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特許7443384膨張ファスナ用の液圧式の緊張および解放工具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-26
(45)【発行日】2024-03-05
(54)【発明の名称】膨張ファスナ用の液圧式の緊張および解放工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 27/16 20060101AFI20240227BHJP
   B23P 19/06 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B25B27/16
B23P19/06
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2021546022
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 AU2019051116
(87)【国際公開番号】W WO2020077396
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】2018903896
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521160672
【氏名又は名称】ノルト‐ロック・スウィッツァランド・ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】NORD‐LOCK SWITZERLAND GMBH
【住所又は居所原語表記】RIETWIESSTRASSE 2, 8735 ST. GALLENKAPPEL, SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】マクフィー,アンドリュー・ダンカン
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-515583(JP,A)
【文献】国際公開第2007/043143(WO,A1)
【文献】特開2000-084759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 27/16
B25B 29/02
B23P 19/06
F16B 7/04 - 7/18
F16B 31/04
F16L 23/003
F16L 37/05 - 37/1225
F01D 25/24
B65D 45/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースを締結するためのテーパ部を有する細長い部材を有する種類の膨張ファスナ用の液圧式の緊張および解放工具において、
前記テーパ部の周囲に配置されるスリーブ、
前記ワークピースに対する圧縮力を生じるための少なくとも一つのシリンダを含む一つまたは複数のシリンダ、
前記スリーブを変位させるための解放ピストン、および前記細長い部材の一端に結合するための緊張ピストンであって、該緊張ピストンと前記一つまたは複数のシリンダのうちの少なくとも一つとが少なくとも一つの緊張室を画定し、該解放ピストンと前記一つまたは複数のシリンダのうちの少なくとも一つとが少なくとも一つの解放室を画定する、解放ピストンおよび緊張ピストン、
それぞれ前記細長い部材を緊張するためおよび前記テーパ部から前記スリーブを解放するために前記緊張ピストンおよび前記解放ピストンを変位させる前記緊張室および前記解放室への液圧の印加のための該緊張室および該解放室と流体連通した複数の液圧ポート、および
前記緊張室からの液圧の除去後に、緊張した前記細長い部材の前記一端を保持するための張力保持機構
を備える工具。
【請求項2】
前記緊張ピストンは、前記細長い部材の一端のための通路を含む、請求項1に記載の工具。
【請求項3】
前記緊張ピストンは、前記細長い部材の前記一端に直接結合されるように構成される、請求項2に記載の工具。
【請求項4】
前記緊張ピストンは、前記細長い部材の前記一端に螺着されるように構成される、請求項3に記載の工具。
【請求項5】
前記緊張ピストンは、中間部材を介して前記細長い部材の前記一端に結合されるように構成される、請求項2に記載の工具。
【請求項6】
前記中間部材は、前記細長い部材の前記一端に螺着されるナットを備え、前記緊張ピストンは該ナットに螺合締結される、請求項5に記載の工具。
【請求項7】
前記ナットは、前記緊張ピストンの環状の緊張ピストンロッドの下端を受容するための同軸溝を互いの間に画定する内側同軸壁および外側同軸壁を含む、請求項6に記載の工具。
【請求項8】
前記内側同軸壁の内側が、前記細長い部材の前記一端の対応するねじ山と係合するために螺刻されている、請求項7に記載の工具。
【請求項9】
前記内側同軸壁の外側が、前記環状の緊張ピストンの内壁の対応する螺刻部に係合するために螺刻されている、請求項8に記載の工具。
【請求項10】
前記張力保持機構はロックリングを備える、請求項7から9のいずれか一項に記載の工具。
【請求項11】
前記ナットの前記外側同軸壁の外側が、前記ロックリングの内側の対応するねじ山と係合するために螺刻されている、請求項10に記載の工具。
【請求項12】
前記緊張ピストンは第一の緊張ピストンヘッドおよび第二の緊張ピストンヘッドを含む、請求項7から11のいずれか一項に記載の工具。
【請求項13】
前記一つまたは複数のシリンダは、前記第一の緊張ピストンヘッドおよび前記第二の緊張ピストンヘッドをそれぞれ受容する第一および第二の緊張シリンダを含む、請求項12に記載の工具。
【請求項14】
前記第一の緊張ピストンヘッドおよび前記第二の緊張ピストンヘッドは軸方向にずれて直列である、請求項12または請求項13に記載の工具。
【請求項15】
前記第一の緊張ピストンヘッドおよび前記第二の緊張ピストンヘッドは、前記環状の緊張ピストンロッドの周囲に径方向に延出している、請求項14に記載の工具。
【請求項16】
前記第一の緊張ピストンヘッドは、前記環状の緊張ピストンロッドと螺合される、請求項14または15に記載の工具。
【請求項17】
