(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】複数の糸のための多数の製造位置に対して操作を行うための方法および装置
(51)【国際特許分類】
D01D 5/08 20060101AFI20240227BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240227BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240227BHJP
【FI】
D01D5/08 B
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2021542257
(86)(22)【出願日】2019-09-03
(86)【国際出願番号】 EP2019073426
(87)【国際公開番号】W WO2020069807
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】102018007775.7
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン ロッホ アレクサンド フック
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10250442(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0117233(US,A1)
【文献】特開平03-102079(JP,A)
【文献】特開平03-120159(JP,A)
【文献】米国特許第05224047(US,A)
【文献】特表2018-520270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D1/00-13/02
G05B19/418
G06Q50/00-99/00
G16Z99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融紡糸装置および/または繊維機械装置の複数の糸のための多数の製造位置に対して
作業を行う方法であって、該方法では、少なくとも1つの中央制御ユニットにより、以下のステップで操作オペレータに
作業情報が伝達される、すなわち、
1.1 製造位置の複数のグループのうちのそれぞれ1つのグループに割り当てられている、複数のトランシーバステーションのうちの1つのトランシーバステーションを特定するステップ、
1.2 製造位置
の関連するグループの前記トランシーバステーションに前記
作業情報を伝達するステップ、
1.3 前記
作業情報を、前記トランシーバステーションにより、割り当てられた複数のメッセージ受信器のうちの少なくとも1つのメッセージ受信器に伝達するステップ、および
1.4 操作オペレータにより前記メッセージ受信器において受信確認を行うステップ、
にしたがって操作オペレータに
作業情報が伝達される、複数の糸のための多数の製造位置に対して
作業を行う方法。
【請求項2】
前記
作業情報を、既に操作オペレータがログインしたメッセージ受信器のみに伝達する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記操作オペレータによる前記受信確認を、前記トランシーバステーションにおいて所定の報告時間内で待ち受ける、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記報告時間の経過後に受信確認が行われない場合に、前記トランシーバステーションが警告信号を発信する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記作業情報を、前記関連するトランシーバステーションにより、隣接するトランシーバステーションに伝達し、前記作業情報を前記隣接するトランシーバステーションから、該隣接するトランシーバステーションの割り当てられた前記メッセージ受信器に伝達する、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
前記操作オペレータが
、前記
作業情報の
項目の実行が正常
に終了した後に、前記メッセージ受信器において、前記関連するトランシーバステーションに対して
作業確認を行う、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記操作オペレータは、前記
