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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】液体で剥離されたナノ材料
(51)【国際特許分類】
   B02C 19/06 20060101AFI20240227BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240227BHJP
   C01B 32/19 20170101ALI20240227BHJP
   B01J 3/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B02C19/06
B82Y40/00
C01B32/19
B01J3/00 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021545319
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2019077579
(87)【国際公開番号】W WO2020074698
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】18200075.2
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521155966
【氏名又は名称】アドバンスト マテリアル ディベロップメント リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダルトン,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ラージ,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】オギルビー,シーン
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-511222(JP,A)
【文献】特許第5725635(JP,B1)
【文献】特開2015-188853(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0222482(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0276056(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 19/06
B01J 3/00
B82Y 40/00
C01B 32/19
B01J 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D層状材料からナノプレートレットを調製する方法であって、
前記3D層状材料の分散体を提供すること、
前記分散体を加圧すること、
前記分散体をノズルから50mm以上の長さおよび1200μm以下の直径円筒形のチャンバに通すことで前記分散体を急速に圧抜きして、第一の流路に沿った前記分散体の第一の噴流を第一の方向で形成させること、及び
前記噴流をチャンバ内の表面に衝突させて、前記噴流の方向を変化させ、そして第二の流路内の噴流を、前記第一の流路に対して実質的に逆向きの第二の方向で形成させ、ここで前記第二の流路が、前記第一の流路に対して実質的に逆向きで非同軸上であること、を含み、
それにより、前記第一の流路内の材料と前記第二の流路内の材料の間の剪断力が、前記3D層状材料をナノプレートレットに剥離する、方法。
【請求項2】
3D層状材料を剥離してナノプレートレットを形成させるための方法であって、
前記分散体の噴流を形成させること、
前記噴流をチャンバ内のバッフル又は末端壁に対して衝突させ、それにより前記3D層状材料をナノプレートレットに剥離する剪断力が、前記分散体内で作り出されること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バッフル又は末端壁が前記第一の噴流の向きと直交している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記噴流を衝突させることが、チャンバ内の末端壁に対して衝突させることである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記チャンバが、剥離された分散体がチャンバを出ることが可能な出口を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記出口が、ノズルが位置するチャンバの末端に、又はその付近に配置される、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記出口と前記ノズルを接続する導管が設けられることで、分散体を再循環させてナノプレートレットの収率を上昇させる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記3D層状材料が、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、ボロフェン、ゲルマネン、シリセン、スタネン、ホスホレン、ビスマセン、六方晶窒化ホウ素(h-BN)、マキシン、灰チタン石及び遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)から選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記分散体中の前記3D層状材料の濃度が、少なくとも15g/Lである、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