前記第二の緊張ピストンヘッドは、前記環状の緊張ピストンロッドと一体形成されている、請求項16に記載の工具。
【請求項18】
前記複数の液圧ポートは、前記第一の緊張ピストンヘッドを通るポートおよび前記第二の緊張シリンダを通るポートを含む、請求項13を直接または間接的に引用する請求項17に記載の工具。
【請求項19】
前記解放ピストンは、前記環状の緊張ピストンロッドの周囲に位置する環状のピストンヘッドを含む、請求項18に記載の工具。
【請求項20】
前記スリーブに結合するための第二の環状のピストンロッドを含む、請求項19に記載の工具。
【請求項21】
前記解放ピストンは前記スリーブと一体形成されている、請求項20に記載の工具。
【請求項22】
前記一つまたは複数の液圧シリンダは、前記ワークピースに圧縮力を印加するための解放シリンダを含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の工具。
【請求項23】
前記一つまたは複数の液圧シリンダは、前記ワークピースに圧縮力を印加するための解放シリンダを含む、請求項10から21のいずれか一項に記載の工具。
【請求項24】
ワークピース対する前記圧縮力を伝達するための前記ワークピースと前記少なくとも一つのシリンダの間のブリッジを含む、請求項23に記載の工具。
【請求項25】
前記解放シリンダは前記ブリッジ内に位置する、請求項24に記載の工具。
【請求項26】
前記ブリッジは、前記ロックリングの回転のための該ロックリングの外側の歯と噛合するウォーム駆動体を含む、請求項10を直接若しくは間接的に引用する請求項24または請求項25に記載の工具。
【請求項27】
前記ロックリングは、前記解放シリンダに軸方向に隣接して配設される、請求項10を直接若しくは間接的に引用する請求項10から21および請求項25から26のいずれか一項に記載の工具。
【請求項28】
テーパ部を有する細長い部材と該テーパ部の周囲のスリーブとを備える膨張ファスナと組み合わされる請求項1から27のいずれか一項に記載の工具。
【請求項29】
細長い部材を緊張するための液圧式の緊張工具において、
張力を受けた前記細長い部材を維持するためのロックリングであって、有歯外壁を有するロックリング、および
前記ロックリングの回転のために該有歯外壁と噛合される回転駆動部材を含む駆動組立体
を含む工具。
【請求項30】
前記回転駆動部材はウォームを備える、請求項29に記載の工具。
【請求項31】
ワークピースを締結するための膨張ファスナにおいて、
該ファスナの膨張スリーブに結合されたピストン、および
前記ピストンを着座させて互いの間に液圧室を画定し、該ピストンと前記ワークピースの互いに対する移動のために位置させることができるシリンダ
を含み、
前記液圧室への液圧の印加により、前記ピストン、次いで前記膨張スリーブが、使用時の該膨張ファスナのテーパ部から押し離される、膨張ファスナ。
【請求項32】
ワークピースを締結するために、テーパ部を有する細長い部材と該テーパ部の周囲のスリーブとを有する種類の膨張ファスナを緊張する方法において、
周囲に前記スリーブを有する前記テーパ部を前記ワークピースの中に位置させるステップ、
第一の拘束機構、例えばMJTで、前記ワークピースの第一の側に前記細長い部材の第一の端を拘束するステップ、
第二の拘束機構、例えばナットで、前記ワークピースの第二の側に前記細長い部材の第二の端を拘束するステップ、
前記第二の拘束機構に液圧緊張組立体を取り外し可能に締結するステップ、
前記液圧緊張組立体を操作して前記細長い部材を引き伸ばすステップ、
前記第二の拘束機構に張力保持部材を付加するステップ、および
前記第二の拘束機構から前記液圧緊張組立体を取り外し、それによって前記細長い部材が張力を受けたままにするステップ、
を備える方法。
【請求項33】
前記第二の拘束機構から前記張力保持部材を取り外し、それによって前記細長い部材を緊張から解くステップ、
前記スリーブと前記ワークピースの間に液圧を印加し、それによって前記細長い部材の前記テーパ部から前記スリーブを解放するステップ
をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
膨張ボルト組立体において、
ワークピースを締結するための、テーパ部を有する細長い部材および該テーパ部の周囲のスリーブ、
前記ワークピースに対する圧縮力を生じるための少なくとも一つのシリンダを含む一つまたは複数のシリンダ、
前記スリーブを変位させるための解放ピストン、および前記細長い部材の一端に結合するための緊張ピストンであって、該緊張ピストンと前記一つまたは複数のシリンダのうちの少なくとも一つとが少なくとも一つの緊張室を画定し、該解放ピストンと前記一つまたは複数のシリンダのうちの少なくとも一つとが少なくとも一つの解放室を画定する、解放ピストンおよび緊張ピストン、
それぞれ前記細長い部材を緊張するためおよび前記テーパ部から前記スリーブを解放するために前記緊張ピストンおよび前記解放ピストンを変位させる前記緊張室および前記解放室への液圧の印加のための該緊張室および該解放室と流体連通した複数の液圧ポート、および
前記緊張室からの液圧の除去後に、緊張した前記細長い部材の前記一端を保持するための張力保持機構
を備える膨張ボルト組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、膨張ボルトおよび膨張ボルトの緊張および取外しのための装置に関する。
【0002】
(関連出願)
本出願は、2018年10月15日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2018903896号からの優先権を主張し、当該仮特許出願の開示は全て、参照によってここに援用する。
【背景技術】
【0003】
先行技術の方法、装置または文書への言及は、これらの方法、装置または文書が通常の一般的知識の一部を形成した、または形成するという証拠または承認とみなすべきではない。
【0004】
一つの回転可能シャフトから別の回転可能シャフトへトルクを伝達するために、フランジ継手を用いて当該回転可能シャフトを相互接続することは、様々な状況で一般的に行われている。フランジ継手は大きなトルクを伝達するために使用されることが多く、製造費用が高く、当該フランジを通る内腔の公差および表面仕上げに対する要求が高い締まりばめ式のボルト締め要素を必要とする。前記内腔を機械加工またはホーニングした後も、組立時にさらなる位置調整が必要な場合が多い。さらに、従来のボルトは引き伸ばされるとその直径が減少し、その結果、前記内腔にぴったりと嵌合しなくなる可能性がある。