作業情報
の項目が実行されなかった場合に、前記メッセージ受信器を介して、前記関連するトランシーバステーションにフィードバック情報を伝達する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記トランシーバステーションが、割り当てられた前記メッセージ受信器と、複数の固定のメッセージ周波数のうちのそれぞれ1つのメッセージ周波数を介して通信する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記作業情報の項目が操作カテゴリに割り当てられており、前記
作業情報
の項目は、複数の
作業カテゴリのうちの1つの
作業カテゴリに関する指示を含んでおり、前記操作オペレータは、前記
作業カテゴリのうちのそれぞれ1つの
作業カテゴリを担当する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記メッセージ受信器は、前記操作オペレータの前記
作業カテゴリに関連する前記
作業情報のみを表示する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
制御装置(1)
を備える、溶融紡糸装置および/または繊維機械装置の複数の糸のための多数の製造位置(10.1~10.5)に対して
作業を行うための装置であって、
前記制御装置(1)が、ネットワーク(2)を介して複数のトランシーバステーション(3.1~3.10)に接続されており、該トランシーバステーション(3.1~3.10)が、それぞれ無線接続(6.1~6.10)を介して複数のモバイルのメッセージ受信器(5.1,5.2)に接続可能であることを特徴とする、溶融紡糸装置および/または繊維機械装置の複数の糸のための多数の製造位置(10.1~10.5)に対して
作業を行うための装置。
【請求項12】
前記制御装置(1)に、前記ネットワーク(2)を介して前記トランシーバステーション(3.1~3.10)と通信する分配ユニット(19)が割り当てられている、請求項11記載
の装置。
【請求項13】
前記トランシーバステーション(3.1~3.10)が、製造位置の複数のグループ(H
1~H
10)のうちの1つのグループにそれぞれ割り当てられている、請求項11または12記載
の装置。
【請求項14】
前記トランシーバステーション(3.1~3.10)のうちの1つのトランシーバステーションに割り当てられている前記メッセージ受信器(5.1,5.2)が、充電ステーション(4.1,4.10)に保持されており、選択的に1人の操作オペレータにより前記充電ステーション(4.1~4.10)から持ち出される、請求項11
から13
までのいずれか1項記載
の装置。
【請求項15】
前記トランシーバステーション(3.1~3.10)と、前記メッセージ受信器(5.1,5.2)との間の前記無線接続(6.1~6.10)が、種々異なるメッセージ周波数を有している、請求項11
から14
までのいずれか1項記載
の装置。
【請求項16】
前記メッセージ受信器(5.1,5.2)が、少なくとも1つの確認ボタン(12)および終了ボタン(13)を有している、請求項11
から15までのいずれか1項記載
の装置。
【請求項17】
前記メッセージ受信器(5.1,5.2)が、操作オペレータのログインのためのログインソフトウェアをそれぞれ有している、請求項11
から16までのいずれか1項記載
の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融紡糸装置および/または繊維機械装置の複数の糸のための多数の製造位置に対して操作を行うための方法と、請求項11の前提部に記載の形式の溶融紡糸止装置および/または繊維機械装置の複数の糸のための多数の製造位置に対して操作を行うための装置とに関する。
【0002】
合成糸の製造および加工は、機械工場全体を占める多数の製造位置において行われる。したがって、たとえば溶融紡糸装置において、大量の合成糸が多数の製造位置によりポリマ溶融物から形成される。製造位置ごとに、糸グループがポリマ溶融物から並行して紡糸され、冷却され、延伸され、個別に巻き取られて糸を形成する。このような製造位置は、機械長手方向側に相並んで設置されている。対峙する製造位置の間には、巻き取られたパッケージを搬出するためのそれぞれ1つのいわゆるドッファ通路が設けられている。したがって、このような製造位置は、複数のドッファ通路を形成するために多数、設置されている。
【0003】