記分散体が、溶媒としての水、及び界面活性剤を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記界面活性剤が、TritonX-100及びコール酸ナトリウムから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ノズルが50μm以上250μm以下の開口部を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ノズルの長さが2cm未満である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記チャンバが800μm以下の直径を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記円筒形のチャンバが、90mmを超える長さを有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記分散体を圧抜きすることが、100MPa以上圧抜きすることを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記分散体を急速に圧抜きすることが、0.05ミリ秒未満の時間で100MPa以上圧抜きすることを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体で剥離されたナノ材料、そのようなナノ材料を形成させる方法、及びそのような方法における使用のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2次元(2D)材料は、数層又は1層だけ(単層)の原子又は分子からなる結晶材料である。広範囲の2D材料が、公知であり、それにはグラフェン、六方晶窒化ホウ素(h-BN)、及び遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)が挙げられる。TMDは、式MXを有し、式中Mは、遷移金属であり、Xは、カルコゲン原子(S、Se又はTe)である。そのようなTMDの例としては、二硫化モリブデン(MoS)、二セレン化ニオブ(NbSe)及び二硫化タングステン(WS)が挙げられる。
【0003】
2D材料は、対応する3Dバルク材料の特性と異なる、多くの興味深く潜在的に有用な特性を有することが知られている。例えばグラフェンは、高伝導性であり、電極構造及び伝導性コンポジットにおいて用途を有する。同様に、六方晶窒化ホウ素は、電気絶縁性であるが、大きな熱伝導性を有し、それゆえ熱管理において用途を有する。2Dの二硫化モリブデンは、触媒中で使用され得る半導体であり、微粒子の誘電性環境への感受性がある分光性を有するため、感知の用途において特に有用である。
【0004】
多くの材料の興味深い機能的特性は多くの場合、その材料が単層又は数層(即ち、2D)形態にある場合にだけ観察される。しかし、3次元(3D)バルク材料を剥離して対応する2D材料を形成させるためには、強い層間分散力が、克服されなければならない。
【0005】
特許文献1は、ボールミルを用いたグラフェンの調製のための流動床を記載している。
【0006】
特許文献2は、グラファイト材料の分散体を、800バール(80MPa)を超える圧力及び30℃以下の温度に供することにより、グラファイトを剥離する方法を記載している。
【0007】
特許文献3は、最初に層状材料に気体をインターカレートすること、及びその後、層状材料を剥離するために気体が挿入された層状材料を圧抜きすること、を含む、層状材料の剥離を記載している。
【0008】
特許文献4及び特許文献5は両者とも、水-界面活性剤溶液中の層状材料の分散体に超音波をあてて2D層又はフレークを形成させることにより、3D層状材料を剥離する方法を記載している。音波処理を基にした工程は、およそ100ml/時のみの典型的な加工速度で1%前後の収率を有する。このバッチ工程は、高いエネルギーコストを有し、より多量の2D材料を生成するように規模拡大することが即座にできない。
【0009】
特許文献6は、層状材料の分散体を少なくとも10kpsi(約69MPa)の圧力でマイクロ流体チャネルに通すことにより、層状材料に由来するナノプレートを生成させるための方法を記載している。しかし、マイクロ流体系の使用は、抗体のスループット(throughput)を限定し(典型的には10L/時間未満まで)、それゆえこの工程を規模拡大する可能性もまた、限定される。
【0010】
特許文献7は、層状材料を剥離するのに必要とされる高い剪断力を発生させるための湿式ジェットミリング技術の利用を記載している。この工程は、より大容量の層状材料の分
散体(例えば、10L/時を超える)で操作することが可能であるが、この方法での収率は、典型的には低い(0.01%~0.1%程度)。
【0011】
それゆえ、3D層状材料を剥離する、代わりとなる、好ましくは高能力の、好ましくは連続的方法が、依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】中国実用新案登録番号第206970222号
【文献】米国特許出願公開第2018/0186643 A1号明細書
【文献】米国特許第7,785,492 B1号明細書
【文献】国際公開第2012/028724号
【文献】国際公開第2014/140324号
【文献】国際公開第2017/060497号