【0005】
先行技術において膨張ボルト組立体が知られている。例えば、先行技術の膨張ボルト組立体の一種が、Superbolt社によって販売されており、重要なフランジ継手の領域において特に有用である。例示的な先行技術のSuperbolt社の膨張ボルト組立体1を、図1では分解図で、図2では二つのフランジ33および35同士を締結するように使用されている状態で描写する。前記膨張ボルト組立体1は、第一の螺刻端部7および第二の螺刻端部9を有する細長いスタッド3を含む。前記第一の螺刻端部7と前記第二の螺刻端部9の間には中間テーパ部11がある。当該テーパ部11は、直径L2を有する第二の端部12と、直径L1を有する第一の端部14とを有し、L1はL2未満である。したがって、前記中間テーパ部11の形状は円錐台形である。前記中間テーパ部11とほぼ同じ軸方向長さである割れテーパスリーブ5が設けられている。当該割れテーパスリーブ5は、円筒形の外壁と、前記中間テーパ部11の外側のテーパ輪郭と相補的なテーパ輪郭を有する内壁とを有する。前記割れテーパスリーブ5は、第二の端18および第一の端16を有し、これらの間に縦割れ8を有する。前記割れテーパスリーブ5は、静置形態において、当該スリーブ5の前記第二の端部18が前記スタッド3の前記中間テーパ部11の前記第二の端部12に接近するように、前記中間テーパ部11上を摺動される。前記割れスリーブ5を前記第二の端部12の方へ前記中間テーパ部に沿ってさらに押し込むことによって、当該スリーブ5が径方向に膨張することになる。円筒形スペーサ17が前記スタッド3の周囲に位置する。当該円筒形スペーサ17は、前記フランジ33の内腔に配置される。当該円筒形スペーサ17は、第二の端22および第一の端20を有する。当該第二の端22は、前記割れスリーブ5の前記第一の端16に当接するように押し込まれる。
【0006】
第一の強化ワッシャ25が、前記スタッド3の前記第一の螺刻部7に被さるように配置され、前記円筒形スペーサ17の前記第一の端部20に当接する。前記スタッド3の前記第一の螺刻部7には、第一のマルチジャックテンショナ(MJT)27の形をした第一の拘束機構が螺着される。使用時は、前記MJT27のジャックボルト32の先端が前記強化ワッシャ25に押し付けられ、それによって当該ワッシャを押圧し、次いで前記円筒形スペーサ17を押圧して、前記割れスリーブ5を前記スタッド3の前記中間テーパ部11に沿って押し込み、それによって当該割れスリーブ5を径方向に膨張させる。
【0007】
前記スタッド3の前記第二の螺刻部9は、前記第二のフランジ35の内腔を貫通する。第二の強化ワッシャ29が、第二のフランジ35の外側で前記第二の螺刻部に被さるように位置し、MJT31の形をした第二の拘束機構が、前記スタッド3の前記第二の螺刻部9に手で締め付けられる。膨張ボルトはMJT以外のファスナを利用することができることが分かるだろう。例えば、標準的なボルトおよびワッシャをMJTの代わりに使用することができるが、MJTは、各MJTにおける複数のジャックボルト、例えば八個のジャックボルトの周囲に締付張力を分散させ、その結果、標準的なボルトよりも安全かつ均一に締め付けることができ、緩めることもできるので好ましい。
【0008】
図2で最もよく分かるように、使用時は、前記テーパスリーブ5を、前記スタッド3の前記中間テーパ部11に沿って摺動する。次に、前記スタッド3の前記第一の螺刻部7を、第一のフランジ33および第二のフランジ35の前記内腔に挿通する。前記円筒形スペーサ17を、前記第一の螺刻部7に被せるように配置し、前記スリーブ5に当接するようにフランジ33の前記内腔の中へ摺動する。前記第一および第二のワッシャ25、29を、スタッド3の前記第一および第二の螺刻部7、9に被せるように配置し、前記第一のワッシャ25は、円筒形スペーサ17の前記第一の端部20および前記フランジ33に当接する。前記第二のワッシャ29は前記フランジ35に当接する。前記第一および第二のMJT27、31を、前記第一および第二のワッシャ25、29を圧迫するまでスタッド3の前記第一および第二の螺刻端7、9に手で螺着する。次に、前記第一および第二のMJTのジャックボルト32を、前記ワッシャ25、29に対して力を均一に分散させるように徐々に締め付ける。前記第一のMJT27の前記ジャックボルトにトルクが与えられると、当該MJT27が前記テーパスタッド3を緊張し、その結果、前記中間テーパ部11が、スペーサ17を介して前記第一のワッシャ25に対して静止されている前記割れスリーブ5に引き込まれ、それによって割れスリーブ5を径方向に膨張させ、その結果、当該割れスリーブ5が、前記フランジ33、35の前記内腔の内壁に対して、矢印39で表す前記フランジからの等しい内方への径方向の力と逆向きの、矢印37で示す外方への径方向の力を生じる。同時に、前記第二のMJT31は、第一のMJT27と協働して、前記スタッド3に矢印41で示す張力を印加し、それによって前記フランジにおいて矢印43、45で示す逆向きの軸方向のクランプ力を生じ、したがって当該フランジ33および35同士を圧縮する。その結果、適切に緊張され、かつ前記スリーブ5が径方向に膨張した状態では、前記テーパスタッド3は、前記フランジとの径方向および軸方向の摩擦接触に必要な力を伝達し、それによって前記フランジ33、35同士を確実に締結する。
【0009】
説明した前記膨張ファスナ1は、良好に作用すること、および蒸気タービンなどの重機械においてトルクを伝達するために使用し得るような、フランジ同士を結合するための安全かつ効果的な手段を提供することが分かっている。前記膨張ファスナのその他の変形も知られており、例えば、前記スタッド3をブラインドホールに使用する変形は、第二の
螺刻部を有するのではなく、前記膨張スリーブと前記内腔の間の摩擦が、前記第一の螺刻端7上の単一のMJTおよびワッシャによって張力が印加されるように十分にしっかりと前記スタッドを保持することを利用する。
【0010】