合成糸の加工時には、複数の繊維機械装置が使用される。これらの繊維機械装置は、同様に多数の製造位置を有している。しかし、糸は好適には個別に蓄えボビンから引き出され、たとえばテクスチャリングにより加工され、巻き取られてパッケージを形成する。したがって、1つの操作通路内に400を越える製造位置を有する繊維機械装置が知られており、繊維機械装置は、複数の操作通路に相並んで配置されている。
【0004】
複数の糸のためのこのような製造位置では、手動の操作が実施されなければならず、このためには操作オペレータが必要である。したがって、たとえば製造プロセスにおける障害は完全に排除することができないので、個別の製造位置において望ましくない中断が生じる。この中断は迅速な処置および製造プロセスの再開を必要とする。さらに、製造位置において同様に操作オペレータにより担われなければならないメンテナンス作業が発生する。
【0005】
製造位置のできるだけ効率的かつ迅速な操作を可能にするために、たとえば独国特許出願公開第102017110572号明細書から、複数の糸のための多数の製造位置に対して操作を行うための方法および装置が知られている。この方法では、複数の操作情報が1つの大型スクリーンに表示される。大型スクリーンは、操作通路もしくはドッファ通路に配置されているので、この通路にいる操作オペレータは、必要となる情報を迅速に得ることができ、対応して関連する製造位置に訪れ、操作情報を実行することができる。したがって、たとえば1つの特定の製造位置における糸破断を大型スクリーンにおいて可視化することができる。糸破断は、それぞれの製造位置において糸を新たに掛けることを要求する。しかし、操作オペレータは、操作情報を実行することができるようにするために、場合によっては関連する製造位置へ比較的大きな距離を進まなければならないことが要求される。
【0006】
しかし先行技術では、操作オペレータが直接に、操作情報の受信者として働くシステムも知られている。したがって、たとえば独国特許出願公開第102009022190号明細書からは、複数の糸のための多数の製造位置に対して操作を行うための方法および装置が知られている。この方法では、操作オペレータが、ローカライズおよび位置確認ならびに操作情報の受信のために使用可能である操作ユニットを携帯している。したがって、複数の操作機器を備えた複数の操作オペレータを配備することができ、これにより製造位置における障害およびメンテナンス作業を実行することができる。しかし、この場合、複数の製造位置のうちの1つの製造位置における障害およびメンテナンスを実行するために、同時に複数の操作オペレータが並行して活動するという問題が発生する。
【0007】
したがって、本発明の課題は、溶融紡糸装置および/または繊維機械装置の複数の糸のための多数の製造位置に対して操作を行うための冒頭で述べた形式の方法と、溶融紡糸装置および/または繊維機械装置の複数の糸のための多数の製造位置に対して操作を行うための冒頭で述べた装置とを改良して、できるだけ目的に合ったかつ迅速な操作情報の実行が保証されているようにすることである。
【0008】
本発明の別の目的は、特に多数の製造位置を備えた大型プラントのために使用可能である、複数の糸のための多数の製造位置に対して操作を行うための方法および装置を提供することにある。
【0009】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を備えた方法および請求項11に記載の特徴を備えた装置により解決される。
【0010】
本発明の有利な改良形は、それぞれの従属請求項に記載の特徴および特徴の組み合わせにより定義されている。
【0011】
本発明は、操作情報を実行するためにそれぞれの製造位置に最も近い操作オペレータが操作情報を常に受け取ることにより優れている。したがって、極めて短い距離を実現することができる。さらに、操作情報を各操作オペレータに遅延なしに直接に伝達することが可能にされる。したがって、たとえば、製造位置のうちの1つの製造位置における障害が報告された場合、まず、複数のトランシーバステーションのうち、障害のある製造位置がある製造位置のグループに割り当てられているトランシーバステーションが特定される。次いで、関連するトランシーバステーションに操作情報が伝達される。
【0012】
トランシーバステーションは、操作情報を、操作オペレータの、割り当てられた複数のメッセージ受信器のうちの少なくとも1つのメッセージ受信器に直接に伝送する。操作オペレータによりメッセージ受信器において受信確認を行うことにより、操作情報が操作オペレータに届いたことが確実にされている。これにより、製造位置の障害を取り除くために迅速な処置が実行可能である。
