立体異性形態が適宜指し示されている。具体的な立体異性体が指し示されていない場合、本発明は、1つまたは複数の異性体を包括してもよい。
【0082】
ある特定の実施形態において、プロセスは、式(I)の化合物を生成する。他の実施形態において、プロセスは、式(I)の化合物またはその塩を生成する。これに関して、塩は、薬学的に許容される塩であってもよい。例えば、pKa、pH、分子質量、融点、密度、溶解度、極性および外観等の化合物の物理的特性、ならびに分解プロファイル、反応性、安定性および異性等の化学的特性は、方法プロセス中の取り扱いのためだけではなく、生成物として形成された際に化合物が活性なままであることを確実にするためにも、考慮される必要がある。ある特定の塩形態が、一態様、例えば製造プロセスにおいて、望ましい品質を提供し得る場合であっても、その選択は依然として、その他の品質(例えば、薬物動態特性)を考慮して評価されなくてはならない。薬理学的に許容される塩の例は、アルファドロンアセテートであり、これは、本開示によって包括される。神経活性ステロイド麻酔薬の誘導体の例は、重水素化またはトリチウム化誘導体、ならびに、アルファキサロン、アルファドロンおよびアルファドロンアセテートを含む、式Xによって包括される誘導体である。「修飾」シクロデキストリンは、シクロデキストリンの誘導体を含む。
【0083】
本明細書において記述されている方法によって調製された神経活性ステロイドは、麻酔薬もしくは鎮静組成物の形態または非鎮静鎮痛薬もしくは神経保護組成物としてのものであってもよい。したがって、本発明の別の態様において、薬学的に許容される組成物が提供され、ここで、これらの組成物は、本明細書において記述されている方法によって調製された神経活性ステロイドを含み、薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを場合により含む。ある特定の実施形態において、これらの組成物は、1つまたは複数の追加の治療剤を場合によりさらに含む。
【0084】
本明細書においてさらに教示されるのは、対象において麻酔または鎮静を導入するための方法であって、対象に、有効量の本明細書において記述されている方法によって調製された神経活性ステロイドを投与するステップを含む、方法である。本明細書において記述されている方法によって調製された神経活性ステロイドの組成物は、長期にわたる神経機能不全なしに、プロポフォールと比較して、同様のまたはより迅速な覚醒時間で手術レベルまでの麻酔の迅速な導入を開始することもできることも想定される。
【0085】
そのような組成物は、神経活性ステロイドが、静脈内、皮下、腹腔内、髄腔内、筋肉内、硝子体内、経皮、坐剤(直腸内)、ペッサリー(経膣)、吸入、鼻腔内等によって送達されることを意味する、インビボ送達のためのものであってもよい。最も効果的には、製剤は、静脈内(iv)製剤である。経口的に与えられるアルファドロンは、非鎮静であり、単独でまたはオピオイドと組み合わせて無痛覚を誘発する。1つまたは複数の実施形態において、組成物は、皮下もしくは筋肉内デポー剤、移植片、ペレットまたは同様の送達デバイスを介する送達のために製剤化されてもよい。またはさらなる実施形態において、そのようなデバイスは、制御された速度の送達を長時間にわたって提供し得ることが想定される。
【0086】
本明細書において記述されている方法によって調製された神経活性ステロイドを含む組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含んでもよい。シクロデキストリンは、神経活性ステロイドの製剤において有用な担体を形成するが、ポリエトキシル化ヒマシ油(クレモホルEL)等の他の担体を使用してもよい。
【0087】
本明細書において記述されている方法によって調製された神経活性ステロイドを含む組成物は、ある実施形態において、pH約5.5から約pH8までに維持するために、リン酸またはトリスもしくはリン酸クエン酸塩緩衝液等の緩衝液を含んでもよい。これは、5.5、6、6.5、7、7.5および8のpH値を含む。別法としては、組成物は、緩衝液を含まず、pHは、pH3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9または9.5等、約pH3から約pH9.5までである。
【0088】
さらなる態様において、本明細書において記述されている方法によって調製された神経活性ステロイドを含む組成物は、賦形剤、保存剤および/または微生物抑制剤等の1つまたは複数の薬剤を含んでもよい。毒性を低減させるために、他の薬剤が含まれてもよい。薬剤は、例えば、EDTA、ベンジルアルコール、クロロクレゾール、重亜硫酸塩、ラウリン酸のモノグリセリルエステル(モノラウリン)、カプリン酸および/またはその可溶性アルカリ塩もしくはそのモノグリセリルエステル(モノカプリン)、エデト酸塩、ならびにカプリン酸および/またはその可溶性アルカリ塩もしくはそのモノグリセリルエステル(モノカプリン)およびエデト酸塩(edentate)を含む。製剤は、麻酔剤の溶解度または安定性に役立てるために、1つまたは複数のコポリマーを含有してもよい。例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)および/またはカルボキシルメチルセルロース(CMC)が挙げられる。