膨張ボルトにより生じることが分かっている問題は、望ましいときに、例えば、前記二つのフランジを分解する必要があるときに、膨張ボルトを取り外すことが困難な可能性があるということである。この困難の理由は、前記割れスリーブ5によって前記フランジの前記内腔の前記内壁に印加される前記径方向の力によって、前記スリーブ5と、スタッド3と、前記フランジ33、35の前記内腔との間に、トーチ切断などの特殊な技術を使用する、または前記ボルト組立体を「浮かせ」ようとして高圧油を加えなければ克服できない締まりばめが生じる可能性があるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示の一つの目的は、上記問題のうちの少なくとも一つに対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の態様によれば、ワークピースを締結するためのテーパ部を有する細長い部材を有する種類の膨張ファスナ用の液圧式の緊張および解放工具において、
前記テーパ部の周囲に配置されるスリーブ、
前記ワークピースに対する圧縮力を生じるための少なくとも一つのシリンダを含む一つまたは複数のシリンダ、
前記スリーブを変位させるための解放ピストン、および前記細長い部材の一端に結合するための緊張ピストンであって、当該緊張ピストンと前記一つまたは複数のシリンダのうちの少なくとも一つとが少なくとも一つの緊張室を画定し、当該解放ピストンと前記一つまたは複数のシリンダのうちの少なくとも一つとが少なくとも一つの解放室を画定する、解放ピストンおよび緊張ピストン、
それぞれ前記細長い部材を緊張するためおよび前記テーパ部から前記スリーブを解放するために前記緊張ピストンおよび前記解放ピストンを変位させる前記緊張室および前記解放室への液圧の印加のための当該緊張室および当該解放室と流体連通した複数の液圧ポート、および
前記緊張室からの液圧の除去後に、緊張した前記細長い部材の前記一端を保持するための張力保持機構
を備える工具が提供される。
【0013】
一実施形態において、前記緊張ピストンは、前記細長い部材の一端のための通路を含む。
【0014】
一実施形態において、前記緊張ピストンは、前記細長い部材の前記一端に直接結合されるように構成される。
【0015】
一実施形態において、緊張ピストンは、前記細長い部材の前記一端に螺着されるように構成される。
【0016】
一実施形態において、前記緊張ピストンは、中間部材を介して前記細長い部材の前記一端に結合されるように構成される。
【0017】
一実施形態において、前記中間部材は、前記細長い部材の前記一端に螺着されるナットを備え、前記ピストンは当該ナットに螺合締結される。
【0018】
一実施形態において、前記ナットは、前記緊張ピストンの環状の緊張ピストンロッドの下端を受容するための同軸溝を互いの間に画定する内側同軸壁および外側同軸壁を含む。
【0019】
一実施形態において、前記内壁の内側が、前記細長い部材の前記一端の対応するねじ山と係合するために螺刻されている。
【0020】
一実施形態において、前記内側同軸壁の外側が、前記環状の緊張ピストンの内壁の対応する螺刻部に係合するために螺刻されている。
【0021】
一実施形態において、前記張力保持機構はロックリングを備える。
【0022】
一実施形態において、前記ナットの前記外壁の外側が、前記ロックリングの内側の対応するねじ山と係合するために螺刻されている。
【0023】
一実施形態において、前記緊張ピストンは第一および第二の緊張ピストンヘッドを含む。
【0024】
一実施形態において、前記一つまたは複数のシリンダは、前記第一および第二の緊張ピストンヘッドをそれぞれ受容する第一および第二の緊張シリンダを含む。
【0025】
一実施形態において、前記第一および第二の緊張ピストンヘッドは軸方向にずれて直列である。
【0026】
一実施形態において、前記第一および第二の緊張ピストンヘッドは、前記環状の緊張ピストンロッドの周囲に径方向に延出している。
【0027】
一実施形態において、前記第一の緊張ピストンヘッドは、前記環状の緊張ピストンロッドと螺合される。
【0028】
一実施形態において、前記第二の緊張ピストンヘッドは、前記環状の緊張ピストンロッドと一体形成されている。
【0029】
一実施形態において、前記複数の液圧ポートは、前記第一のピストンヘッドを通るポートおよび前記第二の緊張シリンダを通るポートを含む。
【0030】
一実施形態において、前記解放ピストンは、前記第一の環状のピストンロッドの周囲に位置する環状のピストンヘッドを含む。
【0031】
一実施形態において、前記工具は、前記スリーブに結合するための第二の環状のピストンロッドを含む。
【0032】
一実施形態において、前記解放ピストンは前記スリーブと一体形成されている。
【0033】
一実施形態において、前記一つまたは複数の液圧シリンダは、前記ワークピースに圧縮力を印加するための解放シリンダを含む。
【0034】
一実施形態において、前記工具は、ワークピース対する前記圧縮力を伝達するための前記ワークピースと前記少なくとも一つのシリンダの間のブリッジを含む。
【0035】
一実施形態において、前記解放シリンダは前記ブリッジ内に位置する。
【0036】
一実施形態において、前記ブリッジは、前記ロックリングの回転のための当該ロックリングの外側の歯と噛合するウォーム駆動体を含む。
【0037】
一実施形態において、前記ロックリングは、前記解放シリンダに軸方向に隣接して配設される。
【0038】
別の態様において、説明した前記工具は、テーパ部を有する細長い部材と当該テーパ部の周囲のスリーブとを備える膨張ファスナと組み合わせて提供し得る。
【0039】
別の態様によれば、細長い部材を緊張するための液圧式の緊張工具において、
張力を受けた前記細長い部材を維持するためのロックリングであって、有歯外壁を有するロックリング、および
前記ロックリングの回転のために当該有歯外壁と噛合される回転駆動部材を含む駆動組立体
を含む工具が提供される。
【0040】
一実施形態において、前記回転駆動部材はウォームを備える。
【0041】
さらなる態様では、ワークピースを締結するための膨張ファスナにおいて、
当該ファスナの膨張スリーブに結合されたピストン、および
前記ピストンを着座させて互いの間に液圧室を画定し、当該ピストンと前記ワークピースの互いに対する移動のために位置させることができるシリンダ