【文献】国際公開第2017/089987号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本出願の発明者らは、液体噴流ホモジナイズ(liquid jet homogenisation)がグラフェンなどのナノプレートレット(例えば、2D材料)の分散体を調製するのに用いられ得ることを見出した。液体噴流ホモジナイズの工程は、高い剪断力を発して、数層及び単層ナノプレートレットへの層状材料の剥離を駆動するように設計されている。そのような方法を利用すれば、ナノプレートレットの分散体が、高スループット、例えば24L/時の速度で調製され得る。
【0014】
本発明の発明者らは、3D層状材料を含む分散体を加圧すること、及びその後、分散体を急速に圧抜きすること、により、3D層状材料を剥離して2Dナノプレートレットを形成するために、充分な剪断力が発生され得ることを見出した。
【0015】
剥離されたグラフェンはその後、エレクトロニクス用途での使用のために高導電性フィルム(例えば、およそ50,000S/mの伝導度を有するフィルム。下記の実施例に示される通り)に形成され得る。そのような用途の一例は、RFIDシステムのためのアンテナの調製においてである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって本発明は、3D層状材料からナノプレートレットを調製する方法であって、
3D層状材料の分散体を提供すること、
分散体を加圧すること、
分散体を急速に圧抜きして、3D層状材料をナノプレートレットに剥離する剪断力を作り出すこと、
を含む、方法を提供する。
【0017】
本発明者らはまた、分散体の流れを互いに実質的に反対方向に通させることにより、剪断力が作り出され得ることを見出した。また、そのような剪断力は、分散体中の3D層状材料を剥離して、2Dナノプレートレットを形成させることができる。
【0018】
したがって本発明はまた、3D層状材料を剥離してナノプレートレットを形成させるための方法であって、
3D層状材料の分散体を提供すること、
第一の流路に沿った分散体の第一の流れを第一の方向で形成させること、
第一の流れを逆向きにすることにより、又は第一の流路に対して実質的に逆向きで非同軸上の第二の流路に第二の流れを形成させることにより、第二の流路に沿った分散体の第二の流れを第二の方向で形成させること、
を含み、
第一の流路内の材料と、第二の流路内の材料の間の剪断力が、3D層状材料をナノプレートレットに剥離する、
方法を提供する。
【0019】
2種の上述の剪断力供給源が、単一方法の中で組み合わせられて、3D層状材料の剥離を増加させ、そして好ましくは最大にすることができる。
【0020】
したがって本発明はさらに、3D層状材料からナノプレートレットを調製する方法であって、
3D層状材料の分散体を提供すること、
分散体を加圧すること、
分散体を急速に圧抜きして、3D層状材料をナノプレートレットに剥離する剪断力を作り出すこと、
第一の流路に沿った分散体の第一の流れを第一の方向で形成させること、
第一の流れを逆向きにすることにより、又は第一の流路に対して実質的に逆向きで非同軸上の第二の流路に第二の流れを形成させることにより、第二の流路に沿った分散体の第二の流れを第二の方向で形成させること、
を含み、
第一の流路内の材料と、第二の流路内の材料の間の剪断力が、3D層状材料をナノプレートレットに剥離する、
方法を提供する。
【0021】
剥離を誘起する圧抜きにより剪断力を発生させる際、圧力降下の速度が、重大であり、圧力変化が充分に大きく、剥離が実現されるそのような短距離及び/又は短期間で起こることを示すために急速と称される。
【0022】
急速(圧抜きの速度に関係する)という用語は、分散体の圧力が2cm以下(好ましくは1cm以下)の距離にわたり低減される、例えば少なくとも100MPa(好ましくは少なくとも120MPa)低減されることを意味してもよい。或いは圧抜きの速度は、経時的な圧力変化により定義されてもよい。この場合、急速は、1.0秒以下、例えば0.05秒以下、好ましくは0.005秒以下、0.5ミリ秒以下、又は0.05ミリ秒以下(より好ましくは0.02ミリ秒以下)の時間にわたる100MPaを超える(好ましくは120MPaを超える)圧力の低減をいう。
【0023】
分散体の急速な圧抜きは、分散体を開口部からチャンバ内へ通すことにより誘起されてもよい。「ベルヌーイ効果」にしたがって、流動速度が上昇された領域では、流体の圧力が低減される。分散体を開口部に(実質的に一定の圧力下で)通すことにより、流動速度が上昇される。それゆえ分散体を開口部に通すことはまた、分散体の圧力を低下させる。
【0024】
開口部は、チャンバの壁の穴であってもよく、簡便にはチャンバにつながるノズルである。チャンバは、加圧された分散体の圧力より低い圧力で(例えば、分散体の圧力より少なくとも100MPa低い圧力で)ある。チャンバは、典型的には大気圧、又は大気圧(101kPa)の20MPa以内、好ましくは10MPa以内を意味する約大気圧である。
【0025】
開口部の寸法は、開口部の断面径及び長さ(即ち、開口部が流体の流れを制限すること
が可能な穴に対する垂直距離)により定義されてもよい。開口部が、壁内の穴である場合、開口部の長さは、壁の厚さである。開口部が、ノズルである場合、開口部の長さは、典型的にはノズルの長さ、又は断面径が最小となるノズルの長さである。
【0026】
より短い開口部の長さほど、より大きな圧抜き効果を生じる。それゆえ開口部の長さ(即ち、ノズルの長さ)は、典型的には2cm未満、例えば1.5cm未満、好ましくは1cm以下である。下記の例において、ノズルは、約1cmである。
【0027】
3D材料粒子の液体分散体が、圧力350MPaまで、又は400MPaまでなど、高度に加圧されてもよい。しかし剥離はまた、100MPaもの低い出発圧力を利用して起こってもよい。典型的には液体分散体は、少なくとも120MPa、例えば少なくとも150MPa、好ましくは少なくとも200MPaの圧力まで加圧される。液体分散体は、公知のデバイス、例えばインテンシファイア式ポンプなどの適切なポンプの使用により加圧されてもよい。