【0013】
このためには、操作情報には、障害を取り除くための直接的な作業指示、制御アクション、またはたとえばメンテナンスのための作業指示が含まれていてよい。
【0014】
このためには、複数の糸のための多数の製造位置に対して操作を行うための装置は、ネットワークを介して制御装置に接続されている複数のトランシーバステーションを有している。トランシーバステーションはそれぞれ、無線接続を介して複数のメッセージ受信器に接続可能である。したがって、多数の製造位置にわたる通信ネットワークが実現されており、この通信ネットワークは、操作情報の迅速かつ目的に合った伝達を可能にする。
【0015】
操作情報を操作人員全体のうちの1人の操作オペレータに配信することを確実にするために、操作オペレータが既にログインしているメッセージ受信器にのみに操作情報を伝達する方法バリエーションが好適に実施されている。これにより、メッセージ受信器が、操作オペレータのうちの1人の操作オペレータに割り当てられている関連するトランシーバステーションと無線接続においてアクティブに接続されている。これにより、操作オペレータによる操作情報の受信が保証されている。
【0016】
トランシーバステーションに割り当てられたメッセージ受信器が操作オペレータによって作動されなかった場合、操作オペレータによる所定の報告時間内での受信確認をトランシーバステーションにおいて待ち受ける方法バリエーションが使用される。これにより、操作オペレータに受信確認を行う反応時間が与えられる。
【0017】
報告時間の経過後に受信確認を受信しなかった場合、報告時間の経過後に受信確認が行われない場合に、トランシーバステーションが警告信号を発信する方法バリエーションが、特に有利である。これにより、たとえば、休憩室にいる操作オペレータに、担当範囲内で複数の製造位置のうちの1つの製造位置が操作を必要としていることを気付かせることができる。
【0018】
しかし、好適には、操作情報を、関連するトランシーバステーションにより隣のトランシーバステーションに伝達し、操作情報を隣のトランシーバステーションから、隣のトランシーバステーションの割り当てられたメッセージ受信器に伝達する方法バリエーションが使用される。これにより、呼びかけられる操作オペレータの範囲を拡大し、これにより操作情報の迅速な実行を可能にすることができる。
【0019】
たとえば糸破断後にすぐに製造プロセスを継続することができるように、さらに、操作オペレータが、実行された操作情報の正常な終了後に、メッセージ受信器において、関連するトランシーバステーションのために操作確認を行うことが規定されている。これにより、制御装置を介して開始された操作が終了し、すぐに実行されたことが報告される。
【0020】
全ての障害、メンテナンスおよびその他の操作作業を、活動している操作オペレータのうちの1人により果たすことができないので、操作オペレータが、操作情報が実行されなかった場合に、メッセージ受信器を介して、関連するトランシーバステーションにフィードバック情報を伝達する方法バリエーションが好適に実施される。したがって、障害の取り除きやメンテナンスするための別の措置を開始することができる。
【0021】
トランシーバステーションが、割り当てられたメッセージ受信器と、それぞれ複数の固定のメッセージ周波数のうちの1つのメッセージ周波数を介して通信する方法バリエーションは、操作情報の伝達時のオーバーラップおよび重複を回避するために特に有利である。これにより、製造位置のグループに関連する操作情報のみを、安全かつ障害なしにそれぞれ伝達することができる。
【0022】
製造位置内での種々異なる操作工程は、部分的に異なる資格を持つ操作オペレータを必要とするので、操作情報が、複数の操作カテゴリのうちの1つの操作カテゴリに関する指示を含んでおり、操作オペレータが、操作カテゴリのうちのそれぞれ1つの操作カテゴリを担当することがさらに規定されている。したがって、操作情報を操作カテゴリに応じてあらかじめ分割し、その操作カテゴリを担当する操作オペレータに目的に合わせて伝達することができる。
【0023】
このためには、メッセージ受信器が、操作オペレータの操作カテゴリに関連する操作情報のみを表示すると、特に有利である。メッセージ受信器における操作オペレータのサインインおよびログインを介して、それぞれの操作カテゴリも同時に把握されるので、メッセージ受信器にはこの操作オペレータに適した操作情報だけが表示される。