を含み、
前記液圧室への液圧の印加により、前記ピストン、次いで前記膨張スリーブが、使用時の当該膨張ファスナのテーパ部から押し離される、膨張ファスナが提供される。
【0042】
別の態様では、ワークピースを締結するために、テーパ部を有する細長い部材と当該テーパ部の周囲のスリーブとを有する種類の膨張ファスナを緊張する方法において、
周囲に前記スリーブを有する前記テーパ部を前記ワークピースの中に位置させるステップ、
第一の拘束機構、例えばMJTで、前記ワークピースの第一の側に前記細長い部材の第一の端を拘束するステップ、
第二の拘束機構、例えばナットで、前記ワークピースの第二の側に前記細長い部材の第二の端を拘束するステップ、
前記第二の拘束機構に液圧緊張組立体を取り外し可能に締結するステップ、
前記液圧緊張組立体を操作して前記細長い部材を引き伸ばすステップ、
前記第二の拘束機構に張力保持部材を付加するステップ、および
前記第二の拘束機構から前記液圧緊張組立体を取り外し、それによって前記細長い部材が張力を受けたままにするステップ、
を備える方法が提供される。
【0043】
一実施形態において、前記方法は、前記第二の拘束機構から前記張力保持部材を取り外し、それによって前記細長い部材を緊張から解くステップ、
前記スリーブと前記ワークピースの間に液圧を印加し、それによって前記細長い部材の前記テーパ部から前記スリーブを解放するステップ
を含む。
【0044】
さらなる態様では、膨張ボルト組立体において、
ワークピースを締結するための、テーパ部を有する細長い部材および当該テーパ部の周囲のスリーブ、
前記ワークピースに対する圧縮力を生じるための少なくとも一つのシリンダを含む一つまたは複数のシリンダ、
前記スリーブを変位させるための解放ピストン、および前記細長い部材の一端に結合するための緊張ピストンであって、当該緊張ピストンと前記一つまたは複数のシリンダのうちの少なくとも一つとが少なくとも一つの緊張室を画定し、当該解放ピストンと前記一つまたは複数のシリンダのうちの少なくとも一つとが少なくとも一つの解放室を画定する、解放ピストンおよび緊張ピストン、
それぞれ前記細長い部材を緊張するためおよび前記テーパ部から前記スリーブを解放するために前記緊張ピストンおよび前記解放ピストンを変位させる前記緊張室および前記解放室への液圧の印加のための当該緊張室および当該解放室と流体連通した複数の液圧ポート、および
前記緊張室からの液圧の除去後に、緊張した前記細長い部材の前記一端を保持するための張力保持機構
を備える膨張ボルト組立体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明の好適な特徴、実施形態および変形は、当業者が本発明を実施するのに十分な情報を提供する下記の詳細な説明から理解することができる。当該詳細な説明は、如何なる場合でも、本発明の上記概要の範囲を制限するものとみなすべきではない。本明細書に記載の実施形態は、添付の図面を参照することによって理解を深めることができる。
図1】先行技術の膨張ファスナ組立体を分解図で描写する。
図2】使用時の図1の前記ファスナ組立体の断面図である。
図3】膨張ファスナに取り付けられて使用されている本発明の第一の実施形態に係る液圧式の緊張および解放工具の縦断面図である。
図4図3の細部Aの平断面図であり、第一の室への液圧の印加を受けて前記工具のシリンダから上昇した第一のピストンを示す。
図5】ロックリングが下方に螺進されて前記工具の前記第一のピストンと前記シリンダの間隔を維持し、それによって前記第一の室への前記液圧の除去後に前記膨張ファスナのスタッドにおける張力を維持する様子を示す。
図6】前記膨張ファスナのスリーブを係脱するために、第二の室への液圧の印加により、前記工具の第二のピストンを上昇させる様子を示す。
図7】液圧カプラが嵌合され、膨張ファスナと組み合わされた前記液圧式の緊張および解放工具を示す。
図8】液圧カプラが取り外された、図7の前記組み合わせのさらなる図である。
図9】膨張ファスナのスタッドの端部に取り付けられ、それによって膨張ボルト組立体を提供している様子で示されている、本発明の第二の好適な実施形態に係る液圧式の緊張および解放工具の縦断面図である。
図10図9に対応する分解図である。
図11】一対の対向フランジを備えるワークピースに対する図9の前記工具の設置の第一の連続的な段階を示す。
図12】一対の対向フランジを備えるワークピースに対する図9の前記工具の設置の第一の連続的な段階を示す。
図13】一対の対向フランジを備えるワークピースに対する図9の前記工具の設置の第一の連続的な段階を示す。
図14】一対の対向フランジを備えるワークピースに対する図9の前記工具の設置の第一の連続的な段階を示す。
図15】一対の対向フランジを備えるワークピースに対する図9の前記工具の設置の第一の連続的な段階を示す。
図15A】ロックリング駆動組立体の外観を示す、前記設置工具の側面図である。
図15B図15AのA‐A’線を通る前記設置工具の断面図である。
図16図9の前記工具の緊張組立体の断面図である。
図17図9の前記工具の前記設置の最終段階を示す。
図18】緊張液圧が印加されてスタッドを引き伸ばした状態の図9の前記工具を示す。
図19】前記工具のロックリングを下方へ回転させて緊張状態の前記スタッドを維持した図9の前記工具を示す。
図20】最終的な緊張状態の図9の前記工具を示す。
図21】前記スタッドからスリーブを解放するための図9の前記工具の解放室への液圧の印加を示す。
図22】前記フランジの内腔からの前記スタッドおよびスリーブの取り外しを示す。
図23】液圧で変位可能なスリーブを組み込んだ一実施形態を描写しており、細長いファスナの両端が、描写の例では互いに逆向きのMJTを備える非液圧テンショナによって拘束かつ緊張されている。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図3は、第一の実施形態に係る液圧式の緊張および解放工具50を描写している。当該液圧工具50は、周囲に前記工具50のスリーブ5が位置するテーパ部11を有するスタッド3の形をした細長い部材を備える膨張ファスナに適用して使用されている状態で、かつ液圧コネクタ88および87が取り付けられた状態で示されている。