【0028】
上記に議論された通り、圧抜きを介して分散体に加えられた剪断力に加え、分散体の第一の流路と第二の流路を反対方向に形成させることによっても、剪断力が作り出され得る。
【0029】
より詳細に下記の例で例証された本発明の態様において、第一の流路内の材料と第二の(逆向きの)流路内の材料との接触の結果、発生した剪断力が、分散体中で3D層状材料の剥離をもたらし、分散体中の材料は、3D層状材料と、存在し得るいずれかの溶媒又は界面活性剤の両方を含む(下記参照)。
【0030】
各流路が逆向きで、互いに接触しながら正面衝突しないように整列されることが、好ましい。別の流路が、例えば互いに実質的に反対に、そして部分的に重複しながら同軸に整列されないように発生され得る。第一の流路と第二の流路は、流れの長さの一部の下を、そして/又は一部に沿ってかすめることにより、互いに衝突してもよい。流路は、互いに接触しながらも互いに正反対にならないように方向づけられてもよい。下記の例で例証される通り、一方の流路が逆向きにされることで、第一の流路と接触しながらそれを直接妨害しない反対の流路を逆流が形成させてもよい。
【0031】
流路の一方又は両方に沿った分散体の流れが、加圧された噴流の形態であってもよい。本明細書で用いられる用語「噴流」は、穴又はノズルから吐き出された流体の狭い流れ(一般には1cm未満の径であるが、本発明の状況では典型的には1cmよりかなり小さい)をいう。高圧分散体を開口部(ノズルなど)に通すステップは、同時に、分散体を圧抜きして、典型的には高速噴流として、流れを形成してもよい。
【0032】
本発明の一例において、第一の流路に沿った分散体の流れと、第二の流路に沿った分散体の流れは両者とも、2つの異なるノズルから形成された噴流である。第一のノズルは、第一の流れを第一の流路に沿って方向づけるように配列されてもよく、一方で第二のノズルは、第二の流れを第二の流路に沿って方向づけるように配列され、第二の流路は、第一の流路に対して実質的に逆向きであるが非同軸上である。この例において、第一の流路内の材料と第二の流路内の材料が、互いを通る時、第一の流路内の材料は、第二の流路内の材料と接触する。
【0033】
或いは、噴流に対して実質的に逆の方向に噴流の流れを逆向きにするために、2つの反対の流れが、表面(例えば、壁又はバッフル)に衝突する単一のノズルからの噴流から形成され得る。この衝突は、第一の流路に沿った分散体の噴流に対して実質的に逆向きである、第二の流路に沿った分散体の流れを形成する。また、流れの接触が、剪断をもたらし
て、剥離を誘起する。
【0034】
噴流が反射される表面は、チャンバのバッフル又は末端壁であってもよい。典型的にはバッフル又は壁は、噴流の方向に対して直交性である。
【0035】
分散体の噴流を反射することにより、チャンバ内の流体の流れの方向が、逆向きにされる。この結果、末端壁に向かって、そして/又は末端壁から離れるように移動する流体の相対的剪断速度が上昇する。これらの剪断力が、分散体に作用して、3D層状材料の剥離をもたらし、数層及び/又は単層ナノプレートレットを形成させる。
【0036】
本発明の例において、加圧された分散体は、チャンバ内で分散体の加圧された噴流を形成させるように配列されたノズルを通され、チャンバのバッフル又は末端壁に向かって方向づけられる。
【0037】
本発明はまた、3D層状材料を剥離して2Dナノプレートレットを形成させるための装置であって、
減圧チャンバと;
3D層状材料の分散体のためのリザーバと;
分散体を100MPa以上に加圧することが可能な加圧器と;
リザーバから、チャンバ高圧入口でチャンバ内に出ている導管(例えば、ノズル)と;
剥離された材料を出すための、チャンバからの低圧出口と;
実質的に平坦な壁を含むチャンバ内のバッフルと、
を含み、
使用の際に、入口を介してリザーバから出て、バッフルの壁に対して直交する軸に沿ってバッフルで方向づけられる、分散体の噴流を形成させるように、入口が適合されている、
装置を提供する。
【0038】
剪断力は、分散体が減圧チャンバに入った時の加圧された分散体の圧抜きにより、そしてバッフル壁に向かって移動する噴流とバッフル壁から反射された流体との相互作用によっても、作り出される(上記の通り)。追加の剪断力が、分散体と、減圧チャンバの内壁との相互作用により、そして分散体の噴流とバッフル壁との衝突によっても、分散体内で発生され得る。これにより、累積及び増加レベルの剥離がもたらされ、こうしてナノプレートレットの改善された収率がもたらされる。
【0039】
典型的にはこの装置内の高圧入口は、本明細書に記載された通りノズルである。
【0040】
本発明は、ナノプレートレット材料を20L/時を超えるスループット速度で、そして国際公開第2017/060497号パンフレットに記載されたシステムと同等の変換率で生成するための連続的方法及び装置を提供する。
【0041】
本明細書で用いられる用語「ナノプレートレット」は、層状の2D材料(例えば、グラフェン、窒化ホウ素、又は2D遷移金属ダイカルコゲナイド)の小さな積み重ねからなるナノ粒子をいう。ナノプレートレットは、典型的には30nm未満、例えば20nm未満の厚さを有する。本明細書で用いられる用語「厚さ」は、ナノプレートレット内の層の積み重ねの軸に沿ったナノプレートレットの寸法をいう(図6参照)。用語「長さ」及び「幅」は、それぞれ、層状材料のシートの平面内の垂直軸に沿ったナノプレートレットの長い方及び短い方の寸法をいう。
【0042】
用語「数層」のナノプレートレットは、20以下の層、好ましくは10以下の層を有す
るナノプレートレットをいう。
【0043】