【0024】
複数の糸のための多数の製造位置に対して操作を行うための本発明に係る装置は、操作オペレータへ操作情報を伝達するための、簡単かつ妨害を受けにくい通信ネットワークにより優れている。
【0025】
さらに有利な展開として、プロセス監視および求められたパラメータに基づいて、操作のために必要なメッセージを生成するために、有利な改良形によれば、制御装置に分配ユニットが割り当てられている。分配ユニットは、生成されたメッセージを伝達するために、トランシーバステーションと直接通信する。
【0026】
手間のかかるナビゲーション装置を使用せずに、局所化された迅速な情報伝達を可能にするために、トランシーバステーションがそれぞれ、製造位置の複数のグループのうちの1つのグループにそれぞれ割り当てられている本発明による操作装置の改良形が特に有利である。製造位置のグループの選択およびトランシーバステーションの個数の選択により、対応した正確に局所化された操作情報を伝達することができる。
【0027】
操作オペレータによるメッセージ受信器の引取りのために、トランシーバステーションのうちの1つのトランシーバステーションに割り当てられているメッセージ受信器が、充電ステーションに保持されており、選択的に1人の操作オペレータにより充電ステーションから持ち出されることがさらに規定されている。これにより、メッセージ受信器とトランシーバステーションの間の割当てが保証されている。したがって、各操作オペレータが、仕事終わりにメッセージ受信器を関連する充電ステーションに戻すというタスクを有している。さらに、メッセージ受信器の蓄電池は、運転時間外に充電することができる。
【0028】
さらに、操作情報のオーバーラップや誤伝送は排除されている。なぜならば、トランシーバステーションと、メッセージ受信器との間の無線接続が、種々異なるメッセージ周波数を有しているからである。これにより、グループが異なる機器間での通信は不可能である。
【0029】
メッセージ受信器の迅速な操作および取扱いを可能にするために、メッセージ受信器は少なくとも1つの確認ボタンと終了ボタンとを備えており、これにより操作オペレータは、受信確認を行ったり、操作確認を行ったりするために、ただ1つのボタンを押すだけでよい。
【0030】
さらに、メッセージ受信器が、操作オペレータのログインのためのログインソフトウェアをそれぞれ有している本発明に係る操作装置の改良形は、メッセージ受信器のパーソナライズを可能にする。したがって、それぞれの操作オペレータが受け取るべき操作情報のみがメッセージ受信器により表示される。
【0031】
複数の糸の多数の製造位置に対して操作を行うための本発明に係る方法および本発明に係る操作装置は、多数の製造位置において操作マネジメントを実施するために、溶融紡糸装置および繊維機械装置の大規模プラントのために特に適している。
【0032】
複数の糸のための多数の製造位置に対して操作を行うための本発明に係る方法を以下に添付の図面を参照しながら、本発明に係る操作装置の幾つかの実施例につき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明に係る操作装置を備えた溶融紡糸装置の第1の実施例を概略的に示す側面図である。
【
図2】
図1に示した実施例を概略的に示す平面図である。
【
図3】
図1および
図2に示した操作装置のメッセージ受信器を示す概略図である。
【
図4】本発明に係る操作装置を備えた繊維機械装置の別の実施例を概略的に示す平面図である。
【0034】
複数の糸のための多数の製造位置を備えた溶融紡糸装置の第1の実施例が、
図1では側面図で概略的に図示されており、
図2では多数の製造位置に対して操作を行うための本発明に係る操作装置と一緒に平面図で概略的に図示されている。
【0035】
図1には、複数の階層にわたって延びる溶融紡糸装置の側面図が概略的に示されている。この実施例では、合成糸を製造するための必要となる装置のみが示されている。したがって、紡糸ノズル装置7と、冷却装置8とが、上層階に位置している。紡糸ノズル装置7は、ポリマ溶融物を形成するための装置(本実施例では図示せず)に接続されている。
【0036】
下層には、巻取り装置(Takeup-Einrichtung)9が設けられている。これにより、紡糸され、冷却されたばかりの糸を延伸し、巻き取ってパッケージを形成することができる。このような溶融紡糸装置は十分に知られており、たとえば独国特許出願公開第10355294号明細書に記載されている。その限りでは、ここでは溶融紡糸装置に関するさらなる説明はせず、その代わりに引用された上掲の特許文献が参照される。