【0047】
前記液圧工具50は、緊張ピストン57の中心の軸方向の螺刻内腔62によって、前記スタッド3の上端7に螺着されている。前記スタッド3は、前記スリーブ5がスタッド3の前記テーパ部11の周囲に位置する状態で、フランジ33および35の形をした隣接し合うワークピースの内腔に挿通された状態で示されている。スタッド3の下側螺刻端9がフランジ35の底部から延出し、ワッシャ29およびMJT31によって拘束されている。
【0048】
前記液圧式の緊張および解放工具50は液圧シリンダ51を備え、当該液圧シリンダ51の基部53は、使用時にフランジ33に圧縮力を与えるために当該フランジ33の外側55に対して着座させる。前記液圧シリンダ51に沿って軸方向に変位可能なように液圧シリンダ51に受容される段部59を有する緊張ピストン57が設けられている。前記緊張ピストン57は、前記スタッド3の前記上側螺刻端7が螺合するナットとして働くように中心の軸方向の螺刻内腔62を含む環状の緊張ピストンヘッド61を含む。
【0049】
前記緊張ピストン57は、前記緊張ピストンヘッド61から同軸的に延出し、スタッド3の前記上端7を前記緊張ピストンヘッド61に螺接させるために通過させるための通路を提供する第一の環状緊張ピストンロッド63も含む。
【0050】
前記液圧工具50は、前記シリンダ51に沿って変位可能な解放ピストン69も含む。当該解放ピストン69は、前記環状の緊張ピストンロッド63の周囲に位置する環状の解放ピストンヘッド71を含み、当該解放ピストンヘッド71と同軸の環状の解放ピストンロッド73も含む。当該環状の解放ピストンロッド73の下端は、スリーブ5の相補的な螺刻部4に螺着するためのねじ山が形成されている。
【0051】
緊張液圧室75が、前記シリンダ51と、前記緊張ピストン57と、前記解放ピストン69の前記環状のピストンヘッド71の上側77との間に形成されている。
【0052】
解放液圧室79(図6で最もよく分かる)が、前記シリンダ51と前記環状の解放ピストンヘッド71の下側81の間に形成されている。
【0053】
前記緊張液圧室75は、前記緊張ピストン57を貫通する流体内腔85を介して前記緊張ピストン57の上端に位置する第一の液圧流体入口ポート83と流体連通している。緊張液圧室75の形をした第一の液圧室を加圧するために前記第一の流体入口ポート83に液圧源を結合するためのホースアダプタ87が図3に示されている。
【0054】
解放液圧室79の形をした第二の液圧室は、前記シリンダ51の上端に形成された第二の液圧流体入口ポート89と流体連通している。前記緊張ピストン57の外端から接触可能な前記第二のポート89まで当該緊張ピストン57に流体導管92を通すための内腔91が、前記緊張ピストン57の外端を通って形成されている。前記流体導管は前記シリンダ51を貫通する。ホースアダプタ88が、前記流体導管92の遠位端に位置する。前記流体導管92の機械加工時に作製される横方向の出口を塞ぐための螺刻プラグ82が設けられている。
【0055】
前記緊張液圧室75への液圧の印加により、前記緊張ピストン57と前記解放ピストン69が互いに離れるように付勢され、それによって、当該スリーブ5の径方向の膨張のため、かつ当該スタッドに沿って軸方向の張力を印加するための、前記スタッド3と前記スリーブ5の間の相対移動が生じる。逆に、前記解放液圧室79への液圧の印加により、前記テーパ付きの細長い部材、すなわち、スタッド3の前記テーパ部11から前記スリーブ5を係脱させるために、前記解放ピストン69が前記緊張ピストンヘッド61側に付勢される。
【0056】
図4に示すように、使用時は、前記第一の液圧室75に矢印74で示す液圧を印加し、その結果、前記シリンダ51がフランジ33の前記上面55を圧迫し、かつ前記緊張ピストン57がシリンダ51から上方に変位することになり、その結果、前記MJT32によってその底端が拘束された前記スタッド3は張力を受けて引き伸ばされることになる。その結果、前記シリンダ51の上面と前記緊張ピストンヘッド61の間に間隙54が生じることになる。室75への前記液圧が除去された後で前記スタッド3における張力が保持できるように、前記緊張ピストンヘッド61と前記シリンダ51の間の前記間隙54を維持するための保持機構が設けられている。
【0057】
現在説明中の例では、前記保持機構は、前記シリンダ51の上方に、前記緊張ピストンヘッド61である前記第一のピストンヘッドの外周に螺着したロックリング93を備える。その結果、前記シリンダ51から前記緊張ピストン57を液圧で変位させて間隙54を生じると、前記ロックリング93は、下方へ螺進するように回転されることができるようになり、図5に示すように前記シリンダ51に着座し、それによって前記緊張ピストン57を所定の位置に保持し、したがって、前記スリーブ5が前記内腔に径方向の力を与える状態で、張力を受けかつ引き伸ばされた前記スタッド3を保持する。その後、液圧は前記第一の液圧室75から切断されることができる。前記第一のピストンヘッド57と前記シリンダ51の間に位置させる一つまたは複数のシムまたはジャックボルトなどのその他の保持機構を設けることもできることが分かるだろう。
【0058】
前記スリーブ5およびスタッド3を前記フランジ33、35の前記内腔から解放するためには、緊張室75に矢印74(図4)で示す液圧を再び印加して、図4の前記緊張したスタッドをさらに緊張し、その結果、前記ロックリング93は、図4に示す位置まで螺退させることが可能になるように前記シリンダ51から後退させることができる。次に前記液圧74が除去される。図6の矢印72で示す液圧が解放室79に印加される。前記解放室79への当該液圧の印加により、前記解放ピストン69がフランジ33から離れ、それによってスタッド3の前記テーパ部11との係合が外れるように前記スリーブ5を引っ張り、その結果スリーブ5は径方向の直径が減少し、前記フランジ33および35の前記内腔に作用した前記径方向の力が除去され、その結果、前記スタッド3および前記スリーブ5を前記フランジ33、35の前記内腔から取り外すことができるようになる。
【0059】
図7は、使用前に液圧カプラ87および88が取り付けられた前記液圧式の緊張および解放工具50を含む膨張ファスナ組立体60を示す。図8は、前記液圧カプラ87および88が取り外され、したがってエンドユーザへ出荷される状態にある前記膨張ファスナ組立体60のさらなる図である。