本発明の剥離方法により適切に調製され得るナノプレートレットとしては、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、ボロフェン、ゲルマネン、シリセン、スタネン、ホスホレン、ビスマセン、六方晶窒化ホウ素(h-BN)、マキシン、2D灰チタン石及び遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)が挙げられる。
【0044】
遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)は、化学式MXを有し、式中Mは、遷移金属であり、Xは、カルコゲン(即ち、硫黄、セレン又はテルル)である。TMDの例としては、二硫化モリブデン(MoS)、二セレン化モリブデン(MoSe)、二テルル化モリブデン(MoTe)、二セレン化ニオブ(NbSe)、二硫化タングステン(WS)、二セレン化タングステン(WSe)及び二硫化ハフニウム(HfS)が挙げられる。
【0045】
マキシンは、数原子の厚さである遷移金属カーバイド、窒化物又は炭窒化物の数層からなる。これらの例としては、TiC、VC、NbC、MoC、Ti、TiCN、Zr、Hf、Ti、Nb、Ta、MoTiC、CrTiC及びMoTiが挙げられる。
【0046】
好ましくは3D層状材料は、グラファイトであり、このため形成されたナノプレートレットは、グラフェンナノプレートレットである。
【0047】
この工程は、剥離される3D材料の分散体を形成させることを含む。分散体を形成させる方法は、典型的には3D材料を適切な溶媒中で混合することを含む。3D材料の例としては、上記に列挙されたものが挙げられる。3D材料は、少なくとも1μm、典型的には少なくとも2μm、例えば少なくとも5μmなどの好きなくとも3μmの平均粒子径(原子間力顕微鏡測定、走査電子顕微鏡測定、動的光散乱法及び粉末レーザ回折法による測定で)を有していてもよい。加えて3D材料は、50μmまで、典型的には25μmまで、例えば10μmまでの平均粒子径を有していてもよい。
【0048】
分散体中の溶媒は、極性又は非極性溶媒であってもよく、最も適当な溶媒は、剥離される3D材料に依存し得る。工程の収率及び分散体の安定性は、溶媒の表面張力及びハンセンパラメータをナノプレートレットに一致させることにより促進される。
【0049】
溶媒は、特に剥離される3D材料がグラファイトである場合には、好ましくは極性非プロトン性溶媒である。そのような溶媒の例としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ジクロロメタンDCM)、シクロヘキサノン及びシクロペンタノンが挙げられる。それらの相対的に低い沸点と、低い毒性と、続いて加工するための水での乳化への適切性との理由から、シクロヘキサノン及びシクロペンタノンが、好ましい溶媒となる。或いは溶媒は、極性プロトン性溶媒(例えば、水又はイソプロパノール)であってもよい。溶媒が、水である場合、界面活性剤もまた、含まれていてよい。界面活性剤は、イオン性又は非イオン性であってもよく、また、界面活性剤の選択は、剥離される3D材料の選択により変動してもよい。界面活性剤は、0.1g/L~10g/Lの間の濃度で分散体中に存在してもよい。使用され得る界面活性剤の例としては、TritonX-100及びコール酸ナトリウムが挙げられる。グラフェンの分散体を形成させるための適切な溶媒系は、当業者に即座に入手可能である(例えば、特許文献7参照)。
【0050】
分散体中の3D材料の濃度は、少なくとも1g/L、典型的には少なくとも10g/L
、好ましくは少なくとも20g/Lなどの少なくとも15g/Lであってもよい。例えば分散体中の3D材料の濃度は、少なくとも40g/L、例えばおよそ45g/Lであってもよい。60g/Lを超える濃度は、これが下流の分離工程をより困難にするため、典型的には回避される。
【0051】
分散体を調製するための方法は、当業者に周知であり、3D材料の粒子を溶媒中に簡単に混合することを含んでいてもよい。
【0052】
入口が、ノズルの形態をとる場合、ノズルは、典型的にはジルコニア(二酸化ジルコニウム、ZrO)などのセラミック材料から形成される。或いはノズルは、ダイヤモンドから形成されてもよい。ジルコニア及びダイヤモンドは、それらの硬度(そしてそれゆえノズルの摩滅の低減)及び「無傷の」表面を有する傾向(分散体内の乱流を低減する)により特に有利である。
【0053】
入口は、加圧された分散体が圧抜きチャンバに入るために通る狭い穴を含む。穴は、円形の形状であってもよい。穴が、円形である場合、穴は、50μm~250μm、典型的には70μm~150μm、例えば90μm~130μmの径を有していてもよい。したがって円形の穴の径は、100μm前後であってもよい。
【0054】
分散体は、高圧入口を通して減圧チャンバ内に供給される。入口を通る分散体の圧力及び入口のサイズにより、分散体は、高速で、例えば1,000m/sを超える(例えば、10,000m/sまでの)速度で入口から圧抜きチャンバ内に出る。
【0055】
チャンバはまた、セラミック材料(ジルコニウムなど)又はダイヤモンドから作製されてもよい。
【0056】
チャンバは、典型的には円筒形の形状である。チャンバは、少なくとも200μm、例えば少なくとも300μm、好ましくは少なくとも500μm、又は少なくとも700μmでの径を有していてもよい。チャンバの径は、典型的には1500μm以下、例えば1200μm以下、好ましくは1000μm以下又は800μm以下である。したがってチャンバの径は、200μm~1200μm、例えば300μm~1000μm、好ましくは500μm~800μmであってもよい。チャンバの径を増加させると、装置のスループットが上昇する。しかしより小さな径は、発生される剪断力を増加させ、そしてそれによりナノプレートレット収率を上昇させるため、バッフルに向かって移動する分散体の噴流と反射される分散体との相互作用のエリアを最大にする。それゆえチャンバの径は、必要とされるスループット及び収率に応じて選択されてもよい。