【0037】
紡糸ノズル装置7、冷却装置8および巻取り装置9は、多数の製造位置を有している。本実施例では、最初の5つの製造位置に参照符号10.1~10.5が付けられている。製造位置10.1~10.5と後続の製造箇所とは、機械長手方向側に沿って延びている。複数の製造箇所は、複数のグループに分けられている。本実施例では、1つのグループは例示的に5つの製造箇所を含んでいる。
【0038】
図2の平面図から判るように、製造位置10.1~10.5と10.1’~10.5’との間で対峙している巻取り装置9は、ドッファ通路15を形成する。このドッファ通路15は、巻取り装置9内で巻成されたパッケージを搬出するために働く。
【0039】
図1および
図2の図面から判るように、製造位置は、複数のグループに分けられている。製造位置のグループに、参照符号H
1~H
10が付けられている。製造位置の複数の製造グループH
1~H
10のそれぞれは、全部で5つの製造位置を含んでいる。各製造位置において、複数の糸が同時に紡糸され、冷却され、延伸され、巻き取られてパッケージを形成する。したがって、32本の糸を並行に相並んで形成する今日の製造位置が知られている。
【0040】
製造グループH1~H10内の多数の製造位置に対して操作を行うために、本発明に係る操作装置は、複数のトランシーバステーション3.1~3.10を有している。複数のトランシーバステーション3.1~3.10のうちのそれぞれのトランシーバステーションは、製造位置の1つのグループH1~H10に割り当てられている。したがって、たとえば上層階の製造位置10.1~10.5が、トランシーバステーション3.1に割り当てられている。5つの製造位置10.1~10.5は、製造グループH1を形成する。
【0041】
その限りでは、各製造グループH1~H10の製造位置に、トランシーバステーション3.1~3.10が割り当てられている。トランシーバステーション3.1~3.10は、定置に保持されており、ネットワーク2を介して分配ユニット19に接続されている。分配ユニット19は、制御装置1に接続されている。制御装置1は、ここでは、溶融紡糸装置全体のプロセス制御ユニットの構成部分であってよい。その限りでは、制御装置1は、プロセス監視およびプロセス製造に関する情報を受信し、かつ送信することができるように、入力部および出力部を有している。
【0042】
図1および
図2の図面から判るように、トランシーバステーション3.1~3.10には、それぞれ複数のメッセージ受信器5.1,5.2が割り当てられている。メッセージ受信器5.1および5.2の個数は、例示的であり、製造位置10.1~10.5において種々異なる操作内容を実行しなければならない操作オペレータの人数に依存する。メッセージ受信器は、モバイル式に構成されており、手持形機器として操作オペレータによって引き受けられて運ばれる。したがって、たとえばトランシーバステーション3.1~3.10に割り当てられた各メッセージ受信器5.1および5.2に対しては、それぞれ1つの充電ステーション4.1~4.10に配設されていてよい。したがって、操作オペレータは、交替制勤務開始時および交替制勤務終了時に、それぞれ1つのメッセージ受信器5.1または5.2を持ち出すか、または戻すことができる。充電ステーション4.1~4.10においてメッセージ受信器5.1および5.2はそれぞれ充電される。
【0043】
メッセージ受信器5.1および5.2は、無線接続を介してトランシーバステーション3.1~3.10に接続されている。トランシーバステーション3.1~3.10とメッセージ受信器5.1,5.2との間の無線接続6.1~6.10は、好適にはそれぞれ互いに異なるメッセージ周波数で行われている。したがって、メッセージ受信器5.1,5.2とトランシーバステーション3.1~3.10との間の規定の割当てが保証されている。
【0044】
メッセージ受信器5.1,5.2を説明するために、付加的に
図3が参照される。
図3には、メッセージ受信器5.1の実施例の概略図が示されている。メッセージ受信器5.1は、手持形(モバイル)機器として構成されており、たとえば、Android技術を用いたオペレーティングシステムに基づいていてよい。メッセージ受信器は、操作情報を受信するための受信器として、かつ情報を送信するための送信器として設計されている。このためには、メッセージ受信器5.1は、ディスプレイ11を有している。ディスプレイ11の下には、確認ボタン12、終了ボタン(Quittierungstaste)13、メニューボタン14が設けられている。