【0089】
都合よくは、神経活性ステロイド麻酔薬は、シクロデキストリンを含む生理食塩水または水懸濁液中、約0.5から100mg/mlまでの濃度で提供される。そのような濃度は、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99および100mg/mlの薬物を含む。上記で指し示されている通りに、組成物は、概して、神経活性ステロイドのシクロデキストリンに対するモル比が、約1:1から1:3までを含み、約1:2を含む、約1:1から1:4までを含む、約1:1から約1:6までとなるように、製剤化される。アルファドロンについて、モル比は、1:2から1:6までである。
【0090】
本開示は、対象において無痛覚を誘発する方法であって、対象に、有効量の本明細書において記述されている方法によって調製された神経活性ステロイドを投与するステップを含む、方法を指導するものである。
【0091】
組成物中に含まれる神経活性ステロイドの量は、治療される動物の性質によって決定されることになる。ある実施形態において、7~15mg/mLを含む、5~25mg/mLを含む、1~100mg/mLのレベルが適切となり得る。
【0092】
本明細書において可能になる別の態様は、シクロデキストリンホストまたはその修飾形態を、本明細書において記述されている方法によって調製された神経活性ステロイド麻酔薬ステロイドゲストとともに含む、薬物送達ホスト/ゲスト組成物に向けられる。特定の例としては、アルファキサロン、アルファドロンならびに薬理学的および薬学的に許容されるそれらの誘導体、塩およびプロドラッグ形態が挙げられる。
【0093】
ある実施形態において、神経活性ステロイドは、シクロデキストリン中で製剤化され、1時間当たり約0.001mg/kgから約20mg/kg/体重までの量で提供される。
【0094】
本明細書において記述されている方法によって調製された神経活性ステロイドは、有害な神経症状を発症することなく無痛覚を容易にするために、オピオイドとともに投与されてもよい。別法としては、神経活性ステロイドは、合剤化(co-formulated)されるか、またはそうでなければ順次にもしくは同時に投与される。
【0095】
本明細書において記述されている方法によって調製された神経活性ステロイドは、神経機能不全(例えば、認知低下)を回避するために、スタチン(例えば、アトルバスタチン)を含むコレステロール降下薬等の別の薬物とともに投与されてもよい。
【0096】
販売または臨床医による使用のためにパッケージ化された、本明細書において記述されている方法によって調製された神経活性ステロイドを含む治療用キットも、本明細書において教示される。いくつかの実施形態においては、キットは、販売または医師、看護師、救急医療隊員、獣医等を含む好適な医療専門家による使用のためにパッケージ化されていてもよい。キットは、鎮痛薬または神経薬をさらに含有してもよい。
【0097】
本開示はヒトにおいて使用するための麻酔製剤を教示するものであるが、製剤は、臨床試験または獣医学への使用のため等、動物において使用されてもよい。本明細書において企図されている非ヒト動物は、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、ウマ、雌ウシ、ヤギ、ラクダおよび非ヒト霊長類を含む。
【0098】
当業者ならば、本明細書において記述されている開示は、具体的に記述されているもの以外の変形形態および修正形態を受け入れ得ることが分かるであろう。本開示は、すべてのそのような変形形態および修正形態を企図していることを理解されたい。本開示は、個々にまたは集合的に、本明細書において言及されているまたは指し示されているステップ、特色、組成物および化合物のすべて、ならびに、ステップまたは特色または組成物または化合物の任意の2つ以上のありとあらゆる組合せも可能にする。
【0099】
本明細書における、任意の先行刊行物(またはそれに由来する情報)への、または公知である任意の物への言及は、当該先行刊行物(またはそれに由来する情報)または公知の物が、本明細書が関する努力の分野における共通の一般的な知識の一部を形成するという承認もしくは許可としてまたは提言の任意の形態として受け取られず、かつ受け取られるべきではない。
【実施例
【0100】
下記の例は、本発明を例証するように意図するものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。下記の反応は、ミリグラム、グラムまたはキログラムスケールで実施されてもよい。
【0101】
分析の方法
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