【0057】
チャンバの長さは、典型的には50mmを超え、例えば90mmを超える。
【0058】
一例において(本明細書にさらに記載される)、チャンバは、第一の末端でノズルに接続可能である。言い換えればチャンバは、下流にあってノズルと流体連通するように、配列される。チャンバはまた、典型的には第二の末端(即ち、第一の壁と反対の末端)に末端壁が提供されている。末端壁は、噴流をノズルに向かって戻すように反射する。反射された噴流は、末端壁からノズルに向かって戻るように移動すると、ノズルから末端壁に移動している噴流と相互作用する。これは、2種の噴流間の界面で剪断力を誘起し、分散体内で3D層状材料の剥離を誘起する。
【0059】
末端壁は、チャンバの一部を形成していてもよく(即ちそれは、チャンバの円形の壁と一体化されて形成されてもよく)、或いはチャンバの第二の末端に接続可能なプラグの形態をとっていてもよい。プラグは、押し込み式又はねじ込み式接続によりチャンバの第二
の末端に接続可能であってもよい。
【0060】
チャンバはまた、(少なくとも部分的に)剥離された分散体がチャンバを出ることが可能な低圧出口を有する。典型的には出口は、チャンバの第一の末端(即ち、ノズルが位置するチャンバの末端)に、又はその付近に配置される。これは、分散体の噴流がチャンバ内で費やす時間を最大にする、というのはこの噴流は、ノズルからチャンバの長さに沿って末端壁まで通り、その後、チャンバに沿って出口(ノズル付近の)に戻るためである。チャンバ内での時間を最大にすることが、流れ同士の接触を増加させ、これにより3D層状材料上で作用してそれらを剥離する剪断力を増加させ、それによりナノプレートレットの収率を上昇させる。
【0061】
上記の工程は、典型的には分散体上で作用する摩擦力により分散体の温度を顕著に(典型的には30℃以上)上昇させる。しかし、分散体の温度が上昇すると、ナノプレートレットの収率が低下し得ることが見出された。それゆえ、出口を通りチャンバから出た流体が熱交換器に通されることが、本発明の任意選択による特色である。これは、出ている流体の温度を低下させる。流体はその後、任意選択により、ナノプレートレットの収率を上昇させるために開口部(例えば、ノズル)に再循環されてもよく、又は加工されて剥離された材料を回収してもよい。5回以上、10回以上、15回以上、及び20回以上の通過が、用いられ得、より詳細に以下に記載された例では、通過の数が増加すると、収率が上昇した。
【0062】
したがって本明細書に記載された工程は、典型的には5℃~30℃、例えば12℃~20℃の温度で実行される。
【0063】
それゆえ本発明の装置は、減圧チャンバを出た材料の冷却のために、低圧出口の下流に熱交換を含む。この装置はまた、分散体を再循環させてナノプレートレットの収率を上昇させるために、低圧出口とリザーバ又は高圧入口を接続する導管を含んでいてもよい。
【0064】
或いはこの流動液は、例えばナノプレートレットが分散体中の溶媒及び/又は残留する3D層状材料から分離され得る、下流の加工ステップに進むことができる。それゆえ下流の加工ステップは、剥離が起こった流体を遠心分離又は濾過することを含む、分離ステップであってもよい。
【0065】
この装置は、別に、又は追加として、リザーバ内の、又はリザーバに入る分散体の温度を低減し、これによりこの方法の加熱効果に先立って温度を低減する熱交換器を含んでいてもよく、出発温度は概ね、20℃以下、15℃以下、又は好ましくは10℃以下に制御又は低減される。
【0066】
上記の方法は、未剥離の層状材料と、一部剥離された層状材料と、一定範囲のサイズの剥離された材料との混合物を発生してもよい。それゆえ上記の方法はまた、特有のサイズの剥離された材料を分別するために、サイズ選択ステップを含んでいてもよい。サイズ選択ステップは、上記の方法から得られた分散体が重量により混合物の成分を分離するために遠心力に供される遠心分離ステップであってもよい。例えばサイズ選択ステップは、相対的な遠心力と時間の積が2000g・分~5000g・分になるように、産出された(上記方法から)分散体を遠心分離することを含んでいてもよい。サイズ選択ステップは、0.5μm~1.5μm、例えば0.7μm~1.2μmという横幅を有するナノプレートレットの単離をもたらしてもよい。
【0067】
本発明はまた、本明細書に記載された方法を実行するように適合された本明細書に記載された装置、及び分散体を本明細書に記載された装置に通すことにより3D層状材料を剥
離する方法を提供する。
【0068】
本発明はさらに、本明細書に記載された方法/工程により得られた2Dナノプレートレット(例えば、グラフェン)を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】本発明の工程を実行する際の使用のための液体噴流ホモジナイザの略図を示す。
図2】チャンバ内部の分散体の流体の流れを示した略図である。
図3】本発明の一態様の工程により得られたグラフェン分散体のUV-可視吸収スペクトルである。
図4】本発明の一態様により得られたグラフェンナノプレートレットの動的光散乱(DLS)粒子径分析のグラフを示す。
図5】本発明の一態様により得られた堆積されたフレークの走査電子顕微鏡像である。
図6】剥離された材料の各幅、長さ及び厚さのパラメータを示した略図である。
図7】グラフェン収率及び剥離されたグラフェン粒子の平均層数に及ぼす操作圧力の影響を示す。
図8】グラフェン収率及び剥離されたグラフェン粒子の平均層数に及ぼす通過数増加の影響を示す。