【0060】
ここで、本発明のさらなる好適な一実施形態およびその使用方法を、図9以降を参照して説明する。
【0061】
図9は液圧式の緊張および解放工具100を描写しており、図10は当該解放工具を分解形態で示す。様々な構成部品の各々は実質的に環状であり、共通の縦軸に沿う断面で示されている。図9および図10に示す前記様々な構成部品には緊張組立体101(図16に組み立てられた状態で示す)が含まれる。緊張組立体101は、ピストンロッド107の上側螺刻外壁部106と螺合するための螺刻内壁181を含む環状の第一の緊張ピストンヘッド103を備える。当該第一の緊張ピストンヘッド103と第一の緊張シリンダ105の間に画定される第一の緊張室125(図18)に液圧流体を導入するための液圧ポート121が、当該第一のピストンヘッド103を垂直に通って形成されている。当該ポートは、その代わりに、前記シリンダの壁を通って形成することもできることが分かるだろう。
【0062】
緊張シリンダ105は、前記緊張ピストンロッド107の上端の下部108に被さるように位置し、全図面を通して黒く塗り潰された正方形および長方形として示されたシールによって当該下部108の周囲を封止する中心円形開口183を含む。
【0063】
前記緊張ピストンロッド107は第二の緊張ピストンヘッド116を含み、当該第二の緊張ピストンヘッド116は、環状の緊張ピストンロッド107と一体形成され、当該環状の緊張ピストンロッド107の周囲に径方向に延出している。第二の緊張シリンダ109は、前記緊張ピストンロッド107の下部161の外周に封止的に位置する中心円形開口110を含む。前記第二の緊張シリンダ109は、前記第二の緊張ピストンヘッド116と当該第二の緊張シリンダ109の間に画定される第二の緊張室127(図18)に液圧流体を導入するための径方向に延在する液圧ポート123が形成されている。
【0064】
前記第二の緊張シリンダ109は環状のブリッジ組立体111上に支持され、当該環状のブリッジ組立体111は、ロックリング114の外壁の歯126(図15Bに見られる)と噛合するロックリングウォーム駆動体112を含む。前記ブリッジ111は、前記第一および第二の緊張シリンダ103、109からワークピース、例えばフランジ33へ圧縮力を伝達するように働く。
【0065】
前記環状の緊張ピストンロッド107の前記下端161を受容するための同軸空洞159を互いの間に画定する内側同軸壁153および外側同軸壁157が軸方向に延出する環状の基部151を含むナット113が設けられている。前記内側シリンダ153の内側は、前記細長い部材3の上端167の対応するねじ山165に係合するためのねじ山152を有する。前記内側シリンダ153の外側169は、前記環状の緊張ピストン107の内壁171の対応するように螺刻された部分に係合するために螺刻されている。
【0066】
前記外側シリンダ157の外側は、ロックリング114の内側173の対応するねじ山150に係合するためのねじ山158を有する。前記スタッド3の前記テーパ部11を包囲し、一体的な解放ピストン117を含む膨張スリーブ115(例えば、先述のように縦に延在する縦割れを有する)が設けられている。前記解放ピストン117は、前記ロックリング114の下に位置しかつ前記スリーブ115およびスタッド3を取り囲む環状の解放シリンダ119に着座する。前記スタッド3は、緊張したときに前記スリーブ115に径方向の力を与えるためのテーパ部11を有する細長い部材を備える。
【0067】
ここで図11を参照すると、まず、前記スタッド3を、締結対象であるフランジ33および35の形をしたワークピースの対応する内腔34、36に挿通する。ワッシャ29およびジャックボルト32を有するMJT31の形をした第一の拘束機構を、前記スタッド3の下端(図11以降に示す)に螺着し、それによって前記スタッド3の前記下端(図12から図22に示す)を拘束する。
【0068】
前記解放シリンダ119を、スタッド3の前記上端に被せるように位置させ、図12に示すようにフランジ33の前記外側まで下げる。膨張スリーブ115を、前記スタッド3の頂部に被嵌し、解放ピストン117が図示のように解放シリンダ119内に位置するまで、前記スタッドと前記解放シリンダ119との間、次いで前記フランジ33および35の前記内腔の前記壁との間に入り込むように下方へ摺動する。
【0069】
ここで図13を参照すると、次に、ナット113の形をした第二の拘束機構を、スタッド3の前記上端に螺着し、下方へ回動して、スリーブ115の前記解放ピストン117の上側に当接させる。
【0070】
次に、ロックリング114を、ナット113の外側に螺着し、下方へ回動して、図14に示すように解放ピストン119の上端に当接させる。
【0071】
次に、前記ブリッジ組立体111を、図15に示すように前記ロックリング114および解放シリンダ119に被せるように位置させる。図15Aおよび図15Bで最もよく分かるように、前記ブリッジ組立体111は、前記ロックリング114の外側に形成された歯126と噛合するウォーム駆動装置112を含む駆動組立体122を含む。ウォーム駆動体112は、説明するような形で液圧を印加して前記スタッドを緊張させる際に作業員が前記緊張工具から安全な距離を保つことができるように離れた位置から作動させることができる電気モータ124(またはその他の回転動力機構)によって駆動される。
【0072】
緊張組立体101は図16に示すように構成され、前記上側の第一の緊張シリンダ105の前記中心孔183(図10)が、前記緊張ピストンロッド107の部分108(図10)の周囲に位置しており、前記第一の緊張ピストン103が、前記緊張ピストンロッド107の前記外側が螺刻された上部106の周囲に螺着され、前記第一の緊張シリンダ105に着座している。前記緊張ピストンロッド107の前記下端161(図10)は、前記第二の緊張シリンダ109の中央開口110に挿通し、第二のピストンヘッド116が前記シリンダ109に受容されている。互いに対応する外周凸部118と外周凹部120が、それぞれ前記第一の緊張シリンダ105の下側と前記第二の緊張シリンダ109の上側に形成されており、前記第一の緊張シリンダ105と前記第二の緊張シリンダ109の位置合わせを補助する。