【0045】
確認ボタン12によって、操作オペレータによる操作情報の受取りが、トランシーバステーションに対して確認される。終了ボタン13は、操作情報により要求された操作内容が操作オペレータによって正常に実行された場合に、迅速な操作確認を可能にする。メニューボタン14は、たとえば、操作情報が実行されなかった場合に、関連するトランシーバステーションにフィードバック情報を伝達するために、別の送信機能を可能にする。さらに、メッセージ受信器5.1は、ログインソフトウェアを有しており、このログインソフトウェアを用いて操作オペレータがこの機器にログインしなければならない。
【0046】
運転中は、メッセージ受信器5.1および5.2を、その都度、溶融紡糸装置内で操作内容を実行するために配置されている操作オペレータが携帯している。製造グループH5の製造位置10.5において糸破断が存在するというエラーメッセージが制御装置1に届いた場合、分配ユニット19によって、まず操作情報が作成され、関連するトランシーバステーションが特定される。この場合、トランシーバステーション3.5が、エラー原因に関連する操作情報の伝達を実行する。
【0047】
操作情報を作成するために、分配ユニット19は、複数のソフトウェアモジュールを有していてよい。これらのソフトウェアモジュールが、プロセス監視のパラメータに基づいて必要となる操作措置を決定する。
【0048】
分配ユニット19は、操作情報を、ネットワーク2を介して、トランシーバステーション3.5に直接送信する。無線接続6.5を介して、操作情報は、トランシーバステーション3.5によってメッセージ受信器5.1および5.2のうちの一方または両方に伝達される。操作オペレータにより携帯されている当該メッセージ受信器5.1および5.2のみが、操作情報を受信する。
【0049】
操作情報を把握し受け取った操作オペレータは、メッセージ受信器に設けられた確認ボタン12を操作し、これによりトランシーバステーション3.5が、操作情報の正常な配信を確認する。したがって、別のアクションは開始されず、操作オペレータは直ちに製造位置10.5へと急ぎ、これにより糸破断のエラーを解消し、製造プロセスを再開することができる。
【0050】
操作オペレータが操作情報を実行し、製造プロセスが継続できるようになるや否や、メッセージ受信器において終了ボタン13が操作され、これによりトランシーバステーション3.5を介して分配ユニット19へ、さらに制御装置1へと情報が供給可能である。いまや、障害は取り除かれている。
【0051】
メッセージ受信器5.1および5.2のいずれも操作オペレータによって作動されていない場合のために、トランシーバステーション3.5は、たとえば1分間の報告時間の経過後に、警告信号を発信する。警告信号は、たとえば、隣の操作オペレータまたは休憩中の操作オペレータに呼びかけるために、音響信号または視覚信号であってよい。
【0052】
しかし、操作情報は、隣のトランシーバステーション(この場合はトランシーバステーション3.6)に直接に並行して伝達されるので、トランシーバステーション3.6は操作情報を、割り当てられたメッセージ受信器5.1,5.2に伝達することができる。この場合、製造位置10.5における障害をできるだけ早く解消するために、隣の操作オペレータが関与させられる。
【0053】
多様な操作内容に関連して、この種の溶融紡糸装置では種々異なる資格を有する操作オペレータが配置される。したがって、たとえば、紡糸ノズル装置7においてフィラメントの押出しのために使用される紡糸ノズルの下面が、周期的にクリーニングされることが一般的である。このような掻取りは、メンテナンスオペレータによって実行される。
【0054】
糸を案内するために必要となる操作は、通常、操作オペレータによって実行される。操作情報の伝達時にできるだけ担当する操作オペレータに呼びかけることができるように、操作情報に、分配ユニット19によって、たとえばプレフィックスの形式の付加的な指示を提供することが可能である。この指示は、特別に訓練された操作オペレータによって実施される、複数の操作カテゴリ、たとえばメンテナンス作業、修理、プロセス管理のうちの1つに関する。したがって、たとえば、操作カテゴリA、BおよびCが事前に選択されていてよく、これらの操作カテゴリは、対応するアルファベットの指示A、B、Cによって操作情報に付け加えられる。