図9】グラフェン収率及び剥離されたグラフェン粒子の平均層数に及ぼす操作温度の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1は、本発明の工程を実行する際の使用のための液体噴流ホモジナイザを示す。適切な液体噴流ホモジナイザの例としては、BEE Internationalから得られるものが挙げられる。
【0071】
この装置は、剥離される3D材料の分散体の加圧されたリザーバに、又はこのリザーバの一部に接続された流体入口(10)を含む。流体入口(10)は、頂点に100μm径の円形の穴を有するダイヤモンドノズル(12)につながる。
【0072】
ノズル(12)の下流に、剥離チャンバ(14)がある。剥離チャンバ(14)は、連続で設置された複数の(例えば、11の)反応器(同じくBEE Internationalにより供与)から形成される。各反応器は、10mm長であり、それゆえ剥離チャンバ(14)の全長は、120mmである。ポリマー(例えば、PTFE)で作製されていて、1mm厚(約10mmが反応器の全長に寄与する)、内側の径3mm及び反応器自体の外側の径と一致する外側の径というおおよその寸法を有する環状シールが、各反応器の間に挿入されている。この特有の器具を利用するチャンバ(14)の内径は、適当な反応器の選択により約300、500、750及び1000μmから選択され得る。
【0073】
剥離チャンバの先端(即ち、ノズル(12)の反対側)に、末端プラグ(16)が配置され、末端壁を形成している。末端プラグは、固形体のステンレス鋼プラグである。プラグは、反応器チャンバの軸に対して(そしてそれゆえ流れる流体に対しても)垂直な未加工の面(blank face)を有するねじ込み式NPTフィッティングである。
【0074】
流体出口(20)につながるチャンバのノズル末端に、3.125mmの内径を有するNTPフィッティングの低圧の穴(18)も存在する。流体出口は、いずれかの残留3D材料と共に2Dナノプレートレットを含む分散体を送達する。産出された流体はその後、この装置を通して再循環されて2Dナノプレートレットの収率を上昇させるか、又は下向
流の加工ステップ(例えば、得られたナノプレートレットを回収するための単離ステップ)に進む、のどちらかであり得る。
【0075】
流体噴流がこの装置を通る時に発生された剪断力は、摩擦熱を発生させて流体の温度を上昇させ得る。それゆえ流体は、穴(18)を通ってチャンバ(14)を離脱し、熱交換器(22)を通った後、出口(20)から出てもよい。
【0076】
加圧された流体噴流は、ノズル(12)を通ってチャンバ(14)に入り、チャンバ(14)の先端にある末端プラグ(16)に方向づけられる。流体噴流がノズルから出ると、流体の圧力が降下し、その結果、剪断力が流体中に発生する。噴流が末端プラグ(16)に当たると、流体の流れの方向が、末端プラグ(16)への反射により逆向きになる。チャンバ(14)に入った加圧された流体の連続供給の結果、反射された流体が、ノズル(12)と、チャンバ(14)の半径方向に外側の領域にある穴(18)と、の方向に、チャンバに沿って戻るように駆動される。流体がノズルから出た時の流体の圧抜きから、そして半径方向に内側の加圧された流体噴流アプローチの末端プラグ(16)と半径方向に外側の反射された流体との間にも、剪断力が生じて、3D層状材料の剥離を誘起する。
【0077】
出口(20)は、いずれかの残留3D材料と共に2Dナノプレートレットを含む分散体を送達する。産出された流体はその後、この装置を通して再循環されて2Dナノプレートレットの収率を上昇させるか、又は下向流の加工ステップ(例えば、得られたナノプレートレットを回収するための単離ステップ)に進む、のどちらかであり得る。
【0078】
流体噴流が、ノズル(12)を通り、圧抜きすると、剪断力が発生される。これらの剪断力は、3D層状材料の剥離を誘起して、2Dナノプレートレットを形成させる。この装置は、20L/時までの流速を可能にする。
【0079】
図2は、本発明の別の態様により工程を実行する際の使用のための液体噴流ホモジナイザを示す。
【0080】
この装置は、剥離される3D材料の分散体の加圧されたリザーバに、又はこのリザーバの一部に、接続された流体入口(30)を含む。流体入口(30)は、頂点に100μm径の円形の穴を有するダイヤモンドノズル(32)につながる。
【0081】
ノズル(32)の下流に、剥離チャンバ(34)がある。剥離チャンバ(34)は、連続で設置された複数の(例えば11の)反応器から形成される。チャンバ(34)の内径は、適当な反応器の選択により上記で言及された通り選択され得る。
【0082】
剥離チャンバ(34)の下流に、出口(40)を有する熱交換器(42)につながる低圧出口(38)がある。
【0083】
出口(40)は、いずれかの残留3D材料と共に2Dナノプレートレットを含む分散体を送達する。産出された流体はその後、この装置を通して再循環されて2Dナノプレートレットの収率を上昇させるか、又は下向流の加工ステップ(例えば、得られたナノプレートレットを回収するための単離ステップ)に進む、のどちらかであり得る。
【0084】
流体噴流が、ノズル(32)を通り、圧抜きすると、剪断力が発生される。これらの剪断力は、3D層状材料の剥離を誘起して、2Dナノプレートレットを形成させる。
【実施例
【0085】
実施例1
グラファイトの液体分散体が、シクロヘキサノン又はシクロペンタノン中で6μmの平均径を有するグラファイト粒子(例えば、タンザニアの鉱山を有するKibaran社(オーストラリア)など、様々な供給源から入手した。代わりの供給源も用いたが、本発明者らは、本発明者らの工程が出発原料に対比した収率に関してかなりロバストであることを見出している)を混合することにより調製されて、45g/Lのグラファイト濃度を有する分散体を形成させる。