HPLC分析は、純度99.8%を指し示す、ダイオードアレイ検出付きVarian1100シリーズHPLCで行った。分析は、SiliaChrom(登録商標)dtC18、5μm、100Å、4.6×250mmのカラムを用いて205および235nmで行い、溶離は、水中40%アセトニトリルから90%アセトニトリルの勾配系を使用し、1ml/分で26分間にわたって行った。試料は、英国薬局方に従い、ベタメタゾンを内部標準として使用して、0.2%(w/v)で調製した。
【0102】
フーリエ変換赤外線分光法(FT-IR)
赤外線分光法は、ATRモジュールを備えた分光計で、4cm-1の分解能を使用して行った。スペクトルは、4000から600cm-1の間で記録した。
【0103】
H-および13C-核磁気共鳴分光法(H-NMR、13C-NMR)
H-および13C-核磁気共鳴測定は、Varian VNMRS機器で、それぞれ500MHzおよび125MHzならびに室温にて、内部標準なしでCDClを溶媒として使用して記録した。
【0104】
合成方法
実施例1から5に対応する代表的な合成を、以下のスキーム7に示す:
【0105】
【化16】
【0106】
<実施例1>
11α-ヒドロキシプロゲステロン(10)の11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-Hプレグナン(11)への水素化
11α-ヒドロキシプロゲステロン(10)(250.0g、756.5mmole)を、塩化メチレン(3.92L)およびトリエチルアミン(83ml、595.1mmole)に溶解した。触媒、5%Pd/CaCO(22.50g、1.125gPd、0.5wt%)を添加し、10Lの反応器を、窒素/真空で4回、次いで、水素/真空で4回、交互にパージした。水素化を、100psiの水素および30℃で行った。非常に速い取り込みが24分間かけて起こり、続いて、より遅い取り込みが2時間かけて起こった。総取り込みは1.00当量の水素であると算出された。20℃に冷却し、窒素/真空でパージし、反応内容物を(塩化メチレンで洗浄しながら)容器内に出した後、3時間で内容物の後処理を行った。スラリーを濾過して、別の1Lの塩化メチレン洗浄液により触媒を除去した。全塩化メチレン濾液(5.3L)を、500mlの1.5M HClで、次いで、500mlの10%重炭酸カリウムで抽出した。2つの別個の水性層を1Lの塩化メチレンで再抽出した。最後の塩化メチレンを硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過(および洗浄)し、真空濃縮乾固して、白色固体、wt.252.4gを得た。この材料を、MTBE(1.25L)により、50℃で2時間にわたって、次いで、20℃で1時間にわたって、スラリー化した。結晶性スラリーを濾過し、乾燥させて、173.66gの白色固体を得た。11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5H-プレグナンのHPLCアッセイは、0.548%の極性不純物、95.553%の所望の5α-H生成物および3.899%の5β-H生成物(5αH:5βHの96.08:3.92の比に対応する)を示した。
【0107】
生成物をMTBE(700ml)に再懸濁し、50℃で2時間および25℃で1時間にわたって撹拌した。濾過、洗浄および乾燥により、170.3gの精製された生成物を得たが、HPLCは、5αH:5βH比において非常に小さい変化しか示さなかった(96.64:3.37)。
【0108】
固体(167.76g)をアセトニトリル(2.1L)に70℃で溶解した。無色透明の溶液をゆっくりと冷却した。65℃で、小スケール結晶化からの生成物の種晶を添加し、それらは溶解しなかった。混合物を、45分ごとに10℃の速度で5℃の最終温度に冷却した。スラリーをおよそ1~2時間にわたって撹拌し、濾過し、冷アセトニトリルで洗浄し、終夜乾燥させて、11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-H-プレグナン(140.76g、423mmol、56%)を得た。H-および13C-NMRは、所望生成物と一致していた。HPLCは、99.558%の所望の5αH異性体および0.442%の不要な5βH異性体を示した。Pdアッセイ<1ppm。NMRおよびHPLC結果を、Steraloidsから購入した5αおよび5β異性体の基準試料と比較した。
【0109】
CDCl中、25℃における11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-HプレグナンのH NMRおよび13C NMRスペクトルを、図7および8に示す。
【0110】
<実施例2>
11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-H-プレグナン(11)の3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナン(12)への酸化