【0073】
次に、前記緊張ピストンロッド107の前記下側内壁171(図10)を前記ナット113の前記上側外壁169に螺着することによって、前記緊張組立体101を前記ナット113に結合し、したがってナット113を介してスタッド3の前記上端に結合して、図17に示す形態に至る。
【0074】
ここで図18を参照すると、次に、前記第一の緊張ピストン103の第一のポート121および前記第二の緊張ピストン109の第二のポート123に液圧流体圧力を印加し、その結果、第一のピストン緊張室125および第二のピストン室127に液圧が導入される。当該液圧により、前記ピストンヘッド103、116が押し上げられると同時に、前記緊張シリンダ105、109が押し下げられる。その結果、前記緊張シリンダは、前記スタッド3の他端の前記MJT31から生じる対応する圧縮力133と釣り合う圧縮力131を、前記ブリッジ111を介して前記ワークピース、すなわち、フランジ33および35に作用し、その結果、本使用例では前記ワークピースを備える前記フランジ33および35が互いに強く圧縮される。同時に、前記ピストンロッド107、したがってナット113およびスタッド3の上端167(図10)が、矢印129で示すように上方に付勢され、それによって前記スタッド3を引き伸ばして緊張する。その結果、前記解放シリンダ119の上側および前記膨張スリーブ115の前記解放ピストン117の上側と、前記ナット113およびロックリング114の下側との間に間隙130が生じる。当該間隙130が維持されている間に、前記ロックリング114を、ウォーム駆動体112の遠隔操作によって、前記ナット113に沿って下方へ回転するように回動させ、その結果、ロックリング114の下端が図19に示すように前記解放シリンダ119の上側に当接し、それによって、前記液圧がポート121および123から除去されると前記スタッド3における張力を保持する。
【0075】
その後、前記スタッド3が図20に示すように前記ロックリング114により緊張したまま残されるように、前記緊張組立体101およびブリッジ111を取り外すことができる。
【0076】
その後、前記スタッド3を取り外したい場合は、前記ブリッジ組立体111および緊張組立体を、図19に示すように所定の位置に戻す。ポート121および123から液圧を印加して、前記ロックリング114が後退されるように前記スタッドを僅かに引き伸ばす。次に、前記ロックリング114を、前記ナット113に沿って上方に回転することができ、次に、ポート121および123から前記液圧を除去し、その結果、前記スタッドは緊張を解かれる。次に、前記緊張組立体101、前記ブリッジ組立体111、ナット113およびロックリング114を取り外すことができる。
【0077】
図21を参照すると、前記スタッド3の前記テーパ部11から前記膨張スリーブ115を解放するためには、次に、解放ピストン117の解放ポート178に液圧を印加し、その結果、解放室179は容積が増大し、ピストン117を変位させ、したがって前記スリーブ115を前記スタッド3から押し離し、したがってフランジ33である前記ワークピースからも押し離し、その結果、スリーブ115は、その後の前記ポート178への前記液圧の切断後に、図22に示すように、手で取り外すことができるようになる。
【0078】
図23は、シリンダ119に着座するピストン117が一体形成された、液圧で変位可能なスリーブ114を組み込んだ一実施形態を描写している。細長いファスナの両端は非液圧テンショナによって拘束されて緊張されており、当該非液圧テンショナは、図示の例では、逆向きのMJT27および31を備える。MJT27のワッシャ25をシリンダ119およびピストン117の上に配置し、次にジャックボルト32を緊張して、先述のように、スタッド3を引き伸ばし、スリーブ115を膨張させる。前記ファスナを分解したい場合は、前記MJT27をスタッド3から取り外すことができるように前記ジャックボルト32からトルクを除去する。次に、ポート178に液圧を印加して、前記スタッド3のテーパ部11から、および本例ではフランジ33を備えるワークピースから離れるように前記スリーブを変位させることができる。
【0079】
その結果、前記第二の好適な実施形態は、本発明の前記第一の実施形態に対していくつかのさらなる利点を含む。主な利点は、前記スタッドを緊張させ、前記ロックリングを下げて前記スタッドを前記緊張状態に維持したら完全に取り外すことができる前記緊張組立体101に緊張液圧系が全て組み込まれていることである。同様に、前記ブリッジも取り外されることができ、したがって、前記ナット、ロックリング、スタッド、解放ピストンを有するスリーブ、および解放シリンダのみが、前記スタッドにおける張力を維持するために残されればよい。
【0080】
ここに引用した文書はいずれも参照によってここに援用するが、これは、当該援用資料が、既存の定義、記述、またはここに示すその他の文書と矛盾しない範囲に限る。本書における用語の意味または定義が、参照によって援用した文書における同一の用語の意味または定義と矛盾する限り、本書における当該用語に割り当てられた意味または定義を適用するものとする。いずれの文書の引用も、当該文書が本願に関する先行技術であるとの承認として解釈すべきではない。
【0081】
具体的な実施形態を図示および説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々なその他の変更および修正をなすことができることは、当業者には明白であろう。当業者は、日常の実験を用いるだけで、代替、変形、付加、削除、修正、および置換を含む、ここに記載の具体的な装置および方法に対する数多くの均等物を認識し、または特定することができるだろう。
【0082】
したがって、添付の請求項を含む本願は、本願の範囲内である全てのそのような変更および修正を包含することを意図している。
【0083】
本発明の具体的な態様、実施形態または例に関連して説明された特徴、整数、特性、化合物、化学部分または化学基は、両立しない場合を除き、ここに説明したその他のいかなる態様、実施形態または例に対しても適用可能であると理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23