【0055】
いま、操作情報が操作カテゴリAに割り当てられている場合、この操作情報は、メッセージ受信器が操作カテゴリAを担当する操作オペレータにより携帯されている場合にのみ、そのメッセージ受信器において表示される。関連するメッセージ受信器が操作カテゴリCを担当するためのものである場合、トランシーバステーションから伝達された操作情報は、このメッセージ受信器のディスプレイ11には表示されないだろう。これにより、特定の操作内容、ひいては特定の操作カテゴリに割り当てられている操作情報が、目的に合わせて担当である操作オペレータに伝達されることが保証されている。
【0056】
したがって、
図1および
図2に示されている本発明に係る操作装置の実施例は、特に、複雑な溶融紡糸装置を迅速かつ目的に合った方法で運転するために適している。ここでは、糸が巻き取られてパッケージを形成するか、スライバとして堆積されるか、または切断されてステープルファイバを形成するかにかかわらず、全てのタイプの溶融紡糸装置が含まれる。
【0057】
溶融物形成のための装置も、有利には含まれ、これにより、たとえば重縮合における障害も迅速に解消可能である。
【0058】
基本的に、複数の糸のための多数の製造位置に対して操作を行うための本発明に係る操作装置および本発明に係る方法は、多数の製造位置により複数の操作オペレータを必要とする複雑な繊維機械装置にも適している。
【0059】
このためには、
図4において、繊維機械装置の実施例が平面図で概略的に示されている。繊維機械装置は、クリール装置16、プロセス装置17、およびワインダ装置18により構成されている。本明細書では、クリール装置16、プロセス装置17およびワインダ装置18は、ワインダ装置18の機械長手方向側に配置されているドッファ通路15に沿って延びている。したがって、図示されている繊維機械装置は、製造位置10.1ごとに1本の糸が、クリール装置16の1つの蓄えボビンから繰り出され、プロセス装置17において延伸され、テクスチャリング加工され、ワインダ装置18において巻成されてパッケージを形成する、いわゆる仮撚りテクスチャリング機械であってよい。この種の繊維機械装置は十分に知られており、たとえば、独国特許出願公開第102013109530号明細書に記載されている。その限りでは、ここでは繊維機械装置に関するさらなる説明はせず、その代わりに引用された上掲の特許文献が参照される。
【0060】
図4に示す実施例では、最初の12個の製造位置10.1~10.12は、それぞれ製造位置の1つのグループを形成する。製造位置のグループに、参照符号H
1~H
4が付けられている。複数の製造グループH
1~H
4のうちのそれぞれの製造グループに対して、本発明に係る操作装置は、1つのトランシーバステーション3.1~3.4を有している。トランシーバステーション3.1~3.4は、ネットワーク2を介して、制御装置1に接続されている分配ユニット19に接続されている。制御装置1は、製造位置における糸の監視および製造に関連する情報を得るために、たとえばプロセス制御装置に接続されていてよい。
【0061】
トランシーバステーション3.1~3.4のうちのそれぞれのトランシーバステーションに、複数のメッセージ受信器が割り当てられている。この実施例でも、トランシーバステーション3.1~3.4ごとに単に2つのメッセージ受信器5.1,5.2のみが図示されている。メッセージ受信器5.1および5.2は、操作オペレータにより持ち出されるように、充電ステーション4.1~4.4に準備されている。メッセージ受信器5.1,5.2の機能および構造は、
図3に示した前述の実施例と同一である。複数のトランシーバステーションのうちの1つのトランシーバステーションに割り当てられているメッセージ受信器の個数は、操作オペレータに関係する。したがって基本的に、トランシーバステーションごとに2つよりも多くのメッセージ受信器が設けられていてもよい。
【0062】
その限りでは、製造グループH1~H4の製造位置に対して操作を行うための機能は、前述の実施例と同一である。
【0063】
したがって、多数の製造位置に対して操作を行うための本発明に係る操作装置および本発明に係る方法は、有利には、多数の製造位置を備えた複雑な繊維機械装置をできるだけ迅速かつ効率的に操作することができるようにするために適している。ここでも、種々異なる操作カテゴリが、操作マネジメントを改善することができる。