21℃のDCM(1L)中の11α-ヒドロキシ-3,20-ジケト-5α-H-プレグナン(100g、301mmol)硫酸水素テトラブチルアンモニウム(10g、30mmol)に、NaOCl.5HO(87.9g、535mmol)を、小分けにして4.5時間かけて、温度を20から24℃の間に保ちながら添加した。反応物を12℃に冷却し、次いで、冷0.24M Na(460ml)の添加によってクエンチした。層を分離し、水性層をDCM(300ml)で再抽出した。合わせた有機層をMgSO(30g)およびシリカ(50g)で乾燥させ、濾過し、DCM(200ml)で洗浄した。濾液を部分的に濃縮して、410gの溶液とした。これを1kgのシリカカラムに装填し、DCM中2~20%EtOAcで溶離して、1Lの画分を収集した。より高純度の生成物画分を濃縮して固体(51g湿重量)とした。これを、MeCN(250ml)中、55℃で25分間にわたって粉砕し、次いで、28mlの溶媒を真空下で蒸留して、残留DCMを除去した。スラリーを0℃に冷却し、濾過し、冷MeCN(55ml)で洗浄して、白色固体(45.77g、H-NMRにより純度約96%)を生じさせた。
【0111】
他の画分を濃縮し、合わせ、必要に応じて、粉砕するかまたはクロマトグラフにかけて、白色固体を提供した。結果として生じた固体のH-NMRは、高純度の所望生成物と一致していた(Steraloidsから購入した基準試料と比較して)。全収率=50.2g、152mmol、51%収率。
【0112】
CDCl中、25℃における3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナンのH NMRスペクトルを、図9に示す。
【0113】
<実施例3>
3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナン(12)のアルファキサロン、3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン(13)への還元
3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナンおよび炭酸水素カリウムをエタノールに溶解し、脱酸素化し、次いで、RuCl[(S,S)-Tsdpen](p-シメン)を添加した。混合物を20時間にわたって56℃に加温した。混合物を濾過し、蒸発させて、粗製の3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオンを生じさせた。反応は、高い位置選択性(11および20ケトンの還元は検出されなかった)および3αOH:3βOHに対する約80:20の立体選択性で進んだ。この驚くべき結果は、保護基の必要性を取り除き、アルファキサロン(3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン)の全合成を簡略化した。
【0114】
<実施例4>
アルファキサロン、3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン(13)への3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナン(12)還元の最適化
3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナンのルテニウム触媒還元の最適化を行った(表1を参照)。いくつかのルテニウム触媒が、3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナンの位置選択的還元および/または立体選択的還元を提供した。RuCl(p-シメン)[(S,S)-Tsdpen]が、最良の位置および立体選択性を提供した。メタノール中のKHCOまたはIPA中のKCOを使用すると、いずれも選択性がわずかに改善された。IPA中のKCOは、他の副産物の形成に関し、わずかによりクリーンな反応を提供した。
【0115】
【表1】
【0116】
有利なことに、3βOH異性体は、大きいシリル化剤TBSClとの異なる反応性を呈することが分かった。そのため、3αOHおよび3βOHを、3βOHのTBSClとの選択的反応によって分離して、アキシャルおよびエクアトリアルアルコールの反応性における差異を活用した。これらの条件により、3αOHは大部分が未保護のまま残った。次いで、保護された3β-OTBSをクロマトグラフィーにより除去した。
【0117】
<実施例5>
アルファキサロン、3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン(13)への3,11,20-トリケト-5α-H-プレグナン(12)還元のルテニウム還元