【0086】
グラファイトの液体分散体は、インテンシファイア式ポンプの使用により3000バール(300MPa)まで加圧されて、この装置の流体入口(10)に供給される(図1に略図で示される)。液体分散体は、ノズル(12)を通って剥離チャンバ(14)に押し進められる。これは、流体を加速して、高速噴流を形成させる。
【0087】
この噴流はその後、突き当たる流体により移動させられる逆流に逆らって、直線状のジルコニア相互作用チャンバ(14)に入る。逆向きに流れる液体が、押し進められて、ノズル付近でチャンバを出て、これが、噴流との相互作用時間を最大にする。摩擦熱が、チャンバ内に起こり、液体噴流の温度を上昇させる。
【0088】
出ている液体が、熱交換器を通り、その後、この工程に再循環されて収率を上昇させるか、又は下向流の加工ステップに進む、のどちらかである。
【0089】
グラファイトが、加工されたら、分散体が、5000gで20分間、遠心分離されて、未剥離の結晶体及びより大きな断片の全てを除去した。得られたナノプレートレットは、10層未満の厚さであり、およそ1μmの長さを有する。したがって本発明は、大きな横幅を有するグラフェンナノプレートレットを生成する方法を提供する。横方向では、ナノプレートレットは、典型的には1を超える(例えば、1.5前後の)アスペクト比(その長さを幅で割ったもの)を有する。
【0090】
図3は、濃度(120mg/L)及び平均層数(8.3)の測定を示す、上記の実施例1の工程により得られたグラフェン分散体のUV-可視吸収スペクトルである。
【0091】
図4は、横の平均フレークサイズがおよそ360nmであることを示す、動的光散乱(DLS)粒子径分析のグラフを示す。
【0092】
図5は、粒子がDLSにより測定されたもの(図4参照)と同等の特徴的サイズを有することを示す、堆積されたフレークの走査電子顕微鏡像である。
【0093】
操作圧力
上記装置の初期テストにおいて、本発明者らは、装置の操作圧力に対するグラフェン収率及びグラフェン粒子の平均層数を測定した。結果が、図7に示される。運転温度は、5℃に設定され、分散体は、装置に10回循環された。
【0094】
収率は、約140MPaでは許容でき、約140MPaから、約200MPa及び約250MPaの個別の運転でのピーク収率まで上昇した。280MPaを超えると、収率が低下した。より高い圧力での収率降下は、圧力を上昇させて用いられた特有のセルの内部温度が上昇し、流体-グラフェン相互作用の化学物理学的作用に影響を及ぼしたことが原因の可能性がある。平均層数は、全テスト圧力でおよそ5~6の間であった。
【0095】
複数の通過
本発明者らはまた、再循環された材料の通過数に対する収率及び平均層数を測定した。結果が、図8に示される。温度は、5℃に保持され、操作圧力は、35kPSI(241
MPa)に設定された。収率は、20回通過までは着実に上昇し(テストは、この数を超えて継続されなかったが、収率は、さらなる上昇が可能かもしれない)、5回通過の後の収率を20回通過の後の収率と比較するとおよそ3倍上昇することが見出された。層数は、最初の10回通過の後に、10より多くから7未満に減少した。
【0096】
操作温度
収率及び平均層数に及ぼす操作温度の影響も、試験された)図9参照)。操作圧力は、35kPSI(241MPa)に設定され、分散体は、装置に10回通された。収率は、およそ17℃でピークになった後、再び低下することが見出された。平均層数は、温度に相対的に非依存的のようであった。
【0097】
剥離された材料の収率
装置が、以前の圧力テストにより示された圧力、及び複数の通過による材料の再循環を利用したグラフェン及びMoSの剥離に用いられ、次の結果が得られた。
【0098】
【表1】
【0099】
電気伝導度
数層のグラフェンの適用に影響を及ぼす1つの問題は、グラフェンの堆積されたフィルムが多くの場合、低電気伝導度を有する、ということである。これは一部として、剥離されたナノシートの高い比表面積のせいで、吸着された界面活性剤又は他の残渣が著しい量になった結果である。加えて、小さな横方向のシートサイズが、フィルム内の接合部の密度を上昇させて、電荷散失の集中(centres for charge scattering)に寄与し、それによりネットワークの伝導度を低下させる。
【0100】
それゆえ、より低い比表面積(層数と相互に規模を変動させる)、及びナノシートの層数とアスペクト比の間の確定されたスケーリング挙動で生じるより大きな横方向のシートサイズの両方のために、より大きな多層を選択することが、最終的な堆積されたフィルムにおいてより高い伝導度を生じる。
【0101】
8,000S/mの伝導度を有するフィルムを得るために、エチレングリコール中の剥離されたグラフェンの分散体をマスクに噴霧することにより、フィルムが剥離されたグラフェン材料から形成された。カレンダリングに際し、伝導度が50,000S/mに上昇した。
【0102】
減圧のみ vs 減圧+逆流
この装置は、上記の図1(逆流と称する)及び図2(並流)による2種の異なる構成で操作された。
【0103】
収率は、図1の逆流構成チャンバでより高くなり、図1の構成からエンドストップを除去した場合の収率の相対的降下は、およそ30%であった。
【0104】
チャンバの穴径
本発明者らは、それぞれおよそ500、750及び1000ミクロンのチャンバ穴について収率及び平均層数を測定した。収率は、わずかに上昇し、平均層数は、径の減少に応じてわずかに減少した。
【0105】
したがって本発明は、3D材料を剥離して、2Dナノプレートレットを形成させる方法を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9