IPA(750ml)中の3,11,20-トリケト-プレグナン(151mmol)および炭酸カリウム(12.5g、90.6mmol)を、3×真空/窒素サイクルにより、19℃で脱酸素化した。RuCl[(S,S)-Tsdpen](p-シメン)(2.19g、3.44mmol)を添加し、追加の真空/窒素サイクルを実施した。混合物を16時間にわたって26から27℃に加温した(HPLCによってモニターした)。混合物を、マグネゾール(50g)、シリカ(50g)および炭素(1.7g)で、23℃に冷却しながら1時間にわたって処理し、次いで、IPAですすぎながら、セライトのパッドに通して濾過した。濾液を蒸発させ、残留物をヘプタンと共沸させて、粗製の3α/3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン(51.1g)を生じさせた。
【0118】
-7℃のDMF(400ml)中の粗製の3α/3β-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン(51.1g)およびイミダゾール(4.0g、59mmol)に、TBSCl(5.50g、36.5mmol)を添加した。混合物を2時間かけて-1℃に、次いで、35分間かけて+2℃に、次第に加温した(HPLC-1.51%3β-OH)。混合物を-6℃に再冷却し、追加のTBSCl(1.45g、9.6mmol)を添加した。混合物を1.5時間かけて+4℃に次第に加温させ(HPLC-0.47%3β-OH)、次いで、冷水(1.2L)の添加によってクエンチした。得られたスラリーを濾過し、水で洗浄した。湿った固体をDCM(200ml)に溶解し、小残留水層を分離し、DCM(50ml)で再抽出した。合わせた有機物をMgSOおよびマグネゾール(各6g)で乾燥させ、濾過し、固体をDCM(50ml)で洗浄した。濾液を、SiliaMetSチオール樹脂(15g、1.31mmol/g装填)とともに、22℃で3.5時間にわたって撹拌し、次いで、濾過し、DCM(50ml)で洗浄した。濾液を蒸発させて、53gの淡黄褐色固体を生じさせた。クロマトグラフィー(2.5kgのシリカ、5から30%EtOAc)により、31.95gの生成物を白色固体として生じさせた。
【0119】
固体をIPA(165ml)に65℃で溶解し、次いで、温度を59℃超に保ちながら、水(330ml)を80分間かけて添加した。得られたスラリーを2時間かけて15℃に冷却し、濾過し、3:1 水:IPA(40ml)、次いで、水(90ml)で洗浄した。固体を真空下、60℃で乾燥させて、アルファキサロン(30.7g、92.3mmol、61%)を白色固体として生じさせた。分析情報を、Steraloids(Newport、RI、USA02840)から購入した3αおよび3β異性体の基準試料と比較した。
【0120】
アルファキサロン(3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン)のH NMRおよび13C NMRスペクトルを、図1および2に示し、アルファキサロンのIRスペクトルを、図3に示し、HPLC分析を、図4に示し、UV-visスペクトルを、図5に示し、質量スペクトルを、図6に示す。
【0121】
このプロセスは、米国特許第3,714,352号および/またはBrowne,P.A.、Kirk,D.N.:J.Chem Soc(JCSA9)1969、1653頁において等の先行技術において取得されたものよりも高収率のアルファキサロンをもたらした。
【0122】
<実施例6>
アルファキサロンからのアルファドロンアセテート(14)およびアルファドロン(15)の合成
アルファキサロン(3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン)を、先に記述された、スキーム3において詳述されている通りの方法によって、アルファドロンアセテートおよびアルファドロンに合成してもよいと一般的に認識されている。
【0123】
【化17】
【0124】
アルファキサロンへの四酢酸鉛および三フッ化ホウ素エーテラートの添加により、アルファドロンアセテートを提供する。別法として、エタノール中の臭素の添加により、21-ブロモアルファキサロンを生じさせ、これを、アセトン中の酢酸カリウムの添加によってアルファドロンアセテートにさらに合成してもよい。好適な合成方法の例は、DE2030402、ZA703861およびBrowne,P.A.、Kirk,D.N.:J.Chem Soc(JCSA9)1969、1653頁において記述されており、これらの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0125】
アルファドロンは、MeOH中のKCOの添加等の標準的な条件下、アルファドロンアセテートの加水分解(または脱アセチル化)によって入手し得る。好適な条件の他の例については、参照により本明細書に組み込まれる、T.W.Green、P.G.M.Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、Wiley-Interscience、New York、1999、150~160、712~715を参照されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9